以下、本発明の実施形態について、図面等を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は、例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素については、図示を省略する。
まず、本発明の実施形態に係るガスメーターを含むマップ作成システムについて説明する。本実施形態において作成対象となるマップとは、例えば、地震により家屋等の構造物の倒壊や地盤沈下などの被害が発生した場合に、被害状況の程度を地域ごとに表したハザードマップをいう。
図1は、本実施形態に係るガスメーター10を含むマップ作成システム100を示すブロック図である。マップ作成システム100は、複数のガスメーター10と、管理センター80とを含む。なお、図1では、複数のガスメーター10に含まれる3つのガスメーター10A~10Cを例示する。また、ガスメーター10Aのみ、概略構成を明示する。ただし、複数のガスメーター10の構成は、それぞれ、ガスメーター10Aに示すものと同様である。
ガスメーター10は、都市ガスやLPガス等のガスの需要家宅に設置され、ガスの使用量を測定する機器である。ガスメーター10の全体形状は、箱状である。また、ガスメーター10は、ガスを流通させる配管12を備える。配管12の一端は、ガス管の一端が接続されるガス導入口14aに接続されている。一方、配管12の他端は、ガス管の他端が接続されるガス排出口14bに接続されている。ガスメーター10は、不図示であるが、配管12内を流通するガスの流量を測定する流量センサや、配管12内の圧力を測定する圧力センサなどを備える。なお、ガスメーター10は、その他、超音波センサ等を備えるものであってもよい。また、ガスメーター10は、ガスメーター10に含まれる各種センサから得られた各種データの処理や、各構成要素の動作の制御などを行う制御部16を備える。
また、ガスメーター10は、地震等の災害が発生したときに安全を確保するための安全装置を備える。ここで、安全装置とは、例えば、ガスメーター10に所定値以上の揺れが加えられたときに、ガス漏れを抑えるために配管12内のガスの流れを遮断したり、周囲に注意喚起のために警報を発したりするユニットをいう。ガスメーター10は、安全装置として、例えば、加速度センサ18と、記憶部20と、遮断弁22とを備える。
加速度センサ18は、ガスメーター10に加えられた地震等の振動に相当する加速度値を測定する。なお、加速度センサ18の検出方式は、特に限定するものではない。例えば、加速度センサ18がピエゾ抵抗素子を用いるものである場合、加速度センサ18が検出した加速度信号は、所定の成分を抽出する不図示のフィルター等を介して加速度データとして制御部16に送られる。
記憶部20は、各種データを記憶する。ここで、各種データには、ガスメーター10に含まれる各種センサで得られた測定データ、測定データに基づいて制御部16が算出した算出値、又は、予め外部から入力された各種の設定値などが含まれる。例えば、記憶部20は、加速度センサ18により得られた加速度データを記憶する。制御部16は、記憶部20に記憶された加速度データから、地震発生時の加速度の変動値を得ることができる。そして、制御部16は、例えば、加速度の変動値に基づいて、ガスメーター10が設置されている場所における震度データを求めることができる。震度データは、例えば、震度、又は、SI値若しくは加速度最大値など震度に類する値を含む。SI値は、地震が構造物に与える破壊力を知るための指標値である。
遮断弁22は、配管12に設置され、制御部16からの指令に基づいて、電磁気的に開閉が制御される弁である。遮断弁22は、弁体を閉じることで、配管12内のガスの流れを遮断することができる。一方、遮断弁22は、弁体を開くことで、配管12内にガスを流通させることができる。
安全装置の作動の一例として、記憶部20には、予め安全装置が作動する所定値を記憶させておく。例えば、判断の基準となる震度データを震度として、加速度センサ18から得られた加速度データに基づいて算出された震度が所定値以上となったときに安全装置を作動させる場合には、所定値を震度5と設定してもよい。この場合、制御部16は、加速度データから震度を求め、震度5以上の地震を認識したときには、遮断弁22に対して弁体を閉じるよう信号を送信し、配管12内のガスの流れを遮断する。
また、本実施形態では、制御部16は、加速度センサ18から得られた加速度データに基づいて、震度データに加えて、ガスメーター10の傾きを求める。以下、求められた傾きの値を「傾きデータ」という。傾きデータは、震度データと関連づけられて、記憶部20に記憶される。ここで、地震ごとに又は揺れごとに関連付けて記憶される震度データと傾きデータとの組み合わせを「履歴データ」という。また、記憶部20は、履歴データを記憶する領域として、履歴データ記憶領域20aを有する。なお、履歴データの一例は、後述する。
一方、制御部16は、履歴データの中から特定の条件に適合したときのデータのみを抽出する。このように抽出されたデータは、管理センター80において、マップの作成に利用される。そこで、以下、上記特定の条件に適合したデータを「マップデータ」という。また、制御部16において、マップデータの抽出を実行する部分を「マップデータ抽出部16a」という。なお、マップデータ抽出部16aは、必ずしも制御部16に含まれるものではなく、制御部16とは独立していてもよい。
また、記憶部20は、マップデータを記憶する領域として、マップデータ記憶領域20bを有する。すなわち、マップデータ記憶領域20bは、記憶部20において、履歴データ記憶領域20aとは別に設けられている。なお、マップデータの一例は、後述する。
また、ガスメーター10は、通信部24と、表示部26とを備える。
通信部24は、例えば無線機であり、制御部16からの信号に基づいて、管理センター80と通信可能である。通信部24は、少なくとも、マップデータ記憶領域20bに記憶されているマップデータを管理センター80に送信可能である。
表示部26は、制御部16からの信号に基づいて、ガスの使用量等を表示可能である。また、表示部26は、例えば、所定の震度以上の地震を感知した場合や、地震に伴ってガスを遮断した場合などにその旨を表示してもよい。さらに、表示部26は、履歴データ記憶領域20aに記憶されている履歴データ、又は、マップデータ記憶領域20bに記憶されているマップデータを、適宜表示させるものとしてもよい。
管理センター80は、管轄区域内に設置されている複数のガスメーター10と通信可能な管理施設である。具体的には、管理センター80は、ガスメーター10を運用するガス事業者の事業施設であってもよいし、又は、国や自治体の危機管理施設であってもよい。本実施形態では、管理センター80は、地震発生の際、複数のガスメーター10からマップデータを取得し、取得したマップデータに基づいて被害状況を反映させたマップを作成する。
管理センター80は、制御装置82と、通信装置84と、記憶装置86と、情報処理装置88と、表示装置90と、入力装置92とを備える。
制御装置82は、例えば、管理センター80内でのデータの取得、記憶又は処理などを統括する。通信装置84は、例えば無線装置であり、制御装置82からの指示に基づいて、管轄区域内にある複数のガスメーター10のそれぞれに設置されている通信部24との間で通信可能である。通信装置84は、少なくとも、特定のガスメーター10に対してマップデータを要求する信号を送信すること、及び、ガスメーター10から送信されたマップデータを受信することが可能である。記憶装置86は、通信装置84が受信したマップデータを記憶する。情報処理装置88は、記憶装置86に記憶されているマップデータを用いて、マップを作成する。表示装置90は、管理センター80内での各種制御に関する情報を表示する。具体的には、表示装置90は、例えば、地震を検知した際の警告表示や、情報処理装置88で作成されたマップの表示が可能である。また、入力装置92は、オペレーターが操作可能であり、例えば、予めマップを作成する際の各種条件等が入力される。
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、本発明を採用しない比較例として、ある地域内に、地震発生時の震度データ等を記憶し、これらのデータを管理センターに送信可能なガスメーターが複数存在するものと仮定する。そして、当該地域で地震が発生したときには、管理センターが複数のガスメーターにデータを要求すると、それぞれのガスメーターがデータを一斉に管理センターに送信する。この場合、管理センターは、ガスメーターから受信したデータに基づいてマップを作成しようとすると、例えば何万件といった数のデータを一度に処理しなければならならず、データ処理が追いつかないこともあり得る。
さらに、本発明を採用しない上記のようなガスメーターが、ある震度以上の地震のときにのみ、管理センターにデータを送信すると仮定する。ここで、実際には、地震の規模や震度が大きいときには、大きな揺れが繰り返し発生する。そのため、ガスメーターは、大きな揺れのたびに、管理センターにデータを送信することが想定される。また、揺れの大きい地域が広ければ広いほど、データを送信するガスメーターが増加する。したがって、大量のデータ通信に伴って、管理センターに負担が強いられる点は、上記と同様である。
一方、揺れが繰り返されているときに、管理センターがガスメーターに対して最新のデータを要求したとすると、大きな揺れのデータが小さな揺れのデータで更新されてしまい、真に必要なデータを取得することができないこともあり得る。これに対して、ガスメーターが、揺れに関する複数回分のデータを履歴というかたちで記憶し、管理センターに送信することも考えられる。しかし、管理センターは、揺れの回数を予想できないため、ガスメーターに対するデータ送信要求も複数回行わなければならず、結果として通信量が増加する。
そこで、本実施形態では、以下のような一連の工程を経て、最終的にマップを形成するものとする。
図2は、本実施形態におけるマップを取得するまでの流れを示すフローチャートである。図2は、左側の工程列が含まれる領域と、右側の工程列が含まれる領域とに、一点鎖線で仕切られている。左側の工程列は、管理センター80において実行又は実施される工程を含む。右側の工程列は、ガスメーター10において実行又は実施される工程を含む。
まず、管理センター80において、制御装置82は、条件設定工程として、オペレーターが入力装置92を介して入力した指示に基づいて、履歴データの取得条件と、マップデータの抽出条件とを設定する(ステップS101)。
図3は、特定のガスメーター10に取得させる履歴データの構成を示す図である。履歴データは、ある地震が発生したときに取得した震度データと、ガスメーター10の傾きデータとを含む。ここで、実際には、ある程度の大きさの地震が発生すると、複数回の地震が繰り返される。ガスメーター10は、そのような地震ごとに取得した震度データ及び傾きデータを、ある一定期間、履歴データ記憶領域20aに記憶させる。図3に示す例では、一定期間内にn回の地震が発生し、その都度、取得された震度データと傾きデータとが履歴データとして記憶されている。すなわち、履歴データには、地震ごとの震度データと傾きデータとの組データがn個存在する。さらに、ガスメーター10は、一定期間記憶し続けた履歴データのすべての内容を、のちに管理センター80に送信するのではなく、履歴データの中から抽出され、マップデータ記憶領域20bに記憶されたマップデータのみを送信する。
ここで、本実施形態では、履歴データの取得条件として、ガスメーター10において履歴データを記憶し続ける一定期間を規定する。この一定期間は、任意であるが、例えば一週間としてもよい。また、履歴データに含まれる震度データとしては、上記のとおり、震度、SI値又は加速度最大値等のいずれであっても採用可能である。以下、一例として、震度データは震度であるものとする。なお、本実施形態では、予めなんらかの一定期間を設定するものとしているが、予め一定期間を設定せずに、例えば、管理センター80がデータ測定期間の開始と終了とをガスメーター10にその都度指示するものとしてもよい。
また、本実施形態では、マップデータの抽出条件として、履歴データの取得条件として規定した一定期間内における最大震度データを規定する。この一定期間内の最大震度データも、履歴データに含まれる。ここでは、震度データが震度であるものとしているため、一定期間内の最大震度データについても、以下、一定期間内の最大震度とする。そして、この最大震度は、任意であるが、例えば、安全装置が作動する揺れに合わせて、震度5としてもよい。
次に、管理センター80において、制御装置82は、条件送信工程として、ステップS101で設定された各種条件を、通信装置84から管轄区域内に設置されている複数のガスメーター10に送信させる(ステップS102)。
次に、ガスメーター10において、制御部16は、条件記憶工程として、通信部24にステップS102で送信された各種条件を受信させ、記憶部20内に記憶させる(ステップS103)。
次に、ガスメーター10において、制御部16は、データ測定工程として、加速度センサ18に、ステップS103で記憶された各種条件に従って、一定期間内の最大震度と、震度及びガスメーター10の傾きとを測定させる(ステップS104)。ここで、データ測定を開始するタイミングは、ガスメーター10が各種条件を記憶した直後としてもよい。又は、別途、管理センター80側からデータ測定の開始の指示がガスメーター10側に発せられるものとし、制御部16は、その指示に基づいてデータ測定を開始してもよい。
図4は、ステップS104において、ある一定期間内に記憶された履歴データの一例を示す表である。ここで、図4に示す履歴データは、以下の想定で取得されたものとする。まず、履歴データは、管理センター80の管轄区域内にある複数のガスメーター10のうち、ある1つのガスメーター10Aで取得されたものとする。履歴データが取得された一定期間は、2018年4月24日から2018年4月30日までの一週間である。また、履歴データが取得された一定期間内に、ガスメーター10Aが設置されている地域において、最大震度5の地震を含む計5回の地震が発生したものとする。計5回の地震には、それぞれ、発生した順に「地震No.」が付されている。
図4(a)は、履歴データに含まれる、地震の発生日時とその地震の震度とを含むデータ列である。
まず、第1回目の地震として、2018年4月25日の16時17分に震度3の地震が発生した。ガスメーター10Aの制御部16は、この地震の発生に伴い、加速度センサ18を用いて震度3を検知した。制御部16は、第1回目である当該地震を地震No.1と番号付けし、履歴データとして地震発生日時と震度とを履歴データ記憶領域20aに記憶させた。
その後、第2回目の地震として、第1回目の地震の約1時間後である2018年4月25日の17時17分に震度5の地震が発生した。制御部16は、第1回目の地震の発生時と同様に、震度5を検知し、第2回目である当該地震を地震No.2と番号付けし、地震発生日時と震度とを履歴データ記憶領域20aに記憶させた。
その後、第3回目の地震として、2018年4月27日の18時17分に震度2の地震が発生し、制御部16は、震度2を検知して、当該地震を地震No.3と番号付けし、地震発生日時と震度とを履歴データ記憶領域20aに記憶させた。以下同様に、第4回目の地震として、2018年4月27日の19時17分に震度2の地震が発生し、制御部16は、震度2を検知して、当該地震を地震No.4と番号付けし、地震発生日時と震度とを履歴データ記憶領域20aに記憶させた。第5回目の地震として、2018年4月27日の20時17分に震度2の地震が発生し、制御部16は、震度2を検知して、当該地震を地震No.5と番号付けし、地震発生日時と震度とを履歴データ記憶領域20aに記憶させた。
図4(b)は、図4(a)に示したデータ列と合わせて記憶される、履歴データに含まれる一定期間内の最大震度、及び、地震ごとの震度とガスメーター10Aの傾きとを含むデータ列である。
まず、地震No.1が発生したとき、制御部16は、上記のとおり、加速度センサ18を用いて震度3を検知した。当該一定期間内では、地震No.1が最初の地震であるため、この場合、一定期間内の最大震度としては、今回の震度3が相当する。そこで、制御部16は、一定期間内の最大震度を震度3として履歴データ記憶領域20aに記憶させる。また、制御部16は、加速度センサ18を用いてガスメーター10Aの傾きを検知し、震度と合わせて履歴データ記憶領域20aに記憶させる。ここでは、傾きの値は0°であった。今回記憶される震度及び傾きは、地震No.1に関するデータであるので、最新の地震に関するデータとして記憶される。なお、当該一定期間内では、地震No.1が最初の地震であるため、地震No.1より前の回のデータは存在しない。
その後、地震No.2が発生したとき、制御部16は、震度5を検知した。当該一定期間内での震度を比較すると、地震No.1での震度3よりも今回の地震No.2での震度5の方が大きい。そこで、制御部16は、一定期間内の最大震度を今回の震度5に書き換え、履歴データ記憶領域20aに記憶させる。また、制御部16は、ガスメーター10Aの傾きを検知し、履歴データ記憶領域20aに記憶させる。ここでは、傾きの値は8°であった。今回記憶される震度及び傾きは、最新の地震に関するデータとして記憶される。これに伴い、地震No.1に関する震度及び傾きは、前回の地震に関するデータとして記憶される。
その後、地震No.3が発生したとき、制御部16は、震度2を検知した。当該一定期間内での震度を比較すると、地震No.3での震度2よりも前回の地震No.2までの最大震度5の方が大きい。そこで、制御部16は、一定期間内の最大震度を書き換えない。つまり、地震No.3の段階では、最大震度は震度5のままである。また、制御部16は、ガスメーター10Aの傾きを検知し、履歴データ記憶領域20aに記憶させる。ここでは、傾きの値は8°であった。今回記憶される震度及び傾きは、最新の地震に関するデータとして記憶される。これに伴い、地震No.2に関する震度及び傾きは、前回の地震に関するデータとして記憶される。また、地震No.1に関する震度及び傾きは、前々回の地震に関するデータとして記憶される。
以下、地震No.4及び地震No.5が発生したときも、制御部16は、先の地震のときと同様に、震度と傾きとを履歴データ記憶領域20aに記憶させる。地震No.4及び地震No.5では、共に震度2であるので、一定期間内の最大震度は、地震No.3のときと同様にデータの書き換えは行われず、震度5である。
次に、ガスメーター10において、制御部16は、マップデータ抽出工程として、マップデータ抽出部16aに、履歴データ記憶領域20aに記憶されている履歴データからマップデータを抽出させる(ステップS105)。ここで、予め設定されているマップデータの抽出条件は、一定期間内における最大震度であった。したがって、図4を参照すると、この場合にマップデータとして抽出される最大震度は、震度5となる。
また、本実施形態では、最大震度が発生した地震における傾きをマップデータとして記憶する。例えば、図4を参照すると、マップデータとして記憶される傾きは、最大震度が発生した地震No.2における傾きである8°である。
次に、ガスメーター10において、制御部16は、マップデータ記憶工程として、ステップS105で抽出されたマップデータをマップデータ記憶領域20bに記憶させる(ステップS106)。例えば、履歴データ記憶領域20aに記憶されている一定期間内の履歴データとしては、図4に示すだけのデータ量が含まれている。これに対して、図4に示す履歴データを取得した一定期間内で比較すると、マップデータ記憶領域20bに記憶されるマップデータは、最大震度が震度5で、そのときに生じたガスメーター10Aの傾きが8°であるという情報である。つまり、マップデータ記憶領域20bに記憶されているデータ量は、履歴データ記憶領域20aに記憶されているデータ量よりも少ない。
次に、ガスメーター10において、制御部16は、ある一定期間におけるデータ測定が終了した後に、再度、次の一定期間におけるデータ測定を継続させるかどうか判断する(ステップS107)。ここで、制御部16は、次のような条件に基づいて、データ測定を継続させるかどうか判断してもよい。例えば、制御部16は、管理センター80からの指令により、予めデータ測定を行う期間が設定され、当該期間中、上記設定された一定期間のデータ測定を繰り返すよう制御するものとしてもよい。又は、制御部16は、管理センター80からのデータ測定停止の指示がない限り、上記設定された一定期間のデータ測定を繰り返すよう制御するものとしてもよい。ステップS107において、制御部16は、データ測定を継続させると判断した場合は(Y)、ステップS104に移行し、データ測定工程を繰り返す。一方、ステップS107において、制御部16は、データ測定を継続させないと判断した場合は(N)、そのままデータ測定を終了する。
次に、ガスメーター10においてステップS104からステップS106までの工程が繰り返されている間、管理センター80は、複数のガスメーター10が設置されている管轄区域における地震の検知を開始する。ここで、当該地震の検知は、管理センター80自体が地震を測定することで実施してもよいし、例えば気象庁等の外部機関からもたらされる情報に基づいて実施してもよい。
管理センター80が地震を検知したとき、管理センター80において、制御装置82は、優先度特定工程として、関係する地域のうち、ガスメーター10からマップデータを収集すべき地域の優先度を特定する(ステップS108)。ここで、関係する地域は、例えば、管轄区域全体であってもよいし、管轄区域内の特定地域であってもよい。特定地域とは、例えば、市町村等の区割りに基づく地域や、地形等の条件で予め区別された地域などをいう。また、マップデータを収集すべき地域とは、例えば、地震を検知した際の情報に基づいて、被害が発生していると予想される地域をいう。すなわち、特に被害が大きいと予想される地域が、マップデータを収集すべき地域の中でも優先度が高い地域として特定される。ここで、優先度は、制御装置82が自動で特定してもよいし、オペレーターが入力装置92を介して手動で特定してもよい。
次に、管理センター80において、制御装置82は、マップデータ要求工程として、通信装置84に、ガスメーター10に対してマップデータを要求する信号を送信させる(ステップS109)。ここで、制御装置82は、ステップS108で特定された優先度が高い地域から順に、当該地域にあるガスメーター10に対してマップデータを要求する。また、制御装置82は、マップデータの収集の確実性を向上させるために、地震がある程度収まったタイミングを見計らって、ガスメーター10に対してマップデータを要求することが望ましい。
次に、マップデータ要求信号を受信したガスメーター10において、制御部16は、マップデータ送信工程として、通信部24に、マップデータ記憶領域20bに記憶されているマップデータを管理センター80に送信させる(ステップS110)。
次に、管理センター80において、制御装置82は、マップデータ収集工程として、ガスメーター10から送信されたマップデータを収集する(ステップS111)。マップデータの収集は、マップデータを収集すべき地域の優先度に従って、順次行われる。収集されたマップデータは、管理センター80内の記憶装置86に記憶される。
そして、管理センター80において、制御装置82は、マップ作成工程として、情報処理装置88に、記憶装置86内に記憶されているステップS111で収集されたマップデータを用いてマップを作成させる。(ステップS112)。
図5は、ステップS112において作成されるマップの概念を説明する図である。管理センター80の管轄区域ARには、実際には、それぞれガスメーター10が設置されている多くの需要家が存在する。図5では、簡略化のために、6つの需要家の家屋を例示している。以下、6つの家屋をそれぞれ、第1家屋D1、第2家屋D2、第3家屋D3、第4家屋D4、第5家屋D5、第6家屋D6と表記する。また、第1家屋D1~第6家屋D6には、それぞれ1つずつ、本実施形態に係るガスメーター10A、ガスメーター10B、ガスメーター10C、ガスメーター10D、ガスメーター10E、ガスメーター10Fが設置されている。なお、図5では、管理センター80が管轄区域ARの内部に存在するものとしているが、管轄区域ARの外部に存在していてもよい。
ここで、図4に示した履歴データの一例に合わせて、管理センター80は、管轄区域AR内で、2018年4月25日の17時17分に発生した地震について、マップを作成するものと仮定する。
制御装置82は、ステップS108に関連して、地震の検知から、震度5以上の地震が発生したと考えられる第1地域C1を、マップデータを収集すべき地域のうち特に優先度が高い地域として特定する。次に、制御装置82は、ステップS109に関連して、通信装置84に、第1地域C1内にある第1家屋D1~第3家屋D3にそれぞれ設置されているガスメーター10A~ガスメーター10Cにマップデータを要求する。そして、情報処理装置88は、ステップS111に関連して収集されたマップデータを解析し、以下のような被害状況を導き出す。
まず、第1家屋D1について、図4を用いて説明したガスメーター10Aが送信してきたマップデータによれば、震度5で、かつ、ガスメーター10Aの傾きが8°であった。したがって、ガスメーター10Aの傾きを参照すると、第1家屋D1は、図5に示すような地盤の変化、又は、家屋自体の倒壊などが発生し、大きな被害を受けたと想定される。
次に、第2家屋D2について、ガスメーター10Bが送信してきたマップデータによれば、例えば、震度5で、かつ、ガスメーター10Bの傾きは0°であったとする。この場合、第2家屋D2は、震度の分類で考えれば、第1家屋D1と同じ第2地域C2に含まれる。しかし、ガスメーター10の傾きで分類すると、第2家屋D2は、地盤の変化や家屋自体の倒壊を免れ、大きな被害を受けていないと想定される。つまり、同じ第2地域C2の中でも、第2家屋D2が存在する第4地域C4では、第1家屋D1が存在する第5地域C5よりも被害が小さいと考えられる。
次に、第3家屋D3について、ガスメーター10Cが送信してきたマップデータによれば、例えば、震度6で、かつ、ガスメーター10Cの傾きは1°であったとする。この場合、第3家屋D3は、震度の分類で考えれば、第1家屋D1及び第2家屋D2が存在する第2地域C2とは異なる第3地域C3に含まれる。しかし、ガスメーター10Cの傾きを参照すると、第3家屋D3は、震度が第2地域C2よりも強かったものの、被害については第1家屋D1よりも小さいと想定される。つまり、第1家屋D1と第3家屋D3とを比較すると、震度が小さい第1家屋D1の方が、実際には大きな被害を受けており、第1家屋D1が存在する第5地域C5が最も災害対応を要する地域であるということがわかる。
一方、情報処理装置88は、第1地域C1内での第2地域C2から第5地域C5のような個別の地域の特定が完了した後、引き続き、マップデータを収集すべき地域のうち優先度が低い地域内での個別の地域の特定を行ってもよい。優先度が低い地域とは、例えば、第4家屋D4~第6家屋D6が存在する地域に相当する。
このように、情報処理装置88は、マップデータに基づいて第2地域C2から第5地域C5のような個別の地域を具体的に特定して地図上に表していくことで、実際の被害状況を的確に反映させたマップを作成することができる。
次に、本実施形態による効果について説明する。
本実施形態に係るガスメーター10は、加速度値を測定する加速度センサ18と、加速度値に基づいて、地震発生時の履歴データを求める制御部16と、履歴データからマップデータを抽出するマップデータ抽出部16aとを備える。また、ガスメーター10は、履歴データを記憶する履歴データ記憶領域20aと、マップデータを記憶するマップデータ記憶領域20bと、マップデータの送信に関して外部との間で通信を行う通信部24とを備える。ここで、履歴データは、最大震度データと、それぞれ地震ごとに求められる、震度データ、及び、加速度センサ18が備えられているガスメーター10の傾きデータとを含む。マップデータは、最大震度データと、最大震度データが得られた地震における傾きデータとを含む。
ここで、上記の外部が管理センター80に相当するものとすると、管理センター80は、地震の被害状況を把握するためにマップを作成する。このとき、管理センター80は、個々のガスメーター10が取得したデータのうち、履歴データではなく、履歴データから抽出されたマップデータを用いてマップを作成する。マップデータのデータ量は、履歴データのデータ量よりも少ない。したがって、ガスメーター10は、管理センター80へマップデータを送信する際の通信量を少なくすることができるので、例えば、地震発生後の混乱時期であっても、通信量の過多に起因した通信障害の発生を抑えることができる。
また、マップの作成に用いられるデータ量が少なくなることから、管理センター80がデータ処理に要する時間を短くすることができる。結果として、ガスメーター10は、管理センター80に対して、より迅速にマップを作成させることができる。
さらに、ガスメーター10は、マップデータが記憶されるマップデータ記憶領域20bを、履歴データが記憶される履歴データ記憶領域20aとは分離させている。そのため、管理センター80は、ガスメーター10に対してマップデータを要求する際には、予めマップデータ記憶領域20bに記憶されているデータを要求すればよい。これによれば、ガスメーター10は、管理センター80からマップデータが要求された後に履歴データからマップデータを抽出するのではないため、ガスメーター10内での制御上の効率化を実現できる。
このように、本実施形態によれば、ガスメーター10が設置されている地域で地震が発生したときに、地震による被害を迅速に把握するのに有利となるガスメーター10を提供することができる。
また、本実施形態では、マップデータには、震度データだけでなく、ガスメーター10の傾きデータが含まれる。したがって、マップデータを用いて作成されるマップには、震度データだけでは判断が難しい被災地域内の家屋ごとの状況を反映させることができるので、マップデータの信頼度を向上させることができる。結果として、本実施形態において作成されたマップを利用することで、管理センター80は、実際に被害の大きい地域から災害時の対応をするなど、より効率的な活動を支援することが可能となる。
また、本実施形態に係るガスメーター10では、震度データは、震度であり、最大震度データは、一定期間内の最大震度であるものとしてもよい。
このようなガスメーター10によれば、まず、震度データとして、例えば、一般的なガスメーターにおいて安全装置の作動基準として用いられている震度を採用することで、制御上の複雑化を抑えることができる。また、最大震度データを一定期間内の最大震度とすることで、履歴データ記憶領域20aに記憶される履歴データのデータ量が必要以上に多くなることを回避させることができる。例えば、一定期間を一週間程度に設定しておくことで、マップデータ記憶領域20bには、直近の一週間以内のマップデータが常時記憶されていることになる。したがって、管理センター80が必要とするマップデータがマップデータ記憶領域20bに記憶されている状態となりやすい点で有利となり得る。
また、本実施形態に係るマップ作成方法は、ガスメーター10に備えられている加速度センサ18が測定した加速度値に基づいて、地震ごとの履歴データを求めるデータ測定工程を含む。マップ作成方法は、データ測定工程で求められた履歴データからマップデータを抽出するマップデータ抽出工程を含む。マップ作成方法は、ガスメーター10にそれぞれ備えられ、履歴データが記憶されている履歴データ記憶領域20aとは異なるマップデータ記憶領域20bに、マップデータ抽出工程で得られたマップデータを記憶させるマップデータ記憶工程を含む。マップ作成方法は、管理センター80からのマップデータ要求に基づいて、マップデータ記憶領域20bに記憶されているマップデータを管理センター80に送信するマップデータ送信工程を含む。また、マップ作成方法は、管理センター80がマップデータ送信工程で送信されたマップデータを用いてマップを作成するマップ作成工程を含む。ここで、履歴データ及びマップデータは、上記のガスメーター10の構成で規定したものと同様である。
このようなマップ作成方法によれば、上記説明したガスメーター10の効果と同様に、ガスメーター10が設置されている地域で地震が発生したときに、地震による被害を迅速に把握するのに有利となるマップ作成方法を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
例えば、ガスメーター10は、IoT(Internet of Things)を用いた通信を可能とする構成を有するものとしてもよい。この場合、ガスメーター10は、インターネットに無線又は有線で接続され、インターネットを介して管理センター80にマップデータを送信してもよい。
また、例えば、図2のフローチャートを用いて説明した一連の工程では、ステップS108として、マップデータを収集すべき地域の優先度を特定する優先度特定工程があるものとした。ただし、優先度特定工程では、必ずしも優先度を特定しなければならないものではなく、例えば、管轄区域全体のマップを同一優先条件で作成したい場合には、優先度を特定しなくてもよい。
また、上記の実施形態では、マップデータの1つとして、最大震度が発生した地震における傾きを挙げた。そして、ガスメーター10が、当該傾きをマップデータ記憶領域20bに記憶し、管理センター80は、当該マップデータを利用してマップを作成するものとした。これに対して、例えば、最大震度が発生した地震における傾きに代えて、最大震度が発生した地震における傾きと、最大震度が発生した地震の前の地震における傾きとの差をマップデータの1つとして採用することもあり得る。
この場合、例えば、図4を参照すると、最大震度が発生した地震No.2における傾きは8°である。また、最大震度が発生した地震No.2の前の地震No.1における傾きは0°である。したがって、この場合にマップデータとして抽出される傾き差は、8°となる。一方、ある別のガスメーター10に、例えば、地震No.1において2°の傾きが生じたとする。この場合、最大震度が発生した地震No.2における傾きが8°であったとすると、地震No.2に起因して生じた傾き量は、傾き差で表される6°である。したがって、図4を参照した例示と比較すると、地震No.2において、双方のガスメーター10が記憶した傾きが共に8°であったとしても、傾き差が8°となった家屋の方が、傾き差が6°となった家屋よりも強い地震力を受けた可能性がある。
したがって、上記のようなガスメーター10の傾き差をマップデータとして採用することで、管理センター80は、より細かな被害状況を反映させたマップを作成することができる場合もある。