砥石を指定速度で回転させようとすると、モータに最初に大きな電力を与える必要がある。所定の回転速度に達すると、モータの電力が下がる。電力が落ち着くには所定の時間がかかるため、その間砥石がワークに接触する瞬間を検出するための閾値を設定することができず、当該接触を検出するのに時間がかかる。また、非接触の状態であってもモータの電力が安定しないため、誤検知しやすい。
本願に開示される技術の目的は、砥石がワークに接触する瞬間を高精度に検出することが可能な、工作機械、工作機械による砥石とワークとの接触検出方法、及び、コンピュータプログラムを提供することにある。
本開示の第1態様に係る工作機械による砥石とワークとの接触検出方法は、工具回転軸周りに回転可能に砥石を保持する工具保持器を、ワークを保持するワーク保持器に対して、移動方向に相対的に移動させるように少なくとも1つのアクチュエータを制御する。工具保持器及びワーク保持器のうちの一方の保持器を、工具回転軸と交差し、且つ、移動方向と交差する制御軸に沿って移動させることが可能な、少なくとも1つのアクチュエータとは異なるモータが、一方の保持器が制御軸に沿う方向に静止するように制御される。モータの制御値の変化によって砥石とワークとの接触が検出される。好ましくは、モータはサーボモータである。さらに好ましくは、モータはACサーボモータである。
本開示の第2態様によれば、第1態様による接触検出方法は、制御軸が工具回転軸に対して垂直であることを特徴とする。
本開示の第3態様によれば、第1態様または第2態様によるによる接触検出方法は、制御軸が移動方向に延びる直線に対して垂直であることを特徴とする。
本開示の第4態様によれば、第1態様から第3態様による接触検出方法は、モータは、工具保持器を制御軸に沿って移動させるように構成され、少なくとも1つのアクチュエータは、制御軸に対して垂直な少なくとも1つの追加制御軸の夫々に沿って工具保持器を移動させるように構成される少なくとも1つの追加モータであることを特徴とする。
本開示の第5態様によれば、第1態様から第4態様による接触検出方法は、ワーク保持器がワーク回転軸周りに回転可能にワークを支持し、工具回転軸とワーク回転軸とが同一平面上に存在するとき、移動方向が同一平面に対して平行であり、工具回転軸とワーク回転軸とはねじれの位置にある線であるとき、移動方向が工具回転軸とワーク回転軸とに対して垂直な線に沿うことを特徴とする。
本開示の第6態様によれば、第1態様から第5態様による接触検出方法は、制御値が、モータへの電流指令値と、モータからの電流フィードバック値と、位置フィードバック値と、速度フィードバック値との少なくとも1つを含むことを特徴とする。位置フィードバック値は、モータの速度検出器から得られた回転速度を積分して得られるか、モータの角度検出器の出力値から得られるか、工具保持器またはワーク保持器の位置検出器から得られる。速度フィードバック値は、モータの速度検出器から得られるか、モータの角度検出器の出力値を変換して得られる。
本開示の第7態様によれば、第6態様による接触検出方法は、一定の時間幅あたりの電流指令値の中心傾向(central tendency)を表す値が予め定めた範囲から外れたときに、砥石とワークとの接触が生じたと判定することを特徴とする。中心傾向を表す値とは、統計的分布における数値グループの中心値をいい、例えば、平均値、中央値、最頻値を指す。好ましくは、砥石がワークに接触しない状態で、研削加工の際に砥石を回転する回転速度で回転させたときの一定の時間幅あたりの電流指令値の中心傾向を表す値に基づいて、当該範囲が定められる。
本開示の第8態様によれば、第6態様による接触検出方法は、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値の統計的ばらつき(statistical dispersion)を表す値があらかじめ定めた範囲から外れたときに、砥石とワークとの接触が生じたと判定することを特徴とする。統計的ばらつきを表す値とは、統計的分布の広がりの度合いを表し、例えば、分散、標準偏差、平均絶対偏差、平均偏差などを指す。好ましくは、砥石がワークに接触しない状態で、研削加工の際に砥石を回転する回転速度で回転させたときの一定の時間幅あたりの電流フィードバック値の統計的ばらつきを表す値に基づいて、当該範囲が定められる。
本開示の第9態様によれば、第6態様による接触検出方法は、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値の統計的ばらつきを表す値があらかじめ定めた範囲から外れたときに、砥石とワークとの接触が生じたと判定することを特徴とする。好ましくは、砥石がワークに接触しない状態で、研削加工の際に砥石を回転する回転速度で回転させたときの一定の時間幅あたりの位置フィードバック値の統計的ばらつきを表す値に基づいて、当該範囲が定められる。
本開示の第10態様によれば、第6態様による接触検出方法は、速度フィードバック値と、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値の統計的ばらつきを表す値とのうちの少なくとも1つの値があらかじめ定めた範囲から外れたときに、砥石とワークとの接触が生じたと判定することを特徴とする。好ましくは、砥石がワークに接触しない状態で、研削加工の際に砥石を回転する回転速度で回転させたときの当該少なくとも1つの値に基づいて、当該範囲が定められる。
本開示の第11態様によれば、第7態様による接触検出方法は、当該中心傾向を表す値が平均値と実効値とのうちの少なくとも1つの値によって表されることを特徴とする。
本開示の第12態様によれば、第8態様から第10態様のいずれかによる接触検出方法は、当該統計的ばらつきを表す値が標準偏差を含む少なくとも1つの値によって表されることを特徴とする。
本開示の第13態様によれば、第9態様または第10態様による接触検出方法は、当該統計的ばらつきを表す値が実効値を含む少なくとも1つの値によって表されることを特徴とする。
本開示の第14態様による工作機械は、第1態様から第13態様のいずれかの接触検出方法を実行する手段を備える。好ましくは、当該工作機械は、工具回転軸周りに回転可能に砥石を保持する工具保持器と、ワークを保持するワーク保持器と、工具保持器とワーク保持器との一方を、工具保持器とワーク保持器との他方に対して移動方向に移動させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、制御軸に沿って工具保持器またはワーク保持器を移動させるように構成されるモータと、少なくとも1つのアクチュエータを検出し、モータの制御値を監視して砥石とワークとの接触の有無を判定する電子回路とを備える。当該電子回路は、第1態様から第13態様のいずれかの接触検出方法を実行するように構成される。
本開示の第15態様によるコンピュータプログラムは、第1態様から第13態様のいずれかの接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える。
本開示の第16態様によるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、第15態様によるコンピュータプログラムを記憶する。
第1態様に係る接触検出方法、第1態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第1態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、大きな電力を与える必要のなく、電力が安定しやすい制御を実行するモータの制御値の変化によって砥石とワークとの接触を検出する。このため、砥石とワークとの接触を検知するための設定に時間を要せず、非接触時の信号が安定するため、高精度に接触を検出することができる。さらに、制御軸が工具回転軸と交差し、且つ、移動方向と交差するため、砥石とワークとの接触により生じる抵抗の制御軸方向の成分が大きくなる。このため、モータの制御値により当該接触を検出することができる。また、モータがサーボモータであるとき、フィードバック信号を制御値として使用することができ、接触を検出する別途のセンサを設けることなく、高精度に接触を検出することができる。さらに、ACモータを利用することによってモータ寿命を長くすることができる。
第2態様に係る接触検出方法、第2態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第2態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、制御軸が工具回転軸に対して垂直であるため、砥石とワークとの接触により生じる抵抗の制御軸方向の成分がさらに大きくなる。このため、さらに高精度に接触を検出することができる。
第3態様に係る接触検出方法、第3態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第3態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、制御軸が移動方向に延びる直線に対して垂直であるため、砥石とワークとの接触により生じる抵抗の制御軸方向の成分がさらに大きくなる。このため、さらに高精度に接触を検出することができる。
第4態様に係る接触検出方法、第4態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第4態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、一般的にワークに比べて慣性モーメントの小さい砥石の動作を制御するモータの制御値が接触の検出に利用される。このため、接触により生じる抵抗による制御値の変化が大きくなる。このため、さらに高精度に接触を検出することができる。
第5態様に係る接触検出方法、第5態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第5態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、ワークがワーク回転軸に対する回転面の形状を有し、砥石が工具回転軸に対する回転面の形状を有するとき、砥石がワークに対して最短距離となる方向でアプローチできる、所望の場所を研ぐことができる。
第6態様に係る接触検出方法、第6態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第6態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、砥石がワークに接触することによって変化する、モータへの電流指令値と、モータからの電流フィードバック値と、位置フィードバック値と、速度フィードバック値との少なくとも1つを制御値が含むため、高精度に接触を検出することができる。
砥石がワークと数μm程度微小に接触するときの接触状態における電流指令値の最大値・最小値は、砥石とワークとが接触しない非接触状態における電流指令値の最大値・最小値との差が出にくいため、閾値による検出は困難である。ただし、接触状態では、電流指令値が当該最大値または最小値の近くに偏る傾向があるため、一定の時間幅あたりの電流指令値の中心傾向を表す値に差が出やすい。第7態様に係る接触検出方法、第7態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第7態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、電流指令値のこのような性質を利用して、数μmなどの微小な接触を検出することができる。
砥石がワークと数μm程度微小に接触するときの接触状態における電流フィードバック値は、砥石とワークとが接触しない非接触状態における電流フィードバック値との差が出にくい、または、接触状態の前後の非接触状態において電流フィードバック値が変化することがあるため、閾値による検出が困難である。ただし、接触状態では一定の時間幅あたりの電流フィードバック値のばらつきが増加する傾向があるため、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値の統計的ばらつきを表す値に差が出やすい。第8態様に係る接触検出方法、第8態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第8態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、電流フィードバック値のこのような性質を利用して、数μmなどの微小な接触を検出することができる。
砥石がワークと数μm程度微小に接触するときの接触状態における位置フィードバック値の最大値・最小値は、砥石とワークとが接触しない非接触状態における位置フィードバック値の最大値・最小値との差が出にくいため、閾値による検出は困難である。ただし、接触状態では、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値のばらつきが増加する傾向があるため、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値の統計的ばらつきを表す値に差が出やすい。第9態様に係る接触検出方法、第9態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第9態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、位置フィードバック値のこのような性質を利用して、数μmなどの微小な接触を検出することができる。
速度フィードバック値は、砥石がワークと数μm程度微小に接触するときの接触状態であっても、砥石とワークとが接触しない非接触状態における速度フィードバック値の最大値・最小値に対して有意な差が存在する。これによって、接触状態では、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値のばらつきが増加する傾向があるため、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値の統計的ばらつきを表す値にも差が出やすい。第10態様に係る接触検出方法、第10態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第10態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、速度フィードバック値のこのような性質を利用して、数μmなどの微小な接触を検出することができる。
第11態様に係る接触検出方法、第11態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第11態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、一定の時間幅あたりの電流指令値の中心傾向を表す値の絶対値が電流指令値の統計的ばらつきの値よりもはるかに大きいため、一定の時間幅あたりの電流指令値の中心傾向と電流指令値の統計的ばらつきとの両方が加わった実効値も一定の時間幅あたりの電流指令値の中心傾向を表す値と同様に変化する。このため、多くのハードウェアでサポートされている平均値や実効値を利用して、数μmなどの微小な接触を検出することができる。
第12態様に係る接触検出方法、第12態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第12態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、多くのハードウェアでサポートされている標準偏差を利用するため実装が容易である。
第13態様に係る接触検出方法、第13態様の接触検出方法を実行する手段を備える第14態様の工作機械、第13態様の接触検出方法をコンピュータに実行させる指示を備える第15態様のコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記憶する第16態様の記憶媒体では、速度フィードバック値/位置フィードバック値の中心傾向を表す値の絶対値が0に近い値であるため、速度フィードバック値/位置フィードバック値の一定の時間幅あたりの中心傾向と、速度フィードバック値/位置フィードバック値の一定の時間幅あたりの統計的ばらつきとの両方が加わった実効値も、当該統計的ばらつきと同様に変化する。このため、多くのハードウェアでサポートされている実効値を利用しても、数μmなどの微小な接触を検出することができる。
本願に開示される技術によれば、砥石がワークに接触する瞬間を高精度に検出することができる。より具体的には、砥石がワークと数μm程度微小に接触するような微小な接触を検出することができる。
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
<実施形態>
<工作機械1の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る工作機械1の構成を示すブロック図である。工作機械1は、基台10、ワーク主軸台11、ワーク保持器12、キャリッジ13、サドル14、工具主軸台15、工具保持器16、第1モータ21、第2モータ22、第3モータ23、第4モータ24、第1ボールねじ31、第2ボールねじ32、及び、第3ボールねじ33を備える。基台10は、ワーク主軸台11、ワーク保持器12、キャリッジ13、サドル14、工具主軸台15、工具保持器16、第1モータ21、第2モータ22、第3モータ23、第4モータ24、第1ボールねじ31、第2ボールねじ32、及び、第3ボールねじ33を支持する。ここで、後述するワーク回転軸AXWに沿う軸をZ軸とし、Z軸に対して垂直で基台10の上面に沿う軸をY軸とし、Y軸とZ軸とに垂直な軸をX軸とする。
ワーク主軸台11は、ワーク回転軸AXW周りに回転可能にワーク保持器12を支持する。例えば、ワーク主軸台11には、ワーク回転軸AXW周りにワーク保持器12を回転させるように構成された、図示しないモータが取り付けられる。ワーク保持器12は、例えば、ワーク主軸である。ワーク保持器12は、ワーク回転軸AXW周りに回転可能にワークWを保持する。キャリッジ13は、第2ボールねじ32を介して第2モータ22に接続される。第2モータ22は、サドル14、工具主軸台15、及び、工具保持器16をY軸方向に移動させるように構成される。キャリッジ13は、第1モータ21を支持し、サドル14、工具主軸台15、及び、工具保持器16を摺動可能に支持する。サドル14は、第1ボールねじ31を介して第1モータ21に接続される。第1モータ21は、サドル14をX軸方向に移動させるように構成される。
サドル14は、第3モータ23を支持し、工具主軸台15及び工具保持器16をZ軸方向に摺動可能に支持する。第3モータ23は、工具主軸台15及び工具保持器16をZ軸方向に移動させるように構成される。工具主軸台15は、工具保持器16をB軸AXB周りに回転可能に支持する。第4モータ24は、B軸AXB周りに工具保持器16を回転させるように構成される。さらに、工具主軸台15には、工具回転軸AXT周りに工具保持器16を回転させるように構成された、図示しないモータが取り付けられる。工具保持器16は、例えば、工具主軸である。工具保持器16は、工具回転軸AXT周りに回転可能に砥石GSを保持する。
なお、ワーク主軸台11が工具主軸台15のようにキャリッジ13及びサドル14と同様の構造を含み、工作機械1は、ワーク主軸台11をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に駆動する第5モータ25、第6モータ26、及び、第7モータ27と、それらとワーク主軸台11とを接続する第5ボールねじ35、第6ボールねじ36、及び、第7ボールねじ37をさらに備えてもよい。以降の実施形態では、第1モータ21、第2モータ22、及び、第3モータ23、第4モータ24、第5モータ25、第6モータ26、及び、第7モータ27を総称して複数のモータ20と呼んでもよい。複数のモータ20の夫々は、好ましくはサーボモータである。また、複数のモータ20の夫々は、さらに好ましくはACサーボモータである。
また、第1モータ21、第2モータ22、第3モータ23、第5モータ25、第6モータ26、及び、第7モータ27の夫々が、工具保持器16またはワーク保持器12を制御軸に沿って移動させるように構成される。第1モータ21の制御軸及び第5モータ25の制御軸はX軸である。第2モータ22の制御軸及び第6モータ26の制御軸はY軸である。第3モータ23の制御軸及び第7モータ27の制御軸はZ軸である。
工作機械1は、数値制御装置5、入出力インタフェース6、サーボドライバ装置7、及び、モニタリング装置8をさらに備える。数値制御装置5は、複数のモータ20、ワーク保持器12、及び、工具保持器16の回転等を制御し、ワークWを所望の形状に加工するように構成される。入出力インタフェース6は、ボタンなどの入力装置と、ディスプレイなどの表示装置を含む。入出力インタフェース6は、好ましくは、タッチパネルディスプレイである。サーボドライバ装置7は、数値制御装置5からの指令値に基づき、モータ20に最適な電流もしくは電圧を出力する。モニタリング装置8は、モータ20のフィードバック制御で送信される信号を監視し、所定の条件を満たすときに数値制御装置5に信号を送信する。例えば、モニタリング装置8は、当該信号に基づいて砥石GSとワークWとの接触を判定し、その接触の有無を示す信号を数値制御装置5に送信する。数値制御装置5は、砥石GSとワークWとの接触があることを示した信号を受信すると、砥石GSとワークWとの相対的移動を停止し、砥石GS又はワークWの位置を予め定められた位置に戻す。
図2は、実施形態に係るモータ20の周辺回路の構成図である。数値制御装置5は、電子回路51とメモリ52とを含む。図2を参照すると、電子回路51は、例えば、ECUなどのプロセッサである。メモリ52は、ワークWを加工するための加工プログラム等を記憶するように構成される。電子回路51は、加工プログラムを実行して、モータ20、ワーク保持器12、及び、工具保持器16の回転等を制御する。モニタリング装置8は、ECUなどのハードウェアプロセッサである電子回路81とメモリ82とを含む。メモリ82は、接触を判定するロジックを記憶する。電子回路81は、当該ロジックを実行する。
さらに、図2を参照すると、図1に示す第1モータ21~第4モータ24には、それぞれ、速度検出器VD1~VD4及び位置検出器(角度検出器)PD1~PD4とのうちの少なくとも1つが付加されている。なお、図示していないが、サーボドライバ装置7は、第5モータ25、第6モータ26、及び、第7モータ27のそれぞれを制御するための速度検出器及び位置検出器(角度検出器)をさらに備えてもよい。以降の実施形態では、これらの速度検出器を総称して、速度検出器VDと呼ぶ。これらの位置検出器(角度検出器)を総称して、位置検出器(角度検出器)PDと呼ぶ。
速度検出器VDは、例えば、モータ20に接続されるインクリメンタル方式のエンコーダEである。図1では、第2モータ22に接続されるエンコーダE2を、速度検出器VD2として図示している。角度検出器PDは、例えば、モータ20に接続されるインクリメンタル方式のエンコーダEである。角度検出器PDで検出されるモータ20の回転角度は、エンコーダEの出力を積分することによって得られる。なお、エンコーダEをアブソリュート方式のエンコーダとして、エンコーダEの出力値を角度検出器PDの出力とし、出力値の変位を速度検出器VDの出力としてもよい。図1では、第2モータ22に接続されるエンコーダE2を、速度検出器PD2として図示している。位置検出器PDは、例えば、ワーク保持器12または工具保持器16の位置を計測するリニアスケールLである。図1では、キャリッジ13のY軸方向の位置を検出するリニアスケールL2を図示している。
図2を参照すると、サーボドライバ装置7は、第1モータ21、第2モータ22、第3モータ23、及び、第4モータ24のそれぞれを制御するための第1サーボドライバ71、第2サーボドライバ72、第3サーボドライバ73、及び、第4サーボドライバ74を含む。なお、図示していないが、サーボドライバ装置7は、第5モータ25、第6モータ26、及び、第7モータ27のそれぞれを制御するためのサーボドライバをさらに備えてもよい。第4モータ24にはリニアスケールに相当する位置検出器PDを備えないため、第4サーボドライバ74はリニアスケールからの情報を処理しない点を除き、上述するサーボドライバの基本的な機能は同じであり、サーボドライバ70と総称する。
モニタリング装置8は、数値制御装置5、サーボドライバ装置7、速度検出器VD、及び、位置検出器(角度検出器)PDと電気的に接続される。図3及び図4は、これらの信号の詳細を説明するための、モータ20の制御の制御ブロック図である。図3は、位置検出器(角度検出器)PDとしてエンコーダEを使用したときのシステム(セミクローズドループ方式)のフィードバック制御の制御ブロック図である。図4は、位置検出器PDとしてリニアスケールLを使用したときのシステム(フルクローズドループ方式)のフィードバック制御の制御ブロック図である。図3及び図4を参照すると、サーボドライバ70は、位置制御器70a、速度制御器70b、電流制御器70c、及び、電圧調整器70dを含む。
図3を参照すると、セミクローズドループ方式において位置制御を行う場合、数値制御装置5からの位置指令値θrと、エンコーダEの出力値を積分して得られる位置フィードバック値θcとの偏差eoが位置制御器70aへ入力される。位置制御器70aは、通常比例制御(P制御)を用いて速度指令値ωrを出力する。図4を参照すると、フルクローズドループ方式において位置制御を行う場合、数値制御装置5からの位置指令値Prと、リニアスケールLから得られる位置フィードバック値Pcとの偏差eoが位置制御器70aへ入力される。位置制御器70aは、通常比例制御(P制御)を用いて速度指令値ωrを出力する。ワーク保持器12または工具保持器16の速度を制御する速度制御を行うときは、速度指令値ωrが数値制御装置5から速度制御器70bへ入力される。
以降の処理は、セミクローズドループ方式であっても、フルクローズド方式であっても、速度制御であっても共通である。速度指令値ωrとエンコーダEから得られる速度フィードバック値ωcとの偏差euが速度制御器70bへ入力される。速度制御器70bは、通常比例積分制御(PI制御)を用いて電流指令値irを出力する。電流指令値irと電圧調整器70dの出力として得られる電流フィードバック値icとの偏差eiが電流制御器70cへ入力される。電流制御器70cは、通常比例積分制御(PI制御)を用いて電圧指令値Erを出力する。電圧調整器70dは、通常パワーアンプであり、電圧指令値Erに基づいてモータ20を制御するための駆動電流icをモータ20に出力する。
図2に戻り、モニタリング装置8は、数値制御装置5から出力される位置指令値θr、Prまたは速度指令値ωr、位置制御器70aから出力される速度指令値ωr、速度制御器70bから出力される電流指令値ir、電圧調整器70dから出力される電流フィードバック値ic、エンコーダEから出力される速度フィードバック値ωc、及び、エンコーダEから出力される値を積分して得られる位置フィードバック値θc(または、リニアスケールLから出力される位置フィードバック値Pc)を監視するように構成される。以降の実施形態では、モニタリング装置8が監視するこれらの値を制御値と呼ぶ。モニタリング装置8は、これらの値の平均、標準偏差、実効値などを演算するように構成される電子回路81を含み、これらの値もしくは演算された値が所定の条件を満たすときに信号を数値制御装置5に出力することが可能である。数値制御装置5は、所定の条件を定めるためのパラメータ(閾値)をモニタリング装置8のメモリ82に設定することが可能である。
図5~図9は、それぞれ、砥石GSをワークWに向けて移動させる方法の例を示す。図5~図9では、砥石GSがワークWよりも大きく示されているが、実際は、ワークWが砥石GSよりも大きいことが殆どである。図5は、工具回転軸AXTとワーク回転軸AXWとをZ軸に平行に向けて、砥石GSをX軸方向に移動させる例を示している。図6は、工具回転軸AXTをワーク回転軸AXWと同一平面上になるように、工具回転軸AXTをX軸に平行に向けて、ワーク回転軸AXWをZ軸に平行に向けて、砥石GSをZ軸方向に移動させる例を示している。図7は、砥石GSが円錐の形状を有するとき、円錐の側面がワークWの研削対象面と平行となるように工具回転軸AXTをワーク回転軸AXWと同一平面上になるように傾けてX軸に沿うように移動させる例を示している。図8は、工具回転軸AXTとワーク回転軸AXWとをZ軸に平行に向けて、砥石GSをZ軸方向に移動させる例を示している。図9は、工具回転軸AXTをX軸に平行に向けて、ワーク回転軸AXWをZ軸に平行に向けて、砥石GSをY軸方向に移動させる例を示している。
以降の説明において、図5~図9に座標軸以外の矢印は、砥石GSの移動方向MDを示す。図5~図8の例に示すように、工具回転軸AXTとワーク回転軸AXWとが同一平面上に存在するとき、移動方向MDは当該同一平面に対して平行である。図9の例に示すように、工具回転軸AXTとワーク回転軸AXWとはねじれの位置にある線であるとき、移動方向MDは工具回転軸AXTとワーク回転軸AXWとに対して垂直な線に沿う。また、これらの砥石GSの移動に関与するモータ20を、少なくとも1つのアクチュエータと呼ぶ。この砥石GSの移動に関与するモータ20を追加モータと呼称してもよい。図5の例では、第1モータ21が少なくとも1つのアクチュエータである。図6の例では、第3モータ23が少なくとも1つのアクチュエータである。図7の例では、第1モータ21と第3モータ23とが少なくとも1つのアクチュエータである。図8の例では、第3モータ23が少なくとも1つのアクチュエータである。図9の例では、第2モータ22が少なくとも1つのアクチュエータである。
なお、図5~図9の例において、砥石GSではなく、ワークWを移動させてもよい。特に、ワークWを移動させないと所望の面を研削できない場合、ワークWを移動させることが好ましい。このような場合、図5の例では、第5モータ25が少なくとも1つのアクチュエータである。図6の例では、第7モータ27が少なくとも1つのアクチュエータである。図7の例では、第5モータ25と第7モータ27とが少なくとも1つのアクチュエータである。図8の例では、第7モータ27が少なくとも1つのアクチュエータである。図9の例では、第6モータ26が少なくとも1つのアクチュエータである。少なくとも1つのアクチュエータの制御軸のことを追加制御軸と呼んでもよい。
本実施形態では、第1モータ21~第7モータ27のうち、少なくとも1つのアクチュエータとは異なるモータは、工具保持器16及びワーク保持器12のうちの一方の保持器がその制御軸に沿う方向に静止するように制御される。さらにそれらのモータのうち、その制御軸が砥石GSとワークWとの接触により生じる摩擦トルクの向きに対して垂直でないモータの制御値の変化に基づいて、砥石GSとワークWとの接触が検出される。具体的には、砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されるモータの制御軸は、工具回転軸AXTと交差し、且つ、移動方向MDと交差する。さらに好ましくは、砥石GSとワークWとの接触により生じる摩擦トルクの向きに実質的に平行な制御軸を有するモータが、砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることが好ましい。つまり、制御軸は、工具回転軸AXTに対して垂直であることが好ましい。制御軸は、移動方向MDに延びる直線に対して垂直であることが好ましい。
図5の例では、第2モータ22または第6モータ26が砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることが好ましい。図6の例では、第2モータ22または第6モータ26が砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることが好ましい。図7の例では、第2モータ22または第6モータ26が砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることが好ましい。図8の例では、第2モータ22または第6モータ26が砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることが好ましい。図9の例では、第3モータ23または第7モータ27が砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることが好ましい。
さらには、上述する砥石GSとワークWとの接触により生じる摩擦トルクの向きに対して垂直でない制御軸を有するモータのうち、砥石GSの動きを制御するモータが砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることがさらに好ましい。一般的には、砥石GSのイナーシャ(慣性モーメント)がワークWのイナーシャ(慣性モーメント)よりも小さいため、摩擦トルクにより生じる加速度が大きな値を示し、制御値が大きくなるからである。図5~図8の例では、第2モータ22が砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されることが好ましい。この場合、少なくとも1つのアクチュエータは、第2モータ22の制御軸に対して垂直な少なくとも1つの追加制御軸の夫々に沿って工具保持器16を移動させるように構成される少なくとも1つの追加モータである。図9の例では、第3モータ23が利用されることが好ましい。この場合、少なくとも1つのアクチュエータは、第3モータ23の制御軸に対して垂直な少なくとも1つの追加制御軸の夫々に沿って工具保持器16を移動させるように構成される少なくとも1つの追加モータである。ただし、砥石GSのイナーシャ(慣性モーメント)がワークWのイナーシャ(慣性モーメント)よりも大きい場合、ワークWの動きを制御するモータが砥石GSとワークWとの接触の検出に利用されてもよい。
図10~図25は、図中の期間Tcにおいて砥石GSとワークWとが数μm程度微小に接触した状態で停止するように、図5のように砥石GSを移動させるように第1モータ21を制御し、第2モータ22を所定の位置にて位置制御したときの第2モータ22の制御系の信号の変化を示した図の一例を示す。なお、第2モータ22は、セミクローズドループ方式によって制御される。フルクローズドループ方式において第2モータ22が制御される場合も、図10~25と概ね同様の性質の信号が検出される。また、第2モータが速度0となるように速度制御がされた場合、図10~図21と概ね同様の性質の信号が検出される。
具体的には、図10~13は、それぞれ、第2モータ22を位置制御したときの第2モータ22の電流指令値ir、電流指令値irの平均値、電流指令値irの標準偏差、電流指令値irの実効値の変化を示した例を示す。図14~17は、それぞれ、第2モータ22を位置制御したときの第2モータ22の電流フィードバック値ic、電流フィードバック値icの平均値、電流フィードバック値icの標準偏差、電流フィードバック値icの実効値の変化を示した例を示す。図18~21は、それぞれ、第2モータ22を位置制御したときの第2モータ22の速度フィードバック値ωc、速度フィードバック値ωcの平均値、速度フィードバック値ωcの標準偏差、速度フィードバック値ωcの実効値の変化を示した例を示す。図22~25は、それぞれ、第2モータ22を位置制御したときの第2モータ22の位置フィードバック値θc、位置フィードバック値θcの平均値、位置フィードバック値θcの標準偏差、位置フィードバック値θcの実効値の変化を示した例を示す。
これらの平均値、標準偏差、実効値は、該当時間の前後を含む一定の時間幅の各制御値の平均値、標準偏差、実効値である。つまり、図11、15、19、23における平均値は、一定の時間幅ごとの移動平均である。図12、16、20、24における標準偏差は、一定の時間幅ごとの標準偏差である。図13、17、21、25における実効値は、一定の時間幅ごとの実効値である。
図10を参照すると、砥石GSがワークWと数μm程度微小に接触するときの接触状態における電流指令値irの最大値・最小値は、砥石GSがワークWとが接触しない非接触状態における電流指令値irの最大値irMAX・最小値irMINとの差が出にくい。図10では、期間Tcの一部において電流指令値irがわずかに最大値irMAXを上回ったにすぎない。このため、電流指令値irをそのまま利用したとしても閾値による検出は困難である。電流指令値irの最大値irMAX・最小値irMINにノイズ等の影響を除くためのマージンMirを加えた範囲Rir[irMIN-Mir,irMAX+Mir]から接触時に電流指令値irが外れる可能性は小さいからである。
しかし、接触状態では、電流指令値irが当該最大値irMAXまたは最小値irMINの近くに偏る傾向があるため、一定の時間幅あたりの電流指令値irの中心傾向を表す値に差が出やすい。この一定の時間幅あたりの電流指令値irの中心傾向を表す値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の電流指令値irから求められる。図10では、接触状態において、電流指令値irは、最大値irMAXの近くに偏っている。このため、図11に示されるように、一定の時間幅あたりの電流指令値irの平均値は、非接触時の値に比べて増加している。このため、非接触状態における電流指令値irの一定の時間幅あたりの平均値の最大値irAVMAX、最小値irAVMINにマージンMirAVを加えた範囲RirAV[irAVMIN-MirAV,irAVMAX+MirAV]から電流指令値irの一定の時間幅あたりの平均値が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
一方、図10の拡大領域P、Qに示されるように、電流指令値irは、irMAX・irMINとの間でほぼ同じ周波数で振動し、且つ、主な振幅も大きく変化しないため、一定の時間幅あたりの電流指令値irの統計的ばらつきは大きく変化しない。このため、図12に示すように、電流指令値irの標準偏差は、接触状態と非接触状態で差が出にくい。つまり、電流指令値irの標準偏差の最大値irSDMAX・最小値irSDMINにノイズ等の影響を除くためのマージンMirSDを加えた範囲RirSD[irSDMIN-MirSD,irSDMAX+MirSD]から接触時に電流指令値irの標準偏差が外れる可能性は小さく、砥石GSがワークWとの接触の検出には利用することは困難である。
電流指令値irの実効値は、電流の瞬時値の二乗を1周期にわたって平均した値の平方根に等しいため、一定の時間幅あたりの電流指令値irの中心傾向と、電流指令値irの統計的ばらつきとの両方が加わった値である。ACサーボモータでは、静止させる場合であっても電流は発生するため、一定の時間幅あたりの電流指令値irの中心傾向を表す値の絶対値が、電流指令値irの統計的ばらつきの値よりもはるかに大きい。したがって、電流指令値irの実効値においては、電流指令値irの中心傾向の方が、電流指令値irの統計的ばらつきよりも大きく寄与する。したがって、図13のように、一定の時間幅あたりの電流指令値irの実効値が非接触時の値に比べて増加している。この一定の時間幅あたりの電流指令値irの実効値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の電流指令値irから求められる。このため、非接触状態における電流指令値irの一定の時間幅あたりの実効値の最大値irRMMAX、最小値irRMMINにマージンMirRMを加えた範囲RirRM[irRMMIN-MirRM,irRMMAX+MirRM]から電流指令値irの一定の時間幅あたりの実効値が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
図14を参照すると、砥石GSがワークWと数μm程度微小に接触するときの接触状態における電流フィードバック値icの最大値・最小値は、砥石GSがワークWとが接触しない非接触状態における電流フィードバック値icの最大値icMAX・最小値icMINとの差が出にくい。このため、電流フィードバック値icをそのまま利用したとしても閾値による検出は困難である。電流フィードバック値icの最大値icMAX・最小値icMINにノイズ等の影響を除くためのマージンMicを加えた範囲[icMIN-Mic,icMAX+Mic]から接触時に電流フィードバック値icが外れる可能性は小さいからである。
また、図15に示されるように、電流フィードバック値icの平均値は、接触の前後で変化する。このように、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの中心傾向を表す値は、接触の前後で変化するため、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの中心傾向を表す値を利用して接触を判定することは困難である。
一方、図14の拡大領域R、Sに示されるように、電流フィードバック値icは、接触時において振幅が大きい変動が増加するため、電流フィードバック値icの統計的ばらつき)が増加する。この一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの統計的ばらつきは、該当時間を含む当該時間幅における複数の電流フィードバック値icから求められる。このため、図16に示すように、電流フィードバック値icの標準偏差は、接触状態と非接触状態で差が出やすい。したがって、非接触状態における電流フィードバック値icの一定の時間幅あたりの標準偏差の最大値icSDMAX、最小値icSDMINにマージンMicSDを加えた範囲RicSD[icSDMIN-MicSD,icSDMAX+MicSD]から電流フィードバック値icの一定の時間幅あたりの標準偏差が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
さらに、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの中心傾向を表す値の絶対値が、電流フィードバック値icの統計的ばらつきの値よりもはるかに大きいため、電流フィードバック値icの実効値においては、電流フィードバック値icの中心傾向の方が、電流フィードバック値icの統計的ばらつきよりも大きく寄与する。したがって、図17のように、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの実効値が接触時の値と非接触時の値が区別できるように変化されていない。この一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの実効値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の電流フィードバック値icから求められる。したがって、実効値を利用して接触を判定することは困難である。
図18を参照すると、砥石GSがワークWと数μm程度微小に接触するときの接触状態における速度フィードバック値ωcは、砥石GSがワークWとが接触しない非接触状態における速度フィードバック値ωcの最大値ωcMAX・最小値ωcMINとの差が大きい。したがって、図18のように、非接触状態における速度フィードバック値ωcの最大値ωcMAX、最小値ωcMINにマージンMωcを加えた範囲Rωc[ωcMIN-Mωc,ωcMAX+Mωc]から速度フィードバック値ωcが外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
速度フィードバック値ωcの中心傾向を表す値を算出する基準となる時間幅と速度フィードバック値ωcの変動周波数との相違がある場合、当該時間幅において中心傾向を表す値が当該最大値ωcMAXまたは最小値ωcMINの近くに偏った値で算出される場合がある。例えば、当該時間幅において上述する最大値ωcMAXを超える速度フィードバック値ωcの数が当該時間幅において上述する最小値ωcMINを下回る速度フィードバック値ωcの数よりも大幅に上回るような場合が考えられる。このような場合、図19に示すように、接触の有無によって一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの中心傾向を表す値に差が出やすい。この一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの中心傾向を表す値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の速度フィードバック値ωcから求められる。このとき、図19に示すように、非接触状態における速度フィードバック値ωcの一定の時間幅あたりの平均値の最大値ωcAVMAX、最小値ωcAVMINにマージンMωcAVを加えた範囲RωcAV[ωcAVMIN-MωcAV,ωcAVMAX+MωcAV]から速度フィードバック値ωcの一定の時間幅あたりの平均値が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。なお、砥石GSとワークWとの接触時間、材質等によっては、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの中心傾向を表す値が接触の有無によって差が生じない場合もある。この場合、速度フィードバック値ωcの中心傾向を表す値によって接触を検出することは困難である。
また、図18に示されるように、速度フィードバック値ωcは、接触時において振幅が大きい変動が増加するため、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの統計的ばらつきが増加する。この一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの統計的ばらつきは、該当時間を含む当該時間幅における複数の速度フィードバック値ωcから求められる。このため、図20に示すように、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの標準偏差は、接触状態と非接触状態で差が出やすい。したがって、非接触状態における速度フィードバック値ωcの一定の時間幅あたりの標準偏差の最大値ωcSDMAX、最小値ωcSDMINにマージンMωcSDを加えた範囲RωcSD[ωcSDMIN-MωcSD,ωcSDMAX+MωcSD]から速度フィードバック値ωcの一定の時間幅あたりの標準偏差が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
さらに、速度フィードバック値ωcの中心傾向を表す値の絶対値が0に近い値であり、速度フィードバック値ωcの統計的ばらつきの値のほうがはるかに大きい。このため、速度フィードバック値ωcの実効値においては、速度フィードバック値ωcの統計的ばらつきの方が、速度フィードバック値ωcの中心傾向を表す値よりも大きく寄与する。したがって、図21のように、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの実効値が非接触時の値に比べて増加している。この一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの実効値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の速度フィードバック値ωcから求められる。このため、非接触状態における速度フィードバック値ωcの一定の時間幅あたりの実効値の最大値ωcRMMAX、最小値ωcRMMINにマージンMωcRMを加えた範囲RωcRM[ωcRMMIN-MωcRM,ωcRMMAX+MωcRM]から速度フィードバック値ωcの一定の時間幅あたりの実効値が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
図22を参照すると、砥石GSがワークWと数μm程度微小に接触するときの接触状態における位置フィードバック値θcの最大値・最小値は、砥石GSがワークWとが接触しない非接触状態における位置フィードバック値θcの最大値θcMAX・最小値θcMINとの差が出にくい。このため、位置フィードバック値θcをそのまま利用したとしても閾値による検出は困難である。位置フィードバック値θcの最大値θcMAX・最小値θcMINにノイズ等の影響を除くためのマージンMθcを加えた範囲Rθc[θcMIN-Mθc,θcMAX+Mθc]から接触時に位置フィードバック値θcが外れる可能性は小さいからである。
位置フィードバック値θcの中心傾向を表す値の時間幅と位置フィードバック値θcの変動周波数との相違がある場合、当該時間幅において中心傾向を表す値が当該最大値θcMAXまたは最小値θcMINの近くに偏った値で算出される場合がある。例えば、当該時間幅において上述する最大値θcMAXを超える位置フィードバック値θcの数が当該時間幅において上述する最小値θcMINを下回る位置フィードバック値θcの数よりも大幅に上回るような場合が考えられる。このような場合、図23に示すように、接触の有無によって、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値θcの中心傾向を表す値に差が出やすい。この一定の時間幅あたりの位置フィードバック値θcの中心傾向を表す値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の位置フィードバック値θcから求められる。このとき、図23に示すように、非接触状態における位置フィードバック値θcの一定の時間幅あたりの平均値の最大値θcAVMAX、最小値θcAVMINにマージンMθcAVを加えた範囲RθcAV[θcAVMIN-MθcAV,θcAVMAX+MθcAV]から位置フィードバック値θcの一定の時間幅あたりの平均値が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。なお、砥石GSとワークWとの接触時間、材質等によっては、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値θcの中心傾向を表す値が接触の有無によって差が生じない場合もある。この場合、位置フィードバック値θcの中心傾向を表す値によって接触を検出することは困難である。
一方、図22に示されるように、位置フィードバック値θcは、接触時において振幅が大きい変動が増加するため、位置フィードバック値θcの統計的ばらつきが増加する。このため、図24に示すように、位置フィードバック値θcの標準偏差は、接触状態と非接触状態で差が出やすい。このため、図24のように、非接触状態における位置フィードバック値θcの一定の時間幅あたりの標準偏差の最大値θcSDMAX、最小値θcSDMINにマージンMθcSDを加えた範囲RθcSD[θcSDMIN-MθcSD,θcSDMAX+MθcSD]から位置フィードバック値θcの一定の時間幅あたりの標準偏差が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
また、位置フィードバック値θcの中心傾向を表す値の絶対値が0に近い値である。このような場合、位置フィードバック値θcの統計的ばらつきの値のほうがはるかに大きい。このため、位置フィードバック値θcの実効値においては、位置フィードバック値θcの統計的ばらつきの方が、位置フィードバック値θcの中心傾向を表す値よりも大きく寄与する。したがって、図25のように、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値θcの実効値が非接触時の値に比べて増加している。この一定の時間幅あたりの位置フィードバック値θcの実効値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の位置フィードバック値θcから求められる。このため、非接触状態における位置フィードバック値θcの一定の時間幅あたりの実効値の最大値θcRMMAX、最小値θcRMMINにマージンMθcRMを加えた範囲RθcRM[θcRMMIN-MθcRM,θcRMMAX+MθcRM]から位置フィードバック値θcの一定の時間幅あたりの実効値が外れたときに、砥石GSとワークWとが接触したと判定することができる。
上述するモニタリング装置8は、上記のようにして得られた範囲RirAV、RirRM、RicSD、Rωc、RωcAV、RωcSD、RωcRM、RθcAV、RθcSD、RθcRMを規定するための閾値等が入出力インタフェース6と数値制御装置5とを介して入力されると、モニタリング装置8は、電流指令値ir、電流フィードバック値ic、速度フィードバック値ωc、及び、位置フィードバック値θcを検出して、これらの一定の時間幅あたりの平均値、標準偏差、実効値を計算する。この一定の時間幅あたりの電流指令値ir、電流フィードバック値ic、速度フィードバック値ωc、及び、位置フィードバック値θcの平均値、標準偏差、実効値を表す値は、該当時間を含む当該時間幅における複数の電流指令値ir、電流フィードバック値ic、速度フィードバック値ωc、及び、位置フィードバック値θcからそれぞれ求められる。
<接触検出方法>
次に、本実施形態に係る砥石GSとワークWとの接触検出方法について図26を利用して詳細に説明する。図26は、本実施形態に係る砥石GSとワークWとの接触検出方法の処理の流れを示すフローチャートである。ステップS1において、当該方法は、少なくとも1つのアクチュエータとは異なるモータを、工具保持器16及びワーク保持器12のうちの一方の保持器が制御軸に沿う方向に静止するように制御する。図5~図8の例では、当該モータは、例えば、第2モータ22である。図9の例では、当該モータは、例えば、第3モータ23である。この制御は、工具保持器16及びワーク保持器12のうちの一方の保持器を特定の位置に制御する位置制御であってもよく、工具保持器16及びワーク保持器12のうちの一方の保持器の(回転)速度を0とする速度制御であってもよい。
ステップS2において、当該方法は、工具保持器を、ワーク保持器に対して、移動方向MDに沿って相対的に移動させるように少なくとも1つのアクチュエータを制御する。図5の例では、第1モータ21または第5モータ25が少なくとも1つのアクチュエータである。図6の例では、第3モータ23または第7モータ27が少なくとも1つのアクチュエータである。図7の例では、第1モータ21と第3モータ23、あるいは、第5モータ25と第7モータ27とが少なくとも1つのアクチュエータである。図8の例では、第3モータ23または第7モータ27が少なくとも1つのアクチュエータである。図9の例では、第2モータ22または第6モータ26が少なくとも1つのアクチュエータである。
ステップS3において、当該方法は、当該モータの制御値の変化によって、砥石GSとワークWとの接触を検出する。制御値は、当該モータへの電流指令値irと、当該モータからの電流フィードバック値icと、位置フィードバック値θcと、速度フィードバック値ωcとの少なくとも1つを含む。具体的には、当該方法は、一定の時間幅あたりの当該モータへの電流指令値irの中心傾向を表す値が予め定めた範囲を外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。さらに具体的には、当該方法は、一定の時間幅あたりの当該モータへの電流指令値irの平均値と実効値とのうちの少なくとも1つの値が予め定めた範囲RirAV、RirRMを外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。
あるいは、当該方法は、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの統計的ばらつきを表す値があらかじめ定めた範囲を外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。さらに具体的には、当該方法は、一定の時間幅あたりの電流フィードバック値icの標準偏差があらかじめ定めた範囲RicSDを外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。
あるいは、当該方法は、位置制御が行われる場合、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値θcの統計的ばらつきがあらかじめ定めた範囲を外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。さらに具体的には、当該方法は、一定の時間幅あたりの位置フィードバック値θcの標準偏差と実効値とのうちの少なくとも1つの値があらかじめ定めた範囲RθcSD、RθcRMを外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。これは、フルクローズドループ方式でも同様である。
あるいは、当該方法は、速度フィードバック値ωcと、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの統計的ばらつきを表す値とのうちの少なくとも1つの値があらかじめ定めた範囲を外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。さらに具体的には、当該方法は、速度フィードバック値ωcと、一定の時間幅あたりの速度フィードバック値ωcの標準偏差と実効値とのうちの少なくとも1つの値があらかじめ定めた範囲Rωc、RωcSD、RωcRMを外れたときに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定する。
ステップS4において、当該方法は、接触が検出された際の位置フィードバック値θc(Pc)をメモリ52に記憶する。この値は、後で研削加工を行う際に利用される。最後に、ステップS5において、当該方法は、工具保持器16又はワーク保持器12をもとの位置に戻す。もとの位置とは、例えば、加工プログラム中の原点位置である。なお、ステップS4またはS5が省略されてもよい。
以上に述べた接触検出方法は、数値制御装置5のメモリ52に記憶されたプログラムのみの実行によって実現されてもよい。この場合、モニタリング装置8は、電流指令値ir、電流フィードバック値ic、位置フィードバック値θc、速度フィードバック値ωcを数値制御装置5に転送して、数値制御装置5は、それらの値の一定の時間幅あたりの中心傾向を表す値、それらの値の一定の時間幅あたりの統計的ばらつきを表す値を算出し、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定してもよい。
あるいは、数値制御装置5のメモリ52に記憶されたプログラムの実行によって、砥石GSとワークWとの接触の判定のみがなされてもよい。この場合、モニタリング装置8は、電流指令値ir、電流フィードバック値ic、位置フィードバック値θc、速度フィードバック値ωcの一定の時間幅あたりの中心傾向を表す値、又は、それらの値の一定の時間幅あたりの統計的ばらつきを表す値を算出する。さらには、砥石GSとワークWとの接触の判定までモニタリング装置8のロジックによって実行され、ステップS4、S5の処理のみが数値制御装置5のメモリ52に記憶されたプログラムによって実行されてもよい。
上述の数値制御装置5のプログラム、モニタリング装置8のロジックの一部または全ての機能が専用のプロセッサや集積回路によって実現されてもよい。当該プログラムまたはロジックは、メモリ52、82にとどまらず、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROMおよび磁気ディスク等のディスク、SDカード、USBメモリ、外付けハードディスクなど数値制御装置5、モニタリング装置8から取り外し可能で、数値制御装置5、モニタリング装置8に読出可能な記憶媒体に記録されたものであってもよい。なお、数値制御装置5、モニタリング装置8は、コンピュータの一例である。
<本実施形態における接触検出方法の特徴及び効果>
本実施形態に係る工作機械1、本実施形態に係る砥石GSとワークWとの接触検出方法は、大きな電力を与える必要がなく、電力が安定しやすい制御を実行するモータの制御値の変化によって砥石GSとワークWとの接触を検出する。このため、砥石GSとワークWとの接触を検知するための設定に時間を要せず、非接触時の信号が安定する。さらに、制御軸が工具回転軸AXTと交差し、且つ、移動方向MDと交差する、さらに具体的には、制御軸が工具回転軸AXTと直交し、且つ、移動方向MDと直交する。このため、砥石GSとワークWとの接触により生じる抵抗の制御軸方向の成分が大きくなる。したがって、モータの制御値により、高精度に砥石GSとワークWとの接触を検出することができる。出願人は上述の方法で実験した結果、砥石GSがワークWに3μm程度研削した微接触の状態で砥石GSとワークWとの接触を検出できることを確認した。本接触検出方法によって、研削加工のための高精度な座標の位置決めを短時間で行うことができる。
<変形例>
図11~図25の結果は、位置制御器70a、速度制御器70b、電流制御器70c、電圧調整器70dで採用される制御方法、使用されるゲインに応じて変化する。したがって、サーボドライバ70の制御方法や使用されるゲインによって、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定するための閾値は変化してもよい。さらには、図11~図25の結果は、電流指令値ir、電流フィードバック値ic、位置フィードバック値θc、及び、速度フィードバック値ωcの分解能、あるいは、中心傾向を表す値と統計的ばらつきを表す値とを算出する基準となる時間幅に応じても変化する。この時間幅は、サーボドライバ70のサンプリング間隔にも依存する。したがって、サーボドライバ70の性能向上によって当該分解能やサンプリング間隔が小さくなると、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定するための閾値は変化してもよい。
上述の実施形態では、当該モータへの電流指令値irの中心傾向を表す値、当該モータからの電流フィードバック値icの統計的ばらつきを表す値、位置フィードバック値θcの統計的ばらつきを表す値、及び、速度フィードバック値ωcの統計的ばらつきを表す値のうちの1つの値をもとに、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定しているが、複数の値の組み合わせを利用して砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定してもよい。例えば、当該複数の値のうち、一定数以上の値が上述のように定めた範囲を超えた場合、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定してもよい。または、当該複数の値を重みづけ加算した値があらかじめ定めた範囲を超えた場合、砥石GSとワークWとの接触が生じたと判定してもよい。
上述の実施形態において少なくとも1つのアクチュエータは、モータ以外のアクチュエータであってもよい。例えば、少なくとも1つのアクチュエータは、油圧ピストンであってもよい。
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、実施形態に特段の説明がない限りにおいて、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。