以下、図面を参照しながら、本発明の自己相関器および受信機に係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
図1A、図1Bは、本発明に係るシンボルタイミング生成器が用いられる受信機側の構成の一例を示す図である。
送電線路から受信されたRF信号は復調器11で復調され、復調された信号は所要のサンプリング速度となるように1/dデシメーション部12で1/dにデシメーションされる。デシメーションされた信号はナイキストフィルタ(ロールオフフィルタ)部13で帯域制限される。そして、送信信号から回り込んでくるエコー信号をエコーキャンセル部14で除去し、受信信号r(t)の要素のみを抽出する。
次に、送信側から送信されたトレーニング信号から受信信号のシンボルタイミングを生成するため、受信信号r(t)をk倍インタポレーション部15でk倍、例えば128倍のオーバーサンプリングでインタポレーションを行う。k倍にオーバーサンプリングされた受信データri(t)は、シンボルデータ生成部16と相関器21に出力される。相関器21により受信信号の相関計測値Cad(t)が出力され、相関ピーク波形探索部22で相関ピーク値が探索され、相関ピーク位置算出部23で探索された相関ピーク位置から受信シンボルタイミングのサンプリング位置Pt(t0)が算出される。
シンボルタイミング位置の補正値制御部24では、送信シンボルタイミングと受信シンボルタイミングが同期するよう、後述するように受信シンボルタイミングを補正し、シンボルタイミング生成部25では、補正されたシンボルタイミングでシンボルタイミング信号を生成する。そして、シンボルデータ生成部16では、生成されたシンボルタイミング信号に基づいてインタポレーションされた受信データri(t)を打ち抜き、シンボルレートに対応したシンボルデータが抽出される。相関器21、相関ピーク波形探索部22、相関ピーク位置算出部23、シンボルタイミング位置の補正値制御部24は、DPLLを構成している。
シンボルデータ生成部16から出力されたシンボルデータには周波数オフセットが存在する。周波数オフセットは、送受信機に実装されている発振器の周波数が、製作精度のばらつきによって送受信間で最大±30ppmほどの周波数誤差が生じる事象であり、この周波数オフセットによって、復調器11の出力では位相回転が生じる。このため、周波数オフセット推定・補正部17で周波数オフセットが補正される。周波数オフセット推定・補正部17からの信号rs(t)は、等化器18へ入力される。
ディジタル電力線搬送を用いた通信システムでは、送電線分岐箇所などから生じる反射波が遅延波となり、これがディジタル信号の符号間干渉となって伝送品質を劣化させる。等化器18はこの遅延波を除去し、符号間干渉を補償する。等化器18ではシンボルデータから遅延波の要素が除去され、送信されたシンボルデータを推定した等化器出力信号y(t)が出力される。等化器出力信号y(t)は判定器19に入力され、判定器19は等化器出力信号y(t)の値を複素平面における領域判定を行って、基準シンボル点の値として判定した判定信号d(t)を出力する。判定器19からの判定信号d(t)はデマッピング部20においてデマッピングされ、データ信号rd(t)として出力されて復号処理が行われる。ここで、ディジタル変調では一定の周期(シンボル周期)でシンボルの伝送が行われ、信号は離散的に変化するため、IQ座標では特定の点になる。この点をシンボル点と呼び、シンボル点の配置がコンスタレーションとなる。そして、コンスタレーションにおける、本来あるべき理想的なシンボル点の位置は、使用する変調方式(4PSK、64QAMなど)で定まっており、周波数オフセットやノイズ等が存在しない本来あるべき理想的なシンボル点が基準シンボル点となる。
図1A、図1Bにおいて、測定相関ピーク正規化応答信号記憶部31、測定相関ピーク特性データ平均化部32、基準相関ピークデータ保持部33、相関ピーク特性データ比較部34、および、一次サンプリング位置補正量算出部35は、本実施形態における一次推定・補正部を構成し、等化器18、判定器19、誤差量算出部41、二乗誤差算出部42、1ブロックシンボル平均化部43、1ブロック前シンボル平均値保持部44、平均値比較部45、および、二次サンプリング位置補正量算出部46は、本実施形態における二次推定・補正部を構成する。一次推定・補正部および二次推定・補正部の詳細については後述する。
図2は、広帯域ディジタル電力線搬送用のブロック伝送データの構成例を示す図である。送電線用広帯域ディジタル電力線搬送においては、シングルキャリアブロック伝送を適用するため、図2に示すようにデータシンボルの先頭と後方に既知のシンボルからなるトレーニングシーケンス(以下、「TS」ともいう。)が配置される。そして、本実施形態では、受信シンボルタイミングを高精度に生成するため、式(1)で示すZadoff-Chu系列をTSとして用いている。図2に示すTSのシンボル数N
tsは、例えば64であり、データシンボルのデータシンボル数N
dは、例えば960である。また、TSおよびデータシンボルはDFT(Discrete Fourier Transform)ブロックである。
式(1)において、NtsはTSのシンボル数であり、Zadoff-Chu系列の系列長(整数)として与えられる。mは任意の整数である。定数mは、PAPR(Peak to Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)を小さくするために、系列長に等しいシンボル数Ntsと互いに素となるように選択される。
相関器21としては、自己相関器あるいは相互相関器のいずれを用いてもよい。自己相関器を用いる場合、自己相関器の自己相関値出力Ca(t)は、kをトレーニング信号のオーバーサンプリング数、Mを乗算器の数、aをZadoff-Chu系列において偶対称となる最小距離のシンボル数、ri(t)を、時間インデックスtにおける前記受信データの値(複素数)、ri(t)
*を、rd(t)の複素共役数の値とした場合、式(2)から求められる。式(2)は、Zadoff-Chu系列を偶対称で自己相関を測定する構成となっている。さらに、式(3)に示すように、自己相関値出力Ca(t)と所定のNシンボル数遅延した自己相関値出力Ca(t-N)を加算することによって、大きな相関ピーク値の相関関数出力値Cad(t)として得ることができる。
また、相互相関器を用いる場合は、例えば、Zadoff-Chu系列のTSのシンボル数N
tsと等しい乗算器と、オーバーサンプリング数kによるサンプリング時間間隔と同一の遅延時間となるN
ts-1個の遅延器と加算器を用いる。そして、k倍インタポレーション部15からの受信データri(t)をN
ts-1個直列接続した遅延器に入力し、入力信号と各遅延器の出力信号を、それぞれ参照信号となる複素共役のZadoff-Chu系列信号(Chu
*)と乗算し、N
ts個の乗算結果を加算することによって、相互相関器の相関関数出力値C(t)を得ることができる。相互相関器の相関関数出力値C(t)は式(4)で表せる。
以下の説明では、k倍インタポレーション部15のオーバーサンプリング数kを128とし、相関器21は、Zadoff-Chu系列を偶対称で自己相関を測定する自己相関器を用いた場合について説明する。
図3は、相関器のピークタイミングとシンボルタイミングの関係を示す図である。図3(A)はパルス幅tpの送信シンボルのクロックを示し、図3(B)はパルス幅tprの受信シンボルのクロックを示す。また、図3(C)は、送信シンボルクロックと受信シンボルクロックのクロック誤差をオーバーサンプリングのサンプリング数で示している。図3(A)、図3(B)に示すように、通常、送信シンボルクロックと受信シンボルクロックとは、周波数オフセットや遅延波が存在するため同期がとれておらず、受信側のクロックタイミングの先頭を送信側のクロックタイミングに合わせる必要がある。その際に、受信機側の相関器の検出ピークタイミングを利用して送信側のシンボルの立ち上がりを把握し、受信シンボルクロックのタイミングを補正することによって、受信シンボルクロックのタイミングを送信シンボルクロックのタイミングに合わせている。
図3(D)は、遅延波の影響の小さい場合の相関器のピークタイミングを示しており、この場合、相関器の検出ピークタイミングは送信シンボルクロックの立ち上がりに一致している。図3(E)、図3(F)は、それぞれ遅延波の影響が大きい場合の相関器のピークタイミングを示しており、図3(E)は前方に相関器の検出ピークタイミングがシフトしている場合を示し、図3(F)は後方に相関器の検出ピークタイミングがシフトしている場合を示している。
図1Aに示す相関ピーク位置算出部23では、相関器21の相関計測値Cad(t)のピーク波形からサンプリング位置Pt(t0)が求めているが、このサンプリング位置Pt(t0)はシンボルのクロック単位で求まる。このため、図3(E)、図3(F)に示すように、遅延波の影響がある場合は、受信シンボルクロックのタイミングを送信シンボルクロックのタイミングに補正する必要がある。本実施形態では、後述するように、受信シンボルのタイミングクロックをk倍インタポレーション部15でオーバーサンプリングし、オーバーサンプリングしたサンプリング周波数の単位で細かく補正することにより、精度の高いシンボルタイミングを生成するものである。
図4は、真のピーク位置を示す基準相関特性に対する測定相関データの関係を説明するための図であり、横軸は真のピーク位置のサンプル点を0とした場合の相対サンプル数を、縦軸は正規化した相関値を示している。また、図4(A)は、真のピーク位置よりも後方に相関器の検出ピークが現れる場合を示しており、図4(B)は、真のピーク位置よりも前方に相関器の検出ピークが現れる場合を示している。図4において、実線で示す基準相関特性は、遅延波が存在せず周波数オフセットが生じていない伝送路を仮定したときの、相関器の相関値が最大となる検出位置の相関値で正規化した相関関数を示しており、基準信号となる。真のピーク位置は、遅延波が存在せず周波数オフセットが生じていない伝送路を仮定したときに、相関値1が得られる位置となる。
本実施形態では、基準となる相関値データと測定した相関値データをそれぞれ正規化し、相関値が第1の所定の値となるタイミング位置から相関値がピーク相関値1となるタイミング位置までのサンプリング数と、相関値がピーク相関値1となるタイミング位置から相関値が第2の所定の値となるタイミング位置までのサンプリング数を、それぞれ比較することによって、基準となる相関値データに対する測定した相関値データのずれを補正している。第1、第2の所定の値は、保有するメモリの大きさによって定めることができるが、以下、第1の所定の値を0.5、第2の所定の値を0.9とした場合について説明する。式(3)で表される自己相関器における、基準相関特性として、相関値0.5以上となるタイミング位置からピーク相関値1が得られるタイミング位置までのサンプリング数sraは、128倍オーバーサンプリング相当で33サンプリングとなり、ピーク相関値1が得られるタイミング位置から相関値0.9以下となるタイミング位置までのサンプリング数srbは、128倍オーバーサンプリング相当で12サンプリングとなる。
一方、図4(A)に示すように、真のピーク位置よりも後方に相関器の測定相関ピークが現れる場合、測定された相関値0.5以上となるタイミング位置からピーク相関値1が得られるタイミング位置までのサンプリング数sta、および、測定されたピーク相関値1となるタイミング位置から相関値0.9が得られるタイミング位置までのサンプリング数stbは、それぞれ基準相関特性におけるサンプリング数sra、および、サンプリング数srbよりも多くなる傾向がある。また、図4(B)に示すように、真のピーク位置よりも前方に相関器の測定相関ピークが現れる場合、測定された相関値0.5以上となるタイミング位置からピーク相関値1が得られるタイミング位置までのサンプリング数sta、および、測定されたピーク相関値1となるタイミング位置から相関値0.9が得られるタイミング位置までのサンプリング数stbは、それぞれ基準相関特性におけるサンプリング数sra、および、サンプリング数srbよりも少なくなる傾向がある。本実施形態では、この傾向を活用することによって、サンプリング位置オフセット量の一次推定と補正を行っている。
(一次推定と補正)
次に、シンボルタイミング生成器における一次推定と補正の方法について説明する。図5A、図5Bは、本発明に係るシンボルタイミング生成器における一次推定と補正のフローの一例を示す図である。また、図6は、測定相関特性と基準相関特性との関係を説明するための図であり、図7は、測定相関特性と基準相関特性との他の関係を説明するための図である。以下、図1Aも参照しながら説明する。
まず、相関器21はk倍(128倍)オーバーサンプリングされた受信信号の相関関数の特性の測定を行う(ステップS11)。相関器21からの受信信号の相関計測値Cad(t)が出力され、相関ピーク波形探索部22で相関ピーク値が探索される。測定相関ピーク正規化応答信号記憶部31では、相関関数の正規化が行われるとともに(ステップS12)、測定されたピーク時の相関関数データが記憶される。
n番目のブロックで測定されたピーク時の相関関数データは、ベクトル表示でSt(n)=[St(0), …,St(sta+stb),…,St(sta+stb+mg)]であり、最大値を1として正規化し、測定相関ピーク特性データ平均化部32で、n番目からn+m番目までのブロックによる相関値データが平均化される(ステップS13)。ここで、staは、先述したように、測定された相関値0.5以上となるタイミング位置からピーク相関値1が得られるタイミング位置までのサンプリング数で、stbはピーク相関値1となるタイミング位置から相関値0.9以下になるタイミング位置までのサンプリング数である。また、mgはマージンサンプリング数である。なお、測定相関ピーク正規化応答信号記憶部31が記憶する相関関数データとして、受信信号の全ての相関関数データを記憶した場合、必要となるメモリ容量が大きくなるため、ピーク相関値1の前後の(sta+stb+mg)個のデータを記憶している。
また、測定相関ピーク特性データ平均化部32では、n番目からn+m番目までのブロックによる相関値データを平均化しているが、これは、1つのブロックの相関値データからサンプリング位置のオフセット量を求めるよりも、複数のブロックのデータからサンプリング位置のオフセット量を求める方が、各ブロックのデータごとのノイズ等によるばらつきの影響を受けにくくなるためである。
なお、上記処理に代えてn番目のブロックからn+m番目のブロックに亘って測定されたピーク時の相関関数データを加算し、得られた合計データから相関値0.5と0.9のサンプリング位置からサンプリング数を算出する方法を採用してもよい。
n番目のブロックからn+m番目のブロックまで平均化された、もしくは加算されたピーク時の相関関数データは、ベクトル表示でSt
-(n)=[St
-(0), …,St
-(sta+stb),…,St
-(sta+stb+mg)]であり、相関ピーク特性データ比較部34は、測定した相関関数データに基づく0.5以上となるタイミング位置からピーク相関値1となるタイミング位置までのサンプリング数sta
-と、基準相関ピークデータ保持部33に予め記憶されている基準値のサンプリング数sraを比較する(ステップS14)。なお、本明細書において、右上付きのバー(-)を有する記号は、平均値を表すものとする。例えば、St-(n)は、St(n)の平均値を表す。また、図面において、平均値は上付きのバー(-)を有する記号を用いている。なお、以降の説明においては、測定値によるサンプリング数は平均値であるとして説明する。なお、相関ピーク特性データ比較部34は、本発明の比較部に相当する。
基準相関ピークデータ保持部33には、基準相関特性として、相関値0.5以上となるタイミング位置からピーク相関値1が得られるタイミング位置までのサンプリング数sra、ピーク相関値1となるタイミング位置から相関値0.9以下となるタイミング位置までのサンプリング数srb、および、後述する相関値0.9以上となるタイミング位置からピーク相関値1となるタイミング位置までのサンプリング数srcが、予め記憶、保持されている。基準相関ピークデータ保持部33は、本発明の記憶部に相当する。また、サンプリング数sra、サンプリング数srb、および、サンプリング数srcは、本発明の基準サンプリング数に相当する。
まず、測定値によるサンプリング数sta
-と、基準値のサンプリング数sraを比較し(ステップS15)、測定値のサンプリング数sta
-が基準値のサンプリング数sraより少なく、両者の差se(=sta
--sra)がマイナスの値を示した場合(ステップS15で「YES」の場合)、図6(A)または図6(D)に示すように、真の送信シンボルタイミング位置より前方に測定ピーク位置が検出されたと判断し、真の相関ピークのポジションは後方にあると判断する(ステップS16)。また、ステップS15で「NO」の場合、ステップS19に移り、測定値のサンプリング数sta
-が基準値のサンプリング数sraより多く、差seがプラスの値を示した場合(ステップS19で「YES」の場合)、図6(B)または図6(C)に示すように、後方に測定ピーク位置が検出されたと判断し、真の相関ピークのポジションは前方にあると判断する(ステップS20)。
相関ピーク特性データ比較部34は、測定値のサンプリング数sta
-と基準値のサンプリング数sraの差seに「-1」を乗算した値を補正値efとして出力する。例えば、図6(A)に示すように、差se<0の場合、誤差量は-seとなり、真のピーク位置は、測定相関特性のピーク位置よりも差seに「-1」を乗算した値efだけ移動させた位置近傍にあると推定できる。同様に、図6(B)に示すように、se>0の場合、誤差量は+seとなり、真のピーク位置は測定相関特性のピーク位置よりも差seに「-1」を乗算した値efだけ移動させた位置近傍にあると推定できる。
次に、相関ピーク特性データ比較部34は、平均化した相関値データにおいてピーク相関値1となるタイミング位置から相関値0.9以下となるタイミング位置までのサンプリング数stb
-と、基準値のサンプリング数srbとを比較し、その差erを算出する。
一次サンプリング位置補正量算出部35は、一次補正量ecとして、差se<0の場合は、式(5)に示す値を出力し、差se>0の場合は、式(6)に示す値を出力する。
式(5)、式(6)に示すように、差erは符号によらず、se<0の場合は、補正量としてerの絶対値をプラスし、se>0の場合は、補正量としてerの絶対値をマイナスしている。式(5)、式(6)において、k1およびk2は補正係数であり、k1=2.2、k2=1.0程度を用いる。なお、係数k1およびk2の値は、実機による試験で決定することができる。また、一次補正量ecが実数の場合は、四捨五入を行って整数値に変更する。
よって、測定した相関のピーク位置が真のシンボルタイミング位置より前方、すなわち、真のポジションが後方と判断された場合(ステップS16)、式(5)に基づく一次補正量ecを求め(ステップS17)、平均化された相関ピークのサンプリング位置Pt(t0)から、+ecに相当するサンプリング数だけタイミング位置を補正すれば良い。これにより、一次推定のシンボルタイミング点はPt(t0+ec)として決定される(ステップS18)。また、測定ピーク点が真のシンボルタイミング位置より後方、すなわち、真のポジションが後方と判断された場合(ステップS20)、式(6)に基づく一次補正量ecを求め(ステップS21)、平均化された相関ピークのサンプリング位置Pt(t0)から、+ecに相当するサンプリング数だけタイミング位置(マイナス値)を補正すれば良い。これにより、一次推定のシンボルタイミング位置はPt(t0+ec)として決定される(ステップS22)。
なお、サンプリング数sraとサンプリング数sta
-とに差がなく補正値efが0の場合は、基準相関特性における相関器の応答特性が相関値0.9以上となるタイミング位置からピーク相関値1となるタイミング位置までのサンプリング数src(128倍オーバーサンプリング相当で13サンプリング)と、測定相関ピークデータSt-の相関値が0.9以上となるタイミング位置からピーク相関値1となるタイミング位置までのサンプリング数stc
-とを比較する(ステップS23)。
測定値によるサンプリング数stc
-と、基準値のサンプリング数srcを比較し、測定値によるサンプリング数stc
-が基準値のサンプリング数srcより少なく、差sgがマイナスの値を示した場合(ステップS23で「YES」の場合)、図7(A)に示すように、真の送信シンボルタイミング位置より前方に測定ピーク位置が検出されたと判断し、真の相関ピークのポジションは後方にあると判断する(ステップS24)。
また、ステップS23で「NO」の場合はステップS27に移り、測定値のサンプリング数stc
-が基準値のサンプリング数srcより多く、差sgがプラスの値を示した場合(ステップS27で「YES」の場合)、図7(B)に示すように、真の送信シンボルタイミング位置より後方に測定ピーク位置が検出されたと判断し、真の相関ピークのポジションは前方にあると判断する(ステップS28)。
真のポジションが後方にあると判断した場合(ステップS24)、補正値ef=0とし、平均化した相関値データにおいてピーク相関値1となるタイミング位置から相関値0.9以下となるタイミング位置までのサンプリング数stb
-と基準値のサンプリング数srbとの差erの値を用いて、一次補正量ecを式(5)より算出する(ステップS25)。この場合、補正値ef=0であるから、一次補正量ecは+k2erとなる。これにより、一次推定のシンボルタイミング位置はPt(t0+ec)として決定される(ステップS26)。また、真のポジションが前方にあると判断した場合(ステップS28)、補正値ef=0とし、一次補正量ecを式(6)より算出する(ステップS29)。この場合、一次補正量ecは-k2erとなる。これにより、一次推定のシンボルタイミング位置はPt(t0+ec)として決定される(ステップS30)。
上記のように、図1Aに示す一次サンプリング位置補正量算出部35から算出された一次補正量ecは、サンプリング位置補正部36で、後述する二次推定に基づく二次補正量tc(n)と合算されて、シンボルタイミング位置の補正値制御部24に出力される。なお、一次サンプリング位置補正量算出部35は、本発明の第1の算出部に相当する。また、サンプリング数sta
-、サンプリング数stb
-、および、サンプリング数stc
-が、本発明の測定サンプリング数に相当する。
図5Bに戻り、補正値efが0かつ差erが0の場合(ステップS27で「NO」の場合)、一次補正量ecは0となり、一次補正は行わない(ステップS31)。この場合、真のシンボルタイミング位置の方向が推定できていないため、乱数により「1」または「0」を発生させ(ステップS32)、乱数発生値rnが「1」かどうかを判断し(ステップS33)、「1」であれば、真のピーク位置が後方にあると仮定し(ステップS34)、「0」であれば、前方に真のピーク位置が存在すると仮定し(ステップS36)、以降の二次推定の処理を行う。なお、ステップS35、ステップS37では、一次推定のシンボルタイミング位置はPt(t0+ec)として決定されるが、一次補正量ecは0であるため、一次補正は実質的に行われない。
図8は、複数(20パターン)の異なる伝送路において、16タップの自己相関器を用いたときに、一次補正の前後におけるシンボルタイミングの真のポジションに対する誤差の度数分布についてシミュレーションを行った結果を示している。図8の上側に示す三角形のマークは、上記の一次補正を行わない場合の結果を示しており、図8の下側に示すひし形のマークは、上記の一次補正を行った場合を示している。また、横軸の0の位置が真の送信タイミング位置を示している。一次補正を行わない場合、真のタイミング位置の前後にシンボルタイミングの位置が広がっているが、一次補正を行た場合は、真の送信タイミング位置に対して、前後でオーバーサンプリング数の単位でサンプル数4以内にシンボルタイミングの位置が収まっていることが分かる。
図9は、SNRに対するBER特性を示す図である。図9において、例えば、タイミングエラー=1/64のグラフは、本実施形態では受信信号に対して128倍のオーバーサンプリングで行っているため、サンプリング数で2サンプルの誤差がある場合を示している。タイミングエラーが0の場合は、SNRが大きくなるにしたがって、BERは小さくなる傾向を示すが、例えば、タイミングエラーが1/32の場合で、シンボルタイミングが4サンプルの誤差を有する場合は、SNRが大きくなった場合でも、BERは大きくは下がらないことが分かる。これは、後述する等化器18の出力と判定器19の出力との二乗誤差が大きくなることに起因している。そして、図8から、一次補正によって、シンボルタイミングが真のポジションに対して4サンプル以内に収まるものの、所望のSNRを維持するためには、さらに、補正を行うことが望ましい。
(二次推定と補正)
一次補正量ecが得られると、次に二次推定と補正の処理を行う。図1A、図1Bを参照し、一次サンプリング位置補正量算出部35から一次補正量ecが算出されると、シンボルタイミング位置の補正値制御部24は、一次補正量ecに基づいて、シンボルタイミング位置を補正し、サンプリング位置Pt(t0+ec)を出力する。シンボルタイミング生成部25では、補正されたシンボルタイミングでシンボルタイミング信号を生成する。そして、シンボルデータ生成部16では、生成されたシンボルタイミング信号に基づいてインタポレーションされた受信データri(t)を打ち抜き、シンボルレートに対応したシンボルデータが抽出される。
広帯域ディジタル電力線搬送用のブロック伝送データでは、ディジタル信号は、例えば、64QAMによって送信される。出力されたシンボルデータは周波数オフセットが存在するので、周波数オフセット推定・補正部17で周波数オフセットが補正され、周波数オフセットが補正された信号rs(t)が等化器18に出力される。等化器18はシンボルデータから遅延波の要素が除去され、送信されたシンボルデータを推定した等化器出力信号y(t)が出力される。等化器18からの等化器出力信号y(t)は、判定器19に入力される。判定器19は、入力信号の複素平面における領域判定を行って判定結果を判定信号d(t)として出力する。判定器19から判定信号d(t)は、デマッピング部20でデマッピングされ、データ信号rd(t)が、図示しないデコーダ部に出力されて復号処理が行われる。
次に、シンボルタイミング生成器における二次推定と補正の方法について説明する。図10A、図10Bは、本発明に係るシンボルタイミング生成器における二次推定と補正のフローの一例を示す図である。本実施形態では、受信機に実装している等化器18の等化器出力信号y(t)と、判定器19で判定された判定信号d(t)との誤差量を二乗したデータを、1ブロックのデータシンボル数Ndで平均化したデータを用いてシンボルタイミングの二次推定と補正を行っている。
まず、ステップS51の二次補正の開始にあたって、誤差量算出部41で、等化器18の等化器出力信号y(t)と判定器19からの判定信号d(t)との誤差er(t)が算出される。誤差er(t)は二乗誤差算出部42で二乗され、パワー値としての次元を有する二乗誤差量era(t)が、二乗誤差算出部42から出力される。
二乗誤差量er
a(t)は1シンボルごとに出力されるので、1ブロックシンボル平均化部43は、式(7)に示すように、1ブロックのデータシンボルとなるN
dシンボル(960シンボル)で平均化を行う(ステップS52)。平均化データは、二乗誤差量平均値er
a
-(n)として出力される。
二次補正では、一次推定の結果として得られた、真のサンプリング位置に対する測定相関特性のピーク位置が前方あるいは後方にあるかという情報に基づいて、一次補正量ecを補正する。具体的には、二次補正では、初めに一次推定した一次補正量ecに対して、二次補正量tc(n)のサンプリング量の補正を行う。二次補正では、基本となるサンプリング数の補正量が予め設定されており、補正量tsとしている。本実施形態では、例えば、補正量ts=2(サンプリング数)とする。
二次補正では、最初に、一次補正量ecが0より大きいかどうかを判別し(ステップS53)、一次補正量ecが0より大きい場合は(ステップS53で「YES」の場合は)、二次補正量tc(n)として補正量ts(=2)が設定される(ステップS57)。なお、一次補正量ecは整数値であるため、一次補正量ecが0より大きい場合は1以上の値をとる。また、ステップS53で、一次補正量ecが0より大きくない場合は、ステップS54に移り、一次補正量ecが0に等しいかどうか判別される。一次補正量ecが0でない場合は、ステップS56に移り、補正量tsに(-1)を掛けられ(ステップS56)、二次補正量tc(n)として負の補正量ts(=-2)が設定される(ステップS57)。また、ステップS54において、一次補正量ecが0の場合は、乱数発生値rnが0であるかどうかを判別し(ステップS55)、乱数発生値rn=0の場合は、二次補正量tc(n)としての補正量tsを加算(+ts)し、rn=1の場合は二次補正量tc(n)としての補正量tsを減算(-ts)している。
サンプリング位置補正部36では、一次サンプリング位置補正量算出部35からの一次補正量ecと二次サンプリング位置補正量算出部46からの二次補正値tc(n)を合算し、二次補正された補正量ec+tc(n)をシンボルタイミング位置の補正値制御部24へ出力する(ステップS58)。なお、二次サンプリング位置補正量算出部46は、本発明の第2の算出部に相当する。
このように、二次補正では、まず、一次推定において、一次補正量ecが1以上の場合は、真のサンプル位置が測定した相関ピーク位置より後方にあると判断されるため、一次補正量ecに二次補正量tc(n)としての補正量tsを加算(+ts)している。一方、一次補正量ecが0未満の場合は真のサンプル位置が測定した相関ピーク位置より前方にあると判断されるため、一次補正量ecに二次補正量tc(n)として補正量tsを減算(-ts)している。
シンボルタイミング位置の補正値制御部24は、二次補正された補正量ec+tc(n)に基づいて、シンボルタイミング位置を補正する。この二次補正によって、シンボルタイミング点は、Pt{t0+ec+tc(n)}となる。
次いで、最初の二次補正を行った補正後の二乗誤差量平均値era
-(n)を求め(ステップS59)、最初の二次補正後の二乗誤差量平均値era
-(n)と、二次補正前(1ブロック前)の二乗誤差量平均値era
-(n-1)とを比較する。1ブロック前シンボル平均値保持部44は、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)を記録しており、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)と現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)とが、平均値比較部45で比較される。平均値比較部45からは比較値erc(n)が出力される。
次に、二次サンプリング位置補正量算出部46は、ステップS60に示すように、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)と現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)との差の絶対値|erc(n)|を算出する。そして、絶対値|erc(n)|が二乗誤差量の増減有無を判断する閾値Cthより小さい場合(ステップS60で「YES」の場合)、二乗誤差量に変動が生じていないと判断し、今回の二次補正量tc(n)を前回の二次補正量tc(n-1)から補正量ts/2減算した値とする(ステップS61)。これにより、比較値erc(n)の絶対値|erc(n)|が閾値Cth以上より小さい場合は、補正量tsの半分だけ(1サンプリング)、サンプリング位置が補正前のサンプリング位置の方向に来る値としている。そして、補正量tc(n)+ecを新たに修正し(ステップS62)、補正処理を終了する(ステップS63)。
ステップS60で、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)と現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)との差の絶対値|erc(n)|が、閾値Cth以上の差がある場合(「NO」の場合)、ステップS64に移り、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)の大きさと1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)とを比較する(ステップS64)。そして、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)の方が大きい場合(「YES」の場合)、補正量tsの符号を反転させ(ステップS65)、今回の二次補正量tc(n)を前回の二次補正量tc(n-1)から例えば補正量2tsを加算した値とする(ステップS66)。そして、補正量tc(n)+ecを新たに修正し(ステップS67)、修正後の二乗誤差量平均値era
-(n)を求める(ステップS68)。
これにより、1回目(初期)の二次補正で行ったシンボルタイミング位置の補正によって、二乗誤差量平均値era
-(n)が増大した場合は、2回目の二次補正では、1回目の二次補正で行ったシンボルタイミング位置の補正とは反対方向の位置に、シンボルタイミング位置を移動させる処理を行うことになる。
次に、補正量2tsに基づいて補正された、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)と2ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-2)との差の絶対値|erc(n)|を所定の閾値Cthと比較する(ステップS69)。そして、その差が所定の閾値Cthより小さい場合(「YES」の場合)、今回の二次補正量tc(n)を前回の二次補正量tc(n-1)から例えば補正量ts/2減算した値とする(ステップS70)。これにより、2回の二次補正によって最初の二乗誤差量平均値era
-(n-2)との差が小さくなった場合は、補正量tsの半分だけ(1サンプリング)、2回目の二次補正のサンプリング位置の補正とはサンプリング位置の補正が反対方向になるように補正している。そして、補正量tc(n)+ecを新たに修正し(ステップS71)、補正処理を終了する(ステップS72)。
ステップS69で、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)と2ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-2)との差の絶対値|erc(n)|が所定の閾値Cth以上の場合(「NO」の場合)、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)の大きさと2ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-2)とを比較する(ステップS73)。そして、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)の方が大きい場合(「YES」の場合)、二次補正量tc(n)を0とし(ステップS74)、補正量tc(n)+ecを新たに修正し(ステップS75)、補正処理を終了する(ステップS76)。これにより、実質的に、一次推定により求めた一次補正量ecのみによって、サンプリング位置の補正が行われる。
ステップS64で、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)の大きさが1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)より大きくない場合(「NO」の場合)、および、ステップS73で、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)の大きさが2ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-2)より大きくない場合、図10Bに示すステップS77に移る。ステップS77では、今回の二次補正量tc(n)を前回の二次補正量tc(n-1)から例えば補正量tsを加算した値とする。そして、補正量tc(n)+ecを新たに修正し(ステップS78)、修正後の二乗誤差量平均値era
-(n)を求める(ステップS79)。
次に、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)と現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)との差の絶対値|erc(n)|が所定の閾値Cthより小さいかどうかを判別し(ステップS80)、小さい場合(「YES」の場合)は、今回の二次補正量tc(n)を前回の二次補正量tc(n-1)から例えば補正量ts/2減算した値とする(ステップS81)。これにより、補正量tsの補正後の比較値erc(n)の絶対値|erc(n)|が閾値Cth以上より小さい場合は、補正量tsの半分だけ(1サンプリング)、サンプリング位置が補正前のサンプリング位置の方向に来るように補正している。そして、補正量tc(n)+ecを新たに修正し(ステップS82)、補正処理を終了する(ステップS83)。
ステップS80で、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)と現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)との差の絶対値|erc(n)|が所定の閾値Cthより小さくない場合(「NO」の場合)、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)と現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)との大きさを比較する(ステップS84)。そして、現在のブロックで得られた二乗誤差量平均値era
-(n)の方が大きい場合(「YES」の場合)、今回の二次補正量tc(n)を前回の二次補正量tc(n-1)と同じにする(ステップS85)。その後、補正量tc(n)+ecを修正し(ステップS86)、補正処理を終了する(ステップS87)。また、ステップS84で、1ブロック前の二乗誤差量平均値era
-(n-1)が大きい場合(「NO」の場合)、ステップS77に戻り、以降の処理を繰り返す。