以下、図面に基づいて、本願の開示するラマン光増幅器及びラマン光増幅方法の実施例を詳細に説明する。尚、各実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
図1は、実施例1のラマン光増幅器1の一例を示す説明図である。図1に示すラマン光増幅器1は、増幅媒体となる伝送光ファイバ2と接続し、伝送光ファイバ2を伝送する信号光を増幅して他の伝送光ファイバに出力する。ラマン光増幅器1は、供給部10と、光モニタ部20と、制御部30とを有する。供給部10は、伝送光ファイバ2に対してラマン増幅用の励起光を供給する。光モニタ部20は、WDM信号光の信号光パワーとラマン効果によるASS光パワーとをモニタする。制御部30は、ラマン光増幅器1全体を制御する。制御部30は、伝送光ファイバ2に供給する励起光の励起光パワーと、光モニタ部20がモニタした信号光パワー及びASS光パワーとを含む光パワーを取得し、励起光パワーとASS光パワーとを関連付けたモデル式を決定する。更に、制御部30は、励起光パワーに応じて伝送光ファイバ2で生じるASS光パワーを算出する。
供給部10は、第1の生成部100と、第2の生成部110と、光合波器120と、WDMカプラ130とを有する。第1の生成部100は、WDM信号光の第1の波長帯域にラマン利得のピークを含み、第1の波長帯域のラマン増幅を担う第1の励起光を生成する。尚、第1の波長帯域は、例えば、C帯の波長帯域であって既存帯域とする。第2の生成部110は、WDM信号光の第2の波長帯域にラマン利得のピークを含み、第2の波長帯域のラマン増幅を担う第2の励起光を生成する。尚、第2の波長帯域は、例えば、L帯の波長帯域であって、運用中の既存帯域に追加する増設帯域とする。光合波器120は、第1の生成部100からの第1の合成励起光L1及び第2の生成部110からの第2の合成励起光L2を合波して合成励起光L12を出力する。WDMカプラ130は、合成励起光L12を増幅媒体となる伝送光ファイバ2に出力すると共に、伝送光ファイバ2から入力される第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1及び第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2を光モニタ部20に出力する。
第1の生成部100は、m台の励起光源101A~101mと、第1の光合波器102とを有する。各励起光源101A~101mは、異なる波長の第1の励起光を第1の光合波器102に出力する。第1の光合波器102は、各励起光源101A~101mから出力される第1の励起光を合波して第1の合成励起光L1を生成し、第1の合成励起光L1を光合波器120に出力する。第2の生成部110は、n台の励起光源111A~111nと、第2の光合波器112とを有する。各励起光源111A~111nは、異なる第2の励起光を第2の光合波器112に出力する。第2の光合波器112は、各励起光源111A~111nから出力される第2の励起光を合波して第2の合成励起光L2を生成し、第2の合成励起光L2を光合波器120に出力する。尚、説明の便宜上、第1の生成部100及び第2の生成部110は別体としたが、第1の生成部100及び第2の生成部110が一体としても良く、適宜変更可能である。
光モニタ部20は、WDMフィルタ200と、第1の光モニタ部210Aとを有する。WDMフィルタ200は、既存帯域である第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1と、増設帯域である第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2とに分波する。第1の光モニタ部210Aは、WDMフィルタ200で分波された第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1の光パワーの一部を分岐してモニタする。第1の光モニタ部210Aは、第1の光分波器211Aと、第1の受光素子212Aとを有する。第1の光分波器211Aは、WDMフィルタ200から出力される第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1及び第1のASS光を含む第1の光パワーSA1の一部を分岐する。第1の受光素子212Aは、第1の光分波器211Aから出力された第1の光パワーSA1をモニタする素子である。
図2は、実施例1のラマン光増幅器1内の光モニタ部20の代替例を示す説明図である。光モニタ部20は、図1の構成に限定されるものではなく、例えば、図2に示すように、WDMフィルタ200及び第1の光モニタ部210Aの代わりに、光分波器250と、WDMフィルタ260と、第1の受光素子212Aとで構成しても良い。光分波器250は、供給部10から後段に出力される第1の波長帯域及び第2の波長帯域の第1及び第2のWDM信号光の一部を分岐する。WDMフィルタ260は、光分波器250から出力されたWDM信号光から第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1と第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2とに分波し、分波された第1のWDM信号光S1を第1の受光素子212Aに出力する。第1の受光素子212Aは、第1のWDM信号光S1と第1のASS光とを含む第1の光パワーSA1をモニタすることになる。
制御部30は、決定部300と、波長差算出部310と、メモリ320と、演算部330と、比較演算部340と、励起光制御部350とを有する。決定部300は、例えば、第1の生成部100又は第2の生成部110が伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーと発生するASS光パワーとを関連付けるモデル式を決定する。波長差算出部310は、WDM信号光の波長帯域の両端波長と第1の生成部100又は第2の生成部110の励起光波長との波長差を算出する。メモリ320は、励起光パワー及びASS光パワーを関連付けるモデル式を格納する。演算部330は、メモリ320に格納されたモデル式と励起光パワーとを用いて、WDM信号光の波長帯域に生じるASS光パワーを算出する。
比較演算部340は、演算部330で算出したASS光パワーと目標WDM信号光パワーとの和である光パワー和と、光モニタ部20でモニタした実際のWDM信号光と実際のASS光とを含む実際の合計光パワー(光パワーモニタ値)とを比較する。比較演算部340は、光パワー和と実際の合計光パワー(光パワーモニタ値)とが一致するように励起光パワーの制御信号を生成する。励起光制御部350は、比較演算部340からの制御信号に応じて励起光源101又は111の励起光の光パワーを調整する。励起光制御部350は、伝送光ファイバ2に供給する励起光の励起光パワーを演算部330に出力する。
メモリ320は、第1のメモリ320Aと、第2のメモリ320Bと、波長特性メモリ321とを有する。第1のメモリ320Aは、例えば、第1のASS光パワーA11を算出するための第1のモデル式を格納する。尚、第1のASS光パワーA11は、第1の合成励起光L1で第1の波長帯域に発生するASS光パワーである。第2のメモリ320Bは、例えば、第2のASS光パワーA12を算出するための第2のモデル式を格納する。尚、第2のASS光パワーA12は、第2の合成励起光L2で第1の波長帯域に発生するASS光パワーである。波長特性メモリ321は、励起光波長に対する、後述するASS光パワーの波長特性を格納する。
制御部30は、例えば、ソフトウェア処理で実行され、ソフトウェアが搭載されるCPU(Central Processing Unit)等で実現する。ASS光パワーの演算に係わるモデル式が格納されるメモリ320は、CPUの内部RAM(Random Access Memory)、又はCPU外部のDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の外部メモリ等で構成しても良い。
図3は、実施例1の制御部30の機能構成の一例を示す説明図である。図3に示す決定部300は、第1の決定部300Aと、第2の決定部300Bとを有する。第1の決定部300Aは、例えば、第1の生成部100が伝送光ファイバ2に供給する第1の合成励起光L1で第1の波長帯域に発生する第1のASS光パワーA11を算出するための第1のモデル式を決定する。第2の決定部300Bは、第2の生成部110が伝送光ファイバ2に供給する第2の合成励起光L2で第1の波長帯域に発生する第2のASS光パワーA12を算出するための第2のモデル式を決定する。
波長差算出部310は、第1の波長差算出部310Aと、第2の波長差算出部310Bとを有する。第1の波長差算出部310Aは、例えば、第1の波長帯域の両端波長λ11及びλ12と、第1の生成部100内の励起光源101i(i=A~m)の励起光波長との第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)を励起光波長毎に算出する。第2の波長差算出部310Bは、第1の波長帯域の両端波長λ11及びλ12と、第2の生成部110内の励起光源111j(j=1~n)の励起光波長との第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)を励起光波長毎に算出する。尚、波長差算出部310が算出する波長差は、第1の波長帯域の両端の周波数と励起光の周波数との周波数差としても良く、適宜変更可能である。
第1の決定部300Aは、光モニタ部20内の第1の受光素子212Aにて第1の波長帯域の第1の光パワーSA1をモニタし、そのモニタ結果を取得する。尚、第1の光パワーSA1は、第1のWDM信号光パワーS1及び第1のASS光パワーを含む。第1の決定部300Aは、例えば、WDMシステムに対して第1の波長帯域を初期導入する運用開始前の準備段階において、第1の合成励起光L1を伝送光ファイバ2に供給することで第1の波長帯域に発生する第1のASS光パワーA11を測定する。第1の決定部300Aは、第1の合成励起光L1の励起光パワーと、測定結果の第1のASS光パワーA11と、第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)とを用いて、第1のASS光パワーA11の第1のモデル式を決定する。第1の決定部300Aは、決定した第1のASS光パワーA11の第1のモデル式を第1のメモリ320Aに格納する。
第2の決定部300Bは、第2の合成励起光L2の励起光パワーと、第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)とを用いて、第2のASS光パワーA12の第2のモデル式を決定する。第2の決定部300Bは、決定した第2のASS光パワーの第2のモデル式を第2のメモリ320Bに格納する。
演算部330は、第1の演算部330Aと、第2の演算部330Bとを有する。第1の演算部330Aは、第1のメモリ320Aに格納された第1のモデル式と、第1の合成励起光L1の励起光パワーとを用いて、第1のASS光パワーA11を算出する。第2の演算部330Bは、第2のメモリ320Bに格納された第2のモデル式と、第2の合成励起光L2の励起光パワーとを用いて、第2のASS光パワーA12を算出する。
比較演算部340は、第1の比較演算部340Aを有する。第1の比較演算部340Aは、第1の合成励起光L1及び第2の合成励起光L2で第1の波長帯域に生じる第1及び第2のASS光パワーA11及びA12を合計した第1の合計ASS光パワーA1を算出する。第1の比較演算部340Aは、第1の合計ASS光パワーA1と、ラマン増幅後のWDM信号の第1の目標信号光パワーT1との和で光パワー和を算出する。第1の比較演算部340Aは、光パワー和と、第1の光モニタ部210Aでモニタした第1の波長帯域の第1の光パワーSA1とを比較する。第1の比較演算部340Aは、光パワー和と第1の光パワーSA1とが一致するように合成励起光L1又はL2の励起光パワーを制御すべく、第1の生成部100及び第2の生成部110の制御信号を生成する。
励起光制御部350は、第1の励起光制御部350Aと、第2の励起光制御部350Bとを有する。第1の励起光制御部350Aは、第1の比較演算部340Aからの制御信号に基づき、第1の生成部100内の各励起光源101A~101mの励起光パワーを設定する。第2の励起光制御部350Bは、第1の比較演算部340Aからの制御信号に基づき、第2の生成部110内の励起光源111A~111nの励起光パワーを設定する。第1の励起光制御部350Aは、各励起光源101A~101mが伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーL1A~L1mを第1の演算部330Aに出力する。第2の励起光制御部350Bは、各励起光源111A~111nが伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーL2A~L2nを第2の演算部330Bに出力する。
次に第1の決定部300Aの詳細について説明する。第1の決定部300Aは、算出した第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)と、第1の合成励起光L1の励起光パワーと、測定された第1のASS光パワーA11とを用いて、第1のASS光パワーA11を算出する第1のモデル式を決定する。
図4は、第1の合成励起光L1で第1の波長帯域に発生する第1のASS光パワーA11の波長特性の一例を示す説明図である。第1のASS光パワーA11は、図4に示すように、各励起光源101A~101mの第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mで生じる第1のASS光パワーA11A~A11mの合計で定まる。
図5は、第1の合成励起光L1で第1の波長帯域に発生する第1のASS光パワーA11の波長特性の相対比の一例を示す説明図である。相対比は、図5に示すように第1のASS光パワーA11のピーク波長でのASS光パワーを「1」と定義した場合、励起光波長L1iとの波長差に応じたASS光パワー比である。ラマン増幅では、全波長の光信号に共用の伝送路を増幅媒体として用いるので、励起光波長に対するASS光パワーの波長特性は、励起光波長に関係なく一律である。従って、励起光波長に対するASS光パワーの波長特性は、例えば、励起光波長との波長差に応じたASS光パワー相対比等の波長特性として波長特性メモリ321に格納されている。
励起光源101i(i=1~m)の第1のASS光パワーA11iは、第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)の積分値と、励起光源101iの励起光パワーL1iとを用いて算出できる。積分値は、ピーク波長Δλp(i)(i=1~m)と、第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)と、ASS光パワー相対比R1(101i)及びR2(101i)とを用いて算出する。尚、ピーク波長Δλp(i)(i=1~m)は、第1のASS光パワーA11の波長特性のピーク波長である。ASS光パワー相対比R1(101i)及びR2(101i)は、第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)でのASS光パワー相対比である。尚、第1のASS光パワーA11iの積分値A11i’は、数式1で表現できる。
数式1では、励起光源101iによる第1のASS光パワーA11のピーク波長が第1の波長帯域内にある場合のモデル式となる。しかしながら、第1のASS光パワーA11のピーク波長が第1の波長帯域外にある場合には、第1のASS光パワーA11iの積分値A11i’は、数式2で表現できる。
第1のASS光パワーA11は、各励起光源101A~101mの励起光パワーL1A~L1mと、各励起光源101A~101mの第1のASS光パワーA11の積分値A11i’と、発生効率Kとを用いて数式3で表現できる。
尚、数式3の第1のASS光パワーA11は、運用開始前の準備段階において、第1の励起光で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11である。数式3の励起光パワーL1i(i=1~m)は、第1の励起光制御部350Aが各励起光源101A~101mに設定する励起光パワーである。数式3の第1のASS光パワーA11の積分値A11i’は、数式1及び数式2で算出する。更に、発生効率Kは、第1のASS光パワーA11の積分値A11i’と数式3とを用いて算出したASS光パワー発生効率である。
数式3を言い換えると、第1のASS光パワーA11iは、図5に示すように、各励起光源101i(i=1~m)の第1のASS光パワーA11の積分値A11i’に、励起光パワーL1i及び発生効率Kを乗算した値で表現できる。第1のASS光パワーA11は、図4に示すように、各励起光源101i(i=1~m)の各第1の励起光で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11iの合計値で表現できる。
数式3において、励起光源101iの各第1の励起光で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11iは、第1のASS光パワーA11の積分値A11i’に励起光源101iの励起光パワーL1iを乗算した値に類似する。しかしながら、近似手段は一次関数に限らず、例えば、励起光パワーに応じて発生効率Kの値をテーブルとして備える他の演算方法でも良く、適宜変更可能である。
次に、第2の決定部300Bの詳細について説明する。第2の決定部300Bは、第2の波長差算出部310Bで算出した第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)と、第2の合成励起光L2の励起光パワーとを用いて、第2のASS光パワーA12を算出する際に使用する第2のモデル式を決定する。
全波長の光信号に共用の伝送路を増幅媒体として用いるので、励起光波長に対するASS光パワーの波長特性は、図4及び図5に示すように、励起光波長によらず一律である。従って、第2のASS光パワーA12は、各励起光源111A~111nの第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nによるラマン効果で生じる第2のASS光パワーA12A~A12nの合計で定まる。励起光源111j(j=1~n)の第2の励起光で第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12jは、第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)の積分値と、励起光源111A~111nの励起光パワーL2jとを用いて算出できる。積分値は、ピーク波長Δλp(j)(j=1~n)と、第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)と、ASS光パワー相対比R1(111j)及びR2(111j)とを用いて算出する。尚、ピーク波長Δλp(j)(j=1~n)は図5に示すASS光パワー波長特性のピーク波長である。ASS光パワー相対比R1(111j)及びR2(111j)は、第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)でのASS光パワー相対比である。尚、第2のASS光パワーA12jの積分値A12j’は、数式4で表現できる。
数式4は、励起光源111jによる第2のASS光パワーA12のピーク波長が第1の波長帯域内にある場合のモデル式となる。しかしながら、第2のASS光パワーA12のピーク波長が第1の波長帯域外にある場合には、第2のASS光パワーA12jの積分値A12j’は、数式5で表現できる。
光伝送システムでは、全波長の光信号に共用の伝送光ファイバ2を増幅媒体として用いるので、励起光パワーを伝送光ファイバ2に供給することで生じる発生効率Kは、励起光波長によらず一律の値となる。従って、第2のASS光パワーA12は、発生効率Kと、各励起光源111A~111nが伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーL2A~L2nと、第2のASS光パワーA12の積分値A12j’とを用いて数式6で表現できる。
数式6を言い換えると、第2のASS光パワーA12jは、各励起光源111j(j=1~n)の第2のASS光パワーA12の積分値A12j’に、励起光パワーL2j及び発生効率Kを乗算した値で表現できる。そして、第2のASS光パワーA12は、各励起光源111j(j=1~n)の各第2の励起光で第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12jの合計値で表現できる。
第1の演算部330Aは、第1のメモリ320Aに格納中の第1のモデル式と、第1の励起光制御部350Aが設定する励起光パワーL1A~L1mとを用いて、第1のASS光パワーA11を算出する。第2の演算部330Bは、第2のメモリ320Bに格納中の第2のモデル式と、第2の励起光制御部350Bが設定する励起光パワーL2A~L2nとを用いて、第2のASS光パワーA12を算出する。
図6は、決定処理に関わる制御部30の処理動作の一例を示すフロー図である。図6に示す決定処理は、光伝送システムの建設後に導入する第1の波長帯域の運用開始前の準備段階の処理である。
図6において制御部30内の第1の決定部300Aは、各励起光源101A~101mから第1の励起光を伝送光ファイバ2に供給したことで発生する第1の波長帯域の第1のASS光パワーA11を第1の光モニタ部210Aを通じて測定する(ステップS101)。尚、第1の決定部300Aは、励起光源101A~101mの各励起光パワーL1A~L1mを、例えば、40mW、60mW、80mW、100mW、120mW、140mW等のように段階的に変える。そして、第1の光モニタ部210Aは、励起光パワー毎に変化する第1のASS光パワーA11が伝送光ファイバ2に供給された励起光と逆方向に伝搬し、第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11を測定し、その測定結果を第1の決定部300Aに通知する。第1の決定部300Aは、第1の光モニタ部210Aで測定した第1のASS光パワーA11の測定結果を、励起光パワーの供給条件毎に第1のメモリ320A内に格納する。
第1の波長差算出部310Aは、第1の波長帯域の両端波長λ11及びλ12の夫々と、励起光源101A~101mの第1の励起光の波長とで第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)を算出する(ステップS102)。光伝送システムの初期に運用する第1の波長帯域の両端波長λ11及びλ12と、第1の波長帯域のWDM信号光のラマン増幅に使用する励起光源101A~101mの第1の励起光の波長とは、システムの運用開始前に予め定められる。
第1の決定部300Aは、第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)と、格納中のASS光パワーの波長特性とを用いて、各第1の励起光で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーの積分値A11A’~A11m’を算出する(ステップS103)。尚、ASS光パワーの波長特性は、励起光波長に対するASS光パワー相対比である。第1のASS光パワーA11の積分値A11A’~A11m’は、例えば、数式1又は数式2を用いて算出する。第1の決定部300Aは、算出した第1のASS光パワーA11の積分値A11A’~A11m’を励起光源101毎に格納する。
第1の決定部300Aは、第1のASS光パワーA11の測定結果と、ステップS103で算出した積分値A11A’~A11m’とを用いて、発生効率K及び第1のASS光パワーA11のモデル式を決定する(ステップS104)。第1の決定部300Aは、決定された発生効率K及び第1のASS光パワーA11の第1のモデル式を、例えば、数式3のモデル式のパラメータとして、第1のメモリ320Aに格納する。
ステップS103で算出する第1のASS光パワーA11の積分値A11A’~A11m’と、ステップS104で決定される発生効率Kとの一例を、図7Aを用いて説明する。図7Aは、第1の生成部100の第1の励起光の波長特性の一例を示す説明図である。尚、説明の便宜上、図7Aの例では、第1の生成部100内の4台の励起光源101A~101Dの波長特性を例示しているものとする。
図7Aに示す波長特性は、励起光源101の識別情報と、励起光源101毎の第1の励起光の波長と、第1の波長差Δλ(11,i)及びΔλ(12,i)とを対応付けて格納している。更に、波長特性は、励起光源101の識別情報毎に、ASS光パワー相対比R1(101i)及びR2(101i)と、積分値A11A’~A11m’とを格納している。尚、ASS光パワー相対比R1(101i)及びR2(101i)は、第1のメモリ320Aに格納されているものとする。ASS光パワー相対比は、図5に示すように、ピークを「1」とし、ピーク波長での励起光波長との波長差は100nmと定義している。
図7Bは、第2の生成部110の第2の励起光の波長特性の一例を示す説明図である。尚、説明の便宜上、図7Bの例では、第2の生成部110内の3台の励起光源111A~111Cの波長特性を例示しているものとする。図7Bに示す波長特性は、励起光源111毎の識別情報と、励起光源111毎の第2の励起光の波長と、第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)とを対応付けて格納している。波長特性は、励起光源の識別情報毎に、ASS光パワー相対比(111j)及びR2(111j)と、積分値A12A’~A12n’とを格納している。尚、ASS光パワー相対比R1(111j)及びR2(111j)は、第2のメモリ320Bに格納されているものとする。
ステップS101で測定された励起光源101A~101Dの第1の励起光の励起光パワーL1A~L1Dが全て100mWであって、第1の波長帯域に発生する第1のASS光パワーA11が-25dBmとする。この場合、数式1、数式2及び数式3を用いて、伝送光ファイバ2の発生効率Kは、2.51×10-6mW/mWとして算出できる。
第1の演算部330Aは、ステップS104で決定された第1のモデル式と、第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mとを用いて、第1の合成励起光パワーL1で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11を算出する(ステップS105)。
第1の演算部330Aは、ステップS105で算出した第1のASS光パワーA11と、第1のメモリ320Aに格納された実際の第1のASS光パワーA11の測定結果との差を算出する。第1の演算部330Aは、算出した第1のASS光パワーA11と実際の第1のASS光パワーの測定結果との差が予め設定した閾値(例えば、0.5dB)以内であるか否かを判定する(ステップS106)。第1の演算部330Aは、その差が設定した閾値以内でない場合(ステップS106否定)、励起光パワーに応じて発生効率Kの値を補正し(ステップS107)、再度、第1のモデル式を決定すべく、ステップS104に移行する。尚、第1のモデル式で算出した第1のASS光パワーA11と実際の測定結果の第1のASS光パワーとの差が閾値以内になるまで、発生効率Kを補正すべく、ステップS107に移行する。
第2の波長差算出部310Bは、差が設定した閾値以内の場合(ステップS106肯定)、第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)を算出する(ステップS108)。尚、第2の波長差算出部310Bは、第1の波長帯域の両端波長λ11及びλ12の夫々と、各励起光源111A~111nの第2の励起光の波長との第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)を算出する。初期に運用されている第1の波長帯域の両端波長λ11及びλ12と、運用帯域の増設のために追加する各励起光源111A~111nの励起光波長とは、第2の生成部110の追加前に予め定められるものとする。
第2の決定部300Bは、算出した第2の波長差Δλ(11,j)及びΔλ(12,j)と、格納中の波長特性とを用いて、第2の励起光で第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12jの積分値A12A’~A12n’を算出する(ステップS109)。尚、波長特性は、励起光波長に対するASS光パワー相対比である。第2のASS光パワーA12jの積分値A12A’~A12n’は、例えば、数式4又は数式5を用いて算出する。第2の決定部300Bは、算出した第2のASS光パワーA12jの積分値A12A’~A12-n’を励起光源111毎に格納する。
第2の決定部300Bは、第1のメモリ320Aに格納中の発生効率Kと、第2のASS光パワーA12jの積分値A12A’~A12-n’とを用いて、第2のASS光パワーA12の第2のモデル式を決定する(ステップS110)。尚、第2の決定部300Bは、決定された第2のASS光パワーA12の第2のモデル式(数式6)を第2のメモリ320Bに格納する。
各励起光源111A~111Cが伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーL2A~L2Cが全て100mWの場合、ステップS104で決定された伝送光ファイバ2の発生効率Kは2.51×10-6mW/mWとなる。従って、第2の決定部300Bは、数式4、数式5及び数式6を用いて、第2のASS光パワーA12として、-27.3dBmを算出できる。
決定部300は、第1のASS光パワーA11の第1のモデル式と、第2のASS光パワーA12の第2のモデル式とを決定する。次に、実際の運用が行われる段階でのラマン光増幅器1の動作について説明する。図8は、第1の設定処理に関わる制御部30の処理動作の一例を示すフロー図である。図8に示す第1の設定処理は、運用が行われる段階で、算出する第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12と、モニタ結果の第1の波長帯域の第1の光パワーSA1とに基づいて、第1のWDM信号光パワーS1を算出する処理である。更に、第1の設定処理は、算出した第1のWDM信号光パワーS1とラマン増幅後の第1の目標信号光パワーT1とが一致するように励起光パワーを制御する処理である。
図8において制御部30内の第1の演算部330Aは、格納中の第1のモデル式と、第1の励起光制御部350Aで設定した第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mとを用いて、第1のASS光パワーA11を算出する(ステップS201)。第2の演算部330Bは、格納中の第2のモデル式と、第2の励起光制御部350Bで設定する第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nとを用いて、第2のASS光パワーA12を算出する(ステップS202)。第1の比較演算部340Aは、算出した第1のASS光パワーA11と第2のASS光パワーA12とを合計することで第1の合計ASS光パワーA1を算出する。更に、第1の比較演算部340Aは、第1の光モニタ部210Aでモニタした第1の波長帯域の第1の光パワーSA1から第1の合計ASS光パワーA1を差し引いて第1の波長帯域の第1のWDM信号光パワーS1を算出する(ステップS203)。第1のWDM信号光パワーS1は、数式7で表現できる。
ステップS203では、光伝送システムが第1の波長帯域のみ運用されている初期の運用段階であって、第2の生成部110が追加されていない時は、第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12がないため、A12=0mWとして計算する。
第1の比較演算部340Aは、算出した第1のWDM信号光パワーS1と、ラマン増幅後のWDM信号光の第1の目標信号光パワーT1との差を算出する。第1の比較演算部340Aは、算出した第1のWDM信号光パワーS1と第1の目標信号光パワーT1との差が、予め設定した閾値(例えば0.5dB)以内であるか否かを判定する(ステップS204)。第1の励起光制御部350Aは、差が閾値以内でない場合(ステップS204否定)、第1の生成部100の制御信号を生成する(ステップS205)。第1の励起光制御部350Aは、第1のWDM信号光パワーS1と第1の目標信号光パワーT1とが一致するように第1の合成励起光パワーL1を制御すべく、第1の生成部100の制御信号を生成する。第1の励起光制御部350Aは、第1の比較演算部340Aからの制御信号に応じて各励起光源101A~101mの励起光パワーを設定し(ステップS206)、図8に示す処理動作を終了する。
第2の励起光制御部350Bは、差が設定閾値以内の場合(ステップS204肯定)、第1のWDM信号光パワーS1と第1の目標信号光パワーT1とが一致しているため、第1の合成励起光パワーL1の制御を終了する。そして、第2の励起光制御部350Bは、各励起光源111A~111nの励起光パワーを設定する第2の励起光パワー設定処理を実行し(ステップS207)、図8に示す処理動作を終了する。
制御部30は、第1のWDM信号光パワーS1を、光伝送システムに所要の伝送性能を得るための第1の目標信号光パワーT1に制御することになる。図9Aは、実施例1のラマン光増幅器1の光パワー制御過程の一例を示す説明図である。第2の励起光の励起光パワー増設前の時間をT=0とし、第1の波長帯域の第1のWDM信号光パワーS1(0)は、第1の目標信号光パワーT1に制御している。時間T=0では、第2の励起光の供給前なので、第2の励起光の励起光パワーは0mWとなる。この際、第1の波長帯域の第1の光パワーSA1(0)は、数式8で表現できる。
時間T=1では、第2の励起光が伝送光ファイバ2に供給されると、ステップS201~ステップS206の処理を実行する。第1の励起光の励起光パワーの設定と、第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12の算出が完了した後の第1の波長帯域の第1の光パワーSA1(1)は、数式9で表現できる。
制御部30は、数式8及び数式9を使用する処理を、第2の合成励起光パワーL2が所定の値となるまで繰り返す。時間T=kでの一連の処理は、数式10で表現できる。
図9Aに示す時系列の制御過程は、図8に示すステップS201からステップS207の一連の処理について、第2の合成励起光パワーL2を徐々に増加して第1の波長帯域の第1のWDM信号光パワーS1(t)と第1の目標信号光パワーT1との差を抑制する。すなわち、第2の合成励起光パワーL2を追加した場合でも、安定した伝送性能を確保できる。
図9Bは、従来のラマン光増幅器の光パワー制御過程の一例を示す説明図である。第2の励起光の増設前の時間T=0の各光パワーは、図9Aと同じである。時間T=1では、第2の励起光が伝送光ファイバ2に供給されると、第2の励起光で第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12’(1)の算出過程が従来方法にはない。従って、WDM信号光パワー算出は、第1の波長帯域の第1の光パワーSA1’(1)と、第1の励起光で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11’(1)との差で決定する。しかしながら、時間T=1では、第2の励起光で第2のASS光パワーA12’(1)が発生する。その結果、実際のWDM信号光パワーは、図9Bの右図に示すように、第1の目標信号光パワーT1より小さな信号光パワーS1’(1)であり、実際のWDM信号光パワーは、第1の目標信号光パワーとの間で誤差が生じる。誤差が生じることで、WDM信号光パワーを目標値に制御できないため、帯域を増設した場合、安定した伝送性能を確保できない。
実施例1のラマン光増幅器1では、第2の励起光の増設に伴い既存帯域(第1の波長帯域)に生じるASS光パワーの増加量を、初期建設の既存帯域の測定結果を用いて高い精度で算出する。更に、ラマン光増幅器1は、既存帯域の第1のWDM信号光パワーをモニタし、第1のWDM信号光パワーを第1の目標信号光パワーに制御する。その結果、WDM信号の安定した伝送性能を確保しながら、波長帯域を増設できる。ラマン光増幅器1では、励起光の増設に伴い発生するASS光の影響を、既存帯域は勿論のこと、増設帯域についても考慮し、励起光源の励起光パワーを制御できる。
制御部30は、第1の励起光のパワーに対応した、第1の励起光で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11及び、第2の励起光のパワー対応した、第2の励起光で第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12を算出する。制御部30は、第1の光モニタ部210Aで測定された第1の光パワーSA1から、算出した第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12を差し引いて第1のWDM信号光パワーS1を算出する。更に、制御部30は、第1のWDM信号光パワーS1と第1の目標信号光パワーT1との差に基づき、第1の励起光又は第2の励起光を調整すべく、第1の生成部100又は第2の生成部110を制御する。その結果、異なる波長帯域を増設する場合でも、第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12を高精度に算出することで、第1のWDM信号光パワーS1を高精度に算出できるため、安定した伝送性能を確保できる。
制御部30は、第1の波長差に対応する第1のASS光パワーA11の積分値に基づき、第1のASS光パワーA11を算出する際に使用する第1のモデル式を決定する。更に、制御部30は、第2の波長差に対応する第2のASS光パワーA12の積分値に基づき、第2のASS光パワーA12を算出する際に使用する第2のモデル式を決定する。その結果、第1のモデル式及び第2のモデル式を用いて、第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12を高精度に算出できる。
制御部30は、増幅媒体である光ファイバ種別の特性に応じて、第1の励起光のパワーと、第1のASS光パワーA11とを関連付ける第1のモデル式を管理する。そして、制御部30は、第1の波長帯域の運用開始する準備段階で測定した第1の励起光のパワー及び第1のASS光パワーA11に基づき、第1のモデル式の発生効率Kを補正する。その結果、第1のASS光パワーA11を算出する際に使用する高精度な第1のモデル式を取得できる。
制御部30は、増幅媒体となる光ファイバの種類に応じて、第1の励起光の波長と、第2の励起光の波長と、ASS光パワーの波長特性とを対応付けて波長特性メモリ321に格納する。その結果、増幅媒体の光ファイバ種別に応じてASS光パワーの波長特性を特定できる。
ラマン光増幅器1は、第2の励起光の増設に伴い生じる第2のASS光パワーA12を精度よく算出できるので、下流の光伝送装置では、ラマン増幅により生じるASS光パワーを用いて所要OSNRを実現するためのWDM信号光のパワー制御を実現できる。
第1の比較演算部340Aは、図8に示すステップS203~ステップ205までの処理を実行した。しかしながら、第1の比較演算部340Aは、ステップS203~ステップS205までの処理の代わりに次の処理を実行するようにしても良い。第1の比較演算部340Aは、算出する第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12の合計で第1の合計ASS光パワーA1(=A11+A12)を算出する。更に、第1の比較演算部340Aは、算出した第1の合計ASS光パワーA1と、ラマン増幅後のWDM信号光の第1の目標信号光パワーT1との和である第1の光パワー和を算出する。第1の比較演算部340Aは、第1の光パワー和と、第1の光モニタ部210Aでモニタした第1の波長帯域の第1の光パワーSA1とを比較する。第1の比較演算部340Aは、第1の光パワー和と、第1の光パワーSA1との差が予め設定した閾値(例えば、0.5dB)以内であるか否かを判定する。第1の比較演算部340Aは、その差が設定閾値以内でない場合は、第1の励起光の励起光パワーを設定すべく、ステップS206に移行しても良い。第1の比較演算部340Aは、第1の光パワーSA1を数式11で表現できる。
尚、実施例1の決定部300は、ASS光パワーのモデル式を決定したが、モデル式に限定されるものではなく、例えば、ASS光パワーの相関テーブルを決定しても良く、適宜変更可能である。
実施例2のラマン光増幅器1Aについて説明する。図10は、実施例2のラマン光増幅器1Aの一例を示す説明図である。尚、実施例1のラマン光増幅器1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図10に示すラマン光増幅器1A内の制御部30は、決定部300、波長差算出部310、メモリ320、演算部330、比較演算部340及び励起光制御部350の他に、周波数差算出部400と、変化率算出部410とを有する。周波数差算出部400は、第1の励起光毎に第2の励起光との間の周波数差を算出する。変化率算出部410は、周波数差算出部400にて算出した周波数差から、伝送光ファイバ2において各励起光の間で生じるラマン効果の励起光パワーの変化率を算出する。
図11は、実施例2の制御部30の機能構成の一例を示す説明図である。図11に示す制御部30内の演算部330は、第1の演算部330A及び第2の演算部330Bの他に、実効励起光パワー算出部331を有する。周波数差算出部400は、例えば、各励起光源101A~101mの第1の励起光と、各励起光源111A~111nの第2の励起光との周波数差Δf(i,j)を算出する。周波数差算出部400は、既存の第1の波長帯域の励起光源101A~101mの各第1の励起光の周波数f1A~f1mと、追加の第2の波長帯域の励起光源111A~111nの第2の励起光の周波数f2A~f2nとを比較する。周波数差算出部400は、既存の第1の励起光の周波数f1A~f1mと、追加の第2の励起光の周波数f2A~f2nとを用いて、第2の生成部110の追加前の周波数差Δf(i,j)=(f2j)-(f1i)(i=1~m、j=1~n)を予め算出する。
変化率算出部410は、周波数差Δf(i,j)と、第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mと、第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nとを用いてラマン効果の励起光パワーの変化率を算出する。変化率算出部410は、各励起光源101i(i=1~m)の第2の生成部110で受けるラマン効果の第1の励起光パワー変化率ΔP1(i)(i=1~m)を算出する。更に、変化率算出部410は、各励起光源111j(j=1~n)の第1の生成部100で受けるラマン効果の第2の励起光パワー変化率ΔP2(j)(j=1~n)を算出する。
変化率算出部410は、励起光源101iが励起光源111jの第2の励起光によるラマン効果で受ける第1の励起光パワー変化率ΔP1(i,j)(i=1~m、j=1~n)を算出する。第1の励起光パワー変化率ΔP1(i,j)は、励起光間のラマン効果による励起光パワー変化係数をBとすると、数式12で表現できる。
変化率算出部410は、励起光源111jが励起光源101iの第1の励起光によるラマン効果で受ける第2の励起光パワー変化率ΔP2(j,i)(j=1~n、i=1~n)を算出する。第2の励起光パワー変化率ΔP2(j,i)は、数式13で表現できる。
第1の励起光パワー変化率ΔP1(i)(i=1~m)は、各励起光源111A~111nについて数式12を用いて算出した、第1の励起光パワー変化率ΔP1(i,j)の和であり、数式14で表現できる。
励起光源111j(j=1~n)が第1の励起光で受けるラマン効果の第2の励起光パワー変化率ΔP2(j)(j=1~n)は、数式13を用いて算出した第2の励起光パワー変化率ΔP2(j,i)の和であり、数式15で表現できる。
実効励起光パワー算出部331は、第1の励起光パワー変化率ΔP1(i)(i=1~m)及び第2の励起光パワー変化率ΔP2(j)(j=1~n)と、励起光パワーL1A~L1mと、励起光パワーL2A~L2nとを用いて実効励起光パワーを算出する。尚、実効励起光パワーは、第1の波長帯域にASS光を生じさせる夫々の実効的な励起光パワーである。尚、第1の励起光パワー変化率ΔP1(i)(i=1~m)及び第2の励起光パワー変化率ΔP2(j)(j=1~n)は、数式14及び数式15で算出可能である。
各励起光源101i(i=1~m)が第2の励起光のラマン効果で励起光パワー変化を受けた後の実効励起光パワーL1eff-i(i=1~m)は、励起光パワーL1iと、算出する第1の励起光パワー変化率ΔP1(i)(i=1~m)とを用いて算出する。尚、励起光パワーL1iは、励起光源101iが伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーである。実効励起光パワーL1eff-i(i=1~m)は、数式16で表現できる。
励起光源111jが、第1の励起光のラマン効果で励起光パワー変化を受けた後の実効励起光パワーL2eff-j(j=1~n)は、励起光パワーL2jと、算出する第2の励起光パワー変化率ΔP2(j)(j=1~n)とを用いて算出する。尚、励起光パワーL2jは、励起光源111jが伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーである。実効励起光パワーL2eff-j(j=1~n)は、数式17で表現できる。
数式16及び数式17を用いて定めた各励起光源101及び111の実効励起光パワーL1eff-i(i=1~m)及びL2eff-j(j=1~n)は、第1の演算部330A及び第2の演算部330Bに出力される。そして、第1の演算部330Aは、実効励起光パワーL1eff-i(i=1~m)に基づき、第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11を算出する。更に、第2の演算部330Bは、実効励起光パワーL2eff-j(j=1~n)に基づき、第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12を算出する。
ラマン光増幅器1Aに用いた励起光パワー変化係数Bは、シングルモードファイバ(SMF)、分散シフトファイバ(DSF)、非零分散シフトファイバ(NZ-DSF)等のラマン増幅が適用される伝送光ファイバの種別毎に異なる値を設定しても良い。この場合、ファイバ種別毎の励起光パワー変化係数Bは、例えば、メモリ320に格納され、ラマン増幅が適用される伝送光ファイバ2の種別に対応する値を変化率算出部410に適用する。
実施例2のラマン光増幅器1Aでは、励起光間のラマン効果を受けてラマン増幅を行う実効的な励起光パワーに基づいてASS光パワーを算出するので、実施例1のラマン光増幅器1に比べ、さらにWDM信号光パワーを高精度にモニタできる。
制御部30は、第1の励起光と第2の励起光との周波数差Δf(i,j)を算出する。制御部30は、周波数差と、励起光パワー変化係数Bと、第1の励起光の励起光パワー及び第2の励起光の励起光パワーとに基づき、第1の励起光パワー変化率及び第2の励起光パワー変化率を算出する。制御部30は、第1の励起光パワー変化率に基づき、第1の励起光のパワーに対応した第1のASS光パワーA11を算出すると共に、第2の励起光のパワー変化率に基づき、第2の励起光のパワーに対応した第2のASS光パワーA12を算出する。その結果、異なる波長帯域を増設した場合でも、第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12を高精度に算出することで安定した伝送性能を確保できる。
制御部30は、増幅媒体となる光ファイバ種別に応じて励起光パワー変化係数Bを格納する。その結果、増幅媒体となる光ファイバの種別に応じた励起光パワー変化係数Bを用いて、伝送光ファイバ2の種別に応じた第1及び第2の励起光パワー変化率を高精度に算出できる。
図12は、実施例3のラマン光増幅器1Bの一例を示す説明図である。尚、実施例1のラマン光増幅器1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図12に示すラマン光増幅器1B内の光モニタ部20は、WDMフィルタ200及び第1の光モニタ部210Aの他に、第2の光モニタ部210を配置した。WDMフィルタ200は、WDM信号光から、既存帯域である第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1と、増設帯域となる第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2とに分波する。第1の光モニタ部210Aは、WDMフィルタ200で分波した第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1及び第1のASS光を含む第1の光パワーSA1の一部を分岐してモニタする。第2の光モニタ部210Bは、WDMフィルタ200で分波した第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2及び第2のASS光を含む第2の光パワーSA2の一部を分岐してモニタする。第2の光モニタ部210Bは、第2の光分波器211Bと、第2の受光素子212Bとを有する。第2の光分波器211Bは、WDMフィルタ200から出力される第2の波長帯域の一部の第2の光パワーSA2を分岐する。第2の受光素子212Bは、第2の光分波器211Bから出力された第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2と第2のASS光とを含む第2の光パワーSA2がモニタ可能となる。尚、第1の受光素子212Aは、第1の光分波器211Aから出力された第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1と第1のASS光とを含む第1の光パワーSA1がモニタ可能になる。
図13は、実施例3のラマン光増幅器1B内の光モニタ部20の代替例を示す説明図である。光モニタ部20は、図12の例に限定されるものではなく、図13に示すように、光分波器250と、WDMフィルタ260と、第1の受光素子212Aと、第2の受光素子212Bとを有する。光分波器250は、供給部10から後段に出力される第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1と第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2とを含む光パワーの一部を分岐する。WDMフィルタ260は、第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1を含む第1の光パワーSA1を第1の受光素子212Aに出力すると共に、第2の波長帯域の第2のWDM信号光S2を含む第2の光パワーSA2を第2の受光素子212Bに出力する。第1の受光素子212Aは、第1のWDM信号光S1と第1のASS光とを含む第1の光パワーSA1をモニタする。第2の受光素子212Bは、第2のWDM信号光S2と第2のASS光とを含む第2の光パワーSA2をモニタする。第1の受光素子212A及び第2の受光素子212Bは単一ユニットでも良く、第1の受光素子212Aを備える光モニタ部20に第2の受光素子212Bを増設する形態でも良く、適宜変更可能である。
図14は、実施例3のラマン光増幅器1B内の制御部30の機能構成の一例を示す説明図である。決定部300は、第1の決定部300A及び第2の決定部300Bの他に、第3の決定部300Cを配置した。第3の決定部300Cは、第2の生成部110の第2の励起光で第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22を算出する際に使用する第3のモデル式を決定する。波長差算出部310は、第1の波長差算出部310A及び第2の波長差算出部310Bの他に、第3の波長差算出部310Cを配置した。第3の波長差算出部310Cは、第2の波長帯域の両端波長λ21及びλ22と、第2の生成部110内の各励起光源111j(j=1~n)の第2の励起光との第3の波長差Δλ(21,j)及びΔλ(22,j)を算出する。メモリ320は、第1のメモリ320A、第2のメモリ320B及び波長特性メモリ321の他に、第3のメモリ320Cを配置した。第3のメモリ320Cは、第3の決定部300Cが決定した第3のASS光パワーA22の第3のモデル式を格納する。
更に、演算部330は、第1の演算部330A及び第2の演算部330Bの他に、第3の演算部330Cを配置した。第3の演算部330Cは、第3のメモリ320Cに格納された第3のモデル式と第2の励起光の励起光パワーとを用いて、第3のASS光パワーA22を算出する。さらに、比較演算部340は、第1の比較演算部340Aの他に、第2の比較演算部340Bを配置した。第2の比較演算部340Bは、第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22と、第2の波長帯域のWDM信号光の第2の目標信号光パワーT2との和である第2の光パワー和を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2の光パワー和と、第2の受光素子212Bでモニタした第2の波長帯域の第2の光パワーSA2とを比較する。第2の比較演算部340Bは、第2の光パワー和と、第2の光パワーSA2とが一致するように第2の合成励起光パワーL2を制御すべく、第2の生成部110の制御信号を生成する。第2の励起光制御部350Bは、第2の比較演算部340Bからの制御信号に応じて各励起光源111A~111nの励起光パワーを設定する。第2の励起光制御部350Bは、各励起光源111A~111nが伝送光ファイバ2に供給する励起光パワーL2A~L2nを、第2の演算部330B及び第3の演算部330Cに出力する。
第2の波長帯域を増設する過程で第2の波長帯域をラマン増幅するための第2の合成励起光L2を伝送光ファイバ2に供給する際に、第1のASS光パワーA11の測定方法と同様に第3のASS光パワーA22を測定する方法を用いると、次の課題が生じる。
第2の波長帯域の運用開始前の準備段階では、伝送光ファイバ2に供給する第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nを様々に変化させて、第2の合成励起光L2で第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22を測定する。しかしながら、励起光パワーL2A~L2nを様々に変化させて測定した場合、第2の合成励起光L2によって第1の波長帯域の第1のWDM信号光S1でラマン増幅が発生する。第1のWDM信号光S1は、第1の励起光制御部350Aによって第1の合成励起光パワーL1を少なくすることで、第1の波長帯域のラマン利得を減じることも可能である。しかしながら、励起光パワーL2A~L2nを必要以上に供給する測定のためのラマン利得となるため、第1の波長帯域のWDM信号光パワーS1が第1の目標信号光パワーT1よりも大きく制御されることで、第1の波長帯域内のWDM信号にエラーが生じる。
第3の決定部300Cでは、第3のASS光パワーA22を実測することなく、第2の励起光で第2の波長帯域に発生する第3のASS光パワーA22を算出するための第3のモデル式を決定する。第3の波長差算出部310Cは、第2の波長帯域の両端波長λ21及びλ22と、励起光源111i(j=1~n)の波長との第3の波長差Δλ(21,j)及びΔλ(22,j)を算出する。第3の決定部300Cは、励起光源111j(j=1~n)の第2の励起光で第2の波長帯域に発生する第3のASS光パワーA22jに対応した波長特性メモリ321に格納中の励起光波長に対する波長特性を特定する。第3の決定部300Cは、第3のASS光パワーA22jの波長特性と、第3の波長差Δλ(21,j)及びΔλ(22,j)とを用いて、第3のASS光パワーA22jの積分値A22j’を算出する。第3のASS光パワーA22jの積分値A22j’は、数式18で表現できる。
励起光源111jの第3のASS光パワーA22のピーク波長が第2の波長帯域外にある場合には、第3のASS光パワーA22jの積分値A22j’は、数式19で表現できる。
全波長の光信号に共用の伝送光ファイバ2を増幅媒体として用いるので、励起光パワーを伝送光ファイバ2に供給することで生じる発生効率Kは、励起光波長に関係なく一律の値である。従って、第2の合成励起光L2で第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22jの積分値A22j’は、数式20で表現できる。
数式20を言い換えると、第3のASS光パワーA22jは、第3のASS光パワーA22jの積分値A22j’と、第2の励起光の励起光パワーL2jと、伝送光ファイバ2の発生効率Kとを乗算した値で表現できる。そして、第3のASS光パワーA22は、各励起光源111j(j=1~n)の第2の励起光で第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22jの合計値で表現できる。
第3の決定部300Cは、決定した第3のASS光パワーA22の第3のモデル式を第3のメモリ320Cに格納する。第3の演算部330Cは、第3のメモリ320Cに格納された第3のモデル式と、第2の励起光制御部350Bが設定した励起光パワーL2A~L2nとを用いて、第3のASS光パワーA22を算出する。
第2の比較演算部340Bは、第2の光モニタ部210Bでモニタした第2の波長帯域の第2の光パワーSA2から第3の演算部330Cで算出した第3のASS光パワーA22を差し引いて第2の波長帯域の第2のWDM信号光パワーS2を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2のWDM信号光パワーS2と、ラマン増幅後の第2の波長帯域のWDM信号光の第2の目標信号光パワーT2とを比較する。第2の比較演算部340Bは、第2のWDM信号光パワーS2と、第2の目標信号光パワーT2とが一致するよう第2の合成励起光パワーL2を制御すべく、第2の生成部110の制御信号を生成する。第2の励起光制御部350Bは、第2の比較演算部340Bからの制御信号に応じて各励起光源111A~111nの励起光パワーを設定する。
実施例3のラマン光増幅器1Bでは、WDMシステムの帯域増設を行う段階において、増設帯域である第2の波長帯域に発生する第3のASS光パワーA22を測定することなく第3のモデル式を決定する。その結果、第1の波長帯域内のWDM信号にエラーが生じることなく、既存帯域の伝送性能を確保しながら、WDM信号の波長帯域を拡大できる。
制御部30は、第2の励起光のパワーに対応した、第2の励起光で第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22を算出する。制御部30は、第2の光モニタ部210Bで測定された第2の光パワーSA2から、算出した第3のASS光パワーA22を差し引いて第2のWDM信号光パワーS2を算出する。制御部30は、第2のWDM信号光パワーS2と第2の目標信号光パワーT2との差に基づき、第2の励起光を調整すべく、第2の生成部110を制御する。その結果、異なる波長帯域を増設した場合でも、第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22を高精度に算出することで安定した伝送性能を確保できる。
例えば、比較演算部340は、第2の波長帯域で生じる第3のASS光パワーA22と第2の波長帯域のWDM信号光の第2の目標信号光パワーT2との和である第2の光パワー和を算出する。そして、比較演算部340は、第2の光パワー和と、第2の光モニタ部210Bでモニタした第2の光パワーSA2とを比較しても良く。この場合、比較演算部340は、第2の光パワーSA2と、第2の光パワー和とを一致させるように第2の合成励起光パワーL2を制御すべく、第2の生成部110の制御信号を生成する。
実施例2のラマン光増幅器1Aに第3の決定部300C、第3の波長差算出部310C、第3のメモリ320C、第3の演算部330C及び第2の比較演算部340Bを配置しても良く、適宜変更可能である。この場合は、実施例2の効果に加えて、実施例3と同様の効果が得られる。
C帯及びL帯のように波長帯域が互いに離れていない構成では、励起光によるラマン効果で生じるASS光の波長特性は、図5に示すようにラマン増幅のピーク波長から長波長側30nmにかけて減衰する。その結果、第1の合成励起光パワーL1によって、第2の波長帯域に第4のASS光パワーA21が生じる場合もある。
図15は、実施例4の制御部30の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、実施例4のラマン光増幅器1Cは、実施例3のラマン光増幅器1Bと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。制御部30内の決定部300は、第1の合成励起光パワーL1で第2の波長帯域に生じる第4のASS光パワーA21を算出する際に使用する第4のモデル式を決定する第4の決定部300Dを有する。演算部330は、第4のモデル式を用いて第4のASS光パワーA21を算出する第4の演算部330Dを有する。
図15に示す決定部300は、第1の決定部300A、第2の決定部300B及び第3の決定部300Cの他に、第4の決定部300Dを配置した。第4の決定部300Dは、第4のASS光パワーA21を算出する際に使用する第4のモデル式を決定する。波長差算出部310は、第1の波長差算出部310A、第2の波長差算出部310B及び第3の波長差算出部310Cの他に、第4の波長差算出部310Dを配置した。第4の波長差算出部310Dは、第2の波長帯域の両端波長λ21及びλ22と、各励起光源101i(i=1~m)の第1の励起光の波長とで第4の波長差Δλ(21,i)及びΔλ(22,i)を算出する。メモリ320は、第1のメモリ320A、第2のメモリ320B、第3のメモリ320C及び波長特性メモリ321の他に、第4のメモリ320Dを配置した。第4の決定部300Dは、決定した第4のモデル式を第4のメモリ320D内に格納する。演算部330は、第1の演算部330A、第2の演算部330B及び第3の演算部330Cの他に、第4の演算部330Dを配置した。第4の演算部330Dは、第4のメモリ320Dに格納された第4のモデル式と、第1の励起光の励起光パワーとを用いて、第1の合成励起光パワーL1で第2の波長帯域に発生する第4のASS光パワーA21を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2の波長帯域に生じる第4のASS光パワーA21と第3のASS光パワーA22とを合計した第2の合計ASS光パワーA2を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2の合計ASS光パワーA2と第2の波長帯域のWDM信号光の第2の目標信号光パワーT2との和である第2の光パワーの和を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2の光パワー和と、第2の受光素子212Bでモニタした第2の波長帯域の第2の光パワーSA2とを比較する。第2の比較演算部340Bは、第2の光パワー和と、第2の光パワーSA2とが一致するように第2の合成励起光パワーL2を制御すべく、第2の生成部110の制御信号を生成する。第2の励起光制御部350Bは、各励起光源111A~111nの第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nの設定値を、第1の演算部330A及び第4の演算部330Dに出力する。
第4の決定部300Dは、第4のASS光パワーA21の第4のモデル式を決定する。第4の波長差算出部310Dは、第4の波長差Δλ(21,i)及びΔλ(22,i)を算出する。第4の決定部300Dは、第1の励起光で第2の波長帯域に生じる第4のASS光パワーA21iの励起光波長に対する波長特性と、第4の波長差Δλ(21,j)及びΔλ(22,j)とを用いて、第4のASS光パワーA21iの積分値A21i’を算出する。第4のASS光パワーA21iの積分値A21i’は、数式21で表現できる。
励起光源101iの第1の励起光による第4のASS光パワーA21のピーク波長が第2の波長帯域外にある場合には、第4のASS光パワーA21iの積分値A21i’は数式22で表現できる。
全波長の光信号に共用の伝送光ファイバ2を増幅媒体として用いるので、励起光パワーで生じる発生効率Kは、励起光の波長に関係なく、一律の値となる。従って、第4のASS光パワーA21iの積分値A21i’は、数式23で表現できる。
数式23を言い換えると、第4のASS光パワーA21iは、第4のASS光パワーA21iの積分値A21i’と、第1の励起光の励起光パワーL1iと、発生効率Kとを乗算した値で表現できる。そして、第4のASS光パワーA21は、各励起光源101i(i=1~m)の第1の励起光で第2の波長帯域に生じる第4のASS光パワーA21iの合計値で表現できる。
第4の決定部300Dは、決定した第4のASS光パワーA21の第4のモデル式を第4のメモリ320Dに格納する。第4の演算部330Dは、第4のメモリ320Dに格納中の第4のモデル式と、第1の励起光制御部350Aが設定する励起光パワーL1A~L1mとを用いて、第4のASS光パワーA21を算出する。
第2の比較演算部340Bは、第3の演算部330C及び第4の演算部330Dが算出する夫々の第3のASS光パワーA22及び第4のASS光パワーA21を合計して第2の合計ASS光パワーA2を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2の光モニタ部210Bでモニタした第2の波長帯域の第2の光パワーSA2から第2の合計ASS光パワーA2を差し引いて第2の波長帯域の第2のWDM信号光パワーS2を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2の合計ASS光パワーA2と、ラマン増幅後の第2の波長帯域のWDM信号光の第2の目標信号光パワーT2とを比較する。第2の比較演算部340Bは、第2の合計ASS光パワーA2と、第2の目標信号光パワーT2とが一致するように第2の合成励起光パワーL2の制御信号を生成する。第2の励起光制御部350Bは、第2の比較演算部340Bからの制御信号に応じて各励起光源111A~111nの励起光パワーを設定する。
図16は、第2の励起光パワー設定処理に関わる制御部30の処理動作の一例を示すフロー図である。第2の励起光パワー設定処理は、ラマン光増幅のための励起光源の増設が行われる段階で、第3のASS光パワーA22及び第4のASS光パワーA21と、モニタ結果の第2の光パワーSA2とを用いて、第2のWDM信号光パワーS2を算出する処理である。更に、第2の励起光パワー設定処理は、算出した第2のWDM信号光パワーS2とラマン増幅後の第2の目標信号光パワーT2とが一致するように第2の励起光の励起光パワーを制御する処理である。
第3の演算部330Cは、第3のメモリ320Cに格納中の第3のモデル式と、第2の励起光制御部350Bが設定する第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nとを用いて、第3のASS光パワーA22を算出する(ステップS301)。第4の演算部330Dは、第4のメモリ320Dに格納中の第4のモデル式と、第1の励起光制御部350Aが設定する第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mとを用いて、第4のASS光パワーA21を算出する(ステップS302)。
第2の比較演算部340Bは、算出する第3のASS光パワーA22及び第4のASS光パワーA21を合計して第2の合計ASS光パワーA2を算出する。第2の比較演算部340Bは、第2の光モニタ部210Bでモニタした第2の波長帯域の第2の光パワーSA2から、算出した第2の合計ASS光パワーA2を差し引いて第2のWDM信号光パワーS2を算出する(ステップS303)。第2のWDM信号光パワーS2は、数式24で表現できる。
第2の比較演算部340Bは、算出した第2のWDM信号光パワーS2と、ラマン増幅後の第2の波長帯域のWDM信号光の第2の目標信号光パワーT2との差が、予め設定した閾値(例えば0.5dB)以内であるか否かを判定する(ステップS304)。第2の比較演算部340Bは、差が閾値以内でない場合(ステップS304否定)、第2の生成部110の制御信号を生成する(ステップS305)。第2の比較演算部340Bは、第2のWDM信号光パワーS2と、第2の目標信号光パワーT2とが一致するように第2の合成励起光パワーL2を制御すべく、第2の生成部110の制御信号を生成する。第2の励起光制御部350Bは、第2の比較演算部340Bからの制御信号に応じて各励起光源111A~111nの励起光パワーL2A~L2nを設定し(ステップS306)、図8に示すステップS207の処理を完了する。
制御部30は、図8及び図18に示す処理を実行することで、第1のWDM信号光パワーS1と第2のWDM信号光パワーS2とは、夫々、光伝送システムに所要の伝送性能を得るための目標信号光パワーT1及びT2に制御する。
実施例4のラマン光増幅器1Cでは、WDM光伝送システムの帯域増設を行う段階で増設帯域である第2の波長帯域に発生するASS光パワーを測定することなく、第4のASS光パワーA21を算出する第4のモデル式を決定できる。その結果、帯域を増設した場合でも、安定した伝送性能を確保できる。
制御部30は、第1の励起光のパワーに対応した、第1の励起光で第2の波長帯域に生じる第4のASS光パワーA21を算出すると共に、第2の励起光のパワーに対応した、第2の励起光で第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22を算出する。制御部30は、第2の光モニタ部210Bで測定された第2の光パワーSA2から、算出した第3のASS光パワーA22及び第4のASS光パワーA21を差し引いて第2のWDM信号光パワーS2を算出する。更に、制御部30は、第2のWDM信号光パワーS2と第2の目標信号光パワーT2との差に基づき、第2の励起光を調整すべく、第2の生成部110を制御する。その結果、異なる波長帯域を増設する場合でも、第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22及び第4のASS光パワーA21を高精度に算出することで、第2のWDM信号光パワーS2を高精度に算出できるため、安定した伝送性能を確保できる。
制御部30は、第3の波長差に対応する第3のASS光パワーA22の積分値に基づき、第3のASS光のパワーを算出する際に使用する第3のモデル式を決定する。制御部30は、第4の波長差に対応する第4のASS光パワーA21の積分値に基づき、第4のASS光パワーA21を算出する際に使用する第4のモデル式を決定する。その結果、第3のモデル式及び第4のモデル式を用いて、帯域増設による第2の励起光で第2の波長帯域に生じる第3のASS光パワーA22及び第4のASS光パワーA21を高精度に算出できる。
比較演算部340は、第4のASS光パワーA21と第2の波長帯域のWDM信号光の第2の目標信号光パワーT2との和である第2の光パワーの和を算出しても良い。この場合、比較演算部340は、第2の光パワーの和と、第2の光モニタ部210Bでモニタした第2の光パワーSA2とを比較する。そして、比較演算部340は、第2の光パワーSA2と、第2の光パワーの和とが一致するように第2の合成励起光パワーL2の制御信号を生成する。
実施例2及び3のラマン光増幅器1A及び1Bは、実施例4と同様に、第4のASS光パワーA21の第4のモデル式を決定すると共に、第4のモデル式で第2のWDM信号光パワーS2を算出する機能を備えても良く、適宜変更可能である。
図17は、実施例5のラマン光増幅器1Dの一例を示す説明図である。尚、実施例1のラマン光増幅器1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図17に示す光モニタ部20は、第1の光分波器211Aと、第1のフィルタ221Aと、第1の受光素子212Aと、第1の帯域外モニタ部222Aとを有する。
第1の光分波器211Aは、WDMフィルタ200で分岐した第1の波長帯域のWDM信号光の一部の第1のWDM信号光パワーS1を第1のフィルタ221Aに出力する。第1のフィルタ221Aは、第1の波長帯域のWDM信号光を第1の受光素子212Aに出力する。また、第1のフィルタ221Aは、第1の波長帯域以外の波長帯域のWDM信号光であって、第1の波長帯域のWDM信号波長の近傍に生じるASS光パワーを第1の帯域外モニタ部222Aに出力する。第1の受光素子212Aは、第1の波長帯域のWDM信号光をモニタし、モニタ結果を決定部300に出力する。第1の帯域外モニタ部222Aは、ASS光パワーをモニタし、モニタ結果を比較演算部340に出力する。
図18は、実施例5の制御部30の機能構成の一例を示す説明図である。図18に示す制御部30内の第1の比較演算部340Aは、第1の帯域外モニタ部222Aでモニタした第1の帯域外光パワーAO1と、第1の波長帯域の所要ラマン利得から定まる第1の目標ASS光パワーTO1とを比較する。第1の比較演算部340Aは、第1の帯域外光パワーAO1と第1の目標ASS光パワーTO1とが一致するように第1の合成励起光パワーL1を制御すべく、第1の生成部100の制御信号を生成する。
ラマン増幅を行う波長帯域のラマン利得と、発生するASS光パワーとは、同じファイバ種別の場合、増幅媒体となる伝送光ファイバの特性に関係なく、一様の線形の相関性がある。つまり、ファイバ種別と所要利得が定まれば、生じるASS光パワーが定まることを意味する。実施例5では、ラマン利得とASS光パワーとの線形の相関を利用して、所要のラマン利得で生じるASS光パワーを目標ASS光パワーとして、モニタするASS光パワーと目標ASS光パワーとが一致するように励起光パワーを制御する。
次に、実際の運用が行われる段階における実施例5のラマン光増幅器1Dの動作について説明する。図19は、第2の設定処理に関わる制御部30の処理動作の一例を示すフロー図である。第1の比較演算部340Aは、第1の波長帯域の所要ラマン利得から定まる第1の目標ASS光パワーTO1と、第1の帯域外モニタ部220Aでモニタした第1の帯域外光パワーAO1とを比較する。第1の比較演算部340Aは、第1の帯域外ASS光パワーAO1と第1の目標ASS光パワーTO1との差が予め設定した閾値(例えば、0.5dB)以内であるか否かを判定する(ステップS401)。
第1の比較演算部340Aは、第1の帯域外ASS光パワーAO1と目標ASS光パワーTO1との差が閾値以内でない場合(ステップS401否定)、第1の生成部100の制御信号を生成する(ステップS402)。第1の比較演算部340Aは、第1の帯域外ASS光パワーAO1と目標ASS光パワーTO1とが一致するように第1の合成励起光パワーL1を制御すべく、第1の生成部100の制御信号を生成する。第1の励起光制御部350Aは、第1の比較演算部340Aからの制御信号に応じて、各励起光源101A~101mの第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mを設定する(ステップS403)。第1の演算部330Aは、第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mと、第1のモデル式とを用いて第1のASS光パワーA11を算出する(ステップS405)。第2の演算部330Bは、第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nと、第2のモデル式とを用いて第2のASS光パワーA12を算出し(ステップS406)、図8に示すM1に移行する。第2の励起光制御部350Bは、第1の帯域外ASS光パワーAO1と第1の目標ASS光パワーTO1との差が閾値以内の場合(ステップS401肯定)、各第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nを設定すべく、ステップS404に移行する。
ラマン光増幅器1Dでは、第1の帯域外ASS光パワーAO1を第1の目標ASS光パワーTO1と一致するように所要ラマン利得に制御する構成でも、帯域増設を行う段階で増設帯域に発生するASS光パワーを測定することなく、モデル式を決定する。そして、ラマン光増幅器1Dは、モデル式を用いて信号帯域に生じるASS光パワーを算出できる。その結果、既存帯域のWDM信号の信号雑音光比を精度よく管理しながら帯域増設可能なWDM信号の波長帯域を拡大できる。
制御部30は、第1の波長帯域外に生じる第1の帯域外ASS光パワーAO1を測定する。制御部30は、測定した第1の帯域外ASS光パワーAO1と、第1の波長帯域の所要ラマン利得から定まる第1の目標ASS光パワーTO1との差を算出する。制御部30は、第1の帯域外ASS光パワーAO1と第1の目標ASS光パワーTO1との差に基づき、第1の励起光又は第2の励起光のパワーを調整すべく、第1の生成部100又は第2の生成部110を制御する。その結果、異なる波長帯域を増設する段階で増設帯域に発生するASS光パワーを測定せずにモデル式を決定し、第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12を高精度に算出できる。しかも、異なる波長帯域を増設する場合でも、第1の波長帯域に生じる第2のASS光のパワーを高精度に算出することで、安定した伝送性能を確保できる。
図20は、実施例6のラマン光増幅器1Eの一例を示す説明図である。尚、実施例5のラマン光増幅器1Dと同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図20に示す光モニタ部20は、第1の光分波器211Aと、第1のフィルタ221Aと、第1の受光素子212Aと、第1の帯域外モニタ部222Aとを有する。光モニタ部20は、第2の光分波器211Bと、第2のフィルタ221Bと、第2の受光素子212Bと、第2の帯域外モニタ部222Bとを有する。
第1の光分波器211Aは、WDMフィルタ200で分岐した第1の波長帯域のWDM信号光の一部の第1のWDM信号光パワーS1を第1のフィルタ221Aに出力する。第1のフィルタ221Aは、第1の波長帯域のWDM信号光を第1の受光素子212Aに出力する。第1のフィルタ221Aは、第1の波長帯域以外の波長帯域で使用するWDM信号光であって、第1の波長帯域のWDM信号光波長の近傍に生じるASS光パワーを第1の帯域外モニタ部222Aに出力する。第1の受光素子212Aは、第1の波長帯域のWDM信号光をモニタし、モニタ結果を決定部300に出力する。第1の帯域外モニタ部222Aは、ASS光パワーをモニタし、モニタ結果を比較演算部340に出力する。
第2の光分波器211Bは、WDMフィルタ200で分岐した第2の波長帯域のWDM信号光の一部の第2のWDM信号光パワーS2を第2のフィルタ221Bに出力する。第2のフィルタ221Bは、第2の波長帯域のWDM信号光を第2の受光素子212Bに出力する。第2のフィルタ221Bは、第2の波長帯域以外の波長帯域のWDM信号光であって、第2の波長帯域のWDM信号光波長の近傍に生じるASS光パワーを第2の帯域外モニタ部222Bに出力する。第2の受光素子212Bは、第2の波長帯域で使用するWDM信号光をモニタし、モニタ結果を決定部300に出力する。第2の帯域外モニタ部222Bは、ASS光パワーをモニタし、モニタ結果を比較演算部340に出力する。
図21は、実施例6の制御部30の機能構成の一例を示す説明図である。図21に示す制御部30内の第1の比較演算部340Aは、第1の帯域外モニタ部222Aでモニタした第1の帯域外ASS光パワーAO1と、第1の波長帯域の所要ラマン利得から定まる第1の目標ASS光パワーTO1とを比較する。第1の比較演算部341Aは、第1の帯域外ASS光パワーAO1と第1の目標ASS光パワーTO1とが一致するように第1の合成励起光パワーL1を制御すべく、第1の生成部100の制御信号を生成する。第2の比較演算部340Bは、第2の帯域外モニタ部222Bでモニタした第2の帯域外ASS光パワーAO2と、第2の波長帯域の所要ラマン利得から定まる第2の目標ASS光パワーTO2とを比較する。第1の比較演算部340Aは、第2の帯域外ASS光パワーAO2と第2の目標ASS光パワーTO2とが一致するように第2の合成励起光パワーL2を制御すべく、第2の生成部110の制御信号を生成する。第2の比較演算部340Bは、第2の波長帯域の所要ラマン利得から定まる第2の目標ASS光パワーTO2と、第2の帯域外モニタ部220Bでモニタした第2の帯域外ASS光パワーAO2とを比較する。第2の比較演算部340Bは、第2の帯域外ASS光パワーAO2と第2の目標光パワーTO2との差が予め設定した閾値(例えば、0.5dB)以内であるか否かを判定する。
第2の比較演算部340Bは、第2の帯域外ASS光パワーAO2と第2の目標ASS光パワーTO2との差が閾値以内でない場合、第2の合成励起光パワーL2を制御する第2の生成部110の制御信号を生成する。つまり、第2の比較演算部340Bは、第2の帯域外ASS光パワーAO2と第2の目標ASS光パワーTO2とを一致させるべく、第2の合成励起光パワーL2を制御する第2の生成部110の制御信号を生成する。第2の励起光制御部350Bは、第2の比較演算部340Bからの制御信号に応じて、各励起光源111A~111nの励起光パワーL2A~L2nを設定する。
第2の演算部330Bは、第2の励起光の励起光パワーL2A~L2nと、第4のモデル式とを用いて第4のASS光パワーA21を算出する。第1の演算部330Aは、第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mと、第3のモデル式とを用いて第3のASS光パワーA22を算出する。第1の励起光制御部350Aは、第2の帯域外ASS光パワーAO2と第2の目標ASS光パワーTO2との差が閾値以内の場合、各励起光源101A~101mに各第1の励起光の励起光パワーL1A~L1mを設定する。
制御部30は、第1の励起光のパワーに対応した、第1の励起光で第1の波長帯域に生じる第1のASS光パワーA11及び、第2の励起光のパワー対応した、第2の励起光で第1の波長帯域に生じる第2のASS光パワーA12を算出する。制御部30は、第1の光モニタ部210Aで測定された第1の光パワーSA1から、算出した第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12を差し引いて第1のWDM信号光パワーS1を算出する。更に、制御部30は、第1のWDM信号光パワーS1と第1の目標信号光パワーT1との差に基づき、第1の励起光又は第2の励起光を調整すべく、第1の生成部100又は第2の生成部110を制御する。
ラマン光増幅器1Eでは、第2の帯域外ASS光パワーAO2と第2の目標ASS光パワーTO2とが一致するように所要ラマン利得に制御する構成でも、帯域増設を行う段階でも、増設帯域に発生するASS光パワーを測定することなくモデル式を決定する。そして、ラマン光増幅器1Eは、信号帯域に生じるASS光パワーを算出できる。その結果、既存帯域のWDM信号の信号雑音光比を精度よく管理しながらWDM信号の波長帯域を拡大できる。
制御部30は、第2の波長帯域外に生じる第2の帯域外ASS光パワーAO2を測定する。制御部30は、測定した第2の帯域外ASS光パワーAO2と、第2の波長帯域の所要ラマン利得から定まる第2の目標ASS光パワーTO2との差を算出する。制御部30は、第2の帯域外ASS光パワーAO2と第2の目標ASS光パワーTO2との差に基づき、第1の励起光又は第2の励起光のパワーを調整すべく、第1の生成部100又は第2の生成部110を制御する。その結果、異なる波長帯域を増設する段階で増設帯域に発生するASS光パワーを測定せずにモデル式を決定し、第1のASS光パワーA11及び第2のASS光パワーA12を高精度に算出できる。
実施例1乃至6のラマン光増幅器1では、第1及び第2の合成励起光パワーL1及びL2と、第1及び第2の波長帯域に生じる第1及び第2のASS光パワーのモデル式をファイバ種別毎に管理している。第1の波長帯域を運用開始する準備段階で決定部300によって測定した励起光パワーとASS光パワーの測定結果とに基づき、夫々のモデル式に使用する係数を補正する構成としても良く、適宜変更可能である。
図22Aは、第1の合成励起光L1と第1のASS光パワーA11との関係の一例を示す説明図である。図22Aに示す特性では、代表的な光ファイバの場合、第1の合成励起光L1の変化に応じて第1の波長帯域(C帯)に生じる第1のASS光パワーA11の変化(破線)を示している。運用光ファイバの場合、第1の合成励起光L1の変化に応じて第1の波長帯域(C帯)に生じる第1のASS光パワーA11の変化(実線)を示している。図22Aに示す特性は、第1のASS光パワーA11を算出する際に使用する第1のモデル式である。運用光ファイバは、代表的な光ファイバに比較して第1のASS光パワーA11を抑制できる。
図22Bは、第2の合成励起光L2と第2のASS光パワーA12との関係の一例を示す説明図である。図22Bに示す特性では、代表的な光ファイバの場合、第2の合成励起光L2の変化に応じて第1の波長帯域(C帯)に生じる第2のASS光パワーA12の変化(破線)を示している。運用光ファイバの場合、第2の合成励起光L2の変化に応じて第1の波長帯域(C帯)に生じる第2のASS光パワーA12の変化(実線)を示している。図22Bに示す特性は、第2のASS光パワーA12を算出する際に使用する第2のモデル式である。運用光ファイバは、代表的な光ファイバに比較して第2のASS光パワーA12を抑制できる。
図22Cは、第2の合成励起光L2と第3のASS光パワーA22との関係の一例を示す説明図である。図22Cに示す特性では、代表的な光ファイバの場合、第2の合成励起光L2の変化に応じて第2の波長帯域(L帯)に生じる第3のASS光パワーA22の変化(破線)を示している。運用光ファイバの場合、第2の合成励起光L2の変化に応じて第2の波長帯域(L帯)に生じる第3のASS光パワーA22の変化(実線)を示している。図22Cに示す特性は、第3のASS光パワーA22を算出する際に使用する第3のモデル式である。運用光ファイバは、代表的な光ファイバに比較して第3のASS光パワーA22を抑制できる。
図22Dは、第1の合成励起光L1と第4のASS光パワーA21との関係の一例を示す説明図である。図22Dに示す特性では、代表的な光ファイバの場合、第1の合成励起光L1の変化に応じて第2の波長帯域(L帯)に生じる第4のASS光パワーA21の変化(破線)を示している。運用光ファイバの場合、第1の合成励起光L1の変化に応じて第2の波長帯域(L帯)に生じる第4のASS光パワーA21の変化(実線)を示している。図22Dに示す特性は、第4のASS光パワーA21を算出する際に使用する第4のモデル式である。運用光ファイバは、代表的な光ファイバに比較して第4のASS光パワーA21を抑制できる。
第1の波長帯域(C帯)の運用を開始する準備段階では、代表的な光ファイバの励起光パワー及びASS光パワーの相関と、運用光ファイバの測定した励起光パワー及びASS光パワーの相関とに基づいて補正モデル式を決定しても良い。尚、補正モデル式は、励起光パワーに対する代表的な光ファイバと実際の伝送光ファイバ2で生じる第1のASS光パワーA11との差に関するモデル式である。この場合、補正モデル式を補正メモリに格納しても良い。
第1の決定部300A~第4の決定部300Dは、補正メモリに格納された補正モデル式と、第1のメモリ320A~第4のメモリ320Dに格納された代表的な光ファイバのモデル式とを用いて、実際に運用する第1~第4のモデル式を決定する。そして、第1の決定部300A~第4の決定部300Dは、決定した第1~第4のモデル式を第1のメモリ320A~第4のメモリ320Dに格納しても良い。
第1の演算部330A~第4の演算部330Dは、補正後のモデル式と、第1の励起光又は第2の励起光の励起光パワーとを用いて、第1の波長帯域のASS光パワー及び第2の波長帯域のASS光パワーを算出しても良い。
また、本実施例では、第1の波長帯域をC帯、第2の波長帯域をL帯としたが、第1の波長帯域をL帯、第2の波長帯域をC帯にしても良く、適宜変更可能である。また、波長帯域は、C帯とL帯に限定されるものではなく、例えば、S帯、O帯、E帯やU帯に適用しても良く、適宜変更可能である。尚、O帯(Original Band)は、1260nm~1360nmの波長帯域、E帯(Extended Band)は、1360nm~1460nmの波長帯域、S帯(Short Band)は、1460nm~1530nmの波長帯域である。U帯(Ultra-Long Band)は、1625nm~1675nmの波長帯域である。
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。