JP7074580B2 - シミュレーター、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラム - Google Patents
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Description
例えば特許文献1には、火災発生時の群集の移動を予測する際に、群集は避難方向の指示(避難誘導)があれば直感に逆らってでもそれに従うものと仮定し、群集に作用する力として避難誘導による誘導ポテンシャルを想定して、群集の移動速度に作用させるシミュレーターが記載されている。
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、移動目標位置に応じて異なる動線へ個体を誘導したときの行動を予測できるシミュレーションを実現することを目的とする。
すなわち、本実施形態において、シミュレーションの対象となる空間(対象空間)はT字路であり、群集を構成する個体は人であり、各個体の目的は連絡口の先にある施設等により提供される役務などである。
また、この実施形態においては、シミュレーションの実施者(以下、利用者と称する)が、シミュレーターを用いて、T字路に右側通行で運用する施策を適用した場合の群集の行動を予測する様子を例にして説明を行う。
図1は、実施形態に係るシミュレーターの一例の概略構成図である。
シミュレーター1は、操作入力部2、ファイル入出力部3、記憶部4、制御部5、および表示部6からなる。これらのうちのファイル入出力部3、記憶部4および制御部5はいわゆるコンピュータで実現でき、操作入力部2および表示部6は当該コンピュータの周辺機器として実現できる。
図2は、実施形態に係るシミュレーター1の一例の機能ブロック図である。
操作入力部2は、条件設定手段20の一部等として機能し、ファイル入出力部3は条件設定手段20の一部および予測結果出力手段52の一部等として機能する。
記憶部4は空間情報記憶手段40、誘引領域記憶手段41および個体情報記憶手段42等として機能する。
制御部5は、CPU、DSP、MCU等の演算装置によって記憶部4に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、行動決定手段50、個体情報変更手段51および予測結果出力手段52の一部等として機能する。
図3(a)を参照する。空間情報は、例えば2次元xy座標系に定義された対象空間内の移動可能領域の地図100を有している。地図100は、ハッチングで示された移動可能領域110を表す座標情報を含んでおり、図3(a)の例では、移動可能領域110は、座標(0,20)-(30,20)-(30,10)-(20,10)-(20,0)-(10,0)-(10,10)-(0,10)を結ぶT字型の閉多角形として定義されている。
例えば移動目標位置は、西側連絡口、東側連絡口及び南側連絡口の位置をそれぞれ示す線状の領域であってよい。図3(a)の例では、西側連絡口I、東側連絡口II及び南側連絡口IIIの目標位置IDをそれぞれ「I」、「II」及び「III」とし、それぞれの位置を、線分(0,20)-(0,10)、線分(30,10)-(30,20)及び線分(10,0)-(20,0)に設定する。
また、空間情報は、移動目標位置のもう一つの補助情報として、各移動目標位置への代表経路を形成するための中間目標点も記憶してよい。中間目標点は、対象空間に障害物がある場合に、障害物を回避する経路の中間点となるように適宜設定してよい。図3(b)の例では、Pi1(11,11)及びPi2(19,11)が中間目標点として設定されている。
案内は、例えば指示、表示、サイン、空間形状、音声案内などであり、誘引は、案内によって個体が引き寄せられる作用である。誘引領域は、移動可能領域内に設定される。
上記例では、誘引領域内に案内が表示されたが、誘引領域は、案内が表示される場所と一致する必要はなく、さらには視覚以外で知覚される案内に対応した領域であってもよい。
また例えば、右側通行の道路区間内および/または当該道路区間付近に向けて行われる右側通行の案内放送に対応して当該道路区間の右側に設定される誘引領域は、視覚以外により知覚される指示や案内により個体が誘引される誘引領域の一例である。
図4を参照する。誘引領域情報120は、複数の誘引領域それぞれについての、誘引領域ID、移動目標位置情報、座標情報、誘引度、標準速度の情報を有する。誘引領域記憶手段41には、誘引領域ごとに誘引領域ID、移動目標位置情報、座標情報、誘引度、標準速度が対応付けられて記憶される。
移動目標位置情報は、誘引領域に誘引する対象となる個体の移動目標位置を示す。すなわち、誘引領域は、特定の移動目標位置へ移動する個体を誘引するように設定されており、移動目標位置情報は、特定の移動目標位置と、この移動目標位置へ移動する個体を誘引する誘引領域との対応付けを示す。
例えば、東西に延在した右側通行の道路に対し、東に向かう人に作用する誘引領域は当該道路内の南側に設定され、西に向かう人に作用する誘引領域は当該道路内の北側に設定される。
誘引度は、誘引領域への個体の誘引し易さの度合いを表す。
標準速度は、誘引領域における個体の標準的な速度ベクトル(単位時間当たりの移動量)を表す。
例えば第4行は、誘引領域ID「iv」を有する誘引領域は、移動目標位置II(すなわち東側連絡口II)に対応付けられ、座標(0,15)-(0,10)-(15,10)-(15,15)を結ぶ矩形領域であり、誘引度「1.0」、標準速度(1,0)を有することを表している。
図4に示す誘引領域情報120により設定された誘引領域ID「i」~「ix」の誘引領域121~129を、図5(a)~図5(i)にそれぞれ示す。なお、同一の移動目標位置に対応付けられる複数の誘引領域が、重複部分を有するように設定してもよい。
図6(a)及び図6(b)に、それぞれ個体情報130及び131の一例を示す。図6(a)の個体情報130は時刻に依存しない情報であり、図6(b)の個体情報131は時刻に依存する個体情報である。なお、図6(a)及び図6(b)に示す個体情報130及び131は、あくまで一例であり、本発明の個体情報の構成はこれに限定されるものではない。
(個体の状態値)
状態値は、各仮想時刻における各個体の状態を示す。本実施形態において状態値は、対象空間における個体の位置を示す。
各個体の位置の初期値は、条件設定手段20を用いた利用者による入力操作により初期位置として設定される。本実施形態において各個体の位置の初期値は西側連絡口I、東側連絡口II、南側連絡口IIIのいずれかであってよい。
初期位置の設定後、各個体の位置は、仮想時刻の経過とともに個体情報変更手段51によって随時更新される。例えば、仮想時刻「1」において個体ID「0」の個体は、位置(17.78,1.3)へ移動し、仮想時刻「463」までに西側連絡口Iの位置(0,15.21)まで移動している。
行動パラメータは、各仮想時刻における各個体の行動を表し、状態値に作用するパラメータである。
例えば行動パラメータは、各個体の行動の目的と、当該目的を達成するために当該個体が決定した行動の手段と、当該個体が当該行動の手段を実行することによる単位時間当たりの(1仮想時刻ごとの)状態値の変更量(状態変更量)とを含んでよい。
また例えば、本実施形態における行動の手段は移動目標位置への移動であり、行動の手段として移動目標として選択された移動目標位置の目標位置IDを行動パラメータとして記憶してよい。以下、移動目標として選択された移動目標位置を「選択目標位置」と表記することがある。
なお、行動の手段である選択目標位置は行動の目的に応じて定められ、本実施形態のシミュレーター1は、選択目標位置が設定された後の処理に関するものであるため、以下、行動の目的に関する記述は省略する。
例えば、北に1単位距離だけ移動する場合の移動量は(0,1)、北西に1単位距離だけ移動する場合の移動量は(0.707,-0.707)、…などと記憶される。仮想時刻tの位置が(5,15)である個体の移動量が(0,1)であれば、仮想時刻(t+1)の位置は(5,16)に更新される。
被誘引度は個体の個性を表現するパラメータであり、各個体の誘引領域への誘引されやすさの度合いを表す値である。被誘引度が高い個体ほど誘引領域に誘引され易く、低い個体ほど誘引され難い。被誘引度の初期値は、条件設定手段20を用いた利用者による入力操作により予め設定され、その後に個体情報変更手段51により適宜に更新される。
なお、個体ごとの被誘引度を考慮しない実施形態では、個体情報に被誘引度を含まなくてもよい。
例えば、被誘引度の値域は「0」以上「1」以下である。例えば、被誘引度が「0」である個体に対応する人物は、現実世界において右側通行等の案内を全く無視して行動する人物であり、被誘引度が「1」である個体に対応する人物は現実世界において右側通行等の案内を頑なに守る人物である。
時定数は、条件設定手段20を用いた利用者による入力操作により予め設定される。
例えば、時定数の値域は「1」以上「1000」以下である。
図6(a)の例では、個体ID「0」の個体の時定数として値「1」が設定され、個体ID「1」の個体の時定数として値「1000」が設定されている。
作用領域は、個体情報変更手段51により算出され、更新される。
添え字i(i=1,2,…,M:Mは全個体数)は注目する個体を表すインデックスであり、添え字iとして個体IDを用いてもよい。以下、個体IDが「i」である個体を個体iと表記することがある。
図6(b)の例では、仮想時刻「0」では個体ID「0」の個体の作用領域は、位置(17.78,0)を中心とし、中心線Lcの方向が移動量と同じベクトル(0,1.3)で表される中心角60°及び半径5単位距離の扇形の領域である。
本実施形態においては、人物が時間を追って次々と連絡口経由で対象空間に現れる様子を模擬するために個体ごとの生成時刻を設定するが、仮想時刻が0の時点で全個体が存在している対象空間を模擬する場合は生成時刻の設定を省略してもよい。
図6(a)の例では、個体ID「0」及び「1」の個体は仮想時刻「0」で対象空間に出現し、個体ID「99」の個体は仮想時刻「42」で対象空間に出現する。
行動決定手段50は、これらの情報に基づいて、個体ごとの行動パラメータを決定し(すなわち個体ごとの行動を決定し)、決定した行動パラメータを個体情報変更手段51に出力する。
まず、行動決定手段50は、個体i(i=1,2,…,M)のそれぞれについて、仮想時刻tにおいて個体iが自身の位置を選択目標位置に近付けるための加速度ベクトルei(t)を算出する。
行動決定手段50は、移動可能領域内110において、個体iの位置xi(t)と選択目標位置の代表点を結ぶ経路、および任意の中間目標点を介して個体iの位置xi(t)と代表点を結ぶ経路のうちの最短経路を選択する。このとき、行動決定手段50は、移動可能領域110から逸脱する経路を選択対象から除外してもよい。
行動決定手段50は、個体iの位置xi(t)から短期目標点に向かう単位ベクトルを選択目標位置に近付ける加速度ei(t)として算出する。
なお、中間目標点を設定せずに、個体iの位置xi(t)から選択目標位置の代表点に向かう単位ベクトルeをベクトルei(t)として算出してもよい。
行動決定手段50は、個体iの位置xi(t)と個体iの作用領域情報に基づいて対象空間内における個体iの作用領域Riを算出する。行動決定手段50は、誘引領域の中から、作用領域Riとの重複領域を有し且つ選択目標位置と同じ移動目標位置に対応付けられている誘引領域を検出する。
作用領域Riとの重複領域Roを有し且つ選択目標位置IIと同じ移動目標位置に対応付けられている誘引領域が検出された場合、行動決定手段50は、個体iが当該誘引領域の誘引対象個体ξであると判定し、次式(1)に従い0ベクトルではないベクトルai(t)を算出する。
作用領域Riとの重複領域Roを有し且つ選択目標位置IIと同じ移動目標位置に対応付けられている誘引領域が検出されない場合、行動決定手段50は、個体iが誘引領域の誘引対象個体ξでないと判定し、次式(2)に従ってベクトルai(t)を0ベクトルとする。
また、ベクトルxr(t-1)は、仮想時刻(t-1)における個体iの作用領域Riに設定され且つ誘引領域内に含まれたサンプル点(すなわち重複領域Ro内のサンプル点)の座標である。ベクトルxi(t-1)は、仮想時刻(t-1)における個体iの位置の座標である。また、Normalize(・)はベクトルを単位ベクトル化(正規化)する演算子である。
また、変数Srはサンプル点rを含む誘引領域に設定されている誘引度を示す。式(1)において誘引度Srは、ベクトルxr(t-1)とベクトルxi(t-1)の差ベクトルに乗じられる。
このため、式(1)に従うことにより、個体iの選択目標位置に対応する誘引領域へと個体iを近付ける方向を示すベクトルを、個体iを誘引領域に近付ける加速度ai(t)として算出できる。
すなわち、個体iの選択目標位置に対応する誘引領域と個体iとの間の距離が基準を下回る誘引対象個体を、誘引領域へと近づける加速度ai(t)を算出できる。
以上のように加速度ai(t)を算出することにより、選択目標位置の異なる個体それぞれの、選択目標位置に応じて異なる誘引の影響下での行動を予測できる。よって、複数の移動目標位置のそれぞれに応じた誘導が行われる空間における群集の行動を予測することが可能となる。
さらに、重複領域Roを有する誘引領域が複数検出された場合、ベクトルai(t)は、各誘引領域の重複領域Roに含まれるサンプル点数についての平均となっているため、重複領域Roの面積が大きな誘引領域ほどベクトルai(t)に対する寄与が高くなる。
したがって、誘引度が高い誘引領域ほどより誘引対象個体を近付けやすい加速度ai(t)を算出でき、また、重複領域Roがより大きな誘引領域へ誘引対象個体を近付けやすい加速度ai(t)を算出できる。
なお、図7に示す扇形の作用領域Riに代えて、個体iの位置xi(t)を中心とする半径Rの円形領域を作用領域Riとしてもよい。
作用領域Riとの重複領域Roを有し且つ選択目標位置IIと同じ移動目標位置に対応付けられている誘引領域が検出された場合、個体iは当該誘引領域の誘引対象個体ξであると判定して、式(4)に従い0ベクトルではないベクトルbi(t)を算出する。
これにより、複数の移動目標位置のそれぞれに応じた速度規制の運用施策が行われる空間における群集の行動を予測することが可能となる。また、通路に沿った移動など現実世界の個体の行動に近い滑らかな動きを予測できる。
ni(t)は、誘引領域に近付ける加速度ai(t)に乗じられている。このため、被誘引度が高いほど加速度ベクトルΔvi(t)に対する加速度ai(t)の寄与が大きくなる。
したがって、被誘引度ni(t)が高い個体iほど誘引領域により近づける加速度Δvi(t)を算出できる。
なお、個体iごとの被誘引度ni(t)を考慮しない実施形態では、式(6)からni(t)を省略してもよい。
なお、式(7)の演算の結果、ベクトルvi(t)が最大速さVmaxを超えた場合、行動決定手段50は、ベクトルvi(t)を最大速さVmaxに補正する。最大速さVmaxは、例えば個体や空間の種類に応じた値に予め設定してよい。
また、誘引領域の標準速度に近づける加速度bi(t)を加えて得られる加速度Δvi(t)に基づいて移動量を算出することによって、速度規制など誘引領域の標準速度に合わせようとする個体iの移動量を予測することができる。
個体情報を新規作成する際、個体情報変更手段51は、条件設定手段20により設定された条件に従って適宜に新規の個体情報を作成し、個体情報記憶手段42に追加記憶させる。
個体情報を更新する際、個体情報変更手段51は、各個体の状態値を当該個体の行動パラメータにて更新する。
個体情報変更手段51は、例えば図7に示す扇形の作用領域Ri内の個体を周囲個体として検出してよい。この場合、個体情報変更手段51は、個体情報記憶手段42から現存する各個体の位置と作用領域情報を読み出し、個体iの位置と個体iの作用領域情報から対象空間内における個体iの作用領域Riを算出し、作用領域Ri内に存在する個体i以外の個体を周囲個体として検出する。
周囲個体が存在しない場合は、個体情報変更手段51は、注目する個体iの被誘引度を当該個体iの被誘引度の初期値に近づける更新を行う。
具体的には、個体情報変更手段51は次式(8)及び(9)に従って被誘引度ni(t)を更新する。
式(9)により、注目する個体iに周囲個体が存在しない場合は、時間の経過とともに当該個体の被誘引度を初期値に戻すことができる。この更新は、現実世界において、周囲個体との同調により変化していた被誘引度が、時間の経過とともに本来の被誘引度に戻ることに相当する。
個体情報変更手段51は、移動目標位置に到達した個体を削除する。この処理は、該当する個体の個体情報を行動決定手段50の処理対象外に設定することを意味する。
予測結果出力手段52は、出口を含む対象空間の地図を画像化するとともに当該画像上の各個体の位置と対応する座標に個体を表す図形を重畳描画して予測結果の画像を生成し、生成した画像をファイルとして出力し、および/または表示部6に出力する。
図10~図12のフローチャートを参照してシミュレーター1の動作例を説明する。
ステップS1において、条件設定手段20が利用者からの入力を受け付けてシミュレーションの条件を設定する。すなわち、利用者が条件設定手段20を用いて手入力することによって得られたシミュレーションの条件を、空間情報記憶手段40、誘引領域記憶手段41、個体情報記憶手段42に設定する。
シミュレーションの条件は、利用者が条件設定手段20を用いてファイルを指定しそれに応じた条件設定手段20が該当するファイルから読み出して取得してもよい。
仮想時刻のループ処理では、まずステップS3にて各個体の被誘引度を更新する被誘引度更新処理が行われる。
図11を参照して、ステップS3の被誘引度更新処理を説明する。
ステップS31において個体情報変更手段51は、個体情報記憶手段42から個体iの位置と作用領域情報を読み出し、個体iの位置と個体iの作用領域情報から個体iの作用領域Riを算出する。
ステップS33において個体情報変更手段51は、周囲個体が存在するか否かを判定する。周囲個体が存在する場合(S33:Y)に処理はステップS34に進む。周囲個体が存在しない場合(S33:N)に処理はステップS35に進む。
ステップS35において個体情報変更手段51は、個体情報記憶手段42から個体iの被誘引度の初期値を読み出す。個体情報変更手段51は、式(9)に従って、処理対象の個体iの被誘引度を初期値に近づける。その後に処理はステップS36に進む。
図12を参照してステップS4の行動決定処理を説明する。
ステップS40において行動決定手段50は、現存する個体の各々を順次処理対象の個体iに設定する。
ステップS43において行動決定手段50は、誘引領域記憶手段41から、全ての誘引領域の座標情報と誘引領域に対応付けられた移動目標位置とを読み出す。行動決定手段50は、作用領域Riとの重複領域Roを有し且つ個体iの選択目標位置と同じ移動目標位置に対応付けられている誘引領域を検出する。誘引領域がある場合(S43:Y)に処理はS44へ進む。誘引領域がない場合(S43:N)に処理はS47へ進む。
ステップS45において行動決定手段50は、検出した誘引領域の標準速度を誘引領域記憶手段41から読み出す。行動決定手段50は、式(4)に従って、個体iの移動量を標準速度に近付ける加速度bi(t)を算出する。
作用領域Riとの重複領域Roを有し且つ個体iの選択目標位置に対応付けられている誘引領域が検出されなかった場合(ステップS43:N)は、ステップS47において行動決定手段50は、加速度ai(t)及び加速度bi(t)が0ベクトルとして個体iの加速度Δvi(t)を算出する。その後に処理はステップS48に進む。
ステップS49において行動決定手段50は、現存する個体の全てについて処理を完了したか否かを判定する。現存する個体の全てについて処理を完了した場合(S49:Y)に行動決定処理は終了し、処理は図10のステップS5へ戻る。現存する個体の全てについて処理を完了していない場合(S49:N)に処理はS41へ戻る。
ステップS7において個体情報変更手段51は、移動目標位置に到達した個体を削除する。
ステップS10において予測結果出力手段52は、シミュレーションの結果である予測結果を出力する。その後に処理は終了する。
(1)上記の実施形態では、個体情報記憶手段42が個体ごとに被誘引度を記憶する例を示したが、シミュレーションの目的によっては被誘引度を一律の値としてもよい。この場合、個体情報記憶手段42が記憶する項目から被誘引度を除外し、行動決定手段50のプログラムに被誘引度を定数として記述してもよい。
(2)上記実施形態およびその変形例では、個体情報変更手段51が個体の被誘引度を変更する例を示したが、シミュレーションの目的によっては被誘引度を経時変化させなくてもよい。その場合、個体情報変更手段51による被誘引度の更新処理を省略してもよい。
この場合、例えば個体情報変更手段51は、行動決定手段50が決定した移動量を対象空間内で個体同士が重ならないように補正した更新を行ってよい。
(1)シミュレーター1は、所定の対象空間における個体の移動を予測する。空間情報記憶手段40は、対象空間に設定された複数の移動目標位置を含んだ空間情報を記憶する。誘引領域記憶手段41は、複数の移動目標位置のいずれかへ移動する個体が誘引されるように設定された誘引領域を、当該移動目標位置と対応付けて記憶する。個体情報記憶手段42は、空間における個体の位置、および個体の目標として複数の移動目標位置の中から選択された選択目標位置を少なくとも含む個体情報を記憶する。行動決定手段50は、選択目標位置に対応し且つ個体の周囲に位置する誘引領域と選択目標位置との両方へ、個体を近づける移動量を設定する。個体情報変更手段51は、個体の位置を移動量に応じて更新する。
また、誘引領域に誘引され選択目標位置へと移動する個体は、誘引領域内を移動する動線を形成する。したがって、本発明によれば、移動目標位置に応じて異なる動線へ個体を誘導したときの行動を予測できる。
これにより、誘引領域ごとに個体を誘引し易さが異なる空間における群集の行動を予測することが可能となる。
これにより、個体の移動方向(すなわち個体が影響を受けやすい方向)に存在する誘引領域に近付ける移動量を設定できる。また、個体が影響を受けにくい範囲に誘引領域が設定されていても、その影響を防止して現実世界の個体の行動に近い滑らかな動きを予測できる。
Claims (6)
- 所定の空間における個体の移動を予測するシミュレーターであって、
前記空間に設定された複数の移動目標位置を含んだ空間情報を記憶している空間情報記憶手段と、
前記複数の移動目標位置のいずれかへ移動する前記個体が自領域に誘引されるように設定された誘引領域を、当該移動目標位置と対応付けて記憶する誘引領域記憶手段と、
前記空間における前記個体の位置、および前記個体の目標として前記複数の移動目標位置の中から選択された選択目標位置を少なくとも含む個体情報を記憶する個体情報記憶手段と、
前記選択目標位置に近づく第1の方向と、前記選択目標位置に対応し且つ前記個体の周囲に位置する前記誘引領域に近づく第2の方向と、を合成した方向に前記個体を移動させる移動量を設定する行動決定手段と、
前記個体の位置を前記移動量に応じて更新する個体情報変更手段と、
を備えることを特徴とするシミュレーター。 - 所定の空間における個体の移動を予測するシミュレーターであって、
前記空間に設定された複数の移動目標位置を含んだ空間情報を記憶している空間情報記憶手段と、
前記複数の移動目標位置のいずれかへ移動する前記個体が誘引されるように設定された誘引領域を、当該移動目標位置と対応付けて記憶する誘引領域記憶手段と、
前記空間における前記個体の位置、および前記個体の目標として前記複数の移動目標位置の中から選択された選択目標位置を少なくとも含む個体情報を記憶する個体情報記憶手段と、
前記選択目標位置に対応し且つ前記個体の周囲に位置する前記誘引領域と前記選択目標位置との両方へ、前記個体を近づける移動量を設定する行動決定手段と、
前記個体の位置を前記移動量に応じて更新する個体情報変更手段と、
を備え、
前記誘引領域記憶手段は、前記誘引領域ごとに誘引し易さの度合いを表す誘引度を記憶し、
前記行動決定手段は、前記誘引度が高い前記誘引領域ほど前記個体を前記誘引領域へ近づける前記移動量を設定する、ことを特徴とするシミュレーター。 - 前記誘引領域記憶手段は、前記誘引領域ごとに予め定められた標準速度を記憶し、
前記行動決定手段は、前記個体の前記移動量を、前記選択目標位置に対応する前記誘引領域の前記標準速度に近づけることを特徴とする請求項1又は2に記載のシミュレーター。 - 前記個体情報記憶手段は、さらに前記個体に設定された前記移動量を記憶し、
前記行動決定手段は、前記個体情報記憶手段に記憶された前記移動量が示す前記個体の移動方向に偏って広がるように前記個体の周囲に設定された作用領域に前記誘引領域が存在する場合に、前記誘引領域と前記選択目標位置との両方へ前記個体を近づける移動量を設定し、前記作用領域に前記誘引領域が存在しない場合に前記選択目標位置へ前記個体を近づける移動量を設定する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシミュレーター。 - 所定の空間における個体の移動を予測するシミュレーション方法であって、
前記空間に設定された複数の移動目標位置を含んだ空間情報と、前記複数の移動目標位置のいずれかへ移動する前記個体が自領域に誘引されるように設定された誘引領域が当該移動目標位置と対応付けられている誘引領域情報と、前記空間における前記個体の位置、および前記個体の目標として前記複数の移動目標位置の中から選択された選択目標位置を少なくとも含む個体情報と、を記憶装置に記憶しているコンピュータに、
前記選択目標位置に近づく第1の方向と、前記選択目標位置に対応し且つ前記個体の周囲に位置する前記誘引領域に近づく第2の方向と、を合成した方向に前記個体を移動させる移動量を設定する処理と、
前記個体の位置を前記移動量に応じて更新する処理と、
を実行させることを特徴とするシミュレーション方法。 - 所定の空間における個体の移動をコンピュータに予測させるシミュレーションプログラムであって、
前記空間に設定された複数の移動目標位置を含んだ空間情報と、前記複数の移動目標位置のいずれかへ移動する前記個体が自領域に誘引されるように設定された誘引領域が当該移動目標位置と対応付けられている誘引領域情報と、前記空間における前記個体の位置、および前記個体の目標として前記複数の移動目標位置の中から選択された選択目標位置を少なくと
も含む個体情報と、を記憶装置に記憶している前記コンピュータに、
前記選択目標位置に近づく第1の方向と、前記選択目標位置に対応し且つ前記個体の周囲に位置する前記誘引領域に近づく第2の方向と、を合成した方向に前記個体を移動させる移動量を設定する処理と、
前記個体の位置を前記移動量に応じて更新する処理と、
を実行させることを特徴とするシミュレーションプログラム。
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JP2018116416A JP7074580B2 (ja) | 2018-06-19 | 2018-06-19 | シミュレーター、シミュレーション方法及びシミュレーションプログラム |
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