JP7074281B2 - 圧電繊維構造体、圧電織物、圧電編物、圧電デバイス、力センサー、アクチュエータ、及び圧電繊維構造体の製造方法 - Google Patents

圧電繊維構造体、圧電織物、圧電編物、圧電デバイス、力センサー、アクチュエータ、及び圧電繊維構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、圧電繊維構造体、圧電織物、圧電編物、圧電デバイス、力センサー、アクチュエータ、及び圧電繊維構造体の製造方法に関する。
近年、ヘリカルキラル高分子を含む圧電体を、センサー、アクチュエータ等の圧電デバイスへ応用をすることが検討されている。このような圧電デバイスには、フィルム形状の圧電体が用いられている。
上記圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子として、ポリペプチド、ポリ乳酸系高分子等の光学活性を有する高分子を用いることが着目されている。中でも、ポリ乳酸系高分子は、機械的な延伸操作のみで圧電性を発現することが知られている。ポリ乳酸系高分子を用いた圧電体では、ポーリング処理が不要であり、また、圧電性が数年にわたり減少しないことが知られている。
例えば、ポリ乳酸系高分子を含む高分子圧電材料として、圧電定数d14が大きく、透明性に優れる高分子圧電材料が報告されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
また、最近、圧電性を有する材料を、導体に被覆して利用する試みもなされている。
例えば、中心から外側に向って順に同軸状に配置された中心導体、圧電材料層、外側導体及び外被から構成される、ピエゾケーブルが知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、ポリフッ化ビニリデン又はポリ乳酸を含む圧電性高分子からなる繊維を導電性繊維に被覆してなる圧電素子が知られている(例えば、特許文献4参照)。
更に、中心糸に圧電性L型ポリ乳酸(PLLA)の糸、スリットリボン等を巻回し、圧電性を有し、かつ、抗菌性を示す圧電性抗菌ファブリックが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
特許第4934235号公報 国際公開第2010/104196号 特開平10-132669号公報 国際公開第2014/058077号
第34回 強誘電体応用会議(2017年)、03―M―03 「ポリ乳酸繊維を用いた圧電性抗菌ファブリック」
ところで、特許文献1及び特許文献2に記載のフィルム形状の高分子圧電材料を圧電体として、凹凸が大きい場所、変形量が大きい場所等で使用した場合(例えば、ウェアラブル製品の一部又は全部として使用した場合)、変形により圧電体中に折れ、シワ等の損傷が生じるおそれがある。その結果、圧電体の圧電感度(例えば、圧電体をセンサーとして用いた場合のセンサー感度、及び、圧電体をアクチュエータとして用いた場合の動作感度が挙げられる。以下同じ。)が低下する場合がある。
また、非特許文献1では、抗菌性を有する圧電繊維構造体について記載されているが、非特許文献1以外の構成にて抗菌性に優れた圧電繊維構造体が求められている。
そこで、本発明は、抗菌性に優れた圧電繊維構造体、圧電織物、圧電編物、圧電デバイス、力センサー、アクチュエータ、及び圧電繊維構造体の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を達成するための具体的手段は、以下の通りである。
<1> 光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む圧電繊維(A)と、前記ヘリカルキラル高分子(A)とキラリティが異なり、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(B)を含む圧電繊維(B)と、を含み、前記圧電繊維(A)と前記圧電繊維(B)とが巻回されている圧電繊維構造体。
<2> 前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)の少なくとも一方は、下記式(a)によって求められる配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲である<1>に記載の圧電繊維構造体。
配向度F=(180°-α)/180°・・(a)
(ただし、αは配向由来のピークの半値幅を表す。)
<3> 前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)は、同一方向に螺旋状に巻回されている<1>又は<2>に記載の圧電繊維構造体。
<4> 前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)は、螺旋軸に対して15°~75°の角度で巻回されている<3>に記載の圧電繊維構造体。
<5> 前記ヘリカルキラル高分子(A)及び前記ヘリカルキラル高分子(B)は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子である<1>~<4>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体。
Figure 0007074281000001
<6> 前記ヘリカルキラル高分子(A)は、構造単位としてL体成分を50モル%超含み、前記ヘリカルキラル高分子(B)は、構造単位としてD体成分を50モル%超含む<1>~<5>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体。
<7> 前記ヘリカルキラル高分子(A)は、構造単位としてL体成分を90モル%以上含み、前記ヘリカルキラル高分子(B)は、構造単位としてD体成分を90モル%以上含む<1>~<6>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体。
<8> 前記圧電繊維(A)に含まれる前記ヘリカルキラル高分子(A)の含有率は、前記圧電繊維(A)全量に対し、80質量%以上であり、前記圧電繊維(B)に含まれる前記ヘリカルキラル高分子(B)の含有率は、前記圧電繊維(B)全量に対し、80質量%以上である<1>~<7>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体。
<9> 前記圧電繊維(A)は、前記ヘリカルキラル高分子(A)を含む糸状繊維(A)が一方向に螺旋状に巻回されてなり、前記圧電繊維(B)は、前記ヘリカルキラル高分子(B)を含む糸状繊維(B)が前記糸状繊維(A)と同一の方向に螺旋状に巻回されてなる<1>~<8>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体。
<10> 前記圧電繊維(A)は、前記糸状繊維(A)が螺旋軸に対して15°~75°の角度で巻回されており、前記圧電繊維(B)は、前記糸状繊維(B)が前記糸状繊維(A)と同一の方向に螺旋軸に対して15°~75°の角度で巻回されている<9>に記載の圧電繊維構造体。
<11> 縦糸及び横糸からなる織物構造体を備え、前記縦糸及び前記横糸の少なくとも一方が、<1>~<10>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体を含む圧電織物。
<12> <1>~<10>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体を含む編物構造体を備える圧電編物。
<13> <11>に記載の圧電織物又は<12>に記載の圧電編物を備える圧電デバイス。
<14> <1>~<10>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体を備える力センサー。
<15> <1>~<10>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体を備えるアクチュエータ。
<16> <1>~<10>のいずれか1つに記載の圧電繊維構造体を製造する圧電繊維構造体の製造方法であって、前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)を準備する工程と、準備した前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)を巻回する工程と、を含む圧電繊維構造体の製造方法。
本発明によれば、抗菌性に優れた圧電繊維構造体、圧電織物、圧電編物、圧電デバイス、力センサー、アクチュエータ、及び圧電繊維構造体の製造方法を提供することができる。
図1は、本開示の圧電繊維構造体の具体的態様を示す側面図である。 図2は、本開示の圧電編物の具体的態様を示す概略図である。 図3は、本開示の圧電繊維の具体的態様1を示す側面図である。 図4は、本開示の圧電繊維の具体的態様2を示す側面図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
〔圧電繊維構造体〕
本開示の圧電繊維構造体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む圧電繊維(A)と、前記ヘリカルキラル高分子(A)とキラリティが異なり、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(B)を含む圧電繊維(B)と、を含み、前記圧電繊維(A)と前記圧電繊維(B)とが巻回されているものである。
本開示の圧電繊維構造体は抗菌性に優れている。その効果は以下のように推測される。本開示の圧電繊維構造体に張力を印加すると、圧電繊維(A)が帯電し、かつ圧電繊維(B)が圧電繊維(A)と逆の電位に帯電することにより、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の界面に強い電界が発生する。そして、この発生した強電界に細菌等が存在する場合、強電界により細菌等の細胞膜が破壊されるため、本開示の圧電繊維構造体は抗菌作用を奏する。
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)は、抗菌性がより向上する観点から、同一方向に螺旋状に巻回されていることが好ましい。
本開示の圧電繊維構造体は、中心軸(螺旋軸)の一端(図1の場合、右端側)から見たときに、手前側から奥側に向かって圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)が左巻き(反時計回り)で巻回されているS巻きであってもよい。
また、本開示の圧電繊維構造体は、中心軸(螺旋軸)の一端(図1の場合、右端側)から見たときに、手前側から奥側に向かって圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)が右巻き(時計回り)で巻回されているZ巻きであってもよい。
なお、後述する図1では、S巻きである圧電繊維構造体の例を示している。
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)において、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、螺旋軸に対して15°~75°(45°±30°)の角度(螺旋角度)で巻回されていることが好ましく、25°~65°(45°±20°)の角度で巻回されていることがより好ましく、35°~65°(45°±10°)の角度で巻回されていることが更に好ましい。
「螺旋軸」とは、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)が螺旋状に巻回されている場合、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)により形成される螺旋構造の中心軸を意味する。
圧電繊維(A)の螺旋角度と、圧電繊維(B)の螺旋角度とは、略同一、例えば螺旋角度の差が±5°以内であることが好ましい。
本開示の圧電繊維構造体は、例えば、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を撚糸、捲縮等して巻回させて製造すればよい。
本開示の圧電繊維構造体は、長尺状の芯材を更に備え、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)が長尺状の芯材に対して同一方向に螺旋状に巻回されている構成であってもよい。長尺状の芯材としては、非導電性の芯材、導体等が挙げられる。
非導電性の芯材の材料としては、導電性を有さない材料であれば特に限定はなく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂等のポリマー樹脂;セルロース系樹脂;ガラス、シリカゲル、セラミックス等の無機材料;が挙げられる。これらの材料は、1種のみ用いてもよいし、2種以上含有していてもよい。
非導電性の芯材の形状(長尺状)、長軸径には特に限定はないが、非導電性芯材としては、単数又は複数の束からなる繊維形状を有する芯材であることが好ましい。
繊維形状を有する芯材としては、例えば、糸(モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸)が挙げられる。
導体としては、電気的な良導体であることが好ましく、例えば、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、錦糸線、有機導電材料等が挙げられる。錦糸線とは、繊維に銅箔がスパイラルに巻回されたものをいう。導体の中でも、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上し、高い屈曲性を付与する観点から、錦糸線、カーボンファイバーが好ましい。
本開示の圧電繊維構造体は、長尺状の芯材を備えていなくてもよい。圧電繊維構造体が長尺状の芯材を備えていない場合、屈曲性及び可撓性(しなやかさ)に優れる傾向にあり、また、長尺状の芯材を準備する工程が省略されるため、圧電繊維構造体の製造工程が簡略化される。
(圧電繊維構造体の具体的態様)
以下、図1を用いて圧電繊維構造体の具体的態様について説明する。
図1に示すように、具体的態様の圧電繊維構造体10は、圧電繊維(A)1及び圧電繊維(B)2が同一方向に螺旋状に巻回されてなるものである。また、圧電繊維(A)1は、螺旋軸Gに対して、螺旋角度α1で一端から他端にかけて巻回されており、圧電繊維(B)2は、螺旋軸Gに対して、螺旋角度α2で一端から他端にかけて巻回されており、隣り合う圧電繊維(A)1と圧電繊維(B)2との間に隙間がないように圧電繊維(A)1及び圧電繊維(B)2が同一方向に螺旋状に巻回されている。
図1では、中心軸(螺旋軸)Gの一端(図1の場合、右端側)から見たときに、手前側から奥側に向かって圧電繊維(A)1及び圧電繊維(B)2が左巻き(反時計回り)で巻回したS巻きの例を表している。
(ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B))
圧電繊維(A)は光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、圧電繊維(B)はヘリカルキラル高分子(A)とキラリティが異なり、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(B)を含む。
ここで、「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。
上記ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)(以下、「ヘリカルキラル高分子」ともいう)としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系高分子、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等が挙げられる。
上記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ-ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ-メチル)等が挙げられる。
上記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
さらに、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)は、圧電繊維構造体の圧電性を高める点から、延伸されていることが好ましく、主として一軸方向に延伸されていることがより好ましい。主として一軸方向に延伸することで、ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)の分子鎖を、一方向に配向させ、かつ高密度に整列させることができる。これにより、より高い圧電性が得られる。
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を主として一軸方向に延伸させる場合、主延伸の延伸倍率が、好ましくは2倍~8倍、より好ましくは3倍~5倍、更に好ましくは3倍~4倍であり、副次的延伸(主延伸の方向と交差する方向の延伸、主延伸よりも延伸倍率が小さい)の延伸倍率が、1倍~3倍が好ましく、1.1倍~2.5倍がより好ましく、1.2倍~2.0倍が更に好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)は、圧電繊維構造体の圧電性を向上する観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましく、96.00%ee以上であることがより好ましく、99.00%ee以上であることが更に好ましく、99.99%ee以上であることが更により好ましい。望ましくは100.00%eeである。ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電繊維構造体の圧電性が高くなるものと考えられる。
ここで、ヘリカルキラル高分子の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量-D体量|/(L体量+D体量)
すなわち、ヘリカルキラル高分子の光学純度は、
『「ヘリカルキラル高分子のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「ヘリカルキラル高分子のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値である。
なお、ヘリカルキラル高分子のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。具体的な測定の詳細については後述する。
ヘリカルキラル高分子(A)は、構造単位としてL体成分を50モル%超含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことが更に好ましく、90モル%以上含むことが特に好ましい。ヘリカルキラル高分子(A)におけるL体成分の含有率の上限値はとくに制限されず、100モル%以下であればよく、99モル%以下であってもよい。
ヘリカルキラル高分子(B)は、構造単位としてD体成分を50モル%超含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことが更に好ましく、90モル%以上含むことが特に好ましい。ヘリカルキラル高分子(B)におけるD体成分の含有率の上限値はとくに制限されず、100モル%以下であればよく、99モル%以下であってもよい。
上記ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)としては、光学純度を上げ、圧電性を向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子が好ましい。
Figure 0007074281000002
ここで、ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L-乳酸及びD-乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子)」、「L-乳酸又はD-乳酸と、該L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、あるいは、両者の混合物をいう。
ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)は、ポリ乳酸系高分子の中でも、ポリ乳酸が好ましい。また、ヘリカルキラル高分子(A)は、L-乳酸のホモポリマー(PLLA、単に「L体」ともいう)がより好ましく、ヘリカルキラル高分子(B)は、D-乳酸のホモポリマー(PDLA、単に「D体」ともいう)がより好ましい。
ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子である。
ポリ乳酸は、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法;などによって製造できることが知られている。
ポリ乳酸としては、L-乳酸のホモポリマー、D-乳酸のホモポリマー、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、並びに、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A)が、構成単位としてL-乳酸及びD-乳酸を含む場合、L-乳酸の含有率がD-乳酸の含有率よりも高いことが好ましい。
また、ヘリカルキラル高分子(B)が、構成単位としてL-乳酸及びD-乳酸を含む場合、D-乳酸の含有率がL-乳酸の含有率よりも高いことが好ましい
上記「L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、3-ヒドロキシカプロン酸、4-ヒドロキシカプロン酸、5-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β-メチル-δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類;α-アミノ酸等のアミノカルボン酸;等を挙げることができる。
上記「L-乳酸又はD-乳酸と、該L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーが挙げられる。
また、ヘリカルキラル高分子(A)中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20モル%以下であることが好ましく、ヘリカルキラル高分子(B)中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20モル%以下であることが好ましい。
例えば、ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)が、ポリ乳酸系高分子である場合、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20モル%以下であることが好ましい。
ポリ乳酸系高分子は、例えば、特開昭59-096123号公報、及び特開平7-033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法;米国特許2,668,182号及び4,057,357号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法;などにより製造することができる。
更に、上記各製造方法により得られたポリ乳酸系高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
-重量平均分子量-
ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)の重量平均分子量(Mw)は、5万~100万であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子のMwが5万以上であることにより、圧電繊維の機械的強度が向上する。上記Mwは、10万以上であることが好ましく、20万以上であることが更に好ましい。
一方、ヘリカルキラル高分子のMwが100万以下であることにより、成形(例えば押出成形、溶融紡糸)によって圧電繊維を得る際の成形性が向上する。上記Mwは、80万以下であることが好ましく、30万以下であることが更に好ましい。
また、ヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の強度の観点から、1.1~5であることが好ましく、1.2~4であることがより好ましい。更に1.4~3であることが好ましい。
なお、ヘリカルキラル高分子の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定された値を指す。ここで、Mnは、ヘリカルキラル高分子の数平均分子量である。
以下、GPCによるヘリカルキラル高分子のMw及びMw/Mnの測定方法の一例を示す。
-GPC測定装置-
Waters社製GPC-100
-カラム-
昭和電工社製、Shodex LF-804
-サンプルの調製-
第1の圧電体を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
-測定条件-
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。
ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ヘリカルキラル高分子の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
ヘリカルキラル高分子の例であるポリ乳酸系高分子としては、市販のポリ乳酸を用いることができる。
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H-100、H-400)、NatureWorks LLC社製のIngeoTM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、または直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)はそれぞれ、上述したヘリカルキラル高分子(A)及びヘリカルキラル高分子(B)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
圧電繊維(A)に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の含有率(2種以上である場合には総含有率)は、圧電繊維(A)の全量に対し、80質量%以上が好ましい。
圧電繊維(B)に含まれるヘリカルキラル高分子(B)の含有率(2種以上である場合には総含有率)は、圧電繊維(B)の全量に対し、80質量%以上が好ましい。
(安定化剤)
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の少なくとも一方は、更に、一分子中に、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200~60000の安定化剤(C)を含有していてもよい。これにより、圧電繊維の耐湿熱性をより向上させることができる。
安定化剤(C)としては、例えば、国際公開第2013/054918号の段落0039~0055に記載された「安定化剤(B)」を用いることができる。
安定化剤(C)として用い得る、一分子中にカルボジイミド基を含む化合物(カルボジイミド化合物)としては、モノカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド化合物、環状カルボジイミド化合物が挙げられる。
モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が好適である。
また、ポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができる。従来のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47-33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069-2075(1963)、Chemical Review 1981,Vol.81 No.4、p619-621)により、製造されたものを用いることができる。具体的には特許4084953号公報に記載のカルボジイミド化合物を用いることもできる。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N’-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)等が挙げられる。
環状カルボジイミド化合物は、例えば、特開2011-256337号公報に記載の方法などに基づいて合成することができる。
カルボジイミド化合物としては、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成社製、B2756(商品名)、日清紡ケミカル社製、カルボジライト(登録商標)LA-1(商品名)、ラインケミー社製、Stabaxol P、Stabaxol P400、Stabaxol I(いずれも商品名)等が挙げられる。
安定化剤(C)として用い得る、一分子中にイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)としては、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
安定化剤(C)として用い得る、一分子中にエポキシ基を含む化合物(エポキシ化合物)としては、フェニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
安定化剤(C)の重量平均分子量は、上述のとおり200~60000であるが、200~30000がより好ましく、300~18000が更に好ましい。
分子量が上記範囲内ならば、安定化剤(C)がより移動しやすくなり、耐湿熱性改良効果がより効果的に奏される。
安定化剤(C)の重量平均分子量は、200~900であることが特に好ましい。なお、重量平均分子量200~900は、数平均分子量200~900とほぼ一致する。また、重量平均分子量200~900の場合、分子量分布が1.0である場合があり、この場合には、「重量平均分子量200~900」を、単に「分子量200~900」と言い換えることもできる。
圧電繊維が安定化剤(C)を含有する場合、上記圧電繊維は、安定化剤(C)を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
圧電繊維が安定化剤(C)を含む場合、安定化剤(C)の含有量は、ヘリカルキラル高分子100質量部に対し、0.01質量部~10質量部であることが好ましく、0.01質量部~5質量部であることがより好ましく、0.1質量部~3質量部であることが更に好ましく、0.5質量部~2質量部であることが特に好ましい。
上記含有量が0.01質量部以上であると、耐湿熱性がより向上する。
また、上記含有量が10質量部以下であると、透明性の低下がより抑制される。
安定化剤(C)の好ましい態様としては、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有し、且つ、数平均分子量が200~900の安定化剤(C1)と、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を1分子内に2以上有し、且つ、重量平均分子量が1000~60000の安定化剤(C2)とを併用するという態様が挙げられる。なお、数平均分子量が200~900の安定化剤(C1)の重量平均分子量は、大凡200~900であり、安定化剤(C1)の数平均分子量と重量平均分子量とはほぼ同じ値となる。
安定化剤(C)として安定化剤(C1)と安定化剤(C2)とを併用する場合、安定化剤(C1)を多く含むことが透明性向上の観点から好ましい。
具体的には、安定化剤(C1)100質量部に対して、安定化剤(C2)が10質量部~150質量部の範囲であることが、透明性と耐湿熱性の両立という観点から好ましく、50質量部~100質量部の範囲であることがより好ましい。
以下、安定化剤(C)の具体例(安定化剤C-1~C-3)を示す。なお、安定化剤C-1及びC-3中、i-Prは、イソプロピル基を表す。
Figure 0007074281000003
以下、上記安定化剤C-1~C-3について、化合物名、市販品等を示す。
・安定化剤C-1 … 化合物名は、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミドである。重量平均分子量(この例では、単なる「分子量」に等しい)は、363である。市販品としては、ラインケミー社製「Stabaxol I」、東京化成社製「B2756」が挙げられる。
・安定化剤C-2 … 化合物名は、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約2000のものとして、日清紡ケミカル社製「カルボジライト(登録商標)LA-1」が挙げられる。
・安定化剤C-3 … 化合物名は、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約3000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P」が挙げられる。また、重量平均分子量20000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P400」が挙げられる。
<その他の成分>
圧電繊維は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の公知の樹脂;シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の公知の無機フィラー;フタロシアニン等の公知の結晶核剤;安定化剤(C)以外の安定化剤;等が挙げられる。
無機フィラー及び結晶核剤としては、国際公開第2013/054918号の段落0057~0058に記載された成分を挙げることもできる。
(配向度F)
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の少なくとも一方において、下記式(a)によって求められる配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲であることが好ましい。
配向度F=(180°-α)/180°・・(a)
ただし、αは配向由来のピークの半値幅を表す。αの単位は、°である。
上記配向度Fは、0.7以上1.0未満であることがより好ましく、0.8以上1.0未満であることが更に好ましい。
配向度Fが0.5以上であれば、延伸方向に配列するヘリカルキラル高分子の分子鎖(例えばポリ乳酸分子鎖)が多く、その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、より高い圧電性を発現することが可能となる。
配向度Fが1.0未満であれば、縦裂強度が向上する。
上記配向度Fは、圧電繊維に含まれるヘリカルキラル高分子の配向の度合いを示す指標である。上記配向度Fは、例えば、広角X線回折装置(リガク社製 RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)により測定されるc軸配向度である。例えば、サンプルである圧電繊維を広角X線回折装置のホルダーに固定し、結晶面ピーク[(110)面/(200)面]の方位角分布強度を測定し、得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、結晶化度、及びピークの半値幅(α)から上記の式より配向度F(C軸配向度)を算出すればよい。
(結晶化度)
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の少なくとも一方において、結晶化度は、好ましくは20%~80%であり、より好ましくは25%~70%であり、更に好ましくは30%~60%である。
結晶化度が20%以上であることにより、圧電繊維の圧電性が高く維持される。結晶化度が80%以下であることにより、圧電繊維の透明性が高く維持される。
結晶化度が80%以下であることにより、例えば、圧電繊維を延伸によって製造する際に白化や破断がおきにくいので、圧電繊維を製造しやすい。また、結晶化度が80%以下であることにより、例えば、圧電繊維の原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸後に延伸によって製造する際に屈曲性が高く、しなやかな性質を有する繊維となり、圧電繊維を製造しやすい。
-圧電繊維の具体例-
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の具体例としては、例えば、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、紡績糸等が挙げられる。
・モノフィラメント糸
モノフィラメント糸の単糸繊度は、好ましくは3dtex~30dtexであり、より好ましくは5dtex~20dtexである。
単糸繊度が3dtex以上であると、織物準備工程、製織工程等において糸を取り扱うことが容易である。一方、単糸繊度が30dtex以下であると、糸間で融着が発生しにくくなる。
モノフィラメント糸は、コストの点を考慮すれば直接的に紡糸、延伸して得ることが好ましい。なお、モノフィラメント糸は入手したものであってもよい。
・マルチフィラメント糸
マルチフィラメント糸の総繊度は、好ましくは30dtex~600dtexであり、より好ましくは100dtex~400dtexである。
マルチフィラメント糸は、例えば、スピンドロー糸などの一工程糸の他、UDY(未延伸糸)やPOY(高配向未延伸糸)などを延伸して得る二工程糸のいずれもが採用可能である。なお、マルチフィラメント糸は入手したものであってもよい。
ポリ乳酸系モノフィラメント糸、ポリ乳酸系マルチフィラメント糸の市販品としては、東レ社製のエコディア(登録商標)PLA、ユニチカ社製のテラマック(登録商標)、クラレ社製プラスターチ(登録商標)が使用可能である。
圧電繊維の製造方法には特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)としてのフィラメント糸(モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸)は、原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸した後、これを延伸することにより得ることができる(溶融紡糸延伸法)。なお、紡出後において、冷却固化するまでの糸条近傍の雰囲気温度を一定温度範囲に保つことが好ましい。
また、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)としてのフィラメント糸は、例えば、上記溶融紡糸延伸法で得られたフィラメント糸を更に分繊することにより得てもよい。
・断面形状
圧電繊維の断面形状としては、圧電繊維の長手方向に垂直な方向の断面において、円形状、楕円形状、矩形状、繭形状、リボン形状、4つ葉形状、星形状、異形状など様々な断面形状を適用することが可能である。
圧電繊維(A)は、ヘリカルキラル高分子(A)を含む糸状繊維(A)が一方向に螺旋状に巻回されてなるものであってもよく、圧電繊維(B)は、ヘリカルキラル高分子(B)を含む糸状繊維(B)が一方向に螺旋状に巻回されてなるものであってもよい。
糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)としては、フィラメント糸(モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸)等が挙げられる。すなわち、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)は、フィラメント糸等が一方向に螺旋状に巻回されてなるものであってもよく、本開示の圧電繊維構造体は、フィラメント糸等を一方向に螺旋状に巻回されてなる圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)が巻回されているものであってもよい。
また、圧電繊維(A)は、糸状繊維(A)が螺旋軸に対して15°~75°の角度(螺旋角度)で巻回されていてもよく、圧電繊維(B)は、糸状繊維(B)が糸状繊維(A)と同一の方向に螺旋軸に対して15°~75°の角度(螺旋角度)で巻回されていてもよい。前述の糸状繊維(A)の螺旋角度及び糸状繊維(B)の螺旋角度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
なお、糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)は、長尺状の芯材に対して同一方向に螺旋状に巻回されて圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を構成してもよく、長尺状の芯材を含まずに圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を構成してもよい。
なお、本開示の圧電繊維構造体は、前述のように糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)を一方向に螺旋状に巻回されてなる圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)が更に巻回されたものに限定されない。
例えば、本開示の圧電繊維構造体は、巻回されていない、糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)から構成された圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)が巻回されてなるものであってもよい。これにより、糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)を一方向に螺旋状に巻回させて圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を作製する工程が省略されるため、圧電繊維構造体の製造工程が簡略化される。
(圧電繊維の具体的態様)
以下、図3及び図4を用いて糸状繊維を用いてなる圧電繊維の具体的態様について説明する。
図3に示すように、具体的態様1の圧電繊維14Aは、長尺状の糸状繊維4Aが一方向に螺旋状に巻回されてなるものである。また、糸状繊維4Aは、螺旋軸G1に対して、螺旋角度β1で一端から他端にかけて、巻回されて隣り合う糸状繊維4A間に隙間がないように、一方向に螺旋状に巻回されている。
図3では、中心軸(螺旋軸)G1の一端(図3の場合、右端側)から見たときに、手前側から奥側に向かって糸状繊維4Aが左巻き(反時計回り)で巻回したS巻きの例を表している。
また、図3中、糸状繊維4Aに含まれるヘリカルキラル高分子の主配向方向は、両矢印E1で示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子の主配向方向と、糸状繊維4Aの配置方向(糸状繊維4Aの長さ方向)とは、略平行となっている。
例えば、成分として含まれるヘリカルキラル高分子が異なる2種の糸状繊維4A(例えば、ヘリカルキラル高分子(A)を含む糸状繊維4A及びヘリカルキラル高分子(B)を含む糸状繊維4A)を準備し、S巻きの圧電繊維14Aをそれぞれ作製し、それぞれ作製した圧電繊維14Aを巻回して圧電繊維構造体を製造してもよい。
なお、圧電繊維14Aを巻回する場合、S巻きであってもよく、Z巻きであってもよい。
次に、図4に示すように、具体的態様2の圧電繊維14Bは、長尺状の糸状繊維4Bが一方向に螺旋状に巻回されてなるものである。また、糸状繊維4Bは、螺旋軸G1に対して、螺旋角度β2で一端から他端にかけて、巻回されて隣り合う糸状繊維4B間に隙間がないように、一方向に螺旋状に巻回されている。
図4では、中心軸(螺旋軸)G1の一端(図4の場合、右端側)から見たときに、手前側から奥側に向かって糸状繊維4Bが右巻き(時計回り)で巻回したZ巻きの例を表している。
また、図4中、糸状繊維4Bに含まれるヘリカルキラル高分子の主配向方向は、両矢印E1で示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子の主配向方向と、糸状繊維4Bの配置方向(糸状繊維4Bの長さ方向)とは、略平行となっている。
例えば、成分として含まれるヘリカルキラル高分子が異なる2種の糸状繊維4B(例えば、ヘリカルキラル高分子(A)を含む糸状繊維4B及びヘリカルキラル高分子(B)を含む糸状繊維4B)を準備し、Z巻きの圧電繊維14Bをそれぞれ作製し、それぞれ作製した圧電繊維14Bを巻回して圧電繊維構造体を製造してもよい。
なお、圧電繊維14Bを巻回する場合、S巻きであってもよく、Z巻きであってもよい。
<繊維>
圧電繊維構造体は、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)以外の繊維(以下、単に「繊維」ともいう)を備えていてもよい。
繊維は、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の巻回方向とは異なる方向に巻回されることが好ましく、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)と繊維とは交互に交差された組紐構造をなすことが好ましい。
なお、前記繊維の巻回方向(右巻き又は左巻き)は、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)の巻回方向と同じ方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
繊維としては、特に限定はないが、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等のポリマー繊維;綿、麻、絹、セルロース等の天然繊維;アセテート等の半合成繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;ガラス繊維が挙げられる。
これらの繊維は、1種のみ用いてもよいし、2種以上含有していてもよい。
また、繊維としては、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸等が挙げられる。モノフィラメント糸の単糸繊度としては、例えば、前述の圧電繊維におけるモノフィラメント糸の単糸繊度と同様の範囲が挙げられる。マルチフィラメント糸の総繊度としては、例えば、前述の圧電繊維におけるマルチフィラメント糸の総繊度と同様の範囲が挙げられる。
〔圧電繊維構造体の製造方法〕
本開示の圧電繊維構造体の製造方法は、前述の圧電繊維構造体を製造する圧電繊維構造体の製造方法であって、前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)を準備する工程と、準備した前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)を巻回する工程と、を含む。
例えば、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を撚糸、捲縮等して巻回させて圧電繊維構造体を製造すればよい。
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を準備する工程では、例えば、樹脂材料を溶融紡糸して得られるフィラメント糸等である糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)を、それぞれ一方向に螺旋状に巻回させて圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を作製してもよい。また、糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)を、延伸した後、好ましくは主として一軸方向に延伸した後に、それぞれ一方向に螺旋状に巻回させて圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を作製してもよい。
圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を巻回する工程では、圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を旋回流により撚糸し、螺旋状に巻回させてもよい。旋回流を発生させる機器、例えば、コンプレッサ及びサイクロンを備える機器を使用し、コンプレッサを用いて空気をサイクロン内に送風して旋回流を形成し、この旋回流によりサイクロン内に供給された圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を撚糸し、螺旋状に巻回させればよい。なお、糸状繊維(A)及び糸状繊維(B)をそれぞれ別々に旋回流により撚糸し、螺旋状に巻回させて圧電繊維(A)及び圧電繊維(B)を作製してもよい。
〔圧電織物〕
本開示の圧電織物は、縦糸及び横糸からなる織物構造体を備え、前記縦糸及び前記横糸の少なくとも一方が、前述の圧電繊維構造体を含む。
従って、本開示の圧電織物によれば、本開示の圧電繊維構造体と同様に抗菌性に優れる。
ここで、織物とは、糸を交錯させて織物構造体を形成することによりフィルム形状に仕上げたもの全般を指す。圧電織物とは、織物の中でも、外部刺激(例えば物理力)によって圧電効果が発現される織物をいう。
本開示の圧電織物において、縦糸及び横糸の両方は、前述の圧電繊維構造体を含んでいてもよい。
糸としては、例えば高分子を含む糸が挙げられる。
高分子を含む糸における高分子としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の一般的な高分子が挙げられ、また、前述のヘリカルキラル高分子も挙げられる。
また、高分子を含む糸の概念には、本開示の圧電繊維構造体も包含される。
本開示の圧電織物における織物構造体には特に制限はない。
織物構造体としては、平織(plain weave)、綾織(twill weave)、朱子織(satin weave)等の基本的な構造体が挙げられる。
本開示の圧電繊維構造体は、圧電織物中の縦糸として用いても横糸として用いてもよく、また、縦糸の一部として用いてもよく、横糸の一部として用いてもよい。
本開示の圧電織物は、三次元的構造を有する織物であってもよい。三次元的構造を有する織物とは、二次元的構造に加えて織物の厚み方向にも糸(縦糸、横糸)を編みこむことで立体的に仕上げた織物である。
三次元的構造を有する織物の例は、例えば、特表2001-513855号公報に記載されている。
本開示の圧電織物では、織物構造体を構成する糸のうちの少なくとも一部が、本開示の圧電繊維構造体で構成されていればよい。
〔圧電編物〕
本開示の圧電編物は、前述の圧電繊維構造体を含む編物構造体を備える。
従って、本開示の圧電編物によれば、本開示の圧電繊維構造体と同様に抗菌性に優れる。
ここで、編物とは、糸でループを作りながら編み合わせて製造されたもの全般を指す。圧電編物とは、編物の中でも、外部刺激(例えば物理力)によって圧電効果が発現される編物をいう。
糸としては、例えば高分子を含む糸が挙げられる。
高分子を含む糸における高分子としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の一般的な高分子が挙げられ、また、前述のヘリカルキラル高分子も挙げられる。
また、高分子を含む糸の概念には、本開示の圧電繊維構造体も包含される。
本開示の圧電編物における編物構造体には特に制限はない。
編物構造体としては、緯編み(ヨコ編み)、経編み(タテ編み)等の基本的な構造体が挙げられる。緯編みには、平編み、リブ編み、両面編み、パール編み、丸編み等がある。また、経編みには、トリコット編み、アトラス編み、ダイヤモンド編み、ミラニーズ編み等の基本的な構造体が挙げられる。
本開示の圧電繊維構造体は、圧電編物中の糸として用いればよく、また、糸の一部として用いてもよい。
本開示の圧電編物は、三次元的構造を有する編物であってもよい。三次元的構造を有する編物とは、二次元的構造に加えて編物の厚み方向にも糸を編みこむことで立体的に仕上げた編物である。
本開示の圧電編物では、編物構造体を構成する糸のうちの少なくとも一部が、本開示の圧電繊維構造体で構成されていればよい。
(圧電編物の具体的態様)
以下、本開示の圧電編物の具体的態様について、図2を用いて説明する。
図2に示すように、本開示の圧電編物20は、圧電繊維構造体10と、絶縁性糸16と、が緯編みで編まれており、編物構造体の一部に、図1に示すような圧電繊維構造体10が用いられている。
<圧電織物又は圧電編物の用途>
本開示の圧電織物又は圧電編物は、少なくとも一部に圧電性及び抗菌性が要求されるあらゆる用途に適用することができる。
本開示の圧電織物又は圧電編物の用途の具体例としては、各種衣料(シャツ、スーツ、ブレザー、ブラウス、コート、ジャケット、ブルゾン、ジャンパー、ベスト、ワンピース、ズボン、スカート、パンツ、下着(スリップ、ペチコート、キャミソール、ブラジャー)、靴下、手袋、和服、帯地、金襴、冷感衣料、ネクタイ、ハンカチーフ、マフラー、スカーフ、ストール、アイマスク)、テーブルクロス、履物(スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプス、ミュール、スリッパ、バレエシューズ、カンフーシューズ)、タオル、袋物、バッグ(トートバッグ、ショルダーバッグ、ハンドバッグ、ポシェット、ショッピングバッグ、エコバック、リュックサック、デイパック、スポーツバッグ、ボストンバッグ、ウエストバッグ、ウエストポーチ、セカンドバック、クラッチバッグ、バニティ、アクセサリーポーチ、マザーバッグ、パーティバッグ、和装バッグ)、ポーチ・ケース(化粧ポーチ、ティッシュケース、めがねケース、ペンケース、ブックカバー、ゲームポーチ、キーケース、パスケース)、財布、帽子(ハット、キャップ、キャスケット、ハンチング帽、テンガロンハット、チューリップハット、サンバイザー、ベレー帽)、ヘルメット、頭巾、ベルト、エプロン、リボン、コサージュ、ブローチ、カーテン、壁布、シートカバー、シーツ、布団、布団カバー、毛布、枕、枕カバー、ソファー、ベッド、かご、各種ラッピング材料、室内装飾品、自動車用品、造花、マスク、包帯、ロープ、各種ネット、魚網、セメント補強材、スクリーン印刷用メッシュ、各種フィルター(自動車用、家電用)、各種メッシュ、敷布(農業用、レジャーシート)、土木工事用織物、建築工事用織物、ろ過布等が挙げられる。
なお、上記具体例の全体を本開示の圧電織物又は圧電編物で構成してもよいし、圧電性及び抗菌性が要求される部位のみ本開示の圧電織物又は圧電編物で構成してもよい。
本開示の圧電織物又は圧電編物の用途としては、身体に身につけるウェアラブル製品が特に好適である。
なお、本開示の圧電編物の具体的態様についての詳細は、圧電デバイスの具体的態様と共に後述する。
〔圧電デバイス〕
本開示の圧電デバイスは、本開示の圧電織物又は本開示の圧電編物を備える。
圧電織物又は圧電編物には電極が配置されていることが好ましい。電極は、圧電繊維構造体から発生する電荷を検出するための電極である。
電極材料としては特に限定はないが、金属(Al等)が挙げられるが、その他にも、例えば、Ag、Au、Cu、Ag-Pd合金、Agペースト、Cuペースト、カーボンブラック、ITO(結晶化ITO及び非晶ITO)、ZnO、IGZO、IZO(登録商標)、導電性ポリマー(ポリチオフェン、PEDOT)、Agナノワイヤー、カーボンナノチューブ、グラフェン等も挙げられる。
なお、本開示の圧電デバイスは、電極と、織物構造体又は編物構造体との間に絶縁体を備えることが好ましい。
これにより、電極間の電気的短絡の発生を抑制しやすい構造となる。
<圧電繊維構造体の用途>
本開示の圧電繊維構造体は、抗菌性が要求される用途に用いることが好ましい。また、
例えば、センサー用途(着座センサー等の力センサー、超音波センサー、ラケット、ゴルフクラブ、バット等の各種球技用スポーツ用具の打撃時の加速度センサーやインパクトセンサー等)、アクチュエータ用途(シート搬送用デバイス等)、エネルギーハーベスティング用途(発電ウエア、発電靴等)、ヘルスケア関連用途(Tシャツ、スポーツウェア、スパッツ、靴下等の各種衣類、サポーター、ギプス、おむつ、靴、靴の中敷、時計等に本センサーを設けた、ウェアラブルモーションセンサー等)などとして利用することができる。
例えば、前述の圧電織物、圧電編物、及び圧電デバイスは、これらの用途に適用することができる。
本開示の圧電繊維構造体の応力、歪等によって発生した電荷又は表面電位を検出する方法としては、公知の非接触式表面電位計を用いる方法;公知の導電材料からなる電極を圧電繊維構造体に近接させることによってこの圧電繊維構造体に静電気的に結合させ、この状態で上記電極の電位変化を電圧計などで読み取る方法;等が挙げられる。また電極として公知の取出し電極を接合することができる。取出し電極としては、コネクター等の電極部品、圧着端子などが挙げられる。電極部品は、半田付けなどのろう付け、導電性接合剤等により圧電繊維構造体と接合することができる。
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<糸状圧電体の作製>
(モノフィラメント糸の作製)
ヘリカルキラル高分子(A)として、ポリ乳酸(融点170℃、融解熱38J/g、L-乳酸/D-乳酸のモル比が98.5/1.5(L-乳酸の含有率が98.5モル%)、数平均分子量8.5万)を準備した。
また、ヘリカルキラル高分子(B)として、ポリ乳酸(融点170℃、融解熱38J/g、D-乳酸/L-乳酸のモル比が98.5/1.5(D-乳酸の含有率が98.5モル%)、数平均分子量8.5万)を準備した。
上記2種類のポリ乳酸をそれぞれエクストルーダー型溶融紡糸機に供給し、溶融混練した。溶融混練後の上記2種類のポリ乳酸を円形の紡糸口金より、紡糸温度225℃でそれぞれ溶融紡糸した後、糸条を冷却し、油剤を付与した。続いて一旦捲き取ることなく、80℃に加熱した熱ローラ間で熱延伸を施し、捲き取った。これにより、総繊度295dtex(20番手:長軸径2.7μm)である、ヘリカルキラル高分子(A)から構成される糸状圧電体(A-1)(モノフィラメント糸、糸状繊維)及びヘリカルキラル高分子(B)から構成される糸状圧電体(B-1)(モノフィラメント糸、糸状繊維)をそれぞれ作製した。
<糸状圧電体のS巻き撚糸>
上記のようにして得た糸状圧電体(A-1)の束及び糸状圧電体(B-1)の束をそれぞれ、螺旋軸に対して左巻き(S巻き)に、前記螺旋軸に対して45°の方向を向くように(螺旋角度45°)、撚糸して巻回した。なお、撚糸の撚り数(捩り数)は、実体顕微鏡で10mm当たり10ターン程度の撚り数であることを目視観察し、本実施例の1m当たりの撚り数を1000ターン(1000T/m)とした。なお、「左巻き(S巻き)」とは、中心軸(螺旋軸)の一端(図3の場合、右端側)から見たときに、手前側から奥側に向かって糸状圧電体が左巻き(反時計回り)で巻回していることをいう。また、「右巻き(Z巻き)」とは、中心軸(螺旋軸)の一端(図4の場合、右端側)から見たときに、手前側から奥側に向かって糸状圧電体が右巻き(時計回り)で巻回していることをいう。
<糸状圧電体の引き取りZ巻き撚糸>
次に、S巻きに撚糸した糸状圧電体(A-1)及び糸状圧電体(B-1)を、螺旋軸に対して右巻き(Z巻き)に、前記螺旋軸に対して45°の方向を向くように(螺旋角度45°)、撚糸して巻回した。なお、撚糸の撚り数(捩り数)は、実体顕微鏡で10mm当たり4ターン程度の撚り数であることを目視観察し、本実施例の1m当たりの撚り数を400ターン(400T/m)とした。
以上のようにして、実施例1の圧電繊維構造体を得た。
[実施例2]
<糸状圧電体の作製>
(マルチフィラメント糸の作製)
実施例1で用いた2種のポリ乳酸をそれぞれエクストルーダー型溶融紡糸機に供給し、溶融混練した。溶融混練後の上記2種類のポリ乳酸を円形の紡糸口金より、紡糸温度225℃でそれぞれ溶融紡糸した後、糸条を冷却し、油剤を付与した。続いて一旦捲き取ることなく、80℃に加熱した熱ローラ間で熱延伸を施し、捲き取った。これにより、総繊度295dtex(20番手:長軸径2.7μm)である、ヘリカルキラル高分子(A)から構成される糸状圧電体(A-2)(マルチフィラメント1本撚り、糸状繊維)及びヘリカルキラル高分子(B)から構成される糸状圧電体(B-2)(マルチフィラメント1本撚り、糸状繊維)をそれぞれ作製した。なお、マルチフィラメント糸1本撚りとは、多数の繊維を撚り合わせて一本の糸にした物である。
<糸状圧電体のS巻き撚糸>
上記のようにして得た糸状圧電体(A-2)及び糸状圧電体(B-2)をそれぞれ、螺旋軸に対して左巻き(S巻き)に、前記螺旋軸に対して45°の方向を向くように(螺旋角度45°)、撚糸して巻回した。なお、撚糸の撚り数(捩り数)は、実体顕微鏡で10mm当たり10ターン程度の撚り数であることを目視観察し、本実施例の1m当たりの撚り数を1000ターン(1000T/m)とした。
<糸状圧電体の引き取りZ巻き撚糸>
次に、S巻きに撚糸した糸状圧電体(A-2)及び糸状圧電体(B-2)を、螺旋軸に対して右巻き(Z巻き)に、前記螺旋軸に対して45°の方向を向くように(螺旋角度45°)、撚糸して巻回した。なお、撚糸の撚り数(捩り数)は、実体顕微鏡で10mm当たり4ターン程度の撚り数であることを目視観察し、本実施例の1m当たりの撚り数を400ターン(400T/m)とした。
以上のようにして、実施例2の圧電繊維構造体を得た。
[実施例3]
<糸状圧電体の作製>
(ステープル糸の作製)
実施例1で用いた2種のポリ乳酸をそれぞれエクストルーダー型溶融紡糸機に供給し、溶融混練した。溶融混練後の上記2種類のポリ乳酸を円形の紡糸口金より、紡糸温度225℃でそれぞれ溶融紡糸した後、糸条を冷却し、油剤を付与した。続いて一旦捲き取ることなく、80℃に加熱した熱ローラ間で熱延伸を施し、捲き取った。これにより、総繊度1.7dtex及び繊維長50mmである、ヘリカルキラル高分子(A)から構成される糸状圧電体(A-3)(ステープル糸)及びヘリカルキラル高分子(B)から構成される糸状圧電体(B-3)(ステープル糸)をそれぞれ作製した。
<紡績糸の作製>
上記のようにして得た糸状圧電体(A-3)及び糸状圧電体(B-3)を用い、以下に示す工程を経て紡績糸を作製した。
まず、糸状圧電体(A-3)及び糸状圧電体(B-3)を混合する混打綿工程を経て、梳綿機によりスライバーを作製し、スライバーを練条機に供給し、混合した後、粗紡機にて粗紡を施し、撚数0.635回/25.4mmの粗糸を得た。更に上記粗糸を精紡機に供給し、ドラフト率34倍、撚数18回/25.4mmの精紡(精紡工程)を施して、30番手(英式綿番手)(19.7tex)の紡績糸を得た。
以上のようにして、実施例3の圧電繊維構造体を得た。
1 圧電繊維(A)
2 圧電繊維(B)
10 圧電繊維構造体
14A、14B 圧電繊維
16 絶縁性糸
20 圧電編物

Claims (15)

  1. 光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む圧電繊維(A)と、
    前記ヘリカルキラル高分子(A)とキラリティが異なり、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(B)を含む圧電繊維(B)と、を含み、
    前記圧電繊維(A)と前記圧電繊維(B)とが巻回されており、
    前記ヘリカルキラル高分子(A)は、構造単位としてL体成分を90モル%以上含み、
    前記ヘリカルキラル高分子(B)は、構造単位としてD体成分を90モル%以上含む圧電繊維構造体。
  2. 光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む圧電繊維(A)と、
    前記ヘリカルキラル高分子(A)とキラリティが異なり、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(B)を含む圧電繊維(B)と、を含み、
    前記圧電繊維(A)と前記圧電繊維(B)とが巻回されており、
    前記圧電繊維(A)は、前記ヘリカルキラル高分子(A)を含む糸状繊維(A)が一方向に螺旋状に巻回されてなり、
    前記圧電繊維(B)は、前記ヘリカルキラル高分子(B)を含む糸状繊維(B)が前記糸状繊維(A)と同一の方向に螺旋状に巻回されてなる圧電繊維構造体。
  3. 前記圧電繊維(A)は、前記糸状繊維(A)が螺旋軸に対して15°~75°の角度で巻回されており、
    前記圧電繊維(B)は、前記糸状繊維(B)が前記糸状繊維(A)と同一の方向に螺旋軸に対して15°~75°の角度で巻回されている請求項に記載の圧電繊維構造体。
  4. 前記ヘリカルキラル高分子(A)は、構造単位としてL体成分を50モル%超含み、
    前記ヘリカルキラル高分子(B)は、構造単位としてD体成分を50モル%超含む請求項2又は請求項3に記載の圧電繊維構造体。
  5. 前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)の少なくとも一方は、下記式(a)によって求められる配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体。
    配向度F=(180°-α)/180°・・(a)
    (ただし、αは配向由来のピークの半値幅を表す。)
  6. 前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)は、同一方向に螺旋状に巻回されている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体。
  7. 前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)は、螺旋軸に対して15°~75°の角度で巻回されている請求項に記載の圧電繊維構造体。
  8. 前記ヘリカルキラル高分子(A)及び前記ヘリカルキラル高分子(B)は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体。
    Figure 0007074281000004

  9. 前記圧電繊維(A)に含まれる前記ヘリカルキラル高分子(A)の含有率は、前記圧電繊維(A)全量に対し、80質量%以上であり、
    前記圧電繊維(B)に含まれる前記ヘリカルキラル高分子(B)の含有率は、前記圧電繊維(B)全量に対し、80質量%以上である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体。
  10. 縦糸及び横糸からなる織物構造体を備え、
    前記縦糸及び前記横糸の少なくとも一方が、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体を含む圧電織物。
  11. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体を含む編物構造体を備える圧電編物。
  12. 請求項10に記載の圧電織物又は請求項11に記載の圧電編物を備える圧電デバイス。
  13. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体を備える力センサー。
  14. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体を備えるアクチュエータ。
  15. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載の圧電繊維構造体を製造する圧電繊維構造体の製造方法であって、
    前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)を準備する工程と、
    準備した前記圧電繊維(A)及び前記圧電繊維(B)を巻回する工程と、
    を含む圧電繊維構造体の製造方法。
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