JP7073448B2 - 圧電体膜の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた圧電体膜の製造方法に関する。
圧電体膜を用いたアクチュエータとして、インクジェットプリントヘッドが知られている。このようなインクジェットプリントヘッドの一例は、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されているインクジェットプリントヘッドは、ノズル基板と、圧力室基板と、振動膜と、振動膜に接合された圧電素子とを備えている。圧力室基板には、インクが導入される圧力室が形成されており、この圧力室に振動板が臨んでいる。圧電素子は、振動膜側から、下部電極、圧電体膜および上部電極を積層して構成されている。
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:PbZrTi1-x)は、ベロブスカイト型の強誘電体であり、その優れた圧電特性を利用したセンサおよびアクチュエータが提案されている。PZTを用いた圧電体膜は、スパッタ法またはゾルゲル法により形成される。ゾルゲル法によるPZT膜の形成は、たとえば、特許文献2に記載されている。ゾルゲル法は、PZTを含む前駆体溶液を塗布して塗布膜を形成する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱して塗布膜をゲル化させる仮焼成工程と、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程を含む。通常は、塗布工程と乾燥工程と仮焼成工程とからなる工程を複数回繰り返して行った後に本焼成工程が行われることにより、PZT膜が形成される。そして、このような一連の工程が、繰り返し行われることによって、目標膜厚を有する圧電体膜が形成される。したがって、圧電体膜は、積層された複数のPZT層を含んでいる。
特開2013-215930号公報 特開平6-40727号公報
圧電体膜を用いたセンサおよびアクチュエータにおいては、圧電体膜は下部電極上に形成され、圧電体膜の最上面には上部電極が形成される。圧電体膜の圧電性能を高めるためには、下部電極と上部電極との間の平行度が高い方がよい。このためには、圧電体膜の最上表面は滑らかであることが好ましい。また、圧電体膜の最上表面に凹凸があると、圧電体膜を用いたセンサおよびアクチュエータにおいて、それらの表面に形成される水素バリア膜のカバレッジにも、悪影響を及ぼす。
この発明の目的は、滑らかな最上表面を有する圧電体膜の製造方法を提供することである。
この発明の一実施形態は、積層された複数の本焼成単位のPZT層を含む圧電体膜であって、最上層の本焼成単位のPZT層の表面の凹凸が、当該最上層の本焼成単位のPZT層とそれに隣接する上から2番目の本焼成単位のPZT層との界面の凹凸よりも小さい、圧電体膜を提供する。
「本焼成単位のPZT層」とは、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1または複数回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより形成されるPZT層をいう。この発明によれば、滑らかな最上表面を有する圧電体膜が得られる。
この発明の一実施形態では、前記最上層の本焼成単位のPZT層の厚さが、前記上から2番目の本焼成単位のPZT層の厚さよりも薄い。この構成によれば、滑らかな最上表面を有する圧電体膜が得られる。
この発明の一実施形態では、前記最上層の本焼成単位のPZT層が、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより形成されている。
塗布工程と乾燥工程と仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1回行われた後に本焼成工程が行われることにより形成される本焼成単位のPZT層では、塗布工程と乾燥工程と仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が複数回行われた後に本焼成工程が行われることにより形成される本焼成単位のPZT層に比べて、その表面の凹凸が小さくなる。したがって、この構成では、最上層の本焼成単位のPZT層の表面の凹凸が小さくなる。これにより、滑らかな最上表面を有する圧電体膜が得られる。
この発明の一実施形態では、前記上から2番目の本焼成単位のPZT層は、前記塗布工程と前記乾燥工程と前記仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が複数回行われた後に、前記本焼成工程が行われることにより形成されている。
この発明の一実施形態では、前記最上層の本焼成単位のPZT層以外の各本焼成単位のPZT層は、前記塗布工程と前記乾燥工程と前記仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が複数回行われた後に、前記本焼成工程が行われることにより形成されている。
この発明の一実施形態では、最下層の本焼成単位のPZT層の下面側に存在する第1のシード層を含む。この構成では、各本焼成単位のPZT層の結晶の方向が揃いやすくなる。これにより、安定した圧電特性を有する圧電体膜が得られる。
この発明の一実施形態では、最下層の本焼成単位のPZT層と最上層の本焼成単位のPZT層との間の中間位置において、隣接する2つの本焼成単位のPZT層の間に介在する第2のシード層を含む。この構成では、各本焼成単位のPZT層の結晶の方向がより一層揃いやすくなる。これにより、より安定した圧電特性を有する圧電体膜が得られる。
この発明の一実施形態では、前記第1のシード層と前記第2のシード層とが同じ材料で構成されている。この構成では、圧電体膜の製造効率を向上化できる。
この発明の一実施形態では、前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、PZTからなるPZTシード層から構成されている。
この発明の一実施形態では、前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、酸化チタンからなるTiOシード層から構成されている。
この発明の一実施形態では、前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、異なる材料で構成されている。
この発明の一実施形態では、前記第1のシード層が酸化チタンからなるTiOシード層から構成され、前記第2のシード層がPZTからなるPZTシード層から構成されている。
この発明の一実施形態では、前記第1のシード層がPZTからなるPZTシード層から構成され、前記第2のシード層が酸化チタンからなるTiOシード層から構成されている。
この発明の一実施形態では、前記PZTシード層は、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより、形成されている。
この発明の一実施形態は、下部電極と、前記下部電極上に形成された前記圧電体膜と、前記圧電体膜上に形成された上部電極とを含む、圧電素子を提供する。この構成では、圧電体膜の最上表面は滑らかであるため、圧電体膜と上部電極との間の密着性を向上させることができる。また、下部電極と上部電極との間の平行度を向上させることができるから、圧電体膜の圧電性能を向上させることができる。これにより、圧電性能の優れた圧電素子を提供できる。
この発明の一実施形態は、キャビティと、前記キャビティ上に配置されかつ前記キャビティの天面部を区画する振動膜と、前記振動膜上に形成された前記圧電素子とを含む、インクジェットプリントヘッドを提供する。この構成では、圧電性能の優れた圧電素子を用いることによって、吐出性能の高いインクジェットプリントヘッドを提供できる。
図1は、この発明の一実施形態に係る圧電体膜利用装置が適用されたインクジェットプリントヘッドの模式的な平面図である。 図2は、図1のII-II線に沿う模式的な拡大断面図である。 図3は、図1のIII-III線に沿う模式的な拡大断面図である。 前記インクジェットプリントヘッドの模式的な斜視図である。 図5は、図1の一部拡大平面図である。 図6は、前記インクジェットプリントヘッドの製造工程の一例を示す工程図である。 図7は、この発明の他の実施形態に係るインクジェットプリントヘッドの構成を説明するための平面図である。 図8は、図7のインクジェットプリントヘッドの構成を説明するための断面図である。 図9は、この発明のさらに他の実施形態に係るインクジェットプリントヘッドの構成を説明するための平面図である。 図10は、圧電体膜の模式的な断面図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る圧電体膜利用装置が適用されたインクジェットプリントヘッドの模式的な平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う模式的な拡大断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う模式的な拡大断面図である。図4は、インクジェットプリントヘッドの模式的な斜視図である。ただし、図1および図4においては、図2および図3に符号13で示される水素バリア膜と、符号14で示される絶縁膜とが省略されている。
図2を参照して、インクジェットプリントヘッド1は、シリコン基板2と、インクを吐出する吐出口3aを有するノズル基板3とを備えている。シリコン基板2上には、振動膜形成層10が積層されている。シリコン基板2と振動膜形成層10との積層体には、インク流路(インク溜まり)としての圧力室(キャビティ)5が形成されている。圧力室5は、シリコン基板2に形成されかつシリコン基板2を厚さ方向に貫通する空間部5Aと、振動膜形成層10の裏面(シリコン基板2側の表面)に形成されかつ空間部5Aに連続する凹部5Bとから構成されている。
ノズル基板3は、たとえばシリコンプレートからなり、シリコン基板2の裏面に張り合わされ、シリコン基板2および振動膜形成層10とともに、圧力室5を区画している。ノズル基板3は、圧力室5に臨む凹部3bを有し、凹部3bの底面にインク吐出通路3cが形成されている。インク吐出通路3cは、ノズル基板3を貫通しており、圧力室5とは反対側に吐出口3aを有している。したがって、圧力室5の容積変化が生じると、圧力室5に溜められたインクは、インク吐出通路3cを通り、吐出口3aから吐出される。
圧力室5は、シリコン基板2の裏面側から、シリコン基板2および振動膜形成層10を掘りこんで形成されている。シリコン基板2および振動膜形成層10には、さらに、圧力室5に連通するインク供給路4(図1および図3を合わせて参照)が形成されている。インク供給路4は、圧力室5に連通しており、インク供給源であるインクタンク(たとえばインクカートリッジ)からのインクを圧力室5に導くように形成されている。
圧力室5は、図2の左右方向であるインク流通方向21に沿って細長く延びて形成されている。振動膜形成層10における圧力室5の天壁部分は、振動膜10Aを構成している。振動膜10A(振動膜形成層10)は、たとえば、シリコン基板2上に形成された酸化シリコン(SiO)膜からなる。振動膜10A(振動膜形成層10)は、たとえば、シリコン基板2上に形成されたシリコン(Si)層と、シリコン層上に形成され酸化シリコン(SiO)層と、酸化シリコン層上に形成された窒化シリコン(SiN)層との積層体から構成されていてもよい。この明細書において、振動膜10Aとは、振動膜形成層10のうち圧力室5を区画している天壁部を意味している。したがって、振動膜形成層10のうち、圧力室5の天壁部以外の部分は、振動膜10Aを構成していない。
振動膜10Aの厚さは、たとえば、0.4μm~2μmである。振動膜10Aが酸化シリコン膜から構成される場合は、酸化シリコン膜の厚さは1.2μm程度であってもよい。振動膜10Aが、シリコン層と酸化シリコン層と窒化シリコン層との積層体から構成される場合には、シリコン層、酸化シリコン層および窒化シリコン層の厚さは、それぞれ0.4μm程度であってもよい。
圧力室5は、振動膜10Aと、シリコン基板2と、ノズル基板3とによって区画されており、この実施形態では、略直方体状に形成されている。圧力室5の長さはたとえば800μm程度、その幅は55μm程度であってもよい。インク供給路4は、圧力室5の長手方向一端部(この実施形態では、吐出口3aとは反対側に位置する端部)に連通するように形成されている。ノズル基板3の吐出口3aは、この実施形態では、圧力室5の長手方向に関する他端部付近に配置されている。
振動膜10Aの表面には、圧電素子6が配置されている。圧電素子6は、振動膜形成層10上に形成された下部電極7と、下部電極7上に形成された圧電体膜8と、圧電体膜8上に形成された上部電極9とを備えている。言い換えれば、圧電素子6は、圧電体膜8を上部電極9および下部電極7で上下から挟むことにより構成されている。
下部電極7は、たとえば、Ti(チタン)層およびPt(プラチナ)層を振動膜10A側から順に積層した2層構造を有している。この他にも、Au(金)膜、Cr(クロム)層、Ni(ニッケル)層などの単膜で下部電極7を形成することもできる。下部電極7は、圧電体膜8の下面に接した主電極部7Aと、圧電体膜8の外方の領域まで延びた延長部7B(図1および図4も参照)とを有している。
圧電体膜8としては、たとえば、ゾルゲル法またはスパッタ法によって形成されたPZT(PbZrTi1-x:チタン酸ジルコン酸鉛)膜を適用することができる。このような圧電体膜8は、金属酸化物結晶の焼結体からなる。圧電体膜8の厚さは、1μm~5μmが好ましい。振動膜10Aの全体の厚さは、圧電体膜8の厚さと同程度か、圧電体膜の厚さの2/3程度とすることが好ましい。
上部電極9は、圧電体膜8と平面視でほぼ同じ形状に形成されている。上部電極9は、たとえば、IrO(酸化イリジウム)層およびIr(イリジウム)層を圧電体膜8側から順に積層し、さらにPt層またはAu層等を積層した3層構造を有している。
振動膜形成層10の表面、圧電素子6の表面および下部電極7の延長部の表面は、水素バリア膜13によって覆われている。水素バリア膜13は、たとえば、Al(アルミナ)によって覆われている。これにより、圧電体膜8の水素還元による特性劣化を防止することができる。水素バリア膜13上には、絶縁膜14が積層されている。絶縁膜14は、たとえば、SiOからなる。絶縁膜14上には配線15が形成されている。配線15は、Al(アルミニウム)を含む金属材料からなる。
配線15の一端部は、上部電極9の一端部の上方に配置されている。配線15と上部電極9との間において、水素バリア膜13および絶縁膜14を連続して貫通する貫通孔16が形成されている。配線15の一端部は、貫通孔16に入り込み、貫通孔16内で上部電極9に接続されている。また、水素バリア膜13および絶縁膜14は、上部電極9の表面における周縁部に囲まれた領域に対応する位置に切除部17を有している。切除部17とは、水素バリア膜13および絶縁膜14が切除されている部分である。
また、下部電極7の延長部上の所定領域に対応する位置には、水素バリア膜13および絶縁膜14を連続して貫通する開口部18が形成されており、下部電極7の表面が開口部18を介して露出している。この露出部分は、下部電極7を外部に接続するためのパッド部7dを構成している。振動膜形成層10の表面において、圧電素子6のインク流通方向21の上流側端よりも上流側においては、インク流通方向21に直交する方向(シリコン基板2の表面に沿う方向)から見て、圧電素子6の上流側端に近い領域にのみ、水素バリア膜13および絶縁膜14は形成されており、それより上流側においては水素バリア膜13および絶縁膜14は形成されていない。
圧電素子6は、振動膜10Aを挟んで圧力室5に対向する位置に形成されている。すなわち、圧電素子6は、振動膜10Aの圧力室5とは反対側の表面に接するように形成されている。圧力室5には、図示しないインクタンクからインク供給路4を通って供給されるインクが充填される。振動膜10Aは、圧力室5の天面部を区画していて、圧力室5に臨んでいる。振動膜10Aは、振動膜形成層10とシリコン基板2との積層体における圧力室5の周囲の部分によって支持されており、圧力室5に対向する方向(換言すれば振動膜10Aの厚さ方向)に変形可能な可撓性を有している。
配線15および下部電極7のパッド部7dは、駆動回路20に接続されている。駆動回路20は、シリコン基板2の圧力室5とは別の領域に形成されていてもよいし、シリコン基板2外に形成されていてもよい。駆動回路20から圧電素子6に駆動電圧が印加されると、逆圧電効果によって、圧電体膜8が変形する。これにより、圧電素子6とともに振動膜10Aが変形し、それによって、圧力室5の容積変化がもたらされ、圧力室5内のインクが加圧される。加圧されたインクは、インク吐出通路3cを通って、吐出口3aから微小液滴となって吐出される。
図1~図4を参照して、シリコン基板2と振動膜形成層10との積層体には、複数の圧力室5が互いに平行に延びてストライプ状に形成されている。複数の圧力室5は、それらの幅方向に微小な間隔(たとえば30μm~350μm程度)を開けて等間隔で形成されている。各圧力室5は、平面視において、インク供給路4から吐出通路3cに向かうインク流通方向21に沿って細長く延びた長方形形状を有している。つまり、圧力室5の天面部は、インク流通方向21に沿う2つの側縁5c,5dと、インク流通方向21に直交する方向に沿う2つの端縁5a,5bとを有している。インク供給路4は、圧力室5の一端部において、2つの通路に分かれて形成されており、共通インク通路19に連通している。共通インク通路19は、複数の圧力室5に対応したインク供給路4に連通しており、それらのインク供給路4に、インクタンクからのインクを供給するように形成されている。
圧電素子6は、インク流通方向21(振動膜10Aの長手方向と同方向)の長さが、振動膜10Aの長手方向の長さよりも短く形成されており、平面視矩形形状を有している。そして、図1に示すように、圧電素子6の短手方向に沿う両端縁6a,6bは、振動膜10Aの対応する両端縁10Aa,10Abに対して、所定の間隔d1(たとえば5μm)を開けて内側に配置されている。また、圧電素子6は、振動膜10Aの長手方向に直交する短手方向(シリコン基板2の主面に平行な方向)の幅が、振動膜10A(圧力室5の天面部)の当該短手方向の幅よりも狭く形成されている。そして、圧電素子6の長手方向に沿う両側縁6c,6dは、振動膜10Aの対応する両側縁10Ac,10Adに対して、所定の間隔d2(たとえば5μm)を開けて内側に配置されている。
下部電極7は、平面視において、インク流通方向21に沿う方向に所定幅を有し、かつインク流通方向21と直交する方向に複数の圧力室5を跨いで延びた平板状であり、複数の圧電素子6に対して共用される共通電極である。下部電極7のインク流通方向21と直交する方向に沿う第1の辺7aは、平面視において、複数の圧電素子6の一方の端縁6aを結ぶ線と整合している。下部電極7の第1の辺7aに対向する第2の辺7bは、複数の圧電素子6の他方の端縁6bに対応する振動膜10Aの端縁10Abよりも外側(インク流通方向21の下流側)に配置されている。
下部電極7には、各圧電素子6のインク流通方向21の下流側に、下部電極7を貫通する平面視矩形状の切除部7cが形成されている。各切除部7cは、平面視において、インク流通方向21に沿う2つの側縁(短辺)と、インク流通方向21に直交する方向に沿う2つの端縁(長辺)とを有している。切除部7cの一方の端縁はインク流通方向21に関して圧電素子6の端縁6bと整合する位置に配置され、他方の端縁は振動膜10Aの端縁10Abよりも外側(インク流通方向21の下流側)に配置されている。切除部7cの一方の側縁は振動膜10Aの一方の側縁10Acよりも外側に配置され、切除部7cの他方の側縁は振動膜10Aの他方の側縁10Adよりも外側に配置されている。したがって、平面視において、振動膜10Aの端縁10Ab側の端部は切除部7cの内側に配置されている。下部電極7の第2の辺7bと複数の切除部7cとの間の領域に、インク流通方向21に直交する方向に細長い矩形状のパッド部7dが形成されている。
下部電極7は、圧電素子6を構成する主電極部7Aと、主電極部7Aから振動膜形成層10の表面に沿う方向に引き出され、圧力室5の天面部(振動膜10A)の周縁を跨いで圧力室5の天面部の周縁の外方に延びた延長部7Bとを含んでいる。主電極部7Aは、振動膜10Aの長手方向に沿って、振動膜10Aよりも短く形成されており、その両端縁は、振動膜10Aの対応する両端縁10Aa,10Abに対して、所定の前記間隔d1を開けて内側に配置されている。また、主電極部7Aは、振動膜10Aの短手方向に沿う幅が、振動膜10Aの当該短手方向の幅よりも狭く形成されており、その両側縁は、振動膜10Aの対応する両側縁10Ac,10Adに対して、前記間隔d2を開けて内側に配置されている。
延長部7Bは、平面視において、主電極部7Aの各側縁から圧力室5の天面部の対応する側縁5c,5dを跨いで、圧力室5の天面部の側縁5c,5dの外方に延びている。延長部7Bは、下部電極7の全領域のうちの主電極部7Aを除いた領域である。図5を参照して、延長部7Bにおいて、平面視で、圧力室5の天面部の周縁(この実施形態では側縁5c,5d)を跨いでいる部分を「跨ぎ領域7C」という場合がある。また、下部電極7において、平面視で、圧力室5の天面部の周縁5a~5dの内側にある領域を「内側電極領域」といい、圧力室5の天面部の周縁5a~5dの外側にある領域を「外側電極領域」という場合がある。
下部電極7における主電極部7Aは、内側電極領域に含まれている。下部電極7における延長部7Bは、内側電極領域のうちの主電極部7A以外の領域と、外部電極領域とから構成される。内側電極領域と外側電極領域との境界部付近の領域が、跨ぎ領域7Cとなる。この実施形態では、内側電極領域と外側電極領域との境界線は、圧力室5の天面部の各側縁5c,5dの長さ中間部に対応した2つの境界線を有している。したがって、この実施形態では、下部電極7は、平面視において、圧力室5の天面部の各側縁5c,5dの長さ中間部をそれぞれ跨ぐ2つの跨ぎ領域7Cを有している。
この実施形態では、下部電極7における跨ぎ領域7Cと、内側電極領域のうちの跨ぎ領域7Cを除く部分との厚さが、他の領域の厚さよりも薄く形成されている。つまり、この実施形態では、下部電極7は、跨ぎ領域7Cに対応した薄肉部と、内側電極領域のうちの跨ぎ領域7Cを除く領域に対応した薄肉部と、これらの領域以外の領域に対応した厚肉部とを有している。下部電極7の薄肉部を、図5に網点領域で示す。なお、この実施形態では、各跨ぎ領域7Cにおける内側電極領域に属している領域の幅が、内側電極領域における内側電極領域の対応する側縁と主電極部7Aの対応する側縁との間の領域の幅と同じ幅に設定されている。したがって、この実施形態では、下部電極7は、跨ぎ領域7Cに対応した薄肉部と、主電極部7Aに対応した薄肉部と、これらの領域以外の領域に対応した厚肉部とを有している。なお、各跨ぎ領域7Cにおける内側電極領域に属している領域の幅は、内側電極領域における内側電極領域の対応する側縁と主電極部7Aの対応する側縁との間の領域の幅よりも短い幅に設定されていてもよい。
図1~図4を参照して、上部電極9は、振動膜10Aの長手方向に沿って、振動膜10Aよりも短く形成されており、その両端縁は、振動膜10Aの対応する両端縁10Aa,10Abに対して、所定の前記間隔d1を開けて内側に配置されている。また、上部電極9は、振動膜10Aの短手方向に沿う幅が、振動膜10Aの当該短手方向の幅よりも狭く形成されており、その両側縁は、振動膜10Aの対応する両側縁10Ac,10Adに対して、前記間隔d2を開けて内側に配置されている。
圧電体膜8は、上部電極9と同じパターンに形成されている。すなわち、圧電体膜8は、振動膜10Aの長手方向に沿って、振動膜10Aよりも短く形成されており、その両端縁は、振動膜10Aの対応する両端縁10Aa,10Abに対して、所定の前記間隔d1を開けて内側に配置されている。また、圧電体膜8は、振動膜10Aの短手方向に沿う幅が、振動膜10Aの当該短手方向の幅よりも狭く形成されており、その両側縁は、振動膜10Aの対応する両側縁10Ac,10Adに対して、前記間隔d2を開けて内側に配置されている。圧電体膜8の下面は下部電極7における圧電素子6を構成している部分の上面に接しており、圧電体膜8の上面は上部電極9の下面に接している。
配線15は、一端部が上部電極9の一端部(圧電素子6の一方の端縁6a側の端部)に接続されかつ平面視において、インク流通方向21と反対方向に延びた引き出し部15Aと、引き出し部15Aと一体化し、引き出し部15Aの先端に接続された平面視矩形状のパッド部15Bとからなる。引き出し部15Aは、上部電極9に接続されている部分を除いて、圧電素子6の上面の一端部(圧電素子6の一方の端縁6a側の端部)とそれに連なる圧電素子6の端面と振動膜形成層10の表面とを覆う絶縁膜14の表面上に形成されている。パッド部15Bは、水素バリア膜13および絶縁膜14が形成されていない振動膜形成層10の表面上に形成されている。
振動膜10Aにおける振動膜10Aの周縁10Aa~10Adと圧電素子6の周縁6a~6dとの間の環状領域(この実施形態では、インク流通方向21に長手の矩形環状領域)は、圧電素子6または圧力室5の周囲壁によって拘束されていない領域であり、大きな変形が生じる領域である。つまり、振動膜10Aの周縁部は、大きな変形が生じる領域である。このため、圧電素子6が駆動されると、振動膜10Aの周縁部の内周縁側が圧力室5の厚さ方向(この実施形態では下方)に変位するように振動膜10Aの周縁部が屈曲し、これにより振動膜10Aの周縁部に囲まれた中央部全体が圧力室5の厚さ方向(この実施形態では下方)に変位する。
下部電極7の跨ぎ領域7Cにおける圧力室5の天面部周縁5a~5d(この実施形態では、天面部の側縁5c,5d)よりも内側にある部分は、振動膜10Aの周縁部上に形成されている。このため、下部電極7の跨ぎ領域7Cは振動膜10Aの変形を妨げるおそれがある。この実施形態では、下部電極7は、跨ぎ領域7Cに対応した薄肉部を有しているので、下部電極7全体の厚さが厚い場合に比べて、振動膜10Aの変形が妨げられにくくなる。また、この実施形態では、下部電極7は、跨ぎ領域7Cに対応した薄肉部の他に、内側電極領域のうちの跨ぎ領域7Cを除く領域(この実施形態では主電極部7A)に対応した薄肉部を有しているので、振動膜10Aの変形がより妨げられにくくなる。
また、この実施形態では、下部電極7は、跨ぎ領域7Cと、内側電極領域のうちの跨ぎ領域7Cを除く領域(この実施形態では主電極部7A)とを除いた領域に対応した厚肉部を有しているので、下部電極7全体の厚さが薄い場合に比べて、下部電極7の抵抗値を小さくすることができる。つまり、この実施形態によれば、下部電極7の抵抗値を小さくできるとともに、振動膜10Aの変位を大きくすることができる。
図6は、前記インクジェットプリントヘッド1の製造工程の一例を示す工程図である。
まず、シリコン基板2の表面に振動膜形成層10が形成される(S1)。具体的には、シリコン基板2の表面に酸化シリコン層(たとえば、1.2μm厚)が形成される。振動膜形成層10が、シリコン層と酸化シリコン層と窒化シリコン層との積層体で構成される場合には、シリコン基板2の表面にシリコン層(たとえば0.4μm厚)が形成され、シリコン層上に酸化シリコン層(たとえば0.4μm厚)が形成され、酸化シリコン層上に窒化シリコン層(たとえば0.4μm厚)が形成される。振動膜形成層10の表面には、たとえば、Al、MgO、ZrOなどの下地酸化膜が形成されてもよい。これらの下地酸化膜は、後に形成される圧電体膜8からの金属原子の抜け出しを防ぐ。金属電子が抜け出すと、圧電体膜8の圧電特性が悪くなるおそれがある。また、抜け出した金属原子が振動膜10Aを構成するシリコン層に混入すると振動膜10Aの耐久性が悪化するおそれがある。
次に、振動膜形成層10の上(前記下地酸化膜が形成されている場合には当該下地酸化膜の上)に、下部電極7の材料層である下部電極膜が形成される(S2)。下部電極膜は、たとえば、Ti膜(たとえば100Å~400Å厚)を下層としPt膜(たとえば100Å~4000Å厚)を上層とするPt/Ti積層膜からなる。このような下部電極膜は、スパッタ法で形成されてもよい。
次に、下部電極膜の薄肉部が形成される(S3)。つまり、フォトグラフィによって、下部電極7の薄肉部となる領域(下部電極7の跨ぎ領域7Cと内側電極領域のうちの跨ぎ領域7Cを除く領域)以外の領域を覆うレジストマスクが形成され、このレジストマスクをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、下部電極7の薄肉部が形成される。薄肉部の厚さは、たとえば、1000Å程度であり、薄肉部以外の部分(厚肉部)厚さは、たとえば2000Å程度である。
次に、圧電体膜8の材料膜(圧電体材料膜)が下部電極膜上の全面に形成される(S4)。具体的には、たとえば、ゾルゲル法によって1μm~5μm厚のPZT膜が形成される。このようなPZT膜は、金属酸化物結晶粒の焼結体からなる。
次に、圧電体材料膜の全面に上部電極9の材料である上部電極膜が形成される(ステップS5)。上部電極膜は、たとえば、IrO膜(たとえば400Å~1600Å厚)を下層としIr膜(たとえば500Å~2000Å厚)を上層とするIr/Ir0積層膜からなる。このような上部電極膜は、スパッタ法で形成されてもよい。
次に、上部電極膜、圧電体材料膜および下部電極膜のパターニングが行われる(S6-S12)。まず、フォトグラフィによって、下部電極7のパターンのレジストマスクが形成され(S6)、このレジストマスクをマスクとして、上部電極膜、圧電体材料膜および下部電極膜が同一パターンにエッチングされることにより、所定パターンの下部電極膜が形成される(ステップS6-S9)。より詳細には、上部電極膜はドライエッチングによってパターニングされ(ステップS7)、圧電体材料膜はウェットエッチングによってパターニングされ(S8)、下部電極膜はドライエッチングによってパターニングされる(ステップS9)。こうして、下部電極7が形成される。圧電体材料膜のウェットエッチングに用いるエッチャントは、塩酸を主体とした酸類であってもよい。
次に、レジストマスクを剥離した後、フォトリソグラフィによって、圧電体膜8のパターンのレジストマスクが形成され(S10)、このレジストパターンを用いて、上部電極膜および圧電体材料膜が同一パターンにエッチングされる(S11-S12)。より詳細には、上部電極膜はドライエッチングによってパターニングされ(S11)、圧電体材料膜はウェットエッチングによってパターニングされる(S12)。こうして、圧電体膜8および上部電極9が形成される。
その後は、レジストマスクを剥離した後、全面を覆う水素バリア膜13が形成される(S13)。水素バリア膜13は、スパッタ法で形成されたAl膜であってもよく、その膜厚は、400Å~1600Åであってもよい。
さらに、水素バリア膜13を覆う絶縁膜14が形成される(S14)。絶縁膜14は、SiO膜であってもよく、その膜厚は、2500Å~10000Åであってもよい。
次に、シリコン基板2を薄くするための裏面研削が行われる(S15)。たとえば、初期状態で670μm厚程度のシリコン基板2が、300μm厚程度に薄型化されてもよい。
その後、シリコン基板2と振動膜形成層10との積層体に対して、シリコン基板2の裏面からエッチング(ドライエッチングまたはウェットエッチング)を行うことによって、圧力室5が形成され、同時に振動膜10Aが形成される。このエッチングの際、水素バリア膜13および振動膜形成層10の表面に形成される下地酸化膜は、圧電体膜8から金属元素(PZTの場合は、Pb,Zr,Ti)が抜け出すことを防止し、圧電体膜8の圧電特性を良好に保つ。また、前述のとおり、振動膜形成層10の表面に形成される下地酸化膜は、振動膜10Aを形成するシリコン層の耐久性の維持に寄与する。
この後、水素バリア膜13および絶縁膜14のパターニング、配線15の形成等が行われることにより、図1~図4に示されるインクジェットプリントヘッド1が得られる。
前述の実施形態では、下部電極7の跨ぎ領域7Cと、内側電極領域のうちの跨ぎ領域7Cを除く領域(この実施形態では主電極部7A)との厚さが、他の領域の厚さよりも薄く形成されている。しかし、図7および図8に示すように、内側電極領域のうちの跨ぎ領域7Cを除く領域(この実施形態では主電極部7A)の厚さを、跨ぎ領域7Cの厚さより厚く形成してもよい。言い換えれば、下部電極7のうち跨ぎ領域7Cのみを、他の領域の厚さよりも薄く形成してもよい。つまり、下部電極7は、跨ぎ領域7Cに対応した薄肉部と、跨ぎ領域7C以外の領域に対応した厚肉部とを有していてもよい。この場合の下部電極7の薄肉部を、図7に網点領域で示す。
このような構成においても、下部電極7の抵抗値を小さくできるとともに、振動膜10Aの変位を大きくすることができる。また、このような構成では、主電極部7Aの厚さが跨ぎ領域7Cに対応した薄肉部の厚さより厚く形成されているので、下部電極7の抵抗値をより小さくすることができる。
図7および図8に示されるような構成においても、各跨ぎ領域7Cにおける内側電極領域に属している領域の幅が、内側電極領域における内側電極領域の対応する側縁と主電極部7Aの対応する側縁との間の領域の幅よりも短い幅に設定されていてもよい。このような場合には、内側電極領域のうち主電極部7Aと跨ぎ領域7Cとの間の領域の厚さは、跨ぎ領域7Cのように薄く形成されていてもよいし、主電極部7Aのように厚く形成されていてもよい。
前述の実施形態では、跨ぎ領域7Cの全域が薄肉に形成されている。しかし、跨ぎ領域7Cの全域が薄肉に形成されている必要はなく、跨ぎ領域7Cのうちの長手方向(圧力室5の天面部の側縁5c,5dに沿う方向)の一部のみが薄肉に形成されていてもよい。言い換えれば、下部電極7における跨ぎ領域7Cの一部のみの厚さを、他の領域の厚さよりも薄く形成してもよい。たとえば、図9に示すように、跨ぎ領域7Cは、その長手方向に沿って、圧力室5の天面部の側縁5c,5dに沿う長手方向を有する矩形薄肉部と厚肉部とが交互に形成されるような構成であってもよい。図9に、跨ぎ領域7Cにおける矩形薄肉部を網点領域で示す。
さらに、下部電極7は、平面視において、圧力室5の天面部の側縁5c,5dを跨ぐ跨ぎ領域(以下、「第1の跨ぎ領域7C」という。)に加えてまたは代えて、圧力室5の天面部の端縁5a,5bを跨ぐ跨ぎ領域(以下、「第2の跨ぎ領域7C」という。)を有していてもよい。下部電極7が、第1の跨ぎ領域に加えて第2の跨ぎ領域を有している場合には、第1の跨ぎ領域および第2の跨ぎ領域における圧力室5の天面部の周縁5a~5dに沿う方向の少なくとも一部の厚さが薄く形成される。下部電極7が、第1の跨ぎ領域に代えて第2の跨ぎ領域を有している場合には、第2の跨ぎ領域における圧力室5の天面部の端縁5a,5bに沿う方向の少なくとも一部の厚さが薄く形成される。これらの場合においても、平面視において、下部電極7における圧力室5の天面部周縁5a~5dの内側に配置された部分(内側電極領域)のうちの跨ぎ領域7Cを除く領域の厚さを薄く形成してもよい。
次に、インクジェットプリントヘッド1に用いられている圧電体膜8の構成例について説明する。
図10は、圧電体膜8の模式的な断面図である。圧電体膜8は、シリコン基板2上に形成された下部電極(金属膜)7の表面に接して形成されている。より具体的には、シリコン基板2の表面には振動膜形成層10が形成されており、振動膜形成層10の表面に下部電極7が形成されており、下部電極7の表面に圧電体膜8が形成されている。下部電極7は、この実施形態では、Ti膜を下層としPt膜を上層とするPt/Ti積層膜からなる。圧電体膜8の上面には、上部電極9が形成されている。上部電極9は、この実施形態では、IrO膜を下層としIr膜を上層とするIr/Ir0積層膜からなる。
圧電体膜8は、下部電極7の表面に形成された密着層101と、密着層101上に形成された第1のシード層102と、第1のシード層102上に積層された複数の本焼成単位のPZT層103~106と、本焼成単位のPZT106の表面上に形成された第2のシード層107と、第2のシード層107の表面上に形成された複数の本焼成単位のPZT層108~112とを備えている。
「本焼成単位のPZT層」とは、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1または複数回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより形成されるPZT層をいう。つまり、本焼成単位のPZT層は、ゾルゲル法によって形成される。
前駆体溶液には、PZTの他、溶媒が含まれる。塗布工程では、たとえば、前駆体溶液がスピンコートされる。乾燥工程は、たとえば140℃の温度環境下で行われる。乾燥工程は、自然乾燥でもよい。仮焼成工程では、乾燥工程後の塗布膜に対して、たとえば、鉛の融点(327.5℃)以上の温度(たとえば400℃)の熱処理が行われる。仮焼成工程において、鉛の融点未満の温度(たとえば、300℃)の熱処理が行われてもよい。本焼成工程は、ゲル化した塗布膜に対して、たとえば700℃の熱処理が施される。本焼成工程は、RTA(rapid thermal annealing)によって行われてもよい。
以下において、本焼成工程によって同時に焼結された1または複数層の塗布膜のそれぞれに対応したPZT層を、「仮焼成単位のPZT層」という場合がある。
密着層101は、圧電体膜8と下部電極7との密着性を高めるために設けられた層であり、この実施形態では、TiO層からなる。TiO層は、たとえば、ゾルゲル法、スパッタ法等によって形成することができる。
シード層102,107は、PZTの結晶性および密着性を向上させるために設けられた層であり、たとえば、PZTからなるPZTシード層またはTiOからなるTiOシード層から構成される。第1シード層102と第2のシード層107とは、同じ材料で構成されていてもよいし、互いに異なる材料で構成されていてもよい。PZTシード層は、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより形成される。TiOシード層は、たとえば、ゾルゲル法、スパッタ法等によって形成することができる。
図10の構成例では、第1のシード層102と第2のシード層107との間に、4層分の本焼成単位のPZT層103~106が積層され、第2のシード層107上に5層分の本焼成単位のPZT層108~112が積層されている。
本焼成単位のPZT層103~106,108~112のうち、最上層の本焼成単位のPZT層112以外の各本焼成単位のPZT層103~106,108~111は、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が複数回、この実施形態では3回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより形成されている。したがって、最上層の本焼成単位のPZT層112以外の各本焼成単位のPZT層103~106,108~111は、3層分の仮焼成単位のPZT層100を含んでいる。一層分の仮焼成単位のPZT層100の厚さは、この実施形態では、0.08μmである。
一方、最上層の本焼成単位のPZT層112は、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより形成されている。したがって、最上層の本焼成単位のPZT層は、1層分の仮焼成単位のPZT層100を含んでいる。
本焼成工程によって同時に焼結される塗布膜の層数が多くなるほど、つまり本焼成単位のPZT層に含まれる仮焼成単位のPZT層の層数が多くなるほど、全体として本焼成工程数が少なくなるので、製造効率が高くなる。しかしながら、本焼成工程によって同時に焼結される塗布膜の層数が多くなるほど、本焼成工程によって焼結される塗布膜全体の厚さが厚くなるため、本焼成工程後に形成される本焼成単位のPZT層の表面(上面)の凹凸が大きくなる。
図10の構成例では、最上層の本焼成単位のPZT層112以外の本焼成単位のPZT層103~106,108~111に含まれる仮焼成単位のPZT層は3層であるのに対し、最上層の本焼成単位のPZT層112に含まれる仮焼成単位のPZT層は1層である。したがって、最上層の本焼成単位のPZT層112の表面の凹凸は、他の本焼成単位のPZT層112の表面の凹凸に比べて小さい。この結果、最上層の本焼成単位のPZT層112の表面の凹凸は、当該本焼成単位のPZT層112とそれに隣接する上から2番目の本焼成単位のPZT層112との界面の凹凸よりも小さい。これにより、最上表面が滑らかな圧電体膜8が得られる。これにより、圧電体膜8と上部電極9との間の密着性を向上させることができる。また、下部電極7と上部電極9との間の平行度を向上させることができるから、圧電体膜の圧電性能を向上させることができる。
また、図10の構成例では、圧電体膜8は、最下層の本焼成単位のPZT層103の下面側に存在する第1のシード層102以外に、最下層の本焼成単位のPZT層103と最上層の本焼成単位のPZT層112の中間位置において、隣り合う本焼成単位のPZT層106,108の間に介在した第2のシード層107を含んでいる。したがって、最下層の本焼成単位のPZT層103の下面側にのみシード層が設けられている場合に比べて、各本焼成単位のPZT層103~106,108~112の結晶の方向が揃いやすくなる。これにより、安定した圧電特性を有する圧電体膜8が得られる。
このような圧電体膜8は、次のようにして形成される。まず、下部電極7上に密着層101を形成し、密着層101上に第1のシード層102を形成する。次に、第1のシード層102上に、最下層の本焼成単位のPZT層103を形成し、その上に第2層目~第4層目の本焼成単位のPZT層104~106を順次形成する。次に、第4層目の本焼成単位のPZT層106上に、第2のシード層107を形成する。次に、第2のシード層107上に、第5層目の本焼成単位のPZT層108を形成し、その上に第6層目~第8層目の本焼成単位のPZT層109~111を順次形成する。最後に、第8層目の本焼成単位のPZT層111上に、最上層(9層目)の本焼成単位のPZT層112を形成する。
圧電体膜8の実施例について説明する。
(第1実施例)
第1実施例では、第1のシード層102および第2のシード層107が、PZTからなるPZTシード層から構成されている。第1実施例では、第1のシード層102および第2のシード層107が同じ材料で構成されているので、製造効率を向上化できる。
(第2実施例)
第2実施例では、第1のシード層102および第2のシード層107が、TiOからなるTiOシード層から構成されている。第2実施例では、第1のシード層102および第2のシード層107が同じ材料で構成されているので、製造効率を向上化できる。
(第3実施例)
第3実施例では、第1のシード層102がTiOからなるTiOシード層から構成され、第2のシード層107がPZTからなるPZTシード層から構成されている。
(第4実施例)
第4実施例では、第1のシード層102がPZTからなるPZTシード層から構成され、第2のシード層107がTiOからなるTiOシード層から構成されている。
図10の構成例では、最上層の本焼成単位のPZT層112以外の本焼成単位のPZT層103~106,108~111に含まれる仮焼成単位のPZT層は3層である。しかし、最上層の本焼成単位のPZT層111に隣接する上から2番目の本焼成単位のPZT層112に含まれる仮焼成単位のPZT層が2層以上であればよく、それより下層の本焼成単位のPZT層103~106,108~111に含まれる仮焼成単位のPZT層の層数は1でもよく、3以外の複数であってもよい。
また、圧電体膜8に含まれる本焼成単位のPZT層の層数は、図10の構成例の層数に限られず、2以上であれば、任意に設定することができる。また、仮焼成単位のPZT層の厚みは、図10の構成例の厚みに限られず、任意に設定することができる。
また、図10の構成例では、最下層の本焼成単位のPZT層103と最上層の本焼成単位のPZT層112との間に、所定の1つの中間位置にのみ第2のシード層107が設けられているが、異なる複数の中間位置に第2のシード層を設けてもよい。
前述の実施形態では、この発明をインクジェットプリントヘッドに適用した場合について説明したが、この発明は、圧電体膜を用いたマイクロホン、圧力センサ、加速度センサ、角速度センサ、超音波センサ、スピーカー、IRセンサ(熱センサ)等にも適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この明細書からはさらに以下のような特徴が抽出され得る。
A1.キャビティと、前記キャビティ上に配置されかつ前記キャビティの天面部を区画する振動膜を含む振動膜形成層と、前記振動膜の前記キャビティとは反対側の表面に接して形成され、平面視において前記振動膜よりも前記キャビティの内方に後退した周縁を有する圧電素子とを含み、前記圧電素子は、前記振動膜形成層の前記キャビティとは反対側の表面に形成された下部電極と、前記下部電極に対して前記振動膜形成層とは反対側に配置された上部電極と、前記上部電極と前記下部電極との間に設けられた圧電体膜とを含んでおり、前記下部電極は、前記圧電素子を構成している主電極部と、前記主電極部から前記振動膜形成層の表面に沿う方向に引き出され、前記振動膜の主面に対して法線方向から見た平面視において、前記キャビティの天面部周縁を跨いで前記キャビティの外方に延びた延長部とを含み、前記平面視において、前記主電極部は、前記下部電極における前記キャビティの天面部周縁よりも内側にある内側電極領域に含まれており、前記延長部は、前記内側電極領域に繋がりかつ前記下部電極における前記キャビティの天面部周縁よりも外側にある外側電極領域を含んでおり、前記下部電極は、前記内側電極領域と前記外側電極領域との境界線を跨いで薄く形成された薄肉部を有している、圧電体膜利用装置。
振動膜における振動膜の周縁と圧電素子の周縁との間の領域、つまり、振動膜の周縁部は、圧電素子またはキャビティの周囲壁によって拘束されていない領域であり、大きな変形が生じる領域である。このため、圧電素子が駆動されると、振動膜の周縁部の内周縁側がキャビティの厚さ方向に変位するように振動膜の周縁部が屈曲し、これにより振動膜の周縁部に囲まれた中央部全体がキャビティの厚さ方向に変位する。
平面視において、下部電極における内側電極領域と外側電極領域との境界線を跨いでいる領域のうち、キャビティの天面部周縁よりも内側にある部分は、振動膜の周縁部上に形成されている。このため、下部電極における内側電極領域と外側電極領域との境界線を跨いでいる領域は振動膜の変形を妨げるおそれがある。この構成では、下部電極は、内側電極領域と外側電極領域との境界線を跨いで薄く形成された薄肉部を有している。これにより、下部電極全体の厚さが厚い場合に比べて、振動膜の変形が妨げられにくくなる。
また、この構成では、下部電極において、前記薄肉部以外の領域の厚さを、前記薄肉部よりも厚く形成することができるので、下部電極全体の厚さが薄い場合に比べて、下部電極の抵抗値を小さくすることができる。つまり、この発明によれば、下部電極の抵抗値を小さくできるとともに、振動膜の変位を大きくすることができる圧電体膜利用装置を提供できる。
A2.前記薄肉部は、前記下部電極における前記内側電極領域と前記外側電極領域との境界線の全域に形成されている、「A1.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、下部電極における内側電極領域と外側電極領域との境界線の一部にのみ薄肉部が形成されている場合に比べて、振動膜の変位をより大きくすることができる。
A3.前記主電極部も厚さの薄い薄肉部に形成されている、「A2.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、振動膜の変位をより一層大きくすることができる。
A4.前記下部電極における前記主電極部を含む領域の厚さが前記薄肉部の厚さよりも厚い、「A2.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、下部電極の抵抗値をより小さくすることができる。
A5.前記主電極部の全域の厚さが前記薄肉部の厚さよりも厚く、前記内側電極領域のうちの前記主電極部以外の領域の厚さが薄い、「A4.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、下部電極の抵抗値をより小さくすることができるとともに、振動膜の変位をより大きくすることができる。
A6.前記薄肉部は、前記下部電極における前記内側電極領域と前記外側電極領域との境界線の一部に形成されている、「A1.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、下部電極における内側電極領域と外側電極領域との境界線の全域に薄肉部が形成されている場合に比べて、下部電極の抵抗値を小さくすることができる。
A7.前記薄肉部は、前記下部電極における前記内側電極領域と前記外側電極領域との境界線に沿って間隔をおいて形成された複数の薄肉部を含んでいる、「A6.」に記載の圧電体膜利用装置。
A8.前記複数の薄肉部は、前記下部電極における前記内側電極領域と前記外側電極領域との境界線に沿う方向に長い矩形形状である、「A7.」に記載の圧電体膜利用装置。
A9.前記下部電極における前記主電極部を含む領域の厚さが前記薄肉部の厚さよりも厚い、「A6.」~「A8.」のいずれかに記載の圧電体膜利用装置。この構成では、下部電極の抵抗値をより小さくすることができる。
A10.前記主電極部の全域の厚さが前記薄肉部の厚さよりも厚く、前記内側電極領域のうちの前記主電極部以外の領域の厚さが薄い、「A9.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、下部電極の抵抗値をより小さくすることができるとともに、振動膜の変位をより大きくすることができる。
A11.前記平面視において、前記キャビティの天面部が一方向に長い矩形状であり、前記主電極部は、平面視において、前記キャビティの天面部の短手方向の幅より短い幅と、前記キャビティの天面部の長手方向の長さより短い長さとを有する前記一方向に長い矩形状であり、その両端縁および両側縁が前記キャビティの天面部の両端縁および両側縁よりも前記キャビティの内方にそれぞれ後退しており、前記延長部は、前記主電極部の各側縁から前記キャビティの天面部の対応する側縁の中間部を跨いで、当該天面部側縁の外方に延びており、前記内側電極領域と前記外側電極領域との境界線は、前記キャビティの天面部の各側縁の中間部に対応した2つの境界線を含んでいる、「A1.」~「A10.」のいずれかに記載の圧電体膜利用装置。
A12.前記キャビティが複数設けられており、これらの複数のキャビティが前記キャビティの短手方向に並んで配置されている、「A11.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、たとえば、インクジェットプリントヘッドに適した圧電体膜利用装置を提供できる。
A13.隣り合う2つの前記キャビティ上にそれぞれ配置された2つの前記主電極部の対向する側縁どうしは、それらから引き出された前記延長部によって連結されており、前記延長部における隣り合う2つのキャビティの間の領域のほぼ全域の厚さが、前記薄肉部の厚さよりも厚い、「A12.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、インクジェットプリントヘッドに適し、かつ下部電極の抵抗値のより小さい圧電体膜利用装置を提供できる。
A14.複数の前記キャビティ上に配置された複数の前記主電極部から引き出された前記延長部は、前記平面視において、前記各キャビティの長手方向の一端よりも前記各キャビティの外側の位置において繋がっている、「A13.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、各キャビティの長手方向の一端よりも各キャビティの外側の位置において、下部電極を外部に接続することができる。
A15.前記下部電極には、前記平面視において、前記各キャビティの長手方向の前記一端側の端部をそれぞれ含む領域に複数の切除部が形成されている、「A14.」に記載の圧電体膜利用装置。この構成では、各圧電素子の圧電体膜の変位をより大きくすることができる。
また、この明細書からはさらに以下のような特徴が抽出され得る。
B1.積層された複数の本焼成単位のPZT層を含む圧電体膜であって、最下層の本焼成単位のPZT層の下面側に存在する第1のシード層と、最下層の本焼成単位のPZT層と最上層の本焼成単位のPZT層との間の中間位置において、隣接する2つの本焼成単位のPZT層の間に介在する第2のシード層とを含む、圧電体膜。
「本焼成単位のPZT層」とは、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1または複数回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより形成されるPZT層をいう。
この構成では、最下層の本焼成単位のPZT層の下面側のみならず、最下層の本焼成単位のPZT層と最上層の本焼成単位のPZT層との間の中間位置においても、シード層が存在している。このため、最下層の本焼成単位のPZT層の下面側にのみシード層が形成されている圧電体膜に比べて、各本焼成単位のPZT層の結晶の方向が揃いやすくなる。これにより、安定した圧電特性を有する圧電体膜が得られる。
B2.前記第1のシード層と前記第2のシード層とが同じ材料で構成されている、「B1.」に記載の圧電体膜。この構成では、圧電体膜の製造効率を向上化できる。
B3.前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、PZTからなるPZTシード層から構成されている、「B2.」に記載の圧電体膜。
B4.前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、酸化チタンからなるTiOシード層から構成されている、「B2.」に記載の圧電体膜。
B5.前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、異なる材料で構成されている、「B1.」に記載の圧電体膜。
B6.前記第1のシード層が酸化チタンからなるTiOシード層から構成され、前記第2のシード層がPZTからなるPZTシード層から構成されている、「B5.」に記載の圧電体膜。
B7.前記第1のシード層がPZTからなるPZTシード層から構成され、前記第2のシード層が酸化チタンからなるTiOシード層から構成されている、「B5.」に記載の圧電体膜。
B8.前記PZTシード層は、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程が1回行われた後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程が行われることにより、形成されている「B3.」、「B6.」または「B7.」のいずれかに記載の圧電体膜。
B9.下部電極と、前記下部電極上に形成された「B1.」~「B8.」のいずれかに記載の圧電体膜と、前記圧電体膜上に形成された上部電極とを含む、圧電素子。この構成では、安定した圧電特性を有する圧電素子が得られる。
B10.キャビティと、前記キャビティ上に配置されかつ前記キャビティの天面部を区画する振動膜と、前記振動膜上に形成された「B9.」に記載の圧電素子とを含む、インクジェットプリントヘッド。この構成では、安定した圧電特性を有する圧電素子を用いることによって、安定した駆動特性を実現できるインクジェットプリントヘッドを提供できる。
1 インクジェットプリントヘッド
2 シリコン基板
3a 吐出口
4 インク供給路
5 圧電室(キャビティ)
5a,5b 圧電室の天面部の両端縁
5c,5d 圧電室の天面部の両側縁
6 圧電素子
6a,6b 圧電素子の両端縁
6c,6d 圧電素子の両側縁
7 下部電極
7A 主電極部
7B 延長部
7C 跨ぎ領域
8 圧電体膜
9 上部電極
10 振動膜形成層
10A 振動膜
10Aa,10Ab 振動膜の両端縁
10Ac,10Ad 振動膜の両側縁
101 密着層
103~106,108~112 本焼成単位のPZT層
102 第1のシード層
107 第2のシード層

Claims (12)

  1. 積層された複数の本焼成単位のPZT層を含む圧電体膜の製造方法であって、
    上から2番目の本焼成単位のPZT層を、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程を複数回行った後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程を行うことにより形成する工程と、
    前記上から2番目の本焼成単位のPZT層上に隣接して形成される最上層の本焼成単位のPZT層を、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程を1回行った後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程を行うことにより形成する工程とを含み、
    前記最上層の本焼成単位のPZT層の表面の凹凸が、前記最上層の本焼成単位のPZT層と前記上から2番目の本焼成単位のPZT層との界面の凹凸よりも小さい、圧電体膜の製造方法。
  2. 前記最上層の本焼成単位のPZT層の厚さが、前記上から2番目の本焼成単位のPZT層の厚さよりも薄く形成されている、請求項1に記載の圧電体膜の製造方法。
  3. 前記上から2番目の本焼成単位のPZT層と前記最上層の本焼成単位のPZT層との2つの本焼成単位のPZT層以外の各本焼成単位のPZT層を、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程を複数回行った後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程を行うことにより形成する工程を含む、請求項1または2に記載の圧電体膜の製造方法。
  4. 最下層の本焼成単位のPZT層を、第1のシード層上に形成する工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電体膜の製造方法。
  5. 前記最下層の本焼成単位のPZT層を形成する工程と、前記最上層の本焼成単位のPZT層を形成する工程との間において、第2のシード層を形成する工程を含む、請求項4に記載の圧電体膜の製造方法。
  6. 前記第1のシード層と前記第2のシード層とが同じ材料で構成されている、請求項5に記載の圧電体膜の製造方法。
  7. 前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、PZTからなるPZTシード層から構成されている、請求項6に記載の圧電体膜の製造方法。
  8. 前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、酸化チタンからなるTiOシード層から構成されている、請求項6に記載の圧電体膜の製造方法。
  9. 前記第1のシード層と前記第2のシード層とが、異なる材料で構成されている、請求項5に記載の圧電体膜の製造方法。
  10. 前記第1のシード層が酸化チタンからなるTiOシード層から構成され、前記第2のシード層がPZTからなるPZTシード層から構成されている、請求項9に記載の圧電体膜の製造方法。
  11. 前記第1のシード層がPZTからなるPZTシード層から構成され、前記第2のシード層が酸化チタンからなるTiOシード層から構成されている、請求項9に記載の圧電体膜の製造方法。
  12. 前記PZTシード層を、PZTを含む前駆体溶液を塗布する塗布工程と、その塗布膜を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後の塗布膜を加熱してゲル化させる仮焼成工程とからなるゲル化膜形成工程を1回行った後に、ゲル化した塗布膜を熱処理して焼結させる本焼成工程を行うことにより形成する工程を含む、請求項7、10または11のいずれか一項に記載の圧電体膜の製造方法。
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