JP7072770B2 - 細胞の品質を評価する方法、及び細胞の品質判定キット - Google Patents
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前記細胞又は前記細胞の培養上清中の、miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAを内在性の指標とすることを特徴とする、細胞の品質を評価する方法。
[2]前記細胞が、間葉系幹細胞である、[1]に記載の方法。
[3]前記miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pが、前記細胞又は前記細胞の培養上清中のエクソソームに含まれるmiRNAである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記品質の評価が、配列番号1~96の塩基配列からなるmiRNAの群より選択される少なくとも1種のmiRNAを指標として行われる、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]培地中で細胞を培養する工程、
培養上清の一部をサンプリングする工程
サンプリングした培養上清からエクソソームを回収する工程、
回収したエクソソームからmiRNAを抽出する工程、
miRNAの発現レベルを測定する工程、及び
miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAを内在性の指標として、各miRNAの発現レベルを調整する工程
を含む、細胞の品質を評価する方法。
[6]miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAを内在性の指標として有する、細胞品質判定用キット。
[7]miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAに特異的にハイブリダイズするプライマーセットを少なくとも1つ有する、[6]に記載の細胞品質判定用キット。
[8]配列番号1~96の塩基配列からなるmiRNAの群より選択される少なくとも1種のmiRNAに特異的にハイブリダイズするプライマーセットを少なくとも1つ有する、[7]に記載の細胞品質判定用キット。
本発明は、細胞又は細胞の培養上清中のmiRNAを指標として細胞の品質を評価する方法において、特定のmiRNAを内在性の指標とすることを特徴とする方法である。具体的には、miRNAを指標に細胞の品質を評価する方法であって、前記細胞又は前記細胞の培養上清中の、miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAを内在性の指標とすることを特徴とする方法である。なお、「内在性の指標とする」とは、内在性コントロール遺伝子として用いることを意味する。この内在性コントロール遺伝子は、リアルタイムPCRにおいて標的遺伝子の発現量を補正する際に用いられる遺伝子である。採取したRNAの品質や量、逆転写反応の効率による実験間のバラつきを補正できるため、より正確な評価を行うことができる。
本発明における細胞としては、インビトロ条件下で培養できる細胞であれば特に限定されないが、哺乳動物由来の細胞であることが好ましい。また、インビトロ条件下で培養できるのであれば、哺乳動物より摘出した組織を形成する細胞であっても、インビトロで株化された細胞であってもよい。
本発明における細胞の培養方法は、それぞれの細胞に適した方法であれば特に限定されず、従来と同様の方法が用いられる。通常、30℃~37℃の温度、2%~7%CO2環境下、0.1%~21%O2環境下で行われる。また、細胞の継代の時期及び方法もそれぞれの細胞に適していれば特に限定されず、細胞の様子を見ながら、従来と同様に行うことができる。
本発明の方法において、細胞の品質変化の指標として用いるmiRNAとしては、細胞の品質変化に応じて細胞から分泌される量が変化するものであれば特に限定されない。また、このようなmiRNAとしては、細胞の種類によってそれぞれ適切なものが選択され得る。例えば、ヒトの脂肪由来間葉系幹細胞の品質変化の指標としては、配列表の配列番号1~96に示される塩基配列からなるmiRNAが好ましい。これらはいずれも、特開2016-144439号公報の実施例において、本出願人らによって細胞の老化に応じて培養上清中の存在量が変化することが具体的に確認されているものである。また、配列番号1、12及び13に示される塩基配列からなるmiRNAについては、本発明の実施例において、ヒトの脂肪由来間葉系幹細胞だけでなく、ヒトの骨髄由来間葉系幹細胞及びヒトの臍帯由来間葉系幹細胞についても、その老化に応じて培養上清中の存在量が変化することが具体的に確認されている。
細胞の培養方法は、それぞれの細胞に適した方法であれば特に限定されず、従来と同様の方法が用いられる。通常、30℃~37℃の温度、2%~7%CO2環境下、0.1%~21%O2環境下で行われる。また、細胞の継代の時期及び方法もそれぞれの細胞に適していれば特に限定されず、細胞の様子を見ながら、従来と同様に行うことができる。
細胞の品質を評価したい細胞について、継代1日後~5日後、好ましくは1日後~4日後、より好ましくは1日後~3日後、さらに好ましくは2日後~3日後に、細胞もしくは、培養上清の一部をサンプリングする。サンプリングする細胞量、もしくは上清の液量は、その後の分析に十分な量であれば特に制限されない。なお、細胞の品質の評価の際の基準値を算出するために、品質が変わる以前の細胞増殖能等を十分に保持している状態の細胞についても細胞もしくは培養上清のサンプリングをすることができる。
エクソソームの回収は、当業者に公知の多くの方法を用いて行われ得る。一般には、超遠心分離法を用いた方法が広く用いられるが、市販のエクソソーム単離キット(Total exosome isolation from cell culture media,invitrogen等)を用いることもできる。
エクソソームからmiRNAを抽出するためには、当業者に公知の多くの方法を用いることができる。また、市販のmiRNA抽出用キット(miRNeasyMini Kit,Qiagen等)を用いることもできる。
本工程は、内在性コントロール(内在性の指標)としてのmiR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを測定する工程、及び細胞の品質評価の指標となるmiRNAの発現レベルを測定する工程を少なくとも含む
本工程では、上記工程(v)で得られた品質評価の指標となるmiRNAの発現レベルの実験値を、内在性コントロールとなるmiRNAの実験値により補正して調整することにより、実験間のバラつきを補正することができる。
細胞の品質変化によって増減することが判明している上記特定のmiRNAについて、そのmiRNAの発現レベルを、品質変化が起こる以前の細胞が分泌するmiRNAの発現レベル(基準値)と比較して、品質変化(老化等)の程度を評価することができる。また、基準値以外に、それぞれの細胞、miRNAの種類毎に適切な閾値を決め、その値を超える、又は下回る値になった場合には、品質変化(老化等)の程度が激しくヒトへの投与には不向きである等との判断をすることもできる。
本工程は、本発明の方法による品質の評価を確認するために、品質が変化した細胞を検出する工程である。品質が変化した細胞(老化細胞等)を検出するためには、当業者に公知の多くの方法を用いることができる。また、市販のSenescence-associated β-galactosidase発現検出キット(Senescence Detection Kit,Bio Vision)を用いることもできる。
本発明の細胞品質判定用キットは、測定対象又は測定原理等に応じた種々の構成をとることができる。本発明のキットの構成要素として、miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pを内在性の指標として含んでおればよく、さらに、例えば、上記内在性の指標となるmiRNA(cDNA)の増幅用プライマーセット(miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAに特異的にハイブリダイズするプライマーセット)、細胞の品質変化に伴って培養上清中の発現が増減するmiRNA(cDNA)の増幅用プライマーセット、及びDNAチップ等で使用するハイブリダイゼーション用のプローブを変化の指標として、含むことができる。このような細胞の品質変化に伴って培養上清中の発現が増減するmiRNAとしては、例えば、配列番号1~96の塩基配列からなるmiRNAが挙げられる。
[間葉系幹細胞の継代数と老化の関係の検討]
凍結保存されたヒト脂肪由来間葉系幹細胞(AD、Promo Cell社製、hMSC-AT-c、Cat. No.C12977)、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM、Promo Cell社製、hMSC-BM-c、Cat. No.C12974)及びヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC、Promo Cell社製、hMSC-UC-c、Cat. No.C12971)を恒温槽(37℃)にて融解し、細胞懸濁液を調整した。培養フラスコ(75cm2、CORNING社製、Cat. No.3290)に間葉系幹細胞用無血清培地(ロート社製)を8mL入れ、それぞれの細胞懸濁液を加え、1mLの間葉系幹細胞用無血清培地(ロート社製)で、2回共洗いを行った。細胞を播種した培養フラスコを、CO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内に入れ静置した。17時間静置後、細胞の生着を確認し、培地交換を行った。培養フラスコ内の培地を50mL遠沈管に回収した後に、リン酸緩衝食塩水(PBS)でフラスコ内を洗浄した。PBSを除去後、2mLのトリプシン(ロート社製)を加えて、細胞を剥離して、遠沈管に回収した。細胞数を測定する為、細胞懸濁液を一部取り、Trypan Blue Solution 0.4%(Life Technologies社製、Cat. No.15250)と1:1で混合し、細胞計数盤(ワケンカウンター、ワケンビーテック社製、Cat.No.WC2-100S)により細胞数をカウントした。細胞懸濁液を必要分採取し、遠心分離を行い、上清を取り除き、3.75x105cells/flaskで継代を行った。
[間葉系幹細胞の内在性マーカーの検討]
実施例1と同様に、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(AD、Promo Cell社製、hMSC-AT-c、Cat.No.C12977)、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM、Promo Cell社製、hMSC-BM-c、Cat.No.C12974)及びヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC、Promo Cell社製、hMSC-UC-c、Cat.No.C12971)を、各3サンプルずつ、間葉系幹細胞用無血清培地(ロート社製)を用いて2、4及び6継代並びに、9、10、若しくは11継代培養して、培養フラスコ内の各継代時における培地(培養上清とも言う)を50mL遠沈管に回収した。得られた培養上清から、エクソソーム回収キット(Total Exosome Isolation Reagent、cell culture media製、CatNo.4478359)を用いて、エクソソームを回収した。その後エクソソーム中のmiRNAを、市販の試薬(miRNeasyMini Kit,Qiagen)のプロトコールに従い抽出した。得られたmiRNAからTaqMan Advanced miRNA cDNA Synthesis Kit(50 reaction、A28007)を用いてcDNAを合成し、miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pのリアルタイムPCR(TaqMan Fast Advanced Master Mix 2x5ml(Thermo Fisher Scientific社製、 CatNo.4444963)、TaqMan Advanced miRNA Assays(Thermo Fisher Scientific社製、 CatNo.A25576))を実施した。
[間葉系幹細胞の老化の検討]
実施例2と同様に、ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(AD、Promo Cell社製、hMSC-AT-c、Cat.No.C12977)、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM、Promo Cell社製、hMSC-BM-c、Cat. No.C12974)及びヒト臍帯由来間葉系幹細胞(UC、Promo Cell社製、hMSC-UC-c、Cat.No.C12971)を、各3サンプルずつ間葉系幹細胞用無血清培地(ロート社製)を用いて2、4及び6継代及び、11継代培養して、各培養上清からエクソソームを回収した後、エクソソーム中のmiRNAを、市販の試薬(miRNeasyMini Kit,Qiagen)のプロトコールに従い抽出後、miR-100-5p、miR-1260a、miR-126-b及びmiR1290のマイクロアレイ(Agilent DesignID 046064)を実施した。
ΔCt=Ct(Target)-Ct(Internal Control)・・・(2)
ΔΔCt=ΔCt-ΔCt(Passage2)・・・(3)
2^(-ΔΔCt)=各Lotにおける2の-ΔΔCt乗の平均値・・・(4)
Claims (8)
- miRNAを指標に間葉系幹細胞の品質を評価する方法であって、
前記間葉系幹細胞又は前記間葉系幹細胞の培養上清中の、miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAを内在性の指標とすることを特徴とする、間葉系幹細胞の品質を評価する方法。 - 前記間葉系幹細胞が、脂肪由来、骨髄由来又は臍帯由来間葉系幹細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pが、前記間葉系幹細胞又は前記間葉系幹細胞の培養上清中のエクソソームに含まれるmiRNAである、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記品質の評価が、配列番号1~96の塩基配列からなるmiRNAの群より選択される少なくとも1種のmiRNAを指標として行われる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 培地中で間葉系幹細胞を培養する工程、
培養上清の一部をサンプリングする工程
サンプリングした培養上清からエクソソームを回収する工程、
回収したエクソソームからmiRNAを抽出する工程、
miRNAの発現レベルを測定する工程、及び
miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAを内在性の指標として、各miRNAの発現レベルを調整する工程
を含む、間葉系幹細胞の品質を評価する方法。 - miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAを内在性の指標として有する、間葉系幹細胞品質判定用キット。
- miR-100-5p、miR-21-5p及びmiR-let-7b-5pからなる群より選択される少なくとも1種のmiRNAに特異的にハイブリダイズするプライマーセットを少なくとも1つ有する、請求項6に記載の間葉系幹細胞品質判定用キット。
- 配列番号1~96の塩基配列からなるmiRNAの群より選択される少なくとも1種のmiRNAに特異的にハイブリダイズするプライマーセットを少なくとも1つ有する、請求項7に記載の間葉系幹細胞品質判定用キット。
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