JP7072398B2 - 一体型空気調和装置の管理装置および管理プログラム - Google Patents

一体型空気調和装置の管理装置および管理プログラム Download PDF

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Description

本発明は、一体型空気調和装置の性能を測定して管理する管理装置と、管理プログラムとに関する。
ビルなどの大規模な建物に設置される空気調和装置として、一体型空気調和装置に圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器からなる冷媒の循環サイクルを収容した一体型空気調和装置が知られている。このような一体型空気調和装置は、建物などの空調負荷に設置された後、試運転および調整を実施して施主等に引き渡される。また引渡し後にも保守管理のために性能の維持を確認する必要がある。このような一体型空気調和装置の能力測定方法は、JISによって各種策定されているが、環境試験室に一体型空気調和装置を設置して行われる測定方法であるため、外乱のある一般建物に設置された一体型空気調和装置に適用して能力測定を正確に行うことはできない。
空気調和装置の能力を測定する手法として、空気エンタルピ法や冷媒エンタルピ法の他、コンプレッサカーブ法(例えば、非特許文献1参照)が知られている。空気エンタルピ法は、空気調和装置の標準的な能力測定方法であり、空気の温度・エンタルピ・風量から求める方法である。冷媒エンタルピ法は、冷媒の温度・エンタルピ・流量から求める手法である。また、この冷媒エンタルピ法を利用する測定法として、超音波流量計で冷媒流量を測定する方法が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
コンプレッサカーブ法は、圧縮機入口の冷媒状態(冷媒温度、圧力)と、圧縮機の周波数、およびメーカが保有する代表試験機の運転特性データを用いて冷凍サイクルにおける冷媒流量を推定するものである。そしてこの冷媒流量に冷凍サイクル内の各状態点でのエンタルピを用いて冷暖房能力を推定する方法である。
特開2008-281255号公報
D-14「個別分散空調システムの現地性能計測手法に関する研究:空気エンタルピー法とコンプレッサーカーブ法の比較による精度の検証」、空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集、2010年9月
コンプレッサカーブ法は、1台の室外機に複数台の室内機が接続された、いわゆるビル用マルチエアコンの能力測定に最適化されたものであり、ビル用マルチエアコンに予め設けられている制御用の圧力センサなどを用いることが前提となっている。しかしながら、一体型空気調和装置には、制御用の圧力センサなどが設けられていないので、コンプレッサカーブ法を利用して能力測定を行う場合には、これらのセンサなどを設置する必要があり、追加設備が必要となる。このような追加設備が必要となるのは、特許文献1の超音波流量計などを利用した冷媒エンタルピ法でも同様である。
そこで本発明は、追加の設備などを必要とせずに一体型空気調和装置の能力を測定することが可能な管理装置と、管理プログラムとを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器からなる冷媒の循環サイクルを1つの筐体に収容した複数台の水冷式の一体型空気調和装置を管理する管理装置であって、前記一体型空気調和装置に関する複数種類の特性パラメータを記憶する記憶手段と、前記一体型空気調和装置に予め設けられているセンサで測定された圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度とを含む複数種類の測定データを取得するデータ取得手段と、前記特性パラメータと、前記測定データとから冷媒流量を求め、前記冷媒流量に基づいて圧縮機熱流と、凝縮器熱流と、蒸発器熱流とを算出する算出手段と、複数台の前記一体型空気調和装置の運転を制御する運転制御手段と、を備え、前記運転制御手段は、複数台の前記一体型空気調和装置のうち、冷房運転を行っている一体型空気調和装置の凝縮器熱流と、暖房運転を行っている一体型空気調和装置の蒸発器熱流とに基づいて、複数台の前記一体型空気調和装置全体の熱源水に流入する熱源水加熱熱流を算出し、複数台の前記一体型空気調和装置へ熱源水ポンプによって供給される前記熱源水の入り口温度と、複数台の前記一体型空気調和装置から前記熱源水ポンプへと戻る前記熱源水の出口温度との差である出入口温度差を算出し、前記熱源水加熱熱流を、前記出入口温度差に熱源水の比熱を乗算した値によって除算することにより、複数台の前記一体型空気調和装置全体に必要な熱源水流量を算出し、前記熱源水ポンプを制御して、複数台の前記一体型空気調和装置へ前記熱源水流量の熱源水を供給することを特徴とする。
この発明によれば、管理装置は、データ取得手段によって一体型空気調和装置に予め設けられているセンサから、圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度とを含む複数種類の測定データを取得する。算出手段は、データ取得手段により取得した測定データと、記憶手段に記憶されている一体型空気調和装置に関する複数種類の特性パラメータとに基づいて冷媒流量を求め、この冷媒流量に基づいて、一体型空気調和装置の性能を表す圧縮機熱流と、凝縮器熱流と、蒸発器熱流とを算出する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の一体型空気調和装置の管理装置であって、前記算出手段は、前記特性パラメータと、前記測定データとに基づいて圧縮機入口比エンタルピと、圧縮機出口比エンタルピと、凝縮器出口比エンタルピと、蒸発器入口比エンタルピとを算出し、前記データ取得手段により取得した前記圧縮機のインバータ出力電力を、前記圧縮機入口比エンタルピと前記圧縮機出口比エンタルピとの差で除算することにより前記冷媒流量を算出し、前記冷媒流量と、前記圧縮機入口比エンタルピ、前記圧縮機出口比エンタルピ、前記凝縮器出口比エンタルピおよび前記蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流を算出する、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の一体型空気調和装置の管理装置であって、前記算出手段は、前記特性パラメータと、前記測定データとに基づいて圧縮機体積効率と、圧縮機入口体積比と、圧縮機入口比エンタルピと、圧縮機出口比エンタルピと、凝縮器出口比エンタルピと、蒸発器入口比エンタルピとを算出し、前記データ取得手段により取得した前記圧縮機のインバータ周波数に、前記圧縮機体積効率と、既知の圧縮機吸込容積とを乗算して、前記圧縮機入口体積比を除算することにより前記冷媒流量を算出し、前記冷媒流量と、前記圧縮機入口比エンタルピ、前記圧縮機出口比エンタルピ、前記凝縮器出口比エンタルピおよび前記蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流を算出する、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置であって、前記算出手段は、前記圧縮機の消費電力に、冷媒サイクル以外の消費電力を加算して、前記一体型空気調和装置の消費電力を算出する、ことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置であって、前記測定データと、前記冷媒流量と、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流と、前記冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力とを監視して、前記一体型空気調和装置の異常を検出する異常検出手段を備える、ことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置であって、前記運転制御手段は、前記測定データと、前記冷媒流量と、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流と、前記冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力とを監視し、その監視結果に基づいて前記一体型空気調和装置の運転を制御することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置であって、前記運転制御手段は、通前記熱源水加熱熱流が正数の場合には、複数台の前記一体型空気調和装置に供給される前記熱源水を加熱させ、前記熱源水加熱熱流が負数の場合には、複数台の前記一体型空気調和装置に供給される前記熱源水を冷却させることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の一体型空気調和装置の管理装置であって、前記運転制御手段は、熱源水温度に応じたエネルギ消費効率が前記一体型空気調和装置の運転負荷に応じて表されたエネルギ消費効率パラメータと、前記監視結果とに基づいて、複数台の前記一体型空気調和装置に供給される前記熱源水の温度を制御する、ことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器からなる冷媒の循環サイクルを1つの筐体に収容した複数台の水冷式の一体型空気調和装置の管理プログラムであって、コンピュータを、前記一体型空気調和装置に関する複数種類の特性パラメータを記憶する記憶手段と、前記一体型空気調和装置に予め設けられているセンサで測定された圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度とを含む複数種類の測定データを取得するデータ取得手段と、前記特性パラメータと、前記測定データとから冷流量を求め、前記冷媒流量に基づいて圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流を算出する算出手段と、複数台の前記一体型空気調和装置の運転を制御する運転制御手段と、して機能させ、前記運転制御手段は、複数台の前記一体型空気調和装置のうち、冷房運転を行っている一体型空気調和装置の凝縮器熱流と、暖房運転を行っている一体型空気調和装置の蒸発器熱流とに基づいて、複数台の前記一体型空気調和装置全体の熱源水に流入する熱源水加熱熱流を算出し、複数台の前記一体型空気調和装置へ熱源水ポンプによって供給される前記熱源水の入り口温度と、複数台の前記一体型空気調和装置から前記熱源水ポンプへと戻る前記熱源水の出口温度との差である出入口温度差を算出し、前記熱源水加熱熱流を、前記出入口温度差に熱源水の比熱を乗算した値によって除算することにより、複数台の前記一体型空気調和装置全体に必要な熱源水流量を算出し、前記熱源水ポンプを制御して、複数台の前記一体型空気調和装置へ前記熱源水流量の熱源水を供給することを特徴とする。
請求項1および請求項に記載の発明によれば、一体型空気調和装置に予め設けられているセンサから取得可能な測定データと、記憶手段に記憶されている特性パラメータとを利用して冷媒流量を求め、この冷媒流量に基づいて、一体型空気調和装置の性能を表す圧縮機熱流と、凝縮器熱流と、蒸発器熱流とを算出することができるので、追加設備などを必要とせずに一体型空気調和装置の性能測定を行うことが可能である。また、複数台の水冷型一体型空気調和装置へ熱源水を供給する熱源水ポンプの水量制御を行うことができるので、省エネルギや、冷暖房能力の向上などの目的に応じて、複数台の一体型空気調和装置を一括して最適な条件で運転制御することが可能である。
請求項2に記載の発明によれば、圧縮機のインバータ出力電力を、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機出入口比エンタルピ差で除算することにより冷媒流量を算出することができる。また、この冷媒流量と、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機入口比エンタルピ、圧縮機出口比エンタルピ、凝縮器出口比エンタルピおよび蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流を算出することができる。したがって、追加設備などを必要とせずに、比較的簡易な演算で一体型空気調和装置の性能測定を行うことが可能である。
請求項3に記載の発明によれば、圧縮機のインバータ周波数に、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機体積効率と、既知の圧縮機吸込容積とを乗算し、圧縮機入口体積比を除算することにより冷媒流量を算出することができる。また、冷媒流量と、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機入口比エンタルピ、圧縮機出口比エンタルピ、凝縮器出口比エンタルピおよび蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流を算出することができる。したがって、追加設備などを必要とせずに、比較的簡易な演算で一体型空気調和装置の性能測定を行うことが可能である。
また、冷媒流量と、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流との算出に、請求項2に記載の発明、または請求項3に記載の発明のいずれも適用可能であるため、一体型空気調和装置から取得可能な測定データが異なる場合でも柔軟に適用することが可能である。
請求項4に記載の発明によれば、圧縮機の消費電力に冷媒サイクル以外の消費電力を加算して一体型空気調和装置全体の消費電力を算出することができるので、消費電力の面から見た一体型空気調和装置の性能測定も可能である。
請求項5に記載の発明によれば、測定データ、冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流や、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力などを監視して、一体型空気調和装置の異常を検出することができるので、一体型空気調和装置の故障や異常動作などを早期に検出して対処することが可能である。
請求項6に記載の発明によれば、測定データ、冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流や、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力などを監視して、一体型空気調和装置の運転を制御することができるので、省エネルギや、冷暖房能力の向上など、目的に応じて最適な運転制御を行うことが可能である。
請求項に記載の発明によれば、熱源水温度に応じたエネルギ消費効率が一体型空気調和装置の運転負荷に応じて表されたエネルギ消費効率パラメータと、監視結果とに基づいて、熱源水の温度を制御することができるので、省エネルギや、冷暖房能力の向上などの目的に応じて、複数台の一体型空気調和装置を一括して最適な条件で運転制御することが可能である。
この発明の実施の形態1に係る管理サーバが接続された建物を示す概略図である。 図1の水冷式一体型空気調和装置の冷凍サイクルを示す説明図である。 図1の水冷式一体型空気調和装置のモリエル線図(p-h線図)である。 図1の水冷式一体型空気調和装置の各部の熱流を説明する冷凍サイクル図である。 実施の形態1に係る冷媒熱流演算の手順を示すフローチャートである。 図5の冷媒熱流演算で測定した一体型空気調和装置の性能と、工場試験結果とを比較したグラフであり、(A)は冷房定格運転、(B)は暖房定格運転時の結果を示す。 図1の管理サーバの電気的構成を示すブロック図である。 図7の特性パラメータデータベースのデータ格納内容を示す説明図である。 図8のポリトロープ指数パラメータを示すグラフである。 図8の熱交換圧力損失パラメータを示すグラフである。 図8のインバータ損失電力パラメータを示すグラフである。 図7のCPUが管理プログラムに基づいて動作する際の機能的構成を示すブロック図である。 図7の異常監視部で監視可能な異常事項の一例を示す表である。 図7の運転制御部で複数台の一体型空気調和装置の熱源水流量を個別制御する状態を示す系統図である。 この発明の実施の形態2に関し、図7の運転制御部で熱源水流量を一括して制御する状態を示す系統図である。 この発明の実施の形態3に関し、図7の運転制御部で熱源水温度を制御する場合に利用される冷房エネルギ消費効率パラメータを示すグラフである。 この発明の実施の形態4に関し、冷媒熱流演算の別の手法を示すフローチャートである。 図17の冷媒熱流演算で利用する体積効率パラメータを示すグラフである。 空冷式一体型空気調和装置の各部の熱流を説明する冷凍サイクル図である。
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1ないし図14は、この発明の実施の形態1に係る一体型空気調和装置の管理装置及び管理プログラムを示し、図1は、この実施の形態1に係る管理装置及び管理プログラムが適用された建物1の構成を示す概略図である。
建物1は、多数のフロアを有し、各フロアが比較的広い面積を備えたビルなどの大規模な建造物であり、各フロアに多数の一体型空気調和装置2が設置されている。これらの一体型空気調和装置2は、1つの筐体内に圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器からなる冷媒の循環サイクルと、室内送風ファンなどを収容し、熱源水との間で熱交換を行う水冷式のものである。この一体型空気調和装置2には、例えば、天井から吊り下げられてダクトに接続される天吊ダクト型2Aや、フロアの床上に設置されるフロア型2B、給気口及び送風口室内を向くように天井から吊り下げられる天吊カセット型2Cなど、様々なタイプがある。
これらの一体型空気調和装置2は、建物1内に設置された通信中継器3を介して中央監視コントローラ4に接続され、中央監視コントローラ4で統括的に管理、制御されている。また、中央監視コントローラ4には、中央監視コントローラ4の設定・操作や監視に利用される監視コンピュータ5と、建物2外で一体型空気調和装置2を管理する管理サーバ(管理装置)6とが接続されている。
管理サーバ6は、例えば、一体型空気調和装置2の製造業者やビル管理会社などが運営するデータセンタなどに設置された、いわゆるクラウドサーバであり、本発明の管理装置に相当する。この管理サーバ6は、例えば、インターネットなどの通信回線を通じて中央監視コントローラ4と相互に通信可能に接続されている。
管理サーバ6は、予め収集した一体型空気調和装置2に関する複数種類の特性パラメータと、一体型空気調和装置2に予め設けられているセンサで測定された圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度とを含む複数種類の測定データとに基づいて冷媒流量を求め、この冷媒流量から圧縮機熱流と、凝縮器熱流と、蒸発器熱流とを算出し、その算出結果を利用して、多数の建物に設置された一体型空気調和装置2について能力測定と、その測定結果とに基づく監視、運転制御などを行う。なお、ここで熱流とは、単位時間に流れる熱量をいう。
ここでは、まず、管理サーバ6により行われる冷媒流量と、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流の算出(冷媒熱流演算)について説明する。図2は、一体型空気調和装置2の冷媒回路を示し、図3は、この冷媒回路のモリエル線図(p-h線図)を示す。一体型空気調和装置2は、圧縮機21でガス状の冷媒を圧縮して高温高圧の気体にし、凝縮器22で冷媒と熱源との熱交換を行う。水冷式の一体型空気調和装置2では、熱源水との間で熱交換が行われ、空冷式では外気との間で熱交換が行われる。膨張弁23は、凝縮器22で一部液化された冷媒を減圧し、蒸発器24で冷媒と室内空気との熱交換を行う。
このような一体型空気調和装置2では、圧縮機入口aと、圧縮機出口bと、凝縮器出口cと、蒸発器入口dとに、運転制御に利用される温度センサが予め設けられている。また、一体型空気調和装置2では、圧縮機21のモータを駆動制御するインバータ回路の出力電力や、インバータ周波数(圧縮機回転数に相当)を測定するセンサも備えている。
冷媒温度から冷媒圧力を計算する場合や、冷媒温度と冷媒圧力から冷媒比エンタルピ、冷媒比体積を計算する場合、既知の冷媒特性値から計算することができる。また、下記数式1のように、ポリトロープ指数(n)、圧縮機入口圧力(p1)、圧縮機出口圧力(p2)、圧縮機入口温度(t1)から、圧縮機出口温度(t2)を求めることができる。
t2=t1×(p2/p1)^((n-1)/n)・・・数式1
この数式1から、圧縮機出口圧力p2を求めるには、下記数式2を用いればよい。すなわち、圧縮機の出入口温度と、入口圧力とから、出口圧力を求めることができる。
p2=p1×(t2/t1)^(n/(n-1))・・・数式2
上記を踏まえ、この実施の形態では、圧縮機入口aと、圧縮機出口bと、凝縮器出口cと、蒸発器入口dで測定された温度とを利用して、圧縮機出口比エンタルピと、凝縮器出口比エンタルピと、蒸発器入口比エンタルピとを算出する。次いで、圧縮機のインバータ出力電力を、圧縮機入口比エンタルピと圧縮機出口比エンタルピとの差(圧縮機出入口比エンタルピ差)で除算することにより冷媒流量を算出する。そして、冷媒流量と、圧縮機入口比エンタルピ、圧縮機出口比エンタルピ、凝縮器出口比エンタルピおよび蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流を算出する。
図4は、水冷式の一体型空気調和装置2の冷凍サイクルを示し、点a~dは、図3のモリエル線図と対応している。この冷凍サイクルに示すように、点b-c間は、凝縮器22での冷媒の状態変化、すなわち凝縮器熱流を示す。また、点d-e間は、蒸発器での冷媒の状態の変化、すなわち蒸発熱流を示す。そして、点a-b間は、圧縮機での冷媒の状態の変化、すなわち圧縮機熱流を示す。一体型空気調和装置2では、冷凍サイクルの消費電力(ユニット電力)と、室内送風ファンの消費電力(ファン電力)と、圧縮機21のインバータ損失電力は、全て機内発熱となるので、ユニット電力と圧縮機熱流との差は、ファン電力とインバータ損失電力とを加算した「その他電力」となり、このその他電力を蒸発熱流から減算することで、蒸発器熱流を得ることができる。
以下、図5に示すフローチャートにしたがって、圧縮機入口aと、圧縮機出口bと、凝縮器出口cと、蒸発器入口dで測定された温度と、圧縮機のインバータ出力電力とから、冷媒流量と、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流と、一体型空気調和装置2全体の消費電力とを算出する手順を説明する。
まず、最初のステップでは、一体型空気調和装置2に予め設けられているセンサから複数種類の測定データ、具体的には、圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度と、圧縮機インバータ出力電力とを取得する(ステップS1)。次いで、蒸発器入口温度からその温度の飽和圧力(蒸発器入口圧力)を算出する(ステップS2)。
次いで、冷媒流量の初期値w1を仮定する(ステップS3)。このステップS3から後述するステップS13は、真の冷媒流量w2を算出するための冷媒流量演算ループとなる。なお、冷媒流量初期値w1は、例えば、一体型空気調和装置2の機種や馬力などに応じて予め設定された値が用いられる。
次に、上記の数式1、2を利用して、蒸発器圧力損失と、圧縮機入口圧力とを算出し(ステップS4)、ポリトロープ指数初期値n1を仮定する(ステップS5)。このステップS5から後述するステップS9は、真のポリトロープ指数n2を算出するためのポリトロープ指数演算ループとなる。なお、ポリトロープ指数初期値n1は、一体型空気調和装置2に採用されている圧縮機毎に工場試験で求められた値が用いられ、例えば、一体型空気調和装置2の馬力に応じた値が適用される。また、ポリトロープ指数については、他の値との間に様々な関係を有することが知られているが、例えば、圧縮比の関数として求めてもよい。
次に、上記の数式1、2と、ポリトロープ指数初期値n1を利用して、圧縮機出口圧力と、圧縮比とを算出し(ステップS6)、算出した圧縮比に基づいてポリトロープ指数n2を算出する(ステップS7)。そして、ポリトロープ指数初期値n1と、算出したポリトロープ指数n2との差の絶対値と、予め設定されている許容誤差αとを比較する(ステップS8)。ポリトロープ指数初期値n1とポリトロープ指数n2との差が許容誤差αよりも大きい場合(ステップS8でNO)には、ポリトロープ指数初期値n1を修正(ステップS9)してステップS6から繰り返し、ポリトロープ指数n2を決定する。
ポリトロープ指数初期値n1とポリトロープ指数n2との差が許容誤差αよりも小さい場合(ステップS8でYES)には、ポリトロープ指数n2を利用して圧縮機入口比エンタルピおよび圧縮機出口比エンタルピを算出し(ステップS10)、下記数式3を利用して冷媒流量w2を算出する(ステップS11)。
冷媒流量w2=圧縮機インバータ出力電力/圧縮機出入口比エンタルピ差・・・数式3
冷媒流量初期値w1と、算出した冷媒流量w2との差の絶対値と、予め設定されている許容誤差βとを比較する(ステップS12)。冷媒流量初期値w1と冷媒流量w2との差が許容誤差βよりも大きい場合(ステップS12でNO)には、冷媒流量初期値w1を修正(ステップS13)して、ステップS4から繰り返す。
冷媒流量初期値w1と冷媒流量w2との差が許容誤差βよりも小さい場合(ステップS12でYES)には、凝縮器出口温度から凝縮器出口の比エンタルピを算出する(ステップS14)。なお、蒸発器入口比エンタルピは、凝縮器出口の比エンタルピに相当するため、その算出は省略される。
次いで、冷媒流量w2から凝縮器圧力損失と、凝縮器出口圧力とを算出する(ステップS15)。なお、凝縮器圧力損失は、一体型空気調和装置2に採用されている凝縮器毎に工場試験で求められた値が用いられ、例えば、一体型空気調和装置2の馬力に応じた値が適用される。また、凝縮器圧力損失を冷媒流量の関数として求めてもよい。
次のステップでは、冷媒流量w2と、上記で算出された圧縮機入口比エンタルピと、圧縮機出口比エンタルピと、凝縮器出口比エンタルピと、蒸発器入口比エンタルピとを利用して、下記数式4、5、6により、凝縮器熱流、蒸発熱流および圧縮機熱流を算出する(ステップS16)。
凝縮器熱流=冷媒流量w2×(圧縮機出口比エンタルピ-凝縮器出口比エンタルピ)・・・数式4
蒸発熱流=冷媒流量w2×(圧縮機入口比エンタルピ-蒸発器入口比エンタルピ)・・・数式5
圧縮機熱流=凝縮器熱流-蒸発熱流・・・数式5
最後のステップでは、圧縮機の消費電力に、冷媒サイクル以外の消費電力を加算して一体型空気調和装置2全体の消費電力(エアコン消費電力)を算出する。具体的には、算出された凝縮器熱流、蒸発熱流などを利用して、下記数式7、8により、インバータ損失電力、蒸発器熱流、エアコン消費電力を算出する(ステップS17)。なお、インバータ損失電力は、一体型空気調和装置2に採用されている圧縮機毎に工場試験で求められた値が用いられている。
蒸発器熱流=蒸発熱流-(ファン電力+インバータ損失電力)・・・数式7
エアコン消費電力=凝縮器熱流-蒸発器熱流・・・数式8
以上のように、一体型空気調和装置2に予め設けられているセンサから、圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度と、圧縮機インバータ出力電力とに基づいて、一体型空気調和装置2の能力を表す冷媒流量と、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流とを算出し、これに基づいてエアコン消費電力なども算出することができる。
図6は、上述した冷媒熱流演算を利用して、1馬力の水冷式一体型空気調和装置2についてエアコン消費電力(kW)、空気熱流(kW)、水熱流(kW)について演算を行った結果と、同一体型空気調和装置2について工場試験を行った結果とを表すグラフであり、同図(A)は冷房定格運転時、同図(B)は暖房定格運転時を示している。ここで、空気熱流とは、水冷式一体型空気調和装置に出入りする空気と交換した熱流であり、冷房時は蒸発器熱流、暖房時は凝縮器熱流である。また、水熱流とは、水冷式一体型空気調和装置に出入りする熱源の水と交換した熱流であり、冷房時は凝縮器熱流、暖房時は蒸発器熱流である。また、工場試験データは、JIS B8615:2015のパッケージエアコンディショナの「水側熱量計法」により測定している。このグラフから分かるとおり、この実施の形態の冷媒熱流演算を利用すれば、各項目において、冷房定格運転で3%以内、暖房定格運転で-4%以内の誤差で一体型空気調和装置2の性能を測定することが可能である。
次に、図1に示す管理サーバで上記の冷媒熱流演算を利用して、複数台の一体型空気調和装置2の能力測定、監視および運転制御を行う例について説明する。管理サーバは、周知のサーバ装置であり、図7に示すように、データバス61を介して接続されたキーボードおよびマウスなどの操作部62と、モニタである表示部63と、インターネットを介して中央監視コントローラ4と通信を行う通信部64と、CPU65と、RAM66と、記憶部67とを備える。
記憶部67は、例えば、ハードディスクなどの大容量ストレージデバイスであり、一体型空気調和装置2の能力測定、監視および運転制御を行うための管理プログラム671と、冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流などの算出に利用される特性パラメータデータベース(DB)(記憶手段)672とが記憶されている。
特性パラメータDB672には、図8に示すように、一体型空気調和装置2の機種毎、例えば、使用コンプレッサに応じ、ポリトロープ指数パラメータ672a、熱交換圧力損失パラメータ672b、インバータ損失電力パラメータ672c、ファン電力パラメータ672dなど、複数種類の特性パラメータが記憶されている。
ポリトロープ指数パラメータ672aは、図9に示すように、例えば、圧縮機入口圧力を圧縮機出口圧力で除算した圧縮比の関数として規定されている。このポリトロープ指数パラメータ672aは、工場試験で求めた圧縮入口圧力と、圧縮機出口圧力と、これらの圧縮比と、ポリトロープ指数などから求められたものであり、圧縮比に基づいてポリトロープ指数を特定することができる。ポリトロープ指数パラメータ672aは、上述したポリトロープ指数演算ループでポリトロープ指数初期値n1を仮定する際に用いられる。
熱交換圧力損失パラメータ672bは、図10に示すように、例えば、冷媒流量の関数として規定されている。この熱交換圧力損失パラメータ672bは、工場試験で求めた熱交換機(蒸発器および凝縮器)の入口圧力と、出口圧力と冷媒流量と、熱交換圧力損失などから求められたものであり、冷媒流量に基づいて熱交換圧力損失を特定することができる。熱交換圧力損失パラメータ672bは、上述した冷媒熱流演算で凝縮器圧力損失の算出(ステップS15)する際に用いられる。
インバータ損失電力パラメータ672cは、図11に示すように、例えば、インバータ出力電力の関数として規定されている。このインバータ損失電力パラメータ672cは、工場試験で求めたインバータ出力電力とインバータ損失電力とから求められたものであり、インバータ出力電力に基づいてインバータ損失電力を特定することができる。インバータ損失電力パラメータ672cは、上述した冷媒熱流演算のポリトロープ指数演算ループでエアコン消費電力を算出(ステップS16)する際に用いられる。
ファン電力パラメータ672dは、一体型空気調和装置2毎に工場試験で求められている。なお、室内送風ファンに複数の運転状態(例えば、強風、中風、弱風)がある場合には、その運転状態毎に求めることが望ましい。
CPU65は、記憶部67からRAM66に読み出した管理プログラム671に基づいて動作することにより、図12に示すデータ取得部(データ取得手段)71、算出部(算出手段)72、異常検出部(異常検出手段)73および運転制御部(運転制御手段)74として機能する。
データ取得部71は、冷媒熱流演算時に中央監視コントローラ4、通信中継器3を介して各一体型空気調和装置2から圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度と、圧縮機インバータ出力電力とを取得する機能部である。
算出部72は、データ取得部71で取得した各種測定データと、特性パラメータDB672から読み出した各種特性パラメータとに基づいて、上述した冷媒熱流演算を行うための機能部である。また、算出部72は、算出した冷媒流量、蒸発器熱流、凝縮器熱流、消費電力などに基づいて一体型空気調和装置2の冷暖房能力を診断(性能診断:周囲条件を補正して性能が発揮されているか)する機能を備えている。
また、算出部72は、一体型空気調和装置の風量の適否を診断する機能を備えていてもよい。例えば、冷房運転時は、吸込温度と吸込湿度から吸込比エンタルピと吸込露点温度を計算し、吹出湿度を把握する。仮に、吹出温度>吸込露点温度であれば除湿しないので、吹出露点温度=吸込露点温度とし、吹出温度≦吸込露点温度であれば除湿するので、吹出相対湿度を95%RHと想定して吹出比エンタルピを計算する。このように、冷媒熱流と、空気側比エンタルピ差とを利用して風量を算出することが可能である。
また、暖房運転時には、吸込温度と吹出温度から空気側温度差を計算し、空気熱交の熱流と空気側温度差で風量を計算することが可能である。さらに、水冷式の一体型空気調和装置の場合、熱源水との熱交換時の冷媒熱流と水側温度差とから、熱源水水量を確認することも可能である。したがって、超音波流量計などを設置しなくても熱源水の流量の適否を判断することができる。さらに、これを応用すれば、配管系統毎(例えば、建物1のフロア毎、系統毎など)の熱源水の流量を適否判定することも可能である。
異常検出部73は、データ取得部71で取得した各種測定データと、冷媒熱流演算で算出した冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流と、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力や、算出部72で得られた診断結果などを監視して、一体型空気調和装置2の異常を検出する機能部である。図13の表は、これらの監視結果から検出可能な異常検出項目の一部を示し、例えば、センサなどを後付けすることなく、室内風量の減少(フィルタの詰まり)や、水冷器の冷却水量減少(ストレーナの詰まり)なども検出することができる。異常検出部73は、異常を検出すると、表示部63に表示してオペレータに通知するとともに、中央監視コントローラ4を介して監視コンピュータ5に通知を行う。
運転制御部74は、データ取得部71で取得した各種測定データと、冷媒熱流演算で算出した冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流と、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力や、算出部72で得られた診断結果などを監視して、一体型空気調和装置2の運転制御を行う機能部である。
従来、水冷式の一体型空気調和装置2においては、圧縮機運転中は固定水量とするため、負荷が軽い場合でも熱源水ポンプの消費電力が多かった。しかしながら、水側熱交換器(冷房時は凝縮器、暖房時は蒸発器)の熱流を演算で求めることで、熱源水流量の最適制御を行い、熱源水ポンプの消費電力も含むシステム全体の省エネルギ運転を行うことができる。
図14は、複数台の水冷式一体型空気調和装置2の熱源水流量を個別に制御する際の系統図を示す。この例では、各一体型空気調和装置2に自動制御弁Vを取り付け、一体型空気調和装置2に熱源水を供給する入口管路と、一体型空気調和装置2から熱源水が流出する出口管路との間に差圧計P1を設置し、熱源水ポンプのインバータの末端差圧推定制御により自動制御弁Vを制御して、温度差が定格値(例えば、5°C)となるように、各一体型空気調和装置2の流量制御を行う。熱源水ポンプは、例えば、中央監視コントローラ4を介して管理サーバと接続されており、管理サーバの運転制御部74から送信された制御指令に応じて制御が行われる。
なお、エネルギ消費効率の低下や、暖房時における熱源水の凍結を防ぐために、最低流量(例えば50%)を設定して確保することが望ましい。このように、個々の水冷式一体型空気調和装置2に自動制御弁Vを取り付けることで、熱源水流量を個別に制御して最小化することが可能である。
次に、上記の実施の形態の作用について説明する。管理サーバ6は、一定の時間間隔、あるいは操作部62からの指示などの所定のタイミングでデータ取得部71を動作させ、一体型空気調和装置2に予め設けられているセンサから複数種類の測定データ、具体的には、圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度と、圧縮機インバータ出力電力とを取得する。
算出部72は、データ取得部71で取得した各種測定データと、特性パラメータDB672から読み出した各種特性パラメータとに基づいて、上述した冷媒熱流演算を行い、冷媒流量と、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流と、一体型空気調和装置2全体の消費電力とを算出する。この算出結果は、表示部63に出力してもよい。
異常検出部73は、データ取得部71で取得した各種測定データと、冷媒熱流演算で算出した冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流と、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力や、算出部72で得られた診断結果などを監視して、一体型空気調和装置2の異常を検出する。検出結果は、表示部63に表示されるとともに、中央監視コントローラ4を介して監視コンピュータ5にも通知される。
運転制御部74は、データ取得部71で取得した各種測定データと、冷媒熱流演算で算出した冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流と、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力や、算出部72で得られた診断結果などを監視して、一体型空気調和装置2の運転制御を行う。具体的には、中央監視コントローラ4を介して熱源水ポンプを制御し、熱源水ポンプのインバータの末端差圧推定制御により自動制御弁Vを制御して、温度差が定格値(例えば、5°C)となるように各一体型空気調和装置2の流量制御を行う。
以上で説明したように、この実施の形態の管理サーバ6によれば、一体型空気調和装置2に予め設けられているセンサから取得可能な測定データと、特性パラメータDB672に記憶されている特性パラメータとを利用して冷媒流量を求め、この冷媒流量に基づいて、一体型空気調和装置2の性能を表す圧縮機熱流と、凝縮器熱流と、蒸発器熱流とを算出することができるので、追加設備などを必要とせずに一体型空気調和装置2の性能測定を行うことが可能である。
また、圧縮機21のインバータ出力電力を、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機出入口比エンタルピ差で除算することにより冷媒流量を算出することができる。また、この冷媒流量と、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機入口比エンタルピ、圧縮機出口比エンタルピ、凝縮器出口比エンタルピおよび蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流を算出することができる。したがって、追加設備などを必要とせずに、比較的簡易な演算で一体型空気調和装置の性能測定を行うことが可能である。
さらに、圧縮機21の消費電力に冷媒サイクル以外の消費電力を加算して一体型空気調和装置2全体の消費電力を算出することができるので、消費電力の面から見た一体型空気調和装置2の性能測定も可能である。
また、測定データ、冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流や、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力などを監視して、一体型空気調和装置2の異常を検出することができるので、一体型空気調和装置2の故障や異常動作などを早期に検出して対処することが可能である。
さらに、測定データ、冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流や、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力などを監視して、一体型空気調和装置2の運転を制御することができるので、省エネルギや、冷暖房能力の向上など、目的に応じて最適な運転制御を行うことが可能である。特に、通信ネットワークを介して接続された複数台の水冷式一体型空気調和装置2について、測定データ、冷媒流量、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流や、冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力などを監視し、各水冷型一体型空気調和装置2毎に熱源水の水量制御を行うことができるので、省エネルギや、冷暖房能力の向上などの目的に応じて、複数台の一体型空気調和装置を個々に最適な条件で運転制御することが可能である。
(実施の形態2)
図15は、この実施の形態を示す一体型空気調和装置2の系統図である。この実施の形態は、複数台の一体型空気調和装置2について一括して熱源水流量を制御する点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
熱源水流量の制御は、各一体型空気調和装置2について個別に行う以外に、複数台の一体型空気調和装置2について一括して行ってよい。建物内に複数台の一体型空気調和装置2が設置されている場合、ある装置では冷房運転が行われ、別の装置では暖房運転が行われている場合がある。冷房運転では、熱源水側熱交には凝縮熱流が流入し、暖房運転では、熱源水側熱交には蒸発熱流が流入する。凝縮熱流は熱源水を加熱し、蒸発熱流は熱源水を冷却するので、熱源水全体の流量制御は行われていない。しかしながら、この実施の形態の冷媒熱流演算を利用して、各一体型空気調和装置2の冷房/暖房、凝縮熱流/蒸発熱流を集計することで、系統全体の熱源水に流入する熱流を算出し、流量制御に利用することが可能である。
図15に示すように、一体型空気調和装置2に熱源水を供給する入口管路と、密閉式冷却塔から温熱ボイラおよび熱源水ポンプへと戻る管路とに水温計T1、T2を設置する。そして、冷房運転を行っている一体型空気調和装置2の凝縮熱量をqc、暖房運転を行っている一体型空気調和装置2の蒸発熱流をqhとして、下記数式9により系統全体の熱源水加熱熱流Qを算出する。この熱源水加熱熱流Qが正数の場合には、熱源水を加熱し、負数の場合には熱源水を冷却する。
Q=Σ(qc)-Σ(qh)・・・数式9
この熱源水加熱熱流Qを利用して、下記数式10から系統全体で必要な熱源水流量Wfを算出することができる。なお、系統内の水量のアンバランスも考慮して、全体の最低流量(例えば定格の50%)を確保するのが望ましい。
必要な熱源水流量Wf=Q/(出入口水温度差×熱源水の比熱)・・・数式10
管理サーバ6の運転制御部74は、中央監視コントローラ4を介して熱源水ポンプのインバータを制御して、熱源水流量を最小限の熱源水流量Wfにすることで、各一体型空気調和装置2の機能を満たしながら、熱源水ポンプの消費電力を最少に抑えることができる。
このように、この実施の形態によれば、複数台の一体型空気調和装置2へ熱源水を供給する熱源水ポンプの水量制御を行うことができるので、省エネルギや、冷暖房能力の向上などの目的に応じて、複数台の一体型空気調和装置を一括して最適な条件で運転制御することが可能である。
(実施の形態3)
図16は、この実施の形態で利用されるエネルギ消費効率パラメータを示すグラフである。この実施の形態は、熱源水温度を制御する点で実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
実施の形態1で説明したように、冷媒熱流演算により、水冷式の一体型空気調和装置2の冷房・暖房負荷を演算することができる。また、水冷式の一体型空気調和装置では、冷房・暖房時の負荷に応じて、熱源水温度とエネルギ消費効率との関係を表すエネルギ消費効率パラメータが、個々の一体型空気調和装置毎に既知である。図16は、このエネルギ消費効率パラメータのうち、冷房に関するエネルギ消費効率パラメータ672eであり、負荷率60%、70%および100パーセントのときの熱源水温度が示されている。このようなエネルギ消費効率パラメータ672eは、特性パラメータDB672に記憶される。
管理サーバ6の運転制御部74で運転制御を行う際には、エネルギ消費効率パラメータ672eなどを参照して、測定時点の冷暖房負荷と、想定熱源水温度(たとえば、10~40°Cの1°C刻みの温度)によるシミュレーション計算で各一体型空気調和装置2の消費電力を算出する。そして、同じ系統に接続されている複数台の一体型空気調和装置2について、算出した消費電力を合計し、この合計値が最小となる熱源水温度で運転すれば、消費電力を最小とすることができる。
この実施の形態によれば、エネルギ消費効率パラメータと、監視結果とに基づいて、熱源水の温度を制御することができるので、省エネルギや、冷暖房能力の向上などの目的に応じて、複数台の一体型空気調和装置を一括して最適な条件で運転制御することが可能である。
(実施の形態4)
図17は、この実施の形態の冷媒熱流演算の手順を示すフローチャートである。この実施の形態は、冷媒流量w2の算出手順が実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
この実施の形態の冷媒熱流演算は、図17のフローチャートにおいて、ステップS1aおよびS11aが、実施の形態1と異なる。すなわち、ステップS1aで一体型空気調和装置2に予め設けられているセンサから計測データを取得する際には、圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度とともに、圧縮機のインバータ周波数(圧縮機回転数)を取得する。そして、ステップS11aで冷媒流量w2を算出する際には、インバータ周波数に、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機体積効率と、既知の圧縮機吸込容積とを乗算し、測定データおよび特性パラメータから求めた圧縮機入口体積比を除算する。
この冷媒熱流演算では、圧縮機体積効率を算出する必要があることから、特性パラメータDB672に、図18に示す体積効率パラメータ672fが格納されている。この体積効率パラメータ672fは、圧縮機毎に試験で求められた測定データに基づいて作成されており、例えば圧縮機出入口の絶対温度比の関数として規定されている。
この冷媒熱流演算についても、実施の形態1と同様に工場試験データと比較したところ、同等の誤差範囲内で一体型空気調和装置2の性能を測定可能であった。この実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、一体型空気調和装置2で取得可能な測定データと、特性パラメータとから冷媒流量を算出して、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流を算出することができる。したがって、追加設備などを必要とせずに、比較的簡易な演算で一体型空気調和装置の性能測定を行うことが可能である。また、冷媒流量と、圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流との算出に、実施の形態1の演算手法だけでなく、この実施の形態の演算手法も適用可能であることから、一体型空気調和装置2から取得可能な測定データが異なる場合でも柔軟に適用することが可能である。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、水冷式の一体型空気調和装置2について能力測定と、その測定結果とに基づく監視、運転制御などを行う管理サーバについて説明したが、空冷式の一体型空気調和装置についても同様に適用が可能である。例えば、空冷式の一体型空気調和装置では、インバータ損失電力と、圧縮機の機械損失、電動機損失は室外機側へ排熱される点で水冷式と異なる。そのため、図19に示すように、「その他電力」は、ユニット電力から圧縮機熱流を減算した値、すなわちファン電力のみとなるので、エアコン消費電力の演算式のみ変更すれば、実施の形態1または実施の形態4で説明した冷媒熱流演算を利用することが可能である。
また、上記の実施の形態では、管理サーバ6を管理装置として利用したが、一体型空気調和装置2自体の制御コンピュータ、あるいは中央監視コントローラ4を管理装置として利用してもよいし、管理装置の各機能、例えば、データ取得、算出、異常検出などの機能を異なるコンピュータで分担させてもよい。
1 建物
2(2A、2B、2C) 水冷式一体型空気調和装置
21 圧縮機
22 凝縮器
23 膨張弁
24 蒸発器
3 通信中継器
4 中央監視コントローラ
5 監視コンピュータ
6 管理サーバ(監視装置)
65 CPU
67 記憶部
671 管理プログラム
672 特性パラメータデータベース(記憶手段)
672a ポリトロープ指数パラメータ
672b 熱交換圧力損失パラメータ
672c インバータ損失電力パラメータ
672d ファン電力パラメータ
672e エネルギ消費効率パラメータ
672f 体積効率パラメータ
71 データ取得部(データ取得手段)
72 算出部(算出手段)
73 異常検出部(異常検出手段)
74 運転制御部(運転制御手段)

Claims (9)

  1. 圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器からなる冷媒の循環サイクルを1つの筐体に収容した複数台の水冷式の一体型空気調和装置を管理する管理装置であって、
    前記一体型空気調和装置に関する複数種類の特性パラメータを記憶する記憶手段と、
    前記一体型空気調和装置に予め設けられているセンサで測定された圧縮機入口温度と、
    圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度とを含む複数種類の測定データを取得するデータ取得手段と、
    前記特性パラメータと、前記測定データとから冷媒流量を求め、前記冷媒流量に基づいて圧縮機熱流と、凝縮器熱流と、蒸発器熱流とを算出する算出手段と、
    複数台の前記一体型空気調和装置の運転を制御する運転制御手段と、を備え、
    前記運転制御手段は、
    複数台の前記一体型空気調和装置のうち、冷房運転を行っている一体型空気調和装置の凝縮器熱流と、暖房運転を行っている一体型空気調和装置の蒸発器熱流とに基づいて、複数台の前記一体型空気調和装置全体の熱源水に流入する熱源水加熱熱流を算出し、
    複数台の前記一体型空気調和装置へ熱源水ポンプによって供給される前記熱源水の入り口温度と、複数台の前記一体型空気調和装置から前記熱源水ポンプへと戻る前記熱源水の出口温度との差である出入口温度差を算出し、
    前記熱源水加熱熱流を、前記出入口温度差に熱源水の比熱を乗算した値によって除算することにより、複数台の前記一体型空気調和装置全体に必要な熱源水流量を算出し、
    前記熱源水ポンプを制御して、複数台の前記一体型空気調和装置へ前記熱源水流量の熱源水を供給する、
    ことを特徴とする一体型空気調和装置の管理装置。
  2. 前記算出手段は、前記特性パラメータと、前記測定データとに基づいて圧縮機入口比エンタルピと、圧縮機出口比エンタルピと、凝縮器出口比エンタルピと、蒸発器入口比エンタルピとを算出し、
    前記データ取得手段により取得した前記圧縮機のインバータ出力電力を、前記圧縮機入口比エンタルピと前記圧縮機出口比エンタルピとの差で除算することにより前記冷媒流量
    を算出し、
    前記冷媒流量と、前記圧縮機入口比エンタルピ、前記圧縮機出口比エンタルピ、前記凝縮器出口比エンタルピおよび前記蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流を算出する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の一体型空気調和装置の管理装置。
  3. 前記算出手段は、前記特性パラメータと、前記測定データとに基づいて圧縮機体積効率と、圧縮機入口体積比と、圧縮機入口比エンタルピと、圧縮機出口比エンタルピと、凝縮器出口比エンタルピと、蒸発器入口比エンタルピとを算出し、
    前記データ取得手段により取得した前記圧縮機のインバータ周波数に、前記圧縮機体積効率と、既知の圧縮機吸込容積とを乗算し、前記圧縮機入口体積比を除算することにより前記冷媒流量を算出し、
    前記冷媒流量と、前記圧縮機入口比エンタルピ、前記圧縮機出口比エンタルピ、前記凝縮器出口比エンタルピおよび前記蒸発器入口比エンタルピとに基づいて、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流を算出する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の一体型空気調和装置の管理装置。
  4. 前記算出手段は、前記圧縮機の消費電力に、冷媒サイクル以外の消費電力を加算して、前記一体型空気調和装置の消費電力を算出する、
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置。
  5. 前記測定データと、前記冷媒流量と、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流と、前記冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力とを監視して、前記一体型空気調和装置の異常を検出する異常検出手段を備える、
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置。
  6. 前記運転制御手段は、前記測定データと、前記冷媒流量と、前記圧縮機熱流、前記凝縮器熱流および前記蒸発器熱流と、前記冷媒流量を算出する過程で得られた各部の圧力とを監視し、その監視結果に基づいて前記一体型空気調和装置の運転を制御することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置。
  7. 前記運転制御手段は、前記熱源水加熱熱流が正数の場合には、複数台の前記一体型空気調和装置に供給される前記熱源水を加熱させ、前記熱源水加熱熱流が負数の場合には、複数台の前記一体型空気調和装置に供給される前記熱源水を冷却させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の一体型空気調和装置の管理装置。
  8. 前記運転制御手段は、熱源水温度に応じたエネルギ消費効率が前記一体型空気調和装置の運転負荷に応じて表されたエネルギ消費効率パラメータと、前記監視結果とに基づいて、複数台の前記一体型空気調和装置に供給される前記熱源水の温度を制御する、
    ことを特徴とする請求項6に記載の一体型空気調和装置の管理装置。
  9. 圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器からなる冷媒の循環サイクルを1つの筐体に収容した複数台の水冷式の一体型空気調和装置の管理プログラムであって、
    コンピュータを、
    前記一体型空気調和装置に関する複数種類の特性パラメータを記憶する記憶手段と、
    前記一体型空気調和装置に予め設けられているセンサで測定された圧縮機入口温度と、圧縮機出口温度と、凝縮器出口温度と、蒸発器入口温度とを含む複数種類の測定データを取得するデータ取得手段と、
    前記特性パラメータと、前記測定データとから冷媒流量を求め、前記冷媒流量に基づいて圧縮機熱流、凝縮器熱流および蒸発器熱流を算出する算出手段と、
    複数台の前記一体型空気調和装置の運転を制御する運転制御手段と、して機能させ、
    前記運転制御手段は、
    複数台の前記一体型空気調和装置のうち、冷房運転を行っている一体型空気調和装置の凝縮器熱流と、暖房運転を行っている一体型空気調和装置の蒸発器熱流とに基づいて、複数台の前記一体型空気調和装置全体の熱源水に流入する熱源水加熱熱流を算出し、
    複数台の前記一体型空気調和装置へ熱源水ポンプによって供給される前記熱源水の入り口温度と、複数台の前記一体型空気調和装置から前記熱源水ポンプへと戻る前記熱源水の出口温度との差である出入口温度差を算出し、
    前記熱源水加熱熱流を、前記出入口温度差に熱源水の比熱を乗算した値によって除算することにより、複数台の前記一体型空気調和装置全体に必要な熱源水流量を算出し、
    前記熱源水ポンプを制御して、複数台の前記一体型空気調和装置へ前記熱源水流量の熱源水を供給する、
    ことを特徴とする一体型空気調和装置の管理プログラム。
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