以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による段ボールシート給送装置及び段ボールシート製函機について説明する。
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態による段ボールシート製函機の全体的構成を示す正面図である。具体的には、図1は、2枚給送モードのために印刷装置などの加工装置が準備された段ボールシート製函機1を示す。
図1において、段ボールシート製函機1は、積層された段ボールシートSHを1枚ずつ送り出す段ボールシート給送装置2と、段ボールシートSHに印刷を施す印刷装置3と、段ボールシートSHに罫線を入れ、溝を切り、継ぎ代を形成するクリーザスロッタ4と、段ボールシートSHに所定形状の打ち抜き部分を形成するダイカッタ5と、を備える。
段ボールシート給送装置2は、テーブル20を備える。多数の段ボールシートSHが、フロントゲート21とバックガイド22との間においてテーブル20上に積載される。段ボールシートSHはフロントゲート21とテーブル20との間隙から1枚ずつ送り出されるように、フロントゲート21は配置される。バックガイド22は、フロントゲート21に対して、給送方向FDと平行な方向に移動可能に構成され、給送方向FDのシート長さが異なる段ボールシートを収容するように構成される。段ボールシート給送装置2は、多数の給送ローラと、昇降可能なグレイトと、一対のフィードロール23、24とを備える。グレイトが多数の給送ローラより下降したときに、多数の給送ローラが、多数の段ボールシートSHのうち最も下側にある段ボールシートSHに接触することで、段ボールシートSHを1枚ずつ両フィードロール23、24に送り出す。両フィードロール23、24は、段ボールシートSHを1枚ずつ印刷装置3に送り出す。両フィードロール23、24は、主駆動モータMTに連結されて駆動される。段ボールシート給送装置2の詳細な構成については、後述する。
印刷装置3は、2つの印刷ユニット30、31を備える。各印刷ユニットは、印刷シリンダと、印版部材と、インキ塗布装置と、プレスロールとを備える。印版部材は、印刷シリンダの外周面に取り付けられる。インキ塗布装置は、印刷ユニットごとに異なる色のインキングロールを備える。印刷装置3は、両印刷ユニット30、31により、段ボールシートSHに2色の印刷を施して、この印刷された段ボールシートSHをクリーザスロッタ4に供給する。印刷ユニット30、31は、主駆動モータMTにそれぞれ連結されて駆動される。両印刷ユニット30、31の印刷シリンダ30A、31Aは、同じ直径Dpを有する。2つの印版部材30B1、30B2が、点対称の位置関係となるように印刷シリンダ30Aの外周面に取り付けられる。また、2つの印版部材31B1、31B2が、点対称の位置関係となるように印刷シリンダ31Aの外周面に取り付けられる。印版部材30B1、31B1は、各印刷シリンダが1回転する加工サイクルにおいて最初に送り出される1枚目の段ボールシートSHに2色の印刷を施す。印版部材30B2、31B2は、その加工サイクルにおいて次に送り出される2枚目の段ボールシートSHに2色の印刷を施す。
クリーザスロッタ4は、クリーザユニット40と、2つのスロッタユニット41、42とを備える。クリーザユニット40は、上下に配置される一対の罫線ロールを備える。各スロッタユニットは、スロッタ刃が取り付けられる上部スロッタと、スロッタ刃と嵌合可能な溝が形成される下部スロッタとを備える。クリーザスロッタ4は、クリーザユニット40および両スロッタユニット41、42により、段ボールシートSHに罫線および溝切り加工を施し、継ぎ代を形成し、これらの加工が施された段ボールシートSHをダイカッタ5に供給する。クリーザユニット40および両スロッタユニット41、42は、主駆動モータMTにそれぞれ連結されて駆動される。2つのスロッタ刃41A1、41A2が、スロッタユニット41の上部スロッタの外周面に取り付けられる。また、2つのスロッタ刃42A1、42A2が、スロッタユニット42の上部スロッタの外周面に取り付けられる。スロッタ刃41A1、41A2は、加工サイクルにおいて最初に送り出される1枚目の段ボールシートSHの前端部および後端部に溝切り加工などを施す。スロッタ刃42A1、42A2は、加工サイクルにおいて次に送り出される2枚目の段ボールシートSHの前端部および後端部に溝切り加工などを施す。
ダイカッタ5は、搬送経路を挟んでダイシリンダ50と、アンビルシリンダ51とを備える。2つの打ち抜きダイ52A1、52A2が合板ベニヤなどの板状体(前述した木型に相当する)に取り付けられ、この板状体が、ダイシリンダ50の外周面に巻装される。具体的には、2つの打ち抜きダイ52A1、52A2が、点対称の位置関係となるようにダイシリンダ50の外周面に取り付けられる。打ち抜きダイ52A1は、加工サイクルにおいて最初に送り出される1枚目の段ボールシートSHに打ち抜き加工を施す。打ち抜きダイ52A2は、加工サイクルにおいて次に送り出される2枚目の段ボールシートSHに打ち抜き加工を施す。打ち抜きダイ52A1、52A2は、オーダ変更の際に、オーダに応じた打ち抜きパターンの打ち抜きダイと交換可能である。ダイシリンダ50およびアンビルシリンダ51は、主駆動モータMTにそれぞれ連結されて駆動される。
なお、図1では、2枚給送モードのための準備がなされた段ボールシート製函機1を示したが、この段ボールシート製函機1は1枚給送モードを行うこともできる。1枚給送モードを行う場合には、印刷装置3では、印刷シリンダ30Aの外周面に取り付けられた1つの印版部材及び印刷シリンダ31Aの外周面に取り付けられた1つの印版部材を用いればよく、クリーザスロッタ4では、スロッタユニット41の上部スロッタの外周面に取り付けられた1つのスロッタ刃及びスロッタユニット42の上部スロッタの外周面に取り付けられた1つのスロッタ刃を用いればよく、ダイカッタ5では、ダイシリンダ50の外周面に取り付けられた1つの打ち抜きダイを用いればよい。
[段ボールシート給送装置の構成]
段ボールシート給送装置2の詳細な構成について、図2乃至図5を参照して説明する。図2は、テーブル20より下方における段ボールシート給送装置2の内部構成を示す平面図であり、図3は、図2に示すA-A線に従って切断した段ボールシート給送装置2の断面図である。図2において、段ボールシート給送装置2は、前方フレーム60と、後方フレーム61と、両フレーム60、61の間に配置される一対の中間フレーム62、63と、を備える。モータ取付板64が、前方フレーム60の前方に固定され、軸受取付板65が、前方フレーム60の後方に固定される。モータ取付板66が、後方フレーム61の後方に固定され、軸受取付板67が、後方フレーム61の前方に固定される。左方フレーム68および右方フレーム69が、前後方向に延び、両中間フレーム62、63にそれぞれ固定される。図3において、下方フレーム70が、左方フレーム68および右方フレーム69にそれぞれ固定される。
昇降モータ80が、ACサーボモータから構成され、モータ取付板64に固定される。一対の軸受81、82が、軸受取付板65にそれぞれ固定され、中間駆動軸83を回転可能に支持する。昇降モータ80の回転軸は、連結体84により中間駆動軸83に連結される。エンコーダ85が、昇降モータ80の回転軸に連結される。
第1ローラモータ90、および第2ローラモータ91は、ACサーボモータから構成され、モータ取付板64にそれぞれ固定される。一対の軸受92、93が、軸受取付板65にそれぞれ固定され、第1ローラ駆動軸94を回転可能に支持する。第1ローラモータ90の回転軸は、連結体95により第1ローラ駆動軸94に連結される。一対の軸受96、97が、軸受取付板65にそれぞれ固定され、第2ローラ駆動軸98を回転可能に支持する。第2ローラモータ91の回転軸は、連結体99により第2ローラ駆動軸98に連結される。エンコーダ100、101が、第1ローラモータ90の回転軸、および第2ローラモータ91の回転軸にそれぞれ連結される。
第3ローラモータ102、および第4ローラモータ103は、ACサーボモータから構成され、モータ取付板66にそれぞれ固定される。一対の軸受104、105が、軸受取付板67にそれぞれ固定され、第3ローラ駆動軸106を回転可能に支持する。第3ローラモータ102の回転軸は、連結体107により第3ローラ駆動軸106に連結される。一対の軸受108、109が、軸受取付板67にそれぞれ固定され、第4ローラ駆動軸110を回転可能に支持する。第4ローラモータ103の回転軸は、連結体111により第4ローラ駆動軸110に連結される。エンコーダ112、113が、第3ローラモータ102の回転軸、および第4ローラモータ103の回転軸にそれぞれ連結される。
図2において、第1乃至第4ローラ支持軸120~123が、互いに平行な状態で前後方向に延び、両中間フレーム62、63に回転可能にそれぞれ支持される。多数の第1給送ローラ124が、第1ローラ支持軸120に固定され、多数の第2給送ローラ125が、第2ローラ支持軸121に固定される。多数の第3給送ローラ126が、第3ローラ支持軸122に固定され、多数の第4給送ローラ127が、第4ローラ支持軸123に固定される。第1乃至第4給送ローラ124~127は、互いに干渉しないように千鳥状に配列される。給送ローラ124~127は、同じ直径Drを有する。
第1ローラ駆動軸94は、連結体128により第1ローラ支持軸120に連結され、第2ローラ駆動軸98は、連結体129により第2ローラ支持軸121に連結される。第3ローラ駆動軸106は、連結体130により第3ローラ支持軸122に連結され、第4ローラ駆動軸110は、連結体131により第4ローラ支持軸123に連結される。
段ボールシート給送装置2は、運動変換機構140を備える。運動変換機構140は、昇降モータ80の一方向の回転を、グレイト141の昇降運動に変換する機構である。図2において、多数のグレイトが、多数の給送ローラ124~127が配列される領域を覆うように、前後方向に配置される。図2においては、1つのグレイト141のみが図示され、他のグレイトは図示されていない。
[運動変換機構の詳細な構成]
運動変換機構140は、グレイト141を昇降可能に支持する支持機構142と、揺動機構143と、を備える。揺動機構143は、昇降モータ80の一方向の回転を、揺動運動に変換して支持機構142に伝達する。本実施形態において、1つのグレイト141は、図2に示すように、前後に配置される2つの支持機構142により支持される。両支持機構は同じ構成を有する。
支持機構142の構成について、図3を参照して説明する。支持機構142は、一対の連結ブロック150、151と、一対の二腕レバー152、153と、連結棹154と、を備える。図3において、左方取付部材155が、左方フレーム68の右側面に固定され、右方取付部材156が、右方フレーム69の左側面に固定される。左方の二腕レバー152が、回動軸157により左方取付部材155に回動可能に取り付けられる。右方の二腕レバー153が、回動軸158により右方取付部材156に回動可能に取り付けられる。
図3において、グレイト141は、4本のローラ支持軸120~123の上方であって、これらのローラ支持軸に近接した状態で水平に配置される。左方連結ブロック150が、グレイト141の左端部に固定され、下方に延びる。右方連結ブロック151が、グレイト141の右端部に固定され、下方に延びる。左方の二腕レバー152の一方の腕部152Aが、連結ピン159により左方連結ブロック150の下端部に連結される。右方の二腕レバー153の一方の腕部153Aが、連結ピン160により右方連結ブロック151の下端部に連結される。
連結棹154が、4本のローラ支持軸120~123の下方において、水平に配置される。連結棹154の右端部は、右方フレーム69に形成された貫通孔161を介して右方に延びる。連結棹154の左端部が、連結ピン162により左方の二腕レバー152の他方の腕部152Bに連結される。右方フレーム69に近接する連結棹154の中間部は、連結ピン163により右方の二腕レバー153の他方の腕部153Bに連結される。
揺動機構143の構成について、図2乃至図5を参照して説明する。揺動機構143は、昇降駆動軸170と、偏心部材171と、揺動部材172と、昇降連結軸173と、を備える。
図2において、補助フレーム174が、複数のスペーサ175により所定間隔をあけて左方の中間フレーム62の左側面に固定される。昇降駆動軸170は、軸受176により回動可能に補助フレーム174に支持される。昇降駆動軸170は、連結体177により中間駆動軸83に連結される。
図4は、支持機構142と揺動機構143との連結関係を模式的に示す図面であり、補助フレーム174の左方から見た図面である。図4において、偏心部材171が、昇降駆動軸170に固定される。偏心部材171は、円形形状に形成され、昇降駆動軸170の回転軸線から偏心した回転軸線を有する。揺動部材172は、昇降連結軸173に固定され、昇降連結軸173を中心にして揺動可能である。揺動部材172は、略矩形の嵌合溝178を有する。嵌合溝178は、互いに対向する一対の接触面178A、178Bを有する。両接触面178A、178Bは、偏心部材171の外形円の中心と昇降連結軸173の回動中心とを結ぶ線に平行な方向に延びて形成される。偏心部材171の外周面は、嵌合溝178の両接触面178A、178Bに常時接触する。
図2において、昇降連結軸173は、複数の軸受179により、右方フレーム69の右側面に回動可能に支持される。昇降連結軸173は、ローラ支持軸120~123と平行に配置される。複数の連結部材180が、複数の支持機構142にそれぞれ対応する位置において、昇降連結軸173に固定される。各連結部材180は、図3に示すように、対応する支持機構142の連結棹154の右端部に連結ピン181により連結される。
図5(A)乃至(C)は、偏心部材171の回転に伴い揺動部材172の揺動角度が変化する状態を示す。図5において、基準角度位置RPは、偏心部材171の回転中心と昇降連結軸173の回動中心とを結ぶ線と一致する角度位置である。なお、偏心部材171の回転中心は、昇降駆動軸170の回転中心でもある。図5(A)に示す揺動部材172の角度位置は、基準角度位置RPから所定角度θsだけ時計回りに回転した位置である。図5(A)に示す揺動部材172の角度位置において、グレイト141が最も下方の最下方位置に位置する。図5(C)に示す揺動部材172の角度位置は、基準角度位置RPから所定角度θsだけ反時計回りに回転した位置である。図5(C)に示す揺動部材172の角度位置において、グレイト141が最も上方の最上方位置に位置する。図5(B)に示す揺動部材172の角度位置は、基準角度位置RPに一致する位置である。図5(B)に示す揺動部材172の角度位置において、グレイト141は、最下方位置と最上方位置との間の中間位置に位置する。本実施形態では、所定角度θsは、6°の角度に設定される。また、本実施形態では、揺動部材172が、図5(A)に示す角度位置に揺動したとき、連結棹154の右端部は、連結ピン181の僅かな下方移動に伴い弾性的に変形するように構成される。
[回転位置センサの構成]
回転位置センサ190が、昇降駆動軸170の所定の回転位置を検出するために設けられる。回転位置センサ190は、光学センサ191と、遮光体192と、を備える。光学センサ191は、発光部と受光部とを備える公知の構成であり、図2に示すように、軸受取付板65に固定される。遮光体192は、図2に示すように、昇降駆動軸170と連結される中間駆動軸83に固定される。昇降駆動軸170が所定の回転位置に達する度に、遮光体192は光学センサ191の発光部からの光を遮る。
図4において、光学センサ191と遮光体192とが、二点鎖線で示される。図4に示す遮光体192の回転位置は、遮光体192が光学センサ191を通過する直前の回転位置である。図4に示す状態において、グレイト141は、最上方位置に達する手前の高さに位置する。本実施形態において、昇降駆動軸170が所定の回転位置に回転してグレイト141が最上方位置に達するときに、回転位置センサ190は検出信号を発生する。
[電気的構成]
次に、図6を参照して、本発明の実施形態による段ボールシート製函機1の電気的構成について説明する。図6は、本発明の実施形態による段ボールシート製函機1の基本的な電気的構成を示すブロック図である。
段ボールシート製函機1において段ボールシートSHの加工を全般的に管理するために、上位管理装置200および下位管理装置210が設けられる。本実施形態では、上位管理装置200は、予め決められた順序で多数のオーダを実行するための生産管理計画を記憶する。上位管理装置200は、オーダ毎に、シート搬送速度、段ボールシートSHの寸法、および加工数量などに関する制御指令情報を、下位管理装置210に送る。
下位管理装置210は、上位管理装置200から送られる制御指令情報に従って、主駆動モータMTなどの駆動部の動作を制御するとともに、段ボールシートSHの加工数量を計数して上位管理装置200に送るなどの管理制御を行う装置である。下位管理装置210は、プログラムメモリ220と、作業メモリ230とに接続され、これらのメモリとともに、段ボールシート製函機1を制御するコンピュータを構成する。プログラムメモリ220は、段ボールシート製函機1の全体を制御する制御プログラム、各オーダのシート長さおよび給送モードに応じてグレイトオーダ昇降パターンを作成するためのパターン作成プログラム、および所定の設定値などを固定記憶するメモリである。
特に、プログラムメモリ220は、2枚給送モードにおいて偶数枚目の段ボールシートSHの給送タイミングを変更するための設定値を記憶する。具体的には、この設定値は、偶数枚目の段ボールシートSHを基準の給送タイミングで送り出したときの基準の送り出し位置に対して、給送タイミングを変更することで当該シートの送り出し位置をずらすべき量に相当する(以下ではこの設定値を「ずらし量設定値」と呼ぶ)。作業メモリ230は、制御プログラムを実行する際に、上位管理装置200から送られる種々の情報および演算処理結果を一時記憶するとともに、操作パネル240からの給送モード指定信号などを一時記憶するメモリである。
下位管理装置210は、操作パネル240に接続される。操作パネル240は、給送ボタン241と、オーダ終了ボタン242と、給送モード指定キー243と、情報表示部244とを含む。給送ボタン241は、段ボールシート給送装置2による段ボールシートSHの給送を開始させるために操作される。給送ボタン241が操作されると、操作パネル240は給送開始信号を発生する。オーダ終了ボタン242は、現在実行されているオーダを終了するために操作される。給送モード指定キー243は、1枚給送モード、および2枚給送モードのいずれかの給送モードを指定するために操作される。操作パネル240は、指定された給送モードを表す給送モード指定信号を発生する。情報表示部244は、指定された給送モードの種類を表す数字または記号などの情報を表示する。操作パネル240は、情報表示部244により種々の情報を表示できる共に、作業者が画面上に触れたときに作業者からの入力を受け付けることができるタッチパネルとして構成されている。この操作パネル240は、本発明における「入力装置」の一例に相当する。
また、情報表示部244は、上述したずらし量設定値を作業者に入力させるための画面(以下では「ずらし量設定画面」と呼ぶ。)を表示する。一つの例では、情報表示部244は、+(プラス)ボタン及び-(マイナス)ボタンをずらし量設定画面に表示し、作業者がこれらの+ボタン及び-ボタンを用いてずらし量設定値を入力できるようになっている。この例では、作業者が+ボタンを押すたびに、ずらし量設定値が所定量ずつ増えるようになっており、作業者が-ボタンを押すたびに、ずらし量設定値が所定量ずつ減るようになっている。これにより、作業者はずらし量設定値を細かく調整することができる。他の例では、情報表示部244は、数字キーをずらし量設定画面上に表示し、作業者がこの数字キーを用いてずらし量設定値を入力できるようになっている。この例では、作業者が数字キーにより入力した数字が、ずらし量設定値として適用される。これにより、狙いのずらし量設定値を一気に入力することができる。このように、ずらし量設定画面を用いて入力されたずらし量設定値は、プログラムメモリ220に記憶され、下位管理装置210により読み出される。
下位管理装置210は、駆動制御装置250、印刷制御装置251、クリーザスロッタ制御装置252、ダイカッタ制御装置253、およびローラモータ制御装置254にそれぞれ接続される。駆動制御装置250は、下位管理装置210からの制御指令情報に従って、主駆動モータMTの駆動および停止と、その回転速度とを制御する。主駆動モータMTの回転速度は、制御指令情報中のシート搬送速度に従って制御される。印刷制御装置251は、下位管理装置210からの制御指令情報に従って、印刷ユニット30、31の動作を制御する。クリーザスロッタ制御装置252は、下位管理装置210からの制御指令情報に従って、クリーザユニット40の動作を制御するとともに、スロッタユニット41、42の動作を制御する。ダイカッタ制御装置253は、下位管理装置210からの制御指令情報に従って、ダイカッタ5の動作を制御する。
回転位置センサ190が、下位管理装置210に接続される。下位管理装置210は、給送ボタン241が操作されたときに、給送開始指令を含む制御指令情報をローラモータ制御装置254に送る。また、下位管理装置210は、給送開始指令を送った後に、回転位置センサ190から検出信号を受け取る度に、同期指令を含む制御指令情報をローラモータ制御装置254に送る。
ローラモータ制御装置254は、下位管理装置210からの制御指令情報に従って、モーションコントローラ260の一連の動作を制御する。ローラモータ制御装置254にはパターン番号設定メモリ255が接続され、モーションコントローラ260にはローラ制御パターンメモリ261が接続される。ローラ制御パターンメモリ261は、ローラモータ90、91、102、103の回転速度を制御するために、1枚給送モードのために予め定められた基本ローラ制御パターンと、2枚給送モードのために予め定められた基本ローラ制御パターンを含む複数のローラ制御パターンとを記憶する。パターン番号設定メモリ255は、ずらし量設定値と、2枚給送モードにおいて適用されるローラ制御パターンの管理番号、つまりローラ制御パターン番号と、の対応表を記憶する。
ここで、図7(A)及び(B)を参照して、ローラ制御パターン番号及びローラ制御パターン(基本ローラ制御パターンも含む)について具体的に説明する。図7(A)は、パターン番号設定メモリ255に記憶されたローラ制御パターン番号を示している。図7(A)に示すように、パターン番号設定メモリ255は、事前に定められた複数のずらし量設定値のそれぞれに対応付けられたローラ制御パターン番号を記憶する。例えば、パターン番号設定メモリ255は、-5、-4.5、…、0、+0.5、…、+4.5、+5mmの21個のずらし量設定値(つまり-5mmから+5mmまでの範囲を0.5mmの間隔にて刻んだ数値)と、これらずらし量設定値に関連付けられた0~20番までのローラ制御パターン番号と、の対応表を記憶する。
他方で、図7(B)は、ローラ制御パターンメモリ261に記憶されたローラ制御パターンを示している。図7(B)に示すように、ローラ制御パターンメモリ261は、2枚給送モードにおいて適用される、複数のローラ制御パターン番号のそれぞれに関連付けられたローラ制御パターンを記憶する。ローラ制御パターンは、ローラモータ90、91、102、103の回転速度を制御するための速度制御パターンであり、この速度制御パターンにおいては、機械回転角度(印刷シリンダ30A、31Aの回転角度)に対して、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の比(速度比)が対応付けられている。より具体的には、このローラ制御パターンは、2枚給送モードにおいて、最初に送り出される1枚目(奇数枚目)の段ボールシートSHに適用する速度制御パターンと、次に送り出される2枚目(偶数枚目)の段ボールシートSHに適用する速度制御パターンと、を含む。1枚目の段ボールシートSHに適用する速度制御パターンは、ローラ制御パターンにおいて前段のパターンであり、2枚目の段ボールシートSHに適用する速度制御パターンは、ローラ制御パターンにおいて後段のパターンである。例えば、ローラ制御パターンメモリ261は、0~20番までのローラ制御パターン番号に対応付けられた21種類のローラ制御パターンを記憶する。ずらし量0mmに対応するローラ制御パターン番号10番のローラ制御パターンは、他の20種類のローラ制御パターンの基準となる基本ローラ制御パターンである。なお、ローラ制御パターンの詳細については後述する。
図6に戻ると、下位管理装置210が加工オーダの実行を準備するための制御指令情報を上位管理装置200から受け取ったときに、下位管理装置210は、ローラモータ制御装置254にオーダ準備指令を含む制御指令情報を送る。ローラモータ制御装置254は、オーダ準備指令を含む制御指令情報を下位管理装置210から受け取ったときに、パターン番号設定メモリ255からローラ制御パターン番号を読み出して、このローラ制御パターン番号をモーションコントローラ260に送る。特に、ローラモータ制御装置254は、2枚給送モードにおいては、下位管理装置210から送られてきた、適用すべきずらし量設定値を取得し、このずらし量設定値に対応するローラ制御パターン番号をモーションコントローラ260に送る。また、ローラモータ制御装置254は、下位管理装置210からの制御指令情報中の給送開始指令または同期指令に従って、モーションコントローラ260にモーション起動指令を送る。
モーションコントローラ260は、モーションCPUを内蔵し、プログラムメモリ262に接続される。プログラムメモリ262は、速度制御指令を作成するパターン作成プログラムなどを予め記憶する。モーションコントローラ260は、ローラ制御パターンメモリ261を参照して、ローラモータ制御装置254から送られたローラ制御パターン番号に対応するローラ制御パターンを読み出す。そして、モーションコントローラ260は、下位管理装置210から送られたシート搬送速度と、読み出したローラ制御パターンとに基づき、プログラムメモリ262に記憶されたパターン作成プログラムを用いて、速度制御指令を作成して駆動制御回路264に送る。例えば、この速度制御指令は、ローラモータ90、91、102、103に適用する回転速度の時間変化に相当するパターンを含む指令である。モーションコントローラ260は、ローラモータ制御装置254からモーション起動指令を受け取ったときに、速度制御指令を駆動制御回路264に送る。なお、モーションコントローラ260の基本構成は、特開2006-72399号公報、特開平11-272312号公報、特開平5-50329号公報などに開示され、一般に知られているので、その詳細な説明を省略する。
駆動制御回路264は、モーションコントローラ260からの速度制御指令と、エンコーダ群100、101、112、113からの回転パルスとを受け取り、ローラモータ90、91、102、103の回転速度と、その回転および停止とを制御する。すなわち、駆動制御回路264は、所定の制御周期の間に各ローラモータの回転速度が速度制御指令に従う回転速度になるように、各ローラモータへの供給電力を制御する。ローラモータ90、91、102、103の回転により、図3において給送ローラ124~127は矢印で示す反時計回りに回転する。本実施形態では、各エンコーダは、所定の制御周期の間に多数の回転パルス、たとえば1000パルス/msec以上の数のパルスを発生することができる構成を有する。
なお、下位管理装置210、ローラモータ制御装置254、モーションコントローラ260及び駆動制御回路264は、本発明における「制御装置」の一例に相当する。
次に、グレイト基本昇降パターンメモリ270と、グレイトオーダ昇降パターンメモリ271とが、下位管理装置210にそれぞれ接続される。グレイト基本昇降パターンメモリ270は、昇降モータ80の回転速度を制御するために、1枚給送モードのために最小シート長さに応じて予め定められたグレイト基本昇降パターンと、1枚給送モードのために最大シート長さに応じて予め定められたグレイト基本昇降パターンと、2枚給送モードのために最小シート長さに応じて予め定められたグレイト基本昇降パターンと、2枚給送モードのために最大シート長さに応じて予め定められたグレイト基本昇降パターンと、をそれぞれ記憶する。グレイトオーダ昇降パターンメモリ271は、グレイトオーダ昇降パターンを一時的に記憶する。
下位管理装置210は、上位管理装置200から加工オーダの実行を準備するための制御指令情報を受け取ったときに、プログラムメモリ220に記憶されるパターン作成プログラムを実行する。パターン作成プログラムの実行により、下位管理装置210は、グレイト基本昇降パターンメモリ270に記憶された、上述した4つのグレイト基本昇降パターンのいずれかのグレイト基本昇降パターンに基づいて、加工オーダのシート長さに応じたグレイトオーダ昇降パターンを作成し、グレイトオーダ昇降パターンメモリ271に一時記憶する。その後に、下位管理装置210は、グレイトオーダ昇降パターンメモリ271からグレイトオーダ昇降パターンを読み出してパターン作成指令を生成する。パターン作成指令は、上位管理装置200からの制御指令情報中のシート搬送速度と、グレイトオーダ昇降パターンとを含む。
下位管理装置210は、給送ボタン241が操作されたときに、操作パネル240から給送開始信号を受け取り、給送開始指令を含む制御指令情報をモーション起動指令としてモーションコントローラ280に送る。また、下位管理装置210は、給送開始指令を送った後に、回転位置センサ190から検出信号を受け取る度に、同期指令を含む制御指令情報をモーション起動指令としてモーションコントローラ280に送る。
モーションコントローラ280が、下位管理装置210に接続される。モーションコントローラ280は、モーションCPUを内蔵し、プログラムを記憶するプログラムメモリ281と、グレイト速度制御パターンメモリ282とに接続される。プログラムメモリ281は、グレイト昇降速度制御パターンを作成するパターン作成プログラムを予め記憶する。グレイト速度制御パターンメモリ282は、モーションコントローラ280により作成されたグレイト昇降速度制御パターンを一時的に記憶する。グレイト昇降速度制御パターンは、昇降モータ80の回転速度を指令するために一連の多数の速度制御指令を含む。モーションコントローラ280は、下位管理装置210からパターン作成指令を受け取ったときにパターン作成プログラムを実行する。パターン作成プログラムの実行により、モーションコントローラ280は、パターン作成指令中のシート搬送速度およびグレイトオーダ昇降パターンに基づいて、グレイト昇降速度制御パターンを作成し、グレイト速度制御パターンメモリ282に一時記憶する。
モーションコントローラ280は、下位管理装置210からモーション起動指令を受け取ったときに、所定の制御周期毎に制御パターンメモリ282から各速度制御指令を読み出し、駆動制御回路283に送る。所定の制御周期は、たとえば、1msecであり、シート搬送速度が段ボールシート製函機1における最高のシート搬送速度に設定された場合でも、モーションコントローラ280が速度制御指令の読み出しなどの処理を確実に実行することができる期間である。モーションコントローラ280の基本構成は、モーションコントローラ260と同じである。
駆動制御回路283は、モーションコントローラ280からの速度制御指令と、エンコーダ85からの回転パルスとを受け取り、昇降モータ80の回転速度と、その回転および停止とを制御する。すなわち、駆動制御回路283は、所定の制御周期の間に昇降モータ80の回転速度が速度制御指令に従う回転速度になるように、昇降モータ80への供給電力を制御する。昇降モータ80の回転軸が1回回転する間に、図4および図5において偏心部材171が矢印で示す時計回りに1回回転し、グレイト141が1回の昇降運動を行う。本実施形態では、エンコーダ85は、所定の制御周期の間に多数の回転パルス、たとえば1000パルス/msec以上の数のパルスを発生することができる構成を有する。
[ローラ制御パターン]
次に、本発明の実施形態において適用するローラ制御パターンについて具体的に説明する。このローラ制御パターンは、上述したように、ローラ制御パターンメモリ261に記憶されるものである(図6及び図7(B)参照)。
まず、図8を参照して、本発明の実施形態において、種々のローラ制御パターンを用いて段ボールシート給送装置2の給送ローラ124~127を制御する基本概念について説明する。本実施形態では、印刷装置3やダイカッタ5に製作誤差があっても、2枚給送モードにおいて送り出される2枚の段ボールシートSHの両方について印刷装置3やダイカッタ5による加工位置を所望の位置に適切に合わせるように、偶数枚目の段ボールシートSHを段ボールシート給送装置2から送り出す給送タイミングを変更すべく、適用するローラ制御パターンを変更するようにする。
図8(A)及び(B)は、印刷装置3の印刷シリンダ30Aをその軸方向に平行な方向から観察した模式図である。図8(A)は、印刷シリンダ30Aに適用された印版部材30B1、30B2の配置間隔L2が製作誤差により正しい配置間隔よりも狭い場合に行われる制御内容についての説明図である。まず、印版部材30B1による奇数枚目の段ボールシートSH1上の印刷位置が所望の位置に合うように、印刷シリンダ30Aの回転位相調整が行われる。このような回転位相調整により、印版部材30B1による奇数枚目の段ボールシートSH1上の印刷位置が所望の位置に合うようになるが、製作誤差により印版部材30B1、30B2の配置間隔L2が正しい配置間隔からずれているため、印版部材30B2による偶数枚目の段ボールシートSH2上の印刷位置が所望の位置に合わない。
特に、図8(A)に示す例では、印版部材30B1、30B2の配置間隔L2が製作誤差により狭くなっているので、回転位相調整後において、印版部材30B2による偶数枚目の段ボールシートSH2上の印刷位置が給送方向FD側にずれることとなる。これに対処すべく、本実施形態では、偶数枚目の段ボールシートSH2について、段ボールシート給送装置2からの給送タイミングを通常よりも早くする。すなわち、本実施形態では、ローラ制御パターン番号10番の基本ローラ制御パターンに対して、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを早くすることが可能な、ローラ制御パターン番号0~9番のいずれかのローラ制御パターンを適用する。こうすることで、奇数枚目の段ボールシートSH1に対する偶数枚目の段ボールシートSH2の搬送間隔が短くなる。その結果、印版部材30B1、30B2の配置間隔L2が製作誤差により狭くなっている場合にも、偶数枚目の段ボールシートSH2が印刷装置3に早めに到達するので、この印刷装置3の印版部材30B2による偶数枚目の段ボールシートSH2上の印刷位置を所望の位置に適切に合わせることが可能となる。
一方、図8(B)は、印版部材30B1、30B2の配置間隔L3が製作誤差により正しい配置間隔よりも広い場合に行われる制御内容についての説明図である。この場合には、印版部材30B1による奇数枚目の段ボールシートSH1上の印刷位置を所望の位置に合わせるための回転位相調整後において、印版部材30B2による偶数枚目の段ボールシートSH2上の印刷位置が給送方向FDと反対側にずれることとなる。これに対処すべく、本実施形態では、偶数枚目の段ボールシートSH2について、段ボールシート給送装置2からの給送タイミングを通常よりも遅くする。すなわち、本実施形態では、ローラ制御パターン番号10番の基本ローラ制御パターンに対して、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを遅くすることが可能な、ローラ制御パターン番号11~20番のいずれかのローラ制御パターンを適用する。こうすることで、奇数枚目の段ボールシートSH1に対する偶数枚目の段ボールシートSH2の搬送間隔が長くなる。その結果、印版部材30B1、30B2の配置間隔L3が製作誤差により広くなっている場合にも、偶数枚目の段ボールシートSH2が印刷装置3に遅れて到達するので、この印刷装置3の印版部材30B2による偶数枚目の段ボールシートSH2上の印刷位置を所望の位置に適切に合わせることが可能となる。
ここで、製作誤差に対処すべく段ボールシートSHの給送タイミングを変更するために適用すべきローラ制御パターンは、ずらし量設定値に応じて決定される。すなわち、図6、図7(A)及び(B)を参照して説明したように、ローラモータ制御装置254が、パターン番号設定メモリ255を参照して、下位管理装置210から取得したずらし量設定値に対応するローラ制御パターン番号を決定し、モーションコントローラ260が、ローラ制御パターンメモリ261を参照して、ローラモータ制御装置254から取得したローラ制御パターン番号に対応するローラ制御パターンを決定する。他方で、ずらし量設定値は、典型的には、作業者が、表示されたずらし量設定画面を用いて、操作パネル240を介して入力するものである。上述したように、ずらし量設定値は、偶数枚目の段ボールシートSH2を基準の給送タイミングで送り出したときの基準の送り出し位置に対して、給送タイミングを変更することで当該シートの送り出し位置をずらすべき量に相当する。
具体的には、作業者は、以下のような手順でずらし量設定値を決定する。まず、作業者は、2枚の段ボールシートSH(SH1、SH2)を段ボールシート給送装置2から送り出して試し加工を行うようにし、この試し加工後の2枚の段ボールシートSHのそれぞれの加工位置をメジャーで計測する。具体的には、作業者は、段ボールシートSH上での加工位置、特に印刷装置3による印刷位置やダイカッタ5による打ち抜き位置が、所望の位置からずれている量を計測する。この後、作業者は、1枚目(奇数枚目)の段ボールシートSH1上の加工位置が所望の位置に合うように、印刷装置3の印刷シリンダ30A、31Aやダイカッタ5のダイシリンダ50の回転位相調整を行う。この場合、作業者は、操作パネル240を操作することで回転位相調整を行う。そして、作業者は、回転位相調整により1枚目の段ボールシートSH1上の加工位置を所望の位置に合わせた状態において、2枚目(偶数枚目)の段ボールシートSH2上の加工位置が所望の位置からずれている量を、ずらし量設定値として適用する。基本的には、試し加工後に計測された2枚目の段ボールシートSH2のずれ量から、試し加工後に計測された1枚目の段ボールシートSH1のずれ量を減算した量が、ずらし量設定値として適用されることとなる。
例えば、試し加工において、1枚目の段ボールシートSH1について2mmのずれ量が計測され、2枚目の段ボールシートSH2について3mmのずれ量が計測された場合には、作業者は、2mm分の回転位相調整を行うようにすると共に、1mmをずらし量設定値として設定するようにする。また、上述したように、ずらし量設定値として-5、-4.5、…、0、+0.5、…、+4.5、+5mmの21個の値を用意した場合(図7(A)参照)、計測されたずれ量がこれらの値に一致しないときには、用意された値の中でずれ量に最も近い値をずらし量設定値として設定すればよい。例えば、0.3mmのずれ量が計測された場合には、+0.5mmのずらし量設定値を設定すればよい。
なお、ずらし量設定値の設定は、試し加工において設定することに限定はされず、試し加工後の本生産中にも、ずらし量設定値を設定してもよい。すなわち、作業者は、本生産中に得られた段ボールシートSHの加工位置を見て、ずらし量設定値を新たに設定してもよい。
また、上述したように作業者がずらし量設定値を設定することに限定はされず、装置側でずらし量設定値を設定してもよい。例えば、上位管理装置200が、或るオーダにおいて用いられたずらし量設定値を、このオーダに関するオーダ情報に関連付けて記憶するようにし、このオーダと同じ仕様のオーダが次に行われるときに、下位管理装置210が、上位管理装置200から送られたオーダ情報に含まれるずらし量設定値を自動で設定するようにしてもよい。1つの例では、初めて行うオーダにおいて、このオーダで用いられていたずらし量設定値をオーダ終了時に記憶するようにし、このオーダが次に行われるとき(2回目以降のオーダ)、初回に記憶されたずらし量設定値を自動で設定してもよい。また、こうして記憶されたずらし量設定値を、作業者による操作パネル240の操作に応じて更新してもよい。すなわち、作業者がオーダ実行中に操作パネル240に対して所定の操作を行った場合に、このオーダにおいて使用しているずらし量設定値によって、オーダ情報に関連付けて記憶されたずらし量設定値(基本的には初回のオーダにおいて記憶された値)を更新してもよい。
次に、図9乃至図13を参照して、本発明の実施形態において適用するローラ制御パターンの具体例について説明する。
図9は、本発明の実施形態によるローラ制御パターンの第1の例である基本ローラ制御パターンについての説明図である。図9では、横軸に、印刷シリンダ30A、31Aの回転角度(°)を示し、縦軸に、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の速度比(%)を示している。基本ローラ制御パターンは、段ボールシートSHの給送タイミングを変更していない速度制御パターンであり、通常時(つまり製作誤差がないとき)に使用されるものである。すなわち、基本ローラ制御パターンは、ずらし量設定値が0mmであるときに適用される、基準となる速度制御パターンである(ローラ制御パターン番号は10番)。
まず、種々のローラ制御パターンにおいて共通する、ローラ制御パターンの構成について説明すると、図9に示すように、ローラ制御パターンは、奇数枚目の段ボールシートSH1を送り出すための速度制御パターンP1と、偶数枚目の段ボールシートSH2を送り出すための速度制御パターンP2と、を含む。そして、これらの速度制御パターンP1、P2は、それぞれ、給送ローラ124~127を回転停止状態から加速させるための加速領域R11、R21と、この加速領域R11、R21の後において給送ローラ124~127を一定速度で回転させるための定速領域R12、R22と、この定速領域R12、R22の後において給送ローラ124~127の回転を減速させるための減速領域R13、R23と、この減速領域R13、R23の後において給送ローラ124~127の回転を停止させるための停止領域R14、R24と、を含む。
図9に示す基本ローラ制御パターンにおいては、奇数枚目の段ボールシートSH1の速度制御パターンP1では、加速領域R11が0°~65°の範囲であり、定速領域R12が65°~140°の範囲であり、減速領域R13が140°~170°の範囲であり、停止領域R14が170°~180°の範囲である。加えて、偶数枚目の段ボールシートSH2の速度制御パターンP2では、加速領域R21が180°~245°の範囲であり、定速領域R22が245°~320°の範囲であり、減速領域R23が320°~350°の範囲であり、停止領域R24が350°~360°の範囲である。
基本ローラ制御パターンはずらし量設定値が0mmであるときに適用されるものであるが、この基本ローラ制御パターンでは、図9に示すように、奇数枚目の段ボールシートSH1の速度制御パターンP1と偶数枚目の段ボールシートSH2の速度制御パターンP2とが同一形状になっている。また、基本ローラ制御パターンでは、奇数枚目の段ボールシートSH1の加速を開始させるタイミングが、加速領域R11の開始位置である回転角度0°となっており、偶数枚目の段ボールシートSH2の加速を開始させるタイミングが、加速領域R21の開始位置である回転角度180°となっている。すなわち、偶数枚目の段ボールシートSH2の加速開始タイミングが、印刷シリンダ30A、31Aの1回転のちょうど半分の回転角度となっており、奇数枚目の段ボールシートSH1の加速開始タイミングに一義的に対応するタイミングとなっている。以下では、このような回転角度180°を、偶数枚目の段ボールシートSH2の加速開始タイミングをずらすに当たっての、基準となる加速開始タイミングとして用いる。
図10は、本発明の実施形態によるローラ制御パターンの第2の例についての説明図である。図10でも、横軸に、印刷シリンダ30A、31Aの回転角度(°)を示し、縦軸に、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の速度比(%)を示している。第2の例によるローラ制御パターンは、段ボールシートSHの給送タイミングを変更するための速度制御パターンであり、製作誤差がある場合に使用されるものである。具体的には、第2の例によるローラ制御パターンは、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを早めるための速度制御パターンであり、ずらし量設定値が-5mmであるときに適用される(ローラ制御パターン番号は0番)。
図10に示すように、第2の例によるローラ制御パターンにおいては、奇数枚目の段ボールシートSH1のための速度制御パターンP1は基本ローラ制御パターンと同じであるが、偶数枚目の段ボールシートSH2のための速度制御パターンP2が基本ローラ制御パターンと異なっている。具体的には、第2の例によるローラ制御パターンの速度制御パターンP2に含まれる加速領域R21a(実線で示す)は、基本ローラ制御パターンの速度制御パターンP2に含まれる加速領域R21(破線で示す)に対して、全体的に左側にシフトしている。詳しくは、第2の例による加速領域R21aの開始位置が回転角度178.6°となっており、この回転角度は、第1の例による加速領域R21の開始位置である回転角度180°(基準となる加速開始タイミング)よりも小さくなっている。加えて、第2の例による加速領域R21aの終了位置が回転角度243.6°となっており、この回転角度は、第1の例による加速領域R21の終了位置である回転角度245°よりも小さくなっている。
このような第2の例によるローラ制御パターンによれば、偶数枚目の段ボールシートSH2のための加速領域R21aが小さな回転角度から始まるので、偶数枚目の段ボールシートSH2の加速開始タイミングが早まることとなる。具体的には、給送方向FDにおいて5mmに相当するタイミングだけ、偶数枚目の段ボールシートSH2の後端が給送装置2から出て、下流側の印刷装置3やダイカッタ5に向けて送り出される給送タイミングが早まる。その結果、奇数枚目の段ボールシートSH1に対する偶数枚目の段ボールシートSH2の搬送間隔が5mm縮まることとなる。
なお、加速開始タイミングを早めて搬送間隔を所望の長さ(ずらし量設定値に対応するずらし量であり、上述した-5、-4.5、…、-0.5mm)だけを縮めるために、加速領域R21aの開始位置を基準となる回転角度180°から小さくすべき量(角度)は、基本的には印刷シリンダ30A、31Aの直径Dp及び印版部材31B1、31B2、30B1、31B1の厚さから一義的に求めることができる。よって、ずらし量設定値としての-5、-4.5、…、-0.5mmのそれぞれについて、加速領域R21aの開始位置を回転角度180°から小さくすべき量を事前に求めて、これらのずらし量設定値のそれぞれについてローラ制御パターンを規定しておくことができる。基本的には、加速領域R21aの開始位置を回転角度180°から小さくすべき量は、ずらし量設定値の絶対値が大きくなるほど、大きくなっていく。
他方で、上記のような第2の例によるローラ制御パターンを適用して偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを変更した場合にも、つまり段ボールシート給送装置2の給送ローラ124~127の加速開始タイミングを早めた場合にも、段ボールシート給送装置2のグレイト141の動作は通常時から特に変更する必要はない。これについて、図11を参照して説明する。
図11は、本発明の実施形態によるローラ制御パターンの第2の例を適用したときのグレイト141の動作についての説明図である。図11では、横軸に、印刷シリンダ30A、31Aの回転角度(°)を示し、縦軸に、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の速度比(%)と、グレイト141の高さとを示しており、第2の例によるローラ制御パターンとグレイト141の動作とを重ねて示している。より詳しくは、図11では、速度比100%の位置を、給送ローラ124~127と段ボールシートSHとが接触し始めるグレイト141の高さ(基準高さ)として示している。グレイト141が基準高さよりも下降している状態では、給送ローラ124~127と段ボールシートSHとが接触し、グレイト141が基準高さよりも上昇している状態では、給送ローラ124~127と段ボールシートSHとの接触が遮断される。
第2の例によるローラ制御パターンのように、加速領域R21aの開始位置を左側にずらすと、給送ローラ124~127の回転開始タイミングが早くなるが、特に問題は生じない。すなわち、図11に示すように、ずらし量設定値として最大の-5mmを適用して、加速領域R21aの開始位置を最も左側にずらした場合であっても、給送ローラ124~127と偶数枚目の段ボールシートSH2とが接触し始めるタイミングに対応する回転角度172°では、給送ローラ124~127は回転停止状態にあるため、偶数枚目の段ボールシートSH2が給送ローラ124~127に接触してスリップすることはない。
図12は、本発明の実施形態によるローラ制御パターンの第3の例についての説明図である。図12でも、横軸に、印刷シリンダ30A、31Aの回転角度(°)を示し、縦軸に、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の速度比(%)を示している。第3の例によるローラ制御パターンは、段ボールシートSHの給送タイミングを変更するための速度制御パターンであり、製作誤差がある場合に使用されるものである。具体的には、第3の例によるローラ制御パターンは、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを遅くするための速度制御パターンであり、ずらし量設定値が+5mmであるときに適用される(ローラ制御パターン番号は20番)。
図12に示すように、第3の例によるローラ制御パターンにおいては、奇数枚目の段ボールシートSH1のための速度制御パターンP1は基本ローラ制御パターンと同じであるが、偶数枚目の段ボールシートSH2のための速度制御パターンP2が基本ローラ制御パターンと異なっている。具体的には、第3の例によるローラ制御パターンの速度制御パターンP2に含まれる加速領域R21b(実線で示す)は、基本ローラ制御パターンの速度制御パターンP2に含まれる加速領域R21(破線で示す)に対して、全体的に右側にシフトしている。詳しくは、第3の例による加速領域R21bの開始位置が回転角度181.4°となっており、この回転角度は、第1の例による加速領域R21の開始位置である回転角度180°(基準となる加速開始タイミング)よりも大きくなっている。加えて、第3の例による加速領域R21bの終了位置が回転角度246.4°となっており、この回転角度は、第1の例による加速領域R21の終了位置である回転角度245°よりも大きくなっている。
このような第3の例によるローラ制御パターンによれば、偶数枚目の段ボールシートSH2のための加速領域R21bが大きな回転角度から始まるので、偶数枚目の段ボールシートSH2の加速開始タイミングが遅れることとなる。具体的には、給送方向FDにおいて5mmに相当するタイミングだけ、偶数枚目の段ボールシートSH2の後端が給送装置2から出て、下流側の印刷装置3やダイカッタ5に向けて送り出される給送タイミングが遅れる。その結果、奇数枚目の段ボールシートSH1に対する偶数枚目の段ボールシートSH2の搬送間隔が5mm伸びることとなる。
なお、加速開始タイミングを遅らせて搬送間隔を所望の長さ(ずらし量設定値に対応するずらし量であり、上述した+0.5、…、+4.5、+5mm)だけを伸ばすために、加速領域R21bの開始位置を基準となる回転角度180°から大きくすべき量(角度)は、基本的には印刷シリンダ30A、31Aの直径Dp及び印版部材31B1、31B2、30B1、31B1の厚さから一義的に求めることができる。よって、ずらし量設定値としての+0.5、…、+4.5、+5mmのそれぞれについて、加速領域R21bの開始位置を回転角度180°から大きくすべき量を事前に求めて、これらのずらし量設定値のそれぞれについてローラ制御パターンを規定しておくことができる。基本的には、加速領域R21bの開始位置を回転角度180°から大きくすべき量は、ずらし量設定値が大きくなるほど、大きくなっていく。
他方で、上記のような第3の例によるローラ制御パターンを適用して偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを変更した場合にも、つまり段ボールシート給送装置2の給送ローラ124~127の加速開始タイミングを遅らせた場合にも、段ボールシート給送装置2のグレイト141の動作は通常時から特に変更する必要はない。これについて、図13を参照して説明する。
図13は、本発明の実施形態によるローラ制御パターンの第3の例を適用したときのグレイト141の動作についての説明図である。図13では、横軸に、印刷シリンダ30A、31Aの回転角度(°)を示し、縦軸に、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の速度比(%)と、グレイト141の高さとを示しており、第3の例によるローラ制御パターンとグレイト141の動作とを重ねて示している。より詳しくは、図13では、速度比100%の位置を、給送ローラ124~127と段ボールシートSHとが接触するグレイト141の高さ(基準高さ)として示している。
第3の例によるローラ制御パターンのように、加速領域R21bの開始位置を右側にずらすと、給送ローラ124~127の回転開始タイミングが遅くなり、偶数枚目の段ボールシートSH2を給送ローラ124~127で送る距離が短くなるが、特に問題は生じない。これは、ずらし量設定値として最大の+5mmを適用して、加速領域R21bの開始位置を最も右側にずらした場合であっても、偶数枚目の段ボールシートSH2の先端がフィードロール23、24に到達した後に(図13中の回転角度θ2は、偶数枚目の段ボールシートSH2の先端がフィードロール23、24に到達したタイミングを示す(回転角度θ1は奇数枚目の段ボールシートSH1の先端がフィードロール23、24に到達したタイミング))、グレイト141による給送ローラ124~127と偶数枚目の段ボールシートSH2との接触の遮断が行われるからである。この場合には、偶数枚目の段ボールシートSH2をフィードロール23、24に確実に受け渡すことができるのである。
なお、上述したように偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを変更した場合、クリーザスロッタ4における上流側のスロッタユニット41の回転位相調整(所謂レジスタ調整)を行う必要がある。すなわち、偶数枚目の段ボールシートSH2に対する溝切り加工を行うスロッタユニット41のスロッタ刃41A1、41A2について、適用したずらし量設定値に応じて回転位相調整を行う必要がある。
また、印刷装置3は2つの印刷ユニット30、31を有するが、これら印刷ユニット30、31の印版部材の間に製作誤差のばらつきがあったり、印版部材とダイカッタ5の木型との間に製作誤差のばらつきがあったりする。そのような場合には、作業者は、ずらし量の妥当点を考えて、ずらし量設定値を設定するのがよい。例えば、印刷ユニット30には、印版部材30B1、30B2の間隔が正しい間隔よりも2mm広いという製作誤差があり、印刷ユニット31には、印版部材31B1、31B2の間隔が正しい間隔よりも1mm広いという製作誤差があり、ダイカッタ5の打ち抜きダイ52A1、52A2には製作誤差がないという状況においては、これら製作誤差のばらつきの中間の値を採用することとし、ずらし量設定値を+1mmに設定するのがよい。
[作用効果]
次に、本発明の実施形態による段ボールシート給送装置2の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、印刷シリンダ30A、31Aが1回転する間に2枚の段ボールシートSH1、SH2を送り出す場合に、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを変更することで、送り出される奇数枚目の段ボールシートSH1と偶数枚目の段ボールシートSH2との間隔(搬送間隔)を適切に変更することができる。これにより、印刷装置3に適用する印版部材30B1、30B2、31B1、31B2やダイカッタ5に適用する打ち抜きダイ52A1、52A2(木型も含む)に製作誤差がある場合であっても、奇数枚目の段ボールシートSH1と偶数枚目の段ボールシートSH2の両方について、印刷装置3やダイカッタ5による加工位置を所望の位置に適切に合わせることができる。
また、本実施形態によれば、偶数枚目の段ボールシートSH2の加速開始タイミングを変更することで、当該シートSH2の給送タイミングを適切に変更して、奇数枚目の段ボールシートSH1と偶数枚目の段ボールシートSH2との搬送間隔を確実に変えることができる。また、加速度の大きさを同一に維持しつつ、加速開始タイミングを変更するので、給送ローラ124~127上での段ボールシートSH2のスリップを抑制できる。すなわち、加速度を大きくすると給送ローラ124~127上で段ボールシートSH2がスリップしやすくなるが、加速度の大きさを同一に維持することで、そのようなスリップを抑制できる。よって、段ボールシート給送装置2による安定した送り出しを確保することができる。
また、本実施形態によれば、作業者が、操作パネル240を用いてオーダ仕様に合わせてずらし量設定値を適宜変更することができる。これにより、オーダ仕様に応じて変わる種々の印版部材や木型に対して、適切に対応することができる。
また、本実施形態によれば、過去のオーダにおいて用いられたずらし量設定値を記憶させておくことで、このオーダと同じ仕様のオーダが次に行われたときに、ずらし量設定値を自動で設定することができる。これにより、作業者がずらし量設定値を入力する手間を省くことができる。
また、本実施形態によれば、複数のローラ制御パターンを事前に求めて、ローラ制御パターンメモリ261に記憶させておくことで、ずらし量設定値に応じたローラ制御パターンを速やかに適用することができる。また、そのようなローラ制御パターンを情報表示部244に表示させたりすることで、実際に使用されるローラ制御パターンを作業者に容易に把握させることができる。
また、本実施形態によれば、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングのみを変更することにより、奇数枚目の段ボールシートSH1の給送タイミングを変更する場合と比較して、作業者が、ずらし量設定値と、このずらし量設定値により変更される2枚の段ボールシートSH1、SH2の搬送間隔との関係を、容易に理解できるようになる。
[変形例]
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下で示す複数の変形例は、互いに適宜組み合わせて実施することができる。
(変形例1)
上述した実施形態では、偶数枚目の段ボールシートSH2に適用する加速開始タイミングを変更することで、この段ボールシートSH2の給送タイミングを変更していたが、変形例では、加速開始タイミングを変更する代わりに、偶数枚目の段ボールシートSH2に適用する加速度の大きさを変更してもよい。そのような変形例においても、上述したずらし量設定値(-5、-4.5、…、0、+0.5、…、+4.5、+5mm)のそれぞれに関して、偶数枚目の段ボールシートSH2に適用する加速度の大きさを変更するための複数のローラ制御パターン(基本ローラ制御パターンを含む21種類のローラ制御パターン)を用意すればよい。
図14は、本発明の実施形態の変形例である、ローラ制御パターンの第4の例についての説明図である。図14では、横軸に、印刷シリンダ30A、31Aの回転角度(°)を示し、縦軸に、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の速度比(%)を示している。図14に示す第4の例によるローラ制御パターンは、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを早めるための速度制御パターンであり、ずらし量設定値が-5mmであるときに適用される(ローラ制御パターン番号は0番)。
図14に示すように、第4の例によるローラ制御パターンでは、速度制御パターンP2に含まれる加速領域R21cの傾きが(実線で示す)、基本ローラ制御パターン(図9参照)の加速領域R21の傾き(破線で示す)よりも急になっている。すなわち、加速領域R21cの加速度が加速領域R21の加速度よりも大きくなっている。詳しくは、第4の例によるローラ制御パターンでは、加速領域R21cの開始位置は回転角度180°であり、この回転角度は、基本ローラ制御パターンの加速領域R21の開始位置と同じである(つまり加速開始タイミングは変わっていない)。しかしながら、加速領域R21cの終了位置は回転角度242.5°であり、この回転角度は、基本ローラ制御パターンの加速領域R21の終了位置である回転角度245°よりも小さくなっている(つまり加速終了タイミングが早くなっている)。
このような変形例の第4の例によるローラ制御パターンによれば、偶数枚目の段ボールシートSH2を回転停止状態から加速させる際に適用される加速度が大きくなる。その結果、偶数枚目の段ボールシートSH2の後端が給送装置2を出て、下流側の印刷装置3やダイカッタ5に向けて送り出される給送タイミングが、給送方向FDにおいて5mmに相当するタイミングだけ早まり、奇数枚目の段ボールシートSH1に対する偶数枚目の段ボールシートSH2の搬送間隔が5mm縮まることとなる。
次に、図15は、本発明の実施形態の変形例である、ローラ制御パターンの第5の例についての説明図である。図15では、横軸に、印刷シリンダ30A、31Aの回転角度(°)を示し、縦軸に、印刷シリンダ30A、31Aの周速度に対する給送ローラ124~127の周速度の速度比(%)を示している。図15に示す第5の例によるローラ制御パターンは、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを遅くするための速度制御パターンであり、ずらし量設定値が+5mmであるときに適用される(ローラ制御パターン番号は20番)。
図15に示すように、第5の例によるローラ制御パターンでは、速度制御パターンP2に含まれる加速領域R21dの傾きが(実線で示す)、基本ローラ制御パターンの加速領域R21の傾き(破線で示す)よりも緩やかになっている。すなわち、加速領域R21dの加速度が加速領域R21の加速度よりも小さくなっている。詳しくは、第5の例によるローラ制御パターンでは、加速領域R21dの開始位置は回転角度180°であり、この回転角度は、基本ローラ制御パターンの加速領域R21の開始位置と同じである(つまり加速開始タイミングは変わっていない)。しかしながら、加速領域R21dの終了位置は回転角度247.8°であり、この回転角度は、基本ローラ制御パターンの加速領域R21の終了位置である回転角度245°よりも大きくなっている(つまり加速終了タイミングが遅くなっている)。
このような変形例の第5の例によるローラ制御パターンによれば、偶数枚目の段ボールシートSH2を回転停止状態から加速させる際に適用される加速度が小さくなる。その結果、偶数枚目の段ボールシートSH2の後端が給送装置2を出て、下流側の印刷装置3やダイカッタ5に向けて送り出される給送タイミングが、給送方向FDにおいて5mmに相当するタイミングだけ遅くなり、奇数枚目の段ボールシートSH1に対する偶数枚目の段ボールシートSH2の搬送間隔が5mm伸びることとなる。
以上述べたように、偶数枚目の段ボールシートSH2の加速度の大きさを変更することで、当該シートSH2の給送タイミングを適切に変更して、奇数枚目の段ボールシートSH1と偶数枚目の段ボールシートSH2との搬送間隔を確実に変えることができる。また、加速開始タイミングを同一に維持しつつ、加速度の大きさを変更するので、最下層の段ボールシートSHが加速途中の給送ローラ124~127上に落下してスリップすることを抑制できる。すなわち、加速開始タイミングを早くすると、最下層の段ボールシートSHが給送ローラ124~127に接触する前に給送ローラ124~127の加速が開始し、最下層の段ボールシートSHが給送ローラ124~127に接触したときにスリップする可能性があるが、加速開始タイミングを同一に維持すると、最下層の段ボールシートSHが給送ローラ124~127に接触するタイミングと給送ローラ124~127の加速が開始するタイミングとの差が一定に保たれるため、そのようなスリップを抑制できる。よって、段ボールシート給送装置2による安定した送り出しを確保することができる。
(変形例2)
上述した実施形態では、基本ローラ制御パターンを含む21種類のローラ制御パターンを用意していたが、より多くの種類のローラ制御パターンを用意してもよい。例えば、段ボールシートSHの標準サイズ用と小きいサイズ用のローラ制御パターンを作成し、オーダのシート寸法に応じてローラ制御パターンを使い分けてもよい。この例では、標準サイズ用に基本ローラ制御パターンを含む21種類のローラ制御パターンを用意し、小さいサイズ用に基本ローラ制御パターンを含む21種類のローラ制御パターンを用意してもよい。
更に、21個のずらし量設定値(-5、-4.5、…、0、+0.5、…、+4.5、+5mm)を用いることに限定はされない。例えば、-3mmから+3mmまでの範囲を0.5mmの間隔にて刻んだずらし量設定値を用いてもよい。こうすることで、ローラ制御パターンの種類を減らしてもよい。
(変形例3)
上述した実施形態では、予め作成した複数のローラ制御パターンをローラ制御パターンメモリ261に記憶させておき、この複数のローラ制御パターンの中でずらし量設定値に対応するローラ制御パターンを適用していた。変形例では、このように予め作成した複数のローラ制御パターンを記憶させておく代わりに、適用するローラ制御パターンを計算によって求めてもよい。この変形例では、ローラ制御パターンメモリ261が不要となり、ローラモータ制御装置254が、ローラ制御パターンを作成するための計算式を記憶し、この計算式に従って計算されたローラ制御パターンをモーションコントローラ260に送る。ローラ制御パターンは、ずらし量設定値及び印刷シリンダ30A、31Aの直径Dpや印版部材31B1、31B2、30B1、31B1の厚みなどから計算することができる。特に、ずらし量設定値に基づき、ローラ制御パターンにおいて偶数枚目の段ボールシートSH2に適用する加速領域R21の速度制御パターン(加速開始タイミングや加速終了タイミングや加速度の大きさなど)を計算すればよい。このような変形例によれば、ローラ制御パターンを記憶しておく必要がないので、記憶容量を削減することができる。
(変形例4)
上述した実施形態では、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを変更していたが、変形例では、偶数枚目の段ボールシートSH2の給送タイミングを変更せずに、奇数枚目の段ボールシートSH1の給送タイミングを変更してもよいし、或いは、奇数枚目の段ボールシートSH1と偶数枚目の段ボールシートSH2の両方の給送タイミングを変更してもよい。要は、奇数枚目の段ボールシートSH1及び偶数枚目の段ボールシートSH2の少なくともいずれかの給送タイミングを変更することで、送り出される奇数枚目の段ボールシートSH1と偶数枚目の段ボールシートSH2との間隔(搬送間隔)を変更すればよい。
(変形例5)
上述した実施形態では、ローラ制御パターンに停止領域R14、R24が含まれていたが、変形例では、停止領域を含まないローラ制御パターンを適用してもよい。停止領域を含まないローラ制御パターンでは、給送ローラ124~127の速度が0になると同時に、グレイト141の上面が給送ローラ124~127の上面よりも下降して、段ボールシートSHと給送ローラ124~127とが接触するので、上述した実施形態のように加速開始タイミングを変更する場合には、グレイト141の昇降タイミングも変更する必要がある。但し、変形例1のように加速度の大きさを変更する場合には、グレイト141の昇降タイミングも変更する必要はない。
(変形例6)
上記した実施形態では、段ボールシート給送装置2がグレイト141を具備していたが、本発明は、グレイトを具備しない段ボールシート給送装置、つまり給送ローラのみにより2枚の段ボールシートを連続して送り出す段ボールシート給送装置にも適用可能である。この変形例では、段ボールシートのシート長に応じて各給送ローラの停止タイミングを調整すればよい。