JP7071838B2 - 汚水浄化槽 - Google Patents
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Description
以下の非特許文献1に示されるように、「浄化槽の構造例示仕様」(旧来の構造基準)では、複数の槽を仕切壁で区切る汚水浄化槽のうち、好気処理槽とその下流に隣接する沈殿槽又は処理水槽の構造として、仕切壁の底部に連通口(スロット)を設けて接続される構造は、処理対象人員が30人槽までの接触ばっ気槽と沈殿槽の組み合わせとなっている。
汚水浄化槽に流入してくる生活排水は、浴槽排水のように短時間で多量の排水量が集中して排出されるという特性があるため、沈殿槽において沈殿分離機能を発揮させるには、所定の能力に応じた滞留時間を確保しなければならず、処理対象人員が5人の規模で0.3m3という大きい容量が要求されていた。
しかしながら、下流側に隣接する沈殿槽では、底部で接触ばっ気槽と連通口でつながっているため、接触ばっ気槽で発生させた旋回流が沈殿槽にまで伝播してしまい、沈殿槽内の沈降分離性能を悪化させるという課題があった(沈殿槽の湧上り現象という)。
既設の単独処理浄化槽についても、し尿と合併処理浄化槽に入替えるべきであるが、特許文献1に示されている合併処理浄化槽では、処理対象人員を5人として比較すると、単独処理浄化槽の約3倍の大きさであり、設置スペースが不足するため、簡単に入替えることができないという課題があった。
(1)本発明の汚水浄化槽は、複数の槽に仕切壁で区切られる汚水浄化槽であって、区切られた槽のうち、好気処理槽と、該好気処理槽の下流に沈殿槽又は処理水槽が隣り合って構成される配列を含み、前記好気処理槽と沈殿槽又は処理水槽との仕切壁の底部に該底部より幅の小さい連通口が形成され、当該連通口の周囲に好気処理槽側へ向かって突き出し、前記好気処理槽のばっ気水流の流れを遮る構造体を有することを特徴とする。
(3)本発明に係る汚水浄化槽において、前記(1)または(2)に記載の好気処理槽内に循環流としてのばっ気水流を発生させるばっ気水流発生手段が設けられた構成を採用できる。
(4)本発明に係る汚水浄化槽において、前記(1)または(2)に記載の好気処理槽内に生成されるばっ気水流が前記連通口から離れた側で上昇流であり、前記連通口を形成した仕切壁の底部側で下降流である構成を採用できる。
(5)本発明に係る汚水浄化槽において、前記構造体が、前記連通口の開口部上縁側を覆う天井部を少なくとも有する構成を採用できる。
以下、本発明の第一実施形態に基づく水処理装置について図1を用いて説明する。
第1実施形態にて述べる汚水浄化槽1は、仕切壁2により、上流側から好気処理槽3と沈殿槽4に区分されている。
好気処理槽3には周壁の底部側に散気管(ばっ気水流発生手段)5が設けられており、仕切壁2の底部には、好気処理槽3と沈殿槽4とを接続する連通口6が設けられ、連通口6の周囲には、好気処理槽側に向かって突き出す構造体7が設けられている。
図1において符号11で示す流入水が好気処理槽3に導入され、水位線Wで示す位置まで槽内液(処理水)が満たされている。
このため、散気管5の先端部から好気処理槽3の槽内液中に散気することで好気処理槽3内に矢印A、B、C、Dに示す方向の流れを有するばっ気水流(循環流)12が生成されるようになっている。
このため、本実施形態の汚水浄化槽1では、周壁3Aに沿って上向き(矢印B参照)のばっ気流が生成され、仕切壁2に沿って下向き(矢印D参照)のばっ気水流が生成され、連通口6の周囲では主に下向きのばっ気水流が生成される。
よって、図1に示す散気管5の配管位置は一例であり、槽内液に空気を供給し、好気処理槽3内に循環流を生じさせるための構成は問わない。
本実施形態においては、仕切壁2の底部にある連通口6の周囲に好気処理槽側に突き出した構造体7を設けるが、図2(b)に示した例のように槽内液(被処理水)は通すが、ろ材は通さないフィルター部材10を構造体7の先端部に付加することもできる。
また、連通口6と構造体7の形状や寸法は、連通口6が汚泥により閉塞しにくいことが肝要であり、好気処理槽3から沈殿槽4又は処理水槽への移流が確保できれば、特に限定されるものではない。構造体7は筒型であるため、その上面側を構成する天井部7aと両側面部分を構成する側壁部7bと底面部分を構成する底壁部7cとから構成されている。
構造体7においては、連通口6の周囲において下向きに流れるばっ気水流の流れを遮る天井部7aを有していることが望ましい。
図3(c)は、図3(b)の連通口6の底辺が汚水浄化槽3の底面に一致されており、構造体7の底面も汚水浄化槽の底面になっている。このため、図3(c)に示す構造体7は、天井部7aと側壁部7bを備えている。このように連通口6の一部が槽の底面や側面になる場合には、構造体7も槽の底面や側面の一部を利用することができる。
また、図3(e)、図3(f)に示したように、連通口6の一部が槽の底面や側面にならなくとも、底面や側面に近い場合、構造体7は、槽の底面や側面の一部を利用しても良い。図3(e)、図3(f)に示す構造体7は、天井部7aと側壁部7bを備えている。
さらに、構造体7は、連通口6に対し好気処理槽3のばっ気水流が直接当たらないように、図3(g)に示したように、その先端開口面を下向きに配置することも可能である。図3(g)に示す構造体7は、天井部7aと側壁部7bと底壁部7cを備えている上に先端側に下向きの屈曲部7dを有している。
いずれにしても、構造体7は、好気処理槽3で生じたばっ気水流を連通口6に直接当たらないようにすることが目的であり、図3(a)~(g)に示す構造例に限定されるものではないが、いずれの形状としても天井部7aを具備していることが望ましい。
一般的には、連通口6を大きくすれば、ばっ気水流の影響を受けやすくなり、連通口6を小さくすれば、ばっ気水流の影響を受けにくくなり、また、構造体7を太く短くすれば、ばっ気水流の影響を受けやすくなり、構造体7を細長くすれば、ばっ気水流の影響を受けにくくなる特性がある。
連通口6の開口寸法は、φ100mm程度が好ましく、その連通口6に応じる構造体7の仕切壁2から突出させる垂直寸法は、少なくとも直径と同じく100mmとし、それ以上にすることが好ましい。なお、図3(g)に示すように、連通口6の開口部の向きは、好気処理槽3側(入口側)と沈殿槽4側(出口側)で異なっても構わない。
なお、図4に示す汚泥移送ポンプ13の設置位置は一例に過ぎず、汚泥移送ポンプ13の設置位置は他の位置であっても、汚泥の吸込口を沈殿槽4の底部の所望の位置に設ければよい。
好気処理槽3は、散気管5より空気が供給されるため、槽内液がばっ気撹拌される。好気処理槽3には、生物の棲みかとなるろ材(担体)が充填してあるため、流入水11が好気処理槽に移流してくると、流入水中に含まれる汚濁物質と空気と生物が接触することになり、汚濁物質が好気的生物処理を受けて分解除去が進行する。
一方、この生物処理に伴って生物が増殖するので、排泄物や死骸が発生し、槽内液のSSが増加することになる。流入があると、SSを含んだ槽内液は、その水量に応じて連通口6を介して沈殿槽4に押し出されて移流することになる。
本実施形態では、連通口6の周囲に仕切壁2から好気処理槽3側に突き出した構造体7を設けてあるため、好気処理槽3のばっ気水流12が沈殿槽3に伝播しにくくなっており、沈殿槽4での安定した沈殿分離機能を発揮させることができる。そのため、沈殿槽4では、沈殿分離後にきれいな上澄水を処理水として放流することができる。
本発明の第二実施形態に基づく水処理装置について図4を用いて説明する。
本実施形態において述べる汚水浄化槽1は、仕切壁2により、上流側から好気処理槽3と沈殿槽4に区分されている。
好気処理槽3の底部には散気管5が設けられており、仕切壁2の底部には、好気処理槽3と沈殿槽4とを接続する連通口6が設けられ、連通口6の周囲には、沈殿槽側に向かって突き出す構造体7が設けられている。
その他の構成については、連通口6や構造体7との関係等、第一実施形態で説明したものをそのまま使用することができる。
ここで、特許文献2に記載の構造では、好気濾床槽(好気処理槽)と処理水槽の開口部(連通口)を処理水槽側に突き出している例が示されており、開口部(連通口)が洗浄排水排出管の径よりも小さい径であることが望ましいと説明されている。
これは特許文献2で示す好気濾床槽(好気処理槽)が濾過機能を持つので、濾床の定期的な洗浄が必要となり、その洗浄効率を考慮したためと考えられる。
特許文献2に記載の洗浄排水排出管は、本実施形態で述べるところの汚泥移送ポンプの移送管に相当し、処理対象人員の規模にもよるが、5人から50人の規模では、φ30~50mmであり、特許文献2に記載の開口部(連通口)としては、φ30~50mmよりも小さい径であることが好ましいことになる。
なお、連通口6の大きさは、汚泥による閉塞が生じないように、最低でも直径50mmの円に相当する断面積(19.6cm2)が必要と考えると、19.6cm2以上の断面積を有することが好ましい。また、5人規模ではφ150mm程度が望ましい特性を得るための上限と考えると、断面積を176.7cm2以下とすることが望ましく、50人規模ではφ200mm程度が望ましい特性を得るための上限と考えると、断面積を314.2cm2以下とすることが望ましい。
試験槽の規模は、5人槽を想定し、好気処理槽を0.303m3、沈殿槽を0.170m3に設定した。散気管の形状は、構造体がある場合には、構造体に当たらないようにコの字形とし、構造体がない場合には、口の字形とし、連通口より150mm離して設置した。
好気処理槽のばっ気空気量は、ばっ気強度で6.3m3/(m3・h)になるように設定した。連通口と連通口周囲に配置する構造体を含む試験条件を以下に示す。
連通口を、仕切壁の全幅について、底面0mmから100mmの高さで開口した。構造体は設置していない。(従来の汚水浄化槽を想定。)
「条件2」
「条件1」の構造において、接触ばっ気槽のばっ気をしない。(接触ばっ気槽の水流が発生しないので、沈殿槽内が静置による理想状態を示す。)
「条件3」
連通口を、仕切壁の水平方向の中心に対して、底面から150mmの高さを中心として直径100mmの円形で開口させた。構造体として、内径100の塩ビパイプを100mmの長さで前記連通口に対して好気処理槽側に突出させて取り付けた。(本発明に基づく汚水浄化槽の第一実施形態に対応する。)
「条件4」
連通口として、仕切壁の水平方向の中心に対し、底面から150mmの高さを中心として直径100mmの円形で開口させた。構造体として、内径100mmの塩ビパイプを100mmの長さで前記連通口に対して沈殿槽側に突出させて取り付けた。(本発明に基づく汚水浄化槽の第二実施形態に対応する。)
上述の各試験槽に水を張り、好気処理槽と沈殿槽に対しばっ気による撹拌を開始し、沈殿槽の底部に水中ポンプを設置し、沈殿槽の槽内水を接触ばっ気槽の上部に移送できるようにした。各試験槽とも、水位は1050mmである。
下水処理場から採取した活性汚泥をSSで100mg/Lになるように各例の接触ばっ気槽と沈殿槽にそれぞれ投入し、接触ばっ気槽と沈殿槽のSS濃度が均一になったところで沈殿槽のばっ気撹拌と水中ポンプの電源を停止した。一時間後における沈殿槽のSSの垂直分布(槽中央)を測定した。
図5に示すように、「条件1」は従来の汚水浄化槽を想定した連通口の構造であるが、この構造では好気処理槽のばっ気水流が沈殿槽内に伝わってしまい、所定の沈殿分離機能が発揮されないことが分かる。
「条件2」は、理想的に静置状態が保たれた場合の沈殿分離機能が示されている。
「条件3」は、本発明に係る汚水浄化槽の実施例であり、沈殿槽の沈殿分離機能は「条件2」に及ばないものの、「条件1」よりは明らかに沈殿分離機能が発揮されており、好気処理槽のばっ気水流の影響を抑制できることが明らかとなった。
「条件4」は、「条件3」と同じ結果となり、第二実施形態の構造について第一実施形態の構造と同様の効果があると確認された。
Claims (5)
- 複数の槽に仕切壁で区切られる汚水浄化槽であって、区切られた槽のうち、好気処理槽と、該好気処理槽の下流に沈殿槽又は処理水槽が隣り合って構成される配列を含み、前記好気処理槽と沈殿槽又は処理水槽との仕切壁の底部に該底部より幅の小さい連通口が形成され、当該連通口の周囲に好気処理槽側へ向かって突き出し、前記好気処理槽のばっ気水流の流れを遮る構造体を有することを特徴とする汚水浄化槽。
- 複数の槽に仕切壁で区切られる汚水浄化槽であって、区切られた槽のうち、好気処理槽と、該好気処理槽の下流に沈殿槽又は処理水槽が隣り合って構成される配列を含み、前記好気処理槽と沈殿槽又は処理水槽との仕切壁の底部に該底部より幅の小さい連通口が形成され、当該連通口の周囲に沈殿槽側又は処理水槽側へ向かって突き出し、前記好気処理槽のばっ気水流の流れを遮る構造体を有することを特徴とする汚水浄化槽。
- 前記好気処理槽内に循環流としてのばっ気水流を発生させるばっ気水流発生手段が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の汚水浄化槽。
- 前記好気処理槽内に生成されるばっ気水流が前記連通口から離れた側で上昇流であり、前記連通口を形成した仕切壁の底部側で下降流であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の汚水浄化槽。
- 前記構造体が、前記連通口の開口部上縁側を覆う天井部を少なくとも有することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の汚水浄化槽。
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