本発明のポジ型感光性樹脂組成物によれば、(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(以下、「Fmoc基」とも称する)で保護されたポリイミド樹脂(以下、「(A)ポリイミド樹脂」とも称する)は、アルカリ可溶性基であるフェノール性水酸基がFmoc基で保護されているため、未露光部では、アルカリ溶解性が阻害される。一方、露光部は、光塩基発生剤から発生した塩基の存在下でポストベイクとしてある程度の加熱処理を施すことで、(A)ポリイミド樹脂のフェノール性水酸基が脱保護され、アルカリ溶解性が発現することを見出した。本発明においては、このような未露光部と露光部とのアルカリ溶解性の差異を利用して、フォトリソグラフィによるポジ型パターンの形成が可能となる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上記のとおり、光酸発生剤を含む必要がないことから、光酸発生剤を使用した場合に問題となる回路の腐食の発生を抑えることが可能となる。また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、ポジ型のパターンを形成できることから、開口部の形状が逆テーパーになり、半導体の層間絶縁材として好適に用いることができる。なお、逆テーパー形状とは、塗膜のパターンの断面において、深部(基板側)が表面よりも太くなった形状を言う。
さらに、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は閉環したイミドを含むことから、前駆体のイミド化反応を起こすために行う通常300℃を超える高温処理を要せず、高温耐性の無い部品への被覆にも好適に用いることができる。
尚、特許文献4の組成物でもフェノール性水酸基を有するポリイミドが用いられているが、光酸発生剤を分解させるなど、熱的安定性を向上させるために現像後に90~400℃まで徐々に温度を上げて加熱する必要があったり、加熱後もフェノール性水酸基が残存するため耐溶剤性の懸念があったりした。一方、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、そのような高温での加熱の必要はなく、また、フェノール性水酸基が保護されているため、耐薬品性(薬液耐性とも言う)等に優れた塗膜を得ることができる。
以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物が含有する成分について詳述する。
[(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたポリイミド樹脂]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)で保護されたポリイミド樹脂を含有する。(A)ポリイミド樹脂は特に限定されず、フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂のフェノール性水酸基がFmoc基で保護されていればよい。Fmoc基によるフェノール性水酸基の保護は、公知慣用の方法を用いればよく、例えばクロロギ酸フルオレニルメチル(Fmoc-Cl)とピリジンやトリエチルアミンなどの塩基存在下、Fmoc-Clを作用させることで Fmoc基で保護することができる。
(A)ポリイミド樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂の配合量は、溶剤を除く組成物の固形分全量基準で30~90質量%であることが好ましく、40~90質量%であることがより好ましい。
フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂は特に限定されないが、具体的な例としては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂が挙げられる。
(式中、R
1は少なくとも2個以上の炭素原子を有する有機基、R
2は少なくとも2個以上の炭素原子を有する有機基を示し、pおよびqはそれぞれ0から4までのいずれかの整数を示す。ただしp+q>0であり、水酸基が共有結合している相手方の炭素原子は、芳香環の一部をなしている炭素原子である。)
上記式(1)中に記載のOH基(水酸基)は、芳香環の一部をなしている炭素原子と共有結合していることから、フェノール性水酸基である。前記芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
上記式(1)中、R1は、4つのカルボニル基およびp個のOH基と結合できる有機基であれば特に限定されない。R2も同様に、2つのアミンおよびq個のOH基と結合できる有機基であれば特に限定されない。
R1が示す有機基は、pが0の場合は芳香環を有しなくてもよいが、pが1~3までのいずれかの整数の場合は芳香環を有する。R1が示す有機基の炭素原子数は好ましくは4~40、より好ましくは6~34である。
R1としては、例えば、芳香環を含む基、好ましくは炭素原子数6~34の芳香環を含む基が挙げられる。また、R1としては、多塩基酸の残基であることが好ましい。ここで、芳香環を含む基は、ベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ビスフェニル骨格等のベンゼン環を含む骨格を有する基であることが好ましい。前記芳香環を含む基の具体例としては下記の4価の基および下記の4価の基のいずれかの水素原子がOH基に置換された基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
R2が示す有機基は、qが0の場合は芳香環を有しなくてもよいが、qが1~3までのいずれかの整数の場合は芳香環を有する。R2が示す有機基の炭素原子数は好ましくは4~40、より好ましくは6~34である。
R2としては、例えば、芳香環を含む基、好ましくは炭素原子数6~34の芳香環を含む基が挙げられる。また、R2としては、フェノール性水酸基を有するジアミンの残基であることが好ましい。ここで、芳香環を含む基としては、ベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ビスフェニル骨格等のベンゼン環を含む骨格を有する基であることが好ましい。前記芳香環を含む基の具体例としては下記の2価の基および下記の2価の基のいずれかの水素原子がOH基に置換された基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(式中、Aは単結合、-CH
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-、-C(CH
3)
2-からなる群から選択される2価の基を表す。)
上記式(1)中、pは0~2であることが好ましい。qは0~2であることが好ましい。p+qは1~4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
(A)ポリイミド樹脂の好ましい重量平均分子量は、1000~100万であり、5000~10万であることが好ましく、1万~5万であることがより好ましい。
フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂を得る方法は、特に限定されない。通常は、多塩基酸またはその誘導体とジアミンを反応、重合することにより、好ましくはテトラカルボン酸またはその誘導体とジアミンを反応、重合することにより得られるポリイミド前駆体を閉環して得ること、特には、テトラカルボン酸二無水物(以下、酸無水物と略記する)とジアミンを反応、重合することにより得られるポリイミド前駆体を閉環して得ることが一般的である。
上記ジアミンとしては、例えば、式(1)中のqが1~3の場合は、フェノール性水酸基を有するジアミンを用いればよく、qが0の場合は、フェノール性水酸基を有しないジアミンを用いればよい。上記ジアミンは、1種類もしくは2種類以上混合して用いることができる。
フェノール性水酸基を有するジアミンは特に限定されないが、あえてその具体例を挙げれば、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、1,4-ジアミノ-2,5-ジヒドロキシベンゼン、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,5-ジアミノハイドロキノン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシ-5,5'-ジメチルビフェニル、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジヒドロキシ-5,5'-ジメトキシビフェニル、1,4-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノ-4-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-カルボキシ-5-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び、下記構造のジアミン等が好ましいが、それらに限定されるものではない。
フェノール性水酸基を有さないジアミンは特に限定されないが、あえてその具体例を挙げれば、4,4’-メチレン-ビス(2,6-エチルアニリン)、4,4'-メチレン-ビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)4,4'-メチレン-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、o-トリジン、m-トリジン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-トルイル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどを挙げることができる。(A)ポリイミド樹脂の溶解性の観点からは、4,4’-メチレン-ビス(2,6-エチルアニリン)、4,4’-メチレン-ビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が好ましいが、それらに限定されるものではない。また、(A)ポリイミド樹脂の密着性の点からはシロキサン含有ジアミンが好ましい。
前記テトラカルボン酸としては、例えば、4価の酸であるブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ヒドロキシピロメリット酸、ジヒドロキシベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリヒドロキシベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂の合成に適用可能なテトラカルボン酸二無水物の具体的な例としては、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシ-2-シクロペンタン酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-ノルボルナン酢酸二無水物の様な脂環式テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオンなどの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m-ターフェニル-3,3′,4,4′-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,3′,4,4′-テトラカルボン酸二無水物、および、下記構造のテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
前記テトラカルボン酸無水物のなかでも、溶解性の観点からは3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などが好ましい。
これら多塩基酸またはその誘導体とジアミンはそれぞれ1種類もしくは2種類以上混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンからフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂を合成するには、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどの極性溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させてポリイミド前駆体を合成し、脱水閉環する方法が一般的である。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応温度は-20~150℃、好ましくは-5~100℃の任意の温度を選択することができる。
また、ポリイミド前駆体をポリイミド樹脂に転化するには、ポリイミド前駆体を溶液状態のまま150~250℃で加熱すればよく、脱水閉環で生成した水を取り除くためトルエン、またはキシレンなどを添加し共沸脱水すること等も可能である。
また、ポリイミド前駆体をポリイミド樹脂に転化する更に簡便な方法として、触媒イミド化がある。
例えばポリイミド前駆体溶液にトリエチルアミン、ピリジン、イソキノリン、イミダゾール等の三級アミンを添加し、0~250℃の任意の温度でイミド化を行う方法や、ポリイミド前駆体溶液に酢酸などの酸を添加し、0~250℃の任意の温度でイミド化を行うことができる。
また、フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートとを反応して得てもよい。
[(B)光塩基発生剤]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(B)光塩基発生剤を含有する。ここで、光塩基発生剤とは、発生する塩基が潜在化されていて、電磁波の照射により塩基を発生する塩基発生剤である。光塩基発生剤を含有することによって、未露光部はFmoc基による溶解阻害効果でアルカリ溶液に不溶であり、露光部はFmoc基が脱離することでアルカリ溶液への可溶性が良好なものとなり、ポジ型パターンの形成が可能となる。
光塩基発生剤としては、イオン型光塩基発生剤でもよく、非イオン型光塩基発生剤でもよいが、イオン型光塩基発生剤の方が組成物の感度が高く、パターン膜の形成に有利になるので好ましい。塩基性物質としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、芳香族成分含有カルボン酸と3級アミンとの塩や、和光純薬社製イオン型PBGのWPBG-082、WPBG-167、WPBG-168、WPBG-266、WPBG-300等を用いることができる。
非イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。その他の光塩基発生剤として、和光純薬社製のWPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)、WPBG-165等を使用することもできる。
(B)光塩基発生剤の配合量は、(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたポリイミド樹脂100質量部に対し、10~40質量部が好ましい。10~40質量部であると、コントラストを得られやすくなる。
以下に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物に配合可能な他の成分を説明する。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物に用いることができる溶媒は、(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたポリイミド樹脂、(B)光塩基発生剤を溶解させるものであれば特に制限はない。一例としては、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、テトラヒドロフラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもかまわない。使用する溶媒の量は特に限定されないが、例えば、塗布膜厚や粘度に応じて、(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたポリイミド樹脂100質量部に対し、50~9000質量部の範囲で用いればよい。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、更に光感度を向上させるために増感剤を添加することもできる。増感剤としては、例えばミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン等が挙げられ、感度の点で、4-(1-メチルエチル)-9H-チオキサンテン-9-オンなどのチオキサントン類を用いることが好ましい。これらは単独でまたは2~5種類の組み合わせで用いることができる。増感剤は、(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたポリイミド樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部を用いるのが好ましい。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、塩基増殖剤を添加してもよい。厚膜のパターンを形成する時、表面から下まで同じ程度の光塩基発生剤の分解率が求められる。この場合、感度を向上するため、塩基増殖剤の添加が好ましい。例えば、特開2012-237776号公報、特開2006-282657号公報などに開示された塩基増殖剤の使用が可能である。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、カップリング剤を配合してもよい。カップリング剤を配合することによって、基材との接着性が向上する。カップリング剤は特に限定されず、例えばシランカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、アルコキシ基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、エポキシ基を有するシランカップリング剤、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤、アリールアミノ基を有するシランカップリング剤などが挙げられる。カップリング剤の市販品の例としては、例えば、信越シリコーン社製のKBMシリーズやKBEシリーズ等が挙げられる。カップリング剤の配合量は、(A)フェノール性水酸基が9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたポリイミド樹脂100質量部に対し、0.5~10質量部の範囲が好ましい。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、メラミン系化合物を配合してもよい。メラミン系化合物を配合することによって、耐薬品性が向上する。メラミン系化合物は特に限定されず、例えば、三和ケミカル社製のMWシリーズ等が挙げられる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、フィラーを配合してもよい。フィラーは特に限定されず、無機フィラーおよび有機フィラーのいずれであってもよい。フィラーとしては、例えば、シリカ、硫酸バリウム等の粉体や、ガラス繊維等の繊維状物質等が挙げられる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、着色剤を配合してもよい。着色剤は特に限定されず、赤、青、緑、黄、白、黒、茶、橙、紫等の公知慣用の着色剤を用いることができる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上記のとおり、光酸発生剤を配合せずともポジ型パターンを形成することが可能である。本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で光酸発生剤を含有してもよいが、回路の腐食を抑制する観点から、含有しても少量、もしくは、含有しないことが好ましく、溶剤を除く組成物の固形分全量基準で0~20質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、エポキシ化合物を含有してもよいが、例えば国際公開公報WO2016/052493に記載の感光性樹脂組成物のようにエポキシ化合物を含有する必要はない。エポキシ化合物を含有するとフェノール性水酸基と反応して、露光部の溶解性を阻害してしまうおそれがあるため、含有しても少量、もしくは、含有しないことが好ましく、溶剤を除く組成物の固形分全量基準で0~10質量%であることが好ましく、0~3質量%であることがより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。多孔質形状や中空構造を得るための具体的材料としては各種顔料、フィラー、および繊維等がある。
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)上に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムの形成は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された感光性樹脂組成物を、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10~150μm、好ましくは20~60μmの範囲で適宜選択される。
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
キャリアフィルム上に本発明のポジ型感光性樹脂組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、膜の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いたパターン塗膜の製造方法について説明する。
まず、ステップ1としてポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥することにより塗膜を得る。ポジ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、20~80℃で1分~1時間の条件で行うことができる。好ましくは、ホットプレート上で1~20分乾燥を行う。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で1分~1時間の条件で行うことができる。
基材に特に制限はなく、シリコンウエハ、配線基板、各種樹脂、金属、半導体装置のパッシベーション保護膜などに広く適用できる。
また、アルカリ可溶性樹脂としてポリイミド前駆体を用いた場合と異なり、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、塗布後にイミド化を行う必要はないことから、プリント配線板の基板等の高温処理に適さない部材、材料に広く適用可能であるのが特徴である。
次に、ステップ2として上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは、直接露光する。露光光線は、光塩基発生剤を活性化させ塩基を発生させることができる波長のものを用いる。上述したように、適宜増感剤を用いると、光感度を調製することができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
続いて、ステップ3として塗膜中のFmoc基で保護されたフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂のFmoc基を脱保護するように加熱する。加熱時間および加熱温度は、用いるポリイミド樹脂、光塩基発生剤の種類および塗布膜厚によって適宜変更する。典型的には、10μm程度の塗布膜厚の場合、120~300℃で30~60分程度である。
次いで、ステップ4として塗膜を現像液で処理する。これにより、基材上にパターン塗膜を形成することができる。
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択すること
ができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加水溶液として使用することができる。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独または組み合わせて用いることができる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、光学部材等、樹脂材料が用いられる公知の種々の分野・製品などが挙げられる。特にポリイミド膜の耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる広範な分野・製品、例えば、塗料または印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体素子の被覆膜、電子部品、層間絶縁膜、ソルダーレジストなどのプリント配線板の被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築材料の形成材料として好適に用いられる。
特に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料(レジスト)として用いられ、それによって形成されたパターン膜は、ポリイミドからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能し、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、受動部品用絶縁材料、半導体素子の被覆膜、層間絶縁膜、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の被覆膜等の電子部品用被覆膜、ソルダーダム、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材を形成するのに適している。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
<フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂R-1の合成>
ナスフラスコ中で、ジアミンである1.60部の2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下略称AHPP)、酸無水物である2.20部の3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(別名:4,4’-[p-スルホニルビス(フェニレンスルファニル)]ジフタル酸無水物(以下略称DPSDA)]および乾燥N-メチル-2-ピロリドン24部を加えて撹拌し、室温で24時間反応させた。フラスコ中にさらに乾燥トルエン3.7部を追加し、温度を180℃にして10時間反応させた。
反応液を室温まで冷却後、メタノール中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥して目的とするフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂2.1部を得た。
重量平均分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で10000、Mw/Mn=1.1であった。
得られた樹脂を重DMSOに溶解させて1H-NMR測定を行い、1.54ppmにメチル基由来の6水素分、6.8-8.6ppmに芳香環由来の12水素分、9.62ppmにフェノール性水酸基由来の2水素分のシグナルが観測され、目的とする構造であることを確認した。
<イミド化率の確認>
前記で得られた樹脂0.05部をTHF0.4部に溶解させ、シリコン基板上にスピンコート法で塗布し60℃で乾燥させた薄膜と、参照用に完全にイミド化を進行させるために300℃で1時間加熱した薄膜を調整した。
FT-IR測定にて、SO2由来のピーク(1325cm-1)強度とイミドC-N由来のピーク(1380cm-1)強度を比較することでイミド化の程度を確認した結果、60℃で乾燥させた段階で95%以上イミド化していた。
また、得られた薄膜を2.5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に30秒浸したところ完全に溶解したことから、得られた樹脂は、下記の構造単位を有する、フェノール性水酸基を有する閉環ポリイミド樹脂R-1であった。
<フェノール性水酸基がFmoc基で保護されたポリイミド樹脂(A)の合成>
ナスフラスコ中で、フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂であるR-1を1.9部とクロロギ酸9-フルオレニルメチル3.7部および乾燥THF60部とピリジン1.2部を加えて撹拌し、室温で24時間反応させた。
別途ビーカーにイオン交換水520gを準備し、メタノール希釈した反応液を、よく撹拌している交換水中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥して目的とする、下記の構造単位を有するポリイミド樹脂(A)1.9部を得た。 重量平均分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で16000、Mw/Mn=3.5であった。
<フェノール性水酸基がアセタール基で保護されたポリイミド樹脂R-2の合成>
ナスフラスコ中で、フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂であるR-1を1.9部とシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル3.7部および乾燥THF60部とピリジン1.2部を加えて撹拌し、室温で24時間反応させた。
別途ビーカーにイオン交換水520gを準備し、メタノール希釈した反応液を、よく撹拌している交換水中に滴下することでポリマーを沈殿させ、これをろ過、乾燥して目的とするポリイミド樹脂R-2を1.9部得た。 重量平均分子量をGPCで測定したところ、ポリスチレン換算で15000、Mw/Mn=3.2であった。
(実施例1、2、比較例1~4)
下記表1に記載の配合比(質量比)で、フェノール性水酸基がFmoc基で保護されたポリイミド樹脂(A)、ポリイミド樹脂R-1、R-2、イオン型の光塩基発生剤(B)-1、共有結合型の光塩基発生剤(B)-2およびテトラヒドロフランを配合した後、実施例および比較例の各組成物の性能を評価した。光塩基発生剤は、イオン型(B)-1:和光純薬社製のグアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸塩(和光純薬社製WPBG-082)と、共有結合型(B)-2:(E)-1-ピペリジノ-3-(2-ヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オン(和光純薬社製WPBG-027))を使用した。
(現像コントラスト)
上記各組成物を疎水化処理済みのシリコンウエハ上にスピンコートし、60℃で3分間乾燥させて膜を得た。得られた乾燥膜に、365nm波長のLED光源(照度50mW/cm
2)を用いて、40000mJ/cm
2の光を照射した。照射後の膜を、ホットプレート上にて表中に記載の所定の温度で30分間の熱処理を行い、5.0重量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像する際の、現像時間毎の未露光部と露光部の膜の残存量を測定し下記式により現像コントラスト値を算出した
現像コントラスト値が5以上を◎、2.6以上5未満を○、1.5以上2.6未満を△、1.5未満を×と定義した。
(薬液耐性)
上記各組成物をシリコンウエハ上に乾燥後の膜厚2μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で5分間乾燥させたのち、180℃で1時間加熱して膜を得た。得られた膜を2.38重量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に40秒浸漬し、膜厚の変化が初期膜厚から変化無しもしくは減少量が5%未満であったものを◎、減少量が5%以上20%未満のものを○、減少率が20%以上80%未満のものを△、80%以上減少したものを×とした。
(B-HAST試験)
上記各組成物をライン/スペース=6/6μmの櫛歯電極上に塗布して乾燥させた後、温度130℃、湿度85%の条件に設定したHIRAYAMA製HASTEST MODEL PC-R8Dに櫛歯基板を入れ、電圧5.5Vを印加させたB-HAST試験において、100時間経過後も絶縁抵抗値を観察した。抵抗値が108以上のものを◎、106以上108未満のものを△、106未満のものを×とした。
表1に示す結果から、本発明のポジ型感光性樹脂組成物によれば、光酸発生剤を使用せずとも、現像コントラストが良好なポジ型パター塗膜を形成可能であることがわかる。