[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
(1)本発明の一態様に係る統計処理システムは、二次電池の等価回路モデルのパラメータを推定して統計処理装置に送信するパラメータ推定装置と、該パラメータ推定装置から受信したパラメータを統計処理して前記パラメータ推定装置に送信する統計処理装置とを含む統計処理システムであって、前記パラメータ推定装置は、前記二次電池の電圧を時系列的に取得する電圧取得部と、前記二次電池の充放電電流を時系列的に取得する電流取得部と、前記電圧取得部で取得した電圧及び前記電流取得部で取得した充放電電流に基づいて前記パラメータを推定する推定部と、該推定部で推定したパラメータに付随する付随情報を取得する情報取得部と、前記推定部で推定したパラメータを前記情報取得部で取得した付随情報に対応付けて前記統計処理装置に送信する第1送信部と、付随情報に対応付けられたパラメータを前記統計処理から受信する第1受信部とを備え、前記統計処理装置は、付随情報に対応付けられたパラメータを前記パラメータ推定装置から受信する第2受信部と、該第2受信部で受信したパラメータを統計処理する処理部と、該処理部で統計処理したパラメータを付随情報に対応付けて前記パラメータ推定装置に送信する第2送信部とを備える。
本態様にあっては、パラメータ推定装置が、二次電池の電圧及び充放電電流に基づいて推定した二次電池のパラメータを付随情報に対応付けて統計処理装置に送信し、統計処理されて付随情報に対応付けられたパラメータを統計処理装置から受信する。一方の統計処理装置は、付随情報に対応付けられたパラメータの推定値をパラメータ推定装置から受信して統計処理し、統計処理したパラメータを付随情報に対応付けてパラメータ推定装置に送信する。これにより、パラメータ推定装置は、推定したパラメータ及び付随情報を適時統計処理装置に送ることにより、付随情報に応じて統計処理されたパラメータを統計処理装置から取得できる。
(2)前記付随情報は、前記二次電池の充電率及び温度の少なくとも一方を含むことが好ましい。
本態様によれば、二次電池の充電率及び/又は温度に対応付けられたパラメータの推定値を統計処理装置で統計処理することにより、充電率及び/又は温度に応じて確からしいパラメータが算出される。
(3)前記処理部は、所定時間毎に統計処理することが好ましい。
本態様によれば、統計処理の間隔である所定時間を適当に長くして母集団を適当に大きくすることにより、統計処理装置で統計処理したパラメータの確からしさが向上する。
(4)前記処理部は、前記第2受信部で受信したパラメータの数が所定数以上の場合に統計処理することが好ましい。
本態様によれば、標本であるパラメータの推定値の数が所定数以上の場合に統計処理装置で統計処理するため、母集団が適当に大きくなって、統計処理したパラメータの確からしさが向上する。
(5)前記付随情報は、複数の範囲の何れかに属しており、前記処理部は、前記複数の範囲の夫々に属する付随情報に対応付けられたパラメータを統計処理することが好ましい。
本態様によれば、付随情報が属する範囲の夫々についてパラメータの推定値を統計処理するため、付随情報の範囲毎に確からしいパラメータが算出される。
(6)前記処理部は、統計処理するパラメータについて、平均値及び標準偏差を算出し、算出した標準偏差が所定の偏差より小さい場合、算出した平均値を統計処理の処理結果とすることが好ましい。
本態様によれば、付随情報に係る複数の範囲の夫々について統計処理するパラメータの推定値の標準偏差が所定の偏差より小さい場合に、パラメータの推定値の平均値を統計処理したパラメータとするため、ばらつきが比較的大きいパラメータの推定値を統計処理の対象から外すことができる。
(7)前記複数の範囲中の1つ以上の範囲について前記処理部で統計処理したパラメータが存在しない場合、前記処理部で統計処理したパラメータに基づいて前記1つ以上の範囲に対応するパラメータを補完する補完部を更に備え、前記処理部は、前記補完部が補完したパラメータを統計処理の処理結果とすることが好ましい。
本態様によれば、付随情報に係る全範囲中の1つ以上の範囲について統計処理したパラメータが存在しない場合、他の範囲について統計処理したパラメータに基づいて補完したパラメータを、上記1つ以上の範囲について統計処理したパラメータとする。これにより、付随情報に係る全範囲について統計処理されたパラメータ又は補完されたパラメータが統計処理装置からパラメータ推定装置に送信される。
(8)前記第2送信部で送信したパラメータを記憶する記憶部を更に備え、前記処理部は、統計処理したパラメータと、前記記憶部に記憶したパラメータとの差分が所定の差分より大きい場合、前記記憶部に記憶したパラメータを統計処理の処理結果とすることが好ましい。
本態様によれば、付随情報に係る複数の範囲の夫々について統計処理装置で統計処理したパラメータと、パラメータ推定装置に前回送信したパラメータとの差分が所定の差分より大きい場合、前回送信したパラメータを統計処理したパラメータとする。これにより、統計処理したパラメータの内、統計的外れ値が除外される。
(9)前記第2送信部は、前記処理部で統計処理したパラメータと、前記記憶部に記憶したパラメータとの差分の最大値又は平均値が所定値より大きい場合、前記処理部で統計処理したパラメータの全てを送信することが好ましい。
本態様によれば、付随情報に係る複数の範囲の夫々について統計処理装置で統計処理したパラメータと、パラメータ推定装置に前回送信したパラメータとの差分の最大値又は平均値が所定値より大きい場合、統計処理装置で統計処理したパラメータを一括送信する。これにより、パラメータに有意な変化が生じた場合に統計処理装置からパラメータ推定装置に全パラメータが送信される。
(10)前記第2送信部は、前記処理部で統計処理したパラメータの全てを所定期間毎に送信することが好ましい。
本態様によれば、統計処理装置で統計処理したパラメータを所定期間毎に一括送信する。これにより、パラメータに有意な変化が生じた蓋然性が高い場合に統計処理装置からパラメータ推定装置に全パラメータが送信される。
(11)前記等価回路モデルは、抵抗及びコンデンサの組み合わせによって表されることが好ましい。
本態様によれば、二次電池の等価回路モデルは抵抗及びコンデンサの組み合わせによって表されるものであり、例えばフォスタ型RC等価回路やカウエル型RC梯子回路等が適用される。
(12)前記推定部は、逐次最小二乗法により前記パラメータを推定することが好ましい。
本態様によれば、二次電池の電圧及び充放電電流の関係を表す関係式に対し、時系列的に取得した電圧及び充放電電流を逐次適用して最小二乗法を用いることにより、上記関係式の係数を決定し、決定した係数に基づいてパラメータを推定する。これにより、二次電池のパラメータが時系列的に推定される。
(13)前記推定部は、カルマンフィルタを用いて前記パラメータを推定することが好ましい。
本態様によれば、二次電池の等価回路モデルの状態ベクトルと、二次電池の観測ベクトルとを時系列的に比較して等価回路モデルを逐次修正することにより、等価回路モデルのパラメータが時系列的に推定される。
(14)本発明の一態様に係るパラメータ推定装置は、二次電池の電圧を時系列的に取得する電圧取得部と、前記二次電池の充放電電流を時系列的に取得する電流取得部と、前記電圧取得部で取得した電圧及び前記電流取得部で取得した充放電電流に基づいて前記二次電池の等価回路モデルのパラメータを推定する推定部と、該推定部で推定したパラメータに付随する付随情報を取得する情報取得部と、前記推定部で推定したパラメータを前記情報取得部で取得した付随情報に対応付けて送信する送信部と、統計処理されて付随情報に対応付けられたパラメータを受信する受信部とを備える。
本態様にあっては、パラメータ推定装置が、二次電池の電圧及び充放電電流に基づいて推定した二次電池のパラメータを付随情報に対応付けて外部に送信し、統計処理されて付随情報に対応付けられたパラメータを外部から受信する。これにより、パラメータ推定装置は、推定したパラメータ及び付随情報を適時外部に送ることにより、付随情報に応じて統計処理されたパラメータを外部から取得できる。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係る統計処理システムを、二次電池ユニットの状態を監視する電池監視装置を含む電池情報管理システムに適用した具体例について詳述する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
(実施形態)
図1は、電池情報管理システム1に含まれる電池監視装置100(パラメータ推定装置に相当)が搭載された車両の要部構成例を示すブロック図である。電池情報管理システム1は、電池監視装置100(パラメータ推定装置に相当)と、該電池監視装置100と無線送受信装置11を介して通信可能に接続された電池情報管理センタ200(統計処理装置に相当)とを含む。車両は、電池監視装置100の他に、二次電池ユニット50、リレー12、インバータ13、モータ14、DC/DCコンバータ15、電池16、電気負荷17及び始動スイッチ18を備える。
リレー12は、二次電池ユニット50の正極側とインバータ13の入力側及びDC/DCコンバータ15の入力側との間に接続されている。インバータ13の出力側は、モータ14の一端に接続されている。DC/DCコンバータ15の出力側は、電池16の正極側、電気負荷17の一端及び始動スイッチ18の一端に接続されている。二次電池ユニット50の負極側、モータ14の他端、電池16の負極側、及び電気負荷17の他端は、共通電位に接続されている。
リレー12のオン/オフは、不図示のリレー制御部が行う。インバータ13は、不図示の車両コントローラからの指令により、リレー12がオンである間にモータ14への通電制御を行う。
電池16は、例えば12Vの鉛蓄電池であり、電気負荷17への電力供給を行なうと共に、リレー12がオンである間に二次電池ユニット50から電力が供給されるDC/DCコンバータ15によって充電される。電池16は、電圧が12Vに限定されたり、電池の種類が鉛蓄電池に限定されたりするものではない。
二次電池ユニット50は、例えばリチウムイオン電池である複数のセル51が直列又は直並列に接続されて筐体内に収容されている。二次電池ユニット50は、更に、筐体内に電圧センサ52、電流センサ53及び温度センサ54を有する。
電圧センサ52は、各セル51の電圧及び二次電池ユニット50の両端間の電圧を検出し、検出した電圧を電圧検出線50aを介して電池監視装置100へ出力する。電流センサ53は、例えばシャント抵抗又はホールセンサで構成されており、二次電池ユニット50の充電電流及び放電電流(以下、充放電電流と言う)を検出し、検出した充放電電流を電流検出線50bを介して電池監視装置100へ出力する。温度センサ54は、例えばサーミスタで構成されており、複数のセル51の内の何れか1箇所以上の表面温度を検出し、検出した温度を温度検出線50cを介して電池監視装置100へ出力する。
図2は、電池監視装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。電池監視装置100は、CPU(Central Processing Unit)を含む制御部101が装置全体を制御する。制御部101には、時間を計時するタイマ109と、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically EPROM:登録商標)等の不揮発性メモリ、及びDRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)等の書き換え可能なメモリを用いた記憶部110とが接続されている。
制御部101には、また、電圧センサ52で検出された電圧を取得する電圧取得部102と、電流センサ53で検出された電流を取得する電流取得部103と、温度センサ54で検出された温度を取得する温度取得部104と、各セル51の充電率及び電圧のバランスを調整するセルバランス調整部108と、無線送受信装置11に通信接続するための通信部111とが接続されている。電圧取得部102、電流取得部103、温度取得部104、セルバランス調整部108及び通信部111の機能は、制御部101がハードウェアを用いて実行するソフトウェア処理によって実現される。これらの機能の一部又は全部が、マイクロコンピュータを含む集積回路によって実現されてもよい。なお、制御部101が制御する電圧及び電流の取得頻度は、例えば10msであるが、これに限定されるものではない。温度は適時取得される。
制御部101が実行するソフトウェア処理によって実現される機能には、内部パラメータ推定部105、電流積算部106及び充電率算出部107が更に含まれる。制御部101が実行すべきソフトウェア(プログラム)は、予め記憶部110の不揮発性メモリに記憶されている。制御部101が実行するソフトウェア処理により発生した情報は、記憶部110の書き換え可能なメモリに一時的に記憶される。制御部101による各ソフトウェア処理の手順を定めたコンピュータプログラムを、不図示の手段を用いて予め記憶部110にロードし、制御部101がコンピュータプログラムを実行するようにしてもよい。
内部パラメータ推定部105は、二次電池ユニット50の等価回路モデルを表す抵抗及びコンデンサの値(以下、これらの抵抗及びコンデンサの値を内部パラメータ又は単にパラメータと言う)を推定する。これらの内部パラメータは、二次電池ユニット50の充電率(SOC:State Of Charge)、温度、劣化度等によって変化するものであり、二次電池ユニット50の電圧及び充放電電流を観測することによって逐次推定することができる。内部パラメータ推定部105で推定されたパラメータは、該パラメータに付随する付随情報に対応付けられて、通信部111及び無線送受信装置11を介して電池情報管理センタ200に送信される。
電流積算部106は、電流取得部103で取得した充放電電流を積算する。電流の積算値は、電流を時間で積分したものであり、充電量の変化分に相当する。積算を開始するタイミングは、二次電池ユニット50又は電池監視装置100自体の起動タイミングであり、電流積算部106は、継続的に積算値を算出する。なお所定のタイミングで積算値をリセットするようにしてもよい。
充電率算出部107は、電流積算部106により算出された積算値と、二次電池ユニット50の満充電容量(FCC:Full Charge Capacity)とに基づいて現時点の充電率を算出する。充電率は、満充電容量に対する充電量の比率として表される。充電率の初期値をSOCinとした場合、現時点の充電率は、SOCinが算出されたときから現時点までの間に電流積算部106が算出した積算値を充電率に換算した値を、SOCinに加算して算出される。
図3は、電池情報管理センタ200の機能構成の一例を示すブロック図である。電池情報管理センタ200は、CPUを含む制御部201が装置全体を制御する。制御部201には、無線送受信装置11との間で無線通信を行う無線送受信部204と、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性メモリ、及びDRAM、SRAM等の書き換え可能なメモリを用いた記憶部110とが接続されている。無線送受信部204は、無線送受信装置11を介して電池監視装置100から付随情報に対応付けられたパラメータを受信する。
制御部201が実行するソフトウェア処理によって実現される機能には、パラメータ仕分け部202及びパラメータ統計処理部203が更に含まれる。制御部201が実行すべきソフトウェア(プログラム)は、予め記憶部205の不揮発性メモリに記憶されている。制御部201が実行するソフトウェア処理により発生した情報は、記憶部205の書き換え可能なメモリに一時的に記憶される。制御部201による各ソフトウェア処理の手順を定めたコンピュータプログラムを、不図示の手段を用いて予め記憶部205にロードし、制御部201がコンピュータプログラムを実行するようにしてもよい。
パラメータ仕分け部202は、無線送受信部204で受信したパラメータを、該パラメータが対応付けられた付随情報に応じて仕分けする。付随情報は複数の範囲の何れかに属しており、これら複数の範囲の夫々に属する付随情報に対応付けられたパラメータは、夫々の範囲に仕分けされて記憶部205に記憶される。
パラメータ統計処理部203は、パラメータ仕分け部202で仕分けした範囲の夫々について、記憶部205に記憶されたパラメータを統計処理する。各範囲に仕分けされたパラメータは統計的にばらついており、ここでの統計処理によって、付随情報の範囲毎に確からしいパラメータが算出される。
次に、二次電池の等価回路モデルについて説明する。図4は、抵抗及びコンデンサの組み合わせによって表される二次電池の等価回路モデルを示す説明図である。図4Aは、本実施形態に係る二次電池ユニット50の等価回路モデルである。この等価回路モデルは、OCVを起電力とする電圧源に、抵抗Raと、抵抗Rb及びコンデンサCbの並列回路とを直列に接続した回路によって表される。抵抗Raは、電解液抵抗に対応する。抵抗Rbは電荷移動抵抗に対応し、コンデンサCbは電気二重層容量に対応する。抵抗Raに電荷移動抵抗を含めることとし、抵抗Rbが拡散抵抗に対応することにしてもよい。
二次電池の等価回路モデルは、図4Aに示すものに限定されない。例えば、図4Bに示すように、抵抗R0に抵抗Rj及びコンデンサCj(j=1,2,…,n)の並列回路をn個直列接続した、無限級数の和による近似で表されるn次(nは自然数)のフォスタ型RC梯子回路であってもよいし、図4Cに示すように、一端同士が接続されたn個の抵抗Rj(j=1,2,…,n)夫々の他端が、直列接続されたn個のコンデンサCjの間に接続されたn次のカウエル型RC梯子回路であってもよい。
上述した電池監視装置100は、始動スイッチ18がオンされている場合、又は停車中に充電が行われている場合、通常モードで動作しており、例えば10ms毎に二次電池ユニット50の電圧及び充放電電流を取得すると共に、二次電池ユニット50の温度を適時取得する。一方、始動スイッチ18がオンされていない場合、且つ停車中に充電が行われていない場合、電池監視装置100は低消費電力モードで動作しており、一定時間毎に起動して、通常モードの場合と同様に二次電池ユニット50の電圧、充放電電流及び温度を取得する。
電池監視装置100は、取得した電圧、充放電電流及び温度に基づいて、等価回路モデルのパラメータを推定すると共に、充電率を算出する。充電率の初期値SOCinが求められていない場合は、始動スイッチ18がオンされた直後に取得した電圧、又は始動スイッチ18がオンされておらず充電も行われていないときに取得した電圧を開放電圧(OCV)としてSOCinを算出すればよい。具体的には、二次電池ユニット50に固有のOCV-SOC特性を記憶した変換テーブルを参照して、取得した電圧に対応するSOCをSOCinとする。なお、不図示の充電器による充電が完了して二次電池ユニット50が満充電の状態にあるときは、SOCin=100%としてもよい。
次に、内部パラメータ推定部105にて等価回路モデルのパラメータを推定する方法について説明する。図4Aに示す等価回路モデルのパラメータについて、以下の近似式(1)~(4)が成立することが知られている(詳細については、「バッテリマネジメント工学」足立修一他著、東京電気大学出版、6.2.2章参照)。
uL(k)=b0・i(k)+b1・i(k-1)-a1・uL(k-1)
+(1+a1)・OCV・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
b0=Ra・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
b1=TsRa/(RbCb)+Ts/Cb-Ra・・・・・・・・・・・・・・(3)
a1=Ts/(RbCb)-1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
但し、
uL:取得した電圧
i:取得した充放電電流
Ts:取得する周期
上記の式(2)~(4)から、パラメータであるRa、RbおよびCbを逆算すると、以下の式(5)~(7)が成立する。
Ra=b0・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
Rb=(b1-a1b0)/(1+a1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
Cb=Ts/(b1-a1b0)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
本実施形態では、逐次最小二乗法を式(1)に適用して係数b0、b1及びa1を決定し、決定した係数を式(5)~(7)に代入してパラメータRa、RbおよびCbを推定する。なお、各パラメータを一通り推定する間は、OCVが一定であるものとしている。温度取得部104で取得した温度に応じて、推定したパラメータを補正してもよい。
パラメータRa、RbおよびCbは、カルマンフィルタを用いて算出することも可能である。具体的には、二次電池ユニット50に、端子電圧及び充放電電流で表される入力信号を与えた場合の観測ベクトルと、二次電池ユニット50の等価回路モデルに上記と同じ入力信号を与えた場合の状態ベクトルとを比較し、これらの誤差にカルマンゲインを掛けて等価回路モデルにフィードバックすることにより、両ベクトルの誤差が最小となるように等価回路モデルの修正を繰り返す。これにより、パラメータが推定される。
次に、電流積算部106及び充電率算出部107によって充電率を逐次算出する方法について説明する。電流積算部106は、電流取得部103で取得した充放電電流iを積算することにより、充電量の変化分を算出する。電流取得部103による電流の取得周期をΔt(例えば10ミリ秒)とし、周期的に取得される電流値をIbi(i=1,2,…)とした場合、充電量の変化分はΣIbi×Δt(i=1,2,)で算出される。
充電率算出部107は、例えば電圧取得部102で取得した電圧と、OCV-SOC特性を記憶した変換テーブルとに基づいて、初期SOCを算出し、SOCinとして記憶している。一方、充電率算出部107は、電流積算部106が算出した充電量の変化分を満充電容量FCCで除算することによって充電率の変化分を逐次算出している。出力されるSOCoは、以下の式(8)のとおり、記憶されているSOCinに充電率の変化分を加算することによって算出される。式(8)の{}内は、充電率の変化量に相当する。
SOCo=SOCin±{ΣIbi×Δt(i=1,2,…,m)/FCC}・・(8)
但し、
符号±:+(プラス)及び-(マイナス)夫々は充電時及び放電時に対応
数値m:SOCinを求めたときから現時点までの充放電電流の積算回数
上述の式(5)から(7)により推定したパラメータは、OCVに依存(即ち充電率:SOCに依存)するのみならず、温度によっても変化する。図5は、充電率と抵抗のパラメータRa(又はRb)との対応を示すグラフであり、図6は、充電率と容量のパラメータCbとの対応を示すグラフである。図5では、横軸が充電率を表し、縦軸は抵抗を表す。図6では、横軸が充電率を表し、縦軸が容量を表す。図5及び図6より、例えば-20℃~60℃の範囲内で、温度の違いによってパラメータRa(又はRb)及びパラメータCbが大幅に変動することが分かる。
式(5)から(7)により推定したパラメータは、更に、推定の都度ばらつきが生じるが、複数回にわたって推定したパラメータを統計処理することにより、パラメータの確からしさを向上させることができる。但し、上述のとおりパラメータの値が充電率及び温度に依存するため、統計処理するパラメータは、該パラメータが算出されたときに取得された充電率及び温度に対応付けられている必要がある。このような統計処理を電池監視装置100で実行するには、制御部101に高い処理能力が要求され、記憶部110の容量増加が不可欠となる。
そこで、本実施形態では、電池監視装置100は、電池情報管理センタ200に統計処理を委ね、電池情報管理センタ200で統計処理された確からしいパラメータを取得して利用することにより、パラメータに基づく処理の結果の信頼性を高めるようにする。具体的には、電池監視装置100は、内部パラメータ推定部105でパラメータを推定する都度又は推定する周期より長い周期で、推定したパラメータを、充電率算出部107で算出した充電率(情報取得部で取得した情報に相当)、及び温度取得部104(情報取得部に相当)で取得した温度に対応付けて電池情報管理センタ200に送信する。その後、電池監視装置100は、統計処理されて充電率及び温度に対応付けられたパラメータを電池情報管理センタ200から受信する。
電池監視装置100からパラメータと共に送信される充電率及び温度は、取得の都度変化するものであるが、電池情報管理センタ200におけるパラメータの統計処理は、例えば充電率及び温度に係る複数の範囲の夫々について行うことが好ましい。このため、パラメータ仕分け部202は、無線送受信部204で受信したパラメータを、該パラメータが対応付けられた充電率及び温度夫々が属する範囲に仕分けして記憶部205に記憶する。記憶部205に仕分けして記憶されたパラメータは、パラメータ統計処理部203によって、所定時間毎に、又は仕分けされたパラメータ数が所定数以上の場合に、充電率及び温度に係る複数の範囲の夫々について統計処理され、これら複数の範囲毎に確からしいパラメータが算出される。
図7は、充電率及び温度に係る複数の範囲毎に統計処理されたパラメータの一覧を示す図表である。図7に示す図表は、充電率に係る5つの範囲に対応する5行と、温度に係る6つの範囲に対応する6列のマトリックスで表される。例えば、1~0.8の充電率に対応付けられ、-20℃以下,-20℃~0℃,0℃~20℃,20℃~40℃,40℃~60℃,60℃以上の各温度に対応付けられたパラメータが統計処理された場合、確からしいパラメータとしてA1,A2,A3,A4,A5,A6が算出される。同様に、0.8~0.6、0.6~0.4、0.4~0.2及び0.2~0の充電率に夫々対応付けられ、上記の各温度に対応付けられたパラメータが統計処理された場合、確からしいパラメータとしてB1,B2,B3,B4,B5,B6、C1,C2,C3,C4,C5,C6、D1,D2,D3,D4,D5,D6、及びE1,E2,E3,E4,E5,E6が算出される。
パラメータ統計処理部203は、図7に示す各行及び各列の夫々に対応する範囲について記憶されたパラメータの標準偏差が所定の偏差より小さい場合に統計処理することが好ましい。このときの標準偏差が所定の偏差以上の場合、又は記憶されたパラメータが存在しない場合、図7に示すパラメータの一部が算出されないこととなる。
図8は、充電率及び温度に係る複数の範囲毎に統計処理されたパラメータに欠損がある場合を例示した図表である。図8の各行に対応する充電率の範囲と、各列に対応する温度の範囲とは、図7に示すものと同一である。図8では、1~0.8の充電率及び-20℃以下,-20℃~0℃,60℃以上の温度に対応付けられるパラメータA1,A2,A6が欠損している。また、0.2~0の充電率に対応付けられるパラメータE1,E2,E3,E4,E5,E6の全てが欠損している。更に、60℃以上の温度に対応付けられるパラメータA6,B6,C6,D6,E6の全てが欠損している。
図8に示すようなパラメータの欠損があった場合、制御部201は、先ず同じ充電率の範囲内で欠損しているパラメータを他のパラメータから補完する。この場合の補完は、例えば直線近似でもよいし、二次曲線、三次曲線等の適当な近似曲線で近似するものであってもよい。具体的に図8の場合は、パラメータA3,A4,A5からパラメータA1,A2,A6が補完される。同様に、パラメータB1,B2,B3,B4,B5からパラメータB6が補完され、パラメータC1,C2,C3,C4,C5からパラメータC6が補完され、パラメータD1,D2,D3,D4,D5からパラメータD6が補完される。
一方、同じ充電率の範囲内で全てのパラメータが欠損している場合、制御部201は、同じ温度の範囲内で欠損しているパラメータを他のパラメータから補完する。具体的に図8の場合は、パラメータA1,B1,C1,D1からパラメータE1が補完され、パラメータA2,B2,C2,D2からパラメータE2が補完され、パラメータA3,B3,C3,D3からパラメータE3が補完される。更に、パラメータA4,B4,C4,D4からパラメータE4が補完され、上記で補完されたパラメータA6,B6,C6,D6からパラメータE6が更に補完される。
上述のとおり統計処理又は補完されたパラメータに対し、制御部201は、いわゆるアウトライア(外れ値)を除去する処理を行うことが好ましい。具体的には、制御部201は、電池監視装置100に前回送信したパラメータを記憶部205に記憶しており、新たに統計処理又は補完したパラメータと、記憶したパラメータとの差分が所定の差分より大きい場合、記憶したパラメータを統計処理したパラメータとする。即ち、統計処理したパラメータを記憶したパラメータによって置き換える。
充電率及び温度に係る範囲の全てについてパラメータの外れ値を除去した後、制御部201は、新たに統計処理したパラメータと、前回送信して記憶部205に記憶したパラメータとの差分の最大値又は平均値を算出し、算出結果が所定値より大きい場合に、新たに統計処理したパラメータの全てを電池監視装置100に送信することが好ましい。制御部201は、新たに統計処理したパラメータの全てを所定期間毎に電池監視装置100に送信するようにしてもよい。
以下では、上述した電池監視装置100及び電池情報管理センタ200の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。先ず、電池監視装置100の動作について説明する。図9は、パラメータを推定して送信する制御部101の処理手順を示すフローチャートであり、図10は、統計処理されたパラメータを受信して記憶する制御部101の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、例えば10ms毎に起動されて周期的に実行される。各ステップにおける取得結果及び算出結果は、適宜記憶部110に記憶される。図10に示す処理は、適時繰り返し起動される。図9では、端子電圧を単に電圧と言う。以下のフローチャートでは、二次電池ユニット50の充電率及び温度の夫々をSOC及びTとも表記する。
図9の処理が起動された場合、制御部101は、電圧取得部102によって二次電池ユニット50の電圧uL(k)を取得する(S11)と共に、電流取得部103によって充放電電流i(k)を取得する(S12)。次いで、制御部101は、逐次最小二乗法を用いて、式(1)~(7)によりパラメータRa(k),Rb(k),Cb(k)を推定し(S13:推定部に相当)、パラメータの推定値をRa(k-1),Rb(k-1),Cb(k-1)からRa(k),Rb(k),Cb(k)に更新する(S14)。
その後、制御部101は、m=1とおいた式(8)により、充放電電流を積算して充電率(SOC)を算出し(S15)、前回のパラメータの送信から所定の時間が経過したか否かを判定する(S16)。ここでの所定の時間は、例えば1分程度の時間である。所定の時間が経過していない場合(S16:NO)、制御部101は、パラメータを送信せずに図9の処理を終了する。なお、制御部101の初期化の際に、推定したパラメータの送信間隔を計時するタイマがスタートされるものとする。
前回のパラメータの送信から所定の時間が経過した場合(S16:YES)、制御部101は、送信間隔を計時するタイマを再スタートさせて(S17)送信間隔の計時を再開した後、温度取得部104によって二次電池ユニット50の温度(T)を取得する(S18)。次いで、制御部101は、ステップS14で更新したパラメータRa(k),Rb(k),Cb(k)を、ステップS15で算出(広義の取得に相当)した充電率(SOC)及びステップS18で取得した温度(T)に対応付けて電池情報管理センタ200に送信し(S19:第1送信部及び送信部に相当)、図9の処理を終了する。
なお、図9の処理では、推定したパラメータを所定の時間毎に電池情報管理センタ200に送信したが、これに限定されるものではない。推定したパラメータについて、外れ値(アウトライア)を除去しておき、外れ値を除去したパラメータを適当な時間毎に電池情報管理センタ200に送信することが好ましい。
一方、図10の処理が起動された場合、制御部101は、通信部111によって電池情報管理センタ200から統計処理されたパラメータを受信したか否かを判定し(S21:第1受信部及び受信部に相当)、受信しない場合(S21:NO)、受信するまで待機する。統計処理されたパラメータを受信した場合(S21:YES)、パラメータと共に受信した充電率(SOC)及び温度(T)の範囲にパラメータを対応付けて記憶部110に記憶し(S22)、図10の処理を終了する。ここで記憶部110に記憶されたパラメータは、確からしいパラメータであり、電池監視装置100における様々な処理で用いられる。
続いて、電池情報管理センタ200の動作について説明する。図11は、推定されたパラメータを受信して記憶する制御部201の処理手順を示すフローチャートであり、図12は、記憶されたパラメータを統計処理して送信する制御部201の処理手順を示すメインルーチンのフローチャートである。また、図13は、統計処理のサブルーチンに係る制御部201の処理手順を示すフローチャートであり、図14は、欠損部補完のサブルーチンに係る制御部201の処理手順を示すフローチャートである。そして、図15は、外れ値除去のサブルーチンに係る制御部201の処理手順を示すフローチャートである。図11の処理は、電池監視装置100からの受信を開始する場合に起動される。図12のメインルーチンは図11の処理中に起動される。
図11から図15までに記載された第1記憶部、第2記憶部及び第3記憶部は、記憶部205に記憶領域が確保されている。第1記憶部は、電池監視装置100から受信したパラメータを、該パラメータが対応付けられた充電率及び温度夫々が属する範囲に仕分けして記憶するための領域である。第2記憶部は、充電率及び温度の範囲の夫々について統計処理した結果のパラメータを記憶するための領域である。第3記憶部は、通信部111で前回送信したパラメータを充電率及び温度の範囲の夫々について記憶するための領域である。受信パラメータ数は、受信したパラメータ数をカウントするためのカウンタである。なお、充電率はN個の範囲に分けられ、温度はM個の範囲に分けられているものとする。
図11の処理が起動された場合、制御部201は、初期化の一環として、統計処理の間隔を計時するタイマをスタートさせ(S30)、第1記憶部の内容をクリアし(S31)、更に受信パラメータ数を0にクリアする(S32)。その後、制御部201は、無線送受信部204によってパラメータを受信したか否かを判定し(S33:第2受信部に相当)、受信しない場合(S33:NO)、受信するまで待機する。
パラメータを受信した場合(S33)、制御部201は、受信したパラメータを、受信した充電率及び温度が夫々属する範囲に対応付けて第1記憶部に記憶し(S34)、受信パラメータ数を1だけインクリメントする(S35)。次いで、制御部201は、受信パラメータ数が所定数以上であるか否かを判定し(S36)、所定数未満の場合(S36:NO)、統計処理の間隔を計時するタイマにより、前回の統計処理から所定時間が経過したか否かを判定する(S36b)。ここでの所定時間は、例えば1週間~1ヶ月程度の時間である。所定時間が経過していない場合(S36b:NO)、制御部201は、次のパラメータを受信するために、ステップS33に処理を移す。
受信パラメータ数が所定数以上である場合(S36:YES)、又は、前回の統計処理から所定時間が経過した場合(S36b:YES)、制御部201は、図12のメインルーチンを起動し(S37)、統計処理の間隔を計時するタイマを再スタートさせる(S37b)。次いで、制御部201は、メインルーチンにて第1記憶部がクリアされたか否かを判定し(S38)、クリアされていない場合(S38:NO)、クリアされるまで待機する。これらは、第1記憶部の内容が全て統計処理されるまで、第1記憶部の内容を上書きしないための処理である。第1記憶部を2面用意して、適当に切り換えるようにしてもよい。
第1記憶部の内容がクリアされた場合(S38:YES)、制御部201は、外部から受信終了が指示されたか否かを判定し(S39)、受信終了が指示されていない場合(S39:NO)、次の統計処理の対象となるパラメータを1から受信するために、ステップS32に処理を移す。一方、外部から受信終了が指示された場合(S39:YES)、制御部201は、図11の処理を終了する。
図12のメインルーチンが起動された場合、制御部201は、第2記憶部の内容をクリアした(S40)後に統計処理に係るサブルーチンを起動する(S41)。このサブルーチンからリターンした場合、第2記憶部に統計処理の結果のパラメータが記憶されている。次いで、制御部201は、電池監視装置100から受信して統計処理を終えたパラメータを削除するために、第1記憶部の内容をクリアした(S42)後に、欠損部補完に係るサブルーチンを起動する(S43)。このサブルーチンからリターンした場合、第2記憶部の内容のうち、パラメータが欠損していた部分が補完されている。
次いで、制御部201は、外れ値除去に係るサブルーチンを起動する(S44)。このサブルーチンからリターンした場合、第2記憶部の内容のうち、アウトライアとみなされるパラメータについて、対応する第3記憶部の記憶内容が第2記憶部に上書きされている。更に、第2記憶部の記憶内容と、対応する第3記憶部の記憶内容との間に有意な偏差があるか否かの検出結果がリターン値に記憶されている。
その後、制御部201は、サブルーチンのリターン値に基づいて、上記の偏差が有るか否かを判定し(S45)、偏差が無い場合(S45:NO)、前回のパラメータの送信から所定期間が経過したか否かを判定する(S46)。ここでの所定期間は、例えば6ヶ月程度の期間である。所定期間が経過していない場合(S46:NO)、制御部201は、パラメータを送信せずにメインルーチンの実行を終了する。なお、制御部201の初期化の際に、パラメータの送信間隔を計時するタイマの計時が開始されるものとする。
前回のパラメータの送信から所定期間が経過した場合(S46:YES)、又はステップS45で偏差が有る場合(S45:YES)、制御部201は、第2記憶部内の全パラメータを、充電率及び温度の範囲に対応付けて電池監視装置100に送信する(S47:第2送信部に相当)。次いで、制御部201は、送信間隔を計時するタイマを再スタートさせて(S48)送信間隔の計時を再開した後、第2記憶部の内容を、対応する第3記憶部に上書きして(S49)メインルーチンの実行を終了する。
図13の統計処理に係るサブルーチン(処理部に相当)が呼び出された場合、制御部201は、充電率の範囲の順番をカウントするためのカウンタであるiを1に初期化し(S50)、更に、温度の範囲の順番をカウントするためのカウンタであるjを1に初期化する(S51)。次いで、制御部201は、i番目の充電率の範囲SOCi及びj番目の温度の範囲Tjに対応して第1記憶部に記憶されたパラメータの平均値を算出し(S52)、算出した平均値が0であるか否かを判定する(S53)。
平均値が0である場合(S53:YES)、即ちパラメータが1つも記憶されていない場合、SOCi及びTjに対応するパラメータの統計処理をスキップするために、後述するステップS57に処理を移す。平均値が0ではない場合(S53:NO)、制御部201は、SOCi及びTjに対応して第1記憶部に記憶されたパラメータの標準偏差σを算出し(S54)、算出したσが所定の偏差より小さいか否かを判定する(S55)。
σが所定の偏差より小さくない場合(S55:NO)、即ちSOCi及びTjに対応して第1記憶部に記憶されたパラメータのばらつきが比較的大きい場合、ステップS57に処理を移す。σが所定の偏差より小さい場合(S55:YES)、制御部201は、SOCi及びTjに対応する第2記憶部に、ステップS52で算出した平均値を、統計処理したパラメータとして記憶する(S56)。次いで、制御部201は、jを1だけインクリンメントし(S57)、jがM+1であるか否かを判定する(S58)。
jがM+1ではない場合(S58:NO)、制御部201は、同じSOCi、且つ次のTjに対応して第1記憶部に記憶されたパラメータを統計処理するために、ステップS52に処理を移す。一方、jがM+1である場合(S58:YES)、即ち、全ての温度の範囲についてSOCiに対応して第1記憶部に記憶されたパラメータの統計処理を終えた場合、制御部201は、iを1だけインクリンメントし(S59)、iがN+1であるか否かを判定する(S60)。
jがN+1ではない場合(S60:NO)、制御部201は、次のSOCiに対応して第1記憶部に記憶されたパラメータを統計処理するために、ステップS51に処理を移す。一方、jがN+1である場合(S60:YES)、即ち、全ての充電率及び温度の範囲について第1記憶部に記憶されたパラメータの統計処理を終えた場合、制御部201は、メインルーチンにリターンする。
図14の欠損部補完に係るサブルーチン(補完部に相当)が呼び出された場合、制御部201は、充電率の範囲の順番をカウントするためのカウンタであるiを1に初期化し(S61)、更に、温度の範囲の順番をカウントするためのカウンタであるjを1に初期化する(S62)。次いで、制御部201は、i番目の充電率の範囲SOCi及びj番目の温度の範囲Tjに対応して第2記憶部に記憶されたパラメータ、即ち統計処理されたパラメータを読み出し(S63)、パラメータの書き込みが有るか否かを判定する(S64)。
パラメータの書き込みが無い場合(S64:NO)、即ちパラメータが欠損している場合、制御部201は、同じ充電率の範囲であるSOCiに対応して第2記憶部に記憶された全パラメータを読み出し(S65)、パラメータの書き込みが有るか否かを判定する(S66)。パラメータの書き込みが有る場合(S66:YES)、制御部201は、書き込みが有ったパラメータに基づいて、欠損していたSOCi及びTjに対応するパラメータを補完する(S67)。
ステップS66でパラメータの書き込みが無い場合(S66:NO)、即ち欠損していたパラメータと同じ充電率の範囲内で他のパラメータも欠損している場合、制御部201は、同じ温度の範囲であるTjに対応して第2記憶部に記憶された全パラメータを読み出し(S68)、パラメータの書き込みが有るか否かを判定する(S69)。パラメータの書き込みが有る場合(S69:YES)、制御部201は、書き込みが有ったパラメータに基づいて、欠損していたSOCi及びTjに対応するパラメータを補完する(S70)。
ステップS67若しくはS70の処理を終えた場合、又はステップS64でパラメータの書き込みが有り(S64:YES)、パラメータが欠損していない場合、又はステップS69でパラメータの書き込みが無い場合(S69:NO)、制御部201は、jを1だけインクリンメントし(S71)、jがM+1であるか否かを判定する(S72)。
jがM+1ではない場合(S72:NO)、制御部201は、同じSOCi、且つ次のTjに対応して第2記憶部に記憶されたパラメータの欠損を確認するために、ステップS63に処理を移す。一方、jがM+1である場合(S72:YES)、即ち、全ての温度の範囲についてSOCiに対応して第2記憶部に記憶されたパラメータの欠損の確認及び補完を終えた場合、制御部201は、iを1だけインクリンメントし(S73)、iがN+1であるか否かを判定する(S74)。
jがN+1ではない場合(S74:NO)、制御部201は、次のSOCiに対応して第2記憶部に記憶されたパラメータの欠損を確認するために、ステップS62に処理を移す。一方、jがN+1である場合(S74:YES)、即ち、全ての充電率及び温度の範囲について第2記憶部に記憶されたパラメータの欠損の確認及び補完を終えた場合、制御部201は、メインルーチンにリターンする。
図15の外れ値除去に係るサブルーチンが呼び出された場合、制御部201は、充電率の範囲の順番をカウントするためのカウンタであるiを1に初期化し(S81)、更に、温度の範囲の順番をカウントするためのカウンタであるjを1に初期化する(S82)。次いで、制御部201は、i番目の充電率の範囲SOCi及びj番目の温度の範囲Tjに対応して第2記憶部に記憶されたパラメータと、第3記憶部に記憶されたパラメータとの差分Dijを算出する(S83)。これは、統計処理した送信前のパラメータと、前回送信したパラメータとの差分を算出するものである。
次いで、制御部201は、算出したDijが所定の差分より大きいか否かを判定し(S84)、所定の差分より大きい場合(S84:YES)、SOCi及びTjに対応する第3記憶部内のパラメータを、第2記憶部に上書きする(S85)。これにより、統計処理したパラメータが、前回送信したパラメータより所定の差分より大きく離れている外れ値である場合に、前回送信したパラメータを統計処理したパラメータとする。これに伴い、制御部201は、Dijを0に書き換える(S86)。ステップS86の処理を終えた場合、又はステップS84でDijが所定の差分未満である場合(S84:NO)、制御部201は、jを1だけインクリンメントし(S87)、jがM+1であるか否かを判定する(S88)。
jがM+1ではない場合(S88:NO)、制御部201は、同じSOCi、且つ次のTjに対応して第2記憶部に記憶されたパラメータの外れ値を除去するために、ステップS83に処理を移す。一方、jがM+1である場合(S88:YES)、即ち、全ての温度の範囲についてSOCiに対応して第2記憶部に記憶されたパラメータの外れ値の除去を終えた場合、制御部201は、iを1だけインクリンメントし(S89)、iがN+1であるか否かを判定する(S90)。
jがN+1ではない場合(S90:NO)、制御部201は、次のSOCiに対応して第1記憶部に記憶されたパラメータの外れ値を除去するために、ステップS82に処理を移す。一方、jがN+1である場合(S90:YES)、即ち、全ての充電率及び温度の範囲について第1記憶部に記憶されたパラメータの外れ値の除去を終えた場合、制御部201は、Dijの最大値又は平均値を算出し(S91)、算出結果が所定値より大きいか否かを判定する(S92)
算出結果が所定値より大きい場合(S92:YES)、制御部201は、有意な偏差有りの旨をリターン値に記憶して(S93)メインルーチンにリターンする。一方、算出結果が所定値未満の場合(S92:NO)、制御部201は、有意な偏差無しの旨をリターン値に記憶して(S94)メインルーチンにリターンする。
以上のように本実施形態によれば、電池監視装置100が、二次電池ユニット50の電圧及び充放電電流に基づいて推定した二次電池のパラメータを付随情報に対応付けて電池情報管理センタ200に送信し、統計処理されて付随情報に対応付けられたパラメータを電池情報管理センタ200から受信する。一方の電池情報管理センタ200は、付随情報に対応付けられたパラメータの推定値を電池監視装置100から受信して統計処理し、統計処理したパラメータを付随情報に対応付けて電池監視装置100に送信する。これにより、電池監視装置100は、推定したパラメータ及び付随情報を適時電池情報管理センタ200に送ることにより、付随情報に応じて統計処理されたパラメータを電池情報管理センタ200から取得できる。従って、二次電池の等価回路モデルについて電池監視装置100が推定したパラメータを電池情報管理センタ200で統計処理することが可能となる。
また、本実施形態によれば、二次電池ユニット50の充電率及び/又は温度に対応付けられたパラメータの推定値を電池情報管理センタ200で統計処理することにより、充電率及び/又は温度に応じて確からしいパラメータを算出することができる。
更に、本実施形態によれば、統計処理の間隔である所定時間を適当に長くして母集団を適当に大きくすることにより、電池情報管理センタ200で統計処理したパラメータの確からしさを向上させることができる。
更に、本実施形態によれば、標本であるパラメータの推定値の数が所定数以上の場合に電池情報管理センタ200で統計処理するため、母集団が適当に大きくなって、統計処理したパラメータの確からしさを向上させることができる。
更に、本実施形態によれば、付随情報が属する範囲の夫々についてパラメータの推定値を統計処理するため、付随情報の範囲毎に確からしいパラメータを算出することができる。
更に、本実施形態によれば、付随情報に係る複数の範囲の夫々について統計処理するパラメータの推定値の標準偏差が所定の偏差より小さい場合に、パラメータの推定値の平均値を統計処理したパラメータとするため、ばらつきが比較的大きいパラメータの推定値を統計処理の対象から外すことができる。
更に、本実施形態によれば、付随情報に係る全範囲中の1つ以上の範囲について統計処理したパラメータが存在しない場合、他の範囲について統計処理したパラメータに基づいて補完したパラメータを、上記1つ以上の範囲について統計処理したパラメータとする。これにより、付随情報に係る全範囲について統計処理されたパラメータ又は補完されたパラメータを電池情報管理センタ200から電池監視装置100に送信することができる。
更に、本実施形態によれば、付随情報に係る複数の範囲の夫々について電池情報管理センタ200で統計処理したパラメータと、電池監視装置100に前回送信したパラメータとの差分が所定の差分より大きい場合、前回送信したパラメータを統計処理したパラメータとする。従って、統計処理したパラメータの内、統計的な外れ値を除外することができる。
更に、本実施形態によれば、付随情報に係る複数の範囲の夫々について電池情報管理センタ200で統計処理したパラメータと、電池監視装置100に前回送信したパラメータとの差分の最大値又は平均値が所定値より大きい場合、電池情報管理センタ200で統計処理したパラメータを一括送信する。これにより、パラメータに有意な変化が生じた場合に電池情報管理センタ200から電池監視装置100に全パラメータを送信することができる。
更に、本実施形態によれば、電池情報管理センタ200で統計処理したパラメータを所定期間毎に一括送信する。これにより、パラメータに有意な変化が生じた蓋然性が高い場合に電池情報管理センタ200から電池監視装置100に全パラメータを送信することができる。
更に、本実施形態によれば、二次電池ユニット50の等価回路モデルは抵抗Ra,Rb及びコンデンサCbの組み合わせによって表されるものであり、例えばn次のフォスタ型RC等価回路やn次のカウエル型RC梯子回路等を適用することもできる。
更に、本実施形態によれば、二次電池ユニット50の電圧及び充放電電流の関係を表す式(1)に対し、時系列的に取得した電圧及び充放電電流を逐次適用して最小二乗法を用いることにより、式(1)の係数b0、b1及びa1を決定し、決定した係数に基づいてパラメータRa、RbおよびCbを推定する。これにより、二次電池の内部パラメータを時系列的に推定することができる。
更に、本実施形態によれば、二次電池ユニット50の等価回路モデルの状態ベクトルと、二次電池ユニット50の観測ベクトルとを時系列的に比較して等価回路モデルを逐次修正することにより、等価回路モデルのパラメータを時系列的に推定することができる。