<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
<ワイヤレス電力伝送システムの概要>
実施形態に係るワイヤレス電力伝送システム1の概要について説明する。図1は、実施形態に係るワイヤレス電力伝送システム1の構成の一例を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、ワイヤレスによる電力の伝送をワイヤレス電力伝送と称して説明する。
ワイヤレス電力伝送システム1は、ワイヤレス送電装置10と、ワイヤレス受電装置20を備える。ワイヤレス電力伝送システム1では、ワイヤレス電力伝送によって電力がワイヤレス送電装置10からワイヤレス受電装置20に伝送される。
ワイヤレス送電装置10は、図1に示したように、直流電源11と接続されている。そして、ワイヤレス送電装置10は、送電回路12(増幅部)と、制御回路13と、コイルユニット14を備える。また、コイルユニット14は、第1コイル141と、第2コイル142と、第3コイル143を備える。ここで、本実施形態におけるコイルは、ある領域とある物体との少なくとも一方の周囲に巻回された導体、又は、ある領域とある物体との少なくとも一方の周囲に渦巻き状に設けられた導体のことを意味し、当該導体から他の回路へと接続される引き出し線としての導体を含んでいない。
直流電源11は、直流電圧を供給できる電源であれば如何なる電源であってもよく、例えば、商用電源を整流平滑した直流電源、二次電池、スイッチング電源等である。スイッチング電源は、スイッチングコンバーター等のことである。直流電源11は、直流電圧を送電回路12に供給する。
送電回路12は、直流電源11から出力される直流電圧を駆動周波数の交流電圧に変換するインバーターを備える構成であってもよく、当該インバーターに加えて、直流電源11と当該インバーターとの間に設けられるDC(Direct Current)/DCコンバーターを備える構成であってもよく、直流電源11から出力される直流電圧を駆動周波数の交流電圧に変換する他の回路を備える構成であってもよい。当該インバーターは、例えば、スイッチング素子がブリッジ接続されたスイッチング回路(フルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路等)のことである。以下では、一例として、送電回路12が、直流電源11から出力される直流電圧を駆動周波数の交流電圧に変換するインバーターと、直流電源11と当該インバーターとの間に設けられるDC/DCコンバーターを備える場合について説明する。送電回路12は、変換した交流電圧を、コイルユニット14が備える第2コイル142に供給する。
制御回路13は、送電回路12が備えるDC/DCコンバーターの出力直流電圧を制御する。なお、制御回路13は、当該DC/DCコンバーターの出力直流電圧を制御する構成に代えて、送電回路12が備えるインバーターの駆動周波数を制御する構成であってもよく、当該インバーターのデューティ比を制御する構成であってもよく、当該インバーターの駆動周波数を制御するとともに当該インバーターのデューティ比を制御する構成であってもよい。
また、制御回路13は、コイルユニット14が備える第1コイル141によってワイヤレス受電装置20から受信された制御信号を入力して取得する。この制御信号は、送電回路12が備えるDC/DCコンバーターの出力直流電圧の制御に関する信号である。制御回路13は、取得した制御信号に応じて、当該出力直流電圧を制御し、必要に応じて、当該出力直流電圧を変化させる。
第1コイル141は、通信用のアンテナとして機能するコイルである。第1コイル141は、ワイヤレス受電装置20から伝送される制御信号を受信する。ここで、第1コイル141には、後述する第2コイル142が発生させる磁束が鎖交する場合がある。
第2コイル142は、電力伝送用のアンテナとして機能するコイルである。第2コイル142は、ワイヤレス電力伝送によって電力をワイヤレス受電装置20に送電する。
第3コイル143は、第2コイル142が発生させる磁束が第1コイル141に鎖交することによって第1コイル141に流れる電流を打ち消す電流を生じさせる機能を有するコイルである。ここで、コイルユニット14において、第2コイル142が発生させる磁束のうち第1コイル141に鎖交する磁束は、第2コイル142が発生させる磁束のうち第3コイル143に鎖交する磁束と等しい(又は、ほぼ等しい)。このため、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することによって第1コイル141に流れる電流の大きさと、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することによって第3コイル143に流れる電流の大きさとが同じ大きさになる。このため、コイルユニット14が第3コイル143を備えることにより、コイルユニット14は、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することによって第1コイル141に流れる電流と、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することで第3コイル143に流れる電流とを打ち消し合わせることができる。なお、本実施形態では、第2コイル142が発生させる磁束のうち第1コイル141に鎖交する磁束と、第2コイル142が発生させる磁束のうち第3コイル143に鎖交する磁束との等しさは、ノイズ、組み付け誤差等によるずれを許容した場合における等しさであり、数値が完全に一致することを意味するものではない。図1に示した例では、第3コイル143は、第1コイル141と接続されている。この場合、コイルユニット14では、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することによって第1コイル141に流れる電流と、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することで第3コイル143に流れる電流とが打ち消し合う。すなわち、前述の制御回路13は、このような電流の打ち消しが行われた後の制御信号を第1コイル141から取得する。第3コイル143の詳細については、後述する。
ワイヤレス受電装置20は、コイルユニット21と、整流平滑回路22と、検出部24と、比較部25と、信号発生部26を備える。また、コイルユニット21は、第1コイル211と、第2コイル212を備える。
また、整流平滑回路22には、負荷23が接続されている。
第1コイル211は、通信用のアンテナとして機能するコイルである。第1コイル211は、信号発生部26から供給された制御信号をワイヤレス送電装置10に送信する。本実施形態では、一例として、第1コイル211の構成が、第1コイル141の構成と同様の構成である場合について説明する。
第2コイル212は、電力伝送用のアンテナとして機能するコイルである。第2コイル212は、ワイヤレス電力伝送によってワイヤレス送電装置10から伝送された電力を受電する。本実施形態では、一例として、第2コイル212の構成が、第2コイル142の構成と同様の構成である場合について説明する。
第3コイル213は、第2コイル212が発生させる磁束が第1コイル211に鎖交することによって第1コイル211に流れる電流を打ち消す電流を生じさせる機能を有するコイルである。ここで、コイルユニット14において、第2コイル212が発生させる磁束のうち第1コイル211に鎖交する磁束は、第2コイル212が発生させる磁束のうち第3コイル213に鎖交する磁束と等しい(又は、ほぼ等しい)。このため、第2コイル212が発生させる磁束が鎖交することによって第1コイル211に流れる電流の大きさと、第2コイル212が発生させる磁束が鎖交することによって第3コイル213に流れる電流の大きさとが同じ大きさになる。このため、コイルユニット21が第3コイル213を備えることにより、コイルユニット21は、第2コイル212が発生させる磁束が鎖交することによって第1コイル211に流れる電流と、第2コイル212が発生させる磁束が鎖交することで第3コイル213に流れる電流とを打ち消し合わせることができる。図1に示した例では、第3コイル213は、第1コイル211と接続されている。この場合、コイルユニット14では、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することによって第1コイル141に流れる電流と、第2コイル142が発生させる磁束が鎖交することで第3コイル143に流れる電流とが打ち消し合う。本実施形態では、一例として、第3コイル213の構成が、第3コイル213の構成と同様の構成である場合について説明する。なお、本実施形態では、第2コイル212が発生させる磁束のうち第1コイル211に鎖交する磁束と、第2コイル212が発生させる磁束のうち第3コイル213に鎖交する磁束との等しさは、ノイズ、誤差等によるずれを許容した場合における等しさであり、数値が完全に一致することを意味するものではない。
本実施形態では、一例において、コイルユニット21の構成は、コイルユニット14の構成と同様の構成である。なお、第1コイル211の構成は、第1コイル141の構成と異なる構成であってもよい。また、第2コイル212の構成は、第2コイル142の構成と異なる構成であってもよい。また、第3コイル213の構成は、第3コイル143の構成と異なる構成であってもよい。すなわち、コイルユニット21の構成は、コイルユニット14の構成と同じ構成であってもよく、あるいは、異なる構成であってもよい。
整流平滑回路22は、第2コイル212に接続され、第2コイル212が受電した交流電圧を直流電圧に変換する。整流平滑回路22は、変換した直流電圧を負荷23に供給(出力)する。整流平滑回路22は、コンバーターであり、例えば、図示しないブリッジダイオードと、図示しない平滑用キャパシターとから構成される。整流平滑回路22は、例えば、第2コイル212によって受電された交流電圧を全波整流し、全波整流した電圧を平滑用キャパシターによって平滑にする。
負荷23は、整流平滑回路22から直流電圧が供給される。例えば、負荷23は、再充電可能な二次電池(例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)である。なお、負荷23は、二次電池に代えて、直流電圧に応じた動作を行う他の装置であってもよい。
なお、整流平滑回路22と負荷23との間には、整流平滑回路22の出力を変換する変換回路(例えば、DC/DCコンバーターやDC/AC(Alternating Current)インバーター等)が備えられる構成であってもよい。
検出部24は、整流平滑回路22から出力される電圧を検出する。検出部24は、検出した電圧を比較部25に出力する。なお、検出部24は、整流平滑回路22から出力される電流を検出する構成であってもよく、整流平滑回路22から出力される電力を検出する構成であってもよい。
比較部25は、検出部24から出力された電圧と、基準電圧(目標電圧)とを比較し、当該電圧と当該基準電圧との差分を信号発生部26に出力する。
信号発生部26は、比較部25から出力された差分に基づき制御信号を生成する。信号発生部26は、生成した制御信号を、第1コイル211を介してワイヤレス送電装置10に送信する。すなわち、ワイヤレス送電装置10において、制御回路13は、第1コイル141を介して取得した制御信号が示す差分が小さくなるように送電回路12が備えるDC/DCコンバーターの出力直流電圧を制御する。
以上のような構成により、ワイヤレス電力伝送システム1では、ワイヤレス送電装置10からワイヤレス受電装置20に電力が伝送される。また、ワイヤレス送電装置10は、ワイヤレス受電装置20が受電して負荷23に出力する直流電圧がほぼ一定になるようにワイヤレス受電装置20に電力を伝送する。すなわち、ワイヤレス電力伝送システム1では、ワイヤレス送電装置10がワイヤレス受電装置20から制御信号を受信して送電電力量を制御することにより、ワイヤレス受電装置20が受電する電力を安定化させる。
<コイルユニットの構成>
ワイヤレス送電装置10のコイルユニット14の構成について説明する。なお、本実施形態では、ワイヤレス受電装置20のコイルユニット21の構成は、ワイヤレス送電装置10のコイルユニット14の構成と同様であるため、説明を省略する。また、以下では、説明の便宜上、図2に示した三次元座標系におけるZ軸の正方向を上方向と称し、当該Z軸の負方向を下方向と称して説明する。
図2は、コイルユニット14の構成の一例を示す上面図である。図3は、図2に示したコイルユニット14の下面図である。
図2において、コイルユニット14の上側は、コイルユニット14を備えるワイヤレス送電装置10がワイヤレス受電装置20と対向する側、すなわち、ワイヤレス受電装置20が電力を受電する側である。
図2及び図3に示したように、コイルユニット14は、第1磁性体B1と、第1コイル141と、第2コイル142と、第3コイル143を備える。なお、コイルユニット14は、第1磁性体B1と、第1コイル141と、第2コイル142と、第3コイル143に加えて、共振回路を構成するキャパシター、第2コイル142が発生させる磁界の外部への漏洩を抑制する電磁気遮蔽体(例えば、アルミニウム板)、コイル間の磁気的な結合を高める磁性体(第1磁性体B1と異なる磁性体)等を備える構成であってもよい。以下では、説明の便宜上、第1コイル141として設けられた導体(すなわち、第1コイル141を構成する導体)を第1導体と称し、第2コイル142として設けられた導体(すなわち、第2コイル142を構成する導体)を第2導体と称し、第3コイル143として設けられた導体(すなわち、第3コイル143を構成する導体)を第3導体と称して説明する。
第1磁性体B1は、上面M1と、上面M1と反対側の面である下面M3とを有する磁性体である。上面M1は、第1コイル141が配置される面である。下面M3は、第3コイル143が配置される面である。以下では、一例として、第1磁性体B1の形状が矩形板状である場合について説明する。この場合、上面M1と下面M3とのそれぞれは、互いに対向している矩形状の平面である。
図2に示した例では、上面M1は、図2に示した三次元座標系におけるZ軸と直交している。すなわち、上面M1は、当該例において、第1磁性体B1の上面である。なお、上面M1は、平面に代えて、曲面であってもよい。また、第1磁性体B1の形状は、矩形板状に代えて、上面M1を有する形状であれば如何なる形状であってもよく、円板状等の他の形状であってもよい。上面M1は、第1面の一例である。
また、図3に示した例では、下面M3は、図3に示した三次元座標系におけるZ軸と直交している。すなわち、下面M3は、当該例において、第1磁性体B1の下面である。また、当該例では、下面M3は、上面M1と平行な面である。なお、下面M3は、平面に代えて、曲面であってもよい。また、下面M3は、平面に代えて、曲面であってもよい。また、第1磁性体B1の形状は、矩形板状に代えて、上面M1及び下面M3を有する形状であれば如何なる形状であってもよく、円板状等の他の形状であってもよい。下面M3は、第2面の一例である。
第1コイル141は、上面M1上に配置される。第1コイル141は、上面M1上において渦巻き状に第1導体が設けられた(スパイラル型の)コイルである。ここで、第1コイル141は、スパイラルコイル、平面コイル等とも称される場合がある。
第1コイル141は、図2に示したように、上面M1上においてコイル開口部H1を有する。コイル開口部H1は、上面M1上において第1導体によって囲まれた領域のことである。ここで、上面M1上において第1導体によって囲まれた領域は、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合において、第1導体が設けられた導体領域の内側の領域のことである。なお、上面M1上において第1導体によって囲まれた領域は、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合において、第1コイル141の最内周部分から内側の領域のことであってもよい。第1コイル141は、第1導体に電流が流された場合、コイル開口部H1を通る磁束を発生させる。また、第1コイル141では、コイル開口部H1を通る磁束が変化した場合、電磁誘導の法則によって第1導体に電流が流れる。
以下では、一例として、第1コイル141が、上面M1に接着剤等によって動かないように固定された導線によって上面M1上に形成されている場合について説明する。当該導線は、前述の第1導体の一例である。
第2コイル142は、上面M1の一部と下面M3の一部とのそれぞれを覆うソレノイドコイルとして第1磁性体B1に第2導体が巻回されたコイルである。ここで、第2導体は、第1コイル141が設けられた上面M1及び第3コイル143が設けられた下面M3のそれぞれを有する第1磁性体B1の外周に巻回される。このため、コイル開口部H1の一部は、上面M1上において第2導体に覆われている。また、後述するコイル開口部H3の一部は、下面M3上において第2導体に覆われている。
第3コイル143は、ソレノイドコイルである第2コイル142の磁束による電磁誘導によって第1コイル141に生じる電流を打ち消す電流を、当該磁束による電磁誘導によって生じさせるためのコイルである。コイルユニット14は、第3コイル143を備えることにより、ソレノイドコイルである第2コイル142によって伝送される電力が、渦巻きコイルである第1コイル141によって伝送される信号に重畳してしまうことを抑制することができる。
第3コイル143は、下面M3上に配置される。第3コイル143は、下面M3上において渦巻き状に第3導体が設けられた(スパイラル型の)コイルである。ここで、第3コイル143は、スパイラルコイル、平面コイル等とも称される場合がある。
第3コイル143は、図3に示したように、下面M3上において前述のコイル開口部H3を有する。コイル開口部H3は、下面M3上において第3導体によって囲まれた領域のことである。ここで、下面M3上において第3導体によって囲まれた領域は、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合において、第3導体が設けられた導体領域の内側の領域のことである。なお、下面M3上において第3導体によって囲まれた領域は、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合において、第3コイル143の最内周部分から内側の領域のことであってもよい。第3コイル143は、第3導体に電流が流された場合、コイル開口部H3を通る磁束を発生させる。また、第3コイル143では、コイル開口部H3を通る磁束が変化した場合、電磁誘導の法則によって第3導体に電流が流れる。
以下では、一例として、第3コイル143が、下面M3に接着剤等によって動かないように固定された導線によって下面M3上に形成されている場合について説明する。当該導線は、前述の第3導体の一例である。
ここで、コイルユニット14において、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合における第1コイル141の形状である第1形状と、当該方向から前記下面M3上を見た場合における第3コイル143の形状である第3形状とは、略同じ形状である。これにより、コイルユニット14では、第1コイル141を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束と、第3コイル143を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束とを、略同じにすることができる。なお、第1形状と第3形状とは、第1コイル141を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束と、第3コイル143を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束との差分の大きさが所定の大きさよりも小さくなる範囲において、互いに異なる形状であってもよい。当該所定の大きさは、第1コイル141によって伝送される信号の制御回路13による検出精度に応じて決定される大きさである。当該所定の大きさは、当該検出精度が高いほど、大きくすることができる。
また、第3コイル143は、第1コイル141と電気的に直列に接続されている構成であってもよく、第1コイル141と電気的に接続されていない構成であってもよい。ただし、第3コイル143が第1コイル141と電気的に直列に接続されている場合、上面M1と直交する方向から上面M1及び下面M3のそれぞれを見ると、上面M1上に第1コイル141として渦巻き状に設けられた第1導体の巻回方向が時計回り方向となる始点と、下面M3上に第3コイル143として渦巻き状に設けられた第3導体の巻回方向が時計回り方向となる始点とが接続される。あるいは、当該場合、上面M1上に第1コイル141として渦巻き状に設けられた第1導体の巻回方向が時計回り方向となる終点と、下面M3上に第3コイル143として渦巻き状に設けられた第3導体の巻回方向が時計回り方向となる終点とが接続される。これにより、コイルユニット14では、第2コイル142が発生させる磁束がコイル開口部H1を鎖交して第1導体に流れる電流と、第2コイル142が発生させる磁束がコイル開口部H3を鎖交して第3導体に流れる電流とが打ち消し合う。
ここで、コイルユニット14における第1コイル141、第2コイル142、第3コイル143の相対的な位置関係について説明する。
図2に示した領域M11は、上面M1上の領域のうち、第2コイル142によって覆われた領域を示す。具体的には、領域M11は、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合において、コイル開口部H1のうち第2コイル142の両端に挟まれた領域のことである。当該両端は、第2コイル142の巻回軸に沿った方向における両端であって上面M1上における第2コイル142の両端のことである。また、図2に示した例では、第2導体は、領域M12と領域M13の間に領域M11が挟まれるように第1磁性体B1に巻回されている。領域M12と領域M13のそれぞれは、コイル開口部H1のうち第2コイル142によって覆われていない領域を示す。具体的には、領域M12と領域M13はそれぞれ、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合において、コイル開口部H1のうち第2コイル142の両端に挟まれていない領域のことである。
また、図3に示した領域M31は、下面M3上の領域のうち、第2コイル142によって覆われた領域を示す。具体的には、領域M31は、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合において、コイル開口部H3のうち第2コイル142の両端に挟まれた領域のことである。当該両端は、第2コイル142の巻回軸に沿った方向における両端であって下面M3における第2コイル142の両端のことである。また、図3に示した例では、第2導体は、領域M32と領域M33の間に領域M31が挟まれるように第1磁性体B1に巻回されている。領域M32と領域M33のそれぞれは、コイル開口部H3のうち第2コイル142によって覆われていない領域を示す。具体的には、領域M32と領域M33はそれぞれ、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合において、コイル開口部H3のうち第2コイル142の両端に挟まれていない領域のことである。
すなわち、図2及び図3に示した例では、第2コイル142は、コイル開口部H1を3つの領域(領域M11~領域M13のそれぞれ)に分けるとともに、コイル開口部H3を3つの領域(領域M31~領域M33のそれぞれ)に分けるように第1磁性体B1に第2導体が巻回されたコイルである。なお、第2コイル142は、上面M1の一部と下面M3の一部とのそれぞれを覆うソレノイドコイルとして第1磁性体B1に巻回されていれば、他の巻回方法によって第2導体が第1磁性体B1に巻回されたコイルであってもよい。
また、コイルユニット14では、図4に示したように、第1コイル141が第1磁性体B1と第2コイル142との間(より具体的には、上面M1と上面M1上に位置する第2導体との間)に配置されているとともに、第3コイル143が第1磁性体B1と第2コイル142との間(より具体的には、下面M3と下面M3上に位置する第2導体との間)に配置されている。図4は、図2に示したコイルユニット14の断面の一例を示す断面図である。具体的には、図4は、第2コイル142の巻回軸に沿った面であって上面M1と直交する面に沿ってコイルユニット14を切断した場合におけるコイルユニット14の断面図である。
第1コイル141が第1磁性体B1と第2コイル142との間に配置されている場合、第1コイル141は、上面M1によって拘束され、変形が抑制される。その結果、コイルユニット14は、第1コイル141の電磁気的な特性を安定化させることができる。なお、第1コイル141は、第2導体が巻回された第1磁性体B1の上面M1上に、第2導体の上から配置される構成であってもよい。この際、上面M1上において第2導体が巻回されていない領域と第1導体との間には、例えば、図4において図示しないスペーサーが配置される。これにより、第1導体は、第2導体が巻回された第1磁性体B1の上面M1上に、第2導体の上から配置することができる。
また、第3コイル143が第1磁性体B1と第2コイル142との間に配置されている場合、第3コイル143は、下面M3によって拘束され、変形が抑制される。その結果、コイルユニット14は、第3コイル143の電磁気的な特性を安定化させることができる。なお、第3コイル143は、第2導体が巻回された第1磁性体B1の下面M3上に、第2導体の上から配置される構成であってもよい。この際、下面M3上において第2導体が巻回されていない領域と第3導体との間には、例えば、図4において図示しないスペーサーが配置される。これにより、第3導体は、第2導体が巻回された第1磁性体B1の下面M3上に、第2導体の上から配置することができる。
ここで、コイルユニット14において、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合における位置関係のうち上面M1上に位置する第2導体と第1コイル141との相対的な位置関係である第21位置関係と、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合における位置関係のうち下面M3上に位置する第2導体と第3コイル143との相対的な位置関係である第23位置関係とは、略同じ位置関係である。これにより、コイルユニット14では、第1コイル141を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束と、第3コイル143を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束とを、略同じにすることができる。ここで、第21位置関係は、例えば、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合における第2コイル142の重心の位置と、当該場合における第1コイル141の重心の位置との相対的な位置関係によって表される。また、第23位置関係は、例えば、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合における第2コイル142の重心の位置と、当該場合における第3コイル143の重心の位置との相対的な位置関係によって表される。
なお、コイルユニット14において、第21位置関係と、第23位置関係とは、第1コイル141を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束と、第3コイル143を通過する磁束のうちの第2コイル142の磁束との差分の大きさが前述の所定の大きさよりも小さくなる範囲において、互いに異なる位置関係であってもよい。また、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合における第1コイル141の位置は、第1コイル141の重心の位置に変えて、第1コイル141に応じた他の位置によって表される構成であってもよい。また、上面M1と直交する方向から上面M1上を見た場合における第2コイル142の位置は、第2コイル142の重心の位置に変えて、第2コイル142に応じた他の位置によって表される構成であってもよい。また、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合における第2コイル142の位置は、第2コイル142の重心の位置に変えて、第2コイル142に応じた他の位置によって表される構成であってもよい。また、下面M3と直交する方向から下面M3上を見た場合における第3コイル143の位置は、第3コイル143の重心の位置に変えて、第3コイル143に応じた他の位置によって表される構成であってもよい。
以上のような構成により、コイルユニット14は、第1コイル141によって前述の制御信号を受信するとともに、第2コイル142によって電力を送電する。コイルユニット14は、通信用のコイルとして第1コイル141を備えることにより、ワイヤレス送電装置10からワイヤレス受電装置20へ伝送する電力の安定化を図ることができる。また、コイルユニット14では、第2コイル142をソレノイドコイルとすることにより、電力の長距離伝送を可能とする。
また、コイルユニット14が第3コイル143を備えることにより、コイルユニット14では、ソレノイドコイルである第2コイル142の磁束による電磁誘導によって第1コイル141に生じる電流と、当該磁束による電磁誘導によって第3コイル143に生じる電流とは、互いに打ち消し合わせることができる。
具体的には、第1コイル141と第3コイル143とが前述したように電気的に直列に接続されている場合、ソレノイドコイルである第2コイル142の磁束による電磁誘導によって第1コイル141に生じる電流と、当該磁束による電磁誘導によって第3コイル143に生じる電流とは、互いに打ち消し合う。これにより、コイルユニット14は、ソレノイドコイルである第2コイル142によって伝送される電力が、渦巻きコイルである第1コイル141によって伝送される信号と干渉することによって生じる影響を抑制することができる。
また、第1コイル141と第3コイル143とが電気的に接続されていない場合、ソレノイドコイルである第2コイル142の磁束による電磁誘導によって第1コイル141に生じる電圧と、当該磁束による電磁誘導によって第3コイル143に生じる電圧とは、図示しない演算回路等の回路を用いて打ち消し合わせることができる。これにより、コイルユニット14は、当該場合であっても、ソレノイドコイルである第2コイル142によって伝送される電力が、渦巻きコイルである第1コイル141によって伝送される信号と干渉することによって生じる影響を抑制することができる。
このように、コイルユニット14は、電力の長距離伝送と伝送する電力の安定化とを両立することができる。
また、コイルユニット14では、図2~図4に示したように、第1コイル141及び第3コイル143のインダクタンスを増加させる磁性体として第1磁性体B1を用いているとともに、第2コイル142のインダクタンスを増加させる磁性体として第1磁性体B1を用いている。これにより、コイルユニット14は、第1コイル141及び第3コイル143のインダクタンスを増加させる磁性体と第2コイル142のインダクタンスを増加させる磁性体とのそれぞれに異なる磁性体を用いる場合と比較して、小型化することができる。
<コイルユニットの変形例1>
以下、上記において説明したコイルユニット14の変形例1について説明する。コイルユニット14の変形例1では、第1コイル141と第1磁性体B1との間には、予め決められた周波数帯において第1磁性体B1の透磁率よりも高い透磁率となる透磁率の周波数特性を有する第2磁性体B2が配置される。第2磁性体B2は、周波数特性を有する磁性体であれば、如何なる磁性体であってもよい。また、予め決められた周波数帯は、第1コイル141による信号伝送の周波数帯を含む周波数帯であれば如何なる周波数帯であってもよい。なお、本実施形態では、第2コイル142による電力伝送の周波数帯は、第1コイル141による信号伝送の周波数帯よりも低い周波数帯である。
図5は、第1コイル141と第1磁性体B1との間に第2磁性体B2が配置された場合におけるコイルユニット14の一例を示す断面図である。具体的には、図5は、第2コイル142の巻回軸に沿った面であって上面M1と直交する面に沿ってコイルユニット14を切断した場合におけるコイルユニット14の断面図である。当該場合、コイルユニット14は、コイル開口部H1を通る磁束が第1磁性体B1を通ってコイル開口部H3に入り込んでしまうことを第2磁性体B2によって抑制することができる。これにより、コイル開口部H3を通過する磁束は、ほぼ第2コイル142の磁束となる。その結果、コイルユニット14は、ソレノイドコイルである第2コイル142の磁束による電磁誘導によって第1コイル141に生じる電流と、当該磁束による電磁誘導によって第3コイル143に生じる電流とを、より確実に互いに打ち消し合わせることができる。これにより、コイルユニット14は、ソレノイドコイルである第2コイル142によって伝送される電力が、渦巻きコイルである第1コイル141によって伝送される信号と干渉することによって生じる影響を、より確実に抑制することができる。
なお、第2磁性体B2は、第1コイル141と第1磁性体B1との間に配置される構成に変えて、第3コイル143と第1磁性体B1との間に配置される構成であってもよい。
また、コイルユニット14は、図6に示したように、第1コイル141と第1磁性体B1との間に第2磁性体B2が配置されるとともに、第3コイル143と第1磁性体B1との間に第3磁性体B3が配置される構成であってもよい。図6は、第1コイル141と第1磁性体B1との間に第2磁性体B2が配置されるとともに、第3コイル143と第1磁性体B1との間に第3磁性体B3が配置される場合におけるコイルユニット14の一例を示す断面図である。具体的には、図6は、第2コイル142の巻回軸に沿った面であって上面M1と直交する面に沿ってコイルユニット14を切断した場合におけるコイルユニット14の断面図である。第3磁性体B3は、予め決められた周波数帯において第1磁性体B1の透磁率よりも高い透磁率となる透磁率の周波数特性を有する磁性体であれば如何なる磁性体であってもよい。これにより、コイルユニット14は、コイル開口部H1を通る磁束が第1磁性体B1を通ってコイル開口部H3に入り込んでしまうことを、第2磁性体B2及び第3磁性体B3によって、より確実に抑制することができる。
<コイルユニットの変形例2>
以下、図7及び図8を参照し、上記において説明したコイルユニット14の変形例2について説明する。コイルユニット14の変形例2では、第1コイル141と第3コイル143との少なくとも一方は、フレキシブル基板に設けられたコイルパターンである。以下では、一例として、第1コイル141と第3コイル143との両方が、フレキシブル基板に設けられたコイルパターンである場合について説明する。
図7は、第1コイル141と第3コイル143との両方がフレキシブル基板に設けられたコイルパターンである場合におけるコイルユニット14の一例を示す図である。図8は、図7に示したコイルユニット14の一例を示す断面図である。具体的には、図8は、第2コイル142の巻回軸に沿った面であって上面M1と直交する面に沿ってコイルユニット14を切断した場合におけるコイルユニット14の断面図である。なお、図8では、図が煩雑になるのを避けるため、フレキシブル基板を省略し、第1コイル141及び第3コイル143としてフレキシブル基板に設けられたコイルパターンのみ(すなわち、第1導体及び第3導体のみ)が、第1コイル141及び第3コイル143として示されている。
図7及び図8に示したように、第1コイル141がフレキシブル基板に設けられたコイルパターンである場合、当該フレキシブル基板は、上面M1に配置(貼付)される。また、第3コイル143がフレキシブル基板に設けられたコイルパターンである場合、当該フレキシブル基板は、下面M3に配置(貼付)される。これにより、コイルユニット14は、製造が容易になるとともに製造コストを抑制することができる。その結果、コイルユニット14は、量産し易くなる。
また、第1コイル141と第3コイル143との両方は、図9に示したように、1つのフレキシブル基板に設けられたコイルパターンであってもよい。図9は、第1コイル141及び第3コイル143が設けられた1つのフレキシブル基板の一例を示す図である。図9に示した例では、第1コイル141と第3コイル143とは、電気的に直列に接続されている。また、図9に示した当該フレキシブル基板は、コイルユニット14に貼付される当該フレキシブル基板を展開した展開図である。すなわち、コイルユニット14では、当該フレキシブル基板は、上面M1上に第1コイル141のコイルパターンが設けられた部分が貼付され、下面M3上に第3コイル143のコイルパターンが設けられた部分が貼付されるように折り曲げて、第1磁性体B1に貼付される。これにより、コイルユニット14は、製造が更に容易になるとともに製造コストを更に抑制することができる。
ここで、上記において説明した第1コイル141と第1コイル211との間において行われる信号伝送の周波数は、例えば、第2コイル142と第2コイル212との間において行われる電力伝送の周波数の10倍以上である。なお、第1コイル141と第1コイル211との間において行われる信号伝送の周波数は、第2コイル142と第2コイル212との間において行われる電力伝送の周波数の10倍未満であってもよい。
なお、上記において説明した第1磁性体B1は、例えば、複数個の磁性体を組み合わせて構成されてもよい。この場合、複数の磁性体が組み合わされて第1磁性体B1が構成された状態で、送電コイル301の巻回軸に平行な方向において、複数の磁性体の区切り目が無い構成が好ましい。
また、上記において説明したコイルユニット14では、第2コイル142の一部又は全部において、隣接する第2導体同士(絶縁膜同士)を離間させて(つまり、接触させずに)配置する構成が用いられてもよい。
また、上記において説明した第1導体、第2導体、第3導体のそれぞれは、例えば、絶縁膜によって被覆されている。しかし、図2~図9のそれぞれでは、図が煩雑になることを防ぐために、第1導体、第2導体、第3導体それぞれの絶縁膜を省略して図示している。
また、上記の説明において、上面M1上に配置されるとは、上面M1上の空間内に配置されることを意味している。このため、例えば、コイルユニット14において、第1コイル141、又は第2コイル142と上面M1との間にスペーサー等が配置される構成であってもよい。また、当該スペーサーは、平板形状であってもよく、凹凸を有する平板以外の形状であってもよい。
また、上記の説明において、下面M3上に配置されるとは、下面M3上の空間内に配置されることを意味している。このため、例えば、コイルユニット14において、第3コイル143、又は第2コイル142と下面M3との間にスペーサー等が配置される構成であってもよい。また、当該スペーサーは、平板形状であってもよく、凹凸を有する平板以外の形状であってもよい。
以上のように、実施形態に係るコイルユニット(この一例において、コイルユニット14、コイルユニット21のそれぞれ)は、第1面(この一例において、上面M1)と、第1面と反対側の面である第2面(この一例において、下面M3)とを有する第1磁性体(この一例において、第1磁性体B1)と、第1面上に配置され、第1面上において渦巻き状に第1導体が設けられた第1コイル(この一例において、第1コイル141、第1コイル211)と、第1面の一部と第2面の一部とのそれぞれを覆うソレノイドコイルとして第1磁性体に第2導体が巻回された第2コイル(この一例において、第2コイル142、第2コイル212)と、第2面上に配置され、第2面上において渦巻き状に第3導体が設けられた第3コイル(この一例において、第3コイル143、コイルユニット21が備える図示しない第3コイル)と、を備える。これにより、コイルユニット14は、電力の長距離伝送と伝送する電力の安定化とを両立することができる。
なお、コイルユニットにおいて、第1面と直交する方向から第1面上を見た場合における第1コイルの形状と、第1面と直交する方向から第2面上を見た場合における第3コイルの形状とは、略同じ形状であり、第1面と直交する方向から第1面上を見た場合における位置関係のうち第1面上に位置する第2導体と第1コイルとの相対的な位置関係と、第2面と直交する方向から第2面上を見た場合における位置関係のうち第2面上に位置する第2導体と第3コイルとの相対的な位置関係とは、略同じ位置関係である、構成が用いられてもよい。
また、コイルユニットにおいて、第1コイルと第1磁性体との間には、第1コイルによる伝送の周波数帯において第1磁性体の透磁率よりも高い透磁率となる透磁率の周波数特性を有する第2磁性体(この一例において、第2磁性体B2)が配置されている、構成が用いられてもよい。
また、コイルユニットにおいて、第3コイルと第1磁性体との間には、前記第1コイルによる伝送の周波数帯において第1磁性体の透磁率よりも高い透磁率となる透磁率の周波数特性を有する第3磁性体(この一例において、第3磁性体B3)が配置されている、構成が用いられてもよい。
また、コイルユニットにおいて、第1コイルと第3コイルとの少なくとも一方は、フレキシブル基板に設けられたコイルパターンである、構成が用いられてもよい。
また、コイルユニットにおいて、第1コイルと第3コイルとの両方は、1つのフレキシブル基板に設けられたコイルパターンである、構成が用いられてもよい。
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。