JP7067007B2 - 転写シート - Google Patents
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Description
ここで、支持体シートを剥がすときに、被着材からはみ出る部位の転写層が「箔バリ」として残る場合があった。これは、転写層の面内のつながりが強く、これが支持体シートを剥がすときに被着材の端部に働く垂直方向の力に勝ってしまい、被着材からはみ出た部分まで大きく転写層がつながる「箔バリ」となってしまうと考えられる。
図1は、本発明による転写シートの第1実施形態を示す断面図である。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行や直交等の用語については、厳密に意味するところに加え、同様の光学的機能を奏し、平行や直交と見なせる程度の誤差を有する状態も含むものとする。
本明細書において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は、適宜置き換えることができるものとする。
本明細書中において、シート面とは、各シートにおいて、そのシート全体として見たときにおける、シートの平面方向となる面を示すものであるとする。なお、板面、フィルム面に関しても同様であるとする。
また、本発明において透明とは、少なくとも利用する波長の光を透過するものをいう。例えば、仮に可視光を透過しないものであっても、赤外線を透過するものであれば、赤外線用途に用いる場合においては、透明として取り扱うものとする。
第1実施形態の転写シート1は、支持体シート11と、転写層12と、セパレータシート16とを備えている。
本実施形態の支持体シート11は、26μm厚の2軸延伸PETフィルム(「ダイアホイル」、三菱樹脂株式会社製)を素材として用いた。
本実施形態の転写層12は、剥離層13と、絵柄層14と、接着層15とを備えている。
第1の領域13aと、第2の領域13bとは、互いに異なる材料となるように構成されている。
また、第1の領域13aと、第2の領域13bとは、転写シート1のシート面に沿った特定の断面(例えば、図1中の矢印A-Aの位置における断面)において、それぞれ別の領域として領域分けされた状態となるように配列されている。
上記断面(図1中の矢印A-Aの位置における断面)において、第1の領域13aは、格子状に構成されており、第2の領域13bは、単位領域として四角形の領域を構成している。第2の領域13bは、この四角形の領域(単位領域)が2次元方向において、規則的に並べて配置されている。そして、第1の領域13aと第2の領域13bとが間に隙間なく互に隣接配置してなり、該2領域13aと13bとで相補的に転写シート上の全面を被覆してなる。なお、この単位領域の配置は、四角形に限らず、五角形、六角形等の多角形、円形やその他の形状であってもよいし、不規則に並べて配置されていてもよい。ただし、第1の領域13aと第2の領域13bとが交互に並び転写層上の全面を隙間無く被覆するような構成が望ましい。
このように、第1実施形態の剥離層13では、第1の領域13aが格子状に規則的に配列されている。そして、第1の領域13aが形成されていない領域に、第2の領域13bが形成されている。なお、図1では、模式的に理想的な形態を図示しているので、実際には、第1の領域13aや第2の領域13bが図1のような正確な四角形の形状となっておらず、例えば、台形形状、菱形形状等となっていてもよい。
なお、剥離強度の評価については、実験結果とともに後述する。
第1の領域13aとして用いる樹脂は、どのような樹脂であっても利用可能であるが、アクリル樹脂、アクリルポリオールとイソシアネートの混合物、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)とポリエステル樹脂の混合物等が挙げられる。ここで、イソシアネート及びポリエステルは、支持体シート11との剥離強度を調整する作用を備えている。
また、第1の領域13aの乾燥状態における膜厚は、1μmから2μm程度が好ましい。
また、第2の領域13bの乾燥状態における膜厚は、1μmから2μm程度が好ましい。
絵柄層14には、例えば、アクリル樹脂、又は、アクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)との混合樹脂をバインダーに用いたインクにより印刷することができる。絵柄層14の乾燥状態における膜厚は、5μm程度とするとよい。また、絵柄層14には、上述の樹脂の他に着色顔料を含む。
着色顔料としては、例えば、チタン白、鉛白、カーボンブラック、鉄黒、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等の等の公知の顔料中から絵柄層の意匠外観に応じて適宜の物を1種以上選択して用いる。
本実施形態の絵柄層14は、剥離層13上にアクリル樹脂組成物と着色顔料からなるグラビアインキ(「BC耐熱」、昭和インク工業株式会社製)により複数回の印刷を行って形成した。
接着層15の材料としては、アクリル-エポキシ樹脂、アクリル-塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)樹脂等のHS剤、アクリル系粘着剤が挙げられる。接着層15の層厚は、HS剤であれば2μm前後、粘着剤であれば25μm前後が好ましい。
なお、接着層は、転写シート1に設けずに、被着材側に接着剤を予め形成してから転写シートを貼り合せてもよい。被着材側に接着層を形成する場合は、用途に応じて任意の接着剤を選択できる。
本実施形態の接着層15は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)樹脂組成物(「FHS#1」、DICグラフィックス株式会社製)を塗布し、乾燥状態における膜厚2μmのHS層を形成して接着層15とした。
転写を行うときには、セパレータシート16を剥がした後、接着層15を被着材50に接触させて貼り合わせる(図3(a)、図3(b))。転写シート1は、被着材50よりも十分に大きな面積のものを用意しておけば、転写シート1と被着材50との位置合わせは、ラフに行ってもよい。
そして、加熱及び加圧等、接着に必要な工程を適宜行った後、転写しない領域(被着材50と張り合わされていない領域)の転写層12を支持体シート11とともに被着材50から引き剥がす。ここで、剥離層13は、第1の領域13aと第2の領域13bとで材料が異なっており、さらに、支持体シート11への密着力は、第1の領域13aの方が第2の領域13bよりも強くなっている。
被着材50に転写層12が転写された後、この転写層12を保護するために、保護層17を転写層12の上にコートする。保護層17は、UV硬化樹脂組成物(M305(東亞合成株式会社製)100質量部+Irgacure184(BASF製)、3質量部)を乾燥状態における膜厚で30μmとなるよう形成し、80W高圧水銀灯にて露光量600mJ/cm2で硬化して形成した。
図5は、第2実施形態の転写シート2を示す断面図である。
第2実施形態の転写シート2は、第2の領域13bの塗布形態が異なる他は、第1実施形態の転写シート1と同様な構成をしている。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第1実施形態では、第1の領域13aが形成されていない領域に第2の領域13bを塗布(印刷)して形成していた。これに対して、第2実施形態では、第1の領域13aが積層された支持体シート11の全面に第2の領域13bを形成した。これにより、第2実施形態の転写シート2では、断面において図5に示すように、第1の領域13aが絵柄層14と直接接触していない形態となる。
この第2実施形態のような構成であっても、第1の領域13aを通る位置で切断したシート面に平行な断面では、図2に示したように第1の領域13aと第2の領域13bとが領域分けされて構成されている。
次に、上述した実施形態と比較例とを用いて評価実験を行った結果を説明する。
比較例1の転写シートは、第1の領域13aを全面に形成し第2の領域13bを設けなかった他は、第1実施形態と同様な形態とした。
比較例2の転写シートは、第1の領域13aを設けなかった他は、第2実施形態と同様な形態とした。
評価実験は、先ず、各転写シートを110mm角に切り出し、被着材である90mm角の木材に180℃で熱転写した。冷却後、支持体シート11を剥離して、箔バリの最大幅を確認した。
また、リコート性の評価として、UV硬化樹脂組成物(M305(東亞合成株式会社製)100質量部+Irgacure184(BASF製)、3質量部)を乾燥状態における膜厚で30μmとなるよう形成し、80W高圧水銀灯にて露光量600mJ/cm2で硬化し保護層17を形成した。この密着性をJIS K5600-5-6のクロスカット法にて試験し、剥離の有無を確認した。
図6を見てわかるように、第1実施形態の転写シート1及び第2実施形態の転写シート2のいずれも、箔バリを比較例と比べて非常に小さな突出量に抑えることができている。
図7は、比較例の場合の箔バリの発生状況を模式的に示した図である。
比較例、即ち、従来の転写シートでは、転写層(13a(又は13b),14,15)のシート面内方向において材料に差異がなく、そのために転写層の強度がばらつき要素を除いて均一であった。したがって、転写層が被着材50の端部の位置で切断される可能性が低く、箔バリとなることが多かった。
これに対して、本発明の転写シートでは、シート面内に異種材料が交互に存在することにより、シート面内方向のつながりを分断できる。また、異種材料を配置する位置を剥離層13とすることにより、支持体シート11との密着性に差が生じることによる効果(支持体シート11)も期待できる。これにより、仮に箔バリができたとしても被着材50の端部近傍の境界面までの小領域とすることができる。
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
図8から図10は、第1の領域13aと第2の領域13bとの配置の変形形態を示す図である。
第1の領域13aと第2の領域13bとの配置は、図8から図10に例示するような形態としてもよいし、これら例示した形態に限らず、さらに異なる配置としてもよい。
さらに、接着層15において第1の領域と第2の領域とに材料を分けてもよい。
11 支持体シート
12 転写層
13 剥離層
13a 第1の領域
13b 第2の領域
14 絵柄層
15 接着層
16 セパレータシート
17 保護層
50 被着材
60 被転写物
Claims (3)
- 支持体シートと、
前記支持体シートに積層されており、転写後に前記支持体シートから剥離されて被着材の側に転写される転写層と、
を備えた転写シートであって、
前記転写層は、
前記支持体シートに直接接触する位置に配置され、転写層上の全面を被覆して、且つ透明に構成された剥離層と、
前記剥離層と積層された絵柄層と、
を備えており、
前記剥離層は、当該転写シートのシート面に沿った特定の断面において、第1の領域と、前記第1の領域とは異なる材料により構成され、隙間なく互に隣接配置してなり相補的に転写シート上の全面を被覆すると共に支持体シートに対する密着力が前記第1の領域とは異なった第2の領域とが、それぞれ別の領域として領域分けされた状態となるように配列されており、
前記第1の領域と前記第2の領域とは、少なくとも一方が複数配列されており、
前記第1の領域と前記第2の領域とは、転写後の外観は同一の領域に観察される、又は、外観において区別して視認されることがないように構成されており、
さらに、前記第1の領域と前記第2の領域との少なくとも一方は、転写後にさらに積層される保護層との密着性を備える転写シート。 - 請求項1に記載の転写シートにおいて、
前記第1の領域と前記第2の領域との少なくとも一方は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、又は、アクリルポリオールを含むこと、
を特徴とする転写シート。 - 請求項1又は請求項2に記載の転写シートにおいて、
前記第1の領域と前記第2の領域とは、当該転写シートのシート面に沿った特定の断面において、少なくとも一方が単位領域を構成しており、前記単位領域が2次元方向において、規則的、又は、不規則に並べて配置されていること、
を特徴とする転写シート。
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