JP7059870B2 - 鉄骨柱の合成被覆耐火構造及び施工方法 - Google Patents
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なお、以下の説明では、壁体(壁パネル)の位置を基準として方向を規定する場合、鉄骨柱(鋼管柱)がある側を屋内側、その反対側を屋外側と定義する。
このような合成被覆耐火構造は、壁材と鉄骨柱の離隔距離が概ね200mm以下で多用され、離隔部について、鉄骨柱の側面から壁材に向けて耐火被覆材を延長して配設し、離隔部内の耐火被覆施工を省略するものである(例えば、特許文献1参照)。
壁材としては、ALC板(高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート板)、PC板(プレキャストコンクリート板)、押出成形セメント板、繊維混入けい酸カルシウム板、石膏ボードなどが用いられる。
この構造は、鉄骨柱の一側面に取付金物を介して壁材を取り付け、鉄骨柱における壁材に対向する側面以外の面には吹付けロックウールを施工する。
この構造は、鉄骨柱と壁材とは間隔が空くことになるが、この間隔が空いた部分には、鉄骨柱から壁材に向けて掛け渡した鉄筋からなる力骨にラス網を取付けて耐火被覆の下地材とし、吹付けロックウールを施工するようにしている。この構造は、非特許文献1および2と同じく、所定の条件に基づいて実施される性能評価試験により性能を確認し、建築基準法第2条第七号に規定される国土交通大臣の認定を受けたものである。
一般に、長手方向に連続する空洞部が複数隣接して配置され、短辺は複数の開口部を有する。長辺の一端面には凸状の連続した突起があり、もう一端面にはそれに対応する凹状の嵌合部があり、壁パネルの横張として使用する場合には、突起のある一端面が上辺、凹状の篏合部が下辺となるように配置して、横目地を構成して上方に積層して壁パネルを構成していく。地震時の変形を考慮して、横目地は10~15mm程度の隙間を設け、下側の壁パネル上部の突起と、上側の壁パネル下部の凹状の嵌合部内面が、いずれの面とも非接触状態となるように配置固定するのが一般的である。横目地の屋外側は、シーリング材による防水処理を行い、屋内側は、必要に応じてガスケットを配置するが、多くの場合は無処理である。
上記認定のための性能評価試験は、加熱炉内に試験体を設置し、柱の長期荷重を載荷した状態でISO834の標準加熱温度により加熱を行ない、構造安全性を検証するもので、柱の四面(押出成形セメント板と耐火被覆材の全表面)が加熱される。
上下の壁パネルは、加熱の経過にともない収縮し、目地幅が上下に拡大する傾向がみられる。また、横目地部は、前述のとおり屋内側は、非特許文献3の図1透視図に示すように、一般にはガスケットを配するが、無処理とする場合もあり得る。
横目地部11において、耐火被覆材9の先端面と壁体7との当接部には、前述したセラミックファイバーブランケットからなる接合部処理材41が施工されている。
このため、図6の矢印で示すように、壁体7の屋内側であって耐火被覆材9の外側の空間から、横目地部11の内部を経由して空間Sに至る熱気の流通経路が存在する。壁パネル35単体の熱抵抗は、耐火被覆材9よりも大きいため、通常であれば、合成被覆耐火構造は、柱単体の耐火構造よりも鋼材温度が抑制されるが、横目地部11からの熱気の流入によって、耐火被覆材9の厚さ、鉄骨柱3の断面寸法によっては、空間Sに面する側の鋼材温度が著しく上昇してしまい、崩壊に至る場合がある。
前記壁体は、上端面に全長に亘って凸状の突起を有し、かつ下端面に全長に亘って前記突起よりも広幅の凹状の嵌合部を有する壁パネルが、横目地部を介して高さ方向に積層されてなり、
前記横目地部は、下側の壁パネルの上端面の突起と、上側の壁パネルの下端面の凹状の嵌合部内面が、非接触状態である空隙部を有し、
前記壁体と前記耐火被覆材の取り合い部において、横目地部は、前記突起の周囲の空隙部のうち、前記突起の上面および前記鉄骨柱側の部分に、圧密可能な耐火材を前記耐火被覆材の当接幅以上の長さに亘って配設したことを特徴とするものである。
前記圧密可能な耐火材を、下側の壁パネルの突起に貼付して、上側の壁パネルの篏合部を前記突起に篏合させる際に、前記耐火材の一部をせん断破壊しながら前記空隙部に圧密充てんすることを特徴とするものである。
前記圧密可能な耐火材を、上側の壁パネルの凹状の嵌合部に貼付して、該上側の壁パネルの篏合部を下側の壁パネルの前記突起に篏合させる際に、前記耐火材の一部をせん断破壊しながら前記空隙部に圧密充てんすることを特徴とするものである。
本発明に係る鉄骨柱の合成被覆耐火構造の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
本実施の形態に係る鉄骨柱の合成被覆耐火構造1は、図1、図2に示すように、鉄骨柱3の一側面に取付部材5を介して耐火性を有する壁体7が取り付けられ、鉄骨柱3の他の側面には耐火被覆材9が配設されると共に耐火被覆材9が壁体7側に延出して当接することで、鉄骨柱3の外周部を壁体7と耐火被覆材9で覆うようにしたものである。
そして、壁体7と耐火被覆材9の取り合い部において、横目地部11には、圧密可能な耐火材13を耐火被覆材9の当接幅以上の長さに亘って配設したことを特徴とするものである。
以下、合成被覆耐火構造1を構成する各構成部材の詳細を説明する。
鉄骨柱3は、図1に示す例は、角形鋼管柱(□-300×300×9)であるが、本発明の鉄骨柱3の形状や寸法は特に限定されるものではない。したがって、円形の鋼管柱や、形鋼からなる柱も含まれる。
なお、以下の説明においては、図1に示した角形鋼管柱(以下、単に「鋼管柱」という)を前提として、鋼管柱の壁体7に直交する面を側面と定義する。したがって、以下の説明では、鋼管柱として鉄骨柱3と同じ符号を付して説明する。
取付部材5は、鋼管柱3の壁体7に対向する面に壁体7側に突出するように設けられた断面矩形状の下地鋼材15と、下地鋼材15の両側面に下地鋼材15を挟持するように配置され、鋼管柱3の全長に亘る長さを有する一対のアングル材17(以下、「定規アングル17」という)と、一端側が壁体7にボルト19、平ナット21によって固定され、他端側で定規アングル17の一片を壁体7と協同して挟持する鋼製プレート23(通称:Z金物)で構成されている。一般に、定規アングル17と鋼製プレート23は最終的に溶接固定される。
定規アングル17は、構造耐力上必要な断面寸法以上であれば任意の形状寸法を選択できるが、図1に示す例は、L-50×50×6である。
鋼管柱3と壁体7の離隔距離は、通常25mm以上であるが、図1に示す例では、離隔距離は、定規アングル17のせい以上に設定されることから、本実施の形態では、離間距離としては50mm以上が適用可能な範囲である。
壁体7は耐火性を有し、鉄骨柱3の一側面に取付部材5を介して取り付けられている。すなわち、壁体7の取り付け方法は柱あるいは間柱にファスナーを用いて固定する横張工法と同様の工法である。
また、壁体7は、上端面に全長に亘って凸状の突起31を有し、かつ下端面に全長に亘って突起31よりも広幅の凹状の嵌合部33を有する壁パネル35が、横目地部11を介して高さ方向に積層されてなるものである。
横目地部11は、下側の壁パネル35の上端面の突起31と、上側の壁パネル35の下端面の凹状の嵌合部33の内面とは、突起31の全周面が嵌合部33の内面に非接触で篏合しており、それ故に、突起31の外周には空隙部を有している。
また、本実施の形態の横目地部11は、壁パネル35を上下方向に積層するのに際し、横目地高さとして10mmの間隔をあけて配置し、積層後に屋外側の隙間にはシーリング材27を配している。
耐火被覆材9は、鋼管柱3の側面及び屋内側の面を覆うように設けられ、鋼管柱3の側面に設けた耐火被覆材9は、壁体7側に延出してその先端面が壁体7に当接している。これによって、鋼管柱3は、その外周部を壁体7と耐火被覆材9で覆われている。
耐火被覆材9の固定方法は特に限定されず、鋼管柱3の表面において、壁体7に対向する面部分以外の面に接触させて配置しても、空間をあけて配置してもよい。
圧密可能な耐火材13は、壁体7と耐火被覆材9の取り合い部(当接部)において、横目地部11における突起31周囲の空隙部のうち、突起31の上面および鉄骨柱3側(屋内側)の部分に、耐火材13を耐火被覆材9の当接幅以上の長さに亘って配設されている(図1、図2参照)。
これによって、図6に示したような、熱気の回り込みが遮断され(図1参照)、熱気が、壁体7と耐火被覆材9と鋼管柱3で囲まれた空間Sに流入することがない。
しかし、本発明においては、凹状の嵌合部33の両側の壁が下側の突起31の両側の底壁に直接当接していてもよい。この場合には、圧密可能な耐火材13は突起31の上面と、鋼管柱3側の側面に配設されればよい。
実施の形態1で説明した合成被覆耐火構造1の施工方法について、図3に基づいて説明する。
図3(a)に示すように、圧密可能な耐火材13を、予め下側の壁パネル35における上端面の突起31の上面に接着剤で張り付けておく。このとき、耐火材13の屋外側の端部は、突起31の屋外側の壁と同じ位置にあり、屋内側の端部は、突起31の屋内側の壁よりも内方に延出させておく。
突起31の上面に張り付ける耐火材13の屋内側への延出寸法は、長め(例えば、壁パネル35の屋内側の面の位置)にして、施工後に余長を切断するようにしてもよい。
圧密可能な耐火材13を突起31上面への貼り付ける場合、耐火材13を屋内側に延出させるのではなく、図4(a)に示すように、突起31の屋内側の側面に沿わせて貼り付けてもよい。
この場合、図4(b)に示すように、上側の壁パネル35を篏合させることで、突起31の上面に配置された部分が圧密され、かつ突起31の側面に配置された部分は、せん断破壊されながら突起31の屋内側側面に隣接する隙間内に充てんされていく。
このように、耐火材13を突起31の屋内側側面に沿わせるように貼り付けることで、横目地部11内に耐火材13をより圧密された状態で配設することができ、熱気の流入をより確実に防止できる。
本実施の形態は、実施の形態1で説明した合成被覆耐火構造1の施工方法の他の方法に関するものであり、図5に基づいて説明する。
図5(a)に示すように、圧密可能な耐火材13を、予め上側の壁パネル35における下端面の凹状の嵌合部33内に接着剤で張り付けておく。このとき、耐火材13の屋外側の端部は、凹部の屋外側の壁に当接させ、屋内側の端部は、凹部における少なくとも屋内側の鉛直面に沿う位置まで延長して配置する。図5(a)に示す例は、上側の壁パネル35の屋内側の下端面にまで延長して配設したものである。
この施工方法では、横目地の高さ以上でかつ、その1.5倍以下の厚さのものを用いる。それ以上厚くなると、施工性が低下するので、注意する必要がある。
なお、上側の壁パネル35の凹状の嵌合部33の両側の壁が下側の壁パネル35の突起31の両側の底壁に直接当接する場合には、耐火材13を貼り付ける際の延長寸法を図5(a)よりも短くし、壁パネル35の下端面に達しないようにする。
横目地部11内に挟持されることなく充てん処理を完了できる最適長さは、下側の壁パネル35の突起31と上側の壁パネル35の嵌合部33の寸法により異なるので、適宜調整して決定する。ただし、屋内側への延長寸法は、突起31側面の隙間を超え、かつ、横目地深さの1/2を超えない長さとする。
3 鉄骨柱(鋼管柱)
5 取付部材
7 壁体
9 耐火被覆材
11 横目地部
13 耐火材
15 下地鋼材
17 アングル材(定規アングル)
19 ボルト
21 平ナット
23 鋼製プレート
25 縦目地部
27 シーリング材
29 耐火バックアップ材
31 突起
33 嵌合部
35 壁パネル
41 接合部処理材
S 空間
Claims (4)
- 鉄骨柱の一側面に取付部材を介して耐火性を有する壁体が取り付けられ、前記鉄骨柱の他の側面には耐火被覆材が配設されると共に該耐火被覆材が前記壁体側に延出して当接することで、前記鉄骨柱の外周部を前記壁体と前記耐火被覆材で覆うようにした鉄骨柱の合成被覆耐火構造であって、
前記壁体は、上端面に全長に亘って凸状の突起を有し、かつ下端面に全長に亘って前記突起よりも広幅の凹状の嵌合部を有する壁パネルが、横目地部を介して高さ方向に積層されてなり、
前記横目地部は、下側の壁パネルの上端面の突起と、上側の壁パネルの下端面の凹状の嵌合部内面が、非接触状態である空隙部を有し、
前記壁体と前記耐火被覆材の取り合い部の横目地部のみにおいて、前記突起の周囲の空隙部のうち、前記突起の上面および前記鉄骨柱側の部分に、圧密可能な耐火材を前記耐火被覆材の当接幅以上の長さに亘って配設したことを特徴とする鉄骨柱の合成被覆耐火構造。 - 前記横目地部は、下側の壁パネルの上端面と、上側の壁パネルの下端面が離隔されて、両者が直接接触していないことを特徴とする請求項1に記載の鉄骨柱の合成被覆耐火構造。
- 請求項1又は2に記載の鉄骨柱の合成被覆耐火構造の施工方法であって、
前記圧密可能な耐火材を、下側の壁パネルの突起に貼付して、上側の壁パネルの嵌合部を前記突起に嵌合させる際に、前記耐火材の一部をせん断破壊しながら前記空隙部に圧密充てんすることを特徴とする鉄骨柱の合成被覆耐火構造の施工方法。 - 請求項1又は2に記載の鉄骨柱の合成被覆耐火構造の施工方法であって、
前記圧密可能な耐火材を、上側の壁パネルの凹状の嵌合部に貼付して、該上側の壁パネルの嵌合部を下側の壁パネルの前記突起に嵌合させる際に、前記耐火材の一部をせん断破壊しながら前記空隙部に圧密充てんすることを特徴とする鉄骨柱の合成被覆耐火構造の施工方法。
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