JP7057877B2 - 凍結状態にある常温で液体状の物質の昇温方法 - Google Patents
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例えば、果物や野菜のジュース等の場合には、果物等の生産地に近い場所で果汁を絞り、これを凍結することにより、新鮮な果物等から風味や栄養価に優れた果汁をその品質を損なうことなく凍結状態として保管又は輸送することができる。
このような凍結状態にある物質の解凍方法として、従来は、自然解凍や多段階冷凍冷蔵解凍の他、熱風を当てる解凍方法、マイクロ波を照射して解凍する方法等が提案されている。
1.前記流動性媒体が塩水から成るシャーベット氷であること、
2.前記凍結状態の物質を解凍直前の状態にまで昇温すること、
3.前記凍結状態にある物質が、2L以上の体積を有すること、
4.前記物質が、飲料、ゼリー、液卵、母乳、薬品、血液の何れかであること、
が好適である。
しかも凍結状態にある常温で液体状の物質は、この物質の凍結点未満の所望温度まで昇温されることにより、固体の状態を保ったまま内部まで均一に昇温するため、品質劣化のおそれもない。
また凍結濃縮により、凍結品に濃度勾配があった場合でも、内部まで均一に昇温できる。
前述したとおり、凍結状態にある常温で液体状の物質を従来公知の自然解凍等の方法で昇温させると、界面に熱伝導率の低い境界膜が形成されることから、効率よく物質から冷熱を奪うことが困難であった。本発明では、常温で液体状の物質の凍結点未満の温度で流動性を有する流動性媒体を用いることにより、このような境界膜を形成することなく、効率よく昇温対象である凍結品と流動性媒体の熱交換が可能になる。
尚、「冷熱」とは、相対的に温度の高い流動性媒体から温度の低い凍結品へエネルギーが移動する際に、一方で、凍結品から流動性媒体へ移動すると観念できるマイナスのエネルギーのことをいう。
尚、本明細書において、「凍結点」とは、「凝固点」及び「融点」と同じ概念であり、常温で液状の物質の凍結点とは、物質が均一に溶けた状態で、氷結状態から溶け始める温度を意味する。尚、凍結点は、JIS K 0065に準拠して測定することができる。
本発明の昇温方法で昇温される対象は、凍結状態にある常温で液体状の物質であり、前述したとおり、かかる凍結品は、自然解凍等の従来公知の方法で昇温させると、界面に液状膜を形成してしまうため、効率よく熱交換することが困難であるが、本発明の昇温方法によれば、液状膜の形成が抑制されるため効率よく昇温することができる。
常温で液体状とは、液状,ゲル状,エマルジョン等であり、少なくとも液体を有して流動性を有するものであればよく、この液体中に固形分が存在していてもよい。
本発明の昇温方法は、常温で液体状の物質であって、品質保持のために凍結状態で保存や輸送することが必要な物質に好適に使用でき、これに限定されないが、果汁等の飲料、ゼリー、液卵、母乳、薬品、血液等に特に好適に使用できる。
また、凍結品は、通常、缶等の金属製容器や、ボトル、パウチ等の樹脂製容器に充填された後、凍結されたものをいうが、容器等に充填されない内容物そのものが凍結したものも想定できる。
本発明の昇温方法において、凍結品との間で熱交換する流動性媒体としては、被昇温対象である常温で液体状の物質の凍結点未満の温度で流動性を有することが重要である。すなわち、被昇温対象物である物質の凍結点未満で流動性を有することにより、凍結品と大きな接触面積で接触して効率よく凍結品と熱交換することができる。
このような流動性媒体は、微細な氷と液体(水溶液)の固液二相混合物であるシャーベット氷(アイススラリー)から成る。シャーベット氷は、凍結品から奪った冷熱を氷として蓄えることができると共に、氷は蓄熱能力及び融解潜熱が大きいことから、シャーベット氷の温度を一定に維持することができ、安定して凍結品を昇温させることが可能である。
流動性媒体の水溶液の溶質としては、塩(塩化ナトリウム)、砂糖、尿素、エチレングリコール、プロピレングリコールエタノール等を例示することができる。また微細氷は、数百μm程度の直径の粒状である。
本発明においては、このようなシャーベット氷の氷充填率、溶質の種類及び濃度を調整することによって、凍結品の凍結点未満で流動性を有する流動性媒体とすることができる。
流動性媒体の好適な流動性を確保するためには、氷充填率は5~30%の範囲にあることが望ましい。5%未満だと、温度の保持機能が乏しく、30%を超えると、流動性が不十分となり、凍結品の表面に氷が形成され易くなり凍結品表面での熱伝達が低下する虞がある。
Te=-0.559d+0.000118d2―0.000568d3・・・(1)
で近似される。
まず流動性を確保するための所望の氷充填率を決め、凍結品を解凍するための所望の温度を決定する。そして、その温度を塩水の凍結点(融点/凝固点)とする塩分濃度を上記式(1)から求め、求めた塩分濃度の塩水を生成する。
例えば、シャーベット氷の温度を-1.5℃にするためには、氷充填率を30%とした場合、上記式(1)より、塩分濃度は、2.6%となる。予め製造しておいたシャーベット氷を、この塩水の塩分濃度を保ちながら、塩水に少しずつ投入し、塩水の温度が所望の温度に下がるまで塩分の追加と、シャーベット氷の投入を行う。そして、塩水の温度が所望の温度まで下がったら、所望の氷充填率となるようにシャーベット氷の投入量を調整すればよい。
尚、上記式(1)は、塩水以外では、dを溶質の濃度(%)として、エタノールの場合、
Te=-0.358d-0.00814d2-0.0000788d3
で近似され、エチレングリコールの場合、
Te=-0.302d-0.00226d2-0.000125d3
で近似され、プロピレングリコールの場合、
Te=-0.267d-0.00253d2-0.000138d3
で近似されることが知られている。
本発明の昇温方法においては、上述した凍結品、及びこの凍結品の凍結温度未満の温度に調整された流動性媒体を用い、これらを凍結品に直接的又は容器等を介して間接的に接触させて熱交換することにより、凍結品を凍結点未満の所望の温度に昇温する。
尚、凍結品の昇温目標温度は、凍結品の凍結状態に応じて決定され、凍結品が均一に凍結されている場合には、凍結点未満であり、特に凍結点よりも-0.5℃程度低い温度を目標にすることが望ましい。一方、凍結品が凍結濃縮している場合には、凍結品の外側部分は水分が多い氷であるので、このような場合には、溶けきった物質の凍結点ではなく、水の凍結点(0℃)未満の所望の温度となるまで昇温させる。その場合、凍結点(0℃)よりも-0.5℃程度低い温度を目標にすることが望ましい。
本発明の昇温方法においては、凍結品の比表面積が小さいほど容器表面での熱伝達効率が高くなるため、凍結品は体積が大きいほど効率よく昇温することができる。凍結品の種類、およびその形状にもよるが、2L以上の容量で昇温操作に賦することが望ましい。
また流動性媒体が充満された容器中は、経時により凍結品との界面付近の温度が容器外壁付近の温度に比して低くなる温度勾配を生じるので、流動性媒体を撹拌或いは循環して流動性場体の温度を均一化することが望ましい。これにより効率よく凍結品を昇温することができる。
果汁濃度100%のオレンジ果汁飲料が、容積25L(直径285mmの円筒で高さ約370mmのペール缶)のスチール製容器に充填され、-40℃で冷凍された凍結品を入手した。このスチール製容器入り凍結品のおおよそ中心位置(直径方向の中心位置で上端から160mm位置)及び、高さ方向中心位置で外側部分(容器辺から25mm離れた位置)に温度計測のための熱電対を設置した。この凍結品を塩分濃度2.6%、氷充填率30%の塩水から成るシャーベット氷(目標温度-1.5℃)中に浸漬して、凍結品の内部の温度が-40℃から-10℃まで昇温する時間を計測したところ、約2時間であった。また、そのときの凍結品の外部の温度は-9℃であり、凍結品の内部の温度との温度差も小さく、均一に短時間で昇温することができた。
実施例1で用いた凍結品と同じものを、室温15℃で自然解凍を行った。実施例1の昇温時間である2時間経過後の状態は、中心温度-25℃、外側温度-20℃であり、全く解凍できていない状態であった。
Claims (5)
- 凍結状態にある、常温時に液体状の物質を、当該物質の凍結状態に応じて、前記内容物の凍結点未満の所望の温度に昇温させる方法であって、
前記物質の凍結点未満の温度で流動性を有する流動性媒体を用い、該流動性媒体と前記凍結状態の物質との間で熱交換を行うことにより、前記凍結状態にある物質の温度を昇温させることを特徴とする昇温方法。 - 前記流動性媒体が塩水から成るシャーベット氷である請求項1記載の昇温方法。
- 前記凍結状態の物質を解凍直前の状態にまで昇温する請求項1又は2記載の昇温方法。
- 前記凍結状態にある物質が、2L以上の体積を有する請求項1~3の何れかに記載の昇温方法。
- 前記物質が、飲料、ゼリー、液卵、母乳、薬品、血液の何れかである請求項1~4の何れかに記載の昇温方法。
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JP2016154453A (ja) | 2015-02-23 | 2016-09-01 | 有限会社冷熱技研 | シャーベット氷を使用した凍結食品解凍法 |
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