JP7054302B2 - 貼付凍結工法 - Google Patents
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Description
従来技術において、構造物と凍結管の間の間詰め材として急結性のモルタルやコンクリートを使用している。しかし、急結性のモルタルやコンクリートの熱伝導性は良好ではない。また、硬化する過程で間詰め材であるモルタルが収縮して剥離し、その結果、凍結管と構造物との間に空間が介在してしまう場合がある。凍結管と構造物との間に空間が介在してしまうと、当該空間が断熱材として作用し、凍結管内の冷媒(ブライン、液化炭酸ガス等)の冷熱が構造物に効率的に伝達されず、構造物の背面側の地盤が効率的に凍結されない恐れがある。
地中の構造物(10:セグメントや鋼矢板等)に凍結管(1)を貼り付け、凍結管(1)を貼り付けた構造物(10)の背面側(凍結管1の反対側)の地盤(G)を凍結させる貼付凍結工法において、
金属、当該金属の酸化物、当該金属を主成分とする合金の何れかの微小粒体を含有すると共に、シール材を含有し、熱伝導性と密着性を併せ持つ間詰め材(2)を用いて、前記凍結管(1)を前記構造物(10)に貼り付け、
前記シール材はシリコーン系シーリング材とすることを特徴としている。
ここで、一般に金属の紛体は、消防法で規定される危険物第2類として示されるように、爆発または発火などの恐れがあり、特にアルミニウム粉末は危険とされている。アルミニウム粉末の例では、目開き150ミクロンの網フルイを通過するものが50wt%以上のもので、指定数量100kgにおいて第二類の可燃性固体に該当しないとされている。また、金属粉は粉塵爆発の可能性もあり、一般に粉塵爆発を起こす微粉の粒子径の限界は、100~0.1ミクロンと言われている。本発明に用いる前記微小粒体は、貼付け凍結管設置個所において材料を混合する場合も考えられ、前記の微細粉に対する安全性を考慮するとともに、使用数量が少量の場合も多量の場合もあり、また用いる微小粒体は、粒度分布を持つため、概ね平均粒子径100ミクロン以上を目安とする微小粒体とするのが好ましい。
前記微小粒体の平均粒子径の測定方法については、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)による測定方法が好ましい。一つの粒子にレーザービームを照射すると、その粒子からは様々な方向に「回折・散乱光」といわれる光が発せられる。この「回折・散乱光」は光が発せられる方向に一定の空間パターンを描く。これを「光強度分布パターン」といい、粒子の径によってさまざまな形をとるとされている。このパターンを検出することにより、粒子の径がわかる。様々な大きさの粒子からなる試料を測定する場合、光強度パターンはそれぞれの粒子からの回折散乱光の重ね合わせになる。レーザー回折・散乱法では、光強度パターンを検出して解析することにより、粒子の径や含まれる割合を求めることができる。それを基に粒度分布を算出する。粒度分布を表すための基準には、個数、面積、体積があり、その分布の表し方には頻度分布と積算分布がある。本発明において、粒度分布を表すための基準は体積基準とすることが好ましい。
また粒度分布の表し方については積算分布を用いることが好ましい。
なお、平均粒子径は、前述の体積を基準とした積算分布より「メジアン径(50%粒子径)」を平均粒子径とすることが好ましい。
そして、前記金属を主成分とする合金(アルミニウムを主成分とする合金)としては、例えば、ジュラルミン、アルミマンガン合金、アルミマグネシウム合金、アルミ亜鉛マグネシウム合金などがある。
この場合、前記金属を主成分とする合金(銅を主成分とする合金)としては、例えば、青銅、真鍮、白銅、丹銅などがある。
ここで、間詰め材(2)の密着性を保持するとは、凍結管を構造物に貼り付ける際は、間詰め材に含有するシール材は固化する前であり、凍結管表面と構造物表面とに接着する性状を保有し、その後接着状態を保持しつつ、シール材が固化して、力を加えても容易に構造物から凍結管が剥離しない密着状態を保持している状態を維持していることを示している。
一般にシリコ-ンは、金属などと比べ熱伝導性が高いとはいえず、シリコーン系シーラント材を主な材料とする本発明の間詰め材(2)も、金属などと比べ熱伝導性が高いとはいえない。しかし、シール材に金属で構成される微小粒体を混入させることで、間詰め材としての熱伝導性を改善することが出来る。そして、シリコーン系シーラント材は温度変化に強いので、常温~-50℃といった急減な熱変化に対しても、その熱伝導性を保持することが出来る。
また、前記の間詰め材が、密着性を保持することで、凍結管-間詰め材-構造物という熱伝達経路の連続性を保持して、貼付凍結に必要な熱伝導性を保持することができる。
そして、密着性を有するシール材は、貼り付け後に乾燥固化することはなく、冷熱を与え低温化しても、シール材自体が分離せず、凍結管(1)または構造物(10)から剥離し難いので、凍結管(1)と構造物(10)との間に空間が形成されてしまうことは無く、断熱層である空間が介在することにより凍結管(1)を流れる冷媒の冷熱が構造物(10)に伝達され難くなってしまう事態が防止される。
そして、金属、当該金属の酸化物、当該金属を主成分とする合金の何れかは、間詰め材(2)中に微小粒体として含有するため、凍結管(1)表面ならびに構造物(10)表面に対して、金属、当該金属の酸化物、当該金属を主成分とする合金は凹凸を形成せず、シール材の密着作用が主体となって、前記の密着性を維持する。逆に、凍結管(1)表面ならびに構造物(10)表面に凹凸がある場合には、金属、当該金属の酸化物、当該金属を主成分とする合金は微小であるため、貼り付け時のシール材の可塑性により凹凸面に対する密着性を維持する。
また、シリコーン系シーリング材は、高分子材料であるが、シリコーンのガラス転移点が低いため、耐熱性に優れ、貼付凍結工法のように常温から極低温に短時間に変化させても間詰め材としての機能が損なわれない。
また、シール材はシリコーン系シーラントとしており、本発明の間詰め材を用いて凍結管を構造物に貼り付けた後に、間詰め材が硬化しても硬化熱が発生しない。一方、従来技術のモルタルやコンクリートは、セメントの硬化熱の発生が大きく、凍結管や構造物は鋼製の場合が多く熱膨張収縮を起こすため、設置時に熱膨張して相互に密着していても、セメントの硬化が収束して凍結管、間詰め材、構造物が熱収縮し、相互の密着性の喪失が起きてしまう。本発明によれば、間詰め材の硬化熱に起因する密着性の喪失は起きない。
ここで、図示の実施形態においては、凍結管1を循環する二次冷媒として液化炭酸ガス(CO2)を使用している。ただし、循環二次冷媒としては、地盤凍結工法の施工に必要な冷熱を供給できる程度に沸点が低温であるならば、液化炭酸ガス以外の液化ガスや、ブラインを冷媒として使用することが可能であり、循環二次冷媒を液化炭酸ガスに限る必要は無い。
最初に図1を参照して、凍結管1を構造物10に取り付ける態様について説明する。ここで構造物としては、例えばシールド機の後胴部、トンネル覆工用セグメント、トンネル或いはシールド機を含み、土留めや立坑、既設構造物も包含する。
図1では明示されていないが、マイクロチャンネル1Aの全ての微小冷媒流路内を流れる流体(冷媒)が同一方向に流れる。ただし、マイクロチャンネル1Aの複数の微小冷媒流路の一部を冷媒の供給路として使用し、残りの微小冷媒流路を冷媒の戻り流路として使用することも可能である。
図示の実施形態では、凍結管1がマイクロチャンネルの場合を記載しているが、従来技術の鋼製角パイプでも凍結管1として適用可能である。
マイクロチャンネル1Aの微小冷媒流路内部に冷媒(例えば液化炭酸ガス)が流れると、マイクロチャンネル1Aを貼り付けた構造物10を介して、構造物10の背面側(マイクロチャンネル1の反対側)の地盤の熱を吸収し、当該地盤を凍結する。
本明細書において、マイクロチャンネル1A、分散ソケット1B、集合ソケット1Cを総称して「マイクロチャンネル」と記載する場合があり、「マイクロチャンネル1」と表示する場合がある。また、分散ソケット1B、集合ソケット1Cは、図1以外の図面では省略している。
図2における左右方向がマイクロチャンネル1の長手方向であり、二次冷媒が流れる方向は矢印Fで示されている。
図1を参照して説明した通り、マイクロチャンネル1の上流側(図2では左側)には、地上側の冷凍機から二次冷媒を供給する供給管2Aが接続され、マイクロチャンネル1の下流側(図2では右側)には、地上側の冷凍機に二次冷媒を戻す戻し管2Bが接続されている。
上述した様に、図2では、分散ソケット1B及び集合ソケット1C(図1参照)の図示を省略している。
図3及び図4を参照して後述する様に、間詰め材2の凍結管ならびに構造物への接着性(密着性)、熱伝導性、その他に関して、発明者は実験を行い、実験結果に基づいて、間詰め材2の材料成分を特定している。
そして図示の実施形態で用いられる間詰め材2は、シール材としてシリコーン系シーリング材を用いると共に、金属酸化物の微小粒体として酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)微小粒体を用いている。そのため図示の実施形態で用いられる間詰め材2は、接着材としての機能である密着性を有すると共に、良好な熱伝導性を有している。
発明者は、前記シリコーン系シーリング材として、1液型シリコーンシーラントを用い、これに酸化アルミニウム微小粒体を練り混ぜて間詰め材とし、マイクロチャンネルと鉄板の間にこの間詰め材を介在させ、マイクロチャンネルに冷媒を循環させて凍結運転を実施し、冷媒温度と鉄板背面温度との温度差を計測する実験を行った。
発明者の実験によれば、図示の実施形態で用いられる間詰め材2は、貼り付け時の常温から凍結時の-50℃程度の温度帯で、凍結管と構造物との密着性が低下しなかった。また、凍結管表面温度と鉄板背面温度との温度差は小さく、間詰め材の熱伝導性が保持されていることが確認できた。従って、実際の貼付凍結工法において、間詰め材2が密着性を失うことがなく、構造材10から剥離することも無く、熱伝導性も保持される。
発明者の実験については後述する。
また、マイクロチャンネル1は、間詰め材2が含有するシリコーンシーラント(シール材)の接着作用により、構造物10に確実に貼り付けられる(接着される)。そして、シリコーンシーラント(シール材)はマイクロチャンネル1、構造物10から剥離し難いので、間詰め材2の剥離によりマイクロチャンネル1と構造物10との間に空間が形成されてしまうことが防止される。そのため、介在する空間が断熱材として作用して、マイクロチャンネル1を流れる冷媒と構造物10の背面の地盤Gとの熱交換が阻害されてしまう事態が防止され、地盤Gが効率的に凍結される。
間詰め材に含有するシール材の熱伝導性、接着性(密着性)について実験を行った。その結果を図3で示している。
実験例1では、シール材として、シリコーンシーラント(試料No1)、モルタル(試料No2)、高分子材(試料No3)、放熱シート(試料No4)を使用した。そして、試料No1~4をそれぞれ適正量、マイクロチャンネル(凍結管)に塗布して、塗布されたマイクロチャンネルを鉄板(構造物に相当)に貼り付けた。そして、マイクロチャンネルの微小冷媒流路に冷媒として液化炭酸ガスを循環させ、マイクロチャンネル表面と鉄板(構造物)背面の温度差を計測した。
さらに、液化炭酸ガスを7日間循環させた後、マイクロチャンネルの鉄板への貼り付け状況を確認した。
ここで、実験例1の試料No1~4はシール材のみで構成され、金属或いは金属酸化物は包含していない。
図3では、マイクロチャンネルの表面温度と鉄板背面の温度の温度差は、高分子材(試料No3)が最小(0.96℃)であった。
シリコーンシーラント(試料No1)とモルタル(試料No2)についても、前記温度差はそれぞれ3.76℃、3.15℃であり、試料No1、No2の熱伝導性は良好であることが分かる。
放熱シート(試料No4)は最も温度差が大きかった(6.36℃)。しかし、この程度の温度差であれば、試料No4は貼付凍結工法に使用可能である。
試料No1~4の各々は、鉄板背面の温度とマイクロチャンネルの表面温度の温度差が1~6℃程度であるので、実験例1により、貼付凍結工法で用いられる間詰め材として使用可能であることが判明した。
一方、モルタル(試料No2)、放熱シート(試料No4)では、試料(間詰め材)が剥離して、マイクロチャンネルと鉄板間に隙間が生じた。したがって、モルタル、放熱シートは、密着性の点で、貼付凍結工法で使用する間詰め材として不適格であることが判明した。
モルタル(試料No2)、高分子材(試料No3)は混合作業を必要とする上、他の固定手段が必要となる。放熱シート(試料No4)は混合作業が不要であるが、他の固定手段を併用することが必要であった。したがってモルタル、高分子材、放熱シートは、作業性の点で問題がある。
実験例1において、図3に示す実験結果、熱伝導性、接着性(密着性)、作業性及びコストを総合的に評価すると、間詰め材のシール材としては、シリコーンシーラントが最適であることが確認出来た。
シール材に酸化アルミニウム(アルミナ)微小粒体を添加する効果に関して、実験を行い、図4にその結果を示す。
実験例2では、アルミナを添加した場合に、間詰め材の熱伝導性と作業性が向上するか否かを確認した。
実験例2では、シリコーンシーラントに対して所定量のアルミナ微小粒体を添加した間詰め材(試料No1)及びシリコーンシーラントのみでアルミナを添加していない間詰め材(試料No2)を用意した。アルミナの所定量は、シリコーンシーラントを200gに対してアルミナ50~100gとした。
試料No1、No2をそれぞれモールドに詰めて、温度一定の冷凍庫に入れ、熱電対で試料の温度変化を確認した。
図4に示す実験結果により、アルミナをシリコーンシーラントに添加することで熱伝導性が向上することが確認出来た。
図4では明示されていないが、アルミナを添加したシリコーンシーラントにより、マイクロチャンネルを鉄板に貼り付け、密着性を確認したところ、24時間後に力を加えても、マイクロチャンネルは鉄板から剥がれなかった。このことから、アルミナを添加しても、シリコーンシーラントの密着性及び接着力が低下しないことが判明した。
図5において、扁平な平板状のマイクロチャンネル1は、軽量で可撓性に富むため、セグメント10の内面の曲率に合せて容易に貼り付けることが出来る。
マイクロチャンネル1には供給管2A、戻し管2Bが接続され、供給管2Aは供給系統(地上側の冷凍機からの供給系統)に接続され、戻し管2Bは戻り系統(地上側の冷凍機への戻り系統)に接続されている。
図2で示す様に、間詰め材2を用いてマイクロチャンネル1(凍結管)をセグメント10の内面に貼り付ければ、間詰め材2の組成分であるシリコーンシーラントが接着作用を発揮するので、マイクロチャンネル1は、セグメント10の内面における突出部10A、10Bで包囲された領域に、容易且つ確実に貼り付けることが出来る。
そして、間詰め材2の組成分であるアルミナは良好な熱伝導性を有しているので、マイクロチャンネル1の微小冷媒流路内部に冷媒(例えば液化炭酸ガス)が流れると、マイクロチャンネル1を貼り付けたセグメント10(構造物)の背面側(マイクロチャンネル1の反対側)の地盤の熱と効率的に熱交換を行い、地熱を効率的に吸収して、地盤を効率的に凍結することが出来る。
マイクロチャンネル1を構造物10に貼り付けるに際して、マイクロチャンネル1と構造物10の間に間詰め材2を介在させて接着しているのは、図2で示すのと同様である。
図6の変形例では、マイクロチャンネル1と間詰め材2は、マイクロチャンネル1の外側(図6では上側)に配置された断熱部材3により被覆される。断熱部材3は、マイクロチャンネル1、間詰め材2を被覆した状態を保持しつつ、構造物10に取り付けられる。なお断熱部材3としては、ロックウールなどが使用出来る。
図6の変形例によれば、断熱部材3で、マイクロチャンネル1、間詰め材2を包囲しているので、マイクロチャンネル1を流れる液化炭酸ガス(二次冷媒)が保有する冷熱によりマイクロチャンネル1の表面に霜が生成されることが防止され、二次冷媒が保有する冷熱が霜を生成するのに消費されることなく、周辺地盤の凍結に用いられる。そのため、凍結効率がさらに向上する。
例えば、図示の実施形態では冷媒として液化炭酸ガスを例示しているが、その他の液化ガス、ブラインも冷媒として使用することが可能である。
また、図示の実施形態では貼付凍結管としてマイクロチャンネルを用いているが、その他の貼付凍結管を用いた凍結工法についても、本発明は適用可能である。
2・・・間詰め材
3・・・断熱部材
10・・・構造物
Claims (5)
- 地中の構造物に凍結管を貼り付け、凍結管を貼り付けた構造物の背面側の地盤を凍結させる貼付凍結工法において、
金属、当該金属の酸化物、当該金属を主成分とする合金の何れかの微小粒体を含有すると共に、シール材を含有し、熱伝導性と密着性を併せ持つ間詰め材を用いて、前記凍結管を前記構造物に貼り付け、
前記シール材はシリコーン系シーリング材とすることを特徴とする貼付凍結工法。 - 前記金属はアルミニウムであり、前記酸化物は酸化アルミニウムである請求項1の貼付凍結工法。
- 前記金属は銅であり、前記酸化物は酸化銅である請求項1、2の何れかの貼付凍結工法。
- 前記間詰め材は、常温~-50℃において前記凍結管と前記構造物との密着性を保持する請求項1~3の何れか1項の貼付凍結工法。
- 前記間詰め材は、貼り付け後に常温~-50℃において熱伝導性を保持する請求項1~4の何れか1項の貼付凍結工法。
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長田 友里恵、相馬 啓、塩屋 祐太,"地盤凍結工法における貼付凍結管の伝熱性について",雪氷研究大会(2017・十日町)講演要旨集,日本,公益社団法人 日本雪氷学会/日本雪工学会,2017年,p.258,https://doi.org/10.14851/jcsir.2017.0_258 |
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