定義
本発明がさらに説明される前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されず、それ自体は無論変更できることを理解されたい。本発明の範囲は添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図しないことも理解されたい。
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料もまた、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を以下で説明する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリペプチド」への言及は、複数のそのようなポリペプチドおよびその同等物を含み、「疾患または障害」への言及は、当業者に知られている関連する障害の症候群などを含む。請求項は、任意の要素を除外するために起草される場合があることにさらに留意されたい。したがって、この記載は、請求項の要素の記載に関連して「単独で(solely)」、「のみ(only)」などの排他的用語を使用するための、又は「否定的な」限定を使用するための先行的基礎として役立つことを意図している。
本明細書で交換可能に使用される「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、コード化および非コード化アミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる。この用語は、限定されるものではないが、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、異種および相同リーダー配列との融合、N末端メチオニン残基を伴うまたは伴わないもの、を含む融合タンパク質、免疫学的にタグ付けされたタンパク質;など、を含む。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離のカルボキシル基を指す。標準的なポリペプチドの命名法に従って、J.Biol.Chem.、243(1969)、3552-59が使用される。
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であり得、および/または疾患および/または疾患に起因する有害作用の部分的または完全な治癒に関して治療的であり得る。本明細書中で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のいずれかの治療を包含し、(a)疾患の素因となり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを防止すること;(b)疾病の抑制、すなわちその発生を停止すること;および(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の改善および/または退縮を引き起こすこと、を含む。例えば、アルツハイマー病(AD)に関しては、治療によって改善されうる症状には、学習および記憶の問題などの認知障害がある。同様に、治療によって改善される可能性のあるADに関連する現象には、アミロイドプラーク、神経炎プラークおよび/または神経原線維変化が含まれる。
「治療有効量」または「有効量」は、疾患を治療するために哺乳動物または他の対象に投与された場合に、疾患のそのような治療を行うのに十分である化合物または薬剤の量を指す。「治療有効量」は、化合物または薬剤、疾患およびその重症度、ならびに治療される対象の年齢、体重などによって異なる。
「生物学的サンプル」は、個体から得られた様々なサンプルタイプを含み、診断またはモニタリングアッセイで使用することができる。その定義には、血液および生物学的起源の他の液体サンプル、生検標本または組織培養物などの固体組織サンプル、またはそれらに由来する細胞、ならびにそれらの子孫が含まれる。この定義には、試薬による処理、可溶化、またはポリヌクレオチドなどの特定の成分の濃縮など、その入手後に何らかの方法で操作されたサンプルも含まれる。「生物学的サンプル」という用語は、臨床サンプルを含み、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生物学的流体、および組織サンプルも含む。
本明細書で交換可能に使用される「個体」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、ネズミ(ラット、マウス)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。
本明細書において使用される用語「アルツハイマー病」(ここでは「AD」と略記する)は、主として海馬および大脳皮質におけるアミロイドβタンパク質を含む神経突起斑の形成、ならびに学習および記憶の両方における障害に関連する状態を指す。本明細書で使用される「AD」は、ADおよびAD型の病状の両方を包含することを意味する。
apoEの6種類の遺伝子型は以下のとおりである:E2/E2(「E2対立遺伝子のホモ接合体」とも称される)、E2/E3(「ヘテロ接合E2/E3」とも称される)、E2/E4(「ヘテロ接合E2/E4」とも称される)、E3/E3(「E3対立遺伝子のホモ接合体」とも称される)、E3/E4(「ヘテロ接合E3/E4」とも称される)およびE4/E4(「E4対立遺伝子のホモ接合体」とも称される)である。3つのApoEタンパク質アイソフォームは、システインおよびアルギニンのいずれかが存在する2つのアミノ酸位置(アミノ酸112および158)でのみ異なる。具体的には、ApoE2タンパク質アイソフォームはCys112、Cys158を有し;ApoE3タンパク質アイソフォームはCys112、Arg158を有し;そしてApoE4タンパク質アイソフォームはArg112、Arg158を有する(シグナルペプチドを含まない成熟ポリペプチドに対する番号付けである)。これら2つの位置におけるアミノ酸の違いは、3つのApoEアイソフォームの構造に影響を及ぼし、脂質、受容体およびAβとの結合能に影響を及ぼす。ヒトapoeE3のゲノム配列は、NCBIレファレンス配列:NG_007084.2(配列番号1)によって提供される。ヒトapoeE4のゲノム配列は、GenBank Accession No.M10065、バージョンM10065.1(配列番号2)によって提供される。
開示された方法に関連して治療される対象は、E4対立遺伝子についてホモ接合性である(「apoE4/4」)。いくつかの実施形態において、治療される対象は、ヘテロ接合性E3/E4ではない。いくつかの実施形態において、治療される対象は、E2対立遺伝子についてホモ接合性ではない。いくつかの実施形態において、治療される対象は、E3対立遺伝子についてホモ接合性ではない。いくつかの実施形態において、治療される対象は、ヘテロ接合性E2/E3ではない。
本明細書中で使用される場合、「apoE4/4関連障害」は、apoE4/4遺伝子型、および/または得られた表現型によって引き起こされる任意の障害;apoE4/4遺伝子型および/または結果として生じる表現型によって特徴づけられる任意の障害;apoE4/4遺伝子型および/または結果として生じる表現型によって引き起こされる障害の症状;apoE4/4遺伝子型および/または結果として生じる表現型によって引き起こされる障害に関連する現象;apoE4/4遺伝子型および/または結果として生じる表現型によって引き起こされる任意の障害の後遺症、である。
ApoE4/4関連疾患/障害は、apoE4/4関連神経障害を含み、apoE4/4関連疾患/障害は、限定されるものではないが、散発性アルツハイマー病;家族性アルツハイマー病;脳卒中後の転帰不良;外傷性頭部損傷後の転帰不良;脳虚血を含む。ApoE4/4関連神経障害に関連する現象には、限定されるものではないが、アルツハイマー病に関連する現象、神経原線維変化;アミロイド沈着;記憶喪失;学習能力の低下;および認知機能の低下が含まれる。高い血清脂質レベルと関連するapoE4/4関連障害には、限定されるものではないが、アテローム性動脈硬化症および冠動脈疾患が含まれる。このようなApoE4/4-関連障害に関連する現象には、血清コレステロールの高値が含まれる。
本明細書で使用される「アルツハイマー病に関連する現象」という用語は、動物モデルで容易に評価できるような事象を含む、ADに関連する構造的、分子的、または機能的事象を指す。そのような事象には、限定されるものではないが、アミロイド沈着、神経病理学的発症、学習および記憶の障害、および他のAD関連特性が含まれる。
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に指示しない限り、その範囲の上限値および下限値と、その範囲内の他の記載された値または介在値との間の、下限値の単位の10分の1までの各介在値が、本発明の範囲内に包含されることが理解されよう。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界値に従うことを条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、含まれる限界値の一方または両方を除く範囲も本発明に含まれる。
本明細書に記載される刊行物は、本出願の出願日前の開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなるものも、本発明がそのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、独立して確認する必要がある実際の公開日と異なる場合がある。
詳細な説明
以下、様々な態様についてさらに詳しく説明する。しかしながら、このような態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完全であり、その範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
アルツハイマー病(AD)は世界中で認知症の主要な原因であり、現在まで、有効な治療法はない。ADの複雑性と多因子病因は、従来の薬剤開発に特有の課題をもたらし、ヒト治験でAD関連経路を標的とするほとんどすべての努力は、成功していないことが証明されている1,2。アポリポタンパク質(apo)E4は、ADの主要な遺伝的リスク因子である1,3-5である(患者の60~80%が少なくとも1つのAPOE4対立遺伝子を有し、ホモ接合体の約70%が85歳までにADを発症する)6,7が、AD薬剤開発のために積極的には研究されていない1,2。
本明細書では、apoE4関連アルツハイマー病(AD)の治療に有用な薬物をスクリーニングするためのapoE遺伝子型特異的ドラッグリポジショニングアプローチを開示する。公共データベースからのヒト側頭葉サンプルのメタ解析から、ADのapoE-遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを確立し、既存の薬物のトランスクリプトーム摂動シグネチャを含む検証済みコネクティビティマップ(Connectivity Map)(CMap)データベースに適用して、apoE-遺伝子型に起因する疾患状態から離れて正常状態に向けて遺伝子発現ネットワーク全体を摂動することができるものを同定した。ループ利尿薬ブメタニドはapoE4/4AD表現型のトランスクリプトームシグネチャと遺伝子発現パターンを逆転させるための最上位予測薬物候補であった。さらに、本明細書に提供される実施例で議論されるように、ブメタニドで老齢apoE4ノックイン(apoE4-KI)マウスを処理すると、認知障害が回復した。このように、ブメタニドは、apoE4/4遺伝子型を有する対象を治療し、ADに関連する認知障害を救済するのに特に有用であることが見出された。驚くべきことに、本明細書で提供される開示に基づいて、ブメタニドの有効性はapoE4/4遺伝子型に特異的であると考えられ、apoeE3/4遺伝子型に対するブメタニドの薬物予測スコアは、本明細書により詳細に記載されるように、apoeE3/3遺伝子型に対する有効性の指標よりもさらに低い。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、これは、apoeE3/4とapoE4/4の発現シグネチャ間の有意差に起因する可能性がある。
従って、いくつかの態様において、apoE4/4遺伝子型を有する対象に治療有効量のブメタニドを投与することによって、apoE4/4関連神経障害、例えばアルツハイマー病(AD)を治療する方法が提供される。関連する組成物、処方物、およびキットも以下でより詳細に記載する。
apoE4/4関連神経障害を有する対象の治療方法
本開示は、apoE4/4遺伝子型を有する対象において、apoE4/4関連神経障害、例えばADを有する対象を治療する方法を提供する。一般に、それを必要とする個体(例えば、ADおよび/またはapoE4/4遺伝子型に関連する障害を有する個体)に有効量のブメタニドを単独で(例えば単剤療法で)または1種以上の追加の治療剤と組み合わせて(例えば併用療法)投与することを含む方法。
本開示は、apoE4/4遺伝子型を有する対象におけるADの症状を治療する方法を提供し、同方法は、一般に、それを必要とする個体に治療有効量のブメタニドを投与することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、治療有効量のブメタニドは、単独で(例えば単剤療法では)、または1以上のさらなる治療剤と組み合わせて(例えば併用療法)、1以上の用量で投与された場合に、治療される個体における認知機能を改善するのに有効な量である。例えば、有効量のブメタニドは、ブメタニドによる治療の前または治療がない場合の対象の認知機能と比較して、個体の認知機能を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも95%、少なくとも約99%、またはそれ以上改善することができる。
いくつかの実施形態において、有効量のブメタニドは、単独で(例えば単剤療法では)または1以上のさらなる治療剤と組み合わせて(例えば併用療法)、1以上の用量で投与した場合に、ブメタニドによる治療が存在しない場合の有害症状の重症度と比較して、ADまたはapoE4/4-遺伝子型関連障害の有害症状を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも95%、少なくとも約99%、またはそれ以上、減少させるのに有効な量である。
いくつかの実施形態において、本開示は、有効量のブメタニドを個体に投与することを含む、個体における神経原線維変化の形成を阻害するための方法を提供する。ブメタニドが神経原線維変化および/またはAβ沈着物の形成を減少させるかどうかは、脳生検サンプルの免疫組織化学的染色を含むがこれらに限定されない任意の公知の方法を用いてヒトにおいて決定することができる。
ADを発症するリスクがあることが知られている個体は、主題の方法を使用する治療に適している。したがって、ブメタニドはapoE4のホモ接合体であるが、アルツハイマー病または他の神経変性疾患の明白な症状を示さない患者における予防的使用に適している。この方法は、すでにADの症状を示している個体を治療するためにも有用であり、同方法は、疾患の進行を低減させることによってADを治療するか、またはADに関連する症状の重症度を低減する。ADの進行が低減するか、またはAD関連症状の重症度が低減するかは、認知機能および記憶を含むがこれらに限定されないADに関連する任意の症状またはパラメータを評価することによって決定することができる。そのような決定は、当業者に公知の標準的な方法を用いて十分に当業者の能力の範囲内である。
ブメタニド(3-(ブチルアミノ)-4-フェノキシ-5-スルファモイル安息香酸;MW364.41)は強力な利尿薬であり、過剰量を投与すると、水および電解質の枯渇を伴う重度の利尿を引き起こす可能性がある。ブメタニドは利尿薬として、腎臓に、不要な水分と塩分を身体から尿中に排出させる作用がある。FDA承認のブメタニド(Bumex(商標))はループ利尿薬であり、腎臓のヘンレ係蹄の上行脚に作用し、心臓、腎臓、肝臓疾患を含む様々な病状に起因する浮腫および/または高血圧の治療に用いられる。Bumex(商標)は経口投与用に割線入り錠剤として0.5mg(淡緑色)、1mg(黄)および2mg(桃)が市販されている;各錠剤はまた、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、コーンスターチおよびタルクを含有し、以下の染料系を有する:0.5mg-D&CイエローNo.10およびFD&CブルーNo.1;1mg-D&CイエローNo.10;2mg赤色酸化鉄。
投与量
適切な投与量は、様々な臨床的因子に基づいて、担当医または他の資格のある医療従事者によって決定され得る。医療分野においてよく知られているように、いずれか1人の患者に対する投与量は、患者のサイズ、ボディマスインデックス(BMI)、体表面積、年齢、投与すべき特定の化合物、患者の性別、投与の時間および経路、一般的な健康状態、及び同時に投与される他の薬物を含む多くの因子に依存する。例えば、ブメタニドは、例えば包括的に1μg/kg体重~0.5mg/kg体重の間の量で投与することができる。包括的に10μg/kg体重~0.2mg/kg体重の間の量、例えば包括的に20μg/kg体重~0.1mg/kg体重の間の量、例えば包括的に30μg/kg体重~50μg/kg体重の間の量で投与することができるが、特に前述の要因を考慮して、この例示的な範囲より下または上の用量が想定される。いくつかの実施形態において、ブメタニドは、包括的に0.01mg/kg体重~0.2mg/kg体重の量、例えば、包括的に0.02mg/kg体重以~0.1mg/kg体重の量、包括的に0.03mg/kg体重~0.09mg/kg体重の量、包括的に0.04mg/kg体重~0.08mg/kg体重の量、または包括的に0.05mg/kg体重~0.07mg/kg体重の量で投与することができる。いくつかの実施形態において、レジメンが持続注入である場合、それはまた、0.5~2mg/時間の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、ブメタニドは、0.5mg~10mg、例えば、0.6mg~9mg、0.7mg~8mg、0.8mg~7mg、0.9mg~6mg、1mg~5mg、または2mg~4mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ブメタニドは、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgの用量で、例えば1日1回または2回で投与される。
したがって、いくつかの実施形態において、apoE4/4遺伝子型を有する対象においてADを治療する方法が提供され、この方法は、0.05mg/kg/日以下、例えば0.02mg/kg/日以下の用量でブメタニドを対象に投与することを含む。当業者は、用量レベルが、特定の組成物、症状の重症度および副作用に対する対象の感受性の関数として変化し得ることを容易に理解するであろう。所与の化合物の好ましい投与量は、様々な手段によって当業者によって容易に決定可能である。
投与経路
ブメタニドは、インビボおよびエクスビボ法ならびに全身的および局所的な投与経路を含む薬物送達のための任意の適切な方法及び経路を用いて個体に投与することができる。従来の薬学的に許容される投与経路には、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、局所適用、静脈内、動脈内、直腸、鼻、経口、および他の経腸および非経口または吸入投与経路が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。投与経路は、所望であれば組み合わせてもよく、または組成および/または所望の効果に応じて調節してもよい。ブメタニド組成物は、単回投与または複数回投与で投与することができる。いくつかの実施形態において、ブメタニド組成物は経口投与される。いくつかの実施形態において、ブメタニド組成物は吸入経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、ブメタニド組成物は鼻腔内投与される。いくつかの実施形態において、ブメタニド組成物は局所的に投与される。いくつかの実施形態において、ブメタニド組成物は頭蓋内投与される。いくつかの実施形態において、ブメタニド組成物は静脈内投与される。
吸入投与以外の非経口投与経路には、局所投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、眼窩内投与、被膜内投与、脊髄内投与、腹腔内投与、静脈内投与、すなわち消化管を介する以外の任意の投与経路が含まれるが、これらに限定されるものではない。非経口投与は、ブメタニドの全身または局所送達を行うために実施することができる。全身送達が望まれる場合、投与は通常、医薬処方物の侵襲的または全身的に吸収された局所または粘膜投与を伴う。
ブメタニドはまた、経腸投与によって対象に送達することができる。経腸投与経路には、経口および直腸(例えば、坐剤を使用する)送達が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
いくつかの実施形態において、ブメタニドは、注射および/または送達によって、例えば、脳動脈の部位に、または脳組織に直接投与される。ブメタニドはまた、例えば、標的部位への微粒子銃による(biolistic)送達によって、標的部位(例えば、アミロイドプラークを含む脳領域)に直接投与することができる。
いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、ApoE4/4関連神経学的障害に関連する少なくとも1つの現象を改善するのに有効であり、そのような現象には、例えば、神経原線維変化;アミロイド沈着;記憶喪失;学習した行動を学ぶ、または保持する能力の減少;認知機能の低下が含まれる。したがって、例えば、主題の方法は、記憶喪失を減少させ、少なくとも認知機能の低下を遅らせるのに効果的である。例えば、主題の方法は、記憶機能の向上および/または認知機能の向上に有効である。従って、例えば、有効量のブメタニドは、1回以上の用量で、単剤療法または併用療法で投与される場合、記憶喪失を低減させるため、記憶機能を増加させるため、認知機能の喪失を低減させるため、または認知機能を増加させるために、神経原線維変化および/またはアミロイドプラークを減少させることができる。
いくつかの実施形態において、方法の有効性は、ブメタニド治療および/または障害の進行/退縮に対する応答についてモニターされ得る(例えば、ADまたはApoE4/4関連疾患もしくは障害についてブメタニドによる治療を受けた個人)。そのような実施形態において、ブメタニドが個体に投与され、認知機能が測定され、ベースライン測定と比較され、および/または神経原線維変化の存在が個体の脳組織において評価される。例えば、ADまたはApoE4/4関連疾患または障害の症状のベースライン測定を行うことができ、次いで、その方法を個体に対して実施することができ、次いで、その個体がその障害に対する治療を開始した後の1つまたは複数の時点で、治療後測定を行うことができる。症状の改善を示す測定、または対象/個体における疾患または障害の退縮を示す測定は、有効な治療の指標を提供することができ、治療を継続すべきか、投薬レジメンを変更すべきか、または投与されている薬剤を変更すべきかについて決定することができる。
いくつかの実施形態において、治療方法は、ApoE4/4関連疾患に対するブメタニド治療の開始から測定して、1日以内または複数日以内、1週間または複数週間にわたって、1ヵ月にわたって、または2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、または6ヵ月を超える期間にわたって、個体に対して実施することができる。主題の方法は、個人に対して複数回実行することができる。
組成物
本開示は、開示された方法およびキットに関連して使用するためのブメタニドを含む、医薬組成物を含む組成物を提供する。一般に、処方物は有効量のブメタニドを含む。「有効量」は、所望の結果、例えば、アミロイドプラークの減少、ApoE4/4関連障害(例えば、散発性または家族性アルツハイマー病(AD);アルツハイマー病;脳卒中後の転帰不良;外傷性頭部損傷後の転帰不良;脳虚血;神経原線維変化;アミロイド沈着;記憶喪失;学習能力の低下;認知機能の低下;血清脂質および/またはコレステロール高値;アテローム性動脈硬化症;および/または冠動脈疾患)の症状の改善を生じるのに十分な用量を意味する。一般に、所望の結果は、対照と比較して、ADのようなApoE4/4-関連障害の症状の少なくとも減少である。ブメタニドは、以下により詳細に説明するように、血液脳関門を回避するような方法で送達することができる。対象の組成物は、組成物が血液脳関門を通過することを可能にするように処方する、および/または改変することができる。
処方物(Formulations)
主題の方法において、ブメタニド組成物は、所望の治療効果または診断効果をもたらすことができる任意の便利な手段を使用して、宿主に投与することができる。したがって、薬剤は、治療投与のための様々な処方物に組み込むことができる。より具体的には、ブメタニドは、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物に処方することができ、固体、半固体、液体または気体形態の処方物、例えば、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルに処方することができる。
薬学的投与形態において、ブメタニドは、薬学的に受容可能な塩の形態で投与することができ、または単独で、または適切に結合して、ならびに他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用することもできる。以下の方法および賦形剤は、単に例示的であり、決して限定するものではない。
経口用処方物では、ブメタニドは単独で、又は適切な添加剤と組み合わせて錠剤、散剤、顆粒剤若しくはカプセル剤を製造することができ、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ又はポテトスターチのような従来の添加剤と;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンのような結合剤と;コーンスターチ、ポテトスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウムのような崩壊剤と;タルクまたはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤と、そして必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤及び着香剤と組み合わせることができる。
ブメタニドは、植物油又は他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸又はプロピレングリコールのエステルのような水性又は非水性溶媒中にそれらを溶解、懸濁又は乳化することによって、また、必要に応じて、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤及び保存剤のような従来の添加剤を用いて、注射用の注射可能な処方物に処方することができる。いくつかの実施形態において、ブメタニドは錠剤、Bumex(商標)の形態で経口投与される。
ブメタニドを含む医薬組成物は、所望の純度のブメタニドを任意の生理学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、界面活性剤、緩衝剤および/または等張化剤(tonicity agents)と混合することによって調製される。許容される担体、賦形剤および/または安定剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸、グルタチオン、システイン、メチオニンおよびクエン酸を含む抗酸化剤;保存剤(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロロ-m-クレゾール、メチルまたはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、またはそれらの組み合わせ);アルギニン、グリシン、オルニチン、リジン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、イソロイシン、ロイシン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、プロリンおよびそれらの組合せなどのアミノ酸;単糖類、二糖類および他の炭水化物;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;ゼラチンや血清アルブミンなどのタンパク質;EDTAなどのキレート剤;トレハロース、スクロース、ラクトース、グルコース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラフィノース、グルコサミン、N-メチルグルコサミン、ガラクトサミン、ノイラミン酸などの糖;および/またはTween(登録商標)、Brij(登録商標)、Pluronics(登録商標)、Triton(商標)-Xまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤、を含む。
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態、または凍結乾燥形態から再構成された液体形態であってもよく、ここで、凍結乾燥された調製物は、投与前に滅菌溶液で再構成されるものである。凍結乾燥した組成物を再構成するための標準的な手順は、一定量の純水(典型的には凍結乾燥中に除去された量と同等)を再び加えることである;しかしながら、抗菌剤を含む溶液が非経口投与のための医薬組成物の製造のために使用されてもよい;Chen(1992)Drug Dev Ind Pharm、18、1311-54も参照。
主題の医薬処方物中の例示的なブメタニド濃度は、約1mg/mL~約200mg/mLまたは約50mg/mL~約200mg/mL、または約150mg/mL~約200mg/mLの範囲であり得る。
ブメタニドの水性処方物は、pH緩衝溶液中で、例えば、約4.0~約8.5、または約5.0~約6.0、あるいは約5.5の範囲のpHで調製することができる。この範囲内のpHに適した緩衝液の例には、リン酸塩-、ヒスチジン-、クエン酸塩-、コハク酸塩-、酢酸塩-緩衝液および他の有機酸緩衝液が含まれる。緩衝液の濃度は、例えば、緩衝液および処方物の所望の張度に応じて、約1mM~約100mM、または約5mM~約50mMであり得る。
等張化剤は、処方物の張性(tonicity)を調節するためにブメタニド処方物に含まれていてもよい。例示的な等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、およびアミノ酸、糖の群からの任意の成分、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、水性処方物は等張性であるが、高張性または低張性の溶液が適切であり得る。「等張性(isotonic)」という用語は、生理的塩溶液または血清など、それが比較される他の溶液と同じ張性を有する溶液を意味する。等張化剤は、約5mM~約350mMの量で、例えば、100mM~350nMの量で使用することができる。
界面活性剤をブメタニド処方物に添加して、処方物中の凝集を減少させ、および/または微粒子の形成を最小にし、および/または吸着を減少させることもできる。例示的な界面活性剤には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(商標))、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton(商標)-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(Poloxamer、Pluronic(登録商標))およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。適切なポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの例は、ポリソルベート20、(商標名Tween20(商標)で販売されている)およびポリソルベート80(商標名Tween80(商標)で販売されている)である。適切なポリエチレン-ポリプロピレンコポリマーの例は、Pluronic(登録商標)F68またはPoloxamer188(商標)の名称で販売されているものである。適切なポリオキシエチレンアルキルエーテルの例は、商標名Brij(商標)で販売されているものである。界面活性剤の例示的な濃度は、約0.001%~約1%w/vの範囲であり得る。
また、凍結保護剤を添加して、不安定な活性成分(例えばタンパク質)を凍結乾燥プロセス中の不安定化条件から保護してもよい。例えば、既知の凍結保護剤には、糖(グルコースおよびスクロースを含む);ポリオール(マンニトール、ソルビトール、グリセロールを含む);およびアミノ酸(アラニン、グリシン、グルタミン酸を含む)が含まれる。凍結保護剤は、約10mM~500nMの量で含むことができる。
いくつかの実施形態において、主題の処方物は、ブメタニド、および上記で特定された薬剤(例えば、界面活性剤、緩衝剤、安定剤、等張化剤)の1つ以上を含み、エタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、p-クロロ-m-クレゾール、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、およびそれらの組み合わせなどの1つ以上の保存剤を実質的に含まない。他の実施形態では、保存剤が処方物中に、例えば約0.001~約2%(w/v)の範囲の濃度で含まれる。
例えば、主題の処方物は、非経口投与に適した液体または凍結乾燥した処方物であってもよく、そして約1mg/mL~約200mg/mLのブメタニド;約0.001%~約1%の少なくとも1つの界面活性剤;約1mM~約100mMの緩衝液;任意選択的に約10mM~約500mMの安定剤;約5mM~約305mMの等張化剤;を含むことができ、約4.0~約7.0のpHを有することができる。
別の例として、主題の非経口処方物は、以下を含む液体または凍結乾燥した処方物である:約1mg/mL~約200mg/mLのブメタニド;0.04%(w/v)のTween20(商標);20mMのL-ヒスチジン;および250mMスクロース;5.5のpHを有する。
別の例として、主題の非経口処方物は、1)15mg/mLのブメタニド;0.04%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMのスクロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか、2)75mg/mLのブメタニド;0.04%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMのスクロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または3)75mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMスクロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか、4)75mg/mLのブメタニド;0.04%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMのトレハロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または6)75mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMのトレハロース;を含み、かつ5.5のpHを有する、凍結乾燥した処方物を含む。
別の例として、主題の非経口処方物は、1)7.5mg/mLのブメタニド;0.022%のTween(商標)20(w/v);120mMのL-ヒスチジン;および250 125mMのスクロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか、2)37.5mg/mLのブメタニド;0.022%のTween(商標)20(w/v);10mMのL-ヒスチジン;および125mMのスクロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、3)37.5mg/mLのブメタニド;0.01%のTween(商標)20(w/v);10mMのL-ヒスチジン;および125mMのスクロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;4)37.5mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);10mMのL-ヒスチジン;および125mMトレハロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、5)37.5mg/mLのブメタニド;0.01%のTween(商標)20(w/v);10mMのL-ヒスチジン;および125mMトレハロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、6)5mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMトレハロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、7)75mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMマンニトール;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、8)75mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのLヒスチジン;および140mM塩化ナトリウム;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、9)150mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMトレハロース;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、10)150mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および250mMマンニトール;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、11)150mg/mLのブメタニド;0.02%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および140mM塩化ナトリウム;を含み、かつ5.5のpHを有するか;または、12)10mg/mLのブメタニド;0.01%のTween(商標)20(w/v);20mMのL-ヒスチジン;および40mM塩化ナトリウム;を含み、かつ5.5のpHを有する、液体処方物である。
ブメタニドは、吸入を介して投与されるエアロゾル処方物に利用することができる。ブメタニドは、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な推進剤中に処方することができる。
さらに、ブメタニドは、乳化基剤または水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって坐剤にすることができる。ブメタニドは坐剤を介して直腸投与することができる。坐剤は、体温で融解するが、室温で凝固するカカオ脂、カーボワックスおよびポリエチレングリコールのようなビヒクルを含むことができる。
シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁剤などの経口または直腸投与のための単位剤形を提供することができ、各投与単位(例えば、ティースプーン1杯、テーブルスプーン1杯、錠剤または坐剤)が、1つ以上の阻害剤を含有する所定量の組成物を含有する。同様に、注射または静脈内投与のための単位剤形は、滅菌水、通常の生理食塩水、または別の薬学的に許容される担体中の溶液としての組成物中のブメタニドを含み得る。
本明細書で使用される「単位剤形(unit dosage form)」という用語は、ヒトおよび動物対象の単一用量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと関連して所望の効果を生じるのに十分な量で計算された本発明の化合物の所定の量を含有する。ブメタニドの規格は、使用する組成物中のブメタニドの純度または濃度、達成される効果、および宿主中の組成物に関連する薬力学に依存し得る。
他の投与様式もまた、主題の方法での使用を見出すであろう。例えば、ブメタニドは坐剤中に処方することができ、ある場合には、エアロロゾルおよび鼻腔内組成物中に処方することができる。坐剤については、ビヒクル組成物は、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドなどの従来の結合剤および担体を含む。そのような坐剤は、約0.5%~約10%(w/w)の範囲、例えば約1%~約2%の活性成分を含有する混合物から形成することができる。
鼻腔内処方物は通常、鼻粘膜への刺激を引き起こさず、毛様体機能を著しく妨げないビヒクルを含む。水、生理食塩水または他の既知の物質などの希釈剤を主題の発明とともに使用することができる。鼻用処方物はまた、限定されるものではないが、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムなどの保存剤を含有してもよい。界面活性剤は、鼻粘膜による主題のタンパク質の吸収を増強するために存在し得る。
ブメタニドは注射可能な処方物として投与することができる。典型的には、注射可能な組成物は、液体溶液または懸濁液として調製される;注射前の液体ビヒクル中の溶液または液体ビヒクル中の懸濁液に適した固体形態も調製することができる。調製物はまた、乳化されてもよく、またはブメタニドがリポソームビヒクル中に封入されてもよい。
適切な賦形剤ビヒクルは、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、必要に応じて、ビヒクルは、湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤などの少量の補助物質を含み得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に知られているか、または明らかになるであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company(ペンシルベニア州イーストン)、第17版、1985年、を参照されたい。投与される組成物または処方物は、いずれにせよ、治療される対象において所望の状態を達成するのに適切な量のブメタニドを含むであろう。
ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤などの薬学的に許容される賦形剤は、一般に容易に入手可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、等張化調整剤、安定剤、湿潤剤などの薬学的に許容される補助物質は、一般に容易に入手可能である。
いくつかの実施形態において、ブメタニドは放出制御処方物として処方される。徐放性の調製物は、当該技術分野で周知の方法を用いて調製することができる。徐放性調製物の適切な例には、ブメタニドを含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルなどの成形品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、ヒドロゲル、ポリラクチド、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。徐放性調製物に含まれる抗体の生物学的活性の喪失の可能性および免疫原性の変化の可能性は、適切な添加剤を使用し、水分含有量を制御し、特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって防ぐことができる。
本発明の範囲内の制御放出は、多数の徐放性投与形態のいずれか1つを意味すると考えることができる。以下の用語は、本発明の目的のために、制御放出と実質的に同等であると見なされ得る:連続放出、制御放出、遅延放出、デポ、段階的放出、長期放出、プログラムされた放出、延長された放出、比例放出、持続した(protracted)放出、貯蔵、遅延、徐放、間隔を置いた放出、持続放出、タイムコート、時間を置いた放出、遅延作用、延長作用、層状時間作用、長時間作用、持続(prolonged)作用、反復作用、徐行作用、持続作用、持続作用薬、および延長放出。これらの用語についてのさらなる議論はLesczek Krowczynski、「Extended-Release Dosage Form」、1987年(CRCプレス社)に記載されている。
種々の制御放出技術は、非常に広範囲の薬物剤形をカバーする。制御放出技術には、物理的システム及び化学的システムが含まれるが、これらに限定されない。
物理的システムには、限定されるものではないが、マイクロカプセル化、マクロカプセル化、および膜システムなどの速度制御膜を備えたリザーバーシステム;中空繊維、超微孔性セルローストリアセテート、多孔性ポリマー基材および発泡体などの速度制御膜のないリザーバーシステム;非多孔性、ポリマー性、またはエラストマー性マトリックスに物理的に溶解したシステム(例えば、非腐食性、侵食性、環境因子の侵入、および分解性)、および非多孔性、ポリマー性またはエラストマー性マトリックスに物理的に分散した材料(例、非腐食性、侵食性、環境因子の侵入、および分解性)を含むモノリシックシステム;外側の制御層と化学的に類似または非類似のリザーバー層を含む積層構造;および浸透圧ポンプやイオン交換樹脂への吸着のような他の物理的方法、が含まれる。
化学システムには、限定されるものではないが、ポリマーマトリックスの化学的侵食(例えば、不均一または均一な侵食)、またはポリマーマトリックスの生物学的侵食(例えば、不均一または均一)が含まれる。制御放出のためのシステムのカテゴリーのさらなる議論は、Agis F.Kydonieus、「Controlled Release Technologies:Methods,Theory and Applications」、1980年(CRCプレス社)、に記載されている。
経口投与のために開発された多くの放出制御処方物が存在する。これらには、限定されるものではないが、浸透圧制御消化管送達システム;流体力学的圧力制御消化管送達システム;微小孔膜透過制御消化管送達デバイスを含む膜透過制御消化管送達システム;胃液耐性腸標的化制御放出胃腸送達デバイス;ゲル拡散制御消化管送達システム;陽イオン性および陰イオン性薬物を含むイオン交換制御消化管送達システム、が含まれる。徐放性薬物送達システムに関するさらなる情報は、Yie W.Chien、「Novel Drug Delivery Systems」、1992年(Marcel Dekker社)に記載されている。これらの処方のいくつかについて、ここでより詳細に説明する。
併用療法
いくつかの実施形態において、主題の治療方法は、ブメタニドおよび1つ以上の追加の治療薬を投与することを含む。米国食品医薬品局(FDA)は、ADの認知症状(記憶障害、錯乱、思考や推論の問題)を治療するために、コリンエステラーゼ阻害薬(例:アリセプト(登録商標)(ドネペジル)、エクセロン(登録商標)(リバスチグミン)、ラザダイン(登録商標)(ガランタミン))とメマンチン(ナメンダ(商標))の2種類の薬物を承認している。また、コリンエステラーゼ阻害薬の1つであるドネペジルとメマンチンを組み合わせたナムザリック(登録商標)という薬物もある。
適切なさらなる治療剤としては、限定されるものではないが、アリセプト(登録商標)(ドネペジル)、エクセロン(登録商標)(リバスチグミン)、メトリフォネート、およびタクリン(コグネックス(登録商標))を含むアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;イブプロフェンおよびインドメタシンを含むがこれらに限定されない非ステロイド系抗炎症剤;セレブレックス(商標)などのシクロオキシゲナーゼ-2(Cox2)阻害薬;およびセレギレン(エルデプリル(登録商標)またはデプレニル(登録商標))などのモノアミンオキシダーゼ阻害薬、が含まれる。上記薬剤の各々の用量は、当技術分野において公知である。例えば、アリセプト(登録商標)は、一般に、1日50mgで6週間経口投与され、患者が十分に耐えられる場合には、その後、1日10mgで投与される。
いくつかの実施形態において、主題の併用療法は、有効量のブメタニドおよびapoE4タンパク質ドメイン相互作用を阻害する薬剤(例えば、米国特許出願公開第2006/0073104号明細書、およびYe他(2005年)、Proc.Natl.Acad.Set USA、102:18700)に記載されているような薬剤)の投与を含む。
いくつかの実施形態において、主題の併用療法は、有効量のブメタニドおよびアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与を含む。いくつかの実施形態において、主題の併用療法は、有効量のブメタニドおよび抗炎症剤の投与を含む。
治療に適した対象
種々の対象が主題の方法による治療に適している。適切な対象は、ADまたはApoE4/4-関連障害を有する個体、ADまたはApoE4/4-関連障害と診断されている個体、ADまたはApoE4/4-関連障害を発症するリスクがある個体、ADまたはApoE4/4-関連障害を有していたことがあり、かつADまたはApoE4/4-関連障害の再発リスクがある個体、またはADまたはApoE4/4-関連障害から回復中の個体のいずれかであり、特に哺乳動物、とりわけヒトを含む。
主題の方法での治療に適した対象は、2つのapoE4対立遺伝子を有する個体が含まれる。言い換えれば、適切な対象には、apoE4についてホモ接合性である対象が含まれる。いくつかの実施形態において、対象は、アルツハイマー病を有すると診断されている。
apoE4/4遺伝子型を有する対象の同定
本明細書中で議論するように、いくつかの態様において、開示された方法および/または開示されたキットの使用は、apoE4/4遺伝子型を有するとして対象を同定することを含む。対象の同定方法は、個体から得られた生物学的サンプルに対してインビトロで実施することができる。従って、本開示は、血液、毛髪または上皮細胞サンプル(例えば、頬スワブから)などの組織サンプルから抽出されたDNAの生物学的サンプル中の対象のapoE遺伝子型を検出する方法を提供する。生物学的サンプルは、例えば、個々の死後から得られた脳サンプルであり得る。
遺伝子型検査の方法は当技術分野で公知である。例えば、対象のapoE遺伝子型は、制限イソタイピングおよび/またはPCRに基づく方法を用いた末梢血サンプルの解析によって得ることができる。典型的には、遺伝子型決定のための血液(約6cc)を採取し、解析のためにDNAを抽出する。DNAサンプルは、例えば、Applied Biosystems社から入手可能なTaqMan遺伝子発現アッセイに従ってapoE遺伝子型を構成する両方のSNPからのTaqman(登録商標)Ready to useアッセイを用いて遺伝子型決定することができる。あるいは、apoE遺伝子型決定のための迅速で半自動化された方法が開発されている(Guo他、1993年、Genome Res.2:348-350)。AROE-ε4の遺伝子型決定はまた、先に詳細に報告されたように、HixsonおよびVernierの制限アイソタイピングプロトコルに従って実施されてもよい。(Hixson J.,Vernier D.、(1990年)「遺伝子増幅およびHhalによる切断によるヒトアポリポタンパク質Eの制限イソタイピング(Restriction isotyping of human apolipoprotein E by gene amplification and cleavage with Hhal)」、J.Lipid Res.、31:545-548)。近年、Huang他(2018年)の研究では、WizareゲノムDNA精製キット(アメリカ合衆国、ウィスコンシン州、マディソン、Promega社)を使用して2mlの静脈内末梢血(-80°Cで保存する)からDNAを抽出した。PCR増幅と制限断片長多型(RFLP)解析を、Hixson(前述)に記載されている方法に従って行い、ApoE遺伝子型決定に用いた特異的プライマー(フォワード、5’-GGCACGGCTGTCCAAGGA-3’;リバース、5’-GCCCCGGCCTGGTACACTGCC-3’)を用いて、DNAサンプルの20%を、品質管理の目的で異なるオペレータにより再び遺伝子型決定した。ApoE遺伝子型に対し、E2/E2およびE2/E3遺伝子型を有する対象はE2キャリアとしてグループ化した;E3/E3を有する対象はE3ホモ接合体として分類した;E3/E4またはE4/E4を有する対象はE4キャリアとしてグループ化した。(Huang他、(2018年)、Frontiers Endocrinology、9(71))。
キット
本開示は、ブメタニドを含む組成物を含むキット(例えば、試験キット)を提供する。主題のキットは、主題の治療法を実施するのに有用である。
キットのその他の任意選択的な構成要素には、緩衝液;検出可能な標識;説明書などが含まれる。キットのさまざまな構成要素は、別々の容器内に存在していてもよく、必要に応じて、特定の互換性のある構成要素は単一の容器内にて事前に合わせられていてもよい。
上記の構成要素に加えて、主題のキットは、主題の方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための指示(instructions)を含むことができる。主題の方法を実施するための指示は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、指示は、紙やプラスチックなどの基材に印刷することができる。したがって、指示は、添付文書としてキット内に、キットの容器またはキットの構成要素のラベル(すなわち、包装又は副包装に関連する)などに存在してもよい。他の実施形態において、指示は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、コンパクト・ディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ディスケットなどに存在する電子記憶データファイルとして存在している。さらに他の実施形態において、実際の指示はキット内には存在しないが、例えばインターネットを介して遠隔ソースから指示を得るための手段が提供される。この実施形態の例は、指示を見ることができるウェブアドレスおよび/または指示をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。指示と同様に、指示を入手するためのこの手段は、適切な基板に記録されている。
ブメタニドの単位用量、例えば経口または注射用量を有するキットが提供される。そのようなキットでは、単位用量を含有する容器に加えて、関心のある病理学的状態を治療する際の組成物の使用および付随する利益を記載する情報(電子の、または紙の)挿入物が含まれる。好ましい化合物および単位用量は、本明細書に記載されているものである。
特定の実施形態において、本開示に従うキットは、apoE4/4遺伝子型を有する対象への、例えばブメタニド0.05mg/kg/日以下、例えばブメタニド0.02mg/kg/日以下の用量でのブメタニドの投与の指示を含む、電子的または紙の形態の情報を含む。
別の態様において、本開示は、apoE4/4遺伝子型を有する対象をブメタニドで同定および治療するためのキット、ならびに使用説明書を提供する。いくつかの実施形態において、キットは、apoE4/4遺伝子型を有する対象を治療するためのブメタニド処方物を含む。キットは、ADを有することが疑われるヒト対象から単離された生物学的サンプルを保持するための容器を含み得る。そして、任意選択的に、apoE4対立遺伝子を特異的に検出および/または増幅し、apoE4/4遺伝子型を有する対象の同定を可能にする薬剤、ならびに薬剤を生物学的サンプルまたは生物学的サンプルの一部と反応させて生物学的サンプル中のapoE4対立遺伝子の存在または量を検出するための電子的または紙による指示、を含み得る。キットの構成要素は、別々の容器にパッケージ化することができる。キットは、本明細書に記載されるように、1つ以上のapoE4対立遺伝子を検出するためのPCRまたはマイクロアレイ解析を実施するための1つ以上の対照参照サンプルおよび試薬をさらに含み得る。
特定の実施形態において、キットは、生物学的サンプルからapoE4対立遺伝子のポリヌクレオチドを検出するための薬剤を含む。さらに、キットは、apoE2および/またはapoE3対立遺伝子のような1つ以上のさらなる対立遺伝子を検出するための薬剤を含んでもよく、この薬剤は、単独でまたは任意の組み合わせで、および/またはapoE4/4遺伝子型を有する対象を同定するための臨床パラメータと組み合わせて使用され得る。
特定の実施形態において、キットは、複数のapoE対立遺伝子またはAD関連遺伝子型の解析のためのマイクロアレイを含む。一実施形態において、キットは、apoEポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイを含む。
一態様において、apoE4/4遺伝子型を有する対象を同定するためのキットが提供される。例えば、キットは、対象のapoE4/4遺伝子型の検出を含め、本明細書に記載されるアルツハイマー病に関連する任意の1つ以上のバイオマーカーを検出するために使用することができ、特に、健康な対象またはADを有する対象からの生物学的サンプルから、apoE4/4遺伝子型を有する対象の同定を可能にする。
特定の実施形態において、キットは、対象のapoE遺伝子型の同定を可能にする1つ以上のポリヌクレオチドを含む、複数のバイオマーカーポリヌクレオチドの解析のためのマイクロアレイを含む。キットに含まれる例示的なマイクロアレイは、apoE2対立遺伝子ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、apoE3対立遺伝子ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、および/またはapoE4対立遺伝子ポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、またはそれらの任意の組合せもしくは下位の組合せを含む。
キットは、キットに含まれる組成物のための1つ以上の容器を含むことができる。組成物は、液体形態であってもよく、または凍結乾燥されてもよい。組成物に適した容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックを含む様々な材料から形成することができる。キットはまた、キットの使用方法に関する電子的または紙による指示を含む添付文書を含むことができる。
開示の例示的かつ非限定的な態様
上述の本主題の態様(実施形態を含む)は、単独で、または1つ以上の他の態様または実施形態と組み合わせて有益であり得る。前述の説明を限定することなく、本開示の特定の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を読むと当業者には明らかであるように、個々に番号付けされた態様の各々は、先行または後続の個々に番号付けされた態様のいずれかと共に使用または組み合わせられ得る。これは、態様のこのようなすべての組み合わせをサポートすることを意図しており、以下に明示的に提供される態様の組み合わせに限定されるものではない。本発明の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
1.apoE4/4遺伝子型を有する対象におけるアルツハイマー病(AD)を治療する方法であって、前記方法は、治療有効量のブメタニドを同対象に投与することを含む、方法。
2.前記投与することが、0.05mg/kg/日以下の用量でブメタニドを対象に投与することを含む、1に記載の方法。
3.前記投与することが、0.02mg/kg/日以下の用量でブメタニドを対象に投与することを含む、2に記載の方法。
4.ブメタニドが薬学的に許容可能な担体を含む経口剤形として処方され、経口剤形が経口投与される、1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.経口剤形が、カプセル剤、錠剤、崩壊錠もしくはトローチ剤、またはサシェ剤として1日1回投与される、4に記載の方法。
6.ブメタニドが静脈内または非経口的に投与される、1~3のいずれか一項に記載の方法。
7.ブメタニドが経皮パッチ中に提供される、1~3のいずれか一項に記載の方法。
8.対象が哺乳動物である、1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.哺乳動物がヒトである、8に記載の方法。
10.apoE4/4遺伝子型を有する対象におけるアルツハイマー病を治療する方法であって、前記方法は、
a)apoE4/4遺伝子型を有する対象を同定すること;および
b)治療有効量のブメタニドを対象に投与すること、
を含む方法。
11.前記同定することが、前記対象由来の生物学的サンプルについてPCRに基づくDNA解析方法を実施することを含む、10に記載の方法。
12.生物学的サンプルを対象から単離することをさらに含む、11に記載の方法。
13.前記投与することが、0.05mg/kg/日以下の用量としてブメタニドを対象に投与することを含む、10~12のいずれか一項に記載の方法。
14.前記投与することが、0.02mg/kg/日以下の用量としてブメタニドを対象に投与することを含む、13に記載の方法。
15.ブメタニドが薬学的に許容可能な担体を含む経口剤形として処方され、経口剤形が経口投与される、10~14のいずれか一項に記載の方法。
16.経口剤形が、カプセル剤、錠剤、崩壊錠もしくはトローチ剤、またはサシェ剤として1日1回投与される、15に記載の方法。
17.ブメタニドが静脈内または非経口的に投与される、10~14のいずれか一項に記載の方法。
18.ブメタニドが経皮パッチ中に提供される、10~14のいずれか一項に記載の方法。
19.対象が哺乳動物である、10~18のいずれか一項に記載の方法。
20.哺乳動物がヒトである、19に記載の方法。
21.キットであって、
a)ブメタニド処方物;
b)パッケージ;および
c)apoE4/4遺伝子型を有する対象へのブメタニド投与の指示を含む、電子的または紙の形態の情報、
を含むキット。
22.指示は、ブメタニド処方物の対象への投与が、対象の重量、投与された処方物の重量および/または体積に基づくことを特定する、21に記載のキット。
23.前記指示が、0.05mg/kg/日以下のブメタニドの用量で前記処方物を対象に投与する指示を含む、22に記載のキット。
24.前記指示が、0.02mg/kg/日以下のブメタニドの用量で前記処方物を対象に投与する指示を含む、23に記載のキット。
25.1以上のapoE遺伝子型について試験される対象から単離された生物学的サンプルを保持するための容器をさらに含む、21~24のいずれか一項に記載のキット。
26.生物学的サンプル中のapoE4対立遺伝子の特異的検出を可能にするためのPCRまたはマイクロアレイ解析を実施するための1つ以上の試薬、および試薬を生物学的サンプルと反応させるための電子的または紙による指示をさらに含む、25に記載のキット。
27.1以上の対照参照サンプルをさらに含む、26に記載のキット。
28.ブメタニド処方物が、経口送達用の、カプセル、錠剤、崩壊錠もしくはトローチ剤、またはサシェ剤の形態である、21~27のいずれか一項に記載のキット。
29.ブメタニド処方物が、静脈内または非経口送達のために注射可能である、21~27のいずれか一項に記載のキット。
30.ブメタニド処方物が経皮パッチの形態である、21~27のいずれか一項に記載のキット。
31.キットであって、
a)薬学的に許容される担体およびブメタニドを含む処方物の1つ以上の用量を含む容器;および
b)apoE4/4遺伝子型を有する対象を治療するための電子的または紙による指示、
を含むキット。
32.処方物の各用量が2mgを超えないブメタニドを含む、31に記載のキット。
33.処方物の各用量が1mgを超えないブメタニドを含む、32に記載のキット。
34.用量が経口投与のために処方される、31~33のいずれか一項に記載のキット。
35.経口投与のための用量が1日1回のカプセル剤、錠剤、崩壊錠もしくはトローチ剤、またはサシェ剤として処方される、34に記載のキット。
36.処方物の用量が静脈内または非経口的に投与されるように処方される、31~33のいずれか一項に記載のキット。
37.前記処方物の用量が、経皮パッチによって投与されるように処方される、31に記載のキット。
38.対象が哺乳動物である、31~37のいずれか一項に記載のキット。
39.哺乳動物がヒトである、38に記載のキット。
40.対象由来の生物学的サンプル中のapoE4対立遺伝子の特異的検出を可能にするためのPCRまたはマイクロアレイ解析を実施するための1つ以上の試薬、および試薬を生物学的サンプルと反応させるための電子的または紙による指示をさらに含む、31~39のいずれか一項に記載のキット。
41.1以上の対照参照サンプルをさらに含む、40に記載のキット。
42.31~41のいずれか一項に記載のキットであって、対照を治療するための指示は、対象の重量および投与された処方物の重量または体積に基づく用量を特定する、キット。
以下の実施例は、当業者に本発明の製造方法および使用方法の完全な開示および説明を提供するために記載されており、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図しておらず、以下の実験がすべてまたは唯一の実験であることを示すことを意図していない。使用した数値(例えば、量、温度等)の精度を確保するための努力がなされているが、いくつかの実験誤差や偏差を考慮に入れるべきである。特に明記しない限り、部分は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。標準的な省略形、例えば、bp、塩基対;kb、キロベース;pl、ピコリットル;sまたはsec、秒;min、分;hまたはhr、時間;aa、アミノ酸;kb、キロベース;bp、塩基対;nt、ヌクレオチド;i.m.、筋肉内;i.p.、腹腔内;s.c.、皮下;が使用されてもよい。
材料および方法
以下の材料および方法は、以下に提供される実施例1~3に適用可能である。
データ統合。National Center for Biotechnology Information(NCBI)のGene Expression Omnibus(GEO)およびNational Institute of Aging’s Accelerating Medicines Partnership-Alzheimer’s Disease(AMP-AD)データベースを用いて、apoE遺伝子型情報が利用可能な側頭葉組織からのトランスクリプトームADデータを検索した。Webster他、200917からのマイクロアレイ実験、accession GSE15222は、NCBI GEOデータベース24から利用可能なseries matrix fileフォーマットで直接ダウンロードされた。データは、説明されているようにランク不変に(rank-invariant)正規化されていた17,25。正規化前の手順では、series matrix fileに負の値が作成されたが、これは、発現マトリックス全体に定数を追加することで削除されました26。この追加後に計算された倍率変化(FC)は過小評価であるため、以降のすべてのFC推定値は、指定されたしきい値に対して保守的である。その後、Log2変換を全正値発現マトリックスに適用した。apoE3/3、apoE3/4またはapoE4/4遺伝子型を有する全てのサンプルを、性別が報告されていない1つのサンプルを除き、更なる解析のため用いた。Syn3l57255-MayoEGWASデータセットはAMP-ADポータルからダウンロードした。説明されているように、データはバックグラウンド補正され、分散安定化変換(Vst)、quantile正規化、BioConductorのlumiパッケージによるプローブフィルタリングにかけられた18。Vstは高い値ではlog2変換と同一であるが、低い値では外れている(deviates)(図6のパネルC)27。図6のパネル(c)は、分散安定化変換(Vst)が、より低い値でlog2変換から外れることを示す。lumiパッケージ(例えば、lumi)が提供するサンプルデータをダウンロードした。これらのデータには、Barnesら(2005)のマイクロアレイ研究1からランダムに選択された8,000個の遺伝子が含まれている。Vst変換(lumiパッケージ)をlog2変換(ベースRパッケージ)に対してプロットした。Vst値は、大きい数値ではlog2と等しくなるが、変換された値9を中心に上方に外れ始める。したがって、Vst変換における9よりも低い値からの倍率(fold)変化の計算は、実際に測定された倍率変化を過小評価していることになる。Vstアルゴリズムは、この偏差値の下で、log2スケールに基づいて計算したVst変換データのFC値を過小評価することになる。したがって、このデータセットのその後のFC推定値も、前述のしきい値と比較して保守的(conservative)であった。
両データセットを主成分分析(PCA)により解析し、技術的アーチファクトの正規化を確認した(図7および8)。図7は、GSE15222データセットの主成分分析(PCA)が、apoE4遺伝子型、診断、年齢、または性別共変量にわたりクラスター化傾向を示さないことを示す。パネル(a):GSE15222は、GEOから入手可能なseries matrix fileフォーマットで直接ダウンロードされた。データは、説明されているようにランク不変に正規化された2。正規化前の手順で負の値が生成されたが、発現マトリックス全体に定数を追加することで除去された3。データはlog2に変換され、結果のデータは主成分分析にかけられた。第1の主成分(PC1)は診断共変量と相関した(ピアソンのr=0.4585、P=1.61×l0-12)。PC2も診断と有意に関連していた(ピアソンのr=-0.1581、P=0.0207)。PC1はapoE4状態とも有意に相関した(ピアソンのr=0.1827、P=0.0074)。PC2は診断またはapoE4状態と相関しなかった。パネル(b):サンプルの年代別に表示されたデータ。PC1は年齢共変量と相関しなかった。PC2は年齢と相関した(ピアソンのr=-0.1581、P=0.0206)。(c)性別に従って表示されたデータ。PC1およびPC2は性別と相関しなかった。
図8は、バッチ補正後のSyn3157255-MayoEGWASデータセットのPCAが、apoE4遺伝子型、診断、年齢、または性別共変量にわたってクラスター化傾向を示さないことを示す。パネル(a):Syn3157255-MayoEGWASデータセットはAMP-ADポータルからダウンロードした。説明されているように4、データはバックグラウンド補正され、BioConductorのlumiパッケージを用いて、分散安定化変換(Vst)、quantile正規化、プローブフィルタリングが行われた。Vst変換はより高い値ではlog2変換と同一であるが、より低い値では外れている(図6のパネルc)5。データセットをPCAにより解析し、技術的アーチファクトの正規化を確認した。「プレート」共変量に対応する明確な技術的アーチファクトが第1の主成分(PC1、説明される分散(explained variance)の29.0%)全体に認められた。PC1はプレート共変量と相関し(ピアソンr=0.7159、P<2.2×l0-16)、PC2も相関した(ピアソンr=0.2049、P=3.9×l0-5)。パネル(b):データセットを、svaパッケージのComBat機能を使用してプレート共変量全体にわたってバッチ補正し、PCAを行って、技術的アーチファクトが対処されたことを確認した。PC1とPC2はバッチ補正後のプレート共変量と相関しなかった。パネル(c):apoE遺伝子型に従って表示されたComBat補正データのPCA。PC1は診断と相関し(ピアソンr=-0.4126,P<2.2×l0-16)、PC2も相関した(ピアソンのr=0.1653、P=0.0009)。PC1はapoE4対立遺伝子量(dosage)と相関したが(ピアソンR2=-0.1727、P=0.0005)、PC2はしなかった。パネル(d):性別に従って表示したComBat補正データ。PC1は性別と相関したが(ピアソンr=-0.2842、P=8.23×l0-9)、PC2はしなかった。パネル(e):サンプルの年代別に表示されたComBat補正データ。PC2は年齢と相関し(ピアソンのr=0.1224、P=0.0147)、PC1と年齢の相関は有意に近かった(ピアソンのr=-0.0943、P=0.0605)。
このようなアーチファクトは第1の主成分に存在するため、Syn3157255-MayoEGWASデータセットは、svaパッケージのComBat関数を使用して「プレート」共変量全体にわたってさらにバッチ補正された28。差次的発現(DE)解析に線形モデルを使用するLimmaRパッケージを各データセットに個別に適用して、apoE遺伝子型に関係なく、すべての対照サンプルおよびADサンプルの遺伝子のDEを推定した;複数のプローブを有する遺伝子については、ADサンプルと対照サンプルとの間の差異について最も有意なP値を有するプローブを用いて、2つのデータセットのその後の統合およびメタ解析を行った29。両データセットをapoE-遺伝子型特異的群(apoE3/3、apoE3/4、およびapoE4/4)に分けて;両マイクロアレイプラットフォームで共有される遺伝子(16477遺伝子)をComBatアルゴリズム(svaパッケージ)を用いて各群について2つのデータセットでバッチ補正した(図9)。
図9は、プローブ選択およびバッチ補正によるデータ統合が、メタ解析のための正規化されたデータセットをもたらすことを示す。パネル(a):Syn3157255-MayoEGWASデータセットはAMP-ADポータルからダウンロードした。説明されているように4、データはバックグラウンド補正され、BioConductorのlumiパッケージを用いて、分散安定化変換(vst)、quantile正規化、プローブフィルタリングが行われ、その後、「プレート」共変量全体にわたってバッチ補正された(図8を参照)。GSE15222をダウンロードし、負の値を排除するためにデータセットに定数を適用した;次いで、データをlog2に変換した。Limmaパッケージを2つのデータセットに別々に適用して、遺伝子型に関係なくすべての対照サンプルとADサンプル間の差次的発現(DE)を推定した;2つ以上のプローブを持つ遺伝子については、ADサンプルと対照サンプルとの差で最も有意なP値を有するプローブをその後の統合に使用した6。次に、データは両方のデータセットで共有される遺伝子を使用して結合した(n=16477s)。vst(MayoEGWAS)またはlog2変換(GSE15222)後の遺伝子発現値は、データセット間で発現レベルに明らかな違いを示した。パネル(b)は、ComBat補正後の統合データの発現値を研究別に示したものであり、統合データセット間の整合性が示されており、それ以降のすべてのDE解析に使用された。
差次的発現(Differential expression)および経路解析。平均年齢は、Syn3157255-MayoEGWAS試験で高かったapoE3/4AD群(+3.24歳、TukeyのHSD事後検定(post-hoc testing)を用いたANOVA、P=0.0153)を除き、apoE遺伝子型群で差はなかった。冪(power)を維持するために、Syn3157255-MayoEGWASのapoE3/4群からサンプルを除去しなかった。年齢がDEの結果に影響しないことを確かめるために、apoE3/4対照とADのデータセットの両方から得た各DE遺伝子のSyn3157255-MayoEGWASデータセットにおける発現レベルと年齢共変量とのピアソンの相関を計算した。有意に相関した遺伝子はなかった(FDR<0.05)。性別が一致しない群に関連する偽の結果を根絶するために、各apoE遺伝子型特異的群を診断全体で各遺伝子型内の男女比に一致するようにランダムにダウンサンプリングした(図5)。図5は、ヒトのトランスクリプトームデータセットの共変量測定を示す。各研究を別々に、あるいは組み合わせて、以下の共変量を報告した:apoE状態、診断、各群の平均年齢、群内年齢のSD,各遺伝子型内の対照とADサンプル間の年齢差の有意性(遺伝子型内の有意性)、群サイズ(n)、男性の数、女性の数、ダウンサンプリングした性同一群の男性または女性の数、群内の男女比(男性/女性比)およびダウンサンプリング後の群内の男女比(男性/女性比ダウンサンプル)。MayoEGWAS研究ではapoE3/4ADサンプルはapoE3/4対照サンプルよりも有意に年齢が高かった(3.24歳差)。この不一致は、オンライン方法のセクションに記載されているように、計算パイプラインで対処した。
起こり得る確率的効果を説明するために、この処理を10回適用した。ノンパラメトリックランクベースのアルゴリズムRankProd(バージョン2.42.0)を、2起源(two-origin)設計による10の置換(permutations)の各々に適用した。2起源設計RankProdアルゴリズムは、各データセットにおける各対照とADサンプルのペアワイズ(pairwise)FC比を個別に計算し、各ペアワイズ比較内の各遺伝子の比をランク付けし、両データセットからの全ペアワイズランク比の積を取ることにより各遺伝子のランク積を計算する。P値は1000の置換により決定した19。調整されたP値は、Rのp.adjust base関数を用いて個別に決定した。ComBat関数は、各サンプルの平均値とSDを変更する。したがって、RankProdパッケージによる報告されたFC推定におけるさらなるアーチファクトを避けるために、すべての後続カットオフで使用されるFCをバッチ補正前に各データセットに対して別々に計算し、算術平均を使用した。GSE15222マトリックスの正規化変換およびSyn3157255-MayoEGWASのVst変換の理由から、いくつかのFC値は過小評価され、「推定FC」と呼ばれる。推定FC値およびP値は、各遺伝子型に対する10の性別が一致する置換の各々について平均化し、FDR値はp.adjustパッケージを使用して計算した。推定平均絶対FCがl.3×より大きく、かつFDRカットオフ<0.05の両方を有するDE遺伝子をさらに解析した。薬物シグネチャのDE遺伝子をIngenuity(登録商標)Pathway Analysis(IPA)ソフトウェアで解析した。直接的および間接的な遺伝子関係を含むIngenuity(登録商標)Knowledge Baseからの参照セットを用いてオントロジー解析を行った;エンリッチメント(enrichment)P値はIPAソフトウェアから直接得た。
ドラッグリポジショニング解析。Sirota他とDudley他11,12により開発され、Chen他16から採用されたコンピュータによるドラッグリポジショニングアルゴリズムを、公的に利用可能なCMapデータベース(1300の化合物)を用いて各apoE-遺伝子型特異的遺伝子シグネチャに適用した。LINCSははるかに包括的なデータベースであるが、ADにおけるDE遺伝子のごく一部が、測定した1000個の遺伝子と重複しており、この研究では使用しなかった。アルゴリズムは、アップレギュレートおよびダウンレギュレートされた上位150個の遺伝子ではなく、完全なapoE-遺伝子型特異的DEシグネチャを使用するように修正された。FDR調整されたP値は、基本Rパッケージのp.adjust関数を用いて計算した。同じ薬物、濃度、細胞株、および治療として定義される技術的反復(technical replicates)をCMapスコアで平均した。apoE遺伝子型特異的群間の重複する薬物予測の解析において、薬物が複数の技術的反復を有する場合、最も包括的な薬物セットを有するために最も有意な反復からのP値が報告された。シグナルをさらに濃縮するために、各化合物について、最も低いCMapスコアを有する細胞株が報告された。PC3細胞中のブメタニドの生CMapデータを更なる解析のために抽出した。Chen他16によって詳述されたパイプラインからのCMapデータはブメタニド処理後のFCランクで構成されている。ブメタニドがADのapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャをどのように「反転させる(flips)」か、を示すために、図2のCMapデータを、平均FCランクにおけるシフトの有意性を計算するために、モンテカルロシミュレーションにより解析した。ブメタニドによるダウンレギュレーションは、アップレギュレートされたapoE4/4ヒト遺伝子シグネチャの全遺伝子の平均ランクより低いランクへのシフトとして定義した。ブメタニドによるアップレギュレーションは、apoE4/4特異的ADシグネチャにおけるダウンレギュレートされた遺伝子の平均FCランクの全遺伝子の平均ランクより高いランクへのシフトとして定義した。
マウス。全てのプロトコルと手順は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の実験動物リリースセンターのガイドラインに従った。すべてのマウスを出生から死亡まで同一の条件下で飼育した(12時間明/暗サイクル、5匹/ケージで飼育、PicoLab Rodent Diet 20)。全てのマウス系統をC57B1/6Jバックグラウンドで維持した。ApoE3-KIおよびApoE4-KIホモ接合マウス系統(Taconic)30,31は、Gladstone Institutes/UCSF動物施設で正常条件下で生まれ、加齢した。雌のapoE-KIマウスを、ADに関連する神経細胞および行動の障害に対する感受性のため使用した。マウスの年齢は、オンライン方法の行動試験のセクションに記載されている。
ブメタニドでの処理。ブメタニドを0.9%滅菌生理食塩水中2%DMSO中220mMで調製し、溶解性のためにNaOHでpH8.5に調整し、毎日のi.p.注射によって与えられ、i.p.注射は、行動評価の6週間前から開始し、行動評価中も継続した。体重は、ブメタニド処理中に毎週測定した;注射量は、0.02mg(低)または0.2mg(高)ブメタニド/kg体重(例えば、20gのマウスに対して50-μlの毎日の注射)の投与量を達成するように計算した。対照マウスには、0.9%滅菌生理食塩水に同量の2%DMSO(pH8.5)を注射した。注射は忍容性が良好であり、健康に対する有害作用はなかった。
行動試験。試験前にマウスを1匹ずつ飼育した。各マウスにはランダムな番号が割り当てられたため、研究者らは遺伝子型および処理情報を知らされなかった。約14か月齢で、apoE3-KIマウスおよびapoE4-KIマウスを処理群に無作為に割り当てた:apoE3-KIビヒクル(n=10、年齢14.01±0.44ヵ月)、apoE3-KI低ブメタニド(n=11、年齢14.30±0.33ヵ月)、apoE3-KI高ブメタニド(n=10、年齢13.74±0.22ヵ月)、apoE4-KIビヒクル(n=10、年齢14.10±0.35歳)、apoE4-KI低ブメタニド(n=10、年齢14.70±0.27ヵ月)、apoE4-KI高ブメタニド(n=9、年齢13.77±0.28ヵ月)。処理は、モリス水迷路(MWM)での試験の6週間前から試験の14日間にわたって、毎日i.p.注射で投与した;注射は明サイクルの終了時およびその日の試験後に行われた。
MWMプール(直径、122cm)は、直径10cmのプラットフォームを備えた不透明な水(22~23℃)を含んでいた。プラットフォームは隠しプラットフォームセッション(hidden platform sessions)時には、1.5cm水中に沈められ20~23,32、キュートレーニングセッション(cued training sessions)時には、黒と白の縞模様のマスト(高さ15cm)でマークされた。マウスは、それぞれ15分のトライアル間間隔で2回の60秒のトライアル(隠しおよびキュートレーニング)からなる、1日2回のセッション(3.5時間間隔)で、隠れたプラットフォーム(隠された日1~5日)およびキュープラットフォーム(可視日1~3日)を見つけるように訓練した。行動試験室の壁の遠位の視覚的な手がかり(cue)は、試験を通して一定のままであった。可視トライアルは、トレーニングと記憶プローブ(probes)の後に行われ、目に見えるキュープラットフォームを用いて60秒の長さで行われた。プラットフォームの位置は、隠れプラットフォームのセッションでは一定のままであったが、キュー(可視的な)プラットフォームセッションごとに変更した。入水ポイント(entry points)は、トライアルとトライアルとの間にて半ランダム的に変更した。最後の隠しプラットフォームトレーニングの24、72、および120時間後に、60秒プローブトライアル(プラットフォームを除去)を行った。プローブトライアルの入水ポイントは南西象限にあり、ターゲット象限は北東象限であった。パフォーマンスはEthoVision(登録商標)ビデオ-追跡システム(Noldus Information Technology)でモニターした。プローブトライアルでは、以下の解析を行った:(1)他の3つの象限で費やされた平均時間に対する、ターゲット象限で費やされた時間の割合(%)、(2)他の3つの象限において同等の位置を横切った交差数の平均値に対する、ターゲットプラットフォームの位置を横切った交差数、および(3)最初の10秒のプラットフォームまでの距離。
海馬組織のRNA-Seq解析。12ヶ月齢のapoE3-KIマウスおよびapoE4-KIマウスに、ビヒクルまたはブメタニド(0.2mg/kg体重)を60日間毎日i.p.注射した。マウスを0.9%生理食塩水で潅流し、海馬を解剖し、Trizol試薬でホモジナイズした。全RNAを抽出し、DNase処理を含むQiagen RNeasy(登録商標)Microキットを使用して精製した。cDNAは、NuGEN RNA-SeqV2キットを用いて全長RNA(50ng/サンプル)から生成され、このキットは、単一プライマー等温増幅法を用いてリボソームRNAを枯渇させ、Covarisによって剪断されて均一なサイズの断片を生じた。NuGen UltralowシステムV2は、アダプターの追加とバーコード化および増幅に使用された。得られたRNAライブラリーをAgencourt(登録商標)XP磁気ビーズで精製し、Agilent(商標)Bioanalyzerによる品質管理の後、qPCRによって定量した。ライブラリーをプールし、単末端(SE50)配列決定のためにHiSeq(登録商標)4000機器(Illumma)を用いて配列決定した。配列データをSTAR short read aligner33でアライメントし、Subreadパッケージからfeauture Counts関数を用いて特徴あたりのカウント数を取得した34。アライメント後、GSE15222およびSyn3157255-MayoEGWASデータベースで共有されていない転写産物を廃棄し、2つ以上のサンプルで100万あたり1カウント未満の遺伝子も廃棄した35。
DESeqパイプラインを用い、残りの11,877転写物のDEを評価した。P値0.05以下の遺伝子は将来の経路解析のためにDEと考えられた。DESeqによるカウント正規化後、データをrld変換し(vsnパッケージ)、pheatmapパッケージを用いてDE遺伝子上でクラスタリングを行った。PCAをrld変換DE遺伝子に適用した。薬物のDEシグネチャをIngenuity(登録商標)Pathway Analysis(IPA)ソフトウェアで解析した。オントロジー解析は、直接的および間接的な遺伝子関係を含むIngenuity(登録商標)Knowledge Baseからの参照セットを用いて行った。ADのapoE-遺伝子型特異的シグネチャ遺伝子のランク変化の解析のため、11,877の転写物からの生のカウントデータをランク変換し、各遺伝子に対し、ビヒクル処理したサンプルの平均ランクをブメタニド処理したサンプルの平均ランクから差し引いた。すべての遺伝子のランク変化の母集団平均(0)から外れる、アップレギュレートされたapoE4-KIおよびダウンレギュレートされたapoE4-KIヒト遺伝子シグネチャのランク変化の有意性を、モンテカルロシミュレーションにより計算した。
統計解析。行動指標は平均±SEMで表される。nの値はすべてマウス数または生物学的複製数である。データの分布はShapiro-Wilk正規性検定で評価した;データの大部分は正規分布であった。群間の差異は、対応のない、または対応のある両側t検定によって決定した。多重比較には、一元配置分散分析(ANOVA)とTukeyの事後検定を使用した。P<0.05を有意とみなした。研究者は、実験中に遺伝子型および治療情報を知らされなかった。
関連する倫理的規制および動物使用ガイドラインの順守。すべての実験および動物のプロトコルと手順は、大学および機関の倫理規定および動物使用ガイドラインに従って実施された。
ライフサイエンス報告の要約。実験計画の詳細については、ライフサイエンスレポートの概要を参照のこと。
以下の材料および方法は、以下に提供される実施例4~6に適用可能である。
脳切片の電気生理学的記録およびデータ解析。長期増強(LTP)記録研究のために、apoE4-KIマウスをビヒクル(n=6、年齢15.2±0.56ヵ月)とブメタニド(n=3、年齢15.1±0.06歳)処理群にランダムに割り当てた。ApoE3-KIマウスを同様にビヒクル(n=6、年齢15.5±0.11歳)とブメタニド(n=3、年齢15.57±0.19歳)処理群に割り当てた。入出力記録研究のために、apoE4-KIマウスをビヒクル(n=3、年齢15.1±0.06ヵ月)とブメタニド(n=3、年齢15.1±0.06歳)処理群にランダムに割り当てた。ApoE3-KIマウスを同様にビヒクル(n=7、年齢15.3±0.06歳)とブメタニド(n=3、年齢15.57±0.29歳)処理群に割り当てた。すべてのマウスに6~8週間投与し、切片記録日および投与時間を群間でランダムに割り当てて、実験が実施されている間に等しい投与時間を確保した。最終ブメタニド注入は屠殺の1時間前に行った。記録時にはすべてのマウスが16~17カ月齢であった。
動物をイソフルランで麻酔し、首を切断した。脳を頭蓋から迅速に除去し、氷冷(2~5℃)スライス溶液中に置いた。スライス溶液は(mMで)、110mMの塩化コリン、2.5mMのKCl、26mMのNaHCO3、10mMのMgCl2、1.25mMのNaH2PO4、0.5mMのCaCl2、10mMのグルコース、3mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのL-アスコルビン酸、を含有しており、pH7.4であった。
300μm厚さの矢状切片をビブラトーム(VT1200、ライカ、米国)を用いて両方の半球から切り取り、人工脳脊髄液(ACSF)を入れた95%O2-CO2気相界面保持チャンバー(BSK5、Scientific Systems Design Inc、カナダ)に移し、34℃で1時間回復させ、その後室温(20~22℃)で保持した。ACSFは(mMで):126mMのNaCl、2.5mMのKCl、1.5mMのCaCl2、1.5mMのMgCl2、26mMのNaHCO3、1.25mMのNaH2PO4、10mMのグルコースおよび1.5mMのL-アスコルビン酸、を含有しており、pH7.4であった。記録のために、切片を液中チャンバー(RC-27LD、Warner Instmmments、米国)に移し、32℃で10mL/分の流速で酸素化ACSFで両側を連続的に潅流した。
シナプス後野電位(fPSP)は、定電圧分離刺激装置(DS2A-MKII、Digitimer North America)に接続し、CA2放射状層に置いた同心双極刺激電極(FHC社、米国)によるSchaffer側枝の順行性刺激により誘導した。fPSPは、ACSFで充填したホウケイ酸ガラス微小電極を用いてを記録し、CA1放射層に配置した。信号は、pClamp10ソフトウェア(Molecular Devices、米国)を備えたMulti Clamp700B増幅器およびDigidata1550B1収集システムによってサンプリングおよびデジタル化され、カスタムマクロを実行するIgorPro(登録商標)6ソフトウェア(Wavemetrics Inc.、米国)を使用して解析した。fPSP勾配は、fPSPピークの10%と90%との間の線形適合勾配値として解析した。入出力関係は、刺激強度の増加(0.5~1.4mV)に反応したfPSP勾配値として記録した。長期増強(LTP)記録に対し、刺激強度を飽和の50%に調整し、0.1Hzで送達した。コントロール記録の10分後、0.2Hzで5つの100Hzバースト(各4パルス)の2つの連続(5s)θ周波数バースト(HFB)列を用いてLTPを誘発した。LTPの結果は、コントロールの10分間に対する、誘導50分後の10分間の平均fPSP増加量(gain)として確認された。
単一核(Single-Nucleus)RNA-Seqライブラリーの調製および配列決定。12ヶ月齢のapoE3-KIマウスおよびapoE4-KIマウスに、ビヒクルまたはブメタニド(0.2mg/kg体重)を60日間毎日i.p.注射した。単一核RNA-seqプロトコルは、10×ゲノミクス試料調製実証プロトコルおよび単一細胞RNA配列決定のための核の単離に基づいて変更された。マウス海馬を氷上で急性解剖した。切断した海馬を、5mLチューブ内の2mLのHibernateA(登録商標)/B27(登録商標)/GlutaMAX(商標)(HEB)培地中に入れた。HEB培地を15mLの円錐形に除去し、氷上に保持した。2mLの冷却した溶解緩衝液(ヌクレアーゼフリー水中の10mMTris-HCl、10mMのNaCl、3mMのMgCl2、および0.1%のNonidet(商標)P40代替物)を組織に添加し、海馬を、21G針を通して10回吸引することによってホモジナイズした。ホモジナイズ後、組織を氷上で15分間溶解し、このインキュベーション期間中に2~3回旋回させた。次いで、保存した冷却HEB培地を溶解した組織溶液に戻し、1mLピペットに5~7回通すことにより、組織をさらに粉砕した。30μmの細胞濾過器(MACS(登録商標)Smart Strainer;Miltenyi Biotech 130-110-915)を1mLのPBSで洗浄し、溶解した組織溶液を濾過器を通して濾過し、破片および塊を除去した。濾過された核を、500refにて、4℃で5分間遠心分離した。上清を除去し、核をNuclei Wash and Resuspension Buffer(1.0%のBSAおよび0.2U/μlのRNase阻害剤を含む1×PBS)1mLに再懸濁し、次いで、500refにて、4℃で5分間再度遠心分離し、Nuclei Wash and Resuspension Bufferの400ulに再懸濁した。DAPIを0.1ug/mLの最終濃度まで添加し、核溶液を35um細胞濾過器で濾過した後、グラッドストーン研究所のフローサイトメトリーコアのBD FACSAria-IIにロードした。DAPl陽性核は、破片とダブレットを除外して、DAPI陽性事象でのゲーティングによって選択した。
単一核RNA-Seqアラインメント、クラスタリングおよび細胞型同定。マウスのリファレンス(mm10-3.0.0、アンサンブル97)プレmRNAゲノムは、10X Genomics Cellranger(v.2.2.0)mkref機能により作成した。各サンプルからの読み取りをこのゲノムに整列させ、変更なしで10X Cellrangerパイプラインを用いて凝集させた。生データをRパッケージSeurate(バージョン2.3.4)にロードした。少なくとも3つの核で発現が検出された遺伝子、および少なくとも200の検出された遺伝子および最大2400の核を、0.0025未満のミトコンドリアパーセンテージを有する全核についての解析のために保持し、合計27,415個の細胞について将来の解析のために保持した。高可変性遺伝子は、合計2578個の高可変性遺伝子に対して、x.low.cutoff=0.0123、x.high.cutoff=3、y.cutoff=0.5のパラメータを有するFindVariableGenes関数を介して計算された。核内の高可変性遺伝子の発現レベルを、ScaleData関数を介してスケーリングし、中央揃えした後、RunPCA関数に供給した。各主成分の累積標準偏差をプロットするためにPCAElbow Plotを使用し、各遺伝子と各主成分との関連性の有意性をJackStrawおよびJackStrawPlot関数を介して評価した。この2つのグラフの結果をもとに、最初の15のPCを選択してFindCluster機能に供給し、以下の0.6の解像度を用いて実行した。この方法では、18の異なるクラスターが識別された。次に、各クラスターに存在する細胞型を同定するためのデフォルト設定を用いてマーカー遺伝子を同定するためにFindMarkers関数を適用した。異なる細胞型のマーカー遺伝子発現をより良く可視化するために、RMagic(Markov Affinity-Based Graph Imputation)パッケージのマジック関数をSueratオブジェクトに適用し、ノイズを除去し、カウントマトリックス中のドロップアウト事象を満たすために、類似した細胞間で情報を共有するデータ拡散を適用した。Seurat VlnPlot関数を用いてマーカー遺伝子発現を可視化した。
単一核RNA-Seqの差次的発現と経路解析。各細胞型におけるブメタニドと対照処理細胞間の全遺伝子の差次的発現log倍率変化をWilcoxon順位和検定を用いてFindMarkers関数により計算した。ブメタニドがADのapoE4/4-特異的トランスクリプトームシグネチャをどのように「反転」させるかを示すために、Cmapデータベースで測定されたものと重複する各細胞クラスターに存在する全遺伝子のlog倍率変化をランク変換し、その後、平均FCランクのシフトの有意性を計算するためにモンテカルロシミュレーションにより解析した。ブメタニドによるダウンレギュレーションは、アップレギュレートされたapoE4/4ヒト遺伝子シグネチャの全遺伝子の平均ランクより低いランクへのシフトとして定義した。ブメタニドによるアップレギュレーションは、apoE4/4特異的ADシグネチャにおけるダウンレギュレートされた遺伝子の平均FCランクの全遺伝子の平均ランクより高いランクへのシフトとして定義した。差次的に発現した経路を、limmaパッケージのkegga関数を用いて、各クラスターの全てのDE遺伝子(p<0.05)から計算した。エンリッチメントp<0.005の経路を更なる解析に用いた。
ヒトapoE4/4-iPSCのニューロン分化。ヒトiPS系統をapoE4/4遺伝子型を有する対象の皮膚線維芽細胞から作出し、mTeSR1培地(STEMCELL Technologies)において無給餌条件下で維持した。ヒトapoE4/4-iPSCをAccutase(Millipore)による短時間処理とスクレーピングにより1:2~1:4で日常的に継代した。ヒトiPSCプロトコルは、カリフォルニア大学のヒト研究委員会により承認された。apoE4/4-iPSCを修飾して報告したようにニューロンに分化させた。iPSCをコラゲナーゼIV(Stem Cell Technologies)で処理し、bFGFを含まないhES培地中で胚様体として懸濁状態で増殖させた。培地は5日間、毎日交換した。5日目に、TGF-β受容体(SB431542、Stemgent;5μM)および骨形成タンパク質受容体(LDN-193189、Stemgent;0.25μM)の阻害剤を添加したDulbecco改変Eagle培地/Fl2とNeurobasal培地(1:1、Thermo Fisher)、1%N2添加(Life Technologies)、1%B27添加(Life Technologies)、非必須アミノ酸、および0.5%ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)を含む神経誘導培地で胚様体を成長させた。7日目に、球を、Matrigel(BD Biosciences)でコーティングしたウェルに移し、SBおよびLDNを含まないが、10ng/mlのbFGF(PeproTech)、10ng/mlの上皮成長因子(EGF)(PeproTech)、および2μg/mlのヘパリン(Sigma)を含有する神経誘導培地からなる神経前駆体培地で増殖させた。付着した神経上皮細胞を1日おきに7日間与えた。15日目頃までに神経ロゼット構造が出現し、プレートから持ち上げ、神経前駆体培地で懸濁培養してニューロスフェア(neurospheres)を形成した。ニューロン分化のために、ニューロスフェアをAccutaseで解離し、100μg/mlのポリ-l-オルニチン(Sigma)および10μg/mlラミニン(Sigma)でコーティングした培養プレート上にプレーティングした。ニューロン培養は、bFGF,EGFまたはヘパリン無しで、神経前駆体培地、脳由来神経栄養因子(10ng/ml;PeproTech)およびグリア細胞由来成長因子(10ng/ml;PeproTech)よりなる神経分化培地で維持した。ニューロンが数日後に観察され、30日間以上さらに分化した。大部分の実験は8週以降に分化したニューロン培養物で行った。
この培養条件では、75±4%のvGLUT+総グルタミン酸作動性興奮性ニューロン、15±3%のGABA+GABA作動性抑制性ニューロン、および5±2%のTH+ドーパミン作動性ニューロンを有するニューロン細胞が生成された。
ヒトApoE4/4-iPS由来ニューロンのRNA-Seq解析。DNase処理を含むQiagen RNeasy(登録商標)Microキットを使用してapoE4/4-iPSC由来ヒトニューロンから全RNAを抽出し、精製した。cDNAは、NuGEN RNA-SeqV2キットを用いて全長RNA(50ng/サンプル)から生成され、このキットは、単一プライマー等温増幅法を用いてリボソームRNAを枯渇させ、Covarisによって剪断されて均一なサイズの断片を生じた。NuGen UltralowシステムV2は、アダプターの追加とバーコード化および増幅に使用された。得られたRNAライブラリーをAgencourt(登録商標)XP磁気ビーズで精製し、Agilent(商標)Bioanalyzerによる品質管理の後、qPCRによって定量した。ライブラリーをプールし、単末端(SE50)配列決定のためにHiSeq(登録商標)4000機器(Illumima)を用いて配列決定した。配列データをSTAR short read alignerでアライメントし、Subreadパッケージからfeauture Counts関数を用いて特徴あたりのカウント数を取得した。
DESeqパイプラインを用いて、得られた49,697の特徴の差次的発現を評価した。p<0.05以下の遺伝子は将来の経路解析のためにDEと考えられた。DESeqによるカウント正規化後、データをrld変換し(vsnパッケージ)、PCAをrld-変換DE遺伝子に適用した。limmaパッケージのkegga関数を、濃縮オントロジー経路を解明するために、全てのDE遺伝子(p<0.05)で使用した。濃縮した(enriched)経路(p<0.05)を更なる解析に用いた。
ブメタニドがADのapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャをどのように「反転」させるかを示すために、各転写産物のENSEMBL IDから遺伝子シンボルを生成し、複数のENSEMBL IDに対応する遺伝子について平均倍率変化(fold change)を測定した。Cmapデータベースで測定された遺伝子とも重複する遺伝子のFCをランク変換し、次いで、平均FCランクにおけるシフトの有意性を計算するためにモンテカルロシミュレーションにより解析した。ブメタニドによるダウンレギュレーションは、アップレギュレートされたapoE4/4ヒト遺伝子シグネチャの全遺伝子の平均ランクより低いランクへのシフトとして定義した。ブメタニドによるアップレギュレーションは、apoE4/4特異的ADシグネチャにおけるダウンレギュレートされた遺伝子の平均FCランクの全遺伝子の平均ランクより高いランクへのシフトとして定義した。
実施例1
ブメタニドのインシリコ(IN SILICO)スクリーニングおよび同定
研究プロトコルが記載され、結果がここに示される。
ADおよび/またはapoE4/4-遺伝子型関連疾患および障害を治療するための薬物をスクリーニングするためのapoE-遺伝子型特異的ドラッグリポジショニングアプローチが本明細書に記載される。
公的データベースから得られた610のヒト側頭葉サンプルの遺伝子発現メタ解析から、ADのapoE遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを確立し、1300の既存薬剤のトランスクリプトーム摂動(perturbation)シグネチャを含む有効な接続性マップ(CMap)データベースをクエリーするために使用して、apoE遺伝子型駆動疾患状態から正常状態に向けて全遺伝子発現ネットワークを摂動できる(perturbing)ものを同定した。
公的に利用可能なデータベースからのADのapoE遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを最初に解析し、ADのapoE遺伝子型特異的シグネチャを用いた最初のCMapデータベース検索を完了した。
ADのapoE遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを確立するために、apoE遺伝子型情報を有する2つの最大の公的ヒト側頭葉トランスクリプトームデータセット-GSE15222(n=213)およびSyn3157555-MayoEGWAS(n=397)を解析した。データセットはノンパラメトリックアルゴリズムであるRankProdを用いて、メタ解析のためにapoE遺伝子型で層別化した。平均偽発見率(FDR)調整値<0.05および平均絶対推定倍率変化(FC)>1.3×を有する遺伝子をさらに解析した。apoE遺伝子型とマッチした対照との比較は、apoE4/4、apoE3/4、およびapoE3/3遺伝子型を有するAD対象において、それぞれ314,150および696の遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを示した。驚くべきことに、わずか31のDE遺伝子(全DE遺伝子の2.7%)が3つのAD群のすべてで共有され、AD病因における各apoE遺伝子型の独特な病理生物学を強調した。CMapデータベースへのADのapoE-遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを適用し、治療予測を作成した。FDA承認のループ利尿薬であるブメタニドはapoE4/4ADに対して最良の予測スコアを有し、apoE3/4およびapoE3/3ADに対してより弱いCMapスコアを有していた。CMapデータベースにおけるブメタニド処理細胞において、apoE4/4ADでアップレギュレートされた遺伝子は下方にシフトし(より高いランク数、モンテカルロシミュレーションによるP=0.003)、apoE4/4ADでダウンレギュレートされた遺伝子は上方にシフトし(より低いランク数、モンテカルロシミュレーションによるP=0.002)、ブメタニドのトランスクリプトーム摂動シグネチャはapoE4/4ADのそれと負に相関することを確認した。
本明細書に記載されたADに対するドラッグリポジショニングアプローチは、疾患状態において差次的に発現する(DE)遺伝子を対照レベルに戻るように摂動または「反転(flip)」する薬物が、この疾患に対して有効であり得るという十分に検証された仮説に基づいている9~15。このパイプライン内で、第1のステップは、ADのapoE遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを確立することであった。第2は、検証済みのコンピュータによるドラッグリポジショニングアルゴリズム9,11,12,16を適用して、1300の薬物のトランスクリプトーム摂動シグネチャを含むCMapデータベースをクエリーする(query)ことであった8。各化合物は、apoE遺伝子型特異的ADにおける治療可能性の予測スコアを受け取った11,12,16。負のスコアは、化合物が疾患のトランスクリプトームシグネチャを逆転させる可能性があることを示唆した。ADのトランスクリプトームシグネチャを各化合物により摂動されたものと比較したため、予測戦略は孤立した経路を標的とする仮説駆動アプローチによるものよりもむしろ疾患のDE遺伝子シグネチャにより駆動された。最後に、実施例2および3で考察したように、最も予測される薬物をapoE4駆動ADのマウスモデルで試験し、効力を確認し、作用機序を探索した。
図1は、ADのapoE遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを示す。パネル(a)は、データセットの選択および統合、apoE遺伝子型の層別化、遺伝子のDE解析、ドラッグリポジショニング解析、ならびに行動的およびトランスクリプトーム的検証を含む実験的ワークフローを示す。パネル(b)は、ADおよび対照データセットGSE15222(n=213)およびSyn3l57255-MayoEGWAS(n=397)のapoE遺伝子型構成を示す。apoE4対立遺伝子表現(apoE3/4およびapoE4/4)はAD群で大きかった(apoE4キャリア対ADにおける非キャリア対対照集団のχ2検定、P<0.001)。パネル(c,d)は、apoE遺伝子型特異的、ランクに基づくメタ解析から、重複し、ユニークにアップレギュレートされた(c)およびダウンレギュレートされた(d)DE遺伝子(推定絶対FC>1.3x、FDR<0.5)のベン(Venn)図を示す。apoE4/4ADでは153遺伝子が、apoE3/4ADでは15遺伝子が、apoE3/4ADでは319遺伝子が特異的に有意にアップレギュレートされた。これらの群で共有されたDE遺伝子はわずか18遺伝子であった。apoE4/4ADでは69遺伝子が、apoE3/4ADでは8遺伝子が、apoE3/4ADでは193遺伝子が特異的に有意にダウンレギュレートされた。13のDE遺伝子は3群全てで共有された。パネル(e)は、apoE-遺伝子型に特異的な群にわたって共有され、ユニークで有意に濃縮されたオントロジー経路のベン図を示す。19の経路がapoE4/4ADで、10がapoE3/4ADで、28がapoE3/3ADでユニークに有意に濃縮された。3つの経路は、3つの全ての群で共有された。
ADのapoE遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャを確立するため、2つの最大の公的(public)ヒト側頭葉トランスクリプトームデータセットであるGSE15222(n=213)17およびSyn3157255-MayoEGWAS(n=397)18をapoE遺伝子型情報で解析した(図1、パネルa;図5)。ほとんどの臨床研究6と同様に、各データセットのAD群は対照群よりもapoE3/4およびapoE4/4キャリアが比例的に多かった(図1、パネルb)。データセットはノンパラメトリックアルゴリズムであるRankProd19を用いたメタ解析のためにapoE遺伝子型によって階層化した(図1、パネルa)。平均偽発見率(FDR)で調整したP値<0.05および平均絶対推定倍率変化(FC)>1.3xを有する遺伝子をさらに解析した。apoE遺伝子型とマッチした対照との比較は、apoE4/4、apoE3/4、およびapoE3/3遺伝子型を有するAD対象において、それぞれ314、150および696の遺伝子のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションを示した(図1、パネルcおよびd)。驚くべきことに、わずか31のDE遺伝子(全DE遺伝子の2.7%)が3つすべてのAD群で共有され(図1、パネルcおよびd)、AD病因における各apoE遺伝子型の特異な病理生物学を強調した。
オントロジー解析は、ADのapoE4/4-、apoE3/4-、およびapoE3/3-特異的シグネチャにおいて28、24、および48の摂動(perturbed)経路を同定した(図1、パネルe)。3つ(すべての摂動経路の3%)は3つのAD群すべてで共有され(図1、パネルe)、ADの分子環境に対する各apoE遺伝子型の特異な効果をさらに強調した。
次に、ADのapoE-遺伝子型特異的トランスクリプトームシグネチャをCMapデータベースに適用して、治療予測を作成した16。図2は、apoE4/4ADの最上位予測薬物候補としてブメタニドを同定するapoE-遺伝子型特異的ドラッグリポジショニング解析を示す。図2のパネル(a-c)は、(a)apoE4/4特異的、(b)apoE3/4特異的、および(c)apoE3/3特異的トランスクリプトームシグネチャに対するCMapスコアで順序付けられたCMap化合物のグラフを示す。CMapスコアは3つの遺伝子型の全てについて負であったが、ブメタニドに関連したCMapスコアの調整後のp値(Q)は最上位予測薬物としてのapoE4/4およびapoE3/3ADに対して有意であったが、apoE3/4ADに対しては有意ではなかった。パネル(d)は、ADのapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャからの遺伝子のヒートマップを示しており、apoE4/4ADにおいて、推定されるFCによってランク付けおよびカラーコード化され(color coded)(左)、次いで、CMapランクによって再び、カラーコード化されている(右)。ブメタニドは、ADのapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャにおけるアップレギュレートされた遺伝子とダウンレギュレートされた遺伝子の両方の発現ランクを反転させる。パネル(e)は、CMapデータからのFCランク対apoE4/4ADにおけるDE遺伝子の推定FCを、ランクに基づくメタ解析により決定して示す(図1参照)。水平方向の点線は、推定FCカットオフ値1.3(ADのapoE4/4シグネチャにおける151のアップレギュレートされた遺伝子および71のダウンレギュレートされた遺伝子を、CMapデータで共有した)を示す。CMapデータにおけるブメタニド処理後の全遺伝子の平均FCランクは11,066.54(灰色の垂直方向の点線)であった。apoE4/4ADでアップレギュレートされた151の遺伝子は、平均FCランク12,393.62(赤色の垂直方向の点線)を有し、ブメタニドに反応した低いランクおよび低い発現を示した。apoE4/4ADにおける71のダウンレギュレートされた遺伝子は、8,815.22(垂直方向の赤線)の平均FCランクを有し、ブメタニドに反応したより高いランクおよびより高い発現を示した。右のy軸は、スキャッタプロット値のヒストグラムにおける遺伝子の数を示す。パネル(f、g)は、apoE4/4ADにおいてアップレギュレートされた遺伝子(n=151)(f)とダウンレギュレートされた遺伝子(n=71)(g)に対するCMapからのブメタニド処理データからランダムに採取したサイズ-適合遺伝子セットの1000の置換(permutations)のFCランクのヒストグラムを示す。ブメタニド処理後のヒトapoE4/4特異的アップレギュレーション遺伝子のFCランク(12,393.62、垂直方向の赤い点線)は、モンテカルロシミュレーションにより計算した1000の置換の平均より有意に高く(モンテカルロシミュレーション、P=0.003)、ブメタニド処理後のダウンレギュレーション遺伝子のFCランク(8,815.22、垂直方向の赤い線)は有意に低く(モンテカルロシミュレーション、P=0.002)、それぞれ低発現と高発現へのシフトを示した。
FDA承認ループ利尿薬であるブメタニドは、apoE4/4ADに対して最良の予測スコアを示し(図2、パネルa)、apoE3/4およびapoE3/3ADに対してはるかに弱いCMapスコアを示した(図2、パネルbおよびc)。CMapデータベースにおけるブメタニド処理細胞において、apoE4/4ADでアップレギュレートされた遺伝子は下方にシフトし(モンテカルロシミュレーションによる上位ランク数P=0.003)、apoE4/4ADでダウンレギュレートされた遺伝子は上方にシフトし(低ランク数、モンテカルロシミュレーションによるP=0.002)(図2、パネルd~g)、ブメタニドのトランスクリプトーム摂動シグネチャはapoE4/4ADのそれと負に相関することを確認した。
また、ヒトE3/4トランスクリプトームシグネチャはヒトE4/4ADシグネチャと大きく異なり(図1)、E3/4に対するブメタニドの薬物予測スコアはE3/3ADよりもさらに厳しい(図2)ことが観察される。
実施例2
記憶に対するブメタニドの効果に関するインビボ動物モデル試験
研究プロトコルが記載され、結果がここに示される。
以下に示すように、ブメタニドの効果を、インビボでApoE3/3とApoE4/4ノックイン(KI)マウスで試験した。全体として、ブメタニドで処理したapoE4/4遺伝子型のマウスでは認知機能が改善することが観察された。
老齢のapoE4-KIマウスおよびapoE3-KIマウスの空間学習および記憶能力に対するブメタニドの効果を測定した。モリス水迷路(MWM)を用いて、隠れプラットフォーム学習トライアルで5日間以上(over)の空間学習と記憶を試験し、その後、最後の隠れトライアル後の24時間での短期記憶、72時間および120時間での長期記憶のプローブトライアルを行った。学習曲線と遊泳速度は、隠れトライアルの間、遺伝子型または治療群で相違はなかった。しかしながら、ビヒクル処理apoE4-KIマウスはビヒクル処理apoE3-KIマウスでは見られない短期空間記憶の障害を有した。驚くべきことに、ブメタニドは、24時間プローブトライアルにおいて、apoE4-KIマウスの記憶障害を回復させ、apoE3-KIマウスと同様のパフォーマンスを示した。ブメタニド処理apoE3-KIマウスとビヒクル処理apoE3-KIマウスは等しく良好なパフォーマンスを示し、ブメタニドが記憶形成に悪影響を及ぼさないことを示唆している。120時間プローブトライアルでは、ブメタニド処理apoE4-KIマウスは依然としてターゲット象限に対して有意な選好性を有し、強力な長期記憶を示した。興味深いことに、ブメタニド処理apoE3-KIマウスは120時間プローブトライアルにおいて隠れプラットフォーム位置を記憶したが、ビヒクル処理apoE3-KIマウスは記憶しなかった。これはブメタニドが老齢のapoE3-KIマウスの長期記憶に及ぼす有益な効果を示唆するものである。空間記憶のより厳密な試験では、各プローブトライアル中の他の象限の類似領域に対するターゲットプラットフォーム位置の正確な交差を、記憶能力の特異性と正確性を評価するために計数した。驚くべきことに、ブメタニド処理apoE4-KIマウスは、24時間および120時間プローブトライアルの両方でターゲット象限で有意により多くのプラットフォーム交差を示したが、apoE3-KIマウスは示さなかった。このように、ブメタニドはapoE4-KIマウスにおける短期および長期記憶能力の精度を回復させた。これらの知見は、プローブトライアルにおける最初の10秒以内のプラットフォーム位置への移動距離を評価することによって確証された。このようにブメタニドは老齢apoE4-KIマウスにおける短期及び長期記憶及び記憶精度を回復させ、老齢apoE3-KIマウスの記憶精度ではなく長期記憶を増強した。
図3は、ブメタニド治療が特に老齢apoE4-KIマウスにおける空間記憶障害を救済することを示す。パネル(a)はMWM試験の概略図を示す。マウスは迷路の入水ポイントに配置され、遠位の空間的手がかりを使用して隠れているプラットフォームを見つける。パネル(b)は、ブメタニド(0.02mg/kgの低用量と0.2mg/kgの高用量を8週間の間、毎日腹腔内投与)およびビヒクル処理apoE3-KIマウス(それぞれn=11、10、10)およびapoE4-KIマウス(それぞれn=10、9、10)の、学習日1~5日にわたる脱出レイテンシー(escpe latency)を示し、群間に差はなかった。パネル(c)は、24時間プローブトライアルにおいて、低用量および高用量ブメタニド処理の両方が、他の象限における平均時間の割合(%)(各治療条件の右のバー)に対するapoE4-KIマウスがターゲット象限で費やす時間の割合(%)(各治療条件の左のバー)が、ビヒクル処理apoE3-KIマウスのレベルまで増加したことを例示している。高用量ブメタニド処理は、ビヒクル処理apoE3-KIマウスと比較してapoE3-KIマウスの記憶を障害した。パネル(d)は、l20時間プローブトライアルにおいて、高ブメタニド処理apoE4-KIマウスが対照よりもターゲット象限(各治療条件の左のバー)でより多くの時間を過ごしたことを示している。パネル(e、f)は、24時間(e)および120時間(f)プローブトライアルにおいて、高用量ブメタニド処理が、apoE4-KIマウスにおいてターゲット象限(各治療条件の左のバー)で他の象限(各治療条件の右のバー)と比較してプラットフォーム交差を有意に増加させたことを示している。値は平均±SEMである。c-fの群内差は対応のある(paired)両側t検定で求め、p値は図のパネルに示すとおりである。c-fにおいて、lo-Bumはブメタニド治療群の低用量を示し、hi-Bumはブメタニド治療群の高用量を示す。
図6(パネル(a)および(b))は、ブメタニド処理が遊泳速度または可視トライアルのパフォーマンスに影響を及ぼさないことを示している:(a)ブメタニドは、apoE4-KIおよびapoE3-KIマウスの隠れプラットフォームトライアル中に遊泳速度に有意に影響を及ぼさなかった;(b)可視トライアルではいずれの群にも有意差がなく、いずれの群にも運動障害または視覚障害がなかったことを示している。
インビボ検証のため、16か月齢のapoE4-KIマウスにおける認知障害に対するブメタニド治療(0.02mg/kgの低用量と0.2mg/kgの高用量を8週間にわたり毎日腹腔内投与)の効果を調べた。モリス水迷路(MWM)20~23を用いて、隠れプラットフォーム学習トライアルで5日間にわたる(over)の空間学習と記憶を試験し、その後、最後の隠れトライアル後の24時間での短期記憶、120時間での長期記憶のプローブトライアルを行った(図3、パネルa)。学習曲線と遊泳速度は、隠れトライアルおよび可視トライアルの間、遺伝子型または治療群で相違はなかった(図3、パネルb;図6、パネルa、b)。しかしながら、ビヒクル処理apoE4-KIマウスはビヒクル処理apoE3-KIマウスでは見られない短期空間記憶の障害があった(図3、パネルc)。驚くべきことに、低用量および高用量のブメタニド処理はいずれも、24時間プローブトライアルにおいて、apoE4-KIマウスの短期の記憶障害を回復させ、apoE3-KIマウスと同様のパフォーマンスを示した(図3、パネルc)。低用量ブメタニド処理apoE3-KIマウスとビヒクル処理apoE3-KIマウスは等しく良好なパフォーマンスを示し、低用量ブメタニドが記憶形成に悪影響を及ぼさないことを示唆している。しかしながら、高用量ブメタニド処理は、24時間プローブトライアルにおいてapoE3-KIマウスの短期記憶を障害し(図3、パネルc)、apoE4-KIマウスに対するブメタニドの有益な効果の特異性を示した。120時間プローブトライアルでは、高ブメタニド処理apoE4-KIマウスは依然としてターゲット象限に対して有意な選好性を有し(図3、パネルd)、apoE4-KIマウスの長期記憶に対するブメタニドの強い有益な効果を示した。興味深いことに、低用量および高用量のブメタニドで処理されたapoE3-KIマウスはいずれも120時間プローブトライアルにおいてビヒクル処理apoE3-KIマウスと同様に隠れプラットフォーム位置を忘れ(図3、パネルd)、長期記憶に対するブメタニドの有益な効果はapoE4-KIマウスに特異的であることを更に示唆した。
空間記憶のより厳密な試験では、各プローブトライアル中の他の象限の類似領域に対するターゲットプラットフォーム位置の正確な交差を計数して、記憶能力の特異性と正確性を評価した。驚くべきことに、高用量ブメタニド処理apoE4-KIマウスは、24時間および120時間プローブトライアルの両方でターゲット象限で有意により多くのプラットフォーム交差を示したが、apoE3-KIマウスは示さなかった(図3、パネルeおよびf)。低用量のブメタニドで処理したapoE4-KIマウスは24時間プローブトライアルにおいて短期記憶精度の有意な改善傾向を示した(図3、パネルe)。まとめると、これらのデータはブメタニドが特にapoE4-KIマウスにおいて短期および長期記憶能力の精度を回復させることを示している。
実施例3
ブメタニドがトランスクリプトームに及ぼす影響のインビボ試験
インビボでトランスクリプトームに対するブメタニドの作用を調べるために、ビヒクルまたはブメタニド(0.2mg/kg/日腹腔内注射)で8週間処理したapoE4-KIマウス由来海馬(AD病理の震央と考えられる側頭葉領域)のRNA配列解析を行った。階層的クラスタリングおよび主成分分析は、ブメタニド対ビヒクル処理からのDE遺伝子に基づくサンプルの有意なクラスタリングを示し、海馬における異なる薬物効果を示唆した。さらに、ブメタニド処理apoE4-KIマウスでは、apoE4/4ADで有意にアップレギュレートされた遺伝子は、それらの発現ランクで(高い番号のランクに対して)シフトダウンし(モンテカルロシミュレーションによるP<0.001)、CMapデータおよび疾患特異的トランスクリプトームシグネチャの反転は、動物モデルでも、コンピュータによるドラッグリパーパシングに対する合理的な戦略であるという仮説を裏付けた。apoE4-KIマウス(P<0.05)においてブメタニドによって発現が最も影響を受ける遺伝子の経路解析により、71の有意に摂動された経路を同定した。興味深いことに、これらの経路のうち6つはapoE4/4ADシグネチャに富む経路:GABA受容体シグナル伝達、cAMP媒介シグナル伝達、Gタンパク質共役受容体シグナル伝達、VDR/RXR活性化、シナプス長期抑制、およびCCR3経路、と重複した。
図4は、apoE4-KIマウスの海馬におけるブメタニドのトランスクリプトーム摂動シグネチャのRNA-seq解析を示す。パネル(a)は、ブメタニド(0.2mg/kgを8週間腹腔内投与)またはビヒクルで処理した後のapoE4-KIマウスからの海馬組織のRNA-seqによって定量化されたDE遺伝子のスケール化された正則化log(rld)変換RNA発現レベルの階層的クラスタリング解析を示す。(P<0.05)。カラーバーは、スケール化されたrld発現レベルを示す。パネル(b)は、apoE4-KIマウス海馬組織におけるDE遺伝子の主成分分析(PCA)を提示し、ビヒクル処理サンプルからブメタニド処理試サンプルを区別している。主成分1(PC1)は分散の57.4%を、PC2は11.2%を占める。パネル(c)は、apoE4-KIマウス海馬中のRNA-seqによっても検出されたヒト側頭葉サンプルの解析から得られた、ADのapoE4/4-特異的トランスクリプトームシグネチャを表す遺伝子セットを示す(図1参照)。ブメタニド処理後のapoE4-KIマウス海馬組織におけるこれら遺伝子の発現ランクの変化を、ビヒクル処理と比較して、apoE4/4ADのヒト側頭葉サンプルにおける推定FCに対して健常な対照と比較してプロットした。ブメタニド処理後の全遺伝子の発現ランクの平均変化は予想通り0であった(垂直方向の灰色の点線)。apoE4/4ヒトADでアップレギュレートされた157の遺伝子は、ブメタニド処理後に49.76の発現ランクの平均変化を示し(垂直方向の赤色の点線)、ブメタニドに反応して低ランクおよび低発現へのシフトを示した。右のy軸は、スキャッタプロット値のヒストグラムにおける遺伝子の数を示す。パネル(d)および(e)は、apoE4/4ADにおけるアップレギュレートされた遺伝子(n=157)(d)およびダウンレギュレートされた遺伝子(n=56)(e)のセットに対するサイズが一致した遺伝子セットの1000のランダムな置換のブメタニド処理後の発現ランクの平均変化のヒストグラムを示す。ブメタニド処理後のヒトapoE4/4特異的アップレギュレートされた遺伝子の発現ランクの平均変化(49.76、赤い点線)は、モンテカルロシミュレーションにより計算した0(1000の置換の平均)より有意に高く、より低い発現への有意なシフトを示した;ダウンレギュレートされた遺伝子の発現ランクの平均変化は0から有意にシフトしなかった。パネル(f)は、ヒトのapoE4/4ADで有意に濃縮された経路と比較して、ブメタニド処理後のapoE4-KIマウスの海馬からのDE遺伝子におけるIngenuity(登録商標)Pathway Analysis(IPA)による特異的(65)および共有する(6)の有意に濃縮されたオントロジー的経路のベン図と表である(P<0.05)。
階層的クラスタリングおよび主成分分析は、ブメタニド対ビヒクル処理からのDE遺伝子に基づくサンプルの有意なクラスタリングを示し(図4、パネルaおよびb)、海馬における異なる薬物効果を示唆している。さらに、ブメタニド処理apoE4-KIマウスでは、apoE4/4ADで有意にアップレギュレートされた遺伝子は、それらの発現ランクで(高い数のランクに対して)シフトダウンし(図4、パネルcおよびd、モンテカルロシミュレーションによるP<0.001)、CMapデータおよび疾患特異的トランスクリプトームシグネチャの反転は、動物モデルでも、コンピュータによるドラッグリパーパシングに対する合理的な戦略であるという仮説を裏付けた。しかしながら、apoE4-KIマウスにおいて、ブメタニドはapoE4/4ADでダウンレギュレートされた遺伝子のより小さなサブセットを変化させなかった(図4、パネルe)が、これはおそらくダウンレギュレートされた遺伝子のいくつかがapoE4/4ADでの遺伝子発現の変化ではなく細胞死を反映するためである。
全体として、apoE4-KIマウス(P<0.05)においてブメタニドによって発現が最も影響を受ける遺伝子の経路解析により、71の有意に摂動された経路を同定した。興味深いことに、これらの経路のうち6つはapoE4/4ADシグネチャに富む経路:GABA受容体シグナル伝達、cAMP媒介シグナル伝達、Gタンパク質共役受容体シグナル伝達、VDR/RXR活性化、シナプス長期抑制、およびCCR3経路、と重複した(図4、パネルf)。
参考文献
補足の参考文献
いくつかの例示的な態様および実施形態が上記で論じられてきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えて同等物を置き換えることができることを当業者は理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスステップまたは複数のステップを本発明の目的、精神および範囲に適合させるために、それらの多くの修正、置換、追加、およびサブコンビネーションを行うことができる。このような変更はすべて、本明細書に添付された特許請求の範囲内にあることが意図されている。
実施例4
ブメタニド処理は老齢apoE4-K1マウスにおけるニューロンの可塑性および興奮性欠損を回復する。
apoE4特異的行動救済の根底機序のより良好な理解を得るために、長期増強(LTP)に対するブメタニドの遺伝子型特異的効果を試験した。LTPはニューロン可塑性の電気生理学的測定である。これは正常な記憶形成の基礎となる分子機構と考えられており、ADの動物モデルでは損なわれている。老齢(16ヵ月齢)apoE4-KIマウスの記憶障害と一致して、海馬切片のCA1領域で記録されたLTPは、老齢のビヒクル投与apoE4-KIマウスでは、年齢が一致したビヒクル投与apoE3-KIマウスと比較して有意な欠損を示した(図12、パネルaおよびb)。ブメタニド処理(0.2mg/kg、8週間)は老齢apoE4-KIマウスにおけるLTP欠損を完全に救済した(図12、パネルaおよびb)。さらに、入出力曲線解析で測定したapoE4-KIマウスの海馬のCA1領域におけるニューロンの過剰興奮性もブメタニド処理で正常化した(図12、パネルc)。このように、インビボブメタニド処理は老齢apoE4-KIマウスの海馬において正常記憶形成の基礎となるニューロン可塑性および興奮性を回復させた。
上で議論したように、図12は、ブメタニド治療が老齢apoE4-KIマウスにおけるニューロン可塑性欠損を特に救済することを示すグラフを提供する。(パネルaとb)8週間の高用量(0.2mg/kg)ブメタニド処理はapoE4-KIマウス由来のエクスビボ海馬切片におけるLTP欠損を救済した。シータバースト刺激(TBS)誘導LTPを、16か月齢のビヒクル処理apoE3-KIマウス(n=6匹のマウスからの14の脳切片)、ブメタニド処理apoE3-KIマウス(n=3匹のマウスの11の脳切片)、ビヒクル処理apoE4-KIマウス(n=6匹のマウスからの14の脳切片)、及びブメタニド処理apoE4-KIマウス(n=3匹のマウスからの12の脳切片)からのエクスビボ海馬切片で測定した。平均fPSP勾配値を1分間隔にバイナリ化し、対照(a)に正規化した。実験群間のLTP獲得結果をまとめた(b)。(パネルc)高用量ブメタニド処理はapoE4-KIマウス由来のエクスビボ海馬切片における海馬ネットワーク興奮性欠損を救済した。Shaeffer側枝-CA1ネットワークにおける入出力関係を、16か月齢の、ビヒクル処理apoE3-KIマウス(n=7匹のマウスの23の脳切片)、ブメタニド処理apoE3-KIマウス(n=3匹のマウスの10の脳切片)、ビヒクル処理apoE4-KIマウス(n=3匹のマウスの11の脳切片)、およびブメタニド処理apoE4-KIマウス(n=3匹のマウスの12の脳切片)からのエクスビボ海馬切片で測定した。増加する刺激振幅にわたる平均fPSP勾配値(最小に正規化)を示した。値は平均±SEMである。両側t検定を、bの群間のLTP増加量(gain)の結果の統計解析に使用した。マンホイットニーU検定を使用して、cの動物群間の差異を解析した。**p<0.01;***p<0.001。
実施例5
ブメタニド処理は老齢apoE4-KIマウス海馬における選択的ニューロン型におけるapoE4/4ADトランスクリプトームシグネチャ遺伝子を反転する。
インビボで個々の海馬細胞のトランスクリプトームに対するブメタニドの作用を調べるために、異なる遺伝子発現の単一核RNA-seq解析を、ビヒクルまたはブメタニド(0.2mg/kg/日の腹腔内注射)で8週間処理したapoE4-KIマウス由来の海馬(AD病理の震央と考えられる側頭葉領域)におけるブメタニド処理後に実施した。海馬細胞の18の異なるクラスターを同定し、細胞型特異的薬物効果に対し更に解析した(図13A~13C)。SST/PV介在ニューロンだけでなく、全ての興奮性および混合ニューロンクラスターを含む12の細胞型において、apoE4/4ADでアップレギュレートされた遺伝子は、ブメタニド処理後に、より高いランク数に向かって下方にシフトし、apoE4/4ADでダウンレギュレートされた遺伝子は、より低いランク数に向かって上方にシフトし(モンテカルロシミュレーションによるP<0.05)、ブメタニドのトランスクリプトーム摂動シグネチャは、これらの神経細胞型におけるヒトapoE4/4ADのそれと負に相関することを確認した(図13Dおよび13E)。このシフトは、CMapデータおよび疾患特異的トランスクリプトームシグネチャの反転が、動物モデルの神経細胞においてさえ、コンピュータによるドラッグリパーパシングの合理的戦略であるという仮説を裏付けている。このシフトはDE遺伝子の数に関係なく興奮性神経細胞型とSST/PY介在ニューロン間で見られ、この効果は薬物効果とクラスターサイズの両方でロバストであることを示唆している(図13F)。ヒトのapoE4/4AD遺伝子の有意な「反転」を有する神経細胞型の少なくとも1つに濃縮された104のオントロジー経路があり(p<0.005)(図13G)、そのうちの19は、ヒトのapoE4/4媒介ADにおいても濃縮されていた(黒矢印で識別される)。
上述のように、図13A~13Gは、apoE4-KIマウスの海馬におけるブメタニドのトランスクリプトーム摂動シグネチャの単一核RNA-seq解析の結果を示す概略図、プロット、およびグラフを提供する。(図13A)ブメタニドとビヒクル処理マウスの海馬由来の24,000以上の核を、ハイスループットバーコード多重化による単一実験で一緒に配列決定した。(図13B)t-SNEによるクラスタリングおよび可視化は、細胞型に従ってコード化された18の別個のクラスターを識別する。アスタリスクは、ヒト側頭葉サンプルADの解析から得られたADのapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャにおけるアップレギュレートされた遺伝子のFCの平均ランクが有意にダウンレギュレートされ、ヒトapoE4/4ADにおけるダウンレギュレートされた遺伝子が有意にアップレギュレートされているクラスターを示す(P<0.05)。(図13C)治療によって色分けされたクラスターは、明確な薬物効果を示す。(図13D)4つの代表的なクラスターにおけるapoE4-KIマウス海馬の単一核seqによっても検出されたAD遺伝子セットのヒトapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャのヒストグラム。ブメタニド処理後のapoE4-KIマウス海馬における歯状回顆粒細胞クラスター、CA1ニューロンクラスター、CA2/3ニューロンクラスター、およびSst/Pvニューロン間クラスターにおけるこれら遺伝子のFCのランクを、ビヒクル処理と比較して、x軸対y軸上のそのランクにおける遺伝子数でプロットした。この遺伝子セット内のすべての遺伝子の平均ランクは黒い線で示され、アップレギュレートされた遺伝子(ヒストグラムで赤で表示)の平均FCランクは赤い点線で示され、ダウンレギュレートされた遺伝子(ヒストグラムで青で表示)の平均FCランクは青い点線で示されている。モンテカルロシミュレーションにより計算した、全ての遺伝子のランク平均から離れた、アップレギュレートされたFCランク平均とダウンレギュレートされたFCランク平均の「反転」の有意性のP値を示す(P<0.05が有意と考えられる)。(図13E)ADのapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャからの遺伝子のヒートマップであり、ヒトapoE4/4ADにおける推定FCによってランクが順序付けられ、色分けされたもの(上)、およびapoE4/4-KIマウス海馬における4つの代表的細胞型においてブメタニド投与後にFCランクによって再び色分けされたもの(下)。ブメタニドは、これら4つのクラスターにおけるADのヒトapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャにおけるアップレギュレーション遺伝子とダウンレギュレーション遺伝子の両方の発現ランクを反転させる。(図13F)ADのapoE4/4特異的なトランスクリプトームシグネチャの「反転」のP値は、x軸に各クラスター内のDE遺伝子の数に対してy軸にプロットされている。破線はP=0.05を示し、すべての興奮性ニューロンクラスターは黒い輪郭で強調されている。すべての興奮性ニューロンクラスター、混合ニューロンクラスター、Sst/Pv介在ニューロン、内皮/線維芽細胞様細胞は、DE遺伝子の数が異なるにもかかわらず、これらの遺伝子において有意な「反転」を示す。(図13G)ADのapoe4/4特異的トランスクリプトームシグネチャの「反転」挙動を示す全てのニューロンクラスターにおける調節不全オントロジー経路のp値のヒートマップは、これらの細胞型の少なくとも1つで調節不全である104の経路を明らかにする(P<0.005)。矢印(n=19経路)で示された経路名は、apoE4/4媒介ヒトADシグネチャと共有される。y軸の左から右の細胞型群は以下の通りである:非ニューロン、抑制性ニューロン、興奮性ニューロン、混合ニューロン、興奮性ニューロン、非ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、および興奮性ニューロン。x軸に左から右にリストされている経路は次のとおりである:。アフリカトリパノソーマ症、セロトニン作動性シナプス、基本転写因子、ニコチン依存性イノシトールリン酸代謝、ホスファチジルイノシトールシグナル伝達系、上皮細胞の細菌侵入、Wntシグナル伝達経路、Rap1シグナル伝達経路、T細胞受容体シグナル伝達経路、コリン作動性シナプス、長期抑制、ギャップ結合、N-グリカン生合成、ホスホリパーゼDシグナル伝達経路、癌のプロテオグリカン、mRNAサーベイランス経路、アルコール依存症、エストロゲンシグナル伝達経路、GABA作動性シナプス、モルヒネ中毒、アペリンシグナル伝達経路、内分泌およびその他の因子調節カルシウム再吸収、集合管酸分泌、関節リウマチ、胃癌、プロパン酸代謝、膀胱癌、細胞老化、プロテアソーム、クエン酸回路(TCAサイクル)、エンドサイトーシス、ハンチントン病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、酸化的リン酸化、パーキンソン病、細胞周期、FoxOシグナル伝達経路、ニューロトロフィンシグナル伝達経路、アドヘレンスジャンクション、卵母細胞の減数分裂、寿命調節経路、アクチン細胞骨格の調節、結核、長期増強、シナプス小胞サイクル、軸索ガイダンス、オキシトシンシグナル伝達経路、概日同調、グルタミン酸作動性シナプス、アンフェタミン中毒、ドーパミン作動性シナプス、ヒト免疫不全ウイルス1感染、オートファジー-動物、ユビキチン媒介タンパク質分解、グルカゴンシグナル伝達経路、小胞体におけるタンパク質プロセシング、cAMPシグナル伝達経路、心筋細胞におけるアドレナリン作動性シグナル伝達、cGMP-PKGシグナル伝達経路、リソソーム、小胞輸送におけるSNARE相互作用、スプライスソーム、カポシ肉腫関連ヘルペスウイルス感染、ヒトT細胞白血病ウイルス1型感染、RNA輸送、内分泌抵抗性、腎細胞癌、インスリンシグナル伝達経路、甲状腺ホルモンシグナル伝達経路、アルツハイマー病、熱発生、癌におけるコリン代謝、サルモネラ感染、ヒトサイトメガロウイルス、感染、逆行性エンドカンナビノイドシグナル伝達、ErbBシグナル伝達経路、プロゲステロン介在性卵母細胞の成熟、mTORシグナル伝達経路、ファゴソーム、プリオン病、フェロプトーシス、リボソーム、メラノーマ、B細胞受容体シグナル伝達経路、FcγR介在性食作用、膵臓癌、FcεRIシグナル伝達経路、非小細胞肺癌、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性、神経膠腫、前立腺癌、マイトファジー動物、真核生物におけるリボソーム生合成、甲状腺癌、ナチュラルキラー細胞媒介細胞毒性、ウイルス発癌、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、タンパク質輸出、RNA分解、バソプレッシン調節性水再吸収、代謝経路、ホスホネートおよびホスフィネート代謝。
実施例6
ブメタニドの治療は、apoE4/4-iPSC由来のヒトニューロンにおけるapoE4/4ADのトランスクリプトームシグネチャ遺伝子を反転させる。
apoE4/4iPSC由来ヒトニューロン(約75%の興奮性ニューロン、約15%の抑制性ニューロン、約5%のドーパミン作動性ニューロン)をインビトロでブメタニド(10mM)で6時間処理し、転写変化をRNA-seq解析で調べた(図14A)。主成分分析は、ブメタニド対ビヒクル処理からの差次的発現(DE)遺伝子に基づくサンプルの有意なクラスタリングを示し(図14B)、ヒトapoE4/4-iPSC由来ニューロンに対する異なる薬物効果を示唆した。さらに、ブメタニド処理apoE4/4-iPSC由来ニューロンでは、apoE4/4ADでアップレギュレートされた遺伝子は、ブメタニド処理後に、より高いランク数に向かって下方にシフトし(モンテカルロシミュレーションによるP<0.05)、apoE4/4ADでダウンレギュレートされた遺伝子は、より低いランク数に向かって上方にシフトし、CMapデータベースの予測をさらに確証し、インビトロドラッグリパーパシングの取り組み(efforts)に対するヒトiPSC由来ニューロンの適合性を強調した(図14Cおよび14D)。
apoE4/4-iPSC由来ヒトニューロンにおいてブメタニドによって発現が影響を受ける遺伝子の経路解析により、27の有意に摂動された経路を同定した(図14E)。興味深いことに、これらの経路のうちの14は、予測された薬物効果(興奮性ニューロンおよびSST/PV介在ニューロンを含む)を示すマウス海馬神経細胞に富んだ経路と重複しており、これらの経路のうち4つ:GABA作動性シナプス、概日同調、逆行性エンドカンナビノイドシグナル伝達、およびシナプス小胞サイクル、はヒトからのapoE4/4ADシグネチャとも共有されていた(図14Eおよび14F)。
上述のように、図14A~14Fは、apoE4/4-iPSC由来のヒトニューロンにおけるブメタニドのトランスクリプトーム摂動シグネチャのRNA-seq解析の結果を示す概略図およびグラフを提供する。(図14A)ApoE4/4-iPSC由来ヒトニューロンを10mMブメタニドで6時間処理し、RNA-Seqによりトランスクリプトーム変化を解析した。(図14B)ブメタニド処理apoE4/4-iPSC由来ヒトニューロンにおけるDE遺伝子の主成分分析(PCA)は、ビヒクル処理サンプルからブメタニド処理サンプルを分離する。主成分1(PC1)は分散の71.9%を、PC2は12.4%を占める。(図14C)ブメタニド処理後のapoE4/4-iPSC由来ヒトニューロンにおけるRNA-Seqによっても検出されたAD遺伝子セットのヒトapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャのヒストグラム。ビヒクル処理と比較したブメタニド処理後のiPSC由来ヒトニューロンにおけるこれら遺伝子のFCのランクを、x軸に、y軸上のそのランクにおける遺伝子の数に対してプロットする。この遺伝子セット内のすべての遺伝子の平均ランクは黒い線で示され、アップレギュレートされた遺伝子の平均FCランクは点線で示され、それに従って標識され、ダウンレギュレートされた遺伝子の平均FCランクは点線で示され、それに従って標識される。モンテカルロシミュレーションにより計算した、全ての遺伝子のランク平均から離れた、アップレギュレートされたFCランク平均とダウンレギュレートされたFCランク平均の「反転」の有意性のP値を示す(P<0.001)。(図14D)ADのヒトapoE4/4特異的トランスクリプトームシグネチャからの遺伝子のヒートマップであって、apoE4/4ADにおける推定FCによってランク順序付けされ、かつ色分けされた遺伝子のヒートマップ(上)、およびブメタニド処理後のiPS由来ニューロンにおけるFCランクによって再び色分けされた遺伝子のヒートマップ(下)。(図14E)ブメタニド処理後のapoE4/4-iPSC由来ヒトニューロンにおける濃縮されたオントロジー経路(n=27)のp値のヒートマップ、および図13A~13Gに示すように「反転」した表現型を示したヒトapoE4/4特異的ADおよび全ての神経細胞型におけるそれらの対応するエンリッチメントのp値(すべての興奮性ニューロン、混合ニューロン、SST/PV介在ニューロン)。太字で強調表示された経路は、ブメタニド処理後にapoE4/4-iPSC由来のヒトニューロンと、apoE4-KIマウス海馬で「反転」を示す神経細胞型の間で共有されている経路を示す(n=14経路、細胞型特異的情報については、図13A~13Gを参照)。赤色で強調表示された経路は、ブメタニド処理後のapoE4/4-iPSC由来のヒトニューロンおよびapoE4-KIマウス海馬において「反転」を示す神経細胞型(細胞型特異的情報については図13A~13Gを参照)ならびにヒトapoE4/4-特異的AD(ヒトの経路情報については図1を参照、n=4経路)の間で共有されている経路を示す。(図14F)ベン図、およびブメタニド投与後のapoE4/4-iPSC由来ヒトニューロン、ブメタニド投与後のapoE4/4-KIマウス海馬で「反転」を示す神経細胞型(細胞型特異的情報については、図13A~13Gを参照)、ならびにヒトにおけるapoE4/4ADにおいて有意に濃縮された経路、の間での特異的かつ共有されている濃縮されたオントロジー経路。