[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、一般式(A)で表される化合物(A)と、一般式(B1)または(B2)で表される化合物(B)とを含む。以下、一般式(B1)で表される化合物を化合物(B1)と称し、一般式(B2)で表される化合物を化合物(B2)と称する場合がある。
本発明の硬化性組成物は、1種の化合物(A)を単独で含んでいてもよいし、2種以上の化合物(A)を含んでいてもよい。また、本発明の硬化性組成物は、化合物(B1)を含むとともに化合物(B2)を含まなくてもよいし、化合物(B2)を含むとともに化合物(B1)を含まなくてもよいし、化合物(B1)および化合物(B2)をともに含んでいてもよい。本発明の硬化性組成物は、1種の化合物(B1)を単独で含んでいてもよいし、2種以上の化合物(B1)を含んでいてもよい。また、本発明の硬化性組成物は、1種の化合物(B2)を単独で含んでいてもよいし、2種以上の化合物(B2)を含んでいてもよい。
上記一般式(A)、(B1)および(B2)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は置換基を有していてもよい炭素数2~8のアルキレン基を表し、mは1~6の整数を表す。ただし、複数存在するR1、R2およびmは、それぞれ、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
・化合物(A)
化合物(A)は一般式(A)で表される。一般式(A)において、R1は水素原子またはメチル基を表し、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、R1は水素原子であることが好ましい。
一般式(A)において、R2は炭素数2~8のアルキレン基を表し、当該アルキレン基は直鎖状であってもよいし分岐鎖状であってもよい。本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、R2は炭素数2~4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2または3のアルキレン基であることがより好ましい。また当該アルキレン基は、その水素原子の1つまたは2つ以上が置換基によって置換されていてもよいが、置換基によって置換されていないことが好ましい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基でモノ置換またはジ置換されたアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基などが挙げられ、ハロゲン原子が好ましい。置換基の数は特に制限されず、1~8個程度とすることができ、好ましくは1~3個である。
R2としては、例えば、メチルメチレン基、エチレン基(-CH2CH2-)、メチルエチレン基、エチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、トリメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリエチレン基、テトラメチレン基などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから-CH2CH2-が好ましい。
一般式(A)において、複数存在するR1およびR2は、それぞれ、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。すなわち、一般式(A)において、複数存在するR1は、互いに同一であってもよいし、そのうちの一部または全部が異なっていてもよい。一般式(A)におけるR2についても同様である。
なお、一般式(A)におけるR1、後述する一般式(B1)におけるR1、および、後述する一般式(B2)におけるR1について、これらのR1は、互いに同一であってもよいし、そのうちの一部または全部が異なっていてもよいが、入手性に優れることやまた得られる硬化物の機械的強度がより優れることなどから、互いに同一であることが好ましい。一般式(A)におけるR2、後述する一般式(B1)におけるR2、および、後述する一般式(B2)におけるR2についても、上記R1と同様である。
一般式(A)において、mは1~6の整数を表し、本発明の効果がより顕著に奏されることなどから、mは2~4の整数であることが好ましく、2または3であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
なお、一般式(A)におけるm、後述する一般式(B1)におけるm、および、後述する一般式(B2)におけるmについて、これらのmは、互いに同一であってもよいし、そのうちの一部または全部が異なっていてもよいが、入手性に優れることやまた得られる硬化物の機械的強度がより優れることなどから、互いに同一であることが好ましい。
化合物(A)の具体例としては、例えば、以下に示す化合物などが挙げられ、硬化性により優れる硬化性組成物が得られることなどから、下記式(A-1)で表される化合物(A-1)が好ましい。
本発明の硬化性組成物において、化合物(A)の含有量に特に制限はないが、得られる硬化物の機械的強度などの観点から、硬化性組成物の質量に基づいて、0.05質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましく、6質量%以下であることが特に好ましい。
・化合物(B)
化合物(B)は一般式(B1)または(B2)で表される。一般式(B1)および(B2)におけるR1、R2およびmの説明は化合物(A)について上記したのと同様であり、ここでは重複する説明を省略する。
化合物(B1)の具体例としては、例えば、以下に示す化合物などが挙げられ、硬化性により優れる硬化性組成物が得られることなどから、下記式(B1-1)で表される化合物(B1-1)が好ましい。
化合物(B2)の具体例としては、例えば、以下に示す化合物などが挙げられ、硬化性により優れる硬化性組成物が得られることなどから、下記式(B2-1)で表される化合物(B2-1)が好ましい。
化合物(B)の製造方法に特に制限はないが、より簡便に化合物(B)を得ることができることなどから、(メタ)アクリル酸ハライド等の(メタ)アクリル酸誘導体((メタ)アクリル化剤)に対して対応するアルキルアミンを添加することにより、化合物(A)との混合物として化合物(B)を得て、必要に応じて両者を分離することにより得ることができる。分離された化合物(A)と化合物(B)とを所望の含有割合となるように混合すれば目的とする硬化性組成物を得ることができる。
なお本発明は、一般式(B1)または(B2)で表される化合物(B)(すなわち、化合物(B1)または(B2))を包含する。当該化合物(B)は、曲げ強さ等の機械的強度に優れる硬化物を与えることのできる本発明の硬化性組成物を構成する成分として好適に使用することができるが、それ以外の用途に使用してもよい。
本発明の硬化性組成物において、化合物(B)の含有量に特に制限はないが、水等の溶媒への溶解性により優れた硬化性組成物が得られるとともに、得られる硬化物の機械的強度がより優れたものとなることなどから、化合物(A)および化合物(B)の合計質量に対して、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましく、0.5質量%以上であることが最も好ましく、また、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
・他の重合性単量体
本発明の硬化性組成物は、上記した化合物(A)および化合物(B)以外の他の重合性単量体をさらに含んでいてもよい。
前記他の重合性単量体としては、重合性単量体として従来公知のものを用いることができ、特にラジカル重合性単量体を好ましく用いることができる。当該ラジカル重合性単量体としては、例えば、α-シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボン酸のエステル;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド誘導体;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;モノ-N-ビニル誘導体;スチレン誘導体などが挙げられる。他の重合性単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルボン酸のエステル、(メタ)アクリルアミド誘導体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド誘導体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステルがさらに好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は、メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられる。(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリルアミド誘導体の例を以下に示す。
(i)一官能性の(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリルアミド誘導体
例えば、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
(ii)二官能性の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、芳香族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステル、脂肪族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
芳香族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称:Bis-GMA)、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
脂肪族系の二官能性の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジアクリレート、[2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称:UDMA)、N-((メタ)アクリロイルオキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
(iii)三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7-ジ(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル-4-オキシヘプタンなどが挙げられる。
また前記他の重合性単量体は、金属、セラミックス、歯質等に対する接着性に優れた硬化性組成物となることなどから、酸性基を有する重合性単量体を含むことが好ましい。他の重合性単量体が酸性基を有する重合性単量体を含む場合、当該他の重合性単量体は、酸性基を有する重合性単量体のみからなっていてもよいし、酸性基を有する重合性単量体と酸性基を有しない重合性単量体(例えば、上記したような一官能性の(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリルアミド誘導体、二官能性の(メタ)アクリル酸エステル、三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステルなど)とをともに含んでいてもよい。
当該酸性基を有する重合性単量体としては、例えば、リン酸基、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1つ有し、且つアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基等の重合性基を少なくとも1つ有する重合性単量体などが挙げられる。酸性基を有する重合性単量体は、特に本発明の硬化性組成物を歯科材料として用いる場合などにおいて、被着体との優れた親和性を示すことができるとともに、歯質に対して脱灰作用を示すことができる。酸性基を有する重合性単量体としては、硬化性などの観点から、酸性基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酸性基を有する(メタ)アクリルアミドが好ましい。
前記リン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9-(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10-(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシ-(1-ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(酸塩化物等)、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記ピロリン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロリン酸ビス〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8-(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10-(メタ)アクリロイルオキシデシル〕、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(酸塩化物等)、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記チオリン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンチオホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンチオホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンチオホスフェート、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンチオホスフェート、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンチオホスフェート、9-(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンチオホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12-(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート、16-(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンチオホスフェート、20-(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンチオホスフェート、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(酸塩化物等)、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記ホスホン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3-ホスホノプロピオネート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシル-3-ホスホノプロピオネート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホノアセテート、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(酸塩化物等)、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記スルホン酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(酸塩化物等)、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
前記カルボン酸基を有する重合性単量体としては、分子内にカルボキシル基を1つ有する重合性単量体と、分子内にカルボキシル基を複数有する重合性単量体とが挙げられる。
分子内にカルボキシル基を1つ有する重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、N-(メタ)アクリロイルグリシン、N-(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、O-(メタ)アクリロイルチロシン、N-(メタ)アクリロイルチロシン、N-(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N-(メタ)アクリロイル-p-アミノ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-o-アミノ安息香酸、p-ビニル安息香酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N-(メタ)アクリロイル-5-アミノサリチル酸、N-(メタ)アクリロイル-4-アミノサリチル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレート、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(酸塩化物等)、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
分子内にカルボキシル基を複数有する重合性単量体としては、例えば、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキサン-1,1-ジカルボン酸、9-(メタ)アクリロイルオキシノナン-1,1-ジカルボン酸、10-(メタ)アクリロイルオキシデカン-1,1-ジカルボン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデカン-1,1-ジカルボン酸、12-(メタ)アクリロイルオキシドデカン-1,1-ジカルボン酸、13-(メタ)アクリロイルオキシトリデカン-1,1-ジカルボン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、1,4-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(メタ)アクリロイルオキシ-2’-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピルサクシネート、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(酸塩化物等)、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
他の重合性単量体は、上記の酸性基を有する重合性単量体のうちの1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。上記の酸性基を有する重合性単量体の中でも、特に本発明の硬化性組成物を歯科材料として用いる場合などにおいて歯質との接着性が向上することなどから、リン酸基を有する重合性単量体、スルホン酸基を有する重合性単量体、カルボン酸基を有する重合性単量体が好ましく、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、11-(メタ)アクリロイルオキシウンデカン-1,1-ジカルボン酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテートの酸無水物がより好ましく、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートがさらに好ましい。
本発明の硬化性組成物において、上記他の重合性単量体の含有量に特に制限はなく、例えば、硬化性組成物の質量に基づいて、10質量%以上、20質量%以上、さらには30質量%以上とすることができるが、硬化性により優れるとともに、適度な粘度を有しハンドリング性に優れた硬化性組成物となることなどから、硬化性組成物の質量に基づいて、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが特に好ましく、また、98質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
・フィラー
本発明の硬化性組成物は、フィラーをさらに含んでいてもよい。当該フィラーとしては、公知のフィラーを何ら制限なく使用することができる。フィラーは、通常、有機フィラー、無機フィラーおよび有機-無機複合フィラーに大別することができる。フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合としては、例えば、素材、粒度分布、形態などが異なるフィラーを併用する場合などが挙げられる。フィラーとしては、市販品を使用することができる。
有機フィラーの素材としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体などが挙げられる。有機フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。有機フィラーの形状は特に限定されない。
無機フィラーの素材としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスなどが挙げられる。無機フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機フィラーの形状に特に制限はなく、無機フィラーとしては、例えば、不定形フィラー、球状フィラーなどが挙げられる。得られる硬化物の機械的強度を向上させる観点からは、無機フィラーとして球状フィラーを用いることが好ましい。ここで球状フィラーとは、電子顕微鏡でフィラーの写真を撮り、その単位視野内に観察される粒子が丸みをおびており、その最大径に直交する方向の粒子径をその最大径で割った平均均斉度が0.6以上であるフィラーとすることができる。無機フィラーとして球状フィラーを用いる場合、その平均粒子径は、硬化性組成物における球状フィラーの充填率が低下せず、硬化物の機械的強度を維持することができることなどから0.05μm以上であることが好ましく、また、硬化物の機械的強度を維持するのに十分な表面積となることなどから5μm以下であることが好ましい。
無機フィラーは、硬化性組成物の流動性を調整するなどの目的のため、必要に応じて、シランカップリング剤等の公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。前記表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、11-メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
有機-無機複合フィラーとしては、上述の無機フィラーにモノマー成分を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものを用いることができる。前記有機-無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパントリメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。有機-無機複合フィラーの形状は特に限定されない。
フィラーの粒子径は特に限定されず、その平均粒子径を適宜選択することができる。得られる硬化性組成物のハンドリング性および硬化物の機械的強度などの観点から、フィラーの平均粒子径は、0.001μm以上であることが好ましく、また、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書においてフィラーの平均粒子径とは、フィラーの一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)を意味する。
フィラーの平均粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が簡便であり、0.1μm未満の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μm以上であるか否かの判別にはレーザー回折散乱法を採用すればよい。
レーザー回折散乱法では、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製「SALD-2100」等)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて測定することで平均粒子径を求めることができる。
電子顕微鏡観察では、例えば、粒子の走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立製作所製「S-4000型」等)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製「Mac-View」等)を用いて測定することにより平均粒子径を求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均粒子径が算出される。
本発明の硬化性組成物におけるフィラーの含有量は、得られる硬化物の機械的強度を維持することができるとともに、適度な流動性を付与することができてハンドリング性に優れた硬化性組成物となることなどから、硬化性組成物の質量に基づいて、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、また、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
・重合開始剤
本発明の硬化性組成物は、重合開始剤をさらに含んでいてもよい。重合開始剤としては公知のものを使用することができ、例えば、光重合開始剤、化学重合開始剤などが挙げられ、光重合開始剤が好ましい。本発明の硬化性組成物は、1種の重合開始剤を単独で含んでいてもよいし、2種以上の重合開始剤を含んでいてもよい。
光重合開始剤としては、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド類(塩を含む)、チオキサントン類(第4級アンモニウム塩等の塩を含む)、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル類、α-アミノケトン類などが挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類は、水溶性(ビス)アシルホスフィンオキシド類であってもよい。当該水溶性アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、上記で例示したような(ビス)アシルホスフィンオキシド類の塩などが挙げられる。当該塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;アルカリ土類金属塩;ピリジニウム塩;アンモニウム塩などが挙げられる。水溶性(ビス)アシルホスフィンオキシド類は、例えば、欧州特許第0009348号明細書、特開昭57-197289号公報などに開示されている方法により合成することができる。
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩が好ましい。
前記チオキサントン類としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、2-ヒドロキシ-3-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(1-メチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(1,3,4-トリメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリドなどが挙げられる。
これらのチオキサントン類の中でも、2-クロロチオキサンテン-9-オン、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9H-チオキサンテン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリドが好ましい。
前記ケタール類としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールなどが挙げられる。
前記α-ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノンなどが挙げられる。これらの中でも、可視光域に極大吸収波長を有する観点から、カンファーキノンが好ましい。
前記クマリン類としては、例えば、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-チエニルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-6-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-8-メトキシクマリン、3-ベンゾイルクマリン、7-メトキシ-3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3-(p-ニトロベンゾイル)クマリン、3,5-カルボニルビス(7-メトキシクマリン)、3-ベンゾイル-6-ブロモクマリン、3,3’-カルボニルビスクマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3-カルボキシクマリン、3-カルボキシ-7-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-6-メトキシクマリン、3-エトキシカルボニル-8-メトキシクマリン、3-アセチルベンゾ[f]クマリン、3-ベンゾイル-6-ニトロクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、7-ジメチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、7-ジエチルアミノ-3-(4-ジエチルアミノ)クマリン、7-メトキシ-3-(4-メトキシベンゾイル)クマリン、3-(4-ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3-(4-エトキシシンナモイル)-7-メトキシクマリン、3-(4-ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3-(4-ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3-[(3-ジメチルベンゾチアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3-[(1-メチルナフト[1,2-d]チアゾール-2-イリデン)アセチル]クマリン、3,3’-カルボニルビス(6-メトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-アセトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジメチルアミノクマリン)、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジブチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾイミダゾイル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾイル)-7-(ジオクチルアミノ)クマリン、3-アセチル-7-(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)、3,3’-カルボニル-7-ジエチルアミノクマリン-7’-ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10-[3-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1-オキソ-2-プロペニル]-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン、10-(2-ベンゾチアゾイル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オンなどが挙げられる。
これらのクマリン類の中でも、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジブチルアミノクマリン)が好ましい。
前記アントラキノン類としては、例えば、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
前記ベンゾインアルキルエーテル類としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
前記α-アミノケトン類としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンなどが挙げられる。
これらの光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α-ジケトン類、クマリン化合物が好ましく、α-ジケトン類がより好ましく、カンファーキノンがさらに好ましい。このような光重合開始剤を用いることにより、可視領域および近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す硬化性組成物が得られる。
化学重合開始剤の種類に特に制限はなく、例えば、有機過酸化物が好ましく用いられる。当該有機過酸化物としては公知のものを用いることができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
前記ケトンペルオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどが挙げられる。
前記ヒドロペルオキシドとしては、例えば、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
前記ジアシルペルオキシドとしては、例えば、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
前記ジアルキルペルオキシドとしては、例えば、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンなどが挙げられる。
前記ペルオキシケタールとしては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレリン酸n-ブチルエステルなどが挙げられる。
前記ペルオキシエステルとしては、例えば、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2,4-トリメチルペンチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタラート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシバレリン酸などが挙げられる。
前記ペルオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ-3-メトキシペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
本発明の硬化性組成物における重合開始剤の含有量は、硬化性により優れる硬化性組成物が得られることなどから、硬化性組成物の質量に基づいて、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましく、また、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、6.5質量%以下であることがさらに好ましく、6質量%以下であることが特に好ましい。
・他の成分
本発明の硬化性組成物は、上記した必須成分としての化合物(A)および化合物(B)、ならびに、任意成分としての他の重合性単量体、フィラーおよび重合開始剤以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分としては、例えば、溶剤、フッ素イオン放出性物質、pH調整剤、重合禁止剤(例えば、BHT、MEHQ等)、紫外線吸収剤、増粘剤、着色剤、蛍光剤、香料などが挙げられる。また、セチルピリジニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロリド、トリクロサン等の抗菌性物質を他の成分として含んでいてもよい。
[硬化性組成物の調製方法]
本発明の硬化性組成物の調製方法に特に制限はなく、各成分を所定の配合量で配合することにより得ることができる。この際に、必要に応じて混合ないし練合したり、あるいは、真空脱泡処理等の脱泡処理を施したりしてもよい。混合ないし練合には公知の方法(例えば、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法等)を採用することができる。なお、化合物(A)と化合物(B)とは別々に調製してもよいが、上記したように化合物(A)との混合物として化合物(B)を得て、これをそのまま配合するか、あるいは、両者を分離した後に必要量を配合するなどして、所望とする本発明の硬化性組成物を得てもよい。
[用途]
本発明の硬化性組成物の用途に特に制限はなく、歯科材料、コーティング剤、塗料、印刷インク、接着剤、光学材料、電子製品の積層材料、電気絶縁材料、レジスト材等の各種用途に好ましく用いることができるが、本発明の硬化性組成物は、曲げ強さ等の機械的強度に優れる硬化物を与えることができることなどから、歯科材料(歯科用硬化性組成物)として用いることが好ましい。具体的な歯科材料に特に制限はなく、例えば、歯科用接着剤、歯科用セメント、歯科用コーティング材、歯科用コンポジットレジン、金属やセラミックスの歯科用前処理材などが挙げられる。これらの中でも、本発明の硬化性組成物は、天然歯の一部分または全体を代替し得る歯科材料として好適に使用することができ、歯科用接着剤として特に好適に使用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例に用いた化合物としては、製造方法を特に記載した場合を除いて、市販品を用いた。
[実施例1~11および比較例1]
・混合物1~12の製造
撹拌機を備えた1Lの三口フラスコに、アクリル酸クロリド35.2g、ジクロロメタン300mLを加えて混合液を調製した。この混合液に、氷浴下、トリエチレンテトラミン48.7g、炭酸カリウム37.8g、ジクロロメタン300mLの混合液を20分かけて滴下した。滴下後、得られた反応混合物を室温で5時間撹拌した後、減圧下にてジクロロメタンを留去した。残存した水相を酢酸エチル200mLで4回抽出し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下にて溶媒を留去した。得られた反応混合物をカラムクロマトグラフィー(溶離液:メタノール/酢酸エチル=10/90)で精製し、溶媒を留去することにより、下記式(A-1)で表される化合物(A-1)および化合物(B)の各含有量が異なる固形状の各フラクションを得た。なお、マススペクトルにより、化合物(B)が、下記式(B1-1)で表される化合物(B1-1)および下記式(B2-1)で表される化合物(B2-1)からなることを確認した。これらの固形状のフラクションを、各成分が表1に記載した割合となるように混合することにより、目的とする混合物1~11を得た。なお混合物12としては化合物(A-1)をそのまま用いた。
[比較例2~5]
・混合物13~16の製造
撹拌機を備えた1Lの三口フラスコに、トリエチレンテトラミン48.7g、炭酸水素ナトリウム37.8g、水100g、テトラヒドロフラン300mLを加えて混合液を調製した。この混合液に、反応温度40℃で、アクリル酸クロリド35.2gを60分かけて滴下した。滴下後、得られた反応混合液を室温で5時間撹拌した後、減圧下にてテトラヒドロフランを留去した。残存した水相を酢酸エチル200mLで4回抽出し、得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下にて溶媒を留去した。得られた反応混合物をカラムクロマトグラフィー(溶離液:メタノール/酢酸エチル=10/90)で精製し、溶媒を留去することにより、下記式(A-1)で表される化合物(A-1)、ならびに、下記式(X1)~(X4)でそれぞれ表される化合物(X1)~(X4)からなる化合物(X)の各含有量が異なる固形状の各フラクションを得た。これらの固形状の各フラクションを、各成分が表1に記載した割合となるように混合することにより、目的とする混合物13~16を得た。
(曲げ強さ測定)
以下の組成を有する曲げ強さ測定用組成物(歯科用硬化性組成物)を調製した。
・曲げ強さ測定用組成物の組成:
2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(Bis-GMA)(25質量部)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(8質量部)、10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(10質量部)、上記の実施例または比較例で製造した混合物1~16(3質量部)、カンファーキノン(3質量部)、および、微粒子シリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「アエロジルR-972」)(6質量部)
調製した上記の曲げ強さ測定用組成物を真空脱泡後、ステンレス製の金型(寸法2mm×2mm×25mm)に充填し、上下をスライドガラスで圧接し、歯科重合用可視光線照射器(株式会社モリタ製、商品名「ペンキュアー2000」)を用いて、1点10秒で片面を5点ずつスライドガラスの両面に光を照射して硬化させて硬化物の試験片を得た。なお、各実施例および比較例について試験片を5本ずつ作製した。また試験片は、金型から取り出した後、37℃の蒸留水中に24時間保管した。各試験片について、JIS T 6514:2015およびISO4049:2009に準拠して、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名「オートグラフAG-I 100kN」)を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分の条件下で3点曲げ試験を行い、得られた各試験片の測定値の平均値を曲げ強さとした。結果を表1に示した。
(溶解性評価)
各実施例または比較例で製造した混合物1~16に水を加え、水の含有量が全質量に対して90質量%となるように組成物を調製した。得られた組成物を室温で撹拌し、撹拌開始から10分後、1時間後、3時間後毎に、固形物の溶解性を目視にて確認し、以下の評価基準にしたがって溶解性を評価した。結果を表1に示した。
「AA」:10分以内に固形物が溶解し、均一な溶液が得られた場合
「A」:10分超1時間以内に固形物が溶解し、均一な溶液が得られた場合
「B」:1時間超3時間以内に固形物が溶解し、均一な溶液が得られた場合
「C」:3時間経過後でも、固形物が溶解しなかった場合