JP7053011B2 - ゲル添加剤の製造方法およびゲル添加剤の利用 - Google Patents
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〔1〕グルコマンナン水溶液に活性炭を加えて不純物を除去する工程を含む、ゲル添加剤の製造方法。
〔2〕〔1〕に記載のゲル添加剤の製造方法により得られる、ゲル添加剤。
〔3〕ゲル基材として少なくともアガロースを含む電気泳動用ゲルであって、
グルコマンナンを0.1重量%以上含むことを特徴とする、電気泳動用ゲル。
〔4〕前記ゲル基材を0.5重量%以上含むことを特徴とする、〔3〕に記載の電気泳動用ゲル。
〔5〕〔3〕または〔4〕に記載の電気泳動用ゲルを用いることを特徴とする、電気泳動方法。
〔6〕〔2〕に記載のゲル添加剤を備える電気泳動用ゲル製造キット。
本発明の一実施形態に係るゲル添加剤の製造方法(本明細書中、「製造方法」とも称する)は、グルコマンナン水溶液に活性炭を加えて不純物を除去する工程を含む。
本発明の一実施形態に係るゲル添加剤は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される。なお、本発明の一実施形態に係るゲル添加剤は、一般的に化学的分析および同定が容易ではないグルコマンナンを原料としているため、構造の特定が困難である。
本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルは、ゲル基材として少なくともアガロースを含む電気泳動用ゲルであり、グルコマンナンを0.1重量%以上含む。電気泳動用ゲルがグルコマンナンを一定量含むことで、取扱い性に優れ、かつ高い分離能を有する電気泳動用ゲルを得ることができる。なお、本明細書中、「取扱い性に優れる」とは、ゲルの作製およびゲルを用いた電気泳動等を簡便に行うことができることを意図する。サブマリン型電気泳動用ゲルが取扱い性に優れるかどうかは、実施例に記載のゲル破断試験によって判断される。また、スラブ型電気泳動用ゲルが取扱い性に優れるかどうかは、スラブ型泳動槽を用いて電気泳動を行った後であっても、ゲルが破れないかどうかにより判断される。
(α)ゲル基材とグルコマンナンとを緩衝液に混合してゲル化用溶液を得る工程、および、
(β)前記ゲル化用溶液をゲル化させて電気泳動用ゲルを得る工程。
本発明の一実施形態に係る電気泳動方法は、本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルを用いて行われる。当該電気泳動用ゲルは、本発明の一実施形態に係るゲル添加剤を含むため、当該電気泳動用ゲルを用いて電気泳動を行うことで、核酸(特に、低分子量のDNA)を好適に分離することができる。
本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲル製造キットは、本発明の一実施形態に係るゲル添加剤を備える。それゆえ、上述のように、取扱い性に優れ、かつ高い分離能を有するゲルを簡便に作製することができる。以下では、電気泳動用ゲル製造キットを単に「キット」とも称する。また、〔3.電気泳動用ゲル〕で既に説明した事項については、以下では説明を省略し、適宜、上述の記載を援用する。
<実施例1>
(1)ゲル添加剤の精製
(i)三角フラスコに500mL蒸留水および撹拌バーを入れた。三角フラスコとは別の容器に1.5gのコンニャク精粉(製造元:茂木食品工業株式会社)を秤量し、5mLのエタノールに加え、これを懸濁した。得られた溶液を少量ずつスターラー上に設置した三角フラスコ中の蒸留水に撹拌しながら加えた。さらに、室温にて、約1時間、継続的に撹拌した。
(ii)得られた水溶液に1gの活性炭(クロマトグラフィー用、和光純薬製)と、防腐剤としてEDTA(終濃度1mM)とを加え、さらに1時間撹拌した。なお、活性炭はコンニャク精粉中の不純物を吸着除去するために用いた。この工程により、繊維状の不溶物を含む透明な水溶液が得られた。
(iii)繊維状の不溶物と活性炭とを除去するため、室温にて10000×g、10分間遠心分離にかけた後、上清を回収した。
(iv)残存している活性炭を除去するため、回収した上清を再度、工程(iii)と同じ条件で遠心分離した。
(v)遠心上清を回収し、0.3重量%のグルコマンナンを含むゲル添加剤として冷蔵保存した。
電気泳動用ゲルにおいて、アガロースが0.5重量%、アガーが0.2重量%、グルコマンナンが0.1重量%になるように、それぞれアガロース(Agarose S, ニッポンジーン社製)、アガー(精製寒天末、ナカライテスク株式会社製)、ゲル添加剤をTBE緩衝液50mL中に加えた。その後、マイクロウェーブオーブンで約100℃まで加熱し、これらを完全に溶解させた。これにより、ゲル化用溶液を得た。
短冊状ゲルの1つを120mlの蒸留水で満たした容器(内径:幅100mm、長さ106mm、容器の水深は約10mm)に静かに移した。容器の底にあるゲルを容器の一つの角をなす2辺に接するように配置した後、長軸方向に幅16mmのスポンジ片でゲルを静かに押した。ゲルを押す過程において、ゲルは湾曲しながら容器の壁に近づいていった。
電気泳動用ゲルにおいて、グルコマンナンが0.2重量%となるようにゲル添加剤を加えた以外は実施例1と同様に、実施例2のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、実施例2のゲルは切断されなかった。
電気泳動用ゲルにおいて、アガロースが0.5重量%、グルコマンナンが0.1重量%となるように、それぞれアガロース、ゲル添加剤を加え、アガーを加えなかった以外は実施例1と同様に、実施例3のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、実施例3のゲルは切断されなかった。
電気泳動用ゲルにおいて、アガロースが0.7重量%、グルコマンナンが0.1重量%となるように、それぞれアガロース、ゲル添加剤を加えた以外は実施例3と同様に、実施例4のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、実施例4のゲルは切断されなかった。
電気泳動用ゲルにおいて、アガロースが1.0重量%、グルコマンナンが0.1重量%となるように、それぞれアガロース、ゲル添加剤を加えた以外は実施例3と同様に、実施例5のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、実施例5のゲルは切断されなかった。
ゲル添加剤を加えなかった以外は実施例1と同様に、比較例1のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、比較例1のゲルは切断された。
電気泳動用ゲルにおいて、グルコマンナンが0.05重量%となるようにゲル添加剤を加えた以外は実施例1と同様に、比較例2のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、比較例2のゲルは切断された。
アガーおよびゲル添加剤を加えなかった以外は実施例1と同様に、比較例3のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、比較例3のゲルは切断された。
電気泳動用ゲルにおいて、アガロースが1重量%となるように、アガロースを加え、アガーおよびゲル添加剤を加えなかった以外は実施例1と同様に、比較例4のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、比較例4のゲルは切断された。
電気泳動用ゲルにおいて、アガーが0.5重量%となるように、アガーを加え、アガロースおよびゲル添加剤を加えなかった以外は実施例1と同様に、比較例5のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、比較例5のゲルは切断された。
電気泳動用ゲルにおいて、アガーが0.5重量%、グルコマンナンが0.1重量%となるように、それぞれアガー、ゲル添加剤を加え、アがロールを加えなかった以外は実施例1と同様に、比較例6のゲルを作製した。その後、当該ゲルを用いて、ゲル破断試験を行った結果、比較例6のゲルは切断された。
実施例1および実施例2の結果より、グルコマンナンを0.1重量%以上含むアガロース/アガーゲルは、半分に折り曲げても切断されなかったことから、取扱い性に優れることがわかった。比較例1および2の結果より、グルコマンナンの含有量が0.1重量%以下であるアガロース/アガーゲルは、半分に折り曲げると切断されたことから、ゲルの作製時等に破壊される可能性があり、取扱いにくいことがわかった。
<実施例6>
(1)ゲルの作製
〔1.電気泳動用ゲルの弾性の比較〕における「(1)ゲル添加剤の精製」と同じ手順を用いて、ゲル添加剤を得た。
電気泳動装置にゲルをセットし、ゲルに形成されたウェルに、電気泳動試料を10μLずつ加えた。電気泳動試料は、レーン1においてLambda phage/Sty I digest (λ/Sty I)(ニッポンジーン社製)、レーン2において0.1~20kbpのDNA(Gene Ladder wide 2,ニッポンジーン社製)をそれぞれ用いた。また、各電気泳動試料には、あらかじめGelREDTM(Gene One社製)を電気泳動試料中のGelREDTMの濃度が、市販原液の10000倍希釈相当量となるように添加した。
アガロースゲル撮影装置(UVイルミネーター;Model BioDoc-It(登録商標) Imaging system, UVP社製)を用いて電気泳動を行った後の電気泳動用ゲルを撮影した。
グルコマンナンが0.2重量%となるようにゲル添加剤を加えた以外は実施例6と同様に、実施例7のゲルを作製した。なお、実施例7のレーン1、2の電気泳動試料は、それぞれ実施例6のレーン1、2の電気泳動試料と同じ電気泳動試料を用いた。また、実施例7のレーン3の電気泳動試料は、0.1~2kbpのDNA(Gene Ladder 100, ニッポンジーン社製)である。
ゲル添加剤を加えなかった以外は実施例6と同様に、比較例7のゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。なお、比較例7のレーン1~3の電気泳動試料は、それぞれ実施例7のレーン1~3の電気泳動試料と同じ電気泳動試料を用いた。
電気泳動用ゲルにおいて、グルコマンナンが0.05重量%となるように、ゲル添加剤を加えた以外は実施例6と同様に、比較例8のゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。
図2に、実施例6、実施例7、比較例7および比較例8の電気泳動の結果を示す。なお、図2において「*」は、レーン2に基づく2kbpのDNAバンドを示す。実施例6および実施例7の結果より、泳動バッファーとしてTBEを用いて電気泳動を行い、さらに、電気泳動試料にGelREDをあらかじめ加える方法により染色を行った場合であっても、グルコマンナンを0.1重量%含むアガロース/アガーゲルを用いることにより、特に0.1~2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。0.1~2kbpの領域は、PCR反応の結果解析に多用される領域である。ゆえに、本発明の一実施形態に係る電気泳動用ゲルは、DNAの電気泳動において将来的に汎用され得ることが示唆される。さらに、実施例6と実施例7との比較により、グルコマンナンを多く含む実施例7のアガロース/アガーゲルの方が、0.1~2kbpの領域において分離能が高いことがわかる。一方、比較例7および比較例8の結果より、グルコマンナンの含有量が0.05重量%以上であるアガロース/アガーゲルを用いると、実施例6には及ばないまでも、DNA分離能が向上することがわかる。
実施例7と同様に、実施例8のゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。その後、エチジウムブロマイド(0.5μg/mL)を溶かしたTAE緩衝液に、電気泳動後のゲルを15分間浸漬した。さらに、当該ゲルを蒸留水に5分間、静置浸漬した。ゲルの撮影は、上述の「(3)ゲルの撮影」と同様に行った。
電気泳動用ゲルにおいて、アガロースが0.8重量%、グルコマンナンが0.15重量%となるように、それぞれアガロース、ゲル添加剤を加え、アガーを加えなかった以外は実施例8と同様に、実施例9のゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。
電気泳動用ゲルにおいて、アガーが0.5重量%、グルコマンナンが0.1重量%となるように、それぞれアガー、ゲル添加剤を加え、アガロースを加えなかった以外は実施例8と同様に、実施例10のゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。
電気泳動用ゲルにおいて、アガーが0.5重量%となるように、アガーを加え、アガロースおよびゲル添加剤を加えなかった以外は実施例8と同様に、比較例9のゲルを作製し、当該ゲルを用いて、電気泳動を行った。
図3に、実施例8~10、比較例9の電気泳動の結果を示す。なお、図3において「*」は、レーン2に基づく2kbpのDNAバンドを示す。実施例8~10の結果より、泳動バッファーとしてTBEを用いて電気泳動を行い、さらに、電気泳動を行った後の電気泳動用ゲルをエチジウムブロマイドで震盪することにより染色を行った場合であっても、グルコマンナンを0.1重量%含む電気泳動用ゲルを用いることにより、特に0.1~2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。
電気泳動用ゲルにおいて、アガロースが0.7重量%、グルコマンナンが0.1重量%となるように、それぞれアガロース、ゲル添加剤を加え、アガーを加えなかった以外は実施例6と同様に、実施例11のゲルを作製した。TAE緩衝液(pH8.0;40mM Tris-HCl、20mM 酢酸ナトリウム、2mM EDTA)を用いた。
電気泳動用ゲルにおいて、アガーが0.7重量%となるように、アガーを加え、アガロースおよびゲル添加剤を加えなかった以外は実施例3と同様に、比較例8のゲルを作製した。TAE緩衝液(pH8.0;40mM Tris-HCl、20mM 酢酸ナトリウム、2mM EDTA)を用いた。なお、比較例10のレーン1およびレーン2の電気泳動試料は、それぞれ実施例6のレーン1およびレーン2の電気泳動試料と同じ電気泳動試料を用いた。
図3に、実施例11および比較例10の電気泳動の結果を示す。なお、図3において「*」は、レーン2に基づく2kbpのDNAバンドを示す。実施例11の結果より、泳動バッファーとしてTAEを用いて電気泳動を行い、さらに、電気泳動を行った後の電気泳動用ゲルをエチジウムブロマイドで震盪することにより染色を行った場合であっても、グルコマンナンを0.1重量%含むアガロースゲルを用いることにより、特に0.1~2kbpにおいて格段に高い分離能を示すことがわかる。また、実施例11と比較例10との結果の比較により、グルコマンナンを0.1重量%含むアガーゲルを用いることにより、特に0.1~2kbpにおいて分離能が向上することがわかる。
加熱溶解により後述の組成のゲル化用溶液を調製し、3辺がシールされた2mm厚のガラス製のゲル板に流し込んだ。これに2mm厚の16サンプル用コームをセットし、室温に放置することでゲル化用溶液をゲル化させた。コームをゲル板から静かに外した後、ゲルを泳動槽に装着し、各スロットに5μLの電気泳動試料を静かに添加した。室温にて以下の条件で泳動後、ガラス板の間にスパーテルを挿入し一方側を持ち上げた。他方のガラス板に残っているゲルを静かに染色液に押し出し、所定時間、染色後、写真撮影した。ゲルの染色およびゲルの撮影は、実施例8と同様に行った。図4にスラブ型電気泳動を用いた電気泳動用ゲルの泳動結果を示す。
ゲル化用溶液:アガロースが1重量%、グルコマンナンが0.2重量%になるように、それぞれアガロース(Agarose S, ニッポンジーン社製)、ゲル添加剤をTAE緩衝液に加えた。;
ゲル板のサイズ(内寸):幅100mm、縦長100mm、厚さ1mm;
泳動槽:スラブ型(第一化学薬品株式会社、商品名 カセット電気泳動槽「DAIICH」ミニ二連式);
泳動条件:泳動バッファー;TAE、6V/cm、90min;
電気泳動試料:レーン1;0.1~20KbpのDNA(Gene Ladder wide 2, ニッポンジーン社製); レーン2;0.1~10KbpのDNA(Gene Ladder Fast 2, ニッポンジーン社製); レーン3;50bp DNA Ladder (TAKARA社製); レーン4;0.1~2KbpのDNA(Gene Ladder 100,ニッポンジーン社製)。;一番左のレーン;PCR増幅により調製した550 bp,700bpの二つを加えたLambda phage/HindIII I digest(λ/HindIII)(ニッポンジーン社製)。
図4は、スラブ型電気泳動を用いた電気泳動用ゲルの電気泳動の結果を示す図である。左右の2セットでは、上記電気泳動試料をそれぞれ泳動している。サブマリン型電気泳動用ゲルと同様に、スラブ型電気泳動用ゲルでも、グルコマンナンの添加によってDNAの分離能の向上することがわかった。図4には、撮影されたゲル全体を示しているが、作製したスラブ型電気泳動用ゲルは、電気泳動後であっても破れることがない十分な弾性を有する、取扱い性に優れたゲルであることがわかる。また、図4より、各スロットに対応したDNAの泳動が観察されたことがわかる。
Claims (6)
- グルコマンナン水溶液に活性炭を加えて不純物を除去する工程を含む、核酸電気泳動用ゲル添加剤の製造方法。
- 請求項1に記載のゲル添加剤の製造方法により得られる、核酸電気泳動用ゲル添加剤。
- ゲル基材として少なくともアガロースを含むスラブ型電気泳動用ゲルであって、
グルコマンナンを0.1重量%以上含むことを特徴とする、スラブ型電気泳動用ゲル。 - 前記ゲル基材を0.5重量%以上含むことを特徴とする、請求項3に記載のスラブ型電気泳動用ゲル。
- 請求項3または4に記載のスラブ型電気泳動用ゲルを用いることを特徴とする、電気泳動方法。
- 請求項2に記載の核酸電気泳動用ゲル添加剤を備える核酸電気泳動用ゲル製造キット。
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