JP7051598B2 - 水生生物の育成装置 - Google Patents

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本発明は、水生生物の育成装置に関する。
近年、水生生物の養殖において、成長促進や生残率の向上による養殖効率向上のために、空気や酸素を溶解させて溶存酸素濃度を引き上げる方法がとられている(例えば、特許文献1,2参照)。
従来の溶存酸素濃度を引き上げる方法として、散気管による曝気、エジェクタによる水槽への送水水流への酸素導入、気体溶解装置による高濃度酸素溶解水の送水などがある。これらの方法では、水槽内で発生させる水流により酸素の溶解拡散が行われる。
特開平04-237447号公報 特開2013-255449号公報
ところで、水槽内の水流は、仔魚から稚魚、幼魚、成魚への成長過程では問題視されないが、卵から孵化、仔魚への成長過程では、生存率、成長等を悪化させ、問題となる。
特許文献1、2に開示された装置では、溶存酸素濃度を引き上げるために水流が発生するため、同装置を仔魚までの成長過程の水生生物の育成に使用することは好ましくない。
そこで、本発明は、水流が殆ど無く、溶存酸素濃度の高い環境をつくることができる、水生生物の育成装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る水生生物の育成装置は、水生生物を育成するための育成槽と、酸素濃度の高い水を循環させる循環槽とを備え、前記育成槽と前記循環槽との間に、酸素を透過し、水を透過しない気体透過膜が設けられたことを特徴としている。
かかる構成を備える水生生物の育成装置によれば、前記育成槽と前記循環槽との間に前記気体透過膜が設けられているため、酸素濃度の高い循環槽から育成槽へ水が移動することなく酸素が移動する。このため、育成槽の水の酸素濃度を高めることができ、しかも、循環槽内の水流が育成槽に流れ込まないことから、育成槽において水流が生じることが殆どない。
前記構成を備える水生生物の育成装置において、前記循環槽は、前記気体透過膜を介して前記育成槽の下方に設けられることが望ましい。
かかる構成を備える水生生物の育成装置によれば、簡単な構成で育成槽および循環槽を構築することができる。
前記構成を備える水生生物の育成装置において、前記循環槽に酸素濃度の高い水を循環させる酸素水循環装置を備え、前記酸素水循環装置は、例えば、一端部が前記循環槽の一部に連通され、他端部が前記循環槽の他部に連通された循環経路と、前記循環経路に酸素又は酸素を含む気体を導入する気体導入部と、前記循環経路に設けられた加圧ポンプと、前記循環経路において、前記気体導入部および前記加圧ポンプより下流側、かつ、前記循環槽より上流側に設けられた気体溶解装置と、を有する。
かかる構成を備える水生生物の育成装置によれば、効率良く酸素濃度の高い水を循環槽に供給することができる。
前記構成を備える水生生物の育成装置において、前記酸素水循環装置は、前記育成槽および前記循環槽の少なくとも一方の水の酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、前記育成槽および前記循環槽の少なくとも一方の水の酸素濃度に基づいて前記気体導入部が導入する酸素導入量と前記加圧ポンプによる加圧量とを制御するコントローラと、をさらに有してもよい。
かかる構成を備える水生生物の育成装置によれば、育成槽における溶存酸素濃度を、育成する水生生物に適した酸素濃度に保つことができる。
前記構成を備える水生生物の育成装置において、前記コントローラは、前記加圧ポンプの回転数を繰り返し変動させるものでもよい。
かかる構成を備える水生生物の育成装置によれば、循環槽内における水流量を変動させて、気体透過膜を膜厚方向に繰り返し変形させることができる。その結果、育成槽において「ゆらぎ」を生じさせることができる。
前記構成を備える水生生物の育成装置において、前記酸素水循環装置は、前記循環経路上で循環水の滅菌を行うUV装置を更に有してもよい。
かかる構成を備える水生生物の育成装置によれば、循環水の滅菌が行われるので、生命力が弱い仔魚までの成長過程の水生生物の生残率を向上させることができる。
本発明によれば、水流が殆ど無く、溶存酸素濃度の高い環境をつくることができる。
本実施形態にかかる水生生物の育成装置の概略構成図である。 本実施形態にかかる水生生物の育成装置の制御フローである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態にかかる水生生物の育成装置Aは、図1に示すように、水槽1と、酸素水循環装置2とを備えている。
水槽1は、水生生物を育成するための育成槽11と、酸素濃度の高い水を循環させる循環槽12とを備えている。育成槽11と循環槽12との間には、気体透過膜3が設けられている。図1に示す例の場合、水槽1が気体透過膜3によって仕切られ、気体透過膜3の上側に育成槽11が設けられ、気体透過膜3の下側に循環槽12が設けられているということもできる。気体透過膜3は、酸素を透過し、水を透過しないものであればよい。気体透過膜3として例えば酸素透過性に優れたシリコン製の膜を使用することができる。なお、上記「酸素濃度が高い水」とは、自然の水と比べて酸素濃度が高い水のことであり、例えば、酸素濃度が10ppm以上の水、好ましくは酸素濃度が20ppm以上の水である。後述する「酸素濃度が高い水」も同様である。
気体透過膜3の水槽1に対する取付構造は、特に限定されるものではないが、例えば、下部に開口およびフランジ112を有する上部容器111と、上部に開口およびフランジ122を有する下部容器121とを用いることができる。この場合、下部容器121と上部容器111との間に気体透過膜3を挟んで両者の締結用フランジ112,122をボルト13等にて締結することにより、気体透過膜3は、水槽1に固定されるとともに、水槽1を上下2槽に区画する。好ましくは、上部容器111と下部容器121との境界の水密性を十分に確保するために、上部容器111のフランジ112と下部容器121のフランジ122との間に、気体透過膜3の外周部と重ねてフランジパッキン(不図示)を挟み込むとよい。
酸素水循環装置2は、循環槽12に酸素濃度の高い水(以下「高濃度酸素水」ともいう。)を循環させる。この酸素水循環装置2は、高濃度酸素水を循環させる循環経路21と、気体導入部24と、加圧ポンプ23と、気体溶解装置25と、酸素濃度検出部26と、UV装置27と、コントローラ28とを備えている。
循環経路21は、主に配管類を用いて構成されている。循環経路21の一端部21aは循環槽12の下部一側部に連通され、循環経路21の他端部21bは、循環槽12の下部他側部に連通されている。
気体導入部24は、循環経路21を流れる循環水に純酸素(以下単に「酸素」ともいう。)を導入する。気体導入部24によって循環水に酸素が導入されると、循環水が気液混合水になる。本実施形態では、純酸素を循環水に導入しているが、純酸素の代わりに酸素を含む気体を循環水に導入するようにしてもよい。
本実施形態では、気体導入部24は、酸素の供給源と循環経路21とを接続する気体供給路241と、気体供給路241の途中に設けられた気体投入バルブ242と、気体投入バルブ242を開閉駆動するアクチュエータ243と、気体供給路241上の気体投入バルブ242より下流側に設けられた逆止弁244と、を備えている。
加圧ポンプ23は、循環経路21において、気体導入部24によって酸素が導入される位置より下流側、かつ、循環槽12より上流側に設けられている。加圧ポンプ23が駆動すると、循環経路21に沿って水が循環する。なお、加圧ポンプ23は、気体導入部24によって酸素が導入される位置より上流側に設けられてもよい。
気体溶解装置25は、循環経路21において、加圧ポンプ23より下流側、かつ、循環槽12より上流側に設けられている。気体溶解装置25は、タンクを備えており、加圧ポンプ23によって当該タンク内で気液混合水が加圧され、酸素が水に加圧溶解される。損結果、タンク内で高濃度酸素水が生成される。タンク内で生成された高濃度酸素水は、循環経路21を通じて循環槽21に供給される。なお、気液溶解装置25としては、例えば、特開2011-235200号公報、特開2010-137176号公報などに開示された周知のもの(同公報では「気液溶解タンク」と称している。)を使用することができる。
酸素濃度検出部26は、酸素濃度センサを用いて構成されており、育成槽11の水の酸素濃度を検出する。
UV装置27は、紫外線を用いて循環経路21で循環する水の滅菌を行う。本実施形態では、UV装置27は、気液溶解装置25と循環槽12との間に設けられている。
コントローラ28は、育成槽11の水の酸素濃度を所望の濃度に保つため、酸素濃度検出部26によって検出される育成槽11の水の酸素濃度に基づいて、気体導入部24が導入する酸素導入量と加圧ポンプ23による加圧量とを制御する。また、コントローラ28は、加圧ポンプ23の回転速度を周期的に繰り返し変動させることにより、循環槽12内における水流量を変動させて、後述する「ゆらぎ」を発生させる。なお、コントローラ28は、例えばシーケンサを用いて構成することができる。
次に、本実施形態にかかる水生生物の育成装置Aにおける水の循環について説明する。なお、以下では、水槽1、循環経路21および循環経路21上の各機器類に水が満たされているものとして説明する。
コントローラ28によって、加圧ポンプ23が駆動され、気体導入部24の気体投入バルブ242が開放されると、循環経路21に沿って水が循環するとともに、気体導入部24において循環水に対して酸素が導入され、気液混合水が生成される。生成された気液混合水は、加圧ポンプ23によって気体溶解装置25に送り込まれる。更に、加圧ポンプ23の加圧作用により、気液混合水(酸素と水の混合水)は、気体溶解装置25のタンク内で当該気液混合水に含まれる酸素が水に加圧溶解されることにより、高濃度酸素水が生成される。生成された高濃度酸素水は、気液溶解装置25から送出され、UV装置27で滅菌処理が施された後、循環槽12内に送給される。他方、循環槽12の他側部からは、比較的酸素濃度が低下した水(酸素が消費された水)が循環経路21の他端部21bに送り出される。循環槽12から循環経路21に送り出された比較的酸素濃度の低い水は、気体導入部24および気体溶解装置25を通過することで再び高濃度酸素水になって循環槽12に送給される。
循環槽12に高濃度酸素水が循環供給されると、循環槽12の水の酸素濃度が育成槽11の酸素濃度より格段に高くなるため、循環槽12の高濃度酸素水の中の酸素が気体透過膜3を透過して育成槽11に移動し、育成槽11の水の酸素濃度が上昇する。
また、コントローラ28は、育成槽11の酸素濃度を酸素濃度検出部26により常時モニタリングしながら、育成槽11の水の酸素濃度が所望の酸素濃度の範囲に保たれるように、循環経路21を流れる循環水に対して、加圧ポンプ23による加圧量と、気体導入部24による酸素導入量を制御する。この制御の一例を図2を用いて説明する。なお、以下の制御例では、育成槽11内の水の酸素濃度の下限閾値をXppmとし、上限閾値をYppmとする。また、後述するバルブ開度A1~A3は、A3<A1<A2であり、ポンプ回転数N1~N3は、N3<N1<N2である。
先ず、コントローラ28は、酸素濃度検出部26により検出される育成槽11内の水の酸素濃度がXppmを超えているか否かを判定し(S1)、酸素濃度がXppm以下であると判定した場合(S1:No)、育成槽11内の水の酸素濃度が所望範囲に満たないため、気体投入バルブ242の開度がA2になるようにアクチュエータ243を駆動制御するとともに、ポンプ回転数がN2になるように加圧ポンプ23を制御する(S2)。なお、既に、気体投入バルブ242の開度がA2であり、ポンプ回転数がN2である場合は、その状態が維持される。S2の後、再び手順がS1に戻される。
前記S1において、コントローラ28が、育成槽11内の水の酸素濃度がXppmを超えていると判定した場合(S1:Yes)、次いで、育成槽11内の水の酸素濃度がYppm未満であるか否かを判定し(S3)、酸素濃度がYppm未満である場合(S3:Yes)、育成槽11内の水の酸素濃度が所望範囲内にあるため、コントローラ28は、気体投入バルブ242のバルブ開度がA1になるようにアクチュエータ243を制御し、ポンプ回転数がN1になるように加圧ポンプ23を制御する(S4)。なお、既に、気体投入バルブ242の開度がA1であり、ポンプ回転数がN1である場合は、その状態が維持される。S4の後、再び手順がS1に戻される。
前記S3において、コントローラ28が、酸素濃度がYppm以上であると判定した場合(ステップS3:No)、育成槽11内の水の酸素濃度が所望範囲を超えているため、コントローラ28は、気体投入バルブ242の開度がA3になるようにアクチュエータ243を制御しポンプ回転数がN3になるように加圧ポンプ23を制御する(S5)。なお、既に、気体投入バルブ242の開度がA3であり、ポンプ回転数がN3である場合は、その状態が維持される。S5の後、再び手順がS1に戻される。
また、コントローラ28は、加圧ポンプ23のポンプ回転数を上記ポンプ回転数N1、N2又はN3を中心に繰り返し上下に変動させることにより、循環槽12内における水流量を変動させて、気体透過膜3を膜厚方向に(上下に)繰り返し変形させる。これにより、育成槽11において水の「ゆらぎ」が生じる。水の「ゆらぎ」によって、仔魚までの成長過程の水生生物に対して好ましい育成環境とすることができる。ここでいう「ゆらぎ」に関して、水生生物の実生態系での産卵場所である水底の窪みなどでは、水流ではない、水の「ゆらぎ」が有り、実生態系での産卵場所に似た環境を作ることができる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態にかかる水生生物の育成装置Aによれば、育成槽11と循環槽12との間に気体透過膜3が設けられているため、酸素濃度の高い循環槽12の水から育成槽11へ酸素が移動し、育成槽11の水の酸素濃度を所望の値にまで高めて、その濃度を保つことができる。また、気体透過膜3が設けられていることから、循環槽12内の水流が育成槽11に浸入することはなく、育成槽において水流が生じることは殆どない。このため、育成槽11は、水流によって悪影響を受ける水生生物(例えば仔魚までの成長過程の水生生物)にとって、良好な育成環境となる。
<実施形態の変形例>
既述した実施形態では、酸素濃度検出部26は、育成槽11の水の酸素濃度を検出するものであったが、循環層12の水の酸素濃度と育成槽11の水の酸素濃度とは互いに連動するため、循環層12の水の酸素濃度から育成槽11の水の酸素濃度をある程度推定することができる。このことから、酸素濃度検出部26によって循環層12の水の酸素濃度を検出し、コントローラ28が、循環層12の水の酸素濃度に基づいて、気体導入部24が導入する酸素導入量と加圧ポンプ23による加圧量とを制御するようにして、育成槽11の溶存酸素濃度を所望の範囲に保つことも可能である。
循環槽12に酸素濃度の高い水を循環させる酸素水循環装置は、既述した酸素水循環装置2に限定されず、循環槽12に酸素濃度の高い水を循環させることができるものであれば、実施形態に係る酸素水循環装置2と置き換えることも可能である。
以上に説明した本実施形態は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。
本発明は、例えば、水生生物を育成するための装置に適用することができる。
A 水生生物の育成装置
2 酸素水循環装置
3 気体透過膜
11 育成槽
12 循環槽
21 循環経路
23 加圧ポンプ
24 気体導入部
25 気体溶解装置
26 酸素濃度検出部
27 UV装置
28 コントローラ

Claims (6)

  1. 水生生物を育成するための育成槽と、
    酸素濃度の高い水を循環させる循環槽と、
    を備え、
    前記育成槽と前記循環槽との間に、酸素を透過し、水を透過しない気体透過膜が設けられた
    ことを特徴とする水生生物の育成装置。
  2. 請求項1に記載の水生生物の育成装置において、
    前記循環槽は、前記気体透過膜を介して前記育成槽の下方に設けられた
    ことを特徴とする水生生物の育成装置。
  3. 請求項1又は2に記載の水生生物の育成装置において、
    前記循環槽に酸素濃度の高い水を循環させる酸素水循環装置をさらに備え、
    前記酸素水循環装置は、
    一端部が前記循環槽の一部に連通され、他端部が前記循環槽の他部に連通された循環経路と、
    前記循環経路に酸素又は酸素を含む気体を導入する気体導入部と、
    前記循環経路に設けられた加圧ポンプと、
    前記循環経路において、前記気体導入部および前記加圧ポンプより下流側、かつ、前記循環槽より上流側に設けられた気体溶解装置と、
    を有することを特徴とする水生生物の育成装置。
  4. 請求項3に記載の水生生物の育成装置において、
    前記酸素水循環装置は、
    前記育成槽および前記循環槽の少なくとも一方の水の酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、
    前記育成槽および前記循環槽の少なくとも一方の水の酸素濃度に基づいて前記気体導入部が導入する酸素導入量と前記加圧ポンプによる加圧量とを制御するコントローラと、
    をさらに有することを特徴とする水生生物の育成装置。
  5. 請求項3又は4に記載の水生生物の育成装置において、
    前記コントローラは、前記加圧ポンプの回転数を繰り返し変動させる
    ことを特徴とする水生生物の育成装置。
  6. 請求項3~5の何れか1項に記載の水生生物の育成装置において、
    前記酸素水循環装置は、
    前記循環経路上で循環水の滅菌を行うUV装置を更に有する
    ことを特徴とする育成装置。


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