JP7050731B2 - レーダカバー - Google Patents

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本発明は、レーダカバーに関するものである。
近年、ミリ波等の電波を用いて車両の周囲の障害物等を検知するレーダユニットが車両に搭載されている。このようなレーダユニットは、車両の前面に設けられるラジエータグリルやエンブレムの内側に配置されており、ラジエータグリル等を透過する電波の送受信を行う。このため、上述のようなレーダユニットを備える車両においては、ラジエータグリルやエンブレムは、電波の減衰を抑制しつつ当該電波を透過可能に形成する必要がある。
一方で、ラジエータグリルやエンブレムは、車両の前面に配置されることから、車両の意匠上、極めて重要な部分であり、高級感や質感を向上させるために部分的に光輝性を付与することが多い。従来は、このような光輝性を付与するため、めっき処理を施すことが一般的であったが、めっき層は電波を透過しない。このため、近年、光輝性を付与しかつ電波を透過可能とするため、電波が透過可能な光輝性膜を形成する技術が用いられている(特許文献1参照)。
特開2011-46183号公報
ところで、上述のような光輝性膜は、一般的に、希少金属であるインジウム等を、真空蒸着設備やスパッタリング設備によって成膜することによって形成されている。このため、従来のレーダカバーの製造は、希少金属の入手経路の確保や製造設備の設置等の観点から容易ではなかった。特に、近年においては、安全意識の高まりから、廉価な車両を含めて様々な移動体にレーダユニット及びレーダカバーを設置することが望まれている。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、レーダカバーにおいて、インジウム等の希少金属を用いることなく、部分的に光輝性を付与可能とすることを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、透明部材と、上記透明部材の背面側に配置されて上記透明部材を介して視認可能な背面部材とを備えるレーダカバーであって、上記透明部材の背面の他の領域よりも表面粗さが大きな粗面領域が上記背面に局所的に設けられ、上記粗面領域と上記背面部材との間に配置されると共に上記透明部材と屈折率が異なる透光層を備えるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記透明部材の上記背面の一部に凹部が設けられ、上記凹部の内壁面の少なくとも一部が上記粗面領域とされているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記透光層が、上記凹部に収容された透光フィルムであるという構成を採用する。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記透光フィルムが、上記凹部の内壁面に対して固着されずに当接されているという構成を採用する。
第5の発明は、上記第3または第4の発明において、上記透光フィルムの全体が上記凹部に収容されているという構成を採用する。
第6の発明は、上記第5の発明において、上記凹部の内部に上記透光フィルムが配置されていない透光フィルム非配置領域が設けられ、上記背面部材の一部が上記透光フィルム非配置領域に充填されているという構成を採用する。
第7の発明は、上記第2の発明において、上記透光層が、空気層であるという構成を採用する。
本発明によれば、透明部材の外部から透明部材に入射した外光の一部が粗面領域にて散乱される。さらに、粗面領域に入射する外光は、透光層の表面で反射される。この結果、粗面領域が光沢を有するように外部の者から視認される。このため、本発明によれば、インジウム等の希少金属を用いることなく、また真空蒸着やスパッタリングを行うことなく、透明部材の内側に部分的に光輝性を付与することができる。
(a)が、本発明の一実施形態におけるレーダカバーを備えるラジエータグリル1の正面図であり、(b)が、本発明の一実施形態におけるレーダカバーの拡大正面図である。 本発明の一実施形態におけるレーダカバーの模式的な断面図である。 本発明の一実施形態におけるレーダカバーの製造方法について説明するための概略図である。 本発明の一実施形態におけるレーダカバーの変形例の模式的な断面図である。 本発明の一実施形態におけるレーダカバーの変形例が備える凹部を含む拡大断面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係るレーダカバーの一実施形態について説明する。
図1(a)は、本実施形態のレーダカバー10を備えるラジエータグリル1の正面図であり、図1(b)は、本実施形態のレーダカバー10の拡大正面図である。また、図2は、本実施形態のレーダカバー10の模式的な断面図である。
ラジエータグリル1は、車両のエンジンルームに通じる開口を塞ぐように車両の前面に設けられており、エンジンルームへの通気を確保しかつエンジンルームへの異物の進入を防止している。ラジエータグリル1の中央には、エンジンルーム内に配置されるレーダユニットRに対向するようにしてレーダカバー10が設けられている。なお、ラジエータグリル1において、レーダカバー10を除く部位は、電波透過性を有する必要性がないことから、例えばクロム(Cr)によってめっき処理されている。
レーダユニットR(図2参照)は、例えばミリ波を発信する発信部、反射波を受信する受信部、及び、演算処理を行う演算部等を有している。このレーダユニットRは、レーダカバー10を透過する電波の送受信を行い、受信した電波に基づいて車両の周囲状況を検知する。例えば、レーダユニットRは、障害物までの距離や障害物の相対速度等を算出して出力する。
レーダカバー10は、レーダユニットRを車両の正面側から見て覆うように配置されている。このレーダカバー10は、図1(b)に示すように、車両の正面側から見て、車両メーカのエンブレムを示す図形や文字等を表す光輝領域10Aと、当該光輝領域10Aの視認性を向上させる黒色領域10Bを有する部品である。このようなレーダカバー10は、図2に示すように、透明部材11と、透光フィルム12(透光層)と、ベース部材13(背面部材)とを備えている。
透明部材11は、最も車両の外側に配置される略矩形状の透明材料により形成される部位である。この透明部材11は、車両の外部からの光輝領域10Aの視認性を高めるため、表側の面が円滑面とされている。また、透明部材11の背面(裏側の面)には、透光フィルム12が配置される凹部11aが形成されている。また、透明部材11の背面の凹部11aが設けられていない領域は、ベース部材13との固着面とされている。
凹部11aは、透光フィルム12を収容する部位である。この凹部11aは、車両メーカのエンブレム等の図形や文字等の形状に沿って設けられている。このような凹部11aの内壁面のうち底面は、透明部材11の背面の他の領域(ベース部材13との固着面)よりも表面粗さが大きな粗面領域Raとされている。つまり、本実施形態のレーダカバー10では、透明部材11の背面の他の領域よりも表面粗さが大きな粗面領域Raが透明部材11の背面に局所的に設けられている。このような粗面領域Raは、例えば、凸部を25~50μmピッチで設けることで形成することができる。なお、このような凹部11aの底面に設けられた粗面領域Raと透光フィルム12とによって、上述の光輝領域10Aが形成されている。
このような透明部材11は、例えば、透明のPC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂によって形成されており、1.5mm~10mm程度の厚さとされている。また、透明部材11の表側の面には、必要に応じて、傷付き防止のためのハードコート処理、又はウレタン系塗料のクリヤコート処理が施される。なお、耐傷性を備える透明合成樹脂であれば、これらの傷付き防止処理は不要である。
透光フィルム12は、透明部材11と異なる材料によって形成された透光性を有するフィルム部材であり、透明部材11と異なる屈折率を有している。この透光フィルム12の厚さ寸法は、凹部11aの深さ寸法よりも小さく設定されている。また、透光フィルム12は、凹部11aの底面(粗面領域Ra)に対して当接されている。このため、本実施形態においては、透光フィルム12の全体が凹部11aに収容されており、さらに凹部11aの内部には、透光フィルム12が配置されていない透光フィルム非配置領域が設けられている。この凹部11aの内部の透光フィルム非配置領域は、ベース部材13の一部(後述する突出部13b)が充填されている。
また、透光フィルム12の表面は粗面領域Raと比較して凹凸が小さな円滑な面とされている。このような透光フィルム12の表面は、固着されずに凹部11aの粗面領域Raに当接されている。このため、図2の拡大図に示すように、透明部材11の凹部11aの内壁面と透光フィルム12の表面との間には、微細な空隙が多数設けられている。このような多数の空隙は、空隙が設けられていない場合と比較して光の散乱を促進し、光輝領域10Aの視認性をより向上させる。
ベース部材13は、透明部材11の背面側に配置されており、黒色の樹脂材料から形成されている。このベース部材13は、エンジンルーム側に突出する係合部13aを有している。この係合部13aは、先端部が爪状に成形されており、当該先端部が例えばラジエータグリル本体に係止される。このように透明部材11の背面の凹部11aの形成領域を除いた領域に対して固着されたベース部材13は、透明部材11の外側から視認可能とされており、上述の黒色領域10Bを形成している。このベース部材13は、光輝領域10A以外の領域を黒色に視認させ、相対的に光輝領域10Aの視認性を向上させる。
また、ベース部材13は、凹部11aに入り込む突出部13bを有している。突出部13bは、凹部11aの内部のうち、透光フィルム12が配置されていない領域に充填されている。つまり、本実施形態においては、ベース部材13の一部に、透明部材11の凹部11aに嵌合される突出部13bが設けられている。
このようなベース部材13は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、有色のPC、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなり、0.5mm~10mm程度の厚さとされている。
続いて、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について説明するための概略図である。
まず、図3(a)に示すように、透明部材11を形成する。例えば、透明部材11は、樹脂材料を射出成形することによって形成される。この射出成形により、凹部11aを有する透明部材11を形成することができるため、後工程により凹部11aを形成する必要はない。ここで、本実施形態においては、例えば射出成形に用いる金型に対して、凹部11aの底面を粗面とする凹凸(カッター目)を予め形成しておく。これによって、1度の射出成形によって、凹部11aの底面が粗面領域Raとされた透明部材11を形成することができる。なお、必要に応じて、透明部材11の表面側(車両外側に向く面)あるいは全面には、耐久性等を向上させるためのハードコート処理を施しても良い。
続いて、図3(b)に示すように、透光フィルム12を透明部材11の凹部11aの内部に配置する。次に、図3(c)に示すように、ベース部材13を形成する。ここでは、凹部11aに透光フィルム12が設置された透明部材11を、射出成形用の金型の内部に配置し、透明部材11の背面側に溶融した樹脂を射出するインサート成形を行うことで、ベース部材13を形成する。このようなベース部材13は、インサート成形時の熱により透明部材11と溶着され、透光フィルム12を覆うように配置される。
以上のような本実施形態のレーダカバー10は、透明部材11と、透明部材11の背面側に配置されて透明部材11を介して視認可能なベース部材13とを備えている。また、本実施形態のレーダカバー10では、透明部材11の背面に対して、透明部材11の背面の他の領域よりも表面粗さが大きな粗面領域Raが局所的に設けられ、粗面領域Raとベース部材13との間に配置されると共に透明部材11と屈折率が異なる透光フィルム12を備えている。
このような本実施形態のレーダカバー10によれば、透明部材11の外部から透明部材11に入射した外光の一部が粗面領域Raにて散乱される。さらに、粗面領域Raに入射する外光は、透光フィルム12の表面で反射される。この結果、粗面領域Raが光沢を有するように外部の者から視認される。このため、本実施形態によれば、インジウム等の希少金属を用いることなく、また真空蒸着やスパッタリングを行うことなく、透明部材11の内側に部分的に光輝性を付与することができる。
また、本実施形態のレーダカバー10においては、透明部材11の背面の一部に凹部11aが設けられ、凹部11aの内壁面の少なくとも一部が粗面領域Raとされている。このような本実施形態のレーダカバー10によれば、粗面領域Raが凹部11aの内部に設けられていることから、製造時に粗面領域Raの位置を容易に把握することができる。このため、例えば透光フィルム12を粗面領域Raに合わせて容易に配置することができ、粗面領域Raと透光フィルム12との位置合わせを容易に行うことが可能となる。
また、本実施形態のレーダカバー10においては、透光層が、凹部11aに収容された透光フィルム12によって形成されている。例えば、図4の本実施形態のレーダカバー10の変形例に示すように、透光層を空気層14(中空空間)によって形成することも可能である。これに対して、透光層を透光フィルム12によって形成することで、ベース部材13を透光フィルム12に当てた状態とすることができ、例えば透光層の厚さ寸法の管理が容易となる。一方で、空気層14で透光層を形成した場合には、レーダカバー10の部品点数を削減することが可能となる。
また、本実施形態のレーダカバー10においては、透光フィルム12が、凹部11aの内壁面に対して固着されずに当接されている。このため、透光フィルム12と透明部材11との間に微細な空隙を多数形成することができ、光輝領域10Aの視認性をより向上させることができる。
また、本実施形態のレーダカバー10においては、透光フィルム12の全体が凹部11aに収容されている。このため、透光フィルム12が透明部材11に対して移動することを防止できる。したがって、例えば、ベース部材13をインサート成形によって形成する場合に透光フィルム12が透明部材11に対して移動することを防止することができる。
また、本実施形態のレーダカバー10においては、凹部11aの内部に透光フィルム12が配置されていない透光フィルム非配置領域が設けられ、ベース部材13の一部(突出部13b)が透光フィルム非配置領域に充填されている。このため、透明部材11とベース部材13との密着性を向上させることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、凹部11aの底面が粗面領域Raとされた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、凹部11aの内壁面の側壁面を粗面領域Raとすることも可能である。このように凹部11aの内壁面の側壁面を粗面領域Raとすることで、斜め方向からレーダカバー10を視認した場合であっても、光輝領域10Aの視認性を向上させることができる。
1……ラジエータグリル、10……レーダカバー、10A……光輝領域、10B……黒色領域、11……透明部材、11a……凹部、12……透光フィルム(透光層)、13……ベース部材(背面部材)、13a……係合部、13b……突出部、14……空気層(透光層)、R……レーダユニット、Ra……粗面領域

Claims (4)

  1. 透明部材と、前記透明部材の背面側に配置されて前記透明部材を介して視認可能な背面部材とを備えるレーダカバーであって、
    前記透明部材の背面の他の領域よりも表面粗さが大きな粗面領域が前記背面に局所的に設けられ、
    前記粗面領域と前記背面部材との間に配置されると共に前記透明部材と屈折率が異なる透光層を備え
    前記透明部材の前記背面の一部に凹部が設けられ、前記凹部の内壁面の少なくとも一部が前記粗面領域とされており、
    前記透光層は、前記凹部に収容された透光フィルムである
    ことを特徴とするレーダカバー。
  2. 前記透光フィルムは、前記凹部の内壁面に対して固着されずに当接されていることを特徴とする請求項記載のレーダカバー。
  3. 前記透光フィルムの全体が前記凹部に収容されていることを特徴とする請求項または記載のレーダカバー。
  4. 前記凹部の内部に前記透光フィルムが配置されていない透光フィルム非配置領域が設けられ、前記背面部材の一部が前記透光フィルム非配置領域に充填されていることを特徴とする請求項記載のレーダカバー。
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