JP7050381B2 - マウスmait様細胞及びmait細胞豊富なマウス - Google Patents

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Description

本発明は、マウスMAIT様細胞、及びMAIT細胞豊富なマウスに関する。
MAIT細胞(Mucosal associated invariant T cells)は、多様なサイトカイン産生を介して自然免疫と獲得免疫の「橋渡し役」を担い、個体の免疫応答を制御する自然免疫型T細胞の一種である。MAIT細胞はヒトにおいて豊富に存在し、例えば肝臓中のT細胞では20-50%、腸管粘膜固有層リンパ球(lamina propria lymphocytes:LPL)や末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells:PBMC)では1-10%を占める一方、マウスでは稀有な細胞である(非特許文献1:Dusseaux et al.,2011; 非特許文献2:Le Bourhis et al.,2011)。
MAIT細胞は、多発性硬化症をはじめとする自己免疫疾患や炎症性疾患、がんの発症及び進展との関連性が示唆されている。CD8+/CD161highT細胞は肝臓や関節等の炎症部位に集積し、多発性硬化症の発症要因と目されているT細胞群であるが、ヒトPBMC中ではCD8+/CD161highT細胞の90%がMAIT細胞特異的T細胞受容体(TCR)α鎖であるVα7.2+を発現することが示されている(非特許文献3:Walker et al.,2012)。さらに、多発性硬化症患者ではその病変部に、多くのMAIT細胞が集積していることが報告されている(非特許文献4:Illes et al.,2004; 非特許文献5:Miyazaki et al.,2011)。MAIT細胞の集積は、腎がんや脳腫瘍(非特許文献6:Peterfalvi et al.,2008)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(非特許文献4:Illes et al.,2004)でも報告されている。また、潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患に関し、薬剤で惹起された炎症性組織傷害に対して移入したMAIT細胞が保護的に作用することが報告されている(非特許文献7:Xiao Ruijing et al.,2012)。
このように、MAIT細胞は種々の疾患や病態への関与が示唆されるが、免疫制御機構、特に免疫応答における役割やその機序等の詳細なメカニズム、そこに寄与する因子や分子、さらには病態発症及び進展における意義等については、検討及び解析が十分に進んでいないのが現状である。その大きな理由の1つとして、in vitro及びin vivo試験に供し得る細胞・動物ソースの問題が挙げられる。
すなわち、実験用動物として頻用されるマウスではMAIT細胞は非常に稀有な細胞集団であり、当該動物を用いた機能解析は困難である。一方、ヒトにはMAIT細胞がマウスと比較すれば豊富に存在するものの、MAIT細胞を末梢血等のヒト生体試料から大量に調製するには限界がある。また、このような方法では、得られるMAIT細胞の数や性質が大きく変動する可能性も高く、当該細胞を用いた試験の安定性及び再現性に難がある。
さらに、MAIT細胞は通常、細胞増殖能をほとんど有していない状態にあり、しかも、その増殖を誘導する因子や刺激が同定されていないため、in vitro条件下で増幅させることは困難である(非特許文献1:Dusseaux et al.,2011)
MAIT細胞の活用法の1つとして、各種感染症や自己免疫疾患、がんの罹患患者に、MAIT細胞又は人為的に修飾したMAIT細胞を移入し治療する、いわゆる細胞移植療法に用いる細胞ソースとしての利用が考えられる。しかしながら、当該治療法を実現させるためには、やはり安定した品質を有した、大量のMAIT細胞を調製する方法の確立が必須である。
MAIT細胞は、これまで知られている如何なるT細胞増殖刺激にも反応しないため、機能解析に必要な大量のMAIT細胞を調製することが困難であった。特に、実験用動物として頻用されるマウスではMAIT細胞は非常に希有な細胞集団であり、従前の実験用マウスを用いて研究開発を進めるには限界がある。さらに上記疾患におけるMAIT細胞の病態制御能やその機序を明らかにするためには、ヒトと同じくらいの頻度でMAIT細胞を発現するマウスが希求されている。
従来、マウスMAIT細胞由来iPS細胞が知られているが(特許文献1:特許6275646号)、具体的にマウスMAIT細胞を濃縮及び純化し、iPS細胞化する方法の記載はされてない。また、同特許ではMAIT様細胞が細胞治療として有効性が示された疾患は細菌感染に対してのみであり、がんに有効であることは記載されていない。さらにMAIT細胞の疾患モデルにおける機能解明を可能とするMAIT細胞が豊富なマウスも記載されていない。
特許6275646号
Dusseaux et al.,Blood vol.117, page1250-9, 2011 Le Bourhis et al., Tends Immunol vol.32, page 212-8, 2011 Walker et al.,Blood vol.119, page422-33, 2012 Illes et al., Int Immunol vol.16, page223-30, 2004 Miyazaki et al., Int Immunol vol.23, page529-35, 2011 Peterfalvi et al., Int Immunol vol.12, page1517-25, 2008 Ruijing et al., Hepatogastroenterology vol.115, page 762-7, 2012
従って、MAIT細胞と類似の機能を有するMAIT様細胞を樹立し、ヒトと同様な頻度でMAIT細胞を有するマウスを作製することが求められていた。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、マウスMAIT細胞を初期化してMAIT細胞由来の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製することに成功し、当該人工多能性幹細胞を分化誘導してMAIT様細胞を得ることに成功した。そして、得られたMAIT様細胞をマウスに移入することにより、MAIT様細胞に富むマウスを作出することに成功した。また、MAIT細胞由来人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使用したキメラマウスを経由してMAIT細胞特異的に遺伝子再構成したT細胞受容体(TCR)の遺伝子配置を対立遺伝子に有するマウス(Vα19マウスとVβ8マウス:ヒトと同様な、もしくはヒト以上の頻度でMAIT細胞を有する)を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の実施形態を包含する。
(1)マウス由来MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞の分化誘導により得られたMAIT様細胞を移入してなる、MAIT細胞富化マウス。
(2)MAIT様細胞の移入が、腹腔内への又は尾静脈経由による移入である、(1)に記載のマウス。
(3)マウス由来MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞を胚移入したキメラ胚由来のMAIT細胞富化マウスであって、MAIT細胞特異的にTCR遺伝子が再構成されたゲノム配置をその対立遺伝子に持つ、前記マウス。
(4)Vα19遺伝子及びJα33遺伝子が隣接するように再構成された対立遺伝子を有する、(3)に記載のマウス。
(5)Vβ遺伝子、D遺伝子及びJ遺伝子が隣接するように再構成された対立遺伝子を有する、(3)に記載のマウス。
(6)Vβ8.2遺伝子、D1遺伝子及びJβ1.2遺伝子が隣接するように再構成された、(5)に記載のマウス。
(7)MAIT細胞が肺に由来する、(1)~(6)のいずれかに記載のマウス。
(8)(1)~(7)のいずれかに記載のマウスからなる、病態解析用又は薬剤スクリーニング用モデルマウス。
(9)病態ががんである(8)に記載のマウス。
(10)(1)~(9)のいずれかに記載のマウスからMAIT細胞を単離し、単離されたMAIT細胞を野生型マウスに移入することを特徴とする、MAIT細胞富化マウスの製造方法。
(11)(1)~(9)のいずれかに記載のマウスに候補物質を接触させることを特徴とする、がん転移抑制増強剤のスクリーニング方法。
(12)MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞の分化誘導により得られたMAIT様細胞を含む、がんの治療及び/又は予防剤。
本発明によれば、マウスMAIT細胞から人工多能性幹細胞を作製し、人工多能性幹細胞からマウスMAIT様細胞を作製することができる。当該MAIT様細胞を移入したマウスはMAIT様細胞が豊富であり、しかもがんの転移抑制、生存期間の延長を示す。またマウスMAIT細胞からの人工多能性幹細胞に由来する、MAIT細胞を豊富に有するVβ8マウスにおいても移植したがんの転移阻害と生存期間の延長が観察された。
MAIT-iPS細胞からのMAIT様細胞(以下、m-reMAIT細胞)の分化誘導とその表面抗原発現(一例)を示す図である。MAIT-iPS細胞をフィーダー細胞であるOP9/dlk-1上に播種し、中胚葉、リンパ球幼若細胞を経て、m-reMAIT細胞へと分化誘導した。m-reMAIT細胞はTCRβ+mMR1Tet+細胞として定義される。分化後のm-reMAIT細胞純度は92%以上(左図)でそのほとんどはCD4+CD8+のいわゆるdouble positive であった(中央図)。また本iPS細胞由来のm-reMAIT細胞のTCRβ鎖レパトワはVβ8であった(右図)。 m-reMAIT細胞移入によるメラノーマ肺転移の抑制を示す図である。m-reMAIT細胞(m-reMAIT細胞移入群)またはPBS(コントロール群)を腹腔内投与し、5日後にB16F10メラノーマを尾静脈経由で移植した。メラノーマ移植18日後に肺を摘出し、がん結節数を測定した。(A)各群の代表的な肺。コントロール群には多数の黒色のがん結節が認められた。(B)各群9匹ずつのマウスから得られた肺のがん結節数を顕微鏡下でカウントした(Mann-Whitney testによるP値=0.0006)。 m-reMAIT細胞移入による担がんマウス生存期間延長(カプラン・マイヤー曲線)を示す図である。B16F10メラノーマ移植マウス(破線)、m-reMAIT細胞移入+メラノーマ移植マウス(実線) P値はLog rank testによる。 m-reMAIT細胞移入による担がんマウス生存期間延長(カプラン・マイヤー曲線)を示す図である。肺がん細胞(LLC)移植マウス(破線)、m-reMAIT細胞移入+LLC移植マウス(実線) P値はLog rank testによる。 MAIT-iPS細胞由来キメラマウスを経由した新規マウス血液中におけるMAIT細胞量(割合)を示す図である。上図: 野生型マウス(C57BL/6)対立遺伝子におけるMAIT細胞TCR遺伝子座のゲノム配置(左)、Vβ8 マウス対立遺伝子におけるMAIT細胞TCR遺伝子座のゲノム配置(中央)、Vα19 マウス対立遺伝子におけるMAIT細胞TCR遺伝子座のゲノム配置(右)。下図: 野生型マウス(C57BL/6)におけるMAIT細胞量(丸囲みの数字はTCRβ+細胞中のmMR1Tet+細胞の割合)(左)、Vβ8マウス MAIT細胞特異的な遺伝子再構成済みVβ鎖(Vβ8.2-D1-J1.2)を片側の対立遺伝子にもつマウス末梢血でのMAIT細胞量(丸囲みの数字はTCRβ+細胞中のmMR1Tet+細胞の割合)(中央)、Vα19マウス MAIT細胞特異的な遺伝子再構成済みVα鎖(Vα19-Jα33)を片側の対立遺伝子にもつマウス末梢血でのMAIT細胞量(丸囲みの数字はTCRβ+細胞中のmMR1Tet+細胞の割合)(右)。 Vβ8マウス(遺伝的にMAIT細胞が豊富なマウス)における生存期間の延長(カプラン・マイヤー曲線)を示す図である。野生型(C57BL/6)マウス(破線)、Vβ8マウス (実線)に LLCを移植し、生存期間を測定した。P値はLog rank testによる。 MAIT細胞由来iPS細胞、Vα19マウス、Vβ8マウス中のTCR遺伝子座におけるTCRαおよびTCRβ遺伝子配置と野生型マウスにおけるTCRαおよびTCRβ遺伝子配置を示す図である。MAIT細胞由来iPS細胞やVα19マウスではMAIT細胞特異的なTCRαであるVα19とαJ33が遺伝子再構成された配置を有するが、野生型マウスではこの再構成は見られない。一方、MAIT細胞由来iPS細胞やVβ8マウスではMAIT細胞に多く見られるTCRβであるVβ8もしくはVβ6とD,Jが遺伝子再構成された配置を有するが、野生型マウスではこの再構成は見られない。P1-P6のプライマーを組みあわせることで、被検体中にMAIT細胞に特異的に遺伝子再構成が終了したTCR遺伝子座が存在するのかを明らかにすることができる。 図8は、Ly5.2m-reMAIT細胞(1.0 x106)を野生型マウス(C57BL/6)腹腔内に養子移入した群(「L7-1」とも記載する)と、非移入群に分けて、それぞれanti-CD8抗体を注入、又は対照として同容量のIgGを注入したマウスにLLC(3.0 x105)を尾静脈経由で移植した際の、マウスの生存期間を示す。縦軸はマウスの生存率、横軸は生存日数を表す。*はLog Rank test(Bonferroni法で多重比較の補正)による有意差ありを表す。 図9は、Ly5.2m-reMAIT細胞(1.0 x106)を野生型マウス(C57BL/6)腹腔内に養子移入した群(「L7-1」とも記載する)と、非移入群に分けて、それぞれ抗AsialoGM1抗体を注入したマウスにLLC(3.0 x105)を尾静脈経由で移植した際の、マウスの生存期間を示す。縦軸はマウスの生存率、横軸は生存日数を表す。*はLog Rank test(Bonferroni法で多重比較の補正)による有意差ありを表す。
1.概要
本発明は、マウスMAIT細胞をリプログラミング(初期化)してiPS細胞を得て、当該iPS細胞から分化誘導したMAIT様細胞(m-reMAIT)が移入された、MAIT細胞豊富なマウスに関する。また本発明は、前記MAIT細胞由来iPS細胞を胚移入したキメラ胚から作出したキメラマウスを介して樹立した、MAIT細胞豊富なVα19マウス及びVβ8マウスに関する。また、本発明はこれらのマウスの作製方法にも関する。m-reMAIT細胞を野生型マウスに養子移入した上でがんを移植すると、あるいはMAIT細胞が豊富なVβ8マウスにがんを移植すると、移植されたマウスは、野生型マウスに比較して、がんの肺転移抑制及びマウスの生存期間を有意に延長する効果が得られた。
MAIT細胞は、ヒトで最大の存在比率を有するT細胞であり、がん、感染症、自己免疫疾患、喘息、生活習慣病及び皮膚疾患等の病態制御に関与すると考えられている。しかし、MAIT細胞は疾患モデルで頻用されるマウスには極めて微量であることから、マウスでの機能解析は困難を極める。
本発明者は、マウスMAIT細胞を初期化(iPS化)させ、当該初期化したiPS細胞から大量のマウスMAIT様細胞(以下、「m-reMAIT細胞」ともいう)を分化誘導すると共に、キメラマウスを介して従前にないVα19マウス/Vβ8マウスというMAIT細胞豊富なマウスを樹立することに成功した。
m-reMAIT細胞を野生型マウスに養子移入すると、移植されたマウスは、移植されたがんの肺転移を抑制するのみならず、マウスの生存期間を有意に延長した。また、MAIT細胞が豊富なVβ8マウスにがんを移植した場合にも、同様の効果が発揮された。さらに、m-reMAIT細胞を養子移入したマウス、及びVβ8マウスにおける抗がん効果(転移阻害と生存期間延長)は、メラノーマ及び肺がんに対して観察された。この結果は、MAIT細胞による抗がん効果が「特定のがん抗原」に依存しないことを意味し、現行のChimeric antigen receptor(CAR)-T細胞を用いた治療法に比して、より適応範囲が広いという点で優位である。さらに、CAR-T細胞など適応免疫T細胞を拘束するMHCは多様性を呈するのに対し、MAIT細胞を拘束する分子であるMR1は単一性を示すことから、本発明により作製されたm-reMAIT細胞を用いた免疫細胞治療では、個体間で均一の効果を期待することができる。
2.マウスMAIT細胞のiPS化
本発明において「iPS細胞」とは、体細胞内に初期化因子(核初期化因子)を導入し発現させることにより人為的に分化多能性(pluripotency)及び自己複製能を獲得した細胞であり、ES細胞と類似した形質を有する細胞である。「分化多能性」とは、適当な条件下において全ての系譜の細胞に分化する能力をもった細胞と定義されるが、本発明の実施においては、必ずしも全ての系譜の細胞への分化能を有している必要はなく、MAIT細胞、及びその幹細胞又は前駆細胞への分化能を有し、その他1つ以上の細胞系列に分化し得る能力を有していれば良い。ES細胞と類似の形質とは、ES細胞に特異的な表面マーカー分子の存在やテラトーマ形成能等のES細胞に特異的な細胞生物学的性質やES細胞特異的な遺伝子の発現、又は対象細胞における多数の遺伝子群の発現様式の類似性の高さ等で規定することができる。一方、本発明で得られたMAIT細胞由来人工多能性幹細胞(iPS細胞)の多能性はキメラマウスの作製能力により、担保されている。
本発明において「MAIT細胞」とは、TCRα鎖遺伝子が特有かつ均一なVα-Jα(マウスではVα19-Jα33)で構成されているT細胞であり、より好ましくは、CD26やIL-18Rαを発現する細胞として規定することができる。また、MAIT細胞は、そのTCRが単一性のMR1によって拘束されることも特徴の一つである。さらに、MAIT細胞はTCRβ鎖遺伝子がある特定の組み合わせに偏っており、本発明で得られた一つのiPS細胞では遺伝子再構成済みVβ8. 2が見られたが、別のiPS細胞ではVβ6およびVβ5であった。
本発明において、初期化に使用するMAIT細胞は、マウス由来のものを使用することができる。ここで使用されるマウスとしては、例えばC57BL/6、Balb/c、C3H, DBA系統などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
生体内のMAIT細胞は増殖能が非常に貧弱であり、in vitroで増殖させる技術も確立されていないため、MAIT細胞は生体内から採取する必要がある。
採取部位は特に限定されるものではなく、例えば、臍帯血、末梢血、肺、肝臓、胸腺、脾臓、骨髄、腸管(粘膜固有層、パイエル板)などが挙げられるが、肺であることが好ましい。肺などの組織からMAIT細胞を採取した場合、臍帯血からMAIT細胞を採取した場合に比べてMAIT細胞を初期化して得られたiPS細胞(MAIT-iPS細胞)からMAIT様細胞への分化誘導効率がより高い可能性がある。
MAIT細胞は、例えば以下の方法により得ることができる。例えば、野生型マウスから組織を摘出した後に細断及び粉砕し、単細胞化する。この細胞から単核球を回収し洗浄する。MAIT細胞分画の回収は、例えばAPC-標識した5-OP-RU-loaded murine MR1 tetramer試薬と、抗APCビーズとMSカラムを用いて行うことができる。組織から回収した単核球分画にその他の免疫細胞が極めて多く存在する場合には、例えばビオチン標識したCD19、CD62L、Gr1、CD11b及びTCRγδ抗体の一つ以上で処理した後、陰性細胞集団を回収し、回収した細胞にmurine MR1 tetramer試薬を加えて上記の処理をすることもできる。その後、回収したMAIT細胞分画をCD44抗体、B220抗体、マウスF4/80抗体、TCRβ抗体で処理する。各抗体は標識してもよく、例えばCD44抗体はFITC標識してもよく、B220抗体及びマウスF4/80抗体はPE標識してもよく、TCRβ抗体はPE-Cy7標識してもよい。その後、MACSバッファー等で細胞を洗浄し、mMR1-Tet+TCRβ+B220-Gr1-CD44high(MAIT細胞)をセルソーターで精製する。
本発明において、MAIT細胞を初期化するための初期化因子(核初期化因子)としては、公知のものを使用することができ、タンパク性因子又はそれをコードする核酸(ベクターに組み込まれた形態を含む)、あるいは低分子化合物等のいかなる物質から構成されてもよい。例えば、山中因子として知られるOct3/4遺伝子産物、Klf4等のKlfファミリー遺伝子産物、c-Myc等のMycファミリー遺伝子産物、及びSox2等のSoxファミリー遺伝子産物の4因子を用いることができる(Takahashi K, Yamanaka S. (2006). “Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors”. Cell 126: 663-676. PMID 16904174)。また、Oct3/4遺伝子産物、Klfファミリー遺伝子産物、及びSoxファミリー遺伝子産物の3因子を導入した後に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)などの存在下で培養してiPS細胞を得ることもできる(WO2007/69666号参照)。
初期化因子をMAIT細胞に導入するための方法としては、上記の因子をタンパク質として導入する方法を採用することも、当該タンパク質をコードする核酸(DNA、RNA、DNA/RNAキメラ)の形態で用いることもできる。当該核酸(好ましくはcDNA)は、宿主となるMAIT細胞で機能し得るプラスミドベクターやウイルスベクターに挿入して発現ベクターを構築し、核初期化工程に供される。
発現ベクターとしては、MAIT細胞において初期化因子遺伝子の効率的な転写及び発現が可能であり、その後の初期化(iPS細胞化)を誘導できるものであれば限定されるものではないが、当該発明において好適な例としてセンダイウイルスベクターが挙げられる。センダイウイルスは、一本鎖の非分節型マイナス鎖RNAをゲノムとして有するウイルスであり、細胞生物学の分野で幅広く利用されてきたものである。センダイウイルスベクターは、多くの哺乳動物の細胞や組織に遺伝子を導入することができ、ベクターゲノムがRNAの状態で細胞質に留まるため宿主染色体に影響を与えずに済むというメリットがある。センダイウイルスベクターを構築するためのキット製品は市販されており、当業者であれば適宜入手することが可能である。
また、複数の初期化因子を導入するには、その1つ又は複数の遺伝子を個別のベクターに挿入したものを複数作製し、これら複数種のベクターを同時に処理することが一般的であるが、複数の初期化遺伝子を1つのベクターに搭載し、全ての遺伝子を発現し得るベクターを用いることもできる。
MAIT細胞を初期化して得られたiPS細胞(MAIT-iPS細胞)は、MAIT細胞特異的に遺伝子再構成が終了したTCRα鎖遺伝子及び/又はこのTCRα鎖と選択的に結合するTCRβ鎖遺伝子を対立遺伝子に有する点で、従来から存在するES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞とは異なる。
MAIT細胞特異的に遺伝子再構成が終了したTCRα鎖遺伝子を有している多能性幹細胞は、T細胞への分化を誘導し得る条件下におくことによってMAIT細胞と類似の特性を有するMAIT様細胞を選択的に産生する得ることができる。
なお、MAIT-iPS細胞は、公知の方法による細胞回収、分離、精製法などによって高純度かつ多量に回収することができる。
3.MAIT様細胞の分化誘導
本発明においては、MAIT-iPS細胞を分化誘導させることによりMAIT様細胞を得る。このようにして分化誘導された細胞は、MAIT細胞と類似の特性を有しており、MAIT細胞がマウスに由来することから、本発明において「m-reMAIT細胞」という。
m-reMAIT細胞は、mMR1-tetramer+ (5-OP-RUが提示されたMR1tetramer分子によって認識される)かつTCRβ+であるが、活性化マーカーであるCD44の発現は非常に弱いという特徴を有する。一方、MAIT細胞が富化されたマウス(Vβ8マウスとVα19マウス)では、MAIT細胞はmMR1-tetramer+ (5-OP-RUが提示されたMR1tetramer分子によって認識される)かつTCRβ+であるとともに、CD44は高発現であり、ナイーブマーカーであるCD62Lの発現は非常に低いという特徴を有する。
本発明において、分化誘導によってm-reMAIT様細胞を得るための培養法は、特に限定されるものではなく、例えば、フィーダー細胞との共培養法、浮遊培養法、ハンギングドロップ培養法、旋回培養法、軟寒天培養法、マイクロキャリア培養法などを挙げることができる。本発明の好ましい態様において、iPS細胞を分化誘導してm-reMAIT細胞を得るには共培養を行うことが好ましく、具体的には、OP9細胞などのストローマ細胞をフィーダー細胞として共培養し、さらに、Notchリガンドであるdelta-like 1(dlk-1)を強制発現させたOP9細胞(OP9/dlk-1)と共培養すること、又は最初からOP9/dlk-1細胞と共培養することによって、MAIT-iPS細胞から効率的にm-reMAIT細胞を得ることができる。
このようにして得られたm-reMAIT細胞は、公知の方法による細胞回収、分離、精製を行うことができる。m-reMAIT細胞を精製する方法は、公知となっている細胞の分離精製法であればいずれも用いることができるが、例えばフローサイトメーターや磁気ビーズ、パンニング法等の抗原-抗体反応に準じた方法や、ショ糖、パーコール等の担体を用いた密度勾配遠心による細胞分画法を挙げることができる。
本発明により得られたm-reMAIT細胞は、生体内のMAIT細胞とほぼ同等の形態学的、生理学的及び/又は免疫学的特徴を示す細胞である。MAIT様細胞であることの同定は、MAIT細胞に特異的な1つ又はそれ以上のマーカーの発現を確認することによって行うことができる。マーカーの発現は、抗体を用いた免疫染色法や逆転写酵素介在性ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ハイブリダイゼーション解析等の公知の細胞組織生物学的手法又は分子生物学的方法により確認することができる。
4.m-reMAIT細胞が養子移入されたマウス
一実施形態において、本発明は、マウス由来MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞の分化誘導により得られたMAIT様細胞を移入することにより得られる、MAIT細胞富化マウス、又は当該MAIT細胞富化マウスの作製方法に関する。
本発明によって樹立されたm-reMAIT細胞は、生体内MAIT細胞とほぼ同様の細胞表面抗原、遺伝子発現、サイトカイン産生能を備えており(下記)、マウスに移入することにより、腸管や脾臓、肝臓などの組織に局在する。
マウスへの移入は、1.0 x106 ~1.0 x107個の細胞を適当な緩衝液又はハンクス平衡塩溶液(HBSS)に懸濁し、これを腹腔内に、又は尾静脈経由で注入すればよい。
細胞表面抗原:5-OP-RUを提示するmouse MR1 tetramer試薬(NIHより入手)と抗マウスTCRαβ抗体
5.キメラマウスの作製
キメラマウスの作製は標準的な方法で行うことができる。本発明において使用されるマウスの種類は、特に限定されるものではない。例えば、Balb/c系統、ICR等が用いられる。本発明においては、取り扱い・繁殖が容易なICRが好ましい。
まず、系統樹立の目的となるMAIT-iPS細胞を胚内に移入することで、キメラ胚を作製する。このキメラ胚を偽妊娠仮親の子宮内に移植して出産させることによりキメラマウスを作製する。
ここで、m-reMAIT細胞を移入する対象となる「胚」は、個体発生における受精から出生までの段階の胚を意味し、2細胞期胚、4細胞期胚、8細胞期胚、桑実期胚、胚盤胞などを包含する。
m-reMAIT細胞を胚内に移入させる方法として、マイクロインジェクション法、凝集法などの公知手法を用いることができる。
キメラ胚の作製は、まず、ホルモン剤により過排卵処理を施した雌マウスを、雄マウスと交配させる。その後、例えば8細胞期胚を用いる場合には受精から2-2.5日目に、胚盤胞を用いる場合には受精から3.5-4日目に、それぞれ卵管又は子宮から初期発生胚を回収する。回収した胚に、m-reMAIT細胞を注入し、キメラ胚を作製する。
マイクロインジェクション法を採用する場合は、回収した胚に、MAIT-iPS細胞をインジェクターにて注入する。また、凝集法を採用する場合は、MAIT-iPS細胞を、透明帯を除去した正常胚と混合し、凝集させればよい。
一方、仮親にするための偽妊娠雌マウスは、正常性周期の雌マウスを、精管結紮などにより去勢した雄マウスと交配することにより得ることができる。作出した偽妊娠マウスに対して、上述の方法により作製したキメラ胚を子宮内移植し、その後出産させることによりキメラマウスを作製することができる。
このようなキメラマウスの中から、MAIT-iPS細胞由来の雄マウスを選択する。キメラ率が高い雄のキメラマウスが成熟した後、このマウスを純系マウス系統の雌マウスと交配させる。そして、誕生した子マウスに、MAIT-iPS細胞に由来するマウスの被毛色が現れることにより、MAIT 細胞由来の遺伝子再構成済みTCR遺伝子座がキメラマウスの生殖系列へ導入された可能性があると判断できる。
このようにして得られたマウスから、対立遺伝子にMAIT細胞特異的な遺伝子再構成が終了したTCRα鎖またはTCRβ鎖の遺伝子座を有する産仔をPCR法にて選別する。これらマウスを野生型マウスと交配し、その子孫から、対立遺伝子にMAIT細胞特異的TCRα鎖又はTCRβ鎖を有する本発明のマウスを得る。
ここで、TCRα鎖としては、Vα19及びJα33が挙げられ、TCRβ鎖としてはVβ、D及びJ遺伝子が挙げられる。Vβ遺伝子としては、Vβ8.2、Vβ8.1、Vβ8.3、Vβ6、Vβ5.1等が挙げられ、D遺伝子としてはD1,D2 等が挙げられ、J遺伝子としては、J1.2など12種類のJ断片(J1.1~J1.6とJ2.1~J2.6)が挙げられる。
これらは、Vα19断片とJα33断片が結合したVα19-Jα33、Vβ断片、D断片、J断片が結合したV(x)-D(y)-J(z)( y, zは上に記載した断片であるが、xは8、6、5が好ましい)といったゲノム配置を反映するものである。
本発明のMAIT細胞特異的TCRα鎖ではVα19及びJα33が隣接して片側の対立遺伝子上に配置されている。また、MAIT細胞特異的TCRβ鎖では、Vβ、D及びJ、例えばVβ8.2、D1及びJ1-2が隣接して片側の対立遺伝子上に配置されている(図7)。
本発明のマウスは、MAIT細胞に富んでおり、野生型マウスよりも多いMAIT細胞を有する。
従って、本発明は、上記の通り作製されたマウスからMAIT細胞を単離し、単離されたMAIT細胞を野生型マウスに移入することを特徴とする、MAIT細胞富化マウスの製造方法を提供する。
本発明のマウスからMAIT細胞を単離するには、前記「2.マウスMAIT細胞のiPS化」の項で説明した内容と同様の手法を採用することができる。
MAIT細胞を単離した後は、野生型マウスに対し、腹腔内投与、又は尾静脈経由によりMAIT細胞を移入する。
6. MAIT細胞を豊富に有するマウスを用いた解析
本発明のマウスは、種々の疾患研究用モデルマウスとして利用することができる。例えば、Vβ8マウスは抗がん効果を示すため、このマウスにがん細胞を移植してその転移度合いを指標とすることでがん転移抑制を増強する薬剤のスクリーニングに用いることができる。また、m-reMAIT細胞を養子移入したマウスやVβ8マウスは移植されたがんに対して生存延長を示すので、これらを用いて生存期間を延伸させるような薬剤をスクリーニングすることができる。
本発明のマウスは、例えばメラノーマや肺がん細胞の肺転移を抑制するため、この転移抑制活性をさらに増強する薬剤を抗がん剤としてスクリーニングすることができる。従って、本発明は、上記のとおり作製されたマウスに候補物質を接触させることを特徴とする、がん転移抑制増強剤のスクリーニング方法を提供する。
本発明は、具体的には以下の工程を含む。(a)本発明のマウスに候補物質を接触させる工程(b)前記接触させたマウスのがん転移抑制を検査する工程
候補物質は特に限定されず、既存の薬剤でもよく、その他に、ペプチド、低分子化合物、高分子化合物、これらの塩又は前駆体等のあらゆる形態にあってもよい。本発明において、「接触」とは、候補物質をマウスに投与する態様がある。投与には経口であると非経口であるとを問わない。すなわち、候補物質の投与経路は、薬剤の投与に一般的に採用されている経路であれば、特に限定されるものではなく、例えば経口、舌下、経鼻、経肺、経消化管、経皮、点眼、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、局所注射、外科的移植が挙げられ、好ましくは経口投与である。
工程(b)で検査の対象となる項目は、以下の(i)~(vii)の少なくとも一つである。
(i) がん転移の有無(程度の差異)
(ii) 転移先がん細胞の縮小 (iii) マウスの体重 (iv) マウスの摂食量 (v) マウス生存期間
上記項目の少なくとも1つが、候補物質の接触により改善した場合は、候補物質は、がん転移抑制薬として選択することができる。
例えば、本発明のマウスに転移抑制活性を有すると予想される候補を投与し、当該転移が抑制されたか否かを評価すればよい。
また、MAIT細胞はヒトの感染症、肥満・II型糖尿病、アレルギー、喘息、各種自己免疫疾患において病態制御に関わっていると考えられている。したがって、これら疾患モデルの解析を本発明のマウス(Vα19マウスとVβ8マウス)を使用して行うことで、従来のマウスモデルでは得られない疾患発症や病態に関する新規知見を取得できる。
例えばVα19マウスやVβ8マウスも用いて上記疾患モデルを作り出した時に、野生型マウスに比して病態の悪化が抑制される、もしくは促進される、等が期待でき、いずれの場合であってもその機序解明により、疾患に対する新知見を得ることができる。
7.抗がん剤およびがんの治療及び/又は予防法
一実施形態において、本発明は、MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞の分化誘導により得られたMAIT様細胞を含む、がんの治療及び/又は予防剤に関する。別の実施形態において、本発明は、MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞の分化誘導により得られたMAIT様細胞、又はがんの治療及び/又は予防剤を対象に投与することを含む、がんの治療及び/又は予防法に関する。MAIT細胞の由来は限定せず、例えば哺乳動物、例えばヒト等の霊長類、ラット、マウス、及びドブネズミ等の実験動物、ブタ、ウシ、ウマ、及びヒツジ等の家畜動物等が挙げられ、例えばヒトに由来してよい。
一実施形態において、本明細書に記載のがんの治療及び/又は予防剤、又はMAIT様細胞は、CD8 細胞を介さずに抗がん効果を奏する。一実施形態において、本明細書に記載のがんの治療及び/又は予防剤、又はMAIT様細胞は、NK細胞を介して抗がん効果を奏する。
本発明のがんの治療及び/又は予防剤は、本明細書に記載のMAIT様細胞に加えて、賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤等公知の薬学的に許容される担体、公知の添加剤(緩衝剤、等張化剤、キレート剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等)から選択される一つ以上の成分を含んでもよい。
本明細書において、がんの種類は限定しないが、例えば皮膚、肺、胃、膵臓、結腸直腸、肝臓、前立腺、膵臓、食道、膀胱、胆嚢・胆管、乳房、子宮、甲状腺、卵巣におけるがんであってよく、転移性がんであってもよい。
本明細書に記載のMAIT様細胞又はがんの治療及び/又は予防剤の投与経路は限定しないが、経口投与又は非経口投与のいずれであってもよく、例えば、静脈、筋肉、腹腔内、腫瘍内又は皮下注射;鼻腔、口腔又は肺からの吸入;又は坐剤、外用剤等により生体(対象となる細胞や臓器)に投与することもできる。
本明細書に記載のがんの治療及び/又は予防剤の形態は限定されず、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤であってよい。
本明細書に記載のがんの治療及び/又は予防剤の投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象、患者の年齢、体重、性別、症状その他の条件により適宜選択される。投与回数は限定されず、1日1回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。
本明細書に記載のMAIT様細胞又はがんの治療及び/又は予防剤の投与対象は、例えば哺乳動物、例えばヒト等の霊長類、ラット、マウス、及びドブネズミ等の実験動物、ブタ、ウシ、ウマ、及びヒツジ等の家畜動物等が挙げられ、例えばヒトである。
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
1.マウスからのMAIT細胞濃縮とiPS細胞化
6週齢C57BL/6(Ly5.2)雄マウス11匹から肺を摘出してPBSで洗浄した後、手術用ハサミで2-3ミリ角に細断し、組織分散溶液(4ml/3匹)(Hank’s平衡塩溶液中に 90U/mlコラゲナーゼ(ヤクルト、521843)、コラゲナーゼタイプII(Worthington, CLS-2)、ディスパーゼ(富士フイルム和光純薬、383-02281)、4% BSAを含む)に入れ、GentleMACS (Miltenyi BioTec社)のマウス肺細胞調製用プログラム1にて組織を粉砕し、組織溶液を回転させながら37℃で30分間インキュベートした。再度GentleMACSにてマウス肺細胞調製用プログラム2でさらに細断し、単細胞化した。これら細胞を100μMのセルストレナーを通してから遠心し、細胞を沈殿させた。沈殿細胞を8mlの40%(v/v)のパーコール溶液に懸濁して、3ml の67%(v/v) のパーコール溶液に重層し、400xgで20分間遠心した。
遠心後、中間層に存在する単核球を回収してPBSで洗浄した。遠心後、単核球細胞をMACSバッファー(0.5% BSA, 2mM EDTAを含むPBS)に懸濁し、ビオチン標識CD19(クローン6D5)、CD62L(クローンMEL-14)、Gr1(クローンRB6-8C5)、CD11b(クローンM1/70)及びTCRγδ抗体(クローンGL3)(いずれもBiolegend社、各4μg/ml)を添加して4℃、15分間反応させた。MACSバッファーで洗浄後、Mojo-sort streptoavidine beads(Biolegend社)とMSカラム(Miltenyi BioTec社)を用いて陰性細胞集団を回収した。回収した細胞をAPC-標識した5-OP-RU-loaded murine MR1 tetramer試薬(NIH tetramer core facilityより分与。以下、mMR1-Tet)を1.2μg/mlの最終濃度となるように加え、室温暗所で45分放置した。
その後FITC標識CD44抗体(クローンIM7、Biolegend社)、PE標識B220抗体(クローンRA3-6B2)、PE標識マウスF4/80抗体(クローンBM8)、PE-Cy7標識TCRβ抗体(クローンH57-597)(いずれもBiolegend社)を各0.25μg/1x106細胞/100μL となるよう添加し、室温暗所でさらに15分間放置した。標識後、MACSバッファーにて細胞を洗浄し、mMR1-Tet+TCRβ+B220-Gr1-CD44high(MAIT細胞)をセルソーター(BD社、FACS Jazz)で精製した。この時の純度は97%以上で、6,300個のMAIT細胞を得た。同様に10-12週齢C57BL/6(Ly5.1)雄マウス6匹の肺からmMR1-Tet+TCRβ+B220-Gr1-CD44high(MAIT細胞)を精製したところ純度97%以上で31,390個のMAIT細胞が得られた。
センダイウイルスベクターによるマウスMAIT細胞のiPS細胞化
iPS化因子を搭載したセンダイウイルス(KOSM302L)は産業技術総合研究所 中西 眞人博士より供与された。
上記の通り得られたMAIT細胞にKOSM302L(WO2012/063817)を感染させて、iPS細胞を得た。
(1)Ly5.2 MAIT細胞:6,300個の精製MAIT細胞を遠心し、抗CD3/CD28抗体(15μg/ml CD3ε(クローン145-2C11)、20μg/ml CD28(クローン37.51)いずれもBiolegend社)でコートした96穴プレートに移して、20μLのKOSM302L(8,000 pfu/μL)と80μLのcRPMI(10% (v/v)のFBS、10 mM HEPES-NaOH pH 7.4を含むRPMI培養液)に懸濁し、37℃で16 時間インキユベートした。遠心後、ウイルスに感染したMAIT細胞をマイトマイシン(MMC)処理されたマウス胎児線維芽細胞(MEF)がフィーダー細胞として播種された6穴プレートに移して、4 mLのマウスES細胞培地(StemSure DMEM (富士フイルム和光純薬)、15% (v/v)FBS (BioSera社)、x1 非必須アミノ酸(NEAA) (富士フイルム和光純薬), 2mMグルタミン酸(富士フイルム和光純薬)、100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシン (Lonza社)、1,000 U/mLマウスLIF(富士フイルム和光純薬)、0.1mM 2-メルカプトエタノール(富士フイルム和光純薬))中で4週間培養し、iPSコロニーを形成させた。2日毎に培地交換行い、培養3日目からiPS細胞のナイーブ化を目的としてCHIR99021 (富士フイルム和光純薬、最終濃度3μM)とPD0325901(富士フイルム和光純薬、最終濃度1μM)を添加した。最終的に46個のiPSコロニーを取得した。
(2)Ly5.1MAIT細胞:31,390個の精製
MAIT細胞を遠心し、20μLのKOSM302L(8,000 pfu/μL)と240μLのcRPMIで懸濁し、ゆっくりと振とうさせながら、37℃で2時間45分インキェベートした。遠心後、(1)と同様にしてiPSコロニーを形成し、最終的に36個のiPSコロニーを得た。
2.iPSコロニーのピックアップと保存
顕微鏡下で27ゲージの注射針を用いてiPSコロニーをMEFから物理的に引き剥がし、P20ピペット(Nichiryo)で吸引して、96穴プレートに分注した0.25 % (w/v)Trypsin-1mM EDTA(TE)(富士フイルム和光純薬) 80μL中に移した。37℃で30分間インキュベートし、120μLのcRPMIを加え、よく懸濁して遠心した。遠心後、iPS細胞をMMC処理したMEFが播種されている12穴プレートに移し、増殖させて凍結保存した。
3.iPSコロニーがMAIT細胞に由来することの証明
得られたiPS細胞がMAIT細胞に由来することはPCRを用いて証明した。すなわち、MAIT細胞由来のiPS細胞は遺伝子再構成済みのMAIT細胞特異的なTCR遺伝子座のゲノム配置を有する(図7)。MAIT細胞のTCRはα鎖とβ鎖で構成されており、α鎖はVα19-Jα33に限定される。一方、β鎖はVβ8やVβ6などレパトワが限定されるが一義的には決定されない。そこで下記プライマーセット1を使用することにより、遺伝子再構成が終了したVα19-Jα33をPCRで検出する。
プライマーセット1(P1と P3)の配列
P1: 5’-TCAACTGCACATACAGCACCTC-3’(配列番号1) P3: 5’-CATGCATTATTCAGCCAGTGCCTTCT-3’ (配列番号3)
また、下記プライマーセット2(P1とP2)を使用することで遺伝子再構成が終了していないVα19遺伝子をPCRで検出する。
プライマーセット2の配列
P1: 5’-TCAACTGCACATACAGCACCTC-3’ (配列番号1)
P2: 5’-AGCTGCAGAGGTTAGCACAG-3’ (配列番号2)
これらPCRの組み合わせからLy5.2 MAIT細胞から得られた46個のiPSコロニーが全て遺伝子再構成済みのVα19-Jα33を有しており、MAIT細胞由来であると確認できた。一方、同様な方法によってLy5.1MAIT細胞由来の36個のiPSコロニーを解析したところ、34個において遺伝子再構成済みのVα19-Jα33が確認された。
得られたiPS細胞を用いて多能性幹細胞からのT細胞分化誘導法に準じてマウスMAIT様細胞の分化誘導を行った(以下、m-reMAIT細胞)。具体的にはMAIT-iPS細胞(Ly5.2もしくはLy5.1由来)をTEで単細胞化し、コンフルエントになった2枚のOP9/dlk-1(10cm 培養皿)上に1.2 x105 細胞ずつ播種し、10% (v/v) FBS (Corning社)を含むαMEM (富士フイルム和光純薬)中で5日間培養して、中胚葉に誘導した。5日後にOP9/dlk-1を含む中胚葉を2 mlのTEで10分間処理して、単細胞化にした。同培地を8 ml添加し、よく懸濁して37℃で45分間静置した。上清に含まれる中胚葉を遠心にて回収して、ヒトFLT3リガンド(Biolegend社)を5 ng/mとなるよう添加し、コンフルエントになった2枚のOP9/dlk-1(10cm 培養皿)上に播種し、培養した。
3日後にリンパ球幼若細胞をピペティングによって回収し、コンフルエントになったOP9/dlk-1細胞(6穴プレート)上に蒔き直し、20% (v/v) FBS (BioSerum), ヒトFLT3リガンド(5ng/mL、Biolegend社), マウスIL-7 (1 ng/mL、Biolegend社)を含むαMEM (富士フイルム和光純薬)中で培養した。その後、リンパ球幼若細胞が増殖してきたら、これら細胞を10 cmの培養皿中でコンフルエントになったOP9/dlk-1上に移し、さらに増殖させ、フローサイトメトリー解析を行った。
その結果、3週間で純度92%以上(TCRβ+mMR1tet+で定義)のLy5.2m-reMAIT細胞が1.0 x108 以上、取得できた(図1)。Ly5.1m-reMAIT細胞もほぼ同様の分化パターンを示した。
4.m-reMAIT細胞を用いた抗がん効果
上記で得られたLy5.2m-reMAIT細胞(1.0 x106)を野生型マウス(C57BL/6)腹腔内に養子移入し、5日後にマウスメラノーマ(B16F10)を尾静脈経由で移植した。B16F10移植18日後にマウスを安楽死させ、肺に転移したがん結節数を測定したところ、B16F10のみを移植した対照群に比して、有意にがん転移が抑制されていた(図2A-2B)。
さらに同条件にてマウス生存を追跡したところ、Ly5.2m-reMAIT細胞を移入したマウスは非移入マウスに比して生存期間の有意な延長が見られ、これはLy5.1m-reMAIT細胞移入でも観察された(図3)。さらにLy5.2m-reMAIT細胞移入による生存延長はマウス肺がんLewis lung carcinoma(LLC)でも観察された(図4)。
5.キメラマウスを経由したMAIT細胞由来iPS細胞(MAIT-iPS細胞)からの新規モデルマウス
MAIT-iPS細胞を用いて、以下の通りキメラマウスを作製した。得られた46個(クローン)のLy5.2 MAIT-iPS細胞から3クローンを選択し、これをICRから調製した8細胞胚にインジェクションした。このインジェクションは特定非営利法人発生工学研究会(大阪大学微生物研究所)によって行われた。各クローンを10―20個の胚にインジェクトし、それぞれ3匹の仮腹メスマウスに戻した結果、全部で11匹のオスのキメラマウスが得られた。このうちキメラ率が60-90%のマウス1匹においてiPS細胞が始原生殖細胞(精子)への分化に寄与する生殖系列キメラであることが確認され、これを8週齢メスC57BL/6 (日本クレア)と交配させ、黒色の産仔を選択した。黒色の産仔はC57BL/6 MAIT細胞由来の遺伝子である遺伝子再構成済みTCR遺伝子座を受け継いでいる可能性があるので、これをPCRにて確認した。
得られた黒色産仔36匹から6匹がVα19-Jα33を、14匹がVβ8.2-D1-J1.2を、また4匹がVα19-Jα33とVβ8.2-D1-J1.2をその対立遺伝子中に有していた。Vα19-Jα33またはVβ8. 2-D1-J1.2を有するマウスはC57BL/6と交配させるとメンデルの法則に従い、産仔として野生型とこれら遺伝子配置を持つマウスを1対1の割合で産生した。Vα19-Jα33とVβ8.2-D1-J1.2の両方を持つマウスとC57BL/6とを交配したところ、産仔としてVα19-Jα33のみを有するマウス(Vα19マウス)、Vβ8.2-D-1-J1-2のみを有するマウス(Vβ8マウス)、野生型マウス、Vα19-Jα33とVβ8.2-D1-J1.2の両方を持つマウスが産生された。Vβ8.2-D1-J1.2遺伝子座を有するマウスは下記プライマーセット3(プライマーP4とP6)を用いたPCRにて検出可能である。
プライマーセット3
プライマー4: 5’-GTACTGGTATCGGCAGGAC-3’ (配列番号4)
プライマー6: 5’-GAGCCGAAGGTGTAGTCGG-3’ (配列番号6)
一方、野性型(遺伝子再構成の終了していない)のTCRβ遺伝子座は下記プライマーセット4(P4とP5)を用いたPCRにて検出可能である(図7)。プライマーセット4
プライマー4: 5’-GTACTGGTATCGGCAGGAC-3’ (配列番号4)
プライマー5: 5’-CTCATGCTGTGTGGTTCCTAGT-3’ (配列番号5)
Vα19マウス、Vβ8マウス、野生型C57BL/6マウスの頬静脈から50μL採血し、5μL EDTA (100 mM)が入った1.5 mlチューブに移した。攪拌後、20μLを別の1.5 mlチューブに入れて、PE標識抗B220抗体(0.05μg)、PE標識抗Gr1抗体(0.05μg)、APC標識mMR1tet(0.012μg) PE-Cy7標識マウスTCRβ抗体(0.05μg) と混合し、室温暗所で45分間インキェベートした。次にBD Lysing solution (BD Bioscience社)を300μL添加し、よく攪拌して、10分間室温で静置した。1mLのFACSバッファーを添加して遠心を行い、上清を捨てて、細胞を100μLのFACSバッファーに懸濁し、MACS Quant(Miltenyi BioTec社)にてフローサイトメトリー解析を行った。
その結果、これらマウスはC57BL/6に比して、数十倍から数百倍のMAIT細胞を有していた(図5)。
6. Vβ8マウスを用いた抗がん効果
Vβ8マウスを用いて上記2の抗がん効果(がんのみ移植)を測定した。
B16F10メラノーマの場合は2 x105 細胞を尾静脈経由で移植し、LLC肺がんの場合は3 x105 細胞を尾静脈経由で移植した。
その結果、B16F10に対するがん転移抑制能は野生型マウスに比して有意に優れていた。また、LLCがん移植後の生存期間も野生型マウスに比して有意な延長が観察された(図6)。
以上の結果からMAIT細胞は抗がん効果(がん抗原特異的ではない)を有すると結論でき、m-reMAIT細胞はがんの細胞治療法として活用でき、マウスのPOC(Proof of Concept)を示すことができた。
7. m-reMAIT細胞を用いた抗がん効果の作用機序
「4.m-reMAIT細胞を用いた抗がん効果」に記載された方法と同様にLy5.2m-reMAIT細胞(1.0 x106)を野生型マウス(C57BL/6)腹腔内に養子移入し、Ly5.2m-reMAIT細胞移入群(「L7-1」とも記載する)と非移入群にそれぞれCD8細胞をマウスから除去するモノクローナル抗体(anti-CD8)を注入、又は対照として同容量のIgGを注入したマウスにLLC(3.0 x105)を尾静脈経由で移植してマウスの生存期間を測定した。より具体的にはLLC投与5日前に1.0 x106L7-1を投与し、LLC投与前日に200μgのanti-CD8抗体(clone 2.43:Bio X cell)もしくは同量のrat IgG2b isotype control (clone LTF2: Bio X cell) を腹腔内投与した。LLC投与後、7日後、14日後にanti-CD8抗体もしくはcontrol IgGを同量投与して生存期間測定を行なった。
結果を図8に示す。縦軸はマウスの生存率、横軸は生存日数を表す。各群間の統計計算はLog Rank testを用いて行い、Bonferroni法で多重比較の補正をし、P<0.05 を統計的有意差あり(*)と判定した。図4と同様にreMAIT細胞を養子移入した群では、IgGを注入してもreMAIT細胞を移入しなかった群に比べて生存日数が延長している(L7-1+IgGとIgGの比較)。また、reMAIT細胞を養子移入した群では、anti-CD8を注入してCD8細胞を個体から削除したものでもreMAIT細胞を移入しなかった群に比べて生存日数が延長している(L7-1+anti-CD8とanti-CD8の比較)。よって細胞傷害性T細胞であるCD8 T細胞を含むCD8 細胞は、reMAIT細胞による抗がん効果には関与しないことが示された。
続いて、上記と同様に、Ly5.2m-reMAIT細胞(1.0 x106)を野生型マウス(C57BL/6)腹腔内に養子移入し、Ly5.2m-reMAIT細胞移入群(「L7-1」とも記載する)と非移入群にそれぞれナチュラルキラー(NK)細胞を個体から除去するウサギポリクローナル抗体(rabbit anti-AsialoGM1:富士フィルム anti-AGM1と記載)を注入した上でLLC(3.0 x105)を尾静脈経由で移植してマウスの生存期間を測定した。より具体的にはLLC投与5日前に1.0 x106L7-1を腹腔内投与し、LLC投与前日に50μlのanti-AGM1(rabbit anti-asialoGM1:富士フィルム)を腹腔内投与した。LLC投与後、14日後に同量の抗体を投与して生存期間測定を行なった。
結果を図9に示す。縦軸はマウスの生存率、横軸は生存日数を表す。各群間の統計計算はLog Rank testを用いて行い、 Bonferroni法で多重比較の補正をし、P<0.05 を統計的有意差あり(*)と判定した。図4は、reMAIT細胞養子移入によって観察されたマウス生存期間延伸(none/noneのL7-1/noneの比較)は、anti-AGM1の注入によってキャンセルされる(L7-1/noneとL7-1/anti-AGM1の比較)ことがわかる。よって、reMAIT細胞による抗がん効果(生存期間の延伸)はNK細胞を介したものであることが示された。
配列番号1~6:合成DNA

Claims (10)

  1. マウス肺由来MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞の分化誘導により得られたMAIT様細胞を移入してなる、MAIT細胞富化マウス。
  2. MAIT様細胞の移入が、腹腔内への又は尾静脈経由による移入である、請求項1に記載のマウス。
  3. マウス由来MAIT細胞が初期化された人工多能性幹細胞を胚移入したキメラ胚由来のMAIT細胞富化マウスであって、MAIT細胞特異的にTCR遺伝子が再構成されたゲノム配置をその対立遺伝子に持ち、前記MAIT細胞が肺に由来する、前記マウス。
  4. Vα19遺伝子及びJα33遺伝子が隣接するように再構成された対立遺伝子を有する、請求項3に記載のマウス。
  5. Vβ遺伝子、D遺伝子及びJ遺伝子が隣接するように再構成された対立遺伝子を有する、請求項3に記載のマウス。
  6. Vβ8.2遺伝子、D1遺伝子及びJβ1.2遺伝子が隣接するように再構成された、請求項5に記載のマウス。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のマウスからなる、病態解析用又は薬剤スクリーニング用モデルマウス(但し、MAIT様細胞のみを移入された免疫不全マウスを除く)。
  8. 病態ががんである請求項7に記載のマウス。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載のマウスからMAIT細胞を単離し、単離されたMAIT細胞を野生型マウスに移入することを特徴とする、MAIT細胞富化マウスの製造方法。
  10. 請求項1~8のいずれか1項に記載のマウスに候補物質を接触させることを特徴とする、がん転移抑制増強剤のスクリーニング方法。
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