JP7047189B2 - 固形乳 - Google Patents

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Description

本発明は、固形食品及び固形乳に関する。
固形食品として、粉乳を圧縮成型した固形乳が知られている(特許文献1及び特許文献2参照)。この固形乳は、温水中に投入することで速やかに溶解する溶解性が要求されるとともに、輸送適性、即ち輸送中や携行中に割れたり崩れたりする破壊が生じないような破壊耐性が要求されている。
特許文献1には、平坦な領域を有する上面と、上面の平坦な領域と平行である平坦な領域を有する下面と、上面及び下面のいずれか又は両方に設けられた窪み部を有する食品(固形乳)が開示されている。
特許文献2には、液状乳に気体を分散させ、噴霧乾燥させて粉乳を形成し、得られた粉乳を圧縮成型して固形乳を形成する固形乳の製造方法が開示されている。特許文献2には、市販のロードセル式錠剤硬度計により、破断端子で直方体状の固形乳を一定速度で押し、固形乳が破断したときの荷重[N]を求め、その荷重を固形乳の硬度[N]とする旨の記載がある。
特許第5350799号公報 特許第5688020号公報
ところで、固形食品及び固形乳は、輸送、店頭及び家庭等で扱われる際、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止する目的で、輸送適性を向上することが求められている。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる固形食品及び固形乳を提供することを目的とする。
本発明の固形食品は、粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品を落下面に落下させる落下試験を前記固形食品が破壊されるまで繰り返し行ったときに、前記落下試験の落下エネルギー密度を前記固形食品の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、前記EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、前記EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超えるものである。
本発明の固形乳は、粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳を落下面に落下させる落下試験を前記固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、前記落下試験の落下エネルギー密度を前記固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、前記EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、前記EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超えるものである。
本発明の固形食品によれば、落下試験において単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超えることにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
本発明の固形乳によれば、落下試験において単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超えることにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
実施の形態に係る固形乳の斜視図である。 図1の固形乳のX1-X2における断面図である。 図1の固形乳のY1-Y2における断面図である。 固形乳の本体内部より硬い外表面を確認する掻き出し試験を行った結果を示す写真である。 変形例1に係る固形乳の斜視図である。 図5の固形乳のX1-X2における断面図である。 図5の固形乳のY1-Y2における断面図である。 変形例2に係る固形乳の斜視図である。 図8の固形乳のX1-X2における断面図である。 図8の固形乳のY1-Y2における断面図である。 変形例3に係る固形乳の斜視図である。 図11の固形乳のX1-X2における断面図である。 図11の固形乳のY1-Y2における断面図である。 比較例に係る固形乳の斜視図である。 図14の固形乳のX1-X2における断面図である。 図14の固形乳のY1-Y2における断面図である。 第1実施例に係る単位破断応力あたりの落下エネルギー密度に対する破壊に至る落下回数を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、以下説明する形態は、あくまで例示であって、当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
<実施の形態>
(固形乳10Sの構成)
図1は、本実施の形態に係る固形乳10Sの斜視図である。図2は、図1のX1-X2におけるYZ平面に平行な断面図である。図3は、図1のY1-Y2におけるXZ平面に平行な断面図である。
固形乳10Sは、粉乳を圧縮成型した固形状の本体10を有する。本体10は、XY平面に平行で平坦な第1面10Aと、XY平面に平行で平坦な第2面10Bとを有する。第1面10Aと第2面10Bとは背中合わせの面である。本体10の形状は、圧縮成型に用いる型(打錠機の臼)の形状によって定まるが、ある程度の寸法(大きさ、厚さ、角度)をもつ形状であれば特に限定されない。本体10の概略形状は、円柱状、楕円柱状、立方体状、直方体状、板状、多角柱状、多角錐台状あるいは多面体状等である。成型の簡便さや運搬の便利さ等の観点から、円柱状、楕円柱状及び直方体状が好ましい。図1~図3に示した固形乳10Sの本体10の概略形状は、寸法がa×b×c(図1参照)である直方体状であり、本体10はXZ平面又はYZ平面に平行な側面10Cを有する。
上記の背中合わせの面とは、一面と他の一面の位置関係が、上記の孔を貫通させられる位置関係にあれば良い。一例では、背中合わせの面とは、互いに直接には連接しておらず、一面と他の一面が、それら以外の面を介して連接している位置関係であり、また別の一例では、背中合わせの面とは、一面と曲面を含む他の一面とが直接連接している位置関係である。背中合わせの面は、必ずしも平行の位置関係ではない。
本体10には、第1面10Aから第2面10Bに達して本体10を貫通する孔11が設けられている。孔11の数は少なくとも1つであり、図1は孔11を1つ有する場合を示している。孔11の形状は、例えばXY平面に平行な断面において、長円形、角丸長方形、楕円形、円形、長方形、正方形、あるいはその他の多角形である。図1に示した固形乳10Sでは、孔11の形状が長円形である。孔11の形状が長方形や正方形のように角を有する形状の場合、角が丸められた形状であってよい。孔11の大きさは、本体10の直方体状の形状の体積から孔11の部分の容積を差し引いた体積が所定の値となるように選択される。
孔11の位置は、第1面10Aの中央の位置から見たときに大きな偏りがない位置であることが好ましい。例えば第1面10Aの中央の位置に対して点対称となる配置、あるいは第1面10Aの中央を通るX軸と平行な線又はY軸と平行な線に対して線対称となる配置が好ましい。孔11が1つの場合は、孔11は第1面10Aの中央に設けられる。孔11は、第1面10Aの中央部において長円形の長手方向がX軸と平行な方向となるように配置されている。第2面10Bから見た場合でも同様である。孔11が本体10を貫通する方向は、第1面10A及び第2面10Bを通過する方向であり、例えばZ軸に対して略平行な方向である。
本実施の形態の固形乳10Sにおいて、第1面10A、第2面10B及び孔11の内壁面11Aは、本体10の内部より硬い外表面である。孔11の内壁面11Aは、第1面10Aと第2面10Bとの間に設けられた筒状の柱を構成する。本体10の側面10Cも、同様に本体10の内部より硬い外表面である。外表面の硬さの指標となる本体10の内部とは、例えば孔11が設けられていない部分での第1面10Aからの距離と第2面10Bからの距離が等しい位置であり、かつ、孔11の内壁面11Aからの距離と側面10Cからの距離が等しい位置である。ここで、孔11の内壁面11A及び側面10Cは互いに対向する面である。本実施の形態の固形乳10Sの外表面は、コーティング等は設けられていないが、後述のように粉乳圧縮成型物に硬化処理が施されていることにより、本体10の内部より硬い層となっている。本体10の外表面が内部より硬い層であることの確認方法は、例えば以下のようにして行うことができる。図4は、固形乳の本体内部より硬い外表面であることを確認する掻き出し試験を行った結果を示す写真である。掻き出し試験では、固形乳の本体10を任意の位置、好ましくは孔11が設けられていない部分での第1面10Aからの距離と第2面10Bからの距離が等しい位置であり、かつ、孔11の内壁面11Aからの距離と側面10Cからの距離が等しい位置を含む断面で切断する。露出した断面において、任意の掻き出し治具により本体10の内部の柔らかい部分を掻き出す。ここで、掻き出す力を一定に保つことで、相対的に硬い部分を残して、柔らかい部分のみを掻き出すようにする。この結果、図4に示すように、本体10の内部の柔らかい部分が除去され、本体10の硬い外表面が残された状態とすることができる。このように、本体10の外表面は、本体10の内部より硬い層となっている。つまり、本体10の外表面が本体10の内部より硬い層であるとは、薄層を剥離するのに必要となる力が、本体10の内部よりも本体10の表面近傍の方が相対的に大きいことを指す。
表面とは、物質の外側を成す面である。表層とは、表面を含む表面近傍の層である。本実施形態においては、固形乳10Sの外表面とは、表面を含む表面近傍の層、即ち、表層を指すものである。
第1面10A及び側面10Cから構成される本体10の角部と、第2面10B及び側面10Cから構成される本体10の角部とは、面取りがなされてテーパー状の斜面となっている。同様に、第1面10A及び孔11の内壁面11Aから構成される孔11の縁の角部と、第2面10B及び内壁面11Aから構成される孔11の縁の角部とは、面取りがなされてテーパー状の斜面となっている。上記の本体10の角部及び孔11の縁におけるテーパー状の斜面は、いずれも本体の内部より硬い外表面である。また、側面10CにおけるYZ平面に平行な面及びXZ平面に平行な面から構成される角部は丸められた形状であってよい。角部が面取りをされていること、あるいは丸められていることにより、運搬する際等で固形乳10Sが壊れる事態を抑制することができる。
本実施の形態の固形乳10Sは、固形乳10Sを構成する本体10を貫通する少なくとも1つの孔11が設けられ、孔11の内壁面が本体10の第1面10A及び第2面10Bと同様に本体の内部より硬い外表面である。これにより、本実施の形態の固形乳10Sは、固形乳を落下面に落下させる落下試験を固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、落下試験の落下エネルギー密度を後述する固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える構成となっている。ここで、「破壊」とは、落下時に破損が生じて固形乳の重量が初期重量の9%以上減少し、かつ破損した面が4面に広がった状態となったことを指す。
本実施形態の固形乳は、好ましくは、固形乳を落下面に落下させる落下試験を固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、落下試験の落下エネルギー密度を後述する固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が4回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が13回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が40回を超える。さらに好ましくは、固形乳を落下面に落下させる落下試験を固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、落下試験の落下エネルギー密度を後述する固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が5回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が17回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が50回を超える。
例えばXY平面に平行な断面において孔11が円形あるいは略円形である場合の孔11の径、あるいは、孔11が長円等の細長い形状の場合の短軸あるいは短辺方向の孔11の開口幅は、1.5mm以上であり、好ましくは2.0mm以上であり、さらに好ましくは3.0mm以上である。孔11の径あるいは開口幅の上限は、固形乳10Sの第1面10A及び第2面10Bの長辺方向については長辺の半分の長さ(a/2)であり、短辺方向については短辺の半分の長さ(b/2)である。孔11の貫通する方向は、第1面10A及び第2面10Bの法線となす角が0°以上30°以下の範囲であり、好ましくは第1面10A及び第2面10Bの法線となす角が0°以上10°以下の範囲である。第1面10A及び第2面10Bの法線となす角が0°の方向とは、第1面10A及び第2面10Bの法線方向、即ち第1面10A及び第2面10Bに対して垂直な方向である。第1面10A及び孔11の内壁面11Aから構成される孔11の縁の角部と、第2面10B及び内壁面11Aから構成される孔11の縁の角部とに設けられたテーパー状の斜面の角度は、第1面10A及び第2面10Bに対して15°から75°の範囲であり、好ましくは第1面10A及び第2面10Bに対して30°から60°の範囲である。例えばXY平面に平行な断面における孔11の形状は、円形や略円形の他、八角形、七角形、六角形、五角形、四角形、三角形等の多角形でも良く、ハート形、星形、スペード型、クローバー型等の任意の形状であってよい。
固形乳10Sに形成された孔11の数は少なくとも1つであり、図1に示した固形乳の孔11の数は1つである。孔11の数は、好ましくは、1~6個である。より好ましくは、2~6個であり、孔11の数が6つの構成を好ましく適用することができる。
固形乳10Sの成分は、基本的には原料となる粉乳の成分と同様である。固形乳10Sの成分は、例えば、脂肪、たん白質、糖質、ミネラル、ビタミン及び水分等である。
粉乳は、乳成分(例えば牛乳の成分)を含む液体状の乳類(液状乳)から製造されたものである。乳成分は、例えば、生乳(全脂乳)、脱脂乳及びクリーム等である。液状乳の水分含有率は、例えば40重量%~95重量%である。粉乳の水分含有率は、例えば1重量%~4重量%である。粉乳は、後述の栄養成分が添加されていてよい。粉乳は、固形乳10Sを製造するために適したものであれば、全粉乳、脱脂粉乳、又はクリーミーパウダーであってもよい。粉乳の脂肪含有率は、例えば5重量%~70重量%であることが好ましい。
上記の粉乳の原料となる乳成分は、例えば生乳由来のものである。具体的には、牛(ホルスタイン、ジャージー種その他)、山羊、羊及び水牛等の生乳由来のものである。上記の生乳には脂肪分が含まれているが、脂肪分の一部又は全部が遠心分離等により取り除かれた脂肪含有率が調節された乳であってもよい。
さらに、上記の粉乳の原料となる乳成分は、例えば植物由来の植物性乳である。具体的には、豆乳、ライスミルク、ココナッツミルク、アーモンドミルク、ヘンプミルク、ピーナッツミルク等の植物由来のものである。上記の植物性乳には脂肪分が含まれているが、脂肪分の一部又は全部が遠心分離等により取り除かれた脂肪含有率が調節された乳であってもよい。
上記粉乳の原料となる栄養成分は、例えば、脂肪、たん白質、糖質、ミネラル及びビタミン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
上記の粉乳の原料となり得るたん白質は、例えば、乳たん白質及び乳たん白質分画物、動物性たん白質、植物性たん白質、それらのたん白質を酵素等により種々の鎖長に分解したペプチド及びアミノ酸等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。乳たん白質は、例えば、カゼイン、乳清たん白質(α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン等)、例えば、乳清たん白質濃縮物(WPC)及び乳清たん白質分離物(WPI)等である。動物性たん白質は、例えば、卵たん白質である。植物性たん白質は、例えば、大豆たん白質及び小麦たん白質である。アミノ酸は、例えば、タウリン、シスチン、システイン、アルギニン及びグルタミン等である。
上記の粉乳の原料となり得る脂肪(油脂)は、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT(Medium Chain Triglyceride)油等である。
上記の粉乳の原料となり得る糖質は、例えば、オリゴ糖、単糖類、多糖類及び人工甘味料等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。オリゴ糖は、例えば、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ラクチュロース等である。単糖類は、例えば、ブドウ糖、果糖及びガラクトース等である。多糖類は、例えば、デンプン、可溶性多糖類及びデキストリン等である。なお、糖質の人工甘味料に替えて、或いは加えて、非糖質の人工甘味料を用いてもよい。
上記の粉乳の原料となり得るミネラル類は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、及び亜鉛等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。なお、ミネラル類のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、及び亜鉛に替えて、或いは加えて、リン及び塩素の一方又は両方を用いてもよい。
固形乳10Sには、固形乳10Sの原料である粉乳を圧縮成型した時に生じた空隙(例えば細孔)が多数存在している。これら複数の空隙は、固形乳10Sにおいて一様に分散(分布)していることが好ましく、これにより、固形乳10Sを偏りなく溶解させることができ、固形乳10Sの溶解性を高めることができる。ここで、空隙が大きい(広い)ほど、水等の溶媒の侵入が容易となるため、固形乳10Sを速く溶解させることができる。一方、空隙が大きすぎると、固形乳10Sの硬度が弱くなるか、固形乳10Sの表面が粗くなることがある。各空隙の寸法(大きさ)は、例えば10μm~500μmである。なお、各空隙の寸法(大きさ)や多数の空隙の分布は、例えば走査型電子顕微鏡を用いて固形乳10Sの表面及び断面を観察する等の公知の手段により測定することができる。このような測定によって、固形乳10Sの空隙率を定めることができる。
固形乳10Sの空隙率は、例えば30%~60%である。空隙率が大きいほど、溶解性は高まるが、硬度(強度)が弱くなる。また、空隙率が小さいと、溶解性が悪くなる。固形乳10Sの空隙率は、30%~60%の範囲内に限られることはなく、その用途等に応じて適宜調整される。
固形乳10Sは、水等の溶媒に対してある程度の溶解性を持っている必要がある。溶解性は、例えば溶質としての固形乳10Sと、溶媒としての水とを所定の濃度となるように用意したときに、固形乳10Sが完全に溶けるまでの時間や所定時間における溶け残り量で評価することができる。
固形乳10Sは所定範囲の硬度を有することが好ましい。硬度は、公知の方法で測定できる。本明細書においては、ロードセル式錠剤硬度計を用いて硬度を測定する。ロードセル式錠剤硬度計に直方体状をなす固形乳10Sの第2面を底面として載置し、側面10CのXZ平面に平行な1面およびYZ平面に平行な1面を用いて固定して、側面10CのXZ平面に平行な固定していないもう一方の面側から硬度計の破断端子で第1面10A短軸方向(図1のY軸方向)にYZ平面が破断面となる向きに一定速度で押し、固形乳10Sが破断した時の荷重[N]をもって固形乳10Sの硬度(錠剤硬度)[N]とする。例えば、岡田精工(株)製のロードセル式錠剤硬度計(ポータブルチェッカーPC-30)を用いる。硬度計に組み込まれた破断端子は、固形乳10Sに接触する接触面を有する。破断端子の有する接触面は、1mm×24mmの長方形であり、この長方形の長辺がZ軸に平行となる向きに配置される。この破断端子の有する接触面は、少なくとも一部で固形乳10Sの測定点を押すように構成されている。破断端子が固形乳10Sを押す速度を0.5mm/sとする。上記の硬度の測定は、固形乳10Sに限らず、後述の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度を測定する場合にも適用できる。上記のように測定される硬度に関して、固形乳10Sを運搬する際等に固形乳10Sが壊れる事態を極力避けるため、固形乳10Sの硬度は20N以上であることが好ましく、より好ましくは40N以上である。一方、固形乳10Sの硬度が高すぎると固形乳10Sの溶解性が悪くなることから、固形乳10Sの硬度は100N以下であることが好ましく、より好ましくは70N以下である。
ここで使用する硬度は、[N(ニュートン)]の単位を持つ力の物理量である。硬度は固形乳試料の破断面積が大きいほど大きくなる。ここで、「破断」とは、固形乳10S等の試料に静的に垂直荷重をかけたときに破損することを指し、この破損した際にできた断面積を「破断面積」と称する。つまり、硬度[N]は固形乳試料の寸法に依存する物理量である。固形乳試料の寸法に依存しない物理量として破断応力[N/m]がある。破断応力は破断時に単位破断面積あたりにかかる力であり、固形乳試料の寸法に依存せず、寸法の異なる固形乳試料間でも固形乳試料にかかる力学的な作用を比較できる指標である。例えば固形乳10Sの場合、理想的な破断面積は、固形乳の最小破断面積となる寸法b×cで表され、破断応力=硬度/破断面積となる。本明細書では簡易的に硬度[N]を用いて説明をしている場合があるが、これらは硬度を破断面積で除した破断応力[N/m]として表してもよい。例えば、固形乳10Sの概略形状の寸法が、31mm(a)×24mm(b)×12.5mm(c)の直方体状である場合、理想的な破断面積は300mm(24mm(b)×12.5mm(c))である。上記の20N以上100N以下という固形乳10Sの好ましい硬度範囲は、硬度を破断面積(300mm)で除して、0.067N/mm以上0.33N/mm以下という好ましい破断応力範囲に対応する。
上記の固形乳10Sの好ましい破断応力の範囲は、破断面積の範囲を考慮すると、0.067N/mm以上0.739N/mm以下である。
(固形乳10Sの製造方法)
続いて固形乳10Sの製造方法について説明する。まず、固形乳10Sの原料となる粉乳を製造する。粉乳の製造工程では、例えば液状乳調製工程、液状乳清澄化工程、殺菌工程、均質化工程、濃縮工程、気体分散工程及び噴霧乾燥工程により、粉乳を製造する。
液状乳調製工程は、上記の成分の液状乳を調製する工程である。
液状乳清澄化工程は、液状乳に含まれる微細な異物を除去するための工程である。この異物を除去するためには、例えば遠心分離機やフィルター等を用いればよい。
殺菌工程は、液状乳の水や乳成分等に含まれている細菌等の微生物を死滅させるための工程である。液状乳の種類によって、実際に含まれていると考えられる微生物が変わるため、殺菌条件(殺菌温度や保持時間)は、微生物に応じて適宜設定される。
均質化工程は、液状乳を均質化するため工程である。具体的には、液状乳に含まれている脂肪球等の固形成分の粒子径を小さくして、それらを液状乳に一様に分散させる。液状乳の固形成分の粒子径を小さくするためには、例えば液状乳を加圧しながら狭い間隙を通過させればよい。
濃縮工程は、後述の噴霧乾燥工程に先立って、液状乳を濃縮するための工程である。液状乳の濃縮には、たとえば真空蒸発缶やエバポレーターを用いればよい。濃縮条件は、液状乳の成分が過剰に変質しない範囲内で適宜設定される。これにより、液状乳から濃縮乳を得ることができる。続いて、本実施の形態では、濃縮された液状乳(濃縮乳)に気体を分散させ、噴霧乾燥することが好ましい。このとき、濃縮乳の水分含有率として、例えば、35重量%~60重量%があげられ、好ましくは、40重量%~60重量%であり、より好ましくは40重量%~55重量%である。このような濃縮乳を用いて、気体を分散させた際に、液状乳(濃縮乳)の密度を低下させて嵩高くし、そのように嵩高くした状態の濃縮乳を噴霧乾燥することで、固形乳を製造する際に、好ましい特質を有する粉乳を得ることができる。なお、液状乳の水分が少ない場合や噴霧乾燥工程の対象となる液状乳の処理量が少ない場合には、本工程を省略してもよい。
気体分散工程は、液状乳(濃縮乳)に、所定の気体を分散させるための工程である。このとき、所定の気体としては、たとえば液状乳の体積の1×10-2倍以上7倍以下の体積で分散させることがあげられ、好ましくは、液状乳の体積の1×10-2倍以上5倍以下の体積であり、より好ましくは、液状乳の体積の1×10-2倍以上4倍以下であり、最も好ましくは、1×10-2倍以上3倍以下である。
所定の気体を液状乳に分散させるために、所定の気体を加圧することが好ましい。所定の気体を加圧する圧力は、当該気体を液状乳へ効果的に分散させることができる範囲内であれば特に限定されないが、所定の気体の気圧として、例えば1.5気圧以上10気圧以下があげられ、好ましくは2気圧以上5気圧以下である。液状乳は以下の噴霧乾燥工程において噴霧されるため、所定の流路に沿って流れており、この気体分散工程では、この流路に加圧した所定の気体を流し込むことで、当該気体を液状乳に分散(混合)させる。このようにすることで、所定の気体を濃縮乳としての液状乳に容易にかつ確実に分散させることができる。
このように、気体分散工程を経ることにより、液状乳(濃縮乳)の密度は低くなり、見かけの体積(嵩)は大きくなる。なお、液状乳の密度は、液状乳の重さを、液体状態と泡状態の液状乳全体の体積で除したものとして求めてもよい。また、JIS法に準拠したカサ密度測定(顔料:JISK5101準拠)方法により、密度を測定する装置を用いて測定してもよい。
したがって、上記の流路には、所定の気体が分散状態にある液状乳が流れることになる。ここで、当該流路において、液状乳の体積流量は、一定となるように制御されていることが好ましい。
本実施の形態では、所定の気体として二酸化炭素(炭酸ガス)を用いることができる。当該流路において、液状乳の体積流量に対する二酸化炭素の体積流量の比率(以下、その百分率を「CO混合比率[%]」ともいう)として、例えば1%以上700%以下があげられ、2%以上300%以下が好ましく、3%以上100%以下がより好ましく、最も好ましくは、5%以上45%以下である。このように、二酸化炭素の体積流量が液状乳の体積流量に対して一定となるように制御することで、そこから製造される粉乳の均一性を高めることができる。但し、CO混合比率が大きすぎると、液状乳が流路を流れる割合が低くなって、粉乳の製造効率が悪化する。したがって、CO混合比率の上限は700%であることが好ましい。また、二酸化炭素を加圧する圧力は、二酸化炭素を液状乳へ効果的に分散させることができる範囲内であれば特に限定されないが、二酸化炭素の気圧として、たとえば1.5気圧以上10気圧以下があげられ、好ましくは2気圧以上5気圧以下である。なお、二酸化炭素と液状乳を密閉系で連続的に(インラインで)混合することにより、細菌等の混入を確実に防止して、粉乳の衛生状態を高めること(又は高い清浄度を維持すること)ができる。
本実施の形態では、気体分散工程において用いる所定の気体は、二酸化炭素ガスとした。二酸化炭素ガスに代えて、又は二酸化炭素ガスとともに、空気、窒素(N)、及び酸素(O)からなる群から選択された1又は2以上の気体を用いてもよいし、希ガス(例えばアルゴン(Ar)、ヘリウム(He))を用いてもよい。このように、さまざまな気体を選択肢とすることができるので、容易に入手できる気体を用いることで、気体分散工程を容易に行うことができる。気体分散工程において、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いると、液状乳の栄養成分等と反応するおそれがないため、空気や酸素を用いるよりも、液状乳を劣化させる可能性が少なく好ましい。このとき、液状乳の体積流量に対する当該気体の体積流量の比率として、例えば1%以上700%以下があげられ、1%以上500%以下が好ましく、1%以上400%以下がより好ましく、最も好ましくは、1%以上300%以下である。例えば、ベルら(R. W. BELL, F. P. HANRAHAN, B. H. WEBB: “FOAM SPRAYMETHODS OF READILY DISPERSIBLE NONFAT DRY MILK”, J. Dairy Sci, 46 (12) 1963. pp1352-1356)は、脱脂粉乳を得るために無脂肪乳の約18.7倍の体積の空気を吹き込んだとされている。本実施の形態では、上記の範囲で気体を分散させることにより、固形乳を製造するために好ましい特性を有する粉乳を得ることができる。但し、気体分散工程において液状乳に所定の気体を分散させた結果として液状乳の密度を確実に低くするためには、所定の気体として、液状乳に分散しやすい気体や、液状乳に溶解しやすい気体を用いることが好ましい。このため、水への溶解度(水溶性)が高い気体を用いることが好ましく、20℃において、水1cmへの溶解度が0.1cm以上である気体が好ましい。なお、二酸化炭素は、気体に限られることはなく、ドライアイスであってもよいし、ドライアイスと気体の混合物であってもよい。即ち、気体分散工程では、液状乳へ所定の気体を分散させることができるのであれば、固体を用いてもよい。気体分散工程において、ドライアイスを用いることで、冷却状態の液状乳に急速に二酸化炭素を分散させることができ、この結果、固形乳を製造するために好ましい特性を有する粉乳を得ることができる。
噴霧乾燥工程は、液状乳中の水分を蒸発させて粉乳(粉体)を得るための工程である。この噴霧乾燥工程で得られる粉乳は、気体分散工程及び噴霧乾燥工程を経て得られた粉乳である。この粉乳は、気体分散工程を経ずに得られた粉乳に比べて、嵩高くなる。前者は、後者の1.01倍以上10倍以下の体積となることが好ましく、1.02倍以上10倍以下でもよく、1.03倍以上9倍以下でもよい。
噴霧乾燥工程では、気体分散工程において液状乳に所定の気体が分散され、液状乳の密度が小さくなった状態のまま、液状乳を噴霧乾燥する。具体的には、気体を分散する前の液状乳に比べて、気体を分散した後の液状乳の体積が1.05倍以上3倍以下、好ましくは1.1倍以上2倍以下の状態で、噴霧乾燥することが好ましい。つまり、噴霧乾燥工程は、気体分散工程が終了した後に噴霧乾燥を行う。但し、気体分散工程が終了した直後は、液状乳が均一な状態ではない。このため、気体分散工程が終了した後0.1秒以上5秒以下、好ましくは0.5秒以上3秒以下で噴霧乾燥工程を行う。つまり、気体分散工程と噴霧乾燥工程が連続的であればよい。このようにすることで、液状乳が連続的に気体分散装置に投入されて気体が分散され、気体が分散された液状乳が連続的に噴霧乾燥装置に供給され、噴霧乾燥され続けることができる。
水分を蒸発させるためには、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いればよい。ここで、スプレードライヤーは、液状乳を流すための流路と、液状乳を流路に沿って流すために液状乳を加圧する加圧ポンプと、流路の開口部につながる流路よりも広い乾燥室と、流路の開口部に設けられた噴霧装置(ノズル、アトマイザー等)とを有するものである。そして、スプレードライヤーは、加圧ポンプで液状乳を上述した体積流量となるように流路に沿って乾燥室に向かって送り、流路の開口部の近傍において、噴霧装置で濃縮乳を乾燥室内に拡散させ、液滴(微粒化)状態にある液状乳を乾燥室内の高温(例えば熱風)で乾燥させる。つまり、乾燥室で液状乳を乾燥することで、水分が取り除かれ、その結果、濃縮乳は粉末状の固体、即ち粉乳となる。なお、乾燥室における乾燥条件を適宜設定することで、粉乳の水分量等を調整して、粉乳を凝集しにくくする。また、噴霧装置を用いることで、液滴の単位体積当たりの表面積を増加させて、乾燥効率を向上させるのと同時に、粉乳の粒径等を調整する。
上述したような工程を経ることにより、固形乳を製造するのに適した粉乳を製造することができる。
上記のようにして得られた粉乳を圧縮成型して、粉乳圧縮成型物を形成する。次に、得られた粉乳圧縮成型物に対して加湿処理及び乾燥処理を含む硬化処理を行う。以上により、固形乳10Sを製造することができる。
粉乳を圧縮成型する工程では、圧縮手段が用いられる。圧縮手段は、例えば、打錠機、圧縮試験装置等の加圧成型機である。打錠機は粉乳(粉体)を入れる型となる臼と、臼に向かって打ち付け可能な杵とを備えている。臼(型)に粉乳を入れて、杵を打ち付ければ、粉乳に圧縮圧力が加わり、粉乳圧縮成型物を得ることができる。本実施形態においては、例えば、打錠機の下杵が孔11に対応する凸部を有し、上杵が凸部に対応する凹部を有し、凸部が凹部に挿入可能な形状となっている。このような杵を用いて圧縮成型することで、粉乳圧縮成型物に孔11を形成することができる。なお、圧縮成型工程において、粉乳の圧縮作業を連続的に行うことが好ましい。
粉乳を圧縮成型する工程において、環境の温度は特に限定されず、例えば室温でも良い。具体的には、環境の温度は、例えば5℃~35℃である。環境の湿度は、例えば0%RH~60%RHである。圧縮圧力は、例えば1MPa~30MPa、好ましくは1MPa~20MPaである。特に粉乳を固形化させる際に、圧縮圧力を1MPa~30MPaの範囲内で調整することによって、空隙率が30%~60%の範囲内となるように制御するとともに、粉乳圧縮成型物(硬化前)の硬度が4N~19Nの範囲内となるように制御することが好ましい。これにより、溶解性と利便性(扱いやすさ)を兼ね備えた、実用性の高い固形乳10Sを製造することができる。なお、粉乳圧縮成型物は、少なくとも後続の加湿工程や乾燥工程で型崩れしないような硬度(例えば4N以上)を有する。例えば、粉乳圧縮成型物(硬化前)の概略形状の寸法が、固形乳10Sと同じで31mm(a)×24mm(b)×12.5mm(c)の直方体状である場合、上記の4N以上19N以下という粉乳圧縮成型物(硬化前)の好ましい硬度範囲は、硬度を破断面積(300mm)で除して、0.013N/mm以上0.063N/mm未満という好ましい破断応力範囲に対応する。
加湿処理は、圧縮成型する工程で得られた粉乳圧縮成型物を加湿処理する工程である。粉乳圧縮成型物を加湿すると、粉乳圧縮成型物の表面には、タック(べとつき)が生じる。その結果、粉乳圧縮成型物の表面近傍の粉体粒子の一部が液状やゲル状となり、相互に架橋することとなる。そして、この状態で乾燥すると、粉乳圧縮成型物の表面近傍の強度を内部の強度よりも高めることができる。高湿度の環境下に置く時間(加湿時間)を調整することで、架橋の程度(拡がり具合)を調整し、これにより、加湿工程前の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度(例えば4N~19N)を、固形乳10Sとして必要な目的の硬度(例えば40N)にまで高めることができる。但し、加湿時間の調整によって高めることができる硬度の範囲(幅)は限られている。即ち、圧縮成型後の粉乳圧縮成型物を加湿するため、ベルトコンベアー等で運搬する際に、粉乳圧縮成型物の硬度が十分でないと、固形乳10Sの形状を保てなくなる。また、圧縮成型時に粉乳圧縮成型物の硬度が高すぎると、空隙率が小さく、溶解性に乏しい固形乳10Sしか得られなくなる。このため、加湿工程前の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度が十分に高くなり、かつ固形乳10Sの溶解性を十分に保てるように、圧縮成型されることが好ましい。
加湿処理において、粉乳圧縮成型物の加湿方法は特に限定されず、例えば粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く方法、粉乳圧縮成型物に対して水等を直接噴霧する方法、及び、粉乳圧縮成型物に対して蒸気を吹き付ける方法等がある。粉乳圧縮成型物を加湿するためには、加湿手段を用いるが、そのような加湿手段としては、例えば、高湿度室、スプレー及びスチーム等がある。
粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く場合、環境の湿度は、例えば60%RH~100%RHの範囲内である。そして、加湿時間は、例えば5秒~1時間であり、高湿度環境における温度は、例えば30℃~100℃である。
加湿処理において粉乳圧縮成型物に加えられる水分量(以下、「加湿量」ともいう)は、適宜調整可能である。加湿量は、圧縮成型工程後の粉乳圧縮成型物の質量の0.5重量%~3重量%が好ましい。加湿量を0.5重量%よりも少なくすると、固形乳10Sに十分な硬度(錠剤硬度)を与えることができず、好ましくない。また、加湿量が3重量%を超えると、粉乳圧縮成型物が過剰に液状やゲル状となって溶解し、圧縮成型した形状から変形したり、運搬中にベルトコンベアー等の装置へ付着したりすることとなるので、好ましくない。
乾燥処理は、加湿処理で加湿された粉乳圧縮成型物を乾燥させるための工程である。これにより、粉乳圧縮成型物の表面タック(べとつき)がなくなり、固形乳10Sを扱いやすくなる。つまり、加湿処理と乾燥処理は、圧縮成型後の粉乳圧縮成型物の硬度を高めて、固形乳10Sとして望まれる特性や品質を付与する工程に相当する。
乾燥処理において、粉乳圧縮成型物の乾燥方法は特に限定されず、加湿処理を経た粉乳圧縮成型物を乾燥させることができる公知の方法を採用できる。例えば、低湿度・高温度条件下に置く方法、乾燥空気・高温乾燥空気を接触させる方法等がある。
低湿度・高温度の条件下に置く場合、湿度は、例えば0%RH~30%RHである。このように、できるだけ湿度を低く設定することが好ましい。このとき、温度は例えば20℃~150℃である。乾燥時間は、例えば0.2分~2時間である。
ところで、固形乳10Sに含まれる水分が多いと、保存性が悪くなり、風味の劣化や外観の変色が進行しやすくなる。したがって、乾燥工程において、乾燥温度や乾燥時間等の条件を制御することによって、固形乳10Sの水分含有率を、原料として用いる粉乳の水分含有率の前後1%以内に制御(調整)することが好ましい。
このようにして製造された固形乳10Sは、一般的に、温水に溶かして飲用に供される。具体的には、蓋のできる容器等へ温水を注いだ後に、固形乳10Sを必要な個数で投入するか、固形乳10Sを投入した後に温水を注ぐ。そして、好ましくは容器を軽く振ることにより、固形乳10Sを速く溶解させ、適温の状態で飲用する。また、好ましくは1個~数個の固形乳10S(より好ましくは1個の固形乳10S)を温水に溶かせば、1回の飲用に必要な分量の液状乳となるように、固形乳10Sの体積として、例えば1cm~50cmとなるように調製してもよい。なお、圧縮成型工程で用いる粉乳の分量を変更することで、固形乳10Sの体積を調整できる。
(固形乳10Sの作用・効果)
本実施の形態の固形乳10Sは、固形乳10Sを構成する本体10を貫通する少なくとも1つの孔11が設けられ、孔11の内壁面が本体10の第1面10A、第2面10B及び側面10Cと同様に本体の内部より硬い外表面である。これにより、本実施の形態の固形乳10Sは、固形乳を落下面に落下させる落下試験を固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、落下試験の落下エネルギー密度を固形乳の応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える構成となっている。これにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
<変形例1>
図5は、本変形例に係る固形乳20Sの斜視図である。図6は、図5のX1-X2におけるYZ平面に平行な断面図である。図7は、図5のY1-Y2におけるXZ平面に平行な断面図である。図1~図3に示した固形乳10Sでは、本体10を貫通する孔11が1つ設けられた構成であるが、孔の数は2つ以上であってもよい。本変形例では、孔21が2つ設けられた構成である。
固形乳20Sは、粉乳を圧縮成型した固形状の本体20を有する。本体20は、XY平面に平行で平坦な第1面20Aと、XY平面に平行で平坦な第2面20Bとを有する。第1面20Aと第2面20Bとは背中合わせの面である。本体20の概略形状は直方体状であり、本体20はXZ平面又はYZ平面に平行な側面20Cを有する。
本体20には、第1面20Aから第2面20Bに達して本体20を貫通する孔21が2つ設けられている。2つの孔21の形状は、XY平面に平行な断面において長円形であり、同じ形状となっている。2つの孔21の大きさは、本体20の直方体状の形状の体積から2つの孔21の部分の合計の体積を差し引いた体積が所定の値となるように選択される。
2つの孔21の位置は、第1面20Aの中央の位置から見たときに大きな偏りがない位置である。2つの孔21は、第1面20Aの中央部を挟んでX軸と平行な方向に並べられ、かつ孔21のそれぞれの長手方向がY軸と平行な方向となるように配置されている。これは、2つの孔21は、第1面20Aの中央に対して点対称、あるいは第1面20Aの中央を通るX軸と平行な線又はY軸と平行な線に対して線対称となる配置である。2つの孔21の間隔は、狭すぎるとその部分の強度が保てなくなる可能性があるので、所定値以上に確保されている。第2面20Bから見た場合でも同様である。孔21が本体20を貫通する方向は、第1面20A及び第2面20Bを通過する方向であり、例えばZ軸に対して略平行な方向である。
第1面20A、第2面20B、側面20C及び孔21の内壁面21Aは、本体20の内部より硬い外表面である。孔21の内壁面21Aは、第1面20Aと第2面20Bとの間に設けられた筒状の柱を構成する。本体20の角部と孔21の縁は面取りがなされており、本体20の内部より硬い外表面となっている。
上記を除いては、実施の形態の固形乳10Sと同様の構成である。
本変形例の固形乳20Sは、固形乳20Sを構成する本体20を貫通する2つの孔21が設けられ、孔21の内壁面21Aが本体20の第1面20A、第2面20B及び側面20Cと同様に本体20の内部より硬い外表面である。これにより、本実施の形態の固形乳20Sは、固形乳を落下面に落下させる落下試験を固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、落下試験の落下エネルギー密度を固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える構成となっている。これにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
<変形例2>
図8は、本変形例に係る固形乳30Sの斜視図である。図9は、図8のX1-X2におけるYZ平面に平行な断面図である。図10は、図8のY1-Y2におけるXZ平面に平行な断面図である。本変形例では、孔31が4つ設けられた構成である。
固形乳30Sは、互いに背中合わせの第1面30A及び第2面30Bと、側面30Cとを有する直方体状の本体30を有する。本体30には、第1面30Aから第2面30Bに達して本体30を貫通する円形の孔31が4つ設けられている。4つの孔31の大きさは、本体30の直方体状の形状の体積から4つの孔31の部分の合計の体積を差し引いた体積が所定の値となるように選択される。4つの孔31の位置は、第1面30Aの中央部からみて点対称、あるいは、第1面30Aの中央を通るX軸と平行な線又はY軸と平行な線に対して線対称となる配置である。
第1面30A、第2面30B、側面30C及び孔31の内壁面31Aは、本体30の内部より硬い外表面である。孔31の内壁面31Aは、第1面30Aと第2面30Bとの間に設けられた筒状の柱を構成する。本体30の角部と孔31の縁は面取りがなされており、本体30の内部より硬い外表面となっている。
本変形例の固形乳30Sは、固形乳30Sを構成する本体30を貫通する4つの孔31が設けられ、孔31の内壁面31Aが本体30の第1面30A、第2面30B及び側面30Cと同様に本体30の内部より硬い外表面である。これにより、本実施の形態の固形乳30Sは、固形乳を落下面に落下させる落下試験を固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、落下試験の落下エネルギー密度を固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える構成となっている。これにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
<変形例3>
図11は、本変形例に係る固形乳40Sの斜視図である。図12は、図11のX1-X2におけるYZ平面に平行な断面図である。図13は、図11のY1-Y2におけるXZ平面に平行な断面図である。本変形例では、孔41が6つ設けられた構成である。
固形乳40Sは、互いに背中合わせの第1面40A及び第2面40Bと、側面40Cとを有する直方体状の本体40を有する。本体40には、第1面40Aから第2面40Bに達して本体40を貫通する円形の孔41が6つ設けられている。6つの孔41の大きさは、本体40の直方体状の形状の体積から6つの孔41の部分の合計の体積を差し引いた体積が所定の値となるように選択される。6つの孔41の位置は、第1面40Aの中央部からみて点対称、あるいは第1面40Aの中央を通るX軸と平行な線又はY軸と平行な線に対して線対称となる配置である。
第1面40A、第2面40B、側面40C及び孔41の内壁面41Aは、本体40の内部より硬い外表面である。孔41の内壁面41Aは、第1面40Aと第2面40Bとの間に設けられた筒状の柱を構成する。本体40の角部と孔41の縁は面取りがなされており、本体40の内部より硬い外表面となっている。
本変形例の固形乳40Sは、固形乳40Sを構成する本体40を貫通する6つの孔41が設けられ、孔41の内壁面41Aが本体40の第1面40A、第2面40B及び側面40Cと同様に本体40の内部より硬い外表面である。これにより、本実施の形態の固形乳40Sは、固形乳を落下面に落下させる落下試験を固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、落下試験の落下エネルギー密度を固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える構成となっている。これにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
<変形例4>
実施の形態及び変形例1~3の固形乳では、固形乳の本体に1つ以上の孔が設けられている構成であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、固形乳に孔が形成されていなくても、実施の形態に記載の硬化手段あるいは硬化条件の変更によって、EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える構成とすることが可能である。例えば、上記の実施形態に記載の加湿処理及び乾燥処理による硬化処理に代えて、粉乳圧縮成型物(硬化前)に対して、近赤外ランプ、遠赤外ランプ、レーザー光、もしくはこれらの光源を複数種類組み合わせて熱光源を照射して表面を硬化させてもよい。また、上記の実施形態に記載の60%RH~100%RHの湿度かつ30℃~100℃の温度での加湿処理に代えて、100℃を超える温度に加熱された水蒸気を用いて加湿処理を行い、その後に乾燥処理を行って硬化させてもよい。これにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
<適用例>
固形乳は、固形食品の一例である。上記の実施の形態及び変形例1~4は、粉乳を圧縮成型した固形乳であるが、粉体を圧縮成型して形成された固形食品にも適用できる。例えば、ホエイプロテイン、大豆プロテイン及びコラーゲンペプチド等のタンパク質粉体、アミノ酸粉体、及びMCT(Middle Chain Triglyceride, 中鎖脂肪酸トリグリセリド)等の油脂含有粉体等を原料として、圧縮成型した固形食品に適用できる。原料の粉体に、乳糖あるいはその他の糖質が適宜添加されており、上記の実施の形態及び変形例1~4に示すような本体を貫通する孔を有する形状に圧縮成型され、あるいはその後にレーザー等を用いた硬化処理が施されて、固形食品に加工される。このような固形食品は、内部より硬い外表面を有する構成となっている。これにより、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。また、原料の粉体には、乳糖あるいはその他の糖質の他に、脂肪、たん白質、ミネラル及びビタミン等の栄養成分や食品添加物が添加されていてもよい。
さらに、上記の食品粉体のタンパク質粉体は、ミルクカゼイン、ミートパウダー、フィッシュパウダー、エッグパウダー、小麦タンパク質、小麦タンパク質分解物等であっても良い。これらのタンパク質粉体は単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体のホエイプロテイン(ホエイタンパク質)とは、乳中で、カゼインを除くタンパク質の総称である。乳清タンパク質として分類されるものであってもよい。ホエイタンパク質は、ラクトグロブリン、ラクトアルブミン、ラクトフェリン等の複数の成分から構成されている。牛乳などの乳原料を酸性に調整した際に、沈殿するタンパク質がカゼイン、沈殿しないタンパク質がホエイタンパク質となる。ホエイプロテインを含む粉末原料として、例えば、WPC(ホエイタンパク濃縮物、タンパク質含有量が75~85質量%)、WPI(ホエイタンパク分離物、タンパク質含有量が85質量%以上)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体の大豆プロテイン(大豆タンパク質)は、大豆に含まれるタンパク質であればよく、大豆から抽出されたものでもよい。また、原料大豆から精製したものを用いることもできる。精製方法としては特に限定されず、従来公知の方法を使用できる。このような大豆プロテインとしては、飲食品用素材、医療用素材、サプリメント食品として市販されている粉体を使用することができる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体のアミノ酸粉体に含まれるアミノ酸としては、特に限定されないが、例えばアルギニン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、チロシン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、シトルリン、クレアチン、メチルリジン、アセチルリジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、グリシン、アラニン、スレオニン、シスチンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
また、上記の食品粉体のアミノ酸粉体に含まれるアミノ酸は、天然物および合成体のいずれでもよく、単体のアミノ酸もしくは複数のアミノ酸の混合物を用いることができる。また、アミノ酸として、遊離アミノ酸のみならず、ナトリウム塩、塩酸塩および酢酸塩等の塩ならびにカルニチンおよびオルニチン等の誘導体を用いることができる。
本明細書において「アミノ酸」には、α-アミノ酸、β-アミノ酸およびγ-アミノ酸が含まれる。また、アミノ酸は、L-体およびD-体のいずれであってもよい。
さらに、上記の食品粉体の油脂含有粉体に含まれる油脂は、上述のMCT油の他、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT(Medium Chain Triglyceride, 中鎖脂肪酸トリグリセリド)油等である。
さらに、上記の食品粉体の糖質は、上述の乳糖の他、例えば、オリゴ糖、単糖類、多糖類及び人工甘味料等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。オリゴ糖は、例えば、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ラクチュロース等である。単糖類は、例えば、ブドウ糖、果糖及びガラクトース等である。多糖類は、例えば、デンプン、可溶性多糖類及びデキストリン等である。
さらに、上記の食品粉体の食品添加物の一例としては甘味料が例示できる。この甘味料としては、食品および医薬品に通常使用される任意の甘味料を用いることができ、天然の甘味料および合成甘味料のいずれであってもよい。甘味料は、特に限定されないが、例えばブドウ糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、オリゴ糖、砂糖、グラニュー糖、メープルシロップ、蜂蜜、糖蜜、トレハロース、パラチノース、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、グリセリン、アスパルテーム、アドバンテーム、ネオテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムおよびサッカリンなどを含む。
さらに、上記の食品粉体の食品添加物の一例としては酸味料が例示できる。酸味料は、特に限定されないが、例えば、酢酸、クエン酸、無水クエン酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸およびこれらの塩などを含む。酸味料は、アミノ酸の種類によって生じる苦みを抑制(マスキング)することができる。
さらに、上記の食品粉体の栄養成分としては、脂肪、タンパク質、ミネラル及びビタミン等いかなる成分を含んでも良い。
脂肪としては、例えば、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT(Medium Chain Triglyceride, 中鎖脂肪酸トリグリセリド)油等である。
タンパク質としては、例えば、乳タンパク質及び乳タンパク質分画物、動物性タンパク質、植物性タンパク質、それらのタンパク質を酵素等により種々の鎖長に分解したペプチド及びアミノ酸等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。乳タンパク質は、例えば、カゼイン、乳清タンパク質(α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン等)、乳清タンパク質濃縮物(WPC)及び乳清タンパク質分離物(WPI)等である。動物性タンパク質は、例えば、卵タンパク質(エッグパウダー)、ミートパウダー、フィッシュパウダー等である。植物性タンパク質は、例えば、大豆タンパク質及び小麦タンパク質等である。ペプチドは、例えば、コラーゲンペプチド等である。アミノ酸は、例えば、タウリン、シスチン、システイン、アルギニン及びグルタミン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
ミネラルとしては、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、亜鉛、鉄、銅およびセレン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、葉酸、パントテン酸およびビオチン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
また、その他の食品素材としては、例えば、ココアパウダー、カカオパウダー、チョコレートパウダー、乳酸菌・ビフィズス菌等の有用微生物を含む微生物粉体、乳に微生物を加えて発酵させた培養物を粉体とした乳発酵成分粉体、チーズを粉体としたチーズ粉体、機能性食品を粉体とした機能性食品粉体、総合栄養食を粉体とした総合栄養食粉体等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
本発明に係る固形食品は、日常摂取する食品、健康食品、健康補助食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、サプリメント、機能性表示食品などの形態であることができる。
<第1実施例>
(実施例1の作成)
図1~図3に示した実施の形態と同様の形状の固形乳試料を作成して実施例1とした。固形乳の本体の大きさは、X軸方向の辺aが31mm、Y軸方向の辺bが24mm、Z軸方向の辺cが12.5mmである。孔11の部分を除いた体積が約8250mmである。この大きさとなるように打錠機の臼杵の大きさ及び圧縮圧力を調整し、粉乳5.4gを圧縮成型して粉乳圧縮成型物を形成した。得られた粉乳圧縮成型物に、加湿温度80℃の加湿処理を施し、さらに乾燥温度80℃の乾燥処理を施し、硬化処理が施された固形乳とした。硬化処理後の固形乳試料の硬度が20~90Nとなるように、加湿処理時間を適宜調整した。乾燥時間については加湿時の重量増加分が乾燥しきれるように時間を調整した。
(実施例2の作成)
孔21の数が2つであることを除いて実施例1と同様に、図5~図7に示した変形例1と同様の形状の固形乳試料を作成して実施例2とした。硬化処理後の固形乳試料の硬度が20~90Nとなるようにした。
(実施例3の作成)
孔31の数が4つであることを除いて実施例1と同様に、図8~図10に示した変形例2と同様の形状の固形乳試料を作成して実施例3とした。硬化処理後の固形乳試料の硬度が20~90Nとなるようにした。
(実施例4の作成)
孔41の数が6つであることを除いて実施例1と同様に、図11~図13に示した変形例3と同様の形状の固形乳試料を作成して実施例4とした。硬化処理後の固形乳試料の硬度が20~90Nとなるようにした。
(比較例の作成)
孔の代わりに窪みが設けられていることを除いて実施例1と同様に固形乳試料を作成して比較例とした。図14は、比較例に係る固形乳100Sの斜視図である。図15は、図14のX1-X2におけるYZ平面に平行な断面図である。図16は、図14のY1-Y2におけるXZ平面に平行な断面図である。固形乳100Sは、互いに背中合わせの第1面100A及び第2面100Bと、側面100Cとを有する直方体状の本体100を有する。X軸方向の辺aが31mm、Y軸方向の辺bが24mm、Z軸方向の辺cが12.5mmである。本体100には、第1面100Aに2つの窪み100Dが設けられ、第2面100Bに2つの窪み100Dが設けられている。各窪み100Dは、滑らかな曲面によって形成されている。窪み100Dの大きさは、本体100の直方体状の形状の体積から窪み100Dの部分の容積を差し引いた体積が実施例1と同等の体積となるように選択されている。また、比較例では第1面100A及び第2面100BにY軸と平行な方向に沿った割線100Vが設けられている。硬化処理後の固形乳試料の硬度が20~90Nとなるようにした。
(落下試験機を用いた輸送適性の評価)
形状による輸送適性の評価を行うために、上記のように作成した実施例1~4及び比較例の固形乳試料について50~300mmの高さから複数回落下させる試験を実施した。落下試験における落下面は神栄テストマシナリー社の包装貨物落下試験機DTS-50の落下面を使用した。この落下面の材質は、JIS規格Z0202包装貨物落下試験方法に準拠している。当該の機器では実施できない高さからの落下試験では、落下面だけを利用した。ここで、上記機器の落下面は水平な面とした。落下面に対して垂直に、落下面から50~300mmの高さに固形乳試料の第2面を底面として位置させ、固形乳試料の側面の2点もしくは3点で挟んで固定した。固定した点を同時に固形乳試料から離し、自由落下させた。実施例1~4及び比較例の各固形乳試料の自由落下時の落下姿勢は、第2面が落下面と平行となるようにして実施した。
JISにおける落下面の定義は、次のとおりである。(a)落下面を構成する部材の質量は、供試品の質量の50倍以上であることが望ましい。(b)表面上のいずれの2点においても水平差が2mm以下であること。(c)表面上のいかなる点においても、98N{10kgf}/100mmの静荷重で0.1mm以上の変形を生じないこと。(d)供試品が完全に落下できるような十分な大きさをもつこと。(e)落下面は、コンクリート、石、鋼板等の堅固な材料で構築すること。
落下時に破損が生じて固形乳試料の重量が初期重量の9%以上減少し、かつ破損した面が4面に広がった状態となったときをもって、破壊したと判断した。落下試験後の固形乳試料(試験前は5.4g)の最も大きい小片の重量が5g以下となったときを「破壊」と定義した。落下試験の評価方法としては、50mm~300mmの高さから落下面に対して落下させ、破壊に至るまでの落下回数を計測した。
上記の落下試験を各固形乳試料に対して繰り返し行い、各固形乳試料の破壊に至る落下回数(試料が「破壊」に至るまでにかかった落下試験の回数)を調べた。50mm~300mmの各高さから固形乳試料を落下させて落下面に衝突するときにかかる落下エネルギー密度(試料の重量×重力加速度×高さ/破断面積)[J/m]を単位破断面積あたりの硬度(破断応力)[N/m]で除した単位破断応力当たりの落下エネルギー密度を算出する。落下した際に破断する面積と静的破断試験によって破断した際の面積が試料の最小面積と等しいと仮定した場合、この指標は単位硬度あたりの落下エネルギー[J/N]とも解釈できる。図17の縦軸に示す(ここで破断面積は、各試料のYZ平面の断面積(b×c)とする)。また、上記で得られた破壊に至る落下回数を図17の横軸に示す。図17は、単位破断応力あたりの落下エネルギー密度に対する破壊に至る落下回数を示すグラフである。図17中、aは実施例1の結果を示し、bは実施例2を、cは実施例3を、dは実施例4を、eは比較例をそれぞれ示す。
図17において、a、b、c、d、eのいずれも、単位破断応力当たりの落下エネルギー密度が小さくなるほど破壊に至る落下回数が大きくなる右下がりのグラフとなった。これは、単位硬度当たりの落下エネルギーが小さいほど破壊されにくくなり、破壊に至るまでの落下回数が増加したものである。また、落下の高さが低い等の単位破断応力当たりの落下エネルギー密度が小さい場合でも、落下回数を増やすことで破壊が生じることが確認された。また、a、b、c、d、eの中で、eで示す比較例の結果は最も下側又は左側に位置しており、同じ単位硬度あたりの落下エネルギーで落下した場合に少ない落下回数で破壊されることを示している。
また、実施例1~4の固形乳試料は、同じ単位破断応力あたりの落下エネルギー密度で落下した場合に破壊に至るのに比較例の固形乳試料より多い落下回数がかかることを示している。即ち、実施例1~4の固形乳試料は、落下試験において、単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超えることが確認された。
孔が設けられた実施例1~4の固形乳試料は、孔が設けられずに窪みが形成された比較例の固形乳試料よりも破壊に至る落下回数が多く、破壊耐性が高まり、輸送適性が向上していることが確認された。また、a、b、c、dの中では、dが最も上側又は右側に位置しており、孔の数が1つ、2つ又は4つよりも6つのほうが破壊に至る落下回数が多く、破壊耐性が高まり、輸送適性が向上していることが確認された。
<第2実施例>
(溶解性試験)
形状による溶解性の評価を行うために、上記のように作成した実施例1~4及び比較例の固形乳試料について溶解性試験を行った。まず、攪拌バスケットに固形乳試料を1つ入れた。攪拌バスケットは、内径30mm、高さ36mmである有底筒状のふた付き容器であり、側部、底部、ふた部を有する。側部、底部、ふた部は、18メッシュ(目開き1.01mm)のステンレス製の網で形成されている。攪拌バスケットの側部の内面に4つの羽根が均等に設けられている。4つの羽は、それぞれ、厚さ1.5mm、幅4mm、長さが34mmの板であり、長手方向を攪拌バスケットの中心軸に平行となるように配置し、側部の内面から中心に向かって突出するように設けられている。300mlビーカー内に収容した200mlの温水(50±1℃)に攪拌バスケットを浸漬し固形乳試料を完全に水没させた状態で、当該攪拌バスケットを回転速度0.5m/s(周速度)で回転させた。攪拌バスケットは、ビーカー底部内面から5mmの高さに保持した。固形乳試料が溶け始めてから溶け切るまでの溶出過程を導電率によって一定時間毎に測定した。試験結果から、実施例1~4の溶解性は比較例より高いことが確認された。実施例1~4の中では、実施例4(孔の数が6つ)が最も高い溶解性を示した。実施例1~4が比較例より高い溶解性を有し、さらに実施例4が最も高い溶解性を示したのは、固形乳の表面積が大きいほど溶解性が高められたものと考えられる。
尚、本開示は以下のような構成であってもよい。以下の構成を有するならば、製品を落下させた場合に製品が損傷するのを防止して輸送適性を向上することができる。
(1)粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品を落下面に落下させる落下試験を前記固形食品が破壊されるまで繰り返し行ったときに、前記落下試験の落下エネルギー密度を前記固形食品の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、前記EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、前記EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える固形食品。
(2)前記固形食品の本体に1つ以上の貫通孔が設けられている前記(1)に記載の固形食品。
(3)粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳を落下面に落下させる落下試験を前記固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、前記落下試験の落下エネルギー密度を前記固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、前記EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、前記EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超える固形乳。
(4)前記固形乳の本体に1つ以上の貫通孔が設けられている前記(3)に記載の固形乳。
(5)粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品を落下面に落下させる落下試験を前記固形食品が破壊されるまで繰り返し行ったときに、前記落下試験の落下エネルギー密度を前記固形食品の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、前記EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、前記EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超えるように、粉体を圧縮成型し、得られた粉体圧縮成型物に硬化処理を行うことによって形成された固形食品。
(6)粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳を落下面に落下させる落下試験を前記固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、前記落下試験の落下エネルギー密度を前記固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、前記EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、前記EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超えるように、粉乳を圧縮成型し、得られた粉乳圧縮成型物に硬化処理を行うことによって形成された固形乳。
10、20、30、40 本体
10A、20A、30A、40A 第1面
10B、20B、30B、40B 第2面
10C、20C、30C、40C 側面
10S、20S、30S、40S 固形乳
11、21、31、41 孔
11A、21A、31A、41A 内壁面

Claims (1)

  1. 粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、
    前記固形乳を落下面に落下させる落下試験を前記固形乳が破壊されるまで繰り返し行ったときに、前記落下試験の落下エネルギー密度を前記固形乳の破断応力で除してなる単位破断応力あたりの落下エネルギー密度EFが2×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が3回以上であり、前記EFが1×10-4[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が10回以上であり、前記EFが5×10-5[(J/m)/(N/m)]であるときの破壊に至る落下回数が30回を超え
    前記固形乳の本体に1つ以上の貫通孔が設けられている
    固形乳。
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