以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
まず、図1を用いて本発明の第一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、フライホイールハウジング4、クラッチハウジング5、トランスミッションケース6、昇降装置7、前輪8、後輪9、ボンネット100、マフラ11、キャビン12、ステアリングホイール13、座席14及びスペーサ200等を具備する。
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前下部に配置される。機体フレーム2の後部には、エンジン3が固定される。エンジン3の後部には、フライホイールハウジング4が固定される。フライホイールハウジング4の後部には、クラッチハウジング5が固定される。クラッチハウジング5の後部には、トランスミッションケース6が固定される。トランスミッションケース6の後部には、昇降装置7が設けられる。昇降装置7には、各種の作業装置(例えば、耕運機等)を装着することができる。
また、機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪8に支持される。トランスミッションケース6は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪9に支持される。
また、エンジン3は、ボンネット100に覆われる。ボンネット100の左側方には、エンジン3の排気ガスを排出するマフラ11が配置される。ボンネット100の後方には、キャビン12が設けられる。キャビン12の内部には、ステアリングホイール13、座席14、各種の操作具及びペダル等が配置される。ボンネット100とキャビン12との間には、スペーサ200が配置される。
エンジン3の動力は、トランスミッションケース6に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪8に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪9に伝達可能とされる。こうして、エンジン3の動力によって前輪8及び後輪9を回転駆動させ、トラクタ1は走行することができる。また、エンジン3の動力によって、昇降装置7に装着された作業装置を駆動させることができる。
以下では、図1及び図2を用いて、マフラ11の詳細について説明する。
マフラ11は、マフラ本体11aと排気管11bとを具備する。マフラ本体11aは、エンジン3の排気に伴い発生する音の消音や、排気ガスの浄化を図るものである。マフラ本体11aは、排気ガス浄化装置(DPF(Diesel Particulate Filter))を含む。マフラ本体11aは、ボンネット100の内部空間に配置される。マフラ本体11aは、図2に示すように、ボンネット100の内部空間において左後側に配置される。また、マフラ本体11aは、図1に示すように、エンジン3の上方に配置される。
排気管11bは、マフラ本体11aを通過した排気ガスを外部に排出するものである。排気管11bは、一端部がボンネット100の内部空間においてマフラ本体11aに接続され、他端部がボンネット100の外部に位置する。
次に、図1から図5までを用いて、ボンネット100の詳細について説明する。
ボンネット100は、前後方向に長尺な形状とされている。ボンネット100は、上面部110、前面部160及び側面部170を具備する。
図2及び図3に示す上面部110は、ボンネット100の内部空間の上方を覆うものである。上面部110は、平面視において略矩形状とされている。上面部110の前側部分は、平面視において前方へ向かうに従い先細り形状とされている。上面部110は、正面視において湾曲面形状とされている。また、上面部110は、前方に向かうに従い下方へ傾斜する形状とされている。上面部110は、吸気口120を具備する。なお、吸気口120の詳細な説明は後述する。
前面部160は、ボンネット100の内部空間の前方を覆うものである。側面部170は、ボンネット100の内部空間の左右両側方を覆うものである。側面部170は、図1及び図3に示すように、側面視において、後下側の隅部が切り欠かれた略矩形状とされている。これにより、側面部170は、前側部分の上下寸法よりも後側部分の上下寸法が小さい形状とされている。また、側面部170は、正面視において湾曲面形状とされている。
ボンネット100の内部空間には、上述したエンジン3及びマフラ本体11aの他に、エンジンファン(不図示)やエアクリーナ(不図示)、ラジェータ(不図示)等の装置が配置される。
図2から図6までに示す吸気口120は、ボンネット100の内部空間に空気を導入するものである。吸気口120は、開口部130、有孔板部140及び接着接合層150を具備する。
図4及び図6に示す開口部130は、ボンネット100の上面部110において上下に貫通する開口である。開口部130は、上面部110の前側部分に設けられる。開口部130は、エンジン3よりも前方に設けられる。開口部130は、平面視において略矩形状とされている。開口部130は、左右に並列するように一対(二つ)設けられている。
図2、図3、図5、図6に示す有孔板部140は、開口部130を内側から覆うものである。有孔板部140は、厚さ方向に貫通する孔部を有するパンチングメタルによって形成される。有孔板部140を形成するパンチングメタルとしては、複数の丸孔が形成されたものや、網状に形成されたもの等、種々の構成を採用可能である。有孔板部140は、カバー部141及び被接着接合部142を具備する。
カバー部141は、開口部130を覆う部分である。カバー部141は、全体に孔部が形成されている。カバー部141は、開口部130の形状に対応する形状とされている。すなわち、カバー部141は、平面視において開口部130と略同寸同形状とされている。
カバー部141は、一対の開口部130に対応するように、一つの有孔板部140に対して左右に一対(二つ)設けられている。カバー部141は、図6(c)に示すように、外面(上面)がボンネット100の上面部110の上面と面一となるように形成される。すなわち、カバー部141の上面は、上面部110に対応する湾曲面形状とされている。このように構成することにより、吸気口120の見栄えをより向上させることができる。
被接着接合部142は、上面部110の内面に対して接着接合される部分である。被接着接合部142は、カバー部141と同様、全体に孔部が形成されている。被接着接合部142は、図5及び図6(b)、(c)に示すように、カバー部141に対して段差を形成するようにカバー部141よりも上面部110の内側に位置する。換言すれば、被接着接合部142に対して、上方に突出するようにカバー部141が設けられている。被接着接合部142は、上面部110の内面(下面)における開口部130の周囲の部分に対して、対向するように配置される。
被接着接合部142は、ボンネット100の上面部110の前側部分に応じた形状とされている。具体的には、被接着接合部142は、平面視において前方へ向かうに従い先細りとなる略台形状とされている。被接着接合部142は、一対のカバー部141の全周に亘って形成される。本実施形態では、一対のカバー部141に対して共通の被接着接合部142が設けられている。このように構成することにより、一つの有孔板部140によって2つの開口部130を覆うことができ、部材点数の削減を図ることができる。
被接着接合部142は、接合面(上面)の表面粗さがカバー部141の外面(上面)の表面粗さよりも粗く形成されている。すなわち、被接着接合部142は、カバー部141よりも加工精度が低く形成されている。具体的には、被接着接合部142は、表面粗さ(最大高さRz)がカバー部141の表面粗さ(最大高さRz)よりも大きく形成されている。被接着接合部142は、表面粗さ(最大高さRz)が100μm以上とされている。
図6(b)、(c)に示す接着接合層150は、ボンネット100の上面部110と、有孔板部140とを接着接合するものである。接着接合層150は、上面部110の下面における開口部130の周囲の部分と、被接着接合部142の上面と、の間に形成される。接着接合層150は、所定の接着剤によって形成される。接着接合層150を形成する接着剤としては、金属材料を接着接合可能な種々の接着剤を採用可能である。接着剤の種類としては、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系及び酢酸ビニル樹脂系が好ましく、特にエポキシ樹脂系がより好ましい。上記接着剤が硬化することで、ボンネット100に対して有孔板部140が固定される。接着接合層150は、非接着接合部151を具備する。
非接着接合部151は、接着接合層150において、ボンネット100の上面部110と有孔板部140とを非接着接合とする部分である。非接着接合部151は、接着接合層150を上下に貫通する孔状とされている。非接着接合部151は、少なくとも一箇所において形成される。図例では、一対の開口部130の間に非接着接合部151を形成した例を示している。なお、このような態様に限られず、非接着接合部151は、接着接合層150における種々の箇所に形成可能である。
以下では、図6及び図7を用いて、上述の如く構成される吸気口120の製造方法について説明する。
図7に示すように、吸気口120の製造方法は、主として成形工程S1、接着剤塗布工程S2及び接着接合工程S3を具備する。
成形工程S1は、有孔板部140を成形する工程である。成形工程S1においては、平坦な板状のパンチングメタルに対して、有孔板部140の形状に対応した所定の金型を用いたプレス加工を施す。これにより、有孔板部140が成形される。本実施形態では、一つの有孔板部140に対して一対のカバー部141を設けた構成としているので、一対の開口部130を覆う有孔板部140を、一つの金型を用いた一回の加工で成形することができる。
接着剤塗布工程S2は、図6(a)、(b)に示すように、ボンネット100の上面部110と、有孔板部140と、のうちの少なくとも一方に接着剤を塗布する工程である。図例では、上面部110の下面における開口部130の周囲の部分に対して接着剤を塗布した例を示している。なお、このような態様に限られず、有孔板部140の被接着接合部142の上面に対して接着剤を塗布するようにしてもよい。また、接着剤塗布工程S2においては、非接着接合部151が形成される部分を除いて接着剤を塗布するようにしてもよい。
接着接合工程S3は、開口部130を覆うように、ボンネット100に対して有孔板部140を接着接合する工程である。接着接合工程S3においては、図6(b)、(c)に示すように、接着剤塗布工程S2で塗布した接着剤により、上面部110の下面における開口部130の周囲の部分と、有孔板部140の被接着接合部142の上面と、を接着接合する。これにより、上面部110の下面と、被接着接合部142の上面と、の間に接着接合層150が形成される。上記接着剤が硬化することで、ボンネット100に対して有孔板部140が固定される。これにより、吸気口120が構成される。
上述のような製造方法によれば、接着剤によりボンネット100に対して有孔板部140を固定する構成としているので、例えば、溶接接合によりボンネット100に対して有孔板部140を固定する場合と比べて、吸気口120を容易に形成することができる。また、溶接接合に伴う熱により、有孔板部140及びボンネット100に熱変形が生じることを抑制することができる。
また、溶接接合により有孔板部140とボンネット100とを接合する場合には、有孔板部140及びボンネット100の材料は互いに溶接接合が可能なものに制限される。一方、上述のような製造方法によれば、有孔板部140及びボンネット100の材料として溶接接合が可能な材料以外のものを用いることができ、材料の自由度を向上させることができる。
また、例えば、スポット溶接によりボンネット100に対して有孔板部140を固定する場合には、ボンネット100の外面に溶接の跡が形成されるが、上述のような製造方法によれば、このような溶接の跡が形成されることを抑制することができ、見栄えを向上させることができる。
また、有孔板部140とボンネット100とを溶接接合する場合には、被接着接合部142の上面の加工精度が低ければ(表面粗さが大きければ)、被接着接合部142の上面とボンネット100の内面との間に形成された隙間に起因して有孔板部140が変形して接合されるおそれがあり、見栄えよく接合し難い。一方、上述のような製造方法によれば、上記隙間を接着接合層150により埋めることで、有孔板部140とボンネット100とを見栄えよく接合することができる。また、上述のように、被接着接合部142の表面粗さを比較的大きくしたことで、接着接合層150による接着強度を向上させることができる。
また、例えば、有孔板部140とボンネット100とをねじやリベットで固定する場合には、ねじ等を締めるためのスペースが必要となるが、上述のような製造方法によれば、上記スペースが不要となる。
次に、図1及び図3を用いて、キャビン12の詳細について説明する。
キャビン12には、ステアリングホイール13やペダル等が設けられるコントロールパネル(不図示)が配置される。コントロールパネルは、内部にトラクタ1の操作に関する種々の電装部品が収容される。コントロールパネルは、キャビン12の前面を構成するパネル部12aに取り付けられる。
パネル部12aは、図3に示すように、キャビン12の前面における左右方向中央に配置される。パネル部12aは、厚さ方向を前後方向に沿わせた板形状とされている。パネル部12aは、後面にコントロールパネルが取り付けられる。パネル部12aの前面と、ボンネット100の後端部と、の間には、所定の空間Rが形成されている。
次に、図2、図3、図8から図10までを用いて、スペーサ200の詳細について説明する。
スペーサ200は、空間Rを覆うものである。スペーサ200は、ボンネット100の上面部110及び側面部170の後端部に対応した三方枠形状とされている。スペーサ200は、図2に示すように、ボンネット100の内部のマフラ本体11aよりも後方に位置する。スペーサ200は、外面部210、前面部220、突部230及び取付部240を具備する。
外面部210は、ボンネット100の後方の空間Rの上方及び左右両側方を覆うものである。外面部210は、上面部211及び側面部213を具備する。
上面部211は、空間Rの上方を覆うものである。上面部211は、厚さ方向を上下方向に沿わせた板形状とされている。上面部211は、平面視において略矩形状とされている。上面部211は、ボンネット100の上面部110に対応した形状とされている。具体的には、上面部211は、正面視において、左右方向中央を頂点とした湾曲面形状とされている。上面部211は、上面排気口212を具備する。
上面排気口212は、空間Rと上面部211の外部(上方側の空間)とを連通するものである。上面排気口212は、上面部211の左右方向中央に形成される。上面排気口212は、図2及び図3に示すように、少なくとも一部の左右方向位置が、ボンネット100の開口部130の少なくとも一部の左右方向位置と一致する。図例では、上面排気口212の左右の幅内に、一対の開口部130の全体の左右方向位置が納まるように配置されている。
また、図2に示すように、上面排気口212の左側部分は、左右方向位置がマフラ本体11aの右側部分の左右方向位置と一致する。上面排気口212は、開口部212a及びカバー部212bを具備する。
開口部212aは、上面部211を上下に貫通する開口である。開口部212aは、平面視において左右に長尺な矩形状とされている。
カバー部212bは、開口部212aを内側から覆うものである。カバー部212bは、上下に貫通する複数の孔を有する有孔板状部材によって形成される。有孔板状部材としては、上述した有孔板部140と同様なパンチングメタルが採用可能である。なお、有孔板状部材としては、上記パンチングメタルに限られず、種々の有孔板状部材を採用可能である。
側面部213は、空間Rの左右両側方を覆うものである。側面部213は、上面部211の左右方向両端部から、下方に延びるように一対設けられる。側面部213は、厚さ方向を左右方向に沿わせた板形状とされている。側面部213は、側面視において略矩形状とされている。側面部213と上面部211との角部は、湾曲面形状とされている。
側面部213は、ボンネット100の側面部170に対応した形状とされている。具体的には、側面部213の上側部分は、正面視において湾曲面形状とされている。また、側面部213の下側部分は、正面視において上下方向中間部を頂点として屈曲した二つの平坦面からなる形状とされている。側面部213の上側部分と下側部分との境界は、僅かに屈曲している。側面部213は、側面排気口214を具備する。
側面排気口214は、空間Rと側面部213の外部(側方側の空間)とを連通するものである。側面排気口214は、第一側面排気口215及び第二側面排気口216を具備する。
第一側面排気口215は、側面部213の上側部分に設けられる。第一側面排気口215は、図10に示すように、少なくとも一部の上下方向位置が、ボンネット100の内部のマフラ本体11aの少なくとも一部の上下方向位置と一致する。具体的には、第一側面排気口215の下側部分の上下方向位置が、マフラ本体11aの上側部分の上下方向位置と一致する。第一側面排気口215は、開口部215a及びカバー部215bを具備する。
開口部215aは、側面部213の上側部分を左右に貫通する開口である。開口部215aは、側面視において上下に長尺な矩形状とされている。
カバー部215bは、開口部215aを内側から覆うものである。カバー部215bは、上面排気口212のカバー部212bと同様の有孔板状部材によって形成される。
第二側面排気口216は、側面部213の下側部分に設けられる。第二側面排気口216は、開口部216a及びカバー部216bを具備する。
開口部216aは、側面部213の下側部分を左右に貫通する開口である。開口部216aは、側面視において上下に長尺な矩形状とされている。
カバー部216bは、開口部216aを内側から覆うものである。カバー部216bは、上面排気口212のカバー部212bと同様の有孔板状部材によって形成される。
前面部220は、外面部210の前端部に設けられ、前方を向くものである。前面部220は、上方側前面部221、側方側前面部222及び孔部223を具備する。
上方側前面部221は、上面部211の前端部から内側(下方)に延びるように形成される。上方側前面部221は、厚さ方向を前後方向に向けた板形状とされている。上方側前面部221の上端部は、上面部211の形状に応じた形状とされている。上方側前面部221の下端部は、水平方向に延びる直線状とされている。
側方側前面部222は、側面部213の前端部から内側(右側の側面部213においては左方、左側の側面部213においては右方)に延びるように形成される。側方側前面部222は、厚さ方向を前後方向に向けた板形状とされている。側方側前面部222の外端部及び内端部は、側面部213の形状に応じた形状とされている。
孔部223は、前面部220において前後方向に貫通する孔である。孔部223は、前面部220における内端部から外方側に延びる長孔形状とされている。また、孔部223は、前面部220において内側に開口する切欠き形状とされている。孔部223は、前面部220において複数設けられる。
具体的には、孔部223は、図8及び図9に示すように、上方側前面部221において上面部211の湾曲面の頂点に対応する位置に設けられる。また、孔部223は、上面部211と側面部213との境界の湾曲面の頂点に対応する位置に設けられる。また、孔部223は、側方側前面部222において、側面部213の上側部分と下側部分との境界に対応する位置に設けられる。また、孔部223は、側方側前面部222において、側面部213の下側部分の屈曲した部分の頂点に対応する位置に設けられる。
突部230は、前面部220の内端部から前方に突出するように設けられるものである。換言すれば、突部230は、前面部220によって外面部210の前端部と接続される。突部230は、外面部210の前方において段差を形成するように、外面部210に対して内側に位置する。突部230は、上方側突部231及び側方側突部232を具備する。
上方側突部231は、上方側前面部221の下端部から前方に突出する部分である。上方側突部231は、厚さ方向を上下方向に向けた板形状とされている。上方側突部231は、上方側前面部221の下端部に応じた形状とされている。上方側突部231の前端部の前後方向位置は、図10に示すように、ボンネット100の後端部の前後方向位置と概ね一致する。
側方側突部232は、側方側前面部222の内端部から前方に突出する部分である。側方側突部232は、厚さ方向を左右方向に向けた板形状とされている。側方側突部232は、側方側前面部222の内端部に応じた形状とされている。側方側突部232と上方側突部231との角部は、湾曲面形状とされている。側方側突部232は、突出寸法が上方側突部231の突出寸法よりも大きく形成されている。側方側突部232の前端部の前後方向位置は、図10に示すように、ボンネット100の後端部の前後方向位置よりも前方に位置する。
取付部240は、キャビン12のパネル部12aに対して固定されるものである。取付部240は、上方側取付部241と側方側取付部242とを具備する。
上方側取付部241は、上面部211の下面から下方に延びるように設けられる。上方側取付部241は、上面部211の左右両側に一対設けられる。上方側取付部241は、下方に向かうに従い左右方向における内側に向かうように斜めに配置される。上方側取付部241は、下端部がパネル部12aの前面に対して固定される。
側方側取付部242は、側面部213の内面から、内側に延びるように設けられる。側方側取付部242は、第一側面排気口215と第二側面排気口216との間に設けられる。側方側取付部242は、内端部がパネル部12aの前面に対して固定される。
上述の如く構成されたスペーサ200は、ボンネット100の後方の空間Rを覆いながらも、ボンネット100の内部で発生した熱がスペーサ200の内部に滞留することを抑制することができる。
すなわち、吸気口120を介して、ボンネット100の内部に導入された空気は、エンジンファンによって後方へ送られる。上記後方へ送られた空気の一部は、マフラ本体11a等の装置の熱を奪うと共に、ボンネット100の後方の空間Rに送られる。
上記空間Rに送られた空気(熱気)は、上面排気口212及び側面排気口214(第一側面排気口215及び第二側面排気口216)を介して排出される。これにより、ボンネット100の内部の温度を下げることができる。また、スペーサ200の後方に配置されたキャビン12内の電装部品に過度に熱が伝わることを抑制することができる。
また、上面排気口212は、一部の左右方向位置が一対の開口部130の一部の左右方向位置と一致する。これにより、開口部130から導入され、ボンネット100内のファンを介して上面排気口212から排出される前後方向の空気の流れを形成し易い構成とすることができ、ボンネット100の内部を効率よく冷却することができる。
また、上面排気口212は、一部の左右方向位置がマフラ本体11aの一部の左右方向位置と一致する。これにより、比較的熱が発生し易いマフラ本体11aから熱を奪った空気を、上面排気口212を介して速やかに排出することができる。
また、第一側面排気口215は、一部の上下方向位置が、マフラ本体11aの少なくとも一部の上下方向位置と一致する。これにより、比較的熱が発生し易いマフラ本体11aから熱を奪った空気を、第一側面排気口215を介して速やかに排出することができる。
また、外面部210に対して段差を形成するように前面部220及び突部230を設けたことで、スペーサ200の表面積を大きくすることができ、好適に放熱可能な構成としている。また、外面部210に対して段差を形成したことで、ボンネット100の内部において前後方向に流通する空気の流れを乱し、上方に開口する上面排気口212及び左右両側方に開口する側面排気口214に空気を導き易くすることができる。
また、前面部220に、孔部223を設けたことで、上面排気口212及び側面排気口214に加えて、孔部223を介して熱をより好適に排出することができる。
上述の如く構成されたスペーサ200は、例えば、以下のようにして形成可能である。
外面部210及び前面部220は、金属製の板材を適宜屈曲して形成可能である。本実施形態では、前面部220に孔部223が形成されているので、外面部210に対する前面部220の屈曲や、孔部223が形成された部分を頂点とした屈曲を行い易い構成としている。
また、突部230は、前面部220の形状に対応するように屈曲された金属製の板材を、前面部220に溶接等により固定することで形成可能である。
また、上面排気口212及び側面排気口214は、上面部211の開口部212a及び側面部213の開口部215a及び開口部216aを内側から覆うように、上面部211及び側面部213の内面に対して、カバー部212b、カバー部215b及びカバー部216bを固定することで形成可能である。上記カバー部212b、カバー部215b及びカバー部216bを固定は、溶接によって行うことが可能である。なお、カバー部215b及びカバー部216bを固定は、ボンネット100の吸気口120と同様、接着剤を用いて行うことも可能である。
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、
ボンネット100と、
前記ボンネット100の後方に配置されるキャビン12と、
前記ボンネット100と前記キャビン12との間に配置されるスペーサ200と、
を具備するトラクタ1であって、
前記スペーサ200は、
前記ボンネット100の後方の空間Rの上方及び左右両側方を覆う外面部210と、
前記外面部210に設けられ、前記空間Rと当該スペーサ200の外部とを連通する排気口(上面排気口212、側面排気口214)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、ボンネット100の内部で発生した熱がスペーサ200の内部に滞留することを抑制することができる。すなわち、スペーサ200の排気口(上面排気口212、側面排気口214)を介して、ボンネット100の内部で発生した熱を排出することができ、熱がスペーサ200において滞留することを抑制することができる。これにより、ボンネット100の内部の温度を下げることができる。また、スペーサ200の後方に配置されたキャビン12内の電装部品に過度に熱が伝わることを抑制することができる。
また、前記外面部210は、
前記空間Rの上方を覆う上面部211を有し、
前記排気口は、
前記上面部211に設けられる上面排気口212を含むものである。
このように構成することにより、スペーサ200の上方において熱気を排出することができる。
また、前記ボンネット100の上面部110(上面)には、当該ボンネットの内部に空気を導入する開口部130が設けられ、
前記上面排気口212は、
当該上面排気口212の少なくとも一部の左右方向位置が、前記開口部130の少なくとも一部の左右方向位置と一致するように配置されるものである。
このように構成することにより、ボンネット100の内部の温度をより好適に下げることができる。すなわち、開口部130から導入され、ボンネット100内のエンジンファンを介して上面排気口212から排出される前後方向の空気の流れを形成し易い構成とすることができる。これにより、ボンネット100の内部を効率よく冷却することができる。
また、前記外面部210は、
前記空間Rの左右両側方を覆う側面部213を有し、
前記排気口は、
前記側面部213に設けられる側面排気口214を含むものである。
このように構成することにより、スペーサ200の側方において熱気を排出することができる。
また、前記側面排気口214は、
当該側面排気口214の少なくとも一部の上下方向位置が、前記ボンネット100の内部に配置されるマフラ本体11aの少なくとも一部の上下方向位置と一致するように配置されるものである。
このように構成することにより、ボンネット100の内部で発生した熱をより好適に排出することができる。すなわち、比較的熱が発生し易いマフラ本体11aから熱を奪った空気を、側面排気口214を介して速やかに排出し易い構成とすることができる。
また、前記排気口(上面排気口212及び側面排気口214)は、
前記ボンネット100の内部に配置されるマフラ本体11aよりも後方に位置するものである。
このように構成することにより、ボンネット100の内部で発生した熱をより好適に排出することができる。すなわち、比較的熱が発生し易いマフラ本体11aの後方において熱を排出することで、より好適に熱を排出することができる。
また、前記スペーサ200は、
前記外面部210の前方において段差を形成するように、当該外面部210に対して内側に位置すると共に前方に突出する突部230と、
前記外面部210と前記突部230とを接続し、前方を向く前面部220と、
を具備するものである。
このように構成することにより、ボンネット100の内部で発生した熱をより好適に排出することができる。すなわち、スペーサ200の表面積を大きくすることで、好適に放熱可能な構成としている。また、外面部210に対して段差を形成したことで、ボンネット100の内部において前後方向に流通する空気の流れを乱し、スペーサ200の外面部210において外方(前後方向に直交する方向)に開口する排気口(上面排気口212及び側面排気口214)に空気を導き易くすることができる。
また、前記前面部220には、前記空間Rと前記スペーサ200の外部とを連通する孔部223が設けられるものである。
このように構成することにより、ボンネット100の内部で発生した熱をより好適に排出することができる。すなわち、排気口(上面排気口212及び側面排気口214)に加えて、孔部223を介して熱をより好適に排出することができる。
また、前記孔部223は、
前記前面部220における内端部から外方側に延びる長孔形状とされているものである。
このように構成することにより、比較的大きく形成された孔部223を介して、熱をより好適に排出することができる。
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る上面排気口212及び側面排気口214は、本発明に係る排気口の一形態である。
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、トラクタ1のスペーサ200としては、上記第一実施形態の構成に限られない。具体的には、スペーサ200の構成を、図11に示す本発明の第二実施形態に係る構成としてもよい。
第二実施形態に係るスペーサ200は、スペーサ200の側面部213に側面排気口214が設けられていない点で第一実施形態と異なる。すなわち、第二実施形態に係るスペーサ200の外面部210は、上面部211のみに排気口(上面排気口212)を設けた構成とされている。なお、第二実施形態に係るスペーサ200は、側面部213の構成を除いて、上記第一実施形態に係るスペーサ200と概ね同様である。
以上のように、本発明の第二実施形態に係る外面部210は、
前記空間Rの左右両側方を覆う側面部213を有し、
前記排気口(側面排気口214)は、
前記側面部213には設けられていないものである。
このように構成することにより、熱がスペーサ200の内部に滞留することを抑制しながらも、側面視における見栄えを向上させることができる。すなわち、側面部213には排気口(側面排気口214)を設けないことで、スペーサ200の内部が側面から見えることを抑制することができる。
また、上記各実施形態では、スペーサ200の前面部220に孔部223を設けた例を示したが、このような態様に限られず、孔部223を設けない構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、スペーサ200に前面部220及び突部230を設けた例を示したが、このような態様に限られず、前面部220及び突部230を設けない構成としてもよい。
また、排気口(上面排気口212及び側面排気口214)の構成としては上記各実施形態の態様に限られず、種々の態様を採用可能である。すなわち、排気口(上面排気口212及び側面排気口214)の配置や形状は、スペーサ200の強度を確保する観点や、排気効率の観点から適宜設定可能である。
また、トラクタ1のボンネット100としては、上記各実施形態の構成に限られない。具体的には、ボンネット100の構成を、図12に示す本発明の第三実施形態に係る構成としてもよい。
第三実施形態に係るボンネット100は、有孔板部140の被接着接合部142に孔部を設けない点で第一実施形態と異なる。すなわち、第三実施形態に係る有孔板部140は、カバー部141のみに孔部が形成された構成とされている。なお、第三実施形態に係る有孔板部140は、被接着接合部142の構成を除いて、上記第一実施形態に係る有孔板部140と概ね同様である。
このように構成することにより、ボンネット100に対して有孔板部140をより好適に接着接合することができる。すなわち、被接着接合部142のボンネット100に対する接着面積を確保することで、有孔板部140をより好適に接着接合することができる。
また、上記各実施形態では、被接着接合部142の表面粗さ(最大高さRz)が100μm以上としたが、このような態様に限られず、被接着接合部142の表面粗さ(最大高さRz)を100μm未満としてもよい。
また、上記各実施形態では、被接着接合部142の上面の表面粗さをカバー部141の上面の表面粗さよりも粗く形成した構成としたが、このような態様に限られない。例えば、被接着接合部142の上面の表面粗さをカバー部141の上面の表面粗さと同様としてもよい。
また、上記各実施形態では、カバー部141の外面を、ボンネット100の外面と面一となるように形成した構成としたが、このような態様に限られない。例えば、カバー部141の外面が、ボンネット100の外面に対して上方又は下方に位置する構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、一対の開口部130に対応するように、一つの有孔板部140に対して一対のカバー部141を設けた構成としたが、このような態様に限られない。例えば、一対の開口部130に対して、一対の有孔板部140を設けた構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、接着接合層150において、非接着接合部151を形成した構成としたが、このような態様に限られない。例えば、非接着接合部151を形成しない構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、作業車として、トラクタ1を例示したが、このような態様に限られない。例えば作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。