JP7041412B2 - 金属複合体の材料混合比推定方法 - Google Patents
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Description
しかし、二つの異種材料からなるパイプを管継手で連結する場合、それぞれのパイプの間に大きな温度差が生じたり、或いは内部流体の温度変化や高温流体の断続的な流動によって加熱、冷却の熱サイクルが生じたりすると、それぞれのパイプ及び該パイプを連結する管継手に、大きな熱応力が生じる。
そこで、例えば、特許文献1には、パイプや管継手の異種材料の接合界面の残留応力、及び温度差の大きな使用環境で発生する熱応力を緩和して、破断(又は亀裂の発生)等を防止するものとして傾斜機能性パイプ及び傾斜機能性管継手が提案されている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、材料混合比が未知の金属複合体に対し、非破壊的な測定を行うことにより、短時間で簡単かつ効率的に金属複合体の材料混合比を推定することができる省力性、実用性、正確性に優れた金属複合体の材料混合比推定方法を提供することを目的とする。
前記金属複合体は、前記2種類の金属材料が一方向に傾斜配合された傾斜機能性材の一部であり、前記金属複合体の外表面の色、線膨張係数、熱伝導率及び電気伝導率のいずれか1又は2以上を測定した材料特性値と、前記2種類の金属材料の混合比が既知の基準金属複合体の対応する基準値とを比較して、前記金属複合体の材料混合比を推定する。
ここで、外表面の色から材料混合比を推定できる金属複合体は、材料混合比の変化に伴って外表面の色が変化するものに限られる。したがって、2種類の金属の一方は、銅や金等の有色金属である必要があるが、その他の金属の組合せは適宜、選択することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る金属複合体の材料混合比推定方法は、2種類の金属材料(例えば、銅とステンレス鋼(SUS304))の混合比が未知の金属複合体の外表面の色を測定した材料特性値と、同じ2種類の金属材料の混合比が既知の基準金属複合体の外表面の色を測定した基準値とを比較して、金属複合体の材料混合比を推定するものである。なお、予め、2種類の金属材料の混合比が異なる複数の基準金属複合体について基準値となる外表面の色を測定することにより、混合比の変化に対する外表面の色の変化の傾向(混合比の変化と外表面の色の変化との相関)から、所望の混合比における外表面の色を知ることができる。その結果、金属複合体における2種類の金属材料の混合比がどのような割合であっても、その材料混合比を短時間で正確に推定することができる。
特に、金属複合体が、2種類の金属材料が一方向(例えば、軸方向)に傾斜配合された傾斜機能性材(例えば、傾斜機能性管継手や傾斜機能性パイプ)の一部である場合は、材料混合比が異なる複数箇所で各金属複合体の外表面の色を測定することにより、各金属複合体の材料混合比を推定し、傾斜機能性材全体としての傾斜特性を短時間で確認することができる。また、その結果を基に、ビッカース硬さ等の機械的特性や、線膨張係数、熱伝導率、電気伝導率等の物理的特性も推定することが可能であり、品質評価、品質保証に好適に用いることができる。
なお、外表面の色の測定には、分光測色計(例えば、コニカミノルタオプティクス社製のCM-5)が好適に用いられる。分光測色計を用いて、金属複合体及び基準金属複合体のL*a*b*表色系における明度L*、色座標a*、b*をそれぞれ測定し、これらを比較することにより、金属複合体の材料混合比を推定することができる。
線膨張係数は、材料混合比の変化に対して単調増加又は単調減少するため、混合比が未知の金属複合体の線膨張係数を測定すれば、線膨張係数に一意に対応する材料混合比を推定することができる。また、その結果を基に、ビッカース硬さ等の機械的特性や、線膨張係数以外の熱伝導率、電気伝導率等の物理的特性も推定することが可能である。
材料混合比の変化に対する熱伝導率の変化は線形ではないが、熱伝導率は、材料混合比の変化に対して単調増加又は単調減少するため、混合比が未知の金属複合体の熱伝導率を測定すれば、熱伝導率に一意に対応する材料混合比を推定することができる。また、その結果を基に、ビッカース硬さ等の機械的特性や、熱伝導率以外の線膨張係数や電気伝導率等の物理的特性も推定することが可能である。
なお、電気伝導率も、線膨張係数や熱伝導率と同様の傾向を示すので、線膨張係数や熱伝導率の代わりに電気伝導率を測定して、材料混合比を推定し、さらにビッカース硬さ等の機械的特性やその他の物理的特性を推定することもできる。
(実施例1)
銅とステンレス鋼(SUS304)を傾斜配合した傾斜機能性管継手を試料として評価を行った。傾斜機能性管継手の製造には、アトマイズされた純度99.5%で粒径75μm以下の銅粉、粒径75μm以下のステンレス(SUS304)粉を用いた。なお、各金属材料の化学組成と粉体特性は表1に示す通りである。
ΔE*ab={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2 (1)
ここで、
ΔL*:L*a*b*表色系における2つの物体色の明度L*の差
Δa*:L*a*b*表色系における2つの物体色の色座標a*の差
Δb*:L*a*b*表色系における2つの物体色の色座標b*の差
である。
本実施例では、上記のいずれの試料についても銅100%の面(位置)で測定した外表面の色を基準とし、各混合比に対応する位置で測定した外表面の色との色差を求めた。
なお、図2に示した回帰直線は、次式(2)~(5)の通りである。
y1=2.245x+1.266 (2)
y2=2.657x+3.175 (3)
y3=2.052x+3.980 (4)
y4=2.012x+3.637 (5)
ここで、
x:銅/ステンレス(SUS304)の混合比(mixing ratio)
y1:正反射光を含む場合の不動態被膜面における色差(Color differece in case of passive film with regular reflection)
y2:正反射光を除去した場合の不動態被膜面における色差(Color differece in case of passive film without regular reflection)
y3:正反射光を含む場合の研磨面における色差(Color differece in case of polished surface with regular reflection)
y4:正反射光を除去した場合の研磨面における色差(Color differece in case of polished surface without regular reflection)
である。
y=9.959x+55.71 (6)
なお、
x:銅/ステンレス(SUS304)の混合比(mixing ratio)
y:ビッカース硬さ(Vickers hardness)
である。
ここで、上式(2)~(5)におけるyn(n=1、2、3、4)とxとの相関関数は0.92~0.99、上式(6)におけるyとxとの相関係数は0.98であり、いずれも0.9以上を示すことから、ほとんど完全な相関関係が認められた。さらに、これらの相関係数を掛け合わせて混合相関係数を求めたところ、0.91~0.97となり、いずれも0.9以上を示すことから、ほとんど完全な相関関係が認められた。
以上の結果から、2種類の金属材料の混合比が未知の金属複合体について、光学的特性である外表面の色の測定を行うことにより、その材料混合比を推定できると共に、機械的特性である硬さを推定でき、その信頼性(確度)が極めて高いことが確認された。したがって、本発明における金属複合体の外表面の色測定による材料混合比推定方法は、非破壊的手法による品質評価、品質保証に有効であるといえる。
実施例1と同様にして、銅とステンレス鋼(SUS304)の混合比を、銅100%(ステンレス0%)からステンレス100%(銅0%)まで、20%ずつ変化させた金属複合体(銅100%及びステンレス100%の場合、複合体ではないが、説明の便宜上、複合体と表記した)を製造し、それぞれについて熱膨張係数を測定した結果を図4に示す。なお、測定温度は、473K、523K、573K、623K、673Kとした。図4中、横軸は銅/ステンレス(SUS304)の混合比であり、縦軸は熱膨張係数である。図4から、測定温度が673Kの場合を除いて、ステンレスの割合の減少とともに、熱膨張係数が増加する傾向が確認された。
よって、2種類の金属材料の混合比が未知の金属複合体について、適正な測定温度(例えば、473K~623K)で熱膨張係数を測定することにより、その材料混合比を推定できることが確認された。
実施例1と同様にして、銅とステンレス鋼(SUS304)の混合比を、銅100%(ステンレス0%)からステンレス100%(銅0%)まで、20%ずつ変化させた金属複合体(銅100%及びステンレス100%の場合、複合体ではないが、説明の便宜上、複合体と表記した)を製造し、それぞれについて熱伝導率を測定した。その結果を図5に示す。図5中、横軸は銅/ステンレス(SUS304)の混合比であり、縦軸は熱伝導率である。図5において、材料混合比の変化に対する熱伝導率の変化は線形ではないが、ステンレスの割合の減少とともに、熱伝導率が単調増加する傾向が確認された。
よって、2種類の金属材料の混合比が未知の金属複合体について、熱伝導率を測定することにより、その材料混合比を推定できることが確認された。
Claims (4)
- 2種類の金属材料を混合して形成された金属複合体の材料混合比推定方法であって、
前記金属複合体は、前記2種類の金属材料が一方向に傾斜配合された傾斜機能性材の一部であり、前記金属複合体の外表面の色、線膨張係数、熱伝導率及び電気伝導率のいずれか1又は2以上を測定した材料特性値と、前記2種類の金属材料の混合比が既知の基準金属複合体の対応する基準値とを比較して、前記金属複合体の材料混合比を推定することを特徴とする金属複合体の材料混合比推定方法。 - 請求項1記載の金属複合体の材料混合比推定方法において、前記基準金属複合体の前記基準値の測定は、前記2種類の金属材料の混合比が異なる複数の前記基準金属複合体に対して行うことを特徴とする金属複合体の材料混合比推定方法。
- 請求項1又は2記載の金属複合体の材料混合比推定方法において、前記材料特性値の測定対象は前記金属複合体の外表面の色であって、該色の測定は分光測色計によって行うことを特徴とする金属複合体の材料混合比推定方法。
- 請求項1~3のいずれか1項記載の金属複合体の材料混合比推定方法において、前記傾斜機能性材で各金属複合体の材料混合比を推定し、前記傾斜機能性材の機械的特性又は物理的特性を推定することを特徴とする材料混合比推定方法。
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中野 光一 他,金属系傾斜機能性複合材料の熱的特性に関する研究,「高田技報」(TAKADA TECHNICAL REPORT),1995年11月01日,Vol.6,pp. 16-21 |
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