以下、画像読取装置を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。この第1実施形態における画像読取装置は、例えばスキャナー装置を備えた複合機である。
図1に示すように、複合機11は、用紙などの媒体Pに印刷を行う印刷装置21と、印刷装置21の鉛直方向Zにおける上側に配置され、原稿Dを読み取り可能なスキャナー装置31とを備える。複合機11は、スキャン、コピー及び印刷の機能を備える。
複合機11の装置本体12に設けられた操作パネル13は、メニュー画面等を表示するための表示部14及び操作スイッチ等からなる操作部15を備える。例えば操作部15を操作することで、スキャン、コピー、印刷の要求が複合機11に与えられる。また、複合機11と通信ケーブルを通じて接続されたパーソナルコンピューター(PC)等からなる図示しないホスト装置からも、スキャン、印刷の要求が複合機11に与えられる。複合機11は、スキャン、コピーの要求時に、例えばスキャンジョブを受け付ける。
印刷装置21は、装置本体12の下部に挿着されたカセット17から供給(給送)された媒体Pに印刷を施す。印刷後の媒体Pは装置本体12の排出口21Aからスタッカー18上に排出される。スキャナー装置31が原稿Dを読み取り、その読み取った画像のデータを例えばホスト装置へ転送する。コピーは、スキャナー装置31が読み取った原稿Dの画像データに基づく画像を、印刷装置21が媒体Pに印刷することで行われる。このため、スキャンとコピーが行われるときにスキャナー装置31による原稿Dの読み取りが行われる。
図1に示すように、スキャナー装置31は、原稿を定置可能なフラットベッド型の原稿台33(図2参照)を上部に有する本体32と、原稿台33に対して開閉可能な原稿台カバー34とを備えている。そして、本例では、原稿台カバー34の図1では上側となる背面部には、セットされた複数枚の原稿を自動で1枚ずつ搬送する原稿搬送部35が装備されている。原稿搬送部35は、複数枚の原稿Dをセット可能な載置台36(セットトレイ)と、載置台36上の原稿Dを一枚ずつ搬送する搬送機構部37とを備える。搬送機構部37は、載置台36上の原稿を読取位置まで送り込む給送と、画像が読み取られた後の原稿Dを送り出す排出とを含む搬送を行う。画像読み取り後の原稿Dは、例えば載置台36と原稿台カバー34との間の排出領域に排出される。
図2、図3に示すように、スキャナー装置31の本体32は、図1に示す原稿台カバー34と対向する部分に開口部を有する箱状のケース38を有している。ケース38の大きな開口部に四角板状の大きなガラス板40Aが嵌め込まれることにより原稿台33が形成されている。また、ケース38の小さな開口部に長四角板状の小さなガラス板40Bが嵌め込まれることにより読取窓39が形成されている。原稿台33のガラス板40Aは、フラットベッド方式で読み取られる原稿Dが定置される領域であり、スキャナー装置31が読取可能な最大原稿サイズよりも若干広いサイズを有している。また、読取窓39のガラス板40Bは、原稿搬送部35から搬送された原稿Dの画像が読み取られる読取位置にある。本実施形態では、原稿Dの位置を規定するガラス板40A,40Bを特に区別しない場合は、「ガラス板40」という。なお、ガラス板40は、原稿Dの位置を規定する透明部材の一例である。
図1に示す原稿台カバー34は、図2、図3に示す原稿台33に定置された原稿Dを押さえる閉位置と、原稿台33に原稿Dをセットしたり読取り後の原稿Dを取り除いたりする際の開状態とに回動可能である。スキャナー装置31は、フラットベット型の原稿台33に定置された原稿Dを読み取る。また、図1に示す原稿搬送部35によって搬送機構部37内へ送り込まれた原稿Dは、閉状態にある原稿台カバー34の裏面における読取窓39(図3参照)とほぼ対向する位置へ送り出され、読取窓39上で画像が読み取られた後、排出領域へ排出される。
このように本実施形態のスキャナー装置31は、フラットベット型の原稿台33に定置された原稿Dを読み取るFB(Flatbed)モードと、原稿搬送部35により載置台36から搬送された原稿Dを搬送途中における読取窓39と対応する読取位置で読み取るADF(Auto Document Feeder)モードとの2種類のモードで動作する。
図2に示すように、ケース38内には、主走査方向Xに沿って長く延びた光学モジュールの一例としての読取モジュール50と、原稿D(図3参照)と読取モジュール50とを副走査方向Yに相対移動させる搬送部60とが設けられている。搬送部60は、読取モジュール50を搭載するセンシング用のキャリッジ61と、キャリッジ61を案内レール62に沿って副走査方向Yに搬送(移送)させる動力をキャリッジ61に与える駆動機構63とを備える。
図2に示すように、読取モジュール50は、ガラス板40A,40Bを介して原稿D(図3参照)に光を照射する線状光源52と、線状光源52の延在方向である主走査方向Xに沿って配置され、原稿Dからの光を入射して原稿Dを読み取る読取素子53とを備える。読取モジュール50は、キャリッジ61と共に副走査方向Yに移動して原稿Dを読み取る。読取モジュール50は、長手方向(主走査方向X)に原稿Dの想定最大幅以上の長さを有する。一例として読取モジュール50の長さは、原稿Dの想定最大幅である例えばA3サイズ(幅320mm)又はA4サイズ(幅210mm)よりも、若干長い値に設定されている。
図2に示すように、駆動機構63は、キャリッジ61の動力源となる電動モーター64と、電動モーター64の動力をキャリッジ61に伝達する動力伝達機構65とを備える。動力伝達機構65は、電動モーター64の動力で回転する駆動プーリー66と案内レール62に沿って延びる板金部材32Aの両端部に配置された2つの従動プーリー67,68とに巻き掛けられてキャリッジ61を牽引する無端状のベルト69を備える。キャリッジ61は、ベルト69における案内レール62と平行に張設された部分の一部に連結部61Aを介して連結されている。そして、電動モーター64が正転駆動すると、キャリッジ61は往動方向Y1に移動(往動)し、電動モーター64が逆転駆動すると、キャリッジ61が復動方向Y2に移動(復動)する。読取モジュール50は、キャリッジ61が案内レール62に沿って副走査方向Yに移動する途中で、原稿台33に載置された原稿Dを読み取る。なお、キャリッジ61上の読取モジュール50は、フレキシブルケーブル54を介して装置本体12内に収容された制御部100と電気的に接続されている。読取モジュール50は、制御部100からの指令信号に従って読取り動作を行い、原稿Dの画像を読み取った読取信号を制御部100に出力する。制御部100は、読取信号に基づく読取データを不図示のホスト装置に転送する。
一方、図3に示す原稿搬送部35は、給送機構の一部を構成する不図示の給送ローラーおよび複数の給送ローラー対73により原稿は給送経路SPに沿って給送される。原稿は、その搬送途中の読取位置でガイド部34Aにより読取窓39側へ押さえられ、キャリッジ61上の読取モジュール50により読取窓39のガラス板40Bを介して読み取られる。読み取られた原稿は複数の排出ローラー対74により排出経路EPに沿って搬送機構部37から外側へ排出される。このようにADFモードでは、載置台36(図1参照)にセットされた複数枚の原稿Dが一枚ずつ搬送機構部37内へ給送され、搬送経路FPの途中の読取位置でキャリッジ61上の読取モジュール50により読み取られる。
また、図3に示すように、搬送機構部37内には、読取モジュール50による原稿の読取面(表面)と反対側の面(裏面)を排出経路EPの途中で読み取り可能な読取ユニット51が配置されている。このため、スキャナー装置31はADFモードにおいて原稿の両面の読取りも可能である。給送中の原稿を検知可能な第1検知部76の検知信号に基づいて読取位置での読取モジュール50による原稿の読取タイミングが決められる。また、排出中の原稿を検知可能な第2検知部77の検知信号に基づいて読取ユニット51による原稿の読取タイミングが決められる。また、読取ユニット51には、キャリッジ61上のものと同様の読取モジュール50が内蔵されている。
また、図3に示すように、キャリッジ61に搭載された読取モジュール50は、ガラス板40A,40Bにおける原稿Dの載置面と反対側に配置され、ガラス板40A,40Bの裏面と対向して位置する。読取モジュール50は、線状光源52と、読取素子53と、線状光源52及び読取素子53を投光及び受光が可能な状態に収容するハウジング55とを有している。なお、スキャナー装置31の本体32(図1も参照)の上面部には、シェーディング補正に用いる白基準データを取得する際の読取対象とされる反射率の高い均一な反射面を有する2つの白基準板78,79が配置されている。
FBモードで読取動作を行うときは、図3に二点鎖線で示すキャリッジ61が往動方向Y1へ移動することにより、ガラス板40A上の原稿Dを読取モジュール50により読み取る。原稿Dを読み取った後のキャリッジ61は、その読取終了位置から復動方向Y2に移動して待機位置に復帰する。
このように複合機11では、ADFモードでは原稿Dが読取モジュール50に対して副走査方向Yに移動し、FBモードでは読取モジュール50がガラス板40A上の原稿Dに対して副走査方向Yに移動する。そして、ADFモードとFBモードとのいずれのモードにおいても、読取モジュール50は、原稿Dに対して相対的に副走査方向Yに移動して原稿Dの画像を、図5に示すセンサー573により読み取る。本実施形態では、副走査方向Yが、読取モジュール50が読取対象の一例としての原稿Dに対して相対的に移動する移動方向に相当し、主走査方向Xが移動方向と交差する交差方向に相当する。
次に、図4を参照して、読取モジュール50の詳細な構成について説明する。図4に示すように、ガラス板40上の原稿Dに対して相対的に移動する読取モジュール50は、ガラス板40を介して原稿Dに光を照射する線状光源52と、原稿Dの読取面Dpから反射した光を集光及び受光する読取素子53とを備える。ガラス板40と対向する部分の開口55Aを介して、線状光源52の読取面Dpへの投光と、読取素子53の読取面Dpからの反射光の受光とが可能になっている。
図4に示す線状光源52は、線状光源52の光の主軸L1が、ガラス板40または読取面Dpの法線N1の方向に対して角度θ1で傾斜する姿勢で配置されている。線状光源52は、LED等の発光体521と、発光体521から出射された光を主走査方向Xに導きつつ角度θ1をなす方向へ導く導光部材としての例えばライトガイド522とを有している。ライトガイド522は、アクリル樹脂等の透明樹脂からなる棒形状を有する。ライトガイド522は、発光体521からの光を導いて、読取対象の帯状のエリアを均一な明るさで照明する。図4に示すように、ライトガイド522から導出される光の主軸L1は、ガラス板40に対して所定角度をなす。このため、読取素子53には原稿Dの正反射光は入射されず、原稿Dからの散乱反射光が入射される。原稿Dに反射して読取素子53に入射する光L2の主軸の方向を、読取素子53の光軸方向Z1という。本例では、読取素子53の光軸方向Z1が、ガラス板40と垂直な方向である鉛直方向Zと同じである。
図5は、読取モジュール50として、コンタクトイメージセンサーモジュール530(以下、「CISM(Contact Image Sensor Module)」ともいう。)を用いた例における読取素子53を示す。CISM530は、リニアイメージセンサーである。図5に示すように、CISM530を構成する読取素子53は、線状光源52(図4参照)の延在方向である主走査方向Xに沿って配置され、原稿Dから反射した散乱光を入射して集光させる結像光学機構56と、結像光学機構56が集光させた光の像を受光する受光素子57とを備える。結像光学機構56および受光素子57は、主走査方向Xに沿って延在する状態で、読取モジュール50(CISM530)に搭載されている。結像光学機構56と受光素子57は、ガラス板40に近い側からこの順番に配置されている。結像光学機構56は、ガラス板40と比較的近接した位置で対向している。結像光学機構56は、原稿Dの読取面Dpから入射した散乱反射光を受光素子57の受光面に結像させる機能を有する。結像光学機構56は、スリット811に入射した光を受光素子57に結像させるために設けられている。
図5に示す結像光学機構56は、主走査方向Xに沿って延在するスリット811を有する筐体80を備える。筐体80内には、結像光学系の構成部品が収容されている。原稿Dに反射した散乱光はスリット811から入射する。スリット811から入射した光L2は、図5に一点鎖線の矢印で示す光路で筐体80内の結像光学系で2回反射した後に、図7に示す第2スリット821から射出し、受光素子57に結像される。つまり、原稿Dから受光素子57までの光路長は焦点距離に設定され、読取面Dpの像が受光素子57に結像される。CISM530は、入射光が筐体80内で2回反射することで光路長が長く確保されるため、焦点深度が深くなっている。
図5に示す受光素子57は、基板571と、基板571上に実装された複数のセンサー573が1列に配列されてなるセンサー列572とを有している。センサー列572は、主走査方向Xに沿って1列に配列された複数個(例えばA3サイズ(長さ310mm)であれば15500個)のセンサー573を有している。センサー列572により主走査方向Xの「1ライン」の像を撮像可能である。なお、本実施形態では、センサー573は、結像対象の一例を構成する。
図6に示す結像光学機構56は、光入射用の第1スリット811を有する板状の第1遮光部材81と、光出射用の第2スリット821を有する板状の第2遮光部材82と、第1遮光部材81と第2遮光部材82との間に光軸方向Z1に間隔を開けて配置された複数のアパーチャー部材83,84とを有する。本例ではアパーチャー部材83,84は2つ設けられている。2つのアパーチャー部材83,84を、光の入射方向の上流側から順に、第1アパーチャー部材83、第2アパーチャー部材84とする。第1アパーチャー部材83は、主走査方向Xに一定のピッチで開口する複数のスリット831を有する。第2アパーチャー部材84も、主走査方向Xに一定のピッチで開口する複数のスリット841を有する。また、結像光学機構56は、第1鏡面の一例としての第1凹面鏡85が主走査方向Xに一定のピッチで1列に配列されてなる第1鏡面列の一例としての第1凹面鏡列851と、第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86が主走査方向Xに一定のピッチで1列に配列されてなる第2鏡面列の一例としての第2凹面鏡列861とを有する。
図6に示すように、第1遮光部材81と第2遮光部材82は、原稿Dの読取面Dpと直交する鉛直方向Zに対向し、2つの外壁部材87,88は副走査方向Yに対向している。これらの部材81,82,87,88により主走査方向Xに長く延びた四角筒状の筒体が構成される。
図7は、筐体80のうち外壁部材87,88を省略し、結像光学機構56において結像機能を担う主要構成を示す。なお、図7、図9等では、結像光学機構56の主走査方向Xの全長を、実際よりも短く模式化した構成を示している。図6、図7に示すように、原稿Dが載置されるガラス板40と対向する第1遮光部材81は、四角板形状を有している。第1遮光部材81には、主走査方向Xに延在するとともに光軸方向Z1に貫通する光入射用の第1スリット811が開口している。本例の構成では、第1スリット811は、主走査方向Xに読取対象の原稿Dの幅に相当する長さを有し、副走査方向Yには例えば0.5~1mmの範囲内の所定値の幅を有する。また、第2遮光部材82は、第1遮光部材81と同様の四角板形状を有し、第1遮光部材81に対してガラス板40から離れる側に所定の距離を隔てて対向する位置に配置されている。第2遮光部材82には、第1スリット811に対して副走査方向Yにずれた位置に主走査方向Xに延在する第2スリット821が開口している。第2スリット821は、第1スリット811と同様の開口形状および開口サイズを有する。すなわち、第2スリット821は、主走査方向Xに読取対象の原稿Dの幅に相当する長さを有し、副走査方向Yには例えば0.5~1mmの範囲内の所定値の幅を有する。
図7~図9に示すように、第2遮光部材82は、第1遮光部材81の第1スリット811と対向する位置に、複数の第1凹面鏡85が主走査方向Xに一定のピッチで1列に配列されてなる第1凹面鏡列851を有する。第1凹面鏡85は、原稿Dから入射した光を反射する。
また、図7~図9に示すように、第1遮光部材81は、第2遮光部材82の第2スリット821と対向する位置に、複数の第2凹面鏡86が主走査方向Xに一定のピッチで1列に配列されてなる第2凹面鏡列861を有する。第2凹面鏡86は、読取モジュール50の相対的な移動方向である副走査方向Yにおいて、第1凹面鏡85とは、ずれた位置に配置され、第1凹面鏡85で反射した光を反射して射出する。
また、図7~図9に示すように、第1遮光部材81と第2遮光部材82との間には、格子状の第1アパーチャー部材83と第2アパーチャー部材84とが、所定の間隔を開けた状態で互いに平行に配置されている。第1遮光部材81と第1アパーチャー部材83との間隔G1(図9)と、第2アパーチャー部材84と第2遮光部材82との間隔G2(図9)と、第1アパーチャー部材83と第2アパーチャー部材84との間隔G3(図9)は、入射した光のうち読取対象位置P1の像をセンサー573に結像させるうえで妨げとなる迷光を抑制しうる距離に設定されている。すなわち、第1遮光部材81と第2遮光部材82との間において、複数のアパーチャー部材83,84の光軸方向Z1における相対位置は、迷光を効果的に抑制しうる位置に設定されている。第1遮光部材81、第1アパーチャー部材83、第2アパーチャー部材84および第2遮光部材82は、光軸方向Z1に各間隔G1~G3を隔てて互いに平行に配置されている。
第1アパーチャー部材83は、主走査方向Xに所定の幅で一定のピッチで配置され且つ副走査方向Yに所定長さに延在する長孔よりなる複数のスリット831を有する。第2アパーチャー部材84は、第1アパーチャー部材83と同一形状および同一サイズを有し、主走査方向Xに所定の幅で一定のピッチで配置され且つ副走査方向Yに所定長さに延在する長孔よりなる複数のスリット841を有する。各凹面鏡85,86および各スリット831,841は、光軸方向Z1に個々に対応して位置する。
図7、図8に示すように、第1遮光部材81は、読取対象位置P1から入射した光が複数のアパーチャー部材83,84のうち光の入射側(原稿D側)に配置された第1アパーチャー部材83に向かう経路上に配置され、第1凹面鏡85に対向する位置にスリット811を有する。また、第2遮光部材82は、第2凹面鏡86に反射した光が複数のアパーチャー部材83,84のうちセンサー573に近い側に配置された第2アパーチャー部材84を通過してセンサー573へ向かう経路上に配置され、第2凹面鏡86に対向する位置にスリット821を有する。
第1遮光部材81と第2遮光部材82の各スリット811,821の副走査方向Yの幅S1,S2は、一例として、0.5~1.0mmの範囲内の値に設定されている。その幅は、例えば0.7mmである。スリット811,821の副走査方向Yの幅S1が大きくなると、第1凹面鏡85に当たらずスリット821をすり抜けてセンサー573に迷光が入射したり、第2遮光部材82の第1凹面鏡85以外の内壁面に反射した光が第2凹面鏡86に入射して迷光の原因になったりする。一方、スリット811の幅S1を小さくし過ぎると、第1凹面鏡85への入射光量が少なくなり、センサー573に結像される光の像が暗くなる。このため、スリット811の幅S1は、第1凹面鏡85の副走査方向Yの範囲の全域にスリット811からの光が照射可能な値に設定されている。第1遮光部材81のスリット811は、主走査方向Xに第1凹面鏡列851に光を入射可能な長さ範囲に亘って開口している。なお、迷光はセンサー573が受光しなければ問題はない。
また、図8に示すように、複数のアパーチャー部材83,84には、副走査方向Yにおいて原稿Dから入射した光LAが第1凹面鏡85へ向かう経路と、第1凹面鏡85で反射した光LBが第2凹面鏡86に向かう経路と、第2凹面鏡86で反射した光LCがセンサー573へ向かう経路とに亘る範囲でスリット831,841が開口している。
2つのアパーチャー部材83,84のスリット831,841は、光軸方向Z1において第1凹面鏡85と第2凹面鏡86と対向して位置する。このため、スリット831,841は、主走査方向Xにおいてそれぞれの幅中心が、第1凹面鏡85および第2凹面鏡86のそれぞれの幅中心と一致し、且つ第1凹面鏡85および第2凹面鏡86と同一のピッチで配列されている。スリット831,841の主走査方向Xの幅は、スリット811から入射した散乱光のうちスリット831を通り抜け、更に主走査方向Xに同じ位置のスリット841を通り抜けた光が、第1凹面鏡85の主走査方向Xの範囲に照射され且つこの範囲外に照射されない寸法に設定されている。
ここで、スリット831,841の主走査方向Xの幅は、広過ぎると迷光を抑制する効果が低下し、一方、狭くすると迷光を抑制できるもののセンサー573に結像される像が暗くなる。また、第1遮光部材81と第2遮光部材82に対する2つのアパーチャー部材83,84の光軸方向Z1の相対位置および間隔は、アパーチャー部材83,84のスリット831,841以外の部分で遮光しセンサー573に至る迷光を効果的に抑制可能に設定されている。
例えばアパーチャー部材を1つにすると、迷光を抑制するためにアパーチャー部材を光軸方向Z1に厚くする必要があり、この場合、スリットの幅が1mm、厚さが10mmほどになってしまい、射出成形では製造が困難であり、また、スリット孔の壁面からの反射による迷光が増加する。そのため、本実施形態では、2つの遮光部材81,82の間に複数のアパーチャー部材83,84を光軸方向Z1に間隔をおいて配置し、アパーチャー部材83,84の光軸方向Z1の総厚を相対的に小さく抑え、1枚のアパーチャー部材をすり抜けた迷光はもう一枚のアパーチャー部材の前面で遮光する構成とした。なお、迷光を抑制して必要なコントラストの像を結像し必要な解像度が得られるのであれば、アパーチャー部材は1つでもよい。また、アパーチャー部材が複数とは、主走査方向Xよりも副走査方向Yの幅の長いスリットを有する板状の部分であるアパーチャー部が、光軸方向Z1において第1凹面鏡85と第2凹面鏡86との間の位置に間隔をおいて配置される数が複数であることを指す。例えば、2つのアパーチャー部材83,84が一体成形された1部品で構成されても、本明細書では、アパーチャー部が光軸方向Z1に間隔をおいて配置された数が2つであれば、複数のアパーチャー部材83,84の数は2つとみなす。
また、第1遮光部材81と第2遮光部材82の内壁面、およびアパーチャー部材83,84の壁面には、表面で反射した光を散乱させて正反射光を抑制する減反射処理が施されている。減反射処理は、つや消し黒色処理またはサンドブラスト処理である。例えば、遮光部材81,82およびアパーチャー部材83,84を黒色の合成樹脂で成形したり、成形後の部材81~84の表面にサンドブラスト処理あるいはつや消し黒色塗装を施したりする。サンドブラスト処理を施す場合は、成形する合成樹脂は任意の色でもよいが、明度の低い色が好ましい。また、黒色の合成樹脂で成形した後、表面にサンドブラスト処理を施すことがより好ましい。
図8に示すように、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86は、副走査方向Yにおいて重ならない程度にずれた位置に配置され、図9に示すように、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86は、主走査方向Xにおいて重なる位置に配置されている。図8に示すように、第1遮光部材81は第2凹面鏡86の副走査方向Yにおける第1方向に第2凹面鏡86と隣接する状態で第2凹面鏡86と一体に形成されている。第2遮光部材82は第1凹面鏡85の副走査方向Yにおける第2方向に第1凹面鏡85と隣接する状態で第1凹面鏡85と一体に形成されている。ここで、第1方向と第2方向は、副走査方向Yにおける互いに反対向きの方向であり、図2、図4に示す例では、第1方向が復動方向Y2、第2方向が往動方向Y1となっている。このため、第1凹面鏡85が、第1遮光部材81のスリット811と光軸方向Z1に対向し、第2凹面鏡86が、第2遮光部材82のスリット821と光軸方向Z1に対向する位置関係となっている。
第1凹面鏡85および第2凹面鏡86は、主走査方向Xにおいてセンサー573と同一のピッチでセンサー573の数と同数設けられている。つまり、図7、図9に示す凹面鏡列851,861を構成する凹面鏡85,86の主走査方向Xにおける位置およびピッチは、図5に示すセンサー列572を構成するセンサー573の主走査方向Xの位置およびピッチに合わせて設定されている。センサー573は1画素20μm幅でA3サイズ(長さ310mm)であれば15500個配置される。主走査方向Xに隣接した凹面鏡で結像した光は隣接する凹面鏡で結像した像と一部重なって切れ目無く原稿幅一杯に結像することになる。例えば、RGBのカラーで画像を読み取る場合であれば、このセンサー列572がRGB独立で3列配置される。また、図8に示すように、両凹面鏡85,86は、入射光が第1凹面鏡85で反射した反射光が第2凹面鏡86へ向かい、その反射光が第2凹面鏡86でさらに反射した反射光がセンサー573に向かうように、光軸方向Z1と直交する仮想面に対して双方の凹面が互いに対向する側へ所定の傾斜角で傾いている。スリット831,841の主走査方向Xにおける位置およびピッチは、各凹面鏡85,86の主走査方向Xにおける位置およびピッチに等しい。
図9に示すように、本実施形態の結像光学機構56では、主走査方向Xの位置が同じになる1組の凹面鏡85,86および1組のスリット831,841等よりなる主走査方向Xにアレイピッチの幅1つ分に相当する部分によって、単位結像素子SLが構成される。結像光学機構56は、複数の単位結像素子SLが主走査方向Xに1列に配列されることにより構成される。なお、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86は、主走査方向Xに、例えば1.0~3.0mmの範囲内の値のピッチ寸法に設定され、一例として1.6mmピッチで配列されている。また、スリット831,841の主走査方向Xのピッチは、凹面鏡85,86のピッチと同じで1.6mmである。
図8に示すように、原稿の読取対象位置P1から第1スリット811を通過して広がった光LAが、第1凹面鏡85の副走査方向Yの範囲に照射されるように、第1スリット811の副走査方向Yの幅S1(図7参照)と、第1凹面鏡85の副走査方向Yの長さLY1とが設定されている。つまり、第1遮光部材81のスリット811の副走査方向Yにおける幅S1は、原稿Dから入射する光を副走査方向Yに制限することで、副走査方向Yにおいて第1凹面鏡85の範囲に照射される光の通過を許容し、かつ第1凹面鏡85の範囲以外へ照射される光の通過を制限する長さに設定されている。つまり、図8に示すように、第1遮光部材81に形成されたスリット811の副走査方向Yにおける内側の端部は、対向配置された第1凹面鏡85以外に向かう光を遮る位置に配置される。また、図7、図9に示すように、第1遮光部材81のスリット811は、主走査方向Xには第1凹面鏡列851に光を入射可能な長さ範囲に亘って開口している。
また、図8に示すように、第1凹面鏡85で反射した平行光LBが、第2凹面鏡86の副走査方向Yの範囲に照射されるように、第2凹面鏡86の副走査方向Yの長さLY2が設定されている。また、第2遮光部材82のスリット821の副走査方向Yにおける図7に示す幅S2は、第2凹面鏡86に反射した光LCが通過可能な長さに設定されている。つまり、第2遮光部材82に形成されたスリット821の副走査方向Yにおける内側の端部は、対向配置された第2凹面鏡86以外からの光を遮る位置に配置される。また、図7、図9、図11に示すように、第2遮光部材82のスリット821は、主走査方向Xには第2凹面鏡列861に反射した光をセンサー列572に結像可能な長さ範囲に亘って開口している。
図9に示すように、第1凹面鏡85の主走査方向Xにおける長さLX1は、センサー573の主走査方向Xのピッチの長さにほぼ等しい。また、第2凹面鏡86は主走査方向Xにおける長さLX2は、センサー573の主走査方向Xのピッチの長さにほぼ等しい。そして、図8、図9に示すように、第1凹面鏡85および第2凹面鏡86は、副走査方向Yの長さLY1,LY2が、主走査方向Xの長さLX1,LX2よりも長く形成されている。
センサー573の位置において、副走査方向Yにおいては原稿Dの像を倒立結像し、主走査方向Xにおいては原稿Dの像を正立結像する。ラインセンサーを構成する受光素子57では、センサー列572の列方向である主走査方向Xでは、隣接する各センサー573上の像をつなぐ必要があるため、等倍正立結像としている。これに対して、副走査方向Y(移動方向)はその種の制限がないので、等倍倒立結像としている。結像光学機構56は、副走査方向Yでは軸対称光学系ではなくZ型光学系であるため、一般に光学設計が難しい。これに対して、本実施形態では、副走査方向Yでは倒立結像とし、凹面鏡85,86の副走査方向Yにおける曲率を小さくしている。このため、収差を小さくでき、結像光学機構56の設計が容易である。
図9に示すように、複数のアパーチャー部材83,84のスリット831,841の主走査方向Xの幅は、原稿Dの読取対象位置P1から光軸方向Z1に入射した光LAが、対応する1組の複数のスリット831,841を通って第1凹面鏡85の主走査方向Xの幅の範囲内に照射され、その幅の範囲外の迷光は遮光されるように設定されている。図9に示すように、例えば読取対象位置P1からの散乱光のうち第1遮光部材81のスリット811を通過して入射した同図に一点鎖線で示す光は、複数のアパーチャー部材83,84のスリット831,841以外の部分によって遮光される。仮にスリット831,841を通過して第1凹面鏡85で反射しても、その反射した迷光は、アパーチャー部材83,84のスリット831,841以外の部分によって遮光される。このため、最終的に第2遮光部材82のスリット821を通過して、他の単位結像素子SLに対応するセンサー573に至る迷光はほぼ無くなる。
図8に示すように、第1凹面鏡85は、副走査方向Yにおいては原稿Dから広がって入射した光が平行光LBとして反射することが可能な第1曲率C1の凹面よりなる第1凹面85Aを有する。また、図9に示すように、第1凹面鏡85は、主走査方向Xにおいては原稿Dから広がって入射した光LAが第1凹面鏡85に反射し、図10に示すように、その反射した光LBが第2凹面鏡86との間の中間に位置する集光位置P3で結像するように反射することが可能な第2曲率C2の凹面よりなる第2凹面85Bを有する。ここで、図8に示す第1凹面85Aは、第1凹面鏡85を主走査方向Xと直交する仮想面で切った断面での凹状の面形状を指す。また、図9、図10に示す第2凹面85Bは、第1凹面鏡85を副走査方向Yと直交する仮想面で切った断面での凹状の面形状を指す。
また、図8に示すように、第2凹面鏡86は、副走査方向Yにおいては第1凹面鏡85で反射して入射した平行光LBをセンサー573の位置P2で結像するように反射することが可能な第3曲率C3の凹面よりなる第3凹面86Aを有する。また、図11に示すように、第2凹面鏡86は、主走査方向X(交差方向)においては第1凹面鏡85との間の集光位置P3で結像して入射した光LBを、センサー573の結像位置P2に結像するように反射させることが可能な第4曲率C4の凹面よりなる第4凹面86Bを有する。ここで、第3凹面86Aは、第2凹面鏡86を主走査方向Xと直交する仮想面で切った断面での凹状の面形状を指し、第4凹面86Bは、第2凹面鏡86を副走査方向Yと直交する仮想面で切った断面での凹状の面形状を指す。
アパーチャー部材83,84においてスリット831,841の隣合う間隔の部分に相当する隔壁部の主走査方向Xの最低厚は、その成形上の限界および必要な強度を確保するうえで所定値に決まる。スリット831,841のピッチが大きいと、その主走査方向Xの開口幅を広くでき、明るい像が得られるが、被写界深度および焦点深度が浅くなり、光量むらが大きくなり、また迷光が発生してしまう。そのため、ピッチをなるべく小さくし、例えば1.0~2.6mmの範囲内の値にすることで、被写界深度および焦点深度を大きくし、高い解像度を得られるようにしている。このため、原稿Dがガラス板40から少し浮くなどして読取面Dpが光軸方向Z1に多少ずれても、像のぼけを少なくでき、必要な高い解像度を確保できる。
ピッチの寸法からアパーチャー部材83,84の隔壁部の主走査方向Xの厚さを減算すると、スリット831,841の主走査方向Xの開口寸法になる。隔壁部の主走査方向Xの厚さは、成形上の制限から最小0.4mm程度であり、一例として0.4~0.6mmの範囲内の値である。もちろん、製造上可能で且つ必要な強度が得られれば、隔壁部の幅は0.2mmや0.3mmでもよいが、迷光が発生してしまい、画像にゴーストが発生する。このように隔壁部の最小厚の制限、要求される被写界深度および焦点深度、迷光抑制の理由から、スリット831,841の主走査方向Xの開口幅は、ピッチ幅以下であり、一例として0.4~2.0mmの範囲内の値としている。なお、アパーチャー部材83,84の光軸方向Z1の厚さは、例えば1.0~2.0mmの範囲内の値であり、一例として1.5mmである。厚いとアパーチャー部材83,84の内壁での反射による迷光が多くなり、薄いと前後のアパーチャー部材83,84だけでは迷光を遮断できなくなる。
一方、スリット831,841のピッチを小さくすると、それらの全数は増えるものの、アパーチャー部材83,84の隔壁部の最小厚は確保する必要があるため、主走査方向Xに隔壁部の占める割合が増し、その結果として、スリット831,841の占める割合が減る。これは、センサー573に結像される像が暗くなることに繋がる。また、アパーチャー部材83,84の内壁の総面積が増えるため、迷光量も増えることになる。
そのため、像の明るさは、スリット831,841の副走査方向Yの開口幅を長くするとともに、第1凹面鏡85および第2凹面鏡86の副走査方向Yの長さLY1,LY2を長くすることで補っている。第1凹面鏡85および第2凹面鏡86の副走査方向Yの長さLY1,LY2は、一例として、2.5~4.5mmの範囲内の値に設定されている。本実施形態では、長さLY1,LY2は、一例として3.6mmである。
各凹面鏡85,86の副走査方向Yの長さLY1,LY2が大きいので、必要な深さの被写界深度および焦点深度を確保するためには、各凹面鏡85,86の副走査方向Yの凹面85A,86Aの曲率C1,C3をあまり大きくできない。つまり、各凹面鏡85,86の副走査方向Yの凹面85A,86Aの曲率C1,C3は、大きくすると、像が副走査方向Yにぼけてしまうため、小さくする必要がある。
そのため、副走査方向Yの結像は、各凹面鏡85,86の副走査方向Yの凹面85A,86Aの曲率C1,C3を小さくできる倒立結像にしている。例えば、副走査方向Yも主走査方向Xと同様に正立結像にすると、各凹面鏡85,86の副走査方向Yの凹面85A,86Aの曲率C1,C3を大きくして、各凹面鏡85,86間の中間位置で光線をクロスさせて結像させなければならず、この場合、収差が大きくなり、また焦点深度が浅くなる。このため、本実施形態では、副走査方向Yは倒立結像にすることで、副走査方向Yに必要な深さの被写界深度および焦点深度を確保し、且つ収差を小さく抑えている。
また、例えばSLA等のレンズ方式であると、光を屈折させて集光させるので、色収差が発生する。色収差があると、RGB光それぞれで焦点位置が異なり、RGB光での最大公約数の焦点距離とする必要があるため、フルカラーでは焦点深度が浅くなる。これに対して、本実施形態の結像光学機構56は、物質の屈折率によらず、凹面鏡85,86の反射による集光現象を用いるため色収差は発生しない。このため、レンズ方式に比べ色収差を原理的に無くすことができる。
ところで、結像光学機構56の各部材81~84の光軸方向Z1の相対位置が、設計位置からずれると、単位結像素子SLに、他の単位結像素子SLから入射する迷光が発生し易くなる。このため、一体形成した2つの部品PT1,PT2を組み立てることで、各部材81~84の光軸方向Z1の相対位置の位置ずれを抑え、迷光の発生を抑制できる。一体形成した2つの部品PT1,PT2で構成するため、各種の寸法が設定されている。
図8に示すように、結像光学機構56は等倍光学系であるため、主走査方向X(紙面に垂直方向)で光線LBの中央線の中間点を通る軸に対して軸対称にできる。そのため、第1遮光部材81と第1アパーチャー部材83との間隔G1と、第2遮光部材82と第2アパーチャー部材84との間隔G2は等しくできる(G1=G2)。また、複数のアパーチャー部材83,84の厚さも等しくできる。第2凹面鏡86は、反射した光を原稿Dと第1凹面鏡85との光学距離LF1と同じ光学距離LF2で結像させられる。また、図8、図9に示すように、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86とは共通の形状にできる。つまり、副走査方向Yの長さLY1,LY2が等しく(LY1=LY2)、主走査方向Xの長さLX1,LX2が等しい(LX1=LX2)。さらに第1曲率C1と第3曲率C3とが等しく、第2曲率C2と第4曲率C4とが等しい。また、図6に示すように、第1遮光部材81と第1アパーチャー部材83とが一体に形成され、第2遮光部材82と第2アパーチャー部材84とが一体に形成されている。
図6に示す例では、結像光学機構56は、第1部品PT1と第2部品PT2とにより構成される。第1部品PT1は、第1遮光部材81と第2アパーチャー部材84と板状の外壁部材87とが一体に成形されることで構成される。第2部品PT2は、第2遮光部材82と第1アパーチャー部材83と板状の外壁部材88とが一体に成形されることで構成される。第1部品PT1と第2部品PT2とは、同一形状および同一サイズを有する同一の部品である。つまり、2つの同一の部品PT1,PT2を組み立てることで、結像光学機構56が製造されている。例えば合成樹脂で射出成形した樹脂成形部品における凹面鏡形成部の表面に金属を蒸着し、第1凹面鏡列851および第2凹面鏡列861を形成することで、2つの部品PT1,PT2は製造される。結像光学機構56は、2つの部品PT1,PT2を組み立てる構成なので、第1遮光部材81と第2アパーチャー部材84との光軸方向Z1の間隔、および第2遮光部材82と第1アパーチャー部材83との光軸方向Z1の間隔の寸法精度が確保される。このため、光軸方向Z1に並ぶ4つの部材81~84の光軸方向Z1の相対位置を精度良く位置決めできる。なお、図6は、結像光学機構56の構造の一例を示したものであり、各部材81~84および外壁部材87,88が、別々の部品であってもよい。また、第1遮光部材81と外壁部材87が一体、第2遮光部材82と外壁部材88が一体で、各アパーチャー部材83,84が別部品の構成であってもよい。
次に、本実施形態の結像光学機構56を含む読取モジュール50の読取り解像度を評価した。結像光学機構56におけるスリット831,841および凹面鏡85,86の主走査方向Xのピッチであるアレイピッチは、1.6mmである。また、スリット811,821の主走査方向Xの幅S1,S2は0.7mmである。凹面鏡85,86の主走査方向Xの長さLX1,LX2は1.6mmであり、その副走査方向Yの長さLY1,LY2は3.6mmである。評価のシミュレーションには、レンズ設計ソフトウェアとしてSynopsis社製の商品名「CodeV」を用いた。
図12は、結像光学機構56の解像度特性を評価する変調伝達関数(Modulated Transfer Function)曲線(MTF曲線)を示す。MTF曲線は、センサー573の撮像面上で像が読取対象を忠実に再現しているかを周波数特性で評価している。図12のグラフにおいて、横軸は空間周波数(サイクル/mm)を示し、縦軸はコントラスト(Modulation)を示す。空間周波数は、撮像面上で1mm当たりの白黒パターンの本数で示される。コントラストは、最大輝度Lmaxと最小輝度Lminとを用いて、Modulation=(Lmax-Lmin)/(Lmax+Lmin)で示される。このMTF曲線は、解像度を示す指標である。
結像光学機構56は、複数の単位結像素子SLが主走査方向Xに複数配列されることにより構成される。単位結像素子SLはアレイピッチが1.6mmで配列され、且つ原稿Dの読取対象位置P1における1.6mm四方の実視野をセンサー573の撮像面に等倍結像させる。このため、実視野は、主走査方向Xで1.6mmの範囲である。図12には、実視野の中心からの主走査方向Xの距離0mm、0.4mm、0.8mmの位置において空間周波数に対するコントラストを示す。図12のグラフにおいて、曲線F1X,F1Yは、実視野の中心からの距離0mmの位置におけるMTF曲線を示す。曲線F2X,F2Yは、実視野の中心からの距離0.4mmの位置におけるMTF曲線を示す。曲線F3X,F3Yは、実視野の中心からの距離0.8mmの位置におけるMTF曲線を示す。また、曲線F1X,F2X,F3Xは主走査方向XにおけるMTF曲線、曲線F1Y,F2Y,F3Yは、副走査方向YにおけるMTF曲線を示す。曲率の小さな副走査方向Yの解像度(破線の曲線)が高いことが分かる。
図12のグラフにおいて、コントラストが約0.2であるときが許容可能な画質の最小コントラスト性能とされる。0.3以上のコントラストが得られれば必要な解像度が得られる。本実施形態の複合機11におけるスキャナー装置31では、6サイクル/mmの読み取り解像度が要求される。図12のグラフから分かるように、空間周波数6サイクル/mmでは、実視野における主走査方向Xと副走査方向Yの0~0.8mmの全ての位置で、0.87以上の高いコントラストが得られる。また、空間周波数12サイクル/mmでは、主走査方向Xと副走査方向Yともに0.63以上のコントラストが得られ、16サイクル/mmでも主走査方向Xと副走査方向Yともに0.42以上の比較的高いコントラストが得られる。この結果、結像光学機構56を有する読取モジュール50により、空間周波数で6~12サイクル/mmの解像度が得られる。よって、スキャナー装置31に要求される解像度は十分得られる。
次に、本実施形態の読取モジュール50により、原稿Dを読み取った際にセンサー573の撮像面に結像した像を確認した。図13は、読取モジュール50により、原稿Dの画像として斜め45度の6サイクル/mmのストライプを読み取った際にセンサー573の撮像面に結像した像を示す。結像光学機構56のアレイピッチは0.8mmである。図13では、主走査方向Xに中心から距離±0.6mmの範囲、副走査方向Yに中心から距離±0.2mmを含む範囲の像を示す。主走査方向Xに±0.4mmの位置が、隣の単位結像素子SLとの繋ぎ目となっている。図13に示すように、単位結像素子SLの繋ぎ目においても原稿Dを必要な解像度で読み取られていることを確認できた。
また、本実施例の結像光学機構56を備えた読取モジュール50について、センサー573に結像される像の明るさおよび焦点深度を評価した。実施例の結像光学機構56は、凹面鏡85,86の副走査方向Yの長さLY1,LY2を3.6mmと4.8mmとの2種類とし、それぞれについてアレイピッチが1.4mm、1.6mm、1.8mmである計6種類とした。また、レンズアレイ方式の結像光学系として、複写機用のセルフォック(登録商標)レンズアレイ(SLA)を比較例とした。比較例のSLAには、日本板硝子社製の商品名「SLA-12E」を用いた。
凹面鏡85,86の副走査方向Yの長さLY1,LY2を凹面鏡長さLYと記すと、図14が凹面鏡長さLY=3.6mmである場合、図15が凹面鏡長さLY=4.8mmである場合の評価結果である。明るさ比は、線状光源52の明るさ一定の条件の下で、比較例のSLAで得られた像の明るさを1.0とした場合の明るさの比を示す。また、焦点深度は、主走査方向Xの焦点深度である主走査焦点深度と、副走査方向Yの焦点深度である副走査焦点深度とを示す。
図14、図15に示すように、明るさ比は、凹面鏡長さLYが3.6mmと4.8mmのどちらも、どのピッチ1.4mm、1.6mm、1.8mmにおいても、比較例のSLAよりも低く、約0.33~0.68程度であった。凹面鏡長さLYが長いほど、また、ピッチ寸法が大きいほど、高い明るさ比が得られた。なお、実施例の明るさ比は、図14に示す凹面鏡長さLY=3.6mmの場合、ピッチ1.4mmであるときに0.33、ピッチ1.6mmであるときに0.38、ピッチ1.8mmであるときに0.5であった。また、図15に示す凹面鏡長さLYが4.8mmである場合、明るさ比は、ピッチ1.4mmであるときに0.43、ピッチ1.6mmであるときに0.5、ピッチ1.8mmであるときに0.68であった。
また、焦点深度については、比較例のSLAは主走査焦点深度が0.58mmと浅く、副走査焦点深度が2mm以上と深い。これに対して、各実施例はいずれも、主走査焦点深度と副走査焦点深度との差が小さい。図14に示すように、凹面鏡長さLY=3.6mmの実施例では、主走査焦点深度は、ピッチが大きくなるほど徐々に浅くなり、0.8~1.2mmの範囲の値をとり、副走査焦点深度は、どのピッチも1.15mm程度であった。一方、図15に示すように、凹面鏡長さLY=4.8mmの実施例では、主走査焦点深度は、ピッチが大きくなるほど徐々に浅くなり、0.75~1.05mmの範囲の値をとり、副走査焦点深度は、どのピッチも0.7mm程度であった。
このように実施例では、明るさが比較例のSLAの1/2~2/3程度であり、凹面鏡長さLYが長いほど、明るさは増すものの、焦点深度は浅くなる傾向がある。実施例では、凹面鏡長さLY=3.6mmと4.8mmで共に、ピッチ1.4~1.8mmの範囲で明るさではSLAに劣るものの、SLAよりも特に主走査方向Xには深い焦点深度が得られた。実施例では、特に、凹面鏡長さLY=3.6mmの場合においてピッチ1.4mmと1.6mmで、主走査方向Xと副走査方向Yの焦点深度が共に1.0mm以上得られている。
なお、凹面鏡長さLYが4.8mmを超えると、焦点深度が比較例のSLAよりも浅くなるので、凹面鏡長さLYは4.8mmより短いことが好ましい。また、凹面鏡長さLYが2.0mm未満になると、像が暗くなるので、凹面鏡長さLYは2.0mm以上が好ましい。よって、凹面鏡長さLYは、2.0mm~4.8mmの範囲内の値が好ましい。
また、本実施例の結像光学機構56において減反射処理の効果を評価した。図16に示す遮光隔壁板95を備えた結像光学機構90を比較例とした。図16に示すように、比較例の結像光学機構90は、光軸方向Z1に対向する1組の遮光部材91,92と、1組の凹面鏡93,94とを有する単位結像素子SL1を主走査方向Xに複数備え、各単位結像素子SL1の主走査方向Xの両側には遮光隔壁板95が主走査方向Xに一定ピッチで配列されている。
表面で反射した光を散乱させて正反射光を抑制する減反処理は、実施例では、第1遮光部材81と第2遮光部材82の内壁面、およびアパーチャー部材83,84の壁面に施されている。また、比較例では、減反射処理が、遮光部材91,92の内壁面と、遮光隔壁板95の壁面に施されている。減反射処理面は、黒アルマイト処理面とし、理想の光吸収面、白散乱面、ミラー面と比較した。実施例と比較例とにおいてセンサー573の単位面積当たりの受光量(ミリワット/平方ミリメートル)により減反射処理の効果を評価した。
図17は比較例の減反射処理の評価結果を示し、図18は実施例の減反射処理の評価結果を示す。副走査方向Yに8mmの位置に6ラインペア/mmの縞領域が印刷された背景が黒色の原稿を配置し、センサー列の受光量を評価した。図17、図18の各グラフにおいて、横軸が受光量、縦軸が副走査方向Yにおける原稿位置である。図17に示す比較例と図18に示す実施例との両方で、黒アルマイト処理面は、光吸収面とほぼ同じ程度の光の減反射効果が得られた。白散乱面では、縞領域以外の位置でも僅かな光の受光が認められるので、減反射処理が低いことが分かる。また、ミラー面では、図17に示す比較例では、原稿の縞領域以外の位置および縞領域の全域で光の受光が認められ、縞の識別が困難となっている。図18に示す実施例でも、ミラー面では、原稿の縞領域以外の位置および縞領域に光の受光が認められるものの、比較例よりは受光量が少なく、縞領域では縞の黒の位置で受光量が0(零)に近く、比較例では不能であった縞の識別が可能である。
よって、黒アルマイト処理面は、減反射効果が高いことが分かる。また、加速評価に相当するミラー面では、減反射効果が実施例では比較例ほど低下しなかった。このことから、遮光隔壁板95よりもアパーチャー部材83,84の方が、高い迷光抑制効果が得られることが分かる。なお、減反射処理として、黒アルマイト面などの黒色処理面の他に、サンドブラスト処理面も評価したところ高い減反射効果が得られた。サンドブラスト処理を施す場合は、合成樹脂は任意の色でもよいが、白色以外が好ましい。また、例えば、遮光部材81,82およびアパーチャー部材83,84を黒色の合成樹脂で成形した後、表面にサンドブラスト処理を施すことがより好ましい。また、つや消し塗装処理でもよい。
また、他の迷光対策としては、図19に示すように、アパーチャー部材89を追加する。図19の例では、光軸方向Z1において第1アパーチャー部材83と第2アパーチャー部材84との間に、第3アパーチャー部材89を追加している。第3アパーチャー部材89は、主走査方向Xに一定のピッチで開口する複数のスリット891を有する。図19に示すように、迷光LMは、図19に示す追加したアパーチャー部材89により遮光される。このため、センサー573に高いコントラストで像を結像させることができる。なお、アパーチャー部材の数を増やせば迷光対策上の効果は高まるが、センサー573に結像する像が暗くなる。そのため、迷光の遮光効果と明るさ確保の観点から、アパーチャー部材83,84,89の数は、迷光を必要な程度に抑制できる範囲でなるべく少ない方が好ましい。
次に、複合機11におけるスキャナー装置31の作用を説明する。ユーザーがホスト装置でキーボード又はマウス等の操作部の操作でスキャンを指示すると、ホスト装置から通信を介して複合機11はスキャンジョブを受信する。また、ユーザーが操作部15の操作でスキャンの実行を指示すると、複合機11はスキャンジョブを受け付ける。また、ユーザーが操作部15の操作で原稿Dのコピーの実行を指示すると、複合機11はスキャンジョブと印刷ジョブを受け付ける。制御部100はスキャンジョブに基づきスキャナー装置31を駆動制御し、スキャナー装置31に原稿Dの読取動作を行わせる。
制御部100は、載置台36に原稿Dがあることを検知したときは、ADFモードで読取動作を行い、原稿台33のガラス板40A上に原稿Dがあることを検知したときは、FBモードで読取動作を行う。ADFモードでは、制御部100は、キャリッジ61を図3に実線で示す読取位置に配置するとともに、原稿搬送部35を駆動させて原稿Dを搬送し、その搬送途中の原稿Dを、ガラス板40Bを介して読取モジュール50に読み取らせる。また、FDモードでは、制御部100は、キャリッジ61を待機位置から副走査方向Yに一往復動させ、往動方向Y1への移動過程でガラス板40Aを介して原稿台33上の原稿Dを読取モジュール50に読み取らせる。
読み取られた読取データは、制御部100によりシェーディング補正等を含む所定処理が施され、画像データが生成される。スキャンが指示されているときは、複合機11からホスト装置へ画像データが出力される。また、コピーが指示されているときは、画像データに基づく画像を印刷装置21が印刷することで、コピー印刷された媒体Pが排出口21Aからスタッカー18へ排出される。
ここで、読取モジュール50では、以下のように原稿Dが読み取られる。図8に示すように、原稿Dの読取対象位置P1で反射した散乱光は、第1遮光部材81のスリット811を通過して結像光学機構56内へ入射する。このとき、第1遮光部材81のスリット811により入射する光は副走査方向Yに制限される。入射した光のうち複数のアパーチャー部材83,84のスリット831,841を通過した光LAは、読取対象位置P1と対向して位置する単位結像素子SLにおける第1凹面鏡85に反射する。
図10に示すように、第1凹面鏡85では第2凹面鏡86へ光が反射する際、主走査方向Xでは正立像になるように第2凹面鏡86との中間位置の集光位置P3で集光するように反射し、これに直交する副走査方向Yでは図8に示すように光LBが平行光となるように反射する。こうして読取対象位置P1からの光が、対応する第1凹面鏡85および第2凹面鏡86に順次反射し、第2凹面鏡86に反射した光LCはセンサー列572のうち対応するセンサー573の結像位置P2に集光して像を結像する。このとき、図8、図9に示すように、第1凹面鏡85および第2凹面鏡86は、副走査方向Yの長さLY1,LY2が主走査方向Xの長さLX1,LX2よりも長く、反射できる光LA,LBの光量を相対的に多く確保できる。また、図8に示すように、読取対象位置P1から広がって入射した光のうち他の単位結像素子SLに向かう迷光は、2つのアパーチャー部材83,84におけるスリット831,841以外の部分により遮光される。つまり、原稿Dの読取対象位置P1以外の位置からスリット811を通過して入射した迷光は、2つのアパーチャー部材83,84におけるスリット831,841以外の部分により遮光され、読取対象位置P1に対応する単位結像素子SLを通って対応するセンサー573に至ることが抑制される。この結果、センサー573には高いコントラストで像が結像される。
図8に示すように、副走査方向Yにおいては第1凹面鏡85と第2凹面鏡86の間で光LBは平行光となっており、センサー573上では倒立結像となる。凹面鏡85,86を副走査方向Yで倒立結像するように副走査方向Yの曲率C1,C3を小さく設定することにより、副走査方向Yの長さLY1,LY2を長くして光量を増やすことができるうえ、副走査方向Yにおける収差を小さくできる。一方、主走査方向Xでは、センサー573に像が正立結像する。凹面鏡列851,861を構成する凹面鏡85,86において隣り合う凹面鏡で結像した像が重なり合って連続した像となる。
センサー列572には、原稿Dを鏡に映した像が結像する。このため、制御部100は、センサー列572から入力した画素信号に、読取画像を副走査方向Yに反転させる画像処理を施して画像データを生成する。こうして原稿Dを読み取った高解像度の画像データを得ることができる。また、結像光学機構56の光軸方向Z1の全長LZは20mm程度となり、レンズ方式の結像光学系と比べ少し大きくなるが、全長LZの寸法の割に光路長を長く確保でき、被写界深度および焦点深度を深くすることができる。このため、原稿Dがガラス板40から多少浮いても、センサー573に結像する像がぼけにくく、必要な解像度で原稿Dを読み取ることができる。
また、図6に示すように2つの部品PT1,PT2を組み立てる構成とした場合、各部材81~84の位置精度を高くでき、迷光を確実に抑制でき、高コントラストおよび高解像度で原稿Dを読み取ることができる。また、図16に示す遮光隔壁板95を有する結像光学機構90では、薄板よりなる遮光隔壁板95の形成が製造上困難である。これに対して、本実施形態の結像光学機構56は、格子状の板材よりなる複数のアパーチャー部材83,84を配置すればよいので、製造も比較的簡単である。
以上詳述した実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)結像光学機構56は、読取対象の一例である原稿Dに対して相対的に移動する光学モジュールの一例としての読取モジュール50に搭載され、光源の一例としての線状光源52からの光が原稿Dに対して反射して原稿Dから入射した光を、結像対象の一例としてのセンサー573に結像させる。結像光学機構56は、原稿Dから入射する光を反射する第1凹面鏡85と、第1凹面鏡85とは、読取モジュール50の相対的な移動方向である副走査方向Yにおいてずれた位置に配置され、第1凹面鏡85で反射した光を反射して射出する第2凹面鏡86とを備える。また、結像光学機構56は、原稿Dから入射した光が第1凹面鏡85へ向かう経路と、第1凹面鏡85で反射した光が第2凹面鏡86に向かう経路と、第2凹面鏡86で反射した光がセンサー573へ向かう経路と、に亘ってスリット831,841が形成された複数のアパーチャー部材83,84とを備える。第1凹面鏡85は、副走査方向Yにおいては原稿Dから広がって入射した光を平行光LBとして反射する第1曲率C1と、主走査方向Xにおいては原稿Dから広がって入射した光が第2凹面鏡86との間の位置で結像するように反射する第2曲率C2とを有する。第2凹面鏡86は、副走査方向Yにおいては第1凹面鏡85で反射して入射した平行光LBをセンサー573の位置で結像するように反射する第3曲率C3と、主走査方向Xにおいては第1凹面鏡85との間の位置で結像して入射した光をセンサー573の位置で結像するように反射する第4曲率C4とを有する。
よって、線状光源52から入射した光又は線状光源52からの光が原稿Dに反射して入射した光は、第1凹面鏡85へ向かう経路と、第1凹面鏡85で反射した光が第2凹面鏡86に向かう経路と、第2凹面鏡86で反射した光がセンサー573へ向かう経路とを通ってセンサー573に結像する。このとき、光の各経路においてアパーチャー部材83,84のスリット831,841を通る光のみがセンサー573に結像する。このため、迷光は複数のアパーチャー部材83,84により遮光され、センサー573に至る迷光が抑制される。この結果、センサー573に結像される像のコントラストが高くなり、高い解像度が得られる。また、原稿Dから広がって入射した光は、副走査方向Yにおいては第1凹面鏡85以外に入射する光は第1遮光部材81で遮光され、さらに第2凹面鏡86との間で結像しない例えば平行光として第1凹面鏡85で反射し、主走査方向Xにおいては第2凹面鏡86との間の位置で結像するように第1凹面鏡85に反射する。副走査方向Yにおいて第1凹面鏡85に反射して入射した平行光は第2凹面鏡86に反射してセンサー573に結像する。主走査方向Xにおいて第1凹面鏡85との間の位置で結像して第2凹面鏡86に入射した光は、第2凹面鏡86でセンサー573の位置で結像するように反射する。よって、原稿Dからの光は、副走査方向Yにおいてはセンサー573に倒立像として結像し、主走査方向Xにおいてはセンサー573に正立像として結像する。副走査方向Yにおいては隣に凹面鏡が無いために像の重なりを考慮する必要がなく、そのため多少結像が甘くてもよく、その分第1凹面鏡85と第2凹面鏡86との副走査方向Yにおける長さLY1,LY2を長く確保できる。このため、センサー573に結像する光の量を多く確保できることから、像の明るさを確保できる。この結果、センサー573に高いコントラストの像を結像させることができ、高い解像度を得ることができる。また、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86とに光を反射させることで、原稿Dからセンサー573までの光路長が長くなり焦点距離を長くすることができる。このため、焦点深度を深くすることができる。よって、センサー573に光の像を高コントラストで結像でき、高解像度を得ることができる。
(2)結像光学機構56において、第1凹面鏡85および第2凹面鏡86における副走査方向Yの長さは、主走査方向Xの長さよりも長い。よって、第1凹面鏡85および第2凹面鏡86に入射および反射する光の量を多くできるので、センサー573に結像する像の明るさを確保できる。
(3)結像光学機構56は、第1凹面鏡85に対向する位置にスリット811を有する第1遮光部材81と、第2凹面鏡86に対向する位置にスリット821を有する第2遮光部材82とを備える。第1遮光部材81は、入射した光が複数のアパーチャー部材83,84のうち最も光の入射側に配置されたアパーチャー部材83に向かう経路上に配置される。また、第2遮光部材82は、第2凹面鏡86に反射した光が複数のアパーチャー部材83,84のうち最もセンサー573に近い側に配置されたアパーチャー部材84を通過してセンサー573へ向かう経路上に配置される。
よって、原稿Dに反射して広がる光のうち第1遮光部材81のスリット811を通って入射した光が、複数のアパーチャー部材83,84の各スリット831,841を通って第1凹面鏡85で反射する。第1遮光部材81によって、入射する光を副走査方向Yにおいてスリット811で制限することにより、副走査方向Yにおいて第1凹面鏡85で反射する光の量を多く確保しつつ、第1凹面鏡85以外への迷光、特に原稿Dから直接結像面へ入射する迷光を減ずることができる。また、第2凹面鏡86で反射した光は、複数のアパーチャー部材83,84の各スリット831,841を通り更に第2遮光部材82のスリット821を通ってセンサー573に結像する。第2凹面鏡86で反射した光を副走査方向Yにおいて第2遮光部材82のスリット821で制限することにより、副走査方向Yにおいて第1遮光部材81と協働して迷光を減ずることができる。よって、センサー573に結像する像の明るさを確保して高いコントラストが得られ、これにより高い解像度が得られる。
(4)結像光学機構56において、第1遮光部材81のスリット811の副走査方向Yにおける幅S1を、原稿Dから入射した光を副走査方向Yにおける第1凹面鏡85の長さ範囲内の照射域に制限可能な長さとした。よって、原稿Dから入射する光を第1遮光部材81のスリット811によって副走査方向Yに制限し、副走査方向Yにおける第1凹面鏡85の長さ範囲以外への光を遮光できる。したがって、センサー573に結像する光の像を明るくして高コントラストを確保し、高解像度を得ることができる。
(5)結像光学機構56において、第2遮光部材82のスリット821の副走査方向Yにおける幅S2を、第2凹面鏡86に反射した光が通過可能な長さとした。よって、第2凹面鏡86に反射した光以外の光の全てまたは多くは第2遮光部材82によって遮光され、第2凹面鏡86に反射した光が副走査方向Yにおいてスリット821を通過する。よって、センサー573に結像する光の像の明るさと高いコントラストを確保し、高い解像度が得られる。
(6)結像光学機構56では、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86とは、副走査方向Yにおいて重ならない位置、主走査方向Xにおいて重なる位置に配置される。よって、第1凹面鏡85で反射した光の全てまたは多くを第2凹面鏡86に入射させることができ、第2凹面鏡86に対して第1凹面鏡85に反射した光以外の光が入射することを抑制できる。したがって、センサー573に結像する像の明るさと高コントラストを確保し、高解像度を得ることができる。
(7)結像光学機構56では、センサー573の位置において、副走査方向Yにおいては原稿Dの画像を倒立結像し、主走査方向Xにおいては原稿Dの画像を正立結像する。よって、第1凹面鏡85、第2凹面鏡86、センサー573を主走査方向Xに複数組並べて配置した場合に、主走査方向Xでは正立結像なので、センサー573間で像をつなぐことができる。また、副走査方向Yにおいては倒立結像なので、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86との副走査方向Yにおける曲率を小さくでき、収差を小さくできる。
(8)結像光学機構56では、第1遮光部材81は第2凹面鏡86の副走査方向Yにおける第1方向に隣接して一体に形成され、第2遮光部材82は第1凹面鏡85の副走査方向Yにおける第2方向に隣接して一体に形成される。よって、第1遮光部材81と第2凹面鏡86とが一体に形成された部品と、第2遮光部材82と第1凹面鏡85とが一体に形成された部品とを含む比較的少ない数の部品により、結像光学機構56を製造できる。
(9)結像光学機構56では、第2凹面鏡86は、反射した光を原稿Dと第1凹面鏡85との光学距離LF1と同じ光学距離LF2で結像させる。よって、第1遮光部材81と第2凹面鏡86とが一体に形成された部品と、第2遮光部材82と第1凹面鏡85とが一体に形成された部品との共通化が可能になり、結像光学機構56を構成する部品の点数をさらに低減できる。
(10)結像光学機構56では、第1凹面鏡85と第2凹面鏡86とは共通の形状である。よって、第1遮光部材81と第2凹面鏡86とが一体に形成された第1部品PT1と、第2遮光部材82と第1凹面鏡85とが一体に形成された第2部品PT2とを共通の部品とすることができ、部品の点数をさらに低減できる。
(11)結像光学機構56では、第1遮光部材81と第2遮光部材82は、アパーチャー部材83,84も一体に形成される。よって、結像光学機構56の部品点数を一層低減できる。また、複数のアパーチャー部材83,84の配置位置精度が高くなり、想定された設計どおりに迷光を低減できる。
(12)光学モジュールの一例としての読取モジュール50は、結像光学機構56と、主走査方向Xに沿って原稿Dに光を照射する光源の一例としての線状光源52と、結像対象の一例であるセンサー573を複数配列したセンサー列572と、を備える。結像光学機構56は、第1凹面鏡85を主走査方向Xに複数配列した第1凹面鏡列851と、第2凹面鏡86を主走査方向Xに複数配列した第2凹面鏡列861とを備える。さらに、結像光学機構56は、スリット811が第1凹面鏡列851に光を入射可能に開口する第1遮光部材81と、スリット821が第2凹面鏡列861に反射した光をセンサー列572に結像可能に開口する第2遮光部材82とを備える。よって、原稿Dに対して読取モジュール50が相対的に移動することで、原稿Dの明るい像をセンサー列572に高いコントラストで結像させることができる。したがって、読取モジュール50によって、原稿Dを高い解像度で読み取ることができる。
(13)読取モジュール50は、第1遮光部材81のスリット811は、主走査方向Xに第1凹面鏡列851に光を入射可能な長さ範囲に亘って開口し、第2遮光部材82のスリット821は、主走査方向Xに第2凹面鏡列861に反射した光をセンサー列572に結像可能な長さ範囲に亘って開口する。よって、第1遮光部材81と第2遮光部材82にはスリット811,821が主走査方向Xに鏡面列の長さ範囲に亘り開口するので、例えば鏡面の個々に対応して開口する複数のスリットが形成された構成に比べ、結像光学機構56への入射光量および結像光学機構56からの射出光量を多く確保し、センサー573に結像される像の明るさを確保できる。
(14)画像読取装置の一例である複合機11は、読取モジュール50と、読取対象の一例である原稿Dの位置を規定する透明部材の一例としてのガラス板40と、原稿Dと読取モジュール50とを相対的に移動させる搬送部と、を備える。読取モジュール50は、ガラス板40を挟んで原稿Dとは反対側の位置で、原稿Dに照射した光の反射光を入射して原稿Dを読み取る。よって、複合機11は、原稿Dを読取モジュール50によって高い解像度で読み取ることができる。
(15)第1遮光部材81に形成されたスリット811の副走査方向Yにおける内側の端部は、対向配置された第1凹面鏡85以外に向かう光を遮る位置に配置される。また、第2遮光部材82に形成されたスリット821の副走査方向Yにおける内側の端部は、対向配置された第2凹面鏡86以外からの光を遮る位置に配置される。よって、センサー573の受光面に至る迷光を低減し、センサー573に結像した像のぼけを抑えつつ像の明るさを確保できるので、コントラストの高い結像を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、図20及び図21を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、迷光を低減するための構成を示す。
図20に示すように、複数の遮光部材81,82に形成されたスリット811,821の移動方向、すなわち副走査方向Yにおける内側の端部は、それぞれに対向配置された鏡面の一例としての凹面鏡85,86以外に向かう光を遮る位置に配置される。すなわち、第1遮光部材81に形成されたスリット811の副走査方向Yにおける内側の端部は、スリット811に対向配置された第1凹面鏡85以外に向かう光を遮る位置に配置される。また、第2遮光部材82に形成されたスリット821の移動方向、すなわち副走査方向Yにおける内側の端部は、スリット821に対向配置された鏡面の一例としての第2凹面鏡86以外からの光を遮る位置に配置される。すなわち、第2遮光部材82に形成されたスリット821の副走査方向Yにおける内側の端部は、スリット821に対向配置された第2凹面鏡86からの光を遮る位置に配置される。
第1遮光部材81の第1凹面鏡85に対峙する面ではスリット811の副走査方向Yにおける開口幅は、第1凹面鏡85の全面が原稿ラインを呑み込める幅としている。また、第2遮光部材82の第2凹面鏡86に対峙する面ではスリット821の副走査方向Yにおける開口幅は、ラインセンサーが第2凹面鏡86の副走査方向Yの全面幅で呑み込める幅としている。さらに遮光部材81,82のスリット811,821は、第1遮光部材81のスリット811をすり抜けて第2遮光部材もすり抜けることができない形状である。
図20に示すように、複数の遮光部材81,82に形成されたスリット811,821の移動方向、すなわち副走査方向Yに配置された側面は、それぞれに対向配置された鏡面の一例としての凹面鏡85,86とは反対側に広がる傾斜形状である。すなわち、第1遮光部材81と第2遮光部材82とのスリット811,821には、それぞれ外側に向かって拡開する傾斜形状であるテーパー面812,822が形成されている。詳しくは、第1遮光部材81のスリット811の内壁面のうち副走査方向Yに対向する二面が、原稿側に向かって拡開する一対のテーパー面812となっている。また、第2遮光部材82のスリット821の内壁面のうち副走査方向Yに対向する二面が、センサー573側に向かって拡開する一対のテーパー面822となっている。
第1遮光部材81におけるスリット811の原稿D側に開くテーパー面812と、第2遮光部材82におけるセンサー573側に開くテーパー面822とでテーパー角を揃える必要はないが、コストダウンのためテーパー角を揃えて第1遮光部材81と第2遮光部材82とを共通部品にするとよい。また、第2凹面鏡86と第1凹面鏡85もそれぞれ第1遮光部材81および第2遮光部材82と一体成型すれば、部品の製造コストを一層低減できる。
ここで、迷光をテーパー面812で反射させてスリット811からの迷光の入射を抑制する観点からは、テーパー面812,822のテーパー角はできるだけ大きい方がよい。但し、テーパー角は、20度未満であると、原稿Dからの直接光がテーパー面812で反射した一部の光がスリット811から入射して迷光になる虞がある。一方、テーパー角があまり大きいと遮光部材81,82が透けてしまい、透過光が迷光となる。このため、テーパー角は、20度以上かつ60度以下が好ましく、特に上記の弊害をより確実に排除するためには30度以上かつ50度以下がより好ましい。本実施形態では、テーパー角を一例として40度としている。ここでいうテーパー角とは、光軸方向Z1と主走査方向Xとの両方に平行な面に対するテーパー面812,822のなす角度を指す。また、遮光部材81,82及びアパーチャー部材83,84の表面には減反射処理が施されている。このため、本例ではテーパー面812,822を含むスリット811,821の内壁面にも減反射処理が施されている。ただし、凹面鏡85,86の表面は、この限りでなく、十分な鏡面で反射率が高いことが好ましい。
図21において、原稿Dから第1遮光部材81のスリット811へ入射した光のうち、第1凹面鏡85とは反対側に広がるテーパー面812で反射した光は、そのテーパー角により原稿側へ反射する。このときの反射光の大部分は、テーパー角により原稿Dの読取位置から副走査方向Yにずれた位置に向かって反射される。また、原稿Dから第1遮光部材81のスリット811から入射した入射光には、図21に二点鎖線で示すように、凹面鏡85,86を通らず第2遮光部材82のスリット821を通ってセンサー573へ向かう直接迷光Lsが含まれる。本実施形態ではテーパー面812,822がそれぞれ原稿側、センサー573側に向かって拡開する。このため、副走査方向Yに最もセンサー573に近づく図21に二点鎖線で示す直接迷光Lsは、スリット811,821が本実施形態のテーパー面812,822と逆向きに広がる逆テーパーを有する構成に比べ、センサー573の受光面における結像位置P2から副走査方向Yにより離れた位置に到達する。例えば直接迷光Lsは、センサー573の受光面における副走査方向Yの中心位置から約1mm離れた位置に到達する。本実施形態ではCISM530に用いるセンサー573はラインセンサーであり、その受光面の中心位置から副走査方向Yに約1mm離れた位置はセンサー573から外れた位置であるため、コントラストに対して大きな影響を及ぼさない。よって、直接迷光Lsに起因する読取り画像のコントラストの低下を抑制できる。なお、図21では、光LA,LB,LCを説明の便宜上光軸のみ示している。
以上詳述したように第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)~(15)の効果が同様に得られる他、下記の効果を得ることができる。
(16)第1遮光部材81及び第2遮光部材82に形成されたスリット811,821の副走査方向Yに配置された側面は、それぞれに対向配置された凹面鏡85,86とは反対側に広がる傾斜形状である。詳しくは、スリット811,821は副走査方向Yに配置された側面が、スリット811,821のそれぞれに対向配置された凹面鏡85,86とは反対側に広がるテーパー面812,822となっている。このため、原稿Dからの読み取り光を副走査方向Yに配置された側面により遮ることがなく、同時に第1遮光部材81のスリット811から入射する迷光を遮光できるか、あるいはスリット811から入射する迷光がセンサー573の受光面に到達してできる迷光領域を受光面上の結像箇所から効果的に遠ざけることができる。よって、コントラストの高い結像を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、図22及び図23を参照して、第3実施形態について説明する。
図22に示すように、第1遮光部材81と第2遮光部材82との対向面には、スリット811,821の開口を副走査方向Yに挟む両側のうち副走査方向Yに互いに近い側の片側の周縁部から、スリット811,821が対向する凹面鏡85,86に向かって延出する第1遮光部の一例としての延出部813,823が形成されている。本実施形態では、延出部813,823は、スリット811,821の開口に対して副走査方向Yに互いに近い側の一端側の周縁部から、対向する凹面鏡85,86に向かって延出する。すなわち、第1遮光部材81の原稿側と反対側となる内面には、スリット811の開口に対して副走査方向Yに第2凹面鏡86側となる隣接部位から第1凹面鏡85に向かって延出部813が延びている。また、第2遮光部材82のセンサー573側と反対側となる内面には、スリット821の開口に対して副走査方向Yに第1凹面鏡85側となる隣接部位から第2凹面鏡86に向かって延出部823が延びている。延出部813,823は、主光は遮らず、直接迷光Ls(図23を参照)を遮る位置、形状及びサイズに形成されている。なお、主光とは、原稿Dからスリット811を通って入射した入射光のうち第1凹面鏡で反射したのちに第2凹面鏡で反射しさらに第2スリット821を通過してセンサー573の受光面に至る光LA,LB,LCを指す。なお、図23では、光LA,LB,LCを説明の便宜上光軸のみ示している。
第1遮光部材81に形成されたスリット811には、第1遮光部材81のスリット811によって制限された光LAの経路と、第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86に入射する光LB及び反射した光LCの経路との間に、延出部813,823が設けられる。
延出部813,823の移動方向の一例である副走査方向Yにおける側面は、第1遮光部材81のスリット811によって制限された光LAの経路と、第2凹面鏡86に入射する光LB及び反射した光LCの経路との、それぞれの内側の端部に沿う形状である。図22に示す例では、延出部813,823は、光軸方向Z1に沿う形状である。
また、延出部813,823の副走査方向Yにおける位置は、第1遮光部材81のスリット811を通過し、第2遮光部材82のスリット821に向かう光の一例としての直接迷光Ls(図23参照)を遮る位置である。なお、遮光部材81,82及びアパーチャー部材83,84の表面には減反射処理が施されている。このため、本例では延出部813,823の表面にも減反射処理が施されている。但し、凹面鏡85,86の表面は、十分な鏡面で反射率が高いことが好ましい。
図23において、原稿Dから結像光学機構56内へ入射した入射光のうち凹面鏡85,86を通らずセンサー573の受光面に直接到達する同図に二点鎖線で示す直接迷光Lsは、延出部813,823に遮られ、コントラスト等の品質上皆無と言えるレベルまで消失した。なお、延出部813,823は、スリット811,821の開口を副走査方向Yに挟む両側に形成してもよい。この場合、延出部813,823をスリット811,821の開口を囲んだ状態でそれぞれ対向する凹面鏡85,86に向かって延びる筒状に形成してもよい。また、延出部813,823は、両方設けることは必須ではなく、一方のみ設けてもよい。延出部813,823のうち一方のみ設けた場合も、図23から明らかなように直接迷光Lsを遮ることができる。
以上詳述したように第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)~(15)の効果が同様に得られる他、下記の効果を得ることができる。
(17)第1遮光部材81及び第2遮光部材82のうち少なくとも一方には、第1遮光部材81のスリット811を通過し、第2遮光部材82のスリット821に向かう光を遮る位置に、第1遮光部の一例としての延出部813,823が設けられている。よって、直接迷光Lsを低減又は消失させてセンサー573に結像した像のぼけを抑えつつ像の明るさを確保できるので、コントラストの高い結像を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、図24~図26を参照して、第4実施形態について説明する。
図24に示すように、第1アパーチャー部材83と第2アパーチャー部材84は、スリット831,841を主走査方向Xに挟む両側の部分に副走査方向Yに延びる複数の隔壁832,842を有している。また、第1アパーチャー部材83と第2アパーチャー部材84には、スリット831,841を副走査方向Yに所定の比率で2つに区画する位置にスリット831,841を主走査方向Xに沿って横切る第2遮光部の一例としての遮光桟833,843が形成されている。
図25に示すように、遮光桟833は、第1鏡面の一例としての第1凹面鏡85に入射する光LAの経路と、第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86に入射した光LB及び反射した光LCの経路との間に設けられている。遮光桟843は、第1鏡面の一例としての第1凹面鏡85に入射する光LA及び反射した光LBの経路と、第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86に反射した光LCの経路との間に設けられている。また、遮光桟833の副走査方向Yにおける側面は、第1凹面鏡85に入射する光LAの経路と、第2凹面鏡86に入射した光LB及び反射した光LCの経路とのそれぞれの内側の端部に沿う形状である。また、遮光桟843の副走査方向Yにおける側面は、第1凹面鏡85に入射する光LA及び反射した光LBの経路と、第2凹面鏡86に反射した光LCの経路とのそれぞれの内側の端部に沿う形状である。図25に示す例では、遮光桟833,843は、光軸方向Z1に沿う形状である。
ここで、遮光桟833,843の側面が、それぞれが副走査方向Yに挟まれた両側の光の経路の内側の端部に沿う形状とは、両側の光の経路の内側の端部と遮光桟833,843の側面との図25に示す主走査方向Xから見たときになす角度が、45度未満となる形状であればよい。なお、第4実施形態では、主走査方向Xから見た図25において遮光桟833,843の副走査方向Yの側面を、結像光学機構56の光軸方向Z1に沿う形状としたが、両側の光のそれぞれの経路の内側の端部と平行な面形状としてよい。要するに、遮光桟833,843が、直接迷光Ls(図26参照)を遮ることができ、かつその副走査方向Yの側面が、光LA,LB,LCを遮ることがないように両側の光の内側の端部に沿う形状であればよい。なお、遮光部材81,82及びアパーチャー部材83,84の表面には減反射処理が施されている。このため、本例では遮光桟833,843の表面にも減反射処理が施されている。ただし、凹面鏡85,86の表面は、十分な鏡面で反射率が高い。
図26において、原稿Dから第1遮光部材81のスリット811を通って入射した入射光のうち凹面鏡85,86を通らず第2遮光部材82のスリット821を通ってセンサー573の受光面に直接到達する同図に二点鎖線で示す直接迷光Lsは、遮光桟833,843に遮られ、コントラスト等の品質上皆無と言えるレベルまで消失した。なお、遮光桟833,843は、光LA,LB,LCを遮らず、かつ直接迷光Lsを遮る他の形状及びサイズに変更可能である。また、遮光桟833,843は両方が必須な訳ではなく、一方のみ設けてもよい。
以上詳述したように第4実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)~(15)の効果が同様に得られる他、下記の効果を得ることができる。
(18)第1アパーチャー部材83と第2アパーチャー部材84とのうち少なくとも一方には、第1遮光部材81のスリット811を通過し、第2遮光部材82のスリット821を直接通り抜ける光を遮る位置に、第2遮光部の一例としての遮光桟833,843が設けられている。2つのアパーチャー部材83,84に遮光桟833,843を形成するだけで、第1遮光部材81のスリット811から第2遮光部材82のスリット821へ直接通り抜ける直接迷光Lsを効果的に低減又は消失できる。よって、センサー573の受光面における迷光領域を効果的に消失させ、コントラストの高い結像を得ることができる。よって、
(19)第1アパーチャー部材83に設けられた遮光桟833は、第1遮光部材81のスリット811によって制限された光LAの経路と、第2凹面鏡86に入射する光LB及び反射した光LCの経路との間に位置する。第2アパーチャー部材84に第2遮光部の一例として設けられた遮光桟843は、第1凹面鏡85に入射する光LA及び反射した光LBの経路と、第2凹面鏡86に反射した光LCの経路との間に位置する。よって、第1凹面鏡及び第2凹面鏡で反射する経路を通る光LA,LB,LCを一部も遮ることなく、直接迷光Lsを効果的に低減できる。
(20)遮光桟833の副走査方向Yにおける側面は、第1遮光部材81のスリット811によって制限された光LAの経路と、第2凹面鏡86に入射する光LB及び反射した光LCの経路とのそれぞれの内側の端部に沿う形状である。また、遮光桟843の副走査方向Yにおける側面は、第1凹面鏡85に入射する光LA及び反射した光LBの経路と、第2凹面鏡86に反射した光LCの経路とそれぞれの内側の端部に沿う形状である。よって、直接迷光Lsを効果的に遮ることができるので、コントラストの高い結像を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、図27~図29を参照して、第5実施形態について説明する。
原稿Dの読取りラインからの光の一部は第1アパーチャー部材83の原稿D側の面(前面)で反射し、第1遮光部材81のスリット811から出射して再び原稿面で反射し、その反射光が第1遮光部材81のスリット811からセンサー573の受光面に結像する虞がある。そこで、第5実施形態では、第1アパーチャー部材83の前面に当たる画像光のうち、第1アパーチャー部材83の隔壁832の前面からの反射光が原稿Dに戻らない構造を提供する。
図27に示すように、第1アパーチャー部材83における原稿台のガラス板40と対向する側の面には、スリット831を主走査方向Xに挟む両側に三角柱状の突起834が突設されている。図28に示すように、突起834は、主走査方向Xから見たときの形状が三角形の三角柱状である。突起834は、第2凹面鏡86と反対側の面が傾斜面835となっている。傾斜面835は、原稿Dの読取りラインから第1遮光部材81のスリット811を通って第1アパーチャー部材83の原稿Dに対峙する面に対して約30度の角度を持つ。つまり、傾斜面835の角度を原稿面に対して約30度としている。傾斜面835の原稿面とのなす角度は、例えば20~50度の範囲内の他の値でもよい。本実施形態では、傾斜面835の原稿面とのなす角度は、原稿Dの読取りラインから発した光が傾斜面835で反射した場合、その反射光が第1遮光部材81のスリット811から外に出ない角度に設定されている。なお、傾斜面835の角度は、第1遮光部材81のスリット811から原稿Dに反射光が戻らなければ適宜変更可能である。
ところで、突起834における第2凹面鏡86側の面を傾斜面にすると、傾斜面で反射した反射光が第2凹面鏡86に入射してコントラストの低下の原因になる心配があるため、この構成は好ましくない。第1アパーチャー部材83における読取対象である原稿D側の面において、スリット831における光LAが入射する領域に主走査方向Xに隣接する領域には、副走査方向Yに対して第2凹面鏡86とは反対側の面を傾斜面835としている。
また、第2アパーチャー部材84の原稿Dに向いた面においてもスリット841を主走査方向Xに挟む両側の隔壁842に突起834と同様の傾斜面を有する突起を設けてもよい。この場合、突起の傾斜面の角度は、第1遮光部材81のスリット811から原稿Dに反射光が戻らなければよい。なお、遮光部材81,82及びアパーチャー部材83,84の表面には減反射処理が施されている。このため、本例では、傾斜面835を含む突起834の表面にも減反射処理が施されている。但し、凹面鏡85,86の表面は、十分な鏡面で反射率が高い。
図29に示すように、第1遮光部材81のスリット811から入射して第1アパーチャー部材83の隔壁832の前面に向かう迷光Lsの多くは、傾斜面835で反射する。傾斜面835で反射した迷光Lsの進行方向は、図29に示すように第2凹面鏡86とは反対側となる方向となる。このため、第1アパーチャー部材83の前面で反射してスリット811から原稿Dに戻る迷光Lsが低減する。よって、原稿Dに戻った迷光Lsが原稿面で反射し再びスリット811に入射してセンサー573へ至る光の量が大幅に減少する。
以上詳述したように第5実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)~(15)の効果が同様に得られる他、下記の効果を得ることができる。
(21)少なくとも第1アパーチャー部材83の読取対象側の面には、スリット831における光が入射する領域に対し主走査方向Xに隣接する領域に傾斜面835が設けられている。傾斜面835は、移動方向の一例である副走査方向Yにおいて第2凹面鏡86側とは反対側へ光を反射可能な向きに傾斜している。よって、第1遮光部材81のスリット811から入射し第1アパーチャー部材83のスリット831に隣接する領域に至った迷光Lsが反射してスリット811から原稿Dに戻り原稿面で再び反射してスリット811から入射してセンサー573の受光面に至る迷光を低減できる。
(22)2つのアパーチャー部材83,84のうち、少なくとも第1アパーチャー部材83のスリット831の隔壁832の原稿Dに対峙する面に原稿面に平行でない傾斜面835を形成することにより、原稿Dからの画像光の一部が原稿Dに戻ることを避けることができる。そのため、例えば光沢のある原稿Dを用いてもセンサー573にコントラストの高い像を結像できる。
なお、上記実施形態は以下の形態に変更することもできる。
・第1鏡面の一例としての第1凹面鏡85と第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86は、移動方向である副走査方向Yと交差方向である主走査方向Xとの一方または両方で曲率を異ならせてもよい。要するに、移動方向である副走査方向Yにおいて倒立結像でき、交差方向である主走査方向Xで正立結像できる曲率であればよい。
・第1鏡面の一例としての第1凹面鏡85と第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86は、移動方向である副走査方向Yの長さLY1,LY2と交差方向である主走査方向Xの長さLX1,LX2との一方または両方で長さを異ならせてもよい。要するに、移動方向である副走査方向Yにおいて倒立結像でき、交差方向である主走査方向Xにおいて正立結像でき、第2凹面鏡86が第1凹面鏡85からの光を全て反射できればよい。
・第1鏡面の一例としての第1凹面鏡85と第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86との傾斜角を異ならせてもよい。要するに、移動方向である副走査方向Yにおいて倒立結像でき、交差方向である主走査方向Xにおいて正立結像できればよい。
・第1鏡面の一例としての第1凹面鏡85に反射した光を、移動方向である副走査方向Yにおいて第2凹面鏡86との間で平行光としたが、第1凹面鏡85と第2鏡面の一例としての第2凹面鏡86との間の位置で結像しなければ、副走査方向Yにおいて第1凹面鏡85から第2凹面鏡86に向かって広がる広がり光あるいは狭まる狭まり光でもよい。この場合、センサー573に像を結像できるように、第2凹面鏡86の副走査方向Yにおける第3曲率C3を変更したり、センサー573の位置を変更したりしてもよい。なお、結像対象に結像される像の明るさを確保するうえでは、第1曲率C1を小さくして第1凹面鏡85の副走査方向Yの長さLY1をより長く確保し易い平行光または広がり光が好ましい。また、第1凹面鏡85の副走査方向Yの長さLY1を長くしつつ第2凹面鏡86の副走査方向Yの長さLY2を、長さLY1よりも短くして結像光学機構56の小型化を図る場合は、第1凹面鏡85に反射する光が、第1凹面鏡85から第2凹面鏡86へ向かって狭まる狭まり光であることが好ましい。いずれの構成の結像光学機構によっても、結像対象に副走査方向Yに倒立像を結像し、主走査方向Xに正立像が結像される。
・第1遮光部材81と第1アパーチャー部材83との間隔と、第2アパーチャー部材84と第2遮光部材82との間隔とが異なってもよい。これらの間隔は迷光を低減できるように適宜調整できる。
・第1アパーチャー部材83および第2アパーチャー部材84の開口内壁は、凹面鏡アレイ方向(主走査方向X)でテーパーを適宜つけてもよい。つまり、各スリット831,841のアレイ方向両側の内壁面にテーパーを適宜つけてもよい。具体的には、第1アパーチャー部材83では原稿D側に広く、第2アパーチャー部材84ではセンサー573側に広くテーパー角2度つけるとゴーストを減らすことができる。もちろん、この構成に限られず適宜最適化してもよい。
・第1遮光部材81のスリット811と第2遮光部材82のスリット821は、移動方向である副走査方向Yにおける幅S1,S2が異なってもよい。第1凹面鏡85の副走査方向Yにおける長さ範囲に光の照射域を制限しうる寸法にスリット811の副走査方向Yの幅S1を調整し、かつ第2凹面鏡86に反射してセンサー573に結像する光に対する迷光の低減と光量の確保とが可能な寸法にスリット821の副走査方向Yの幅S2を調整する。この結果、スリット811,821の幅S1,S2にそれぞれ異なる寸法を設定してもよい。また、スリット811,821は光路方向に厚みを持つため開口に入射した光は開口内壁面で散乱され迷光となる。この迷光を減らすためにスリット811,821の開口内壁面にテーパーをつけるとよい。具体的には、スリット811の長手方向(主走査方向X)に延びる1組の内壁面には原稿D側に広い例えば45度のテーパーを、スリット821の長手方向に延びる1組の内壁面にはセンサー573側に広い例えば45度のテーパーをつけるとよい。但し、逆向きのテーパーでも迷光を減ずる効果はある。
・第1遮光部材81と第2遮光部材82の各スリット811,821は、第1凹面鏡列851を構成する第1凹面鏡85の個々に対応する位置、第2凹面鏡列861を構成する第2凹面鏡86の個々に対応する位置にそれぞれ個別に開口する複数ずつ設けられてもよい。また、第1遮光部材81と第2遮光部材82に、複数の凹面鏡85,86ごとに1つの割合でスリット811,821を設けてもよい。
・結像光学機構56を、読取対象の読取面Dpに対して垂直な方向を光軸方向Z1とする姿勢に配置したが、読取面Dpに対する垂直方向と所定の角度をなす方向が光軸方向Z1となるように結像光学機構56を傾斜した姿勢に配置してもよい。この場合、光軸を傾ける向きおよび角度は、線状光源52からの光が読取面Dpで反射した正反射光がスリット811に入射せず且つ反射した散乱光が入射する範囲において適宜設定できる。
・結像光学機構56は、光源から読取対象を透過した光を入射してその光の像を結像対象の一例であるセンサー573に結像させる構成でもよい。この種の読取対象として例えばネガフィルムが挙げられ、光源からの光がネガフィルムを透過した光を結像光学機構に入射し、結像光学機構がその入射した光の像をセンサー573等の結像対象に結像させる構成でもよい。
・前記実施形態において、結像光学機構56を構成する部品の寸法や間隔G1~G3、スリット811,821,831,841の幅および長さの寸法、凹面鏡85,86の長さLY1,LX1,LY1,LX1、曲率C1~C4は、複合機11に適用した場合の一例であり、適用する装置や要求される解像度などに応じて適宜変更してもよい。
・読取素子53を構成する読取モジュール50は、CISMに限らず、例えば縮小光学系に用いてもよい。
・線状光源52を構成するライトガイド522は、図4に示す構成に限定されず、原稿Dを均一に照明できるものであればよい。ライトガイドは、例えばファイバ素線を複数本バンドルしてアッセンブリされた構成でもよい。また、線状光源52は、発光体521とライトガイド522とを用いる構成に限定されず、例えば線状発光体でもよい。一般的に用いられているLEDアレイで構成してもよい。
・発光体521はLEDに限らず、キセノンランプ等の蛍光ランプを用いてもよい。
・画像読取装置は、印刷装置21とスキャナー装置31とを備えた複合機11や複写機に限らず、原稿を搬送する原稿搬送部を備えたスキャナー装置であってもよいし、フラットベッド型のスキャナー装置であってもよい。
・読取モジュールおよび結像光学機構を、原稿以外の読取対象の画像を読み取る画像読取装置に適用してもよい。
・光学モジュールおよび結像光学機構を、画像読取装置以外の装置に適用してもよい。例えば、結像光学機構56を搭載する光学モジュールが、結像対象に対して相対的に移動可能に設けられた装置に適用してもよい。例えば、光プリンターに適用してもよい。この場合、結像光学機構が搭載された光学モジュールの一例としての書込モジュールが、結像対象としての感光ドラム等の感光体に対して相対的に移動し、有機EL発光素子等の光源から入射した光を結像対象である感光体に結像させる。このように結像光学機構が適用される光学モジュールは、読取モジュールに限らず、光源像を感光体等の結像対象に書き込む書込モジュールでもよい。