JP7039624B2 - ボロン酸エステル化合物の合成方法、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩及びその合成方法 - Google Patents

ボロン酸エステル化合物の合成方法、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩及びその合成方法 Download PDF

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Description

本発明は、ボロン酸エステル化合物の合成方法、及び、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩及びその合成方法に関する。
ボロン酸エステル化合物等の有機ホウ素化合物は、天然物全合成や、医農薬、及び、液晶や有機 EL等の電子材料、並びに、それらの中間体等の多種多様な機能性材料の有機合成反応等に使用されている。特に、有機ボロン酸化合物は、パラジウム触媒の下で炭素-炭素結合を形成させカップリングさせる鈴木-宮浦クロスカップリングの際の基質として多用されており、2010年には、リチャード・ヘック、根岸英一、鈴木章がノーベル化学賞を受賞している。
ボロン酸エステル化合物は、非特許文献1に示される通り、有機ハロゲン化物から対応するグリニャール試薬又は有機リチウム試薬を調製し、これらをホウ酸エステル化合物と反応させて得ることができる。また、有機金属化合物とホウ酸エステル化合物を反応させる方法や、非特許文献2及び非特許文献3のように有機ハロゲン化物にジボロン酸等をパラジウム触媒下で反応させる方法、非特許文献4のようにイリジウム触媒と電子供与型二座配位子を使用することで、炭素-水素結合活性化により芳香族ボロン酸化合物を直接合成できることも報告されている。しかしながら、ジボロン酸や、パラジウム触媒及びイリジウム触媒は高価な試薬である等の理由から、グリニャール試薬又は有機リチウム試薬を使用する方法が汎用されている。
Miyaura, N. et al, Chem. Rev. 1995, 95, 2457-2483 Yamamoto, T. et al, ORGANIC LETTERS 2011, Vol. 13, No. 21, 5766-5769 Harrisson, P. et al, Synlett 2009, No. 1, 147-150 Mkhalid, I. A. I. et al, Chem. Rev. 2010, 110, 890-931
ここで、ボロン酸エステル化合物の合成過程で使用するグリニャール試薬は、テトラヒドロフラン(以下「THF」と称する)やエーテル等の無水溶媒中で有機ハロゲン化物と金属マグネシウムを反応させることで得られるものである。しかしながら、グリニャール試薬の合成の際の反応性は、一般的に、有機塩化物(R-Cl)に比べて、有機臭化物(R-Br)及び有機ヨウ化物(R-I)の方が高いが、有機臭化物及び有機ヨウ化物は高価である。一方、有機塩化物は他の有機ハロゲン化物に比べて安価であるものの合成の際の反応性が低いことから、目的とするグリニャール試薬の収率が低下する傾向がある。特に、芳香族グリニャール試薬やアルケニルグリニャール試薬等の合成に際しては、目的のグリニャール試薬を収率よく合成することができず、また、収率は、芳香環上の置換基等の影響を受けることも知られている。また、芳香族グリニャール試薬等のホモカップリングしやすいグリニャール試薬の調製に際しては、収率低下の要因となるホモカップリングの誘発を抑制するため、厳密な温度制御等が必要となる、という問題もある。そのため、ボロン酸エステル化合物の合成過程においてグリニャール試薬を使用する方法は、工業的及び経済的観点から市場の要求を十分満足し得るものではない。また、反応性等の観点からグリニャール試薬として汎用される有機マグネシウムブロミドは臭素含有化合物であるが、臭素は採掘される地域が限定されるうえ、毒性が高く、人体残留性等を有するため、使用が減少している。そのため、流通量が減少し、目的とする有機臭化物の入手が困難となる傾向にある、という問題点もある。
また、ボロン酸エステル化合物の合成過程で使用する有機リチウム試薬は、有機ヨウ化物等の有機ハロゲン化物にn-ブチルリチウム(以下、「nBuLi」と略する)やt-ブチルリチウム(以下、「tBuLi」と略する)を作用させてリチウム-ハロゲン交換反応により得られるものである。しかしながら、nBuLi、tBuLiは高価な試薬であることからコストが増加する等の問題がある。更に、nBuLi、tBuLiは消防法で第3類危険物に指定されていることから、取り扱いに適した装置や設備等が必要となる、との問題もある。
また、グリニャール試薬や有機リチウム試薬は反応性が高いため、生成したボロン酸エステル化合物と更に反応し、ボリン酸エステル化合物やトリアリールボラン等を副生するという問題点もある。
そこで、煩雑な化学的手法や取り扱いに注意を要する試薬類を必要とせず少ない工程数で簡便にボロン酸エステル化合物を効率高く安価に合成できる技術の構築が求められていた。
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、反応溶媒中で有機ハロゲン化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体を反応させて有機ナトリウム化合物を得、続いて、得られた有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物を反応させることにより、ボロン酸エステル化合物を効率よく合成できることを見出した。かかる合成方法は、取扱いが容易なナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体を使用することから、温和な条件下でボロン酸エステル化合物を合成することができる。また、煩雑な化学的手法や取り扱いに注意を要する試薬類をも必要とせず、入手及び取り扱い容易な試薬類を使用して少ない工程数でボロン酸エステル化合物を安価かつ収率高く合成することができる。本発明者らは、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ボロン酸エステル化合物の合成方法であって、
特徴構成は、反応溶媒中で、一般式I(R1-X)〔ここで、式中、R1は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基であり、Xは、ハロゲン原子である〕に示す有機ハロゲン化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、一般式II(R1-Na)〔ここで、式中、R1は、一般式IのR1と同様である〕に示す有機ナトリウム化合物を得て、
得られた前記有機ナトリウム化合物と、一般式III
Figure 0007039624000001


〔ここで、式中、R2は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基であり、Ra及びRbは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、Ra及びRbは、互いに結合してホウ素原子と共に環を形成していてもよい〕に示すホウ酸エステル化合物とを反応させて、一般式IV
Figure 0007039624000002

〔式中、R1は、一般式IのR1と同様であり、Ra及びRbは、一般式IIIと同様である〕に示すボロン酸エステル化合物を得る工程、を有する、点にある。
本構成によれば、有機ハロゲン化物から有機ナトリウム化合物を経て、ボロン酸エステル化合物を安定的かつ効率的に合成することができるボロン酸エステル化合物の合成方法を提供することができる。本構成によれば、取り扱いが容易なナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体を使用することにより、温和な条件下で、煩雑な化学的手法を必要とせず、少ない工程数で簡便かつ短時間にボロン酸エステル化合物を安価に合成することができるので、経済的かつ工業的にも非常に有利である。また、温和な条件下で反応が進行するため、有機ハロゲン化物同士がカップリングするウルツ反応等の副反応を誘発することなく、効率的に有機ナトリウム化合物を得ることができ、ひいては、ボロン酸エステル化合物を高収率かつ高純度に合成することができる。また、ナトリウムは、地球上に極めて広く分布していることから、サステナビリティーにも優れた技術である。また、出発化合物として安価な有機塩化物を使用することにより経済的に有利となると共に、有機臭化物において問題とされる、原料である臭素の産地の偏在や入手の困難性等の問題もなく、工業化に際しての高負荷な廃棄処理施設の必要性等の問題もない。更に、本構成のボロン酸エステル化合物の合成方法で合成されたボロン酸エステル化合物は、鈴木-宮浦カップリング等に好適に利用することができる。また、鈴木-宮浦カップリングの際に必要とされる塩基に関して、本構成のボロン酸エステル化合物の合成方法において、一般式IIに示す有機ナトリウム化合物と一般式IIIに示すホウ酸エステルが反応した際に生じる副生成物であるナトリウムアルコキシドが、また、水を添加した場合には水とナトリウムとの反応で生じる水酸化ナトリウムが、鈴木-宮浦カップリングに際して必要とされる塩基としての役割を果たすことができ、塩基添加工程等を別途設ける必要がない点においても経済的かつ工業的に有利である。したがって、本構成のボロン酸エステル化合物の合成方法は、医農薬及び電子材料等の機能性材料の合成等、様々な技術分野において利用することができる。
他の特徴構成は、前記ホウ酸エステル化合物は、下記一般式V
Figure 0007039624000003


〔ここで、式中、R2は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である〕に示す化合物である、点にある。
本構成によれば、ホウ酸エステル化合物として、ピナコール環を有する化合物を使用することにより、非常に効率よく高純度なボロン酸エステル化合物を得ることができ、経済的かつ工業的に更に有利となる。
他の特徴構成は、前記ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体の前記有機ハロゲン化物に対するモル比は、2以上である、点にある。
本構成によれば、有機ハロゲン化物、及び、ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体の使用量の最適化を図ることにより、ボロン酸エステル化合物を更に高効率かつ高純度に合成することができる。
他の特徴構成は、一般式VI
Figure 0007039624000004


〔ここで、式中、Aは、窒素原子、炭素原子、ケイ素原子、及び、リン原子から選択される原子であり、R3は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基であり、Rc、Rd及びReは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、各Rc、Rd及びReは、前記A及びホウ素原子と結合して環を形成している〕に示すボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を提供する。
本構成によれば、新規化合物である一般式VIに示すボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を提供することができる。当該化合物は、医農薬及び電子材料等の機能性材料の合成等、様々な技術分野において利用することができる。
他の特徴構成は、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法を提供し、特徴構成は、
反応溶媒中で、一般式I(R1-X)〔ここで、式中、R1は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基であり、Xは、ハロゲン原子である〕に示す有機ハロゲン化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、一般式II(R1-Na)〔ここで、式中、R1は、一般式IのR1と同様である〕に示す有機ナトリウム化合物を得て、
得られた前記有機ナトリウム化合物と、一般式VII
Figure 0007039624000005


〔ここで、式中、Aは、窒素原子、炭素原子、ケイ素原子、及び、リン原子から選択される原子であり、Rc、Rd及びReは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、各Rc、Rd及びReは、前記A及びホウ素原子と結合して環を形成している〕に示すホウ酸エステル化合物とを反応させて、一般式VI
Figure 0007039624000006

〔ここで、式中、Aは、一般式VIIのAと同様であり、R1は、一般式IのR1と同様であり、Rc、Rd及びReは、一般式VIIのRc、Rd及びReと同様である〕に示すボロン酸エステル化合物を得る工程、を有する、点にある。
本構成によれば、有機ハロゲン化物から有機ナトリウム化合物を経て、新規な化合物であるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を安定的に合成することができるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法を提供することができる。本構成によれば、取り扱いが容易なナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体を使用することにより、温和な条件下で、煩雑な化学的手法を必要とせず、少ない工程数で簡便かつ短時間にボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を安価に合成することができるので、経済的かつ工業的にも非常に有利である。また、温和な条件下で反応が進行するため、有機ハロゲン化物同士がカップリングするウルツ反応等の副反応を誘発することなく、効率的に有機ナトリウム化合物を得ることができ、ひいては、新規化合物であるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を合成することができる。また、ナトリウムは、地球上に極めて広く分布していることから、サステナビリティーにも優れた技術である。また、出発化合物として安価な有機塩化物を使用することにより経済的に有利となると共に、有機臭化物において問題とされる、原料である臭素の産地の偏在や入手の困難性等の問題もなく、工業化に際しての高負荷な廃棄処理施設の必要性等の問題もない。更に、本構成のボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法で合成されたボロン酸エステル化合物のナトリウム塩は、鈴木-宮浦カップリング等に好適に利用することができる。鈴木-宮浦カップリングの際に必要となる塩基に関して、本構成のボロン酸エステル化合物の合成方法における生成物であるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩自体が塩基として機能すること、また、水を添加した場合には水とナトリウムとの反応で生じる水酸化ナトリウムが塩基として機能することから、鈴木-宮浦カップリングに際して必要とされる塩基としての役割を果たすことができ、塩基添加工程等を別途設ける必要がない点においても経済的かつ工業的に有利である。
したがって、本構成のボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法は、医農薬及び電子材料等の機能性材料の合成等、様々な技術分野において利用することができる。
他の特徴構成は、前記ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体の前記有機ハロゲン化物に対するモル比は、2以上である、点にある。
本構成によれば、有機ハロゲン化物、及び、ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体の使用量の最適化を図ることにより、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を更に効率良くかつ純度高く合成することができる。
SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物の合成、及び、鈴木-宮浦カップリングの検討を行った実施例1の合成条件及び結果を要約する図である。 SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物の合成、及び、鈴木-宮浦カップリングの検討を行った実施例2の合成条件及び結果を要約する図である。 SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物の合成、及び、鈴木-宮浦カップリングの検討を行った実施例2の合成条件及び結果を要約する図である。 SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成、及び、鈴木-宮浦カップリングの検討を行った実施例3の合成条件及び結果を要約する図である。 SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物の合成、及び、鈴木-宮浦カップリングの検討を行った実施例4の合成条件及び結果を要約する図である。 SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成の検討を行った実施例5の合成条件及び結果を要約する図である。
以下、本発明の実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩及びにボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法について詳細に説明する。ただし、本発明は、後述する実施形態に限定されるものではない。
(ボロン酸エステル化合物の合成方法)
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法は、反応溶媒中で、下記一般式Iに示す有機ハロゲン化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、下記一般式IIに示す有機ナトリウム化合物を得る(工程1)。得られた前記有機ナトリウム化合物と、下記一般式IIIに示すホウ酸エステル化合物とを反応させて、下記一般式IVに示すボロン酸エステル化合物を得る(工程2)ものである。
(工程1)
工程1は、反応溶媒中で、下記一般式Iに示す有機ハロゲン化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、下記一般式IIに示す有機ナトリウム化合物を得る工程である。
本実施形態に係る有機ハロゲン化物は、共有結合したハロゲン原子を含む有機化合物であり、本実施形態に係る有機ホウ素化合物の合成方法おける出発化合物である。ここで、当該有機ハロゲン化物を示す一般式Iは、R1-Xである。一般式I(R1-X)に示す有機ハロゲン化物において、R1は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である。ナトリウムと反応性を有する置換基を有すると、当該置換基とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体が反応し、副反応を誘発するため好ましくない。したがって、R1としてナトリウムと反応性を有する置換基を有する化合物を出発化合物とする場合には、当該置換基を適切な保護基等で保護することが必要となる。
脂肪族炭化水素基は、直鎖及び分枝の別を問わず、飽和及び不飽和の別も問わない。また、その鎖長についても特に制限はない。置換基を有する場合、当該置換基は、ナトリウムと反応しないものである限り特に制限はない。また、置換基の数及び導入位置についても特に制限はない。脂肪族炭化水素基としては、これらに限定するものではないが、好ましくは炭素原子数1~20個、特に好ましくは炭素原子数3~20個のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が例示される。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、s-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、t-ヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-プロピルプロピル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、s-ヘプチル基、t-ヘプチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1-プロピルブチル基、2-プロピルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、t-オクチル基、ネオオクチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、3-プロピルペンチル基、n-ノニル基、イソノニル基、t-ノニル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、n-デシル基、イソデシル基、t-デシル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘプチニル基、オクチニル基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基は、1個又は複数個を有していてよく、複数個の置換基を有する場合には、互いに同一又は異なっていてもよい。置換基としては、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、脂環式複素環オキシ基、芳香族複素環オキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基は、脂環式複素環チオ基、芳香族複素環チオ基、アルキルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基、脂環式複素環アミノ基、芳香族複素環アミノ基、アシル基等が例示されるが、これらに限定するものではない。なお、脂肪族炭化水素基は上記で示されるものと同様なものを、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、下記で示されるものと同様なものが挙げられる。
アルコキシ基は、好ましくは炭素原子数1~10個のアルコキシ基が例示され、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。シクロアルコキシ基は、好ましくは炭素原子数3~10個のシクロプロポキシ基が例示され、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基は、好ましくは炭素原子数6~20個のアリールオキシ基が例示され、具体的には、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。アラルキルオキシ基は、好ましくは炭素原子数7~11個のアラルキルオキシ基が例示され、具体的には、ベンジルオキシ基、及び、フェネチルオキシ基が挙げられる。脂環式複素環オキシ基、及び、芳香族複素環オキシ基は、複素環部として下記で示される脂環式複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
アルキルチオ基は、好ましくは炭素原子数1~20個のアルキルチオ基が例示され、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。シクロアルキルチオ基は、炭素原子数3~10個のシクロアルキルチオ基が例示され、具体的には、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。アリールチオ基は、好ましくは炭素原子数6~20個のアリールチオ基が例示され、具体的には、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。アラルキルチオ基は、好ましくは炭素原子数7~11個のアラルキルチオ基が例示され、具体的には、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。脂環式複素環チオ基、及び、芳香族複素環チオ基は、複素環部として下記で示される脂環式複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
脂環式炭化水素基は、環構成原子間の結合は飽和及び不飽和の別は問わず、環員数についても特に制限はない。また、単環だけでなく、縮合環やスピロ環等の環集合を持つものも含まれる。脂環式炭化水素基としては、これらに制限するものではないが、好ましくは炭素原子数3~10個、特に好ましくは3~7個のシクロアルキル基、好ましくは炭素原子数4~10個、特に好ましくは4~7個のシクロアルケニル基等が例示される。具体的には、シクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。シクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基は、1個又は複数個を有していてよく、複数個の置換基を有する場合には、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換基の位置についても特に制限はない。置換基は、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと、同様のものが挙げられる。
脂環式複素環基は、環構成原子として1個又は複数個のヘテロ原子を有する非芳香族複素環基である。単環だけでなく、縮合環やスピロ環等の環集合を持つものも含まれる。環構成原子間の結合は飽和及び不飽和の別は問わず、環員数についても特に制限はない。ヘテロ原子は、環構成原子としてナトリウムと反応しないものである限り特に制限はない。
ヘテロ原子の数は特に制限はなく、ヘテロ原子の位置についても制限はない。ヘテロ原子としては、好ましくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が例示される。例えば、炭素原子数が、好ましくは2~7個、特に好ましくは、2~5個、ヘテロ原子数が、好ましくは1~5個、特に好ましくは1~3個である脂環式複素環基が挙げられる。なお、複数個のヘテロ原子を有する場合には、同一種類の原子であっても異なる種類の原子であってもよい。脂環式複素環基としては、単環の四員環式のアゼチジニル基、五員環式のピロリジニル基、六員環式のピペリジル基、ピペラジニル基等の含窒素脂環式複素環基、単環の三員環式のオキシラニル基、四員環式のオキセタニル基、五員環式のテトラヒドロフリル基、六員環式のテトラヒドロピラニル基等の含酸素脂環式複素環基、単環の五員環式のテトラヒドロチオフェニル基等の含硫黄脂環式複素環基、単環の六員環式のモルホリニル基等の含窒素酸素脂環式複素環基、単環の六員環式のチオモルホリニル基等の含窒素硫黄脂環式複素環基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
脂環式複素環は、置換基を有していてもよい。置換基は、1個又は複数個を有していてよく、複数個の置換基を有する場合には、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換基の位置についても特に制限はない。置換基は、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと、同様のものが挙げられる。
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する限り特に制限はない。単環だけでなく、縮合環やスピロ環等の環集合を持つものも含まれる。環員数についても特に制限はない。例えば、炭素原子数が、好ましくは6~22個、特に好ましくは、6~14個である芳香族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、単環式の六員環フェニル基等、二環式のナフチル基、ペンタレニル基、インデニル基、アズレニル基等、三環式のビフェニレニル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基等、四環式のフルオランテニル、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基等、五環式のペリレニル基、テトラフェニレニル等、六環式のペンタセニル基等、七環式のルビセニル基、コロネニル基、ヘプタセニル基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。特に好ましくは、フェニル基である。
芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基は、1個又は複数個を有していてよく、複数個の置換基を有する場合には、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換基の位置についても特に制限はない。置換基は、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと、同様のものが挙げられる。特に好ましくは、ノルマルノニル基等のアルキル基である。
芳香族複素環基は、環構成原子として1個又は複数個のヘテロ原子を有する芳香族複素環基である。単環だけでなく、縮合環やスピロ環等の環集合を持つものも含まれる。環員数についても特に制限はない。ヘテロ原子は、環構成原子としてナトリウムと反応しないものである限り特に制限はない。ヘテロ原子の数は特に制限はなく、ヘテロ原子の位置についても制限はない。ヘテロ原子としては、好ましくは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が例示される。例えば、炭素原子数が、好ましくは1~5個、特に好ましくは、3~5個、ヘテロ原子数が、好ましくは1~4個、特に好ましくは1~3個である芳香族複素環基が挙げられる。なお、複数個のヘテロ原子を有する場合には、同一種類の原子であっても異なる種類の原子であってもよい。
例えば、単環式の芳香族複素環基としては、五員環式のピロリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、イミダゾリル基等、六員環式のピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基等の含窒素芳香族複素環基、五員環式のフリル基等の含酸素芳香族複素環基、五員環式のチエニル基等の含酸素芳香族複素環基、五員環式のオキサゾリル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基等の含窒素酸素芳香族複素環基、五員環式のチアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素硫黄芳香族複素環基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
多環式の芳香族複素環基としては、二環式のインドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基等、三環式のカルバゾリル基、カルボリニル基、フェナトリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基等の含窒素芳香族複素環基、二環式のベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾピラニル基等の含酸素芳香族複素環基、二環式のベンゾチエニル基等、三環式のチアントレニル基等の含硫黄芳香族複素環基、二環式のベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基等の含窒素酸素芳香族複素環基、二環式のベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、三環式のフェノチアジニル基等の含窒素硫黄芳香族複素環基、三環式のフェノキサチイニル基等の含酸素硫黄芳香族複素環基等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基は、1個又は複数個を有していてよく、複数個の置換基を有する場合には、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換基の位置についても特に制限はない。置換基は、脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものと、同様のものが挙げられる。
Xは、ハロゲン原子であり、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は、フッ素原子であるが、好ましくは、塩素原子である。したがって、一般式I(R1-X)に示す有機ハロゲン化物として、X=Clである一般式Ia(R1-Cl)に示す有機塩化物を好ましく使用することができる。このように出発化合物として安価な有機塩化物を使用することにより経済的に更に有利となる。また、有機ハロゲン化物の一種である有機臭化物において問題となるような、原料である臭素の産地の偏在や入手の困難性等の問題もなく、工業化に際しての高負荷な廃棄処理施設の必要性等の問題もない。
出発化合物である有機ハロゲン化物は、市販されているものを使用してもよいし、当該技術分野で公知の方法により製造されたものを使用してよい。
ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体(以下、Sodium Dispersionの略号である「SD」と略する場合がある。)は、ナトリウムを微粒子として不溶性溶媒に分散させたもの、又は、ナトリウムを液体の状態で不溶性溶媒に分散させたものである。ナトリウムとしては、金属ナトリウムのほか、金属ナトリウムを含む合金などが挙げられる。微粒子の平均粒子径として、好ましくは、10μm未満であり、特に好ましくは、5μm未満のものを使用することができる。平均粒子径は、顕微鏡写真の画像解析によって得られた投影面積と同等の投影面積を有する球の径で表した。
分散溶媒としては、ナトリウムを微粒子として分散、又はナトリウムを液体の状態で不溶性溶媒に分散でき、かつ、出発化合物である有機ハロゲン化物とSDとの反応を阻害しない限り、当該技術分野で公知の溶媒を使用することができる。例えば、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族系溶媒や、ノルマルデカン等のノルマルパラフィン系溶媒、テトラヒドロチオフェン等の複素環化合物溶媒、又はそれらの混合溶媒等が挙げられる。
SDは、クロロベンゼンに対して2.1モル当量以上で反応溶媒中で反応させた場合に、添加したクロロベンゼンに対するフェニルナトリウムの収率が99.0%以上となる活性を有するものを使用することが好ましい。このような高活性なSDを使用することにより、更に効率的にボロン酸エステル化合物を合成することができる。SDの活性を高く維持するためには、好ましくは、ガラスバイアル等のガスバリア性の高い容器に保管することが好ましい。しかしながら、ガスバリア性の低い容器に保管することを排除するものではなく、その場合には、SDの製造後、速やかに、例えば数週間内、好ましくは3週間内に使用する。
工程1の反応溶媒としては、出発化合物である有機ハロゲン化物とSDとの反応を阻害しない限り、当該技術分野で公知の溶媒を使用することができる。例えば、エーテル系溶媒、ノルマルパラフィン系やシクロパラフィン系等のパラフィン系溶媒、芳香族系溶媒、アミン系溶媒、複素環化合物溶媒を使用することができる。エーテル系溶媒としては、環状エーテル溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略する場合がある)等を好ましく使用することができる。パラフィン系溶媒としては、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、及び、ノルマルデカン等が特に好ましい。芳香族系溶媒としては、キシレン、トルエン及びベンゼン等が好ましい。アミン系溶媒としては、エチレンジアミン等を好ましく使用することができる。複素環化合物溶媒としては、テトラヒドロチオフェン等を利用することができる。また、これらは1種類のみを使用してもよいし、2種以上を併用し混合溶媒として使用することもできる。ここで、前述の分散溶媒と反応溶媒とは同一の種類のものを使用してもよいし、異なる種類のものを使用してもよい。
工程1の反応温度は、溶媒としてパラフィン系溶媒を使用する場合は特に限定されず、出発化合物である有機ハロゲン化物、SD及び反応溶媒の種類や量、並びに反応圧力等により適宜設定することができる。具体的には、反応温度は、反応溶媒の沸点を越えない温度に設定することが好ましい。加圧下では大気圧下での沸点よりも高くなるため反応温度を高い温度で設定することができる。反応は、室温で行うこともでき、好ましくは0~100℃であり、特に好ましくは20~80℃、更に好ましくは室温~50℃である。特段の加熱や冷却等のための温度制御手段を設ける必要はないが、必要に応じて、温度制御手段を設けても良い。一方、パラフィン系以外の溶媒を使用する場合は、工程1の反応で生成するR1-Naの好適例であるフェニルナトリウム等と溶媒との反応を防止するため、低温、好ましくは0℃付近で行うとよい。ここで、有機ハロゲン化物と等モル当量のTHFを添加することで、ビフェニルの生成を効果的に抑制できると共に、良好な反応速度を維持することができる。したがって、反応溶媒の種類及び添加量を適切に制御することで、効率的に目的化合物を合成することができる。
工程1の反応時間についても、特に限定されず、出発化合物である有機ハロゲン化物、SD、及び反応溶媒の種類や量、並びに反応圧力や反応温度等に応じて適宜設定すればよい。通常は、15分間~24時間、好ましくは20分間~6時間で行われる。
工程1は、SD、及び、反応溶媒等の試薬類は大気下で安定して扱うことができることから、大気下の常圧条件下で行うことに適している。しかしながら、生成するR1-Naの好適例であるフェニルナトリウム等は高活性であり少しでも空気が混入すると水分によりプロトン化されることから、必要に応じて、アルゴンガスや窒素ガス等を充填した不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
工程1によって得られる有機ナトリウム化合物を示す一般式IIはR1-Naであり、出発化合物である一般式I(R1-X)に示す有機ハロゲン化物のハロゲン原子がナトリウムに置換されたものである。したがって、一般式II(R1-Na)において、R1は、上記した一般式IのR1と同様であり、Naは、ナトリウム原子である。得られた有機ナトリウム化合物は、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等、当該技術分野で公知の精製手段により精製してもよい。また、未反応で残存した出発化合物である有機ハロゲン化物を回収し、再度、工程1の反応に供するように構成してもよい。また、生成時と同様にアルゴンガスや窒素ガスなどを充填した不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
(工程2)
工程2は、工程1によって得られた上記一般式IIに示す有機ナトリウム化合物と下記一般式IIIに示すホウ酸エステル化合物を反応させて、最終目的化合物の下記一般式IVに示すボロン酸エステル化合物を得る工程である。
ホウ酸エステル化合物である一般式IIIに示す化合物は以下に示す通りである。
Figure 0007039624000007

一般式IIIにおいて、R2は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である。ナトリウムと反応性を有する置換基を有すると、当該置換基とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体が反応し、副反応を誘発するため好ましくない。したがって、ホウ酸エステル化合物が、R2としてナトリウムと反応性を有する置換基を含む場合には、当該置換基を適切な保護基等で保護することが必要となる。ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基の定義は、(工程1)の項のR1で説明した通りあるが、一般式IIIにおけるR2は、一般式IのR1とは独立した基である。好ましくは、R2は、メチル基、及び、イソプロピル基が挙げられる。
一般式IIIにおいて、Ra及びRbは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、Ra及びRbは両者が同一であっても、また、異なっていてもよい。Ra及びRb間の結合(点線で表示)、互いに結合してホウ素原子及びホウ素原子に結合する2個の酸素原子と共に環を形成していてもよいし、互いに結合せずに独立した基として存在してもよい。Ra及びRbが互いに結合して環を形成する場合には、Ra及びRbの結合位置は何れの位置であってもよい。環構造としては、スピロ環及び縮合環であってもよい。ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基(アリール基)の定義は、(工程1)の項のR1で説明した通りある。ただし、Ra及びRbは互いに結合している場合には、Ra及びRbは、R1で定義した脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基より、両者の結合位置の炭素原子から1個の水素原子が除去されたものとなる。ここで、脂肪族炭化水素基は、直鎖及び分枝の別を問わず、飽和及び不飽和の別も問わない。また、その鎖長についても特に制限はない。置換基を有する場合、当該置換基は、ナトリウムと反応しないものである限り特に制限はない。また、置換基の数及び導入位置についても特に制限はない。脂肪族炭化水素基としては、これらに限定するものではないが、好ましくは炭素原子数1~20個、特に好ましくは炭素原子数1~5個のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が例示される。
芳香族炭化水素基としては、これらに限定するものではないが、好ましくは炭素原子数6~14個、特に好ましくは炭素原子数6個のカテコールが例示される。ここで、ホウ素原子及びそれに結合する2個の酸素原子、各酸素原子に結合する原子により構成される環状構造が、環員数4~8であることが好ましい。また、環状構造を形成する原子は置換基を有していてもよく、環状構造に導入された置換基同士が結合し更なる環状構造を形成してもよい。
RaとRbが結合した基としては、例えば、ピナコール環を形成する基である1,1,2,2-テトラメチルエチレン基、1,1,2-トリメチルプロピレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、プロピレン基、o-フェニレン基、1-(4-メトキシフェニル)-2,2-ジメチルエチレン基、(1R,2R,3S,5R)-2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン-2,3-ジイル基等が挙げられるが、好ましくはピナコール環を形成する基である。
一般式IIIに示すホウ酸エステル化合物としては、例えば、ホウ酸のピナコールエステル、MIDAエステル、カテコールエステル、ネオペンチルグリコールエステル、ピナンジオールエステル、ビスシクロヘキシルジオールエステル、MPMPエステル等が挙げられる。
好ましくは、一般式IIIに示すホウ酸エステル化合物は、ピナコール環を形成する基を含む下記一般式Vに示す化合物である。一般式Vにおいて、R2は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基であり、詳細は上記一般式IIIのR2において説明した通りである。
Figure 0007039624000008

一般式IIIに示すホウ酸エステル化合物の具体例としては、2-メトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(メトキシボロン酸ピナコール)、2-エトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(エトキシボロン酸ピナコール)、2-イソプロポシキ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(イソプロポキシボロン酸ピナコール)、2-イソプロポキシ-4,4,6-トリメチル-1,3,2-ジオキサボリナン、及び、ホウ酸トリメチル等が挙げられる、これらに限定するものではない。好ましくは、一般式IIIに示すホウ酸エステル化合物は、メトキシボロン酸ピナコール、イソプロポキシボロン酸ピナコール、及び、ホウ酸トリメチルである。
一般式IIIに示すホウ酸エステル化合物は、市販されているものを使用してもよいし、当該技術分野で公知の方法により製造されたものを使用してよい。例えば、メトキシボロン酸ピナコールは、ピナコールとホウ酸トリメチルを反応させることによって得ることができる。
工程2は、工程1によって得られた反応物にホウ酸エステル化合物を添加することにより行ってもよいし、工程1によって得られた反応物を当該技術分野で公知の精製手段により精製した後、反応溶媒の存在下でホウ酸エステル化合物を添加することによって行ってもよい。反応溶媒としては、工程1と同様のものを使用することができる。
工程2の反応温度は、溶媒としてパラフィン系溶媒を使用する場合は特に限定されず、有機ナトリウム化合物、SD及び反応溶媒の種類や量、並びに反応圧力等により適宜設定することができる。具体的には、反応温度は、反応溶媒の沸点を越えない温度に設定することが好ましい。加圧下では大気圧下での沸点よりも高くなるため反応温度を高い温度で設定することができる。反応は、室温で行うこともでき、好ましくは0~100℃であり、特に好ましくは20~80℃、更に好ましくは室温~50℃である。特段の加熱や冷却等のための温度制御手段を設ける必要はないが、必要に応じて、温度制御手段を設けても良い。一方、パラフィン系以外の溶媒を使用する場合は、工程1の反応で生成するR1-Naの好適例であるフェニルナトリウム等と溶媒との反応を防止するため、低温、好ましくは0℃付近で行うとよい。
工程2の反応時間についても、特に限定されず、有機ナトリウム化合物、SD、ホウ酸エステル化合物、及び反応溶媒の種類や量、並びに反応圧力や反応温度等に応じて適宜設定すればよい。通常は、5分~2時間、好ましくは10分~1時間で行われる。
また、工程2は、有機ナトリウム化合物は、酸素や水分と反応するため、アルゴンガスや窒素ガス等を充填した不活性ガス雰囲気下で行う必要がある。
工程2の反応によって、所望の最終目的化合物の下記一般式IVに示すボロン酸エステル化合物を得ることができる。
Figure 0007039624000009

上記一般式IVに示すボロン酸エステル化合物は、一般式II(R1-Na)に示す有機ナトリウム化合物のナトリウムが、ホウ酸エステル基(-B(OR)2)に置換されたものである。したがって、一般式IVにおいて、R1は、上記した一般式I及び一般式IIのR1に対応し、Ra及びRbは、上記した一般式IIIのRa及びRbに対応する。一般式IVに示すボロン酸エステル化合物としては、特に好ましくは、2-フェニル-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(フェニルボロン酸ピナコール)を挙げることができる。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法においてSD及びホウ酸エステル化合物の使用量は、出発化合物、及び反応溶媒の種類や量に応じて適宜設定することができる。好ましくは、有機ハロゲン化物:SDのモル比は、1:2以上となる量で反応させる。より好ましくは1:2以上3以下で反応させることが好ましい。この量で反応させることにより、ボロン酸エステル化合物を高効率かつ高純度に合成することができる。また、ホウ酸エステル化合物は、有機ハロゲン化物とSDとの反応で生成した有機ナトリウム化合物と、有機ナトリウム化合物:ホウ酸エステル化合物=1:1以上1.5以下で反応させることが好ましい。ここで、SDの物質量は、SD中に含まれるアルカリ金属換算での物質量を意味する。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法において最終的に合成されたボロン酸エステル化合物は、再結晶等の当該技術分野で公知の精製手段により精製してもよい。また、未反応で残存した有機ハロゲン化物及び有機ナトリウム化合物等を回収し、再度、当該ボロン酸エステル化合物の合成のために利用するように構成してもよい。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法は、SDを利用することにより安定的かつ効率的にボロン酸エステル化合物を合成することができる。取り扱いが容易なSDを使用することにより、温和な条件下で、煩雑な化学的手法を必要とせず、少ない工程数で簡便かつ短時間にボロン酸エステル化合物を安価に合成することができるので、経済的かつ工業的にも非常に有利である。ナトリウムは、地球上に極めて広く分布していることから、サステナビリティーにも優れた技術である。一方、固体の金属ナトリウムを使用した場合には、反応温度が室温では効率が悪く、金属ナトリウムの融点(98℃)以上等の高温で反応を行うことが必要となる。このような高温で反応を行うことで、有機ハロゲン化物同士がカップリングするウルツ反応が誘発され、有機ナトリウム化合物を効率よく合成することができず、ボロン酸エステル化合物の収率が低下する。また、固体の金属ナトリウムを添加した場合、反応系中の固体の金属ナトリウム周辺で異常発熱を伴う激しい局所的反応が生じることが想定されことからも、ウルツカップリング反応等の副反応が誘発される。これに対して、SDを使用することにより、温和な条件下で反応を進行させることができると共に、SDは流体として反応系中に均一に分散できることから、ウルツ反応等の副反応を誘発することなく、効率的に有機ナトリウム化合物を得ることができ、ひいては、ボロン酸エステル化合物を高収率かつ高純度に合成することができる。
本実施形態のボロン酸エステル化合物の合成方法で合成されたボロン酸エステル化合物は、鈴木-宮浦カップリング等に好適に利用することができる。また、鈴木-宮浦カップリングは、塩基の存在下でパラジウム触媒と有機ホウ素化合物を反応させるものであり、反応に際しては塩基を別途添加することが必要となる。つまり、塩基を添加することでボロン酸エステル化合物の炭素-ホウ素間の結合が活性され、このような活性化状態になってはじめてパラジウム触媒による反応が進行する。塩基に関して、本実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法において、一般式IIに示す有機ナトリウム化合物と一般式IIIに示すホウ酸エステルが反応した際に生じる副生成物であるナトリウムアルコキシドが、また、水を添加した場合には水とナトリウムとの反応で生じる水酸化ナトリウムが、鈴木-宮浦カップリングに際して必要とされる塩基としての役割を果たすことができ、塩基添加工程等を別途設ける必要がない点においても経済的かつ工業的に有利である。このように、本実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法は、医農薬及び電子材料等の機能性材料の合成等、様々な技術分野において利用することができる。
鈴木-宮浦カップリングの際に用いるパラジウム触媒は、ボロン酸エステル化合物とカップリングさせる化合物の官能基が臭素である場合はPd(PPh3)4又はPEPPSI-IPrを、官能基が塩素である場合はPEPPSI-IPrを用いることが好ましい。また、上記触媒以外にも、Pd、Ni、Fe、Co等が含まれる遷移金属触媒を利用することができる。
(新規なボロン酸エステル化合物のナトリウム塩)
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩は、下記一般式VIに示す化合物であり、当該化合物は新規な化合物である。
Figure 0007039624000010

上記一般式VIにおいて、R3は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である。ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基の定義は、上記(ボロン酸エステル化合物)の(工程1)の項のR1で説明した通りある。好ましくは、R3は、フェニル基や4-メチルフェニル基等の芳香族炭化水素基(アリール基)である。
一般式VIにおいて、Aは、窒素原子、炭素原子、ケイ素原子、及び、リン原子から選択される原子であり、好ましくは窒素原子である。
一般式VIにおいて、Rc、Rd及びReは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、Rc、Rd及びReは全て同一であっても、また、一部、若しくは、全てが異なっていてもよい。脂肪族炭化水素基は、直鎖及び分枝の別を問わず、飽和及び不飽和の別も問わない。また、その鎖長についても特に制限はない。置換基を有する場合、当該置換基は、ナトリウムと反応しないものである限り特に制限はない。また、置換基の数及び導入位置についても特に制限はない。ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基の定義は、上記(ボロン酸エステル化合物の合成方法)の(工程1)の項のR1で説明した通りあるが。各Rc、Rd及びReはホウ素原子及びAと結合していることから、Rc、Rd及びReは、R1で定義した脂肪族炭化水素基より、任意の1個の炭素原子から1個の水素原子が除去されたものとなる。脂肪族炭化水素基としては、これらに限定するものではないが、好ましくは炭素原子数1~5個、特に好ましくは炭素原子数1~3個のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が例示される。好ましくは、各Rc、Rd及びReは、エチレン基である。
ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の好適例は、下記化学式VIIIに示す化合物である。
Figure 0007039624000011

本実施形態に係るボロン酸エステルのナトリウム塩によれば、新規化合物である上記一般式VIIIに示すボロン酸エステルのナトリウム塩を提供することができる。当該化合物は、医農薬及び電子材料等の機能性材料の合成等、様々な技術分野において利用することができる。
(ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法)
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法は、反応溶媒中で、下記一般式Iに示す有機ハロゲン化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、下記一般式IIに示す有機ナトリウム化合物を得る(工程1)。得られた前記有機ナトリウム化合物と、下記一般式VIIに示すホウ酸エステル化合物とを反応させて、下記一般式VIに示すボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を得る(工程2b)ものである。工程2bにおいて添加するホウ酸エステル化合物に依存してボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を合成することができる。
(工程1)
工程1は、反応溶媒中で、下記一般式Iに示す有機ハロゲン化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、下記一般式IIに示す有機ナトリウム化合物を得る工程である。かかる工程は、上記の(ボロン酸エステル化合物の合成方法)と同様に実施することができる。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法における有機ハロゲン化物は、共有結合したハロゲン原子を含む有機化合物であり、本実施形態に係る有機ホウ素化合物のナトリウム塩の合成方法おける出発化合物である。ここで、当該有機ハロゲン化物を示す一般式Iは、R1-Xである。一般式I(R1-X)に示す有機ハロゲン化物において、R1は、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である。有機ハロゲン化物の詳細については、上記の(ボロン酸エステル化合物の合成方法)における有機ハロゲン化物と同様である。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法におけるナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体(以下、Sodium Dispersionの略号である「SD」と略する場合がある。)の詳細については、上記の(ボロン酸エステル化合物の合成方法)におけるSDと同様である。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法おける工程1の反応溶媒及び反応条件等については、上記の(ボロン酸エステル化合物の合成方法)における工程1と同様に実施することができる。
工程1によって得られる有機ナトリウム化合物を示す一般式IIはR1-Naであり、出発化合物である一般式I(R1-X)に示す有機ハロゲン化物のハロゲン原子がナトリウムに置換されたものである。したがって、一般式II(R1-Na)において、R1は、上記した一般式IのR1と同様であり、Naは、ナトリウム原子である。得られた有機ナトリウム化合物は、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等、当該技術分野で公知の精製手段により精製してもよい。また、未反応で残存した出発化合物である有機ハロゲン化物を回収し、再度、工程1の反応に供するように構成してもよい。また、生成時と同様にアルゴンガスや窒素ガスなどを充填した不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
(工程2b)
工程2bは、工程1によって得られた上記一般式IIに示す有機ナトリウム化合物と下記一般式VIIに示すホウ酸エステル化合物を反応させて、最終目的化合物の下記一般式VIに示すボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を得る工程である。
ホウ酸エステル化合物である一般式VIIに示す化合物は以下に示す通りである。
Figure 0007039624000012

一般式VIIにおいて、Aは、窒素原子、炭素原子、ケイ素原子、及び、リン原子から選択される原子であり、好ましくは窒素原子である。
一般式VIIにおいて、Rc、Rd及びReは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、Rc、Rd及びReは全て同一であっても、また、一部、若しくは、全てが異なっていてもよい。脂肪族炭化水素基は、直鎖及び分枝の別を問わず、飽和及び不飽和の別も問わない。また、その鎖長についても特に制限はない。
置換基を有する場合、当該置換基は、ナトリウムと反応しないものである限り特に制限はない。また、置換基の数及び導入位置についても特に制限はない。ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基の定義は、上記(ボロン酸エステル化合物の合成方法)の(工程1)の項のR1で説明した通りあるが。各Rc、Rd及びReはホウ素原子及びAと結合していることから、Rc、Rd及びReは、R1で定義した脂肪族炭化水素基より、任意の1個の炭素原子から1個の水素原子が除去されたものとなる。脂肪族炭化水素基としては、これらに限定するものではないが、好ましくは炭素原子数1~5個、特に好ましくは炭素原子数1~3個のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が例示される。好ましくは、各Rc、Rd及びReは、エチレン基である。
一般式VIIに示すホウ酸エステル化合物としては、例えば、ホウ酸トリエタノールアミン、ホウ酸トリイソプロパノールアミン、環状トリオールボレート塩等が例示されるが、これらに限定するものではない。好ましくは、一般式VIIに示すホウ酸エステル化合物は、ホウ酸トリエタノールアミンである。
一般式VIIに示すホウ酸エステル化合物は、市販されているものを使用してもよいし、当該技術分野で公知の方法により製造されたものを使用してよい。例えば、ホウ酸トリエタノールアミンは、トリエタノールアミンとホウ酸を反応させることによって得ることができる。
一般式VIIに示すホウ酸エステル化合物は、ホウ素原子に結合している3つの基の何れもがAを介して環構造を形成している。かかる環構造が安定した構造であることから、ナトリウムの存在下でも基はホウ素原子から遊離することなく、生成されるボロン酸エステル化合物はナトリウム塩の形態となる。したがって、ホウ酸エステル化合物において、一般式VIIに示すように、ホウ素原子に結合しているヒドロキシル基(-O-)の全てが環状構造を形成している場合には、生成されるボロン酸エステル化合物はナトリウム塩の形態となる。一方で、一般式IIIに示すように、ホウ素原子に結合しているヒドロキシル基のうち、1つでも環状構造の形成に関与していない、つまり、環状構造から独立して存在している場合には、生成されるボロン酸エステル化合物はナトリウム塩の形態とはならないことが理解できる。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法おける工程2bの反応溶媒及び反応条件等については、上記の(ボロン酸エステル化合物の合成方法)における工程2と同様に実施することができる。
工程2bの反応によって、所望の最終目的化合物の下記一般式VIに示すボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を得ることができる。
Figure 0007039624000013

一般式VIに示すボロン酸エステル化合物のナトリウム塩は、一般式II(R1-Na)に示す有機ナトリウム化合物のナトリウムが、ホウ酸トリエステルアミン基等の(-B(OR)3A)に置換されると共に、有機ナトリウム化合物由来のナトリウムと塩を形成したものである。
したがって、一般式VIにおいて、R1は、上記した一般式I及び一般式IIのR1に対応し、Rc、Rd、及びReは、上記した一般式VIIのRc、Rd、及びReに対応する。一般式VIIに示すボロン酸エステル化合物のナトリウム塩としては、特に好ましくは、フェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩を挙げることができる。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法においてSD及びホウ酸エステル化合物の使用量は、出発化合物、及び反応溶媒の種類や量に応じて適宜設定することができる。好ましくは、有機ハロゲン化物:SDのモル比は、1:2以上となる量で反応させる。より好ましくは1:2以上3以下で反応させることが好ましい。この量で反応させることにより、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を効率良くかつ純度高く合成することができる。また、ホウ酸エステル化合物のナトリウム塩は、有機ハロゲン化物とSDとの反応で生成した有機ナトリウム化合物と、有機ナトリウム化合物:ホウ酸エステル化合物=1:0.5以上1.5以下で反応させることが好ましい。ここで、SDの物質量は、SD中に含まれるアルカリ金属換算での物質量を意味する。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法において最終的に合成されたボロン酸エステル化合物のナトリウム塩は、再結晶等の当該技術分野で公知の精製手段により精製してもよい。また、未反応で残存した有機ハロゲン化物及び有機ナトリウム化合物等を回収し、再度、当該ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成のために利用するように構成してもよい。
本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法は、SDを利用することにより安定的に新規化合物であるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を合成することができる。取り扱いが容易なSDを使用することにより、温和な条件下で、煩雑な化学的手法を必要とせず、少ない工程数で簡便かつ短時間にボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を安価に合成することができるので、経済的かつ工業的にも非常に有利である。ナトリウムは、地球上に極めて広く分布していることから、サステナビリティーにも優れた技術である。一方、固体の金属ナトリウムを使用した場合には、反応温度が室温では効率が悪く、金属ナトリウムの融点(98℃)以上等の高温で反応を行うことが必要となる。このような高温で反応を行うことで、有機ハロゲン化物同士がカップリングするウルツ反応が誘発され、有機ナトリウム化合物を効率よく合成することができず、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の収率が低下する。また、固体の金属ナトリウムを添加した場合、反応系中の固体の金属ナトリウム周辺で異常発熱を伴う激しい局所的反応が生じることが想定されことからも、ウルツカップリング反応等の副反応が誘発される。これに対して、SDを使用することにより、温和な条件下で反応を進行させることができると共に、SDは流体として反応系中に均一に分散できることから、ウルツ反応等の副反応を誘発することなく、効率的に有機ナトリウム化合物を得ることができ、ひいては、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を新規に合成することができた。
本実施形態のボロン酸エステル化合物の合成方法で合成されたボロン酸エステル化合物のナトリウム塩は、鈴木-宮浦カップリング等に好適に利用することができる。また、鈴木-宮浦カップリングは、塩基の存在下でパラジウム触媒と有機ホウ素化合物を反応させるものであり、反応に際しては塩基を別途添加することが必要となる。つまり、塩基を添加することでボロン酸エステル化合物の炭素-ホウ素間の結合が活性され、このような活性化状態になってはじめてパラジウム触媒による反応が進行する。塩基に関して、本実施形態に係るボロン酸エステル化合物の合成方法における生成物であるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩自体が塩基として機能すること、また、水を添加した場合には水とナトリウムとの反応で生じる水酸化ナトリウムが塩基として機能することから、鈴木-宮浦カップリングに際して必要とされる塩基としての役割を果たすことができ、塩基添加工程等を別途設ける必要がない点においても経済的かつ工業的に有利である。このように、本実施形態に係るボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法は、医農薬及び電子材料等の機能性材料の合成等、様々な技術分野において利用することができる。
鈴木-宮浦カップリングの際に用いるパラジウム触媒は、ボロン酸エステル化合物とカップリングさせる化合物の官能基が臭素である場合はPd(PPh3)4又はPEPPSI-IPrを、官能基が塩素である場合はPEPPSI-IPrを用いることが好ましい。また、上記触媒以外にも、Pd、Ni、Fe、Co等が含まれる遷移金属触媒を利用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例におけるSDとしては、金属ナトリウムを微粒子としてノルマルパラフィン油に分散させた分散体を使用し、SDの物質量は、SDに含まれる金属ナトリウム換算での数値である。
(実施例1)SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物の合成、及び、鈴木-宮浦カップリング
本実施例では、図1に要約する合成条件により、SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によりボロン酸エステル化合物を合成し、得られたボロン酸エステル化合物についてパラジウム触媒を使用した鈴木-宮浦カップリングに利用できるか否かを検討した。
(実験番号1)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の4-クロロトルエン(0.6 mmol)と2.6モル当量のSDとを25℃で1時間反応させ4-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した4-メチルフェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール、THF 0.6 mlの順に添加して1時間反応させ、4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-ブロモナフタレン(0.5 mmol)を添加し、5 mol%のパラジウム触媒Pd(PPh3)4の下で80℃にて4時間反応させてカップリング生成物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの評価は、1H NMRでの測定により行った。収率は、反応系に添加した2-ブロモナフタレンから理論的に生成することができる、2-(4-メチルフェニル)ナフタレンに対する、実際に取得できた2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの割合を百分率で示すことで算出した。収率は99%となった。なお、単離収率は90%であった。これにより、4-クロロトルエンから4-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に4-メチルフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号2)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の4-クロロトルエン(0.6mmol)と2.5モル当量のSDとを25℃で30分間反応させ4-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した4-メチルフェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.5 mmol)を添加し、1 mol%のパラジウム触媒PEPPSI-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの評価は、1H NMRでの測定により行った。収率は、反応系に添加した2-クロロナフタレンから理論的に生成することができる、2-(4-メチルフェニル)ナフタレンに対する、実際に取得できた2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの割合を百分率で示すことで算出した。収率は99%となった。なお、単離収率は90%であった。これにより、実験番号1と同様に4-クロロトルエンから4-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に4-メチルフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号3)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の4-クロロトルエン(0.6 mmol)と2.5モル当量のSDとを25℃で30分間反応させ4-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した4-メチルフェニルナトリウムに、1.2モル当量のイソプロポキシボロン酸ピナコール、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.5 mmol)を添加し、1 mol%のパラジウム触媒PEPPSI-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの評価は、1H NMRでの測定により行った。実験番号2と同様にして収率を算出したところ、収率は88%となった。これにより、実験番号1及び2と同様に4-クロロトルエンから4-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に4-メチルフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。
(実施例2)SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物の合成、及び、鈴木-宮浦カップリング
本実施例では、図2A~図2Bに要約する合成条件により、SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によりボロン酸エステル化合物を合成し、得られたボロン酸エステル化合物についてパラジウム触媒を使用した鈴木-宮浦カップリングに利用できるか否かを検討した。
(実験番号1)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の4-クロロトルエン(0.60 mmol)と2.8モル当量のSDとを30℃で1時間反応させ4-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した4-メチルフェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール(MeOBpin)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.5 mmol)を添加し、1 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの評価は、1H NMRでの測定により行った。収率は、反応系に添加した2-クロロナフタレンから理論的に生成することができる、2-(4-メチルフェニル)ナフタレンに対する、実際に取得できた2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの割合を百分率で示すことで算出した。単離収率は91%であった。これにより、4-クロロトルエンから4-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に4-メチルフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる4-メチルフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号2)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の3-クロロトルエン(0.58 mmol)と2.8モル当量のSDとを30℃で1時間反応させ3-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した3-メチルフェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール(MeOBpin)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、3-メチルフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.49 mmol)を添加し、2 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて5時間反応させてカップリング生成物である2-(3-メチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(3-メチルフェニル)ナフタレンの単離収率は78%であった。これにより、3-クロロトルエンから3-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に3-メチルフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる3-メチルフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(3-メチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号3)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の2-クロロトルエン(0.61 mmol)と2.5モル当量のSDとを30℃で1時間反応させ2-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した2-メチルフェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール(MeOBpin)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、2-メチルフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.5 mmol)を添加し、1 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて4時間反応させてカップリング生成物である2-(2-メチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(2-メチルフェニル)ナフタレンの単離収率は90%であった。これにより、2-クロロトルエンから2-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に2-メチルフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる2-メチルフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(2-メチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号4)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の2-クロロ-m-キシレン(0.61 mmol)と2.5モル当量のSDとを30℃で3時間反応させ2,6-ジメチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した2,6-ジメチルフェニルナトリウムに、1.3モル当量のホウ酸トリイソプロピル(B(OiPr)3:追加の塩基として1.0モル等量のメトキシナトリウム(NaOMe)を添加)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、2,6-ジメチルフェニルボロン酸ジイソプロピルを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.5 mmol)を添加し、2 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて24時間反応させてカップリング生成物である2-(2,6-ジメチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(2,6-ジメチルフェニル)ナフタレンの単離収率は85%であった。これにより、2-クロロ-m-キシレンから2,6-ジメチルフェニルナトリウムを経て、高収率に2,6-ジメチルフェニルボロン酸ジイソプロピルの合成を行うことができ、かかる2,6-ジメチルフェニルボロン酸ジイソプロピルを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(2,6-ジメチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。2,6-ジメチルフェニルナトリウムのような嵩高いアリールナトリウムを使用した場合、B(OiPr)3やB(OMe)3等をホウ酸エステルとして好適に用いることができ、追加の塩基として1当量のNaOMeを添加することにより反応収率が向上することが判明した。
(実験番号5)
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の2-クロロアニソール(0.60 mmol)と2.6モル当量のSDとを30℃で1時間反応させ2-メトキシフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した2-メトキシフェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール(MeOBpin)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、2-メトキシフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロチオフェン(0.5 mmol)を添加し、1 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である2-(2-メトキシフェニル)チオフェンを得た。合成された2-(2-メトキシフェニル)チオフェンの単離収率は78%であった。これにより、2-クロロアニソールから2-メトキシフェニルナトリウムを経て、高収率に2-メトキシフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる2-メトキシフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(2-メトキシフェニル)チオフェンが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号6)
1.2 mlのヘキサン中で、2.2モル当量の1-クロロ-3-(ジメチルアミノ)ベンゼン(0.61 mmol)と4.8モル当量のSDとを30℃で1時間反応させ3-(ジメチルアミノ)フェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した3-(ジメチルアミノ)フェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール(MeOBpin)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、3-(ジメチルアミノ)フェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の6-クロロインドール(0.28 mmol)を添加し、2 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である6-(3-(ジメチルアミノ)フェニル)インドールを得た。合成された6-(3-ジメチルアミノフェニル)インドールの単離収率は90%であった。これにより、1-クロロ-3-(ジメチルアミノ)ベンゼンから3-(ジメチルアミノ)フェニルナトリウムを経て、高収率に3-(ジメチルアミノ)フェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる3-(ジメチルアミノ)フェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である6-(3-(ジメチルアミノ)フェニル)インドールが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号7)
0.7mlのヘキサン中に、SDを1.64mmol加え、0.73mmolのクロロベンゼンを滴下し、30℃で30分間反応させてフェニルナトリウムを調製した。そこに2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを0.76mmol添加し、30℃で30分反応させてNa-TMPを得た。ここにベンゾチオフェン(0.60 mmol)を加えて30℃で30分間反応させることで脱プロトンし2-ベンゾチオフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した2-ベンゾチオフェニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール(MeOBpin)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、2-ベンゾチオフェニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の4-クロロベンズアルデヒド(0.5 mmol)を添加し、2 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて5時間反応させてカップリング生成物である4-(2-ベンゾチオフェニル)ベンズアルデヒドを得た。合成された4-(2-ベンゾチオフェニル)ベンズアルデヒドの単離収率は90%であった。これにより、2-クロロ-ベンゾチオフェンから2-ベンゾチオフェニルナトリウムを経て、高収率に2-ベンゾチオフェニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる2-ベンゾチオフェニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である4-(2-ベンゾチオフェニル)ベンズアルデヒドが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号8)
0.7mlのヘキサン中に、SDを1.60mmol加え、0.69mmolのクロロベンゼンを滴下し、30℃で30分間反応させてフェニルナトリウムを調製した。そこに2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを0.75mmol添加し、30℃で30分反応させてNa-TMPを得た。ここにベンゾフラン(0.60 mmol)を加えて30℃で30分間反応させることで脱プロトンし2-ベンゾフラニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した2-ベンゾフラニルナトリウムに、1.2モル当量のメトキシボロン酸ピナコール(MeOBpin)、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、2-ベンゾフラニルボロン酸ピナコールを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の4-クロロベンゾニトリル(0.5 mmol)を添加し、2 mol%のパラジウム触媒Pd-PEPPSI(登録商標)-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である4-(2-ベンゾフラニル)ベンゾニトリルを得た。合成された4-(2-ベンゾフラニル)ベンゾニトリルの単離収率は94%であった。これにより、2-クロロ-ベンゾフランから2-ベンゾフラニルナトリウムを経て、高収率に2-ベンゾフラニルボロン酸ピナコールの合成を行うことができ、かかる2-ベンゾフラニルボロン酸ピナコールを用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である4-(2-ベンゾフラニル)ベンゾニトリルが高収率で得られることが理解できる。
(実施例3)SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成、及び、鈴木-宮浦カップリング
本実施例では、図3に要約する合成条件により、SDを用いて得られた有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によりボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を合成し、得られたボロン酸エステル化合物のナトリウム塩についてパラジウム触媒を使用した鈴木-宮浦カップリングに利用できるか否かを検討した。
(実験番号1)
1.0 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の4-クロロトルエン(0.6 mmol)と2.1モル当量のSDとを25℃で30分間反応させ4-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した4-メチルフェニルナトリウムに、1.0モル当量のホウ酸トリエタノールアミン、THF 0.6 mlの順に添加して1時間反応させ、4-メチルフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩を得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-ブロモピリジン(0.5 mmol)を添加し、5 mol%のパラジウム触媒Pd(PPh3)4の下で80℃にて24時間反応させてカップリング生成物である2-(4-メチルフェニル)ピリジンを得た。合成された2-(4-メチルフェニル)ピリジンの評価は、1H NMRでの測定により行った。収率は、反応系に添加した2-ブロモピリジンから理論的に生成することができる、2-(4-メチルフェニル)ピリジンに対する、実際に取得できた2-(4-メチルフェニル)ピリジンの割合を百分率で示すことで算出した。収率は46%となった。これにより、4-クロロトルエンから4-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に4-メチルフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩の合成を行うことができ、かかる4-メチルフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩を用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(4-メチルフェニル)ピリジンが高収率で得られることが理解できる。
(実験番号2)
1.0 mlのヘキサン中で、1.2モル当量の4-クロロトルエン(0.6 mmol)と2.5モル当量のSDとを25℃で30分間反応させ4-メチルフェニルナトリウムを得た。続いて、0℃まで冷却した後、生成した4-メチルフェニルナトリウムに1.2モル当量のホウ酸トリエタノールアミン、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、4-メチルフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩を得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.5 mmol)を添加し、1 mol%のパラジウム触媒PEPPSI-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンを得た。合成された2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの評価は、1H NMRでの測定により行った。収率は、反応系に添加した2-クロロナフタレンから理論的に生成することができる、2-(4-メチルフェニル)ナフタレンに対する、実際に取得できた2-(4-メチルフェニル)ナフタレンの割合を百分率で示すことで算出した。収率は33%となった。これにより、4-クロロトルエンから4-メチルフェニルナトリウムを経て、高収率に4-メチルフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩の合成を行うことができ、かかる4-メチルフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩を用いた鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、その結果、カップリング産物である2-(4-メチルフェニル)ナフタレンが高収率で得られることが理解できる。
(実施例4)SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物と環状構造を有しないホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物の合成、及び、鈴木-宮浦カップリング
本実施例では、図4に要約する合成条件により、SDを用いて得られた有機ナトリウム化合物と環状構造を有しないホウ酸エステル化合物との反応によりボロン酸エステル化合物を合成し、得られたボロン酸エステル化合物についてパラジウム触媒を使用した鈴木-宮浦カップリングに利用できるか否かを検討した。
1.2 mlのヘキサン中で、1.2モル当量のクロロベンゼン(0.6 mmol)と2.5モル当量のSDとを25℃で30分間反応させた。続いて、0℃まで冷却した後、生成したフェニルナトリウムに、1.2モル当量のホウ酸トリメチル、THF 0.6 mlの順に添加して10分間反応させ、フェニルボロン酸ジメチルを得た。続いて、水0.3 mlを添加した後、1.0モル当量の2-クロロナフタレン(0.5 mmol)を添加し、1 mol%のパラジウム触媒PEPPSI-IPrの下で70℃にて3時間反応させてカップリング生成物である2-フェニルナフタレンを得た。合成された2-フェニルナフタレンの評価は、1H NMRでの測定により行った。収率は、反応系に添加した2-クロロナフタレンから理論的に生成することができる、2-フェニルナフタレンに対する、実際に取得できた2-フェニルナフタレンの割合を百分率で示すことで算出した。収率は76%となった。これにより、環状構造を有しないホウ酸エステル化合物においても、ボロン酸エステル化合物を高収率に得ることができ、その結果、鈴木-宮浦カップリングが効率よく進行し、カップリング産物であるが高収率で得られることが理解できる。
(実施例5)SDを用いて合成された有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成
本実施例では、図5に要約する合成条件により、SDを用いて得られた有機ナトリウム化合物とホウ酸エステル化合物との反応によりボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成を検討した。
1.0 mlのヘキサン中で、1.0モル当量のクロロベンゼン(0.5 mmol)と2.1モル当量のSDとを30℃で30分間反応させた。続いて、0℃まで冷却した後、生成したフェニルナトリウムに、1.0モル当量のホウ酸トリエタノールアミン(0.5 mmol)、THF 0.5 mlの順に添加して10分間反応させ、続いて、重水を添加しフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩を得た。収率は、反応系に添加したホウ酸トリエタノールアミンから理論的に生成することができる、フェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩に対する、実際に取得できたフェニルホウ酸トリエタノールアミンのナトリウム塩の割合を百分率で示すことで算出した。収率は14%となった。これにより新規化合物であるフェニルホウ酸トリエタノールアミン等のボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を得ることができることが理解できる。かかるボロン酸エステル化合物のナトリウム塩は、鈴木-宮浦カップリング等に好適に利用することができる有用な化合物である。
本発明は、ボロン酸エステル化合物・ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法、及び、かかる合成方法により合成されるボロン酸エステル化合物・ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩を利用する全ての技術分野、特には、鈴木-宮浦カップリング等のカップリング反応の中間体として好適に利用でき、医農薬や電子材料の製造分野において特に有用である。

Claims (5)

  1. ボロン酸エステル化合物の合成方法であって、
    反応溶媒中で、一般式I(R-Cl)〔ここで、式中、Rは、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である〕に示す有機塩化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、一般式II(R-Na)〔ここで、式中、Rは、一般式IaのRと同様である〕に示す有機ナトリウム化合物を得て、
    得られた前記有機ナトリウム化合物と、一般式III
    Figure 0007039624000014
    〔ここで、式中、Rは、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基であり、R及びRは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基であり、R及びRは、互いに結合してホウ素原子と共に環を形成していてもよい〕に示すホウ酸エステル化合物とを反応させて、一般式IV
    Figure 0007039624000015
    〔式中、Rは、一般式IaのRと同様であり、R及びRは、一般式IIIと同様である〕に示すボロン酸エステル化合物を得る工程、を有する、ボロン酸エステル化合物の合成方法。
  2. 前記ホウ酸エステル化合物は、下記一般式V
    Figure 0007039624000016
    〔ここで、式中、Rは、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である〕に示す化合物である請求項1に記載のボロン酸エステル化合物の合成方法。
  3. 前記ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体の前記有機塩化物に対するモル比は、2以上である請求項1又は2に記載のボロン酸エステル化合物の合成方法。
  4. ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法であって、
    反応溶媒中で、一般式Ia(R-Cl)〔ここで、式中、Rは、ナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式複素環基、芳香族炭化水素基、又は、芳香族複素環基である〕に示す有機塩化物とナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体とを反応させて、一般式II(R-Na)〔ここで、式中、Rは、一般式IaのRと同様である〕に示す有機ナトリウム化合物を得て、
    得られた前記有機ナトリウム化合物と、一般式VII
    Figure 0007039624000017
    〔ここで、式中、Aは、窒素原子、炭素原子、ケイ素原子、及び、リン原子から選択される原子であり、R、R及びRは、互いに独立的にナトリウムと反応しない置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、各R、R及びRは、前記A及びホウ素原子と結合して環を形成している〕に示すホウ酸エステル化合物とを反応させて、一般式VI
    Figure 0007039624000018
    〔ここで、式中、Aは、一般式VIIのAと同様であり、Rは、一般式IaのRと同様であり、R、R及びRは、一般式VIIのR、R及びRと同様である〕に示すボロン酸エステル化合物を得る工程、を有する、ボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法。
  5. 前記ナトリウムを分散溶媒に分散させた分散体の前記有機塩化物に対するモル比は、2以上である請求項に記載のボロン酸エステル化合物のナトリウム塩の合成方法。
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