JP7039272B2 - アルミニウム合金線の製造方法、これを用いた電線の製造方法及びワイヤハーネスの製造方法 - Google Patents
アルミニウム合金線の製造方法、これを用いた電線の製造方法及びワイヤハーネスの製造方法 Download PDFInfo
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本発明は、アルミニウム、添加元素及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であって添加元素が少なくともSi及びMgを含有するアルミニウム合金で構成される荒引線を形成する荒引線形成工程と、荒引線に対し、処理ステップを行うことにより、アルミニウム合金線を得る荒引線処理工程とを含む、アルミニウム合金線の製造方法である。処理ステップは、少なくとも1回の伸線処理ステップと、少なくとも1回の伸線処理ステップのうち、最後の伸線処理ステップの直前に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成する第1溶体化処理ステップと、最後の伸線処理ステップの直後に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成する第2溶体化処理ステップと、第2溶体化処理ステップの後に行われる時効処理ステップとを含む。
荒引線形成工程は、アルミニウム合金で構成される荒引線を形成する工程である。
荒引線を構成するアルミニウム合金は、少なくともSi及びMgを添加元素として含有していればよいが、アルミニウム合金中のSiの含有率は0.35質量%以上0.75質量%以下であることが好ましい。この場合、Siの含有率が0.35質量%未満である場合と比べて、アルミニウム合金線において、優れた引張強度と伸びとを両立でき、Siの含有率が0.75質量%より多い場合と比べて、アルミニウム合金線が導電性に優れる。Siの含有率は好ましくは0.45質量%以上0.65質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上0.6質量%以下である。
荒引線は、例えば上述したアルミニウム合金からなる溶湯に対し、連続鋳造圧延やビレット鋳造後の熱間押出し等を行うことにより得ることができる。
荒引線処理工程は、荒引線に対し、処理ステップを行い、アルミニウム合金線を得る工程である。
(1)第1溶体化処理ステップ→伸線処理ステップ→第2溶体化処理ステップ→時効処理ステップ
(2)伸線処理ステップ→第1溶体化処理ステップ→最後の伸線処理ステップ→第2溶体化処理ステップ→時効処理ステップ
(3)伸線処理ステップ→通常熱処理ステップ→伸線処理ステップ→第1溶体化処理ステップ→最後の伸線処理ステップ→第2溶体化処理ステップ→時効処理ステップ
伸線処理ステップは、荒引線、荒引線を伸線して得られる伸線材、又は伸線材をさらに伸線して得られる伸線材(以下、「荒引線」、「荒引線を伸線して得られる伸線材」、又は「伸線材をさらに伸線して得られる伸線材」をまとめて「線材」と呼ぶ)などの径を低減させるステップである。伸線処理ステップは、熱間伸線であっても冷間伸線であってもよいが、通常は冷間伸線である。
第1溶体化処理ステップは、最後の伸線処理ステップの直前に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成するステップである。ここで、固溶体の形成は、線材を高温に加熱して熱処理することにより、アルミニウム中に溶け込んでいない添加元素をアルミニウムに溶け込ませることで行われる。
第2溶体化処理ステップは、処理ステップにおける最後の伸線処理ステップの直後に行われ、アルミニウム及び添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成するステップである。ここで、固溶体の形成は、最終線材を高温に加熱して熱処理することにより、アルミニウム中に溶け込んでいない添加元素をアルミニウム中に溶け込ませることで行われる。
時効処理ステップは、最終線材を構成するアルミニウム合金中に析出物を形成させることにより、最終線材の時効処理を行うステップである。析出物としては、例えば添加元素(例えばSi及びMg)を含む化合物などが挙げられる。具体的には析出物としては、Mg2Siが挙げられる。
上記処理ステップは、第1溶体化処理ステップの前に、伸線処理ステップを行う場合には、その伸線処理ステップと第1溶体化処理ステップとの間に、線材を熱処理する通常熱処理ステップをさらに含むことが好ましい。この場合、通常熱処理ステップによって、伸線処理ステップで生じた歪みを除去することが可能となる。ここで、通常熱処理ステップとは、溶体化を行わない熱処理ステップ(非溶体化処理ステップ)のことを言い、具体的には、線材を熱処理した後、徐冷(例えば自然冷却)するステップを言う。徐冷とは、100K/min未満の冷却速度で冷却することを言う。
本発明の電線の製造方法は、上述したアルミニウム合金線の製造方法によってアルミニウム合金線を準備するアルミニウム合金線準備工程と、アルミニウム合金線を被覆層で被覆して電線を製造する電線製造工程とを含む電線の製造方法である。
アルミニウム合金線準備工程は、上記アルミニウム合金線の製造方法によって、アルミニウム合金線を準備する工程である。
電線製造工程は、上記アルミニウム合金線準備工程で準備したアルミニウム合金線を被覆層で被覆して電線を製造する工程である。
被覆層は、特に限定されるものではないが、例えばポリ塩化ビニル樹脂や、ポリオレフィン樹脂に難燃剤等を添加してなる難燃性樹脂組成物などの絶縁材で構成される。
本発明のワイヤハーネスの製造方法は、上記電線の製造方法によって電線を準備する電線準備工程と、電線を複数本用いてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネス製造工程とを含むワイヤハーネスの製造方法である。
ワイヤハーネス製造工程は、電線準備工程で準備した電線を複数本用いてワイヤハーネスを製造する工程である。
Si、Fe、Mg、Cu、Ti、V及びBを表1及び表2に示す含有率(単位:質量%)となるようにアルミニウムとともに溶解し、直径25mmの鋳型に流し込むことで線径25mmのアルミニウム合金を鋳造した。こうして得られたアルミニウム合金について、スウェージングマシン(吉田記念社製)によって線径9.5mmとなるようにスウェージング加工を行った後、270℃、8時間で熱処理することで線径9.5mmの荒引線を得た。こうして得られた荒引線に対し、下記の処理ステップA1~A9及びB1~B9のうち表1及び表2に示す処理ステップを行うことにより、アルミニウム合金線を得た。
(処理ステップA1)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA2)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA3)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→530℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA4)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→530℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA5)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA6)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→120℃×24時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA7)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×4秒間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA8)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×12秒間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップA9)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理(第1溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×8分間で溶体化処理(第2溶体化処理ステップ)
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB1)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB2)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB3)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×3時間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB4)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.0mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB5)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→140℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB6)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×1分間で溶体化処理
→120℃×24時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB7)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×4秒間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB8)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×12秒間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(処理ステップB9)
線径3.1mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径1.2mmまで伸線(伸線処理ステップ)
→270℃×8時間で通常熱処理(非溶体化処理ステップ)
→線径0.33mmまで伸線(最後の伸線処理ステップ)
→550℃×8分間で溶体化処理
→150℃×8時間で時効処理(時効処理ステップ)
(引張強度及び伸び)
実施例1~26及び比較例1~26のアルミニウム合金線について、JIS C3002に準拠した引張試験による引張強度及び伸びを測定した。結果を表1及び表2に示す。
また、比較例1~26の引張強さ及び伸びを100とし、比較例1~26の引張強さ及び伸びに対する実施例1~26の引張強さ及び伸びの相対値も併記した。ここで、実施例1~26の引張強さ及び伸びの相対値はそれぞれ、表1及び表2において、実施例のすぐ下に配置されている比較例の引張強さ及び伸びを100としたときの相対値である。結果を表1及び表2に示す。
Claims (5)
- アルミニウム、添加元素及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金であって前記添加元素が少なくともSi及びMgを含有するアルミニウム合金で構成される荒引線を形成する荒引線形成工程と、
前記荒引線に対し、処理ステップを行うことにより、アルミニウム合金線を得る荒引線処理工程とを含み、
前記処理ステップが、
少なくとも1回の伸線処理ステップと、
前記少なくとも1回の伸線処理ステップのうち、最後の伸線処理ステップの直前に行われ、前記アルミニウム及び前記添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第1溶体化材を形成する第1溶体化処理ステップと、
前記最後の伸線処理ステップの直後に行われ、前記アルミニウム及び前記添加元素の固溶体を形成した後、焼き入れ処理して第2溶体化材を形成する第2溶体化処理ステップと、
前記第2溶体化処理ステップの後に行われる時効処理ステップとを含み、
前記添加元素が、
Siと、
Mgと、
任意成分であるFeと、
任意成分であるCuと、
任意成分であるTiと、
任意成分であるBと、
任意成分であるVのみからなり、
前記アルミニウム合金中のSiの含有率が0.35質量%以上0.75質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のMgの含有率が0.3質量%以上0.7質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のFeの含有率が0.6質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のCuの含有率が0.4質量%以下であり、
前記アルミニウム合金中のTi、V及びBの合計含有率が0.06質量%以下であり、
前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を10分間以下の条件で行う、アルミニウム合金線の製造方法。 - 前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を、500~600℃の温度で行う、請求項1に記載のアルミニウム合金線の製造方法。
- 前記第2溶体化処理ステップにおいて、前記固溶体の形成を、10秒間より長い時間行う、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金線の製造方法。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金線の製造方法によってアルミニウム合金線を準備するアルミニウム合金線準備工程と、
前記アルミニウム合金線を被覆層で被覆して電線を製造する電線製造工程とを含む、電線の製造方法。 - 請求項4に記載の電線の製造方法によって電線を準備する電線準備工程と、
前記電線を複数本用いてワイヤハーネスを製造するワイヤハーネス製造工程とを含む、ワイヤハーネスの製造方法。
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