[カッティングヘッド付きインクジェットプリンタの構成]
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10)の斜視図である。図2は、プリンタ10の要部の模式的な一部破断右側面図である。図1および図2に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、シート状のメディア5に対して印刷およびカッティングを行う装置である。メディア5は、例えば、台紙と台紙上に積層されかつ粘着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材であってもよく、記録紙や樹脂製のシート等であってもよい。メディア5は印刷およびカッティングのうちの少なくとも一方が可能なメディアであれば足り、特に限定されない。
本明細書において「切断」とは、メディア5の厚み方向の全体を切断する場合(例えば、シール材の台紙および剥離紙の両方を切断する場合)と、メディア5の厚み方向の一部を切断する場合(例えば、シール材の台紙は切断せず、剥離紙のみを切断する場合)とを含む。また、本明細書において「切断」とは、メディア5を連続的に切断する場合(以下、連続カットとも呼ぶ)と、メディア5断続的に切断する場合(以下、ミシン目カットとも呼ぶ)とを含む。
プリンタ10は、本体11と、シート状のメディア5を供給する供給ローラ20(図1では図示省略、図2参照)と、本体11に設けられメディア5を支持するプラテン12と、プラテン12に支持されたメディア5を所定の搬送方向に搬送する搬送装置30と、メディア5に対し印刷を行うプリントヘッド60と、メディア5を切断するカッティングヘッド70と、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70を移動させるヘッド移動装置40と、メディア5を巻き取る巻取ローラ90(図1では図示省略、図2参照)と、印刷およびカッティングが終了したメディア5を切断するシートカッターユニット100と、制御装置200と、を備えている。
詳細は後述するが、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70は、図示Y方向に移動可能に構成されている。また、メディア5は、図示X方向に搬送される。以下では、Y方向を主走査方向ともいい、X方向を副走査方向ともいう。主走査方向Yは、ここでは、左右方向である。主走査方向Yはシートカッターユニット100がメディア5を切断する切断方向でもある。副走査方向Xは、ここでは、前後方向である。副走査方向Xは搬送装置30がメディア5を搬送する搬送方向である。主走査方向Y(切断方向)と副走査方向X(搬送方向)とは直交している。ここでは、前方は、プリンタ10の前方である。後方は、プリンタ10の後方である。なお、主走査方向Yはメディア5の幅方向に対応し、副走査方向Xはメディア5の長手方向に対応する。図面の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。
図1に示すように、搬送装置30は、グリットローラ31と、ピンチローラ32と、フィードモータ33(図12参照)とを備えている。グリットローラ31は、プラテン12に設けられている。グリットローラ31は、フィードモータ33に駆動されることによって回転する。ピンチローラ32は、グリットローラ31の上方に配置されている。ピンチローラ32は、グリットローラ31と対向するように設けられている。ピンチローラ32は、グリットローラ31に対し接近および離反が可能なように、上下に揺動自在に構成されている。メディア5がピンチローラ32とグリットローラ31との間に挟み込まれた状態でグリットローラ31が回転すると、メディア5は前方または後方に搬送される。なお、図1では、3つのグリットローラ31および2つのピンチローラ32しか図示されていないが、実際にはより多くのグリットローラ31およびピンチローラ32がそれぞれ主走査方向Yに配列されていてもよい。フィードモータ33は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
図3および図4は、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70の正面図である。そのうち、図3は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが連結された状態を示している。図4は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが分離された状態を示している。ヘッド移動装置40は、プリントヘッド60を保持する第1キャリッジ51と、カッティングヘッド70を保持する第2キャリッジ52とを主走査方向Yに移動させるように構成されている。ヘッド移動装置40は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが連結された状態では、両者を一体で移動させる。また、ヘッド移動装置40は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが分離された状態では、第2キャリッジ52だけを単独で移動させる。なお、詳しくは後述するが、第2キャリッジ52には、シートカッターユニット100が搭載されている。ヘッド移動装置40は、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70を主走査方向Yに移動させるものであると同時に、シートカッターユニット100を主走査方向Yに移動させるカッター移動装置でもある。
図3および図4に示すように、ヘッド移動装置40は、ガイドレール41と、ベルト42と、スキャンモータ43(図12参照)とを備えている。ガイドレール41は、プラテン12の上方に設けられている。ガイドレール41は主走査方向Yに延びている。ガイドレール41には、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とが摺動自在に係合している。第2キャリッジ52の背面上部には、主走査方向Yに延びるベルト42が固定されている。ベルト42は、スキャンモータ43に接続されている。スキャンモータ43が回転すると、ベルト42が主走査方向Yに走行する。これにより、第2キャリッジ52は主走査方向Yに移動する。スキャンモータ43は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とは、連結部材51a、52aによって連結され、または分離される。図3および図4に示すように、連結部材51a、52aは、第1キャリッジ51に設けられた第1連結部材51aと、第2キャリッジ52に設けられた第2連結部材52aとを有している。第1連結部材51aは、第1キャリッジ51の左側部分に設けられている。第2連結部材52aは、第2キャリッジ52の右側部分に設けられている。本実施形態では、連結部材51a、52aは、磁力を利用して第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とを連結する。第1連結部材51aと第2連結部材52aのうちの一方は磁石を備え、他方は磁石に吸着する磁性体を備えている。ただし、連結部材51a、52aは磁力を利用するものに限られず、係合部材等の他の構成を備えたものであってもよい。第1キャリッジ51と第2キャリッジ52とは、第1連結部材51aと第2連結部材52aとが接触することにより連結される。
第1キャリッジ51の右側には、L字状に形成された受け金具51bが設けられている。また、ガイドレール41の右端付近には、第1キャリッジ51を固定するためのロック装置80が設けられている。ロック装置80は、受け金具51bに引っ掛けられるフック81と、フック81をロック位置(図4参照)と非ロック位置(図3参照)との間で移動させるロック用ソレノイド82(図12参照)とを備えている。ロック用ソレノイド82は、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
図3に示すように、プリントヘッド60による印刷を行う際には、フック81が非ロック位置に設定される。第2キャリッジ52が右方に移動し、第1連結部材51aと第2連結部材52aとが接触すると、第2キャリッジ52と第1キャリッジ51とが連結される。その結果、第1キャリッジ51は、第2キャリッジ52と共に主走査方向Yに移動可能となる。ヘッド移動装置40は、第1キャリッジ51と第2キャリッジ52が連結された状態において、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70を主走査方向Yに移動させる。
カッティングヘッド70によるカッティングの際には、図4に示すように、第1キャリッジ51が可動範囲右端の待機位置に位置付けられ、ロック装置80のフック81がロック位置に設定される。これにより、第1キャリッジ51の移動が阻止される。この状態で第2キャリッジ52が左方へ移動すると、第1連結部材51aと第2連結部材52aとが離反し、第2キャリッジ52と第1キャリッジ51との連結が解除される。その結果、第1キャリッジ51が待機位置に待機した状態で、第2キャリッジ52が主走査方向Yに移動可能となる。
第1キャリッジ51は、プリントヘッド60を保持している。プリントヘッド60は、プラテン12に支持されたメディア5に向かってインクを吐出することにより、メディア5に対して印刷を行う。印刷はメディア5に対する加工の一例であり、プリントヘッド60は、メディア5に対して加工を行う加工ヘッドの一例である。プリントヘッド60は、複数のインクヘッド61を備えている。複数のインクヘッド61の下面には、それぞれ、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)が形成されている。インクヘッド61の数量は特に限定されず、インクヘッド61が吐出するインクの種類や色も何ら限定されない。
第2キャリッジ52は、カッティングヘッド70とシートカッターユニット100とを保持している。カッティングはメディア5に対する加工の一例であり、カッティングヘッド70も、メディア5に対して加工を行う加工ヘッドの一例である。カッティングヘッド70は、加工カッター71と、加工カッター保持装置72とを備えている。加工カッター71は、加工データに含まれるカットデータに基づいて、プラテン12に支持されたメディア5を切断するカッターである。加工データは、印刷データおよびカットデータのうちの少なくとも一方を含んでいる。加工カッター保持装置72は、加工カッター71を上下方向Zに移動させてプラテン12上のメディア5に接触または離反させる。上下方向Zは、ここでは、プラテン12に対する加工カッター71の接近離反方向である。上下方向Zのうち下方は、加工カッター71がメディア5に接近する接近方向である。上下方向Zのうち上方は、加工カッター71がメディア5から離反する離反方向である。上下方向Zは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに直交している。ただし、加工カッター71の接近離反方向は主走査方向Yおよび副走査方向Xに交差する方向であればよく、上下方向Zでなくてもよい。
加工カッター保持装置72は、加工カッター71を上下方向Zに移動させるソレノイド72aを備えている。ソレノイド72aがON/OFFされると、加工カッター71は上下方向Zに移動してメディア5に接触し、あるいはメディア5から離反する。加工カッター71は、メディア5に接触することにより、メディア5を切断可能である。ソレノイド72aは、制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。
図2に示すように、プリンタ10は、印刷前のメディア5が巻かれた供給ローラ20を備えている。供給ローラ20はプラテン12の後斜め下方に配置されている。印刷時またはカッティング時には、供給ローラ20に巻かれたメディア5は、プラテン12上を経由して副走査方向Xに移動される。巻取ローラ90は、印刷およびカッティング済みのメディア5をロール状に巻き取るように構成されている。図2に示すように、巻取ローラ90はプラテン12の前斜め下方に配置されている。
シートカッターユニット100は、印刷およびカッティング済みのメディア5を主走査方向Yにミシン目カットまたは連続カットする。図2に示すように、シートカッターユニット100は、第2キャリッジ52に搭載され、カッター移動装置としてのヘッド移動装置40により主走査方向Yに移動される。第2キャリッジ52において、シートカッターユニット100は、カッティングヘッド70よりも副走査方向Xの上流側(ここでは後方Rr)に設けられている。
図5は、シートカッターユニット100の斜め左方からの斜視図である。図6は、シートカッターユニット100の左側面図である。さらに、図7は、シートカッターユニット100を斜め上方から見た斜視図である。図5~図7は、ケース170のカバー172(後述、図8参照)を取り外した状態を示す図である。図5および図6に示すように、シートカッターユニット100は、プラテン12に支持されたメディア5を切断するシートカッター100Aと、シートカッター100Aを保持するシートカッター保持装置100Bと、を備えている。シートカッター保持装置100Bは、シートカッター100Aを保持するとともに、プラテン12に接近離反する接近離反方向にシートカッター100Aを移動させるように構成されている。シートカッター100Aの接近離反方向は、ここでは、上下方向Zである。上下方向Zのうち下方は、シートカッター100Aがメディア5に接近する接近方向である。上下方向Zのうち上方は、シートカッター100Aがメディア5から離反する離反方向である。ただし、シートカッター100Aの接近離反方向は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに交差する方向であればよく、上下方向Zでなくてもよい。また、本実施形態では、シートカッター100Aの接近離反方向と加工カッター71の接近離反方向とは一致しているが、両者は一致しなくてもよい。なお、図5~図7は、シートカッター100Aが最下位置に下がった状態のシートカッターユニット100を示す図である。
図5に示すように、シートカッター100Aは、上下方向Zに延びる板状のカッターである。シートカッター100Aは、先端に刃部101を備え、刃部101によりメディア5を切断する。シートカッター100Aは、それ自体は回転または移動不能にシートカッター保持装置100Bに固定されている。シートカッター100Aは、プリントヘッド60およびカッティングヘッド70よりも副走査方向Xの上流側(ここでは後方Rr)に設けられている。
シートカッター保持装置100Bは、シートカッター100Aを保持して接近離反方向(上下方向Z)に移動させることにより、シートカッター100Aの刃部101をプラテン12に支持されたメディア5に接触させ、または離反させる。図5に示すように、シートカッター保持装置100Bは、フレーム部材110と、シートカッター100Aを保持するホルダ120と、上下方向Zに摺動可能なようにホルダ120を支持するスライドガイド130と、ホルダ120を摺動させる駆動力を発生させるアクチュエータ140と、アクチュエータ140の駆動力をホルダ120に伝達するリンク部材150と、ホルダ120を引き上げるスプリング160と、フレーム部材110に取り付けられたケース170と、を備えている。図5~図7では、フレーム部材110に取り付けられたケース170の側板171が図示されている。
フレーム部材110は、第2キャリッジ52に固定されるとともに、スライドガイド130およびケース170の側板171を支持している。詳細は後述するが、フレーム部材110は、シートカッター保持装置100Bの他の全ての部材を直接または間接に支持している。図5に示すように、フレーム部材110は、ここでは、上下方向Zおよび主走査方向Yに延びる平板状に形成されている。スライドガイド130は、フレーム部材110の前面下部に設けられている。スライドガイド130は、ここでは、上下方向Zに延びる一対のガイドレールである。フレーム部材110は、スプリング160が係止されるスプリング係止部111と、ケース170の側板171を取り付けるケース取付部112とを備えている。スプリング係止部111は、スライドガイド130の上方に設けられている。ケース取付部112は、フレーム部材110の右縁のうちスライドガイド130よりも上方部分に設けられている。ケース170の側板171は、フレーム部材110よりも前方に位置するようにケース取付部112に取り付けられる。
ホルダ120は、シートカッター100Aを保持する部材であり、スライドガイド130に沿って上下方向Zに移動可能に構成されている。ホルダ120は、上下方向に摺動自在にスライドガイド130に係合している。図5に示すように、ホルダ120は、カッターホルダ121と、スライダ122と、スプリング係止部123と、リンク接続部124と、を備えている。スライダ122は、上下方向Zに摺動自在にスライドガイド130に係合している。カッターホルダ121は、シートカッター100Aを保持可能かつスライダ122に着脱可能に構成されている。カッターホルダ121は、スライダ122の下端に着脱されるように構成され、スライダ122よりも下方に配置される。カッターホルダ121は、ホルダ120の下端を構成している。ユーザーは、カッターホルダ121をスライダ122から取り外すことによりシートカッター100Aの交換を容易に行うことができる。カッターホルダ121は、カッター固定部121aとローラ121bとを備えている。カッター固定部121aは、締め込むことによりシートカッター100Aを固定し、緩めることによりシートカッター100Aを開放するように構成されている。ローラ121bは、その下端がシートカッター100Aの先端よりもわずかに高い位置に位置するように設けられている。ローラ121bは、副走査方向Xに延びる回転軸を備え、主走査方向Yに回転可能である。ローラ121bは、シートカッターユニット100が主走査方向Yに移動する際にメディア5に当接し、メディア5の浮きを防止する部材である。
スプリング係止部123は、スライダ122の上端に設けられている。リンク接続部124は、スライダ122のうちスプリング係止部123よりも下方部分に設けられている。リンク接続部124は、ここでは、前方に向かって開いたC字状に構成されている。リンク接続部124のC字の凹部を形成するリンク溝124aには、リンク部材150の一方の端部(後述する第2接続部152)が挿入される。
スプリング160は、フレーム部材110のスプリング係止部111とスライダ122のスプリング係止部123との間に、引っ張られた状態で保持されている。スプリング160の上端フック161は、フレーム部材110のスプリング係止部111に引っ掛けられている。スプリング160の下端フック162は、ホルダ120のスプリング係止部123に引っ掛けられている。スプリング160は、その復元力によってホルダ120を上方に向かって付勢している。スプリング160は、ホルダ120がプラテン12から離反する方向にホルダ120を付勢する部材である。スプリング160は、アクチュエータ140が駆動していないときには、シートカッター100Aがプラテン12よりも上方に位置するようにホルダ120を吊り上げている。
図5に示すように、ケース170は、フレーム部材110に支持された側板171を備えている。側板171は、例えば樹脂によって形成されている。側板171は、フレーム部材110のケース取付部112に取り付けられている。側板171は、フレーム部材110の大部分およびホルダ120よりも右方に設けられている。側板171は、副走査方向Xおよび上下方向Zに延びる平板状の部材である。側板171は、フレーム部材110から前方に延びている。側板171には、アクチュエータ140を取り付けるアクチュエータ取付部171a(図6参照)と、リンク部材150の回転軸171bと、が設けられている。さらに、側板171は、図7に示すように、その左側面から左方に延び、さらに下方に向かって延びるアーム171cを備えている。
図6に示すように、アクチュエータ取付部171aは、側板171の前方部分に設けられている。アクチュエータ取付部171aは、上下方向Zに延びる長孔171a1と、長孔171a1に挿通された固定部材171a2と、を備えている。長孔171a1は、側板171を主走査方向Yに貫通している。固定部材171a2は、例えば、アクチュエータ140に締結されたネジである。アクチュエータ140は、固定部材171a2の締結を緩めることにより、長孔171a1に沿って上下方向に移動させることができる。長孔171a1は、アクチュエータ140の上下方向Zの位置を調整可能なスライド部の一例である。固定部材171a2は、スライド部としての長孔171a1によって調整されたアクチュエータ140の側板171における位置を固定する固定部の一例である。アクチュエータ取付部171aは、アクチュエータ140の上下方向Zの位置を調整可能に構成されている。アクチュエータ140を側板171に取り付ける際には、アクチュエータ140は、位置調整部としてのアクチュエータ取付部171aによって上下方向Zの位置を調整され、その後、側板171に固定される。アクチュエータ140の上下位置の調整作業については後述する。なお、アクチュエータ140の上下方向Zの位置を調整するための構成は、長孔およびネジに限定されるわけではない。
リンク部材150の回転軸171bは、側板171の左側面に設けられている。図6に示すように、回転軸171bは、アクチュエータ取付部171aよりも下方であってフレーム部材110寄りに配置されている。回転軸171bは、側板171の左側面から左方に向かって延びている。回転軸171bには、リンク部材150の軸受部153が装着される。回転軸171bは、回転軸171b周りに回転可能なようにリンク部材150を支持している。
図5に示すように、アクチュエータ140は、側板171の左側面に当て付くように側板171に取り付けられる。リンク部材150は、アクチュエータ140の下方に位置するように回転軸171bに装着される。アクチュエータ140、リンク部材150、ホルダ120、およびスプリング160は、いずれも、側板171の左側面よりも左方に配置される。側板171の左方は、側板171から見てケース170の内方側である。側板171の左側面は、ケース170の内側面である。
アーム171cは、側板171にカバー172が装着されていない状態では、ホルダ120の上方に位置しており、ホルダ120の上面に当接している。図7に示すように、アーム171cは、側板171の左側面から左方に向かって延び、そこから後方に向かって屈折している。アーム171cは、そこからさらに、下方に向かって屈折している。アーム171cの下方に延びる部分の下面は、ホルダ120の上面に当接している。カバー172が側板171に装着されていない状態においては、アーム171cは、スプリング160の付勢によってホルダ120が上方に移動することを規制している。図5~図7に示す、アーム171cに当て付いているときのホルダ120の上下方向Zの位置を、以下では、ダウン位置P1とも呼ぶこととする。詳しくは後述するが、ダウン位置P1は、プリンタ10の使用時におけるホルダ120の最下位置である。アーム171cは、カバー172が側板171に装着されていない状態において、スプリング160の付勢力に抗してホルダ120をダウン位置P1に保持する部材である。アーム171cは、カバー172が側板171に装着されず、かつ、ホルダ120がダウン位置P1に位置している状態においては、ホルダ120に当接する。
図5に示すように、側板171にカバー172が装着されていない状態では、ホルダ120は、アーム171cによって上方への移動を規制されているため、ダウン位置P1よりも上方には移動できない。しかし、アーム171cは、カバー172が側板171に装着されるとホルダ120から離間する。これにより、ホルダ120がダウン位置P1よりも上方に移動することが可能となる。以下、カバー172が側板171に装着されるとアーム171cがホルダ120から離間することについて、カバー172の構成とともに説明する。
図8は、カバー172を右斜め側方から見た斜視図である。図9は、カバー172が装着された状態のシートカッターユニット100を斜め上方から見た斜視図である。図9に示すように、カバー172は、側板171に左方から装着される。図9に示すように、側板171およびカバー172は、カバー172が側板171に装着されることにより、ケース170を構成する。ケース170は、アクチュエータ140、リンク部材150(図5参照)、リンク部材150の回転軸171b(図5参照)、およびスプリング160を収容するように構成されている。
図8に示すように、カバー172は、カバー172の内側面(ここでは右側面)からケース170の内方(ここでは右方)に向かって延びる押圧部172aを備えている。押圧部172aは、カバー172が側板171に装着されることによってアーム171cを押圧し、アーム171cがホルダ120から離間するようにアーム171cを変形させるものである。図9に示すように、カバー172が側板171に装着された状態では、押圧部172aは、アーム171cの水平部分と向かい合っており、アーム171cを右方に押すことにより、アーム171cを右方に向かって変形させている。これにより、アーム171cの鉛直部分がホルダ120の上方から退避する。そのため、アーム171cによるホルダ120の上方への移動の規制が解除される。ホルダ120およびシートカッター100Aは、アーム171cがホルダ120から離間することにより、上下方向Zに移動可能となる。図10に、ホルダ120が上がった状態のシートカッターユニットの左側面図を示す。図10に示す状態では、カバー172は側板171に装着されているが、ケース170の内部が見えるよう、図10ではカバー172は図示省略する。
図6および図10に示すように、アクチュエータ140は、上下方向Zに伸縮するロッド141と、ロッド141を駆動する駆動部142と、を備えている。ロッド141の伸縮方向は、ここでは、上下方向Zである。アクチュエータ140の構成は限定されないが、ここでは、アクチュエータ140は電磁式のアクチュエータである。駆動部142はソレノイドコイルである。駆動部142は制御装置200に電気的に接続され、制御装置200によって制御されている。ロッド141には例えば鉄芯が仕込まれており、駆動部142がON/OFFすることにより上下方向Zに伸縮する。ロッド141の下方側の一部は、駆動部142よりも下方に突出している。駆動部142がONすると、駆動部142のソレノイドコイルが縮み、ロッド141は上方に向かって引き上げられる。駆動部142がOFFすると、駆動部142のソレノイドコイルが伸び、ロッド141は自重により下降する。ロッド141の下端部(先端部)には、リンク部材150の一方の端部(後述する第1接続部151)が接続されるリンク接続部141aが設けられている。リンク接続部141aは、円柱状に構成され、左方に向かって延びている。
アクチュエータ140は、ロッド141の位置によりロッド141の軸力が異なるアクチュエータである。アクチュエータ140は、ここでは、縮む側(上方側)のストロークエンドに接近するほど軸力が増加するアクチュエータである。図11は、アクチュエータ140の駆動力特性を示すグラフである。図11の横軸はロッド141のストロークである。横軸「0」は、ロッド141の上方側のストロークエンドである。図11の縦軸は、ロッド141の軸力、さらに詳しくはロッド141が縮もうとする軸力である。ロッド141を駆動する電磁力はロッド141と駆動部142との間の距離が小さいほど大きくなるため、アクチュエータ140は、図11に示すように、ロッド141が上方側のストロークエンドに近い位置に位置しているほど大きな駆動力を発揮する。
リンク部材150は、アクチュエータ140のロッド141とホルダ120とに接続され、ロッド141の駆動力をホルダ120に伝達する部材である。ホルダ120は、リンク部材150を介して伝達されたロッド141の駆動力により、スライドガイド130に沿って上下方向に移動する。図6に示すように、リンク部材150は、棒状の部材であり、ロッド141に接続された第1接続部151と、ホルダ120に接続された第2接続部152と、ケース170に設けられた回転軸171bに接続された軸受部153と、を有している。第1接続部151は、リンク部材150の前端部に設けられている。第2接続部152は、リンク部材150の後端部に設けられている。軸受部153は、第1接続部151と第2接続部152との間に設けられている。リンク部材150は、ケース170に設けられた回転軸171b周りに回転可能に構成されている。リンク部材150は、例えば樹脂によって形成されている。
第1接続部151は、軸受部153よりもアクチュエータ140の側、ここでは前方に設けられている。図6に示すように、第1接続部151は、前方に向かって開いたC字状に構成されている。第1接続部151は、C字の凹部を形成するリンク溝151aを備えている。リンク溝151aは、リンク部材150の前端から軸受部153の方に向かって延びている。リンク溝151aには、アクチュエータ140のロッド141のリンク接続部141aが挿入されている。ロッド141が伸縮すると、ロッド141のリンク接続部141aとリンク溝151aとは滑るように相対移動し、これにより、リンク部材150が回転軸171b周りに回動する。
第2接続部152は、軸受部153よりもホルダ120の側、ここでは後方に設けられている。図6に示すように、第2接続部152は、左右方向に延びる円柱状に構成されている。第2接続部152は、ホルダ120のリンク溝124aに挿入されている。ロッド141が伸縮すると、リンク部材150が回転軸171b周りに回動し、これにより、第2接続部152がリンク溝124aの上方の壁部または下方の壁部を押す。これにより、ホルダ120が上下方向Zに移動する。図6に示すように、本実施形態では、ロッド141が縮んで上方側のストロークエンドに近づくことにより、ホルダ120は下降する。図10に示すように、ロッド141が伸びて下方側のストロークエンドに近づくことにより、ホルダ120は上昇する。ただし、このときホルダ120を引き上げているのは、スプリング160である。回転軸171bは、ロッド141の伸縮に応じてホルダ120が上下方向Zに移動するように、リンク部材150を回動可能に支持している。リンク部材150およびリンク部材150の回転軸171bは、ロッド141が上方に移動するとホルダ120がプラテン12に接近し、ロッド141がその逆方向である下方に移動するとホルダ120がプラテン12から離反するように構成されている。前述したように、本実施形態では、アクチュエータ140は上方側のストロークエンドに接近するほど軸力が増加するアクチュエータであり、そのため、ホルダ120に保持されたシートカッター100Aの下方への推進力は、シートカッター100Aが下方に位置しているほど増加する。
図10に示すように、本実施形態では、回転軸171bと第2接続部152との間の距離D2は、回転軸171bと第1接続部151との間の距離D1よりも大きく構成されている。これにより、ホルダ120の上下方向Zに関する可動範囲をロッド141のストロークよりも大きくすることができる。距離D2は、例えば、距離D1の2倍の長さであってもよい。この場合、ホルダ120の可動範囲は、ロッド141のストロークの2倍となる。ただし、距離D1と距離D2との比は特に限定されない。
図6に示すように、リンク部材150の軸受部153と第2接続部152との間の部分150Rrは、軸受部153と第1接続部151との間の部分150Fよりも上下方向Zの厚さが薄く構成されている。そのため、リンク部材150の軸受部153と第2接続部152との間の部分150Rrは、力を受けると弾性変形しやすくなっている。詳しくは後述するが、リンク部材150の軸受部153と第2接続部152との間の部分150Rrは、ロッド141を上方に動かすようにアクチュエータ140が駆動され、かつ、シートカッター100Aがメディア5を貫通することがメディア5によって阻止されている状態では、アクチュエータ140の駆動力によって弾性変形するように構成されている(図15を参照)。以下、このリンク部材150の軸受部153と第2接続部152との間の部分150Rrのことを変形部150Rrとも呼ぶ。変形部150Rrを変形させる理由については後述する。
側板171におけるアクチュエータ140の上下方向Zの位置は、ホルダ120がダウン位置P1にあるときにシートカッター100Aが最大の推力を発揮するような位置に調整されている。具体的には、側板171におけるアクチュエータ140の位置は、ホルダ120がダウン位置P1に位置している状態においてロッド141が上方側のストロークエンドに位置するような位置に調整される。前述したように、アクチュエータ140は、ロッド141が上方のストロークエンドにあるときに最大の軸力で駆動するように構成されている。そのため、ホルダ120がダウン位置P1に位置している状態でロッド141が上方側のストロークエンドにあれば、シートカッター100Aは、ホルダ120がダウン位置P1にあるときに最大の推力を発揮する。
前述したように、ダウン位置P1は、ここでは、プリンタ10の使用時におけるホルダ120の最下位置である。ホルダ120がダウン位置P1に位置しているとき、シートカッター100Aの下端は、プラテン12上のメディア5よりも下方に位置する。ダウン位置P1は、ホルダ120がプラテン12に支持されたメディア5の上方に位置している状況では、シートカッター100Aがメディア5を貫通するようなホルダ120の位置である。シートカッター100Aの推力は、シートカッター100Aがメディア5を貫通するときに最も必要とされる。そのため、ホルダ120がダウン位置P1にあるときにシートカッター100Aが最大の推力を発揮するように、アクチュエータ140の位置が調整されている。
アクチュエータ140は、その自重を受ける状態(駆動部142のソレノイドコイルおよびロッド141が最も縮んだ状態)で側板171のアクチュエータ取付部171aにねじ止めされる。なお、側板171は、アクチュエータ140の位置を調整可能なアクチュエータ取付部171aを備えているので、アクチュエータ100の上下方向の位置調整が可能となっている。ただし、その自重を受けた状態で側板171に固定できれば、アクチュエータ取付部171aは必須ではない。スプリング160の復元力に抗してホルダ120を下方に移動させ、側板171のアーム171cの下端をホルダ120の上面に突き当てることにより、ホルダ120(シートカッター100A)がダウン位置P1に位置決めされる。その後、スプリング160の復元力に抗してホルダ120を下方に移動させ、リンク部材150をロッド141およびホルダ120に接続する。接続後は、スプリング160の復元力により、ホルダ120が上方に移動して、側板171のアーム171cの下端がホルダ120の上面に突き当たる。これにより、ホルダ120(シートカッター100A)がダウン位置P1に再度、位置決めされる。なお、スプリング160の復元力に抗してホルダ120を下方に移動させ、リンク部材150をロッド141およびホルダ120に接続した後、側板171のアーム171cの下端をホルダ120の上面に突き当ててホルダ120(シートカッター100A)をダウン位置P1に位置決めしてもよい。上述したように、ここでは、アクチュエータ140の自重を受けた状態で、すなわち、最もストロークの誤差が発生しにくい状態(上方のストロークエンドに達する状態)でアクチュエータ140が側板171に位置決めされ、固定されている。よって、カッターダウン位置におけるソレノイドのストロークのばらつきを防止できる。そのため、アクチュエータ140のソレノイドを大型化しなくても、シートカッター100Aをシートに確実に貫通させることができる。上記したアクチュエータ140の位置調整の後、カバー172が側板171に装着される。これにより、カバー172の押圧部172aがアーム171cを押す。これにより、アーム171cがホルダ120から離れ、ホルダ120は上下方向Zに移動可能となる。
図2および図3に示すように、プラテン12のうち加工カッター71の移動経路の下方に位置する部分には、第1溝13aが設けられている。第1溝13aは、加工カッター71の下降時の下端よりも下方に位置するようにプラテン12の表面から凹んでいる。第1溝13aは、主走査方向Yに延びている。第1溝13aには、加工カッター71によって切断可能なカッターパッド(図示せず)が嵌め込まれている。プラテン12のうちシートカッター100Aの移動経路の下方に位置する部分には、第2溝13bが設けられている。第2溝13bは、シートカッター100Aの下降時の下端よりも下方に位置するようにプラテン12の表面から凹んでいる。第2溝13bは、主走査方向Yに延びている。
図12は、プリンタ10のブロック図である。図12に示すように、制御装置200は、搬送装置30のフィードモータ33、ヘッド移動装置40のスキャンモータ43、プリントヘッド60のインクヘッド61、カッティングヘッド70のソレノイド72a、ロック装置80のロック用ソレノイド82、巻取ローラ90、およびシートカッターユニット100のアクチュエータ140の駆動部142に電気的に接続され、それらの動作を制御している。制御装置200の構成は特に限定されないが、例えば、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。
図12に示すように、制御装置200は、印刷およびカッティング後のシートカッターユニット100によるメディア5の切断動作を制御するシートカット制御部210と、カットデータに基づくカッティング動作を制御するカッティング制御部220とを備えている。制御装置200は、印刷動作を制御する制御部など他の制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
図12に示すように、シートカット制御部210は、連続切断制御部211と、断続切断制御部212と、を備えている。連続切断制御部211は、シートカッター保持装置100Bおよびカッター移動装置としてのヘッド移動装置40を制御して、メディア5を主走査方向Yに連続的に切断(連続カット)するように構成されている。断続切断制御部212は、シートカッター保持装置100Bおよびカッター移動装置としてのヘッド移動装置40を制御して、メディア5を主走査方向Yに断続的に切断(ミシン目カット)するように構成されている。
図12に示すように、断続切断制御部212は、さらに、切断部の長さと非切断部の長さとの比(切断部および非切断部の詳細については後述する)が異なる2種類のミシン目カット動作をそれぞれ制御する粗目切断部212Aと細目切断部212Bとを備えている。細目切断部212Bは、非切断部の長さに対する切断部の長さの比を、粗目切断部212Aよりも小さくするように設定されている。すなわち、細目切断部212Bの制御によるミシン目カットでは、粗目切断部212Aに比べて、処理長さ全体に対する切断部の割合が小さく、非切断部の割合が大きい。以下、粗目切断部212Aによるミシン目カットを粗目カットとも呼び、細目切断部212Bによるミシン目カットを細目カットとも呼ぶこととする。ここでは、細目切断部212Bは、メディア5の左端から中央部に向かって所定の幅で設定された第1端領域A1(図13参照)、および、メディア5の右端から中央部に向かって所定の幅で設定された第2端領域A2(図13参照)に対して細目カットを実行するように設定されている。粗目切断部212Aは、第1端領域A1と第2端領域A2との間の中央領域A3に対して粗目カットを実行するように設定されている。
カッティング制御部220は、加工データのうちのカットデータに基づいてメディア5を切断するように設定されている。図12に示すように、カッティング制御部220は、加工カッター制御部221と、シートカッター制御部222と、を備えている。加工カッター制御部221は、搬送装置30、加工カッター保持装置72のソレノイド72a、およびヘッド移動装置40を制御して、加工データのうちのカットデータに基づいて加工カッター71にメディア5を切断させる。シートカッター制御部222は、カットデータにメディア5の主走査方向Yの切断が含まれている場合には、アクチュエータ140およびヘッド移動装置40を制御して、主走査方向Yの切断のうちの少なくとも一部をシートカッター100Aに行わせるように構成されている。加工カッター制御部221およびシートカッター制御部222は、カットデータに基づき、連続カットを行うこともあり、ミシン目カットを行うこともある。
以下では、本実施形態に係るプリンタ10による連続カットおよびミシン目カットのプロセス、特にミシン目カットのプロセスについて説明する。まず、連続カットのプロセスについて簡単に説明する。
[連続カットのプロセス]
連続カットは、メディア5の一部を供給ローラ20のメディア5のロールから分離するためのカット方法である。制御装置200の連続切断制御部211は、以下の接近ステップと、連続切断ステップと、を含む複数のステップを実行するように設定されている。接近ステップでは、連続切断制御部211によってシートカッター保持装置100Bが制御され、メディア5を切断可能な上下方向Zの位置にシートカッター100Aの刃部101が移動される。連続切断ステップは、接近ステップの後に行われ、ヘッド移動装置40を制御して、少なくともメディア5の主走査方向Yの一方の端部から他方の端部までシートカッター保持装置100Bを移動させるステップである。
ここに示す連続カットの一例では、まず接近ステップにおいて、シートカッター100Aが、メディア5の左端よりも左方(メディア5の外方)に下降される。下降後のシートカッター100Aの高さは、刃部101がメディア5と重なるような高さである。続く連続切断ステップでは、メディア5の左側の外方から右側の外方までシートカッター100Aが移動される。これにより、メディア5がシートカッター100Aの移動経路に沿って主走査方向Yに連続的に切断される。
[ミシン目カットのプロセス]
ミシン目カットは、例えば、ジョブの成果物を後で分離するために、メディア5を断続的に切断するカット方法である。プリンタ10では、印刷およびカッティングが終わったメディア5は巻取ローラ90に巻き取られる。ミシン目カットを行ってもメディア5はロールから切り離されないため、メディア5を巻取ローラ90に巻き取ることができる。メディア5を巻取ローラ90から繰り出した後、ユーザーは、ミシン目をちぎることによってジョブの成果物を分離する。
ここで、図13を使ってミシン目カットの「切断部」、「非切断部」、「切断長さ」および「切り残し長さ」の意味について説明する。図13は、ミシン目カット終了後のメディア5の一例を模式的に示す平面図である。切断部は、メディア5の切断された箇所(図13では、それぞれ複数の切断部C1~C3)であり、図13では実線で表している。切断されずに残った箇所が非切断部であり、図13では、非切断部には実線を引いていない。切断長さは、切断部の主走査方向Yの長さであり、図13では、符号L1およびL2で示されている。図13に示すように、切断長さは、各切断部(例えば、1つの切断部C1)の長さである。切り残し長さは、非切断部の主走査方向Yの長さであり、図13では、符号L3で示されている。前述したように、切り残し長さに対する切断長さの比が大きいミシン目カットが粗目カットであり、切り残し長さに対する切断長さの比が小さいミシン目カットが細目カットである。粗目カットは、処理部分全体に対する切断部の割合が大きいため、比較的切りやすいミシン目である。細目カットは、処理部分全体に対する切断部の割合が小さいため、比較的切れにくいミシン目である。なお、以下では、切断部と非切断部の繰り返しパターンのことを「ミシン目カット線」または単に「カット線」とも呼ぶ。
ここに示す例では、まず、細目切断部212Bの制御により第1端領域A1に対して細目カットが行われる。第1端領域A1の主走査方向Yの幅は、好適には、5mm以上20mm以下であるとよい。図14は、細目カット時のシートカッター100Aの動きを示す模式図である。図14では、1つの切断部を形成する際のシートカッター100Aの動きが図示されている。複数の切断部を形成するためには、図14に示されたステップを繰り返し実行する。図14に示すように、細目カットでは、貫通ステップS01と、切断ステップS02と、戻りステップS03と、離間ステップS04と、移動ステップS05とを含む複数のステップが繰り返し実行される。
図14に示すように、切断部を形成するステップのSTART状態では、シートカッター100Aは、メディア5よりも上方に位置している。貫通ステップS01では、シートカッター保持装置100Bを制御してシートカッター100Aを下降させ、刃部101をメディア5に貫通させる。本実施形態では、細目切断部212Bは、貫通ステップS01において、以下に説明する往復動作と押し当て動作とを並行して行うように設定されている。図14のステップS01に示すように、往復動作は、ヘッド移動装置40を制御して、シートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに所定の回数だけ往復させる動作である。押し当て動作は、シートカッター保持装置100Bを制御して、メディア5に刃部101を押し当てる動作である。
ミシン目カットでは、シートカッター100Aにメディア5を貫通させる必要がある(連続カットでは、メディア5の外部でメディア5よりも低い位置までシートカッター100Aを下降してからシートカッターユニット100を移動させればよいため、シートカッター100Aによるメディア5の貫通は必要ない)。しかしながら、シートカッター100Aの移動経路の下方には第2溝13bが設けられてるため、シートカッター100Aでメディア5を押圧すると、メディア5が第2溝13bに逃げてしまう。そのため、シートカッター100Aでメディア5を押圧するだけでは、シートカッター100Aにメディア5を貫通させることは難しい。そのため、本実施形態では、ステップS02に示すように、シートカッター100Aを下方に押圧しながら、シートカッターユニット100を主走査方向Yに所定の回数だけ往復させる。これにより、シートカッター100Aにメディア5を貫通させやすくしている。
図15は、シートカッター100Aがメディア5に当接した状態のシートカッターユニット100の左側面図である。より詳しくは、図15は、シートカッター100Aがメディア5に当接しており、かつ、シートカッター100Aがメディア5を貫通していない状態のシートカッターユニット100を示す図である。図15に示すように、シートカッター100Aを下降させるようにアクチュエータ140が駆動され、かつ、シートカッター100Aがメディア5を貫通することがメディア5によって阻止されている状態では、リンク部材150は、アクチュエータ140の駆動力によって弾性変形する。詳しくは、変形部150Rrが弾性変形して上方に向かって撓む。変形部150Rrは、リンク部材150がシートカッター100Aを押し下げる力に対するメディア5の反力を受けている。この反力により、変形部150Rrは上方に向かって撓んでいる。変形部150Rrをこのように撓ませるのは、シートカッター100Aの推力を高めるためである。以下、変形部150Rrが弾性変形することによりシートカッター100Aの推力が大きくなる理由を説明する。
図11に、シートカッター100Aがメディア5を貫通するためにロッド141に最低限必要とされる軸力(以下、貫通軸力F1とも言う)を示す。ロッド141が貫通軸力F1以上の軸力で駆動した場合には、シートカッター100Aは、メディア5を貫通することができる。ロッド141が貫通軸力F1未満の力しか出せない場合には、シートカッター100Aは、推力不足によりメディア5を貫通できない。また、図11に、シートカッター100Aがメディア5に到達した瞬間のロッド141のストロークSt1を示す。図11に示すように、このときのロッド141の軸力は軸力F2である。図11に示すように、軸力F2は貫通軸力F1よりも小さい。従って、このままの状態では、シートカッター100Aはメディア5を貫通できない。なお、図15にも、ロッド141のストロークSt1を二点鎖線で示している。
図11および図15に、メディア5の抵抗により変形部150Rrが変形した状態のロッド141のストロークSt2をさらに示す。図15に示すように、ストロークSt2は、変形部150Rrが弾性変形しているために、ストロークSt1よりも上方側のストロークエンドに近い。そのため、ロッド141の軸力は、変形部150Rrが弾性変形する前よりも大きくなっている。図11に示すように、このときのロッド141の軸力は軸力F3であり、軸力F3は貫通軸力F1よりも大きい。そのため、シートカッター100Aはメディア5を貫通することができる。
シートカッター100Aがメディア5に当接した状態においてリンク部材150が弾性変形しないとすると、ロッド141の軸力は軸力F2であり続けるため、シートカッター100Aはメディア5を貫通できない。しかし、本実施形態では、リンク部材150が弾性変形することにより、ロッド141のストロークが、上方側のストロークエンドにより近いストロークSt2にシフトする。それにより、ロッド141の軸力が、貫通軸力F1よりも大きい軸力F3にシフトする。そのため、本実施形態に係るプリンタ10では、シートカッター100Aがメディア5を貫通することができる。
本実施形態では、シートカッター100Aのストロークを長くして必要なストロークを得るために、回転軸171bと第2接続部152との間の距離D2は、回転軸171bと第1接続部151との間の距離D1よりも大きく設定されている(図10参照)。このように構成することで、ストロークが短い小型のアクチュエータを使用しても必要なストロークを得ることができる。しかし、小型のアクチュエータは軸力が小さい。さらに、シートカッター100Aのストロークを拡大したのに反比例して、シートカッター100Aを押し下げる推力は、ロッド141の軸力よりも小さくなる。本実施形態では、これを補うために、リンク部材150の変形部150Rrを弾性変形可能に構成している。
図14に戻って、貫通ステップS01の後には、切断ステップS02が行われる。切断ステップS02では、細目切断部212Bによってヘッド移動装置40が制御され、シートカッター保持装置100Bが、右方に距離L1(図13参照)だけ移動される。距離L1は、細目カットにおける切断長さである。切断ステップS02により、切断部C1が形成される。距離L1は、メディア5の主走査方向Yの長さよりも短く、さらには、粗目カットの切断長さL2よりも短い。
切断ステップS02の後には、戻りステップS03が行われる。戻りステップS03では、細目切断部212Bによってヘッド移動装置40が制御され、右方(ミシン目カットの進行方向の逆方向)に距離Lbだけシートカッター保持装置100Bが移動される。戻り距離Lbは、距離L1、すなわち細目カットにおける切断長さ以下に設定されている。ステップS03の戻り動作により、続く離間ステップS04においてシートカッター100Aを上方に移動させるときにシートカッター100Aとメディア5とが引っ掛かり、メディア5が破損することが抑制される。なお、本実施形態では、戻りステップS03においてシートカッターユニット100は切断方向の後方に所定の距離Lbだけ移動されたが、切断方向の前方および後方に所定の回数だけ往復されてもよい。これによっても、上記した戻りステップS03と同様に、離間ステップS04においてシートカッター100Aとメディア5とが引っ掛かることを抑制することができる。
切断ステップS02および戻りステップS03の後には、離間ステップS04が行われる。離間ステップS04では、細目切断部212Bによってシートカッター保持装置100Bが制御され、シートカッター100Aが上昇される。これにより、刃部101がメディア5から離間する。
離間ステップS04の後には、移動ステップS05が実行される。移動ステップS05では、細目切断部212Bによってヘッド移動装置40が制御され、シートカッター保持装置100Bを右方に所定の距離L3(図13参照)だけ移動させる。距離L3は、細目カットにおける切り残し長さである。距離L3も、メディア5の主走査方向Yの長さよりも短い。切り残し長さL3は、好適には5mm以下であるとよい。切り残し長さL3が5mm以下であれば、ユーザーは、ミシン目をきれいにちぎることが容易にできる。このステップS01~S05を繰り返すことにより、メディア5の第1端領域A1に対して細目カットが実施される。
メディア5の中央領域A3に対しては、粗目切断部212Aの制御により、粗目カットが実行される。粗目カットは、切断長さが距離L1よりも長い距離L2(図13参照)であることを除いて、細目カットと同様である。これにより、中央領域A3には、細目カットよりも切りやすい粗目カットが形成される。本実施形態では、粗目カットにおける切り残し長さは、細目カットにおける切り残し長さL3と同じである。ただし、粗目カットにおける切り残し長さは、細目カットにおける切り残し長さL3と異なっていてもよい。細目カットにおける切り残し長さに対する切断長さの比は、粗目カットにおける切り残し長さに対する切断長さの比よりも小さいが、細目カット、粗目カットのそれぞれにおける切断長さおよび切り残し長さは特に限定されない。
続く第2端領域A2に対するミシン目カットでは、細目カットが実行される。ここでは、第2端領域A2は、第1端領域A1と左右対称に構成されている。第2端領域A2の主走査方向Yの幅は、第1端領域A1の主走査方向Yの幅と同じである。ただし、第1端領域A1の主走査方向Yの幅と第2端領域A2の主走査方向Yの幅とは、異なっていてもよい。
[カットデータのカット線をシートカッターで切断する場合]
本実施形態に係るプリンタ10は、カットデータに含まれるカット線のうち主走査方向Yに延びるものの一部または全部をシートカッター100Aによって切断できる。ここでは、例示として、画像の周りに設定されたミシン目カット線の形成をシートカッター100Aによって行う場合を説明する。図16は、画像周りのミシン目カット終了後のメディア5を模式的に示す平面図である。図16に示す例では、複数の画像オブジェクトI1がメディア5に印刷されており、各画像オブジェクトI1の周りに、平面視において矩形のミシン目カット線C4が設定されている。ミシン目カット線C4のデータは、カットデータに含まれている。ユーザーは、各ミシン目カット線C4をちぎることにより、各画像オブジェクトI1をメディア5から分離することができる。
図16に示すように、ミシン目カット線C4は、それぞれ主走査方向Yに延びる2本のカット線C4Yと、それぞれ副走査方向Xに延びる2本のカット線C4Xと、を含んでいる。本実施形態に係るプリンタ10は、2本のカット線C4Xを、従来通り、加工カッター71によって形成する。一方、プリンタ10は、2本のカット線C4Yをシートカッター100Aによって形成する。なお、シートカッター100Aによって形成されるカット線は、連続カット線であってもよく、連続カット線とミシン目カット線が混在したものであってもよい。
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態に係るプリンタ10は、メディア5を切断可能なシートカッター100Aを保持するとともにプラテン12に接近離反する接近離反方向(ここでは上下方向Z)にシートカッター100Aを移動させるシートカッター保持装置100Bと、シートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに移動させるカッター移動装置としてのヘッド移動装置40と、を備えている。かかる構成によれば、シートカッター保持装置100Bによってシートカッター100Aをメディア5に自在に接触または離反させることができ、またヘッド移動装置40によりシートカッター100Aを切断方向である主走査方向Yに移動できる。そのため、シートカッター保持装置100Bの動きとヘッド移動装置40の動きとを組み合わせることにより、様々な種類の切断に柔軟に対応することができる。
特に本実施形態では、プリンタ10は、メディア5を主走査方向Yに連続的に切断(連続カット)する連続切断制御部211と、メディア5を主走査方向Yに断続的に切断(ミシン目カット)する断続切断制御部212と、を備えている。連続切断制御部211は、シートカッター保持装置100Bを制御して、メディア5を切断可能な上下方向Zの位置に刃部101を移動させる接近ステップと、接近ステップの後に、シートカッター保持装置100Bを制御して、少なくともメディア5の主走査方向Yの一方の端部から他方の端部までシートカッター保持装置100Bを移動させる切断ステップと、を含むステップ群を実行するように設定されている。すなわち、上記ステップ群の実行によれば、メディア5は、主走査方向Yの一方の端部から他方の端部まで連続カットされる。
一方、断続切断制御部212は、シートカッター保持装置100Bを制御して刃部101をメディア5に貫通させる貫通ステップS01(図14参照、以下のステップについても同様)と、貫通ステップS01の後に、シートカッター保持装置100Bをメディア5の主走査方向Yの長さよりも短い切断長さ(細目カットの場合はL1、粗目カットの場合はL2)だけ移動させる切断ステップS02と、切断ステップS02の後に、シートカッター保持装置100Bを制御して刃部101をメディア5から離間させる離間ステップS04と、離間ステップS04の後に、シートカッター保持装置100Bをメディア5の主走査方向Yの長さよりも短い切り残し長さL3だけ移動させる移動ステップS05と、を含むステップ群を繰り返し実行するように設定されている。すなわち、上記ステップ群の実行によれば、切断長さがL1またはL2で切り残し長さがL3のミシン目カットを行うことができる。そのため、円形刃物を主走査方向に回転走行させてシートカットを行う従来のシートカッター付き加工装置(例えば、プリンタ、カット機、カッティングヘッド付きプリンタを含む)と異なり、刃物を交換することなくミシン目カットおよび連続カットを行うことができる。同様に、本実施形態に係るプリンタ10によれば、シートカッター100Aの刃物を交換することなくミシン目カットの切断長さ、切り残し長さの変更を行うことができる。
本実施形態では、シートカッター保持装置100Bは、アクチュエータ140のロッド141とホルダ120とに接続されたリンク部材150を備えており、ロッド141の伸縮に応じてリンク部材150が回転し、ホルダ120が接近離反方向に移動するように構成されている。かかる構成によれば、リンク部材150を利用してロッド141のストロークまたは軸力を大きくすることができるため、小型のアクチュエータを使用してシートカッター保持装置100Bを構成することができる。これにより、シートカッター保持装置100Bを小型化できる。また、小型のアクチュエータを使用することにより、シートカッター保持装置100Bを安価に構成できる。
本実施形態では、リンク部材150の回転軸171bと第2接続部152(ホルダ120との接続部)との間の距離D2(図10参照)は、回転軸171bと第1接続部151(ロッド141との接続部)との間の距離D1(同じく図10参照)よりも大きく構成されている。かかる構成によれば、リンク部材150を利用して、シートカッター100Aのストロークをロッド141のストロークよりも大きくすることができる。
本実施形態に係るアクチュエータ140は、ロッド141が一方のストロークエンド(ここでは縮む側のストロークエンド)に接近するほど軸力が増加するアクチュエータであり、シートカッター保持装置100Bは、ロッド141が縮む側のストロークエンド方向に移動するとホルダ120がプラテン12に接近するように構成されている。リンク部材150は、ロッド141を縮む側のストロークエンド方向に動かすようにアクチュエータ140が駆動され、かつ、シートカッター100Aがメディア5を貫通することがメディア5によって阻止されている状態では、アクチュエータ140の駆動力によって弾性変形する。かかる構成によれば、前述したような理由によってシートカッター100Aの推力を大きくすることができる。そのため、軸力の小さい小型のアクチュエータを使用してもシートカッター100Aにメディア5を貫通させることができる。
本実施形態では、シートカッター保持装置100Bは、ホルダ120がプラテン12から離反する方向(ここでは上方)にホルダ120を付勢するスプリング160と、ホルダ120及びアクチュエータ140を保持する側板171と、側板171に装着されるカバー172とを備えている。側板171は、カバー172が未装着の状態でダウン位置P1に位置するホルダ120と当接し、スプリング160の付勢力に抗してホルダ120をダウン位置P1に保持するアーム171cを備えている。カバー172は、側板171に装着されることによってアーム171cを押圧し、アーム171cがホルダ120から離間するようにアーム171cを変形させる押圧部172aを備えている。ホルダ120およびシートカッター100Aは、アーム171cがホルダ120から離間することにより、上下方向に移動可能となる。かかる構成によれば、スプリング160の付勢力が作用しているにもかかわらず、アーム171cによってホルダ120をダウン位置P1に保持することができる。そのため、ホルダ120をダウン位置P1に保持した状態、すなわち、シートカッター100Aがメディア5を貫通する状態で、シートカッター100Aが最大の推力を発揮するような状態となるようにアクチュエータ140の駆動力を設定することができる。さらに、カバー172を側板171に装着するだけで、アーム171cによるホルダ120の保持を解除して、ホルダ120およびシートカッター100Aを接近離反方向に移動させることができる。
本実施形態では、アクチュエータ140の側板171における固定位置は、ホルダ120がダウン位置P1に位置している状態においてロッド141が縮む側のストロークエンドに位置するような位置に調整されている。そのため、ホルダ120がダウン位置P1に位置しているときに、アクチュエータ140は最大の軸力を発揮できる。シートカッター100Aはダウン位置P1の直前でメディア5を貫通するため、かかる構成により、メディア5貫通時のシートカッター100Aの推力を最大化できる。アクチュエータ140のストロークには個体によるばらつきがあるため、ホルダ120のダウン位置P1とロッド141のストロークエンドとを現物合わせしなければ、メディア5貫通時のシートカッター100Aの推力を最大化するようにアクチュエータ140の位置を決めるのは難しい。上記した構成によれば、ホルダ120がダウン位置P1に位置している状態において、ロッド141は、縮む側のストロークエンドに位置している。そのため、ホルダ120がダウン位置P1に位置している状態においてロッド141が伸びる側のストロークエンドに位置する場合に比べて推力の誤差が少ない。よって、そのような現物合わせが容易にできる。
本実施形態では、ロッド141の伸縮方向は上下方向であり、ロッド141の軸力が大きい側のストロークエンドは、上方のストロークエンドである。アクチュエータ140の上下方向の位置を調整する長孔171a1は、ホルダ120がダウン位置P1に位置した状態において、ロッド141が上方のストロークエンドに位置するまでアクチュエータ140が自重によって下降できるように構成されている。かかる構成によれば、アクチュエータ140は、ロッド141が上方のストロークエンドに到達する位置まで、自重によって自然に降下する。そのため、アクチュエータ140の位置調整を容易に行うことができる。
本実施形態では、側板171およびカバー172は、カバー172が側板171に装着されることにより、アクチュエータ140、リンク部材150、およびリンク部材150の回転軸171bを少なくとも収容するケース170を構成する。かかる構成によれば、可動部であるアクチュエータ140およびリンク部材150を覆うための必須要素であるカバー172の着脱を利用して、上記したようなアクチュエータ140の位置調整を行うことができる。そのため、シートカッター保持装置100Bの組立作業を簡略化でき、シートカッター保持装置100Bの部材を節減できる。
シートカッター100Aの動きの制御の面では、本実施形態に係るプリンタ10は、ミシン目カットの貫通ステップS01において、シートカッター保持装置100Bを主走査方向Yに所定の回数だけ往復させる往復動作と、メディア5に刃部101を押し当てる押し当て動作と、を並行して行うように設定されている。かかる動作により、シートカッター100Aがメディア5を貫通しやすくなる。
さらに、本実施形態に係るプリンタ10は、切断ステップS02の後であって離間ステップS04の前に、切断方向の後方側に所定の戻り距離Lbだけシートカッター保持装置100Bを移動させる戻りステップS03を実行するように設定されている。かかる動作によれば、離間ステップS04においてシートカッター100Aとメディア5とが引っ掛かり、メディア5が破損することを抑制することができる。なお、シートカッターユニット100は、戻りステップにおいて、切断方向の前方および後方に所定の回数だけ往復されてもよい。「切断方向の後方側に所定の戻り距離だけシートカッター保持装置100Bを移動させる」ことは、かかる往復運動に含まれる要素であり、シートカッターユニット100切断方向前方への移動は、シートカッターユニット100切断方向後方への移動に任意に付加可能な要素である。
本実施形態に係るプリンタ10では、メディア5の端部における切断部分と残部分との比と、中央部における切断部分と残部分との比とを比べると、端部の方が切断部分の割合が小さい(残部分の割合が大きい)。プリンタ10は、メディア5の端部、すなわち、主走査方向Yに関するメディア5の一方の端部から中央部に向かって所定の幅で設定された第1端領域A1、および、主走査方向Yに関するメディア5の他方の端部から中央部に向かって所定の幅で設定された第2端領域A2に対して細目カットを実行するように設定されている。また、プリンタ10は、メディア5の中央部、すなわち、第1端領域A1と第2端領域A2との間の中央領域A3に対して粗目カットを実行するように設定されている。ここでは、細目カットは、粗目カットと切り残し長さL3が等しく、粗目カットよりも切断長さL1が短い(図13に示すように、粗目カットの切断長さL2は、細目カットの切断長さL1よりも長い)ミシン目カットである。その結果、細目カットは、切り残し長さに対する切断長さの比、および、処理長さ全体に対する切断長さの割合が粗目カットよりも小さくなっている。かかる制御によれば、巻取ローラ90でメディア5を巻き取る際にはミシン目を切れにくくし、ユーザーがミシン目をちぎる際にはミシン目をちぎりやすくすることができる。
ミシン目カットによってシートカットされたメディア5では、メディア5の幅方向(主走査方向Y)の両端部のミシン目が切れると、そこからメディア5がめくれる等の不具合が発生しやすい。特に、巻取ローラ90でメディア5を巻き取る場合には、メディア5に巻き取り方向の張力が掛かるため、ミシン目が切れるおそれが大きい。そこで、本実施形態では、メディア5の幅方向(主走査方向Y)の両端部の第1端領域A1および第2端領域A2では、ミシン目が切れにくいように、非切断部の割合が大きい細目カットを行っている。一方、メディア5の幅方向(主走査方向Y)の中央部に位置する中央領域A3では、ミシン目が切れても問題は少ない。そこで、中央領域A3では、ユーザーがミシン目をちぎりやすいように、切断部の割合が大きい(非切断部の割合が小さい)粗目カットを行っている。これにより、巻取ローラ90でメディア5を巻き取る際にはミシン目を切れにくくし、ユーザーがミシン目をちぎる際にはミシン目をちぎりやすくすることができる。
なお、本実施形態では、第1端領域A1の主走査方向Yの長さと第2端領域A2の主走査方向Yの長さとは同じであり、第1端領域A1と第2端領域A2とにおいて、切断長さおよび切り残し長さは同じである。そのため、形成されるミシン目は、主走査方向Yに関して対称である。巻取ローラ90によってメディア5を巻き取る際には、真っ直ぐに巻き取るためにメディア5の幅方向の張力が対称的である方が有利であり、そのためには、形成されるミシン目が主走査方向Yに関して対称であることが好ましい。そのため、本実施形態では、ミシン目を主走査方向Yに関して対称に形成している。ただし、第1端領域A1の主走査方向Yの長さと第2端領域A2の主走査方向Yの長さとは異なっていてもよく、第1端領域A1と第2端領域A2とにおいて、切断長さおよび切り残し長さは異なっていてもよい。
なお、ミシン目カットの種類は、粗目カットと細目カットの2種類には限定されず、3種類以上であってもよい。行われるミシン目カットの種類によって区別されるメディア5上の領域は3領域でなくてもよい。行われるミシン目カットの種類によって区別されるメディア5上の領域は、2領域以下であってもよく、4領域以上であってもよい。
本実施形態では、シートカッター100Aを切断方向に移動させるカッター移動装置は、カッティングヘッド70を主走査方向Yに移動させるヘッド移動装置40である。シートカッター保持装置100Bは、カッティングヘッド70とともに第2キャリッジ52によって保持されている。かかる構成によれば、ヘッド移動装置40とは別のカッター移動装置を設ける必要がないため、プリンタ10の構成を簡略化することができる。プリンタ10のコストも削減できる。
本実施形態に係るプリンタ10は、カットデータにメディア5の主走査方向Yの切断が含まれている場合には、主走査方向Yの切断のうちの少なくとも一部をシートカッター100Aによって行わせることもできるように構成されている。かかる制御によれば、加工カッター71の使用量を削減し、加工カッター71の交換頻度を低減することができる。
このような制御は、特に主走査方向Yに延びるカット線がミシン目カット線である場合に大きな効果を発揮する。通常、カットデータ中の連続カットのほとんどは、メディア5がシール材であり、剥離紙だけを切断し台紙を切断しない場合に係るものである。そのような場合には、加工カッター71はメディア5を貫通しない。従って、加工カッター71は、第1溝13aに嵌め込まれたカッターパッドを切断しない。しかし、ミシン目カットの場合には、加工カッター71はメディア5を貫通し、第1溝13aに嵌め込まれたカッターパッドを切断する。そのため、ミシン目カットでは、加工カッター71の劣化が連続カットよりも著しい。本実施形態では、カットデータ内のカット線のうち主走査方向Yに延びるものの一部または全部をシートカッター100Aによって切断する。そのため、加工カッター71の劣化が著しいミシン目カットに加工カッター71を使用する頻度を低減することができ、その結果、加工カッター71の交換頻度を低減することができる。
[第1変形例]
上記した実施形態は、いくつかの変形例によっても実施できる。第1変形例では、メディアの幅方向の両端部のミシン目が切れるのを抑制するため、両端部を切り残すようにミシン目を形成する。なお、以下の第1変形例の説明では、上記した実施形態と共通の機能を奏する部材には上記した実施形態と共通の符号を用いるものとする。また、重複する説明は適宜省略または簡潔化する。他の変形例についても同様である。
図17は、第1変形例に係るミシン目カット終了後のメディア5を模式的に示す平面図である。図17に示すように、本変形例では、切断部C5の切断長さはメディア5の領域によって変更されない。図17に示す例では、ユーザーがミシン目をちぎりやすいように、切断長さは、粗目カットのときの切断長さL2に設定されている。ただし、切断長さはL2に限定されるわけではない。
本変形例では、断続切断制御部212は、刃部101がメディア5の主走査方向Yの両端部以外の場所を貫通するように最初の貫通ステップを行い、メディア5の主走査方向Yの両端部以外の場所で終了するように最後の切断ステップを行う。そのため、図17に示すように、本変形例に係るプリンタ10によってミシン目カットしたメディア5では、主走査方向Yに関するメディア5の両端部は非切断部となっている。このような制御によっても、メディア5の幅方向(主走査方向Y)の両端部のミシン目が切れ、そこからメディア5がめくれる不具合を抑制することができる。このような両端の切り残し制御が可能なシートカッターユニット100の位置精度が安価または容易に実現可能であれば、本変形例のような方式を採用してもよい。しかし、かかるシートカッターユニット100の位置精度を安価または容易に実現するのが難しければ、例えば、最初の実施形態のような方式を採用してもよい。なお、本変形例の制御と最初の実施形態における制御とが組み合わせられてもよい。例えば、端領域では、メディア5の主走査方向Yの両端を切り残す細目カットが行われ、中央領域では、粗目カットが行われてもよい。
[第2変形例]
第2変形例では、プリンタ10は、シートカッター100Aおよび加工カッター71の両方によってメディア5のシートカットを行う。図18は、第2変形例に係るプリンタ10のブロック図である。図18に示すように、本変形例に係る制御装置200は、ハーフカット制御部230を備えている。ハーフカット制御部230は、加工カッター保持装置72およびヘッド移動装置40を制御する。ハーフカット制御部230は、加工カッター保持装置72を制御して、上下方向Zに関してメディア5の一部を切断可能な位置に加工カッター71を移動させる接近ステップと、接近ステップの後に、ヘッド移動装置40を制御して、少なくともメディア5の主走査方向Yの一方の端部から他方の端部まで加工カッター保持装置72を移動させる部分切断ステップと、を実行するように設定されている。メディア5の一部を切断するような加工カッター71の上下方向Zの位置は、例えば、シール材の剥離紙のみを切断し台紙を切断しないような位置であってもよい。ただし、加工カッター71の上下方向Zの位置は特に限定されない。かかるハーフカット制御部230の制御により、メディア5の上方の一部だけが主走査方向Yに切断される。断続切断制御部212は、ハーフカット制御部230によって部分切断ステップが実行された線に沿ってミシン目カットを実行するように設定されている。上記した線上では、メディア5の切断されていない部分の厚さは、メディア5の本来の厚さよりも薄い。そのため、シートカッター100Aでメディア5を貫通および切断することがより容易にできる。
なお、本変形例では、メディア5の部分切断は、加工カッター71によって行われたが、シートカッター100Aによって行われてもよい。すなわち、まずシートカッター100Aによりメディア5の上方の一部だけを主走査方向Yに切断し、その後で、シートカッター100Aにより同一線上をミシン目カットしてもよい。
[第3変形例]
第3変形例では、プリンタ10は、メディア5の主走査方向Yの幅に応じてミシン目の切断長さを設定する。図19は、第3変形例に係るプリンタ10のブロック図である。図19に示すように、本変形例に係る制御装置200は、メディア幅設定部240と、切断長さ設定部250と、を備えている。メディア幅設定部240は、メディア5の主走査方向Yの長さを設定可能に構成されている。例えば、メディア幅設定部240は、幅の異なる複数種類のメディアの中から使用するメディア5を選択するように構成されていてもよい。ただし、メディア幅設定部240によってメディア5の主走査方向Yの長さを設定する方法は限定されない。
切断長さ設定部250は、メディア5の主走査方向Yの長さに応じて、ミシン目カットの切断長さを設定するように構成されている。詳しくは、切断長さ設定部250は、メディア5の主走査方向Yの長さが短いほど1回の切断長さを短く設定するように構成されている。例えば、切断長さ設定部250は、メディア5の主走査方向Yの長さに比例するように、ミシン目カットの切断長さを設定してもよい。または、切断長さ設定部250は、登録された複数種類のメディア5にそれぞれ対応する切断長さを予め記憶していてもよい。切断長さ設定部250による切断長さの設定方法は、メディア5の主走査方向Yの長さが短いほど1回の切断長さを短く設定する限りにおいて限定されない。
本変形例に係るプリンタ10によれば、主走査方向Yの幅が狭いメディア5においても、主走査方向Yの幅が広いメディア5と比べて、非切断部の数があまり変わらないか、または変わらないようにすることができる。メディア5の主走査方向Yの長さによってミシン目カットの切断長さが変わらないプリンタの場合には、主走査方向Yの幅が狭いメディア5では、主走査方向Yの幅が広いメディア5と比べて、非切断部の数が減少する。そのため、主走査方向Yの幅が狭いメディア5は、主走査方向Yの幅が広いメディア5と比べてミシン目が切れやすくなる。しかし、本実施形態に係るプリンタ10によれば、メディア5の主走査方向Yの長さによらず、ミシン目の切れやすさを同等とすることができる。
特に、巻取ローラ90でメディア5を巻き取る場合には、メディア5の幅に関わらずメディア5には同じ張力が掛かる。そのため、メディア5の幅によってミシン目カットの切断長さが変わらないプリンタの場合には、幅の狭いメディア5ほど、巻き取り時にミシン目が切れやすい。本変形例に係るプリンタ10によれば、メディア5の主走査方向Yの幅によるかかる差異を抑制することができる。
以上、いくつかの好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。
例えば、上記した実施形態では、シートカッターを備える装置はカッティングヘッド付きプリンタであったが、それには限定されない。シートカッターを備える装置は、シート状のメディアに対して何らかの加工を行う加工装置であればよい。加工装置は、例えば、シート状のメディアに印刷を行うプリントヘッドを備えるとともにカッティングヘッドを備えないプリンタや、シート状のメディアを切断するカッティングヘッドを備えるとともにプリントヘッドを備えないカット機などであってもよい。加工装置がカッティングヘッド付きプリンタである場合でも、その構成は、実施形態に示したようなものには限定されない。
上記した実施形態に係る加工装置は、加工後のメディアを巻き取る巻取ローラを備えていたが、加工装置は巻取ローラを備えるものには限定されない。また、加工装置は、ロール状に捲回されたメディアに対して加工を行うものには限定されない。
上記した実施形態では、シートカッターユニットを切断方向に移動させるカッター移動装置は加工ヘッドを移動させるヘッド移動装置であったが、それには限定されない。加工装置は、加工ヘッドを移動させるヘッド移動装置とは別に、シートカッターユニットを切断方向に移動させるカッター移動装置を備えていてもよい。
上記した実施形態では、シートカッターユニットは、アクチュエータとホルダとに接続されアクチュエータの駆動力をホルダに伝達するリンク部材を備えていたが、リンク部材を備えなくてもよい。シートカッターユニットは、シートカッターを保持して接近離反方向に移動させることにより、シートカッターの刃部を支持台に支持されたメディアに接触させ、または離反させるシートカッター保持装置を備えていればよく、それ以上限定されない。例えば、シートカッター保持装置は、アクチュエータで直接にホルダを動かす構成であってもよい。
シートカッターユニットがリンク部材を備える場合であっても、アクチュエータおよびリンク部材の構成は、上記した実施形態に示したものに限定されない。例えば、上記した実施形態では、アクチュエータのロッドの伸縮方向とシートカッターの移動方向とは逆であったが、アクチュエータのロッドの伸縮方向とシートカッターの移動方向とは同じ方向でもよい。または、アクチュエータのロッドの伸縮方向とシートカッターの移動方向とは、0度でも180度でもない他の角度だけずれていてもよい。アクチュエータの駆動方式は電磁式には限定されず、例えば、エア駆動方式でもよい。リンク部材は、シートカッターのストロークがロッドのストローク以下となるように構成されていてもよい。その場合、シートカッターの推力はアクチュエータの軸力以上となり、シートカッターのメディアへの貫通に関しては有利に作用する。
シートカッター保持装置のその他の部材の構成も特に限定されない。また、実施形態に示したシートカッター保持装置の構成部材が必ずしも必要なわけではない。
実施形態に示したシートカッターユニットの制御は一例であり、シートカッターユニットの制御はそれに限定されない。シートカッターユニットの動作制御は、最低限、シートカッターを接近離反方向に移動させることと、シートカッターユニットを切断方向に移動させることとを組み合わせてメディアを切断することができればよく、それ以上は任意の制御である。なお、上記したように「切断」とは、ミシン目カットでも連続カットでもよい。また、「切断」は、メディアを貫通するものでもよく、メディアを貫通しないものであってもよい。
その他、ここに記載された実施形態は、特に断らない限り、本発明を限定しない。