JP7038388B2 - 医療システム及びそれを実行する方法 - Google Patents
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Description
そのような技術では、医療施設へ通うのが困難な過疎地や遠隔地に居住する患者の治療が可能である。また、プライバシーの関係で「治療を行っている」という事実を出来る限り秘匿したいという要請を有し、専門医師或いは専門家による治療を望まない患者であっても受診率を向上することが可能である。
CBT(認知行動療法)は、身体疾患および精神疾患への汎用性が高く、その治療効果が注目されている。CBT、特にプロセスベースドCBT(プロセスに基づく認知行動療法)では、当該疾患に特徴的な症状の有無のみに着目するのではなく、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解していくことが重要である。そのためには、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメント(評定)すること、さらには当該疾患に特徴的な症状に対しても、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントすることが不可欠である。上記のような個別のアセスメントに基づくことで、その患者に最適な治療を実施することが可能となるが、従来技術(例えば特許文献1、2)では、係るアセスメントは行われていない。
制御装置(1)として機能するサーバー(10)と、
患者に使用される情報処理用端末(3)を有し、
前記サーバー(10)は、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A1:診断横断的アセスメントパート)、及び/又は、当該疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A2:疾患特異的アセスメントパート)と、
前記ブロック(診断横断的アセスメントパート10A1及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2)のアセスメント(診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメント、及び/又は、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメント)の結果を分析して患者を特定の集団(スタック或いはグループ)に分類し、分類された集団と対応する(例えばリンク付けされた)治療モジュールを選択する機能を有するブロック(10B:モジュール選択パート)を有することを特徴としている。
本発明のシステムでは、診断横断的な部分と疾患特異的な部分とを併せ持つプラットフォームを構成していることが好ましい。
或いは、本発明のシステム(100)は、制御装置(1)として機能するサーバー(10)と、患者に使用される情報処理用端末(3)を有し、前記サーバー(10)は、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A1:診断横断的アセスメントパート)、及び/又は、当該疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A2:疾患特異的アセスメントパート)、または、
前記ブロック(診断横断的アセスメントパート10A1及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2)のアセスメント(診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメント、及び/又は、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメント)の結果を分析して患者を特定の集団(スタック或いはグループ)に分類し、分類された集団と対応する(リンク付けされた)治療モジュールを選択する機能を有するブロック(10B:モジュール選択パート)を有することを特徴としている。
そして、日常生活下データは、日常生活の中で様々な質問に答えてもらうことで収集する心理データや、心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データ、行動データを含んでいる。すなわち、日常生活下データは心理・行動・生理データを包含する。
また本発明のシステム(100)において、日常生活下データを取得する装置(例えばスマートフォン、パーソナルコンピュータ等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置)を備えていてもよい。
そして、医療機関側で使用される情報処理用端末(4)を備えることもできる。
本発明では、日常生活下データを活用して、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)における「心理的柔軟性」や「マインドフルネス」の程度を可視化することも出来る。
本発明の方法においては、上記に加えて、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする工程(S6:疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメント)を備え、
前記治療モジュールを選択する工程(S7~S9)では、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかの結果も分析して患者を特定の集団(スタック或いはグループ)に分類するのが好ましい。
本発明の実施に際して、例えば心因性EDの場合における特定の集団の分類(クラスタ分析)には、3つの指標「EDにおける心理学柔軟性」AFQ-ED、「パートナーとの性に関するコミュニケーション」SRQ、「全般的な心理的柔軟性」PFQを用いることができる。
また、所定期間(例えば2週間)毎に医師による診察(通院による診察、オンラインによる診察を含む)を行い、治療方針や治療に用いられる薬剤の処方等を決定することが出来る。当該診察に際して、改めてアセスメント(診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント)を実行し、クラスタ分析に基づく特定の集団への分類を行い、患者に提供するワーク等を新たに設定することが出来る。改めて実行されたアセスメントの結果は、医師による診察において活用することも可能である。ここで、医師による診察、新たに設定された治療方針、薬剤の処方等については、記録される。
患者が属する特定の集団(例えばクラスタ1)を変更せず、日常生活下データ、EMAの変化に対応して、治療方針、処方、ワーク内容等を変更することも出来る。
新たなワークを提供することにより、それぞれの患者にとって最適な治療を提供することが可能である。
さらに、疾患特異的アセスメントにより、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントすることが可能となる。これらのアセスメントに基づくことで、その患者に最適な治療モジュールを提供することが出来る。特に、疾患を特定して治療するだけでは改善しない事例に対して、極めて効果的な医療(治療、診断、予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見等)を提供することが出来る。
ここで本発明では、「結果」ではなく、「プロセス」に着目する。例えば、心因性EDの患者であれば、「勃起しない」という症状(ここでの「結果」)が改善したか否かよりも、当該患者の心理的「プロセス」の段階が進み、心の使い方が向上したか否かに着目する。心理的プロセスの段階が進み、心の使い方が向上すれば、新しい行動パターンの獲得、学習が行われたことになり、上述の心因性EDの患者であれば、「勃起しなくとも大丈夫」、「パートナーとの付き合いは性行為が全てではない」というように考え方の幅が広がり、その結果、心因性EDの改善・治癒や生活の質が向上する。
そして本発明によれば、複数の合併する疾患症状/状態でのアセスメントも可能であり、最適な診断横断的治療法を提案或いは提供することが出来る。例えば、心因性EDのアプリにおいて、抑うつ、不安、糖尿等の合併傾向もアセスメントの結果から分析することが出来る。或いは、複数の不定愁訴から更年期障害のアセスメントが出来る。
また、幹細胞を用いた再生医療や幹細胞の上清を用いた治療と、本発明の治療用アプリとを組み合わせ、併用することで、より高い治療効果が期待できる。
それに加えて本発明によれば、量的測定指標や客観的なモニタリング手法、クラスタ分析を用いることが出来るので、第三者に対してプログラムのアルゴリズムを明確に説明することが可能であり、実際の結果による証拠とすることが容易である。そのため、各種承認に際して提出するべき必要な資料(客観的な証拠データや、それに用いられたシステムの説明等)の作製が容易である。
そして、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること(アドヒアランス)が確立し、治療効果の向上を図ることが出来る。
上述した様な作用効果を奏する本発明によれば、治療のパーソナライズ化を図ることが可能である。
サーバー10の詳細は図2を参照して後述するが、図1における制御装置1は、図2における各種パートを包括的に表示した機能ブロックである。
ここで「患者」なる文言は、心因性ED等に罹患している可能性が有ることを自ら認識しており、且つ、その治療を行う意思のある個人を意味している。換言すれば、「患者」なる文言は、医療機関において医師、その他の関係者の指導により当該治療を行っている者のみに限定される訳ではなく、第三者が見れば「健常」と判断されるような者も包含し得る。
医療機関側の情報処理端末4は、情報処理機能及び通信機能を有する電子装置(例えばPC)を利用することが出来るが、スマートフォンを利用することも可能である。
そのような専用アプリをインストールする場合には、患者側の情報処理用端末3とネットワーク20とを接続する情報伝達ライン3L(有線或いは無線の場合が存在する)は、サーバー10にアクセスするためのアクセスラインであり、且つ、情報処理用端末3で計測した患者の日常生活下データをサーバー10に送信するための情報伝達ラインでもある。
図1には示されていないが、複数の患者側の情報処理端末3及び複数の医療機関側の情報処理端末4をネットワーク10に接続することも出来る。
また、図1ではデータベース10Fは制御装置1と共にサーバー10に内蔵されている。ただし、データベース10Fをサーバー10とは別個に構成し、ネットワーク20を介してサーバー10に接続することも可能である。
図示はされていないが、上述のビックデータを活用して得られた知見、情報をAI(人工知能)のアルゴリズム構築に取り入れ、AIを用いた医療用アプリに発展させることも可能である。
図示の実施形態では、診断用アプリ(アセスメントモジュール)と治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)が一体に表現されているが、診断用アプリ(アセスメントモジュール)と治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)を別体に構成し、診断用アプリ(アセスメントモジュール)のアセスメント結果に対して、治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)が処方する(医師が処方する場合も含む)様に構成することが出来る。
図2において、サーバー10(図2では破線で示す)は、アセスメントパート10A、モジュール選択パート10B、治療モジュールパート10C、評価パート10D及びログイン・認証パート10Hを有している。明確には図示されていないが、図示の実施形態では、診断横断的アセスメントパート10A1と、疾患特異的アセスメントパート10A2とを併せ持つプラットフォームを構成している。
また図2において、情報伝達ラインSL1・・・は、有線のみならず、無線の場合もある。
明確に図示はされていないが、サーバー10において、患者への成りすまし防止等のセキュリティ対策は、例えば公知技術を用いて実行されている。そして、係るセキュリティ対策は、図示の実施形態ではログイン・認証パート10Hに施されており、患者への成りすまし、その他の不正行為に対してシステム100を保護している。アクセスしてきた者が患者に成りすました偽者の場合には、ログイン・認証パート10Hで当該アクセスを遮断し、質問パート10A以降への情報伝達を遮断する。
明確には図示されていないが、ログイン認証に際して、IDとパスワード入力の他に、例えば患者側の情報処理端末3がスマートフォンやPCであればそのカメラ等を用いて、患者の顔、音声(声紋)、網膜、虹彩等を患者本人固有の生体情報を撮影(取得)して、当該生体情報を用いて本人認証を行い、以て、所謂「成りすまし」やアカウントの譲渡を防止することが出来て、患者から入力或いは取得されるデータの信頼性を確保することが出来る。ここで、上述した様な生体情報の取得はログイン時のみならず、患者のデータを入力(取得)する際であれば可能である。
アクセスしてきた患者の質問パート10Qにおける入力や回答に基づき、特定の疾患が顕在しているか否かの判断や、リスクファクターの有無についての判断が可能になり、アセスメントパート10A1、10A2におけるアセスメントに役立てることが出来る。
診断横断的アセスメントパート10A1は、患者側の情報処理用端末3(日常生活下データを取得する装置)により取得された日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有しており、量的測定指標を用いてアセスメントを行う。例えば、適応的な行動として、
不快な思考や感情を回避しないで、そのままにしておく「アクセプタンス」、
考えと現実を区別して、不快な思考や感情にのみ込まれない「脱フュージョン」、
目の前の現実への気づきを保持する「今、この瞬間との接触」、
俯瞰的な視点から、自分自身が気づいていることに気づく「視点としての自己」、
生きたい「生き方」を明確にする「価値の明確化」、
生きたい「生き方」を追求する「コミットメント」等を想定している。
心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動をアセスメントすることにより、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性をアセスメントする。上述の6つの適応的な行動のアセスメントは、CBTの一つであるアクセプタント&コミットメント・セラピー(ACT)に基づいて行われている。そして、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動が見られる対象者であれば、健康的であり、生活の質が高く、ストレスが低く、各種疾患に対する抵抗力が高い状態にあると判断できる。
診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメント結果は、情報伝達ラインSL5を介して、モジュール選択パート10Bに送信される。
診断横断的アセスメントパート10A1で、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解することは、図示の実施形態における重要な特徴の一つであり、従来の各種治療用アプリケーション(例えば特許文献1、特許文献2参照)と明確に相違している点である。
疾患特異的アセスメントパート10A2は、対象者(アクセスしたユーザー)が、当該疾患に特徴的な症状に対して、どの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有しており、量的測定指標を用いてアセスメントを行う。例えば、非適応的な行動として、
性行為に失敗するのではないかと考え始める「予期不安」、
性行為中に勃起を維持できなければ、“男”として終わっていると感じる「自己概念」、
勃起を維持できるのかが気になり、性行為に集中できない「注意制御」、
パートナーからの評価が気になり、関係性が上手くいかない「対人関係」、
性行為を試みようとしない「回避行動」等を想定している。
また、うつ病の場合であれば、非適応的な行動として、
非活動的であり、活動の幅が狭まっている「不活性」
過去の嫌な出来事を繰り返し何度も考える「反芻」
物事を極端に考え、少しのミスで全否定する等「認知の偏り」
他人と関わらないようにしている「社会機能の障害」等を想定している。
ここで、質問パート10Qにおけるインテーク情報や問診の結果、対象者には特定の疾患の兆候が無い場合(例えば健常者である場合)は、図示の実施形態では疾患特異的アセスメントは行われない。その様な場合は、診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメントが終了した対象者の情報は、診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメントの結果と共に、情報伝達ラインSL5を介して、疾患特異的アセスメントパート10A2をバイパスして、モジュール選択パート10Bに送信される。また、質問パート10Qにおけるインテーク情報や問診の結果、対象者が健常者であることが判明した場合には、診断横断的アセスメントパート10A1でアセスメントすることなく、対象者を健常者に相当するクラスタに分類することが可能である。
また、上述の例では、診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2のそれぞれについてクラスタ分析を行っているが、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果及び疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果を統合して、クラスタ分析を行っても良い。
そして、モジュール選択パート10Bは、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果から、患者が分類されたクラスタに基づいて、治療モジュールを選択する。
なお、上述した例ではクラスタ数は4つであるが、実際のクラスタ分析では、データ分析及び治療用アプリのカスタマイズ化により、クラスタ数は1000以上になることが想定されている。
モジュール選択パート10Bで選択された治療モジュールは、情報伝達ラインSL6により治療モジュールパート10Cに送信される。
ただし、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、Tipsについて、介入の記録としてシステム100側で記録されないので、適切な評価が出来なくなる可能性を防止するため、図示はされていないが、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、Tipsについてシステム100側に送信する機能を有する様に構成することが可能である。
ここで、患者が心因性EDである場合に、上述した様なワークの一例として、例えば、公知の陰圧式勃起補助具(VCD)を用いたワークがある。当該ワークはパートナー(配偶者等)と実践することが好ましく、性交が可能な程度に勃起した事実、性交が上手くできた事実は患者の自信の回復に好影響を及ぼす。
治療モジュールパート10Cで実行する治療モジュールは、診断横断的な介入では、「心理的柔軟性」のアセスメントの結果に対して、健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。例えば、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントにおいて、クラスタ1(「アクセプタンス」、「脱フュージョン」の得点が平均的な水準より低い)に分類された患者であれば、「シロクマのエクササイズ」等を実施する。「シロクマのエクササイズ」とは、シロクマのことを一定時間考えないでおこうとすることで、不快な思考や感情を避けようとすることの不機能性を理解することを目的とする。クラスタ2(「今、この瞬間との接触」、「視点としての自己」の得点が平均的な水準より低い)に分類された患者であれば、「注意訓練」等を実施する。「注意訓練」とは、複数の音に様々な方法で注意を向ける練習を通して、注意の柔軟性を身につけ、自己注目的な認知処理から解放することを目的とする。これらの治療モジュールを実行することで、当該クラスタに含まれる適応的な行動が促進されることが期待できる。なお、本明細書において、心理療法の実行を、患者に対する介入と表現する場合がある。
治療モジュールパート10Cにおいて、「仮想現実」を用いた治療モジュールの提供が可能である。例えば、不安症の患者の場合であれば、仮想現実により「電車に乗る」という体験(仮想現実上の体験)をさせることが出来る。
図示の実施形態では、診断横断的な介入が疾患特異的な介入に優先する。ただし、それに限定されない場合も存在する。
治療モジュールパート10Cで実行した治療モジュールと治療結果は、情報伝達ラインSL8により評価パート10Dに送信される。ホームワーク及びその達成状況についても、評価パート10Dに送信される場合もある。
ここで、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得して、記録し、治療前後の効果測定の結果をレポート形式にすることが可能である。そして評価パート10Dは、患者(或いは医師)に対してその様なフィードバックを実行する機能を有することが可能である。
評価パート10Dによる治療効果の評価結果は、情報伝達ラインSL9により患者側の情報端末3に送信される。例えば治療モジュールとしてチャットボットを用いた場合に、チャットボットによる治療効果の評価が患者に表示される。
患者に送信される評価内容には、例えば、症状を改善するための助言等が含まれる。
回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置を設けることにより、回答の精度や回答者の状態を客観的にモニタリングすることが出来る。回答者の状態としてモニタリングする事項としては、例えば、回答者である患者が測定指標をいい加減に入力していないか、「改善された」という結果を得るために偽りの入力をしていないか、測定指標を入力することでストレスが掛かっていないか、深く考え込んでいるかどうか、患者の反応性、患者の認知機能等である。この様なモニタリングにより、クラスタ分析の際の要因として取り入れることが出来る。
さらに、匂いセンサー、脳波センサー、脳血流センサー等のデバイスを装着して回答者の客観的な情報を取得することが可能である。それにより、回答者の心身の状態を計測して、クラスタ分析の際の要因とすることも可能になる。そして、例えば脳波や脳血流等を測定するヘッドセット状のデバイス等を装着すれば治療の実感が高まり、治療効果がさらに向上する。
また、ログイン・認証パート10Hは、情報伝達ラインSL12を介して治療モジュールパート10Cに接続しており、情報伝達ラインSL13を介して評価パート10Dに接続している。患者(対象者)からの2回目以降のアクセスでは、図7を参照して後述するように、先ず治療モジュールパート10Cにアクセスして治療モジュールを実行する場合と、評価パート10Dにアクセスして改善しているか否かを確認する場合の双方が存在するからである。
診断横断的アセスメントパート10A1と、疾患特異的アセスメントパート10A2とを併せ持つプラットフォームを構成する図示の実施形態では、モジュール選択パート10Bでは、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて幾つかの治療モジュールを選択すると共に、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて幾つかの治療モジュールを選択する。換言すれば、診断横断的アセスメントパート10A1と疾患特異的アセスメントパート10A2の各々のアセスメントの結果に基づいて、複数の治療モジュールがモジュール選択パート10Bにおいて選択される。
診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果は情報伝達ラインSL5を介して、モジュール選択パート10Bの分析ブロック10B1に送信される。そして疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果は情報伝達ラインSL4を介して、分析ブロック10B1に送信される。
分析ブロック10B1では、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果及び疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果の各々についてクラスタ分析を行う機能を有している。
分類ブロック10B2では、患者の診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて当該患者が所定のクラスタに分類される。同様に、患者の疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて当該患者が所定のクラスタに分類される。
クラスタと、当該クラスタに有効な治療モジュールとをリンク付ける情報が、記憶装置40に記憶されている。当該「リンク付ける情報」は、クラスタと、クラスタに有効な治療モジュールとを関連付ける図表であっても良いし、関数であっても良い。
リンク付けブロック10B3には、情報伝達ラインSL30を介して、前記「リンク付ける情報」が伝達され、分類ブロック10B2で分類されたクラスタに対して有効な治療モジュールが決定される。換言すれば、リンク付けブロック10B3は、「リンク付ける情報」により、患者が分類されたクラスタに対して有効な治療モジュールを決定する機能を有している。
診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールは情報伝達ラインSL61を介して治療モジュールパート10Cに送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールは情報伝達ラインSL62を介して治療モジュールパート10Cに送信される。その結果、患者には、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールの双方が提案可能である。換言すれば、診断横断的な介入と疾患特異的な介入の双方が可能である。
ここで、クラスタ分析が統計学的手法として例示されているが、患者(対象者)を正確に分類して、適切な治療モジュールとリンク付けできるのであれば、クラスタ分析以外の統計学的手法を採用することが出来る。
例えば図3において、質問パート10Qにおける問診、入力の結果、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果等が入力される優先順位決定ブロック10Rを設け、優先順位決定ブロック10Rは入力された情報から、患者に対して、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを優先的に提示するべきか、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを優先的に提示するべきか、双方を同時に提示するべきかを判断する機能を有している。それと共に、優先順位決定ブロック10Rは、情報伝達ラインSL32を介してモジュール選択パート10Bのインターフェース10BIFに制御信号を送信して、患者側情報端末3に対して、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを送信するか、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを送信するか、双方を同時に送信するかを制御する機能を有している。
その結果、患者に対して、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントに基づく治療モジュールのみを提示するか、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールの双方が提示するか、双方同時に患者側情報端末3に提示するかを適宜設定することが出来る。
例えば、システム100を利用している患者の日常下データを取得して、直ちに治療用アプリを起動して、日常下データに基づいてリアルタイムにアセスメントを行うことが出来る。そして、係るリアルタイムで行われたアセスメントの結果として、直ちに介入すること(リアルタイム介入)も可能である。
慢性疼痛の患者であれば、その患者が「ピクニックのお誘いメール」を受信したことを検出して、治療用アプリを起動し、必要なアセスメントを実行し、システム100側からメッセージを送信し、或いは当該患者に必要な治療モジュールの実行を促す内容のメッセージを送信することが出来る。
どの様なタイミングで患者に問題が起こっているのか?
について、日常生活下データその他の患者のデータから治療者にフィードバックすることで、例えば、
患者に問題が生じるのは朝昼夜の何れか?
或いは、所定のケースで患者に問題が生じるのか?
を決定することが出来る。すなわち、図示の実施形態に係るシステムで自動的に収集したデータの解析を進めることにより、患者に問題が生じるタイミング、換言すれば患者が最も治療用アプリを必要とするタイミング、を決定することが出来る。
係るレスキュー的な措置や機能として、例えば患者がEDである場合に、前述したようなパートナーからの連絡があったがPDE5阻害剤が患者の手元に無い場合に、必要なPDE5阻害剤を処方する医師の連絡先電話番号を表示することが考えられる。
そして、患者側の情報処理端末3にレスキューボタンを設置し、患者がレスキューボタンを操作することにより、上述した様な事態が生じた場合に直ちに治療用アプリ側から必要な治療モジュールやエクササイズ、情報等が患者に提示される。患者がEDであり、パートナーからの連絡があったがPDE5阻害剤が患者の手元に無い場合に、治療モジュールの中であらかじめ考えていた対策(本人が設定していた対策)をポップアップさせることが考えられる。
そして、患者側の情報処理端末3にレスキューボタンを設置し、患者がレスキューボタンを操作することにより、上述した様な事態が生じた場合に直ちに治療用アプリ側から必要な治療モジュールやエクササイズ、情報等が患者に提示される。患者がEDであり、パートナーからの連絡があったがPDE5阻害剤が患者の手元に無い場合に、この様な状態では患者は「パートナーに嫌われたらどうしよう」、「性行為が失敗したらどうしよう」という不安により、いわゆる「思考に飲み込まれた状態」に陥っている。
図示の実施形態において、治療モジュールやエクササイズが患者に送信され、患者が「性行為だけが全てではない」、「単純にパートナーと会うことを楽しめば良い」という様にも考えることができるようになれば、不安で「思考に飲み込まれた状態」から患者が抜け出すことが出来る。
これ等の機能を発揮することにより、患者がシステム100にアクセスして治療モジュールを実行し続けたいという継続使用の意欲を高めて、治療途中でシステム100にアクセスしなくなる(治療途中で脱落する)事態を抑制し、システム100による治療効果(或いは治療用アプリの効果)を向上することが出来る。
また、日常生活下データから、心拍安定時、患者が暇な時等にリマインド通知を発信することが出来る。
さらに、患者側の情報処理端末3(例えばスマートフォン)の起動後(復帰後)は当該患者がスマートフォンに触れている可能性が高いので、その際にリマインド通知を発信することが出来る。
係るコンテンツとしては、疾患教育、治療法教育に係るコンテンツ等(例えば、ACTとは何かを説明するコンテンツ)がある。
或いはパートナーのSNSアプリ(例えば、LINE株式会社の情報サービスである「LINE(登録商標)」等)に当該患者がアクセスすると、リマインド通知が発信される。
さらに、患者が利用しているスマートフォンのその他のSNSアプリ(例えば、Google LLC.の動画共有サービスである「YouTube(登録商標)」等)の起動状況から、それにリンクしてリマインド通知を発信することが出来る。
例えば、患者がEDであると糖尿病は併発する恐れがある。図示の実施形態において、当該患者の血糖値を日常的に計測して、所定値以上となった場合にアラートを発生することにより、患者に危機感を与え、治療継続の意欲を高めることが出来る。上述した様に、図示の実施形態では診断横断的アセスメントを実行するので、上述した様に複数の疾病(糖尿病、動脈硬化、その他)が関連する場合に有効である。
また、治療用アプリに対して患者が敬意を持つことは、そのアプリを継続すること寄与する。そのため、図示の実施形態に係る治療用アプリのデザイン等については、周囲の人からそれと悟られないようにすることが好適である。例えば、心因性EDの患者が治療用アプリを実行している最中に、第三者に見られたとしても、当該患者が恥ずかしい思いをしない様に、(ED治療用アプリを実行しているのだが)傍から見るとビジネスのためにスマホを見ている様に見える等の工夫がされたデザインであるのが好ましい。その様なデザイン等であれば、「(治療用アプリを実行していることが他人に知られてしまうと)恥ずかしい」という理由で患者が治療用アプリを続けられなくなるという問題が解消される。そして、例えばEDの治療を自宅以外の隙間時間でも実行できるので、患者が治療用アプリを用いた治療を継続し易くなる。
また、システム100にアクセスした患者に対して、治療に関連する或いは治療に役立つ動画や音楽、音声、その他のコンテンツ(例えばマインドフルネス瞑想)を順次視聴させるコンテンツ(Tips)を提供する機能を有する装置を設けることが出来る。係るコンテンツは、例えば、マインドフルネス瞑想、香り、音楽、映像、振動、好ましい食品/食事の情報等であり、五感を使うことにより治療効果とその持続、満足度を表す指標であるQOLの向上をもたらす。
ここで、治療用アプリを実行するに際して、患者のパートナーである女性と一緒に行うワーク、パートナーと一緒に観るコンテンツは、パートナー(女性)の意識向上とED治療への理解と搬送を促すので、好適である。
さらに、得られるフィードバッグについて患者が意義を感じる様にして、目標に向かって取り組んだことに対するフィードバッグを行えば、患者が治療用アプリを継続する意欲を向上することが出来る。
ここで、図示の実施形態では、「結果」ではなく、プロセスに着目している。心因性EDの患者であれば、例えば、「勃起する、勃起しない」の症状が改善したか否かよりも、当該患者の心理的プロセスの段階が進み、心の使い方が向上したか否かに着目する。心理的プロセスの段階が進み、心の使い方が向上すれば、新しい行動パターンの獲得、学習が行われたことになり、上述の心因性EDの患者であれば、「勃起しなくとも大丈夫」、「パートナーとの付き合いは性行為が全てではない」と考え方の幅を広げることが出来る。
制御ブロック3Aは、患者側の情報処理端末3における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック3Bは、患者側の情報処理端末3の使用者(患者)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック3Cは、使用者(患者)が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック3Dは既存の記憶用機器により構成され、患者側の情報処理端末3のために、符号3Fで示す患者用プログラムが記憶されている。明示されていないが、データベース10Fを記憶ブロック3Dとして用いることが可能である。通信ブロック3Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク20と接続する機能を有している。
患者側の情報処理端末3は、情報処理機能及び通信機能を有する電子機器であれば、特に限定はしない。ただし、昨今の普及を考慮すると、いわゆるスマートフォンの様な携帯型情報端末が好ましい。
制御ブロック4Aは、医療機関側の情報処理端末4における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック4Bは、医療機関側の情報処理端末4の使用者(医師、医療機関の関係者等)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック4Cは、医師、医療機関の関係者等が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック4Dは既存の記憶用機器で構成され、医療機関側の情報処理端末4のため、符号4Fで示す医療機関用プログラムが記憶されている。データベース10Fを記憶ブロック4Dとして用いることも可能である。通信ブロック4Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク20と接続する機能を有している。
この様なシステム外部のWebサイトと接続することにより、各種疾病の自助グループ(例えば薬物依存症患者のための自助グループ)に参加することと同等な効果を得ることが出来て、治療続行のためのモチベーションをあげることが出来る。
最初に図6を参照して、患者が初めてシステム100にアクセスする場合を説明する。
図6において、ステップS1では、患者側の情報処理端末3からシステム100に対してログインされたか否かを判断し、以て、患者がシステム100を利用するか否かを判断する。ステップS1において、患者側からログインがあった場合(ステップS1が「Yes」)はステップS2に進み、ログインがなければステップS1に戻る(ステップS1が「No」のループ)。
また、図示されてはいないが、ログイン認証に際して、IDとパスワード入力の他に、患者の顔、音声(声紋)、網膜、虹彩等を患者本人固有の生体情報を、例えば患者側の情報処理端末3がスマートフォンやPCであればそのカメラ等を用いて撮影(取得)して、当該生体情報を用いて本人認証を行うことが出来る。この様な生体情報の取得は、ログイン時のみならず、患者のデータを入力(取得)する際であれば可能である。係る生体情報を取得して患者本人の認証を行うにより、所謂「成りすまし」やアカウントの譲渡を防止することが出来て、患者から入力或いは取得されるデータの信頼性を確保することが出来る。
図6では明示されていないが、ステップS2で認証された患者は、ステップS3以降を実行することなく、直ちにステップS113(後述)に進むことが可能である。
ステップS4では、診断横断的アセスメントパート10A1により、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントして、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性をアセスメントする(診断横断的アセスメント)。図示の実施形態では、診断横断的アセスメントは疾患特異的アセスメントに優先して行われる。
一方、疾患特異的な兆候があれば(ステップS5がYes)、ステップS6に進む。
ステップS6では、疾患特異的アセスメントパート10A2により、特定の疾患について上述したスキルが発揮されるか否かをアセスメントする(疾患特異的アセスメント)。
ステップS6の疾患特異的アセスメントの後、ステップS7に進む。
ここで、ステップS3において健常者であると判断された場合には、直ちにステップS7に進み、健常者に該当するクラスタに分類することも可能である。
そしてステップS8では、分類ブロック10B2において、クラスタ分析の結果から、診断横断的アセスメントのクラスタ分析に基づいて患者を該当するクラスタに分類すると共に、疾患特異的アセスメントのクラスタ分析に基づいて患者を該当するクラスタに分類する。
診断横断的アセスメント或いは疾患特異的アセスメントにおいて、例えば心因性EDの場合には、従来9つの評価指標を用いていたが、発明者の研究の結果、心因性EDの場合におけるクラスタ分析は、3つの指標のみを用いて行うことが出来ることが判明した。当該3つの指標は「EDにおける心理学柔軟性」AFQ-ED、「パートナーとの性に関するコミュニケーション」SRQ、「全般的な心理的柔軟性」PFQである。
患者を該当するクラスタに分類したならば、リンク付けブロック10B3において、分類された患者のクラスタに対して有効な治療モジュールを(リンク付けて)決定する(ステップS9)。そしてステップS10に進む。
ステップS7~S9は、モジュール選択パート10Bにおいて実行される。
患者が、第1回目のアクセスとして治療モジュールの提示で満足するのであれば(ステップS10がYes)ログアウトして、当該患者について1回目のアクセスは終了する。当該患者が再度アクセスする(2回目以降のアクセスを行う)場合については、図7を参照して説明する。
患者が治療モジュールの提示のみならず、提示された治療モジュールの実行を求めるのであれば(ステップS10がNo)、治療モジュールパート10Cにより、モジュール選択パート10Bで選択された治療モジュールを実行する(ステップS11)。この実行の態様は、治療モジュールの内容により異なる。
実行後、ステップS10に戻る。
オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、Tipsについて、介入の記録としてシステム100側で記録されないため、適切な評価が出来なくなることを防止するために、オフラインで行われたエクササイズやワークアウトについてシステム100側に送信することが可能である。
治療モジュールを実行したならば(ステップS11)、診断横断的(心理的柔軟性)測定指標と疾患横断的測定指標、既存の評価尺度等により、介入の効果を測定する(ステップS111:評価)。介入の効果を測定した後、医師・患者に対してフィードバックする(ステップS112)。フィードバックに際しては、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得して、記録することが出来る。これにより介入前後の効果測定の結果をグラフ等によりレポート形式に表現して、医師・患者に対してフィードバックすることが可能である。そして、所定の回数や期間毎に、治療モジュールと、それによる変化(介入による評価指標の変化、日常生活下データの変化等)が理解できるような報告(レポート)を作成して、医師や患者に提示することが出来る。
係るメッセージを受信した患者は「自分のことを忘れていない」、「注目されている」という様な印象を持ち、係る印象は当該患者が治療用アプリを継続する意欲を高めることが出来る。
また、フィードバック(ステップS112)に際して、表情による感情認識AIを用いることにより、患者の感情やストレスの度合いを客観的に判断することが出来る。
さらに、脈拍センサー、体温センサー等を内蔵したイヤホンを患者が装着すれば、雑音で音声が聞こえない環境下であっても、日常性下データ、特に脈拍の様に音声、振動により検出される日常生活下データが取得できる。同様に、体温のデータも取得できる。フィードバックに際しては、その様に取得された脈拍データや体温データにより、患者の感情変化やストレスを判定することが可能である。
日常生活下データとして、例えば、患者の胸部にセンサーを貼り付けて心拍を測定し、自律神経機能のバランスを示すパラメーターであるLF/HF(低周波LFと高周波HFのパワーの比率:交感神経と副交感神経の全体のバランスを示す)を計算して、自律神経の状態を提示することが出来る。ここで、患者の胸部に貼り付けるセンサーとしては、公知、市販のものを使用することが出来る。当該センサーで測定されたデータは患者側の情報処理端末3にデータとして送信され、蓄積される。計測された心拍のデータから求めたLF/HFを、当該患者におけるLF/HFの傾向と比較することにより、当該時点における患者の自律神経のバランスに異常があるか否かを判定し、治療の効果を確認することが出来る。
また日常生活下データとして、ホルモン/ストレスレベルを計測して評価指標に用いることが出来る。例えば唾液中のコルチゾール、アミラーゼをセンサーで計測して、患者側の情報処理端末3にデータとして送信する。或いは、センサーによりドーパミンやセロトニンの血中濃度を計測して患者側の情報処理端末3に送信して、治療の効果の指標とすることが出来る。セロトニンについては、脳波測定器を用いてα波を特定することにより計測することも出来る。
ここで、日常生活下データとして、脳波に代えて脳血流を測定することが出来る。例えば、右前頭極の過活動が自己注目と関連するので、右前頭極の脳活動を、脳血流(NIRS)センサーにより計測して、予期不安や自己注目の指標とすることが可能であり、自意識過剰になっている状態をリアルタイムで検出することが可能である。
日常生活下データとして、ウェラブル機器等で取得することが出来る生理学的データであるデジタルバイオマーカーを取得し、蓄積することにより、疾患の発症予測や状態把握・管理等に利用し、アセスメントの精度を向上させることが可能である。そして、よりパーソナライズされた最適な治療法を提案/提供することが出来る。さらに、機械学習やAIを用いたアルゴリズム開発におけるビッグデータとなり得る。
このビックデータを活用し、例えばAIを用いることにより、疾病の予測が可能であり、当該予測に基づいて予防対策を構築することも出来る。そして、疾病罹患を予防するための介入が可能である。或いは、ビックデータをAIで分析し、その分析結果に基づいて、個々の患者の個性、疾病の程度等に合致した内容(個々の患者に合った内容)の治療用アプリ、すなわち、患者毎にカスタマイズされたアプリを提供することが可能になる。
なお、生態学的瞬間評価(EMA)の手法は、心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データにも適用される。
ここで、患者が音声により回答をした場合等において、AIにより患者の音声を解析、判断して、患者が治療に真剣に取り組んでいるか否かを判定し、或いは、患者の真剣さの度合い(患者の本気度)を判定することが可能である。
図示はされていないが、匂いセンサー、脳波センサー、脳血流センサー等のデバイスを装着し、当該センサーにより回答者の客観的な情報を取得し、回答者の心身の状態を計測して、クラスタ分析の際の要因とすることも可能である。
ステップS113の後、ログアウトする(ステップS114)。ログアウト後、実際に通院する際には、システム100における介入や評価の記録、取得された日常生活下データを(医師が)参照しつつ、医師による診察/面接が行われる。
ステップS1、S2は図6で説明したのと同様である。前述したように、ログイン・認証パート10Hは、例えば処方IDとパスワードを発行し、アクセスしてきた患者の本人確認を行う。図示はされていないが、例えば予め患者本人の同意を取り付けて、アクセスする回数や最初にアクセスしてからの期間(治療期間)を適宜設定して、設定した回数や期間を超えた場合には非アクティベートすることが可能である。非アクティベートしてシステム100へのアクセスが出来なくなったとしても、担当医師の指示により、患者は再度システム100にアクセスすることが可能である。
そしてステップS13に進み、図6で説明したステップS3、S4、S6(問診、診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント)を実行する。そして、ステップS14に進む。図示されていないが、ステップS2で認証された患者は、ステップS3以降を実行することなく、直ちにS113(ホームワーク、Tips)に進むことが可能である。
ステップS3において、については第1回目のアクセスの際と同様な内容になると予想されるので、入力を省略することが可能である。
評価パート10Dで改善したと判断された場合には(ステップS14がYes)、ステップS15に進む。
改善していないと判断された場合には(ステップS14がNo)、ステップS16に進む。ステップS16では、前回のアクセスの際に提示された治療モジュールを実行する。
図7では明示されていないが、図2を参照して説明したように、患者が直ちに治療モジュールの実行を望む場合には、ステップS2で認証された後、ステップS13、S14、S16を飛び越えて、直ちにステップS16に進むことが可能である。
或いは、ステップS13の診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメントに基づいて、モジュール選択パート10Bで新たに治療モジュールが提案される。
ステップS15(ステップS14がYesの場合)に、患者はシステム100からログアウトして、ステップS18に進む。
ステップS18では、例えば評価パート10Dにおいて、経過観察が必要か否かを判断する。その際、評価パート10Dでは、問診やインテーク、診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメントに基づいて、再発の可能性が判断される。そして、再発の可能性が有る場合(ステップS18がYes)、所定期間経過後、システム100側から患者側の情報端末にアクセスして、所定事項の問診等により経過観察が実行される(ステップS19)。
これ等により、患者の継続使用の意欲(システム100にアクセスして治療モジュールを実行し続けたいという意欲)を高めて、治療途中でシステム100にアクセスしなくなる(治療途中で脱落する)事態を抑制し、システム100による治療効果(或いは治療用アプリの効果)を向上する。
また図示の実施形態においては、サーバー10に対して、疾病に対応したカスタマイズ、患者側のアプリケーションに対応させるカスタマイズ等を行うことが可能である。カスタマイズの手法については、公知技術を適用可能である。
患者の治療・行動の記録を行うために、図示の実施形態では、例えば、患者側の情報処理端末3にカレンダー機能がインストルールされ、カレンダーの各日付に患者の服薬(治療)の記録や、行動記録(例えばED患者であれば性行為に関する記録)を記載できるように構成することが可能である。そして、カレンダーの各日付の記録を、医師がチェックすることが出来る。
患者が属する特定の集団(例えばクラスタ1)を変更せず、日常生活下データ、EMAの変化に対応して、治療方針、処方、ワーク内容等を変更することが出来る。
所定期間毎に医師による診察を行い、新たなワークを提供することにより、患者毎にパーソナライズされた治療を提供することが出来る。これにより、最適な治療を提供出来る。
なお、医師による診察、新たに設定された治療方針、薬剤の処方等については、データベース10F等に記録することが出来る。
そして、選択された治療モジュールを実行した後、評価尺度を適用して治療効果の評価を評価パート10Dにより実施し、評価結果を患者にフィードバックすると共に、治療効果について良好な評価がされない場合には、評価結果をモジュール選択パート10Bに送信し、モジュール選択パート10Bで新たな治療モジュールが選択される。例えば、疾患特異的アセスメントの結果に基づいて選択された治療モジュールには効果が低かった場合に、診断横断的アセスメントの結果に基づいて選択された治療モジュールを提案することが可能である。
ここで、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得し、記録して、介入前後の効果測定の結果をグラフ等によりレポート形式に表現して、医師・患者に対してフィードバックすることも可能である。
図示の実施形態のシステム100を適用することにより、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者が適応的に行動できていれば、血圧が安定し、血流が改善され、自律神経が調節されて免疫力が向上する。そのため、上述した様なサーバー10を有する実施形態のシステム100は、コロナウィルス等の感染症の予防に対しても適用可能である。
また、幹細胞を用いた再生医療や幹細胞の上清を用いた治療と、本発明の治療用アプリとを組み合わせ、併用することで、より高い治療効果が期待できる。
例えば、図示の実施形態では主として心因性ED治療を例示しているが、本発明は、配偶者またはパートナーとの関係性の問題、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、不妊症(男性、女性)、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱(尿失禁)、アンチエイジング、更年期障害、月経前症候群(PMS)、心因性視覚障害、歯科心身症、醜形恐怖症等に対して、またこれらの疾患が合併していても適用可能である。
そして図示の実施形態では、複数の合併する疾患症状/状態のアセスメントが可能であり、パーソナライズされた最適な診断横断的治療法を提案或いは提供することが出来る。例えば、心因性EDのアプリにおいて、抑うつ、不安、糖尿等の合併傾向もアセスメントすることが出来る。或いは、複数の不定愁訴から更年期障害のアセスメントが出来る。
3・・・患者側の情報処理端末(例えばスマートフォン)
4・・・医療機関側の情報処理端末(例えばPC)
10・・・サーバー
10A1・・・診断横断的アセスメントパート
10A2・・・疾患特異的アセスメントパート
10B・・・モジュール選択パート
10C・・・治療モジュールパート
10D・・・評価パート
10F・・・データベース
10H・・・ログイン・認証パート
100・・・システム
Claims (13)
- 制御装置として機能するサーバーと、
患者に使用される情報処理用端末を有し、
前記サーバーは、
心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック、及び/又は、特定の疾患に特徴的な症状に対しても患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロックを有し、
前記ブロックのアセスメントの結果を分析して患者を、認知行動療法の指標を含む複数の指標の統計処理の組み合わせから、行動に基づく複数の特定の集団に分類し、以て、心因性の疾患に関する行動特性を分類する機能を有することを特徴とするシステム。 - 分類された集団と対応する治療モジュールを選択し、選択された治療モジュールを前記患者に提供する機能を有するブロックを有する請求項1のシステム。
- 前記複数の指標はアセスメントを行った複数の指標の一部の指標を用いて特定の集団に分類する請求項2のシステム。
- 日常生活下データを取得する装置を備えている請求項1~3の何れか1項のシステム。
- 医療機関側で使用される情報処理用端末を備える請求項1~4の何れか1項のシステム。
- 幹細胞を用いた再生医療や幹細胞の培養上清を用いた治療と併用される請求項1~5の何れか1項のシステム。
- 配偶者またはパートナーとの関係性の問題、勃起障害、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、不妊症、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱、アンチエイジングに関する疾患、更年期障害、心因性視覚障害、歯科心身症、醜形恐怖症、月経前症候群の何れかの疾病の治療に適用される請求項1~6の何れか1項のシステム。
- 請求項1~7のいずれか1項のシステムに用いられるサーバー。
- 請求項1~7のいずれか1項のシステムに用いられるプログラム。
- 制御装置として機能するサーバーと、患者に使用される情報処理用端末を有し、前記サーバーは、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック、及び/又は、特定の疾患に特徴的な症状に対しても患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロックを有し、前記ブロックのアセスメントの結果を分析して患者を、認知行動療法の指標を含む複数の指標の統計処理の組み合わせから、行動に基づく複数の特定の集団に分類し、以て、心因性の疾患に関する行動特性を分類する機能を有するシステムを使用する方法において、
心理社会的問題、生活適応やストレスに対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする工程を有し、
前記アセスメントの結果を分析して患者を、認知行動療法の指標を含む複数の指標の統計処理の組み合わせから、行動に基づく複数の特定の集団に分類する心因性の疾患に関する行動特性を分類することを特徴とする方法。 - 前記システムは提供ブロックを含み、前記提供ブロックで、分類された集団と対応する治療モジュールを選択し、選択された治療モジュールを前記患者に提供する工程を含む請求項10の方法。
- 前記情報処理用端末は、心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、睡眠時間、睡眠の質、活動量、行動範囲、血糖値等の生理データの生態学的瞬間評価、および/または、匂いセンサー、脳波センサー、脳血流センサーのデバイスから得られた情報を前記サーバーに送信する機能を有する請求項1~7の何れか1項のシステム。
- 前記サーバーにより構成されるAIを利用して、音声の解析、疾病予測、アルゴリズム開発、患者毎のカスタマイズを行う請求項1~7の何れか1項のシステム。
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