JP7391443B1 - 医療・療法システムを統合するデータベース及びそれを実行する方法 - Google Patents

医療・療法システムを統合するデータベース及びそれを実行する方法 Download PDF

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Abstract

情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムによる治療・療法システム及び当該システムを用いた方法であって、複数の異なる治療用アプリで共通する評価データを利用する方法を提供する。共通する心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患の尺度の評価データを用いる、複数の異なる種類のアプリケーションプログラムと、前記複数の種類のアプリケーションプログラムから取得される共通する評価データを統合して利用可能とされたデータベースと、前記複数の種類のアプリケーションプログラムから取得された共通項目の統合された評価データと、前記複数の種類のアプリケーションプログラムから取得された非共通項目の評価データとを用いてデータの分析を行う分析ブロックと、を含むデータベースシステム。

Description

本発明は、情報処理端末(例えばスマートフォン)及び情報処理ネットワークシステム(例えばインターネット)を介して、医師(療法提供者等を含む)と患者やクライエント、ユーザ(利用者)等が直接面会することなく診断・治療・予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見、セルフケア等を行うための医療・療法技術に関する。
近年、情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムを介して、医師と患者が直接面会することなく治療を行うための技術(いわゆる「治療用アプリ」)が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
そのような技術では、日常における治療、あるいは医療施設へ通うのが困難な過疎地や遠隔地に居住する患者の治療が可能である。また、プライバシーの関係で「治療を行っている」という事実を出来る限り秘匿したいという要請を有し、専門医師或いは専門家による治療を望まない患者であっても受診率を向上することが可能である。
従来技術(例えば特許文献1)に係るシステムでは、特定の疾患に関して、全ての患者に対して同一の治療を行うことが基本であるが、心因性の疾患の場合、その症状をもたらす要因が、その患者に特有の認知・行動パターンに依存しているケースが多く、疾患に汎用的な治療を提供しても、十分な治療効果を得られないことが多い。
CBT(認知行動療法)は、身体疾患および心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患への汎用性が高く、その治療効果が注目されている。CBT、特にプロセスベースドCBT(プロセスに基づく認知行動療法)では、当該疾患に特徴的な症状の有無のみに着目するのではなく、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解していくことが重要である。そのためには、場合によっては、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメント(評定)すること、さらには当該疾患に特徴的な症状に対しても、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントすることが不可欠である。上記のような心理的なアセスメントを行うことで、その患者に最適な治療を実施することが可能となるが、従来技術(例えば特許文献1)では、係るアセスメントは行われていなかった。
また、従来の医療用アプリ(例えば特許文献2)では、アセスメントする際に用いる患者データを蓄積し、そのデータに基づいて、アセスメントによる患者のタイプ分けを最適化することを教示していが、その最適化のためには膨大なデータが必要となる。
特許第6339298号公報 特願2021-14216号広報
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムによる診断・治療・予防・セルフケア等を行う医療システム及び当該システムを統合したデータベースとその利用方法である。具体的には、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする診断横断的アセスメント、及び/又は、当該疾患に特徴的な症状に対しても患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする疾患特異的アセスメントの結果に基づいて、その患者に最適な医療を提供する(治療を実施する)システムと、それらに基づいたデータの統合と、データ解析の最適化を実行する方法の提供を目的としている。
(1)共通する心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態に基づいて、複数のあるいは診断横断的な尺度を用いる、複数の異なる種類のアプリケーションプログラムと、
前記複数の種類のアプリケーションプログラムから取得される共通する尺度の評価データを統合して利用可能とされたデータベースと、
前記複数の種類のアプリケーションプログラムから取得された共通項目の統合された評価データと、前記複数の種類のアプリケーションプログラムから取得された非共通項目の評価データとを用いてデータの分析を行う分析ブロックと、を含むデータベースシステム。
(2)前記複数の種類のアプリケーションプログラムがメンタルヘルスケアおよび/または心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患治療用のプログラムであり、前記共通項目が心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態に横断的な評価(及び日常生活下データ)に関する項目であり、前記非共通項目が特有の心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態の評価(及び特有の性疾患症状に対する日常生活下データ)に関する項目であることを特徴とする、心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態に関して用いられる(1)のデータベースシステム。
(3)前記分析ブロックは、前記アプリケーションプログラムからの入力に応じて、その利用者の心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態をもたらすタイプ分けを統計解析やAIを用いて行う機能を有する(1)または(2)のいずれかに記載のデータベースシステム。
(4)前記タイプ分けと処方されるワークの対応関係を示すリストを有し、前記リストが前記分析ブロックによって更新されることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載のデータベースシステム
(5)前記分析ブロックによって、前記タイプ分けのアルゴリズムが更新されることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のデータベースシステム
(6)前記共通項目が、認知行動療法に基づく評価指標の尺度の評価である、(1)ないし(5)のいずれかに記載のデータベースシステム。
(7) 本発明のシステム(100)は、
患者に使用される情報処理用端末(3)を有し、
前記サーバー(10)は、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A1:診断横断的アセスメントパート)、及び/又は、当該疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A2:疾患特異的アセスメントパート)と、
前記ブロック(診断横断的アセスメントパート10A1及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2)のアセスメント(診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメント、及び/又は、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメント)の結果を分析して患者を特定の集団(クラスタ或いはグループ)に分類し、分類された集団と対応する(例えばリンク付けされた)治療モジュールを選択する機能を有するブロック(10B:モジュール選択パート)を有することを特徴としている。
本発明のシステムでは、診断横断的な部分と疾患特異的な部分とを併せ持つプラットフォームを構成していることが好ましい。
或いは、本発明のシステム(100)は、制御装置(1)として機能するサーバー(10)と、患者に使用される情報処理用端末(3)を有し、前記サーバー(10)は、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A1:診断横断的アセスメントパート)、及び/又は、当該疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有するブロック(10A2:疾患特異的アセスメントパート)、または、
前記ブロック(診断横断的アセスメントパート10A1及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2)のアセスメント(診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメント、及び/又は、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメント)の結果を分析して患者を特定の集団(クラスタ或いはグループ)に分類し、分類された集団と対応する(リンク付けされた)治療モジュールを選択する機能を有するブロック(10B:モジュール選択パート)を有することを特徴としている。
ここでサーバー(10)としては、コンピュータその他の情報処理機械により構成される。
そして、日常生活下データは、日常生活の中で様々な質問に答えてもらうことで収集する心理データや、心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、歩行速度、反応速度、反射速度、動体視力、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データ、行動データ、感情・気分データ、夜間勃起データを含んでいる。すなわち、日常生活下データは心理・行動・生理データ、セルフモニタリングデータを包含する。
また本発明のシステム(100)において、日常生活下データを取得する装置(例えばスマートフォン、パーソナルコンピュータ等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置)を備えていてもよい。
そして、医療機関側で使用される情報処理用端末(4)を備えることもできる。
本発明では、日常生活下データを活用して、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)における「心理的柔軟性」や「マインドフルネス」の程度を可視化することも出来る。
本発明の方法は、上述したシステム(請求項1~3の何れか1項のシステム)を実行する方法において、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする工程(S4)と、前記ブロックのアセスメント(診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメント)の結果を分析して患者を特定の集団(クラスタ或いはグループ)に分類し、分類された集団とリンク付けされた治療モジュールを選択する工程(S7~S9)を有することを特徴とする。
本発明の方法においては、上記に加えて、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする工程(S6:疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメント)を備え、
前記治療モジュールを選択する工程(S7~S9)では、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかの結果も分析して患者を特定の集団(クラスタ或いはグループ)に分類するのが好ましい。
本発明は、配偶者またはパートナーとの関係性の問題、勃起障害、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、複合性不安障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安その他の不安症、限局性恐怖症、不妊症(男性、女性)、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱(尿失禁)、アンチエイジング、更年期障害、月経前症候群(PMS)、心因性視覚障害、歯科治療恐怖症、舌痛症、歯科心身症、醜形恐怖症等について適用することが好ましい。
本発明の実施に際して、例えば心因性EDの場合における特定の集団の分類(クラスタ分析)には、3つの指標「EDにおける心理学柔軟性」AFQ-ED、「パートナーとの性に関するコミュニケーション」SRQ、「全般的な心理的柔軟性」PFQを用いることができる。
本発明において、患者の服薬等の治療・行動を記録して、当該記録を医師がチェックカレンダーの各日付に患者の服薬(治療)の記録や、行動記録(例えばED患者であれば性行為に関する記録)を記載できるように構成し、カレンダーの各日付の記録を医師がチェックできるように構成するのが好ましい。
また、所定期間(例えば2週間)毎に医師による診察(通院による診察、オンラインによる診察を含む)を行い、治療方針や治療に用いられる薬剤の処方、心理療法(以下ワーク)のセット等を決定することが出来る。当該診察に際して、改めてアセスメント(診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント)を実行し、クラスタ分析に基づく特定の集団への分類を行い、患者に提供するワークのセット等を新たに設定することが出来る。改めて実行されたアセスメントの結果は、医師による診察において活用することも可能である。ここで、医師による診察、新たに設定された治療方針、薬剤の処方、ワークのセット等については、記録される。
患者が属する特定の集団(例えばクラスタ1)を変更せず、日常生活下データ、EMAの変化に対応して、治療方針、処方、ワーク内容等を変更することも出来る。
新たなワークを提供することにより、それぞれの患者にとって最適な治療を提供することが可能である。
上述の構成を具備する本発明によれば、診断横断的アセスメントにより、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントすることが可能となる。
さらに、疾患特異的アセスメントにより、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントすることが可能となる。これらのアセスメントに基づくことで、その患者に最適な治療モジュールを提供することが出来る。特に、疾患を特定して治療するだけでは改善しない事例に対して、極めて効果的な医療(治療、診断、予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見等)、セルフケアを提供することが出来る。
ここで本発明では、「結果」ではなく、「プロセス」に着目する。例えば、心因性EDの患者であれば、「勃起しない」という症状(ここでの「結果」)が改善したか否かよりも、当該患者の心理社会的「プロセス」の段階が進み、心の柔軟性が向上したか否かに着目する。心理社会的的プロセスの段階が進み、心の柔軟性が向上すれば、新しい行動パターンの獲得、学習が行われたことになり、上述の心因性EDの患者であれば、「勃起しなくとも大丈夫」、「パートナーとの付き合いは性行為が全てではない」というように考え方の幅が広がり、その結果、心因性EDの改善・治癒や生活の質が向上する。
本発明によれば、最適な治療モジュールを提供し以てプロセスベースドCBTによる治療を実行することで、患者毎、或いは疾患の種類毎にカスタマイズした上で一定の効果を上げることが可能である。そして、量的測定指標を用いて診断横断的なアセスメント、疾患特異的なアセスメントを実行してクラスタ分析を行うことにより、治療の最適化が図られる。例えば、配偶者またはパートナーとの関係性の問題、勃起障害、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、不妊症(男性、女性)、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱(尿失禁)、アンチエイジング、更年期障害、月経前症候群(PMS)、心因性視覚障害、歯科心身症、醜形恐怖症等に対して、治療効果を発揮することが出来る。また、患者の自殺の防止にも効果的である。さらに、上述した疾患が合併していても治療効果を発揮することが出来る。
そして本発明によれば、複数の合併する疾患症状/状態でのアセスメントも可能であり、最適な診断横断的治療法を提案或いは提供することが出来る。例えば、心因性EDのアプリにおいて、抑うつ、不安、糖尿等の合併傾向もアセスメントの結果から分析することが出来る。或いは、複数の不定愁訴から更年期障害のアセスメントが出来る。
さらに、本発明を適用することにより、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者が適応的に行動できていれば、コロナウィルス等の感染症の予防や、アフターコロナの不安症等に対しても適用可能である。
また、幹細胞を用いた再生医療や幹細胞の上清を用いた治療と、本発明の治療用アプリとを組み合わせ、併用することで、より高い治療効果が期待できる。
それに加えて本発明によれば、量的測定指標や客観的なモニタリング手法、クラスタ分析を用いることが出来るので、第三者に対してプログラムのアルゴリズムを明確に説明することが可能であり、実際の結果による証拠とすることが容易である。そのため、各種承認に際して提出するべき必要な資料(客観的な証拠データや、それに用いられたシステムの説明等)の作製が容易である。
本発明に係るシステム或いは方法は、複数名で一緒に使用することが可能である。そして、EDや不妊症(男性、女性)の患者におけるパートナー、うつ病や不安障害の患者における家族や援助者等が、治療等に必要な情報やコンテンツを患者と共有し、治療モジュールに係るエクササイズを患者と共同で実行することで、患者と伴走することが出来て、疾患や、援助の仕方についての理解と実践を深めることが出来る。
そして、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること(アドヒアランス)が確立し、治療効果の向上を図ることが出来る。
上述した様な作用効果を奏する本発明によれば、治療のパーソナライズ化を図ることが可能である。
図1は本発明の実施形態に係るシステムの概要を示す機能ブロック図である。
図2は実施形態で用いられるサーバーの機能ブロック図である。
図3は図2におけるモジュール選択パートの機能ブロック図である。
図4は実施形態で用いられる患者側電子装置の機能ブロック図である。
図5は実施形態で用いられる医療機関側電子装置の機能ブロック図である。
図6は実施形態の制御において、初めてアクセスした場合を示すフローチャートである。
図7は実施形態の制御において、二回目以降にアクセスした場合のフローチャートである。
図8は統合データベースの例を示した図である。
図9は治療用プラットフォーム901の管理サーバ931に含まれる患者と評価値等のデータを示す図である。
図10は共通部分を利用したクラスタ分析の例を示す図である。
図11は管理サーバに保存されている、タイプと処方の対応関係の一覧を示す図である。
図12は治療用アプリの適合性ルーチンに用いるアルゴリズムを示す図である。
図13は本発明の治療用モジュールのアセスメントと治療用モジュールの組み合わせ例を示す図である。
(心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患用の治療用アプリの例(ED治療用アプリ))
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図示の実施形態では、プロセスベースドCBTを心因性勃起障害(ED)患者の医療(治療、診断、予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見等)、セルフケアに適用する場合について説明する。ただし、本発明は心因性EDのみならず、他の性機能障害、配偶者またはパートナーとの関係性の問題、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、不妊症(男性、女性)、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱(尿失禁)、アンチエイジング、更年期障害、月経前症候群(PMS)、心因性視覚障害、歯科心身症、舌痛症、歯科恐怖症、醜形恐怖症等についても適用可能である。また、これらの疾患が合併していても適用可能である。
図1において、全体を符号100で示すシステムは、制御装置1とデータベース10Fを含むサーバー10(例えばコンピュータ)、患者に使用される情報処理端末3(患者側の情報処理用端末)、医療機関で使用される情報処理端末4(医療機関側の情報処理端末)を有しており、これらは例えば情報処理ネットワーク20(例えばローカルエリアネットワーク或いはインターネット)により相互に接続されている。
サーバー10の詳細は図2を参照して後述するが、図1における制御装置1は、図2における各種パートを包括的に表示した機能ブロックである。
ここで「患者」なる文言は、心因性ED等に罹患している可能性が有ることを自ら認識しており、且つ、その治療を行う意思のある個人を意味している。換言すれば、「患者」なる文言は、医療機関において医師、その他の関係者の指導により当該治療を行っている者のみに限定される訳ではなく、第三者が見れば「健常」と判断されるような者も包含し得る。したがって、情報処理端末4は医療機関に限定されない。
図1において、患者側の情報処理用端末3は「日常生活下データを取得する装置」であり、例えばスマートフォン或いはパーソナルコンピュータ(PC、パソコン)等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置により構成することが出来る。或いは、日常生活下データを取得する装置として、ウェアラブル機器等を用いることも出来る。日常生活下データは、日常生活の中で様々な質問に答えてもらうことで収集する心理データを含む。また、例えば心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、歩行速度、反応速度、反射速度、動体視力、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データ、行動データ、感情・気分データ、夜間勃起データも含んでいる。
医療機関側の情報処理端末4は、情報処理機能及び通信機能を有する電子装置(例えばPC)を利用することが出来るが、スマートフォンを利用することも可能である。
ここで患者側の情報処理用端末3(例えばスマートフォン)はライン3L、ネットワーク20を介してサーバー10にアクセスするツールとして用いられるのみならず、サーバー10における診断横断的アセスメントに役立てるため、患者の「日常生活下データ」を計測しサーバー10側に送信するためのツールとしても機能する。日常生活下データの計測やサーバー10の診断横断アセスメントパートへの送信という機能は、係る機能を実行するための専用アプリを、患者側の情報処理用端末3であるスマートフォンにインストールすることにより可能になる。
そのような専用アプリをインストールする場合には、患者側の情報処理用端末3とネットワーク20とを接続する情報伝達ライン3L(有線或いは無線の場合が存在する)は、サーバー10にアクセスするためのアクセスラインであり、且つ、情報処理用端末3で計測した患者の日常生活下データをサーバー10に送信するための情報伝達ラインでもある。
サーバー10におけるデータベース10Fには、患者の情報(例えば患者のIDに対応させた診療履歴情報等)や心因性ED治療に関する情報(疾患に関する疾患教育、治療方法、服薬履歴を含むPDE5阻害薬に関する情報、プロセスベースドCBTに関する情報等)が記憶されている。なお、診療履歴における診療には、情報端末を介しての診療及び医療機関での診療が含まれる。
図1には示されていないが、複数の患者側の情報処理端末3及び複数の医療機関側の情報処理端末4をネットワーク10に接続することも出来る。
また、図1ではデータベース10Fは制御装置1と共にサーバー10に内蔵されている。ただし、データベース10Fをサーバー10とは別個に構成し、ネットワーク20を介してサーバー10に接続することも可能である。
サーバー10はビックデータ或いはビックデータを用いたシステム30と結合可能である。ビックデータ或いはビックデータを用いたシステム30と結合することにより、サーバー10におけるアセスメントや治療モジュールの選択の結果、治療の状況等をビックデータの一部として活用出来ると共に、ビックデータを活用して得られた知見をサーバー10の向上に役立てることが可能になる。
図示はされていないが、上述のビックデータを活用して得られた知見、情報をAI(人工知能)のアルゴリズム構築に取り入れ、AIを用いた医療用アプリに発展させることも可能である。
図示の実施形態に係るシステム100におけるサーバー10について、機能ブロックである図2を参照して説明する。
図示の実施形態では、診断用アプリ(アセスメントモジュール)と治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)が一体に表現されているが、診断用アプリ(アセスメントモジュール)と治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)を別体に構成し、診断用アプリ(アセスメントモジュール)のアセスメント結果に対して、治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)が処方する(医師が処方する場合も含む)様に構成することが出来る。
図2において、サーバー10(図2では破線で示す)は、アセスメントパート10A、モジュール選択パート10B、治療モジュールパート10C、評価パート10D及びログイン・認証パート10Hを有している。明確には図示されていないが、図示の実施形態では、診断横断的アセスメントパート10A1と、疾患特異的アセスメントパート10A2とを併せ持つプラットフォームを構成している。
また図2において、情報伝達ラインSL1・・・は、有線のみならず、無線の場合もある。
患者側端末3からサーバー10への通信の入口に相当するログイン・認証パート10Hでは、患者側の情報処理端末3からのID、パスワードが入力されると、当該患者の認証を実施する。ログイン・認証パート10Hは、当該患者の正当性、信頼性を以前のデータを確認して、認証結果(偽物ではない正当な患者である旨の情報)を質問パート10Qに送信する。
明確に図示はされていないが、サーバー10において、患者への成りすまし防止等のセキュリティ対策は、例えば公知技術を用いて実行されている。そして、係るセキュリティ対策は、図示の実施形態ではログイン・認証パート10Hに施されており、患者への成りすまし、その他の不正行為に対してシステム100を保護している。アクセスしてきた者が患者に成りすました偽者の場合には、ログイン・認証パート10Hで当該アクセスを遮断し、質問パート10A以降への情報伝達を遮断する。
ログイン・認証パート10Hでは、例えば処方IDとパスワードを発行し、アクセスしてきた者(患者)の本人確認を行う機能を有している。図示はされていないが、例えば患者本人の同意により、システム100にアクセスする回数や最初にアクセスしてからの期間を適宜設定して、設定した回数や期間を超えた場合には非アクティベートすること、或いは、アクセスに制限を掛けることが可能である。後述するように、非アクティベートした場合でも、担当医師の指示により、患者が再びシステム100にアクセスすることが出来る様に構成することが可能である。
明確には図示されていないが、ログイン認証に際して、IDとパスワード入力の他に、例えば患者側の情報処理端末3がスマートフォンやPCであればそのカメラ等を用いて、患者の顔、音声(声紋)、網膜、虹彩等を患者本人固有の生体情報を撮影(取得)して、当該生体情報を用いて本人認証を行い、以て、所謂「成りすまし」やアカウントの譲渡を防止することが出来て、患者から入力或いは取得されるデータの信頼性を確保することが出来る。ここで、上述した様な生体情報の取得はログイン時のみならず、患者のデータを入力(取得)する際であれば可能である。
情報伝達ラインSL1を介してログイン・認証パート10Hに接続している質問パート10Qでは、アクセスしてきた患者(対象者)に主訴、現病歴、既往歴等を入力せしめる。それと共に質問パート10Qでは、心因性EDの評価(例えば、「また失敗するのではないかと考え始めると、そのことで頭がいっぱいになる」、「勃起を維持できるのかが気になり、性行為に集中できない」)、及び心理的機能障害(精神症状)のまとまりを分類する基準(操作的診断基準)に基づいて、アクセスしてきた患者に対して問診を行う。具体的には、質問パート10Qでは、例えば、心因性EDの症状チェックリスト、及びDSM-5及びICD-10に準拠した精神疾患簡易構造化面接法によるチェックリスト形式の質問を、アクセスしてきた患者に対して実行する。
アクセスしてきた患者の質問パート10Qにおける入力や回答に基づき、特定の疾患が顕在しているか否かの判断や、リスクファクターの有無についての判断が可能になり、アセスメントパート10A1、10A2におけるアセスメントに役立てることが出来る。
質問パート10Qにおける入力や回答は、情報伝達ラインSL2を介して診断横断的アセスメントパート10A1に送信される。
診断横断的アセスメントパート10A1は、患者側の情報処理用端末3(日常生活下データを取得する装置)により取得された日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有しており、量的測定指標を用いてアセスメントを行う。例えば、適応的な行動として、
不快な思考や感情を回避しないで、そのままにしておく「アクセプタンス」、
考えと現実を区別して、不快な思考や感情にのみ込まれない「脱フュージョン」、
目の前の現実への気づきを保持する「今、この瞬間との接触」、
俯瞰的な視点から、自分自身が気づいていることに気づく「視点としての自己」、
生きたい「生き方」を明確にする「価値の明確化」、
生きたい「生き方」を追求する「コミットメント」等を想定している。
心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動をアセスメントすることにより、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性をアセスメントする。上述の6つの適応的な行動のアセスメントは、CBTの一つであるアクセプタント&コミットメント・セラピー(ACT)に基づいて行われている。そして、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動が見られる対象者であれば、健康的であり、生活の質が高く、ストレスが低く、各種疾患に対する抵抗力が高い状態にあると判断できる。
診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメント結果は、情報伝達ラインSL5を介して、モジュール選択パート10Bに送信される。
診断横断的アセスメントパート10A1では疾患を特定するためのアセスメントはせず、疾患に特徴的な症状のアセスメントも行わない。上述した様に、診断横断的アセスメントパート10A1では、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントするからである。その様なアセスメントを行う結果、診断横断的アセスメントパート10A1では、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解することが可能であり、プロセスベースドCBTが実行可能である。
診断横断的アセスメントパート10A1で、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解することは、図示の実施形態における重要な特徴の一つであり、従来の各種治療用アプリケーション(例えば特許文献1、特許文献2参照)と明確に相違している点である。
診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメントが終了した対象者の情報は、情報伝達ラインSL31を介して疾患特異的アセスメントパート10A2に送信される。
疾患特異的アセスメントパート10A2は、対象者(アクセスしたユーザー)が、当該疾患に特徴的な症状に対して、どの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする機能を有しており、量的測定指標を用いてアセスメントを行う。例えば、非適応的な行動として、
性行為に失敗するのではないかと考え始める「予期不安」、
性行為中に勃起を維持できなければ、“男”として終わっていると感じる「自己概念」、
勃起を維持できるのかが気になり、性行為に集中できない「注意制御」、
パートナーからの評価が気になり、関係性が上手くいかない「対人関係」、
性行為を試みようとしない「回避行動」等を想定している。
また、うつ病の場合であれば、非適応的な行動として、
非活動的であり、活動の幅が狭まっている「不活性」
過去の嫌な出来事を繰り返し何度も考える「反芻」
物事を極端に考え、少しのミスで全否定する等「認知の偏り」
他人と関わらないようにしている「社会機能の障害」等を想定している。
疾患特異的アセスメントパート10A2において、対象者が、疾患に特徴的な症状に対して、上述の非適応的な行動がアセスメントされたならば、情報伝達ラインSL4を介して、当該対象者の情報が、アセスメントパート10A1、10A2のアセスメントと共に、モジュール選択パート10Bに送信される。
ここで、質問パート10Qにおけるインテーク情報や問診の結果、対象者には特定の疾患の兆候が無い場合(例えば健常者である場合)は、図示の実施形態では疾患特異的アセスメントは行われない。その様な場合は、診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメントが終了した対象者の情報は、診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメントの結果と共に、情報伝達ラインSL5を介して、疾患特異的アセスメントパート10A2をバイパスして、モジュール選択パート10Bに送信される。また、質問パート10Qにおけるインテーク情報や問診の結果、対象者が健常者であることが判明した場合には、診断横断的アセスメントパート10A1でアセスメントすることなく、対象者を健常者に相当するクラスタに分類することが可能である。
図3を参照して説明する様に、モジュール選択パート10Bでは、統計学的手法(例えばクラスタ分析)を用いて対象者を特定のグループに分類し(クラスタ分析の場合にはクラスタに分類し)、当該グループ或いはクラスタとリンク付けされた治療モジュールを選択する。換言すれば、モジュール選択パート10Bは、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて治療モジュールを選択する機能を有している。例えば、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントにおいて、「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「今、この瞬間との接触」、「視点としての自己」、「価値の明確化」、「コミットメント」のクラスタとして、クラスタ1(「アクセプタンス」、「脱フュージョン」の得点が平均的な水準より低い)、クラスタ2(「今、この瞬間との接触」、「視点としての自己」の得点が平均的な水準より低い)、クラスタ3(「価値の明確化」、「コミットメント」の得点が平均的な水準より低い)、クラスタ4(「アクセプタンス」、「脱フュージョン」、「今、この瞬間との接触」、「視点としての自己」の得点が平均的な水準より低い)の4クラスタに分類する。なお、平均的な水準とは、平均点±1SD(標準偏差)を指している。診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果から、上記のいずれかのクラスタに患者を分類する。
心因性EDでは、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントにおいて、「予期不安」、「自己概念」、「注意制御」、「対人関係」、「回避行動」のクラスタとして、クラスタ1(「予期不安」、「注意制御」の得点が平均的な水準より高い)、クラスタ2(「予期不安」、「回避行動」の得点が平均的な水準より高い)、クラスタ3(「自己概念」、「対人関係」の得点が平均的な水準より高い)、クラスタ4(「対人関係」、「回避行動」の得点が平均的な水準より高い)の4クラスタに分類する。疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果から、上記のいずれかのクラスタに患者を分類する。
また、上述の例では、診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2のそれぞれについてクラスタ分析を行っているが、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果及び疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果を統合して、クラスタ分析を行っても良い。
そして、モジュール選択パート10Bは、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果から、患者が分類されたクラスタに基づいて、治療モジュールを選択する。
なお、上述した例ではクラスタ数は4つであるが、実際のクラスタ分析では、データ分析及び治療用アプリのカスタマイズ化により、クラスタ数は数個から個人ごとに細分化し、1000以上になることもあり得る。
図示の実施形態では、診断横断的アセスメントパート10A1と、疾患特異的アセスメントパート10A2とを併せ持つプラットフォームを構成しているので、システム100を診断用アプリと治療・予防用アプリとに分離して構成した場合においても、診断用アプリにおけるアセスメントパート(アセスメントモジュール)におけるクラスタ判定による各クラスタに対して、自動的に、診断横断的アセスメントの結果に基づく治療モジュール、及び/又は、疾患特異的アセスメントの結果に基づく治療モジュールが選択、指示される。ここで、診断用アプリと治療・予防用アプリとが一体に構成されたシステム100においても、別体に構成されている場合においても、治療モジュールの選択、指示については、医師がアセスメントの結果に基づいて手動により治療モジュールを選択、指示することが可能である。
モジュール選択パート10Bで選択された治療モジュールは、情報伝達ラインSL6により治療モジュールパート10Cに送信される。
モジュール選択パート10Bは、図示しないインターフェース及び情報伝達ラインSL7を介して、選択した治療モジュールを患者側の情報処理端末3に伝達する機.能を有している。すなわち、アセスメントの結果として患者のクラスタが判明して治療モジュールが提示されたならば、治療モジュールの治療プログラム(エクササイズやワーク等)、ホームワーク、治療に有用な情報(Tips)、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報の一部を患者側端末3に送信することが出来る。係る機能により、ネット環境が整っていない場所で、或いはオフラインで、当該治療プログラムを実行できる。そのため、例えば通信・ネット環境の不具合発生時や、治療が終了してシステム100にアクセスできなくなった場合(非アクティベート化された場合)でも、当該患者は治療モジュールで行われたエクササイズやホームワーク、治療に有用な情報(Tips)、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報の一部を引き続きオフラインで実行・閲覧出来ることで、治療の中断を予防し、また治療終了後も治療効果の持続と再発予防に役立てることが出来る。
ただし、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、Tips、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報について、介入の記録としてシステム100側で記録されないので、適切な評価が出来なくなる可能性を防止するため、図示はされていないが、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、Tips、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報についてシステム100側に送信する機能を有する様に構成することが可能である。
ここで、患者が心因性EDである場合に、上述した様なワークの一例として、例えば、公知の陰圧式勃起補助具(VCD)を用いたワークがある。当該ワークはパートナー(配偶者等)と実践することが好ましく、性交が可能な程度に勃起した事実、性交が上手くできた事実は患者の自信の回復に好影響を及ぼす。また夜間の就寝中に勃起の状態を測定し、頻度や高度を記録し、その記録を確認することによって、心因性EDの状態を把握、あるいは、状態が改善されていればその改善によって自信を回復することもできる。夜間勃起を測定するためには、陰茎にワイヤーを巻き付けるRigiScanや、内部に圧力センサ等の検出手段を有する勃起測定用のパンツなどを用いることができる。
治療モジュールパート10Cは、モジュール選択パート10Bで選択した治療モジュールを患者に対して実行する、或いは、モジュール選択パート10Bで選択した治療モジュールを患者に対して伝達する機能を有している。
治療モジュールパート10Cで実行する治療モジュールは、診断横断的な介入では、「心理的柔軟性」のアセスメントの結果に対して、健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。例えば、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントにおいて、クラスタ1(「アクセプタンス」、「脱フュージョン」の得点が平均的な水準より低い)に分類された患者であれば、「シロクマのエクササイズ」等を実施する。「シロクマのエクササイズ」とは、シロクマのことを一定時間考えないでおこうとすることで、不快な思考や感情を避けようとすることの不機能性を理解することを目的とする。クラスタ2(「今、この瞬間との接触」、「視点としての自己」の得点が平均的な水準より低い)に分類された患者であれば、「注意訓練」等を実施する。「注意訓練」とは、複数の音に様々な方法で注意を向ける練習を通して、注意の柔軟性を身につけ、自己注目的な認知処理から解放することを目的とする。これらの治療モジュールを実行することで、当該クラスタに含まれる適応的な行動が促進されることが期待できる。なお、本明細書において、心理療法の実行を、患者に対する介入と表現する場合がある。
また、心因性EDに対する治療モジュールとして、疾患特異的な介入では、各疾患に特有な場面、状況等に対して、各クラスタに適切な技法で、当該疾患に応じた健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。例えば、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントにおいて、クラスタ1(「予期不安」、「注意制御」の得点が平均的な水準より高い)に分類された患者であれば、「感覚集中訓練」を実施する。「感覚集中訓練」とは、パートナーの身体に触れ合い、全神経を与えられた感覚に集中することを目的とする。クラスタ3(「自己概念」、「対人関係」の得点が平均的な水準より高い)に分類された患者であれば、「パートナーとの関係」を実施する。「パートナーとの関係」とは、性的関係を維持するために大切な、話し合いと妥協が可能な領域を見つけることを目的とする。
治療モジュールパート10Cにおいて、「仮想現実」を用いた治療モジュールの提供が可能である。例えば、不安症の患者の場合であれば、仮想現実により「電車に乗る」という体験(仮想現実上の体験)をさせることが出来る。
図示の実施形態では、診断横断的な介入が疾患特異的な介入に優先する。ただし、それに限定されない場合も存在する。
治療モジュールパート10Cには、分類されたクラスタに対応して、患者が実行するべきホームワークが用意されている。治療モジュールパート10Cがホームワークを選択するに際しては、図2では図示しない記憶装置(データベース)に記憶されており、治療モジュール毎にリンク付けされたホームワークを参考にすることが出来る。係るホームワークは、患者が実施すると症状の改善が期待でき、且つ、患者の主体性を向上させる様な内容に、予め編集されている。例えば、上述の治療モジュール「注意訓練」では、1日に15分程度、音源に収録されている様々な音に対して注意を向けるトレーニングを行う。
治療モジュールパート10Cで実行した治療モジュールと治療結果は、情報伝達ラインSL8により評価パート10Dに送信される。ホームワーク及びその達成状況についても、評価パート10Dに送信される場合もある。
評価パート10Dは、治療モジュールパート10Cで実行した治療モジュールによる治療の効果を評価する機能を有しており、既存の評価尺度等を用いて、所定のアルゴリズムに従って治療の効果を評価する。例えば、心因性EDでは、当該疾患に特徴的な症状である勃起機能の評価尺度(測定指標)として、国際勃起機能スコア(IIEF)を用いる。国際勃起機能スコアでは、尺度得点から重症度分類がなされており、治療の効果を評価することが可能である。ツールである評価尺度或いは測定指標は治療モジュールパート10Dに記憶されている。或いは、図2では図示しない記憶装置(データベース)に治療モジュール毎の評価尺度或いは測定指標が記憶されていても良い。
ここで、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得して、記録し、治療前後の効果測定の結果をレポート形式にすることが可能である。そして評価パート10Dは、患者(或いは医師)に対してその様なフィードバックを実行する機能を有することが可能である。
評価パート10Dによる治療効果の評価結果は、情報伝達ラインSL9により患者側の情報端末3に送信される。例えば治療モジュールとしてチャットボットを用いた場合に、チャットボットによる治療効果の評価が患者に表示される。
患者に送信される評価内容には、例えば、症状を改善するための助言等が含まれる。
図示されていないが、治療の効果の測定指標の回答を入力するに際して、入力までの時間を記録するための計時手段及び記録手段、心拍数や血圧を測定する測定手段、患者の瞳孔開閉の様子や視線の向きや瞬きの回数を計測する手段(例えば患者側端末3がスマートフォンやPCである場合にはそのカメラ)、呼吸の回数の計測手段、体温の計測手段、或いは、顔色を観察する手段(例えば、患者側端末3のカメラ)を設け、指標入力時における客観的な情報をモニタリングして、回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置を設けていることが好ましい。
回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置を設けることにより、回答の精度や回答者の状態を客観的にモニタリングすることが出来る。回答者の状態としてモニタリングする事項としては、例えば、回答者である患者が測定指標をいい加減に入力していないか、「改善された」という結果を得るために偽りの入力をしていないか、測定指標を入力することでストレスが掛かっていないか、深く考え込んでいるかどうか、患者の反応性、患者の認知機能等である。この様なモニタリングにより、クラスタ分析の際の要因として取り入れることが出来る。
また、回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置として、患者側端末3としてのスマートフォンやPCのカメラを用いた場合、当該カメラに専用のフィルターやレンズ等を装着して、上述したモニタリングを行うことが出来る。さらに、心拍数、血圧等の計測装置(図示せず)やアプリケーションを使用することが可能である。
さらに、匂いセンサー、脳波センサー、脳血流センサー等のデバイスを装着して回答者の客観的な情報を取得することが可能である。それにより、回答者の心身の状態を計測して、クラスタ分析の際の要因とすることも可能になる。そして、例えば脳波や脳血流等を測定するヘッドセット状のデバイス等を装着すれば治療の実感が高まり、治療効果がさらに向上する。
評価パート10Dにおいて、治療効果について良好な評価がされない場合には、その評価結果が情報伝達ラインSL10によりモジュール選択パート10Bに送信される。評価パート10Dからの良好ではない評価を受信した場合には、モジュール選択パート10Bは提案した治療モジュールは効果が低かったと判断して、新たに治療モジュールを選択、提案する。治療モジュールパート10Cは当該新たな治療モジュールを患者に送信(提供)し、評価パート10Dは新たな治療モジュールによる治療効果を評価する。
図2において、患者側の情報端末3は、情報伝達ラインSL12により、診断横断的アセスメントパート10A1に接続している。図1を参照して前述したように、患者側の情報処理用端末3は、患者の「日常生活下データ」を計測し診断横断的アセスメントパート10A1送信する機能を有しており、係る機能を実行するため、情報伝達ラインSL12を介して診断横断アセスメントパート10A1に患者の「日常生活下データ」を送信する。
また、ログイン・認証パート10Hは、情報伝達ラインSL12を介して治療モジュールパート10Cに接続しており、情報伝達ラインSL13を介して評価パート10Dに接続している。患者(対象者)からの2回目以降のアクセスでは、図7を参照して後述するように、先ず治療モジュールパート10Cにアクセスして治療モジュールを実行する場合と、評価パート10Dにアクセスして改善しているか否かを確認する場合の双方が存在するからである。
次に図3を参照して、モジュール選択パート10Bについて説明する。
診断横断的アセスメントパート10A1と、疾患特異的アセスメントパート10A2とを併せ持つプラットフォームを構成する図示の実施形態では、モジュール選択パート10Bでは、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて幾つかの治療モジュールを選択すると共に、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて幾つかの治療モジュールを選択する。換言すれば、診断横断的アセスメントパート10A1と疾患特異的アセスメントパート10A2の各々のアセスメントの結果に基づいて、複数の治療モジュールがモジュール選択パート10Bにおいて選択される。
図3において、モジュール選択パート10Bは、分析ブロック10B1、分類ブロック10B2、リンク付けブロック10B3、記憶装置10B4を含んでいる。
診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果は情報伝達ラインSL5を介して、モジュール選択パート10Bの分析ブロック10B1に送信される。そして疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果は情報伝達ラインSL4を介して、分析ブロック10B1に送信される。
分析ブロック10B1では、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果及び疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果の各々についてクラスタ分析を行う機能を有している。
診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく分析ブロック10B1の分析結果は情報伝達ラインSL22を介して分類ブロック10B2に送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく分析ブロック10B1の分析結果は情報伝達ラインSL24を介して分類ブロック10B2に送信される。
分類ブロック10B2では、患者の診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて当該患者が所定のクラスタに分類される。同様に、患者の疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて当該患者が所定のクラスタに分類される。
診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタの情報は情報伝達ラインSL26を介してリンク付けブロック10B3に送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタの情報は情報伝達ラインSL28を介してリンク付けブロック10B3に送信される。
クラスタと、当該クラスタに有効な治療モジュールとをリンク付ける情報が、記憶装置40に記憶されている。当該「リンク付ける情報」は、クラスタと、クラスタに有効な治療モジュールとを関連付ける図表であっても良いし、関数であっても良い。
リンク付けブロック10B3には、情報伝達ラインSL30を介して、前記「リンク付ける情報」が伝達され、分類ブロック10B2で分類されたクラスタに対して有効な治療モジュールが決定される。換言すれば、リンク付けブロック10B3は、「リンク付ける情報」により、患者が分類されたクラスタに対して有効な治療モジュールを決定する機能を有している。
リンク付けブロック10B3では、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールとを決定する。
診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールは情報伝達ラインSL61を介して治療モジュールパート10Cに送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールは情報伝達ラインSL62を介して治療モジュールパート10Cに送信される。その結果、患者には、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールの双方が提案可能である。換言すれば、診断横断的な介入と疾患特異的な介入の双方が可能である。
図3で示す情報伝達ラインSL61、SL62は、図2では単一の情報伝達ラインSL6として包括的に表示されている。
ここで、クラスタ分析が統計学的手法として例示されているが、患者(対象者)を正確に分類して、適切な治療モジュールとリンク付けできるのであれば、クラスタ分析以外の統計学的手法を採用することが出来る。
上述した様に、患者には、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールの双方が提案可能であるが、何れか一方を優先的に患者側情報端末3に表示するか、或いは、双方同時に患者側情報端末3に表示するかについては、適宜設定可能に構成することが出来る。
例えば図3において、質問パート10Qにおける問診、入力の結果、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果等が入力される優先順位決定ブロック10Rを設け、優先順位決定ブロック10Rは入力された情報から、患者に対して、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを優先的に提示するべきか、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを優先的に提示するべきか、双方を同時に提示するべきかを判断する機能を有している。それと共に、優先順位決定ブロック10Rは、情報伝達ラインSL32を介してモジュール選択パート10Bのインターフェース10BIFに制御信号を送信して、患者側情報端末3に対して、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを送信するか、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールを送信するか、双方を同時に送信するかを制御する機能を有している。
その結果、患者に対して、診断横断的アセスメントパート10A1のアセスメントに基づく治療モジュールのみを提示するか、疾患特異的アセスメントパート10A2のアセスメントの結果に基づく治療モジュールの双方が提示するか、双方同時に患者側情報端末3に提示するかを適宜設定することが出来る。
図示の実施形態において、アプリ利用者である患者がアプリを継続して使用し続け、治療途中で脱落することを防止するため、適正なタイミングで、当該患者に対して、治療用アプリへのログインを促すメッセージ(リマインド通知)をシステム100側から発信する機能(適正なタイミングでアプリを起動する機能)を有している。
例えば、システム100を利用している患者の日常生活下データを取得して、直ちに治療用アプリを起動して、日常生活下データに基づいてリアルタイムにアセスメントを行うことが出来る。そして、係るリアルタイムで行われたアセスメントの結果として、直ちに介入すること(リアルタイム介入)も可能である。
日常生活下データの数値で判断するのみならず、患者の日常において治療用アプリが必要になると予想されるイベントが発生した際に、治療用アプリを起動して、アセスメントその他の必要な措置を講じることも出来る。例えば心因性ED患者が治療用アプリを使用している場合において、当該患者が受信したメールのキーワードやスケジュールをチェックして、例えばパートナーからデートのメールを受信した場合に、治療用アプリが必要となるイベントが発生したと判断して、治療用アプリを起動し、必要なアセスメントを実行し、当該患者に必要な治療モジュールの実行を促す内容のメッセージを送信する。
慢性疼痛の患者であれば、その患者が「ピクニックのお誘いメール」を受信したことを検出して、治療用アプリを起動し、必要なアセスメントを実行し、システム100側からメッセージを送信し、或いは当該患者に必要な治療モジュールの実行を促す内容のメッセージを送信することが出来る。
どの様なタイミングで患者に問題が起こっているのか?
について、日常生活下データその他の患者のデータから治療者にフィードバックすることで、例えば、
患者に問題が生じるのは朝昼夜の何れか?
或いは、所定のケースで患者に問題が生じるのか?
を決定することが出来る。すなわち、図示の実施形態に係るシステムで自動的に収集したデータの解析を進めることにより、患者に問題が生じるタイミング、換言すれば患者が最も治療用アプリを必要とするタイミング、を決定することが出来る。
この様に、治療用アプリを起動するべき適正なタイミングを決定して、アプリにおいて必要な措置を講じることは、患者が治療モジュールの実行を緊急に必要とする場合(すなわち患者にとっての緊急時)に、当該患者に対して即時にアセスメントを実行し、或いは、当該患者が即時に治療モジュールやTipsを実行できる機能(所謂「レスキュー的な」機能)を備えることを意味している。
係るレスキュー的な措置や機能として、例えば患者がEDである場合に、前述したようなパートナーからの連絡があったがPDE5阻害剤が患者の手元に無い場合に、必要なPDE5阻害剤を処方する医師の連絡先電話番号を表示することが考えられる。
そして、患者側の情報処理端末3にレスキューボタンを設置し、患者がレスキューボタンを操作することにより、上述した様な事態が生じた場合に直ちに治療用アプリ側から必要な治療モジュールやエクササイズ、情報等が患者に提示される。患者がEDであり、パートナーからの連絡があったがPDE5阻害剤が患者の手元に無い場合に、治療モジュールの中であらかじめ考えていた対策(本人が設定していた対策)をポップアップさせることが考えられる。
そして、患者側の情報処理端末3にレスキューボタンを設置し、患者がレスキューボタンを操作することにより、上述した様な事態が生じた場合に直ちに治療用アプリ側から必要な治療モジュールやエクササイズ、情報等が患者に提示される。患者がEDであり、パートナーからの連絡があったがPDE5阻害剤が患者の手元に無い場合に、この様な状態では患者は「パートナーに嫌われたらどうしよう」、「性行為が失敗したらどうしよう」という不安により、いわゆる「思考に飲み込まれた状態」に陥っている。
図示の実施形態において、治療モジュールやエクササイズが患者に送信され、患者が「性行為だけが全てではない」、「単純にパートナーと会うことを楽しめば良い」という様にも考えることができるようになれば、不安で「思考に飲み込まれた状態」から患者が抜け出すことが出来る。
図示はされていないが、システム100において、定期的に決めた時刻に合わせて定期或いは不定期に治療用アプリ使用を促すリマインド通知や励まし等のメッセージを送信する機能を有する装置を設けることが出来る。ゲーム的な要素を応用することも可能である。さらに、システム100にアクセスすることについて患者に何かしらの報酬を与える機能を備えることが可能である。そして、システム100にアクセスして治療用アプリを積極的に実行しようとする動機付けを高める様上記のような機能を有するウェアラブル機器等を備えることが可能であり、治療を継続する(治療用アプリを継続使用する)という「正」の行動を強化することが出来る。
これ等の機能を発揮することにより、患者がシステム100にアクセスして治療モジュールを実行し続けたいという継続使用の意欲を高めて、治療途中でシステム100にアクセスしなくなる(治療途中で脱落する)事態を抑制し、システム100による治療効果(或いは治療用アプリの効果)を向上することが出来る。
リマインド通知の発信のタイミングについては、患者が活動しているか停止しているか?の情報と、患者が移動中であるか?在宅であるか?の情報(ステイタス管理)を管理して決定することが出来る。
また、日常生活下データから、心拍安定時、患者が暇な時等にリマインド通知を発信することが出来る。
さらに、患者側の情報処理端末3(例えばスマートフォン)の起動後(復帰後)は当該患者がスマートフォンに触れている可能性が高いので、その際にリマインド通知を発信することが出来る。
図示の実施形態では、患者がアプリを継続して使用し続け、治療途中で脱落することを防止するために、患者自らが治療に取り組む、自ら治療に参加するという意思を強固にする(アドヒアランスを高める)ためのコンテンツを提供することが出来る。
係るコンテンツとしては、疾患教育、治療法教育に係るコンテンツ等(例えば、ACTとは何かを説明するコンテンツ)がある。
患者がアプリを継続して使用し続けるモチベーションを持続して、治療途中で脱落することを防止するためには、如何にして患者を治療用アプリにログインさせるかが重要である。そのため、図示の実施形態において、患者が好きな有名人のSNSアプリ(例えば、Twitter Inc.の情報サービスである「Twitter(登録商標)」)に当該患者がアクセスすると、(治療用アプリにログインする旨の)リマインド通知が発信される。
或いはパートナーのSNSアプリ(例えば、LINE株式会社の情報サービスである「LINE(登録商標)」等)に当該患者がアクセスすると、リマインド通知が発信される。
さらに、患者が利用しているスマートフォンのその他のSNSアプリ(例えば、Google LLC.の動画共有サービスである「YouTube(登録商標)」等)の起動状況から、それにリンクしてリマインド通知を発信することが出来る。
くわえて、ガイド役のパートナーキャラクターや自らのアバターを表示させて、あたかもアプリ内でコミュニケーションを行っているかのような親しみやすさを感じさせることや、そのキャラクターやアバターを選べたり、利用者の好みに合わせてカスタマイズしたりできるような機能を持たせることで、モチベーション維持と脱落防止に役立つ。
患者側の情報処理端末3(例えばスマートフォン)から発生される警報(アラート)は、当該患者の問題意識を高め、治療継続の意欲を高めることが分かっている。
例えば、患者がEDであると糖尿病は併発する恐れがある。図示の実施形態において、当該患者の血糖値を日常的に計測して、所定値以上となった場合にアラートを発生することにより、患者に危機感を与え、治療継続の意欲を高めることが出来る。上述した様に、図示の実施形態では診断横断的アセスメントを実行するので、上述した様に複数の疾病(糖尿病、動脈硬化、その他)が関連する場合に有効である。
また、食事(食欲)と気分とは関連しており、抑うつ気味の時には食欲が変化(低下・増加)することに着目して、食欲の変化を示す食欲スコアを作成して抑うつ気味であることを患者自身が認識できるようにする。或いは、食事の写真をアップロードして食欲の変化を目視出来るようにして、抑うつ気味である場合に認識できる。
上述した「正の行動強化」に関する行動分析学における理論として、行動の直後に「良いこと」、「嫌なことの消失」(報酬)があると、当該行動を続ける方向に作用するというものがある。ここで言う「直後」は60秒以内であり、係る理論を「60秒ルール」と表現することがある。この理論に基づいて、図示の実施形態において、治療モジュール、エクササイズを行った直後に「良く頑張りました!」等のフィードバック、ポイントが加算される、達成度が表示される、結果がグラフ表示される等を与えて、患者が行動(治療)を続ける動機付けを提供することが出来る。
明確には図示されていないが、図示の実施形態では、治療用アプリのデザイン/ビジュアルに視覚情報による効果、見るだけで活性化する様に、例えばバックグラウトのデザインを選べる仕様とすることが出来る。
また、治療用アプリに対して患者が敬意を持つことは、そのアプリを継続すること寄与する。そのため、図示の実施形態に係る治療用アプリのデザイン等については、周囲の人からそれと悟られないようにすることが好適である。例えば、心因性EDの患者が治療用アプリを実行している最中に、第三者に見られたとしても、当該患者が恥ずかしい思いをしない様に、(ED治療用アプリを実行しているのだが)傍から見るとビジネスのためにスマホを見ている様に見える等の工夫がされたデザインであるのが好ましい。その様なデザイン等であれば、「(治療用アプリを実行していることが他人に知られてしまうと)恥ずかしい」という理由で患者が治療用アプリを続けられなくなるという問題が解消される。そして、例えばEDの治療を自宅以外の隙間時間でも実行できるので、患者が治療用アプリを用いた治療を継続し易くなる。
診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント、治療モジュール(治療プラグラム:エクササイズ、ワーク)、ホームワーク、Tips、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報、評価等を実行するに際して、スマートスピーカー等を用いて、音声による質問項目の読み上げ、指示、ガイダンスその他に対して、患者が音声により入力し、記録し、応答すること等を可能にして、音声により相互に作用する機能(インタラクティブな機能)を具備する様に構成することが可能である。ここで、スマートスピーカー(AIスピーカー)は対話型の音声操作に対応したAIアシスタント機能を持つスピーカーであり、内蔵されているマイクで音声を認識し、情報の検索や連携家電の操作を行う。
また、システム100にアクセスした患者に対して、治療に関連する或いは治療に役立つ動画や音楽、音声、その他のコンテンツ(例えばマインドフルネス瞑想)を順次視聴させるコンテンツ(Tips)を提供する機能を有する装置を設けることが出来る。係るコンテンツは、例えば、マインドフルネス瞑想、香り、音楽、映像、振動、好ましい食品/食事の情報等であり、五感を使うことにより治療効果とその持続、満足度を表す指標であるQOLの向上をもたらす。
上述した治療モジュール、エクササイズの実行に際して、治療用アプリに従って身体を動かす際に、VR、ARと組み合わせ、エクササイズ実行の際にVR、AR用の機器を装着して、VR、ARにより実感を強めることが出来る。これにより、治療モジュール、エクササイズの効果が向上する。
ここで、治療用アプリを実行するに際して、患者のパートナーである女性と一緒に行うワーク、パートナーと一緒に観るコンテンツは、パートナー(女性)の意識向上とED治療への理解と搬送を促すので、好適である。
図示の実施形態においては、治療モジュールのエクササイズ毎に簡単な評価(ミニ評価)を実施しており、例えば、「自由記述欄」に患者自らの評価を記載する様に構成されている。その様なミニ評価をフィードバッグし、フィードバッグにおいて患者に変化を認識させれば、当該患者に対して目標に向かう意義(例えば、エクササイズを毎日実行していることの意義)を示すことが出来る。その様な意義を示すことが出来れば、例えば心因性EDの患者であれば、「性行為が上手くいかない場合でも前進している、以前よりも改善されている」という希望を(当該患者に)与えることが出来る。
さらに、得られるフィードバッグについて患者が意義を感じる様にして、目標に向かって取り組んだことに対するフィードバッグを行えば、患者が治療用アプリを継続する意欲を向上することが出来る。
ここで、図示の実施形態では、「結果」ではなく、プロセスに着目している。心因性EDの患者であれば、例えば、「勃起する、勃起しない」の症状が改善したか否かよりも、当該患者の心理社会的プロセスの段階が進み、心の柔軟性が向上したか否かに着目する。心理社会的プロセスの段階が進み、心の柔軟性が向上すれば、新しい行動パターンの獲得、学習が行われたことになり、上述の心因性EDの患者であれば、「勃起しなくとも大丈夫」、「パートナーとの付き合いは性行為が全てではない」と考え方の幅を広げることが出来る。
図4において、患者側の情報処理端末3は、制御ブロック3A、表示ブロック3B、入力ブロック3C、記憶ブロック3D及び通信ブロック3Eを有している。
制御ブロック3Aは、患者側の情報処理端末3における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック3Bは、患者側の情報処理端末3の使用者(患者)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック3Cは、使用者(患者)が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック3Dは既存の記憶用機器により構成され、患者側の情報処理端末3のために、符号3Fで示す患者用プログラムが記憶されている。明示されていないが、データベース10Fを記憶ブロック3Dとして用いることが可能である。通信ブロック3Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク20と接続する機能を有している。
患者側の情報処理端末3は、情報処理機能及び通信機能を有する電子機器であれば、特に限定はしない。ただし、昨今の普及を考慮すると、いわゆるスマートフォンの様な携帯型情報端末が好ましい。
図5において、医療機関側の情報処理端末4は、制御ブロック4A、表示ブロック4B、入力ブロック4C、記憶ブロック4D及び通信ブロック4Eを有している。
制御ブロック4Aは、医療機関側の情報処理端末4における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック4Bは、医療機関側の情報処理端末4の使用者(医師、医療機関の関係者等)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック4Cは、医師、医療機関の関係者等が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック4Dは既存の記憶用機器で構成され、医療機関側の情報処理端末4のため、符号4Fで示す医療機関用プログラムが記憶されている。データベース10Fを記憶ブロック4Dとして用いることも可能である。通信ブロック4Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク20と接続する機能を有している。
明確には図示されていないが、システム外部のWebサイト、例えば匿名患者会、チャットルーム、BBSを接続して、同じ疾病に悩む患者同士のコミュニティで治療用アプリの使用状況や推移を共有し、他の使用者に関するデータを統計的なデータとして見る様にすることが可能である。ここで、接続可能なシステム外部のWebサイトは医療機器としての要件を満たす必要がある。
この様なシステム外部のWebサイトと接続することにより、各種疾病の自助グループ(例えば薬物依存症患者のための自助グループ)に参加することと同等な効果を得ることが出来て、治療続行のためのモチベーションをあげることが出来る。
次に、主として図6、図7を参照して、システム100による診断・治療・予防等(医療)を実行する手順を説明する。図6、図7を説明するに際して、患者(当事者:ユーザー)の疾患が心因性EDである場合を想定する。
最初に図6を参照して、患者が初めてシステム100にアクセスする場合を説明する。
図6において、ステップS1では、患者側の情報処理端末3からシステム100に対してログインされたか否かを判断し、以て、患者がシステム100を利用するか否かを判断する。ステップS1において、患者側からログインがあった場合(ステップS1が「Yes」)はステップS2に進み、ログインがなければステップS1に戻る(ステップS1が「No」のループ)。
図6では明示されていないが、ステップS1では、ログイン・認証パート10Hにより、例えば発行されたIDとパスワードによりアクセスしてきた患者の本人確認を行う。図示はされていないが、複数回アクセスをしている患者に対してアクセスする回数や最初にアクセスしてからの期間(治療期間)を設定して、設定した回数や期間を超えた場合には非アクティベートすること、或いは、アクセスに制限を掛けることも可能である。
また、図示されてはいないが、ログイン認証に際して、IDとパスワード入力の他に、患者の顔、音声(声紋)、網膜、虹彩等を患者本人固有の生体情報を、例えば患者側の情報処理端末3がスマートフォンやPCであればそのカメラ等を用いて撮影(取得)して、当該生体情報を用いて本人認証を行うことが出来る。この様な生体情報の取得は、ログイン時のみならず、患者のデータを入力(取得)する際であれば可能である。係る生体情報を取得して患者本人の認証を行うにより、所謂「成りすまし」やアカウントの譲渡を防止することが出来て、患者から入力或いは取得されるデータの信頼性を確保することが出来る。
ステップS2(患者からログインされた場合)では、ログイン・認証パート10Hにより、患者側が入力したID、パスワードに基づいて患者の認証を行う。そしてステップS3に進む。
図6では明示されていないが、ステップS2で認証された患者は、ステップS3以降を実行することなく、直ちにステップS113(後述)に進むことが可能である。
ステップS3では、アクセスしてきた患者に主訴、現病歴、既往歴等(インテーク情報)を入力せしめ、それと共に、心因性EDの評価(例えば、「また失敗するのではないかと考え始めると、そのことで頭がいっぱいになる」、「勃起を維持できるのかが気になり、性行為に集中できない」)、操作的診断基準に基づいて問診(例えば、DSM-5及びICD-10に準拠した精神疾患簡易構造化面接法によるチェックリスト形式の質問)を実行する。そしてステップS4に進む。
ステップS4では、診断横断的アセスメントパート10A1により、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントして、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性をアセスメントする(診断横断的アセスメント)。図示の実施形態では、診断横断的アセスメントは疾患特異的アセスメントに優先して行われる。
ステップS4の診断横断的アセスメントの後、ステップS5において、ステップS3における入力、問診の結果として、疾患特異的な兆候の有無を判定する。疾患特異的な兆候が無い場合(ステップS5がNo:例えば健常者の場合)にはステップS7に進む。
一方、疾患特異的な兆候があれば(ステップS5がYes)、ステップS6に進む。
ステップS6では、疾患特異的アセスメントパート10A2により、特定の疾患について上述したスキルが発揮されるか否かをアセスメントする(疾患特異的アセスメント)。
ステップS6の疾患特異的アセスメントの後、ステップS7に進む。
ここで、ステップS3において健常者であると判断された場合には、直ちにステップS7に進み、健常者に該当するクラスタに分類することも可能である。
ステップS7では、分析ブロック10B1において、診断横断的アセスメントの結果について(例えば)クラスタ分析を実行し、或いは、疾患特異的アセスメントの結果について(例えば)クラスタ分析を実行する。
そしてステップS8では、分類ブロック10B2において、クラスタ分析の結果から、診断横断的アセスメントのクラスタ分析に基づいて患者を該当するクラスタに分類すると共に、疾患特異的アセスメントのクラスタ分析に基づいて患者を該当するクラスタに分類する。
診断横断的アセスメント或いは疾患特異的アセスメントにおいて、例えば心因性EDの場合には、従来9つの評価指標を用いていたが、発明者の研究の結果、心因性EDの場合におけるクラスタ分析は、3つの指標のみを用いて行うことが出来ることが判明した。当該3つの指標は「EDにおける心理学柔軟性」AFQ-ED、「パートナーとの性に関するコミュニケーション」SRQ、「全般的な心理的柔軟性」PFQである。
患者を該当するクラスタに分類したならば、リンク付けブロック10B3において、分類された患者のクラスタに対して有効な治療モジュールを(リンク付けて)決定する(ステップS9)。そしてステップS10に進む。
ステップS7~S9は、モジュール選択パート10Bにおいて実行される。
ステップS10において、(治療モジュールを決定された)当該患者は、この時点でシステム100からログアウトするか否かを判断する。
患者が、第1回目のアクセスとして治療モジュールの提示で満足するのであれば(ステップS10がYes)ログアウトして、当該患者について1回目のアクセスは終了する。当該患者が再度アクセスする(2回目以降のアクセスを行う)場合については、図7を参照して説明する。
患者が治療モジュールの提示のみならず、提示された治療モジュールの実行を求めるのであれば(ステップS10がNo)、治療モジュールパート10Cにより、モジュール選択パート10Bで選択された治療モジュールを実行する(ステップS11)。この実行の態様は、治療モジュールの内容により異なる。
実行後、ステップS10に戻る。
図示されていないが、ステップS11(及び図7を参照して後述するステップS16)において、患者のクラスタに対応して提示された治療モジュールの治療プログラム(エクササイズやワーク等)、ホームワーク、Tips、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報の一部を患者側端末3に送信することが出来る。患者側端末3に治療プログラム、ホームワーク、Tips、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報の一部を送信することにより、ネット環境が整っていない場所で、或いはオフラインで、当該患者は治療プログラムを実行できる。そのため、例えば通信・ネット環境の不具合発生時や、治療が終了してシステム100にアクセスできなくなった場合(非アクティベート化された場合)でも、当該患者は治療モジュールで行われたエクササイズやワーク(例えば注意訓練のための音声等)、ホームワーク、Tips、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報の一部を引き続きオフラインで実行・閲覧することで治療の中断を防止し、また、治療効果の持続と再発予防に役立てることが出来る。
オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、Tips、利用者の統計データ、利用者の利用状況、利用者の回答例等の情報について、介入の記録としてシステム100側で記録されないため、適切な評価が出来なくなることを防止するために、オフラインで行われたエクササイズやワークアウトについてシステム100側に送信することが可能である。
治療モジュールを実行する際に、実行した治療モジュールの記録を音声入力可能に構成することが出来る。
治療モジュールを実行したならば(ステップS11)、診断横断的(心理的柔軟性)測定指標と疾患横断的測定指標、既存の評価尺度等により、介入の効果を測定する(ステップS111:評価)。介入の効果を測定した後、医師・患者に対してフィードバックする(ステップS112)。フィードバックに際しては、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得して、記録することが出来る。これにより介入前後の効果測定の結果をグラフ等によりレポート形式に表現して、医師・患者に対してフィードバックすることが可能である。そして、所定の回数や期間毎に、治療モジュールと、それによる変化(介入による評価指標の変化、日常生活下データの変化等)が理解できるような報告(レポート)を作成して、医師や患者に提示することが出来る。
フィードバック(ステップS112)に際して、「前回のワーク、エクササイズでは○○でした。」という様なメッセージを治療用アプリ側から患者に送信することが出来る。
係るメッセージを受信した患者は「自分のことを忘れていない」、「注目されている」という様な印象を持ち、係る印象は当該患者が治療用アプリを継続する意欲を高めることが出来る。
また、フィードバック(ステップS112)に際して、表情による感情認識AIを用いることにより、患者の感情やストレスの度合いを客観的に判断することが出来る。
さらに、脈拍センサー、体温センサー等を内蔵したイヤホンを患者が装着すれば、雑音で音声が聞こえない環境下であっても、日常性下データ、特に脈拍の様に音声、振動により検出される日常生活下データが取得できる。同様に、体温のデータも取得できる。フィードバックに際しては、その様に取得された脈拍データや体温データにより、患者の感情変化やストレスを判定することが可能である。
図示の実施形態において、日常生活下データを活用して、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)における「心理的柔軟性」や「マインドフルネス」の程度を可視化することが出来る。
日常生活下データとして、例えば、患者の胸部にセンサーを貼り付けて心拍を測定し、自律神経機能のバランスを示すパラメーターであるLF/HF(低周波LFと高周波HFのパワーの比率:交感神経と副交感神経の全体のバランスを示す)を計算して、自律神経の状態を提示することが出来る。ここで、患者の胸部に貼り付けるセンサーとしては、公知、市販のものを使用することが出来る。当該センサーで測定されたデータは患者側の情報処理端末3にデータとして送信され、蓄積される。計測された心拍のデータから求めたLF/HFを、当該患者におけるLF/HFの傾向と比較することにより、当該時点における患者の自律神経のバランスに異常があるか否かを判定し、治療の効果を確認することが出来る。
また日常生活下データとして、ホルモン/ストレスレベルを計測して評価指標に用いることが出来る。例えば唾液中のコルチゾール、アミラーゼをセンサーで計測して、患者側の情報処理端末3にデータとして送信する。或いは、センサーによりドーパミンやセロトニンの血中濃度を計測して患者側の情報処理端末3に送信して、治療の効果の指標とすることが出来る。セロトニンについては、脳波測定器を用いてα波を特定することにより計測することも出来る。
ここで、日常生活下データとして、脳波に代えて脳血流を測定することが出来る。例えば、右前頭極の過活動が自己注目と関連するので、右前頭極の脳活動を、脳血流(NIRS)センサーにより計測して、予期不安や自己注目の指標とすることが可能であり、自意識過剰になっている状態をリアルタイムで検出することが可能である。
さらに、会話の回数、頻度、会話を行った時間、会話における情報量の様な物理量及び情報量であるコミュニケーション量をスマートフォン(PC、タブレットでも可能)で計測して、日常生活下データとして用いることも出来る。コミュニケーション量の計測方法として、スマートフォン等のデバイスに組み込まれたICチップを検知して、当該ICチップと近接した回数、近接した時間を自動的に計測することも可能である。
日常生活下データとして、ウェラブル機器等で取得することが出来る生理学的データであるデジタルバイオマーカーを取得し、蓄積することにより、疾患の発症予測や状態把握・管理等に利用し、アセスメントの精度を向上させることが可能である。そして、よりパーソナライズされた最適な治療法を提案/提供することが出来る。さらに、機械学習やAIを用いたアルゴリズム開発におけるビッグデータとなり得る。
このビックデータを活用し、例えばAIを用いることにより、疾病の予測が可能であり、当該予測に基づいて予防対策を構築することも出来る。そして、疾病罹患を予防するための介入が可能である。或いは、ビックデータをAIで分析し、その分析結果に基づいて、個々の患者の個性、疾病の程度等に合致した内容(個々の患者に合った内容)の治療用アプリ、すなわち、患者毎にカスタマイズされたアプリを提供することが可能になる。
ここで、患者側の情報処理端末3(例えば、スマートフォン、PC、タブレット、ウェラブルデバイス等)に日常生活下データを記録する「生活記録表」としての機能を持たせることが出来る。従来、患者は、紙媒体に日常生活下データを記録していたが、「生活記録表」に対して電子的に日常生活下データを記録することにより、スマートフォン、PC、タブレット、ウェラブルデバイス等を操作する平易性に起因して、日常生活下データをリアルタイムで記録することが可能になる。紙媒体に記録する場合、一定期間が経過した時点で当該期間の生活下データを纏めて記録する傾向があり、その結果、バイアスが掛かる可能性(事実や実際に感じたものとは異なる内容を紙媒体に記入する可能性)がある。患者側の情報処理端末3に日常生活下データをリアルタイムで電子的に記録することにより、その様なバイアスや虚記憶の想起を防止して、紙媒体への記録よりも適切で妥当な日常生活下データを保存することが出来る。
上述した様に、本発明では、日常生活下データを活用して、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)における「心理的柔軟性」や「マインドフルネス」の程度を可視化することが出来る。日常生活下データにおける心理データの例として、例えば、生態学的瞬間評価(EMA)の手法を用いて、毎朝、毎晩、その時の気分や感情、思考をその場でその時その瞬間に回答してもらうことが挙げられる。その場でその時その瞬間に回答してもらう(リアルタイムに回答してもらう)ことにより、記憶にバイアスが掛かることを防止出来る。ここで、回答のタイミングとしては、「毎朝、毎晩」を例示したが、定時に限定される訳ではなく、一定の時間帯(例えば、朝は7時~8時、晩は19時~22時)の中でランダムにリマインダ通知が送信されることで、回答を促すことが出来る。
なお、生態学的瞬間評価(EMA)の手法は、心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データにも適用される。
ステップS111における評価に際しては、例えば、患者が(介入の効果の)測定指標の回答を入力するが、その際に、入力までの時間を記録し、心拍数や血圧を測定し、例えば患者側端末3がスマートフォンやPCである場合にはそのカメラを用いて患者の瞳孔開閉の様子や視線の向きや瞬きの回数を計測し、呼吸の回数や体温を計測し、或いは、顔色を観察して、指標入力時における客観的な情報をモニタリングすることが出来る。以て、回答の精度や回答者の状態を客観的にモニタリングして、例えば、回答者である患者が測定指標をいい加減に入力したことや、「改善された」という結果を得るために偽りの入力をすること、ストレスが掛かること等を抑制することが出来る。さらに、心拍数、血圧等を計測することが可能である。
ここで、患者が音声により回答をした場合等において、AIにより患者の音声を解析、判断して、患者が治療に真剣に取り組んでいるか否かを判定し、或いは、患者の真剣さの度合い(患者の本気度)を判定することが可能である。
図示はされていないが、匂いセンサー、脳波センサー、脳血流センサー等のデバイスを装着し、当該センサーにより回答者の客観的な情報を取得し、回答者の心身の状態を計測して、クラスタ分析の際の要因とすることも可能である。
ステップS111における介入後の評価に応じて、自動的に、患者に対してホームワークを指示することが出来る(ステップS113)。ステップS113においては、介入後の評価に応じて、自動的に、次回の介入(システム100へのアクセス)を提案或いは指示することが出来る。これにより、改善するまでアクセスを繰り返す様にせしめることが出来る。また、ステップS113において、システム100にアクセスした患者は、治療に関連する或いは治療に役立つ動画や音楽、音声、その他のコンテンツ(例えばマインドフルネス瞑想)を順次視聴することが可能である(Tips)。Tipsでは、マインドフルネス瞑想、香り、音楽、映像、振動、好ましい食品/食事の情報等のコンテンツを提供する。この様なコンテンツは、五感を使うことにより治療効果とその持続、満足度を表す指標であるQOLの向上をもたらす。
上述した通り、ステップS2で認証を行った患者は直ちにステップS113に進んで、コンテンツの視聴を行うことが出来る。
ステップS113の後、ログアウトする(ステップS114)。ログアウト後、実際に通院する際には、システム100における介入や評価の記録、取得された日常生活下データを(医師が)参照しつつ、医師による診察/面接が行われる。
次に図7を参照して、2回目以降のアクセスの場合について説明する。
ステップS1、S2は図6で説明したのと同様である。前述したように、ログイン・認証パート10Hは、例えば処方IDとパスワードを発行し、アクセスしてきた患者の本人確認を行う。図示はされていないが、例えば予め患者本人の同意を取り付けて、アクセスする回数や最初にアクセスしてからの期間(治療期間)を適宜設定して、設定した回数や期間を超えた場合には非アクティベートすることが可能である。非アクティベートしてシステム100へのアクセスが出来なくなったとしても、担当医師の指示により、患者は再度システム100にアクセスすることが可能である。
そしてステップS13に進み、図6で説明したステップS3、S4、S6(問診、診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント)を実行する。そして、ステップS14に進む。図示されていないが、ステップS2で認証された患者は、ステップS3以降を実行することなく、直ちにS113(ホームワーク、Tips)に進むことが可能である。
ステップS3において、については第1回目のアクセスの際と同様な内容になると予想されるので、入力を省略することが可能である。
ステップS14では、問診、診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメントを参照して、評価パート10Dは患者が改善しているか否かを判断し、診断横断的(心理的柔軟性)測定指標と疾患横断的測定指標により、以前の介入の効果を測定する。ステップS14においても、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて日常生活下データを取得して、記録して、介入前後の効果測定の結果をグラフ等によりレポート形式に表現して、医師・患者に対してフィードバックすることが可能である。
評価パート10Dで改善したと判断された場合には(ステップS14がYes)、ステップS15に進む。
改善していないと判断された場合には(ステップS14がNo)、ステップS16に進む。ステップS16では、前回のアクセスの際に提示された治療モジュールを実行する。
図7では明示されていないが、図2を参照して説明したように、患者が直ちに治療モジュールの実行を望む場合には、ステップS2で認証された後、ステップS13、S14、S16を飛び越えて、直ちにステップS16に進むことが可能である。
改善していないと判断された場合において(ステップS14がNo)、所定の期間や回数だけ選択された治療モジュールを繰り返していても改善しないと判断されれば、モジュール選択パート10Bにおいて、第1回目のアクセスで選択されたその他の治療モジュールが提案される。
或いは、ステップS13の診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメントに基づいて、モジュール選択パート10Bで新たに治療モジュールが提案される。
ステップS17では、患者はシステム100からログアウトするか否かを選択する。ログアウトしない場合には治療モジュールを続行する(ステップS17がNoのループ)。
ステップS15(ステップS14がYesの場合)に、患者はシステム100からログアウトして、ステップS18に進む。
ステップS18では、例えば評価パート10Dにおいて、経過観察が必要か否かを判断する。その際、評価パート10Dでは、問診やインテーク、診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメントに基づいて、再発の可能性が判断される。そして、再発の可能性が有る場合(ステップS18がYes)、所定期間経過後、システム100側から患者側の情報端末にアクセスして、所定事項の問診等により経過観察が実行される(ステップS19)。
図6、図7では示されていないが、患者に対して、定期或いは不定期に治療用アプリ使用を促すリマインド通知や励まし等のメッセージを送信すること、ゲーム的な要素を応用することも可能である。さらに、システム100にアクセスすることについて患者に何かしらの報酬を与えることも可能である。そして、システム100にアクセスして治療用アプリを積極的に実行しようとする動機付けを高め、治療を継続する(治療用アプリを継続使用する)という「正」の行動を強化することが可能である。
これ等により、患者の継続使用の意欲(システム100にアクセスして治療モジュールを実行し続けたいという意欲)を高めて、治療途中でシステム100にアクセスしなくなる(治療途中で脱落する)事態を抑制し、システム100による治療効果(或いは治療用アプリの効果)を向上する。
図示はされていないが、診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント、治療モジュール(治療プラグラム:エクササイズ)、ワーク、ホームワーク、Tips、評価等を実行するに際して、スマートスピーカー等を用いて、音声による質問項目の読み上げ、指示、ガイダンスその他に対して、患者が音声により入力し、記録し、応答すること等を可能にして、音声により相互に作用する機能(インタラクティブな機能)を発揮する様に構成することが可能である。
また図示の実施形態においては、サーバー10に対して、疾病に対応したカスタマイズ、患者側のアプリケーションに対応させるカスタマイズ等を行うことが可能である。カスタマイズの手法については、公知技術を適用可能である。
明確には図示されていないが、図示の実施形態において、患者の服薬等の治療・行動を記録して、当該記録を医師がチェックすることが出来る。そのチェックは、医療機関側の情報処理端末4を介して行うことも出来るし、或いは直接、医師がチェックすることが出来る。
患者の治療・行動の記録を行うために、図示の実施形態では、例えば、患者側の情報処理端末3にカレンダー機能がインストルールされ、カレンダーの各日付に患者の服薬(治療)の記録や、行動記録(例えばED患者であれば性行為に関する記録)を記載できるように構成することが可能である。そして、カレンダーの各日付の記録を、医師がチェックすることが出来る。
また、図示の実施形態において、所定期間(例えば2週間)毎に医師による診察(患者が医療施設に通院して診察する場合、システム100に設けられたオンライン機能による診察を行う場合を含む)を実行し、当該患者の状況に対応して、治療方針や治療に用いられる薬剤の処方、ワークのセット等を決定することが出来る。その際に、改めてアセスメント(診断横断的アセスメント、疾患特異的アセスメント)を実行し、クラスタ分析に基く特定の集団への分類を行い、患者に提供するワーク等を新たに設定することが出来る。そして、改めて実行されたアセスメントの結果を、診察に活用することも可能である。
患者が属する特定の集団(例えばクラスタ1)を変更せず、日常生活下データ、EMAの変化に対応して、治療方針、処方、ワーク内容等を変更することが出来る。
所定期間毎に医師による診察を行い、新たなワークを提供することにより、患者毎にパーソナライズされた治療を提供することが出来る。これにより、最適な治療を提供出来る。
なお、医師による診察、新たに設定された治療方針、薬剤の処方、ワークのセット等については、データベース10F等に記録することが出来る。
図示の実施形態のシステム100によれば、患者の治療に際して、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする診断横断的アセスメントと、疾患の特定を行い、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかをアセスメントする疾患特異的アセスメントの結果に基づいて、その患者に最適な治療モジュールを提供することが出来る。
そして、選択された治療モジュールを実行した後、評価尺度を適用して治療効果の評価を評価パート10Dにより実施し、評価結果を患者にフィードバックすると共に、治療効果について良好な評価がされない場合には、評価結果をモジュール選択パート10Bに送信し、モジュール選択パート10Bで新たな治療モジュールが選択される。例えば、疾患特異的アセスメントの結果に基づいて選択された治療モジュールには効果が低かった場合に、診断横断的アセスメントの結果に基づいて選択された治療モジュールを提案することが可能である。
ここで、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得し、記録して、介入前後の効果測定の結果をグラフ等によりレポート形式に表現して、医師・患者に対してフィードバックすることも可能である。
診断横断的アセスメントパート10A1と疾患特異的アセスメントパート10A2とを併せ持つプラットフォームを構成する図示の実施形態では、「結果」ではなく、プロセスに着目する。例えば、心因性EDの患者であれば、「勃起しない」という症状が改善したか否かよりも、当該患者の心理社会的プロセスの段階が進み、心の柔軟性が向上したか否かに着目する。心理社会的プロセスの段階が進み、心の柔軟性が向上すれば、新しい行動パターンの獲得、学習が行われたことになり、上述の心因性EDの患者であれば、「勃起しなくとも大丈夫」、「パートナーとの付き合いは性行為が全てではない」と考え方の幅を広げることが出来て、その結果、心因性EDが治癒される。
そして図示の実施形態によれば、最適な治療モジュールを提供し以てプロセスベースドCBTによる治療を実行することで、患者毎、或いは疾患の種類毎にカスタマイズした上で一定の効果を上げることが可能である。そして、診断横断的なアセスメント、疾患特異的なアセスメントが量的測定指標を用いて実行されてクラスタ判定を行われることにより、治療のパーソナライズ化、最適化が図られる。例えば、うつ病、不安症、生活習慣病、慢性疼痛、性機能障害、心因性勃起障害(ED)、各種依存症等に対して、治療効果を発揮することが出来る。また、これらの疾患が合併していても治療効果を発揮することが出来る。
図示の実施形態のシステム100を適用することにより、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者が適応的に行動できていれば、血圧が安定し、血流が改善され、自律神経が調節されて免疫力が向上する。そのため、上述した様なサーバー10を有する実施形態のシステム100は、コロナウィルス等の感染症の予防に対しても適用可能である。
それに加えて図示の実施形態では、量的測定指標や客観的なモニタリング手法、クラスタ分析を用いることが出来るので、第三者に対してプログラムのアルゴリズムを明確に説明することが可能であり、実際の結果による証拠とすることが容易である。そのため、各種承認に必要なデータを用意することが容易になる。
図示はされていないが、図示の実施形態に係るシステム或いは方法を、複数名で一緒に使用することが可能である。例えば、EDや不妊症(男性、女性)の患者におけるパートナー、うつ病や不安障害の患者における家族や援助者等が治療等に必要な情報やコンテンツを患者と共有し、治療モジュールに係るエクササイズを患者と共同で実行することで患者と伴走し、疾患や援助の仕方についての理解と実践を深めることが出来る。これにより、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けて(アドヒアランス)、治療効果の向上を図ることが出来る。
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では主として心因性ED治療を例示しているが、本発明は、配偶者またはパートナーとの関係性の問題、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、不妊症(男性、女性)、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱(尿失禁)、アンチエイジング、更年期障害、月経前症候群(PMS)、心因性視覚障害、歯科心身症、醜形恐怖症等に対して、またこれらの疾患が合併していても適用可能である。
そして図示の実施形態では、複数の合併する疾患症状/状態のアセスメントが可能であり、パーソナライズされた最適な診断横断的治療法を提案或いは提供することが出来る。例えば、心因性EDのアプリにおいて、抑うつ、不安、糖尿等の合併傾向もアセスメントすることが出来る。或いは、複数の不定愁訴から更年期障害のアセスメントが出来る。
(心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患用の治療用アプリの例(不安症治療用アプリ))
システムの構成およびアセスメントの実施手順、EMA等の情報の収集や、医師及び患者の情報のやり取りなどは前述の治療用アプリと同様に行うことができる。
本発明の実施に際して、例えば社交不安の場合における特定の集団の分類(クラスタ分析)には、2つの指標「リーボヴィッツ社交不安尺度」LSAS-J、「全般的な心理的柔軟性」PFQを用いることができる。
これらの指標の評価結果に基づいてクラスタ分析を行い、例えば、下記のクラスタに分類する。
クラスタ1:極端に高い基準(完璧に流暢に話さなければならない、知的で気の利いた人に見られなければならない)、クラスタ2:条件付き信念(XであればYとなる)(もし違うことを言ったらバカにされる、不安になっていることに気づかれると悪く思われる、私に対する興味がなければ人は自分のことを私に話さない)、クラスタ3:無条件の信念(私はつまらない、浮いている、変わり者である、私は怪しい)
そして、前述の治療用アプリと同様に上記クラスタに応じたワークが患者に提供される(各種アプリの統合データベース)
図8に統合データベースの例を示した。図8(A)において、治療用プラットフォーム901、ED治療用アプリ群911,不安障害治療用アプリ群912、インターネット950、管理サーバ931、図8(B)において、治療用プラットフォーム902、ED治療用アプリ群911,不安障害治療用アプリ群912、インターネット950、ED治療用アプリ911の管理サーバ932、不安障害治療用アプリ群912の管理サーバ933、管理サーバ932と管理サーバ933のデータを統合制御するための統合サーバ934が含まれる。ここで、例として二つの治療用アプリがプラットフォームに含まれる例を示したが、治療用アプリの数はこれに限定されるものではなく、また、共通のデータを含むものであれば治療用アプリだけでなく、メンタルヘルスケアアプリ等もプラットフォームに加入することができる。
それぞれの治療用アプリ群には、それぞれの治療用アプリを実施可能な情報処理端末とそれを利用する患者等が含まれる。図8(A)は複数の治療用アプリを集中して管理する管理サーバが設けられるケース、図8(B)は治療用アプリごとに管理サーバが設けられるケースで、それぞれの管理サーバの共通データを利用可能とする制御を行う統合サーバが設けられている。統合サーバ934は、例えば、管理サーバ932の共通データを管理サーバ933の呼び出しに応じて利用可能に、または、その逆に利用可能としている。あるいは、管理サーバ932と管理サーバ933の共通データを統合サーバ934に記憶するようにし、異なる管理サーバのデータを共有可能としている。
図9には治療用プラットフォーム901の管理サーバ931に含まれる患者と評価値等のデータを示した。ここで、参照数字101,102,103,201,202は患者番号を示し、101,102~はED治療用アプリの利用者から取得したデータ、201,202~は不安障害治療用アプリの利用者から取得したデータを示している。指標やEMAデータについては一例にすぎず、他の指標や、EMA、その他のデータが含まれるように構成してもよい。図8に図示した場合においては、指標Aが複数のアプリに関して共通の認知行動療法に基づく診断横断的な尺度の入力結果を示し、指標BはED,指標Cは不安障害症といった、それぞれの疾患に特有の尺度の評価結果を示している。また、EMA_Aは日常生活下データとして体温を計測した結果、EMA_Bは日常生活下データとして血圧を計測した結果を示している。
本実施例では、この共通の尺度である指標Aの評価結果をED治療用アプリおよび不安障害治療用アプリの両者で共用することを特徴とする。従来はそれぞれのアプリごとにデータ管理が行われていたが、本発明は共通したデータを持つアプリのデータの共通部分を共用できるようにしたことを特徴とする。
図10は共通部分を利用したクラスタ分析の例を示す。図10(A)はED治療用アプリのクラスタ分析の一例、図10(B)には不安障害治療用アプリのクラスタ分析の一例を示した。図10(A)に示した、ED治療用アプリでは、患者に対して指標Aと指標Bの入力を患者の情報処理端末を介して則す。次に、管理サーバで入力から評価結果を算出する。続いて、管理サーバでは(1)指標Aの評価結果が30未満の場合はタイプAと、(2)指標Aの評価結果が30以上の場合、さらに、指標Bの評価値を比較し、40未満の場合はタイプCと、40以上の場合はタイプDとタイプ分けする。図10(B)に示した、不安障害治療用アプリでは、患者に対して指標Aと指標Cの入力を患者の情報処理端末を介して則す。次に、管理サーバで入力から評価結果を算出する。続いて、管理サーバでは(1)指標Aの評価結果が30未満の場合はタイプAと、(2)指標Aの評価結果が30以上の場合、さらに、指標Cの評価値を比較し、20未満の場合はタイプEと、20以上の場合はタイプFとタイプ分けする。
ここで、指標Aに基づいてタイプ分けされたタイプAおよびタイプBと、そのタイプに応じて処方されたその治療モジュール(ワーク)との治療効果のフィードバック結果を評価して、例えば、治療効果が低かった場合に、閾値を30から35に変えるなど、指標Aの評価結果と、タイプと治療効果の相関関係に応じて指標Aの評価値のクラスタ分析の際の閾値を変更することができる。ここで、タイプAとタイプBに処方されるワークが同一でなくても、類似したワーク等を処方されたものである場合、その閾値を双方のフィードバック結果を用いて変更することができる。つまり、従来のようにアプリごとのデータに基づいて評価値の閾値を変更する場合に比較して相関関係のデータ数が多くなり、数値をより最適化することができる。
本実施例では単純に共通するデータと、治療効果の観点から、統計解析の閾値の最適化をすることを示したが、例えば、関連する診断横断的な指標に基づく尺度と、治療効果などの関係を、特にAIを利用して分析することも可能である。ここで、統計解析にはAIによる分類も含まれる。
上述の実施例ではタイプ分け(パーソナライズ化)のクラスタ分析の最適化に異なる疾患に用いられる尺度の共通データを用いる例を示したが、それぞれのタイプへの処方の最適化に用いることもできる。図11に管理サーバに保存されている、タイプと処方の対応関係の一覧を示した。アセスメントブロックで症状・要因のタイプ分けが行われ、この一覧に応じて処方(ワーク)が提供される。図11(A)は元々、管理サーバに記憶されていたタイプと処方されるワークの対応表である。ここで、疾患の症状(あるいは要因)としてタイプAの修正を例として説明する。前述の図10で示したタイプ分けが行われるケースで、タイプC、タイプD、タイプE、タイプFにタイプ分けされたものをまず参照する。指標Aの評価値が比較的高い25~30のもので、タイプCとタイプE(いずれもワーク3が含まれる)の治療効果が低い場合、指標Aの評価値が高い群に対してのワーク3との治療効果が低いとし、一方でタイプDとタイプEを比較した際にタイプDのほうが治療効果が高いとき、ワーク3よりもワーク5のほうが指標Aの高値と相関が高いと判断され、対応表が更新され図11(B)のようにされ、以後、それぞれのタイプの処方は更新された対応表に従って行われる。ただし、治療効果が下がった場合に元に戻すことも検討される。本実施例では認知行動療法においてはタイプに応じて共通のワークが提供されるので相関がとりやすく都合がよい。
上述の説明では、管理サーバにアセスメントの機能を果たすブロックやデータベース等を持つものとして説明をしてきたが、システムのいずれかにこれらの機能があればよく例えばすべての機能をスマホに搭載させるようにしてもよい。また、電子カルテや健康診断などのヘルスケアプラットホームのデータベースと連携させ、それらに含まれる検査結果や治療データや健康状態を個人のデータとして追加して、分析に用いても良い。これらに優位なデータを選択したりする観点からもAIを用いると都合がよい。また、これらのデータベースを統合データベースとして利用してもよい。
心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患は複数の心因性疾患・ストレス関連疾患を併発することが多く複数な疾患症状を横断する尺度でアセスメントすることが有用で、特に認知行動療法ではその症状をもたらす認知・行動様式を特定するために診断横断的な尺度の利用が極めて有用である。そしてその共通である尺度を共有することでさらに疾患の理解、治療を向上することができるという効果が得られる。
(AIを使った指標の作成方法)
指標に用いられる文言と、治療効果との相関関係から、実際に治療効果と相関関係の強い文言を選択することによって効果的な指標を作成することができる。この相関関係についてはAIを使って行うことができる。ここで、指標とは主に文言を使った指標を意図しているが、視覚や聴覚を使った評価尺度も指標に含まれる。
(治療用アプリの適合性ルーチン)
治療用アプリは患者の症状により適合性が異なっている。例えば、うつ病の患者であれば、自殺願望がある場合、治療用アプリ単独での利用は危険を伴ない、医師による治療との連携が好ましい。また、2年以上うつ病を患っている患者は、認知の歪みを改善するためにも薬物療法との併用が望ましい。軽度あるいは中程度の場合は、治療用アプリ単独での治療が効果的である、あるいは、器質性の疾患で精神症状が全く出ていない場合には、治療用アプリの利用が効果が期待できない、といったように、治療用アプリの適合性をアセスメントすることはうつ病に限られず、すべての心因性疾患および心身症の症状の改善、治療の安全性のために有効である。システムはデータベース10Fに備えられたうつ病の尺度(うつ度チェック 簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)、0-5点、正常、6-15点、軽度から中程度、16点以上、重度)、ベッグ自殺念慮尺度(SSI)を読み出し、それを制御装置1が患者側の情報処理端末3に送信する。図12はこの適合性アセスメントのフロー図である。この例ではうつ病を例に示したが他の疾患でも適用できるのは言うまでもない。この例では、システムの制御装置1がユーザー端末を介して、QIDS-J、SSI、およびうつ病歴をユーザーに提示し、ユーザーの回答を得たら、結果をシステムの制御装置1へ伝送して、解析し、まずSSIの結果から自殺リスクの高い場合はシステムはユーザーに対して医療機関の受診勧奨を行う。次に、自殺リスクが高くない場合は、QIDS-Jの結果によって、うつ病の重症度を判定し軽・中度の場合は治療用アプリでの治療を開始する。また、重度の場合は図示しない医療機関端末と接続し、オンライン診療を行う、ここで、うつ病歴が2年以上であると、オンライン診療によって処方された薬物と治療用アプリの併用での治療を行う。ここで、薬物の服用履歴や服用計画などの服薬管理、オンライン診療の治療効果や治療スケジュール管理等を治療用アプリのシステムで行っても良い。この適合性アセスメントを前述のアセスメントと組み合わせ、あるいはその前に行うことによって改善効率を上げることができる。本アセスメントの詳細な実施方法は前述のアセスメントの手順や、公知の情報端末とユーザの入出力方法を参考に実現することができる。
(治療用アプリに基づくプログラム)
現在、多く流通している治療用アプリやメンタルヘルスアプリはその症状のみに着眼し、例えば、イライラしているときにイライラを解消する音楽を聴くといった手段のみを提供しているものが多い。こういったアプリでは一時的に症状を改善できる可能性はあるが、症状の原因を解消することはできない。本発明では、心因性疾患および心身症は、その患者の生物心理社会的要因に基づくという知見に基づき、複数のカテゴリ(リラクゼーション、ストレスマネジメント、認知の歪み改善、症状改善)の治療モジュールからなるプログラムを提供する。たとえば、最初に、診断横断的な治療用モジュールである、リラクゼーションのモジュール(斬新的弛緩法、腹式呼吸法、視覚的イメージ法など)を提供する、次に、ストレスマネジメントを改善するモジュール(行動振る舞いを振り返るワークなど)、次に、認知の歪みを改善するモジュール(シロクマ実験、認知再構成法など)を提供する、最後に、疾患特異的な治療モジュールである、症状を改善するモジュール(マインドフルネス、バイオフィードバック法、自律訓練法、自律神経を整える音楽、エクササイズなど)を提供するといったように、症状だけでなく、心因性疾患および心身症の原因に介入し、根治を目指す、あるいは治療の効率改善を目指すものである。そのために、システムはデータベース10Fにこれらの治療用のモジュールと、疾患あるいはアセスメントによるクラスタと、それらに対応した治療用のプログラムセットの対応関係を記録した入りストを記憶しており、患者と患者の情報処理端末とのアセスメントを行った後、疾患やアセスメント結果に基づくクラスタに対応した治療用のプログラムセットを用いて治療を開始することができる。プログラムに含まれるカテゴリと、カテゴリの中の治療モジュールとは、いずれかを用いるかはあらかじめ治療効率等に基づいて設定されているが、上述のように組み替えることも可能である。上述の例は、診断横断的な治療モジュールと疾患特異的な治療モジュールの組み合わせの例を示しているが、例えば、複数種類の疾患特異的な治療モジュールを用いるなど治療効率を考慮して組み合わせは適宜設計できることは言うまでもない。
(性格の考慮)
治療用アプリは患者に対してある一定期間、決められた治療計画(本発明ではプログラム)にしたがって治療モジュールを実施することを要求するものである。しかしながら、患者の性格やアプリへの慣れによってその実施状況は異なることが問題となる。そこで、患者に対して性格判断を行い、その性格判断結果によって入出力方法やUI/UX、治療プログラムを変化させると治療効率が向上する。具体的には、例えば、心理学研究の中で最も支持されている「ビッグファイブ理論」に基づく、性格診断テストを行い、その性格に応じて治療用モジュールを変化させる。
例えば、上述の診断横断的アセスメントや疾患特異的アセスメントに先立って、あるいはそののちにこの性格診断を行い、クラスタをさらに性格で細分する。データベース10Fにはクラスタに応じた治療用のプログラムセットを性格に応じて複数持っている。例えば、同じカテゴリに含まれる腹式呼吸法についても一つの治療モジュールだけでなく、ビッグファイブ分析で、外向性および開放性が高いユーザー向けには、ビジュアルを重視した動画に基づくモジュールで、あるいは、協調性および誠実性が高いものに向けては同じ内容を文章で細かく説明したモジュールとして提供する。このように、同じカテゴリの同じ効果を期待したモジュールであっても複数種類のものをデータベース10Fに記憶し、前述のようなリストで、アセスメントによるクラスタをさらに性格判断によって細分化したものと、治療用のプログラムセットとの対応関係の記録させ、治療時にその対応するプログラムセットを提供することで治療を実現する。これによってさらに治療効率を向上させることができる。このリストの対応関係も治療結果によって更新することも可能で、また対応関係をAIによって修正することもできる。本アセスメントの詳細な実施方法は前述のアセスメントの手順や、公知の情報端末とユーザの入出力方法を参考に実現することができる。ここでは性格の違いによって同じ効果を期待した、異なる表現型のモジュールを提供することを例示したが、例えば、文字表示のモジュールを音声提供のモジュールに代えるといった表現方法が変更される他のものでもよい(この場合はユーザの視聴覚の障害などに対応したものである)。こういった点で複数の自律神経を整えるための異なる楽曲を記憶するものとは異なっている。
(治療用アプリ・システムの機能モジュール例)
本件発明で提供される治療用アプリのシステムで提供される治療用プログラムの機能モジュールの例を示したものである。(a)は、治療用プログラムが診断横断的アセスメントモジュールおよび疾患特異的アセスメントモジュールを含み、双方のアセスメントのための項目の患者からの回答に基づいて患者のクラスタ分けを行い、そのクラスタに応じた診断横断的治療モジュールおよび疾患特異的治療モジュールを提供するものである。(b)は、治療用プログラムが疾患特異的アセスメントモジュールのみを含み、アセスメントのための項目の患者からの回答に基づいて患者のクラスタ分けを行い、そのクラスタに応じた診断横断的治療モジュールおよび疾患特異的治療モジュールを提供するものである。(c)は、治療用プログラムが診断横断的アセスメントモジュールのみを含み、アセスメントのための項目の患者からの回答に基づいて患者のクラスタ分けを行い、そのクラスタに応じた診断横断的治療モジュールおよび疾患特異的治療モジュールを提供するものである。(d)は、アセスメントモジュールを含まずに診断横断的治療モジュールおよび疾患特異的治療モジュールを提供するものである。これらのモジュールはソフトウェアとして構成され、サーバやユーザの情報処理端末で実現されるが、ソフトウェアではなく、それぞれの機能を持つハードウェアの組み合わせによって構成しても良い。また、それぞれの機能モジュールは完全にユーザの情報処理端末に含ませ、ユーザの情報処理端末がスタンドアローンで動作するものでも、それぞれの機能モジュールがサーバに含まれ、そのサーバと接続されたユーザの情報処理端末は表示や入出力のみに使われるもの、あるいは、機能モジュールをサーバとユーザの情報処理端末の双方に分けて含まれるものなどで実現できる。診断横断的アセスメントや診断横断的治療モジュールは典型的には心因性疾患や心身症に横断的にみられる精神的な特徴に向けられたものであり、疾患特異的アセスメントや診断横断的治療モジュールは、例えば、不眠症、月経随伴症状やEDなどの疾患に特異的な症状に向けられたものである。
(アプリ切り出し)
本実施例では、尺度の共有について説明する。図8(A)治療用プラットフォーム901における、ED治療用アプリ群911,不安障害治療用アプリ群912、管理サーバ931を用いて説明する。ここで、管理サーバ931に例えば尺度A、B、C、D、Eが含まれている。この尺度A、Bは診断横断的アセスメントのための尺度、尺度C、DはED治療用の疾患特異的な尺度、尺度Eは不安障害治療用の尺度である。それぞれの治療用アプリ911、912はアセスメントを実行するために、管理サーバ931にアクセスし、それぞれの治療に必要な所定の尺度を利用してアセスメントを行う。従来のアプリはそれぞれのアプリがそれぞれに尺度を備えていたので、尺度の更新が行われた場合にはそれぞれのダウンロードされたアプリ毎に情報を更新する必要があったが、本実施例の場合はサーバの尺度を更新するだけですむので効率が良い。
いままで述べてきた例では「治療」という言葉を使っているが、これは疾患の治療に限られず、セルフケア、メンタルヘルスの維持改善なども当然含まれる、また「患者」という言葉は健常人でもなんらかのメンタルの不調を抱えるものも含むことは言うまでもない。
複数の種類の異なる治療用アプリの共用データ部分を統合したプラットフォームを構築する。さらに、共通データと患者に与える効果との相関関係を蓄積することによって、治療法の改善、新たな治療法の発見につなげることができる。
1 制御装置
3 患者側の情報処理端末(例えばスマートフォン)
4 医療機関側の情報処理端末(例えばPC)
10 サーバー
10A1 診断横断的アセスメントパート
10A2 疾患特異的アセスメントパート
10B モジュール選択パート
10C 治療モジュールパート
10D 評価パート
10F データベース
10H ログイン・認証パート
100 システム

Claims (5)

  1. 共通する心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患の、複数のあるいは診断横断的な尺度を用いる、複数の異なる種類のアプリケーションプログラムと、
    前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムから取得される共通する尺度の評価データを統合して利用可能とされたデータベースと、
    前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムで入力された、心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態に横断的な評価に関する共通項目の統合された前記評価データと治療効果のフィードバックに基づいて統計解析やAIを用いて分析を行い、前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラム患者のタイプ分けの修正を行う分析ブロックと、を含むデータベースシステム。
  2. 共通する心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患の、複数のあるいは診断横断的な尺度を用いる、複数の異なる種類のアプリケーションプログラムと、
    前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムから取得される共通する尺度の評価データを統合して利用可能とされたデータベースと、
    前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムで入力された、心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態に横断的な評価に関する共通項目の統合された前記評価データと治療効果のフィードバックに基づいて統計解析やAIを用いて分析を行い、前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムであてがわれた処方のワークセットの修正を行う分析ブロックと、を含むデータベースシステム。
  3. 前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムがメンタルヘルスケアおよび/またはストレス関連疾患治療用のプログラムであり、前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムが特有の心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態の評価に関する非共通項目を含み、前記分析ブロックは前記共通項目と前記非共通項目とを用いて前記複数の異なる種類のアプリケーションプログラムの患者のタイプ分けの修正を行うことを特徴とする、心因性疾患・心身症・ストレス関連疾患症状や状態に関して用いられる請求項1のデータベースシステム。
  4. 前記分析ブロックによって、前記タイプ分けのアルゴリズムが修正されることを特徴とする請求項1に記載のデータベースシステム。
  5. 前記共通項目が、認知行動療法に基づく評価指標の尺度の評価である、請求項1ないし4のいずれかに記載のデータベースシステム。
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