JP7037803B2 - 腸蠕動音測定装置及び腸蠕動音測定プログラム - Google Patents

腸蠕動音測定装置及び腸蠕動音測定プログラム Download PDF

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Description

本発明は、被験者の腸蠕動音を測定する腸蠕動音測定装置及び腸蠕動音測定プログラムに関する。
腸は食物の消化の際に腸蠕動運動を行い、それに伴い腸蠕動音と呼ばれる音を発生させる。腸蠕動音は主に医療現場で腸閉塞等の病気の診断や、寝たきりの患者の体調管理に利用されている。しかしながら、被験者の腸蠕動音を聴取して健康状態を判断するには、経験やトレーニングが必要であり、腸蠕動音を聴取して健康状態の客観的な評価を行うことは難しい。被験者の腸の消化活動の変化を定量的に評価する方法が確立できれば、被験者が摂取した食品の消化の良し悪しや、被験者の体調等を客観的に評価することが可能になる。
そこで、被験者の腸音を自動的に記録して、コンピュータにより分析する装置が知られている(非特許文献1参照)。この非特許文献1には、食前と食後とで、腸音の周波数特性に特徴がある(差異がある)ことが記載されている。また、腸音を周波数解析することにより、腸蠕動音を検出するようにした装置も知られている(特許文献1参照)。
特開2013-150723号公報
「コンピュータズ・イン・バイオロジー・アンド・メディスン(Computers in Biology and Medicine)」、(英国)、ペルガモン・プレス(Pergamon Press)、1975年、第4巻、P. 247-256
しかしながら、上記非特許文献1及び上記特許文献1に開示された技術を用いて、腸音を周波数解析するだけでは、精度よく、腸蠕動音を測定することが難しい。その理由は、以下の通りである。すなわち、被験者の腹部で発生する腹部音(腸音)には、腸蠕動音だけではなく、胃蠕動音及び飢餓収縮音が混じっているが、胃蠕動音及び飢餓収縮音は、複数の周波数に音圧のピークを有しており、腸蠕動音の周波数帯に含まれるピークも有している。このため、周波数解析で腸蠕動音が含まれる周波数帯の音を取り出したとしても、その音には、胃蠕動音、飢餓収縮音の成分が含まれることとなるためである。食後には、胃蠕動運動が活発になるため、胃蠕動音が腸蠕動音の測定に及ぼす影響が大きくなる。
本発明は、上記課題を解決するものであり、食事摂取が腸蠕動音の測定に及ぼす影響を判定することが可能な腸蠕動音測定装置及び腸蠕動音測定プログラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様による腸蠕動音測定装置は、被験者の腸蠕動音を測定する腸蠕動音測定装置において、被験者の腹部で発生する腹部音を取得する腹部音取得部と、前記腹部音取得部で取得した所定時間分の腹部音から、主に腸蠕動音に対応する周波数帯域である第1周波数帯域に含まれる第1音成分を抽出する第1帯域フィルタと、前記腹部音取得部で取得した所定時間分の腹部音から、前記第1周波数帯域の最高周波数よりも最高周波数が高い、第2周波数帯域に含まれる第2音成分を抽出する第2帯域フィルタと、前記第1帯域フィルタにより抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と、前記第2帯域フィルタにより抽出された、所定時間分の第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、前記第2音成分の音量の積算値が占める割合、又は前記第1音成分の音量の積算値と前記第2音成分の音量の積算値との比較結果に基づいて、前記被験者の食事摂取の有無を判定する食事摂取判定部とを備える。ここで、上記の「主に腸蠕動音に対応する周波数帯域」とは、腸蠕動音が存在する主な周波数帯域であり、空腹時の飢餓収縮音、及び食事による胃蠕動音よりも、腸蠕動音の比率が高い周波数帯域を意味する。
この腸蠕動音測定装置において、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を判定する影響度判定部をさらに備え、前記影響度判定部は、前記第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上の場合には、前記第1音成分の音量の積算値が大きい程、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定すると共に、前記第2音成分の音量の積算値が大きい程、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を大きいと判定し、前記第2音成分の音量の積算値が前記閾値未満の場合には、前記第2音成分の音量の積算値が前記閾値以上の場合と比較して、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響が小さいと判定してもよい。
この腸蠕動音測定装置において、前記影響度判定部は、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度の判定において、前記第2音成分の音量の積算値の大きさが前記影響度に及ぼす影響を、前記第1音成分の音量の積算値の大きさが前記影響度に及ぼす影響よりも大きくしてもよい。
この腸蠕動音測定装置において、前記第1音成分の音量の積算値と前記影響度判定部により判定された前記影響度とに基づいて、前記影響度を考慮した前記被験者の腸蠕動能力を判定する腸蠕動能力判定部と、前記腸蠕動能力判定部による判定結果に基づいて、前記被験者の腸蠕動能力に関する情報を表示部に表示するように制御する表示制御部とをさらに備えてもよい。
この腸蠕動音測定装置において、前記被験者の腸蠕動能力に関する情報を含む情報を表示する前記表示部をさらに備えてもよい。
この腸蠕動音測定装置において、前記腸蠕動音測定装置に与えられる加速度を検出する加速度検出部と、前記加速度検出部により検出された加速度の大きさが所定の閾値以上である場合に、前記第1周波数帯域と前記第2周波数帯域の少なくとも一方から、前記腸蠕動音測定装置と前記被験者の服とがこすれることに起因する雑音が発生し易い周波数帯域を除去して、前記第1周波数帯域と前記第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くすると共に、前記第1周波数帯域と前記第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くしたことが前記第1音成分と前記第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値に与える影響を軽減するために、前記第1音成分と前記第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値が大きくなるように補正する帯域調整部とをさらに備えてもよい。
この腸蠕動音測定装置において、直近の食事の摂取時刻を取得する食事摂取時刻取得部と、前記食事摂取時刻取得部により取得した直近の食事の摂取時刻と、前記第2音成分の音量の積算値とに基づいて、現時点から前記食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定する消化時間推定部とをさらに備えてもよい。
この腸蠕動音測定装置において、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定する消化時間推定部をさらに備え、前記腸蠕動音測定装置による前記被験者の腸蠕動音の測定が、所定の時間間隔を超えない2つの時点で行われたときは、前記消化時間推定部は、1回目の測定における前記第2音成分の音量の積算値と2回目の測定における前記第2音成分の音量の積算値との差分と、前記1回目の測定と前記2回目の測定の時間差とに基づいて、現時点から前記食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定してもよい。
本発明の第2の態様による腸蠕動音測定プログラムは、被験者の腹部で発生する腹部音を取得する工程と、前記腹部音を取得する工程で取得した所定時間分の腹部音から、主に腸蠕動音に対応する周波数帯域である第1周波数帯域に含まれる第1音成分を抽出する工程と、前記腹部音を取得する工程で取得した所定時間分の腹部音から、前記第1周波数帯域の最高周波数よりも最高周波数が高い、第2周波数帯域に含まれる第2音成分を抽出する工程と、前記第1音成分を抽出する工程で抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と、前記第2音成分を抽出する工程で抽出された、所定時間分の第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、前記第2音成分の音量の積算値が占める割合、又は前記第1音成分の音量の積算値と前記第2音成分の音量の積算値との比較結果に基づいて、前記被験者の食事摂取の有無を判定する工程と、をコンピュータに実行させる。
本発明によれば、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合、又は第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との比較結果に基づいて、被験者の食事摂取の有無を判定するようにした。ここで、被験者の腹部で発生する腹部音のうち、主に腸蠕動音に対応する第1周波数帯域よりも最高周波数が高い第2周波数帯域に含まれる第2音成分には、食事による胃蠕動運動に起因する胃蠕動音の音成分が多く含まれている。従って、上記の所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合が所定のレベル以上になると、被験者が食後の状態であり(被験者の食事摂取が有りで)、第2音成分の音量の積算値が占める割合が所定のレベル未満になると、被験者が食後の状態でない(被験者の食事摂取が無い)と判定することができる。また、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との比較結果を用いても、上記と同様に、被験者が食後の状態である(被験者の食事摂取が有る)か、被験者が食後の状態でない(被験者の食事摂取が無い)かを判定することができる。そして、被験者が食後の状態であるとき(被験者の食事摂取が有りのとき)には、食事摂取が腸蠕動音の測定に及ぼす影響が大きい状態であると判定し、被験者が食後の状態ではない(被験者の食事摂取が無い)ときには、被験者が食後の状態であるときと比較して、食事摂取が腸蠕動音の測定に及ぼす影響が少ない(無視できる)状態であると判定することができる。
(a)(b)は、それぞれ、本発明の一実施形態の腸蠕動音測定装置の正面図と背面図。 同腸蠕動音測定装置の電気的ブロック構成図。 同腸蠕動音測定装置のCPUにより実現される機能ブロック構成図。 同腸蠕動音測定装置における腸蠕動音測定処理のフローチャート。 同腸蠕動音測定装置における腸蠕動音測定処理のフローチャート。 同腸蠕動音測定装置において、第1音成分と第2音成分の音量の積算値の合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合の食事前後における変化を示すグラフ。 同腸蠕動音測定装置における、食事による胃蠕動が活発であるか否かの判定方法を示す図。 同腸蠕動音測定装置における、腸蠕動(運動)の活性度合の判定方法を示す図。 同腸蠕動音測定装置における、胃蠕動(運動)の状態(活性度合)の判定方法を示す図。 食後における上記第2音成分の音量の積算値の変化を示すグラフ。 同腸蠕動音測定装置における、消化完了までに要する時間の推定方法を説明するためのグラフ。 同腸蠕動音測定装置における、摂取した食品の消化の良し悪し、腹持ち、及び食事量の判定方法を示す図。 同腸蠕動音測定装置における、食事摂取の有無の判定方法を示す図。 同腸蠕動音測定装置における、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度の判定表を示す図。 同腸蠕動音測定装置において、食後の第2音成分の音量の積算値が閾値以上になる場合における、食事摂取前後の第1音成分と第2音成分の音量の積算値の変化を示すグラフ。 同腸蠕動音測定装置において、食後の第2音成分の音量の積算値が閾値未満である場合における、食事摂取前後の第1音成分と第2音成分の音量の積算値の変化を示すグラフ。
以下、本発明を具体化した実施形態による腸蠕動音測定装置について、図面を参照して説明する。
<1.腸蠕動音測定装置の構成>
図1(a)は、本実施形態による腸蠕動音測定装置1の表面(正面)2を示し、図1(b)は、上記腸蠕動音測定装置1の裏面(背面)3を示す。図1(a)に示されるように、腸蠕動音測定装置1は、その表面2に、表示部4と、操作部5と、電池蓋6とを備えている。表示部4は、被験者(ユーザ)への操作の案内や、測定結果を表示するための表示装置であり、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されている。表示部4により表示される情報には、被験者の腸蠕動能力に関する情報が含まれている。操作部5は、被験者が各種の指示や情報を入力するための各種のキーを有している。操作部5により入力される情報には、被験者の直近の食事の摂取時刻が含まれる。操作部5は、請求項における食事摂取時刻取得部に相当する。電池蓋6は、腸蠕動音測定装置1の表面2に設けられた電池着脱用の口(電池取り出し口)から、電池15(図2参照)が脱落するのを防ぐための蓋である。また、図1(b)に示されるように、腸蠕動音測定装置1は、その裏面3に、被験者の腹部で発生する腹部音を取得するためのマイクロフォン7(請求項における「腹部音取得部」)を備えている。
図2は、上記の腸蠕動音測定装置1の電気的ブロック構成を示す。図に示されるように、腸蠕動音測定装置1は、上記の表示部4、操作部5、及びマイクロフォン7に加えて、CPU10と、メモリ11と、NFCアンテナ12と、ICタグの機能を有するNFC通信制御IC13と、加速度センサ14と、電池15とを備えている。CPU10は、メモリ11に格納されたプログラムに基づいて、後述する被験者の腸蠕動音の測定処理等の各種の演算処理や、腸蠕動音測定装置1内の各種回路の制御処理を行う。メモリ11は、腸蠕動音測定プログラム16を含む各種のプログラムと各種のデータを記憶する。NFCアンテナ12は、NFC通信用のアンテナである。NFC通信制御IC13は、NFCアンテナ12を介して、NFC通信のリーダライタ側の情報通信装置との間で、NFC通信を行うための通信制御用のICである。加速度センサ14は、腸蠕動音測定装置1に与えられる加速度を検出して、CPU10に出力する。電池15は、腸蠕動音測定装置1内の各回路に電源を供給する。上記の加速度センサ14は、請求項における加速度検出部に相当する。加速度センサ14からの出力値は、後述する「服すれ」が発生し易い状況であるか否かの検出に用いられるが、加速度センサ14は、この「服すれ」が発生し易い状況であるか否かの検出にのみ用いられる、専用の加速度センサであってもよく、上記の検出以外の用途と共用される、共用の加速度センサであってもよい。
図3に示されるように、CPU10は、第1帯域フィルタ21と、第2帯域フィルタ22と、帯域調整部23と、食事摂取判定部24と、影響度判定部25と、腸蠕動能力判定部26と、表示制御部27と、消化時間推定部28と、消化良否食事量推定部29とを備えている。なお、これらの各機能ブロックは、マイコンが有する基本的な機能ブロックを用いて作成した回路である。
上記の第1帯域フィルタ21は、マイクロフォン7で取得した所定時間分の腹部音から、主に腸蠕動音に対応する周波数帯域(腸蠕動音が存在する主な周波数帯域であり、空腹時の飢餓収縮音、及び食事による胃蠕動音よりも、腸蠕動音の比率が高い周波数帯域)である第1周波数帯域に含まれる第1音成分を抽出する。第2帯域フィルタ22は、マイクロフォン7で取得した所定時間分の腹部音から、上記の第1周波数帯域の最高周波数よりも最高周波数が高い、第2周波数帯域に含まれる第2音成分を抽出する。
帯域調整部23は、加速度センサ14により検出された加速度の大きさが所定の閾値以上である場合に、上記の第1周波数帯域から、腸蠕動音測定装置1と被験者の服とがこすれること(以下、「服すれ」という)に起因する雑音が発生し易い周波数帯域を除去して、第1周波数帯域の帯域幅を狭くすると共に、第1周波数帯域の帯域幅を狭くしたことが第1音成分の音量の積算値に与える影響を軽減するために、第1音成分の音量の積算値が大きくなるように補正する。なお、上記の服すれに起因する雑音は、複数の周波数帯域(例えば、上記の第1周波数帯域と第2周波数帯域)に含まれる場合もある。
食事摂取判定部24は、第1帯域フィルタ21により抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値(総和)と、第2帯域フィルタ22により抽出された、所定時間分の第2音成分の音量の積算値(総和)との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合に基づいて、被験者の食事摂取の有無を判定する。
上記の「第1音成分の音量」とは、具体的には、マイクロフォン7からの出力値(腹部音)を第1帯域フィルタ21で処理した後のサンプリングデータ(第1帯域フィルタ21からの出力値のサンプリングデータ)の出力レベルを意味し、「所定時間分の第1音成分の音量の積算値」とは、第1帯域フィルタ21による抽出処理後における所定時間分のサンプリングデータの出力レベルの積算値を意味する。また、上記の「第2音成分の音量」とは、マイクロフォン7からの出力値を第2帯域フィルタ22で処理した後のサンプリングデータ(第2帯域フィルタ22からの出力値のサンプリングデータ)の出力レベルを意味し、「所定時間分の第2音成分の音量の積算値」とは、第2帯域フィルタ22による抽出処理後における所定時間分のサンプリングデータの出力レベルの積算値を意味する。なお、本実施形態では、上記の「第1音成分の音量」及び「第2音成分の音量」として、音量をdBで表したものを用いている。
上記の第1音成分の音量の積算値が算出される「所定時間」と、第2音成分の音量の積算値が算出される「所定時間」とは、同じ時間であることが好ましい。第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値とは、いずれも、マイクロフォン7で取得した所定時間分の腹部音から算出されるからである。ただし、第1音成分の音量の積算値が算出される所定時間と第2音成分の音量の積算値が算出される所定時間とを異なる時間に設定した場合にも、後述する閾値(図4のS8の判定で用いる閾値(図7における閾値)、及び図5のS19の判定で用いる閾値(図13における閾値))と、図14の判定表における各値を調整すれば、対応可能である(正確な判定を行うことができる)。
影響度判定部25は、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を判定する。腸蠕動能力判定部26は、第1帯域フィルタ21により抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と、影響度判定部25により判定された影響度とに基づいて、この影響度を考慮した被験者の腸蠕動能力を判定する。表示制御部27は、腸蠕動能力判定部26による判定結果に基づいて、被験者の腸蠕動能力に関する情報を表示部4に表示するように制御する。
消化時間推定部28は、操作部5により入力された(取得した)直近の食事の摂取時刻と、第2帯域フィルタ22により抽出された、所定時間分の第2音成分の音量の積算値とに基づいて、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定する。ただし、同じ被験者に対して、腸蠕動音測定装置1による腸蠕動音の測定が、所定の時間間隔を超えない2つの時点で行われたときは、消化時間推定部28は、1回目の測定における第2音成分の音量の積算値と2回目の測定における第2音成分の音量の積算値との差分と、1回目の測定と2回目の測定の時間差とに基づいて、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定する。
消化良否食事量推定部29は、消化時間推定部28による推定結果(現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間の推定値)と、操作部5により入力された直近の食事の摂取時刻とに基づいて、摂取した食品の消化の良し悪し(腹持ち)、又は食事量を判定する。
<2.腸蠕動音測定装置の動作(腸蠕動音測定プログラムによる処理)>
図4及び図5は、腸蠕動音測定装置1において、腸蠕動音測定プログラム16に基づき、CPU10が行う腸蠕動音測定処理のフローチャートである。CPU10がメモリ11に記憶された腸蠕動音測定プログラム16を読み込んで処理することにより、コンピュータである腸蠕動音測定装置1は、以下に説明する腸蠕動音測定処理の各工程を実行する。被験者(ユーザ)が、操作部5を用いて、腸蠕動音測定処理の開始を指示すると、CPU10は、直近の食事摂取時刻を入力するか、入力しないかの選択を被験者に促すための表示を、表示部4に出力する。この表示に応じて、被験者は、操作部5により、直近の食事摂取時刻を入力するか、又は直近の食事摂取時刻の入力を行わない旨の選択入力を行う(S1)。
上記S1の処理が終了すると、CPU10は、腸蠕動音を拾い易い(採取し易い)場所である下行結腸周辺の腹部音を、マイクロフォン7により一定時間検出(取得)する処理を開始する(S2)。CPU10は、マイクロフォン7により取得した一定時間分の腹部音に対して、第1帯域フィルタ21及び第2帯域フィルタ22の2種類の帯域フィルタをかけて、第1音成分及び第2音成分の音量の積算値を算出する(S3乃至S7)。第1帯域フィルタ21の通過帯域(第1周波数帯域)は、主に腸蠕動音に対応する周波数帯域である。また、第2帯域フィルタ22の通過帯域(第2周波数帯域)は、第1周波数帯域の最高周波数よりも最高周波数が高く、腹部音のうち、主に、飢餓収縮音、又は食事による胃蠕動音(胃蠕動(運動)に起因する音)に対応する周波数帯域である。
本実施形態では、加速度センサ14の出力値(加速度センサ14により検出された加速度の大きさ)が所定の閾値未満であるか否かに応じて、CPU10の帯域調整部23が、上記の第1帯域フィルタ21及び第2帯域フィルタ22の通過帯域を調整する。すなわち、加速度センサ14の出力値が所定の閾値未満である場合には(加速度センサ14を所持した被験者の体動が、所定のレベル未満であるときには)(S3でYES)、上記の服すれに起因する雑音の影響は少ないと考えられるので、帯域調整部23は、後述する通過帯域の調整処理を行わず、第1帯域フィルタ21の通過帯域(第1周波数帯域)、及び第2帯域フィルタ22の通過帯域(第2周波数帯域)を、初期設定の範囲のままにする。初期設定では、第1周波数帯域は、200Hz~500Hzであり、第2周波数帯域は、500Hz~2000Hzである。
上記の加速度センサ14の出力値が所定の閾値未満である場合には(S3でYES)、CPU10は、マイクロフォン7により取得した一定時間分の腹部音に対して、第1帯域フィルタ21及び第2帯域フィルタ22の2種類の帯域フィルタをかけた後(S4)、第1帯域フィルタ21により抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と、第2帯域フィルタ22により抽出された、所定時間分の第2音成分の音量の積算値とを算出する(S5)。
これに対して、上記の加速度センサ14の出力値が所定の閾値以上である場合には(加速度センサ14を所持した被験者の体動が、所定のレベル以上のときには)(S3でNO)、上記の服すれに起因する雑音の影響が大きくなるので、CPU10の帯域調整部23は、第1帯域フィルタ21の通過帯域(第1周波数帯域)、及び第2帯域フィルタ22の通過帯域(第2周波数帯域)を、調整する(初期設定から変更する)。具体的には、帯域調整部23は、上記の第1帯域フィルタ21の通過帯域(第1周波数帯域)、及び第2帯域フィルタ22の通過帯域(第2周波数帯域)から、上記の服すれに起因する雑音が発生し易い周波数帯域を除去して、第1周波数帯域及び第2周波数帯域の帯域幅を狭くする。例えば、帯域調整部23は、第1帯域フィルタ21の通過帯域(第1周波数帯域)を、400Hz~500Hzに調整し(狭め)、第2帯域フィルタ22の通過帯域(第2周波数帯域)を、500Hz~1000Hzに調整する(狭める)。
そして、CPU10の帯域調整部23は、マイクロフォン7により取得した一定時間分の腹部音に対して、上記の帯域調整後の(服すれによる雑音の発生し易い周波数帯域を避けた)第1帯域フィルタ21及び第2帯域フィルタ22をかけた後(S6)、帯域調整後の第1帯域フィルタ21と第2帯域フィルタ22とにより抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値とを、元の(初期設定の通過帯域の)第1帯域フィルタ21と第2帯域フィルタ22とにより抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値とに相当する数値に補正(変換)する(S7)。すなわち、帯域調整部23は、上記の第1周波数帯域と第2周波数帯域の帯域幅を狭くしたことが第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値とに与える影響を軽減するために、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値とが大きくなるように補正する。
具体的には、例えば、帯域調整部23は、上記のように、第1帯域フィルタ21の通過帯域(第1周波数帯域)を、初期設定の200Hz~500Hzから、400Hz~500Hzに調整した(狭めた)場合には、下記の式(1)を用いて、第1音成分の音量の積算値を、元の(初期設定の通過帯域の)第1帯域フィルタ21により抽出された、第1音成分の音量の積算値に相当する数値に補正(変換)する。なお、下記の式(1)において、「調整後の第1音成分の音量の積算値」とは、上記の帯域調整部23により通過帯域を狭められた第1帯域フィルタ21により抽出された、第1音成分の音量の積算値を意味し、「元の第1音成分の音量の積算値への変換値」とは、上記の「調整後の第1音成分の音量の積算値」を、元の(初期設定の通過帯域の)第1帯域フィルタ21により抽出された、第1音成分の音量の積算値に相当する数値に変換した値を示す。
(元の第1音成分の音量の積算値への変換値)=(調整後の第1音成分の音量の積算値)*((500-200)/(500-400))・・・(1)
また、帯域調整部23は、上記のように、第2帯域フィルタ22の通過帯域(第2周波数帯域)を、初期設定の500Hz~2000Hzから、500Hz~1000Hzに調整した(狭めた)場合には、下記の式(2)を用いて、第2音成分の音量の積算値を、元の(初期設定の通過帯域の)第2帯域フィルタ22により抽出された、第2音成分の音量の積算値に相当する数値に補正(変換)する。なお、下記の式(2)において、「調整後の第2音成分の音量の積算値」とは、上記の帯域調整部23により通過帯域を狭められた第2帯域フィルタ22により抽出された、第2音成分の音量の積算値を意味し、「元の第2音成分の音量の積算値への変換値」とは、上記の「調整後の第2音成分の音量の積算値」を、元の(初期設定の通過帯域の)第2帯域フィルタ22により抽出された、第2音成分の音量の積算値に相当する数値に変換した値を示す。
(元の第2音成分の音量の積算値への変換値)=(調整後の第2音成分の音量の積算値)*((2000-500)/(1000-500))・・・(2)
CPU10は、上記S5の処理で算出された所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値、又は上記S7の変換処理後の、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値とに相当する数値(変換値)に基づいて、下記のS8以降の処理を行う。以下の説明において、「第1音成分の音量の積算値」には、上記S5の処理で算出した(第1帯域フィルタ21による抽出後の)所定時間分の第1音成分の音量の積算値と、上記S7の変換処理で求めた、所定時間分の第1音成分の音量の積算値に相当する数値(変換値)との両方が含まれる。また、「第2音成分の音量の積算値」には、上記S5の処理で算出した(第2帯域フィルタ22による抽出後の)所定時間分の第2音成分の音量の積算値と、上記S7の変換処理で求めた、所定時間分の第2音成分の音量の積算値に相当する数値(変換値)との両方が含まれる。
CPU10(の主に、食事摂取判定部24)は、S8の判定処理において、上記の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合が所定の閾値以上であるか否かを判定する。この判定は、食事による胃蠕動(運動)が活発であるか否かを判別するために行われる。具体的には、CPU10は、下記の式(3)を用いて、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合a(%)を求める。
a=((第2音成分の音量の積算値)/(第1音成分の音量の積算値+第2音成分の音量の積算値))*100・・・(3)
図6のグラフの縦軸は、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合aに対応している。図6に示すように、第2音成分の音量の積算値が占める割合aは、一般に、食事の直後には、上記の閾値以上の値になる。従って、図7に示すように、上記の割合aが、閾値以上の場合には、食後の状態であり、食事による胃蠕動が活発であると判定することができ、割合aが、閾値未満の場合には、食後の状態ではなく、空腹時の飢餓収縮が活発であるか、又は胃蠕動も、飢餓収縮も、活発でないと判定することができる。
従って、CPU10は、S8の判定処理において、上記の第2音成分の音量の積算値が占める割合aが所定の閾値以上であるときには(S8でYES)、「食事による胃蠕動が活発」であり、(胃蠕動音が)腸蠕動音測定に及ぼす影響が大きいと判定して、その旨を、表示部4に表示する(S9)。
上記S8の判定処理において、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合aではなく、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との比a´を所定の閾値と比較することにより、「食事による胃蠕動が活発」であるか否かを判定してもよい。この比a´は、例えば、下記の式(4)を用いて求める。請求項における「前記第1音成分の音量の積算値と前記第2音成分の音量の積算値との比較結果」には、この第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との比a´が、含まれる。
a´=((第2音成分の音量の積算値)/(第1音成分の音量の積算値))*100・・・(4)
上記S8の判定処理において、上記の第2音成分の音量の積算値が占める割合a(又は第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との比a´)が所定の閾値未満であるときには(S8でNO)、CPU10は、第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上であるか否かを判定する(S10)。この判定の結果、第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上の場合には(S10でYES)、CPU10は、「空腹時の飢餓収縮が活発」であり、(飢餓収縮音が)腸蠕動音測定に及ぼす影響が大きいと判定して、その旨を、表示部4に表示する(S11)。
これに対して、上記の第2音成分の音量の積算値が占める割合a(又は上記の比a´)が所定の閾値未満であり(S8でNO)、かつ、第2音成分の音量の積算値が所定の閾値未満の場合には(S10でNO)、食事による胃蠕動音も、空腹時の飢餓収縮音も、腸蠕動音測定に及ぼす影響が小さいので、CPU10は、S9及びS11におけるようなワーニング(警告)表示を行わず、図5におけるS12の処理に進む。
図5中のS12の処理では、CPU10は、第1音成分の音量の積算値から、腸蠕動(運動)の活性度合を判定して、その判定結果を表示部4に表示する(S12)。具体的には、b=(第1音成分の音量の積算値)とすると、CPU10は、図8に示すように、bが上限の閾値より大きいときは、腸蠕動(運動)が活発であると判定して、表示部4に、「腸蠕動が活発です」と表示する。また、CPU10は、bが、下限の閾値以上で、上限の閾値以下のときは、腸蠕動(運動)が通常の状態であると判定して、表示部4に、「腸蠕動が通常です」と表示する。また、CPU10は、bが、下限の閾値未満のときは、腸蠕動(運動)が脆弱であると判定して、表示部4に、「腸蠕動が脆弱です」と表示する。上記図8において、上限の閾値と下限の閾値とは、腸蠕動(運動)が通常の状態である場合における、第1音成分の音量の積算値の上限値と下限値とを示す。
次に、CPU10は、第2音成分の音量の積算値から、胃蠕動(運動)の状態(活性度合)を判定して、その判定結果を表示部4に表示する(S13)。具体的には、c=(第2音成分の音量の積算値)とすると、CPU10は、図9に示すように、cが上限の閾値より大きいときは、胃蠕動(運動)が活発であると判定して、表示部4に、「胃蠕動が活発です」と表示する。また、CPU10は、cが、下限の閾値以上で、上限の閾値以下のときは、胃蠕動(運動)が通常の状態であると判定して、表示部4に、「胃蠕動が通常です」と表示する。また、CPU10は、cが、下限の閾値未満のときは、胃蠕動(運動)が脆弱であると判定して、表示部4に、「胃蠕動が脆弱です」と表示する。上記図9において、上限の閾値と下限の閾値とは、胃蠕動(運動)が通常の状態である場合における、第2音成分の音量の積算値の上限値と下限値とを示す。
次に、CPU10は、上記S1の処理において、直近の食事摂取時刻の入力が有ったか否かの判定を行う(S14)。この判定の結果、直近の食事摂取時刻の入力が有った場合には(S14でYES)、CPU10の消化時間推定部28は、操作部5により入力された直近の食事の摂取時刻と、第2音成分の音量の積算値とに基づいて、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間(以下、「消化完了までに要する時間」と略す)を推定する(S15)。
次に、上記の消化完了までに要する時間の推定方法について、図10及び図11を参照して説明する。図10及び図11において、「時間」は、直近の食事摂取時刻から現時点までの経過時間を示し、cは、(所定時間分の)第2音成分の音量の積算値を示す。また、図11に示すグラフの横軸は、上記のc(第2音成分の音量の積算値)と、「時間」(直近の食事摂取時刻から現時点までの経過時間)とを乗じた値である。図10は、上記のc(第2音成分の音量の積算値)の経時的変化についての5つの実測データと、これらの実測データの近似曲線を示す。なお、図10において、下から一番目の実測データの近似曲線と、下から二番目の実測データの近似曲線は、重なっている。
上記図9の説明で述べたように、cが大きい程、胃蠕動(運動)が活発であるので、食事の摂取量及び摂取した食事のカロリーが同じであれば、図11に示すcが大きい程、上記の消化完了までに要する時間は、短くなる。また、図11に示す「時間」(直近の食事摂取時刻から現時点までの経過時間)が長くなる程、上記の消化完了までに要する時間(現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間)は、短くなる。従って、図11において、横軸(c×「時間」)の値が大きくなればなる程、上記の消化完了までに要する時間は、短くなる。
上記の(c×「時間」)の値が大きくなればなる程、上記の消化完了までに要する時間が短くなるという原理と、(c×「時間」)と上記の消化完了までに要する時間との対応関係の実測データ(図11にダイヤ印で示す)の分布に基づいて、CPU10の消化時間推定部28は、例えば、下記の式(5)により、上記の消化完了までに要する時間を推定する。
y=K-Kx+K・・・(5)
上記式(5)において、yは、上記の消化完了までに要する時間(現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間)であり、K、K、及びKは、係数であり、xは、上記の(「時間」(直近の食事摂取時刻から現時点までの経過時間)×c(第2音成分の音量の積算値))である。上記の係数K、K、及びKは、図11にダイヤ印で示すような、予め求めた実測データの分布に基づいて、統計的に算出された値であり、メモリ11に記憶されている。なお、上記の式(5)は、2次関数の式であるが、1次関数、指数関数等の式であってもよい。また、食事の摂取量及び摂取した食事のカロリーを考慮して、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定してもよい。具体的には、上記の式(5)等の(現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの)所要時間の推定式に、食事の摂取量及び摂取した食事のカロリーに関係する変数を含む項を追加してもよい。
また、今回の腸蠕動音測定処理が、前回の腸蠕動音測定処理から所定時間内に行われた場合(第2音成分の音量の積算値が、所定の時間間隔を超えない2つの時点で測定されたとき)は(S16でYES)、CPU10の消化時間推定部28は、前回(1回目)と今回(2回目)の測定結果(第2音成分の音量の積算値)を用いて、より正確な消化完了までに要する時間の推定処理を行う(S17)。なお、前回の測定と今回の測定との時間間隔は、消化が進行中だとすると、消化の進み度合いが現れやすい時間間隔であることが好ましく、例えば、1時間以上で、3時間以内であることが好ましい。
上記のより正確な消化完了までに要する時間の推定処理では、CPU10の消化時間推定部28は、例えば、下記の式(6)により、上記のより正確な消化完了までに要する時間を推定する。
y´=K´x´- K´x´+K´・・・(6)
上記式(6)において、y´は、上記のより正確な消化完了までに要する時間(現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間)であり、K´、K´、及びK´は、係数であり、x´は、((1回目の測定(時刻)と2回目の測定(時刻)との時間の差)×(1回目の測定と2回目の測定における第2音成分の音量の積算値の差))である。上記の「1回目の測定時刻」と「1回目の測定における第2音成分の音量の積算値」は、1回目の測定時に、メモリ11に記憶される。また、上記の係数K´、K´、及びK´は、予め求めた実測データの分布に基づいて、統計的に算出された値であり、メモリ11に記憶されている。なお、上記の式(6)は、2次関数の式であるが、1次関数、指数関数等の式であってもよい。
また、x´は、((1回目の測定と2回目の測定との時間の差)×(一定時間当たりの第2音成分の音量の積算値の変化量))であってもよい。上記の(一定時間当たりの第2音成分の音量の積算値の変化量)(以下、「一定時間当たりの積算値の変化量」と略す)は、下記の式(7)によって求められる。なお、下記の式(7)における「積算値」は、第2音成分の音量の積算値を意味する。
(一定時間当たりの積算値の変化量)=(1回目の測定と2回目の測定における積算値の差)/(1回目の測定と2回目の測定との時間の差)・・・(7)
また、消化完了までに要する時間は、食事の摂取量とも関係があるため、上記のより正確な消化完了までに要する時間を推定する式(6)の代わりに、食事の摂取量が多くなるに連れて大きくなる、「第2音成分の音量の積算値」cを、変数として加味する式(例えば、下記の式(6)´)を用いてもよい。
y´=K´x´-K´x´+K´+c・・・(6)´
次に、CPU10の消化良否食事量推定部29が、上記S15の消化完了までに要する時間の推定処理の結果と、上記S17のより正確な消化完了までに要する時間の推定処理の結果とを利用して、摂取した食品の消化の良し悪し、腹持ち等の判定と表示を行う(S18)。具体的には、CPU10の消化良否食事量推定部29は、上記S15又はS17で推定した消化完了までに要する時間(現時点(現在時刻)から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間)と、S1で入力された直近の食事摂取時刻と、CPU10内のタイマで取得した現在時刻とに基づいて、直近の食事摂取時刻から、直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間eを求める。そして、消化良否食事量推定部29は、上記の所要時間eに基づいて、摂取した食品の消化の良し悪し、腹持ち、食事量等の判定と、判定結果の表示を行う。
具体的には、消化良否食事量推定部29は、図12に示すように、所要時間eが上限の閾値(時間)より長いときは、(摂取した食品の)「消化が悪い(腹持ちが良い)」、又は「食事量が多い」と判定して、表示部4に、「消化が悪い」、「腹持ちが良い」、又は「食事量が多い」と表示する。また、消化良否食事量推定部29は、所要時間eが、下限の閾値以上で、上限の閾値以下の長さのときは、「平均的な消化状態(腹持ちが普通)」、又は「食事量は普通」と判定して、表示部4に、「平均的な消化状態」、「腹持ちが普通」、又は「食事量は普通」と表示する。また、消化良否食事量推定部29は、所要時間eが、下限の閾値未満の長さのときは、(摂取した食品の)「消化が良い(腹持ちが悪い)」、又は「食事量が少ない」と判定して、表示部4に、「消化が良い」、「腹持ちが悪い」、又は「食事量が少ない」と表示する。
上記S14の判定の結果、直近の食事摂取時刻の入力がなかった場合には(S14でNO)、CPU10の食事摂取判定部24は、上記の割合a(第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合)に基づいて、被験者の食事摂取の有無を判定して、その判定結果を、表示部4に表示する(S19)。
具体的には、食事摂取判定部24は、図13に示すように、上記の割合aが、閾値以上の場合には、「食事を摂取した」(食事摂取有り)と判定して、その旨を表示部4に表示する。これに対して、上記の割合aが、閾値未満の場合には、食事摂取判定部24は、「食事を摂取していない」(食事摂取無し)と判定して、その旨を表示部4に表示する。なお、このS19の判定における(図13に示される)閾値は、S8の判定における(図7に示される)閾値と同じでもよいし、異なっていてもよい。
次に、CPU10(主に、影響度判定部25及び腸蠕動能力判定部26)が、上記の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値から、食事摂取の有無に左右されない(食事摂取の影響度を考慮した)被験者の腸蠕動能力値の判定を行う(S20)。すなわち、CPU10の影響度判定部25は、第2音成分の音量の積算値が、所定の閾値以上の場合には、第1音成分の音量の積算値及び第2音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定する。その一方で、CPU10の影響度判定部25は、第2音成分の音量の積算値が、この閾値未満の場合には、第2音成分の音量の積算値が閾値以上の場合と比較して、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が小さいと判定する。具体的には、CPU10の影響度判定部25は、第2音成分の音量の積算値が、上記閾値未満の場合には、例えば、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響がない(影響度が0である)と判定する。
より詳細に説明すると、まず、CPU10の影響度判定部25が、図14に示す判定表に従って、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を判定する。なお、この腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度は、被験者の腸蠕動能力値の判定への食事摂取が及ぼす影響度でもある。
一般に、食後には、(食事による胃蠕動音を多く含む)第2音成分の音量の積算値だけでなく、(腸蠕動音を多く含む)第1音成分の音量の積算値も増加する。従って、図14に示す判定表では、消化活動の強弱を加味した判定を行うために、第2音成分の音量の積算値が、閾値以上の場合には、第1音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定すると共に、第2音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を大きいと判定するように、影響度のレベル分けを行った。これは、通常は、食事を胃腸から十二指腸に排出するタイミングで、第2音成分の音量の積算値が閾値以上になることが明らかになっており、この場合(第2音成分の音量の積算値が閾値以上の場合)には、腸蠕動音の測定に影響を及ぼすことが明らかであるためである。図15は、上記のように、食後における第2音成分の音量の積算値が閾値以上になる場合の、食事摂取前後の音量の積算値(「第1音成分の音量の積算値」と「第2音成分の音量の積算値」)の変化を示すグラフである。図14における「第1のグラフ」は、図15に示すグラフを指している。
また、図14に示す判定表では、第2音成分の音量の積算値が閾値以上の場合には、第2音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度(腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度)に及ぼす影響を、第1音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度に及ぼす影響よりも大きくなるように、影響度のレベル分けを行った。この理由は、食事の影響は、主に第2音成分の音量の積算値の変化量に現れるからである。従って、上記の影響度への重み付けは、第2音成分の音量の積算値の変化への重み付けを、第1音成分の音量の積算値の変化への重み付けよりも大きくした。なお、食事が胃に取り込まれ、特に水分が多い内容物が消化されるときに、胃から高周波の音が発生する。これが第2音成分の音量の積算値の変化量に現れる。
上記のように、通常は、食後には、第2音成分の音量の積算値が閾値以上になるのであるが、食事の量が少ない場合、及び胃腸の運動(腸蠕動及び胃蠕動)に殆ど影響を与えないような食物を摂取した場合には、食事摂取前後の音量の積算値(「第1音成分の音量の積算値」と「第2音成分の音量の積算値」)は、図16に示すような変化を示す。このような場合には、図16に示すように、食後中及び食後の第2音成分の音量の積算値が、閾値未満となる。この場合(第2音成分の音量の積算値が閾値未満の場合)には、食事摂取が腸蠕動音の測定に殆ど影響を及ぼさない。従って、図14に示す判定表では、第2音成分の音量の積算値が、閾値未満の場合(図16に示す「第2のグラフ」の場合)には、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響がない(影響度が0である)と判定するように、影響度のレベル分けを行った。図14における「第2のグラフ」は、図16に示すグラフを指している。
CPU10の影響度判定部25は、上記図14の判定表に従って、第2音成分の音量の積算値が閾値以上の場合には、第1音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定すると共に、第2音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を大きいと判定する。また、影響度判定部25は、図14の判定表に従って、第2音成分の音量の積算値が閾値未満の場合には、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響がない(影響度が0である)と判定する。なお、CPU10の影響度判定部25は、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度の判定において、上記図14の判定表に従って、第2音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度に及ぼす影響を、第1音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度に及ぼす影響よりも大きく判定する。
ここで、影響度判定部25が、上記のように、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を判定するようにした理由(図14の判定表を上記のように設計した理由)をまとめると、以下のとおりである。第1音成分は、主に腸蠕動音と関連があるが、その大きさには個人差があり、しかも、食事摂取の影響がない場合であっても変化するため、第1音成分の音量の積算値だけでは、食後であると判断できない。これに対して、第2音成分は、食事による胃蠕動音を多く含むため、個人差があるものの、第1音成分と比較して食後に上昇する傾向にある。このため、第2音成分の音量の積算値が閾値以上の場合には、食後であると推定できる。そして、食後には、食事による胃蠕動音が大きくなることに起因して、第2音成分の音量の積算値が大きくなるだけではなく、消化活動に伴い、第1音成分の音量の積算値も大きくなる。従って、上記のように、影響度判定部25は、第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上の場合には(食後であると推定できる場合には)、第1音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定すると共に、第2音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を大きいと判定するようにした。
これに対して、影響度判定部25は、第2音成分の音量の積算値が上記の閾値未満の場合には(食後でないと推定できる場合には)、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響がないと判定するようにした。なお、上記の「第2音成分の音量の積算値が上記の閾値未満の場合」には、図16に示すように、食事の量が少ない場合、及び胃腸の運動(腸蠕動及び胃蠕動)に殆ど影響を与えないような食物を摂取した場合も、含まれる。
CPU10(の腸蠕動能力判定部26)は、上記影響度判定部25による判定の結果、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きい場合(第2音成分の音量の積算値が閾値以上の場合)には、上記の影響度を差し引いた(食事摂取の影響度を考慮した)被験者の腸蠕動能力値を判定する。具体的には、CPU10の腸蠕動能力判定部26は、上記の影響度判定部25により判定された影響度と、上記の(第1帯域フィルタ21により抽出された)第1音成分の音量の積算値とに基づいて、食事摂取の影響度を考慮した被験者の腸蠕動能力値を判定(算出)する。
例えば、CPU10の腸蠕動能力判定部26は、下記の式(8)により、上記の食事摂取の影響度を考慮した(食事摂取の有無に左右されない)被験者の腸蠕動能力値を算出する。この腸蠕動能力値は、被験者の便秘、下痢、及び過敏性腸症候群のスクリーニング判定(被験者が便秘、下痢、及び過敏性腸症候群の疑いがあるか否かの判定)に利用することができる。
y=S+S+S・・・(8)
上記式(8)において、yは、上記の「腸蠕動能力値」であり、S、S、及びSは、係数である。また、Xは、上記の(影響度判定部25により判定された)食事摂取の影響度であり、Xは、上記の(第1帯域フィルタ21により抽出された)第1音成分の音量の積算値である。上記の係数S、S、及びSは、予め求めた実測データの分布に基づいて、統計的に算出された値であり、メモリ11に記憶されている。なお、上記の式(8)は、1次関数の式であるが、指数関数等の式であってもよい。
上記の腸蠕動能力値の判定が終了すると、CPU10の表示制御部27が、腸蠕動能力判定部26で求めた腸蠕動能力値を、表示部4に表示するように制御する。これにより、表示部4が、上記の腸蠕動能力値を表示する(S21)。なお、上記の例では、腸蠕動能力判定部26が腸蠕動能力値を算出して、表示制御部27が、腸蠕動能力判定部26で求めた腸蠕動能力値を、そのまま表示部4に表示するようにしたが、腸蠕動能力判定部26が腸蠕動能力のレベル(段階)を判定して、表示制御部27が、腸蠕動能力判定部26で求めた腸蠕動能力のレベルに関する情報(例えば、腸蠕動能力のレベルを表すマーク)を、表示部4に表示するようにしてもよい。
上記のように、本実施形態の腸蠕動音測定装置1によれば、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合、又は第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との比較結果に基づいて、被験者の食事摂取の有無を判定するようにした。ここで、被験者の腹部で発生する腹部音のうち、主に腸蠕動音に対応する第1周波数帯域(200Hz~500Hz)よりも最高周波数が高い第2周波数帯域(500Hz~2000Hz)に含まれる第2音成分には、食事による胃蠕動運動に起因する胃蠕動音の音成分が多く含まれている。従って、上記の所定時間分の第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合が所定のレベル以上になると、被験者が食後の状態であり(被験者の食事摂取が有りで)、第2音成分の音量の積算値が占める割合が所定のレベル未満になると、被験者が食後の状態でない(被験者の食事摂取が無い)と判定することができる。また、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との比較結果を用いても、上記と同様に、被験者が食後の状態である(被験者の食事摂取が有る)か、被験者が食後の状態でない(被験者の食事摂取が無い)かを判定することができる。そして、被験者が食後の状態であるとき(被験者の食事摂取が有りのとき)には、食事摂取が腸蠕動音の測定に及ぼす影響が大きい状態であると判定し、被験者が食後の状態ではない(被験者の食事摂取が無い)ときには、被験者が食後の状態であるときと比較して、食事摂取が腸蠕動音の測定に及ぼす影響が小さい(無視できる)状態であると判定することができる。
また、本実施形態の腸蠕動音測定装置1によれば、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を判定する影響度判定部25をさらに備え、影響度判定部25は、第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上の場合には、第1音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定すると共に、第2音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を大きいと判定し、第2音成分の音量の積算値が上記閾値未満の場合には、第2音成分の音量の積算値が上記閾値以上の場合と比較して、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響が小さいと判定するようにした。ここで、第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上の場合には、食後であると推定でき、食後には、食事による胃蠕動音が大きくなることに起因して、第2音成分の音量の積算値が大きくなるだけではなく、消化活動に伴い、第1音成分の積算値も大きくなる。従って、上記のように、第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上の場合(食後であると推定できる場合)には、第1音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定すると共に、第2音成分の音量の積算値が大きい程、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を大きいと判定することにより、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を正確に判定することができる。
また、本実施形態の腸蠕動音測定装置1によれば、影響度判定部25は、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度の判定において、第2音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度に及ぼす影響を、第1音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度に及ぼす影響よりも大きくするようにした。ここで、食事の影響は、主に第2音成分の音量の積算値の変化量に現れるので、上記のように、第2音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度に及ぼす影響を、第1音成分の音量の積算値の大きさが上記の影響度に及ぼす影響よりも大きくするようにしたことにより、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を、より正確に判定することができる。
また、本実施形態の腸蠕動音測定装置1によれば、第1音成分の音量の積算値と影響度判定部25により判定された影響度とに基づいて、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を考慮した被験者の腸蠕動能力を判定する腸蠕動能力判定部26と、腸蠕動能力判定部26による判定結果に基づいて、被験者の腸蠕動能力に関する情報を表示部4に表示するように制御する表示制御部27とをさらに備えるようにした。これにより、被験者(ユーザ)が、腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を考慮した被験者の腸蠕動能力を知ることができる。
また、本実施形態の腸蠕動音測定装置1によれば、腸蠕動音測定装置1に与えられる加速度を検出する加速度センサ14と、加速度センサ14により検出された加速度の大きさが所定の閾値以上である場合に、第1周波数帯域と第2周波数帯域の少なくとも一方から、腸蠕動音測定装置1と被験者の服とがこすれること(服すれ)に起因する雑音が発生し易い周波数帯域を除去して、第1周波数帯域と第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くすると共に、第1周波数帯域と第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くしたことが第1音成分と第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値に与える影響を軽減するために、第1音成分と第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値が大きくなるように補正する帯域調整部23とをさらに備えるようにした。ここで、加速度センサ14により検出された加速度の大きさが所定の閾値以上である場合には(加速度センサ14を所持した被験者の体動が、所定のレベル以上のときには)、上記の服すれに起因する雑音を無視することができないので、上記のように、第1周波数帯域と第2周波数帯域の少なくとも一方から、服すれに起因する雑音が発生し易い周波数帯域を除去して、第1周波数帯域と第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くすると共に、第1周波数帯域と第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くしたことが第1音成分と第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値に与える影響(第1音成分と第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値を小さくするという影響)を軽減するために、第1音成分と第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値が大きくなるように補正することにより、服すれに起因する雑音がなかった場合の第1音成分と第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値に近づけることができる。
また、本実施形態の腸蠕動音測定装置1によれば、操作部5により取得した直近の食事の摂取時刻と、第2音成分の音量の積算値とに基づいて、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定する消化時間推定部28とをさらに備え、第2音成分の音量の積算値が、所定の時間間隔を超えない2つの時点で測定されたときは、消化時間推定部28は、1回目の測定における第2音成分の音量の積算値と2回目の測定における第2音成分の音量の積算値との差分と、1回目の測定と2回目の測定の時間差とに基づいて、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定するようにした。上記のように、1回目の測定における第2音成分の音量の積算値と2回目の測定における第2音成分の音量の積算値との差分と、1回目の測定と2回目の測定の時間差とに基づいて、現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定するようにしたことにより、上記の消化完了までの所要時間を、被験者の消化能力を考慮して推定することができるので、図5のS15に示すように、1回の測定における第2音成分の音量の積算値と、直近の食事摂取時刻のみに基づいて、上記の消化完了までの所要時間を推定した場合と比較して、正確な所用時間を推定することができる。
変形例:
なお、本発明は、上記の各実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。次に、本発明の変形例について説明する。
変形例1:
上記の実施形態では、図4のS8に示すように、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、第2音成分の音量の積算値が占める割合aが閾値以上であるか否かに基づいて、食事による胃蠕動が活発であるか否かを判定した。けれども、食事による胃蠕動が活発であるか否かの判定方法は、これに限られず、例えば、第2音成分の音量の積算値と第1音成分の音量の積算値との差が、閾値以上であるか否かに基づいて、食事による胃蠕動が活発であるか否かを判定してもよい。請求項における「前記第1音成分の音量の積算値と前記第2音成分の音量の積算値との比較結果」には、上記の「第2音成分の音量の積算値と第1音成分の音量の積算値との差」が、含まれる。
変形例2:
また、上記の実施形態では、第1音成分の音量の積算値と第2音成分の音量の積算値とを用いて、食事による胃蠕動が活発であるか否かの判定、被験者の腸蠕動能力値の判定等の各種の判定を行った。けれども、第1音成分の音量の積算値、及び第2音成分の音量の積算値の代わりに、第1音成分の強度、及び第2音成分の強度を用いて、食事による胃蠕動が活発であるか否か等の判定を行ってもよい。ここで、「第1音成分の強度」とは、第1帯域フィルタ21による抽出処理後における所定時間分のサンプリングデータの出力レベルの平均値を意味し、「第2音成分の」強度とは、第2帯域フィルタ22による抽出処理後における所定時間分のサンプリングデータの出力レベルの平均値を意味する。また、第1音成分の音量の積算値、及び第2音成分の音量の積算値の代わりに、(第1帯域フィルタ21による抽出処理後の)第1音成分の音と音との間隔、及び(第2帯域フィルタ22による抽出処理後の)第2音成分の音と音との間隔を用いて、食事による胃蠕動が活発であるか否か等の判定を行ってもよい。
変形例3:
また、上記の実施形態では、図5に示すように、今回の腸蠕動音測定処理が、前回の腸蠕動音測定処理から所定時間内に行われた場合に(S16でYES)、「より正確な消化完了までに要する時間の推定処理」(S17)を行うようにした。けれども、被験者(ユーザ)が、操作部5を用いて、腸蠕動音測定装置1を、より正確な消化完了までに要する時間を測定するモードに設定した場合に限り、1回目の測定から所定時間内に、自動的に2回目の測定を行って、上記の「より正確な消化完了までに要する時間の推定処理」を行い、より正確な消化完了までに要する時間を測定するモードに設定していない場合には、上記の「より正確な消化完了までに要する時間の推定処理」を行わないようにしてもよい。
変形例4:
また、上記の実施形態では、本発明の腸蠕動音測定装置1が専用の装置である場合の例を示したが、本発明の腸蠕動音測定装置1が有する機能を、いわゆる活動量計に組み込んでもよい。
変形例5:
また、上記の実施形態では、図2において、本発明の腸蠕動音測定装置1が、NFC通信可能な装置である場合の例を示したが、本発明の腸蠕動音測定装置は、これに限られず、例えば、USB(Universal Serial Bus)等の有線通信を行う機能を有する装置であってもよいし、wi-fi、Bluetooth等の無線通信を行う機能を有する装置であってもよい。
変形例6:
また、上記の実施形態では、CPU10の表示制御部27が、腸蠕動能力判定部26で求めた腸蠕動能力値を、腸蠕動音測定装置1自体が有する表示部4に表示するように制御したが、CPUの表示制御部が、腸蠕動能力判定部で求めた腸蠕動能力値を、無線通信又は有線通信により、他の情報機器(例えば、PC(Personal Computer)、及びスマートフォン等のモバイル端末)に送信して表示させるようにしてもよい。
変形例7:
上記の実施形態では、腸蠕動音測定装置1のCPU10が、第1帯域フィルタ21と、第2帯域フィルタ22と、帯域調整部23と、食事摂取判定部24と、影響度判定部25と、腸蠕動能力判定部26と、表示制御部27と、消化時間推定部28と、消化良否食事量推定部29とを備えている。しかしながら、、腸蠕動音測定装置1とは別体の、少なくとも、CPU等の処理部と、フラッシュROM、RAM等の記憶部と、を備えるコンピュータの処理部が、第1帯域フィルタ21、第2帯域フィルタ22、帯域調整部23、食事摂取判定部24、影響度判定部25、腸蠕動能力判定部26、表示制御部27、消化時間推定部28、及び消化良否食事量推定部29の少なくとも1つとして機能してもよい。この場合、当該コンピュータの記憶部又は当該コンピュータに接続される記憶装置である記憶媒体が、当該コンピュータの処理部を、上記21~29の各部として機能させるようなプログラム(腸蠕動音測定プログラム)を、格納している。すなわち、当該コンピュータは、当該プログラムを実行することによって、有線又は無線を介して接続される、(マイクロフォン7と加速度センサ14とを有する)測定装置から、被験者の腹部で発生する腹部音と、腸蠕動音測定装置に与えられる加速度を取得して、上記各実施形態で説明したような腸蠕動能力の判定に係る工程を実行する。なお、このようなコンピュータの例としては、PC(Personal Computer)、及びスマートフォン等のモバイル端末等がある。
変形例8:
上記の実施形態では、加速度センサ14の出力値が所定の閾値以上である場合には、第1周波数帯域と第2周波数帯域の両方の帯域幅を狭くしたが、これに限定されない。例えば、上記の服すれに起因する雑音が発生し易い周波数帯域が、第1周波数帯域と第2周波数帯域の一方の周波数帯域に含まれる場合には、第1周波数帯域と第2周波数帯域のうち、上記雑音が発生し易い周波数帯域が含まれる方の周波数帯域の帯域幅を狭くすればよい。この場合には、帯域幅を狭くしたことが第1音成分又は第2音成分の音量の積算値に与える影響を軽減するために、第1音成分又は第2音成分の音量の積算値が大きくなるように補正する。
変形例9:
上記の実施形態では、図4中のS9及びS11と、図5中のS12、S13、S18、及びS19の各ステップにおいて、各判定結果を表示したが、これらのステップでは判定結果を表示せずに、判定処理のみを行い、図5中のS21において、上記の各ステップにおける判定結果を、まとめて表示してもよい。
1 腸蠕動音測定装置
4 表示部
5 操作部(食事摂取時刻取得部)
7 マイクロフォン(腹部音取得部)
14 加速度センサ(加速度検出部)
16 腸蠕動音測定プログラム
21 第1帯域フィルタ
22 第2帯域フィルタ
23 帯域調整部
24 食事摂取判定部
25 影響度判定部
26 腸蠕動能力判定部
27 表示制御部
28 消化時間推定部

Claims (9)

  1. 被験者の腸蠕動音を測定する腸蠕動音測定装置において、
    被験者の腹部で発生する腹部音を取得する腹部音取得部と、
    前記腹部音取得部で取得した所定時間分の腹部音から、主に腸蠕動音に対応する周波数帯域である第1周波数帯域に含まれる第1音成分を抽出する第1帯域フィルタと、
    前記腹部音取得部で取得した所定時間分の腹部音から、前記第1周波数帯域の最高周波数よりも最高周波数が高い、第2周波数帯域に含まれる第2音成分を抽出する第2帯域フィルタと、
    前記第1帯域フィルタにより抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と、前記第2帯域フィルタにより抽出された、所定時間分の第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、前記第2音成分の音量の積算値が占める割合、又は前記第1音成分の音量の積算値と前記第2音成分の音量の積算値との比較結果に基づいて、前記被験者の食事摂取の有無を判定する食事摂取判定部とを備える腸蠕動音測定装置。
  2. 前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を判定する影響度判定部をさらに備え、
    前記影響度判定部は、
    前記第2音成分の音量の積算値が所定の閾値以上の場合には、前記第1音成分の音量の積算値が大きい程、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度が大きいと判定すると共に、前記第2音成分の音量の積算値が大きい程、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度を大きいと判定し、
    前記第2音成分の音量の積算値が前記閾値未満の場合には、前記第2音成分の音量の積算値が前記閾値以上の場合と比較して、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響が小さいと判定することを特徴とする請求項1に記載の腸蠕動音測定装置。
  3. 前記影響度判定部は、前記腸蠕動音の測定への食事摂取が及ぼす影響度の判定において、前記第2音成分の音量の積算値の大きさが前記影響度に及ぼす影響を、前記第1音成分の音量の積算値の大きさが前記影響度に及ぼす影響よりも大きくすることを特徴とする請求項2に記載の腸蠕動音測定装置。
  4. 前記第1音成分の音量の積算値と前記影響度判定部により判定された前記影響度とに基づいて、前記影響度を考慮した前記被験者の腸蠕動能力を判定する腸蠕動能力判定部と、
    前記腸蠕動能力判定部による判定結果に基づいて、前記被験者の腸蠕動能力に関する情報を表示部に表示するように制御する表示制御部とをさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の腸蠕動音測定装置。
  5. 前記被験者の腸蠕動能力に関する情報を含む情報を表示する前記表示部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の腸蠕動音測定装置。
  6. 前記腸蠕動音測定装置に与えられる加速度を検出する加速度検出部と、
    前記加速度検出部により検出された加速度の大きさが所定の閾値以上である場合に、前記第1周波数帯域と前記第2周波数帯域の少なくとも一方から、前記腸蠕動音測定装置と前記被験者の服とがこすれることに起因する雑音が発生し易い周波数帯域を除去して、前記第1周波数帯域と前記第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くすると共に、前記第1周波数帯域と前記第2周波数帯域の少なくとも一方の帯域幅を狭くしたことが前記第1音成分と前記第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値に与える影響を軽減するために、前記第1音成分と前記第2音成分の少なくとも一方の音量の積算値が大きくなるように補正する帯域調整部とをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の腸蠕動音測定装置。
  7. 直近の食事の摂取時刻を取得する食事摂取時刻取得部と、
    前記食事摂取時刻取得部により取得した直近の食事の摂取時刻と、前記第2音成分の音量の積算値とに基づいて、現時点から前記食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定する消化時間推定部とをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の腸蠕動音測定装置。
  8. 現時点から直近の食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定する消化時間推定部をさらに備え、
    前記腸蠕動音測定装置による前記被験者の腸蠕動音の測定が、所定の時間間隔を超えない2つの時点で行われたときは、前記消化時間推定部は、1回目の測定における前記第2音成分の音量の積算値と2回目の測定における前記第2音成分の音量の積算値との差分と、前記1回目の測定と前記2回目の測定の時間差とに基づいて、現時点から前記食事で摂取した食物の消化完了までの所要時間を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の腸蠕動音測定装置。
  9. 被験者の腹部で発生する腹部音を取得する工程と、
    前記腹部音を取得する工程で取得した所定時間分の腹部音から、主に腸蠕動音に対応する周波数帯域である第1周波数帯域に含まれる第1音成分を抽出する工程と、
    前記腹部音を取得する工程で取得した所定時間分の腹部音から、前記第1周波数帯域の最高周波数よりも最高周波数が高い、第2周波数帯域に含まれる第2音成分を抽出する工程と、
    前記第1音成分を抽出する工程で抽出された、所定時間分の第1音成分の音量の積算値と、前記第2音成分を抽出する工程で抽出された、所定時間分の第2音成分の音量の積算値との合計値のうち、前記第2音成分の音量の積算値が占める割合、又は前記第1音成分の音量の積算値と前記第2音成分の音量の積算値との比較結果に基づいて、前記被験者の食事摂取の有無を判定する工程と、をコンピュータに実行させるための腸蠕動音測定プログラム。
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