以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
次に、本第1実施形態における生体検知装置10について図1、図2等を参照して説明する。
本実施形態の生体検知装置10は、図1および図2に示すように、自動車の車室内の運転席1に着座した運転者2の心拍数を検出する。
具体的には、生体検知装置10は、発信機11、送信アンテナ12、受信アンテナ13、受信機14、体位置推定部15、アンテナ選択部16、フィルタ17、データ取得部18、波形データ記憶部19、および心拍推定部20を備える。
発信機11は、所望の周波数の送信信号を送信アンテナ12に出力する。本実施形態の所望の周波数としては、900MHz帯の周波数が用いられる。
送信アンテナ12は、車室内のインストルメントパネル3のうち運転席1に対して車両進行方向前側に配置されている。送信アンテナ12は、発信機11からの送信信号に基づいて運転席1に着座した運転者2の人体のうち車両幅方向中央部(具体的には、心臓2a付近)に向けて送信電波を送信する。
本実施形態の送信アンテナ12は、送信電波における主な偏波が車両幅方向に平行となるアンテナである。換言すれば、送信アンテナ12は、送信電波における主な偏波が車室内の床面に平行で、かつ運転者が車両進行方向前側を向いた状態での肩幅方向に平行となるアンテナである。
ここで、車室内の床とは、車室内の仮想の地面を意味する。ここで、偏波とは、電波の電界が振動する方向のことである。
送信アンテナ12としては、例えば、2つのアンテナエレメント120、121が車両幅方向に(すなわち、車室内の床に平行)に延びるダイポールアンテナが用いられる。
受信アンテナ13は、運転席1のシートバック内にて送信アンテナ12に向けて配置されている。受信アンテナ13は、運転席1のシートバックのうち車両幅方向中央に内蔵されている。シートバックとは、運転席1の乗員の背中を支える部位である。具体的には、受信アンテナ13は、受信アンテナ素子13a、13bを備える。
受信アンテナ素子13a、13bは、車両幅方向に並べられている。車両幅方向は、受信アンテナ13と送信アンテナ12とを結ぶ方向に交差(例えば、直交)し、かつ上下方向に直交する方向に一致する所定方向である。
本実施形態では、受信アンテナ13と送信アンテナ12とを結ぶ方向とは、受信アンテナ13の任意の部位と送信アンテナ12の任意の部位とを結ぶ方向である。
ここで、受信アンテナ13の任意の部位として、例えば、受信アンテナ13の質量重心を設定してもよい。受信アンテナ素子13a、13bのうちいずれか一方の受信アンテナ素子の質量重心を受信アンテナ13の任意の部位としてもよい。送信アンテナ12の任意の部位とは、送信アンテナ12の質量重心としてもよい。
本実施形態の上下方向とは、生体検知装置10を搭載した自動車において車両幅方向および車両進行方向がそれぞれ水平方向に一致した場合における上下方向を意味する。
受信アンテナ素子13a、13bは、それぞれ、運転者2の人体を透過した電波を受信電波として受信して受信電波の電界強度によって信号レベルが変化する受信信号を出力する。
受信アンテナ素子13a、13bは、それぞれ、受信電波における主な偏波が車両幅方向となるアンテナである。受信アンテナ素子13a、13bとしては、それぞれ、例えば、アンテナエレメント130、131が車両幅方向(すなわち、車室内の床に平行)に延びるダイポールアンテナが用いられる。
受信機14は、受信アンテナ素子13a、13bからの受信信号を受信アンテナ毎に電圧増幅して出力する。以下、説明の便宜上、受信機14が受信アンテナ素子13aからの受信信号を電力増幅した信号を受信増幅信号Paとし、受信機14が受信アンテナ素子13bからの受信信号を電力増幅した信号を受信増幅信号Pbとする。
体位置推定部15は、予めメモリ15aに記憶した人体位置情報Ga、人体位置情報Gbを参照して、受信増幅信号Pa、Pbに基づいて、運転者2の人体の車両幅方向の位置を求める。
ここで、人体位置情報Gaは、受信増幅信号Paの信号レベルと運転者2の人体の車両幅方向の位置(具体的には、人体のうち車両幅方向の中央の位置)とが1対1で特定される関係を示すデータである(図6参照)。
人体位置情報Gbは、受信増幅信号Pbの信号レベルと運転者2の人体の車両幅方向の位置(具体的には、人体のうち車両幅方向の中央の位置)とが1対1で特定される関係を示すデータである(図8参照)。
アンテナ選択部16は、体位置推定部15によって求められた運転者2の人体の車両幅方向の位置に基づいて、受信アンテナ素子13a、13bのうち人体の心拍数を正確に反映した電波を受信するための検出用アンテナ素子を選択する。これに加えて、アンテナ選択部16は、受信増幅信号Pa、Pbのうち前記選択した検出用アンテナ素子に対応する受信増幅信号をフィルタ17に出力する。
フィルタ17は、アンテナ選択部16からの受信増幅信号のうち所望周波数の信号成分を抽出して出力する。データ取得部18は、フィルタ17からの所望周波数の信号成分をサンプリング周期CP毎にサンプリングしてサンプリングデータを出力する。
波形データ記憶部19は、データ取得部18からのサンプリング周期CP毎のサンプリングデータを記憶する。心拍推定部20は、波形データ記憶部19に記憶されているサンプリング周期CP毎のサンプリングデータに基づいて、運転者の人体の心拍数を検出する。
次に、本実施形態の生体検知装置10の作動の説明に先立って、メモリ15aに記憶されている人体位置情報Ga、Gbについて説明する。
受信アンテナ素子13aは、図5に示すように、運転席1の車両幅方向の中央部から左側にオフセットして配置されている。運転者の人体が車両幅方向右側にずれると、送信アンテナ12から送信されてから電波が人体を左側から回り込んで受信アンテナ素子13aで受信され易くなる。
このことにより、運転者2の人体が車両幅方向右側に移動するほど、受信アンテナ素子13aで受信される受信電波の電界強度が大きくなる(図6参照)。
これにより、受信アンテナ素子13aで受信される電界強度と、運転者2の人体における車両幅方向右側への移動距離とが1対1で特定される関係となる。このことにより、運転者2の人体の移動距離と受信増幅信号Paの信号レベルとが1対1で特定される関係となる。
図6は、縦軸を受信増幅信号Paの信号レベルとし、横軸を運転者2の人体における車両幅方向右側への移動距離とし、受信増幅信号Paの信号レベルと移動距離との関係を示す人体位置情報Gaを示すグラフである。
人体位置情報Gaでは、運転席1の幅方向中央部から人体が右側へ移動するほど、受信増幅信号Paの信号レベルが大きくなっている。運転者2の人体における移動距離は、運転席1の車両幅方向の中央を基準位置とする移動距離である。
受信アンテナ素子13bは、図7に示すように、運転席1の車両幅方向の中央から左側にオフセットして配置されている。運転者の人体が車両幅方向左側にずれると、送信アンテナ12から送信される電波が人体を右側から回り込んで受信アンテナ素子13bで受信され易くなる。
このため、運転者2の人体が車両幅方向左側に移動するほど、受信アンテナ素子13bで受信される受信電波の電界強度が大きくなる(図8参照)。
これにより、受信アンテナ素子13bで受信される電界強度と、運転者2の人体における車両幅方向左側への移動距離とが1対1で特定される関係となる。このことにより、運転者2の人体の移動距離と受信増幅信号Pbの信号レベルとが1対1で特定される関係となる。
図8は、縦軸を受信増幅信号Pbの信号レベルとし、横軸を運転者2の人体における車両幅方向左側への移動距離とし、受信増幅信号Pbの信号レベルと移動距離との関係を示す人体位置情報Gbを示すグラフである。
人体位置情報Gbでは、運転席1の幅方向中央部から人体が左側へ移動するほど受信増幅信号Paの信号レベルが大きくなっている。運転者2の人体における移動距離は、運転席1の車両幅方向の中央を基準位置とする移動距離である。
以上により、受信増幅信号Pa(或いは、受信増幅信号Pb)と運転者2の人体における車両幅方向の位置(以下、体位置という)とが1対1で特定されることになる。
これに対して、本実施形態では、人体位置情報Ga、人体位置情報Gbと受信増幅信号Pa、Pbとを用いて体位置を求めることができる。
次に、本実施形態の生体検知装置10の作動について図3に基づいて説明する。
まず、発信機11は、所望の周波数の送信信号を送信アンテナ12に出力する(ステップS100)。すると、送信アンテナ12は、発信機11からの送信信号に基づいて、送信電波を送信する。この送信電波における主な偏波が車両幅方向となる電波である。
ここで、車両幅方向とは、受信アンテナ13と送信アンテナ12とを結ぶ方向(すなわち、車両前後方向)に交差し、かつ上下方向に直交する所定方向である。換言すれば、車両幅方向とは、運転席1aに着座した運転者の左右方向である。
この送信電波のうち一部の電波は、運転者2の人体を透過して受信アンテナ素子13a、13bに受信電波として受信される。送信電波が運転者2の人体を透過する際に、偏波が車両幅方向となる状態が維持される。このため、送信電波は、人体を透過してから、偏波が車両幅方向のまま、受信アンテナ素子13a、13bの少なくとも一方の受信アンテナ素子で受信される。
ここで、人体は誘電体として機能する。このため、人体の送信電波が透過する際に送信電波の電界強度に誘電体損失が生じる。心臓2aは、拡張、収縮に伴ってその形状が変化する。このため、心臓2aを透過する送信電波において電界強度に生じる誘電体損失は、心臓2aの心拍に応じて変化する。
このため、受信アンテナ素子13a、13bのうち少なくとも一方の受信アンテナ素子で受信される受信電波の電界強度は、心臓2aの心拍に応じて変化することになる。よって、受信アンテナ素子13a、13bのうち少なくとも一方の受信アンテナ素子は、心拍数を正確に反映した電界強度を含む受信電波を受信することになる。
ここで、受信アンテナ素子13a、13bの受信信号の信号レベルは、受信電波における電界強度によって変化する。このことにより、受信アンテナ素子13a、13bのうち少なくとも一方の受信アンテナ素子の受信信号の信号レベルは、心臓2aの心拍に応じて変動することになる。
一方、送信アンテナ12からの送信電波のうち運転者2の人体を透過する電波以外の電波は回析波として運転者2の人体の背面側に車両幅方向右側(或いは左側)から回り込む。この人体の背面側に回り込んだ回析波は、人体の車両幅方向中央側に向かうほど徐々に偏波が車両進行方向に近づくことになる。
このような運転者2の人体の背面側に回り込む送信電波の一部も受信電波として受信アンテナ素子13a、13bで受信される。
このように受信アンテナ素子13a、13bで受信電波が受信されると、受信アンテナ素子13a、13bは、それぞれ、受信電波の電界強度によって信号レベルが変化する受信信号を出力する。
すると、受信機14は、受信アンテナ素子13a、13bからの受信信号を電圧増幅して受信増幅信号Pa、Pbを体位置推定部15に出力する。受信増幅信号Pa、Pbは、左右の受信アンテナ素子13a、13bの受信される電界強度を示す信号である。このことにより、体位置推定部15は、受信アンテナ素子13a、13bの受信電界強度を示す情報を取得することになる(ステップS110)。
次に、体位置推定部15は、受信機14からの受信増幅信号Pa、Pbの信号レベルに基づいて、運転者2の体位置を、メモリ15a予めに記憶された人体位置情報Ga、Gbに基づいて推定する(ステップS120)。
ここで、運転者2の体位置とは、運転者2の人体のうち車両幅方向の中央の位置を示す位置情報である。
体位置推定部15は、受信増幅信号Paの信号レベルが閾値以上であり、かつ受信増幅信号Pbの信号レベルが閾値未満であるとき、受信増幅信号Paの信号レベルに対して1対1で特定される関係となる運転者2の体位置を人体位置情報Gaに基づいて求める。
閾値は、運転席1の車両幅方向の中央部に運転者2の体位置が位置するときの受信増幅信号Paの信号レベルである。
例えば、受信増幅信号Paの信号レベルがA1であるとき、運転席1の車両幅方向の中央部から右側に距離Baだけオフセットした位置を運転者2の体位置(すなわち、人体の車両幅方向の中央の位置)として求めることができる。
体位置推定部15は、受信増幅信号Paの信号レベルが閾値未満であり、かつ受信増幅信号Pbの信号レベルが閾値よりも大きいとき、受信増幅信号Pbの信号レベルに対して1対1で特定される関係となる運転者2の体位置を人体位置情報Gbに基づいて求める。
例えば、体位置推定部15は、受信増幅信号Pbの信号レベルがA2であるとき、運転席1の車両幅方向の中央部から左側に距離Bbだけオフセットした位置を運転者2の体位置(すなわち、人体の車両幅方向の中央の位置)として求めることができる。
次に、アンテナ選択部16は、このように体位置推定部15によって求められた体位置に基づいて、受信アンテナ素子13a、13bのうち人体の心拍数を正確に反映した電波を受信するための検出用アンテナ素子を選択する(ステップS130)。
すなわち、アンテナ選択部16は、受信アンテナ素子13a、13bの受信信号の信号レベルに基づき受信アンテナ素子13a、13bのうち体位置推定部15によって求められた運転者2の体位置に近い位置の受信アンテナを検出用アンテナ素子として選択する。
これに伴い、アンテナ選択部16は、受信増幅信号Pa、Pbのうち検出用アンテナ素子に対応する受信増幅信号をフィルタ17に出力する。すなわち、検出用アンテナ素子からの受信信号を電圧増幅した受信増幅信号がアンテナ選択部16からフィルタ17に出力されることになる。
例えば、アンテナ選択部16が受信アンテナ素子13aを検出用アンテナ素子として選択したとき、受信増幅信号Paがアンテナ選択部16からフィルタ17に出力されることになる。
また、アンテナ選択部16が受信アンテナ素子13bを検出用アンテナ素子として選択したとき、受信増幅信号Pbがアンテナ選択部16からフィルタ17に出力されることになる。
このように受信増幅信号がアンテナ選択部16からフィルタ17に出力されると、フィルタ17は、受信増幅信号のうち所望周波数の周波数成分を抽出してデータ取得部18に出力する。
次に、データ取得部18は、フィルタ17から出力される所望周波数の周波数成分をサンプリング周期CP毎にサンプリングしてサンプリングデータを波形データとして出力する。これに伴い、波形データ記憶部19は、データ取得部18から出力される波形データを記憶する。
その後、心拍推定部20は、波形データ記憶部19に記憶されている波形データを取得して、この取得した波形データに基づいて運転者の心拍数を推定するための心拍数算出処理を実施する(ステップS140、S150)。
次に、心拍推定部20によって心拍数算出処理について図7を参照して説明する。
図9に示されるのは、アンテナ選択部16からフィルタ17に出力される出力信号(すなわち、受信増幅信号)の時間変化の一例を示す。
図9の例では、時刻t1、t2、t3のそれぞれにおいて心臓2aの鼓動が生じており、それに伴って出力信号が脈動している。具体的には、心臓2aの収縮に伴って出力信号の値が僅かに増加しており、その後の心臓2aの拡張に伴って出力信号の値が概ね元の値に戻っている。
時刻t1、t2、t3のそれぞれは、サンプリングされた出力信号の値が増加から減少に転じたタイミング、すなわち、出力信号の脈動がピークとなるタイミングとなっている。
心拍推定部20は、当該タイミングに基づいて、運転者2の人体において心臓2aの鼓動が生じたタイミングを取得する。
具体的には、サンプリングされた出力信号の値が増加から減少に転じたタイミングそのものを、心臓2aの鼓動が生じたタイミングとして取得する。このような態様に替えて、出力信号の値が増加から減少に転じたタイミングとは異なるタイミング(例えば、出力信号の値が増加から減少に転じたタイミングから所定期間だけシフトしたタイミング)を、心臓2aの鼓動が生じたタイミングとして取得することとしてもよい。
なお、心臓2aの鼓動に伴う出力信号の脈動が、図9に示されるものとは反対の方向に脈動するように、受信機14を構成することも可能である。すなわち、心臓2aの収縮に伴って出力信号が僅かに減少し、その後の心臓2aの拡張に伴って出力信号が概ね元の値に戻るように、受信機14を構成することも可能である。
この場合における心拍推定部20は、サンプリングされた出力信号の値が減少から増加に転じたタイミングに基づいて、人体において心臓2aの鼓動が生じたタイミングを取得することとなる。
このように、本実施形態では、データ取得部18がフィルタ17の出力信号をサンプリング周期CTでサンプリングし、心拍推定部20は、サンプリングされた出力信号の値が増加から減少に転じたタイミング、又は減少から増加に転じたタイミングのいずれかに基づいて、人体において心臓2aの鼓動が生じたタイミングを取得するように構成されている。
図9に示されたグラフでは、時刻t1、t2、t3のそれぞれにおいて上記の脈動が生じているほか、これらを含む全体の期間において緩やかな変動が生じている。具体的には、時刻t2までの期間においては緩やかに減少しており、時刻t2を超えた以降の期間においては緩やかに増加している。このような出力信号の変動は、心臓2aの鼓動によるものではなく、運転者2の体の動きによって生じたものである。
本実施形態では、データ取得部18による出力信号のサンプリング周期CTが、運転者2の人体の動きによって生じる出力信号の変動周期(数秒程度)に比べて短くなっており、且つ、心臓2aの鼓動に要する時間の半分程度に設定されている。
このため、サンプリングされた出力信号の値が増加から減少に転じたタイミング(又はその逆方向に転じたタイミング)は、心臓2aの鼓動が生じたタイミングに概ね一致することとなる。
これによれば、運転者2の体の動きの影響を受けることなく、心臓2aの鼓動が生じたタイミングを比較的正確に取得することができる。
運転者2の人体において心臓2aの鼓動が生じたタイミング(時刻t1、t2、t3)が取得されると、心拍推定部20は運転者2の心拍数を算出する。心拍推定部20は、上記タイミングの時間間隔TMに基づいて、1分間あたりに心臓2aの鼓動が生じる回数、すなわち心拍数を算出する。
次に、本実施形態のフィルタ17の出力信号の脈動が生じたタイミング(すなわち、心臓2aの鼓動が生じたタイミング)を取得するための具体的な方法について、図10を参照しながら説明する。
図10に示される出力信号は、図9に示される出力信号の波形のうち、脈動が生じた時刻t2の近傍の波形を拡大して示したものである。尚、図10に示される時刻t2は、図9においては「t13」と表記されている。
図10のグラフ上に示される複数のドットは、データ取得部18によって出力信号がサンプリングされたタイミング(以下、サンプリングタイミングという)およびこのサンプリングタイミングで取得されたサンプリングデータを示す点である。それぞれのドットはサンプリング周期CTごとに並ぶ点となっている。
図10に示される例では、時刻t12までの期間においてはサンプリングされた出力信号の値は緩やかに変化している。時刻t12の後の時刻t13においては、心臓2aの収縮開始に伴って、サンプリングされた出力信号の値が増加している。時刻t13の後の時刻t14においては、心臓2aの拡張終了に伴って、サンプリングされた出力信号が減少し概ね元の値に戻っている。時刻t14以降においては、サンプリングされた出力信号の値は再び緩やかに変化している。
本実施形態では、データ取得部18によって出力信号のサンプリングが行われる毎に、以下の式(1)で定義される差分値の算出が行われている。
(差分値)=((第2信号値)-(第1信号値))-((第3信号値)-(第2信号値))・・・(1)
式(1)における「第1信号値」とは、特定のタイミング、具体的には、現時刻に最も近いサンプリングタイミングよりも、サンプリング周期CTの2倍の時間だけ前のタイミングでサンプリングされた出力信号の値のことである。
式(1)における「第2信号値」とは、上記の第1信号値が取得された(つまりサンプリングされた)タイミングよりも、サンプリング周期CTだけ後のタイミングでサンプリングされた出力信号の値のことである。
式(1)における「第3信号値」とは、上記の第2信号値が取得された(つまりサンプリングされた)タイミングよりも、更にサンプリング周期CTだけ後のタイミングでサンプリングされた出力信号の値のことである。
すなわち、「第3信号値」とは、現時刻に最も近いサンプリングタイミングでサンプリングされた出力信号の値のことである。
式(1)で定義される差分値は、(第2信号値と第1信号値との差分)から、(第3信号値と第2信号値との差分)を差し引くことによって得られる値、ということができる。
先に述べたように、差分値の算出は、データ取得部18によって出力信号のサンプリングが行われる毎に行われる。
つまり、心拍推定部20は、サンプリング周期CTが経過する毎に、直近の3回にサンプリングされた値を上記の第1信号値、第2信号値、及び第3信号値とした上で、差分値を算出する
例えば、図10の時刻t12の直後では、時刻t10のサンプリングデータを第1信号値とし、時刻t11のサンプリングデータを第2信号値とし、時刻t12のサンプリングデータを第3信号値とした上で、差分値の算出が行われる。
この場合、時刻t10から時刻t12までの期間では出力信号は単調減少しているので、(第2信号値)-(第1信号値)の値と、(第3信号値)-(第2信号値)の値とは概ね等しい。このため、時刻t12の直後において式(1)で算出される差分値は概ね0となる。
図10の時刻t13の直後では、時刻t11のサンプリングデータを第1信号値とし、時刻t12のサンプリングデータを第2信号値とし、時刻t13のサンプリングデータを第3信号値とした上で、差分値の算出が行われる。
この場合、(第2信号値)-(第1信号値)の絶対値に比べて、(第3信号値)-(第2信号値)の絶対値が大きくなる。このため、時刻t13の直後において算出される差分値は、(第2信号値)-(第3信号値)に概ね等しい負値となる。
図10の時刻t14の直後では、時刻t12のサンプリングデータを第1信号値とし、時刻t13のサンプリングデータを第2信号値とし、時刻t14のサンプリングデータを第3信号値とした上で、差分値の算出が行われる。
この場合、(第2信号値)-(第1信号値)の値は正値となり、(第3信号値)-(第2信号値)の値は負値となり、両者の絶対値は概ね等しい。このため、時刻t14の直後において算出される差分値は、(第2信号値)-(第1信号値)の2倍に概ね等しい正値となる。
図10の時刻t15の直後では、時刻t13のサンプリングデータを第1信号値とし、時刻t14のサンプリングデータを第2信号値とし、時刻t15のサンプリングデータを第3信号値とした上で、差分値の算出が行われる。
この場合、(第3信号値)-(第2信号値)の絶対値に比べて、(第2信号値)-(第1信号値)の絶対値が大きくなる。このため、時刻t15の直後において算出される差分値は、(第2信号値)-(第1信号値)に概ね等しい負値となる。
図10の時刻t16の直後では、時刻t14のサンプリングデータを第1信号値とし、時刻t15のサンプリングデータを第2信号値とし、時刻t16のサンプリングデータを第3信号値とした上で、差分値の算出が行われる。
この場合、時刻t14から時刻t162までの期間では出力信号は単調増加しているので、(第2信号値)-(第1信号値)の値と、(第3信号値)-(第2信号値)の値とは概ね等しい。このため、時刻t16の直後において算出される差分値は概ね0となる。
図11には、以上のように各時刻において算出される差分値の変化が示されている。同図に示されるように、図10の例において算出される差分値は、時刻t14において最大となる。また、時刻t14の前後における差分値は負値となっており、その他の時刻(出力信号の値が単調減少又は単調増加している期間といえる)における差分値は概ね0となっている。時刻t14における波形のピークの高さは、図9の時刻t2等における脈動の変動量に比べると約2倍程度に大きい。
このため、差分値が最大となる時刻t14を、心拍推定部20によって容易に取得することが可能となっている。例えば、所定の閾値を予め設定しておき、当該閾値を越える差分値が算出されたタイミングを、差分値が最大となったタイミングとして取得することとすればよい。
心拍推定部20は、差分値に正側のピークが生じる時刻t14よりもサンプリング周期CTだけ前の時刻t13を、出力信号の値が増加から減少に転じたタイミング、すなわち心臓2aの鼓動が生じたタイミングとして取得することができる。これに基づき、心拍推定部20は、1分間において差分値に正側のピークが生じる回数を心拍数として算出する。
差分値に正側のピークが生じた時刻と、出力信号の値が増加から減少に転じたタイミングとの差は概ね一定であり、且つ短い時間である。このため、当該差が問題とならない場合には、心拍推定部20は、差分値に正側のピークが生じた時刻そのものを、出力信号の値が増加から減少に転じたタイミングとして取得することとしてもよい。
尚、心臓2aの鼓動に伴う出力信号の脈動が、図9に示されるものとは反対の方向に脈動するように受信機14が構成されている場合には、心拍推定部20は、差分値に負側のピークが生じる時刻よりもサンプリング周期CTだけ前の時刻を、出力信号の値が減少から増加に転じたタイミングとして取得し、これを心臓2aの鼓動が生じたタイミングとして取得することとなる。また、この場合、心拍推定部20は、1分間において差分値に負側のピークが生じる回数を心拍数として算出する。
以上のように、本実施形態における心拍推定部20は、差分値に基づいて、出力信号の値が増加から減少に転じたタイミング、又は減少から増加に転じたタイミングを取得するように構成されている。式(1)で定義される差分値を用いることにより、出力信号の変化が増幅されることとなるので、出力信号が脈動するタイミングを正確に取得することができる。その結果、心拍推定部20によって心拍数を正確に算出し取得することができる。
また、出力信号の値が単調減少又は単調増加している期間においては差分値が概ね0となるので、出力信号のノイズを除去できるという利点も得られる。例えば、所定の閾値を下回る差分値を0に置き換える等の処理を行えば、出力信号のノイズを完全に除去することができる。
図11の例において、差分値が正側にピークとなるタイミング(時刻t14)を取得するに当たっては、心拍推定部20は更なる演算を行っている。これについて、図12を参照しながら説明する。図12(A)に示されるのは、図9と同様の差分値の変動を示すグラフである。図12(A)の例では、心臓2aの鼓動に伴う差分値のピークが3回生じている。
本実施形態では、心拍推定部20は、図12(A)に示されるような差分値の変化を示す信号を全波整流する。このため、この全波整流された信号波形は、図12(B)に示されるように、心臓2aの1回の鼓動において、正側に3つのピークが並ぶような波形となる。それぞれのピークの高さは、中央のピークにおいて最も高くなっている。
このような全波整流後の波形は平滑化されることにより、全体が一つのピークを形成するような波形(図12(C))となる。
図12(A)と図12(C)とを比較すると明らかなように、差分値の変化を示す波形は、全波整流及び平滑化を経ることにより、比較的単純な波形となっている。
心拍推定部20は、図12(C)に示される波形が正側にピークとなる時刻t21、t22、t23のそれぞれ(正確には、これらよりもサンプリング周期CTだけ前の時刻)を、出力信号の値が増加から減少に転じたタイミング、すなわち心臓2aの鼓動が生じたタイミングとして取得することができる。波形が正側にピークとなる時刻t21等は、例えば、所定の閾値を予め設定しておき、当該閾値を越える差分値が算出されたタイミングとして取得することができる。
以上説明した本実施形態によれば、生体検知装置10は、運転席1に着座した運転者2の人体に向けて電波を送信する送信アンテナ12と、送信アンテナ12から送信されて人体を透過した電波を受信電波として受信する受信アンテナ13と、体位置推定部15とアンテナ選択部16と心拍推定部20とを備える。
送信アンテナ12と受信アンテナ13とを結ぶ方向に交差し、かつ上下方向に直交する方向を車両幅方向(すなわち、所定方向)とする。受信アンテナ13は、車両幅方向に分散して配置されて受信電波の電界強度に基づいて信号レベルが変化する受信信号を出力するアンテナ素子13a、13bを備える。
体位置推定部15は、アンテナ素子13a、13bからの受信信号を電圧増幅した受信増幅信号Pa、Pbの信号レベルに基づいて運転者2の人体の車両幅方向中央の位置(すなわち、体位置という)を求める。アンテナ選択部16は、アンテナ素子13a、13bのうち体位置に近い位置のアンテナ素子を人体の心拍数の検出に用いる検出用アンテナとして選択する。
これにより、アンテナ素子13a、13bのうち人体の心拍数を正確に反映した電波を受信するためのアンテナ素子を検出用アンテナとして選択することができる。そして、心拍推定部20は、検出用アンテナ素子から出力される受信信号に基づいて、人体の心拍数を推定する。
以上により、心拍推定部20は、人体のうち心臓2a、或いは心臓2aに近い領域を透過した受信電波を受信した検出用アンテナの受信信号に基づいて、人体の心拍数を推定することができる。
すなわち、心拍推定部20は、人体の心拍数を正確に反映した受信電波の電界強度の変動に基づいて、人体の心拍数を推定することがきる。
これに加えて、体位置推定部15は、上述の如く、アンテナ素子13a、13bのうち体位置に近い位置のアンテナ素子を検出用アンテナとして選択する。このため、送信アンテナ12から送信されてから運転者2の人体を回り込んで検出用アンテナ素子で受信されるノイズとして受信電波の電界強度を小さくすることができる。
以上により、検出用アンテナ素子からの受信信号のうち心拍数を反映した変動値以外のノイズを減らすことができる。
このため、本実施形態によれば、検出用アンテナ素子からの受信増幅信号を用いることにより、人体位置に変化があっても、運転者2の人体の心拍数を正確に検出することができる。
本実施形態のメモリ15aは、体位置とアンテナ素子13aの増幅受信信号の信号レベルとが1対1で特定される関係を示す人体位置情報Gaと体位置とアンテナ素子13bの増幅受信信号の信号レベルとが1対1で特定される関係を示す人体位置情報Gbとが記憶されている。
体位置推定部15は、人体位置情報Ga、Gbに基づいて、検出用アンテナ素子からの受信信号の信号レベルに対して1対1で特定される体位置を求める。このため、運転者の体位置を精度よく求めることができる。
本実施形態では、送信アンテナ12から送信される送信電波は、偏波が車両幅方向のままで、人体(すなわち、誘電体)を透過して受信アンテナ13に受信される。一方、送信電波が人体を透過することなく、人体を車両幅方向右側(或いは左側)から回り込んだ場合には、誘電体である人体の影響を受けて偏波が車両幅方向と異なる方向になる。
そこで、送信アンテナ11として、送信電波における主な偏波が車両幅方向となるアンテナを採用し、受信アンテナ素子13a、13bとして、それぞれ、受信電波における主な偏波が車両幅方向となるアンテナ素子を採用する。
このため、受信アンテナ素子13a、13bのうちいずれかの受信アンテナ素子が、送信アンテナ12から送信されてから人体を透過して心拍数を反映した電波を受信することができる。一方、送信アンテナ12から送信されてから人体を回り込んだノイズである電波を受信アンテナ素子13a、13bが受信することを抑制することができる。
このため、心拍推定部20は、検出用アンテナ素子の受信信号の信号レベルに基づいて人体の心拍数を推定することにより、心拍数を精度よく求めることができる。
図13に送信電波における主な偏波が車両幅方向に平行となる水平偏波型の送信アンテナ12を用いた場合において自動車100の車室内の運転席近辺領域100Aの電波の伝搬状況を示すシミュレーション結果を示す。
図14に送信電波における主な偏波が車両前後方向となる垂直偏波型の送信アンテナ12Aを用いた場合において自動車100の車室内の運転席近辺領域100Aの電波の伝搬状況を示すシミュレーション結果を示す。
このため、本実施形態では、水平偏波型の送信アンテナ12を用いる。このため、垂直偏波型の送信アンテナ12Aを用いる場合に比べて、送信アンテナ12からの送信電波のうち回析波として運転者2の人体の背面側100B(図13参照)に回り込む電波の電界強度が小さくなる。
したがって、受信アンテナ素子13a、13bで受信されるノイズ電波(すなわち、偏波が車両進行方向の電波)が少なくなる。このため、心拍数を示す受信信号の信号レベルの変動値の受信感度を向上することができる。
よって、受信アンテナ素子13a、13bで受信される電界強度の変動値を正確に検出することができる。このため、人体の位置に変化があっても、受信増幅信号Pa、Pbに基づいて心拍数を正確に検出することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、受信アンテナ素子13a、13bとしてダイポールアンテナを用いた例について説明したが、これに代えて、受信アンテナ13としてフィルム型のスロットアンテナを用いた本第2実施形態について図15を用いて説明する。
本実施形態と上記第1実施形態とでは、受信アンテナ13の構成が相違するだけで、受信アンテナ13以外の構成は、同一であるため、受信アンテナ13の以外の他の構成の説明を省略する。
本実施形態の受信アンテナ13は、フィルム状の金属膜135に形成されてなるアンテナ素子13a、13bを備える。
金属膜135は、面方向が上下方向に平行で、かつ車両幅方向に平行となるように配置されている導体性の金属板である。金属膜135には、上下方向と車両幅方向とに亘って開口される開口部135a、135bが形成されている。
ここで、開口部135a、135bは、それぞれ、車両進行方向に開口形成されている。開口部135a、135bは、それぞれ、上下方向の寸法が車両幅方向の寸法よりも大きくなっている。本実施形態の車両進行方向とは、上述の如く、送信アンテナ12と受信アンテナ13とを結ぶ方向である。
金属膜135のうち開口部135aを形成する開口形成部がスロットアンテナとしてのアンテナ素子13aを構成する。金属膜135のうち開口部135bを形成する開口形成部がスロットアンテナとしてのアンテナ素子13bを構成する。
このことにより、共通の金属膜135においてアンテナ素子13a、13bが形成されることになる。
受信アンテナ素子13a、13bは、上記第1実施形態と同様に、それぞれ、運転者2の人体を透過した電波を受信電波として受信して受信電波の電界強度に基づいて信号レベルが変化する受信信号を出力する。
アンテナ素子13a、13bは、それぞれ、車両幅方向(すなわち、所定方向)に並べられている。
ここで、アンテナ素子13aと受信機14とが給電線136a、137aとによって接続されている。給電線136aは、アンテナ素子13aのうち上下方向中央部において車両幅方向右側に接続されている。給電線137aは、アンテナ素子13aのうち上下方向中央部において車両幅方向左側に接続されている。
なお、アンテナ素子13aのうち給電線136a、137aが接続される接続箇所は、上下方向中央部に限らず、上下方向中央部からずれていてもよい。
アンテナ素子13bと受信機14とが給電線136b、137bとによって接続されている。給電線136bは、アンテナ素子13bのうち上下方向中央部において車両幅方向右側に接続されている。給電線137bは、アンテナ素子13bのうち上下方向中央部において車両幅方向左側に接続されている。
なお、アンテナ素子13aのうち給電線136a、137aが接続される接続箇所は、上下方向中央部に限らず、上下方向中央部からずれていてもよい。
次に、本実施形態のアンテナ素子13a、13bを用いた場合の心拍数の実験結果について図16、図17を参照して説明する。
本実験では、インストルメントパネル3のうちステアリングS付近に配置されている送信アンテナ12と運転席1のシートバックに配置されている受信アンテナ13との間の距離Naが60cmに設定されている。発信機11から出力される送信信号の所望の周波数としては、920MHzが用いられている。
本実験では、図16に示すように、送信アンテナ12と受信アンテナ13とにはネットワークアナライザーとしての測定器200が接続されて、測定器200から送信信号が送信アンテナ12に出力された状態で受信アンテナ13で受信される受信電波の電界強度を測定した。
さらに、受信アンテナ13には、測定器200を介してコンピュータとしての解析装置210が接続されている。解析装置210は、受信アンテナ素子13a、13bで受信される受信電波の電界強度に基づいて運転者2の人体の心拍数を検出する。
運転者2の人体が運転席1のうち基準位置に位置するときには、受信アンテナ素子13bで受信される電界強度の変動が1.6dBである。この場合、解析装置210では、心拍数としての「60」を検出することができる。
運転者2の人体が運転席1のうち基準位置から右側にずれたときには、受信アンテナ素子13bで受信される電界強度の変動値が2.6dBである。この場合、解析装置210では、心拍数としての「60」を検出することができる。
運転者2の人体が運転席1のうち基準位置から左側にずれたときには、受信アンテナ素子13bで受信される電界強度の変動が0.4dBである。この場合、電界強度の変動値が下限値(=0.5)よりも小さいため、解析装置210では、心拍数を検出できない。
一方、運転者2の人体が運転席1のうち基準位置から左側にずれたときには、受信アンテナ素子13aで受信される電界強度の変動値が0.5dBである。この場合、電界強度の変動値が下限値と同じであるため、解析装置210では、心拍数としての「60」を検出することができた。
以上のように、運転者2の人体が運転席1のうち基準位置からずれて、受信アンテナ素子13bで受信される電界強度の変動値が基準値未満になる場合がある。この場合、解析装置210は、受信アンテナ素子13aで受信される電界強度の変動値に基づいて、心拍数を検出することができる。
以下、本実施形態の受信アンテナ13の具体的な寸法関係について図15を用いて説明する。
開口部135a、135bの縦寸法La(すなわち、スロット長)は、220mmであり、送信信号の波長をλとし、補正係数を1.3とすると、縦寸法La≒(λ/2)×1.3が成立する。開口部135a、135bの横幅寸法Waは3mmであり、Wa≒(λ/100)が成立する。
金属膜135の縦寸法Lbは250mmであり、金属膜135の横幅寸法Wdは、90mmである。開口部135aの中心と開口部135bの中心との間の横幅寸法Ltは、90mmである。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、2つの受信アンテナ素子13a、13bを用いた例について説明したが、これに代えて、3つの受信アンテナ素子13a、13b、13cを用いた本第3実施形態について図18を参照して説明する。
本実施形態と上記第1実施形態とでは、受信アンテナ13を構成する受信アンテナ素子の個数が相違するだけで、受信アンテナ素子の個数以外の構成は、同一のであるため、受信アンテナ13以外の他の構成の説明を省略する。
本実施形態では、受信アンテナ素子13a、13b、13cが運転席1のシートバック内に配置されている。受信アンテナ素子13a、13b、13cは、車両幅方向に分散して配置されている。
受信アンテナ素子13a、13b、13cは、それぞれ、運転者2の人体を透過した電波を受信電波として受信して受信電波の電界強度によって信号レベルが変化する受信信号を出力する。
受信アンテナ素子13a、13b、13cは、それぞれ、受信電波における主な偏波が車両幅方向に平行となるアンテナである。
受信アンテナ素子13a、13b、13cとしては、それぞれ、例えば、アンテナエレメント130、131が車両幅方向(すなわち、車室内の床に平行)に延びるダイポールアンテナが用いられる。
ここで、受信アンテナ素子13aは、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち最も車両幅方向左側に位置する。受信アンテナ素子13cは、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち最も車両幅方向右側に位置する。
受信機14は、受信アンテナ素子13a、13b、13cからの受信信号を受信アンテナ毎に電圧増幅して受信増幅信号Pa、Pb、Pcを出力する。
体位置推定部15は、予めメモリ15aに記憶した人体位置情報Ga、人体位置情報Gcを参照して、受信増幅信号Pa、Pcに基づいて、運転者2の人体の車両幅方向の位置を求める。
人体位置情報Gaは、受信増幅信号Paの信号レベルと運転者2の人体の車両幅方向の位置とが1対1で特定される関係を示すデータである。人体位置情報Gaでは、上述の如く、運転席1の幅方向中央部から人体が右側へ移動するほど、受信増幅信号Paの信号レベルが大きくなっている。
人体位置情報Gcは、受信増幅信号Pcの信号レベルと運転者2の人体の車両幅方向の位置とが1対1で特定される関係を示すデータである。人体位置情報Gcは、人体位置情報Gbと同様に、運転席1の幅方向中央部から人体が左側へ移動するほど受信増幅信号Pcの信号レベルが大きくなっている。
すなわち、人体位置情報Gcは、受信アンテナ素子13cの受信信号の信号レベルと運転者2の人体の車両幅方向の位置とが1対1で特定される関係を示すデータである。人体位置情報Ga、Gcは、メモリ15aに予め記憶されている。
アンテナ選択部16は、体位置推定部15によって求められた運転者2の人体の車両幅方向の位置に基づいて、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち、人体の心拍数を正確に反映した電波を受信するための検出用アンテナ素子を選択する。
具体的には、アンテナ選択部16は、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち、体位置推定部15によって求められた体位置に近い位置の受信アンテナ素子を検出用アンテナ素子として選択する。
これに加えて、アンテナ選択部16は、受信増幅信号Pa、Pb、Pcのうち前記選択した検出用アンテナ素子に対応する受信増幅信号をフィルタ17に出力する。例えば、アンテナ選択部16は、検出用アンテナ素子として受信アンテナ素子13aを選択したとき、受信増幅信号Paをフィルタ17に出力する。
アンテナ選択部16は、検出用アンテナ素子として受信アンテナ素子13bを選択したとき、受信増幅信号Pbをフィルタ17に出力する。アンテナ選択部16は、検出用アンテナ素子として受信アンテナ素子13cを選択したとき、受信増幅信号Pcをフィルタ17に出力する。
フィルタ17は、上記第1実施形態と同様、アンテナ選択部16からの受信増幅信号のうち所望周波数の信号成分を抽出して出力する。データ取得部18は、上記第1実施形態と同様、フィルタ17からの所望周波数の信号成分をサンプリング周期CP毎にサンプリングしてサンプリングデータを出力する。
波形データ記憶部19は、上記第1実施形態と同様、データ取得部18からのサンプリング周期CP毎のサンプリングデータを記憶する。心拍推定部20は、上記第1実施形態と同様、波形データ記憶部19に記憶されているサンプリング周期CP毎のサンプリングデータに基づいて、運転者の人体の心拍数を検出する。
以上説明した本実施形態によれば、体位置推定部15は、アンテナ素子13a、13cからの受信信号を電圧増幅した受信増幅信号Pa、Pcの信号レベルに基づいて運転者2の体位置を求める。
アンテナ選択部16は、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち、人体位置に近い位置のアンテナ素子を、人体の心拍数の検出に用いる検出用アンテナとして選択する。 このことにより、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち、人体の心拍数を正確に正確に反映した電波を受信する受信アンテナ素子を検出用アンテナ素子として選択することができる。心拍推定部20は、検出用アンテナ素子から出力される受信信号に基づいて人体の心拍数を推定する。
以上により、送信アンテナ12から送信されてから人体のうち心臓2a(或いは、心臓2aに近い領域)を透過した電波を検出用アンテナ素子で受信することができる。このため、検出用アンテナ素子で受信される電波の電界強度に含まれる、心臓2aの心拍を示す変動値の精度を高めることができる。
これに加えて、送信アンテナ12から送信されてから運転者2の人体を回り込んで検出用アンテナ素子で受信される電波の電界強度を小さくすることができる。このため、検出用アンテナ素子からの受信信号のうち心拍を示す変動以外のノイズを減らすことができる。
以上により、上記第1実施形態と同様に、検出用アンテナ素子からの受信増幅信号を用いることにより、運転者2の人体の心拍数を正確に検出することができる。
本実施形態のメモリ15aは、人体位置情報Gaおよび人体位置情報Gcを予め記憶している。人体位置情報Gaは、体位置とアンテナ素子13aの受信電波の電界強度とが1対1で特定される関係を示すデータである。人体位置情報Gcは、体位置とアンテナ素子13cの受信電波の電界強度とが1対1で特定される関係を示すデータである。
受信アンテナ素子13aは、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち最も車両幅方向左側に位置する一方側アンテナ素子である。受信アンテナ素子13cは、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうち最も車両幅方向右側に位置する他方側アンテナ素子である。
このため、受信アンテナ素子13a、13cは、受信アンテナ素子13bに比べて、運転者2の人体を回り込んで受信される電波の強度が大きくなる。このため、受信増幅信号Pa、Pcと人体位置情報Ga、Gcとを用いることにより、運転者2の体位置を精度よく求めることができる。
(他の実施形態)
(1)上記第1、第2、第3実施形態では、図19に示すように、インストルメントパネル3に送信アンテナ12を配置し、かつ受信アンテナ13を運転席1に配置した例について説明した。
これに加えて、図20に示すように、受信アンテナ13を助手席1aに配置してもよい。この場合、インストルメントパネル3のうち車両幅方向中央部に送信アンテナ12が配置されている。
このことにより、運転席1に着座した乗員の心拍数と助手席1aに着座した乗員の心拍数とを検出することができる。図20に示す例では、運転席1の受信アンテナ13と助手席1aの受信アンテナ13とのそれぞれに受信機14が設けられている。
(2)上記第1、第2、第3実施形態では、受信アンテナ13を運転席1に配置した例について説明した。これに代えて、図21に示すように、運転席1および助手席1aよりも車両進行方向後側に配置されている後部座席1bに3つの受信アンテナ13が車両幅方向に分散して配置されている。
これにより、後部座席1bのうち車両幅方向右側の乗員の心拍数、後部座席1bのうち車両幅方向中央の乗員の心拍数、および後部座席1bのうち車両幅方向左側の乗員の心拍数を検出することができる。この場合、運転席1および助手席1aの間に送信アンテナ12が配置されている。
(3)上記第1、第2、第3実施形態では、受信アンテナ13を運転席1に配置した例について説明した。
これに加えて、図22に示すように、受信アンテナ13を助手席1aに配置し、かつ
後部座席1bに3つの受信アンテナ13を車両幅方向に分散して配置してもよい。
これにより、運転席1、助手席1aに着座した乗員の心拍数、後部座席1bのうち車両幅方向右側の乗員の心拍数、車両幅方向中央の乗員の心拍数、および車両幅方向左側の乗員の心拍数を検出することができる。
この場合、インストルメントパネル3のうち車両幅方向中央部に送信アンテナ12が配置されている。
(4)上記第1、第2、第3実施形態では、送信アンテナ12を車室内のインストルメントパネル3内に配置した例について説明した。これに代えて、図23に示すように、送信アンテナ12をひじ掛け3a内に配置してもよい。図23のひじ掛け3aは、運転席2と助手席2aとの間に配置されている。
或いは、送信アンテナ12をセンターコンソール3b内に配置してもよい。センターコンソール3bは、運転席2と助手席2aとの間においてひじ掛け3aよりも車両進行方向前側に配置されている。
また、図24に示すように、送信アンテナ12を天井4に配置してもよい。この場合、
天井4において送信アンテナ12が運転席1に対して車両進行方向前側に配置されている。
(5)上記第1、第2、第3実施形態では、送信アンテナ12を人体の正面側に配置し、かつ受信アンテナ13を人体の背面側に配置した例について説明した。これに代えて、図25に示すように、人体の肩幅方向一方側に送信アンテナ12を配置し、かつ受信アンテナ13を人体の肩幅方向他方側に配置してもよい。
図25では、人体の肩幅方向右側に送信アンテナ12を配置し、かつ受信アンテナ13を人体の肩幅方向左側に配置されている例を示す。ここで、人体の肩幅方向とは、人体の右肩と左肩を結ぶ方向である。
(6)上記第1、第2、第3実施形態では、車室内の乗員の心拍数を検出した例について説明したが、これに代えて、車室内以外の領域の乗員の心拍数を検出してもよい。
例えば、生体検知装置10としては、座席に着座した人の心拍数を検出する場合に限らず、立った状態の人の心拍数を検出してもよい。或いは、生体検知装置10としては、寝た状態の人の心拍数を検出してもよい。
(7)上記第1、第2実施形態では、受信アンテナ素子13a、13bとして、受信電波における偏波が車両幅方向となるアンテナ素子を用いた例について説明した。しかし、これに限らず、受信アンテナ素子13a、13bとして、受信電波における偏波が車両幅方向と異なる方向となるアンテナ素子を用いてもよい。
例えば、受信アンテナ素子13a、13bとして、受信電波における偏波が車両進行方向となるアンテナ素子を用いてもよい。受信アンテナ素子13a、13bとして、受信電波における偏波が上下方向となるアンテナ素子を用いてもよい。
同様に、上記第3実施形態では、受信アンテナ素子13a、13b、13cとして、受信電波における偏波が車両幅方向と異なる方向となるアンテナ素子を用いてもよい。
(8)上記第1、第2、第3実施形態では、送信アンテナ12として、送信電波における偏波が車両幅方向となるアンテナ素子を用いた例について説明した。しかし、これに限らず、送信アンテナ12として、送信電波における偏波が車両幅方向と異なる方向となるアンテナを用いてもよい。
例えば、送信アンテナ12として、送信電波における偏波が車両進行方向となるアンテナを用いてもよい。送信アンテナ12として、送信電波における偏波が上下方向となるアンテナを用いてもよい。
(9)上記第1、第2、第3実施形態では、送信アンテナ12として、ダイポールアンテナを用いた例について説明した。しかし、これに代えて、送信アンテナ12として、スロットアンテナを用いてもよい。或いは、送信アンテナ12として、ダイポールアンテナ、スロットアンテナ以外の各種のアンテナを用いてもよい。
(10)上記第1実施形態では、受信アンテナ13a、13bとして、ダイポールアンテナを用いた例について説明し、上記第2、第3実施形態では、受信アンテナ素子13a、13b、13cとして、スロットアンテナを用いた例について説明した。
しかし、これに代えて、上記第1、第2、第3実施形態では、受信アンテナ13として、ダイポールアンテナ、スロットアンテナ以外の各種のアンテナを用いてもよい。
(11)上記第1、第2実施形態では、2つの受信アンテナ素子13a、13bを用いた例について説明し、上記第3実施形態では、3つの受信アンテナ素子13a、13b、13cを用いた例について説明した。これに代えて、上記第1、第2、第3実施形態では、4つ以上の受信アンテナ素子を用いてもよい。
例えば、上記第2実施形態では、共通の金属膜135において3つ以上のアンテナ素子を設けてもよい。
(12)上記第1、第2実施形態では、体位置推定部17は、受信増幅信号Pa、Pbに基づいて、運転者2の体位置を求める例について説明した。これに代えて、体位置推定部17は、受信増幅信号Pa、Pbのうち一方の受信増幅信号に基づいて、運転者2の体位置を求めてもよい。
すなわち、上記第1、第2実施形態では、体位置推定部17は、受信アンテナ素子13a、13bのうちいずれか1つの受信アンテナ素子の受信信号の信号レベルに基づいて、運転者2の体位置を求めてもよい。
さらに、上記第3実施形態では、体位置推定部17は、受信増幅信号Pa、Pcに基づいて、運転者2の体位置を求める例について説明した。これに代えて、体位置推定部17は、受信増幅信号Pa、Pb、Pcのうちいずれか1つの受信増幅信号に基づいて、運転者2の体位置を求めてもよい。
すなわち、体位置推定部17は、受信アンテナ素子13a、13b、13cのうちいずれか1つの受信アンテナ素子の受信信号の信号レベルに基づいて、運転者2の体位置を求めてもよい。
(13)上記第1、第2、第3実施形態では、人体の車両進行方向前側に送信アンテナ12を配置し、かつ人体の車両進行方向後側に受信アンテナ13を配置した例について説明した。
これに代えて、上記第1、第2、第3実施形態では、人体の車両進行方向後側に送信アンテナ12を配置し、かつ人体の車両進行方向前側に受信アンテナ13を配置してもよい。すなわち、人体の背面側に送信アンテナ12を配置し、かつ人体の正面側に受信アンテナ13を配置してもよい。
(14)上記第1、第2、第3実施形態では、体位置推定部15は、人体位置情報Ga、Gbを参照して、受信増幅信号Pa、Pbに基づいて、運転者2の人体の車両幅方向の中央の位置を求める例について説明した。
しかし、これに代えて、体位置推定部15は、運転者2の人体のうち心臓2aの車両幅方向の位置を求めるようにしてもよい。この場合、アンテナ選択部16は、受信アンテナ素子13a、13bのうち、運転者2の人体の心臓2aに近い位置の受信アンテナを検出用アンテナ素子として選択する。
(15)上記第2実施形態では、共通の金属膜135においてアンテナ素子13a、13bを形成した例について説明したが、これに代えて、アンテナ素子毎に異なる金属膜135を用いてアンテナ素子13a、13bを形成してもよい。
(16)上記第1、第2、第3実施形態では、生体検知装置10によって運転席1に着座した運転者2の心拍数を検出した例について説明した。しかし、これに代えて、生体検知装置10によって寝ている状態の人体の心拍数を検出してもよい。
或いは、生体検知装置10の検出対象である人体の状態は、座席に着座している状態に限らず、座っている状態でもよい。
(17)上記第1、第2、第3実施形態では、アンテナ選択部16は、受信アンテナ素子13a、13bのうち、運転者2の体位置に近い位置の受信アンテナを検出用アンテナ素子として選択した例について説明した。
しかし、これに限らず、人体の心拍数を正確に反映した電波を受信するための検出用アンテナ素子を選択するのであれば、運転者2の体位置に近い位置の受信アンテナを検出用アンテナ素子として選択することに限定されない。
(18)上記第2実施形態では、アンテナ素子13a、13bを形成する金属膜135の面方向が上下方向に平行になるように金属膜135を配置した例について説明した。しかし、これに限らず、面方向が車両幅方向(すなわち、所定方向)に平行であるならば、
面方向が上下方向に交差するように金属膜135を配置してもよい。
(19)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
(まとめ)
上記実施形態、および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、
生体検知装置は、人体に向けて電波を送信する送信アンテナと、受信アンテナと、アンテナ選択部と、心拍推定部とを備える。
受信アンテナは、分散して配置されて送信アンテナから送信されて人体を透過した電波を受信電波として受信して受信電波の電界強度に基づいて信号レベルが変化する受信信号を出力する複数のアンテナ素子を備える。
アンテナ選択部は、複数のアンテナ素子のうち少なくとも1つのアンテナ素子の受信信号の信号レベルに基づいて、複数のアンテナ素子のうち人体の心拍数を正確に反映した電波を受信するための検出用アンテナを選択する。
心拍推定部は、検出用アンテナ素子の受信信号の信号レベルに基づいて人体の心拍数を推定する。
第2の観点によれば、生体検知装置は、体位置推定部を備える。複数のアンテナ素子は、それぞれ、所定方向に分散して配置されている。体位置推定部は、複数のアンテナ素子のうち少なくとも1つのアンテナ素子の受信信号の信号レベルに基づいて所定方向の人体の位置を求める。
アンテナ選択部は、複数のアンテナ素子のうち、体位置推定部によって求められた位置に近い位置のアンテナ素子を検出用アンテナとして選択する。
第3の観点によれば、複数のアンテナ素子は、3つ以上のアンテナ素子である。複数のアンテナ素子のうち最も所定方向の一方側に位置するアンテナ素子を一方側アンテナ素子とし、複数のアンテナ素子のうち最も所定方向の他方側に位置するアンテナ素子を他方側アンテナ素子とする。
少なくとも1つアンテナ素子は、一方側アンテナ素子および他方側アンテナ素子のうち少なくとも一方のアンテナ素子である。
これによれば、人体の位置を求めるにあたり、一方のアンテナ素子、或いは他方のアンテナ素子を用いることにより、人体を回り込んで受信される電波の受信感度を良好にすることができる。このため、人体の位置を精度よく求めることができる。
第4の観点によれば、生体検知装置は、送信アンテナから所望周波数の送信電波を送信させる発信機と、検出用アンテナ素子の受信信号のうち所望周波数の信号成分を抽出するフィルタとを備える。心拍推定部は、フィルタによって抽出される所望周波数の信号成分に基づいて、人体の心拍数を推定する。
これによれば、フィルタによって、検出用アンテナ素子の受信信号のうち所望周波数の信号成分以外のノイズを除くことができる。このため、心拍数を精度よく求めることができる。
第5の観点によれば、送信アンテナは、送信電波における主な偏波が所定方向となるアンテナである。複数の受信アンテナ素子は、それぞれ、受信電波における主な偏波が所定方向となるアンテナ素子である。
ここで、偏波が所定方向となる電波は、偏波が所定方向のままで、人体(すなわち、誘電体)を透過して受信アンテナに受信される。一方、偏波が所定方向となる電波が人体を透過することなく、人体を所定方向から回り込んだ場合には、誘電体である人体の影響を受けて偏波が所定方向と異なる方向になる。
そこで、送信アンテナとして、送信電波における主な偏波が所定方向となるアンテナを採用し、複数の受信アンテナ素子として、それぞれ、受信電波における主な偏波が所定方向となるアンテナ素子を採用する。
このため、複数の受信アンテナ素子のうちいずれかの受信アンテナ素子が、送信アンテナから送信されてから人体を透過して心拍数を反映した電波を受信することができる。一方、送信アンテナから送信されてから人体を回り込んだノイズである電波を複数の受信アンテナが受信することを抑制することができる。
このため、心拍推定部は、検出用アンテナ素子の受信信号の信号レベルに基づいて人体の心拍数を推定することにより、心拍数を精度よく求めることができる。
第6の観点によれば、送信アンテナと受信アンテナとを結ぶ方向を結び方向とする。所定方向は、結び方向に交差する方向である。複数の受信アンテナは、それぞれ、面方向が所定方向に平行となる金属膜において結び方向に開口される開口部を形成するスロットアンテナである。
これによれば、複数の受信アンテナとして、スロットアンテナを用いることにより、座席等の内部に配置し易くなる。
第7の観点によれば、送信アンテナは、座席に着座した人体に向けて電波を送信する。
所定方向は、座席に着座した人体の左右方向である。
第8の観点によれば、座席は、車室内に配置されている。送信アンテナは、車室内のインストルメントパネル、天井、ひじ掛け、センターコンソールのうちいずれか1つに配置されている。
第9の観点によれば、受信アンテナは、座席に配置されている。