(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る生体情報検知システムは、車両に搭載され、車両の運転席である座席3に着座する人2の心拍数を生体情報として算出して出力する。人2の生体情報とは、人2の生体活動に関する情報をいう。この生体情報検知システムは、生体情報検知装置4、発信機11、送信アンテナ12、第1受信アンテナ13a、第2受信アンテナ13b、第3受信アンテナ13c、受信機14を備えている。
本実施形態では、車両の停止時に、送信アンテナ12から電波が送信される。そのとき、第1受信アンテナ13a、第2受信アンテナ13b、第3受信アンテナ13cが受信した電波に応じた3つの受信信号に基づいて、生体情報検知装置4は、人2の心拍数を主に含む電波を受信する受信アンテナを特定アンテナとして選び出す。更に生体情報検知装置4は、ノイズを主に含む電波を受信する受信アンテナをノイズ除去アンテナとして選び出す。そして生体情報検知装置4は、車両走行時に、ノイズ除去アンテナが受信した受信信号を用いて、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号からノイズを除去する。そして生体情報検知装置4は、ノイズ除去後の受信信号に基づいて人2の心拍数を算出して出力する。このような特定アンテナおよびノイズ除去アンテナの選択により、心拍数をより正確に算出することができる。以下、この生体情報検知システムの構成要素の詳細について説明する。
発信機11は、所定の周波数(例えば900MHz帯の周波数)の送信信号を送信アンテナ12に出力する。送信アンテナ12は、車室内のインストルメントパネルのうち座席3に対して車両進行方向前側に配置されている。送信アンテナ12は、発信機11からの送信信号に応じた電波信号を、座席3に着座した人2の体の上半身に向けて送信する。
第1受信アンテナ13a、第2受信アンテナ13b、第3受信アンテナ13cは、人2を挟んで送信アンテナ12と対向して配置されている。具体的には、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両幅方向に互いに異なる位置に配置されている。受信アンテナ13a、13b、13cは、それぞれ、送信アンテナ12から送信された電波信号を受信できる構成となっている。
例えば、受信アンテナ13a、13b、13cは、図1に示すように、車両のシートバック3aに埋め込まれていてもよい。このように、受信アンテナ13a、13b、13cが座席3に取り付けられているので、当該座席3に着座する人2に近い位置に容易に受信アンテナ13a、13b、13cを取り付けることができる。座席3は特定の座席に対応する。
受信機14は、受信アンテナ13a、13b、13cが受信した電波信号をそれぞれ増幅して出力する。具体的には、受信機14は、第1受信アンテナ13aが受信した電波信号を増幅して受信信号P1として生体情報検知装置4に出力する。また受信機14は、第2受信アンテナ13bが受信した電波信号を増幅して受信信号P2として生体情報検知装置4に出力する。また受信機14は、第3受信アンテナ13cが受信した電波信号を増幅して受信信号P3として生体情報検知装置4に出力する。
生体情報検知装置4は、入力部41、記憶部42、出力部43、処理部44を含んでいる。入力部41は、受信機14から入力されたアナログ信号である受信信号P1、P2、P3をデジタル信号に変換して処理部44に出力する。記憶部42は、RAM、ROM、書き込み可能な不揮発性記憶媒体等を含む。RAM、ROM、書き込み可能な不揮発性記憶媒体は、いずれも非遷移的実体的記憶媒体である。出力部43は、処理部44から入力された信号を生体情報検知装置4の外部の装置に出力する。出力先の外部の装置は、例えば、経路案内等を行う車載ナビゲーション装置でもよいし、車両の外部と通信を行う車載データ通信モジュールでもよいし、人2が携帯する携帯通信端末でもよい。
処理部44は、記憶部42のROMまたは書き込み可能な不揮発性記憶媒体に記録されたプログラムに従った処理を実行する装置であり、実行の際には、記憶部42のRAMを作業領域として使用する。
以下、上記のような構成の生体情報検知システムの作動について説明する。発信機11は、所定の周波数の送信信号を送信アンテナ12に出力する。すると、送信アンテナ12は、発信機11からの送信信号に応じた電波信号を運転席および人2に向けて放射する。
送信アンテナ12から放射されたこの電波信号のうち一部は、人2の体を透過して受信アンテナ13a、13b、13cのうち少なくとも1つによって受信される。電波信号に対して人2の体は誘電体として機能する。このため、人2の体を電波信号が透過する際に電波信号の電界強度に誘電体損失が生じる。そして、心臓2aは、拡張、収縮に伴ってその形状が変化する。このため、図1に示すような心臓2aを透過してそれぞれ受信アンテナ13a、13b、13cのいずれかに至る電波信号において、電界強度に生じる誘電体損失は、心臓2aの心拍に応じて変化する。
したがって、受信アンテナ13a、13b、13cのうちいずれかが受信する電波信号の強度は、心臓2aの心拍に応じて心拍に同期して変化する成分を含む。したがって、電波信号を受信することで受信アンテナ13a、13b、13cのいずれかからの電気信号に基づいて受信機14から出力される受信信号のレベルは、心臓2aの心拍に応じて心拍に同期して変動する成分である生体信号を多く含む。
一方、送信アンテナ12からの電波信号のうち人2の体を透過しない電波信号は、人を回り込むように進む回折波、車内で人以外の物体に反射する反射波等として、受信アンテナ13a、13b、13cに電波信号として受信される。これらの回折波、反射波には、人2の心拍に関係ない成分、すなわちノイズが主に含まれる。
受信アンテナ13a、13b、13cのうち、心臓2aを透過した電波、回折波、反射波を受信したアンテナからの電気信号に応じて受信機14から出力される受信信号には、ノイズの成分も心拍の成分も含まれる。これに対し、回折波と反射波を受信して心臓2aを透過した電波を殆ど受信しなかったアンテナからの電気信号に応じて受信機14から出力される受信信号には、ほぼノイズの成分のみである。
このように、異なる位置に複数の受信アンテナ13a、13b、13cが配置されると、ある受信アンテナは生体信号が重畳された電波を受信し、別の受信アンテナは生体信号が殆ど重畳されない電波を受信することが多い。一方、受信アンテナ13a、13b、13cが受信した電波におけるノイズの量は概ね同等であることが多い。
このように電波信号が受信されると、受信アンテナ13a、13b、13cは、それぞれ、受信した電波信号の電界強度によって信号強度が変化する電気信号を出力する。受信機14は、これら電気信号を増幅して、受信アンテナ13a、13b、13cからの電気信号にそれぞれ応じた受信信号P1、P2、P3を、生体情報検知装置4に出力する。
発信機11、送信アンテナ12、受信アンテナ13a、13b、13c、受信機14は、車両が走行していない停止時および車両が走行している走行時のいずれにおいても、上記のように作動する。以上のように発信機11、送信アンテナ12、受信アンテナ13a、13b、13c、受信機14が継続して作動することにより、生体情報検知装置4の入力部41には、時間の経過と共に信号強度が変化する受信信号P1、P2、P3が継続的に入力される。そして、受信信号P1、P2、P3のいずれかには、生体情報である心拍数を表す生体信号が含まれる。そして、受信信号P1、P2、P3の各々には、生体情報とは無関係なノイズが含まれる。
上述の通り、入力部41は、入力された受信信号P1、P2、P3の信号強度に応じた値のデジタル信号を処理部44に出力する。したがって、処理部44には、時間経過に伴う受信信号P1、P2、P3の強度変化の情報が入力される。時間経過に伴う受信信号P1、P2、P3の強度変化の情報は、時間波形すなわち時間ドメインにおける波形である。この時間波形は、より詳しくは、所定の時間間隔だけ空いた離散的な複数のサンプリングタイミングの各々における信号強度の情報を含んでいる。
処理部44は、記憶部42のROMまたは書き込み可能な不揮発性記憶媒体から所定のプログラムを読み込んで実行することにより、図2、図3に示す処理を実行する。例えば、処理部44は、車両の主電源がオフからオンになってから車両が走行を開始するまでの始動期間において図2の処理を実行し、その走行開始以降から車両の主電源がオフになるまで、図3に示す処理を実行する。
処理部44は、車両が走行しているか否かは、例えば、不図示の車速センサの出力に基づいて判定することができる。また、車両の主電源のオン、オフは、車両が走行用の動力を生成する内燃機関を有している場合は、イグニッションスイッチのオン、オフに該当する。また、車両が内燃機関を有しておらず電力で駆動されて走行用の動力を発生する電気モータを有している場合は、アクセルペダルの踏み込みに応じた当該モータへの通電を許可するメインスイッチのオン、オフが、車両の主電源のオン、オフに該当する。
あるいは、処理部44は、車両の主電源がオンのときは、信号待ち等によって車両が停止する度に、図2の処理を行い、車両が走行しているときは、図3の処理を行うようになっていてもよい。
まず、図2の処理について説明する。処理部44は、図2の処理において、まず、受信アンテナ13a、13b、13cの各々を対象として、ステップ110から始まりステップ140またはステップ150で終わるループ処理を実行する。つまり、ループ処理を、受信アンテナ13a、13b、13cの数だけ実行する。
各ループ処理において、処理部44は、ステップ110では、対象とする受信アンテナ(例えば第1受信アンテナ13a)が受けた電波に応じた最新の受信信号(例えば受信信号P1)の時間波形を所定の長さの時間区間分、抽出する。例えば、1秒前から現時点までの時間区間分だけ抽出する。
続いてステップ120では、処理部44は、直前のステップ110で抽出した時間波形を離散フーリエ変換することで、当該時間区間における受信信号の周波数と強度の関係を示す周波数特性を取得する。周波数特性は、周波数ドメインにおける波形である。この周波数特性は、所定の周波数区間内における複数の周波数ビンの個々に強度の値が割り当てられたデータである。
続いてステップ130では、直前のステップ120で得られた周波数特性に基づいて、対象の受信信号のSN比を算出する。ここで、受信信号のSN比は、当該受信信号に含まれる生体信号のノイズに対する比である。
このSN比は、処理部44によって以下のようにして算出される。まず、対象の周波数特性において、最も強度が高い周波数ビンを特定する。そして、当該周波数ビンにおける強度を信号強度Sとする。そして、当該周波数ビン以外のすべての周波数ビンにおける強度の総和をノイズ強度Nとする。そして、信号強度Sをノイズ強度Nで除算した値を、SN比とする。SN比をこのように計算するのは、心拍に由来する生体信号が対象の受信信号に主として含まれていれば、信号強度Sとして得られるのは生体信号そのものの強度であり、ノイズ強度Nとして得られるのはノイズそのものの強度である可能性が高いからである。そして、車両が停止しているときは、心拍に由来する生体信号が重畳された電波を受ける受信アンテナは、ノイズを受信しにくい。これは、車両が走行せず停止しているときは、車両の振動が少なく、かつ、その振動に起因する人2の体の動きも少ないからである。
あるいは、このSN比は、処理部44によって以下のようにして算出されてもよい。まず、対象の周波数特性において、最も強度が高い周波数ビンを含む連続した周波数ビン群を特定する。例えば、最も強度が高い周波数ビンと、その両隣の周波数ビンとを特定する。そして、特定した周波数ビン群における強度の総和を信号強度Sとする。そして、特定した周波数ビン群以外のすべての周波数ビンにおける強度の総和をノイズ強度Nとする。そして、信号強度Sをノイズ強度Nで除算した値を、SN比とする。なお、最も強度が高い周波数ビンを含む連続した周波数ビン群が示す周波数幅は、ステップ110で説明した時間区間が長くなるほど狭くなる。
続いてステップ140では、直前のステップ130で算出したSN比が基準値εより大きいか否かを判定し、基準値εより大きければステップ150に進み、基準値ε以下であれば今回のループ処理を終了する。
この基準値εは、心拍に由来する生体信号が主に重畳された電波を対象の受信アンテナが受信しているか否かを判定するための指標として値が設定される。心拍に由来する生体信号が主に重畳された電波を対象の受信アンテナが受信していれば、SN比が非常に大きくなる。一方、ノイズが主に重畳された電波を対象の受信アンテナが受信していれば、SN比が非常に小さくなる。
例えば、図4に示すように、心拍に由来する生体信号が主に重畳された電波を第3受信アンテナ13cが受信し、心拍に由来する生体信号とノイズが重畳された電波を第2受信アンテナ13bが受信したとする。そして、ほぼノイズのみが重畳された電波を第1受信アンテナ13aが受信したとする。
この場合、図4に示すように、第3受信アンテナ13cが受信した電波に応じた受信信号P3の周波数特性は、心拍に相当する周波数ビンにおいて、他のノイズよりも鋭く大きく立ち上がっている。したがって、第3受信アンテナ13cを対象としたループ処理では、ステップ140で、SN比が基準値εより大きいと判定され、その結果、処理はステップ150に進む。
またこの場合、図4に示すように、第1、第2受信アンテナ13a、13bが受信した電波に応じた受信信号P1、P2の周波数特性は、心拍に相当する周波数ビンにおける立ち上がりが、他のノイズと同程度か少し大きい程度である。したがって、第1、第2受信アンテナ13a、13bを対象としたループ処理では、ステップ140で、SN比が基準値ε以下であると判定され、その結果、今回のループ処理を終了する。
処理部44は、ステップ150では、対象のアンテナを、生体情報推定用の特定アンテナとして選び出す。図4の事例では、第3受信アンテナ13cを対象とするステップ110以降の処理において、ステップ150で、第3受信アンテナ13cが特定アンテナとして選出される。ステップ150の後、今回のループ処理が終了する。
受信アンテナ13a、13b、13cのすべてについてループ処理が終了すると、処理はステップ160に進む。ステップ160では、処理部44は、上記の3回のループ処理において特定アンテナとして選出されなかった受信アンテナのうちから、心拍に由来する生体信号を含む量が最も少ない受信信号に対応するノイズ除去アンテナを選出する。例えば、特定アンテナとして選出されなかった受信アンテナのうち、対応する受信信号のSN比が最も小さかった受信アンテナを、ノイズ除去アンテナとして選出する。したがって、図4の事例では、第1受信アンテナ13aがノイズ除去アンテナとして選択される。ステップ160の後、図2の処理は終了する。
なお、図4の事例では、図2の処理において、受信信号のSN比が基準値ε以上となる受信アンテナは、第3受信アンテナ13cのみであった。しかし、場合によっては、受信信号のSN比が基準値ε以上となる受信アンテナが複数発生する場合もある。そのような場合は、それら複数の受信アンテナのうちから1つのみを、特定アンテナとして選択してもよい。例えば、それら複数の受信アンテナのうち、受信信号のSN比が最も大きい受信アンテナを特定アンテナとしてもよい。
次に、図3の処理について説明する。上述の通り、処理部44は、車両の走行中に図3の処理を繰り返し(例えば定期的に1分周期で)実行する。
処理部44は、図3の処理において、まず、受信アンテナ13a、13b、13cの各々を対象として、ステップ210から始まりステップ220で終わるループ処理を実行する。つまり、ループ処理を、受信アンテナ13a、13b、13cの数だけ実行する。
各ループ処理において、処理部44は、まずステップ210で、対象とする受信アンテナが受けた電波に応じた最新の受信信号の時間波形を所定の長さの時間区間分、抽出する。例えば、1秒前から現時点までの時間区間分だけ抽出する。
続いてステップ220では、処理部44は、直前のステップ210で抽出した時間波形を離散フーリエ変換することで、当該時間区間における受信信号の周波数と強度の関係を示す周波数特性を取得する。この周波数特性は、所定の周波数区間内における複数の周波数ビン毎に強度の値が割り当てられたデータである。ステップ220の後、今回のループ処理が終了する。
受信アンテナ13a、13b、13cのすべてについてループ処理が終了すると、処理はステップ230に進む。ステップ230では、処理部44は、特定アンテナを対象とするループ処理のステップ220で特定された周波数特性と、ノイズ除去アンテナを対象とするループ処理のステップ220で特定された周波数特性を用いた処理を行う。以下、前者の周波数特性を特定アンテナの周波数特性と呼び、後者の周波数特性をノイズ除去アンテナの周波数特性と呼ぶ。なお、ここで用いる特定アンテナおよびノイズ除去アンテナは、最後に行われた図2の処理で選出された特定アンテナおよびノイズ除去アンテナであってもよいし、それ以外のタイミングで選出された特定アンテナおよびノイズ除去アンテナであってもよい。
具体的には、処理部44は、ステップ230では、ノイズ除去アンテナの周波数特性に基づいて、特定アンテナの周波数特性からノイズを除去する。より具体的には、図5に示すように、特定アンテナの周波数特性F1から、ノイズ除去アンテナの周波数特性F2を減算する。減算は、同じ周波数ビン同士における強度の減算である。
基本的に、特定アンテナの周波数特性F1には心拍由来の生体信号とノイズとが含まれており、ノイズ除去アンテナの周波数特性F2にはほぼノイズのみが含まれている。したがって、上述のような減算を行うことで、得られた結果の周波数特性F3=F1−F2では、図5に示すように、ノイズがほぼ除去されて心拍由来の生体信号が残っている。
このように、周波数特性F2が大きくなるほど、周波数特性F1から除去されるノイズの量が大きくなる。すなわち、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号から除去されるノイズの量は、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号が強いほど大きくなる。
続いてステップ240では、ステップ230で得られた減算結果の周波数特性F3から、人2の心拍数を算出する。具体的には、当該周波数特性F3において強度が最も高い周波数をヘルツ単位で表した数に60を乗算することで、心拍数をbpm単位で算出する。bpmは、beat per minuteの略であり、一分間に1回の心拍の場合に1となる単位である。
車両の走行中は、車両の振動等によるノイズが多いので、単に特定アンテナの周波数特性を用いるだけでは、正しく心拍数を算出することが困難な場合がある。しかし、上述のように、ノイズが除去された後の特定アンテナの周波数特性を用いることで、正しく心拍数を算出できる可能性が高くなる。
続いてステップ250では、直前のステップ240で算出した心拍数を、出力部43にデジタルデータとして出力する。出力部43は、このようにして処理部44から入力された心拍数のデジタルデータを、生体情報検知装置4の外部の装置に出力する。ステップ250の後、図3の処理は修了する。
以上説明した通り、処理部44は、受信信号P1、P2、P3のSN比が基準値より大きい受信信号に対応する特定アンテナを、受信アンテナ13a、13b、13cから選び出す。そして処理部44は、当該特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、人2の生体情報として心拍数を算出する。
したがって、受信アンテナ13a、13b、13cのうち、受けるノイズが少ない受信アンテナを選択的に利用して心拍数を算出できるので、そうでない場合に比べて、高い精度で心拍数を算出することができる。
受けるノイズが少ない受信アンテナを選択的に利用できるということは、受信アンテナ13a、13b、13cのうち特定アンテナとなる受信アンテナが、変化するということである。例えば、座席3に着座する乗員がある人から別の人に変わったときに、体格や心臓の位置の違いによって、特定アンテナとなる受信アンテナが変化する場合がある。
また例えば、座席3に着座する乗員自体に変化がなくても、座席3の位置およびシートバック3aのリクライニング角度の変化に応じて、特定アンテナとなる受信アンテナが変化する場合がある。
また例えば、座席3に着座する乗員自体に変化がなくても、乗員の座席3への座り方の変化に応じて、特定アンテナとなる受信アンテナが変化する場合がある。また例えば、座席3に着座する乗員自体に変化がなくても、他の座席における着座状況に変化があれば、特定アンテナとなる受信アンテナが変化する場合がある。したがって、車両の主電源がオンしてからオフするまでの間に、特定アンテナとなる受信アンテナが変化する場合もしない場合もある。
このような変化については、ノイズ除去アンテナについても同じである。つまり、臨機応変に、状況に合わせて、特定アンテナおよびノイズ除去アンテナを選出できることにより、特定アンテナおよびノイズ除去アンテナを固定する場合に比べて、幅広い場面において高い精度で心拍数を算出することができる。
また、処理部44は、受信信号P1、P2、P3の周波数特性に基づいてSN比を算出する。このように周波数特性を用いることで、受信信号中の生体信号のノイズに対する比を安定的に算出することができる。これは、心拍等の生体信号は、周波数が概ね安定しているからである。また同様に、周波数特性を用いると、どの成分が生体信号でどの成分がノイズかを、容易に区別することができるので、SN比を容易に算出可能である。
また、処理部44は、車両が停止しているときに受信アンテナ13a、13b、13cが受けた電波に応じた受信信号P1、P2、P3に基づいて、特定アンテナおよびノイズ除去アンテナを選び出す。そして処理部44は、そのような特定アンテナおよびノイズ除去アンテナを利用して、車両が走行しているときに受信アンテナ13a、13b、13cが受けた電波に応じた受信信号P1、P2、P3に基づいて、心拍数を算出する。
車両が停止しているときは、車両が走行している場合に比べ、受信信号にノイズが載り難い。したがって、このときは特定アンテナを正しく選ぶことがより容易になる。そして、そのようにして選ばれた特定アンテナを走行中も利用することで、走行中も高い精度で生体情報を算出することができる。
また、処理部44は、特定アンテナとして選び出されなかったノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去する。
ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号は、ノイズが主となる傾向にある。これは、異なる位置に複数の受信アンテナが配置されると、ある受信アンテナは生体信号が重畳された電波を受信し、別の受信アンテナは生体信号が殆ど重畳されない電波を受信することが多いからである。しかしながら、ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号にも、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号にも、ノイズは概ね同等量含まれていることが多い。したがって、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去し、除去後の受信信号に基づいて生体情報を算出することで、より高い精度で生体情報を算出することができる。
なお、本実施形態では、処理部44は、図2のステップ110を実行することで取得部として機能し、ステップ150を実行することで選出部として機能する。また、図3のステップ240を実行することで算出部として機能する。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、処理部44の処理内容が一部変更されている。具体的には、本実施形態の処理部44は、図2の処理に代えて図6の処理を実行する。図6の処理は、図2の処理に対してステップ115の処理が追加されている。その他の構成および処理は、第1実施形態と同じである。
処理部44は、図6の処理において、ステップ110で受信信号の時間波形を取得した後、ステップ115に進む。ステップ115では、変動勾配が所定の参照値σより大きいか否かを判定する。変動勾配とは、直前のステップ110で取得した時間波形の強度(すなわち受信レベル)の変動勾配である。
例えば、変動勾配は、今回の時間区間における強度の最大値と最小値の差の絶対値であってもよいし、今回および前回の時間区間における強度の最大値と最小値の差の絶対値であってもよい。参照値σは、例えば、人の心拍の収縮および拡大によって発生する時間波形の変動勾配なら参照値σより小さくなるよう、設定される。
処理部44は、変動勾配が所定の参照値σより大きい場合は、ステップ120に進み、参照値σ以下である場合は、図6の処理を最初から実行し直す。図6の処理を最初から実行し直す前には、今回の図6の処理で行われた特定アンテナの選択は破棄する。このようにすることで、処理部44は、受信アンテナ13a、13b、13cのすべてについて変動勾配が参照値σより小さいときを選んで、その時点において取得された受信信号に基づいて、特定アンテナを選び出すことができる。
例えば、車両が停止していても、人の体が大きく動いているときは、受信信号に大きな変化が生じる。受信信号に大きな変化が生じるときは、SN比を正確に算出することが困難である。したがって、複数の受信信号の変動勾配が参照値σ以下の場合を選んで特定アンテナを選び出すことで、SN比をより正確に算出することができる。
また、本実施形態において第1実施形態の同等の構成および作動からは、同等の効果が得られる。
なお、本実施形態では、処理部44は、図6のステップ110を実行することで取得部として機能し、ステップ150を実行することで選出部として機能する。また、図3のステップ240を実行することで算出部として機能する。
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1、第2実施形態に対して、処理部44の処理内容が一部変更されている。具体的には、本実施形態の処理部44は、図3の処理に代えて図7の処理を実行する。図7の処理は、図3の処理に対してステップ225の処理が追加され、かつ、ステップ230の処理内容に変更がある。その他の構成および処理は、第1、第2実施形態と同じである。
処理部44は、図7の処理において、受信アンテナ13a、13b、13cのすべてについてループ処理が終了するとステップ225に進む。ステップ225では、重みβを算出する。重みβは、後述するように、特定アンテナからノイズを除去する際に用いられる係数である。重みβは、図2または図3の処理において選出した特定アンテナとノイズ除去アンテナの組み合わせに基づいて、図8に示すような重み算出テーブルを用いて、算出される。
この重み算出テーブルは、特定アンテナとノイズ除去アンテナの組み合わせ毎に、重みβの値が割り当てられている。重み算出テーブルの値は、あらかじめ実験等によって決定されている。図8に示す重みβの数値は、一例であって、これに限定されるものではない。なお、重みβの値は、図8の例のように、周波数によらず一定でもよいし、周波数に応じて変動する量(すなわち、周波数の関数)であってもよい。
図8の例では、特定アンテナとノイズ除去アンテナの組み合わせが異なると、重みβの値は異なる。この違いは、受信アンテナ13a、13b、13cの位置に起因する違いである。特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量と、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量は、同じでないことが多い。そして、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量と、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量との差は、特定アンテナとノイズ除去アンテナの位置関係に応じて変化する。
例えば、特定アンテナとノイズ除去アンテナが互いにごく近い位置にあれば、それらが受ける電波中のノイズはほぼ同じになる。逆に、特定アンテナとノイズ除去アンテナの間の距離が長い程、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量の違いは、大きくなる傾向にある。
図8の例でも、特定アンテナが第1受信アンテナ13aの場合、ノイズ除去アンテナが第2受信アンテナ13bであるときよりも第3受信アンテナ13cであるときの方が、重みβが小さい。また、特定アンテナが第3受信アンテナ13cの場合、ノイズ除去アンテナが第2受信アンテナ13bであるときよりも第1受信アンテナ13aであるときの方が、重みβが小さい。これは、受信アンテナ13a、13b、13cの位置関係が、図1に示すからである。つまり、第1受信アンテナ13aからは第2受信アンテナ13bよりも第3受信アンテナ13cの方が遠く、第3受信アンテナ13cからは第2受信アンテナ13bよりも第1受信アンテナ13aの方が遠い。
また、図8の例では、特定アンテナが第2受信アンテナ13bの場合、ノイズ除去アンテナが第1受信アンテナ13aであるときよりも第3受信アンテナ13cであるときの方が、重みβが小さい。第2受信アンテナ13bから第1受信アンテナ13aまでの距離は、第2受信アンテナ13bから第3受信アンテナ13cまでの距離とほぼ同じである。しかし、第2受信アンテナ13bから第1受信アンテナ13aへの方向と、第2受信アンテナ13bから第3受信アンテナ13cへの方向は、全く異なっている。この違いが、電波の伝搬経路の違いをもたらし、その結果、上述のような重みβの違いに表れる。
ステップ225に続いて処理部44は、ステップ230で、ノイズ除去アンテナの周波数特性および重みβに基づいて、特定アンテナの周波数特性からノイズを除去する。
具体的には、特定アンテナの周波数特性F1から、ノイズ除去アンテナの周波数特性F2に重みβを乗算した量を減算する。乗算および減算は、同じ周波数ビン同士における強度の演算である。したがって、上述のような減算を行うことで、得られた結果の周波数特性F3=F1−β×F2では、図5に示すように、ノイズがほぼ除去されて心拍由来の生体信号が残っている。
このように、周波数特性F2および重みβが大きくなるほど、周波数特性F1から除去されるノイズの量が大きくなる。すなわち、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号から除去されるノイズの量は、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号が強いほど大きくなる。そして、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号から除去されるノイズの量は、特定アンテナの位置とノイズ除去アンテナの位置に応じて、特定アンテナが異なれば異なる。このように、除去されるノイズの量がノイズ除去アンテナの位置に応じて変動することで、より正確なノイズ除去が行われる。
また、本実施形態において第1、第2実施形態の同等の構成および作動からは、同等の効果が得られる。
なお、本実施形態では、処理部44は、図2または図6のステップ110を実行することで取得部として機能し、ステップ150を実行することで選出部として機能する。また、図7のステップ240を実行することで算出部として機能する。
(第4実施形態)
次に第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、構成および作動が変更されている。具体的には、本実施形態の生体情報検知システムは、第1実施形態の構成に加え、図9に示すように、発信機11z、送信アンテナ12z、第1受信アンテナ13az、第2受信アンテナ13bz、第3受信アンテナ13cz、受信機14zを備えている。
発信機11z、送信アンテナ12z、受信アンテナ13az、13bz、13cz、受信機14zの構成およびこれらの間の関係は、発信機11、送信アンテナ12、受信アンテナ13a、13b、13c、受信機14の構成およびこれらの間の関係と同じである。ただし、発信機11z、送信アンテナ12z、受信アンテナ13az、13bz、13cz、受信機14zは、助手席である座席3zに着座する人の心拍を検出するための構成である。本実施形態では、座席3および座席3zのそれぞれは特定の座席に対応する。また、座席3は第1の座席に対応し、座席3zは第2の座席に対応する。あるいは、座席3は第2の座席に対応し、座席3zは第1の座席に対応する。
発信機11zは、所定の周波数(例えば900MHz帯の周波数)の送信信号を送信アンテナ12zに出力する。送信アンテナ12zは、車室内のインストルメントパネルのうち座席3zに対して車両進行方向前側に配置されている。送信アンテナ12zは、発信機11zからの送信信号に応じた電波信号を、座席3zに着座した人の体の上半身に向けて送信する。
第1受信アンテナ13az、第2受信アンテナ13bz、第3受信アンテナ13czは、座席3zに着座する人を挟んで送信アンテナ12zと対向して配置されている。具体的には、受信アンテナ13az、13bz、13czは、車両幅方向に互いに異なる位置に配置されている。受信アンテナ13az、13bz、13czは、それぞれ、送信アンテナ12zから送信された電波信号を受信できる構成となっている。例えば、受信アンテナ13az、13bz、13czは、図9に示すように、車両のシートバック3azに埋め込まれていてもよい。
したがって、送信アンテナ12および受信アンテナ13a、13b、13cが座席3zよりも座席3の方に近い位置にある。また、送信アンテナ12zおよび受信アンテナ13az、13bz、13czが座席3よりも座席3zの方に近い位置にある。
受信機14zは、受信アンテナ13az、13bz、13czが受信した電波信号をそれぞれ増幅して受信信号P1z、P2z、P3zとして生体情報検知装置4に出力する。生体情報検知装置4の入力部41は、受信機14、14zから入力されたアナログ信号である受信信号P1、P2、P3、P1z、P2z、P3zをデジタル信号に変換して処理部44に出力する。
その他の構成は、第1実施形態と同じである。次に、本実施形態における生体情報検知システムの作動について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態の処理部44は、座席毎に、図10に示す処理と図3に示す処理を実行する。具体的には、処理部44は、座席3に人が着座している場合に、座席3用に、図10に示す処理と図3に示す処理を実行し、座席3に誰も着座していない場合に、図10に示す処理と図3に示す処理を座席3用には実行しない。また処理部44は、座席3zに人が着座している場合に、座席3z用に、図10に示す処理と図3に示す処理を実行し、座席3zに誰も着座していない場合に、図10に示す処理と図3に示す処理を座席3z用には実行しない。なお、図10、図3の処理が実行される場合の実行タイミングは、それぞれ、第1実施形態の図2、図3の処理と同じである。図10の処理は、図2の処理に対して、ステップ155、170を追加したものである。
なお、処理部44は、座席3、3zの各々に人が着座しているか否かを、例えば、座席3、3zの各々に取り付けられた不図示の着座センサからの検出信号に基づいて判定してもよい。
あるいは、処理部44は、座席3に人が着座しているか否かを、送信アンテナ12から電波信号が送信されたときの受信信号P1、P2、P3のいずれかの信号レベルに基づいて判定してもよい。具体的には、当該信号レベルが基準値以上の場合は座席3に誰も着座しておらず、当該信号レベルが基準値未満の場合は座席3に人が着座していると判定してもよい。このようにするのは、座席3に人が着座していない方が、発信機11から送信された電波が受信アンテナ13a、13b、13cに到達するまでの減衰量が低いからである。また同様に、処理部44は、座席3zに人が着座しているか否かを、送信アンテナ12zから電波信号が送信されたときの受信信号P1z、P2z、P3zのいずれかの信号レベルに基づいて判定してもよい。
このように、処理部44は、座席3に着座する人2の心拍を算出するために、図10、図3の処理を実行し、それとは別に、座席3zに着座する人2の心拍を算出するために図10、図3の処理を実行する。したがって、本実施形態では、着座者の心拍を算出できる座席は、座席3と座席3zの2つである。
なお、座席3に着座する人2の心拍を算出するために行われる図10、図3の処理では、第1実施形態で説明した通り、受信信号P1、P2、P3が用いられる。一方、座席3zに着座する人の心拍を算出するために行われる図10、図3の処理では、受信信号P1、P2、P3の代わりに、受信信号P1z、P2z、P3zを用いる。
ここで、座席3に着座する人2の心拍を算出するために実行される図10の処理について、図2の処理と異なる点について説明する。
受信アンテナ13a、13b、13cのすべてについてループ処理が終了すると、処理はステップ155に進む。ステップ155では、処理部44は、着座者の心拍を算出できる座席のうち、当該処理が対象とする座席(この場合は座席3)以外の座席に、誰も着座していない座席があるか否かを判定する。着座の有無の判定方法は、上述の通りである。
本実施形態では、処理部44は、座席3zに人が着座していれば、ステップ160に進み、第1実施形態と同様にノイズ除去アンテナを選出する。一方、座席3zに誰も着座していなければ、ステップ170に進む。
ステップ170では、ステップ155で着座をしていないと判定した座席(すなわち座席3z)に対応する受信アンテナ、すなわち、受信アンテナ13az、13bz、13czのうち1つを、ノイズ除去アンテナとして選出する。選出するのは受信アンテナ13az、13bz、13czのうちどれでもよい。これにより、運転席3に着座する人2の心拍を算出するための図3の処理において、特定アンテナとして運転席3に対応する受信アンテナが使用され、ノイズ除去アンテナとして座席3zに対応する受信アンテナが使用される。ステップ170の後、図10の処理は終了する。図10のその他の処理は、図2の処理と同じである。
なお、座席3zに着座する人2の心拍を算出するために実行される図10、図3の処理は、第1実施形態および本実施形態における図2、図10、図3の処理の説明において、所定の読み替えを行ったものとなる。読み替えでは、人2、座席3、発信機11、送信アンテナ12を、それぞれ、人、座席3z、発信機11z、送信アンテナ12zに読み替える。更に読み替えでは、受信アンテナ13a、13b、13c、受信機14、受信信号P1、P2、P3を、受信アンテナ13az、13bz、13cz、受信機14z、受信信号P1z、P2z、P3zに読み替える。
なお、本実施形態では、座席3の心拍を特定する処理においては、受信アンテナ13a、13b、13cのいずれかが特定アンテナに対応し、受信アンテナ13az、13bz、13czのいずれかが他受信アンテナに対応する。また、座席3zの心拍を特定する処理においては、受信アンテナ13az、13bz、13czのいずれかが特定アンテナに対応し、受信アンテナ13a、13b、13cのいずれかが他受信アンテナに対応する。
以上の通り、処理部44は、座席3に人2が着座して座席3zに誰も着座していない場合に、受信アンテナ13az、13bz、13czのいずれかが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去する。このように、座席3zに誰も着座していなければ、座席3zの近くに取り付けられた受信アンテナ13az、13bz、13czは、ノイズが主の電波を受信する。したがって、座席3に着座する乗員の生体情報を算出するために、受信アンテナ13az、13bz、13czのいずれかが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去することができる。
また、本実施形態において第1実施形態の同等の構成および作動からは、同等の効果が得られる。なお、第1実施形態に対する本実施形態のような変更は、第2、第3実施形態にも同様に適用可能である。
なお、本実施形態では、処理部44は、図10のステップ110を実行することで取得部として機能し、ステップ150を実行することで選出部として機能する。また、図3のステップ240を実行することで算出部として機能する。
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
(変形例1)
上記実施形態では、1つの座席に対応する受信アンテナの数は3つであったが、2つであってもよいし4つ以上であってもよい。受信アンテナの数が2つである場合は、特定アンテナとして選出されなかった方が、ノイズ除去アンテナになる。
(変形例2)
上記実施形態では、図2、図6、図10の処理は、車両の停止時に実行されている。しかし、図2、図6、図10の処理は、車両の走行中においても、ノイズが比較的少ないと期待される場面において実行されてもよい。ノイズが比較的少ないと期待される場面としては、例えば、非常に低速(例えば時速10km以下)に走行している場合、高速道路を走行している場合に等がある。車両が高速道路を走行しているか否かは、例えば、道路の位置と種別が記載された不図示の道路地図データと、車両の現在位置を特定する不図示の装置(例えばGPS受信機)とを用いて判定することができる。
(変形例3)
上記実施形態では、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号とノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号の差分に基づいて、心拍数が算出されている。しかし、特定アンテナでも除去アンテナでもない別の受信アンテナが受信した電波に応じた受信信号も、心拍数の算出に用いられてもよい。
例えば、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号と別の受信アンテナが受信した電波に応じた受信信号との合成値(例えば平均値)から、ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号が減算され、減算結果が心拍数の算出に用いられてもよい。
また例えば、ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号と別の受信アンテナが受信した電波に応じた受信信号との合成値(例えば平均値)が、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号から減算され、減算結果が心拍数の算出に用いられてもよい。
(変形例4)
上記実施形態では、ステップ130でSN比が算出されている。しかし、SN比そのものを算出する必要があるわけでなく、SN比が基準値より大きいか否かがわかるような量が算出されればよい。例えば、算出されるのは、SN比の自乗でもよいし、SN比に強い相関のある他の量であってもよい。
(変形例5)
上記実施形態では、受信アンテナ13a、13b、13cは、車両幅方向に互いに異なる位置に配置されているが、車両前後方向に互いに異なる位置に配置されていてもよいし、車両上下方向に互いに異なる位置に配置されていてもよい。あるいは、それらの任意の組み合わせでもよい。
(変形例6)
上記実施形態では、座席3が運転席であった。しかし、座席3は、運転席でも助手席でも後部座席でもよい。
(変形例7)
上記第4実施形態では、座席3が運転席で座席3zが助手席であった。しかし、座席3が助手席で座席3zが運転席であってもよい。また、上記第4実施形態では、着座者の心拍数を算出できるのは運転席と助手席のみであった。しかし、運転席、助手席、後部座席のすべてにおいて、着座者の心拍数を算出できるように、生体情報検知システムが構成されていてもよい。
(変形例8)
上記実施形態では、受信信号の周波数特性に基づいてSN比が算出されている。しかし受信信号の時間波形に基づいてSN比が算出されてもよい。
(変形例9)
上記第2実施形態では、受信信号の強度の変動勾配は、1つまたは複数の時間区間における最大値と最小値の差の絶対値であったが、他の指標を用いてもよい。例えば、直前のステップ110で取得した時間波形の代表値の経時変動勾配を変動勾配としてもよい。
時間波形の代表値は、例えば、強度(すなわちレベル)の絶対値の、今回の時間区間全体に亘る平均値であってもよい。あるいは、時間波形の代表値は、今回の時間区間内における強度の最大値であってもよいし、中央値であってもよい。
また、代表値の経時変動勾配は、例えば、今回の時間区間における代表値の、前回の時間区間における代表値に対する変動量であってもよい。あるいは、代表値の経時変動勾配は、今回、前回、前々回の時間区間における代表値に基づいて算出されてもよい。なお、前回、前々回の時間区間とは、それぞれ、対象の受信アンテナについて前回、前々回にループ処理が行われた際に取得された時間波形の時間区間である。
あるいは、受信信号の強度の変動勾配は、受信信号の時間波形ではなく周波数特性の経時変動勾配であってもよい。
(変形例10)
上記実施形態では、生体情報検知装置4は車両に搭載されている。しかし、生体情報検知装置4は必ずしも車両に搭載されていなくてもよい。例えば、生体情報検知装置4は、車両から離れた場所のサーバによって実現されていてもよい。その場合、生体情報検知装置4は、受信信号P1、P2、P3を、無線通信を介して受信してもよい。
(変形例11)
上記実施形態では、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号から、ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号に基づいて、ノイズが除去されている。そして、そのノイズ除去の方法として、減算すなわちF1−F2が使用されている。しかし、減算ではなく除算すなわちF1/F2が使用されてもよい。
特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号から、ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号に基づいて、ノイズを除去する方法は、有効に除去されればどのような方法であってもよい。
(変形例12)
上記実施形態では、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号から、ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号に基づいて、ノイズが除去されている。しかし、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号から、ノイズ除去を行わずそのまま心拍を算出してもよい。このようにした場合でも、そもそも特定アンテナがSN比の少ない受信信号に対応する受信アンテナとして選択されているのだから、従来よりも正確に心拍を算出することができる。
(変形例13)
上記実施形態では、生体情報検知システムが算出する生体情報として、心拍が例示されている。しかし、生体情報検知システムが算出する生体情報は、心拍数でなくともよく、例えば、脈拍数でもよいし、呼吸数でもよい。
(変形例14)
上記実施形態では、生体情報検知システムは、車両の乗員の生体情報を算出する。しかし、生体情報を算出する対象の人は、かならずしも車両の乗員でなくてもよく、例えば、建物内にいる人であってもよい。
(変形例15)
上記実施形態では、受信アンテナ13a、13b、13cは、送信アンテナ12から放射されて人を透過した後の電波を受信するように構成されている。しかし、必ずしもそのようになっていなくてもよい。
例えば、受信アンテナ13a、13b、13cは、送信アンテナ12から放射されて人で反射した後の電波を受信するように構成されていてもよい。人を透過しただけでなく、人を反射した電波においても、心拍等の生体情報が重畳されているからである。なお、この場合、受信アンテナ13a、13b、13cのうち1つが送信アンテナを兼ねてもよい。
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、生体情報検知システムは、互いに異なる位置に配置されて電波を受信する複数の受信アンテナと、送信アンテナから電波が放射されたとき、前記複数の受信アンテナが受けた電波に応じた複数の受信信号を取得する取得部と、前記送信アンテナから放射されて人の体を反射または透過した電波に応じた生体信号の、前記生体信号以外のノイズに対する比が基準値より大きい受信信号に対応する特定アンテナを、前記複数の受信アンテナから選び出す選出部と、前記選出部が選出した特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、前記人の生体情報を算出する算出部と、を備えたる。
このように、生体信号のノイズに対する比が基準値より大きい受信信号に対応する特定アンテナを複数の受信アンテナから選び、当該特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて生体情報が算出される。したがって、複数の受信アンテナのうち、受けるノイズが少ない受信アンテナを選択的に利用して生体情報を算出できるので、そうでない場合に比べて、高い精度で生体情報を算出することができる。
また、第2の観点によれば、前記選出部は、前記複数の受信信号の周波数特性に基づいて、前記特定アンテナを選出する。このように、複数の受信信号の周波数特性を用いることで、受信信号中の生体信号のノイズに対する比を安定的に算出することができる。これは、生体信号は、周波数が概ね安定しているからである。また同様に、周波数特性を用いると、どの成分が生体信号でどの成分がノイズかを、容易に区別することができるので、上記比を容易に算出可能である。
また、第3の観点によれば、前記送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナは車両に搭載されており、前記選出部は、前記車両が停止しているときに前記複数の受信アンテナが受けた電波に応じた前記複数の受信信号に基づいて、前記特定アンテナを選び出し、
前記算出部は、前記車両が走行しているときに前記特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、前記生体情報を算出する。
車両が停止しているときは、車両が走行している場合に比べ、受信信号にノイズが載り難い。したがって、このときは特定アンテナを正しく選ぶことがより容易になる。そして、そのようにして選ばれた特定アンテナを走行中も利用することで、走行中も高い精度で生体情報を算出することができる。
また、第4の観点によれば、前記選出部は、前記複数の受信信号の受信レベルの変動勾配の絶対値が参照値より小さいときに、前記複数の受信信号に基づいて、前記特定アンテナを選び出す。
例えば、人の体が大きく動いているときは、受信信号に大きな変化が生じる。受信信号に大きな変化が生じるときは、生体信号のノイズに対する比を正確に算出することが困難である。したがって、複数の受信信号の受信レベルの変動勾配の絶対値が参照値より低い場合を選んで特定アンテナを選び出すことで、生体信号のノイズに対する比をより正確に算出することができる。
また、第5の観点によれば、前記算出部は、前記複数の受信アンテナのうち前記選出部に選び出されなかったノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、前記特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去し、除去後の前記受信信号に基づいて、前記生体情報を算出する。
ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号は、ノイズが主となる傾向にある。これは、異なる位置に複数の受信アンテナが配置されると、ある受信アンテナは生体信号が重畳された電波を受信し、別の受信アンテナは生体信号が殆ど重畳されない電波を受信することが多いからである。しかしながら、ノイズ除去アンテナが受信した電波に応じた受信信号にも、特定アンテナが受信した電波に応じた受信信号にも、ノイズは概ね同等量含まれていることが多い。したがって、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去し、除去後の受信信号に基づいて生体情報を算出することで、より高い精度で生体情報を算出することができる。
また、第6の観点によれば、前記特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号から除去されるノイズの量は、前記ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号が強いほど大きく、かつ、前記ノイズ除去アンテナが異なれば異なる。
特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量と、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量は、同じでないことが多い。そして、特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量と、ノイズ除去アンテナが受けた電波に応じた受信信号に含まれるノイズの量との差は、特定アンテナとノイズ除去アンテナの位置関係に応じて変化する。したがって、上記のように、除去されるノイズの量がノイズ除去アンテナの位置に応じて変動することで、より正確なノイズ除去が行われる。
また、第7の観点によれば、前記送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナは車両に搭載されており、前記車両の第1の座席と第2の座席を比べると、前記複数の受信アンテナは前記第1の座席の方より近い位置にあり、当該生体情報検知システムは、前記第1の座席よりも前記第2の座席の方に近い他受信アンテナを備え、前記算出部は、前記第1の座席に前記人が着座しており、前記第2の座席に誰も着座していない場合に、前記他受信アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、前記特定アンテナが受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去し、除去後の前記受信信号に基づいて、前記生体情報を算出する。
このように、第2の座席に誰も着座していなければ、第2の座席の近くに取り付けられた他受信アンテナは、ノイズが主の電波を受信する。したがって、第1の座席に着座する乗員の生体情報を算出するために、他受信アンテナが受けた電波に応じた受信信号に基づいて、特定アンテナ受けた電波に応じた受信信号からノイズを除去することができる。
また、第8の観点によれば、前記送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナは車両に搭載されており、前記複数の受信アンテナは、前記車両の特定の座席に取り付けられており、前記選出部は、前記人が前記特定の座席に着座しているときに前記複数の受信アンテナから前記特定アンテナを選び出す。このように、複数の受信アンテナが特定の座席に取り付けられているので、当該特定の座席に着座する人に近い位置に容易に受信アンテナを取り付けることができる。