以下、本発明に係る交流回転機の制御装置および電動パワーステアリングの制御装置の各実施の形態を、図を参照して説明する。ここでは、同一または相当する要素には、同一符号を付している。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る交流回転機の制御装置の全体構成例を示すブロック図である。本実施の形態1に係る交流回転機の制御装置は、交流回転機2を制御して駆動するものであり、電圧印加部1、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、電圧指令生成部9、及び電圧指令出力部10を備えている。交流回転機2は、同期機、例えば同期電動機である。図1では、交流回転機2を「同期機」と表記している。
電流検出部4は、交流回転機2に供給される電流を検出し、デジタル信号の電流値を出力する。この電流値を出力するために、電流検出部4はA/D(Analog-to-Digital)変換部を内蔵する。位置検出部3は、R/D(Resolver-to-Digital)コンバータを内蔵し、デジタル信号で交流回転機2の回転位置を出力する。
第1の座標変換部6、第2の座標変換部8、電流制御部7、電圧指令生成部9、角周波数演算部60、及び電圧指令出力部10は、それぞれデジタル回路で実現されている。デジタル回路は、具体的には、例えばマイクロコンピュータである。これら各部6~10及び60は、例えばマイクロコンピュータに実行させる1つのプログラムを構成する各サブプログラムによって実現される。プログラムを実行させる処理装置は、マイクロコンピュータ以外の処理装置、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備えた処理装置であっても良い。
本実施の形態1では、静止座標としてU、V、W相を含む座標を使用する。電圧印加部1は、三相給電線11により交流回転機2と接続され、三相給電線11を介して、交流回転機2に三相交流電圧vu、vv、vwを印加する。三相交流電圧vu、vv、vwは、U相交流電圧vuと、V相交流電圧vvと、W相交流電圧vwとを含む。
電圧印加部1は、電圧指令出力部10から、デジタルの三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を入力し、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*に基づいて、内部の母線電圧を三相交流電圧vu、vv、vwに変換する。そして、電圧印加部1は、変換した三相交流電圧vu、vv、vwを、交流回転機2に印加する。三相電圧指令値vu*、vv*、vw*は、静止座標上の電圧指令値であり、U相電圧指令値vu*と、V相電圧指令値vv*と、W相電圧指令値vw*とを含む。
電圧印加部1には、周知の技術を用いることができる。このため、詳細な説明は、省略するが、例えば、電圧印加部1は、オンオフ制御の可能な半導体スイッチを複数備え、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を用いて各半導体スイッチをオンオフ制御することにより、三相交流電圧vu、vv、vwを生成する。
なお、電圧印加部1が交流回転機2に三相交流電圧vu、vv、vwを印加するにあたっては、三相交流電圧vu、vv、vwの相対的な電位差が、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*の相対的な電位差と概ね一致していれば良い。このことから、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*に対して、電圧利用率を向上させるための電圧値を加算しても良い。また、各半導体スイッチのオン電圧値またはデッドタイムに起因する補正電圧値を三相電圧指令値vu*、vv*、vw*のそれぞれに加算しても良い。
交流回転機2は、より具体的には、表面磁石型同期電動機、埋め込み磁石型同期電動機などの永久磁石型同期電動機である。交流回転機2は、回転子に磁石を用いないリラクタンス同期電動機、二次側に界磁巻線回路を備える界磁巻線型同期電動機などであっても良い。
位置検出部3は、交流回転機2の回転位置θを検出する。位置検出部3にも周知の技術を用いることができる。このため、詳細な説明は、省略するが、例えば、位置検出部3は、交流回転機2の回転軸に結合され、交流回転機2の回転子の角度である回転位置θに応じた信号を発生させる回転角センサであるレゾルバを備えている。回転位置θに応じた信号は、位置検出部3に内蔵されたR/Dコンバータにより、回転位置θを示すデジタル信号として出力される。R/Dコンバータの代わりに、ホール素子、磁気抵抗素子などを採用してもよい。回転位置θは、周知の技術を用いて推定してもよい。
電流検出部4にも周知の技術を用いることができる。このため、詳細な説明は、省略するが、例えば、電流検出部4は、三相給電線11に結合され、三相交流電圧vu、vv、vwにより交流回転機2に流れる三相交流電流を検出し、検出結果である三相検出電流iu、iv、iwをデジタル信号で出力する。そのため、電流検出部4は、例えば相毎に、電流センサ、及びA/Dコンバータを備えている。
また、電流検出部4は、交流電流を検出できない相があった場合に、検出できなかった相の交流電流の値を演算により推定する演算部を備える。この演算部は、例えば、三相検出電流iu、iv、iwの総和が零になることを利用して、検出できた二相の電流から検出できなかった相の電流を演算により算出する。或いは、演算部は、検出できない相の電流を、過去に検出した同じ相の電流、及び回転位置θを用いて算出してもよい(例えば特許文献2参照)。
なお、本実施の形態1では、電流検出部4は、電圧印加部1と交流回転機2を接続する三相給電線11から三相交流電流を検出しているが、三相給電線11以外の場所から三相交流電流を検出させるようにしてもよい。例えば、電流検出部4に、電圧印加部1の内部の母線電流を検出させ、三相検出電流iu、iv、iwとして出力させてもよい。
電流検出部4は、予め定めた任意の周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれにおいて、三相検出電流iu、iv、iwを出力する。この結果、三相検出電流iu、iv、iwは、第1動作タイミング毎に更新され、更新された三相検出電流iu、iv、iwは、次の第1動作タイミングが到来するまで維持される。以下では、第1動作タイミングの周期ΔT1を「第1動作周期ΔT1」と呼ぶ。この第1動作周期ΔT1は、電流を検出する検出周期であると共に、演算を実行するうえでの演算周期であり、例えば、100~500×10-6(秒)に設定される。三相検出電流iu、iv、iwは、静止座標上の検出電流であり、U相検出電流iuと、V相検出電流ivと、W相検出電流iwとを含む。
位置検出部3は、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれにおいて、回転位置θを出力する。回転位置θは、第1動作タイミング毎に更新され、更新された回転位置θは、次の第1動作タイミングが到来するまで維持される。回転位置θは、静止座標上の位置信号であり、第1の座標変換部6、及び第2の座標変換部8へ出力される。
第1の座標変換部6は、任意位相に基づいて三相検出電流iu、iv、iwを座標変換し、二相検出電流id、iqを出力する。本実施の形態1では、座標変換に用いる任意位相として、位置検出部3から出力される回転位置θを用いている。なお、任意位相は、回転位置θとは異なるものを採用しても良い。例えば、任意位相は、交流回転機2に供給される電流、或いはその交流回転機2に印加される電圧のいずれかの相の位相であっても良い。
第1の座標変換部6は、位置検出部3から出力される回転位置θに基づいて、電流検出部4からの三相検出電流iu、iv、iwを二相検出電流id、iqに変換する。第1の座標変換部6は、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれにおいて、二相検出電流id、iqを出力する。二相検出電流id、iqは、第1動作タイミング毎に更新され、更新された二相検出電流id、iqは、次の第1動作タイミングが到来するまで維持される。二相検出電流id、iqは、回転座標上の検出電流のデジタル信号であり、互いに直交するd軸上のd軸成分idと、q軸上のq軸成分iqとを含む。
電流制御部7は、回転座標上の二相電流指令値id*、iq*を外部から入力し、回転座標上の二相検出電流id、iqを第1の座標変換部6から入力する。二相電流指令値id*、iq*は、交流回転機2に給電すべき回転座標上の電流指令値のデジタル信号であって、互いに直交するd軸上のd軸成分id*と、q軸上のq軸成分iq*とを含む。二相検出電流id、iqは、第1の座標変換部6から電流制御部7に与えられる。電流制御部7は、これらの回転座標上の二相電流指令値id*、iq*と、回転座標上の二相検出電流id、iqとに基づいて、回転座標上のデジタルの二相電圧指令値vd1*、vq1*を出力する。二相電圧指令値vd1*、vq1*は、互いに直交するd軸上のd軸成分vd1*と、q軸上のq軸成分vq1*とを含む。
電流制御部7は、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれにおいて、二相電圧指令値vd1*、vq1*を出力する。言い換えれば、二相電圧指令値vd1*、vq1*は、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれで更新され、更新された二相電圧指令値vd1*、vq1*は、次の第1動作タイミングが到来するまで保持される。
第2の座標変換部8は、位置検出部3から出力された回転位置θに基づいて、電流制御部7から入力した回転座標上の二相電圧指令値vd1*、vq1*を座標変換し、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を出力する。この第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*は、静止座標上の電圧指令値のデジタル信号であり、第1のU相電圧指令値vu1*と、第1のV相電圧指令値vv1*と、第1のW相電圧指令値vw1*とを含む。この第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*は、電圧指令生成部9及び電圧指令出力部10に供給される。
更新された回転位置θは、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれにおいて第2の座標変換部8に入力される。第2の座標変換部8は、第1動作タイミングのそれぞれにおいて、更新された回転位置θを用いて得られる第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を出力する。それにより、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*は、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれにおいて更新され、更新された第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*は、次の第1動作タイミングが到来するまで維持される。
角周波数演算部60は、位置検出部3から回転位置θを入力し、入力した回転位置θの変化率である角周波数ωを演算する。そのために、角周波数演算部60は、遅延保持演算器61と、減算器62と、比例ゲイン乗算器63とを有する。
角周波数演算部60では、位置検出部3が出力する回転位置θは、遅延保持演算器61に入力され、遅延保持演算器61は、遅延時間間隔ΔTdだけ入力を遅らせて保持する。遅延時間間隔ΔTdは、例えば、第1動作周期ΔT1と同じ長さの時間である。減算器62は、位置検出部3からの回転位置θ、及び遅延保持演算器61により遅延された回転位置θを入力することにより、現在の回転位置θから遅延時間間隔ΔTd前の回転位置θを減算し、その減算結果を比例ゲイン乗算器63に出力する。
比例ゲイン乗算器63は、減算器62の出力を(1/ΔTd)倍することで、単位時間当たりの回転位置θの変化を求め、求めた変化を回転位置θの変化率である角周波数ωとして出力する。角周波数ωは、デジタル信号として電圧指令生成部9に出力される。本実施の形態1では、上記のように、遅延時間間隔ΔTdを第1動作周期ΔT1とすることにより、角周波数演算部60は、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれにおいて、角周波数ωを出力する。
電圧指令生成部9は、第2の座標変換部8からの第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*と、角周波数演算部60からの角周波数ωとに基づいて、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成する。
電圧指令出力部10は、第2の座標変換部8から供給された第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*と、電圧指令生成部9から供給された第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*とを入力し、それらのうちのいずれか一方を選択し、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*として電圧印加部1へ出力する。ここで、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択する動作周期と、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択する動作周期とは異なっている。より具体的には、電圧指令出力部10は、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれに対応して、第2の座標変換部8から出力された第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択する。また、電圧指令出力部10は、第2動作周期ΔT2で繰り返される第2動作タイミングのそれぞれに対応して、電圧指令生成部9から出力された第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択する。この結果、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*は、常時継続して電圧印加部1へ出力される。
この第2動作周期ΔT2は、第1動作周期ΔT1よりも小さく設定される。この第2動作周期ΔT2は、実用的には、例えば、第1動作周期ΔT1の1/2~1/20倍とされる。しかし、第2動作周期ΔT2は、第1動作周期ΔT1よりも小さければ充分であり、この実用的な範囲に限定されない。また、第2動作周期ΔT2は、望ましくは、第1動作周期ΔT1の1/n倍(n:整数)に設定されるが、これに限るものでもない。第2動作周期ΔT2が第1動作周期ΔT1よりも小さく設定される結果、2つの隣接する第1動作タイミングの間には、1つ以上の第2動作タイミングが存在することとなる。
なお、第1動作タイミングと第2動作タイミングが同じタイミングとなる場合、本実施の形態1では第1動作タイミングを優先し、第1動作タイミングのみが発生したものとして対応する。つまり、第1動作タイミングでの処理のみが実行され、第2動作タイミングでの処理は実行されない。
また、2つの隣接する第1動作タイミングの間に、1つの第2動作タイミングを存在させる場合は、第1動作周期ΔT1と第2動作周期ΔT2を同じ周期として、第1動作タイミングと第2動作タイミングを異なるタイミングとさせてもよい。このこともあり、第1動作タイミングと第2動作タイミングの間の同期は必ずしも必要とはならない。
電圧指令出力部10は、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*、或いは第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択するために、U相切換スイッチsuと、V相切換スイッチsvと、W相切換スイッチswとを備える。U相切換スイッチsuには、第1のU相電圧指令値vu1*と第2のU相電圧指令値vu2*とが入力され、このU相切換スイッチsuは、これらの第1のU相電圧指令値vu1*と第2のU相電圧指令値vu2*とのうちのいずれかをU相電圧指令値vu*として出力する。
V相切換スイッチsvには、第1のV相電圧指令値vv1*と第2のV相電圧指令値vv2*とが入力され、このV相切換スイッチsvは、これらの第1のV相電圧指令値vv1*と第2のV相電圧指令値vv2*とのうちのいずれかをV相電圧指令値vv*として出力する。W相切換スイッチswには、第1のW相電圧指令値vw1*と第2のW相電圧指令値vw2*とが入力され、このW相切換スイッチswは、これらの第1のW相電圧指令値vw1*と第2のW相電圧指令値vw2*とのうちのいずれかをW相電圧指令値vw*として出力する。
切換スイッチsu、sv、swは、互いに連動している。そのため、例えば、U相切換スイッチsuが第1のU相電圧指令値vu1*を選択する場合、V相切換スイッチsvは、第1のV相電圧指令値vv1*、W相切換スイッチswは、第1のW相電圧指令値vw1*をそれぞれ選択する。同様に、例えば、U相切換スイッチsuが第2のU相電圧指令値vu2*を選択する場合、V相切換スイッチsvは、第2のV相電圧指令値vv2*、W相切換スイッチswは、第2のW相電圧指令値vw2*をそれぞれ選択する。これらの選択結果は、次に第1動作タイミング、或いは第2動作タイミングが到来するまで維持される。
電圧指令出力部10は、さらに切換フラグ出力部10sfを有する。この切換フラグ出力部10sfは、電圧指令出力部10による選択状態に応じて、信号である切換フラグFLG_SWを電圧指令生成部9へ出力する。この切換フラグFLG_SWは、例えば、TRUEとFALSEとの間で切り換えられる。例えば、切換フラグ出力部10sfは、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*が選択された状態では切換フラグFLG_SWをTRUEとし、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*が選択された状態では切換フラグFLG_SWをFALSEとする。
電圧指令生成部9は、具体的には、記憶部90と電圧指令演算部91とを有する。記憶部90には、第2の座標変換部8から第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*が入力され、電圧指令出力部10から切換フラグFLG_SWが入力される。
切換フラグFLG_SWは、上記のように、第1動作周期ΔT1で繰り返される第1動作タイミングのそれぞれに対応してTRUEとなる。記憶部90は、切換フラグFLG_SWがTRUEとなった場合に、第2の座標変換部8から出力される第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を記憶する。それにより、記憶部90には、第2の座標変換部8が第1動作周期ΔT1毎に生成する第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*が記憶される。
切換フラグFLG_SWは、上記のように、第2動作周期ΔT2で繰り返される第2動作タイミングのそれぞれに対応してFALSEとなる。隣接する2つの第1動作タイミングの間には、1つ以上の第2動作タイミングが存在する。記憶部90は、切換フラグFLG_SWがFALSEとなった場合に、その直前の第1動作タイミングで記憶した第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*として出力する。三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*は、静止座標上の電圧指令値のデジタル信号であり、U相記憶電圧指令値vu1h*と、V相記憶電圧指令値vv1h*と、W相記憶電圧指令値vw1h*とを含む。
電圧指令演算部91には、記憶部90から三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*が出力されると共に、角周波数演算部60から角周波数ωが出力される。電圧指令演算部91は、第2動作タイミングのそれぞれにおいて、角周波数ωに基づき、三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*の位相を補正して、補正後の三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*を第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*として出力する。この結果、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*は、第2動作タイミングのそれぞれにおいて更新され、更新された第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*は、次の第2動作タイミングの到来まで維持される。第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*が電圧指令出力部10に出力される。第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*は、静止座標上の電圧指令値のデジタル信号であり、第2のU相電圧指令値vu2*と、第2のV相電圧指令値vv2*と、第2のW相電圧指令値vw2*とを含む。
図2は、本発明の実施の形態1に係る交流回転機の制御装置に採用された電流制御部7の内部構成例を示すブロック図である。この電流制御部7は、図2に示すように、減算器20、26と、比例ゲイン乗算器21、27と、積分ゲイン乗算器22、28と、加算器23、29と、遅延保持演算器24、30と、加算器25、31とを有する。
減算器20は、回転座標上の二相電流指令値id*、iq*の中のd軸成分id*から、回転座標上の二相検出電流id、iqの中のd軸成分idを減算し、d軸電流偏差(id*-id)を比例ゲイン乗算器21および積分ゲイン乗算器22へ出力する。比例ゲイン乗算器21は、d軸電流偏差(id*-id)に、例えば、固定値である比例ゲインkpを乗算して出力する。積分ゲイン乗算器22は、d軸電流偏差(id*-id)に積分ゲインkiΔT1を乗算して出力する。加算器23は、積分ゲイン乗算器22の出力と遅延保持演算器24の出力とを加算し、遅延保持演算器24へ出力する。遅延保持演算器24は、第1動作周期ΔT1に相当する遅延時間間隔だけ入力を遅らせて、加算器23の出力を保持する。
このように、積分ゲイン乗算器22の乗算結果kiΔT1(id*-id)と遅延保持演算器24の出力を加算器23により加算させ、その加算結果を第1動作周期ΔT1に相当する遅延時間間隔だけ遅らせて、遅延保持演算器24に新たに保持させる。このため、加算器23は、積分ゲイン乗算器22の出力と遅延保持演算器24の出力とを加算し、回転座標上の二相電圧指令値vd1*、vq1*の中のd軸成分vd1*を出力する。このd軸成分vd1*は、つまりd軸電流偏差(id*-id)に対し、比例ゲインkp、積分ゲインkiΔT1によりそれぞれ模擬する変化分を加えた結果は、減算器20が出力するd軸電流偏差(id*-id)を比例積分した結果に相当する。遅延保持演算器24は、d軸成分vd1*を保持する。
同様に、減算器26は、回転座標上の二相電流指令値id*、iq*の中のq軸成分iq*から、回転座標上の二相検出電流id、iqの中のq軸成分iqを減算し、q軸電流偏差(iq*-iq)を比例ゲイン乗算器27および積分ゲイン乗算器28へ出力する。比例ゲイン乗算器27は、q軸電流偏差(iq*-iq)に比例ゲインkpを乗算して出力する。積分ゲイン乗算器28は、q軸電流偏差(iq*-iq)に積分ゲインkiΔT1を乗算して出力する。加算器29は、積分ゲイン乗算器28の出力と遅延保持演算器30の出力とを加算し、遅延保持演算器30へ出力する。遅延保持演算器30は、第1動作周期ΔT1に相当する遅延時間間隔だけ入力を遅らせて保持する。
このように、積分ゲイン乗算器28の乗算結果kiΔT1(iq*-iq)と遅延保持演算器30の出力を加算器29により加算させ、その加算結果を第1動作周期ΔT1に相当する遅延時間間隔だけ遅らせて、遅延保持演算器30に新たに保持させる。このため、
加算器29は、積分ゲイン乗算器28の出力と遅延保持演算器30の出力とを加算し、回転座標上の二相電圧指令値vd1*、vq1*の中のq軸成分vq1*を出力する。このq軸成分vq1*は、つまりq軸電流偏差(iq*-iq)に対し、比例ゲインkp、積分ゲインkiΔT1によりそれぞれ模擬する変化分を加えた結果は、減算器26が出力するq軸電流偏差(iq*-iq)を比例積分した結果に相当する。遅延保持演算器30は、q軸成分vq1*を保持する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る交流回転機の制御装置に搭載された電圧指令生成部9が備える記憶部90の構成例を示すブロック図である。記憶部90は、図3に示す通り、相別にサンプルホールド器40~42を有する。サンプルホールド器40~42は、それぞれ電圧指令出力部10の切換フラグ出力部10sfから出力される切換フラグFLG_SWにより、制御される。
サンプルホールド器40は、切換フラグFLG_SWがTRUEとなったときに、第1のU相電圧指令値vu1*をサンプルホールドし、この第1のU相電圧指令値vu1*をU相記憶電圧指令値vu1h*として記憶保持する。このサンプルホールド器40は、切換フラグFLG_SWがFALSEとなったときに、記憶保持しているU相記憶電圧指令値vu1h*を出力する。
同様に、サンプルホールド器41は、切換フラグFLG_SWがTRUEとなったときに、第1のV相電圧指令値vv1*をサンプルホールドし、この第1のV相電圧指令値vv1*をV相記憶電圧指令値vv1h*として記憶保持する。このサンプルホールド器41は、切換フラグFLG_SWがFALSEとなったときに、記憶保持しているV相記憶電圧指令値vv1h*を出力する。
同様に、サンプルホールド器42は、切換フラグFLG_SWがTRUEとなったときに、第1のW相電圧指令値vw1*をサンプルホールドし、この第1のW相電圧指令値vw1*を、W相記憶電圧指令値vw1h*として記憶保持する。このサンプルホールド器42は、切換フラグFLG_SWがFALSEとなったときに、記憶保持しているW相記憶電圧指令値vw1h*を出力する。
電圧指令演算部91の動作を説明する前に、位相補正の原理について説明する。図4は、電圧指令演算部91で実行される位相補正の原理説明図であり、角周波数ωで回転する状態xをプロットしている。ここでは、便宜上、静止座標として、三相座標の代わりに周知の三相/二相変換によって得られる静止二軸座標(α-β軸)を使用し、この静止二相座標上に状態xをプロットしている。ここでの角周波数ωは、角周波数演算部60が出力する角周波数ωであってもよいが、その角周波数ωとは異なっていてもよい。また、微少時間ΔTも、後述する基準動作周期ΔTとは異なっていてもよい。
ある時刻における状態xのα軸成分をxα(n)、β軸成分をxβ(n)とする。また、ある時刻から微小時間ΔTだけ経過したときの状態xのα軸成分をxα(n+1)、β軸成分をxβ(n+1)とする。状態xは、角周波数ωで回転しているので、xα(n)、xβ(n)と、xα(n+1)、xβ(n+1)との間には、次の(1)式の関係が成り立つ。
ωΔTも微小であるとすれば、次の(2)、(3)式の近似が成り立つ。
cos(ωΔT) ≒ 1 ・・・(2)
sin(ωΔT) ≒ ωΔT ・・・(3)
(1)式に(2)、(3)式を代入すると、次の(4)式を得る。
(4)式は、角周波数ωで回転する状態xが微小時間ΔT経過した時の変化を静止二軸座標(α-β軸)で表現したものに相当する。(1)式および(4)式に基づき、静止三相座標上の状態xは、次の(5)式のように表現できる。
ここで、xu(n)+xv(n)+xw(n)=0の関係を勘案すれば、(5)式は、次の(6)式のように変形できる。
以上のように、(5)式または(6)式を用いれば、角周波数ωで回転する静止三相座標上の状態x(n)に基づいて、微小時間ΔT経過した時のx(n+1)を得ることができる。
(5)式よりも(6)式の方が、角周波数ωが与えられたときの演算量が少ない。このことから、本実施の形態1では、電圧指令演算部91は、(6)式を用いて、記憶部90が出力する静止座標上の三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*の位相をそれぞれ補正し、補正後の三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*を静止座標上の第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*として出力する。
なお、本実施の形態1では(4)式による近似を用いたが、近似式としての(4)式を用いずに、位相補正の演算式である(5)式を実行しても良い。同様に、(2)式の近似式を、マクローリン展開を利用した、例えば近似式『cos(ωΔT)≒1-(ωΔT)2÷2』に差し替えて、位相補正の演算式を導出するようにしても良い。
図5は、本発明の実施の形態1に係る交流回転機の制御装置に搭載された電圧指令生成部9が備える電圧指令演算部91の構成例を示すブロック図である。図5に示すように、電圧指令演算部91は、比例ゲイン乗算器70と、乗算器71、72、73と、減算器74、77、78と、加算器75、76、79とを有している。
図5において、比例ゲイン乗算器70は、角周波数演算部60から出力される角周波数ωを、例えば、比例ゲインとして予め定められた固定値の(ΔT/(3)1/2)と乗算し、その乗算結果(ωΔT/(3)1/2)を出力する。乗算器71は、静止座標上のU相記憶電圧指令値vu1h*に、比例ゲイン乗算器70が出力する乗算結果(ωΔT/(3)1/2)を乗算し、その乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}を出力する。乗算器72は、静止座標上のV相記憶電圧指令値vv1h*に、比例ゲイン乗算器70が出力する乗算結果(ωΔT/(3)1/2)を乗算し、その乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}を出力する。乗算器73は、静止座標上のW相記憶電圧指令値vw1h*に、比例ゲイン乗算器70が出力する乗算結果(ωΔT/(3)1/2)を乗算し、その乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vw1h*}を出力する。
減算器74は、静止座標上のU相記憶電圧指令値vu1h*から、乗算器72が出力する乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}を減算し、その減算結果{vu1h*-(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}を出力する。加算器75は、減算器74が出力する減算結果{vu1h*-(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}に、乗算器73が出力する乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vw1h*}を加算し、その加算結果[{vu1h*-(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}+{(ωΔT/(3)1/2)vw1h*}]を出力する。
静止座標上のU、V、W相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*を(6)式で表される状態x(n)と想定した場合、加算器75の出力[{vu1h*-(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}+{(ωΔT/(3)1/2)vw1h*}]は、(6)式の右辺一行目に相当する内容であり、静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*となる。
同様に、加算器76は、静止座標上のV相記憶電圧指令値vv1h*に、乗算器71が出力する乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}を加算し、その加算結果{vv1h*+(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}を出力する。減算器77は、加算器76が出力する加算結果{vv1h*+(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}から、乗算器73が出力する乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vw1h*}を減算し、その減算結果[{vv1h*+(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}-{(ωΔT/(3)1/2)vw1h*}]を出力する。
静止座標上のU、V、W相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*を(6)式で表される状態x(n)と想定した場合、減算器77の出力[{vv1h*+(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}-{(ωΔT/(3)1/2)vw1h*}]は、(6)式の右辺二行目に相当する内容、即ち、静止座標上の第2のV相電圧指令値vv2*である。
同様に、減算器78は、静止座標上のW相記憶電圧指令値vw1h*から、乗算器71が出力する乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}を減算し、その減算結果{vw1h*-(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}を出力する。加算器79は、減算器78が出力する減算結果{vw1h*-(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}に、乗算器72が出力する乗算結果{(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}を加算し、その加算結果[{vw1h*-(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}+{(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}]を出力する。
なお、静止座標上の第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の和が零である関係を用いて、静止座標上の第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*のうちの何れか2相から残り1相を算出してもよい。
静止座標上のU、V、W相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*を(6)式で表される状態x(n)と想定した場合、加算器79の出力[{vw1h*-(ωΔT/(3)1/2)vu1h*}+{(ωΔT/(3)1/2)vv1h*}]は、(6)式の右辺三行目に相当する内容、即ち、静止座標上の第2のW相電圧指令値vw2*である。
電圧指令出力部10が、静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*として、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択する場合、電圧指令演算部91の演算結果は、どこにも反映されない。そのため、電圧指令出力部10が第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択する場合、電圧指令演算部91での演算の実行は、省略させることができる。
同様に、電圧指令出力部10が、静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*として第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択する場合、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、及び第2の座標変換部8の各演算結果は、どこにも反映されない。そのため、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、及び第2の座標変換部8での各演算の実行を省略させることができる。
図6は、本発明の実施の形態1に係る交流回転機の制御装置における各部の動作例を表すタイムチャートの一例を示す図である。このタイムチャートは、第2動作周期ΔT2を第1動作周期ΔT1の1/2倍に設定した場合のタイムチャートである。ここでは、第1動作周期ΔT1および第2動作周期ΔT2は、動作の基準タイミングとなる基準動作周期ΔTから生成され、第2動作周期ΔT2は、基準動作周期ΔTに設定されていると想定する。その想定により、第1動作周期ΔT1が経過する毎に第1動作タイミングが到来する間に、2回、第2動作タイミングが到来する。2回の第2動作タイミングのうちの一つは第1動作タイミングと同じタイミングで到来する。
図6では、0、ΔT、2ΔT、・・・、7ΔTのように、(a)行に基準動作周期ΔTを単位に時刻[秒]を示している。(b)~(j)行には、交流回転機の制御装置を構成する各部として、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、角周波数演算部60、記憶部90、電圧指令演算部91、及び電圧指令出力部10の各時刻での動作状態を示している。
(b)~(g)、及び(i)に表記の「実行」は、それぞれ、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、角周波数演算部60、及び電圧指令演算部91が処理を実行することを表している。空欄は、処理を実行しないことを表している。(h)行の記憶部90で表記の「記憶」及び「保持」は、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の記憶、及び記憶した第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の保持・出力を記憶部90がそれぞれ行うことを表している。(j)行の電圧指令出力部10で表記の「第1の電圧指令値」及び「第2の電圧指令値」は、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の選択・出力、及び第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の選択・出力を電圧指令出力部10がそれぞれ行うことを表している。
上記のように、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、及び第2の座標変換部8は、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の生成にのみに係わる構成要素である。角周波数演算部60、記憶部90、及び電圧指令演算部91は、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の生成にのみに係わる構成要素である。しかし、記憶部90は、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の生成のために、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を記憶させる必要がある。また、角周波数演算部60は、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の生成のために、第1動作周期ΔT1が経過する毎に処理を実行させる必要がある。
このようなことから、本実施の形態1では、図6に示すように、第1動作タイミングが到来した場合、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、及び角周波数演算部60にそれぞれ処理を実行させ、記憶部90に第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を記憶させる。電圧指令出力部10には第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択させ、電圧指令演算部91には処理を実行させない。一方、第2動作タイミングのみが到来した場合、図6に示すように、記憶部90が保持する第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を用いた処理を電圧指令演算部91に実行させ、電圧指令出力部10には第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択させる。位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、及び角周波数演算部60の何れにも処理は実行させない。図6では、時刻8ΔT以降の時刻は、省略されている。時刻8ΔT以降では、時刻0から時刻7ΔTに示す動作が繰り返し行なわれる。
このようにして、本実施の形態1では、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、及び角周波数演算部60を含む第1のグループと、電圧指令演算部91を含む第2のグループとに処理内容を分けている。この2つのグループは、第1動作タイミング、及び第2動作タイミングのうちの少なくとも一方の到来により、択一的に処理を実行させる。この結果、図6に示す例では、電圧指令出力部10から出力される静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*は、第2動作周期ΔT2間隔で更新される。
第1動作周期ΔT1間隔で静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を更新する場合、第1更新周期ΔT1の電流脈動を生じるため、(1/ΔT1)Hzのノイズが発生する。それに対し、第2動作周期ΔT2間隔で静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を更新する場合、第2更新周期ΔT2の電流脈動を生じるためノイズの周波数は(1/ΔT2)Hzとなる。ΔT1>ΔT2であるから(1/ΔT1)<(1/ΔT2)である。従って、第2のグループの処理を追加することで、ノイズによる騒音・振動の成分は、より高い周波数に移動させることができる。音は、周波数成分が高くなるほど人間の耳では聞き取りにくい傾向があるため、ノイズが人に与える不快感は、より軽減されることとなる。
第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成するための演算は、角周波数演算部60、及び電圧指令演算部91が実行する。角周波数ωを算出するために角周波数演算部60が実行する演算は、減算器62による1回の減算、及び比例ゲイン乗算器63による1回の乗算である。第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成するための電圧指令演算部91が実行する演算は、比例ゲイン乗算器70、乗算器71、72、73による合計4回の乗算、及び減算器74、77、78、加算器75、76、79による合計6回の加減算である。この総演算量は、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、及び第2の座標変換部8での総演算量より非常に少ない。従って、単位時間当たりの演算量を抑制しつつ、ノイズが人に与える不快感を軽減することができる。
上記のように、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、電圧指令生成部9、角周波数演算部60、及び電圧指令出力部10は、例えば、マイクロコンピュータであるデジタル回路で実現されている。単位時間当たりの演算量を抑制することにより、マイクロコンピュータに要求される性能レベルは、低くなる。そのため、単位時間当たりの演算量の抑制により、交流回転機の制御装置の製造コストもより抑えることができる。
なお、図6に示す例では、電圧指令出力部10は、隣接する第1動作タイミング間の中間で第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*として選択する。しかし、隣接する第1動作タイミング間で第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択させるタイミングは、中間でなくともよい。つまり、例えば、第1動作タイミングが到来した後、ΔT1/10、2ΔT1/5、3ΔT1/5等の期間が経過した後、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択するようにしてもよい。第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択する数は、2以上であってもよい。このように、隣接する第1動作タイミング間で第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2を選択させるタイミング、そのタイミングの数は、特に限定されない。
図7は、本発明の実施の形態1に係る交流回転機の制御装置を図6のタイムチャートに従って動作させた場合に生成される、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*、及び静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*の一例を示す図である。この図7の例では、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*の単調増加をする区間を抜粋する形で示している。
静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*は、第1動作タイミングが到来する度に更新される。それにより、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*は、図7に示すように、時刻0、2ΔT、4ΔT、6ΔT・・・において更新されている。一方、静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*は、第2動作タイミングのみが到来する度に更新される。それにより、静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*は、図7に示すように、時刻ΔT、3ΔT、5ΔT、7ΔT・・・において更新されている。時刻0、2ΔT、4ΔT、6ΔT・・・では更新されないことから、次に更新されるまで第2のU相電圧指令値vu2*は変化しない。第2のU相電圧指令値vu2*は、U相記憶電圧指令値vu1h*の位相を補正して得られることから、そのU相記憶電圧指令値vu1*とは異なっている。より具体的には、図7では、第2のU相電圧指令値vu2*は、U相記憶電圧指令値vu1h*より大きい値となっている。
電圧指令出力部10は、時刻0、2ΔT、4ΔT、6ΔT・・・では、U相記憶電圧指令値vu1*を選択し、時刻ΔT、3ΔT、5ΔT、7ΔT・・・では、第2のU相電圧指令値vu2*を選択する。それにより、電圧指令出力部10から出力される静止座標上のU相電圧指令値vu*は、第2動作タイミングが到来する度に、つまり、時刻0、ΔT、2ΔT、3ΔT、4ΔT、5ΔT、6ΔT・・・で更新される電圧指令値となる。この結果、静止座標上のU相電圧指令値vu*は、第1動作タイミングで更新される場合と比較して、より短い周期、つまり、より高い周波数で更新され、より滑らかな信号として電圧印加部1に入力される。
なお、図7では、第1のU相電圧指令値vu1*と第2のU相電圧指令値vu2*のみを示したが、それ以外の第1のV相電圧指令値vv1*、W相電圧指令値、vw1*と、第2のV相電圧指令値vv2*、W相電圧指令値vw2*との関係も同じである。そのため、静止座標上のV相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*も、第1動作タイミングで更新される場合と比較して、より短い周期、つまり、より高い周波数で更新され、より滑らかな信号として電圧印加部1に入力される。
本実施の形態1では、上記のように、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の位相を補正して、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成するようにしている。これは、以下の理由からである。
抵抗Ra、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、磁束φを用いて、d軸電流Id、q軸電流Iq、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqの関係は、(7)式で与えられる。
角周波数ωが微小な領域では、d軸電圧Vdは、d軸電流Idに略比例し、q軸電圧Vqは、q軸電流Iqに略比例する。静止座標上で考えると、三相電流と三相電圧の位相は、略一致する。この関係を利用し、静止座標上の第1の電圧指令値に、検出電流の変化量に比例ゲインを乗算したものを加算して、第2の電圧指令値を生成する従来技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。ここでは、この従来技術と対比する形で説明を行う。
角周波数ωが大きくなると、電機子反作用および誘起電圧の影響が大きくなるため、電流の位相と電圧の位相のズレも大きくなる。例えば、説明を簡単にするため、d軸電流が零を想定した場合には、電圧方程式は、以下の(8)式で表すことができる。
電流の位相は、q軸方向を向いているのに対して、電圧の位相は、q軸方向から進んだ方向となっている。一例として、図8に、定常状態で位相が10degずれた三相電流と三相電圧の波形を示している。図8において、上段が静止座標上の三相電流、下段が静止座標上の三相電圧である。図8は、この角周波数が変化しない定常状態において、例えば、下段の電圧指令値を与えれば、上段の電流が得られることを示している。
検出電流をフィードバックして電圧指令値を生成する場合、実際には、制御応答の時定数に応じたズレが発生する。つまり、想定した電圧指令値と、実際に生成される電圧指令値とが一致せず、それらの間にズレが発生する。しかし、ここでは、説明を簡単にするため、ズレの発生は無視する。
図8において、タイミングaで静止座標上の第1の電圧指令値を生成し、タイミングbで静止座標上の第2の電圧指令値を生成する場合を考える。この場合、タイミングaにおいて、期待の電圧指令値を与えれば、タイミングbに移行したときには、U相電流は増加し、V相電流は増加し、W相電流は減少する。タイミングbの静止座標上の第2の電圧指令値は、静止座標上の検出電流の変化量に比例ゲインを乗算した結果を、タイミングaの静止座標上の第1の電圧指令値に加算して得ることができる。
タイミングaからタイミングbへの移行時、静止座標上の検出電流の変化量は、U相が正、V相が正、W相が負となっている。このため、タイミングaに対してタイミングbの静止座標上の電圧指令値は、U相が増加し、V相が増加し、W相が減少したものとなる。しかしながら、図8の下段に示すように、タイミングaに対してタイミングbの静止座標上の本来得るべき電圧指令値は、U相が減少し、V相が増加し、W相が減少したものである。そのため、電流と電圧との位相のズレが大きくなる高回転域の従来技術では、不要な電流変動を招くことになる。高回転域でも不要な電流変動を抑制するためには、その抑制のための仕組みが必要となり、実際に必要な演算量は、増大する。不要な電流変動は、交流回転機2にノイズを発生させる原因となる。
それに対して、本実施の形態1では、第2の三相電圧指令値は、検出電流を使用せずに生成される。このため、電流と電圧との間の角周波数に応じて変化する位相差を考慮する必要は無い。また、第1の三相電圧指令値は、基本的に周期的に変化する値である。このことから、上記のように、第1の三相電圧指令値が生成されたタイミングとは異なるタイミングでの第2の三相電圧指令値は、比較的に少ない演算量で適切に生成することができる。これらのことから、上記従来技術と比較し、単位時間当たりの演算量を抑制しつつ、適切な第2の三相電圧指令値を生成できることとなる。
なお、本実施の形態1は、状況により、上記従来技術、或いは他の従来技術と組み合わせることもできる。例えば、図6において、時刻2ΔT、6ΔT…のタイミングで検出電流を用いて第2の三相電圧指令値を生成するようにした場合、検出電流によるフィードバックを2ΔT毎に実施することになる。それにより、応答性の低下を抑制した上で、演算量の増加を抑制しつつ、ノイズによる不快感を軽減できるようになる。
実施の形態2.
本実施の形態2では、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成する仕組みが、上記実施の形態1から異なっている。それにより、ここでは、その仕組みにのみ着目する形で説明を行う。上記実施の形態1と同じ、或いは基本的に同じ構成要素には、同一の符号を用いる。
図9は、本実施の形態2に係る電圧指令演算部91aの構成例を示すブロック図である。始めに、図9を参照し、本実施の形態2に係る電圧指令演算部91aについて、具体的に説明する。
本実施の形態2に係る電圧指令演算部91aは、図9に示すように、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、第3時刻の電圧指令演算部913、及び第2の電圧指令選択部914を備えている。電圧指令演算部91aも、上記実施の形態1の電圧指令演算部91と同様に、例えば、マイクロコンピュータ上で実現されている。
第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913には、それぞれ記憶部90から三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*が入力されると共に、角周波数演算部60から出力される角周波数ωが入力される。第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913は、上記実施の形態1と同様に、角周波数ωを基に三相記憶電圧指令値vu1h*、vv1h*、vw1h*の位相を補正し、それぞれ第1時刻の電圧指令値vu21*、vv21*、vw21*、第2時刻の電圧指令値vu22*、vv22*、vw22*、第3時刻の第2の電圧指令値vu23*、vv23*、vw23*を生成する。生成されたこれらの第2の電圧指令値は、全て静止座標上の第3の電圧指令値に相当し、第2の電圧指令選択部914に出力される。
ここで、第1時刻、第2時刻、及び第3時刻について説明する。電圧指令演算部91aは、上記実施の形態1と同様に、第2動作タイミングの到来により動作する。本実施の形態2では、第2動作周期ΔT2は、第1動作周期ΔT1の1/4倍の周期に設定している。それにより、2つの隣接する第1動作タイミングの間には、3つの第2動作タイミングが存在するようになっている。
第2動作周期ΔT2を第1動作周期ΔT1の1/4倍の周期に設定することにより、2つの隣接する第1動作タイミングの間に存在する3つの第2動作タイミングは、その2つの隣接する第1動作タイミングの間、つまり、第1動作周期ΔT1の間を4等分にする。それにより、第1時刻は、前に位置する第1動作タイミングから、第2動作周期ΔT2経過した時刻となっている。同様に、第2時刻は、前に位置する第1動作タイミングから、第2動作周期ΔT2の2倍である2ΔT2経過した時刻、第3時刻は、前に位置する第1動作タイミングから、第2動作周期ΔT2の3倍である3ΔT2経過した時刻、となっている。第1時刻、第2時刻、及び第3時刻は、全て第2動作タイミングである。
第1時刻では、第1時刻の電圧指令演算部911のみが動作し、第1時刻の電圧指令値vu21*、vv21*、vw21*が生成され、出力される。第1時刻の電圧指令値vu21*、vv21*、vw21*は、デジタル信号であり、第1時刻のU相電圧指令値vu21*と、第1時刻のV相電圧指令値vv21*と、第1時刻のW相電圧指令値vw21*とを含む。
第2時刻では、第2時刻の電圧指令演算部912のみが動作し、第2時刻の電圧指令値vu22*、vv22*、vw22*が生成され、出力される。第2時刻の電圧指令値vu22*、vv22*、vw22*も、デジタル信号であり、第2時刻のU相電圧指令値vu22*と、第2時刻のV相電圧指令値vv22*と、第2時刻のW相電圧指令値vw22*とを含む。
第3時刻では、第3時刻の電圧指令演算部913のみが動作し、第3時刻の電圧指令値vu23*、vv23*、vw23*が生成され、出力される。第3時刻の電圧指令値vu23*、vv23*、vw23*も、デジタル信号であり、第3時刻のU相電圧指令値vu23*と、第3時刻のV相電圧指令値vv23*と、第3時刻のW相電圧指令値vw23*とを含む。
角周波数ωを出力する角周波数演算部60は、上記実施の形態1と同様に、第1動作タイミングの到来により動作する。それにより、第1時刻、第2時刻、及び第3時刻において、角周波数ωは、同じ値である。
第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913は、共に、(6)式を用いて演算する。このため、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913の構成は、上記実施の形態1における電圧指令演算部91と基本的に同じである。このことから、詳細な説明は、省略する。しかし、第1~第3時刻は、異なる第2動作タイミングであることから、乗算に用いる比例ゲインは、異なっている。つまり(6)式の微小時間ΔTは、第1時刻では第2動作周期ΔT2、第2時刻では第2動作周期ΔT2の2倍、第3時刻では第2動作周期ΔT2の3倍である。
なお、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2でも、(4)式による近似を用いたが、近似式としての(4)式を用いずに、位相補正の演算式である(5)式を実行しても良い。また、(2)式の近似式を、マクローリン展開を利用した、例えば、近似式『cos(ωΔT)≒1-(ωΔT)2÷2』に差し替えて、位相補正の演算式を導出するようにしても良い。
第2の電圧指令選択部914は、第1時刻では、第1時刻の電圧指令値vu21*、vv21*、vw21*を選択し、選択した第1時刻の電圧指令値vu21*、vv21*、vw21*を、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*として出力する。同様に、第2の電圧指令選択部914は、第2時刻では、第2時刻の電圧指令値vu22*、vv22*、vw22*を選択し、選択した第2時刻の電圧指令値vu22*、vv22*、vw22*を、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*として出力する。同様に、第2の電圧指令選択部914は、第3時刻では、第3時刻の電圧指令値vu23*、vv23*、vw23*を選択し、選択した第3時刻の電圧指令値vu23*、vv23*、vw23*を、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*として出力する。
図10は、本発明の実施の形態2に係る交流回転機の制御装置における各部の動作例を表すタイムチャートの一例を示す図である。このタイムチャートは、上記のように、第2動作周期ΔT2を第1動作周期ΔT1の1/4倍に設定した場合のタイムチャートである。ここでは、第1動作周期ΔT1および第2動作周期ΔT2は、動作の基準タイミングとなる基準動作周期ΔTから生成され、第2動作周期ΔT2は、基準動作周期ΔTに設定されていると想定する。その想定により、第1動作周期ΔT1が経過する毎に第1動作タイミングが到来する間に、第2動作タイミングが4回到来する。4回の第2動作タイミングのうちの一つは、第1動作タイミングと同じタイミングで到来する。
図10では、0、ΔT、2ΔT、・・・、9ΔTのように、(a)行に基準動作周期ΔTを単位に時刻[秒]を示している。(b)~(m)行には、交流回転機の制御装置を構成する各部として、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、角周波数演算部60、記憶部90、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、第3時刻の電圧指令演算部913、第2の電圧指令選択部914、及び電圧指令出力部10の各時刻での動作状態を示している。
(b)~(g)、及び(i)~(k)行に表記の「実行」は、それぞれ、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、角周波数演算部60、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913が処理を実行することを表している。空欄は、処理を実行しないことを表している。(h)行の記憶部90で表記の「記憶」及び「保持」は、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の記憶、及び記憶した第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の保持・出力を記憶部90がそれぞれ行うことを表している。(l)行の第2の電圧指令選択部914で表記の「第1時刻の電圧指令値」「第2時刻の電圧指令値」「第3時刻の電圧指令値」は、それぞれ、第1時刻の電圧指令値vu21*、vv21*、vw21*、第2時刻の電圧指令値vu22*、vv22*、vw22*、第3時刻の電圧指令値vu23*、vv23*、vw23*を、第2の電圧指令選択部914が選択することを表している。(m)行の電圧指令出力部10で表記の「第1の電圧指令値」及び「第2の電圧指令値」は、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の選択・出力、及び第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の選択・出力を電圧指令出力部10がそれぞれ行うことを表している。
本実施の形態2でも、図10に示すように、第1動作タイミングが到来した場合、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、及び角周波数演算部60にそれぞれ処理を実行させ、記憶部90に第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を記憶させる。電圧指令出力部10には、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択させ、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913には処理を実行させない。
一方、第2動作タイミングのみが到来した場合、図10に示すように、記憶部90が保持する第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を用いた処理を第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913に順次、実行させる。位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、及び角周波数演算部60の何れにも、処理は、実行させない。それにより、本実施の形態2では、電圧指令出力部10に選択させる第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の生成に要する演算量をより抑えている。なお、図10では、時刻10ΔT以降の時刻は、省略されている。時刻10ΔT以降では、時刻2ΔT2から時刻9ΔTに示す動作が繰り返し行なわれる。
上記実施の形態1と同じ時間間隔で、静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を更新する場合、本実施の形態2では、第1動作周期ΔT1を上記実施の形態1の2倍とすることができる。このため、本実施の形態2では、上記実施の形態1と比較して、単位時間当たりの演算量を、より抑制することができる。
図11は、本発明の実施の形態2に係る交流回転機の制御装置を図10のタイムチャートに従って動作させた場合に生成される、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*、及び静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*の一例を示す図である。この図11の例でも、先の図7と同様に、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*の単調増加をする区間を抜粋する形で示している。
静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*は、第1動作タイミングが到来する度に更新される。それにより、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*は、図11に示すように、時刻0、4ΔT、8ΔT・・・において更新されている。一方、静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*は、第2動作タイミングのみが到来する度に更新される。それにより、静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*は、図11に示すように、時刻ΔT、2ΔT、3ΔT、5ΔT、6ΔT、7ΔT、9ΔT・・・において更新されている。より具体的には、第2のU相電圧指令値vu2*は、時刻ΔT、5ΔT、9ΔTでは第1時刻の電圧指令値vu21*の生成により更新され、時刻2ΔT、6ΔTでは第2時刻の電圧指令値vu22*の生成により更新され、時刻3ΔT、7ΔTでは第3時刻の電圧指令値vu23*の生成により更新される。時刻0、4ΔT、8ΔT・・・では更新されないことから、次に更新されるまで第2のU相電圧指令値vu2*は変化せず、第3時刻の電圧指令値vu23*が維持される。
第1時刻の電圧指令値vu21*、vv21*、vw21*、第2時刻の電圧指令値vu22*、vv22*、vw22*、第3時刻の電圧指令値vu23*、vv23*、vw23*は、互いに異なる比例ゲインを用いて生成されることから、第2のU相電圧指令値vu2*は、時刻によって異なる値となっている。図11では、第2のU相電圧指令値vu2*の大小関係は、第1時刻の電圧指令値vu21*<第2時刻の電圧指令値vu22*<第3時刻の電圧指令値vu23*、となっている。
電圧指令出力部10は、時刻0、4ΔT、8ΔT・・・では、U相記憶電圧指令値vu1*を選択し、時刻ΔT、2ΔT、3ΔT、5ΔT、6ΔT、7ΔT、9ΔT・・・では、第2のU相電圧指令値vu2*を選択する。それにより、電圧指令出力部10から出力される静止座標上のU相電圧指令値vu*は、第2動作タイミングが到来する度に、つまり、時刻0、ΔT、2ΔT、3ΔT、4ΔT、5ΔT、6ΔT、7ΔT、8ΔT、9ΔT・・・で更新される電圧指令値となる。この結果、静止座標上のU相電圧指令値vu*は、第1動作タイミングでのみ更新される場合と比較して、より短い周期、つまり、より高い周波数で更新され、より滑らかな信号として電圧印加部1に入力される。
なお、図11では、第1のU相電圧指令値vu1*と第2のU相電圧指令値vu2*のみを示したが、それ以外の第1のV相電圧指令値vv1*、W相電圧指令値、vw1*と、第2のV相電圧指令値vv2*、W相電圧指令値vw2*との関係も同じである。そのため、静止座標上のV相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*も、第1動作タイミングでのみ更新される場合と比較して、より短い周期、つまり、より高い周波数で更新され、より滑らかな信号として電圧印加部1に入力される。
本実施の形態2では、図10に示すように、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913は択一的に動作させている。このことから、後段に第2の電圧指令選択部914を配置しなくとも良い。つまり、第2の電圧指令選択部914は、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913の各動作を制御するものであっても良い。また、後段に第2の電圧指令選択部914を配置した場合、第2の電圧指令選択部914は、第1時刻の電圧指令演算部911、第2時刻の電圧指令演算部912、及び第3時刻の電圧指令演算部913を同時に動作させても良い。これは、第2動作タイミングの到来により、第2の電圧指令選択部914による選択対象を異ならせれば良いからである。
実施の形態3.
本実施の形態3では、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成する仕組みが、上記実施の形態1および上記実施の形態2とは異なっている。それにより、ここでは、その仕組みにのみ着目する形で説明を行う。上記実施の形態1と同じ、或いは基本的に同じ構成要素には、同一の符号を用いる。
図12は、本発明の実施の形態3に係る交流回転機の制御装置の全体構成例を示すブロック図である。本実施の形態3では、図12に示すように、電圧指令生成部9、及び電圧指令出力部10が上記実施の形態1から異なっている。このことから、ここでは、電圧指令生成部9、及び電圧指令出力部10に着目する。
上記実施の形態1および上記実施の形態2では、角周波数演算部60が出力する角周波数ωを用いた第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の生成は、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*の位相を補正することで行われていた。これに対し、本実施の形態3では、位相を補正する対象として、電圧指令出力部10が出力する三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を用いている。そのため、電圧指令生成部9は、電圧指令出力部10が出力する三相電圧指令値vu*、vv*、vw*が更新される毎に、更新後の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を保持するようになっている。電圧指令生成部9が無条件で更新後の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を保持することから、電圧指令出力部10は、切換フラグ出力部10sfを備えていない。
一方、電圧指令生成部9は、電圧指令出力部10が出力する三相電圧指令値vu*、vv*、vw*の保持用として、記憶部90の代わりに、電圧指令値遅延保持演算部92、93、94を備えている。電圧指令値遅延保持演算部92、93、94は、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を相別に保持させるのに用いられる。具体的には、電圧指令値遅延保持演算部92は、電圧指令値vu*の保持に用いられ、電圧指令値遅延保持演算部93は、電圧指令値vv*の保持に用いられ、電圧指令値遅延保持演算部94は、電圧指令値vw*の保持に用いられる。
電圧指令値遅延保持演算部92、93、94は、例えば、入力したデータを第2動作周期ΔT2に相当する遅延時間間隔だけ遅らせて保持するか、或いは、入力したデータを保持した後、その遅延時間間隔だけ遅らせて出力に反映させるメモリである。それにより、電圧指令値遅延保持演算部92、93、94によって出力される三相電圧指令値vuh*、vvh*、vwh*は、第2動作タイミングの到来により変更される。このため、第2動作タイミングの到来時に電圧指令演算部91に電圧指令値遅延保持演算部92、93、94から出力される三相電圧指令値vuh*、vvh*、vwh*は、直前の第2動作タイミングが到来した時に電圧指令出力部10から出力された三相電圧指令値vu*、vv*、vw*となる。
電圧指令演算部91は、上記実施の形態1と同様に、第2動作タイミングのみが到来する場合に、電圧指令値遅延保持演算部92、93、94から出力される三相電圧指令値vuh*、vvh*、vwh*、及び角周波数演算部60が出力する角周波数ωを用いて、三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成する。このため、構成は、上記実施の形態1と同じとなっている。
図13は、本発明の実施の形態3に係る交流回転機の制御装置における各部の動作例を表すタイムチャートの一例を示す図である。このタイムチャートは、第2動作周期ΔT2を第1動作周期ΔT1の1/5倍に設定した場合のタイムチャートである。ここでも、第1動作周期ΔT1および第2動作周期ΔT2は、動作の基準タイミングとなる基準動作周期ΔTから生成され、第2動作周期ΔT2は、基準動作周期ΔTに設定されていると想定する。その想定により、第1動作周期ΔT1が経過する毎に第1動作タイミングが到来する間に、第2動作タイミングが5回到来する。5回の第2動作タイミングのうちの一つは、第1動作タイミングと同じタイミングで到来する。
図13では、0、ΔT、2ΔT、・・・、11ΔTのように、(a)行に基準動作周期ΔTを単位に時刻[秒]を示している。(b)~(j)行には、交流回転機の制御装置を構成する各部として、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、角周波数演算部60、電圧指令値遅延保持演算部92~94、電圧指令演算部91、及び電圧指令出力部10の各時刻での動作状態を示している。
(h)行の電圧指令値遅延保持演算部92~94で表記の「遅延保持」は、三相電圧指令値vu*、vv*、vw*の保持、及び第2動作周期ΔT2に相当する遅延時間間隔だけ遅らせての保持した三相電圧指令値vu*、vv*、vw*の三相電圧指令値vuh*、vvh*、vwh*としての出力を行うことを表している。(j)行の電圧指令出力部10は、第1動作タイミングの到来時には、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択して出力し、第2動作タイミングのみの到来時には、第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を選択して出力する。
本実施の形態3でも、図13に示すように、第1動作タイミングが到来した場合、位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、及び角周波数演算部60にそれぞれ処理を実行させる。電圧指令出力部10には、第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を選択させ、電圧指令演算部91には、処理を実行させない。
一方、第2動作タイミングのみが到来した場合、図10に示すように、電圧指令値遅延保持演算部92~94が出力する第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を用いた処理を実行させる。位置検出部3、電流検出部4、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、及び角周波数演算部60の何れにも、処理は、実行させない。それにより、本実施の形態3でも、上記実施の形態2と同様に、電圧指令出力部10に選択させる第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*の生成に要する演算量をより抑えている。なお、図13では、時刻12ΔT以降の時刻は、省略されている。時刻12ΔT以降では、例えば、時刻7ΔT2から時刻11ΔTに示す動作が繰り返し行なわれる。
上記実施の形態1と同じ時間間隔で静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*を更新する場合、本実施の形態3では、第1動作周期ΔT1を上記実施の形態1の2.5倍とすることができる。このため、本実施の形態3では、上記実施の形態1と比較して、単位時間当たりの演算量をより抑制することができる。
図14は、本発明の実施の形態3に係る交流回転機の制御装置を図13のタイムチャートに従って動作させた場合に生成される、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*、及び静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*の一例を示す図である。この図14の例でも、先の図7、図11と同様に、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*の単調増加をする区間を抜粋する形で示している。
静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*は、第1動作タイミングが到来する度に更新される。それにより、静止座標上の第1のU相電圧指令値vu1*は、図14に示すように、時刻0、5ΔT、10ΔT・・・において更新されている。一方、静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*は、第2動作タイミングのみが到来する度に更新される。それにより、静止座標上の第2のU相電圧指令値vu2*は、図14に示すように、時刻ΔT、2ΔT、3ΔT、4ΔT、6ΔT、7ΔT、8ΔT、9ΔT、11ΔT・・・において更新されている。時刻0、5ΔT、10ΔT・・・では更新されないことから、次に更新されるまで第2のU相電圧指令値vu2*は変化しない。U相電圧指令値vu2*は、直前に出力されていた電圧指令値vu*を用いて生成される。このため、第2のU相電圧指令値vu2*は、時刻によって異なる値となっている。
電圧指令出力部10は、時刻0、5ΔT、10ΔT・・・では、U相記憶電圧指令値vu1*を選択し、時刻ΔT、2ΔT、3ΔT、4ΔT、6ΔT、7ΔT、8ΔT、9ΔT、11ΔT・・・では、第2のU相電圧指令値vu2*を選択する。それにより、電圧指令出力部10から出力される静止座標上のU相電圧指令値vu*は、第2動作タイミングが到来する度に、つまり、時刻0、ΔT、2ΔT、3ΔT、4ΔT、5ΔT、6ΔT、7ΔT、8ΔT、9ΔT、10ΔT、11ΔT・・・で更新される電圧指令値となる。この結果、静止座標上のU相電圧指令値vu*は、第1動作タイミングでのみ更新される場合と比較して、より短い周期、つまり、より高い周波数で更新され、より滑らかな信号として電圧印加部1に入力される。
なお、図14では、第1のU相電圧指令値vu1*と第2のU相電圧指令値vu2*のみを示したが、それ以外の第1のV相電圧指令値vv1*、W相電圧指令値、vw1*と、第2のV相電圧指令値vv2*、W相電圧指令値vw2*との関係も同じである。そのため、静止座標上のV相電圧指令値vv*、及びW相電圧指令値vw*も、第1動作タイミングで更新される場合と比較して、より短い周期、つまり、より高い周波数で更新される、より滑らかな信号として電圧印加部1に入力される。
上記実施の形態1~3では、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、電圧指令生成部9、電圧指令出力部10、及び角周波数演算部60は、それぞれデジタル回路、例えば、マイクロコンピュータで実現されている。それら各部6~10、60をそれぞれサブプログラムにより実現させる場合、各サブプログラム間で必要なデータを共有させることにより、各部6~10、60を適切に動作させることができる。
この場合、各サブプログラムは、第1動作タイミング時に実行させる対象とする第1のグループと、第2動作タイミング時に実行させる対象とする第2のグループとに分けてもよい。このように2つのグループにサブプログラムを分ける場合、サブプログラムの実行間隔は、第2動作周期ΔT2とすれば良い。上記のように、位置検出部3は、第1動作周期ΔT1が経過する度に回転位置θを出力する。このことから、サブプログラムの実行タイミング時、回転位置θの出力の有無に応じて、実行させるグループを選択するようにしても良い。実行させるグループの選択は、電圧指令出力部10の機能に相当する。このことから、電圧指令出力部10は、第2の座標変換部8及び電圧指令生成部9の後段以外の位置に配置してもよい。
実施の形態4.
上記実施の形態1~3は、交流回転機の制御装置である。この交流回転機の制御装置は、交流回転機を動力として使用する装置に適用することができる。本実施の形態4は、交流回転機を電動パワーステアリングの動力源として用いる自動車等の車両において、電動パワーステアリングの制御装置として、交流回転機の制御装置を適用した場合の例である。それにより、本実施の形態4は、本発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリングの制御装置に相当する。ここでも、上記実施の形態1と同じ、或いは基本的に同じ構成要素には、同一の符号を付し、上記実施の形態1から異なる部分にのみ着目する形で説明を行う。
図15は、本発明の実施の形態4に係る電動パワーステアリングの制御装置の全体構成例を示すブロック図である。本実施の形態4に係る電動パワーステアリングの制御装置は、上記実施の形態1を電動パワーステアリングの制御装置として応用したものである。このため、本実施の形態4は、図1に示す構成要素を全て備えている。図15において、上記実施の形態1と同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当する構成要素である。本実施の形態4では、上記実施の形態1と比較して、図15に示すように、車両のハンドル150と、トルク検出部151と、電流指令演算部152と、ギヤ153とが追加されている。
運転者がハンドル150を操作することによって、車両のステアリング機構に操舵トルクを発生させた場合、その操舵トルクは、トルク検出部151によって検出される。トルク検出部151は、その操舵トルクを検出した場合、その検出結果を検出トルクとして出力する。この検出トルクは、デジタル信号の形で、トルク検出部151から電流指令演算部152に出力される。
交流回転機2は、操舵トルクを補助する補助トルクを発生させる動力源である。この交流回転機2が発生させた補助トルクは、ギヤ153を経て、車両のタイヤ154のステアリング機構に伝達される。このことから、電流指令演算部152は、交流回転機2に操舵トルクを補助する補助トルクを発生させるために、トルク検出部151から出力された検出トルクを用いて回転座標上の二相電流指令値id*、iq*を演算し、演算した二相電流指令値id*、iq*を電流制御部7に出力する。
上記実施の形態1では、第1の座標変換部6、電流制御部7、第2の座標変換部8、電圧指令生成部9、電圧指令出力部10、及び角周波数演算部60は、例えば、マイクロコンピュータであるデジタル回路によって実現されている。電流指令演算部152も、デジタル回路によって実現されている。
電流指令演算部152は、トルク検出部151から入力した検出トルクを用いて回転座標上の二相電流指令値id*、iq*を生成し、生成した回転座標上の二相電流指令値id*、iq*を電流制御部7に出力する。それにより、電流制御部7は、電流指令演算部152から入力する回転座標上の二相電流指令値id*、iq*、及び第1の座標変換部6から入力する二相検出電流id、iqを用いて、回転座標上の二相電圧指令値vd1*、vq1*を生成し、生成した二相電圧指令値vd1*、vq1*を、第2の座標変換部8に出力する。電流制御部7が生成する回転座標上の二相電圧指令値vd1*、vq1*は、デジタル信号である。
電流制御部7が回転座標上の二相電圧指令値vd1*、vq1*を出力することにより、第2の座標変換部8は、静止座標上の第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を生成し、出力する。それにより、電圧指令生成部9は、第2の座標変換部8が出力する第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*、及び角周波数演算部60が出力する角周波数ωを用いて、静止座標上の第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を生成する。この結果、電圧印加部1は、電圧指令出力部10が静止座標上の三相電圧指令値vu*、vv*、vw*として出力する第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*、或いは第2の三相電圧指令値vu2*、vv2*、vw2*を用いて、三相交流電圧vu、vv、vwを生成し、交流回転機2に印加する。
電流制御部7が出力する二相電圧指令値vd1*、vq1*を用いて、第2の座標変換部8が第1の三相電圧指令値vu1*、vv1*、vw1*を更新する周期は、第1動作周期ΔT1である。このため、電流指令演算部152の演算周期を第1動作周期ΔT1よりも短くすると、電流指令演算部152に無駄な演算を行わせる場合が生じる。これは、電流指令演算部152が演算した二相電圧指令値vd1*、vq1*が、必ず使われるとは限らないからである。そこで、不要な演算負荷を回避するために、電流指令演算部152の演算周期は、第1動作周期ΔT1と同じか、またはそれよりも長くすることが望ましい。
上記実施の形態1を電動パワーステアリングの制御装置に適用することにより、交流回転機2が発するノイズを、大きく低減させることができる。そのため、交流回転機2が発するノイズが運転者に不快感を与えるのを回避できるか、そのノイズが運転者に与える不快感を大幅に軽減できる。また、単位時間当たりの演算量も、大きく削減することができる。電流指令演算部152の演算周期を第1動作周期ΔT1と同じか、またはそれよりも長くした場合、交流回転機2が発するノイズが運転者に与える不快感を軽減しつつ、単位時間当たりの演算量をより抑えることが可能となる。
なお、本実施の形態4は、上記実施の形態1を応用して、電動パワーステアリングの制御装置を構成したが、上記実施の形態2、或いは上記実施の形態3を応用して、電動パワーステアリングの制御装置を構成してもよい。