JP7031561B2 - 電力線通信用フィルタ回路、電力線通信装置、及び、電力メーター - Google Patents
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Description
このため、電力線通信は、スマートメーター等と組み合わせることで、ネットワークを介した電力量の検針等に用いられることがある。
これにより、このフィルタ回路は、例えば、家電製品から発生する数10kHzのノイズを除去し、電力線通信で使用する周波数帯域(数100kHz)の信号を通過させる特性を有しており、家電製品からのノイズを抑制し、電力線通信において適切な信号の送受信を実現することができる。
TDDを採用した電力線通信において用いられるPLCモデムは、図6に示すように、送信回路100、受信回路102、及び、送受信回路100、102と電力線106との間に接続されたフィルタ回路108の他、送受信を切り替えるための切替器104を備えている。切替器104には、送信回路100、受信回路102、及びフィルタ回路108が接続されている。切替器104は、フィルタ回路108の接続先を送信回路100及び受信回路102のいずれか一方に切り替えるスイッチとしての機能を有する。切替器104がフィルタ回路108の接続先を切り替えることで、送受信の切り替えが行われる。
いずれの回路にも接続されない期間においては、フィルタ回路108からみた切替器104のインピーダンスが非常に高くなる。このため、フィルタ回路108のインダクタに蓄積されたエネルギーが放出され、さらにそのエネルギーはスプリアス(不要波)として電力線側へ伝搬し、電力線に伝搬したスプリアスが当該電力線から放射されることがある。
このようなスプリアスは、規格によって定められた周波数帯域外の周波数である場合があり、放射させることは好ましくない。
このため、TDDによる電力線通信において、スプリアスの発生を抑制するための方策が望まれる。
[実施形態の概要]
(1)一実施形態である電力線通信用フィルタ回路は、商用交流の電力線と、送信と受信とを時分割で切り替えて通信を行う電力線通信回路と、の間に介在させる電力線通信用フィルタ回路であって、1次コイルに前記電力線が接続され、2次コイルに前記電力線通信回路が接続されるカップリングトランスと、前記1次コイルの両端に接続される少なくとも一方の電路に設けられ、商用交流電流の侵入を阻止するコンデンサと、前記2次コイルに対して並列に接続され、前記カップリングトランスを介して伝搬する電力線通信の通信信号の周波数帯域より低い周波数のノイズを減衰させるインダクタと、前記インダクタに直列に接続された第1抵抗と、を備えている。
この結果、電力線側に伝搬してスプリアスを生じさせる原因となる前記エネルギーを抑制でき、スプリアスの発生を抑制することができる。
この場合、2次コイルと電力線通信回路とを接続する線路のインピーダンスを安定化できるとともに、インダクタから放出されるエネルギーを第2抵抗にも消費させることができ、スプリアスの発生を効果的に抑制することができる。
この場合、電磁誘導加熱調理器具等の家電から一般的に発生することの多い20kHz程度のノイズに対して優れたノイズ抑制効果が得られた。
また、この範囲内の周波数とすることにより、インダクタの存在による電力線通信の信号減衰を抑制することができる。すなわち、インダクタンスが10μH未満では電力線通信の通信信号の識別に影響が出る。インダクタンスが100μHを超えると、ノイズ抑制効果が低下する。なお、この範囲内でも特に、33μH及びその近傍が好適である。
第1抵抗の抵抗値が1Ω未満である場合、インダクタから放出されるエネルギーを消費する効果が低くなり、スプリアスの抑制効果に影響が出る。また、第1抵抗の抵抗値が5Ωを超える場合、インダクタによるノイズの低減効果が低下する。第1抵抗の抵抗値を1Ωから5Ωの範囲とすることで、インダクタから放出されるエネルギーを好適に消費させることができる。
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
まず、電力線通信を用いたネットワークの構成例について説明する。ここで、電力線通信の通信信号の周波数帯域は、150kHz~400kHzである。
ここで、例えば、コンセント72にはIH調理器具(電磁誘導加熱調理器具)76が接続されているとする。
計量部2Aは、測定した電力量の情報を、記憶部2Bに保存する。
PLCモデム2Cは、電力量の情報の他、通信に必要な情報を、記憶部2Bから取得する。PLCモデム2Cは、電路2Dにより、例えば電圧線L1,L2と接続されており、電力線通信の通信信号を配電線5及び屋内配線5xを介して送受信することができる。
PLCモデム2Cは、電力量の情報や必要な情報等を含む通信信号をコンセントレーター6へ向けて送信することができる。コンセントレーター6は、配電線5を介して送信される通信信号を受信し、各電力メーター2からの電力量の情報を取得する。
コンセントレーター6は、例えば光ファイバや携帯無線(3G)を用いて、WAN(Wide Area Network)9経由で、電力供給元8と通信を行うことができる。
なお、PLCモデムとは、例えば、基板に搭載された回路や、独立した完成品ユニットの他、種々の形態を含むものとする。
図3は、上述のPLCモデム2Cの内部回路構成を示す図である。なお、HEMSゲートウェイ75,コンセントレーター6に内蔵されるPLCモデムについても同様の内部回路構成となる。
フィルタ回路30は、配電線5(電圧線L1,L2)と、通信回路32との間に介在して設けられている。よって、通信回路32は、フィルタ回路30を介して通信信号の送受信を行う。
通信回路32は、送信回路48と、受信回路50と、切替器52とを備えている。
送信回路48は、コンセントレーター6へ向けた通信信号を送信する機能を有している。受信回路50は、自モデム2Cに向けて送信される通信信号を受信する機能を有している。
切替器52は、フィルタ回路30の接続先を送信回路48及び受信回路50のいずれか一方に切り替えるスイッチとしての機能を有している。
切替器52は、送信期間においては、フィルタ回路30と送信回路48とを接続し、受信回路50を切り離す。また、切替器52は、受信期間においては、フィルタ回路30と受信回路50とを接続し、送信回路48を切り離す。
1次コイル38pのインダクタンスは、例えば約600μHである。
インダクタ40は、2次コイル38sに対して並列に接続されている。
また、第1抵抗42は、インダクタ40に直列に接続されている。第1抵抗42の抵抗値は、インダクタ40のインダクタンスに応じて設定されるが、本実施形態では、2Ωに設定される。
なお、本実施形態において、インダクタ40のインダクタンスは33μHに設定される。
コンデンサ34,36を通過した通信信号やその他のノイズは、カップリングトランス38へ与えられる。
カップリングトランス38の1次コイル38p側から2次コイル38s側へ伝送される信号やノイズのうち、IH調理器具76から発生する20kHz程度のノイズは、インダクタ40によってカットオフされ(又は大きく減衰させられ)、その一方で、当該ノイズよりも周波数の高い電力線通信の通信信号は、影響を受けずに通信回路32へ導かれる。
なお、カットオフ周波数を適切に設定することにより、減衰させる対象の周波数帯域をある程度広く取ることができるので、例えば30kHzのノイズであっても充分に減衰させることが可能である。
本実施形態のPLCモデム2C(の通信回路32)は、上述のようにTDDによって電力線通信を行う。
図3中の切替器52は、送信期間と受信期間とが切り替わるごとに、フィルタ回路30の接続先を送信回路48及び受信回路50のいずれか一方に切り替える。よって、切替器52がフィルタ回路30の接続先を切り替えるタイミングにおいては、フィルタ回路30が送信回路48及び受信回路50のいずれの回路にも接続されない期間が生じる。
このとき、インダクタ40に直列に接続された第1抵抗42は、インダクタ40から放出されるエネルギーを消費する。
この電力線側へ伝搬したスプリアスが電力線等から放射されることがある。
この結果、電力線側に伝搬してスプリアスを生じさせる原因となる前記エネルギーを抑制でき、スプリアスの発生を抑制することができる。
第1抵抗42の抵抗値が1Ω未満である場合、インダクタ40から放出されるエネルギーを消費する効果が低くなり、スプリアスの抑制効果に影響が出る。また、第1抵抗42の抵抗値が5Ωを超える場合、インダクタ40によるノイズの低減効果が低下する。第1抵抗42の抵抗値を1Ωから5Ωの範囲とすることで、インダクタ40から放出されるエネルギーを好適に消費させることができる。この範囲内でも特に、2Ω及びその近傍が好適である。
検証試験は、PLCモデムをモデル化し、そのモデルを用いたコンピュータシミュレーションにより行った。
なお、両モデルの出力は、図3中に示すPLCモデム2Cにおける点P1,P2から取り出した。
図4Aに示すように、切替器52が切り替えを行うタイミングである送信期間と受信期間との間には、フィルタ回路30が送信回路48及び受信回路50のいずれにも接続されない期間Kが存在する。
図4A中の受信期間は、コンセントレーター6から送信される通信信号がないことから、送信期間における一定電圧の期間と同様、ほぼ一定電圧となっている。
図4Bに示すように、実施例品の出力における期間Kにおいては、送信期間における一定電圧の期間及び受信期間と同様、一定電圧となっており、期間Kにおける電圧変化は、実施例品の出力には現れない。
このことより、実施例品では、インダクタ40から放出されたエネルギーが第1抵抗42及び第2抵抗44によって消費され、前記エネルギーが抑制されていることが判る。
信号帯域内においては、電力線通信の通信信号の成分が電力の増加として現れている。通信信号の成分には、実施例品と比較例品との間で相違は見られない。
この隣接帯域において、実施例品の電力よりも相対的に高く現れている比較例品の電力がインダクタ40から放出されたエネルギーである。すなわち、図4A中の期間Kに現れる電圧の変化が、周波数領域においては、通信信号の周波数帯域よりも高い周波数の信号波として現れている。
比較例品では、通信信号の周波数帯域よりも高い周波数のエネルギーがインダクタ40から放出され、このエネルギーが電力線側へ伝搬すると、通信信号の周波数帯域よりも高い周波数のスプリアスとなる。
これに対して、実施例品では、インダクタ40から放出されるエネルギーが消費されることで抑制されるので、スプリアスの発生が抑制される。
なお、上記実施形態ではフィルタ回路30はPLCモデム2Cの一部であるが、フィルタ回路30は、PLCモデム2Cから分離独立した電力線通信用フィルタとしても存在し得る。
また、インダクタ40についての上記インダクタンスの好適範囲は、現状のIH調理器具76から発生する20kHz程度の特定ノイズを想定したものであり、将来的にノイズの周波数が大きく変わる場合には、インダクタンスの好適範囲もそれに応じて変わり得ることになる。
さらに、第1抵抗42の抵抗値、及び第2抵抗44の抵抗値も同様であり、インダクタ40のインダクタンスに応じてその好適範囲は変わり得る。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
2 電力メーター
2A 計量部
2B 記憶部
2C PLCモデム
2D 電路
3 高圧ケーブル
4 変圧器
5,5a,5b,5c 配電線
5x 屋内配線
6 コンセントレーター
7 需要家
8 電力供給元
9 WAN
30 フィルタ回路
32 通信回路
34,36 コンデンサ
38 カップリングトランス
38p 1次コイル
38s 2次コイル
40 インダクタ
42 第1抵抗
44 第2抵抗
46 過渡電圧抑制素子
48 送信回路
50 受信回路
52 切替器
54 信号線
71 分電盤
72,73,74 コンセント
75 HEMSゲートウェイ
76 IH調理器具
100 送信回路
102 受信回路
104 切替器
106 電力線
108 フィルタ回路
L1,L2 電圧線
N 中性線
P1,P2 点
Claims (6)
- 商用交流の電力線と、送信と受信とを時分割で切り替えて通信を行う電力線通信回路と、の間に介在させる電力線通信用フィルタ回路であって、
1次コイルに前記電力線が接続され、2次コイルに前記電力線通信回路が接続されるカップリングトランスと、
前記1次コイルの両端に接続される少なくとも一方の電路に設けられ、商用交流電流の侵入を阻止するコンデンサと、
前記2次コイルに対して並列に接続され、前記カップリングトランスを介して伝搬する電力線通信の通信信号の周波数帯域より低い周波数のノイズを減衰させるインダクタと、
前記インダクタに直列に接続された第1抵抗と、を備えている
電力線通信用フィルタ回路。 - 前記インダクタと、前記電力線通信回路との間に、前記2次コイルに対して並列に接続された第2抵抗をさらに備えている
請求項1に記載の電力線通信用フィルタ回路。 - 前記インダクタのインダクタンスは、10μHから100μHの範囲にある
請求項1又は請求項2に記載の電力線通信用フィルタ回路。 - 前記第1抵抗の抵抗値は、1Ωから5Ωの範囲にある
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力線通信用フィルタ回路。 - 商用交流の電力線を信号伝送路とする電力線通信装置であって、
送信と受信とを時分割で切り替えて通信を行う電力線通信回路と、
1次コイルに前記電力線が接続され、2次コイルに前記通信回路が接続されるカップリングトランスと、
前記1次コイルの両端に接続される少なくとも一方の電路に設けられ、商用交流電流の侵入を阻止するコンデンサと、
前記2次コイルに対して並列に接続され、前記カップリングトランスを介して伝搬する電力線通信の通信信号の周波数帯域より低い周波数のノイズを減衰させるインダクタと、
前記インダクタに直列に接続された第1抵抗と、を備えている
電力線通信装置。 - 請求項5に記載の電力線通信装置を搭載した電力メーター。
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