[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係わる検体測定装置を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る検体測定装置1の構成を示すブロック図である。図2は、反応ユニット2の詳細構成を示す図である。図1に示されるように、検体測定装置1は、反応ユニット2及び測定システム3を備える。反応ユニット2は、検体測定装置1に対して着脱可能である。
反応ユニット2は、図2に示されるように、筐体21、透明基板22、光導波路23及び保護部材24を有する。筐体21の下面の一部は開口しており、その開口部内には、透明基板22上に、光導波路23及び保護部材24を薄膜技術で形成したチップが嵌め込まれる。保護部材24の一部は開口されている(開口端24a)。また、筐体21、光導波路23及び保護部材24等によって反応容器201が形成される。なお、反応ユニット2は、その内部、すなわち反応容器201に、被検対象(被検物質)を含む試料溶液を収容可能に構成される。
筐体21は、例えば樹脂等で形成される。筐体21の下面には第1の凹部が形成されている。第1の凹部の上面の一部には反応容器201の上面及び側面を構成する第2の凹部が形成されている。そして、第1の凹部には上から順に保護部材24、光導波路23及び透明基板22が配置されている。また、第2の凹部の上面の一端部近傍に筐体21を上方に貫通してその内部の反応容器201に試料溶液及び試薬等を導入するための孔21aが形成され、他端部近傍に筐体21を上方に貫通して反応容器201から空気を逃がすための孔21bが形成されている。なお、孔21a及び孔21bは、それぞれ複数形成されてもよい。
透明基板22は、例えば樹脂又は光学ガラス等で形成される。透明基板22は、測定システム3に設けられる光源311から入射された光を光導波路23へ通過させる。また、透明基板22は、光導波路23から入射された光を測定システム3に設けられる光検出器312へ通過させる。
光導波路23は、光が透過する材料、例えば樹脂又は光学ガラス等により形成される。樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂等を用いることができる。光導波路23は、透明基板22から入射して透明基板22へと出射する光の光路となる。すなわち、光導波路23は、光ファイバーにおけるコア(心材)同様の役割機能を果たす。そして、保護部材24及び透明基板22は、光導波路23の素材とは異なった屈折率の素材で形成され、光導波路23との境界面で光を全反射させ、光を光導波路23内に閉じ込めるクラッドとしての機能役割を果たす。また、保護部材24及び透明基板22は、光導波路23を物理的に保護する。
光導波路23は、測定システム3から透明基板22を介して入射された光を伝播させる。光導波路23では、反応容器201に収容された被検物質の濃度、すなわち反応状態により影響を受けた光が伝播される。
また、光導波路23に光が入射する付近の保護部材24側にはグレーティング23aが配置される。グレーティング23aは、光導波路23に入射される入射光L1を所定の角度で回折させる。グレーティング23aにおいて回折された光は、光導波路23と、透明基板22、保護部材24、又は混合液202により構成される面との界面に対し、臨界角の補角以下の角度で入射する。これにより、入射光L1は、光導波路23の界面において光導波路23内で繰り返し反射しながら伝播(導波)する。
光導波路23から光が出射する付近の保護部材24側にはグレーティング23bが配置される。グレーティング23bは、光導波路23により光導波された光を所定の角度で回折させる。グレーティング23bにおいて回折された光は、光導波路23から外部へ所定角度を有して出射される。
保護部材24は、筐体21の第2の凹部の位置に開口を有する。保護部材24は、光導波路23の上面に密着して配置されている。保護部材24は、光導波路23の上面に密着して配置されることで、平面保護層を構成する。また、保護部材24は、図2に示されるように、光導波路23の主面(例えば上面)を露出させるための開口端24aを有する。開口端24aは、保護部材24の内側の開口を形成する鉛直面である。この開口端24aにより、光導波路23の上面が露出される。
反応容器201は、上面が筐体21の第2の凹部の上面により構成され、側面が筐体21の第2の凹部の側面及び保護部材24の開口端24aにより構成され、下面が光導波路23の上面により構成される。
反応容器201は、試料溶液及び試薬を収容し、試料溶液に含まれる被検物質と試薬とを反応させる。反応容器201を形成する面のうちの下面、すなわち光導波路23の上面には、複数の第1抗体211が固定される。第1抗体211は、被検物質に含まれる抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する物質である。第1抗体211は、例えば光導波路23の上面との間に生じる疎水性相互作用又は化学結合等により、光導波路23の上面に固定される。
反応容器201は、例えば、予め空の状態となっている。被検物質の測定時においては、例えば孔21aを介して、外部から反応容器201へ、試料溶液と試薬との混合液202が注入される。試料溶液には、抗原212を含む被検物質が含まれる。試薬には、試薬成分213が含まれる。試薬成分213には、例えば抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する第2抗体214と、第2抗体214が固定化された磁性粒子215とが含まれる。磁性粒子215は、少なくとも一部がマグネタイト等の磁性体材料で形成されている。磁性粒子215は、例えば、磁性体材料から形成された粒子の表面が高分子材料で被覆されている。なお、磁性粒子215は、高分子材料で構成された粒子の表面を磁性体材料で被覆するように構成されてもよい。また、磁性粒子215は、混合液202において分散可能に構成されたものであればどのようなもので代替してもよい。
混合液202を注入することで、反応容器201には、光導波路23の上面に固定された第1抗体211に加えて、試料溶液中の被検物質に含まれる抗原212及び試薬に含まれる試薬成分213が収容される。反応容器201に混合液202が注入されると、反応容器201内の空気は、孔21bから外部へ排出される。
試薬成分213は、反応容器201に満たされた混合液202中を分散可能に移動する。このとき、磁性粒子215は、磁性粒子215に掛かる重力が、この重力と逆向きに掛かる混合液202中における浮力よりも大きくなるように選ばれる。第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、第2抗体214が、抗原212を介して第1抗体211と結合することで、光導波路23の上面近傍に固定される。なお、第2抗体214は、第1抗体211と同じものであっても、異なるものであってもよい。
反応ユニット2では、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と被検物質に含まれる抗原212が反応することにより、第2抗体214が固定化された磁性粒子215が光導波路23の上面近傍に固定される。光導波路23を導波する光は、光導波路23の上面近傍に固定される磁性粒子215により散乱及び吸収等される。この結果、光導波路23を導波する光は、減衰されて光導波路23から出射されることになる。すなわち、入射光L1は、第1抗体211と、磁性粒子215に固定化される第2抗体214とを結びつける抗原212の量、換言すると、反応容器201内に収容された抗原212の量に応じて減衰される。
以下、反応容器201において、光導波路23の表面から図2の破線までの領域、すなわち光導波路23の表面近傍に至る領域をセンシングエリア205と定義する。
光が光導波路23内を伝播する場合、光導波路23の上面において近接場光(エバネッセント光)が発生する。センシングエリア205は、近接場光が発生し得る領域である。センシングエリア205において、光導波路23の上面に固定された第1抗体211は、試料溶液中の被検物質に含まれる抗原212を介し、試薬成分213に含まれる磁性粒子215に固定化された第2抗体214と結合する。これにより、光導波路23の上面の近傍に第2抗体214が固定化された磁性粒子215が保持される。
次に、反応容器201内において起こる抗原抗体反応等によって光導波路23を伝播する光が受ける影響ついて説明する。なお、第1抗体211、第2抗体214及び抗原212は、磁性粒子215と比較して、ごく小さい。図2、7乃至13では、結合反応を模式的に示すため、第1抗体211、抗原212、第2抗体214及び磁性粒子215を同様な大きさとして図示する。
磁性粒子215がセンシングエリア205内に進入すると、磁性粒子215に固定化される第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。これにより、第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、センシングエリア205に留まる。磁性粒子215がセンシングエリア205に留まった状態で光導波路23の上面において近接場光が発生すると、センシングエリア205に留まっている磁性粒子215がこの近接場光を散乱及び吸収等し、近接場光を減衰させる。このセンシングエリア205における近接場光の散乱及び吸収等は、光導波路23内を伝播する光に対して影響を及ぼす。すなわち、センシングエリア205において近接場光が減衰されることにより、光導波路23内を光導波する光も減衰される。したがって、センシングエリア205において近接場光が強く散乱及び吸収等されると、光導波路23内を伝播する光の強度が低下する。換言すると、センシングエリア205内に留まる磁性粒子215の量が多いほど、光導波路23から出力される光の強度が低下する。
ただし、センシングエリア205内に留まる磁性粒子215は、測定対象である抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、磁性粒子215に固定化される第2抗体214とが結合したものに限られない。このため、被検物質に含まれる抗原212の正確な濃度を測定するためには、測定に関与しない、すなわち抗原212と結合していない第2抗体214が固定化された磁性粒子215をセンシングエリア205から遠ざける必要がある。具体的な方法としては、例えば磁場による近接作用により、第2抗体214が抗原212と結合していない磁性粒子215を移動させる方法がある。
これにより、最終的にセンシングエリア205に留まる磁性粒子215は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、第2抗体214とが結合されているものとなる。このため、反応ユニット2から出射される光の強度の値及び強度の時系列変化は、センシングエリア205に留まる磁性粒子215の量及び濃度等に対応する。
なお、反応ユニット2は、同一の測定項目について、同一の被検物質を複数チャンネルで同時に並行測定可能な構成であってもよい。このとき、反応ユニット2は、例えばチャンネル毎に独立した光導波路を有する。
測定システム3は、図1に示されるように、検知ユニット31、磁場発生器32、出力ユニット33、入力インタフェース回路34、記憶回路35及びシステム制御回路36を有する。
検知ユニット31は、光源311及び光検出器312を有する。
光源311は、例えば、LED等のダイオードやキセノンランプ等のランプである。光源311は、グレーティング23aに向けて光導波路23内に光を入射可能な位置に配置される。光源311は、入射光L1を、反応ユニット2の透明基板22を介して光導波路23内に入射する。入射光L1は、光導波路23内に進入し、グレーティング23aにより回折される。グレーティング23aにより回折された入射光L1は、光導波路23内を全反射しながら伝播し、グレーティング23bに到達する。グレーティング23bに到達した光は、グレーティング23bにより回折され、光導波路23から外部へ所定角度を有して出射光L2として出射される。なお、光源311の代わりに、光以外の電磁波等を発生するものを用いてもよい。
光検出器312は、混合液202が収容されている反応容器201内の反応状態に基づいた電気信号を出力する反応状態信号出力部である。具体的には、光検出器312は、光導波路23の外へ出射される出射光L2を検出し、検出された出射光L2の強度を示す電気信号、すなわち光検出強度に関するデジタルデータを生成する。光検出器312により生成された光検出強度に関するデジタルデータはシステム制御回路36に供給される。
なお、検知ユニット31は、同一の測定項目について、同一の被検物質を複数チャンネルで同時に並行測定可能な構成であってもよい。このとき、検知ユニット31は、例えばチャンネル毎に光源及び光検出器を有するとしてもよいし、光源及び光検出器を共有することもできる。
磁場発生器32は、反応容器201内の反応、すなわち磁性粒子215に固定された第2抗体214と光導波路23の上面に固定された第1抗体211との抗原212を介した結合を促進させるエネルギーを発生する反応促進部である。具体的には、磁場発生器32は、図2に示されるように、上磁場発生器32a及び下磁場発生器32bを有する。また、磁場発生器32は、図示しない駆動回路を有する。磁場発生器32は、システム制御回路36の制御の下、反応容器201に対して磁場を印加する。
上磁場発生器32aは、例えば永久磁石及び電磁石等で構成される。上磁場発生器32aは、図2に示されるように、反応ユニット2の上方に設けられる。上磁場発生器32aは、反応容器201において鉛直上向きの磁場を水平方向に一様に発生させる。発生された鉛直上向きの磁場により、第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、鉛直上方向の力を受けて上昇する。このとき、上磁場発生器32aは、所定の強さの磁場を発生させることで、第2抗体214が固定化された磁性粒子215を選択的にセンシングエリア205から遠ざける。すなわち、上磁場発生器32aは、発生させる磁場の強さを調整することで、光導波路23の上面に固定される、第1抗体211と抗原212を介して結合する第2抗体214が固定化された磁性粒子215のみをセンシングエリア205に留めることが可能となる。
下磁場発生器32bは、例えば永久磁石及び電磁石等で構成される。下磁場発生器32bは、反応ユニット2の下方に設けられる。下磁場発生器32bは、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーである鉛直下向きの磁場を水平方向に一様に発生させる。発生された鉛直下向きの磁場により、第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、鉛直下方向の力を受けて下降する。
出力ユニット33は、表示回路331、報知器332、及びプリンタ333を有する。
表示回路331は、システム制御回路36の制御の下、例えば液晶ディスプレイ又はOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置を有する。表示回路331は、システム制御回路36の制御に従い、各種操作画面、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び被検物質の測定結果等を表示する。測定結果は、例えば抗原212の濃度、重量又は個数等である。
報知器332は、例えばスピーカーである。報知器332は、システム制御回路36の制御の下、被検物質の判定結果等を操作者に報知する。
プリンタ333は、システム制御回路36の制御の下、例えば表示回路331に表示される各種操作画面、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び被検物質の測定結果等を印刷する。
入力インタフェース回路34は、例えばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース回路34は、操作者の操作に対応した操作入力信号をシステム制御回路36に出力する。なお、本実施形態において入力インタフェース回路はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号をシステム制御回路36へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース回路の例に含まれる。
記憶回路35は、磁気的若しくは光学的記録媒体又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。記憶回路35は、本実施形態に係る検体測定装置1の回路で実行されるプログラムを記憶する。なお、記憶回路35の記憶媒体内のプログラム及びデータの一部又は全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
記憶回路35は、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び測定対象となる被検物質の測定結果等を記憶する。
記憶回路35は、対象となる被検物質の測定を行うための設定情報を記憶する。設定情報は、例えば測定に必要な所定の処理を実行するタイミングを規定する情報を含む。測定に必要な所定の処理を実行するタイミングとは、例えば下磁場発生器32bにより発生される下磁場の印加が開始されるタイミング、検出区間が開始されるタイミング、算出タイミング(下磁場の印加が停止されるタイミング)、検出区間が終了されるタイミング、上磁場の印加が開始されるタイミング及び第2の判定(最終判定)が実施されるタイミングである。これらのタイミングを規定する情報には、所定の時刻からの相対的な経過時間又は所定の処理を実行する絶対時刻が含まれる。なお、所定の時刻からの相対的な経過時間又は所定の処理を実行する絶対時刻は、予め経験的、実験的に取得される。
記憶回路35は、予め設定された規定値TSを記憶する。規定値TSは、被検物質の濃度に対応する光強度の変動率の積算値についての規定値である。規定値TSは、被検物質の測定結果が陽性の可能性が高いかどうかの判定をするために用いられる。
記憶回路35は、予め設定された閾値TAを記憶する。閾値TAは、被検物質の濃度に対応する光強度についての閾値である。閾値TAは、被検物質の定性状態を判定するために用いられる。定性状態とは、例えば測定結果が示す陽性又は陰性の度合いである。閾値TAは、被検物質の測定結果が陽性の可能性が高いかどうかの第2の判定をするために用いられる。なお、閾値TAは、複数の段階的な閾値であってもよい。すなわち、デジタルデータに含まれる光強度と複数の段階的な閾値を比較することで、より詳細な測定結果を表す判定を行うことが可能となる。
システム制御回路36は、例えば検体測定装置1の各構成回路を制御するプロセッサである。システム制御回路36は、検体測定装置1の中枢として機能する。システム制御回路36は、記憶回路35から各動作プログラムを呼び出し、呼び出したプログラムを実行することで光源制御機能361、磁場制御機能362、演算機能363、第1の判定機能364、第2の判定機能365及び出力制御機能366を実現する。
光源制御機能361は、光源311を制御し、所定の条件で光を発生させる機能である。光源制御機能361では、システム制御回路36は、少なくとも測定開始から測定終了までの間、連続的又は間欠的に光源311から入射光L1を発生させる。
磁場制御機能362は、記憶回路35に予め記憶されているタイムスケジュールに従って磁場発生器32を制御し、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーの印加状態を切り替える印加状態切替制御機能である。具体的には、磁場制御機能362では、システム制御回路36は、記憶回路35から設定情報を読出し、読み出した設定情報に基づいて磁場発生器32を制御し、磁場発生器32に磁場を発生させる。
演算機能363は、光検出器312から供給される時系列の光強度のデジタルデータに基づいて各種演算を行う機能である。演算機能363では、システム制御回路36は、供給される時系列の光強度のデジタルデータを用いて、光強度の平均値、光強度の変動率、変動率の積算値等の演算を行う。
第1の判定機能364は、演算機能363により演算された光強度の変動率の積算値に基づいて試料溶液が陽性の可能性が高いかどうかを判定する第1の判定(予測判定)を実施する機能である。なお、第1の判定は、前判定と換言してもよい。第1の判定機能364では、システム制御回路36は、例えば予め設定された規定値TSを記憶回路35から読み出す。システム制御回路36は、演算機能363により演算された光強度の変動率の積算値が規定値TS以下であった場合、被検物質の測定結果を陽性の可能性が高いと判定する。また、システム制御回路36は、演算機能363により演算された光強度の変動率の積算値が規定値TSより大きい場合、被検物質の測定結果は陽性の可能性が高くない、すなわち弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。
第2の判定機能365は、後述する上磁場の印加中に光検出器312から供給される光強度のデジタルデータに基づいて被検物質の定性状態を判定する第2の判定を実施する機能である。すなわち、第2の判定機能365は、第1の判定機能364により第1の判定が実施された後に、第2の判定を実施する機能である。なお、第2の判定機能365における第2の判定は、後判定と換言してもよい。第2の判定機能365では、システム制御回路36は、記憶回路35から設定情報及び閾値TAを読出す。システム制御回路36は、読出した設定情報に含まれる実行タイミングに合わせて、被検物質の定性状態を判定する。システム制御回路36は、供給された時系列の光強度のデジタルデータに含まれる光強度が閾値TA以下であった場合、例えば被検物質の測定結果を陽性の可能性が高いと判定する。システム制御回路36は、デジタルデータに含まれる光強度が閾値TAより大きい場合、例えば被検物質の測定結果は弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。
ここで、前判定と後判定は、判定タイミングを時系列的に前後で表すものとし、第1の判定機能364による判定が前判定、第2の判定機能365による判定が後判定である。従って、後述するように第2の判定機能365により第2の判定を行わず、第1の判定機能364による第1の判定の結果が第2の判定の結果となる場合には、当該第1の判定が実質的に第2の判定であっても前判定と表記する。
出力制御機能366は、出力ユニット33を制御し、操作者に対して被検物質の定性状態等の判定結果を出力する機能である。出力制御機能366では、システム制御回路36は、表示回路331又はプリンタ333を制御し、第1の判定の結果又は/及び第2の判定の結果を操作者に提示する。提示は、ディスプレイを介した表示及びプリンタを用いて印刷する方法を含む。システム制御回路36は、報知器332を制御し、第1の判定の結果又は/及び第2の判定の結果を操作者に報知する。報知は、音等で知らせる方法を含む。
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
図3及び図4は、第1の実施形態に係るシステム制御回路36が制御する動作のフローチャートの一例を表す図である。また、図5は、出射光L2の光強度の時系列変化の一例を示すグラフである。図5に示されるグラフにおいて、横軸は時刻tを示し、縦軸は出射光L2の光強度を示す。また、グラフに描かれる曲線は、光検出器312から出力される、反応ユニット2内の反応状態に基づいて取得されるデジタルデータが表す光強度Aの時間的な変化をプロットして得られる。
まず、時刻t=0において、反応容器201への試料溶液及び試薬から成る混合液202の注入が開始される。反応容器201への混合液202の注入は、自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。
光源311は、例えば反応容器201に対する混合液202の注入が開始されると、光導波路23に対し、継続的に一定の強度の光を入射する。光導波路23には、光源311から出射された光が透明基板22を介して入射される。光導波路23に入射された光は、光導波路23内を全反射しながら伝播し、透明基板22を介して光検出器312へ出射される。光検出器312は、光導波路23から出射された光を受光し、システム制御回路36に対して、光強度のデータを所定の時間間隔で供給する。
システム制御回路36は、例えば下磁場の印加が開始されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時刻t=0から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち下磁場を印加する時刻t=t0に達したか否か判定する(ステップSA1)。ステップSA1における経過時間とは、光強度AがA=0からA=A00に増加するまでの時間である。時刻t=0からt=t0の期間においては、測定される光強度は増加する。これは、試料溶液及び試薬で反応容器201が満たされると、保存安定性を高めるために予め光導波路23の上面に付着された糖を含有する水溶性の膜が溶解することによるものである。糖は、例えば二糖類である。なお、システム制御回路36は、下磁場を印加する時刻t=t0に達したか否かの判定を、例えば光検出器312から逐次供給される光強度の時系列変化を監視し、予め設定された判定ルールに基づいて行ってもよい。判定ルールとは、例えば光強度がピーク値であることを検出すると下磁場を印加する時刻t=t0に達したと判定するルールである。
システム制御回路36は、下磁場を印加する時刻t=t0に達すると(ステップSA1のYes)、磁場発生器32を制御して下磁場の印加を開始する(ステップSA2)。図6は、図5に記載される時刻t=t0における反応ユニット2内の状態を表す断面図である。図6に示されるように、時刻t=t0において、下磁場の印加が開始される。図6における下向きの矢印は、下磁場の印加により発生する磁束B1の向きを示す。磁束B1は、複数の磁力線bで構成され、反応容器201を実質的に下方に貫く。
下磁場の印加が開始された後、光強度は、時刻t=t1に達すると所定の値A01に収束する。図7は、図5に記載される時刻t=t0からt=t1における反応機構内の状態を表す断面図である。図7に示されるように、試料溶液で満たされた反応容器201中の第2抗体214が固定化された複数の磁性粒子215は、下磁場による鉛直下向きの磁力を受けて、その一部が磁力線bに引き寄せられることで磁力線bに沿って整列され始める。磁力線bに沿って整列された第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、重力及び磁力に従って徐々に沈降し、センシングエリア205に進入する。センシングエリア205に進入した磁性粒子215に固定された第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。
一方、磁力線bに沿って整列されなかった第2抗体214が固定化された磁性粒子215については、重力に従って徐々に沈降し、センシングエリア205に進入する。センシングエリア205に進入した磁性粒子215に固定された第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。
時刻t=t0からt=t1において、センシングエリア205には、第2抗体214が固定化された磁性粒子215が次々に進入するので光強度は減少する。光強度は、時刻t=t0の直後から大きな減少率(傾き)で減少し始める。光強度の減少率は、時間の経過とともに小さくなる。その後、光強度の減少率は、時刻t=t1において、ほぼ0となる。すなわち、光強度は、時刻t=t1において強度A01に収束する。
図8は、図5に記載される時刻t=t1からt=t2における反応機構内の状態を表す断面図である。図8に示されるように、センシングエリア205への第2抗体214が固定化された磁性粒子215の進入が停止する。このため、光強度は、時刻t=t1において強度A01に収束する。なお、時刻t=t1からt=t2においても、反応容器201に収容された抗原212の一部は、第2抗体214に順次結合される。
図9は、図5における曲線Cの一部である部分曲線C1を拡大した図である。図9に示されるように、本実施形態では、時刻t=t1からt=t2の間の所定の時刻を起点Ds(t=ts)、De(t=t3)を終点とする区間を検出区間と呼ぶ。
システム制御回路36は、下磁場の印加を開始した後、例えば検出区間が開始されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、下磁場の印加が開始される時刻t0から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時刻t=tsに達したか否かを判定する(ステップSA3)。なお、検出区間が開始されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時刻0からの所定の経過時間であってもよい。
システム制御回路36は、検出区間の開始を示す時刻である時刻t=tsに達すると(ステップSA3のYes)、光検出器312から継続的に供給される光強度のデータの1つの値をリファレンス値R(=A01)として取得する(ステップSA4)。
システム制御回路36は、リファレンス値Rの取得後、光検出器312から逐次供給される光強度のデータに含まれる光強度An(n=1、2、3…)の1つを測定値として取得する(ステップSA5)。なお、システム制御回路36は、ステップSA4で取得したリファレンス値Rを測定値として利用してもよい。
システム制御回路36は、測定値Anを取得した後、取得した測定値のデータの数が3以上であるか否か判定する(ステップSA6)。システム制御回路36は、取得した測定値のデータの数がN未満であった場合(ステップSA6のNo)、ステップSA5に戻り次に供給される測定値を取得する。
システム制御回路36は、取得した測定値のデータの数がN以上であった場合(ステップSA6のYes)、例えば算出タイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、下磁場の印加を開始する処理が実施された時刻t=t0から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時刻t=t2に達したか否かを判定する(ステップSA7)。ステップSA7における経過時間とは、ステップSA3における経過時間と同様に、下磁場の印加を開始する時刻t=t0からの相対的な経過時間であり、予め経験的、実験的に取得される時間である。なお、システム制御回路36は、例えば直近に取得したN個の光強度のデータのうち、(N-1)個の光強度のデータがリファレンス値Rを超えている場合を算出タイミングとしてもよい。なお、算出タイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時刻t=0からの所定の経過時間であってもよい。
システム制御回路36は、時刻t=t2に達していない場合(ステップSA7のNo)、ステップSA5に戻り次に供給される測定値を取得する。
システム制御回路36は、時刻t=t2に達すると(ステップSA7のYes)、磁場発生器32を制御して下磁場の印加を停止する(ステップSA8)。
下磁場の印加が停止されると、第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、下磁場による束縛から解放されることで自然沈降を開始する。図10は、図5に記載される時刻t=t2における反応ユニット2内の状態を表す断面図である。図10に示されるように、下磁場の印加が停止された直後の反応容器201の内部状態は、図8で示された状態とほぼ同様である。
光強度Aは、図5及び図9に示されるように、時刻t=t2からt=t3においてオーバーシュートOS1が発生するため、増加から減少に転じるスパイク状の波形を描く。試薬成分213の一部は、センシングエリア205から一瞬離脱させられ、図5及び図9に示されるように、時刻t=t2からt=t3においてオーバーシュートOS1が生じる。時刻t=t3は、オーバーシュートOS1の発生が収まった時刻である。この下磁場の印加が停止されてからオーバーシュートOS1の発生が収まるまでに要する時間は、下磁場を発生させる動作が停止される時刻が予め設定されているため既知であり、記憶回路35に予め記憶される。この時間は、例えば下磁場の印加が停止された時刻からの経過時間を決定する際に用いられる。なお、このオーバーシュートOS1の発生が収まるまでに要する経過時間は、事前に実験的に求めてもよい。
また、測定対象となる被検物質を含む試料溶液が陽性の可能性が高いかどうかを判定する基準としては、時刻t=t2からt=t3までの間に生じるオーバーシュートの程度に着目する。例えば、本実施形態に係るシステム制御回路36は、図9に示されるように、所定の演算を行うことで、例えば算出タイミングを示す点Dc(t=t2)から検出区間の終了を表す点De1(t=t3)までの間にプロットされるような急なスパイク状のオーバーシュートが生じた場合を弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。また、システム制御回路36は、例えば算出タイミングを示す点Dc(t=t2)から検出区間の終了を表す点De2(t=t3)までの間にプロットされるような緩やかなスパイク状のオーバーシュートが生じた場合を陽性の可能性が高いと判定する。具体的には、システム制御回路36は、時刻t=t2からt=t3までの間の光強度変動率の累積積算を演算し、演算された光強度の変動率の積算値が予め設定された規定値TS以下であった場合、陽性の可能性が高いと判定する。システム制御回路36は、演算された光強度の変動率の積算値が規定値TSより大きい場合、弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。
光強度Aは、オーバーシュートOS1におけるノイズ電流の発生が収まると、時刻t=t3からt=t4において減少する。図11は、図5に記載される時刻t=t3からt=t4における反応機構内の状態を表す断面図である。図11に示されるように、磁力線bに沿って整列された第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、下磁場による束縛から解放されることで、整列された状態が崩され、光導波路23の上面に向けて無秩序に沈降する。光強度Aは、図5に示されるように、時刻t=t3からt=t4においてセンシングエリア205に第2抗体214が固定化された磁性粒子215が次々に進入するため、大きな減少率で減少する。光強度Aの減少率は、時間の経過とともに小さくなる。その後、光強度Aの減少率は、時刻t=t4において、ほぼ0となる。すなわち、光強度は、時刻t=t4において強度A03に収束する。
図12は、図5に記載される時刻t=t4からt=t5における反応機構内の状態を表す断面図である。図12に示されるように、センシングエリア205への第2抗体214が固定化された磁性粒子215の進入が停止する。このため、光強度は、時刻t=t4において強度A03に収束する。このとき、光導波路23の上面に接する第2抗体214が固定化された複数の磁性粒子215の一部は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合する。このような第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、光導波路23の上面に整列して堆積される。すなわち、センシングエリア205内は、第2抗体214が固定化された磁性粒子215によりほぼ隙間なく占められた状態となる。なお、t=t4の段階で光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合していなかった第2抗体214が固定化された複数の磁性粒子215のうちの一部は、時刻t=t4からt=t5において、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。
システム制御回路36は、下磁場の印加を終了した後、光検出器312から逐次供給された光強度のデータのうち、直近に取得したNデータの平均値Ave(n)を算出する(ステップSA9)。算出式は、例えば以下で表される。
システム制御回路36は、光強度の平均値Ave(n)を算出した後、ステップSA4で取得したリファレンス値RとステップSA9で算出した光強度の平均値Ave(n)を用いて光強度の変動率H
nを算出する(ステップSA10)。算出式は、例えば以下で表される。
システム制御回路36は、光強度の変動率H
nを算出した後、光強度の変動率H
nの積算値S
nを算出する(ステップSA11)。算出式は、例えば以下で表される。
システム制御回路36は、光強度の変動率H
nの積算値S
nを算出した後、例えば検出区間が終了されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時刻t=t
2から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時刻t=t
3に達したか否かを判定する(ステップSA12)。なお、検出区間が終了されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時刻0からの所定の経過時間であってもよい。
システム制御回路36は、検出区間の終了を示す時刻t=t3に達していない場合(ステップSA12のNo)、次に供給される測定値を取得する(ステップSA13)。その後、システム制御回路36は、ステップSA9からステップSA12までを実行する。
システム制御回路36は、検出区間の終了を示す時刻t=t3に達すると(ステップSA12のYes)、算出された光強度の変動率Hnの積算値Snと記憶回路35に記憶された規定値TSとを比較し、積算値Snが規定値TS以下であるか否かを判定する(ステップSA14)。
システム制御回路36は、積算値Snが規定値TS以下であると判定した場合(ステップSA14のYes)、出力制御機能366を実行し、測定対象となる被検物質の第1の判定の結果が陽性の可能性が高い旨を、出力ユニット33を介し、操作者に提示又は報知する(ステップSA15)。
システム制御回路36は、操作者への提示又は報知を行った後、時刻t=t3以降の測定を継続する(ステップSA16)。
システム制御回路36は、積算値Snが規定値TSより大きいと判定した場合(ステップSA14のNo)、第1の判定の結果の提示又は報知は行わずに、時刻t=t3以降の測定を継続する(ステップSA16)。
システム制御回路36は、例えば上磁場が印加されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時刻t=t2から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時刻t=t5に達したか否かを判定する(ステップSA17)。なお、上磁場が印加されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時刻t=0からの所定の経過時間であってもよい。
システム制御回路36は、上磁場を印加する時刻t=t5に達すると(ステップSA17のYes)、磁場発生器32を制御して上磁場の印加を開始する(ステップSA18)。
時刻t=t5の直前おいて、第2抗体214が固定化された磁性粒子215は、光導波路23の上面に整列して堆積されている。このとき、光導波路23の上面と接する第2抗体214が固定化された磁性粒子215の多くが光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合している。
図13は、図5に記載される時刻t=t6からt=t7における反応機構内の状態を表す断面図である。図13における上向きの矢印は、上磁場の印加により発生する磁束B2の向きを示す。磁束B2は、複数の磁力線bで構成され、反応容器201を実質的に上方に貫く。図13に示されるように、光強度AがA=A02に収束するのは、センシングエリア205への第2抗体214が固定化された磁性粒子215の進入が停止するためである。
光強度AがA=A02に収束されると、図13に示されるように、センシングエリア205には、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合した第2抗体214が固定化された磁性粒子215のみが存在する状態となる。
システム制御回路36は、上磁場の印加を開始した後、例えば第2の判定が実施されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時刻t=t5から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時刻t=t7に達したか否かを判定する(ステップSA19)。なお、第2の判定が実施されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間は、時刻t=0からの所定の経過時間であってもよい。
システム制御回路36は、下磁場の印加が停止された後、反応容器201内の反応が収束し最終的に被検物質の定性状態の判定をするタイミング、すなわち第2の判定機能365を実行する時刻t=t7に達すると(ステップSA19のYes)、第2の判定機能365を実行し、光検出器312から継続的に供給される、収束後の光強度のデータの値A02を取得する(ステップSA20)。
システム制御回路36は、第2の判定機能365を実行し、取得した光強度のデータの値A02と記憶回路35に記憶された閾値TAを比較することで、第2の判定を行う。システム制御回路36は、出力制御機能366を実行し、出力ユニット33を介し、第2の判定の結果を操作者に提示又は報知する(ステップSA21)。なお、システム制御回路36は、第2の判定の結果を出力する際、第1の判定の結果を第2の判定の結果と同時に同一のディスプレイ等に表示するようにしてもよい。また、第1の判定の結果と第2の判定の結果が明確に識別可能な識別子、例えば「*」を第1の判定の結果に付加して表示又は印刷するようにしてもよい。
第1の実施形態によれば、光検出器312は、混合液202が収容されている反応容器201内の反応状態に基づいた電気信号を出力する。システム制御回路36は、予め定められているスケジュールに従って磁場発生器32を制御し、反応ユニット2に下磁場を印加し、また、反応ユニット2への下磁場の印加を停止する。システム制御回路36は、下磁場の印加が停止された後に光検出器312から出力される電気信号に基づき、被検物質の定性状態を判定する。システム制御回路36は、判定により得られた定性状態を出力する。これにより、検体測定装置は、第2の判定の実施を待つことなく、被検物質の判定結果を操作者へ通知することが可能となる。このため、操作者は、第2の判定が実施される前に被検物質の定性状態を認知し、認知した定性状態に基づいて次に行う治療の準備に早く取り掛かることができる。
したがって、第1の実施形態に係る検体測定装置1によれば、作業ワークフローの改善を行うことが可能な検体測定装置を提供することが可能となる。
また、第1の実施形態によれば、システム制御回路36は、オーバーシュートOS1が発生する所定の検出区間において、光強度の変動率Hnの積算値Snを算出する。システム制御回路36は、積算値Snが規定値TS以下であると判定した場合、被検物質の第1の判定の結果が陽性の可能性が高いと判定する。これにより、測定中にランダムに発生する電流ノイズ等の影響を軽減することが可能となる。
また、第1の実施形態によれば、システム制御回路36は、出力ユニット33を制御し、第1の判定の結果を第2の判定を実施する前に表示又は印刷する。これにより、操作者は、被検物質の第1の判定の結果を第2の判定が行われる前に予め認知することが可能となる。
また、第1の実施形態によれば、システム制御回路36は、出力ユニット33を制御し、第1の判定の結果と第2の判定の結果が明確に識別可能な識別子を第1の判定の結果に付加して表示又は印刷する。これにより、操作者は、表示又は印刷された測定結果が、第1の判定による測定結果であるか、又は、第2の判定による測定結果であるかを容易に認識することが可能となる。
[変形例]
第1の実施形態では、第1の判定を行い判定結果が陽性の可能性が高い旨を示す場合に、第1の判定の結果を表示又は報知した後において、測定を継続し第2の判定を実施する場合について説明した。変形例では、第1の判定を行い判定結果が陽性の可能性が高い旨を示す場合に、第1の判定の結果を出力又は報知した後において、操作者に時刻t=t3以降の測定を中断することを決定する操作入力を促す旨を表示し、測定中断の入力を受け付けた場合には、時刻t=t3以降の測定を中断し、第2の判定は行わずに第1の判定の結果を第2の判定の結果として出力又は報知する場合について説明する。
変形例に係る検体測定装置1Aは、反応ユニット2及び測定システム3Aを備える。
測定システム3Aは、検知ユニット31、磁場発生器32、出力ユニット33、入力インタフェース回路34、記憶回路35及びシステム制御回路36Aを有する。
システム制御回路36Aは、例えば検体測定装置1Aの各構成回路を制御するプロセッサである。システム制御回路36Aは、検体測定装置1Aの中枢として機能する。システム制御回路36Aは、記憶回路35から各動作プログラムを呼び出し、呼び出したプログラムを実行することで光源制御機能361、磁場制御機能362A、演算機能363、第1の判定機能364、第2の判定機能365A及び出力制御機能366Aを実現する。
磁場制御機能362Aは、磁場発生器32を制御し、所定の条件で磁場を発生させる機能である。磁場制御機能362では、システム制御回路36Aは、記憶回路35から設定情報を読出し、読み出した設定情報に基づいて磁場発生器32から磁場を発生させる。システム制御回路36Aは、入力インタフェース回路34を介して、操作者から測定を中断する旨の操作入力を受け付けた場合、時刻t3以降に行う処理を中断、すなわち上磁場の印加の開始を停止する。
第2の判定機能365Aは、上磁場の印加中に光検出器312から供給される光強度のデジタルデータに基づいて被検物質の定性状態を判定する第2の判定を実施する機能である。第2の判定機能365Aでは、システム制御回路36Aは、記憶回路35から設定情報及び閾値TAを読出す。システム制御回路36は、読出した設定情報に含まれる実行タイミングに合わせて、被検物質の定性状態を判定する。システム制御回路36Aは、供給された時系列の光強度のデジタルデータに含まれる光強度が閾値TA以下であった場合、例えば被検物質の測定結果を陽性の可能性が高いと判定する。システム制御回路36Aは、デジタルデータに含まれる光強度が閾値TAより大きい場合、例えば被検物質の測定結果は弱陽性又は陰性の可能性が高いと判定する。また、システム制御回路36Aは、入力インタフェース回路34を介して、操作者から測定を中断する旨の操作入力を受け付けた場合、時刻t=t3以降に行う処理を中断、すなわち第2の判定の実施を停止する。
出力制御機能366Aは、出力ユニット33を制御し、操作者に対して判定結果等を出力する機能である。出力制御機能366Aでは、システム制御回路36Aは、表示回路331を制御し、第1の判定の結果又は第2の判定の結果等を操作者に表示する。システム制御回路36は、報知器332を制御し、第1の判定の結果又は第2の判定の結果等を操作者に報知する。報知は、音等で知らせる方法を含む。システム制御回路36Aは、プリンタ333を制御し、第1の判定の結果又は第2の判定の結果等を印刷する。システム制御回路36Aは、第1の判定の結果が陽性の可能性が高い旨を示す場合、表示回路331を制御して操作者に時刻t=t3以降の測定を中断することを決定する操作入力を受け付けるボタンを表示する。システム制御回路36Aは、入力インタフェース回路34を介して、操作者から測定を中断する旨の操作入力を受け付けた場合、第1の判定の結果を第2の判定の結果として出力する。
次に、変形例の実施形態の動作について説明する。
図14及び図15は、変形例に係るシステム制御回路36Aが制御する動作のフローチャートの一例を表す図である。以下、ステップSB1乃至SB14については、図3及び図4に示されるステップSA1乃至SA14とそれぞれ同様であるため、ここではステップSB15乃至SB27について説明する。
システム制御回路36Aは、積算値Snが規定値TS以下であると判定した場合(ステップSB14のYes)、出力制御機能366Aを実行し、測定対象となる被検物質の第1の判定の結果が陽性の可能性が高い旨を、出力ユニット33を介し、操作者に提示又は報知する(ステップSB15)。
システム制御回路36Aは、積算値Snが規定値TSより大きいと判定した場合(ステップSB14のNo)、第1の判定の結果の提示又は報知は行わずに、t=時刻t3以降の測定を継続する(ステップSB20)。
システム制御回路36Aは、操作者への提示又は報知を行った後、出力制御機能366を実行し、表示回路331を介して操作者に時刻t=t3以降の測定を中断することを決定する操作入力を受け付けるボタンを表示する(ステップSB16)。
システム制御回路36Aは、入力インタフェース回路34を介して操作者から測定を中断することを決定する操作入力が行われたか否かを判定する(ステップSB17)。
システム制御回路36Aは、操作者から測定を中断することを決定する操作入力があった場合(ステップSB17のYes)、その後の測定を中断する(ステップSB18)。すなわち、第2の判定機能365の実行による第2の判定は実施しない。
システム制御回路36Aは、ステップSB18において測定を中断した後、出力制御機能366を実行し、出力ユニット33を介して第1の判定の結果を第2の判定の結果として出力する(ステップSB19)。このとき、陽性の可能性が高い旨の第1の判定の結果を出力したチャンネルとは別のチャンネルに関しては判定未確認として測定結果を出力しない。なお、第1の判定の結果と第2の判定の結果が明確に識別可能な識別子、例えば「*」を第1の判定の結果に付加して表示又は印刷するようにしてもよい。
システム制御回路36Aは、操作者から測定を中断する旨の操作入力がない場合(ステップSB17のNo)、時刻t=t3以降の測定を継続する(ステップSB20)。
システム制御回路36Aは、入力インタフェース回路34を介して操作者から測定を中断することを決定する操作入力が行われたか否かを判定する(ステップSB21)。
システム制御回路36Aは、操作者から測定を中断することを決定する操作入力があった場合(ステップSB21のYes)、その後の測定を中断する(ステップSB18)。なお、ステップSB15にて第1の判定の結果の出力をしていない場合には(ステップSB14のNo)、操作者から測定を中断することを決定する操作入力があっても測定を中断せずに、ステップSB22に処理を進める。但し、複数チャンネル同時並行測定を行う場合等、他のチャンネルにて第1の判定の結果を出力している場合は測定を中断しても良い(ステップSB18)。
システム制御回路36Aは、操作者から測定を中断することを決定する操作入力がない場合(ステップSB21のNo)、例えば上磁場が印加されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時刻t=t2から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時刻t=t5に達したか否かを判定する(ステップSB22)。
システム制御回路36Aは、上磁場を印加する時刻t=t5に達すると(ステップSB22のYes)、磁場発生器32を制御して上磁場の印加を開始する(ステップSB23)。
システム制御回路36Aは、上磁場を印加する時刻t=t5に達していない場合(ステップSB22のNo)、再び入力インタフェース回路34を介して操作者から測定を中断することを決定する操作入力が行われたか否かを判定する(ステップSB21)。
システム制御回路36Aは、上磁場の印加を開始した後、入力インタフェース回路34を介して操作者から測定を中断することを決定する操作入力が行われたか否かを判定する(ステップSB24)。
システム制御回路36Aは、操作者から測定を中断することを決定する操作入力があった場合(ステップSB24のYes)、その後の測定を中断する(ステップSB18)。なお、ステップSB15にて第1の判定の結果の出力をしていない場合には(ステップSB14のNo)、操作者から測定を中断することを決定する操作入力があっても測定を中断せずに、ステップSB25に処理を進める。但し、複数チャンネル同時並行測定を行う場合等、他のチャンネルにて第1の判定の結果を出力している場合は測定を中断しても良い(ステップSB18)。
システム制御回路36Aは、操作者から測定を中断する旨の操作入力がない場合(ステップSB24のNo)、例えば第2の判定が実施されるタイミングを規定する情報に含まれる経過時間を用いて、時刻t=t5から所定の経過時間が経過したか否か、すなわち時刻t7に達したか否かを判定する(ステップSB25)。
システム制御回路36Aは、時刻t=t7に達していない場合(ステップSB25のNo)、再び入力インタフェース回路34を介して操作者から測定を中断することを決定する操作入力が行われたか否かを判定する(ステップSB24)。
システム制御回路36Aは、時刻t=t7に達すると(ステップSB25のYes)、第2の判定機能365Aを実行し、光検出器312から継続的に供給される、収束後の光強度のデータの値A02を取得する(ステップSB26)。
システム制御回路36Aは、第2の判定機能365Aを実行し、取得した光強度のデータの値A02と記憶回路35に記憶された閾値TAを比較することで、第2の判定を行う。システム制御回路36は、出力制御機能366Aを実行し、表示回路331又は報知器332を介し、第2の判定の結果を操作者に提示又は報知する(ステップSB27)。なお、システム制御回路36Aは、第2の判定の結果を出力する際、第1の判定の結果を第2の判定の結果と同時に同一のディスプレイ等に表示するようにしてもよい。また、第1の判定の結果と第2の判定の結果が明確に識別可能な識別子、例えば「*」を第1の判定の結果に付加して表示又は印刷するようにしてもよい。
変形例によれば、システム制御回路36Aは、入力インタフェース回路34を介して操作者から測定を中断することを決定する操作入力あった場合、第2の判定の実施を停止する。これにより、操作者は、測定状況に応じて第1の判定の測定結果を第2の判定の測定結果として利用することを選択することができ、測定時間を短縮させることが可能となる。
なお、本変形例によれば、図14及び図15にて説明したフローをより簡略化することも可能である。例えば、図15に示されるステップSB14以降の処理において、操作入力等の処理(ステップSB15~SB17、SB21、及びSB24)を省略し、自動的に第2の判定の結果を出力することもできる(ステップSB19、ステップSB27)。
具体的には、システム制御回路36Aは、図15に示されるステップSB14において、積算値Snが規定値TS以下であると判定した場合(ステップSB14のYes)、ステップSB15~SB17を省略し、直ちに測定を中断する(ステップSB18)。システム制御回路36Aは、第1の判定の結果を第2の判定の結果として出力する(ステップSB19)。
また、システム制御回路36Aは、積算値Snが規定値TSより大きいと判定した場合(ステップSB14のNo)、ステップSB21を省略し、上磁場を印加する時刻t=t5に達すると(ステップSB22のYes)、磁場発生器32を制御して上磁場を印加する(ステップSB23)。システム制御回路36Aは、ステップSB24を省略し、時刻t=t7に達すると(ステップSB25のYes)、第2の判定機能365Aを実行し、光検出器312から継続的に供給される収束後の光強度のデータの値A02を取得する(ステップSB26)。システム制御回路36Aは、収束後の光強度のデータの値A02に基づいて第2の判定の結果を出力する(ステップSB27)。
上記のような簡略化により、第1の判定機能364による第1の判定の結果を第2の判定の結果として、すなわち前判定の結果をそのまま自動的に出力することが可能となる。これにより、前判定と比して判定の結果を得るまでに時間を要する後判定を行う必要がなくなる。
上記のような簡略化により、第1の判定が可能であった場合には、第1の判定の結果を直ちに第2の判定の結果として自動的に出力する。換言すると、第1の判定により得られた判定結果を第1の判定の結果として出力しない。これにより、後判定を待つことなく迅速な検査を行うことが可能となる。
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1の実施形態及び変形例では、検出区間で取得される光強度の変動率Hnの積算値Snを測定結果が陽性の可能性が高いかどうかを判定するための指標としていたが、検出区間で取得される光強度の傾き又は積分値を測定結果が陽性の可能性が高いかどうかを判定するための指標としてもよい。これにより、より低い計算負荷で第1の判定を行うことが可能となる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、第1の実施形態及び変形例1の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として表示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。