JP7024214B2 - 成形体 - Google Patents
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Description
要件(A-i):長鎖分岐を有する。
要件(A-ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3~30gである。
要件(A-iii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2~15g/10分である。
要件(A-iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン系重合体(A)全量に対し5重量%未満である。
要件(A-v):絶対分子量Mabs100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満である。
要件(C-i):190℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が5g/10分以下である。
要件(C-ii):密度が0.920~0.970g/cm3である。
要件(C-iii):高密度ポリエチレンである。
要件(B-i):長鎖分岐を有しない。
要件(B-ii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.05~10g/10分である。
要件(B-iii):プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系重合体である。
要件(A-vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5~15である。
以下、本願発明において用いられる各成分、得られるポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体について、詳細に説明する。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体あってもよい。プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体である場合、コモノマーは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、プロピレン系重合体(A)中のコモノマーの含量は、好ましくは3重量%以下である。本発明のプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体である方が、耐熱性や剛性が高く好ましい。
要件(A-i):長鎖分岐を有する。
要件(A-ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3~30gである。
要件(A-iii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2~15g/10分である。
要件(A-iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン系重合体(A)全量に対し5重量%未満である。
要件(A-v):絶対分子量Mabs100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満である。
要件(A-vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5~15である。
以下、順に詳説する。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、長鎖分岐を有するものである。長鎖分岐とは、主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言い、1-ブテンなどのα-オレフィンと共重合を行うことにより形成される炭素数が数個の短鎖分岐とは区別される。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)の溶融張力(MT)は、以下の条件で測定した値とする。
[MT測定条件]
測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
ピストン押出速度:20mm/分
引き取り速度:4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)
温度:230℃
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(以下MFRと略記することがある)(230℃、2.16kg荷重)は、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)の25℃キシレン可溶成分量(CXS)は、5重量%未満である(但し、プロピレン系重合体(A)全量を100重量%とする)。本発明におけるCXSは、以下の手順で測定した値である。
2gの試料を300mlのp-キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp-キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
CXSを上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンのCXSを決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中から、低CXSの要件を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は後述する。
本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、要件(A-i)~(A-iv)を満たすものであるが、更に、以下の要件(A-v)を満たすことが好ましい。
要件(A-v):絶対分子量Mabs100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満である。
分岐指数g’=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度
絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’の値を知るためには、絶対分子量Mabsの関数として分岐指数g’の値を得なくてはならない。この点については、本発明においては、以下の測定方法、解析方法、算出方法を用いるものとする。
GPC:Alliance GPCV2000(Waters社製)
検出器:接続順に記載
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS):DAWN-E(Wyatt Technology社製)
示差屈折計(RI):GPC付属
粘度検出器(Viscometer):GPC付属
移動相溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン(Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)
移動相流量:1mL/分
カラム:東ソー社製GMHHR-H(S) HTを2本連結
試料注入部温度:140℃
カラム温度:140℃
検出器温度:全て140℃
試料濃度:1mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.2175mL
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)から得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)、および粘度検出器(Viscometer)から得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495-6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424-2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945-6952(2000)
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標) グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は、分子量の対数と線形の関係があることは、Mark-Houwink-Sakurada式として公知であり、[η]linは、低分子量側や高分子量側に、適宜外挿して数値を得ることとする。
分岐指数g’が上記の範囲内にあると、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さくなるため、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが小さくなり好ましい。
分岐指数g’を上記の範囲内に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンの分岐指数g’を決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中から分岐指数g’の要件を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
本発明において、プロピレン系重合体(A)は、前記の要件(A-i)~(A-iv)を満たすものであり、要件(A-v)を満たすことが好ましいが、加えて、以下の要件(A-vi)を満たすことがより好ましい。
要件(A-vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5~15である。
装置:Rheometorics社製Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
測定温度:180℃
歪み速度:0.1/sec
試験片の作成方法:プレス成型
試験片の形状:18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシート
まず、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・秒)を両対数グラフでプロットし、その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法を用いる。
本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、歪硬化度(λmax)が5~15であることが好ましい。より好ましくは、歪硬化度(λmax)が6~14.5であり、更に好ましくは、7~14である。本発明におけるプロピレン系重合体(A)のうち、歪硬化度(λmax)の値がこの範囲内にあるものは、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが小さく、かつ、成形体の肉厚が均一になり一層好ましい。
本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、上記した(A-i)~(A-iv)の要件を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、低い低結晶性成分量、比較的広い分子量分布、分岐指数g’の範囲、高い溶融張力等の全ての条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009-57542号公報に開示される方法が挙げられる。
以下、この方法をプロピレン系重合体(A)の製造方法の具体例として選び、詳細に説明する。
下記の触媒成分(X)、(Y)および(Z)からなる触媒を用いることが好ましい。
触媒成分(X):下記一般式(x1)で表される化合物である成分[X-1]から少なくとも1種類、および下記一般式(x2)で表される化合物である成分[X-2]から少なくとも1種類を選んだ2種以上の周期表4族の遷移金属化合物。
成分[X-1]:一般式(x1)で表される化合物
成分[X-2]:一般式(x2)で表される化合物
触媒成分(Y):イオン交換性層状珪酸塩
触媒成分(Z):有機アルミニウム化合物
(1)触媒成分(X)
(i)成分[X-1]:一般式(x1)で表される化合物
ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-チエニル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジフェニルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルゲルミレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルゲルミレンビス{2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-トリメチルシリル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-ベンゾフリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-トリメチルシリルフェニル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フルフリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-トリフルオロメチルフェニル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
ただし、以下は煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載しており、本発明はこれら化合物に限定し解釈されるものではなく、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
また中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も同様に本願明細書に開示されたものとして取り扱われる。
プロピレン系重合体(A)を製造するのに好ましく使用される触媒成分(Y)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある。)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、触媒成分(Y)に含まれる。
本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等である。
本発明において、触媒成分(Y)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここでイオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
なお、以下の酸類、塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら酸類、塩類の組み合わせであってもよい。
塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な金属陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、有機陽イオン、無機陽イオンおよび金属イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陽イオンと、有機陰イオン及び無機陰イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから構成される塩類が、例示される。例えば、周期表第1~14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン陰イオン、並びに、無機酸および有機酸由来の陰イオンから成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物が好ましい例として挙げられる。ここで、酸由来の陰イオンとは、酸から少なくとも1個の水素陽イオンが脱離した陰イオンのことである。例えば、HNO3の様な1価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、NO3 -であり、H3PO4の様な3価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、H2PO4 -、HPO4 2-、PO4 3-、の3種類が存在する。有機酸由来の陰イオンの場合も同様である。更に好ましくは、陽イオンが金属イオン、陰イオンが無機酸由来の陰イオンやハロゲン陰イオンとから成る化合物である。
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2などが例示される。
また、有機物処理に用いられる有機処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。これらの吸着水および層間水を除去して触媒成分(Y)として使用するのが好ましい。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ-を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
触媒成分(Z)は、有機アルミニウム化合物である。触媒成分(Z)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 qZ3-q)pで示される化合物が適当である。この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができる。この式中、R31は、炭素数1~20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1~3の、pは1~2の整数を各々表す。R31としては、アルキル基が好ましく、またZは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1~8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1~8のアミノ基が、好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
触媒は、上記の各触媒成分(X)~(Z)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、-20℃から150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させる前に、触媒成分(X)と、あるいは触媒成分(Y)と、または触媒成分(X)および触媒成分(Y)の両方に触媒成分(Z)を接触させること、または、触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させるのと同時に触媒成分(Z)を接触させること、または、触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させた後に触媒成分(Z)を接触させることが可能であるが、好ましくは、触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させる前に、触媒成分(Z)をいずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。つまり、成分[X-1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[X-2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。したがって、成分[X-1]の割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
また、上記範囲で成分[X-1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々-20℃~100℃、5分~24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が触媒成分(Y)100に対し、好ましくは0.01~100、さらに好ましくは0.1~50である。また、予備重合時に触媒成分(Z)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
(1)触媒の使用/プロピレン重合について
重合様式は、前記触媒成分(X)、触媒成分(Y)および触媒成分(Z)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー重合法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク重合法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合法の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
さらに、気相重合法を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.7MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.3MPa以下である。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、MFR、歪硬化度、溶融張力MT、溶融延展性といった、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを特徴付ける溶融物性を制御することができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10-6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10-5以上であり、さらに好ましくは1.0×10-4以上用いるのがよい。また上限に関しては、1.0×10-2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10-2以下であり、更に好ましくは0.8×10-2以下である。
そこで、本発明に用いるプロピレン系重合体(A)として、触媒活性と溶融物性のバランスのよいものを得るためには、エチレンおよび/又は1-ブテンを、プロピレンに対して15モル%以下で使用することが好ましく、より好ましくは10.0モル%以下であり、更に好ましくは7.0モル%以下である。
本発明の熱成形シート用樹脂組成物は、好ましくは上記した長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体(A)とともにプロピレン系重合体(B)が配合される。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)は、下記要件(B-i)~(B-iii)を満たすことが好ましい。
要件(B-i):長鎖分岐を有しない。
要件(B-ii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2~10g/10分である。
要件(B-iii):プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系重合体である。
プロピレンとエチレンのランダム共重合体におけるプロピレン単位とエチレン単位の含量は、プロピレンとエチレンのランダム共重合体の重合時のプロピレンとエチレンの組成比を、制御することにより、調整することができる。
また、プロピレンとエチレンのランダム共重合体のプロピレン含量は、クロス分別装置やFT-IR等を用いて測定される値であり、その測定条件等は、例えば、特開2008-189893号公報に記載されている方法を使用すればよい。
プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体におけるプロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)の含量は、通常3~60重量%、好ましくは5~50重量%、更に好ましくは7~40重量%である。プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)の含有量が3%未満であると、成形体の耐衝撃強度が十分に得られない場合がある。また、60重量%を超えると、剛性などが低下するおそれがある。
プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)のプロピレン含量は、プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)の重合時のα-オレフィンとプロピレンの組成比を制御することにより、調整することができる。
なお、プロピレン単独重合体と、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分(b1)については、以下の(B-ii)MFRの部分で説明する。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)は、前記プロピレン系重合体(A)のような化学結合による長鎖分岐構造は、分析可能な精度では存在が認められない。前記プロピレン系重合体(A)にプロピレン系重合体(B)を配合した場合、成形体の光沢測定値が低くなり、好ましい。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.05~10g/10分、好ましくは0.1~3g/10分、より好ましくは0.3~1g/10分である。MFRが0.05g/10分未満であると、溶融流動性が低下するため、押出し機にてシート状に成形する際に押出し機への負荷が増加し、生産性が低下するおそれがある。また、10g/10分を超えると、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが大きくなり、シートとヒーターとの接触するおそれがある。
なお、MFRの測定法は、前述のプロピレン系重合体(A)における測定方法と同じである。
以下、本発明の熱成形シート用樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体(B)の製造方法について説明する。先ず、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体の製造方法について説明する。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)がプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分(b1)とプロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体部分(b1)の重合(前段)と、この後に続く、プロピレン・α-オレフィン共重合体(b2)の重合(後段)の製造工程により得られる。
チーグラー・ナッタ触媒には、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば、特開昭47-34478号公報、特開昭58-23806号公報、特開昭63-146906号公報参照。)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58-157808号公報、特開昭58-83006号公報、特開昭58-5310号公報、特開昭61-218606号公報参照。)等が含まれる。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert-ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p-トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよく、所望により、二段及び三段等の複数段の連続重合法を用いてもよい。
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレンと2種類以上のα-オレフィンが共重合されていても構わない。
前記のように、プロピレン単独重合体部分(b1)のMFRは、通常、0.1~50g/10分の範囲なので、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合のMFRを、この範囲とするためには、プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、1×10-4~10g/10分とするのが好ましい。
プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)のMFRを1×10-4~10g/10分にコントロールする場合、触媒の種類にもよるが、水素/(プロピレン+α-オレフィン)モル比を、1×10-5~0.8の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
また、プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)中のα-オレフィン含有量を特定の範囲内に維持するためには、後段のプロピレン濃度に対するα-オレフィン濃度を調整すればよい。
また、このようなプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体は、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものを用いることもできる。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)がプロピレン単独重合体である場合、プロピレン単独重合体の製造は、前記のプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体の製造方法のうち、プロピレン単独重合体部分(b1)の製造方法に準じて行えばよい。
本発明に用いられるプロピレン単独重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.05~5g/10分、好ましくは0.1~3g/10分、より好ましくは0.3~1g/10分である。
プロピレン単独重合体のMFRをこの様な範囲とするためには、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を、水素/プロピレンのモル比で1×10-3~0.2の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)がプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の場合、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体の製造方法においては、前記のプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体の製造方法のうち、プロピレン単独重合体部分(b1)の製造方法に準じて行えばよく、プロピレン単独重合体部分(b1)に、プロピレン以外のα-オレフィン、好ましくはα-オレフィンのエチレンと共重合させる方法が用いられる。
本発明に用いられるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.05~5g/10分、好ましくは0.1~3g/10分、より好ましくは0.3~1g/10分である。
プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体のMFRをこの様な範囲とするためには、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を、水素/(プロピレン+α-オレフィン)モル比を、1×10-5~0.8の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
本発明の熱成形シート用樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)の合計を100重量%とした場合、プロピレン系重合体(A)が3~100重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは30~70重量%であり、一方、プロピレン系重合体(B)は0~97重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは30~70重量%である。
プロピレン系重合体(B)が0重量%を超えると、成形体の光沢測定値が低くなり、好ましいが、一方、97重量%を超えると、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが大きくなりシートとヒーターとの接触するおそれや、シートの加熱が不十分で成形後の肉厚が不均一になるおそれがある。
本発明に用いられるエチレン系重合体(C)は、下記の要件(C-i)~(C-iii)を有する。
要件(C-i):190℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が5g/10分以下である。
要件(C-ii):密度が0.920~0.970g/cm3である。
要件(C-iii):高密度ポリエチレンである。
これらのエチレン系重合体(C)は、種々の製品が多くの会社から市販されているので、それらの中から所望の製品を購入し、使用することができる。
本発明に用いられるエチレン系重合体(C)は、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)(ただし、プロピレン系重合体(A)と(B)の合計を100重量%とする)の合計量100重量部に対して、エチレン系重合体(C)が10~300重量部、好ましくは20~100重量部、より好ましくは30~70重量部配合される。
エチレン系重合体(C)が10重量部未満であると、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが大きくなる。一方、300重量部を超えると、成形後の肉厚が不均一になる。
本発明の熱成形シート用樹脂組成物に任意に用いられるフィラー(D)は特に制限はなく、無機系フィラー及び有機系フィラーからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
無機系フィラーとしては、例えば、シリカ、ケイ藻土、バリウムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルンなどの酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイト、ベントナイトなどのケイ酸塩、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維などを挙げることができる。
一方、有機系フィラーとしては、例えば、モミ殻などの殻繊維、木粉、木綿、ジュート、紙細片、セロハン片、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、各種有機繊維、熱硬化性樹脂粉末などを挙げることができる。
本発明において用いられるフィラー(D)としては、本発明の効果を得られるものであれば、上記の無機系フィラー及び有機系フィラーからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができるが、剛性や寸法安定性をより向上させ得ると共に、経済性などの観点から、タルクを使用するのが好ましい。
平均粒径の測定は、レーザー回折法(具体的には、堀場製作所製LA920W及び同等の測定機器)によって測定した粒度累積分布曲線から読み取った累積量50重量%の粒径値より求めることができる。
これらのフィラー(D)は、ポリマー用フィラーとして種々の製品が多くの会社から市販されているので、それらの中から所望の製品を購入し、使用することができる。
本発明に用いられるフィラー(D)は、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)(ただし、プロピレン系重合体(A)と(B)の合計を100重量%とする)の合計量100重量部に対して、フィラー(D)が好ましくは1~100重量部、より好ましくは5~80重量部、更に好ましくは10~50重量部配合される。
フィラー(D)が1重量部未満であると、成形体の剛性の向上が十分に得られないおそれがある。一方、100重量部を超えると、成形後の耐衝撃性が低下するおそれがある。
本発明の熱成形シート用樹脂組成物においては、前記のプロピレン系重合体(A)~フィラー(D)以外に、さらに必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、例えば、発明の効果を一層向上させたり、他の効果を付与する等の目的のため、任意の添加成分を配合することができる。
これらの任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、組成物に添加してもよいし、プロピレン系重合体(A)などに添加されていてもよく、それぞれの成分においても、2種以上併用することもできる。
具体例として、無機系顔料としては、ファーネスカーボン、ケッチェンカーボンなどのカーボンブラック;酸化チタン;酸化鉄(ベンガラ等);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物などが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート;ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4-t-ブチルフェニルサリシレート;2,4-ジ-t-ブチルフェニル3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
ここで、前記光安定剤と紫外線吸収剤とを併用する方法は、耐候性、耐久性、耐候変色性などの向上効果が大きく好ましい。
また、帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の帯電防止性の付与、向上に有効である。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α-オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどを挙げることができる。
中でも、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)及び/又はエチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)を使用すると、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、適度の柔軟性などが付与し易く、耐衝撃性及び流動性などの性能がより優れ、経済性にも優れる傾向にあるなどの点から好ましい。
なお、エラストマーは、2種以上を併用することもできる。
本発明の熱成形シート用樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、プロピレン系重合体(B)、エチレン系重合体(C)と、必要に応じフィラー(D)および任意添加成分などを、前記配合割合で、従来公知の方法で混合および、または溶融混練することにより、製造することができる。
本発明の熱成形シートは、熱成形シート用樹脂組成物を公知の単軸又は二軸のスクリュー押出機に通して、コートハンダーダイからシート状に押出した後、(内部で冷却水や油が循環している)金属ロール表面に、エアーナイフ、エアーチャンバー、硬質ゴムロール、スチールベルト、金属ロールにて、押さえつけ冷却固化されることによって得ることができる。又、シート両面をスチールベルトで挟んで冷却固化することもできる。
本発明の成形体は、前記方法で製造された熱成形シートを、真空成形、真空圧空成形およびプラグアシスト真空圧空成形などの公知の熱成形法により、得ることができる。このような熱成形における加熱方法としては、間接加熱、熱板加熱、熱ロール加熱などが挙げられる。
本発明の熱成形シート用樹脂組成物は熱成形性、特に耐ドローダウン性と深絞り性に優れていることから、従来の技術では困難であった、より大型で肉厚が均一な成形体、例えば、大型の工業製品や食料品、日用品などの包装容器、梱包資材等に好適に利用できる。また、本発明の成形体は低光沢であるため、意匠性や高級感の求められる、例えば自動車や建設機械の内装や包装容器に好適にも利用できる。
れるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
(1)MFR(単位:g/10分)
プロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)のMFRについては、JIS-K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重(21.18N荷重)で測定した。
エチレン系重合体(C)のMFRについては、JIS-K6922-2に準拠し、190℃、2.16kg荷重(21.18N荷重)で測定した。
(株)東洋精機製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・ピストン押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラムである。
以下の方法を用いてCXSの値を得た。
2gの試料を300mLのp-キシレン(0.5mg/mLのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp-キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCを用いて、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’を求めた。具体的な測定方法、解析方法、算出方法は、上述の通りである。
Rheometorics社製Aresを用いて伸張粘度の測定を行い、その結果から歪硬化度(λmax)を求めた。具体的な測定方法、算出方法は、上述の通りである。
特開2017-031359号公報中に記載のクロス分別法とFT-IR法の組み合わせの手法により決定した。
エチレン系重合体(C)の密度については、JIS-K6922-1、2に準拠して測定した。
各実施例および各比較例の密度については、得られた各熱成形用シートから切り出した厚さ3.0mm、幅10mm、長さ80mmの試験片を用い、JIS-K7112に準拠し、測定雰囲気温度23℃で、浸せき液にエタノールを使用して測定した値(単位:g/cm3)を使用した。
各実施例および各比較例において得られた熱成形用シートから切り出した厚さ3.0mm、幅10mm、長さ80mmの試験片を用い、JIS K7171に準拠し、測定雰囲気温度23℃にて測定した。
各実施例および各比較例において得られた熱成形用シートから切り出した厚さ3.0mm、幅100mm、長さ100mmの試験片を用い、高速面衝撃試験器(株式会社島津製作所社製、HITS-10形)にて下記条件での高速面衝撃試験(ポンチでの貫通試験)を実施し、解析ソフト「HITS Data Viewer(Ver 1.70)」にて計算した貫通エネルギー(単位:J)を使用した。
試験温度:23℃
サポート直径:50.8mm
ポンチ直径:12.7mm
打撃速度:2.2m/秒
各実施例および各比較例において得られた熱成形用シートから切り出した厚さ3.0mm、幅300mm、長さ300mmの試験片を開口部が250mm×250mmの大きさの枠に水平に固定し、この固定されたシートを上下から500℃に加熱されたヒーターで加熱する。この状態において、熱成形シートには、垂れ量(垂れ長さ)と加熱時間との間に、図1のような現象がおきる。
最初に、加熱によってシートの中央部が垂れ下がる。次に、垂れ下がったシートが持ち上がり(戻り現象)、その後、再度垂れ下がりが起こり、今度は戻り現象は起こらない。熱成形では、最初に垂れ下り戻り現象が起きるまでに金型への賦形を行うと、樹脂の延展性が悪く、成形体が破けるおそれがある。このため、主に最初の垂れ下りの後、戻り現象が起きた以降に金型への賦形が行われる。
上述の最初に垂れ下がり戻り現象が起きるまでに加熱した時間を「垂下り時間」、その垂下り時間から0秒後、10秒後、20秒後のシートの垂れ量を各々の「垂下量」(mm)とした場合、加熱時間の最も長い「垂下り時間+20秒後」の垂下量が0mmに近いほど耐ドローダウン性に優れている事から、以下の基準で判定した。
◎:垂下り時間+20秒後の垂下量が-10mm以上。
○:垂下り時間+20秒後の垂下量が-20mm以上、-10mm未満。
△:垂下り時間+20秒後の垂下量が-30mm以上、-20mm未満。
×:垂下り時間+20秒後の垂下量が-30mm未満。
浅野研究所製真空圧空成形装置を用い、各実施例および各比較例において得られた熱成形シートを上下ヒーター温度500℃にて加熱し、垂下り時間+10秒後に開口部径87mmΦ、底部径70mmΦ、深さ100mm、傾き5°のカップ型容器を真空圧空成形した。その後、得られた成形体の肉厚を(株)ミツトヨ製マイクロメーターM800にて測定し、最小厚みが大きいほど偏肉が小さく深絞り性に優れている事から、以下の基準で判定した。
◎:最小厚み0.3mm以上。
○:最小厚み0.2mm以上で0.3mm未満。
×:最小厚み0.2mm未満。
熱成形シートの光沢については、各実施例および各比較例において得られた熱成形シートから切り出した厚さ3.0mm、幅100mm、長さ100mmの試験片を用いて、JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定した。
成形体の光沢については、以下の通り測定した。
浅野研究所製真空圧空成形装置を用い、各実施例および各比較例において得られた熱成形用シートを上下ヒーター温度500℃にて加熱し、垂下り時間+10秒後に高さ2.0mm、幅200mm、長さ200mmの正方形の凸型金型にて真空圧空成形した。得られた成形体の金型とは非接触側の面を、JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定し、以下の基準で判定した。
◎:成形体の60°光沢測定値が5°以下
○:成形体の60°光沢測定値が9°以下、5°より高い。
×:成形体の60°光沢測定値が9°より高い。
フィラー(D)の粒径は、レーザー回折式粒度分布測定機(株式会社堀場製作所製「LA920」)を用いて、JIS R1629に従って測定することにより得られた粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値から求めたメディアン径D50の値を使用した。
(1)プロピレン系重合体(A)
下記の製造例1で得られたプロピレン系重合体A1をプロピレン系重合体(A)として用いた。
<触媒成分[X-1]の合成>
ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[X-1])の合成):
(i)4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、4-i-プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4-ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に4-(4-i-プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO 200mlを加え、ここにN-ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p-トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2-ブロモ-4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、2-メチルフラン6.7g(82mmol)、DME100mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn-ブチルリチウム-n-ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。-70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2-ブロモ-4-(4-i-プロピルフェニル)インデン19.8g(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、テトラヒドロフラン(THF)200mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。ここに、1.66mol/Lのn-ブチルリチウム-ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。-70℃に冷却し、1-メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn-ブチルリチウム-n-ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン-ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についての1H-NMRによる同定値を以下に記す。
1H-NMR(C6D6)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[X-2]の合成):
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11-240909号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、実施した。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)400gを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーに蒸留水4,000gを加えた後に、ろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、別のセパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4Lを加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5~6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られたケーキ状固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
i)触媒調製及び予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記の触媒成分(Y)で得られた化学処理スメクタイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[X-1]の合成で得られたrac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(180μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[X-2]の合成で得られたrac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウム(120μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
上記の化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒60.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.00g/g-触媒であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。
これに水素6.8NL(0.61g)、トリイソブチルアルミニウム(0.12mol:濃度50g/Lのヘプタン溶液を0.47L)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。
2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、16.9kgの重合体PP-1を得た。触媒活性は7.0kg-PP/g-触媒であった。
上記の重合で得られたポリプロピレン重合体PP-1の100重量部に対し、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.05重量部、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.10重量部、ポリ{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944、BASFジャパン株式会社製)0.03重量部、ステアリン酸アミド0.09重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW-45MG-NH)を用いて220℃で溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化し、プロピレン系重合体A1を得た。得られたプロピレン系重合体A1を分析した結果を表1に示す。13C-NMR測定の結果、このプロピレン系重合体A1に長鎖分岐があることを確認した。また分岐指数g’が0.88であり、1よりも小さな値であることも、このプロピレン系重合体A1に長鎖分岐が存在することを示している。
以下のプロピレン系重合体B1~B3を用意した。これら樹脂の性状を表2にまとめた。(以下いずれも酸化防止剤、中和剤を添加済みのペレットである。)
B1:日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」の下記組成のグレードを用いた。
該材料は、チーグラー・ナッタ触媒で重合されたプロピレン単独重合体であり、MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.4g/10分である。
B2:日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」の下記組成のグレードを用いた。
該材料は、チーグラー・ナッタ触媒で重合されたプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体であり、α-オレフィンがエチレンである。共重合体全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5g/10分、プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)の含有率が7.7重量%、プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)のエチレン含量率が78.0重量%である。
B3:日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」の下記組成のグレードを用いた。
該材料は、チーグラー・ナッタ触媒で重合されたプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体であり、α-オレフィンがエチレンである。共重合体全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が2.4g/10分、プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)の含有率が26.7重量%、プロピレン・α-オレフィン共重合体部分(b2)のエチレン含量率が28.6重量%である。
以下の市販のエチレン系重合体C1~C3を用意した。これら樹脂の性状を表3にまとめた。
C1:ノバテックHB216R(日本ポリエチ(株)社製、高密度ポリエチレン)
C2:ノバテックHB420R(日本ポリエチ(株)社製、高密度ポリエチレン)
C3:ノバテックHY430(日本ポリエチ(株)社製、高密度ポリエチレン)
以下の市販のフィラーD1を用意した。樹脂の性状を表4にまとめた。
D1:林化成社製タルク、商品名「ミクロンホワイト5000SMA」(平均粒子径5μm)
[実施例1~8及び比較例1~6]
(1)混合および溶融混練
実施例1~7及び比較例1~6については、プロピレン系重合体(A)、プロピレン系重合体(B)およびエチレン系重合体(C)を、表5,6に示す割合で混合をしたものを樹脂ペレットとして使用した。
実施例8については、プロピレン系重合体(A)、プロピレン系重合体(B)、エチレン系重合体(C)およびフィラー(D)を、下記の添加剤とともに表5に示す割合で混合を行い、下記の条件で溶融混練し、樹脂ペレットを製造した。
添加剤 :プロピレン系重合体(A)、プロピレン系重合体(B)の合計100重量部に対し、
BASF社製IRGANOX1010を0.1重量部
BASF社製IRGAFOS168を0.05重量部
混練装置:テクノベル社製KZW25TW-45MG-NH
混練条件:温度230℃、スクリュー回転数400rpm
スクリュウ口径40mmの押出機に前記樹脂ペレットを投入し、樹脂温度230℃にて加熱溶融可塑化してT型ダイスより押出したシートを、表面温度が80℃に制御された鏡面仕上げの金属製キャストロ-ルにて挟み、冷却固化させながら0.6m/minの速度で連続的に引き取り、幅520mm、厚さ3.0mmの熱成形シートを得た。
得られた熱成形シートは、前記評価方法に示した要領で、それぞれの評価用試験片を成形し、性能評価を行った。結果を表5,6に示す。
一方、表6に示す結果から本発明の発明特定事項を満たさない比較例1~6は、これらの性能バランスが不良で見劣りしている。例えば、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(C)の両成分を含まない比較例1~2、5~6においては、耐ドローダウン性が不良であり、見劣りしている。また、プロピレン系重合体(A)を含まない比較例3~4においては、深絞り性が不良であり見劣りしている。さらに、プロピレン系重合体(A)とエチレン系重合体(C)、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)とエチレン系重合体(C)以外の組み合わせである、比較例1~5については、光沢が高く見劣りしている。
Claims (5)
- 下記の要件(A-i)~(A-v)を満たすプロピレン系重合体(A)3~100重量%、プロピレン系重合体(B)0~97重量%(ただし、プロピレン系重合体(A)と(B)の合計を100重量%とする)、及びプロピレン系重合体(A)と(B)との合計量100重量部に対して、下記の要件(C-i)~(C-iii)を満たすエチレン系重合体(C)10~300重量部を含有する熱成形シート用樹脂組成物からなるシートの熱成形体であることを特徴とする成形体。
要件(A-i):長鎖分岐を有する。
要件(A-ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3~30gである。
要件(A-iii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2~15g/10分である。
要件(A-iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン系重合体(A)全量に対し5重量%未満である。
要件(A-v):絶対分子量Mabs100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満である。
要件(C-i):190℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が5g/10分以下である。
要件(C-ii):密度が0.920~0.970g/cm3である。
要件(C-iii):高密度ポリエチレンである。 - プロピレン系重合体(B)が、下記要件(B-i)~(B-iii)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の成形体。
要件(B-i):長鎖分岐を有しない。
要件(B-ii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.05~10g/10分である。
要件(B-iii):プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン・α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系重合体である。 - 前記熱成形シート用樹脂組成物が、プロピレン系重合体(A)と(B)の合計量100重量部に対して、フィラー(D)1~100重量部を含有することを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の成形体。
- プロピレン系重合体(A)が、下記要件(A-vi)を満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成形体。
要件(A-vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5~15である。 - 60°光沢測定値が9°以下になることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の成形体。
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