JP6958033B2 - 多層シートおよびその成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、プロピレン系樹脂組成物から成る層と、ガスバリア性樹脂から成る層を積層した多層シート、および、当該多層シートを熱成形することにより得られる成形体に関し、さらに詳しくは、熱成形において、加熱された多層シートのドローダウンが小さく、得られた熱成形容器の肉厚の均一性に優れ、また、優れたガスのバリアー性を有する成形体に関する。
従来より、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いた容器が製造されている。熱可塑性樹脂の中でも、ポリプロピレンは、耐熱性、剛性、耐衝撃性、衛生面などに優れていることから、食品等の容器として好適に用いられている。
食品等の容器としては様々な形状があり、例えば容器の口径に対して内容物を収容する本体の深さが深い容器、いわゆる深絞り容器がある。これらは口径に比較し内容量を多くでき、また持ちやすいといった点で有効である。また、用途によっては内容物の腐敗劣化を抑制するため、容器にガスバリア性が求められる。
例えば特許文献1では、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を中間層としたポリプロピレン多層シートを真空圧空成形してなるガスバリア性成形容器が提案されている。
しかし、真空成形、および、真空圧空成形等のシートを溶融した状態で容器を成形する熱成形法は、シートを融点以上の温度まで再加熱して容器とする。このため、特許文献1に記載された多層シートを用いて、容器の深さ/口径比(以下、「深絞り比」と略記することがある。)が大きい深絞り容器を成形すると、得られた熱成形容器の肉厚が不均一となり、高いガスバリア性が得られない。
また、特許文献2では、固相圧空成形により深絞りした熱成形容器が提案されているが、固相圧空成形機は装置が高価であるため、一般的な真空成形機、および、真空圧空成形機で成形可能な材料(多層シート)が求められている。
特開2006−282259号公報 特開2012−046198号公報
本発明が解決しようとする課題は、従来の技術では解決困難であった熱成形における耐ドローダウン性と深絞り性を改善し、かつ、優れたガスのバリアー性を有する多層シート、および成形体(熱成形容器)を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定のプロピレン重合体(A)を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層と、ガスバリア性樹脂(C)から成る層を積層して得られる多層シート、およびこの多層シートを熱成形して得られる成形体が、上記の課題を解決できることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の要件(A−i)〜(A−iv)を満たすプロピレン系重合体(A)30〜70重量%と、下記の要件(B−i)〜(B−iii)を満たすプロピレン系重合体(B)30〜70重量%を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層と、ガスバリア性樹脂(C)から成る層を積層してなる多層シートであり、当該多層シートにおけるガスバリア性樹脂(C)から成る層の厚み比(ガスバリア層/当該多層シート全層)が、0.01以上0.2以下であることを特徴とする多層シートが提供される。
要件(A−i):長鎖分岐を有する。
要件(A−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜30gである。
要件(A−iii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2〜15g/10分である。
要件(A−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン系重合体(A)全量に対し5重量%未満である。
要件(B−i):長鎖分岐を有しない。
要件(B−ii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分である。
要件(B−iii):プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系重合体である。
本発明の第の発明によれば、ガスバリア性樹脂(C)が、エチレン−ビニルアルコール共重合体又はメタキシリレンアジパミド系ポリアミド樹脂から成ることを特徴とする第1の発明に記載の多層シートが提供される。
本発明の第の発明によれば、第1または第2の発明に記載の多層シートが熱成形されてなることを特徴とする成形体が提供される。
本発明の多層シートはガスバリア性を有し、熱成形性、特に耐ドローダウン性と深絞り性に優れていることから、優れたガスバリア性を有する深絞り容器が、従来の技術では困難であった一般的な熱成形機にて得られる。このため、固相圧空成形機のような高価で特別な設備を必要とせず、安価に優れた性能の成形体を安定的に製造する事が可能になる。
図1は、多層シートのドローダウン性について、垂れ量と加熱時間との関係を説明するグラフである。
本発明は、特定のプロピレン重合体(A)を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層と、ガスバリア性樹脂(C)から成る層を積層して得られる多層シート、および当該多層シートを熱成形することにより得られる成形体に関する。
以下、本願発明において用いられる各成分、得られるプロピレン系樹脂組成物およびその成形体について、詳細に説明する。
1.プロピレン系重合体(A)
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体あってもよい。プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である場合、コモノマーは、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、プロピレン系重合体(A)中のコモノマーの含量は、好ましくは3重量%以下である。本発明のプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体である方が、耐熱性や剛性が高く好ましい。
本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、下記の要件(A−i)〜(A−iv)を満たすものである。
要件(A−i):長鎖分岐を有する。
要件(A−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜30gである。
要件(A−iii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2〜15g/10分である。
要件(A−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン系重合体(A)全量に対し5重量%未満である。
この様なプロピレン系重合体(A)の中でも、下記の要件(A−v)を満たすものがより好ましく、さらに、下記の要件(A−vi)を満たすものが最も好ましい。
要件(A−v):絶対分子量Mabs100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満である。
要件(A−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜15である。
以下、順に詳説する。
要件(A−i):長鎖分岐
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、長鎖分岐を有するものである。長鎖分岐とは、主鎖炭素数が数十以上、分子量では数百以上からなる分子鎖による分岐構造を言い、1−ブテンなどのα−オレフィンと共重合を行うことにより形成される炭素数が数個の短鎖分岐とは区別される。
ポリプロピレン中に長鎖分岐があるかどうかを調べる方法は、幾つかあるが、要件(A−ii)(A−vi)に示す様な樹脂のレオロジー特性によるものが簡便に用いられる。より厳密な同定方法としては、要件(A−v)に示す様に、分子量と粘度との関係を用いる方法や、13C−NMRを用いる方法などがある。後者については、特開2009−275207号公報やMacromol.Chem.Phys.2003,vol.204,1738に詳細な説明があるので、参照されたい。
要件(A−ii):溶融張力(MT)
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)の溶融張力(MT)は、以下の条件で測定した値とする。
[MT測定条件]
測定装置:(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B
キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
シリンダー径:9.55mm
ピストン押出速度:20mm/分
引き取り速度:4.0m/分(但し、MTが高すぎて樹脂が破断してしまう場合には、引き取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度で測定する。)
温度:230℃
溶融張力(MT)は、ポリプロピレンの成形加工において基本的な因子である。そのため、本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)の溶融張力(MT)は、3〜30g、好ましくは10〜25g、より好ましくは15〜20gである。溶融張力(MT)が3g未満であると、熱成形において耐ドローダウン性が低下し、加熱されたシートのドローダウンが大きくなりシートとヒーターとの接触するおそれや、シートの加熱が不十分で成形後の肉厚が不均一になるおそれがある。一方、30gを超えると、熱成形時の深絞り性が低下して成形後の肉厚が不均一になるおそれがある。
溶融張力(MT)を上記の範囲に制御する具体的な手法としては、触媒製造法(特に錯体の担持比率)を調整することで、長鎖分岐の数を変える方法や、要件(A−iii)の範囲内でMFRを調整する方法がある。長鎖分岐の数を増やしたり、MFRを低くしたりすると、MTは高くなる。一方、MTを低くするには、逆方向に調整すればよい。
要件(A−iii):メルトフローレート(MFR)
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(以下MFRと略記することがある)(230℃、2.16kg荷重)は、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)およびメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。
MFRは、ポリプロピレンの成形加工において最も基本的な因子である。そのため、本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)のMFRは、通常0.2〜15g/10分、好ましくは0.4〜10g/10分、より好ましくは、0.6〜5g/10分である。MFRが0.2g/10分未満であると、成形時の深絞り性が低下して成形後の肉厚が不均一になるおそれがある。一方、15g/10分を超えると、熱成形において耐ドローダウン性が低下し、加熱されたシートのドローダウンが大きくなりシートとヒーターとの接触するおそれや、シートの加熱が不十分で成形後の肉厚が不均一になるおそれがある。
MFRを上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。水素は、プロピレンの重合において、連鎖移動剤として作用するため、水素の添加量を増やせば、MFRが上がり、逆に、添加量を下げれば、MFRを下げることができる。重合槽内部の水素濃度に対するMFRの値は、使用する触媒や他の重合条件によって異なるが、触媒種やその他の重合条件に応じて事前に水素濃度とMFRの関係を把握し、望みのMFRの値となるよう水素濃度を調整する方法は、当業者にとって極めて容易なことである。
要件(A−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)の25℃キシレン可溶成分量(CXS)は、5重量%未満である(但し、プロピレン系重合体(A)全量を100重量%とする)。本発明におけるCXSは、以下の手順で測定した値である。
[CXS測定手順]
2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
CXSは、低結晶性のポリマー成分の含量を表す一般的な指標であり、この値を所定値未満に設定することにより、プロピレン系重合体(A)中の低結晶性成分の含量が高いことに起因した成形時や製品自体の問題が生じるのを抑制することができる。例えば、シート成形時に目やにや発煙の問題が生じたり、シートや成形体の表面がべたついたりする問題が生じたりするのを抑制することができる。本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、CXSが5重量%未満である。CXSは、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.5重量%未満であることが望ましい。CXSの下限値については、特に制限はないが、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上あると、添加剤の効果が発現し易くなる。
CXSを上記の範囲に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンのCXSを決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中から、低CXSの要件を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は後述する。
要件(A−v):分岐指数g’
本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、要件(A−i)〜(A−iv)を満たすものであるが、更に、以下の要件(A−v)を満たすことが好ましい。
要件(A−v):絶対分子量Mabs100万における分岐指数g’が0.3以上、1.0未満である。
分岐指数g’は、長鎖分岐に関する、より直接的な指標として知られている。「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に詳細な説明があるが、分岐指数g’の定義は、以下の通りである。
分岐指数g’=[η]br/[η]lin
[η]br:長鎖分岐構造を有するポリマー(br)の固有粘度
[η]lin:ポリマー(br)と同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度
上記定義から明らかな通り、長鎖分岐構造が存在すると、分岐指数g’は、1よりも小さな値を取り、長鎖分岐構造が増えるほど分岐指数g’の値は、小さくなっていく。ポリプロピレンは、一般に分子量分布を有しているため、かなり分子量の大きい成分に長鎖分岐構造が存在すれば、効率よく絡み合いを促進し、熱成形時の深絞り性を改善させることに寄与することができる。故に、本発明におけるプロピレン系重合体(A)のうち、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’の値が特定の範囲に入っているものが特に好ましい。
絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’の値を知るためには、絶対分子量Mabsの関数として分岐指数g’の値を得なくてはならない。この点については、本発明においては、以下の測定方法、解析方法、算出方法を用いるものとする。
[測定方法]
GPC:Alliance GPCV2000(Waters社製)
検出器:接続順に記載
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS):DAWN−E(Wyatt Technology社製)
示差屈折計(RI):GPC付属
粘度検出器(Viscometer):GPC付属
移動相溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン(Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)
移動相流量:1mL/分
カラム:東ソー社製GMHHR−H(S) HTを2本連結
試料注入部温度:140℃
カラム温度:140℃
検出器温度:全て140℃
試料濃度:1mg/mL
注入量(サンプルループ容量):0.2175mL
[解析方法]
多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)から得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)、および粘度検出器(Viscometer)から得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
[分岐指数g’の算出方法]
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標) グレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は、分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であり、[η]linは、低分子量側や高分子量側に、適宜外挿して数値を得ることとする。
本発明において、プロピレン系重合体(A)は、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’の値が0.3以上、1.0未満であることが好ましい。より好ましくは0.55以上、0.98以下、更に好ましくは0.75以上、0.96以下、最も好ましくは0.78以上、0.95以下である。
分岐指数g’が上記の範囲内にあると、混練を繰り返した際の溶融張力の低下度合いが小さくなるため、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが小さくなり好ましい。
分岐指数g’を上記の範囲内に調整する具体的な方法として、触媒の選定を挙げることができる。長鎖分岐を有するポリプロピレンの分岐指数g’を決定する最も重要な因子は、触媒であり、公知の触媒の中から分岐指数g’の要件を満たすものを選定すればよい。触媒の具体例は、後述する。
要件(A−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)
本発明において、プロピレン系重合体(A)は、前記の要件(A−i)〜(A−iv)を満たすものであり、要件(A−v)を満たすことが好ましいが、加えて、以下の要件(A−vi)を満たすことがより好ましい。
要件(A−vi):伸張粘度の測定における歪硬化度(λmax)が5〜15である。
本発明における歪硬化度(λmax)の算出においては、以下の条件で測定した伸張粘度の値を使用する。
装置:Rheometorics社製Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製Extentional Viscosity Fixture
測定温度:180℃
歪み速度:0.1/sec
試験片の作成方法:プレス成型
試験片の形状:18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシート
次に、得られた伸張粘度の値から、歪硬化度(λmax)を算出する方法を説明する。
まず、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・秒)を両対数グラフでプロットし、その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法を用いる。
伸張粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり、次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には、一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸張粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは、低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸張粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めて、その点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηEの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(0.1)と定義する。
歪硬化度(λmax)も、熱成形に重要な因子と認識されている。
本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、歪硬化度(λmax)が5〜15であることが好ましい。より好ましくは、歪硬化度(λmax)が6〜14.5であり、更に好ましくは、7〜14である。本発明におけるプロピレン系重合体(A)のうち、歪硬化度(λmax)の値がこの範囲内にあるものは、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが小さく、かつ、成形体の肉厚が均一になり一層好ましい。
歪硬化度(λmax)を上記の範囲に制御する具体的な手法としては、触媒製造法(特に錯体の担持比率)を調整することで長鎖分岐の数を変える方法や、要件(A−iii)の範囲内でMFRを調整する方法がある。長鎖分岐の数を増やしたり、MFRを低くしたりすると、歪硬化度(λmax)は高くなる。歪硬化度(λmax)を低くするには、逆方向に調整すればよい。
II.プロピレン系重合体(A)の製造方法
本発明におけるプロピレン系重合体(A)は、上記した(A−i)〜(A−iv)の要件を満たす限り、特に製造方法を限定するものではないが、前述のように、高い立体規則性、低い低結晶性成分量、比較的広い分子量分布、分岐指数g’の範囲、高い溶融張力等の全ての条件を満足するための好ましい製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いる方法である。このような方法の例としては、例えば、特開2009−57542号公報に開示される方法が挙げられる。
この手法は、マクロマー生成能力を有する特定の構造の触媒成分と、高分子量でマクロマー共重合能力を有する特定の構造の触媒成分とを組み合わせた触媒を用いて、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを製造する方法であり、これによれば、バルク重合や気相重合といった工業的に有効な方法で、特に実用的な圧力温度条件下の単段重合で、しかも、分子量調整剤である水素を用いて、目的とする物性を有する長鎖分岐構造を有するポリプロピレンの製造が可能である。
また、従来は、立体規則性の低いポリプロピレン成分を使用して結晶性を落とすことによって、分岐生成効率を高めなければならなかったが、上記の方法では、充分に立体規則性の高いポリプロピレン成分を、側鎖に簡便な方法で、導入することが可能であり、本発明に用いるプロピレン系重合体(A)として好ましい、高い立体規則性と低い低結晶性成分量に係る(A−iv)及び(A−v)の要件を満足するのに好適である。
また、上記手法を用いれば、重合特性の大きく異なる二種の触媒を使用することで、分子量分布を広くでき、本発明に用いる長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体(A)に必要な(A−i)〜(A−iii)の要件を同時に満たすことが可能であり、好ましい。
以下、この方法をプロピレン系重合体(A)の製造方法の具体例として選び、詳細に説明する。
II−1.触媒
下記の触媒成分(X)、(Y)および(Z)からなる触媒を用いることが好ましい。
触媒成分(X):下記一般式(x1)で表される化合物である成分[X−1]から少なくとも1種類、および下記一般式(x2)で表される化合物である成分[X−2]から少なくとも1種類を選んだ2種以上の周期表4族の遷移金属化合物。
成分[X−1]:一般式(x1)で表される化合物
成分[X−2]:一般式(x2)で表される化合物
触媒成分(Y):イオン交換性層状珪酸塩
触媒成分(Z):有機アルミニウム化合物
以下、触媒成分(X)、(Y)および(Z)について、詳細に説明する。
(1)触媒成分(X)
(i)成分[X−1]:一般式(x1)で表される化合物
Figure 0006958033
[一般式(x1)中、各々R11およびR12は、独立して、炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基を表す。各々R13およびR14は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン若しくはこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基、または炭素数6〜16の窒素、酸素若しくは硫黄を含有する複素環基を表す。各々X11およびY11は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、または炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を表す。Q11は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基を表す。]
上記R11およびR12の、炭素数4〜16の窒素、酸素または硫黄を含有する複素環基としては、好ましくは2−フリル基、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基であり、より好ましくは、置換された2−フリル基である。
また、置換された2−フリル基、置換された2−チエニル基、置換された2−フルフリル基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、トリメチルシリル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
さらに、R11およびR12として、特に好ましくは、2−(5−メチル)−フリル基である。また、R11およびR12は、互いに同一である場合が好ましい。
上記R13およびR14の、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン、又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基としては、炭素数6〜16になる範囲で、アリール環状骨格上に、1つ以上の、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜6のハロゲン含有炭化水素基等を置換基として有していてもよい。
13およびR14としては、好ましくは、少なくとも1つが、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、4−フェニル−フェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、より好ましくはフェニル基、4−i−プロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−トリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基である。また、R13およびR14が互いに同一である場合が好ましい。
一般式(x1)中、X11およびY11は、補助配位子であり、触媒成分(Y)と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X11およびY11は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、または炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
一般式(x1)中、Q11は、二つの共役五員環を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基の何れかを示す。上述のシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基がより好ましい。
上記一般式(x1)で表される化合物のうち、好ましい化合物として、以下に具体的に例示する。
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、更に好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。また、さらに好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム、である。
(ii)成分[X−2]:一般式(x2)で表される化合物
Figure 0006958033
[一般式(x2)中、各々R21およびR22は、独立して、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。各々R23およびR24は、独立して、ハロゲン、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リン又はこれらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよい炭素数6〜16のアリール基である。X21およびY21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基を表し、Q21は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基を表す。M21は、ジルコニウムまたはハフニウムである。]
上記R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の炭化水素基であり、好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピルである。
上記R23およびR24は、それぞれ独立して、炭素数6〜16の、好ましくは炭素数6〜12の、ハロゲン、ケイ素、あるいは、これらから選択される複数のヘテロ元素を含有してもよいアリール基である。好ましい例としてはフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−i−プロピルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)、4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)、1−ナフチル、2−ナフチル、4−クロロ−2−ナフチル、3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジメチル−4−t−ブチルフェニル、3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル、3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル等が挙げられる。
上記X21およびY21は、補助配位子であり、触媒成分(Y)と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。したがって、この目的が達成される限り、X21およびY21は、配位子の種類が制限されるものではなく、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、トリフルオロメタンスルホン酸基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基を示す。
上記Q21は、二つの共役五員環を架橋する結合性基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基若しくはゲルミレン基を示す。シリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。好ましくは置換シリレン基あるいは置換ゲルミレン基である。ケイ素、ゲルマニウムに結合する置換基は、炭素数1〜12の炭化水素基が好ましく、二つの置換基が連結していてもよい。
21の具体的な例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エチレン−1,2−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、9−シラフルオレン−9,9−ジイル、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレン、メチルフェニルゲルミレン等が挙げられる。
さらに、上記M21は、ジルコニウムまたはハフニウムであり、好ましくはハフニウムである。
上記一般式(x2)で表されるメタロセン化合物の非限定的な例として下記のものを挙げることが出来る。
ただし、以下は煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載しており、本発明はこれら化合物に限定し解釈されるものではなく、種々の配位子や架橋結合基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは自明である。
また中心金属がハフニウムの化合物を記載したが、ジルコニウムに代替した化合物も同様に本願明細書に開示されたものとして取り扱われる。
ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)}ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(1−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−クロロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(9−フェナントリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−n−プロピル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、などを挙げることができる。
これらのうち、より好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3−クロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−クロロ−2−ナフチル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
また、さらに好ましいのは、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(3−メチル−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、ジクロロ[1,1’−(9−シラフルオレン−9,9−ジイル)ビス{2−エチル−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム、である。
(2)触媒成分(Y)
プロピレン系重合体(A)を製造するのに好ましく使用される触媒成分(Y)は、イオン交換性層状珪酸塩である。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の種類
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある。)とは、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、触媒成分(Y)に含まれる。
本発明で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよく、また、それらを含んでもよい。
珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
すなわち、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等である。
珪酸塩は、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。層間カチオンの種類は、特に限定されないが、工業原料として比較的容易に且つ安価に入手し得る観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を層間カチオンの主成分とする珪酸塩が好ましい。
(ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
本発明において、触媒成分(Y)のイオン交換性層状珪酸塩は、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。ここでイオン交換性層状珪酸塩の化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と粘土の構造に影響を与える処理のいずれをも用いることができ、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
<酸処理>:
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。
処理に用いる塩類(次項で説明する)および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸の濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は、室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
なお、以下の酸類、塩類を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら酸類、塩類の組み合わせであってもよい。
<塩類処理>:
塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な金属陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
このようなイオン交換を目的とした塩類処理で用いられる塩類は、有機陽イオン、無機陽イオンおよび金属イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陽イオンと、有機陰イオン及び無機陰イオンからなる群から選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから構成される塩類が、例示される。例えば、周期表第1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン陰イオン、並びに、無機酸および有機酸由来の陰イオンから成る群より選ばれた少なくとも一種の陰イオンとから成る化合物が好ましい例として挙げられる。ここで、酸由来の陰イオンとは、酸から少なくとも1個の水素陽イオンが脱離した陰イオンのことである。例えば、HNOの様な1価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、NO であり、HPOの様な3価の無機酸の場合には、その酸由来の陰イオンは、HPO 、HPO 2−、PO 3−、の3種類が存在する。有機酸由来の陰イオンの場合も同様である。更に好ましくは、陽イオンが金属イオン、陰イオンが無機酸由来の陰イオンやハロゲン陰イオンとから成る化合物である。
このような塩類の具体例としては、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、Li(CHCOO)、LiCO、LiHCO、Li、LiClO、LiPO、CaCl、CaSO、CaC、Ca(NO、MgCl、MgBr、MgSO、Mg(PO、Mg(ClO、MgC、Mg(NO、Mg(CHCOO)等が挙げられる。
また、Ti(CHCOO)、Ti(CO、Ti(NO、Ti(SO、TiF、TiCl、Zr(CHCOO)、Zr(CO、Zr(NO、Zr(SO、ZrF、ZrCl、Hf(CHCOO)、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfF、HfCl、V(CHCOCHCOCH、VOCl、VCl、VCl、VBr等が、挙げられる。
また、Cr(CHCOCHCOCH、Cr(NO、Cr(ClO、CrPO、Cr(SO、CrF、CrCl、CrBr、CrI、Mn(CHCOO)、Mn(CHCOCHCOCH、MnCO、Mn(NO、MnO、Mn(ClO、MnF、MnCl、Fe(CHCOO)、Fe(CHCOCHCOCH、FeCO、Fe(NO、Fe(ClO、FePO、FeSO、Fe(SO、FeF、FeCl等が、挙げられる。
また、Co(CHCOO)、Co(CHCOCHCOCH、CoCO、Co(NO、CoC、Co(ClO、Co(PO、CoSO、CoF、CoCl、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等が、挙げられる。
さらに、Zn(CHCOO)、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、AlF、AlCl、AlBr、AlI、Al(SO、Al(C、Al(CHCOCHCOCH、Al(NO、AlPO、GeCl、GeBr、GeI等が、挙げられる。
<アルカリ処理>:
酸、塩処理の他に、必要に応じて下記のアルカリ処理や有機物処理を行ってもよい。アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)などが例示される。
<有機物処理>:
また、有機物処理に用いられる有機処理剤の例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
また、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの処理剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について、組み合わせて用いてもよい。また化学処理は、同一または異なる処理剤を用いて複数回行うことも可能である。
これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常、吸着水および層間水が含まれる。これらの吸着水および層間水を除去して触媒成分(Y)として使用するのが好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の触媒成分(Y)の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、であることが好ましい。
以上のように、触媒成分(Y)として、特に好ましいものは、塩類処理および/または酸処理を行って得られた、水分含有率が3重量%以下の、イオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する有機アルミニウム化合物の触媒成分(Z)で処理を行うことが可能で、好ましい。イオン交換性層状珪酸塩1gに対する触媒成分(Z)の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能で、好ましい。溶媒は、後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同様の炭化水素溶媒を使用する。
また、触媒成分(Y)は、平均粒径が5μm以上の球状粒子を用いるのが好ましい。粒子の形状が球状であれば、天然物あるいは市販品をそのまま使用してもよいし、造粒、分粒、分別等により粒子の形状および粒径を制御したものを用いてもよい。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダ−を用いてもよい。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
(3)触媒成分(Z)
触媒成分(Z)は、有機アルミニウム化合物である。触媒成分(Z)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR31 3−qで示される化合物が適当である。この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができる。この式中、R31は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは1〜3の、pは1〜2の整数を各々表す。R31としては、アルキル基が好ましく、またZは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、p=1、q=3のトリアルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R31が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
(4)触媒の形成・予備重合について
触媒は、上記の各触媒成分(X)〜(Z)を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃から150℃の間で行うのが好ましい。接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させる前に、触媒成分(X)と、あるいは触媒成分(Y)と、または触媒成分(X)および触媒成分(Y)の両方に触媒成分(Z)を接触させること、または、触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させるのと同時に触媒成分(Z)を接触させること、または、触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させた後に触媒成分(Z)を接触させることが可能であるが、好ましくは、触媒成分(X)と触媒成分(Y)を接触させる前に、触媒成分(Z)をいずれかに接触させる方法である。
また、各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
触媒成分(X)、(Y)および(Z)の使用量は任意である。例えば、触媒成分(Y)に対する触媒成分(X)の使用量は、触媒成分(Y)1gに対し、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。また触媒成分(X)に対する触媒成分(Z)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×106、特に好ましくは0.1〜1×10、の範囲内が好ましい。
本発明で使用する前記成分[X−1](一般式(x1)で表される化合物)と前記成分[X−2](一般式(x2)で表される化合物)の割合は、プロピレン系重合体の前記要件を満たす範囲において任意であるが、各成分[X−1]と[X−2]の合計量に対する[X−1]の遷移金属のモル比で、好ましくは0.30以上、0.99以下である。
この割合を変化させることで、溶融物性と触媒活性のバランスを調整することが可能である。つまり、成分[X−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[X−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。したがって、成分[X−1]の割合を変化させることで、生成する重合体の平均分子量、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
より高い歪硬化のプロピレン系重合体を製造するために、[X−1]の遷移金属のモル比0.30以上が必要であり、好ましくは0.40以上であり、更に好ましくは0.5以上である。また、上限に関しては0.99以下であり、高い触媒活性で効率的にプロピレン系重合体(A)を得るためには、好ましくは0.95以下であり、更に好ましくは0.90以下の範囲である。
また、上記範囲で成分[X−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
本発明において、触媒は、これにオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付される。予備重合処理を行うことにより、本重合を行った際に、ゲルの生成を防止できる。その理由としては、本重合を行った際の重合体粒子間で長鎖分岐が均一に分布させることができるためと考えられ、また、そのことにより溶融物性を向上することができる。
予備重合時に使用するオレフィンは、特に限定はないが、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができる。オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が触媒成分(Y)100に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。また、予備重合時に触媒成分(Z)を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
また、上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
II−2.重合方法
(1)触媒の使用/プロピレン重合について
重合様式は、前記触媒成分(X)、触媒成分(Y)および触媒成分(Z)を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー重合法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク重合法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
スラリー重合法の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
また、重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合法を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は80℃以下が好ましく、更に好ましくは75℃以下である。
さらに、気相重合法を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
重合圧力は、1.0MPa以上5.0MPa以下であることが好ましい。特に、バルク重合法を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは2.0MPa以上である。また上限は4.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは3.5MPa以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.5MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.7MPa以上である。また上限は2.5MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.3MPa以下である。
さらに、分子量調節剤として、また活性向上効果のために、補助的に水素をプロピレンに対してモル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、MFR、歪硬化度、溶融張力MT、溶融延展性といった、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンを特徴付ける溶融物性を制御することができる。
そこで水素は、プロピレンに対するモル比で、1.0×10−6以上で用いるのがよく、好ましくは1.0×10−5以上であり、さらに好ましくは1.0×10−4以上用いるのがよい。また上限に関しては、1.0×10−2以下で用いるのがよく、好ましくは0.9×10−2以下であり、更に好ましくは0.8×10−2以下である。
また、プロピレンモノマー以外に、用途に応じて、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンコモノマー、例えば、エチレンおよび/又は1−ブテンをコモノマーとして使用する共重合をおこなってもよい。
そこで、本発明に用いるプロピレン系重合体(A)として、触媒活性と溶融物性のバランスのよいものを得るためには、エチレンおよび/又は1−ブテンを、プロピレンに対して15モル%以下で使用することが好ましく、より好ましくは10.0モル%以下であり、更に好ましくは7.0モル%以下である。
ここで例示した触媒、重合法を用いてプロピレンを重合すると、触媒成分[X−1]由来の活性種から、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応により、ポリマー片末端が主としてプロペニル構造を示し、所謂マクロマーが生成する。このマクロマーは、より高分子量を生成することができ、より共重合性がよい触媒成分[X−2]由来の活性種に取り込まれ、マクロマー共重合が進行すると考えられる。したがって、生成する長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂の分岐構造としては、櫛型鎖が主であると、考えられる。
2.プロピレン系重合体(B)
本発明の多層シートに用いられるプロピレン系樹脂組成物は、好ましくは上記した長鎖分岐構造を有するプロピレン系重合体(A)とともにプロピレン系重合体(B)が配合される。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)は、下記要件(B−i)〜(B−iii)を満たすことが好ましい。
要件(B−i):長鎖分岐を有しない。
要件(B−ii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2〜10g/10分である。
要件(B−iii):プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系重合体である。
また、本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)として、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を使用する場合、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、1−オクテン等を挙げることができる。これらは、1種を用いて共重合してもよく、また、2種以上を組み合わせて共重合してもよい。中でも、成形体の耐衝撃強度の向上という観点からは、その効果が大きいエチレン又は1−ブテンであるのが好ましく、最も好ましいのはエチレンである。
プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、好ましくはプロピレン単位を90〜99.5重量%、さらに好ましくは92〜99重量%、エチレン単位を好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜8重量%含んでなるものである。エチレン単位が0.5重量%未満であると、成形体の耐衝撃強度が十分に得られない場合がある。また、10重量%を超えると、剛性などが低下するおそれがある。
プロピレンとエチレンのランダム共重合体におけるプロピレン単位とエチレン単位の含量は、プロピレンとエチレンのランダム共重合体の重合時のプロピレンとエチレンの組成比を、制御することにより、調整することができる。
また、プロピレンとエチレンのランダム共重合体のプロピレン含量は、クロス分別装置やFT−IR等を用いて測定される値であり、その測定条件等は、例えば、特開2008−189893号公報に記載されている方法を使用すればよい。
また、本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)としてプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を使用する場合、用いられるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分(b1)とプロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)とからなるが、ここで用いられるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、通常は逐次重合して得られる。
プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体におけるプロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)の含量は、通常3〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは7〜40重量%である。プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)の含有量が3%未満であると、成形体の耐衝撃強度が十分に得られない場合がある。また、60重量%を超えると、剛性などが低下するおそれがある。
プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)に使用されるα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、1−オクテン等を挙げることができる。これらは1種を用いて共重合してもよく、また、2種以上を組み合わせて共重合してもよい。中でも、成形体の耐衝撃強度の向上という観点からは、その効果が大きいエチレン又は1−ブテンであるのが好ましく、最も好ましいのはエチレンである。
プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)のα−オレフィン含量は、通常10〜100重量%、好ましくは15〜90重量%、20〜80重量%がさらに好ましい。該含有量が上記範囲外であると、成形体の耐衝撃強度が十分に得られない場合がある。
プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)のプロピレン含量は、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)の重合時のα−オレフィンとプロピレンの組成比を制御することにより、調整することができる。
また、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)の含有率やプロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)のα−オレフィン含量率は、従来公知のIRやNMR、あるいは溶解度分別法とIR法を組み合わせた分析手法等によって、決定することができ、その分析条件等は、例えば、特開2017−031359号公報に記載されている方法を使用すればよい。
なお、プロピレン単独重合体と、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分(b1)については、以下の(B−ii)MFRの部分で説明する。
要件(B−i):長鎖分岐
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)は、前記プロピレン系重合体(A)のような化学結合による長鎖分岐構造は、分析可能な精度では存在が認められない。前記プロピレン系重合体(A)にプロピレン系重合体(B)を配合した場合、成形体の光沢測定値が低くなり、好ましい。
(B−ii)メルトフローレート(MFR):
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.05〜10g/10分、好ましくは0.1〜3g/10分、より好ましくは0.3〜1g/10分である。MFRが0.05g/10分未満であると、溶融流動性が低下するため、押出し機にてシート状に成形する際に押出し機への負荷が増加し、生産性が低下するおそれがある。また、10g/10分を超えると、熱成形において加熱されたシートのドローダウンが大きくなり、シートとヒーターとの接触するおそれがあり、好ましくない。
プロピレン系重合体(B)がプロピレン単独重合体、および、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の場合は、重合時の水素濃度等を制御することにより、MFRを調整することができる。また、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体においては、MFRは、プロピレン単独重合体部分(b1)のMFRとプロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)のMFRとのバランスにより調整、決定されるので、プロピレン単独重合体部分(b1)を製造する際の水素濃度などを制御することで、調整することができる。
なお、MFRの測定法は、前述のプロピレン系重合体(A)における測定方法と同じである。
(2)プロピレン系重合体(B)の製造方法
以下、本発明の多層シート用樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体(B)の製造方法について説明する。先ず、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の製造方法について説明する。
(i)プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の製造方法
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)がプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分(b1)とプロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体部分(b1)の重合(前段)と、この後に続く、プロピレン・α−オレフィン共重合体(b2)の重合(後段)の製造工程により得られる。
上記重合に用いられる触媒としては、高立体規則性触媒であれば特に限定されるものではなく、前記したように、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒(例えば、ポリプロピレンハンドブック(1998年5月15日初版第1刷発行)等に記載)、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報参照。)が使用できる。
チーグラー・ナッタ触媒には、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば、特開昭47−34478号公報、特開昭58−23806号公報、特開昭63−146906号公報参照。)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58−157808号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭58−5310号公報、特開昭61−218606号公報参照。)等が含まれる。
また、助触媒として使用される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
重合形式としては前記の通りであるが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエン等の不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、いずれの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。例えば、プロピレン単独重合体部分(b1)をバルク重合で行い、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)を気相重合で行う方法や、プロピレン単独重合体部分(b1)をバルク重合、続いて気相重合で行い、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)は、気相重合で行う方法などが挙げられる。
また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよく、所望により、二段及び三段等の複数段の連続重合法を用いてもよい。
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
気相重合においては、プロピレン単独重合体部分(b1)の重合工程は、プロピレン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に、温度0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレンの分圧0.6〜4.2MPa、好ましくは1.0〜3.5MPa、特に好ましくは1.5〜3.0MPa、滞留時間は0.5〜10時間で行う。プロピレン単独重合体部分(b1)には、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン以外のα−オレフィン、例えばα−オレフィンがエチレンの場合は0.5重量%未満のエチレンが共重合されていても構わない。
本発明に用いられるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分(b1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、通常0.1〜50g/10分の範囲である。プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分(b1)をこの様な範囲とするためには、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を、水素/プロピレンのモル比で5×10−3〜0.2の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を製造する際は、引き続いて、即ち前段重合工程で製造されたプロピレン単独重合体部分(b1)の存在下、後段重合工程で、プロピレン、α−オレフィンと水素を供給して、前記触媒(前記プロピレン単独重合体部分(b1)の製造に使用した当該触媒)の存在下に0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレン及びα−オレフィンの分圧各0.1〜2.0MPa、好ましくは0.1〜1.5MPa、滞留時間は0.5〜10時間の条件で、プロピレンとα−オレフィンの共重合を行い、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)を製造し、最終的な生成物として、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を得る。
プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレンと2種類以上のα−オレフィンが共重合されていても構わない。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)がプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のMFRは、0.05〜5g/10分、好ましくは0.1〜3g/10分、より好ましくは0.3〜1g/10分である。
前記のように、プロピレン単独重合体部分(b1)のMFRは、通常、0.1〜50g/10分の範囲なので、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合のMFRを、この範囲とするためには、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、1×10−4〜10g/10分とするのが好ましい。
プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)のMFRを1×10−4〜10g/10分にコントロールする場合、触媒の種類にもよるが、水素/(プロピレン+α−オレフィン)モル比を、1×10−5〜0.8の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
また、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)中のα−オレフィン含有量を特定の範囲内に維持するためには、後段のプロピレン濃度に対するα−オレフィン濃度を調整すればよい。
さらに、ゲル発生やベタツキを抑えるために、プロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)の反応中あるいは反応前に、エタノールなどのアルコール類を添加することが望ましい。具体的には、アルコール類/有機アルミニウム化合物の比で、0.5〜3.0モル比の条件で行うことができる。また、このアルコール類の添加量で、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のプロピレン・α−オレフィン共重合体部分(b2)の割合も、コントロールすることができる。
また、このようなプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものを用いることもできる。
(ii)プロピレン単独重合体の製造方法
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)がプロピレン単独重合体である場合、プロピレン単独重合体の製造は、前記のプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の製造方法のうち、プロピレン単独重合体部分(b1)の製造方法に準じて行えばよい。
本発明に用いられるプロピレン単独重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.05〜5g/10分、好ましくは0.1〜3g/10分、より好ましくは0.3〜1g/10分である。
プロピレン単独重合体のMFRをこの様な範囲とするためには、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を、水素/プロピレンのモル比で1×10−3〜0.2の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
(iii)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の製造方法
本発明に用いられるプロピレン系重合体(B)がプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の場合、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の製造方法においては、前記のプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の製造方法のうち、プロピレン単独重合体部分(b1)の製造方法に準じて行えばよく、プロピレン単独重合体部分(b1)に、プロピレン以外のα−オレフィン、好ましくはα−オレフィンのエチレンと共重合させる方法が用いられる。
本発明に用いられるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.05〜5g/10分、好ましくは0.1〜3g/10分、より好ましくは0.3〜1g/10分である。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体のMFRをこの様な範囲とするためには、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を、水素/(プロピレン+α−オレフィン)モル比を、1×10−5〜0.8の範囲で行うことにより、所望のMFRに調節することが可能である。
(3)プロピレン系重合体(B)の配合割合
本発明の多層シートに用いられるプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)とプロピレン系重合体(B)の合計を100重量%とした場合、プロピレン系重合体(A)が3〜100重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%であり、一方、プロピレン系重合体(B)は0〜97重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは30〜70重量%である。
プロピレン系重合体(B)が97重量%を超えると、熱成形において耐ドローダウン性が低下し、加熱されたシートのドローダウンが大きくなりシートとヒーターとの接触するおそれや、また、深絞り性が低下して成形後の肉厚が不均一になるおそれがあり、好ましくない。
3.ガスバリア性樹脂(C)
本発明の多層シートに用いられるガスバリア性樹脂(C)は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、MXナイロン(メタキシリレンアジパミド系ポリアミド)等のポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニルデン等が挙げられる。ガスバリア性樹脂(C)からなる層は、2種類以上のガスバリア性樹脂(C)を混合した樹脂組成物の層、あるいは2以上のガスバリア性樹脂(C)からなる複数層にしてもちいることが可能である。またその効果を損なわない範囲内で、他の樹脂を混合することもできる。これらガスバリア性樹脂(C)は、多層シートに通常使用されるものの中から適宜、選ぶことができる。
特定のプロピレン系重合体(A)を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層とガスバリア性樹脂(C)から成る層を積層するため、積層面の接着強度をより向上させる観点から、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂又はメタキシリレンアジパミド系ポリアミド樹脂を使用するのが好ましい。
また、当該多層シートにおけるガスバリア性樹脂(C)から成る層の厚み比(ガスバリア層/当該多層シート全層)は、0.01以上0.2以下であることが好ましく、0.02以上0.15以下がより好ましく、0.04以上0.12以下がさらに好ましい。ガスバリア層と当該多層シート全層の厚み比が0.01未満になると、加熱処理(例えばレトルト処理)時にガスバリア性樹脂が吸水しガスバリア性能が低下するおそれがある。一方、厚み比が0.2を超えると、容器成形時のガスバリア層の伸びムラが発生し、容器の商品価値が低下するおそれがある。
なお、本発明において当該多層シートの外側に、本発明の効果を損なわない範囲で他の層があってもよい。同様に、特定のプロピレン系重合体(A)を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層とガスバリア性樹脂(C)から成る層との間においても他の層があってもよい。他の層として、例えば遮光層、水蒸気透過防止層、接着層、イージーピール層、発泡層などを挙げることができる。
4.接着性樹脂(D)
特定のプロピレン系重合体(A)を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層とガスバリア性樹脂(C)から成る層との間に、積層面の接着強度をより向上させる観点から、接着性樹脂から成る層が合ってもよい。
接着性樹脂(D)としては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等のプロピレン系不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性されたポリプロピレン、プロピレン・α−オレフイン共重合体などが挙げられ、2種類以上の樹脂を混合あるいは複数層にしてもちいることが可能である。
ガスバリア性樹脂(C)にエチレン−ビニルアルコール共重合体層又はメタキシリレンアジパミド系ポリアミド樹脂を使用する場合、積層面の接着強度をより向上させる観点から、無水マレイン酸でグラフト変性されたポリプロピレン、プロピレン・α−オレフイン共重合体を使用するのが好ましい。
また、当該多層シートにおける接着性樹脂(D)から成る層の厚み比(接着層/当該多層シート全層)は、0.005以上0.4以下であることが好ましく、0.02以上0.2以下がより好ましく、0.05以上0.1以下がさらに好ましい。接着層と当該多層シート全層の厚み比が0.005未満になると、成形体が例えば落下などで衝撃を受けた際に、プロピレン系重合体(A)を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層とガスバリア性樹脂(C)から成る層とが界面で剥離するおそれがある。一方、厚み比が0.4を超えると、シート成形時に、各層の樹脂の溶融粘度が異なるため積層が上手くいかず、平滑なシートが得られないおそれがあり、好ましくない。
5.任意添加成分
本発明の多層シートに用いられるプロピレン系樹脂組成物においては、前記のプロピレン系重合体(A)〜ガスバリア性樹脂(C)以外に、さらに必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、例えば、発明の効果を一層向上させたり、他の効果を付与する等の目的のため、任意の添加成分を配合することができる。
具体的には、顔料などの着色剤、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、ソルビトール系などの造核剤、フェノール系、リン系などの酸化防止剤、非イオン系などの帯電防止剤、アミド系化合物などのβ晶核剤、無機化合物などの中和剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、可塑剤、有機金属塩系などの分散剤、脂肪酸アミド系などの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤や、前記のプロピレン系重合体(A)および、プロピレン系重合体(B)以外のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、エラストマー(ゴム成分)などを挙げることができる。
これらの任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、プロピレン系組成物に添加してもよいし、プロピレン系重合体(A)などに添加されていてもよく、それぞれの成分においても、2種以上併用することもできる。
着色剤として、例えば、無機系や有機系の顔料などは、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の、着色外観、見映え、風合い、商品価値、耐候性や耐久性などの付与、向上などに有効である。
具体例として、無機系顔料としては、ファーネスカーボン、ケッチェンカーボンなどのカーボンブラック;酸化チタン;酸化鉄(ベンガラ等);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物などが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
光安定剤や紫外線吸収剤として、例えば、ヒンダードアミン化合物、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系やサリシレート系などは、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の耐候性や耐久性などの付与、向上に有効であり、耐候変色性の一層の向上に有効である。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート;2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
ここで、前記光安定剤と紫外線吸収剤とを併用する方法は、耐候性、耐久性、耐候変色性などの向上効果が大きく好ましい。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系の酸化防止剤などは、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の、耐熱安定性、加工安定性、耐熱老化性などの付与、向上などに有効である。
また、帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の帯電防止性の付与、向上に有効である。
β晶核剤としては、ポリプロピレン樹脂中に添加することでβ晶を選択的に形成させる結晶化核剤であれば、特に限定しないが、種々の顔料系化合物(キナクリドン等)やアミド系化合物を好ましく用いることができる、特にアミド系化合物が高いβ晶形成能を達成するのに好ましい。
ここで、前β晶核剤を併用する方法は、シートの軟化温度を下げる事で熱成形性を向上させるのに有効である。
エラストマーとして、例えば、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマーなどを挙げることができる。
また、スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体エラストマー(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(SEP)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(SEBC)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SBBS)、部分水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体エラストマー、部分水添スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体エラストマーなどのスチレン系エラストマー、さらにエチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(CEBC)などの水添ポリマー系エラストマーなどを挙げることができる。
中でも、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)及び/又はエチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)を使用すると、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物やその成形体において、適度の柔軟性などが付与し易く、耐衝撃性及び流動性などの性能がより優れ、経済性にも優れる傾向にあるなどの点から好ましい。
なお、エラストマーは、2種以上を併用することもできる。
6.プロピレン系樹脂組成物の製造
本発明の特定のプロピレン系重合体(A)を含むプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、プロピレン系重合体(B)と、必要に応じ任意添加成分などを、前記配合割合で、従来公知の方法で混合および、または溶融混練することにより、製造することができる。
混合は、通常、タンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機器を用いて行い、また、溶融混練は、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーなどの混練機器を用いて溶融混練し、造粒することにより製造することができる。しかし、溶融混練は必須ではない。
7.多層シートの製造方法
本発明の多層シートは、各種樹脂組成物を、ポリプロピレンの成形に通常用いられる複数のダイを備えた押出機を用い、フィードブロックやマルチマニホールドを用いて複数層の多層シートに成形することができる。
8.成形体の製造方法
本発明の成形体は、上述した多層シートが熱成形されてなる。より具体的に前記方法で製造された多層シートを、真空成形、真空圧空成形およびプラグアシスト真空圧空成形などの公知の熱成形法により、成形体を得ることができる。このような熱成形における加熱方法としては、間接加熱、熱板加熱、熱ロール加熱などが挙げられる。
9.用途
本発明の多層シートは、ガスバリア性を有するため、食品容器、洗剤容器、医療用容器等のガスバリア性の求められる各種分野の容器に用いることができる。
更に、本発明の多層シートは、熱成形性、特に耐ドローダウン性と深絞り性に優れていることから、従来の技術では成形が困難であった深絞り容器などの深絞り形状の成形体を一般的な熱成形機にて得るのに好適に利用できる。
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
1.評価方法、分析方法
(1)MFR(単位:g/10分)
プロピレン系重合体(A)およびプロピレン系重合体(B)のMFRについては、JIS−K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重(21.18N荷重)で測定した。
(2)溶融張力MT(単位:g)
(株)東洋精機製キャピログラフを用いて、以下の条件で測定した。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・ピストン押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとする。単位はグラムである。
(3)25℃のキシレン可溶な成分の割合(CXS)
以下の方法を用いてCXSの値を得た。
2gの試料を300mLのp−キシレン(0.5mg/mLのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、さらに100℃で12時間減圧乾燥し25℃キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の重量の仕込み試料重量に対する割合[重量%]をCXSと定義する。
(4)分岐指数g’
示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)、光散乱検出器(MALLS)を検出器として備えたGPCを用いて、絶対分子量Mabsが100万となる時の分岐指数g’を求めた。具体的な測定方法、解析方法、算出方法は、上述の通りである。
(5)歪硬化度(λmax)
Rheometorics社製Aresを用いて伸張粘度の測定を行い、その結果から歪硬化度(λmax)を求めた。具体的な測定方法、算出方法は、上述の通りである。
(6)多層シートの各層の厚み
各実施例および各比較例において得られた多層シートを厚み方向にミクロトームで切削して断面を出し、偏光光学顕微鏡により観察して、ガスバリア性樹脂の層(ガスバリア層)の厚み、および、接着性樹脂の層(接着層)の厚みを求めた。
各実施例および各比較例において得られた多層シートはプロピレン系樹脂組成物(最外層)/接着性樹脂(接着層)/ガスバリア性樹脂(ガスバリア層)/接着性樹脂(接着層)/プロピレン系樹脂組成物(最外層)の3種5層構造になるよう押出しした。接着性樹脂(接着層)の厚みは、ガスバリア性樹脂(ガスバリア層)の両側に積層された各接着性樹脂(接着層)の厚みの平均値を使用した。
(7)耐ドローダウン性
各実施例および各比較例において得られた多層シートから切り出した厚さ3.0mm、幅300mm、長さ300mmの試験片を開口部が250mm×250mmの大きさの枠に水平に固定し、この固定されたシートを上下から500℃に加熱されたヒーターで加熱する。この状態において、多層シートには、垂れ量(垂れ長さ)と加熱時間との間に、図1のような現象がおきる。
最初に、加熱によってシートの中央部が垂れ下がる。次に、垂れ下がったシートが持ち上がり(戻り現象)、その後、再度垂れ下がりが起こり、今度は戻り現象は起こらない。熱成形では、最初に垂れ下り戻り現象が起きるまでに金型への賦形を行うと、樹脂の延展性が悪く、成形体が破けるおそれがある。このため、主に最初の垂れ下りの後、戻り現象が起きた以降に金型への賦形が行われる。
上述の最初に垂れ下がり戻り現象が起きるまでに加熱した時間を「垂下り時間」、その垂下り時間から0秒後、10秒後、20秒後のシートの垂れ量を各々の「垂下量」(mm)とした場合、加熱時間の最も長い「垂下り時間+20秒後」の垂下量が0mmに近いほど耐ドローダウン性に優れている事から、以下の基準で判定した。
◎:垂下り時間+20秒後の垂下量が−30mm以上。
○:垂下り時間+20秒後の垂下量が−40mm以上、−30mm未満。
×:垂下り時間+20秒後の垂下量が−40mm未満。
(8)深絞り外観
浅野研究所製真空圧空成形装置を用い、各実施例および各比較例において得られた多層シートを上下ヒーター温度500℃にて加熱し、開口部径87mmΦ、底部径70mmΦ、深さ100mm、傾き5°のカップ型容器を真空圧空成形した。その後、得られた成形体を以下の基準にて目視で判定した。
○:成形体に白化、または、変形などの不良が見られない。
△:成形体に白化、または、変形が見られる。
×:シートの垂下量が大きく成形できない。または、成形体に穴がある。
(9)深絞り性
浅野研究所製真空圧空成形装置を用い、各実施例および各比較例において得られた多層シートを上下ヒーター温度500℃にて加熱し、開口部径87mmΦ、底部径70mmΦ、深さ100mm、傾き5°のカップ型容器を真空圧空成形した。その後、得られた成形体の肉厚を(株)ミツトヨ製マイクロメーターM800にて測定し、最小厚みを求めた。深絞り性は、加熱時間が垂下り時間+5秒後の成形体が比較的外観が良好であった事、さらに、最小厚みが大きいほど偏肉が小さく深絞り性に優れている事から、以下の基準で判定した。
○:垂下り時間+5秒後の成形体の最小厚み0.2mm以上。
△:垂下り時間+5秒後の成形体の最小厚み0.1mm以上で0.2mm未満。
×:垂下り時間+5秒後の成形体の最小厚み0.1mm未満。
(10)ガスバリア性
浅野研究所製真空圧空成形装置を用い、各実施例および各比較例において得られた多層シートを上下ヒーター温度500℃にて加熱し、垂下り時間+5秒後に開口部径87mmΦ、底部径70mmΦ、深さ100mm、傾き5°のカップ型容器を真空圧空成形した。さらに、得られたカップ型容器の成形体の側面を切削し、長さ3cm、幅3cmの試験片を得た。
得られた試験片を、(株)東洋精機製作所製ガス透過率測定装置「BR−3」を用いて、JIS−K7126−1に準拠し、評価用ガス種を酸素、試験温度を23℃とし、ガス透過度(単位:cm/(m・24h・atm))を測定した。ガス透過度は、数値が低いほど試験片のガス透過性が低く、ガスバリア性が優れている事を示しているため、比較的外観が良好であった加熱時間が垂下り時間+5秒後の成形体のガス透過度から以下の基準にてガスバリア性を判定した。
◎:垂下り時間+5秒後の成形体のガス透過度が2.0cm/(m・24h・atm)未満。
○:垂下り時間+5秒後の成形体のガス透過度が4.0cm/(m・24h・atm)未満で2.0cm/(m・24h・atm)以上。
×:垂下り時間+5秒後の成形体のガス透過度が4.0cm/(m・24h・atm)以上。
2.材料
(1)プロピレン系重合体(A)
下記の製造例1で得られたプロピレン系重合体(A1)をプロピレン系重合体(A)として用いた。
[製造例1:プロピレン系重合体A1の製造]
<触媒成分[X−1]の合成>
ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[X−1]の合成):
(i)4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
(ii)2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO 200mlを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
(iii)2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82mmol)、DME100mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8g(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。
放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(2−メチル−5−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
(iv)ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、テトラヒドロフラン(THF)200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに、1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
(v)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についてのH−NMRによる同定値を以下に記す。
H−NMR(C)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
<触媒成分[X−2]の合成>
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[X−2]の合成):
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11−240909号公報の実施例1に記載の方法と同様にして、実施した。
<触媒成分(Y)の合成>
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2,264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)400gを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーに蒸留水4,000gを加えた後に、ろ過したところ、ケーキ状固体810gを得た。
次に、別のセパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1,924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4Lを加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られたケーキ状固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
<予備重合触媒1の調製>
i)触媒調製及び予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記の触媒成分(Y)で得られた化学処理スメクタイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとなるようにヘプタンを加えた。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[X−1]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(180μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、上記の触媒成分[X−2]の合成で得られたrac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(120μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
上記の化学処理スメクタイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。その後更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後、上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを、1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(6mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒60.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.00g/g−触媒であった。
以下、このものを「予備重合触媒1」という。
<重合>
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40kgを導入した。
これに水素8.2NL(0.73g)、トリイソブチルアルミニウム(0.12mol:濃度50g/Lのヘプタン溶液を0.47L)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで予備重合触媒1を2.4g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。
2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流下で1時間乾燥し、19.9kgの重合体PP−1を得た。触媒活性は8.3kg−PP/g−触媒であった。
<造粒>
上記の重合で得られたポリプロピレン重合体PP−1の100重量部に対し、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(商品名:Cyanox1790、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:IRGAFOS 168、BASFジャパン株式会社製)0.10重量部、ポリ{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}(商品名:Chimassorb944、BASFジャパン株式会社製)0.03重量部、ステアリン酸アミド0.09重量部、を配合し充分に撹拌した後、2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW−45MG−NH)を用いて220℃で溶融混練し、押出されたストランドを切断しペレット化し、プロピレン系重合体A1を得た。得られたプロピレン系重合体A1を分析した結果を表1に示す。13C−NMR測定の結果、このプロピレン系重合体A1に長鎖分岐があることを確認した。また分岐指数g’が0.88であり、1よりも小さな値であることも、このプロピレン系重合体A1に長鎖分岐が存在することを示している。
Figure 0006958033
(2)プロピレン系重合体(B)
以下のプロピレン系重合体B1を用意した。プロピレン系重合体B1の性状を表2にまとめた。プロピレン系重合体B1は酸化防止剤、中和剤を添加済みのペレットである。
B1:日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックPP」の下記組成のグレードを用いた。
該材料は、チーグラー・ナッタ触媒で重合されたプロピレン単独重合体であり、MFR(230℃、2.16kg荷重)が1.9g/10分である。また長鎖分岐を有しない。
Figure 0006958033
(3)ガスバリア性樹脂(C)
以下の市販のガスバリア性樹脂C1を用意した。
C1:ソアノールBX3205(日本合成化学(株)社製、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)
(4)接着性樹脂(D)
以下の市販の接着性樹脂D1を用意した。
D1:モディックP664(三菱ケミカル(株)社製、グラフト変性ポリプロピレン)
3.実施例及び比較例
[実施例1〜5及び比較例1〜4]
(1)混合
プロピレン系重合体(A)および/またはプロピレン系重合体(B)を、表3,4に示す割合で混合をしたものをプロピレン系樹脂組成物から成る層の樹脂ペレットとして使用した。
(2)シート成形
上記の混合されたプロピレン系樹脂組成物を1台目の口径40mmΦの押出機にて230℃で、ガスバリア性樹脂(C)を2台目の口径40mmΦ押出機にて210℃で、接着性樹脂(D)を3台目の口径40mmφ押出機にて210℃でそれぞれ押し出し、フィードブロックを介してプロピレン系樹脂組成物(最外層)/接着性樹脂(接着層)/ガスバリア性樹脂(ガスバリア層)/接着性樹脂(接着層)/プロピレン系樹脂組成物(最外層)の3種5層構造で、厚みが1.6mmの熱成形に用いる多層シートを成形した。成形した多層シートのガスバリア層の厚み、および、接着層の厚みを、前記評価方法に示した要領で測定し、結果を表3,4に示す。
(3)評価
得られた多層シートは、前記評価方法に示した要領で、それぞれの評価用試験片を成形し、性能評価を行った。結果を表3,4に示す。
Figure 0006958033
Figure 0006958033
表3に示す結果から本発明の多層シートに用いられるプロピレン系樹脂組成物の発明特定事項を満たしている実施例1〜5においては、熱成形時における熱成形性、特に耐ドローダウン性と深絞り外観、深絞り性が良好で、さらに、成形体のガスバリア性にも優れている。
一方、表4に示す結果から本発明の発明特定事項を満たさない比較例1〜4は、これらの性能バランスが不良で見劣りしている。例えば、ガスバリア性樹脂(C)を含まない比較例1においては、ガスバリア性が低く見劣りしている。また、プロピレン系重合体(A)を含まない比較例2〜3においては、耐ドローダウン性、および、深絞り性、ガスバリア性が不良であり、さらに、熱成形の成形条件(シートの加熱時間)を変えても成形外観が見劣りしている。
本発明の多層シートは、ガスバリア性を有するため、食品容器、洗剤容器、医療用容器等のガスバリア性の求められる各種分野の容器に用いることができる。
更に、本発明の多層シートは、熱成形性、特に耐ドローダウン性と深絞り性に優れていることから、従来の技術では成形が困難であった深絞り容器などの深絞り形状の成形体を一般的な熱成形機にて得るのに好適に利用できる。

Claims (3)

  1. 下記の要件(A−i)〜(A−iv)を満たすプロピレン系重合体(A)30〜70重量%と、下記の要件(B−i)〜(B−iii)を満たすプロピレン系重合体(B)30〜70重量%を含むプロピレン系樹脂組成物から成る層と、ガスバリア性樹脂(C)から成る層を積層してなる多層シートであり、当該多層シートにおけるガスバリア性樹脂(C)から成る層の厚み比(ガスバリア層/当該多層シート全層)が、0.01以上0.2以下であることを特徴とする多層シート。
    要件(A−i):長鎖分岐を有する。
    要件(A−ii):230℃で測定した溶融張力(MT)が3〜30gである。
    要件(A−iii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が0.2〜15g/10分である。
    要件(A−iv):25℃キシレン可溶成分量(CXS)がプロピレン系重合体(A)全量に対し5重量%未満である。
    要件(B−i):長鎖分岐を有しない。
    要件(B−ii):230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分である。
    要件(B−iii):プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体及びプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系重合体である。
  2. ガスバリア性樹脂(C)が、エチレン−ビニルアルコール共重合体又はメタキシリレンアジパミド系ポリアミド樹脂から成ることを特徴とする請求項に記載の多層シート。
  3. 請求項1または2に記載の多層シートが熱成形されてなることを特徴とする成形体。
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