第1実施形態に係る固形乳の斜視図である。
図1の固形乳の中央縦断面図である。
第1実施形態に係る直方体の形状の場合の固形乳の斜視図である。
打錠機のスライドプレート、上杵及び下杵の位置を説明する説明図である。
第1圧縮開始時の上杵及び下杵の位置を説明する説明図である。
第1圧縮終了後かつ第2圧縮開始時の上杵及び下杵の位置を説明する説明図である。
実施例及び比較例1、2に係る粉乳圧縮成型物の表面から2mmの深さまで及び4mmの深さから6mmの深さまでの比表面積voxel比を示すグラフである。
実施例及び比較例1、2に係る固形乳の表面から2mmの深さまで及び4mmの深さから6mmの深さまでの比表面積voxel比を示すグラフである。
実施例及び比較例1、2に係る粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比減少率を示すグラフである。
実施例及び比較例1、2に係る固形乳の比表面積voxel比減少率を示すグラフである。
実施例及び比較例1、2に係る粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比及び固形乳の比表面積voxel比の相関を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。しかしながら、以下説明する形態は、あくまで例示であって、当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
<第1実施形態>
(固形乳10Sの構成)
図1は、本実施形態に係る固形乳10Sの斜視図である。図2は、図1の固形乳10Sの中央縦断面図である。
固形乳10Sは、粉乳を圧縮成型した固形状の本体10を有する。本体10は、XY平面に平行で平坦な第1面10Aと、XY平面に平行で平坦な第2面10Bとを有する。第1面10Aと第2面10Bとは背中合わせの面である。本体10の形状は、圧縮成型に用いる型(打錠機の臼)の形状によって定まるが、ある程度の寸法(大きさ、厚さ、角度)をもつ形状であれば特に限定されない。本体10の概略形状は、円柱状、楕円柱状、立方体状、直方体状、板状、多角柱状、多角錐台状あるいは多面体状等である。成型の簡便さや運搬の便利さ等の観点から、円柱状、楕円柱状及び直方体状が好ましい。図1及び図2に示した固形乳10Sの本体10の概略形状は、寸法が直径φ×厚さt(図1参照)である円柱状であり、本体10はZ軸に平行な側面10Cを有する。第1面10A及び側面10Cから構成される角部は面取りされたテーパー形状ではないが、面取りされていてもよい。面取りされている場合、運搬する際等で固形乳10Sが壊れる事態を抑制することができる。
表面とは、物質の外側を成す面である。表層とは、表面を含む表面近傍の層である。例えば、表層とは、粉乳の圧縮成型により形成され、さらに硬化処理により硬化された層である。本実施形態の表層は、内部より硬い層となっている。ここで、表層が内部より硬い層であるとは、表層だけを分離するのに必要となる力が、内部を分離するのに必要となる力よりも相対的に大きいことを指す。
本実施形態の固形乳10Sは、表面から内部への深さ方向の比表面積voxel比プロファイルが以下のようになっている。図2に示すように、固形乳10Sの断面において、固形乳10Sの表面から2mmの深さまでの領域を領域a、固形乳10Sの表面から2mmの深さから4mmの深さの領域を領域b、固形乳10Sの表面から4mmの深さから6mmの深さの領域を領域cとする。領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aは、0.353を超え0.391未満である。また、領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、0.390を超え0.444未満である。領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aより大きい。領域bの比表面積voxel比の平均値Bは、領域aの比表面積voxel比の平均値A程度から領域cの比表面積voxel比の平均値C程度までの値となる。
本実施形態の粉乳圧縮成型物は、表面から内部への深さ方向の比表面積voxel比プロファイルが以下のようになっている。領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aは、0.406を超え0.420未満である。また、領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、0.414を超え0.434未満である。領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aより大きい。領域bの比表面積voxel比の平均値Bは、領域aの比表面積voxel比の平均値A程度から領域cの比表面積voxel比の平均値C程度までの値となる。
本体10には、第1面10Aから第2面10Bに達して本体10を貫通する孔が1つ又は2つ以上設けられていてもよい。孔の形状は、例えばXY平面に平行な断面において、長円形、角丸長方形、楕円形、円形、長方形、正方形、あるいはその他の多角形である。孔の位置は、第1面10Aの中央の位置から見たときに大きな偏りがない位置であることが好ましく、例えば第1面10Aの中央の位置に対して点対称となる配置、あるいは第1面10Aの中央を通るX軸と平行な線又はY軸と平行な線に対して線対称となる配置である。孔が1つの場合は、例えば第1面10Aの中央に設けられる。孔が設けられている場合、孔の縁はテーパー状の斜面となっていてよい。なお、孔が設けられた場合、孔の内壁面は第1面10Aと同様の内部より硬い表面である。
固形乳10Sの成分は、基本的には原料となる粉乳の成分と同様である。固形乳10Sの成分は、例えば、脂肪、たん白質、糖質、ミネラル、ビタミン及び水分等である。
粉乳は、乳成分(例えば牛乳の成分)を含む液体状の乳類(液状乳)から製造されたものである。乳成分は、例えば、生乳(全脂乳)、脱脂乳及びクリーム等である。液状乳の水分含有率は、例えば40重量%~95重量%である。粉乳の水分含有率は、例えば1重量%~4重量%である。粉乳は、後述の栄養成分が添加されていてよい。粉乳は、固形乳10Sを製造するために適したものであれば、全粉乳、脱脂粉乳、又はクリーミーパウダーであってもよい。粉乳の脂肪含有率は、例えば5重量%~70重量%であることが好ましい。
上記の粉乳の原料となる乳成分は、例えば生乳由来のものである。具体的には、牛(ホルスタイン、ジャージー種その他)、山羊、羊及び水牛等の生乳由来のものである。上記の生乳には脂肪分が含まれているが、脂肪分の一部又は全部が遠心分離等により取り除かれた脂肪含有率が調節された乳であってもよい。
さらに、上記の粉乳の原料となる乳成分は、例えば植物由来の植物性乳である。具体的には、豆乳、ライスミルク、ココナッツミルク、アーモンドミルク、ヘンプミルク、ピーナッツミルク等の植物由来のものである。上記の植物性乳には脂肪分が含まれているが、脂肪分の一部又は全部が遠心分離等により取り除かれた脂肪含有率が調節された乳であってもよい。
上記粉乳の原料となる栄養成分は、例えば、脂肪、たん白質、糖質、ミネラル及びビタミン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
上記の粉乳の原料となり得るたん白質は、例えば、乳たん白質及び乳たん白質分画物、動物性たん白質、植物性たん白質、それらのたん白質を酵素等により種々の鎖長に分解したペプチド及びアミノ酸等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。乳たん白質は、例えば、カゼイン、乳清たん白質(α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン等)、例えば、乳清たん白質濃縮物(WPC)及び乳清たん白質分離物(WPI)等である。動物性たん白質は、例えば、卵たん白質である。植物性たん白質は、例えば、大豆たん白質及び小麦たん白質である。アミノ酸は、例えば、タウリン、シスチン、システイン、アルギニン及びグルタミン等である。
上記の粉乳の原料となり得る脂肪(油脂)は、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT(Medium Chain Triglyceride, 中鎖脂肪酸トリグリセリド)油等である。
上記の粉乳の原料となり得る糖質は、例えば、オリゴ糖、単糖類、多糖類及び人工甘味料等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。オリゴ糖は、例えば、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ラクチュロース等である。単糖類は、例えば、ブドウ糖、果糖及びガラクトース等である。多糖類は、例えば、デンプン、可溶性多糖類及びデキストリン等である。なお、糖質の人工甘味料に替えて、或いは加えて、非糖質の人工甘味料を用いてもよい。
上記の粉乳の原料となり得るミネラル類は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、及び亜鉛等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。なお、ミネラル類のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、及び亜鉛に替えて、或いは加えて、リン及び塩素の一方又は両方を用いてもよい。
固形乳10Sには、固形乳10Sの原料である粉乳を圧縮成型した時に生じた空隙(例えば細孔)が多数存在している。これら複数の空隙は、固形乳10Sの深さ方向の比表面積voxel比プロファイルに対応して分散(分布)している。空隙が大きい(広い)ほど、水等の溶媒の侵入が容易となるため、固形乳10Sを速く溶解させることができる。一方、空隙が大きすぎると、固形乳10Sの硬度が弱くなるか、固形乳10Sの表面が粗くなることがある。各空隙の寸法(大きさ)は、例えば10μm~500μmである。
比表面積voxel比の測定には、株式会社リガク製の高分解能3DX線顕微鏡(3次元X線CT装置)(形式:nano3DX)を用いることができる。比表面積voxel比の測定環境は、測定精度が保たれる範囲内で行う必要があり、例えば、温度20度±5℃、湿度30%RH±5%RHで行う。
固形乳10Sは、水等の溶媒に対してある程度の溶解性を持っている必要がある。溶解性は、例えば溶質としての固形乳10Sと、溶媒としての水とを所定の濃度となるように用意したときに、固形乳10Sが完全に溶けるまでの時間や所定時間における溶け残り量等で評価することができる。
固形乳10Sは所定範囲の硬度を有することが好ましい。硬度は、公知の方法で測定できる。本明細書においては、ロードセル式錠剤硬度計を用いて硬度を測定する。ロードセル式錠剤硬度計に円柱状をなす固形乳10Sの第2面を底面として載置し、側面10Cの+Y側に最も凸である部分を硬度計の破断端子で、側面10Cの-Y側に最も凸である部分を破断端子に対向する硬度計の壁面で、それぞれ固定し、破断端子で図1の-Y方向にYZ平面が破断面となる向きに一定速度で押し、固形乳10Sが破断した時の荷重[N]をもって固形乳10Sの硬度(錠剤硬度)[N]とする。例えば、岡田精工(株)製のロードセル式錠剤硬度計(ポータブルチェッカーPC-30)を用いる。破断端子としては、錠剤硬度測定用のものが用いられる。破断端子が固形乳10Sを押す速度を0.5mm/sとする。上記の硬度の測定は、固形乳10Sに限らず、後述の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度を測定する場合にも適用できる。上記のように測定される硬度に関して、固形乳10Sを運搬する際等に固形乳10Sが壊れる事態を極力避けるため、固形乳10Sの硬度は20N以上であることが好ましく、より好ましくは40N以上である。一方、固形乳10Sの硬度が高すぎると固形乳10Sの溶解性が悪くなることから、固形乳10Sの硬度は100N以下であることが好ましく、より好ましくは70N以下である。
図3は本実施形態に係る直方体の形状の場合の固形乳10SXの斜視図である。図3に示した固形乳10SXの本体10Xの概略形状は、寸法がax×bx×cxである直方体状である。固形乳が直方体の場合、ロードセル式錠剤硬度計に直方体状をなす固形乳10SXの第2面10BXを底面として載置し、側面10CXのXZ平面に平行な1面およびYZ平面に平行な1面を用いて固定して、側面10CXの固定していないもう一方のXZ平面に平行な面側から硬度計の破断端子で第1面10AXの短軸方向(図3のY軸方向)にYZ平面が破断面となる向きに一定速度で押し、固形乳10SXが破断した時の荷重[N]をもって固形乳10SXの硬度(錠剤硬度)[N]とする。測定点は固形乳10SXの場合、側面10CXの一対のYZ平面から等距離となるYZ平面に平行な面が、側面10CXのXZ平面と交差した線分上で第1面10AXと第2面10BXから等距離となる点から選択する。例えば、岡田精工(株)製のロードセル式錠剤硬度計(ポータブルチェッカーPC-30)を用いる。硬度計に組み込まれた破断端子は、固形乳10SXに接触する接触面を有する。破断端子の有する接触面は、1mm×24mmの長方形であり、この長方形の長軸がZ軸に平行となる向きに配置される。この破断端子の有する接触面は、少なくとも一部で固形乳10SXの測定点を押すように構成されている。破断端子が固形乳10SXを押す速度を0.5mm/sとする。上記の硬度の測定は、固形乳10SXに限らず、後述の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10SX)の硬度を測定する場合にも適用できる。
ここで使用する硬度は、[N(ニュートン)]の単位を持つ力の物理量である。硬度は固形乳試料の破断面積が大きいほど大きくなる。ここで、「破断」とは固形乳10S等の試料に静的に垂直荷重をかけたときに破損することを指し、この破損した際にできた断面積を「破断面積」と称する。つまり、硬度[N]は固形乳試料の寸法に依存する物理量である。固形乳試料の寸法に依存しない物理量として破断応力[N/m2]がある。破断応力は破断時に単位破断面積あたりにかかる力であり、固形乳試料の寸法に依存せず、寸法の異なる固形乳試料間でも固形乳試料にかかる力学的な作用を比較できる指標である。破断応力=硬度/破断面積となる。本明細書では簡易的に硬度[N]を用いて説明をしている場合があるが、これらは破断面積で除した破断応力[N/m2]として表してもよい。破断応力を算出する際には、破断面を想定し、想定した破断面での最小の破断面積を用いて算出する。例えば固形乳10Sの場合、理想的な破断面積は、固形乳の中心を通り、Z軸と平行な線を含む面での破断面積となる寸法φ×tで表される。例えば、固形乳10Sの好ましい破断応力の範囲は、破断面積の範囲を考慮すると、0.068N/mm2以上0.739N/mm2以下である。
(固形乳10Sの製造方法)
続いて固形乳10Sの製造方法について説明する。まず、固形乳10Sの原料となる粉乳を製造する。粉乳の製造工程では、例えば液状乳調製工程、液状乳清澄化工程、殺菌工程、均質化工程、濃縮工程、気体分散工程及び噴霧乾燥工程により、粉乳を製造する。
液状乳調製工程は、上記の成分の液状乳を調製する工程である。
液状乳清澄化工程は、液状乳に含まれる微細な異物を除去するための工程である。この異物を除去するためには、例えば遠心分離機やフィルター等を用いればよい。
殺菌工程は、液状乳の水や乳成分等に含まれている細菌等の微生物を死滅させるための工程である。液状乳の種類によって、実際に含まれていると考えられる微生物が変わるため、殺菌条件(殺菌温度や保持時間)は、微生物に応じて適宜設定される。
均質化工程は、液状乳を均質化するための工程である。具体的には、液状乳に含まれている脂肪球等の固形成分の粒子径を小さくして、それらを液状乳に一様に分散させる。液状乳の固形成分の粒子径を小さくするためには、例えば液状乳を加圧しながら狭い間隙を通過させればよい。
濃縮工程は、後述の噴霧乾燥工程に先立って、液状乳を濃縮するための工程である。液状乳の濃縮には、たとえば真空蒸発缶やエバポレーターを用いればよい。濃縮条件は、液状乳の成分が過剰に変質しない範囲内で適宜設定される。これにより、液状乳から濃縮乳を得ることができる。続いて、本発明では、濃縮された液状乳(濃縮乳)に気体を分散させ、噴霧乾燥することが好ましい。このとき、濃縮乳の水分含有率として、例えば、35重量%~60重量%があげられ、好ましくは、40重量%~60重量%であり、より好ましくは40重量%~55重量%である。このような濃縮乳を用いて、気体を分散させた際に、濃縮乳の密度を低下させて嵩高くし、そのように嵩高くした状態の濃縮乳を噴霧乾燥することで、固形乳を製造する際に、好ましい特質を有する粉乳を得ることができる。なお、液状乳の水分が少ない場合や噴霧乾燥工程の対象となる液状乳の処理量が少ない場合には、本工程を省略してもよい。
気体分散工程は、液状乳に、所定の気体を分散させるための工程である。このとき、所定の気体としては、たとえば液状乳の体積の1×10-2倍以上7倍以下の体積で分散させることがあげられ、好ましくは、液状乳の体積の1×10-2倍以上5倍以下の体積であり、より好ましくは、液状乳の体積の1×10-2倍以上4倍以下であり、最も好ましくは、1×10-2倍以上3倍以下である。
所定の気体を液状乳に分散させるために、所定の気体を加圧することが好ましい。所定の気体を加圧する圧力は、当該気体を液状乳へ効果的に分散させることができる範囲内であれば特に限定されないが、所定の気体の気圧として、例えば1.5気圧以上10気圧以下があげられ、好ましくは2気圧以上5気圧以下である。液状乳は以下の噴霧乾燥工程において噴霧されるため、所定の流路に沿って流れており、この気体分散工程では、この流路に加圧した所定の気体を流し込むことで、当該気体を液状乳に分散(混合)させる。このようにすることで、所定の気体を液状乳に容易にかつ確実に分散させることができる。
このように、気体分散工程を経ることにより、液状乳の密度は低くなり、見かけの体積(嵩)は大きくなる。なお、液状乳の密度は、液状乳の重さを、液体状態と泡状態の液状乳全体の体積で除したものとして求めてもよい。また、JIS法に準拠したカサ密度測定(顔料:JISK5101準拠)方法により、密度を測定する装置を用いて測定してもよい。
したがって、上記の流路には、所定の気体が分散状態にある液状乳が流れることになる。ここで、当該流路において、液状乳の体積流量は、一定となるように制御されていることが好ましい。
本実施形態では、所定の気体として二酸化炭素(炭酸ガス)を用いることができる。当該流路において、液状乳の体積流量に対する二酸化炭素の体積流量の比率(以下、その百分率を「CO2混合比率[%]」ともいう)として、例えば1%以上700%以下があげられ、2%以上300%以下が好ましく、3%以上100%以下がより好ましく、最も好ましくは、5%以上45%以下である。このように、二酸化炭素の体積流量が液状乳の体積流量に対して一定となるように制御することで、そこから製造される粉乳の均一性を高めることができる。但し、CO2混合比率が大きすぎると、液状乳が流路を流れる割合が低くなって、粉乳の製造効率が悪化する。したがって、CO2混合比率の上限は700%であることが好ましい。また、二酸化炭素を加圧する圧力は、二酸化炭素を液状乳へ効果的に分散させることができる範囲内であれば特に限定されないが、二酸化炭素の気圧として、たとえば1.5気圧以上10気圧以下があげられ、好ましくは2気圧以上5気圧以下である。なお、二酸化炭素と液状乳を密閉系で連続的に(インラインで)混合することにより、細菌等の混入を確実に防止して、粉乳の衛生状態を高めること(又は高い清浄度を維持すること)ができる。
本実施形態では、気体分散工程において用いる所定の気体は、二酸化炭素(炭酸ガス)とした。二酸化炭素に代えて、又は二酸化炭素とともに、空気、窒素(N2)、及び酸素(O2)からなる群から選択された1又は2以上の気体を用いてもよいし、希ガス(例えばアルゴン(Ar)、ヘリウム(He))を用いてもよい。このように、さまざまな気体を選択肢とすることができるので、容易に入手できる気体を用いることで、気体分散工程を容易に行うことができる。気体分散工程において、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いると、液状乳の栄養成分等と反応するおそれがないため、空気や酸素を用いるよりも、液状乳を劣化させる可能性が少なく好ましい。このとき、液状乳の体積流量に対する当該気体の体積流量の比率として、例えば1%以上700%以下があげられ、1%以上500%以下が好ましく、1%以上400%以下がより好ましく、最も好ましくは、1%以上300%以下である。例えば、ベルら(R. W. BELL, F. P. HANRAHAN, B. H. WEBB: “FOAM SPRAYMETHODS OF READILY DISPERSIBLE NONFAT DRY MILK”, J. Dairy Sci, 46 (12) 1963. pp1352-1356)は、脱脂粉乳を得るために無脂肪乳の約18.7倍の体積の空気を吹き込んだとされている。本発明では、上記の範囲で気体を分散させることにより、固形乳を製造するために好ましい特性を有する粉乳を得ることができる。但し、気体分散工程において液状乳に所定の気体を分散させた結果として液状乳の密度を確実に低くするためには、所定の気体として、液状乳に分散しやすい気体や、液状乳に溶解しやすい気体を用いることが好ましい。このため、水への溶解度(水溶性)が高い気体を用いることが好ましく、20℃、1気圧下において、水1cm3への溶解度が0.1cm3以上である気体が好ましい。なお、二酸化炭素は、気体に限られることはなく、ドライアイスであってもよいし、ドライアイスと気体の混合物であってもよい。即ち、気体分散工程では、液状乳へ所定の気体を分散させることができるのであれば、固体を用いてもよい。気体分散工程において、ドライアイスを用いることで、冷却状態の液状乳に急速に二酸化炭素を分散させることができ、この結果、固形乳を製造するために好ましい特性を有する粉乳を得ることができる。
噴霧乾燥工程は、液状乳中の水分を蒸発させて粉乳(粉体)を得るための工程である。この噴霧乾燥工程で得られる粉乳は、気体分散工程及び噴霧乾燥工程を経て得られた粉乳である。この粉乳は、気体分散工程を経ずに得られた粉乳に比べて、嵩高くなる。前者は、後者の1.01倍以上10倍以下の体積となることが好ましく、1.02倍以上10倍以下でもよく、1.03倍以上9倍以下でもよい。
噴霧乾燥工程では、気体分散工程において液状乳に所定の気体が分散され、液状乳の密度が小さくなった状態のまま、液状乳を噴霧乾燥する。具体的には、気体を分散する前の液状乳に比べて、気体を分散した後の液状乳の体積が1.05倍以上3倍以下、好ましくは1.1倍以上2倍以下の状態で、噴霧乾燥することが好ましい。つまり、噴霧乾燥工程は、気体分散工程が終了した後に噴霧乾燥を行う。但し、気体分散工程が終了した直後は、液状乳が均一な状態ではない。このため、気体分散工程が終了した後0.1秒以上5秒以下、好ましくは0.5秒以上3秒以下で噴霧乾燥工程を行う。つまり、気体分散工程と噴霧乾燥工程が連続的であればよい。このようにすることで、液状乳が連続的に気体分散装置に投入されて気体が分散され、気体が分散された液状乳が連続的に噴霧乾燥装置に供給され、噴霧乾燥され続けることができる。
水分を蒸発させるためには、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いればよい。ここで、スプレードライヤーは、液状乳を流すための流路と、液状乳を流路に沿って流すために液状乳を加圧する加圧ポンプと、流路の開口部につながる流路よりも広い乾燥室と、流路の開口部に設けられた噴霧装置(ノズル、アトマイザー等)とを有するものである。そして、スプレードライヤーは、加圧ポンプで液状乳を上述した体積流量となるように流路に沿って乾燥室に向かって送り、流路の開口部の近傍において、噴霧装置で濃縮乳を乾燥室内に拡散させ、液滴(微粒化)状態にある液状乳を乾燥室内の高温(例えば熱風)で乾燥させる。つまり、乾燥室で液状乳を乾燥することで、水分が取り除かれ、その結果、濃縮乳は粉末状の固体、即ち粉乳となる。なお、乾燥室における乾燥条件を適宜設定することで、粉乳の水分量等を調整して、粉乳を凝集しにくくする。また、噴霧装置を用いることで、液滴の単位体積当たりの表面積を増加させて、乾燥効率を向上させるのと同時に、粉乳の粒径等を調整する。
上述したような工程を経ることにより、固形乳を製造するのに適した粉乳を製造することができる。
上記のようにして得られた粉乳を圧縮成型して、粉乳圧縮成型物を形成する。次に、得られた粉乳圧縮成型物に対して加湿処理及び乾燥処理を含む硬化処理を行う。以上により、固形乳10Sを製造することができる。
粉乳を圧縮成型する工程では、圧縮手段が用いられる。圧縮手段は、例えば、打錠機、圧縮試験装置等の加圧成型機である。打錠機は、粉乳を入れる型となる臼と、臼に向かって打ち付け可能な杵とを備えた装置である。以下では、打錠機による圧縮成型工程について説明する。
図4は、打錠機のスライドプレート、上杵及び下杵の位置を説明する説明図である。打錠機の成型ゾーンにおいて、スライドプレート30の臼30Aの下方にアクチュエータで上下動可能に下杵31が配されている。また、スライドプレート30の臼30Aの上方に上杵32がアクチュエータで上下動可能に配されている。図4は、スライドプレート30の臼30Aに下杵31及び上杵32が挿入され、下杵31及び上杵32が互いに最も近づいた位置を示す。この位置で、下杵31及び上杵32の間の距離は最終杵間隔Lである。スライドプレート30の臼30Aの内壁面、下杵31の上端面及び上杵32下端面が圧縮成型の型となる。例えばスライドプレート30の臼30Aの内壁面及び下杵31の上面で構成された凹部に粉乳を供給し、臼30Aの上方から上杵32を打ち付けることにより、粉乳に圧縮圧力が加わり、スライドプレート30の臼30Aの内壁面、下杵31の上端面及び上杵32下端面で囲まれた空間SPで粉乳が圧縮成型され、粉乳圧縮成型物を得ることができる。
下杵31及び上杵32を上下に駆動するアクチュエータは、例えばサーボモータで構成されている。本実施形態では、アクチュエータとしてのサーボモータの速度を変化させることで、詳細を後述するように、圧縮成型する際の圧縮速度すなわち下杵31及び上杵32の移動速度を変化できるように構成されている。アクチュエータとしては、サーボモータに限定されず、また下杵31及び上杵32の移動速度を変化させる手法もこれに限定されるものではない。例えば、油圧シリンダー等を用いてもよい。また、圧縮成型の際には、下杵31及び上杵32が互いに近づく方向に移動させてもよく、一方を固定し他方だけを移動させてもよい。
圧縮成型する際の圧縮速度すなわち下杵31及び上杵32の移動速度を変化させて圧縮成型する工程について説明する。この圧縮成型の際には、下杵31の上端面と上杵32の下端面とが近づく圧縮速度を変化させる(切り替える)。すなわち、まず第1圧縮速度V1で第1圧縮を行い、この第1圧縮から続けて第2圧縮速度V2で第2圧縮を行う。本実施形態では、第1圧縮速度V1よりも第2圧縮速度V2が遅く設定されている。
第1圧縮及び第2圧縮の圧縮距離は、この例においては、図4に示すように、第2圧縮の終了時すなわち全圧縮工程の終了時における状態を基準にしている。下杵31と上杵32とによる圧縮は、下杵31の上端面と上杵32の下端面との間の杵間隔が最終杵間隔Lとなるまで行われる。最終杵間隔Lは、全圧縮工程で圧縮された状態の粉乳圧縮成型物の最終の厚みである。この最終杵間隔Lは、圧縮を解除したときに粉乳圧縮成型物が膨張することを考慮して決められており、粉乳圧縮成型物の目標厚みよりも小さい、もしくは目標厚みと同じ値を持つ。
実施形態の打錠機は、第1圧縮と第2圧縮の切り替え中に、下杵31および上杵32の両面と圧縮物とを密着させ、圧縮物にかかる圧力を緩和させないように制御を行う。一方、従来知られている打錠機(例えば特開2008-290145号公報に記載の打錠機等)は、圧縮物に含まれるエアを抜くなどを目的として予圧を加えた後に、いったん圧力を緩和させ、その後に圧縮物を成形する本圧をかける制御を行っている。実施形態の打錠機は、従来の打錠機とは異なり、第1圧縮と第2圧縮の間に圧力を緩和させずに、また下杵31および上杵32の両面と圧縮物とを密着させて、圧縮物を圧縮するので、圧縮物に対して十分な硬度を付与することが可能となる。
図5は第1圧縮開始時の下杵及び上杵の位置を示す。図6は第1圧縮終了後かつ第2圧縮開始時の下杵及び上杵の位置を示す。図5に示される杵間隔(L+L1+L2)の状態から、図6に示される杵間隔(L+L2)の状態になるまでの圧縮が第1圧縮である。また、図6に示される杵間隔(L+L2)の状態から、図4に示される最終杵間隔Lの状態になるまでの圧縮が第2圧縮である。
第1圧縮の第1圧縮距離は、第1圧縮において杵間隔の減少する距離L1となる。第2圧縮の第2圧縮距離は、第2圧縮において杵間隔の減少する距離L2となる。圧縮を解除することなく第1圧縮から続けて第2圧縮を行うので、この第2圧縮距離L2は、第1圧縮で圧縮された杵間隔(L+L2)から最終杵間隔(L)までの圧縮距離である。
また、第1圧縮における杵間隔の変化速度が第1圧縮速度V1であり、第2圧縮における杵間隔の変化速度が第2圧縮速度V2である。なお、第1圧縮の間、第2圧縮の間に杵間隔の変化速度が変動するような場合では、平均速度を第1圧縮速度V1、第2圧縮速度V2とする。
第1圧縮の後に第1圧縮速度V1よりも遅い第2圧縮速度V2で第2圧縮を行うことで、その第1圧縮速度V1と同じ圧縮速度及び同じ圧縮距離(L1+L2)で圧縮を行った場合よりも、粉乳圧縮成型物の硬度を高めて破壊耐性を確保することができる。しかも、第2圧縮を第1圧縮に続けて行い、また第2圧縮距離L2を短くすることができるので、第2圧縮速度V2のみで製造する場合と同程度の高い強度を持たせつつ、より生産効率を向上して製造することが可能である。
本実施形態では、粉乳圧縮成型物の硬度を効率的に高めるために、第1圧縮で圧縮された状態から粉乳圧縮成型物を圧縮した際に、圧縮距離に対する粉乳圧縮成型物の硬度の変化率が低下した状態にまで圧縮するという第2圧縮条件を満たすように、第2圧縮の態様すなわち第2圧縮速度V2及び第2圧縮距離L2の組み合わせを決めている。
本発明者らは、第1圧縮速度V1、第1圧縮距離L1、第2圧縮速度V2、第2圧縮距離L2の種々の組み合わせから得られた各粉乳圧縮成型物を調べた結果から、第1圧縮速度V1よりも第2圧縮速度V2を小さくしたときに、第2圧縮距離L2の変化に対する粉乳圧縮成型物の硬度の変化率(増加率)が低下する特異的な点(以下、硬度特異点と称する)が存在することを見出した。また、発明者らは、その硬度特異点に対応する第2圧縮距離L2は、第1圧縮速度V1によって変化し、第2圧縮速度V2の影響も受けることも見出した。
硬度特異点が存在するのは、粉乳圧縮成型物の内部の粉乳の粒子の再配列が支配的な圧縮状態から、粉乳圧縮成型物の内部で塑性変形が支配的な圧縮状態に変化するためであると推察される。また、第1圧縮速度V1が大きいほど、粉乳圧縮成型物の内部の塑性変形に必要なエネルギーが大きくなるため、第1圧縮速度V1に応じて硬度特異点に対応する第2圧縮距離L2が変化し、またその第2圧縮距離L2が第2圧縮速度V2の影響を受けるものと推察される。
上記の知見に基づき、上記第2圧縮条件を満たすように第2圧縮を行うことで、圧縮時間の増加を抑えながら、効率的に粉乳圧縮成型物の硬度を大きく向上させている。
また、第1圧縮速度V1の第2圧縮速度V2に対する比率である圧縮速度比(=V1/V2)を5以上とすることも好ましい。圧縮速度比を5以上とすることにより、粉乳圧縮成型物の硬度を大きく増大させることができる。
好ましくは、第1圧縮速度V1は1.0mm/S以上100.0mm/S以下の範囲に設定され、第1圧縮距離L1は5.0mm以上10.0mm以下の範囲に設定され、第2圧縮速度V2は0.25mm/S以上50.0mm/S以下の範囲に設定され、第2圧縮距離L2は0.2mm以上1.6mm以下の範囲に設定される。
上記打錠機の構成は、一例であり、第1圧縮と第2圧縮とで圧縮速度を変化させて圧縮できるものであれば、その構成は限定されない。また、この例では、第2圧縮において、最終厚みまで圧縮を行っているが、第2圧縮に続けて、第2圧縮速度から速度を変化させた圧縮をさらに行ってもよい。この場合、第2圧縮よりも後の圧縮で最終の厚みまで粉乳圧縮成型物を圧縮する。
上記以外の打錠機の構成は、例えば特許文献3に記載の打錠機と同様である。例えば、圧縮成型が行われたスライドプレートの臼30Aは取り出しゾーンに移動する。打錠機の取り出しゾーンにおいて、スライドプレート30の臼30Aから下杵31及び上杵32が取り外され、押出部によって粉乳圧縮成型物が押し出される。押し出された粉乳圧縮成型物は、回収トレーで回収される。上記の打錠機で、スライドプレート30の臼30Aへの粉乳供給部は、例えば底部開口から臼30Aに粉乳を供給する漏斗を含む装置により実現されている。
粉乳を圧縮成型する工程において、環境の温度は特に限定されず、例えば室温でも良い。具体的には、環境の温度は、例えば5℃~35℃である。環境の湿度は、例えば0%RH~60%RHである。圧縮圧力は、例えば1MPa~30MPa、好ましくは1MPa~20MPaである。特に粉乳を固形化させる際に、圧縮圧力を1MPa~30MPaの範囲内で調整して、粉乳圧縮成型物の硬度が4N以上20N未満の範囲内となるように制御することが好ましい。これにより、利便性(扱いやすさ)のある実用性の高い固形乳10Sを製造することができる。なお、粉乳圧縮成型物は、少なくとも後続の加湿工程や乾燥工程で型崩れしないような硬度(例えば4N以上)を有する。例えば、粉乳圧縮成型物の好ましい破断応力の範囲は、破断面積の範囲を考慮すると、0.014N/mm2以上0.068N/mm2未満である。
上記のように第1圧縮と第2圧縮とで圧縮速度を変化させて圧縮成型することで、表面から内部への深さ方向の比表面積voxel比プロファイルが以下のようになっている粉乳圧縮成型物を製造できる。ここで、領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aは、0.406を超え0.420未満である。また、領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、0.414を超え0.434未満である。領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aより大きい。領域bの比表面積voxel比の平均値Bは、領域aの比表面積voxel比の平均値A程度から領域cの比表面積voxel比の平均値C程度までの値となる。
加湿処理は、圧縮成型する工程で得られた粉乳圧縮成型物を加湿処理する工程である。粉乳圧縮成型物を加湿すると、粉乳圧縮成型物の表面には、タック(べとつき)が生じる。その結果、粉乳圧縮成型物の表面近傍の粉体粒子の一部が液状やゲル状となり、相互に架橋することとなる。そして、この状態で乾燥すると、粉乳圧縮成型物の表面近傍の強度を内部の強度よりも高めることができる。高湿度の環境下に置く時間(加湿時間)を調整することで、架橋の程度(拡がり具合)を調整し、これにより、加湿工程前の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度(例えば4N以上20N未満)を、固形乳10Sとして必要な目的の硬度(例えば40N)にまで高めることができる。但し、加湿時間の調整によって高めることができる硬度の範囲(幅)は限られている。即ち、圧縮成型後の粉乳圧縮成型物を加湿するため、ベルトコンベアー等で運搬する際に、粉乳圧縮成型物の硬度が十分でないと、固形乳10Sの形状を保てなくなる。また、圧縮成型時に粉乳圧縮成型物の硬度が高すぎると、空隙率が小さく、溶解性に乏しい固形乳10Sしか得られなくなる。このため、加湿工程前の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度が十分に高くなり、かつ固形乳10Sの溶解性を十分に保てるように、圧縮成型されることが好ましい。
加湿処理において、粉乳圧縮成型物の加湿方法は特に限定されず、例えば粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く方法、粉乳圧縮成型物に対して水等を直接噴霧する方法、及び、粉乳圧縮成型物に対して蒸気を吹き付ける方法等がある。粉乳圧縮成型物を加湿するためには、加湿手段を用いるが、そのような加湿手段としては、例えば、高湿度室、スプレー及びスチーム等がある。
粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く場合、環境の湿度は、例えば60%RH~100%RHの範囲内である。そして、加湿時間は、例えば5秒~1時間であり、高湿度環境における温度は、例えば30℃~100℃である。粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く際には100℃を超える温度とすることもでき、環境の湿度は例えば100%RH以下の範囲であり、加湿時間は例えば1秒~10秒であり、温度は例えば100℃超330℃以下である。
加湿処理において粉乳圧縮成型物に加えられる水分量(以下、「加湿量」ともいう)は、適宜調整可能である。加湿量は、圧縮成型工程後の粉乳圧縮成型物の質量の0.5重量%~3重量%が好ましい。加湿量を0.5重量%よりも少なくすると、固形乳10Sに十分な硬度(錠剤硬度)を与えることができず、好ましくない。また、加湿量が3重量%を超えると、粉乳圧縮成型物が過剰に液状やゲル状となって溶解し、圧縮成型した形状から変形したり、運搬中にベルトコンベアー等の装置へ付着したりすることとなるので、好ましくない。
乾燥処理は、加湿処理で加湿された粉乳圧縮成型物を乾燥させるための工程である。これにより、粉乳圧縮成型物の表面タック(べとつき)がなくなり、固形乳10Sを扱いやすくなる。つまり、加湿処理と乾燥処理は、圧縮成型後の粉乳圧縮成型物の硬度を高めて、固形乳10Sとして望まれる特性や品質を付与する工程に相当する。
乾燥処理において、粉乳圧縮成型物の乾燥方法は特に限定されず、加湿処理を経た粉乳圧縮成型物を乾燥させることができる公知の方法を採用できる。例えば、低湿度・高温度条件下に置く方法、乾燥空気・高温乾燥空気を接触させる方法等がある。
低湿度・高温度の条件下に置く場合、湿度は、例えば0%RH~30%RHである。このように、できるだけ湿度を低く設定することが好ましい。このとき、温度は例えば20℃~150℃である。乾燥時間は、例えば0.2分~2時間である。
ところで、固形乳10Sに含まれる水分が多いと、保存性が悪くなり、風味の劣化や外観の変色が進行しやすくなる。したがって、乾燥工程において、乾燥温度や乾燥時間等の条件を制御することによって、固形乳10Sの水分含有率を、原料として用いる粉乳の水分含有率の前後1%以内に制御(調整)することが好ましい。
このようにして製造された固形乳10Sは、一般的に、温水に溶かして飲用に供される。具体的には、蓋のできる容器等へ温水を注いだ後に、固形乳10Sを必要な個数で投入するか、固形乳10Sを投入した後に温水を注ぐ。そして、好ましくは容器を軽く振ることにより、固形乳10Sを速く溶解させ、適温の状態で飲用する。また、好ましくは1個~数個の固形乳10S(より好ましくは1個の固形乳10S)を温水に溶かせば、1回の飲用に必要な分量の液状乳となるように、固形乳10Sの体積として、例えば1cm3~50cm3となるように調製してもよい。なお、圧縮成型工程で用いる粉乳の分量を変更することで、固形乳10Sの体積を調整できる。
上記のように第1圧縮と第2圧縮とで圧縮速度を変化させて圧縮成型して製造した粉乳圧縮成型物に硬化処理を施すことで、表面から内部への深さ方向の比表面積voxel比プロファイルが以下のようになっている固形乳を製造できる。ここで、領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aは、0.353を超え0.391未満である。また、領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、0.390を超え0.444未満である。領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cは、領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aより大きい。領域bの比表面積voxel比の平均値Bは、領域aの比表面積voxel比の平均値A程度から領域cの比表面積voxel比の平均値C程度までの値となる。
(固形乳10Sの作用・効果)
本実施形態の固形乳10Sの比表面積voxel比は、固形乳10Sの表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.353を超え0.391未満であり、固形乳10Sの表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.390を超え0.444未満であり、表面から2mmの深さまでの平均値Aより大きい構成である。このような比表面積voxel比プロファイルの固形乳は、第1圧縮速度V1での第1圧縮及びそれに引き続いて行われる第1圧縮速度V1より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮により製造可能であり、第2圧縮速度V2での圧縮のみで製造する場合と同程度の高い強度を持たせつつ、より生産効率を向上して製造することが可能である。このような固形乳は、第1圧縮速度V1での第1圧縮の後に、より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮を行うことにより、硬化前の状態での硬度を高めて破壊耐性を確保できる。本実施形態の固形乳10Sは、十分な硬度を保ちながら、空隙率を高く確保することにより高い溶解性を維持することができる。
(粉乳圧縮成型物の作用・効果)
本実施形態の粉乳圧縮成型物は、比表面積voxel比が粉乳圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.406を超え0.420未満であり、粉乳圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.414を超え0.434未満であり、表面から2mmの深さまでの平均値Aより大きい構成である。このような比表面積voxel比プロファイルの粉乳圧縮成型物は、第1圧縮速度V1での第1圧縮及びそれに引き続いて行われる第1圧縮速度V1より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮により製造可能であり、第2圧縮速度V2での圧縮のみで製造する場合と同程度の高い強度を持たせつつ、より生産効率を向上して製造することが可能である。このような粉乳圧縮成型物は、第1圧縮速度V1での第1圧縮の後に、より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮を行うことにより、硬度を高めて破壊耐性を確保できる。本実施形態の粉乳圧縮成型物は、十分な硬度を保ちながら、空隙率を高く確保することにより高い溶解性を維持することができる。
<第2実施形態>
固形乳は、固形食品の一例である。上記の第1実施形態は、粉乳を圧縮成型した粉乳圧縮成型物と、それを硬化した固形乳であるが、本発明はこれらに限定されない。本実施形態は、食品粉体を圧縮成型した食品粉体圧縮成型物と、それを硬化した固形食品に適用したものである。
上記の食品粉体は、粉乳のほかには、例えば、ホエイプロテイン、大豆プロテイン及びコラーゲンペプチド等のタンパク質粉体、アミノ酸粉体、及びMCT油等の油脂含有粉体を用いることができる。食品粉体には、乳糖あるいはその他の糖質が適宜添加されていてもよい。食品粉体には、乳糖あるいはその他の糖質の他に、脂肪、たん白質、ミネラル及びビタミン等の栄養成分や食品添加物が添加されていてもよい。
さらに、上記の食品粉体のタンパク質粉体は、ミルクカゼイン、ミートパウダー、フィッシュパウダー、エッグパウダー、小麦タンパク質、小麦タンパク質分解物等であっても良い。これらのタンパク質粉体は単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体のホエイプロテイン(ホエイタンパク質)とは、乳中で、カゼインを除くタンパク質の総称である。乳清タンパク質として分類されるものであってもよい。ホエイタンパク質は、ラクトグロブリン、ラクトアルブミン、ラクトフェリン等の複数の成分から構成されている。牛乳などの乳原料を酸性に調整した際に、沈殿するタンパク質がカゼイン、沈殿しないタンパク質がホエイタンパク質となる。ホエイプロテインを含む粉末原料として、例えば、WPC(ホエイタンパク濃縮物、タンパク質含有量が75~85質量%)、WPI(ホエイタンパク分離物、タンパク質含有量が85質量%以上)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体の大豆プロテイン(大豆タンパク質)は、大豆に含まれるタンパク質であればよく、大豆から抽出されたものでもよい。また、原料大豆から精製したものを用いることもできる。精製方法としては特に限定されず、従来公知の方法を使用できる。このような大豆プロテインとしては、飲食品用素材、医療用素材、サプリメント食品として市販されている粉体を使用することができる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体のアミノ酸粉体に含まれるアミノ酸としては、特に限定されないが、例えばアルギニン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、チロシン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、シトルリン、クレアチン、メチルリジン、アセチルリジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、グリシン、アラニン、スレオニン、シスチンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
また、上記の食品粉体のアミノ酸粉体に含まれるアミノ酸は、天然物および合成体のいずれでもよく、単体のアミノ酸もしくは複数のアミノ酸の混合物を用いることができる。また、アミノ酸として、遊離アミノ酸のみならず、ナトリウム塩、塩酸塩および酢酸塩等の塩ならびにカルニチンおよびオルニチン等の誘導体を用いることができる。
本明細書において「アミノ酸」には、α-アミノ酸、β-アミノ酸およびγ-アミノ酸が含まれる。また、アミノ酸は、L-体およびD-体のいずれであってもよい。
さらに、上記の食品粉体の油脂含有粉体に含まれる油脂は、上述のMCT油の他、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT(Medium Chain Triglyceride, 中鎖脂肪酸トリグリセリド)油等である。
さらに、上記の食品粉体の糖質は、上述の乳糖の他、例えば、オリゴ糖、単糖類、多糖類及び人工甘味料等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。オリゴ糖は、例えば、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ラクチュロース等である。単糖類は、例えば、ブドウ糖、果糖及びガラクトース等である。多糖類は、例えば、デンプン、可溶性多糖類及びデキストリン等である。
さらに、上記の食品粉体の食品添加物の一例としては甘味料が例示できる。この甘味料としては、食品および医薬品に通常使用される任意の甘味料を用いることができ、天然の甘味料および合成甘味料のいずれであってもよい。甘味料は、特に限定されないが、例えばブドウ糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、オリゴ糖、砂糖、グラニュー糖、メープルシロップ、蜂蜜、糖蜜、トレハロース、パラチノース、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、グリセリン、アスパルテーム、アドバンテーム、ネオテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムおよびサッカリンなどを含む。
さらに、上記の食品粉体の食品添加物の一例としては酸味料が例示できる。酸味料は、特に限定されないが、例えば、酢酸、クエン酸、無水クエン酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸およびこれらの塩などを含む。酸味料は、アミノ酸の種類によって生じる苦みを抑制(マスキング)することができる。
さらに、上記の食品粉体の栄養成分としては、脂肪、タンパク質、ミネラル及びビタミン等いかなる成分を含んでも良い。
脂肪としては、例えば、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT(Medium Chain Triglyceride, 中鎖脂肪酸トリグリセリド)油等である。
タンパク質としては、例えば、乳タンパク質及び乳タンパク質分画物、動物性タンパク質、植物性タンパク質、それらのタンパク質を酵素等により種々の鎖長に分解したペプチド及びアミノ酸等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。乳タンパク質は、例えば、カゼイン、乳清タンパク質(α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン等)、乳清タンパク質濃縮物(WPC)及び乳清タンパク質分離物(WPI)等である。動物性タンパク質は、例えば、卵タンパク質(エッグパウダー)、ミートパウダー、フィッシュパウダー等である。植物性タンパク質は、例えば、大豆タンパク質及び小麦タンパク質等である。ペプチドは、例えば、コラーゲンペプチド等である。アミノ酸は、例えば、タウリン、シスチン、システイン、アルギニン及びグルタミン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
ミネラルとしては、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、亜鉛、鉄、銅およびセレン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、葉酸、パントテン酸およびビオチン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
また、その他の食品素材としては、例えば、ココアパウダー、カカオパウダー、チョコレートパウダー、乳酸菌・ビフィズス菌等の有用微生物を含む微生物粉体、乳に微生物を加えて発酵させた培養物を粉体とした乳発酵成分粉体、チーズを粉体としたチーズ粉体、機能性食品を粉体とした機能性食品粉体、総合栄養食を粉体とした総合栄養食粉体等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
本発明に係る固形食品は、日常摂取する食品、健康食品、健康補助食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、サプリメント、機能性表示食品などの形態であることができる。
食品粉体を用いて所望の形状に圧縮成型して食品粉体圧縮成型物を形成できる。得られた食品粉体圧縮成型物を硬化することで、固形食品を形成できる。上記の食品粉体を原料として用いることを除いて、第1実施形態と同様の圧縮成型工程及び硬化工程を行うことで製造可能である。即ち、圧縮成形工程では、まず第1圧縮速度V1で第1圧縮距離L1の第1圧縮を行い、この第1圧縮から続けて第1圧縮速度V1より遅い第2圧縮速度V2で第2圧縮距離L2の第2圧縮を行う。
食品粉体を圧縮成型した食品粉体圧縮成型物と、それを硬化した固形食品とは、第1実施形態に記載した硬度計を用いて硬度を測定可能である。食品粉体圧縮成型物の好ましい硬度は4N以上20N未満であり、固形食品の好ましい硬度は20N以上100N以下である。また、食品粉体圧縮成型物の好ましい破断応力は0.014N/mm2以上0.068N/mm2未満である。固形食品の好ましい破断応力の範囲は、破断面積の範囲を考慮すると、0.068N/mm2以上0.739N/mm2以下である。
本実施形態の固形食品は、表面から内部への深さ方向の比表面積voxel比プロファイルが以下のようになっている。表面から内部への深さは第1実施形態と同様に固形食品の表面から2mmの深さまでの領域を領域a、固形食品の表面から2mmの深さから4mmの深さの領域を領域b、固形食品の表面から4mmの深さから6mmの深さの領域を領域cとする。固形食品の比表面積voxel比は、領域aの平均値Aが領域cの平均値Cより小さい。また、領域cの平均値Cと領域aの平均値Aとの差分(C-A)を領域cの平均値Cで除した比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が9.5%以下である。(C-A)/C×100は0%を超える。これは、領域cの平均値Cが領域aの平均値Aより大きいことを意味する。
固形食品の領域cの平均値Cと領域aの平均値Aとの差分(C-A)を領域cの平均値Cで除した比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100は、9.5%以下であり、好ましくは9.0%以下であり、さらに好ましくは8.5%以下である。
固形食品の領域aにおける比表面積voxel比の平均値Aが、領域cにおける比表面積voxel比の平均値Cより小さいことにより、固形食品の内部(表面から4mmの深さから6mmの深さまで)より表面近傍(表面から2mmの深さまで)の方が原料粉同士がより密接に近づき、密な状態であることがわかる。このことから空隙率は表面近傍の方が小さくなっていることがわかる。比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100の分子である(C-A)は、表面近傍から内部での表面積の変化量に相当する。(C-A)を内部の比表面積voxel比の平均値Cで除した比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100は、固形食品の表面から内部での比表面積voxel比の変化を明確に示す物理量である。
比表面積voxel比が小さいということは、圧縮、もしくは硬化処理の効果によって、粒子が合一して結果的に比表面積が減少していることを意味し、これは合一による粒子の接触点や接触領域が増え、成型物の強度が大きくなることを意味する。ここで比表面積voxel比が小さく、過度に表面だけ圧縮することなく、必要十分な程度にまで中心近傍まで圧縮することができており、このようにして表面側と内側との比表面積voxel比の差が小さくなっている。
固形食品の製造工程において圧縮成型工程を高速の第1圧縮速度V1のみで行うと、粒子間の圧力伝播が加圧方向の法線方向が主となり、一方加圧と接線方向への圧力伝播時間が確保されず、内部まで圧縮されないため主に表面近傍の粒子接触面が増え、結果的にCとAとの差分(C-A)が大きくなって比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100は9.5%を超える。また、圧縮成型工程を低速の第2圧縮速度V2のみで行うと、圧力は加圧の法線方向ならびに接線方向にまで十分に伝播するため、表面から内部まで圧縮されるが、表面がより圧縮されてしまい、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100は9.5%を超える。本実施形態では、第1圧縮速度V1の第1圧縮及び第2圧縮速度V2の第2圧縮を組み合わせて圧縮成型を行っており、圧縮時の圧力伝播バランス(法線方向と接線方向)を適度に調整したことにより、過度に表面だけ圧縮することなく、また必要十分な程度まで中心近傍まで圧縮することができ、比表面積voxel比は第1圧縮速度V1のみの場合より小さく、また、表面側と内側との比表面積voxel比の差は小さく、硬化後の固形食品の(C-A)/C×100は9.5%以下になる。
本実施形態の固形食品は、第1圧縮速度V1での第1圧縮及びそれに引き続いて行われる第1圧縮速度V1より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮により製造可能であり、第2圧縮速度V2での圧縮のみで製造する場合と同程度の高い強度を持たせつつ、より生産効率を向上して製造することが可能である。このような固形食品は、第1圧縮速度V1での第1圧縮の後に、より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮を行うことにより、硬化前の状態での硬度を高めて破壊耐性を確保できる。本実施形態の固形食品は、十分な硬度を保ちながら、空隙率を高く確保することにより高い溶解性を維持することができる。
本実施形態の食品粉体圧縮成型物の比表面積voxel比についても、数値は異なるが固形食品と同様の状況である。表面から内部への深さは上記と同様に食品粉体圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの領域を領域a、食品粉体圧縮成型物の表面から2mmの深さから4mmの深さの領域を領域b、食品粉体圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さの領域を領域cとする。食品粉体圧縮成型物の比表面積voxel比は、領域aの平均値Aが領域cの平均値Cより小さい。また、領域cの平均値Cと領域aの平均値Aとの差分(C-A)を領域cの平均値Cで除した比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が1.8%以下である。(C-A)及び比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100の物理的意義は、固形食品の場合と同様である。
食品粉体圧縮成型物の領域cの平均値Cと領域aの平均値Aとの差分(C-A)を領域cの平均値Cで除した比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100は、1.8%以下であり、好ましくは1.6%以下であり、さらに好ましくは1.4%以下である。
食品粉体圧縮成型物の製造工程において圧縮成型工程を高速の第1圧縮速度V1のみで行うと、粒子間の圧力伝播が加圧方向の法線方向が主となり、一方加圧と接線方向への圧力伝播時間が確保されず、内部まで圧縮されないため、主に表面近傍の粒子接触面が増え、結果的にCとAとの差分(C-A)が大きくなって(C-A)/C×100は1.8%を超える。また、圧縮成型工程を低速の第2圧縮速度V2のみで行うと、圧力は加圧の法線方向ならびに接線方向にまで十分に伝播するため、表面から内部まで圧縮されるが、表面がより圧縮されてしまい、(C-A)/C×100は1.8%を超える。本実施形態では、第1圧縮速度V1の第1圧縮及び第2圧縮速度V2の第2圧縮を組み合わせて圧縮成型を行っており、圧縮時の圧力伝播バランス(法線方向と接線方向)を適度に調整したことにより、過度に表面だけ圧縮することなく、また必要十分な程度まで中心近傍まで圧縮することができ、比表面積voxel比は第1圧縮速度V1のみの場合より小さく、また、表面側と内側との比表面積voxel比の差は小さく、食品粉体圧縮成型物の(C-A)/C×100は1.8%以下になる。また、(C-A)/C×100は0%を超える。これは、領域cの平均値Cが領域aの平均値Aより大きいことを意味する。
本実施形態の食品粉体圧縮成型物は、第1圧縮速度V1での第1圧縮及びそれに引き続いて行われる第1圧縮速度V1より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮により製造可能であり、第2圧縮速度V2での圧縮のみで製造する場合と同程度の高い強度を持たせつつ、より生産効率を向上して製造することが可能である。このような食品粉体圧縮成型物は、第1圧縮速度V1での第1圧縮の後に、より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮を行うことにより、硬度を高めて破壊耐性を確保できる。本実施形態の食品粉体圧縮成型物は、十分な硬度を保ちながら、空隙率を高く確保することにより高い溶解性を維持することができる。
<実施例>
(実施例の作成)
直径11.28mm、厚さ12mmの円柱状の固形乳試料を実施例として作成した。このような大きさとなる打錠機の臼杵の大きさを調整し、粉乳0.83gを圧縮成型して粉乳圧縮成型物を形成した。圧縮成型においては、第1圧縮距離L1を5~15mm、第1圧縮速度V1を1~150mm/sとした第1圧縮を行った後、第2圧縮距離L2を0.1~1.6mm、第2圧縮速度V2を0.25~15mm/sとした第2圧縮を行った。上記の圧縮距離及び圧縮速度の範囲内で種々の組み合わせの固形乳試料を作製したが、いずれも第2圧縮速度V2を第1圧縮速度V1より遅く設定して形成した。上記で得られた粉乳圧縮成型物に、加湿温度80℃の加湿処理を施し、さらに乾燥温度80℃の乾燥処理を施し、硬化処理が施された固形乳とした。乾燥時間については加湿時の重量増加分が乾燥しきれるように時間を調整した。実施例の試料は、第1圧縮速度V1での第1圧縮及びそれに引き続いて行われる第1圧縮速度V1より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮の2段階で行うことにより、後述の比較例2と比べて生産効率を向上して製造することができた。
(比較例1の作成)
実施例に対して、実施例の第1圧縮速度V1の第1圧縮(高速圧縮)の条件の1回の圧縮成型を行ったことのみ異なる粉乳圧縮成型物を形成し、実施例と同条件の硬化処理を施して固形乳試料を形成し、比較例1とした。
(比較例2の作成)
実施例に対して、実施例の第2圧縮速度V2の第2圧縮(低速圧縮)の条件の1回の圧縮成型を行ったことのみ異なる粉乳圧縮成型物を形成し、実施例と同条件の硬化処理を施して固形乳試料を形成し、比較例2とした。
(各試料の硬度)
上記のロードセル式錠剤硬度計を用いて、実施例、比較例1及び比較例2に係る粉乳圧縮成型物の各試料の硬度評価を行った。硬度評価には、上記実施例、比較例1、比較例2のうち、V1=120mm/s、V2=1.2mm/s、V1/V2=100、L1=12.6mm、L2=0.6mmとして作成したものを用いた。各試料の強度評価の結果を表1に示す。ここでは、A~Dの4段階評価とし、Aは「硬い」、Bは「ある程度硬い」、Cは「ある程度柔い」、Dは「柔い」を示す。実施例はA評価であり、硬度は十分確保されていた。比較例1はD評価であり、硬度が不足していた。比較例2はA評価であり、硬度は十分確保されていた。
(各試料の比表面積voxel比)
上記の実施例、比較例1及び比較例2に係る粉乳圧縮成型物及び固形乳の各試料に対して、表面から深さ方向の比表面積voxel比プロファイルを求めた。具体的には、3DCT(3 Dimension Computed Tomography)を用いて各試料の各深さでの断層撮像を行い、取得した画像を画像処理して比表面積voxel比を求めた。撮像の条件(voxel)は比表面積を正確に測定するため、粉体原料の平均粒子径よりはるかに小さい解像度で行う必要があり、平均粒子径の1/30以下などの条件が望ましい。200μm~300μmの平均粒子径の粉体原料の場合、10μm以下の解像度で撮像するのが望ましい。一般的に3DCTの画像から立体の正確な比表面積を直接求めることは難しい。そこで、3DCTの一つ一つのvoxel(CT撮像した際の最小体積の要素で、3次元空間での正規格子単位の値)について、固体だけで満たされているvoxelの総量:Nvと、固体と気体の界面が含まれるvoxelの総量:Nsを計測し、それぞれの総量の比率:Ns/Nvを比表面積に比例する特性値として考え、これを比表面積voxel比と定義する。voxel比を採用することでCTのスライス領域の違いや分解能の違いの影響を受けずに比表面積に関する特性を比較できるようになる。ここでは、表面から2mmの深さまでの平均値Aと、表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cとして求めた。
界面が含まれるvoxel数の計測は画像処理ソフトを用いて行うことができ、例えば、測定画面上を最小voxelの寸法で格子状に分割して手動で個数をカウントする、もしくは同様の手順をソフトウエアに自動的にカウントさせることによって可能である。界面のvoxel数をカウントできるソフトウエアは、例えばImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH))、DRISHTI(National Computational Infrastructure社)、VGStudio MAX(volumegraphics社)、あるいはDragonfly(Object Research Systems社)などが挙げられる。voxel比を採用することでCTのスライス領域の違いや分解能の違いの影響を受けずに比表面積に関する特性を比較できるようになる。
上記の実施例及び比較例に係る粉乳圧縮成型物及び固形乳の各試料の比表面積voxel比の測定には、株式会社リガク製の高分解能3DX線顕微鏡(3次元X線CT装置)(形式:nano3DX)を用いた。比表面積voxel比の測定環境は、温度24℃、湿度33%RHで行った。
ここで比表面積voxel比は、検査領域の大小に左右されずに比表面積の多寡を比較するのに便利な指標であるが、以下の式より比表面積に換算できる。
比表面積[mm-1]={検査領域の固体と気体の界面が含まれるvoxelの総量:Ns×(voxel値)2[mm2]}/{検査領域の固体だけで満たされているvoxelの総量:Nv×(voxel値)3[mm3]}
図7は、実施例及び比較例1,2に係る粉乳圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの領域a及び表面から4mmの深さから6mmの深さまでの領域cの比表面積voxel比を示すグラフである。実施例はV1+V2の欄に示す。比較例1はV1の欄に示す。比較例2はV2の欄に示す。各欄においてaで示す棒グラフは各試料の領域aの比表面積voxel比の平均値Aである。また、cで示す棒グラフは各試料の領域cの比表面積voxel比の平均値Cである。図7に示したように、領域aで、実施例に係る粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比の平均値Aは、比較例1及び比較例2の比表面積voxel比の平均値Aの間の値となった。また、領域cで、実施例に係る粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比の平均値Cは、比較例1及び比較例2の比表面積voxel比の平均値Cの間の値となった。
図7から、領域aの比表面積voxel比の平均値Aが0.406を超え0.420未満であり、領域cの比表面積voxel比の平均値Cが0.414を超え0.434未満である実施例の粉乳圧縮成型物は、第1圧縮速度V1の第1圧縮(高速圧縮)のみで形成した比較例1と、第2圧縮速度V2の第2圧縮(低速圧縮)のみで形成した比較例2との間の比表面積voxel比プロファイルを有する。このような比表面積voxel比プロファイルの粉乳圧縮成型物は、第1圧縮速度V1の第1圧縮(高速圧縮)の後に第2圧縮速度V2の第2圧縮(低速圧縮)を組み合わせた圧縮成型を行うことにより形成可能であり、粉乳圧縮成型物として十分な程度に硬度を高めて破壊耐性を確保し、かつ、生産効率を向上させることが可能である。また、十分な硬度を保ちながら空隙率を高く確保することにより高い溶解性を維持することができる。
図8は、実施例及び比較例1,2に係る固形乳の表面から2mmの深さまでの領域a及び表面から4mmの深さから6mmの深さまでの領域cの比表面積voxel比を示すグラフである。実施例はV1+V2の欄に示す。比較例1はV1の欄に示す。比較例2はV2の欄に示す。各欄においてaで示す棒グラフは各試料の領域aの比表面積voxel比の平均値Aである。また、cで示す棒グラフは各試料の領域cの比表面積voxel比の平均値Cである。図8に示したように、領域aで、実施例に係る固形乳の比表面積voxel比の平均値Aは、比較例1及び比較例2の比表面積voxel比の平均値Aの間の値となった。また、領域cで、実施例に係る固形乳の比表面積voxel比の平均値Cは、比較例1及び比較例2の比表面積voxel比の平均値Cの間の値となった。
図8から、領域aの比表面積voxel比の平均値Aが0.353を超え0.391未満であり、領域cの比表面積voxel比の平均値Cが0.390を超え0.444未満である実施例の固形乳は、第1圧縮速度V1の第1圧縮(高速圧縮)のみで形成した比較例1と、第2圧縮速度V2の第2圧縮(低速圧縮)のみで形成した比較例2との間の比表面積voxel比プロファイルを有する。このような比表面積voxel比プロファイルの固形乳は、第1圧縮速度V1の第1圧縮(高速圧縮)の後に第2圧縮速度V2の第2圧縮(低速圧縮)を組み合わせた圧縮成型と、硬化処理とを行うことにより形成可能である。このようにして得られる固形乳は、十分な程度に硬度を高めて破壊耐性を確保し、かつ、生産効率を向上させることが可能である。また、十分な硬度を保ちながら空隙率を高く確保することにより高い溶解性を維持することができる。
(各試料の比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100の比較)
図9は実施例及び比較例1、2に係る粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比減少率を示すグラフである。粉乳圧縮成型物について、上記で得られた各試料の領域aの比表面積voxel比の平均値A及び領域cの比表面積voxel比の平均値Cから、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100の値を算出すると、実施例(V1+V2)では1.35%となり、1.8%以下の値となった。一方、比較例1(V1)では、3.42%となり、1.8%を超えていた。また、比較例2(V2)では、1.99%となり、こちらも1.8%を超えていた。実施例は比較例2よりも短時間で高い生産能力で打錠しているにも関わらず、高い強度を有する成型物ができていた。
図10は実施例及び比較例1、2に係る固形乳の比表面積voxel比減少率を示すグラフである。固形乳について、上記で得られた各試料の領域aの比表面積voxel比の平均値A及び領域cの比表面積voxel比の平均値Cから、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100の値を算出すると、実施例(V1+V2)では8.00%となり、9.5%より小さい値となった。一方、比較例1(V1)では、11.98%となり、9.5%を超えていた。また、比較例2(V2)では、9.89%となり、比較例1と同様に9.5%を超えていた。実施例は比較例2よりも短時間で高い生産能力で打錠しているにも関わらず、高い強度を有する成型物ができていた。
実施例の食品粉体圧縮成型物及びそれを硬化してなる固形食品は、第1圧縮速度V1での第1圧縮及びそれに引き続いて行われる第1圧縮速度V1より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮により圧縮成型して製造可能である。第2圧縮速度V2での圧縮のみで製造する場合と同程度の高い強度を持たせつつ、より生産効率を向上して製造することが可能である。このような食品粉体圧縮成型物及びそれを硬化してなる固形食品は、第1圧縮速度V1での第1圧縮の後に、より遅い第2圧縮速度V2での第2圧縮を行うことにより、硬化前の硬度を高めて破壊耐性を確保でき、十分な硬度を保ちながら空隙率を高く確保することにより高い溶解性を維持することができる。
図11は、実施例及び比較例1,2に係る粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比の平均値及び固形乳の比表面積voxel比の平均値の相関を説明するグラフである。粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比の平均値及び固形乳の比表面積voxel比の平均値は、1対1対応の相関関係を有することが確認された。これから、固形乳の比表面積voxel比から、粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比を推定できる。即ち、固形乳の状態から粉乳圧縮成型物の状態を推定できる。
尚、本開示は以下のような構成であってもよい。以下の構成を有するならば、破壊耐性を確保しつつ、生産効率を向上して製造することができる。
(1)食品粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品の比表面積voxel比は、前記固形食品の表面から2mmの深さまでの平均値Aが、前記固形食品の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cより小さく、前記平均値Cと前記平均値Aとの差分(C-A)を前記平均値Cで除した、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が9.5%以下である固形食品。
(2)食品粉体を圧縮成型した固形状の食品粉体圧縮成型物であって、前記食品粉体圧縮成型物の比表面積voxel比は、前記食品粉体圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの平均値Aが、前記食品粉体圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cより小さく、前記平均値Cと前記平均値Aとの差分(C-A)を前記平均値Cで除した、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が1.8%以下である食品粉体圧縮成型物。
(3)粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳の比表面積voxel比は、前記固形乳の表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.353を超え0.391未満であり、前記固形乳の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.390を超え0.444未満であり、前記平均値Aより大きい固形乳。
(4)粉乳を圧縮成型した固形状の粉乳圧縮成型物であって、前記粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比は、前記粉乳圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.406を超え0.420未満であり、前記粉乳圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.414を超え0.434未満であり、前記平均値Aより大きい粉乳圧縮成型物。
(5)食品粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品の比表面積voxel比は、前記固形食品の表面から2mmの深さまでの平均値Aが、前記固形食品の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cより小さく、前記平均値Cと前記平均値Aとの差分(C-A)を前記平均値Cで除した、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が9.5%以下である構成となるように、食品粉体を圧縮成型し、得られた食品粉体圧縮成型物に硬化処理を行うことによって形成された固形食品。
(6)食品粉体を圧縮成型した固形状の食品粉体圧縮成型物であって、前記食品粉体圧縮成型物の比表面積voxel比は、前記食品粉体圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの平均値Aが、前記食品粉体圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cより小さく、前記平均値Cと前記平均値Aとの差分(C-A)を前記平均値Cで除した、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が1.8%以下である構成となるように、食品粉体を圧縮成型することによって形成された食品粉体圧縮成型物。
(7)粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳の比表面積voxel比は、前記固形乳の表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.353を超え0.391未満であり、前記固形乳の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.390を超え0.444未満であり、前記平均値Aより大きい構成となるように、粉乳を圧縮成型し、得られた粉乳圧縮成型物に硬化処理を行うことによって形成された固形乳。
(8)粉乳を圧縮成型した固形状の粉乳圧縮成型物であって、前記粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比は、前記粉乳圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.406を超え0.420未満であり、前記粉乳圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.414を超え0.434未満であり、前記平均値Aより大きい構成となるように、粉乳を圧縮成型することによって形成された粉乳圧縮成型物。
(9)食品粉体を圧縮成型して硬化した固形状の固形食品であって、前記固形食品の破断応力は0.068N/mm2以上0.739N/mm2以下であり、前記固形食品の比表面積voxel比は、前記固形食品の表面から2mmの深さまでの平均値Aが、前記固形食品の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cより小さく、前記平均値Cと前記平均値Aとの差分(C-A)を前記平均値Cで除した、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が9.5%以下である固形食品。
(10)食品粉体を圧縮成型した固形状の食品粉体圧縮成型物であって、前記食品粉体圧縮成型物の破断応力は0.068N/mm2未満であり、前記食品粉体圧縮成型物の比表面積voxel比は、前記食品粉体圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの平均値Aが、前記食品粉体圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cより小さく、前記平均値Cと前記平均値Aとの差分(C-A)を前記平均値Cで除した、比表面積voxel比の減少率(C-A)/C×100が1.8%以下である食品粉体圧縮成型物。
(11)粉乳を圧縮成型して硬化した固形状の固形乳であって、前記固形乳の破断応力は0.068N/mm2以上0.739N/mm2以下であり、前記固形乳の比表面積voxel比は、前記固形乳の表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.353を超え0.391未満であり、前記固形乳の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.390を超え0.444未満であり、前記平均値Aより大きい固形乳。
(12)粉乳を圧縮成型した固形状の粉乳圧縮成型物であって、前記粉乳圧縮成型物の破断応力は0.068N/mm2未満であり、前記粉乳圧縮成型物の比表面積voxel比は、前記粉乳圧縮成型物の表面から2mmの深さまでの平均値Aが0.406を超え0.420未満であり、前記粉乳圧縮成型物の表面から4mmの深さから6mmの深さまでの平均値Cが0.414を超え0.434未満であり、前記平均値Aより大きい粉乳圧縮成型物。