以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る脱水システムの構成を示す模式的な図である。以下、鉛直方向に沿った方向を、方向Zとする。さらに言えば、方向Zは、鉛直方向の上方、すなわち地表から離れる方向に沿った方向であり、方向Zと反対の方向が、鉛直方向の下方、すなわち地表に近づく方向に沿った方向である。また、方向Zに直交する方向を、方向Xとし、方向Z及び方向Xに直交する方向を、方向Yとする。方向X及び方向Yは、水平に沿った方向である。
図1に示すように、本実施形態に係る脱水システム1は、汚泥Sを脱水するシステムであり、汚泥脱水装置10と、後段脱水装置12とを有する。脱水システム1は、前段の汚泥脱水装置10で汚泥Sを重力ろ過した後、汚泥脱水装置10よりも後段の後段脱水装置12で加圧脱水することにより、汚泥Sを脱水ケーキとして排出する汚泥処理設備である。汚泥Sは、下水や工場排水に含まれる汚泥である。
(汚泥脱水装置の全体構成)
図1に示すように、汚泥脱水装置10は、凝集混和槽20と、せき止め板21と、撹拌部22と、側板23と、薬剤添加部24と、ろ布26と、ローラ28a、28b、28c、28d、28eと、水切り部31と、水受け部40A、40Bと、棒体44と、傾斜板58と、制御部59とを有する。
凝集混和槽20は、汚泥脱水装置10による脱水前の汚泥Sが投入される槽である。撹拌部22は、凝集混和槽20内に設けられ、制御部59の制御により回転することで、凝集混和槽20内の汚泥Sを撹拌する。薬剤添加部24は、凝集混和槽20内の汚泥Sに薬剤F1を添加する装置である。薬剤添加部24は、添加口24Aが、凝集混和槽20の方向Z側(鉛直方向上方)に設けられており、添加口24Aから、凝集混和槽20内の汚泥Sに、薬剤F1を添加する。撹拌部22は、薬剤F1が添加された汚泥Sを撹拌することで、薬剤F1を、汚泥S内に分散させる。
ここで、薬剤F1は、高分子凝集剤であり、例えば、アニオン性高分子凝集剤やカチオン性高分子凝集剤である。ただし、薬剤F1は、汚泥Sの固形成分を凝集させる薬剤であれば、任意の薬剤であってよい。また、薬剤添加部24は、添加口24Aが凝集混和槽20の方向Z側に設けられているが、添加口24Aの位置はこれに限られない。薬剤添加部24は、ろ布26に供給される前の汚泥Sに薬剤F1を添加できる位置に、添加口24Aが設けられていればよい。
凝集混和槽20には、投入口20Aが設けられている。投入口20Aは、ろ布26に汚泥を供給するための開口である。投入口20Aは、ろ布26の方向Z側、すなわち、ろ布26よりも鉛直方向上方に設けられている。凝集混和槽20内において、薬剤F1が添加されて分散した汚泥Sは、投入口20Aから、ろ布26の上面26Aに投入される。
ろ布26は、上面26Aと底面26Bとを有するベルト状の部材である。上面26Aは、後述する前区間B1および後区間B2において、ろ布26の方向Z側(鉛直方向上側)となる表面である。底面26Bは、上面26Aと反対側の表面であり、後述する前区間B1および後区間B2において、ろ布26の方向Zと反対側(鉛直方向下側)となる表面である。また、ろ布26は、上面26Aから底面26Bへ、液体を透過する部材で形成されている。ろ布26は、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。
ろ布26は、ローラ28a、28b、28c、28d、28eに巻き掛けられ、一方向に周回駆動される無端状のろ布ベルトである。ろ布26は、十分な張力でローラ28a、28b、28c、28d、28eに巻き掛けられている。ろ布26は、制御部59により図示しないモータ等の駆動源を駆動させることで、図1中に示す矢印の方向(図1では反時計周りの方向)に走行可能である。
汚泥脱水装置10においてろ布26が汚泥Sを搬送する区間は、前区間B1と後区間B2とに区分される。前区間B1は、ろ布26が搬送方向A1に移動(走行)する区間である。搬送方向A1は、方向Yに向かうに従って方向Z側に傾斜した方向である。前区間B1は、ローラ28aとローラ28bとの間の区間である。ローラ28aは、投入口20Aの方向Zと反対側(鉛直方向下方)に設けられており、ローラ28bは、ローラ28aよりも方向Y側であって、ローラ28aよりも方向Z側に設けられている。ろ布26は、前区間B1において、ローラ28a、28bに巻き掛けられている。従って、ろ布26は、前区間B1において、ローラ28aの位置からローラ28bの位置に向かうに従って方向Z側に傾斜して延在しており、ローラ28a、28bの回転により、ローラ28aの位置からローラ28bの位置に向けて移動する。従って、このローラ28aの位置からローラ28bの位置に向けてのろ布26が移動する方向が、搬送方向A1となり、方向Yに向かうに従って方向Z側に傾斜した方向となる。
前区間B1には、上述した投入口20Aと、せき止め板21と、側板23と、水切り部31が設けられている。せき止め板21は、ろ布26の上面26Aから、方向Zに延在する板である。せき止め板21は、投入口20Aよりも、前区間B1の搬送方向A1と反対側に設けられることで、汚泥Sをせき止め、汚泥Sが搬送方向A1と反対側に滑り落ちることを抑制する。側板23は、ろ布26の両側部のそれぞれに設けられており、ろ布26の両側部から方向Zに延在する板である。ろ布26の両側部とは、ろ布26の方向X側の端部(後述の図4に示す側端部26D)と、方向Xの反対側の端部(後述の図4に示す側端部26C)とである。側板23は、前区間B1の全区間、すなわちローラ28aの位置からローラ28bの位置までにわたって設けられているが、前区間B1の一部の区間にのみ設けられていてもよい。水切り部31は、前区間B1において汚泥Sから分離した分離水を、ろ布26の底面から分離させる機能を有する。水切り部31の構成については後述する。
前区間B1には、投入口20Aから汚泥Sが供給される。前区間B1には、脱水が進行する前の汚泥Sが供給されるため、前区間B1は、含水量が多い汚泥Sが供給される区間であるといえる。投入口20Aからの汚泥Sは、前区間B1におけるろ布26の上面26Aに供給される。ろ布26は、前区間B1において、上面26Aに載せた投入口20Aからの汚泥Sを、搬送方向A1に搬送する。ろ布26は、前区間B1において、汚泥Sを搬送方向A1に搬送しつつ、重力により、汚泥Sから、液体成分である分離水を分離する。ろ布26は、汚泥Sの分離水を、上面26Aから底面26Bまで透過させて、底面26Bから分離水を流下させる。これにより、ろ布26は、前区間B1において、重力ろ過により、汚泥Sを脱水する。
また、前区間B1は、ろ布26が、方向Yに向かうに従って方向Z側に傾斜している区間である。前区間B1に供給された含水量の多い汚泥Sは、重力により方向Yと反対側に移動するが、せき止め板21によってせき止められて、ろ布26の移動に伴い搬送方向A1側に搬送される。また、側板23も、ろ布26上の汚泥Sをせき止めて、汚泥Sが方向X側から流下することを抑制する。すなわち、せき止め板21と側板23とは、前区間B1におけるろ布26上の汚泥Sをせき止めて、汚泥Sが搬送方向A1以外の方向から流下することを抑制する。汚泥Sは、前区間B1において、せき止め板21と、側板23と、ろ布26とに囲まれ、重力によりそれらに押し付けられることで、脱水がより促進される。このように前区間B1にせき止め板21と側板23とを設けることで、汚泥Sを減容化し、前区間B1に汚泥Sを連続して適切な速度で投入しても、常に一定の貯留量を維持する事が可能となる。
このように、前区間B1では、含水量の多い汚泥Sが、重力脱水される。前区間B1に供給される汚泥Sの含水率は、例えば95%以上99%以下である。そして、前区間B1から後区間B2に供給される汚泥S、すなわち、後区間B2の入口における、前区間B1で脱水された後の汚泥Sの含水率は、例えば90%以上98%以下である。ただし、含水率はこれらの値に限られない。
後区間B2は、ろ布26が搬送方向A2に移動(走行)する区間である。後区間B2は、ローラ28bとローラ28cとの間の区間であり、前区間B1よりも後段側(搬送方向A1の下流側)の区間である。本実施形態では、搬送方向A2は、方向Yに沿った方向である。ローラ28cは、ローラ28bよりも方向Y側に設けられているが、方向Zにおける位置は、ローラ28bと略同一となる。ろ布26は、後区間B2において、ローラ28b、28cに巻き掛けられている。従って、ろ布26は、後区間B2において、ローラ28bの位置からローラ28cの位置まで延在しており、ローラ28b、28cの回転により、ローラ28bの位置からローラ28cの位置に向けて移動する。このローラ28bの位置からローラ28cの位置に向けてのろ布26が移動する方向が、搬送方向A2となり、方向Yに沿った方向となる。このように、搬送方向A2は、方向Yに沿っていて方向Zへ傾斜していないが、搬送方向A1よりも、方向Zへの傾斜が小さければよい。なお、搬送方向A1、A2は、方向Xに対して直交している。すなわち、方向Xは、搬送方向A1、A2及び方向Zに直交する方向であり、ろ布26の幅方向であるといえる。
前区間B1内を搬送方向A1に沿って搬送されてきた汚泥Sは、ローラ28bの位置を境界として、後区間B2に搬入される。ろ布26は、前区間B1よりも搬送方向A1側の区間である後区間B2において、上面26Aに載せた汚泥Sを、搬送方向A2に搬送する。ろ布26は、後区間B2において、前区間B1で脱水された汚泥Sを、搬送方向A2に搬送しつつ、更に重力ろ過により脱水する。
棒体44は、後区間B2におけるろ布26の上面26Aに設けられており、後区間B2の全域にわたって複数設けられている。棒体44は、位置が固定されており、ろ布26の走行と共に移動するものではない。棒体44は、下端部が、ろ布26の上面26Aから方向Z側に若干離間している。棒体44は、ろ布26の上面26Aを搬送される汚泥Sと接触することで、汚泥Sを分散させ、その水切りを促進するための障害物である。棒体44の設置位置や本数、形状等は、適宜変更可能である。
汚泥Sは、ろ布26によって後区間B2を搬送されつつ、重力脱水された後、汚泥脱水装置10における後区間B2の出口から排出・落下され、次工程の後段脱水装置12に投入される。また、傾斜板58は、汚泥脱水装置10の出口と後段脱水装置12との間に設けられるガイドであり、汚泥脱水装置10から排出・落下した汚泥を、後段脱水装置12の投入位置となるろ布62上へと導く。
後区間B2では、このように、前区間B1で脱水された後の汚泥Sが、重力脱水される。後区間B2の出口における汚泥S、すなわち後区間B2で脱水された後の後段脱水装置12の入口における汚泥Sの含水率は、例えば85%以上95%以下である。ただし、含水率はこれらの値に限られない。
なお、後区間B2には、前区間B1で脱水された後の汚泥Sが供給されるため、後区間B2における汚泥Sの含水率は、前区間B1における汚泥Sの含水率よりも低い。そのため、後区間B2での脱水を促進するよう、後区間B2に、汚泥Sを加圧脱水するための機構を設けてもよい。この機構としては、例えば、ろ布26の上面26A側に設けられ、汚泥Sをろ布26側に押し付ける機構(ローラなど)が挙げられる。また、この機構としては、例えば、ろ布26の上面26A側に設けられて、方向X側に延在するスクリューが挙げられ、このスクリューは、回転することにより汚泥Sを方向Xの中央側に集めることで、汚泥Sを圧縮して脱水を促進することができる。また、後区間B2には、例えば無機系凝集剤など、薬剤F1と種類が異なる薬剤を汚泥Sに添加する薬剤添加部を設けてもよい。
また、水受け部40Aは、前区間B1におけるろ布26の底面26Bよりも方向Zと反対側(鉛直方向下方)に設けられている。水受け部40Aは、水切り部31よりも方向Zと反対側に設けられている。水受け部40Aは、前区間B1の全域にわたって設けられている。水受け部40Aは、前区間B1におけるろ布26の底面26B、および水切り部31から流下された分離水を受け止めて回収する。水受け部40Aで回収した分離水は、廃棄されてもよいし、ろ布26等の洗浄水などとして再利用されてもよい。
また、水受け部40Bは、後区間B2におけるろ布26の底面26Bよりも方向Zと反対側(鉛直方向下方)に設けられている。水受け部40Bは、後区間B2の全域にわたって設けられている。水受け部40Bは、後区間B2におけるろ布26の底面26Bから流下された分離水を受け止めて回収する。
制御部59は、汚泥脱水装置10及び後段脱水装置12の各部の制御を行う制御装置である。制御部59は、例えば、撹拌部22による撹拌を制御したり、薬剤添加部24の薬剤F1の添加量やタイミングを制御したり、ろ布26の走行速度を制御したりする。
(後段脱水装置の全体構成)
次に、後段脱水装置12について説明する。後段脱水装置12は、汚泥脱水装置10から搬送された汚泥Sを、一対のろ布62、63間で搬送しながら加圧脱水する脱水装置である。後段脱水装置12は、ろ布62、63と、ローラ64a、64b、64c、64d、64e、64f、64g、64h、64i、64j、64k、64l、64m、64n、64o、64p、64qと、均し板65と、排出トレイ66と、スクレーバ68と、水受け部70とを有する。
下側のろ布62は、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布62は、十分な張力で複数のローラ64aからローラ64n間に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、図1中に示す矢印の方向(図1では時計周り方向)に走行可能である。
略同様に、上側のろ布63についても、例えば、通水性を持った長尺帯状のろ布や、微細な孔部が網目状に複数形成された長尺帯状の金属スクリーン等によって構成される。ろ布63は、十分な張力で複数のローラ64o,64b,64c,64d,64e,64f,64g,64h,64i,64j,64p,64q間に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、図1中に示す矢印の方向(図1では反時計周り方向)に走行可能である。
ろ布62とろ布63とは、ローラ64b~64i間での外周面(表面)同士を上下に蛇行させながら当接(又は近接)配置した部分において、汚泥Sを加圧脱水する。また、ろ布62とろ布63とは、ローラ64j,64p間での外周面(表面)同士を当接(又は近接)配置した部分において、汚泥Sをさらに加圧圧搾して、汚泥Sを所望の水分率の脱水ケーキとして、外部に排出する。
均し板65は、後段脱水装置12の入口付近に設けられる。さらに詳しくは、均し板65は、汚泥脱水装置10からろ布62上への汚泥Sの落下位置の下流側(汚泥Sの搬送方向の下流側)であって、鉛直方向上方に配置される。均し板65は、下流側に向かって次第に鉛直方向下方に傾斜したプレート部材であり、汚泥Sを鉛直方向下方に押さえつける方向に付勢された板ばね部材で形成してもよい。均し板65は、汚泥脱水装置10の出口からろ布62上へと落下・投入された汚泥Sの高さをある程度均一化させ、ろ布62、63間に円滑に導入する。
排出トレイ66は、後段脱水装置12の出口に設けられる。排出トレイ66は、ローラ64jの外周面を走行するろ布62に近接するよう配置されている。ろ布62とろ布63とで加圧圧搾された汚泥S(脱水ケーキ)は、排出トレイ66上を滑りながら排出される。また、スクレーバ68(掻き取り板)は、排出トレイ66の鉛直方向上方に設けられている。スクレーバ68は、ローラ64pの外周面を走行するろ布63に近接するように配置されている。ローラ64j,64p間からろ布63に付着したままの汚泥Sは、スクレーバ68によって掻き取られて排出トレイ66へと排出される。後段脱水装置12の出口における汚泥S、すなわち後段脱水装置12で脱水された後の排出トレイ66から排出される汚泥Sの含水率は、例えば70%以上85%以下である。ただし、含水率はこれらの値に限られない。
また、水受け部70は、ろ布62、63よりも方向Zと反対側(鉛直方向下方)に設けられている。水受け部70は、ろ布62、63による加圧で汚泥Sから分離された分離水を受け止めて回収する。
(水切り部について)
脱水システム1は、以上のように構成された汚泥脱水装置10と後段脱水装置12とにより、汚泥Sから分離水を分離することで、汚泥Sを脱水する。ここで、汚泥Sは、最前段である前区間B1においては、含水量が多くなっているため、分離される分離水の量も多くなる。前区間B1において汚泥Sから分離された分離水は、ろ布26の底面26Bにしみ出し、底面26Bから分離されて、水受け部40Aに流下される。しかし、分離水は、ろ布26の底面26Bに到達したら、すぐに底面26Bから分離されるわけでなく、表面張力により、底面26Bに保持される。分離水が底面26Bに保持されたままだと、ろ布26が、保持された分離水で目詰まりを起こすおそれがある。この場合、分離水が、汚泥Sの固形成分と接触を続けることとなり、汚泥Sの脱水効率が低下する。それに対し、本実施形態に係る汚泥脱水装置10は、前区間B1に水切り部31を設けることで、ろ布26の底面26Bに保持された分離水を効果的に水切りして、分離水の底面26Bからの分離を促進する。これにより、汚泥脱水装置10は、汚泥Sの脱水効率の低下を抑制している。以下、水切り部31について具体的に説明する。
図2から図4は、本実施形態に係る水切り部の構成を示す模式図である。図2は、水切り部31の正面図であり、図3は、水切り部31を搬送方向A1から見た図であり、図4は、水切り部31の上面図である。図4に示すように、水切り部31は、方向Zから見てろ布26と重畳している。水切り部31は、開口部36が2次元マトリクス状に複数設けられるシート状の部材である。言い換えれば、水切り部31は、網状に設けられる部材であり、開口部36は、水切り部31に囲われた領域に形成される開口である。
図2に示すように、水切り部31は、前区間B1において、ろ布26の底面26B側に設けられている。水切り部31は、方向Z側の表面(上面)である上端部31Aが、ろ布26の底面26Bに接触している。水切り部31は、上端部31Aがろ布26の底面26Bに沿うように配置されており、搬送方向A1に沿って設けられているといえる。なお、本実施形態では、水切り部31は、上端部31Aの全域が、ろ布26の底面26Bと接触しているが、上端部31Aの少なくとも一部が、ろ布26の底面26Bと接触していればよい。また、水切り部31は、位置が固定されているため、ろ布26の移動(走行)に伴って一緒に移動せず、また、回転もしない。すなわち、ろ布26は、水切り部31上を摺動する。
ここで、ろ布26は、投入口20Aが設けられた位置からローラ28bが設けられた位置までの前区間B1において、搬送方向A1側(方向Y側)に向かうに従って鉛直方向上方に傾斜している。従って、水切り部31は、投入口20Aとローラ28bが設けられた位置との間の、ろ布26が傾斜した区間に設けられているといえる。なお、ローラ28bが設けられた位置は、投入口20Aよりも搬送方向A1側の位置である、下流位置であるともいえる。なお、水切り部31は、前区間B1の全域(投入口20Aとローラ28bが設けられた位置との間の区間の全域)にわたって設けられている。ただし、水切り部31は、前区間B1の全域のうちの一部の領域にのみ設けられてもよい。また、水切り部31は、前区間B1に複数設けられてもよい。
また、図2に示すように、水切り部31の上端部31Aから下端部31Bまでの長さを、長さH1とする。下端部31Bは、水切り部31の上端部31Aと反対側の表面、すなわち底面であり、水切り部31の方向Zと反対側(鉛直方向下方側)の表面であるといえる。この場合、長さH1は、ろ布26の上面26Aから底面26Bまでの長さH0よりも、長いことが好ましい。
また、図4に示すように、水切り部31は、ろ布26の側端部26Cから側端部26Dにわたって延在している。側端部26Cは、ろ布26の方向Xと反対側の端部であり、側端部26Dは、ろ布26の側端部26Cと反対側の端部、すなわち、ろ布26の方向X側の端部である。より具体的には、水切り部31の方向Xと反対側の端部を、側端部31Cとし、側端部31Cと反対側の端部、すなわち水切り部31の方向X側の端部を、側端部31Dとする。この場合、水切り部31は、側端部31Cから側端部31Dまで、方向Xに沿って延在しており、側端部31Cが、ろ布26の側端部26Cよりも方向Xと反対側に位置し、側端部31Dが、ろ布26の側端部26Dよりも方向X側に位置している。ただし、水切り部31は、側端部31Cが、ろ布26の側端部26Cよりも方向X側に位置していなければよく、側端部31Cが、方向Xにおいて、ろ布26の側端部26Cと同位置にあってもよい。同様に、水切り部31は、側端部31Dが、ろ布26の側端部26Dよりも方向Xと反対側に位置していなければよく、側端部31Dが、方向Xにおいて、ろ布26の側端部26Dと同位置にあってもよい。
以下、水切り部31の形状をより具体的に説明する。図4に示すように、水切り部31は、方向X及び搬送方向A1に平行な平面に沿って設けられるシート状の部材である。そして、水切り部31には、二次元マトリクス状に、複数の開口部36が形成されている。言い換えれば、水切り部31は、網状の部材であるといえ、その網状の部分に囲われた領域が、開口部36となる。水切り部31は、本実施形態では樹脂製であるが、その材料は任意である。
図2に示すように、水切り部31は、方向Z側(鉛直方向上側)の端部である上端部31Aから、方向Zと反対側(鉛直方向下側)の端部である下端部31Bまで、方向Zと反対側(鉛直方向下方)に向かって延在している。水切り部31は、方向Xに延在している箇所が、上端部31Aから下端部31Bに向かうに従って、搬送方向A1に沿った長さ(幅)が短くなっており、下端部31Bが尖った形状となっている。
ただし、水切り部31は、下端部31Bに向かうに従って、搬送方向A1に沿った長さ(幅)が短くなっていなくてもよいし、下端部31Bが尖っていなくてもよい。
また、図3に示すように、水切り部31は、搬送方向A1に延在している箇所が、上端部31Aから下端部31Bに向かうに従って、方向Xに沿った長さ(幅)が短くなっており、下端部31Bが尖った形状となっている。
ただし、水切り部31は、下端部31Bに向かうに従って、方向Xに沿った長さ(幅)が短くなっていなくてもよいし、下端部31Bが尖っていなくてもよい。
開口部36は、水切り部31の上端部31Aから下端部31Bまでを貫通する開口である。図4に示すように、開口部36は、水切り部31に、マトリクス状に複数形成されており、格子状に形成されているともいえる。開口部36は、本実施形態では、矩形状の開口であるが、その形状は任意であり、例えば菱形や円形であってもよい。すなわち、水切り部31は、囲った領域に開口部36が形成され、開口部36同士を区切るように形成されていればよい。
ここで、図4に示すように、ろ布26にも、上面26Aから底面26Bまで貫通する開口26Eが、マトリクス状に複数形成されている。開口26Eは、汚泥Sからの分離水を透過するための開口であり、本実施形態では、水切り部31の開口部36と同様の矩形状である。水切り部31の開口部36は、ろ布26の開口26Eより面積が大きい。水切り部31の開口部36は、例えば下水汚泥の場合には、25mm2以上225mm2以下の面積であることが好ましい。開口部36が矩形の場合には、例えば、開口部36の辺が、5mm以上15mm以下であることが好ましい。ただし、開口部36は、ろ布26の開口26Eより面積が大きいものであれば、面積及び一辺の長さは、任意である。
以上説明した水切り部31の機能について、以下で説明する。図5は、本実施形態における水切り部の機能を説明する図である。上述のように、汚泥脱水装置10は、前区間B1において、凝集混和槽20の投入口20Aから供給された汚泥Sを、ろ布26の上面26Aに載せて、搬送方向A1に搬送する。ろ布26は、重力により、汚泥Sから液体成分である分離水Wを分離する。分離水Wは、ろ布26の開口26Eを透過して、ろ布26の上面26Aから底面26Bまで移動する。底面26Bまで移動した分離水Wは、表面張力により、底面26Bに保持される。ここで、ろ布26の底面26Bは、水切り部31の上端部31Aに接触している。従って、底面26Bに保持された分離水Wは、水切り部31に水切りされることにより水切り部31に流れて、底面26Bから分離される。水切り部31に流れた分離水Wは、重力により、水切り部31の下端部31Bに到達し、下端部31Bから、鉛直方向下方に流下する。
ここで、水切り部31は、開口部36が複数形成されており、言い換えれば、網状に形成されている。すなわち、水切り部31は、開口部36の周囲に、幅方向である方向Xのベクトル成分に延在する部分と、搬送方向A1のベクトル成分に延在する部分との両方を有しているといえる。従って、水切り部31は、ろ布26上で分離水Wが幅方向である方向Xと搬送方向A1のどちらの方向に流れても、いずれかの部分で、その分離水Wに接触することが可能となり、確実に水切りすることができる。従って、この水切り部31によると、分離水Wの底面26Bからの分離を促進して、汚泥Sの脱水効率の低下を抑制することが可能となる。また、水切り部31は、開口部36の面積を、ろ布26の開口26Eの面積より大きくしている。水切り部31は、このように開口部36を形成することで、水切り部31の上端部31Aから下端部31Bまでの分離水Wの移動を抑制せず、汚泥Sの脱水効率の低下をより好適に抑制することができる。
また、前区間B1において、ろ布26は、搬送方向A1と反対側(方向Yと反対側)に向かうに従って、鉛直方向下方に傾斜している。従って、ろ布26の底面26Bの分離水Wは、重力により搬送方向A1と反対側に向かう。ここで、水切り部31は、搬送方向A1に直交する方向Xのベクトル成分に延在する部分を有しており、その部分が、搬送方向A1に沿って複数設けられている。従って、水切り部31は、搬送方向A1と反対側に向かう分離水Wと接触しやすくなり、分離水Wの底面26Bからの分離をさらに促進することができる。また、ろ布26は、搬送方向A1に走行しているため、分離水Wは、ろ布26の走行に伴い、水切り部31の搬送方向A1と反対側の表面にも流れ込む。このように、第1延在部32は、搬送方向A1に流れる分離水Wを、適切に掻き取ることができる。また、水切り部31は、搬送方向A1のベクトル成分に延在する部分が、方向Xに沿って複数設けられている。従って、水切り部31は、方向Xに向けて広がるように拡散する分離水Wと接触しやすくなり、分離水Wの底面26Bからの分離をさらに促進することができる。
また、水切り部31は、下端部31Bに向かうに従って、幅が短くなっている。従って、水切り部31は、下端部31Bにおいて保持できる分離水Wの量が少なくなり、流下させる分離水Wの量が多くなる。水切り部31は、このように保持する分離水Wの量を少なくすることで、底面26Bに保持された分離水Wが流れ込む量を多くして、底面26Bに保持される分離水Wの量を少なくすることができる。従って、この水切り部31によると、汚泥Sの脱水効率の低下をより好適に抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る汚泥脱水装置10は、ろ布26と、水切り部31とを有する。ろ布26は、上面26Aから底面26Bまでを貫通する開口26Eが設けられ、上面26Aに汚泥Sを載せて搬送方向A1に搬送する。水切り部31は、ろ布26の底面26B側に設けられる。水切り部31は、上面である上端部31Aから底面である下端部31Bまでを貫通する複数の開口部36を形成する部材である。開口部36は、ろ布26の開口26Eよりも大きくなっている。
ろ布26上の汚泥Sから分離された分離水Wは、ろ布26の底面26Bに保持される。本実施形態に係る汚泥脱水装置10は、ろ布26の底面26Bに設けられた水切り部31を有している。そのため、汚泥脱水装置10は、ろ布26の底面26Bに保持された分離水Wがどの方向に移動しても、水切り部31によって適切に掻き取ることが可能となり、分離水Wの底面26Bからの分離を促進して、汚泥Sの脱水効率の低下を抑制することができる。
また、水切り部31は、開口部36の面積が、25mm2以上225mm2以下である。このように開口部36の面積を大きくすることで、ろ布26の開口26Wを塞ぐことを抑制しつつ、水切り部31の上端部31Aから下端部31Bまでの分離水Wの移動を規制し難くなり、汚泥Sの脱水効率の低下をより好適に抑制することができる。
また、水切り部31は、上端部31Aの少なくとも一部が、ろ布26の底面26Bに接触する。この水切り部31は、ろ布26の底面26Bに接触することで、ろ布26の底面26Bに保持された分離水Wを、より効果的に掻き取ることが可能となり、汚泥Sの脱水効率の低下をより好適に抑制することができる。
なお、水切り部31は、ろ布26の底面26B側に設けられていれば、必ずしもろ布26の底面26Bに接触していなくてもよい。この場合でも、水切り部31の上端部31Aが、ろ布26の底面26Bに保持された分離水Wと接触可能な程度の近距離に設けられていれば、分離水Wを掻き取ることができる。この場合、水切り部31の上端部31Aとろ布26の底面26Bとの間の距離は、ろ布26の底面26Bに保持された分離水Wと適切に接触できるよう、例えば2.5mm以下であることが好ましい。
また、水切り部31は、下端部31Bに向かうに従って、幅が小さくなる。この水切り部31は、下端部31Bにおいて保持できる分離水Wの量が少なくなることで、底面26Bに保持された分離水Wが流れ込む量を多くして、底面26Bに保持された分離水Wの量を少なくすることができる。従って、この水切り部31によると、汚泥Sの脱水効率の低下をより好適に抑制することが可能となる。
また、本実施形態に係る汚泥脱水装置10は、ろ布26に汚泥Sを投入する投入口20Aを有している。ろ布26は、投入口20Aから、投入口20Aよりも搬送方向A1側の下流位置まで、下流位置に向かうに従って鉛直方向上方に傾斜している。水切り部31は、投入口20Aと下流位置との間に設けられる。ろ布26は、投入口20Aから下流位置までの前区間B1において、鉛直方向上方に傾斜している。従って、ろ布26の底面26Bに保持された分離水Wは、重力によって、投入口20A側に移動する。水切り部31は、このような傾斜した位置に設けられることで、投入口20A側に移動する分離水Wを受け止め、より効率的に掻き取ることができる。
なお、本実施形態においては、水切り部31は、前区間B1にのみ設けられ、他の区間(すなわち、後区間B2や後段脱水装置12)には設けられていないが、前区間B1以外でも、水切り効果を向上させたい任意の区間に設けることができる。ただし、水切り部31は、走行するろ布26と接触するため、多く配置し過ぎると、ろ布26を摩耗させるおそれがある。従って、水切り部31は、後段脱水装置12に設けず、汚泥脱水装置10に設けることが好ましい。さらに言えば、本実施形態のように、汚泥脱水装置10のうちでも、後区間B2に設けず前区間B1に設けることが好ましい。すなわち、本実施形態のように、水切り部31を、分離水Wの量が多くなる前区間B1だけに集中的に設けることにより、脱水効率を向上させつつ、ろ布26の摩耗を抑制することが好ましい。
また、水切り部31は、樹脂製の網状部材である。水切り部31を樹脂製の網状部材とすることで、市販のプラスチックネットなどを水切り部31として使用することが可能となる。そのため、この汚泥脱水装置10によると、水切り部31として専用品を設ける必要がなくなり、容易に脱水効率の低下を抑制することができる。
以下、本実施形態に係る水切り部31の他の例について説明する。
図6は、本実施形態に係る水切り部の他の例を示す図である。本実施形態に係る水切り部31は、図2に示したように、下端部31Bに向かうに従って幅が小さくなっていたが、図6に示すように、下端部31Bに向かうに従って幅が小さくなっていなくてもよい。例えば、図6の(A)に示す水切り部31aは、上端部31aAから下端部31aBに向かうに従って、幅が大きくなっている。すなわち、水切り部31aは、下端部31aBに向かうに従って、幅が大きくなっている。また、図6の(B)に示す水切り部31bは、上端部31bAから下端部31bBまでにおいて、幅が一定となっている。すなわち、水切り部31bは、下端部31bBに向かって幅が一定になっている。このような場合でも、水切り部31a、31bは、脱水効率の低下を抑制することができる。
なお、図6の(A)に示す水切り部31aは、図2の水切り部31の上下を反対にしてろ布26に接触させた構造であるともいえる。すなわち、図6の(A)に示す水切り部31aは、図2の水切り部31の下端部31Bを、ろ布26の底面26Bに接触させた構成に相当する。
図7は、本実施形態に係る水切り部の他の例を示す図である。本実施形態に係る水切り部31は、図2に示したように、方向Xのベクトル成分に延在する部分と搬送方向A1のベクトル成分に延在する部分との、搬送方向A1及び方向Xに直交する方向の長さが同じであった。言い換えれば、水切り部31は、いずれの部分においても、下端部31Bが、方向Zにおいて同じ位置にあった。しかし、水切り部は、図7に示すように、方向Xのベクトル成分に延在する部分と搬送方向A1のベクトル成分に延在する部分との、搬送方向A1及び方向Xに直交する方向の長さが異なっていてもよい。
より詳しくは、図7の(A)に示すように、水切り部31cは、部分32cと部分34cとを有する。部分32cは、本例では、方向Xのベクトル成分に延在する部分であり、上端部32cAから下端部32cBまで延在している。部分34cは、本例では、搬送方向A1のベクトル成分に延在する部分であり、上端部34cAから下端部34cBまで延在している。すなわち、部分32cと部分34cとは、互いに異なる方向に延在している。部分32cの上端部32cAと部分34cの上端部34cAとは、同一平面上にあって、ろ布26の底面26Bと接触する水切り部31cの上端部31cAを形成している。それに対し、部分32cの下端部32cBは、水切り部31cの下端部31cBを形成しているが、部分34cの下端部34cBは、部分32cの下端部32cBよりもろ布26側に位置して、下端部31cBを形成していない。すなわち、部分34cは、上端部34cAから下端部34cBまでの長さが、部分32cの上端部32cAから下端部32cBまでの長さより短くなっている。なお、図7の(A)では、部分34cの長さが部分32cの長さより短くなっているが、反対に、部分32cの長さが部分34cの長さより短くなっていてもよい。
また、図7の(B)は、図7の(A)に対し、上下を反対にしてろ布26に接触させた構造である。すなわち、図7の(B)では、部分32cの下端部32cB(水切り部31cの底面31cB)が、ろ布26の底面26Bに接触している。このような場合でも、水切り部31cは、脱水効率の低下を抑制することができる。
(実施例)
次に、実施例について説明する。実施例においては、図7の(A)に示す水切り部31cの上端部31cAを、ろ布26の底面26Bに接触させた状態で、ろ布26の上面26Aに汚泥Sを供給して、ろ布26及び水切り部31cの鉛直方向下方に設けられた水受け部に流下された分離水の流量を、1秒ごとに測定した。本実験では、開口部36の面積が約31.9mm2となる水切り部31cを用いた実験を、第1実施例とし、開口部36の面積が約196mm2となる水切り部31cを用いた実験を、第2実施例とした。また、ろ布26の底面26Bに水切り部を設けない状態での実験を、比較例とした。
図8は、実施例の実験結果を示すグラフである。図8の横軸は、時間(秒)を示し、ろ布26に汚泥Sを投入したタイミングを0秒とする。図8の縦軸は、時間毎の、水受け部に流下された分離水Wの量(分離水量)を示す。図8の曲線Lxは、比較例に係る実験結果を示し、曲線L1は、第1実施例における実験結果を示し、曲線L2は、第2実施例における実験結果を示す。図8に示すように、ろ布26の底面26Bに網状の水切り部を配置すると、分離水を早く流下できることが分かる。また、曲線L1と曲線L2とを比較すると、開口部36の面積が大きい方が、分離水を早く流下できることが分かる。なお、13秒以降で分離水の量の差が無くなっているのは、汚泥に含まれた水の量が2500g程度であるため、分離水がほぼ全て流下されたことを意味する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。