以下、本発明のさらに具体的な例示的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の例示的な第1実施形態に従う立て看板システム10を図1-図13,図18および図28を参照して具体的に説明する。
<概略説明>
まず、概略的に説明するに、図1に示すように、立て看板システム10は、自立式および固定設置式である立て看板20(前記作業対象物の一例であり、また、前記構造物の一例でもある)を含むように構成される。
その立て看板20は、敷地(前記区域の一例である)の支持面に対して垂直に固定される一対の支柱22および22と、それら支柱22および22によって両側から挟まれて支持される表示板30(後に図5などを参照して詳述する)とを含むように構成される。表示板30は、横長であっても縦長であってもよい。図4に示す一例においては、表示板30が横長である。
後に詳述するが、表示板30は、一対の支柱22および22に対し、表示板30の上端部に沿って延びる水平軸線回りに揺動し、それにより、表示板30の垂直基準面(図1(a)に示す表示板30の面)に対して傾倒可能である。その傾倒を可能にするための構造は、後に図6-図8を参照して詳述する。
立て看板20は、両面表示式であり、よって、表示板30は、前側(表側)の表示面32と、後側(裏側)の表示面32とを有する。それら両側の表示面32および32には、それぞれ、同じかまたは互いに異なる情報を表示することが可能である。
その情報は、例えば、文字や数字(図4参照)、図形などによって表現される。数字は、例えば、1個の数字によって構成される場合や、複数桁の数字によって構成される場合がある。
ここに、各数字は、それ全体が1個の図柄によって表現される場合(図4参照)や、複数の図柄すなわち複数の数字セグメント(例えば、7セグメント)の集まりとして表現される場合がある。
各数字が1個の図柄によって表現される場合には、作業者は、1個の数字を単位にして、1個の数字の全体を別の1個の数字に交換する(例えば、1個の数字を表す1枚のシートを別のものに入れ替えるかまたは貼り替える)ことにより、各表示面32に表示される情報を変更する作業(前記作業対象物に対して作業者が行う「作業」の一例である。)を行ってもよい。
これに代えて、1個の数字が7セグメント式の可変数字として、7個のセグメントの集まりとして構成される場合には、作業者は、1個のセグメントまたは1個のセグメント・グループ(複数のセグメントのうち、互いに隣接する複数のセグメントの集まり)を単位にして、1個のセグメントまたはセグメント・グループを別の1個のセグメントまたはセグメント・グループに交換する(例えば、1個のセグメントまたはセグメント・グループを表す1枚のシートを別のものに入れ替えるかまたは貼り替える)ことにより、変更作業を行ってもよい。
立て看板システム10は、さらに、表示板30が示す情報を両側の表示面32および32のうちの少なくとも一方について作業者が手作業で変更するために作業者によって使用される梯子40を含むように構成される。
図4に例示するように、立て看板20については、変更(削除、追加を含む)されるべき情報が、作業者の身長を超える高所に配置されるため、その変更作業は、作業者による高所での手作業、すなわち、梯子40に登った状態での作業が必要となる。
同図において、「GL」は、グランドレベルまたはグランドラインの略称であり、これは、地表面または基準面を意味する。ここに、「地表面」は、前記「支持面」の一例である。この支持面は、地表面に代えて、コンクリート面であっても、アスファルト面であってもよい。
梯子40の一例が、図18(a)および(b)に示されている。梯子40は、概して直線的に延びる一対の縦棒42,42と、それら縦棒42および42によって両端支持される複数の横桟(踏桟など)44であって互いに平行に延びるものとを含むように構成される。
この梯子40は、単一式であっても伸縮式であっても折り畳み式であってもよい。梯子40が折り畳み式であれば、保管時の収納スペースの削減および可搬性の向上に有利である。
また、この梯子40は、立て看板20に近接する位置に、常時または必要に応じて設置されれば足りる。
また、本実施形態においては、この梯子40として市販の梯子をそのまま、すなわち、特別な変更を施すことなく使用することが可能である。これに対し、後述のワイヤまたはロープと梯子40との間の予定接触領域に対し、ワイヤまたはロープが梯子40から予定外に外れることを機械的に防止する措置を講じたうえで市販の梯子を梯子40として使用してもよい。
図1(a)は、立て看板20を、表示板30が正立姿勢にある状態で示す斜視図である。これに対し、同図(b)は、立て看板20を、表示板30が傾倒姿勢にあり、かつ、梯子40も同様に同じ向きに傾倒姿勢にある変更作業時レイアウトで示す斜視図である。
その変更作業時レイアウトにおいては、梯子40が、立て看板20から概して水平に延びる複数本(例えば、3本)のワイヤ50,50,50(後に図13を参照して詳述する)により、後方傾倒限度位置(梯子40が自重および作業者の重量によって倒れる限度の位置。後傾限度位置。最大後傾角度。例えば、約20度)が規定されるように支持される。ワイヤ50,50,50が立て看板20によって支持される構造は、後に図9-図12を参照して詳述する。
ここに、各ワイヤ50は、前記「ロープ」の一例であって、複数本の鋼製ストランド(鋼線)を撚り合せて成るものであるが、これに代えて、例えば、前記「ロープ」の別の例であって、複数本の合成繊維製ストランド(例えば、合成樹脂製ストランド)を撚り合せて成るものを使用してもよい。また、各ワイヤ50は、前記「第1のロープ」の一例を構成する。
ところで、図2(a)に示すように、一般に、立て看板が敷地内において境界線近傍に設置されているために通常の立て看板では作業者の足場として梯子を同じ敷地内の適切な位置に設置することができない第1の作業環境が存在する。
さらに、同図(b)に示すように、一般に、立て看板が敷地内において境界線近傍に設置されているフェンスの近傍に設置されているために通常の立て看板では変更作業のための作業空間を適切なサイズで確保することができない第2の作業環境も存在する。
これに対し、図3(a)に示すように、本実施形態に従う立て看板20を梯子40と共に、図2(a)に示す第1の作業環境において、図1(b)に示す変更作業時レイアウトで使用すれば、立て看板20の表示面32と梯子40との間に必要な作業空間が確保され、作業者が背中で梯子にもたれかかる姿勢で作業を行うことが可能となる。
また、図3(b)に示すように、この立て看板20を梯子40と共に、図2(b)に示す第2の作業環境において、図1(b)に示す変更作業時レイアウトで使用すれば、前記フェンスによる幾何学的な制約が軽減された状態で、立て看板20の表示面32と梯子40との間に必要な作業空間が確保される。
<構造の説明>
1.立て看板の全体構造
図4は、立て看板20を、関連する例示的な諸元寸法を表す数字(単位:mm)と共に、かつ、身長が170cm(1700mm)である作業者と対比して示す正面図である。他のいくつかの図面においても、関連する例示的な諸元寸法を表す数字(単位:mm)が、立て看板20および立て看板システム10の現実感を表現するために付記されている。
同図に示すように、表示板30に表示される情報(例えば、数字)を変更するための作業は、地上に居る作業者の身長より高い位置(例えば、支持面から上方に約2mを超える高さを有する位置)に対して行われるから、この変更作業は高所作業に分類される。
同図に示すように、立て看板20のうちの高所に表示板30が配置されるため、変更作業のために作業者には高所での作業が要求される。よって、作業者にとっては、足場としての梯子40をどのようにして適正に使用するのかが重要となる。
ところで、後に詳述するように、変更作業に先立ち、作業者は、表示板30を傾倒させることが要求されるが、その表示板30の重量は約10kgである。
さらに、同図に示す例においては、表示板30に表示される1個の数字が、高さが900mmというように、それなりに大きいものであるため、作業者には、高所において、梯子40上で主に片手で比較的大きな物体(例えば、前述のシート)を取り扱うというようにやや煩雑な作業が要求されるため、梯子40がみだりに動かないように強固に固定されることも要求される。
2.表示板の構造
図5に示すように、表示板30は3層式であり、前側の表示面32を有する前層を構成する面板50と、後側の表示面32を有する後層を構成する面板50と、それら間の中央層を構成する中空のフレーム56とのサンドイッチ構造を有する。同図においては、説明の便宜上、フレーム56を視認可能とするために、前側の面板50が部分的に捲られている。
同図に示すように、フレーム56は、必要な剛性を確保しつつ軽量化するため、フレーム56の板厚方向に貫通する複数の中空部を有する。
図6に示すように、立て看板20は、片方の支柱22と、フレーム56の両側部のうちその支柱22に対向するものとを連結する連結構造(連結機構)60を有する。
後に詳述するが、この連結構造60は、それら支柱22とフレーム56とを、フレーム56が支柱22に対して実質的に揺動不能であるように強く連結する状態(揺動不能状態。不動状態)と、フレーム56が支柱22に対して揺動可能であるように緩く連結する状態(揺動可能状態。可動状態)とに切換え可能であるように連結するように設計されている。
支柱22は、規格品であり、同種の複数の規格品の中から選定されたものである。具体的には、支柱22は、正方形断面を有する中空の鋼製角材によって構成されている。支柱22は、磁性体によって構成されており、よって、磁石によって吸着可能である。支柱22の断面の一辺は、例えば75mmである。支柱22の開口上端は、キャップ62によって閉塞されている。同様に、フレーム56も、正方形断面を有する中空の鋼製角材によって構成されている。フレーム56の断面の一辺は、例えば32mmである。
3.支柱と表示板との連結構造
図6に部分断面正面図で示すように、連結構造60は、支柱22とフレーム56の側部とであって互いに対向するものを、高さ位置が異なる3個のポイントH1(最上段位置),H2(中段位置)およびH3(最下段位置)においてそれぞれ互いに連結するために、それら3個の連結位置H1,H2,H3に対応する3組の締結具70,70,70を有する。それら締結具70は、互いに共通する構成を有しており、いずれの締結具70,70,70も、おねじ部としてのボルト72と、めねじ部74とを有する。
連結構造60は、図7(a)に示すように、複数の機械部品の組合せとして構成されるが、いずれの部品も専用品ではなく規格品であり、各部品は、同種の複数の規格品の中から、後述の特定の目的のもとに選定される。
同図(a)には、3組の締結具70,70,70のうちのいずれかが代表的に分解状態で示されている。ボルト72は、頭部76とおねじ部78とを有する。頭部76は、六角形断面を有する外周面を有する。ボルト72も規格品である。
図6に示すように、ボルト72は、頭部76が支柱22の外面80から露出する状態で、支柱22を太さ方向に貫通し、おねじ部78の先端部が支柱22の内面82から突出している。その突出部84は、フレーム56の外面86からその内部空間内に進入し、それを太さ方向に貫通し、やがてフレーム56の内面88から中空部90内に突出している。
図7(a)に示すように、めねじ部74は、ボルト72に螺合するナット100を有する。ナット100は、六角形断面を有する外周面を有する。その外周面は、3対の平行面を有する。よって、ナット100は、二面幅を有する。
作業者が、ボルト72とナット100とで、支柱22をフレーム56に締め付けて固定するために、作業者がボルト72を回転させてナット100に螺合する。このとき、ナット100がボルト72の回転につれて回転しないようにするために、ナット100に、連れ回り防止部材として、U字ボルト(コの字ボルトでもよく、また、C字ボルトと総称されるかもしれない)102が装着される。
U字ボルト102は、1個の基端部(例えば、曲線部)103から互いに平行に延びる一対の軸部(一対の平行部、一対の直線部)104および104を有する。各軸部104の先端におねじ106が形成されている。
ナット100と同様に、U字ボルト102も規格品であるが、U字ボルト102として、同種の複数の規格品の中から、一対の軸部104および104の内面間のクリアランスの幅(これは、U字ボルト102のピッチとねじ径との組合せで決まる)が、予め選定されたナット100の二面幅よりわずかに長い(例えば、ナット100がU字ボルト102内において回転し始めることができないか、または、回転し続けることができない長さ)ものが選定される(同図(b)参照)。
同図(b)に示すように、その選定されたU字ボルト102でナット100を包囲する(挟む)と、ナット100がU字ボルト102内においてみだりに相対的に回転することが防止される。U字ボルト102は、後述のように、表示板30に固定される。よって、ボルト72がナット100に螺合される際に、ナット100の連れ回りがU字ボルト102によって阻止される。
なお、ナット100とU字ボルト102とがみだりに分離しないようにするために、両者を接着、溶接、スペーサなどによって互いに結合することが望ましい。
ボルト72の締め付け中に、ナット100がU字ボルト102内において回転しようとする結果、U字ボルト102の一対の軸部104および104同士の間隔を拡開させてピッチを拡大させる向きの曲げモーメントが一対の軸部104および104にそれぞれ発生する。
その曲げモーメントの発生にもかかわらず、U字ボルト102のピッチが拡大することを防止するために、一対の軸部104および104が、それらに共通の連結部材(タイ・バー、連結バーなど)によって互いに連結されるようにしてもよい。
その連結部材の一例は、図7(a)に示すように、一対の軸部104および104に共通の1枚の平板に2個の貫通穴が、U字ボルト102のピッチと実質的に一致するピッチで並んだ2穴プレート108である。この2穴プレート108も規格品である。
本実施形態においては、同図(b)に示すように、2穴プレート108が、ナット100がU字ボルト102内においてそれの長さ方向(軸部104に平行な方向、U字ボルト102の高さ方向)に予定外に直線移動(例えば、予定外の離脱)することを防止する機能も有する。
同図(b)に示すように、U字ボルト102が、その内部にナット100を保持した状態で、表示板30に締め付け固定される。具体的には、表示板30の両側の面板50および50のうちの一方(図においては、右側の面板50)に、通し穴(貫通穴)120が長穴として形成されている。この通し穴120は、U字ボルト102が、それに2穴プレート108が装着された状態で、かつ、一対の軸部104および104を先頭にして、当該面板50を厚さ方向に通過して表示板30の内部に進入することを可能にする。
反対側の面板50(図においては、左側の面板50)には、一対の軸部104および104が通過するための一対の通し穴122および122がそれぞれ円穴(または長穴)として形成されている。一対の通し穴122および122間のピッチは、U字ボルト102のピッチに実質的に一致するように選択される。
一対の軸部104および104のうち、前記反対側の面板50からそれぞれ露出した部分にそれぞれ、ワッシャ124とナット126とが装着される。ナット126を回転させることにより、ナット126がワッシャ124を介してU字ボルト102に締め付けられ、それにより、U字ボルト102が当該面板50に固定される。その結果、そのU字ボルト102内のナット100が、表示板30に対して回転することが阻止または制限される。
この締め付け状態においては、ナット100が、2穴プレート108と、U字ボルト102のうちの基端部103とによって挟まれ、それにより、ナット100がU字ボルト102の長さ方向に移動することが実質的に阻止される。
なお、上述の説明においては、2穴プレート108が、U字ボルト102の予定外の拡開を防止する機能と、ワッシャとしての機能との双方を有するように同種の規格品の中から選定されたが、U字ボルト102の曲げ剛性が十分に高い場合には、前者の機能を省略し、後者の機能のみ実現されるように、U字ボルト102を同種の複数の規格品の中から選定してもよい。
図6に示すように、ボルト72とナット100との組合せにより、片側の支柱22とフレーム56の一側部とが、ポイントH1,H2およびH3の3か所において、締め付けられ、それにより、支柱22と表示板30とが動かないように強固に連結される。この連結は、立て看板20のうち、反対側の支柱22とフレーム56の他端部とについても同様にして行われる。その結果、表示板30の正立姿勢が達成される。
なお、各ボルト72は、対応する支柱22にダイレクトにではなく、図示しないワッシャを介して締め付けてもよい。
これに対し、表示板30の傾倒姿勢を達成するためには、ポイントH2およびH3においては、ボルト72を緩めることにより、ナット100を残したまま、ボルト72をナット100から抜去し、さらに、ボルト72をフレーム56からも支柱22からも抜去する。
さらに、ポイントH1においては、ボルト72を、ナット100から抜去することなく、緩める。そうすると、図8に示すように、表示板30が支柱22に対し、ボルト72の軸線回り(表示板30のうちの上端部に沿った水平軸線回り)に揺動することが可能となる。このとき、前記揺動可能状態が実現されるのである。
表示板30が立て看板20の垂直基準面(正立姿勢にある表示板30の面)に対して目標角度θまで揺動したとき、ポイントH1において、ボルト72をナット100に締め付けると、表示板30が支柱22に対して目標角度θで傾倒した姿勢で固定される。このとき、前記揺動不能状態が実現されるのである。
作業者が、表示板30の両側の表示面32および32のうち、例えば、後側(裏側)の表示面32の表示情報の変更作業を行うことが必要である場合には、表示板30のうちの下端部が敷地の中央に接近する向きに表示板30が傾倒させられる(図3(a)および(b)参照)。この傾倒姿勢において、作業者は、表示板30の両側の表示面32および32のうち、例えば、後側(裏側)の表示面32に対し、表示情報の変更作業を行うことになる。
このように、本実施形態においては、ポイントH1に装着される締結具70であって搖動可能状態と揺動不能状態とに切り換わるものが、支柱22およびフレーム56のうち、その締結具70に関連する部分と共同して、前記「表示板連結具」の一例および前記「表示板固定具」の一例を構成している。
本実施形態においては、前記「表示板連結具」の一例および前記「表示板固定具」の一例が、それらに共通のユニットとしての締結具70として構成されているが、複数の個別のユニットとして構成してもよいし、部分的には共通するが部分的には異なる複数の個別のユニットとして構成してもよい。
4.支柱とワイヤとの連結構造
図1(b)に示すように、前記変更作業時レイアウトにおいては、前述のように、梯子40が、立て看板20から概して水平に延びる複数本(例えば、3本)のワイヤ50,50,50により、後方傾倒限度位置(梯子40が自重および作業者の重量によって後方に倒れる限度の位置)が規定されるように支持される。
そのため、立て看板システム10は、さらに、最上段のワイヤ50,中段のワイヤ50および最下段のワイヤ50を立て看板20の2本の支柱22および22に連結する連結構造200を有する。この連結構造200により、各ワイヤ50の両端がそれぞれ、2本の支柱22および22に連結される。
図9(a)に示すように、最上段のワイヤ50が第1の連結具210によって2本の支柱22および22に、ポイントP1において連結される。さらに、中段のワイヤ50および最下段のワイヤ50がいずれも第2の連結具220および220によって2本の支柱22および22に、ポイントP2およびP3においてそれぞれに連結される。連結構造200は、それら3個の連結具210,220および220を含むように構成される。
連結構造200は、前述の連結構造60と同様に、図9に示すように、複数の機械部品の組合せとして構成されるが、いずれの部品も専用品ではなく規格品であり、各部品は、同種の複数の規格品の中から、後述の特定の目的のもとに選定される。
ポイントP1に装着される第1の連結具210も、ポイントP2およびP3に共通にそれぞれ使用される第2の連結具220も、基本的に、対応する支柱22に追加の加工を施すことなく、その支柱22を外周面を単に包囲することによってその支柱22を機械的に圧迫することにより、各連結具210,220と支柱22との間の摩擦力によって支柱22に固定されるように構成される。
しかし、図9(a)に示すように、片側の支柱22のうち、ポイントP1においては、支柱22の外周面が、表示板30との連結部においては露出せず(不連続となり)、他の部分については露出する(連続する)というように、全周的に露出するわけではないのに対し(図10参照)、ポイントP2およびP3においては、支柱22の外周面が全周的に露出する(図11参照)。
そこで、本実施形態においては、このような露出状況の場所依存性に鑑み、ポイントP1において、第1の連結具210が、平面視において、概してコの字(四角形の外形線が、それの一辺において、部分的に除去されることにより、開放辺を有する形状)を成し、その開放辺において表示板30の支柱22への物理的なアクセスが許容されるように、支柱22を全周的にではないが部分的に包囲してその支柱22を圧迫するように構成される。
これに対し、ポイントP2およびP3においては、共通の第2の連結具220が、平面視において、概して四角形を成し、支柱22を全周的に包囲してその支柱22を圧迫するように構成される。
5.第1の連結具の構造
具体的には、まず、第1の連結具210は、図9(b)に示すように、コの字ボルト230であって、互いに平行な一対の軸部232および232と、それらの一端部同士を同じ側において互いに連結する直線状の基端部234とを有するものを備えている。
本実施形態においては、基端部234が、概して直線部254を成すように構成され、それにより、図10に断面図で示すように、基端部234が支柱22の外面80に接触する面積CA1が増加し、それに伴い、圧迫時にコの字ボルト230と支柱22との間に発生する摩擦力が効果的に増加する。ただし、その摩擦力増加の必要がない場合には、基端部234を概して曲線部を成すように(例えば、U字ボルトに代えて)構成してもよい。
同図に示すように、一対の軸部232および232の内面間のクリアランス(以下、「内面間クリアランス」という。)の幅寸法W(これは、コの字ボルト230のピッチPとねじ径dとの組合せで決まる)およびコの字ボルト230の長さ寸法Lが、支柱22の断面寸法(幅寸法および奥行き寸法)に合致するように、同種の複数の規格品の中から、第1の連結具210が選定される。
その結果、その選定された第1の連結具210は、支柱22の幅寸法より適度に広い幅寸法Wを有する内面間クリアランスを有するとともに、支柱22の奥行き寸法より長い長さ寸法Lを有する。
図9の上部に示すように、コの字ボルト230は、一対の軸部232および232を先頭にして支柱22の外面80に概して水平に接近し、さらに同じ向きに前進して、一対の軸部232および232で支柱22を幅方向両側から挟む。コの字ボルト230の前進限度は、基端部234が支柱22の外面80に当接することによって規定される。
その前進限度位置においては、一対の軸部232および232のそれぞれの先端部(おねじ部)が、支柱22の内面82から内向きに突出する。
第1の連結具210は、さらに、一対の軸部232および232のそれぞれの突出端部に装着される2個のナット240および240と、2枚の小径ワッシャ242および242とを有する。
ところで、本発明者は、コの字ボルト230を支柱22にそれを包囲するように装着し、その状態で、コの字ボルト230の一対の軸部232および232に2個のナット240および240を小径ワッシャ242および242を介して螺合したところ、ナット240でコの字ボルト230を増し締めすると、それにつれて、一対の軸部232および232が互いに逆向きに離間する(拡開する、末広がりとなる)ように、曲がり始めることに気が付いた。
その結果、本発明者は、一対の軸部232および232が支柱22から側方に逃げ、やがてそれら軸部232および232が支柱22から離脱する傾向が増加することに気が付いた。
そこで、本発明者は、図10に示すように、コの字ボルト230を、一対の軸部232および232と支柱22との間にやや広めのクリアランスが形成されるように、選定し直し、そのうえで、各軸部232にやや大きめのスリーブ250を装着し、さらに、小径ワッシャ242とスリーブ250との間に大径ワッシャ252を介在させることを提案した。
なお、スリーブ250は、例えば、図10に示すように、対応する軸部232のうちの直線部254を超えない長さを有するように選定されるが、その直線部254を超えて曲りコーナー部256に部分的に進入する長さを有するように選定してもよい。
本実施形態においては、図10に示すように、大径ワッシャ252の追加により、支柱22の内面82のうち表示板30によって覆われていない部分のうち、ナット240の軸力が伝達する領域の面積、すなわち、大径ワッシャ252と接触する領域CA2の面積が、ワッシャとして小径ワッシャ242しか使用しない場合より増加し、それにより、大径ワッシャ252と支柱22との間の摩擦力が増加した。
その結果、ナット240でコの字ボルト230を増し締めしても、前記増加した摩擦力のおかげで、一対の軸部232および232が拡開する向きの曲がりが抑制された。なお、大径ワッシャ252が追加されれば、小径ワッシャ242を省略することが可能である。
さらに、スリーブ250の追加により、大径ワッシャ252が、対応する軸部232に対して傾倒する傾向が、スリーブ250が使用されない場合より軽減された。スリーブ250が存在しない場合には、大径ワッシャ252の傾倒限度が、それの内径部と軸部232の外径部との当接によってしか規定されないのに対し、スリーブ250が存在する場合には、大径ワッシャ252の傾倒限度が、スリーブ250の端面(軸部232の外径より大径の円形)との当接により、効果的に規定されるからである。
その結果、ナット240の軸力がより効果的に支柱22に伝達され、それにより、大径ワッシャ252と支柱22との間の摩擦力がさらに増加した。
図10に示すように、第1の連結具210が支柱22のポイントP1に装着された状態では、コの字ボルト230と支柱22との間にいくつかの隙間256が形成される。その隙間256を連結穴として利用して、対応するワイヤ50を支柱22に連結してもよい。
これに代えてまたはこれに加えて、コの字ボルト230のうちの基端部234と支柱22の外面80との間にあえて隙間(図示しない)を形成し、その隙間を連結穴として利用して、対応するワイヤ50を支柱22に連結してもよい。
6.第2の連結具の構造
図9(c)に示すように、第2の連結具220は、第1の連結具210と同様に、コの字ボルト230と、2個のナット240と、2枚の小径ワッシャ240とを有し、さらに、第1の連結具210とは異なり、コの字ボルト230の一対の軸部232および232をそれぞれの端部近傍において互いに連結するための2穴プレート260を有する。
コの字ボルト230は、図9の下部に示すように、一対の軸部232および232を先頭にして支柱22の外面80に向かって概して水平に接近し、さらに同じ向きに前進して、一対の軸部232および232で支柱22を幅方向両側から挟む。コの字ボルト230の前進限度は、支柱22の外面80が基端部234に当接することによって規定される。
その前進限度位置においては、一対の軸部232および232のそれぞれの先端部(おねじ部)が、支柱22の内面82から内向きに突出する。それら突出端部に、それらに共通の2穴プレート260が装着される。それにより、支柱22がポイントP2およびP3において、第2の連結具220によって全周的に包囲されることになる。
このとき、2穴プレート260は、支柱22の内面82に接触するため、それら2穴プレート260と支柱22との間においても摩擦力が発生し、この点、第1の連結具210の場合とは異なる。
図11に示すように、第2の連結具220については、一対の軸部232および232のそれぞれの突出端部に、2個のナット240および240と、2枚の小径ワッシャ242および242とが装着される。ナット240により、コの字ボルト230が締め付けられる。
同図に示すように、第2の連結具220が支柱22のポイントP2およびP3に装着された状態では、コの字ボルト230と支柱22との間にいくつかの隙間262が形成される。その隙間262を連結穴として利用して、対応するワイヤ50を支柱22に連結してもよい。その隙間262は、例えば、図11に示すように、各軸部232と支柱22の各側面との間に形成される。
なお、同図に示す例においては、コの字ボルト230が、一対の軸部232および232を先頭にして支柱22の外面80に向かって概して水平に接近し、さらに同じ向きに前進して、一対の軸部232および232で支柱22を幅方向両側から挟む。コの字ボルト230の前進限度は、基端部234が支柱22の外面80に当接することによって規定される。
これに対し、図12に示す例においては、第2の連結具220の支柱22へのアクセス方向が図11に示す例とは逆となる。具体的には、コの字ボルト230が、一対の軸部232および232を先頭にして支柱22の内面82に向かって概して水平に接近し、さらに同じ向きに前進して、一対の軸部232および232で支柱22を幅方向両側から挟む。コの字ボルト230の前進限度は、基端部234が支柱22の内面82に当接することによって規定される。
7.ワイヤの構造および使用例
図13(a)には、図1(b)に示す3本のワイヤ50,50,50のうちの一つが代表的に正面図で示されている。各ワイヤ50は、1本のワイヤロープ300(例えば、鋼製の撚り線)から成り、それの両端部がそれぞれループ302を形成し、各ループ302の端末がクリップ304でワイヤロープ300に固定されている。各ループ302が、図9(b)および(c)ならびに図10-図12に示すように、第1および第2の連結具210および220に係留される。
なお付言するに、図示しないが、3本のワイヤ50,50,50のうちの少なくとも1本は、図17に示すターンバックル430の如き長さ調節機構を有するように構成されるが、いずれのワイヤ50,50,50も長さ調節機構を有するように構成してもよい。
作業者がこの種の長さ調節機構(ターンバックル以外の金具、ハードウエア、機構でもよい)を用いて各ワイヤ50の全長を梯子40の傾角θ(側面視において、垂直基準面からの隔たり角(図19参照))の目標値に合せて適切に調節すれば、図13(b)および(c)に例示するように、それらワイヤ50,50,50が梯子40をその背後から支持する状態において、いずれのワイヤ50,50,50も、たるみを有せず、緊張状態(力伝達状態、負荷状態、作用状態など)に維持される。
この場合には、いずれのワイヤ50,50,50も、梯子40を力学的に有効に支持し、その結果、作業者が登っている状態の梯子40からの荷重を分散状態で負担する。よって、いずれかのワイヤ50のみに過大な負荷が発生することが防止され、それにより、梯子40を使用して作業を行う際の安全性・信頼性が向上する。
ただし、本実施形態においては、立て看板システム10の安全率向上のため、各ワイヤ50の耐荷重が、使用状態で、1本のワイヤ50のみで梯子40の重量、それに登って作業する作業者の体重および3本のワイヤ50,50,50の重量を支持することができるように設定されている。
なお、各ワイヤ50が、理論的には、同図(b)および(c)に示すように、厳密に直線的に延びるが、実際には、各ワイヤ50自体の重量のため、後に図29を参照して詳述するように、各ワイヤ50(図においては、「520」で示す)が、下に凸に湾曲するようにたるむ。このたるみについては、後に詳述するが、そのたるみの存在が、各ワイヤ50の機能および力学的原理であってこれまで説明してきたことに変更を及ぼすことははない。
ところで、梯子40の傾角θが大きいほど、立て看板20と梯子40との間に形成される作業空間のサイズが大形化する。一方、作業者の体格(身体サイズ、例えば太っているか痩せているか)が大きい程、その作業者に必要な作業空間のサイズも大形化する。よって、傾角θの目標値を決定するファクターの一つとして作業者の体格が存在する。
図13(b)および(c)には、それぞれ側面図および平面図で、立て看板20の各支柱22に両端が連結された3本のワイヤ50,50,50によって梯子40が傾倒姿勢で支持される様子が示されている。
それらワイヤ50,50,50はそれぞれ、支柱22の同じ垂直基準面上において互いに高さ位置が異なるポイントP1,P2およびP3から概して水平にまたは支柱22から離れるにつれて下降する姿勢で延び出している。よって、支柱22に対して梯子40が傾倒する姿勢を実現するために、それらワイヤ50,50,50はそれぞれ互いに異なる全長を有している。
ところで、3本のワイヤ50,50,50の必要長は、図13(b)および(c)に示すように、各ワイヤ50が取り回される経路の長さの違いから、互いに異なる。また、各ワイヤ50の必要長は、前述のように、作業者の体格や好みによって異なるが、高さ位置が異なる各ワイヤ50ごとに、統計的に見て標準値が存在する。また、各作業者ごとに各ワイヤ50に要求される長さの目標値は、最終的には、前述の長さ調節機構を用いて微調整可能である。
特に、本実施形態においては、後に図26を参照して詳述するように、作業者が梯子40を用いて立て看板20に対して作業を行う場合、梯子40の下端、すなわち、梯子40が垂直面内において傾倒する際の回動支点ないしはピボット点が、正立姿勢にある立て看板20の真下の矩形状の制限領域、すなわち、平面視において、一対の支柱22,22間に形成される矩形断面のポケットから水平方向に逸脱することが阻止される。
その矩形領域すなわちポケットは、一対の支柱22,22のそれぞれの内面82,82と、それらの間を水平にかつ平行に延びる2本の水平ロープ540,540によって定義される。
したがって、本実施形態においては、それら一対の支柱22,22と2本の水平ロープ540,540とにより、前記(1)項に係る立て看板システムにおける「梯子支持ユニット」の一部が構成され、また、前記(23)に係る梯子支持ユニットにおける「梯子下部安定化部」の一例が構成される。
この梯子下部安定化部のおかげで、本実施形態においては、作業中、梯子40の回動支点(前記支持面との接点)の水平方向位置が、作業者から梯子40に作用する外力およびそれ以外の外力(強風、他の物体との衝突、他の作業者との衝突などに起因して偶発的に作用する外力)に対して安定化する。それにより、作業中、梯子40に対し、足場としての力学的安定性が提供される。
上記の梯子下部安定化部のおかげで、本実施形態においては、さらに、各ワイヤ50の標準長さが、各ワイヤ50の垂直方向位置および梯子40の傾角θという2つのファクターに対する依存性が強くなり、その代わりに、梯子40の回動支点の、側面視における水平方向位置に対する依存度が、例えば無視できるほどに、弱くなる。
したがって、各ワイヤ50の標準長さを、現場での実際の使用状態において、作業者が各ワイヤ50の有効長さを微調整しなければならない量が減少し、それにより、微調整のための作業者の負担が軽減される。
そこで、本実施形態においては、梯子40の回動支点が、前記矩形領域の中心線上にあることを前提にして、ポイントP1を通過する上段ワイヤ50の長さの標準値LAと、ポイントP2を通過する中段ワイヤ50の長さの標準値LBと、ポイントP3を通過する下段ワイヤ50の長さの標準値LCとがそれぞれ選定される。
さらに、任意の作業者に使用されることになるワイヤセットが実際にいずれの作業者に使用されることになるのかを問わず、そのワイヤセットにおいては、作業者が現場に向かうのに先立ち、各長さ調節機構が中立の状態で、上段ワイヤ50が、それの長さが標準値LAと等しくなるように準備され、また、中段ワイヤ50が、それの長さが標準値LBと等しく成るように準備され、また、下段ワイヤ50が、それの長さが標準値LCと等しくなるように準備される。
一例においては、視覚的な識別を容易にするために、それらワイヤ50,50,50に、それぞれ識別手段(例えば、色違いのテープ、色違いのマーク、異なる記号など)が付着させられる。
したがって、複数人の作業者の中から今回の現場の作業者として任意に選任された者は、実際の現場において、各ワイヤ50についてそれぞれの長さ調節機構を用いれば、各長さ調節機構の最大調節量(例えば、100-200mm)を超えない範囲で、作業者自身の体格や好みに合ったワイヤ有効長、ひいては、梯子40の傾角θ(例えば、10度以下、20度以下)を実現することが可能となる。
作業者は、傾倒している梯子40の上面に登り、場合によっては、自身の背中をその上面に預けて自身の姿勢を安定化させる。作業者は、その姿勢で、表示面32に対して変更作業を行う。なお、同図(c)においては、説明の便宜上、梯子40において、複数本の横桟44が省略されている。
図示のように、梯子40の後傾限度が、それらワイヤ50,50,50によって規定される。その結果、作業者は、それらワイヤ50,50,50により、予定外に後傾することも高所から落下することも防止される。それにより、作業者は、高所において安全・安心に変更作業を実施できる。それらワイヤ50,50,50は、互いに共同して、作業者にとっての保護ネットとして機能する。
このように、本実施形態においては、3本のワイヤ50,50,50が、それぞれに対応する第1の連結具210および第2の連結具220と共同して、前記「梯子支持ユニット」の一例を構成している。
なお付言するに、複数本のワイヤ50,50,50を複数本の横糸として用い、それら横糸に、それらと交差するように複数本の縦糸を結合して網状または格子状を構成し、それにより、ネットを構成してもよい。この場合、そのネット自体が、作業者の足場として使用されることになる。このネットは、作業者の登る経路が無指向性であるフレキシブルな2次元梯子として機能することになる。
<ロープとの間の摩擦力によって梯子が支持されることによる第1の効果>
本実施形態においては、各ワイヤ50の表面と、立て看板20の表面(特に、一対の支柱22,22の外面82および背面)および梯子40の表面(特に、一対の縦棒42,42の背面)のそれぞれとが互いに接触すると、両者の界面に抗力が法線成分として発生し、その抗力に応じて摩擦力が前記界面に接線成分として発生する。
前記抗力および前記摩擦力は、いずれも、作業者が乗っていない状態で梯子40を3本のワイヤ50が小さな張力によって支持している軽負荷状態(待機状態、弛緩状態、軽度の緊張状態)においては小さく、作業者が乗っている状態で梯子40を3本のワイヤ50が大きな張力によって支持している重負荷状態(使用状態、緊張状態、重度の緊張状態)においては大きい。よって、前記抗力および前記摩擦力は、いずれも、各ワイヤ50の負荷状態の種類に依存する。
そして、前記軽負荷状態においては、前記摩擦力が小さいため、作業者は、例えば各ワイヤ50または梯子40の位置とか角度を変化させる(位置決めする、再配置する)ために、前記摩擦力に打ち勝つ小さな力を加えるのみで、各ワイヤ50と、立て看板20および梯子40のそれぞれとを、任意の方向に相対的にスリップさせることが許可される。
これに対し、重負荷状態においては、前記摩擦力が大きい(想定される外乱より大きい)ため、各ワイヤ50と、立て看板20および梯子40のそれぞれとが、いずれの方向にも相対的に予定外にスリップすることが抑制される。
このように、前記摩擦力と前記負荷状態の種類との間の依存性のおかげで、前記スリップが、必要性に応じて自動的に、作業者が希望するときには許可され、希望しないときには阻止される。
前記摩擦力は指向性を有せず、具体的には、各ワイヤ50と立て看板20(正確には、立て看板30の複数の部品のうち各ワイヤ50が接触する部品、特に、一対の支柱22,22)および梯子40のそれぞれとの間に、大きい抗力が存在する場合には、摩擦力が、各ワイヤ50の縦方向にも横方向にも斜め方向にも発生する一方、無視できるほどに小さい抗力しか存在しない場合には、いずれの方向にも摩擦力が発生しないというように、摩擦力が、抗力に応じて選択的に発生する。
したがって、作業者が梯子40に登って作業している間は、有効な摩擦力が無指向性で発生するため、各ワイヤ50と梯子40とがロックされる(固着される)とともに、各ワイヤ50と一対の支柱22,22とがロックされ、それにより、各ワイヤ50が立て看板20および梯子40から上下にずれてしまうことも左右にずれてしまうことも抑制される。
その結果、梯子40に登って作業している作業者からすると、作業者自身が多少動いても、それに連動した動きやふらつきが梯子40に発生せず、よって、梯子40は力学的に安定し、ひいては、作業者が、安定した姿勢で作業を継続することが可能となる。
本実施形態においては、いずれのワイヤ50も、合成樹脂でコーティングされている。その合成樹脂でコーティングされたワイヤ50を用いて梯子40を支持する場合には、コーティングなしのワイヤ50を用いる場合より大きな摩擦力が、各ワイヤ50の表面と、立て看板20の表面および梯子40の表面のそれぞれとの間に発生する。
ただし、本発明は、各ワイヤ50が合成樹脂でコーティングされない態様で実施することも可能であり、この態様においては、摩擦力が、各ワイヤ50の表面すなわち金属表面(鋼製ストランドの表面)と梯子40のうちの縦棒42,42の表面(金属表面である場合や、合成樹脂表面である場合や、木製表面である場合がある)との間に、前記合成樹脂でコーティングされる態様と同様にして、抗力に応じて選択的に発生することになる。
<ロープとの間の摩擦力によって梯子が支持されることによる第2の効果>
ここで、ワイヤまたはロープの取り回しについて説明するに、本実施形態においては、図28(a)に平面図で概略的に示すように、梯子40の傾倒姿勢において、各ワイヤ50の各端部にあるエンドループ302(図13(a)参照)が、対応する支柱22に締結された(位置不変に固定された)取付金具としての連結具210および220を使用して(介在させて)、対応する支柱22に係留される(対応する支柱22にロープ終端が位置する)一方で、各ワイヤ50の中間部が、任意の位置において、梯子40の背面に接触して係合する。
前記軽負荷状態(前記スリップが可能な状態)においては、各ワイヤ50と梯子40との接触位置、および各ワイヤ50と立て看板20との接触位置が、いずれも、垂直方向にも水平方向にも斜め方向にも3次元的に任意に変位可能である。一方、各ワイヤ50は、それ自体がフレキシブルであるため、任意の経路をとり得る。
したがって、前記軽負荷状態(前記スリップが可能な状態)であって、すべてのワイヤ50に小さい張力が発生している軽度の緊張状態においては、各ワイヤ50と梯子40との接触位置、および各ワイヤ50と立て看板20との接触位置が、すべてのワイヤ50と立て看板20梯子40とが力学的にバランスする位置に自律的に3次元的に変位する。
よって、前記軽度の緊張状態においては、各ワイヤ50と梯子40とが相対変位可能に接触するという挙動、すなわち、スリップがあえて許容される結果、各ワイヤ50と梯子40立て看板20とは、初期のアンバランスなジオメトリーから、より良好にバランスされたジオメトリーに自動的にポジショニングされる(自己矯正する)ことが期待される。
よって、本実施形態によれば、各ワイヤ50が梯子40および立て看板20に接触する位置が固定されてスリップが許容されない態様(例えば、前掲特許文献6に示すように、はしごにロープが結束される態様)とは異なり、前記自動ポジショニングを経た前記重負荷状態において、各ワイヤ50にたるみが予定外に発生し続けて、当該システム10のうちのいずれかの構成要素に局部的な過負荷が発生し続けることが抑制される。
そして、本実施形態によれば、各ワイヤ50と梯子40および立て看板20とがみだりに相対的にスリップしてしまうことが、各ワイヤ50の表面をコーティングする合成樹脂によって発生する摩擦力により、コーティングなしの場合より効果的に防止される。
前述のように、前記軽負荷状態においては、無視できるほどに小さい摩擦力しか各ワイヤ50と梯子40との間に発生しないから、作業者は、各ワイヤ50と梯子40との相対位置を両者間のスリップによって任意の目標位置に変更することができる。
よって、作業者は、梯子40から降りている状態において、梯子40をある位置に設置し、その位置において作業(例えば、前述の変更作業)が終了し、続いて、隣の位置に梯子40を移動させようとすると、上述のように、各ワイヤ50と梯子40との間の摩擦力が小さいから、作業者は、梯子40を小さい力で各ワイヤ50に対してスリップさせることが可能となり、作業場所を横方向に変更するための梯子40の側方移動が容易となる。
<梯子の上部が作業対象面またはその周囲に押し付けられることなく梯子が傾倒姿勢で位置決めされることによる効果>
梯子40を作業対象面(表示面32)に対して相対的に位置決めするために、梯子40の下端が前記支持面に接地する状態で、梯子40の上部を作業対象面またはその周囲に局部的に押し当て、それにより、梯子40を傾倒姿勢で両端支持する技術が知られている。
しかし、この技術を採用すると、作業対象面のうち、梯子40の上部が押し当てられている部分に対しては、作業者は、その部分へのアクセスが梯子40によって邪魔されるため、作業を行うことができない。そのため、作業者は、梯子40を横に移動させて、作業対象面のうち、梯子40の上部が押し当てられる部分を更新することが必要である。
これに対し、本実施形態によれば、梯子40を作業対象面に対して相対的に位置決めするために、梯子40の上部を作業対象面のうちのいずれの部位にも局部的に押し当て済む。よって、作業対象面のうちのいずれの部位も、梯子40によって邪魔されずに済む。よって、作業者は、作業対象面において、梯子40によって邪魔される部位を移動させるために、梯子40を横に移動させることが不要となる。
<作業空間の拡大>
本実施形態においては、例えば、表示板30が両面表示式を採用してもよい。この場合、表示板30は、前記敷地の中央を向く表側表示面32と、前記敷地の外側を向く裏側表示面32とを有する。
それら表側表示面32および裏側表示面32は、それぞれ、互いに独立した情報表示面として作用する。よって、作業者は情報変更作業を表示面32ごとに別々に行うことが必要であるが、表示されるべき情報の内容は、それら表示面32について互いに共通してもよい。いずれにしても、立て看板20は、表側表示面32および裏側表示面32において、それぞれ、前記敷地内の人間と前記敷地外の人間との双方に情報を表示することが可能である。
この態様においては、変更作業に先立ち、表示板30が前記垂直基準面に対して、表示板30の下端部が上端部より前記敷地の中央に接近するように傾倒した姿勢で固定される。さらに、それに合わせて、梯子40が、表示板30の下側から上側に向かうにつれて、裏側表示面32に対して概して平行な方向に延びるように傾倒した姿勢で固定される。
その結果、梯子40の中央部が、変更作業に必要なサイズの作業空間を隔てて裏側表示面32に概して正対するという幾何学的レイアウトが成立する。そのときに形成される作業空間は、側面視において、概して同じ幅寸法で延びる形状を有するものとなる。
以上要するに、この立て看板システム10は、図3に示すように、立て看板20と梯子40とを有する。立て看板20は、支柱22と表示板30とを有する。表示板30は、支柱22に対して、立て看板20の垂直基準面に対して水平軸線回りに傾倒可能であるように連結される。表示板30は、同図に示すように、支柱22に対して、表示板30が垂直基準面に対して目標角度で傾倒する姿勢で固定される。
梯子40は、同図に示すように、立て看板20に対して、梯子40が表示板30の下側から上側に向かうにつれて、傾倒姿勢にある表示板30に対して概して平行な方向に延びるように傾倒する姿勢で固定される。
それにより、この立て看板システム10によれば、同図に示すように、作業者がその足場としての梯子40を適切な位置および角度に設置することが困難な敷地においてであっても、いずれも同じ向きにほぼ同じ角度で傾倒する表示板30と梯子40との間に、立て看板20上の情報を作業者が変更する作業を行うのに必要な空間が確保される。
本実施形態においては、表示板30がそれの上端部に沿った水平軸線回りに揺動可能となっているが、本発明は、表示板30がそれの中間部または下端部に沿った水平軸線回りに揺動可能である態様で実施してもよい。
しかし、表示板30がそれの上端部に沿った水平軸線回りに揺動可能である態様においては、表示板30がそれの中間部または下端部に沿った水平軸線回りに揺動可能である態様より、立て看板20のうちの下側部分であって、敷地境界線やフェンスの存在を理由に幾何学的な制約が上側部分より厳しいものにおいて、作業空間を確保し易いという利点がある。
<移動経路内ボトルネックの拡大>
表示板30と梯子40との間に形成される全体作業空間のうちの梯子40上の作業者の移動経路によって占められる部分のうち最も狭い部位が、梯子40上の作業者の移動経路のうちのボトルネックである。この移動経路内ボトルネックが狭いと、作業者が、梯子40を登り始めようとしても、表示板30が邪魔になって、梯子40を登り始めることができない。
本実施形態においては、表示板30を正立姿勢のままにして梯子40を傾倒させるだけで上記移動経路内ボトルネックが必要サイズ確保される場合には、立て看板20を傾倒させなくてもよい。
しかし、表示板30を正立姿勢のままにして梯子40を傾倒させても上記移動経路内ボトルネックが必要サイズ確保されない場合には、表示板30も傾倒させることにより、上記移動経路内ボトルネックを拡大することが必要である。
このとき、表示板30の最下端位置が梯子40から例えば約10cmでも前方に離れるように表示板30を傾倒させると、上記移動経路内ボトルネックが拡大し、その結果、作業者が、梯子40を障害なく登ることが可能となる。
<梯子についての特異な使用法による効果>
作業者が梯子に登ってその梯子上で手作業を行う場面を想定すると、例えば前掲特許文献6に開示されているように、通常であると、梯子が、作業対象物に立て掛けられ、それにより、梯子の上端がその作業対象物に支持されるとともに、その作業対象物に接近する向きに傾倒させられる。この状態で、作業者は、その梯子の両側面のうち作業対象物を向く内側面とは反対側の外側面(斜め上向き面)を向く姿勢で、その外側面を登り、その外側面の途中で停止し、必要な手作業を行う。
これに対し、本実施形態においては、例えば図3に示すように、梯子40が、作業対象物としての立て看板20に立て掛けられることなく、そのため、梯子40の上端がその作業対象物に支持されないとともに、その作業対象物から離間する向きに傾倒させられる。この状態で、作業者が、梯子40の両側面のうち作業対象物を向く内側面(斜め上向き面)に背を向ける姿勢で、その内側面を登り、その内側面の途中で停止し、必要な手作業を行う。
したがって、本実施形態における使用法によれば、通常の使用法とは異なり、作業者が梯子40をあたかも椅子としてそれにもたれかかるように使用し、そのため、作業者の背面全体が梯子40に預けられて支持される。その結果、この使用法によれば、作業者は、梯子40上において、両手を梯子40から離すことが容易となり、よって、必要な手作業を安心して遂行することが容易となる。
これに対し、通常の使用法であると、作業者の前面全体を椅子に預けたいところ、そうすると、作業者の身動きがとれなくなるとともに、不安定となる。そのため、両手を梯子から離すことが困難となり、必要な手作業を安心して遂行することが困難である。
そもそも梯子は、作業者が梯子の途中で停止して手作業を行うことを主要な用途として想定されておらず、そのため、通常の使用法では、必要な手作業を安心して行うことができない。これに対し、本実施形態によれば、作業者は梯子40の途中で必要な手作業を安心して行うことができる。
以上要するに、本実施形態によれば、区域に設置された立て看板がそれの支柱に対して傾倒可能となり、さらに、その立て看板の傾倒姿勢に合わせて(その立て看板と似た幾何学またはジオメトリーを有するように)梯子が傾倒姿勢で設置され、それにより、いずれも傾倒した立て看板と梯子との間に作業者のための作業空間が確保される。
その結果、本実施形態によれば、足場としての梯子を適切に設置することが困難な現場としての区域においてであっても、作業者が、立て看板が区域に設置された現場において(すなわち、立て看板が区域に設置された状態において)、その立て看板が表示する情報の内容を変更する作業を行うための作業空間が確保され、その結果、作業者はその変更作業を安全・安心に行うことが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、作業対象物(正立姿勢でも傾倒姿勢でもよい)に対して梯子が傾倒姿勢で設置され、それにより、作業対象物と梯子との間に作業者のための作業空間が確保される。
その結果、本実施形態によれば、作業者が、作業対象物に対して作業を行うための作業空間が確保され、その結果、作業者はその作業を安全・安心に行うことが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、梯子がその背後からロープによって支持されるため、作業者が、作業対象物に対して作業を行うための作業空間が確保され、その結果、作業者はその作業を安全・安心に行うことが可能となる。
[第2実施形態]
次に、本発明の例示的な第2実施形態に従う立て看板システム400を図14-図17を参照して具体的に説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の符号または名称を付して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
図14に示すように、この立て看板システム400は、第1実施形態に従う立て看板システム10と同様に、立て看板20と、梯子40と、3個の締結具70,70,70と、第1の連結具210と、2個の第2の連結具220,220と、フレキシブルな連結具としての複数本のワイヤ50とを有する。
この立て看板システム400においては、立て看板システム10とは異なり、作業者による変更作業中、表示板30が、同図に示すように、正立姿勢で使用される。
この立て看板システム400に使用されるワイヤ50と同じものは、立て看板システム10において使用することも可能である。後に図17を参照して詳述するように、各ワイヤ50は、有効長さを調節する機能を有する。
図14に示すように、この立て看板システム400においては、変更作業時、立て看板20が正立姿勢にあり、かつ、梯子40が、立て看板20に、それの高さ方向中間位置において、水平展開姿勢で連結されるレイアウトが実現される。この立て看板システム400においては、変更作業時、梯子40が、立て看板20の側面に部分的に支持されることが可能な水平展開姿勢で立て看板20に固定されるように、支柱22,22から複数本のワイヤ50を介して吊り下げられる。
この変更作業時レイアウトにおいては、梯子40が、それぞれの端部において、立て看板20の一対の支柱22,22から延びる2本ずつのワイヤ50を介して水平展開姿勢に固定される。
具体的には、同図に示す例、すなわち、第1のワイヤ取り回し例においては、まず、もともとは直線状を成す各ワイヤ50が1個のループを成すように折り曲げられる。その状態で、折り曲げ前の各ワイヤ50の両端部(すなわち、折り曲げ後の前記ループのうちの上端部)が、図示しないが、第2の連結具220(または第1の連結具210)に連結される一方、折り曲げ前の各ワイヤ50の中間部(すなわち、折り曲げ後の前記ループのうちの下端部)が、梯子40の一対の縦棒42,42のそれぞれに、各ワイヤ50,50から梯子40が吊り下げられるように連結される。
図15(a)に示すように、この立て看板システム400を使用する場合には、立て看板20が、敷地内において境界線近傍に設置されているために作業者の足場として梯子40を同じ敷地内の適切な位置に設置することができない第1の作業環境において、梯子40が境界線を越える(隣地の上方空間に進入する)ように水平展開姿勢で配置され、その梯子40の上で作業者が立ち姿勢で変更作業を行うことが可能である。
なお、同図(a)には、複数本のワイヤ50についての第2のワイヤ取り回し例が示されている。
さらに、同図(b)に示すように、この立て看板システム400を使用する場合には、敷地内において境界線近傍に設置されているフェンスの近傍に設置されているために通常の立て看板では変更作業のための作業空間を適切なサイズで確保することができない第2の作業環境において、梯子40がフェンスを越えるように水平に配置され、その梯子40の上で作業者が立ち姿勢で変更作業を行うことが可能である。
同図(b)に示すように、梯子40上で作業者が立ち姿勢で変更作業を行う場合には、同図(b)および(c)に示すように、梯子40が作業者の重みで下方に撓む。よって、梯子40の最大撓み位置でも、梯子40がフェンスの上端部に接触して押し曲げないように、梯子40が空中に水平設置される際の梯子40の高さが事前に設定される。
同16に例示するように、図15(b)に示す第2の作業環境において、この立て看板システム400を使用する場合には、梯子40がフェンスを越えるように水平に配置される。その梯子40は、それぞれの端部において、立て看板20の各支柱22から延びる2本ずつのワイヤ50を介して水平展開姿勢で固定される。
図16には、複数本のワイヤ50についての第3のワイヤ取り回し例が示されている。具体的には、全体として直線状を成す各ワイヤ50の一端部が、例えば、ポイントP2に装着された第2の連結具220に連結される一方、下端部が梯子40の一対の縦棒42,42のうち対応するもの(前側の縦棒42か後側の縦棒42)の両端部のうちの対応するもの(右端部か左端部)に連結される。
<ワイヤの構造>
図17(a)には、複数本のワイヤ50のうちのいずれかが代表的に正面図で示されている。各ワイヤ50は、展開状態では、直線的に延びている。各ワイヤ50は、少なくとも4個のセグメントの直列接続体として構成されている。それらセグメントは、各ワイヤ50の一端部を構成するセグメントAと、他端部を構成するセグメントDと、それらの中間に位置するセグメントBおよびCとである。
同図(b)に示すように、セグメントAは、図13(a)と同様に、ワイヤロープ410の両端部がループ412を構成するように折り返されてそれぞれの端末がクリップ414でワイヤロープ410の本体部に固定されることによって構成されている。セグメントDは、セグメントAと共通の構成を有する。
同図(a)に示すように、セグメントAを構成するために、ワイヤロープ410が、折り返しなしで直線姿勢で使用されるのに対し、セグメントDを構成するために、ワイヤロープ410が、ループ422を成すように折り返されて使用される。セグメントDを構成するために、折り返されて隣接配置された両端部(ループ412,412)が、それら両端部に共通のセグメントCを構成するシャックル(例えば、貫通穴を有する剛性金具)420によって結合され、それにより、1本のループ422が構成される。
同図(b)に示すように、セグメントBは、ターンバックル(例えば、長さ調節可能な連結具、長さを調節して張力を調節する連結具、ロープ緊張状態で張力を調節可能な連結具など)430として構成される。ターンバックル430は、同軸的な一対のめねじ部を有する胴部432と、それらめねじ部に螺合される同軸的な一対のボルト434,434とを有する。各ボルト434,434の自由端部は、他の部材との連結を可能にするための連結部(例えば、アイエンド)436を有する。
本実施形態においては、ターンバックル430が、セグメントAとCとの間に介在させられ、それにより、それらセグメントAおよびCを互いに連結するとともに、対応する1本のワイヤ50の全長が、ターンバックル430に対する作業者による回転量に応じて調整可能である。
[第3実施形態]
次に、本発明の例示的な第3実施形態に従う立て看板システム500を図19-図26および図28を参照して具体的に説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の符号または名称を付して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
<使用態様>
図19(a)は、この立て看板システム500を、立て看板20および梯子40と共に、立て看板20が正立姿勢にあり、かつ、梯子40が傾倒姿勢にある様子で示す側面図である。第1実施形態と同様に、立て看板20は、一対の支柱22,22と、表示板30とを有する。
同図(b)は、立て看板20が傾倒姿勢にあり、かつ、梯子40が傾倒姿勢にある場合に、側面視において、両者の間に矩形状の作業空間が形成される様子を示す側面図である。この立て看板システム500を、立て看板20が傾倒姿勢にある状態で実施することが可能である。同図において、「θ」は、梯子40の、垂直基準面からの隔たり角である傾角を示し、一方、「ψ」は、立て看板20の表示板30の、垂直基準面からの隔たり角である傾角を示す。
同図(c)は、立て看板20が正立姿勢にあり、かつ、梯子40のみが傾倒姿勢にある場合に、側面視において、両者の間に扇状の作業空間が形成される様子を示す側面図である。この立て看板システム500を、立て看板20が正立姿勢にある状態で実施することも可能である。
<基本構成>
基本構成を概略的に説明するに、この立て看板システム500は、図19に示すように、第1実施形態と同様に、立て看板20および梯子40を含む。
この立て看板システム500は、さらに、図19(a)に示すように、第1実施形態とは部分的に異なる梯子支持ユニット510を含むように構成される。この梯子支持ユニット510は、本発明の例示的な一実施形態に従う前記「梯子支持ユニット」の一例を構成する。
その梯子支持ユニット510は、同図に示すように、第1実施形態における3本のワイヤ50,50,50に相当する3本の横方向ロープ520,520,520と、同図に示すように、第1実施形態における第1および第2の連結具(取付金具の一例)210,220に代わる2本の縦方向ロープ530,530とを含むように構成されている。
ここに、3本の横方向ロープ520,520,520は、個々には、前記「第1のロープ」の一例を構成し、また、1組のロープ組立体またはロープセットを構成する。また、2本の縦方向ロープ530,530は、個々には、仮止め用取付具として機能し、また、1組のロープ組立体またはロープセットを構成する。また、2本の縦方向ロープ530,530は、それぞれ、前記(5)項に記載の立て看板システムにおける前記支持具の一例である。
ここに、それら横方向ロープ520,520,520および縦方向ロープ530,530のうち少なくとも横方向ロープ520,520,520は、前記「梯子上部安定化部」の一例を構成する。
この梯子支持ユニット510は、さらに、同図に示すように、第1実施形態とは異なり、各支柱22ごとに固定具550を各支柱22に対して着脱可能に有する。各固定具550は、対応する1本の縦方向ロープ530を吊り下げることによって保持する。
この梯子支持ユニット510は、さらに、図26に示すように、設置状態において梯子40の下部(梯子40の下端を含み、長さを有する部分)の水平移動を所定範囲内に拘束するための2本の水平ロープ540,540(前記「第2のロープ」の一例。ロープ組立体)であって一対の支柱22,22によって水平方向に延びるように支持されるものを含むように構成されている。この構成は、後に詳述するが、それと同じ構成は、第1実施形態において採用される。
ここに、それら水平ロープ540,540および一対の支柱22,22のうち少なくとも水平ロープ540,540は、前記「梯子下部安定化部」の一例を構成する。
<ロープ取り回し>
ここで、この梯子支持ユニット510において採用されるロープ取り回しを第1実施形態と比較して概略的に説明するに、前述のように、第1実施形態においては、図28(a)に平面図で概略的に示すように、梯子40の傾倒姿勢において、各ワイヤ50(開いているワイヤまたはロープの一例)の各端部が、対応する支柱22に締結された取付金具としての連結具210および220を使用して(介在させて)、対応する支柱22に係留される(対応する支柱22にロープ終端が位置する)一方で、各ワイヤ50の中間部が、任意の位置において、梯子40の背面に接触して係合する。
すなわち、同図は、金具使用係留型のロープ取り回しの一例を示しているのである。
このロープ取り回し例を採用する場合には、立て看板20の表示板30の両側の表示面32のうちのいずれも作業対象となる可能性があることを考慮し、3本のワイヤ50より成るロープセットを、表側の表示面32の作業のためのロープセットと、裏側の表示面32の作業のためのロープセットとを、合計2セット用意し、いずれの側の表示面32の作業にも対応可能とするために、それら2セットを一緒に立て看板20に装着してもよい。
これに対し、本実施形態においては、図28(b)に平面図で概略的に示すように、梯子40の傾倒姿勢において、各横方向ロープ520(閉じているロープまたはワイヤ)が、平面視において、立て看板20の背後を横に通過するとともに梯子40の背後を横に通過する経路で、それら立て看板20および梯子40を包囲するように、対応する支柱22に締結される取付金具を使用せずに、取り回される。各横方向ロープ510は、任意の位置において、梯子40の背面に接触して係合する。
すなわち、同図は、金具不使用包囲型のロープ取り回しの一例を示しているのである。
このロープ取り回し例を採用する場合には、3本のロープ520より成る1つのロープセットさえ立て看板20に装着すれば、同じロープセットを、立て看板20の表示板30の両側の表示面32のうちのいずれの作業時にも使用することが可能となる。
さらに、このロープ取り回し例を採用する場合には、同図(a)に示すものとは異なり、3本のロープ520より成る1つのロープセットを、取付金具なしで、一対の支柱22,22に装着することが可能である。
一方、その取付金具は、対応する支柱2にフィットすることが望ましい。また、支柱22の形状やサイズが異なれば、それに応じて取付金具の形状やサイズを異ならせることが必要である。
これに対して、同図(a)に示すロープ取り回し例を採用すれば、支柱22の仕様に対する依存性を有する取付金具を使用せずに済みため、同じロープセットで対応可能な支柱22の種類が増加し、支柱22の多様性に対する汎用性が向上する。
ここで、この梯子支持ユニット510において採用されるロープ取り回しをさらに具体的に説明する。
図20には、梯子支持ユニット510において、互いに異なる高さ位置を有する3本の横方向ロープ520,520が各支柱22の外側を通過するように取り回される様子が斜視図で示されている。それら横方向ロープ520,520,520は、個別の高さ位置に着目し、それぞれ、上段ロープ520、中段ロープ520および下段ロープ520とも称される。本実施形態においては、いずれのロープ520も、合成樹脂でコーティングされているが、一部のロープ520のみコーティングしたり、全くコーティングなしで本発明を実施してもよい。
同図には、さらに、各支柱22において1本の縦方向ロープ530が着脱可能に装着される様子も斜視図で示されている。図示しない反対側の支柱22には、同様に、別の縦方向ロープ530が着脱可能に装着される。
同図には、さらに、それら横方向ロープ520と縦方向ロープ530とが各支柱22において互いに連結される様子も斜視図で示されている。具体的には、それら横方向ロープ520と縦方向ロープ530とは、縦方向ロープ530の各リング532,534,536を、対応する1本の横方向ロープ520が貫通する。それらリング532,534,536は、個別の高さ位置に着目し、それぞれ、上段リング532、中段リング534および下段リング536とも称される。本実施形態においては、いずれのロープ520も、合成樹脂でコーティングされているが、コーティングなしで本発明を実施してもよい。
<横方向ロープの構成>
図21には、3本の横方向ロープ520,520,520のうちのいずれかが代表的に、かつ、使用状態(連結状態)で平面図で示されている。それら横方向ロープ520,520,520は、構成に関しては互いに共通するが、第1実施形態と同様に、全長(最大長さ)に関しては互いに異なる。
各横方向ロープ520は、図17に示すワイヤ50に類似する部品構成を有する。具体的には、各横方向ロープ520は、主ロープとしての1本のワイヤロープ・セグメント410と、連結金具420としてのシャックルまたはリングキャッチと、一対のアイエンド436,436を両端に有するターンバックル430(前記長さ調節機構の一例)とを有する。
図19(a)には、各横方向ロープ520が、ターンバックル430を有し、それにより、長さ可変域を有することが示されている。
ワイヤロープ・セグメント410は、それの両端部が折り曲げられ、その端末が本体部にクリップ414でかしめられて結束され、それにより、両端部にそれぞれエンドループ412,412が形成されている。一方のエンドループ412は、連結金具420に着脱可能に連結される一方、他方のエンドループ412は、ターンバックル430の一方のアイエンド426に着脱不能または着脱可能に連結される。
連結金具420は、マニュアル操作でリリース可能となっている。そのため、この連結金具420は、例えば、スナップフック、弾性フック、スライドフックなど、連結金具420の連続リングを部分的に開放するためのフック421を有する。
各横方向ロープ520は、使用前にあっては、展開状態(非連結状態、開放状態、開端状態)にあり、この状態は、図21に示す連結状態にある横方向ロープ520を、連結金具420をリリース状態にして、その連結金具420とワイヤロープ・セグメント410とを分離することによって達成される。
各横方向ロープ520は、通常、その展開状態で、保管場所から、現場としての立て看板20に搬送される。そして、現場に到着すると、各横方向ロープ520は、まず、この展開状態で、作業者により、図20に示すように、3個のリング532,534,536のうち、対応するものを通過するように、取り回される。
その取り回し作業が完了すると、作業者は、連結金具420とワイヤロープ・セグメント410とを互いに連結し、その結果、閉じた1本の横方向ロープ520が、図21に示すように、完成する。
その後、作業者により、梯子40が立て看板20に近接して設置され、その状態で、各横方向ロープ520がそれら立て看板20に梯子40を、平面視において、包囲するように、取り回される。このとき、各横方向ロープ520は、梯子40の背後と、一対の支柱22,22の外側と、立て看板40の背面(この場合、作業対象面としての裏側表示面32)の背後とを通過する閉じた経路で延びる。
この状態で、作業者により、梯子40の傾角θの目標値が実現されるように、3本の横方向ロープ520,520,520がいずれも、過度な(許容値以上の)たるみなく、一対の支柱22,22から延び出すように、対応するターンバックル430の回転操作により、横方向ロープ520,520,520の有効長が個別に調節される。
その結果、梯子40の傾角θの目標値が実現される状態で、いずれの横方向ロープ520,520,520も緊張状態(過度なたるみがない状態)で立て看板20と梯子40とに巻き付けられ、それにより、作業者が梯子40を登って表示板30に対して必要な作業を行う準備が整う。
<縦方向ロープの構成>
図20に示すように、各縦方向ロープ530(前記「第3のロープ」の一例)は、対応する支柱22において、各横方向ロープ520(前記「第1のロープ」の一例)の垂直方向位置が定義されるように各横方向ロープ520を支持する支持具として機能する。
この支持具は、第1実施形態における第1および第2の連結具210,220のように、各横方向ロープ520の垂直方向位置を一義的に定義するのではなく、所定の可変域内においては、自由に変位可能であるように、タイトではなくルーズに、ないしはリジッドではなくフレキシブルに定義する。
すなわち、後に詳述するように、各縦方向ロープ530は、各横方向ロープ520を、各横方向ロープ520が各支柱22に接触してそこを水平方向に通過する垂直方向位置に関して、ルーズにないしはラフにガイドする仮止め機能を有するのである。
各縦方向ロープ530は、各支柱22ごとに、横方向ロープ520の本数と同数以上の(本実施形態においては、同数の)リング(例えば、ロープの一部としてのループ、ロープから独立した部品としてのリング状金具など)532,534,536をそれぞれ互いに異なる長さ方向位置に有している。各縦方向ロープ530は、対応する支柱22に沿って垂下するように使用されるため、結局、それらリング532,534,536は、それぞれ互いに異なる垂直方向位置を有することになる。
そして、上段ロープ520は、上段リング532を貫通し、また、中段ロープ520は、中段リング534を貫通し、また、下段ロープ520は、下段リング536を貫通する。各リング532,534,536は、いずれも、ロープの外形断面積より大きい貫通穴を有するため、各ロープ520は、対応するリング532,534,536にルーズに(ロープ太さ方向に平行移動可能に)フィットすることになる。
その結果、縦方向ロープ530および各リング532,534,536は、対応するロープ520の垂直方向位置を一義的に拘束するのではなく、複数本の横方向ロープ520,520,520を垂直方向に関して仮止めする機能を有するに過ぎない。
具体的には、各横方向ロープ520が梯子40を支持していないために緊張状態にないときに、各横方向ロープ520が自重によって必要以上に落下することを防止するために、縦方向ロープ530および各リング532,534,536が存在する。
そして、各横方向ロープ520の最終的な垂直方向位置は、複数本の横方向ロープ520,520,520の長さ、自重(たるみの原因)、屈曲性などの複合的なファクターによって総合的に、かつ、各横方向ロープ520に張力を与えるとほぼ自律的に決まり、その結果、ロープ経路がほぼ自律的に決まることが期待される。
このように、各縦方向ロープ530は、各横方向ロープ520が各支柱22を通過する垂直方向位置を、仮に、すなわち、暫定的に定義するという機能を有する。すなわち、各縦方向ロープ530は、各横方向ロープ520を、それが各支柱22を通過する垂直方向位置に関して仮止めするという機能を有するのである。
図19(a)には、各縦方向ロープ530が、ルーズなリング532,534,536を有し、それにより、高さ可変域を有することが示されている。
各縦方向ロープ530の一例を、図20を参照して具体的に説明するに、各縦方向ロープ530は、1本のワイヤロープ・セグメント537と、中段リング534を構成するための連結ユニットとを有するように構成される。
ワイヤロープ・セグメント537の上端部が折り曲げられてその端末がクリップでかしめられて結束されることにより、ループが形成され、そのループが上段リング532として機能する。
同様に、ワイヤロープ・セグメント537の下端部が折り曲げられてその端末がクリップでかしめられて結束されることにより、ループが形成され、そのループが下段リング536として機能する。
本実施形態においては、いずれのロープ530も、合成樹脂でコーティングされているが、一部のロープ530のみコーティングしたり、全くコーティングなしで本発明を実施してもよい。
<中段リング>
ワイヤロープ・セグメント537の中央部に前記連結ユニットが装着されている。図22に示すように、その連結ユニットは、連結具538としてのU字ボルトセット(図7に示すU字ボルト102に類似する構成を有する)と、リング状金具539としてのU字環とを有するように構成される。
そのリング状金具539は、一対のアーム部539a,539bが一端部同士において互いに連結されて成るU字状金具539cと、一対のアーム部539a,539bの開端部を閉塞可能なピン539dであってマニュアル操作によってアーム部539a,539bに対して着脱可能であるものとを有する。
図22に示すように、連結具538は、ワイヤロープ・セグメント537の中央部と、リング状金具539のうちのアーム部539aの一部とを共締めすることによって、ワイヤロープ・セグメント537の中央部にリング状金具539を位置不変状態で連結する。リング状金具539のうちの貫通穴(すなわち、一対のアーム部539a,539bの間の空洞)が、中段ロープ520の外形断面積より大きい。
よって、中段ロープ520は、それの垂直方向位置が中段リング534に対して可変である状態で、リング状金具539のうちの貫通穴、すなわち、中段リング534として機能するものの内部をルーズに通過することになる。
なお、本実施形態においては、中段リング534が、取付金具538および539を用いて実現されている。よって、本実施形態によれば、中段リング534の、対応する1本の縦方向ロープ530における長さ方向位置を変更する作業が、連結具538を緩めて縦方向ロープ530上においてスライドさせてその後に連結具538を締め付ける一連の作業として、現場でも簡単に行うことが可能となる。とはいえ、中段リング534は、これに代えて、ワイヤロープによるループを用いて実現してもよい。
<固定具>
図23には、図19および図20に示す固定具550が拡大されて斜視図で示されている。固定部550は、一対の支柱22,22のそれぞれの外面80,80にそれぞれ、分離可能に装着される。各固定具550は、それぞれ、磁石(永久磁石)552を有し、その磁石552の磁力により、対応する支柱22の外面80に分離可能に装着される。
その磁石552の一例は、ネオジム磁石である。この例においては、固定部550が、例えば、ネオジム磁石の他にヨークを有し、そのヨークにより、ネオジム磁石から発生する磁力が、ネオジム磁石のうちの片側の吸着面に集中的に発生する。
各固定具550が、対応する支柱22の表面に磁力によって吸着されている状態で、対応する縦方向ロープ530が、それの上端位置(例えば、上段リング532)において、各固定具550のフック554から吊り下げられる。そのフック554は、固定具550のうちの本体部556であって磁石552を収容するものの表面に形成された凸部558から垂下している。
ところで、本実施形態においては、図19に示すように、3本の横方向ロープ520が、梯子40と一対の支柱22,22とに、それらの間を概して水平方向に延びるように支持される。
したがって、一対の支柱22,22、梯子40および3本の横方向ロープ520より成る力学系において力学的バランスが成立する状態においては、梯子40に真下に向けて作用する荷重(梯子40の自重と作業者の体重との和など)によって梯子40にモーメントが発生するところ、そのモーメントを打ち消す向きのカウンターモーメントが3本の横方向ロープ520および一対の支柱22,22によって発生する。そのカウンターモーメントを発生させるため、各ロープ520に軸力すなわち張力が発生する。
このとき、各横方向ロープ520は、傾角θの可変域全域を通じて、横方向に(概して水平方向に)延びているから、各支柱22の外面80にほぼ垂直に係合する。具体的には、本発明者の試作品においては、傾角θは、約20度を超えず、かつ、梯子40の全長は、約2500mmであるから、梯子40が最大傾角θ(例えば、20度)をとっても、それに伴って各ロープ520と梯子40との接点が、傾角θ=0のときから下降する量は、十分に小さい。
前述のように、各ロープ520は、それの自重のため、実際には、下方にたわむことを避け得ない。
図29(a)は、斜視図で、図19に示す梯子支持ユニット510の試作品において、複数本の横方向ロープ520により、梯子40がそれの背後から水平方向前向き(表示板30に接近する向き)に、各横方向ロープ520に過度なたわみ(実用上許容されないほどに大きなたわみ)なしで支持されている状態(たわみが0である緊張状態を完全な緊張状態というのに対し、過度なたわみがない緊張状態を、便宜上、準緊張状態という)において、各横方向ロープ520が、それの自重によってたわむ様子を示す。
同図(a)は、さらに、各横方向ロープ520が梯子40および一対の支柱22,22に複数の接点において点接触する様子を示す。具体的には、各横方向ロープ520は、梯子40の背面(一対の縦棒42,42のそれぞれの背面)との間では、2個の接点で点接触し、また、一対の支柱22,22との間では、各支柱22ごとに、2個の接点で点接触する。また、同図(b)は、同図(a)に対する平面図である。
いずれにしても、各横方向ロープ520から各支柱22に作用する力のうちの支配的な成分は法線成分である。それと同時に接線成分が存在したとしても、それは小さいし、しかも、各横方向ロープ520と支柱22との間に接線方向の摩擦力が存在するから、小さな接線成分はその摩擦力によって打ち消される。
さらに、各横方向ロープ520は、各リング532,534,536により、ルーズに連結されているため、自律ポジショニングによってたとえ各ロープ520に垂直移動が発生しても、それが一定範囲を超えない限り、各ロープ520が各リング532,534,536を圧迫することはない。
したがって、各横方向ロープ520は、実用的ないずれの事例においても、各支柱22にほぼ垂直に係合し、その係合位置において、各横方向ロープ520は、縦方向ロープ530によってルーズにガイドされるに過ぎず、支柱22に装着された縦方向ロープ530に対して垂直方向にほとんど相対移動しないから、各横方向ロープ520が、縦方向ロープ530に軸力も張力も付加することはない。すなわち、各横方向ロープ520からの外力が原因で、縦方向ロープ530が引っ張られることはないのである。
このように、縦方向ロープ530は、3本の横方向ロープ520の仮止めを行うものであるから、いずれの横方向ロープ520からも荷重を受けない。したがって、各ロープ520が縦方向ロープ530を押し下げることはない。本発明者は、この事実を、前記試作品において確認した。
よって、固定具550は、基本的には、1本の縦方向ロープ530の自重を超える耐荷重特性を有すれば足りる。したがって、磁石552の主成分としては、複数の種類の素材の中から、磁力の極大化という視点で、ネオジムを選択することは不可欠ではなく、磁石552は、例えば、フェライト磁石でもよい。
さらに、本実施形態によれば、作業者は、現場において、各支柱22の複数の高さ方向位置のうち、固定具550が分離可能に装着される位置を、作業者の経験や好み、他の熟練の作業者の経験に合わせて、自由に決定することが可能である。
さらに、作業者は、固定具550を支柱22に装着して、他の梯子支持作業を開始した後、途中で、固定具550の現在の装着位置が不良であることが分かれば、他の作業の途中で、例えば、固定具550から縦方向ロープ530が吊り下げられ、かつ、その縦方向ロープ530の各リング532,534,536内を各横方向ロープ520が通過してルーズにガイドされる状態で、固定具550を装着し直してその装着位置を最初の位置(仮の装着位置)から上昇させたり下降させることが可能である。縦方向ロープ530は、実質的に無負荷状態にあるからである。
すなわち、作業者は、梯子支持作業の実行中に、適宜、各横方向ロープ520の高さ方向位置を調節することが可能なのである。
さらに、本実施形態によれば、固定具550を各支柱22に装着可能とするために、予め、各支柱22に、その装着を可能にするための追加の加工を施すことが不要である。
<梯子が目標傾角を実現する原理>
図19に示すように、作業者は、梯子40を傾倒姿勢で設置するのに先立ち、自身に必要なサイズの作業空間を想定し、そうすると、その目標の作業空間を実現するのに必要な梯子40の傾角θが決まる。
図24(a)は、梯子支持ユニット510において、縦方向ロープ530の高さ調節機構と、そのおかげで梯子40の傾角θが変化する原理とを説明するための側面図である。
縦方向ロープ530の高さ調節機構は、固定具550の高さ位置可変性と、各リング532,534,536のルーズフィッティングとに依存する。固定具550の高さ位置が変更されなくても、各リング532,534,536のルーズフィッティングによる高さ位置可変性のおかげで、各横方向ロープ520が高さ可変域を有し、その高さ可変域内で、作業者は、各横方向ロープ520の実際高さ位置を変更できる。
各横方向ロープ520につき、それの有効長が変更されなくても、それの実際高さ位置が変化すると、梯子40の傾角θが変化する。具体的には、各横方向ロープ520の高さい位置が低いほど、傾角θが増加し、それにより、作業空間が拡大する。
例えば、上段ロープ520の実際高さは、高さH1とH2との間で可変である。高さH1のとき、梯子40は傾角θ1を有し、高さH1より低い高さH2のとき、梯子40は、傾角θ1より大きい傾角θ2を有する。
同図(b)は、同じ梯子支持ユニット510において、各横方向ロープ520の長さ調節機構と、そのおかげで梯子40の傾角θが変化する原理とを説明するための側面図である。
各横方向ロープ520の長さ調節機構は、ターンバックル430として例示的に実現される。各横方向ロープ520の長さ調節機構のおかげで、各横方向ロープ520は、長さ可変域を有し、その長さ可変域内で、作業者は、各横方向ロープ520の実際長さ(有効長さ)を変更できる。
各横方向ロープ520につき、それの実際高さ位置が変更されなくても、それの有効長が変化すると、梯子40の傾角θが変化する。具体的には、各横方向ロープ520が長いほど、傾角θが増加し、それにより、作業空間が拡大する。
例えば、上段ロープ520の実際長さは、長さL1とL2との間で可変である。長さL1のとき、梯子40は傾角θ4を有し、長さL1より短い長さL2のとき、梯子40は、傾角θ4より小さい傾角θ3を有する。
図25(a)は、梯子支持ユニット510において、3本の横方向ロープ520,520,520が使用される良い例を示す側面図であり、同図(b)は、同じ梯子支持ユニット510において、3本の横方向ロープ520,520,520が使用される悪い例を示す側面図である。
良い使用例においては、いずれの横方向ロープ520にもたるみが発生しないのに対し、悪い使用例においては、少なくとも1本の横方向ロープ520にもたるみが発生する。
たるみが存在する横方向ロープ520は、梯子40およびそれに登っている作業者からの荷重を全く負担できず、そのため、たるみが存在しない横方向ロープ520のみが、その荷重を負担するため、一部の横方向ロープ520が過負荷となる傾向が生じてしまう。
<梯子下部安定化部>
図26(a)は、図19に示す梯子支持ユニット510において、互いに平行な2本の水平ロープ540,540(前記「第2のロープ」の一例)によって梯子40の下部の予定外の水平移動が制限される原理を説明するための斜視図であり、同図(b)は、側面図である。
水平ロープ540,540を一対の支柱22,22に装着するために、まず、作業者は、一対の取付金具としての一対の第2の連結具220,220(図9(c)参照)をそれぞれ、一対の支柱22,22にねじ止めする。このとき、それら第2の連結具220,220は、図9(c)に示す例とは異なり、コの字ボルト230の直線状の基端部234が、各支柱22の内面82に対向するように、一対の支柱22,22に装着される。
各水平ロープ540は、ワイヤロープ・セグメント542と、ターンバックル544とを直列に接続して構成されたロープセットである。
このロープセットにおいて、ワイヤロープ・セグメント542の両端のうち、ターンバックル544に連結されない側の端部はループ546を有し、そのループ546は、対応する第2の連結具220のうちの基端部234に巻き付けられて連結される。
このロープセットにおいて、ワイヤロープ・セグメント542の両端のうち、ターンバックル544に連結される側の端部はループ548を有し、そのループ548は、ターンバックル544の両側のアイエンド550,550のうち、対応する第2の連結具220に連結されない側のものに連結される。
このロープセットにおいて、ターンバックル544の両側のアイエンド550,550のうち、対応するワイヤロープ・セグメント542に連結されない側のものは、対応する第2の連結具220のうちの基端部234に嵌合状態で連結されている。
一例においては、一対の水平ロープ540,540間の間隔の幅寸法が、梯子40の縦棒42の太さと同じか、それより少し広いか、またはそれより少し狭いように設定される。この例においては、梯子40が一対の水平ロープ540,540によって両側からほぼ隙間なく挟まれて実質的に固定的に位置決めされる。一例においては、梯子40の縦棒42が、一対の水平ロープ540,540により、各ロープ540自身の弾性を利用して、圧迫状態で両側から挟まれる。
本実施形態においては、いずれのロープ540も、合成樹脂でコーティングされているが、一部のロープ540のみコーティングしたり、全くコーティングなしで本発明を実施してもよい。
<梯子を傾倒姿勢で設置するための作業手順の一例>
第1ステップ:水平ロープ装着作業
図26に示すように、作業者は、2本の水平ロープ540,540のそれぞれの両端を、一対の第2の連結具220,220またはそれらに類似する取付金具を用いて、一対の支柱22,22にそれぞれ装着する。作業者は、その装着状態で、各水平ロープ540ができる限りたるみを有しないように、ターンバックル544を回転操作して、各水平ロープ540の有効長を微調整する。
第2ステップ:縦方向ロープ装着作業
図20に示すように、作業者は、固定具550を、各支柱22の外面80に、適当な高さ位置において装着する。その後、作業者は、固定具550から縦方向ロープ530を吊下げる。
第3ステップ:横方向ロープ装着作業
まず、図21に示すように、作業者は、シャックル420のフック421を開いて、ループ412をシャックル420から取り外し、それにより、上段、中段および下段ロープ520,520,520を、いずれも、開いた状態(非連結状態)にする。
図20に示すように、作業者は、上段ロープ520(他の2本のロープより長い全長を有する)を、上段リング532を通過して立て看板20の全体を水平方向に包囲するように、取り回す。このとき、上段ロープ520のうちのループ412をシャックル420に連結し、それにより、上段ロープ520を、閉じた状態(連結状態)にする。
さらに、作業者は、リング状金具539からピン539dを引き抜き、中段ロープ520(中間の全長を有する)を中段リング534を通過させ、その状態で、リング状金具539にピン539dを装着する。
さらに、作業者は、中段ロープ520を、中段リング534を通過して立て看板20の全体を水平方向に包囲するように、取り回す。このとき、中段ロープ520のうちのループ412をシャックル420に連結し、それにより、中段ロープ520を、閉じた状態(連結状態)にする。
図20に示すように、さらに、作業者は、下段ロープ520(他の2本のロープより短い全長を有する)を、下段リング536を通過して立て看板20の全体を水平方向に包囲するように、取り回す。このとき、下段ロープ520のうちのループ412をシャックル420に連結し、それにより、下段ロープ520を、閉じた状態(連結状態)にする。
第4ステップ:梯子設置作業
図19に示すように、作業者は、梯子40を、各横方向ロープ520の内部に位置し、かつ、立て看板20の一対の表示面32,32のうち作業を行うべき一方の表示面32を向くように配置する。
このとき、梯子40は、一方の表示面32と、各横方向ロープ520のうち、反対側の表示面32に沿って通過するセグメントを除くセグメント、すなわち、梯子40をそれの背後を水平方向に通過して梯子40をそれの背後から水平方向前向きに支持する梯子支持セグメントとによって包囲される空間内に配置されることになる。
さらに、図26に示すように、梯子40の下端を、前記支持面に、前記矩形の制限領域内の任意の位置において接地させる。
さらに、図19に示すように、作業者は、梯子40を、3本の横方向ロープ520,520,520のそれぞれのうちの前記梯子支持セグメントにもたれるように立て掛け、それにより、梯子40が傾倒姿勢で設置される。
第5ステップ:横方向ロープ有効長微調整作業(たるみ取り、張力付加)
さらに、図19に示すように、作業者は、各横方向ロープ520のターンバックル430を回転操作することにより、各横方向ロープ520の有効長を微調整し、それにより、各ロープ520からたるみを除去して各横方向ロープ520に張力を付与する。
さらに、作業者は、梯子40において目標の傾角θすなわち目標の作業空間が実現されるように、各横方向ロープ520に対して必要な微調整を追加する。
なお付言するに、それら5つのステップが実行される順序は適宜変更が可能であり、例えば、第1ステップが第2ステップと並行してまたはその後に実行されるという順序に変更したり、第1ステップが第3ステップと並行してまたはその後に実行されるという順序に変更することが可能である。
[第4実施形態]
次に、本発明の例示的な第4実施形態に従う立て看板システム600を図27および図28を参照して具体的に説明する。ただし、第3実施形態と共通する要素については、同一の符号または名称を付して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
前述のように、第3実施形態においては、図28(b)に平面図で概略的に示すように、梯子40の傾倒姿勢において、各横方向ロープ510(閉じているか、エンドレスか、または無端のロープまたはワイヤの一例)が、平面視において、立て看板20の背後を通過するとともに梯子40の背後を通過するように、それら立て看板20および梯子40を包囲するように、一対の支柱22,22に締結される取付金具210,220を使用せずに、取り回される。各横方向ロープ510は、任意の位置において、梯子40の背面に接触して係合する。
これに対し、本実施形態においては、同図(c)に平面図で概略的に示すように、各横方向ワイヤ620(開いているか、オープンエンドを有するか、有端のワイヤまたはロープの一例)の各端部が、対応する支柱22に締結される取付金具210,220を用いることなく各横方向ロープ620の両側のエンドループ622,622を用いて、一対の支柱22,22に係留される(対応する支柱22にロープ終端が位置する)一方で、各横方向ロープ620の中間部が、任意の位置において、梯子40の背面に接触して係合する。
すなわち、同図は、金具不使用係留型のロープ取り回しの一例を示しているのである。
この取り回し例を採用するためには、同図に示すように、各支柱22の内面82と表示板30の側面との間に、ロープが通過する隙間が存在することが必要である。
図27には、斜視図で、本実施形態に従う梯子支持ユニット610において、互いに異なる高さ位置を有する3本の横方向ロープ620,620,620が各支柱22,22に係留されるように取り回される様子が示されている。
各横方向ロープ620の経路は、開いた経路であって、当該経路の中央部において、梯子40の背面に、スリップ可能に接触する状態でその梯子40を左右方向に通過し、さらに、当該経路の両側の終端位置において、それぞれ、一対の支柱22,22に係留される。
図28(c)に示すように、各横方向ロープ620は、それの両端部においてそれぞれ一対のエンドループ622を有する。各横方向ロープ620は、各エンドループ622で、それぞれ、一対の支柱22,22に巻き付けられて連結される。
図27には、さらに、一対の支柱22,22にそれぞれ一対の縦方向ロープ630,630が装着される様子と、それら横方向ロープ620,620,620と縦方向ロープ630,630とが各支柱22において互いに連結される様子とが示されている。各縦方向ロープ630は、第3実施形態における各縦方向ロープ530と共通する構成を有する。
同図に示すように、各横方向ロープ620は、各エンドループ622で、それぞれ、対応する縦方向ロープ630のうちの各リング532,524,526を通過して仮止めされる状態で、一対の支柱22,22に巻き付けられて連結される。それにより、各横方向ロープ620の各エンドループ622と各支柱22とが互いに連結される位置は、第3実施形態と同様に、高さ方向において一定範囲内で可変であるように定義される。
各縦方向ロープ630は、それぞれ、固定用リング(当該ロープと同じ材料により構成されるループ、または、当該ロープに外付けされるリング状金具など)532,524,526を、横方向ロープ620の数と同数以上、各縦方向ロープ630の長さ方向において互いに異なる位置に有する。
各縦方向ロープ630は、固定用リング532,524,526で、各横方向ロープ620のエンドループ622の一部のロープ・セグメントに巻き付けられてルーズに連結される。それにより、各横方向ロープ620の各エンドループ622が各支柱22に係留される位置が上下方向において可変である範囲が制限される。
図27には、各横方向ロープ620の部品構成が部分的に示されているが、各横方向ロープ620の部品構成は、図17に示すワイヤ50のそれと共通する。
具体的には、エンドループ622は、ループ422と共通する。各横方向ロープ620は、さらに、シャックル420(ただし、第3実施形態と同様に、可動のフック421を有する)と、両側のアイエンド436,436を有するターンバックル430と、両側にループ412を有するワイヤセグメント410より成るロープ626とを有するように構成される。
ただし、各横方向ロープ620は、図17にも図27にも示されておらず、図28(c)には示されているが、両側にそれぞれエンドループ622を有するように構成される。そのため、各横方向ロープ620は、図27において、ロープ626の両側のループ412,412のうち、ターンバックル430が連結されていない側のものに、別のシャックル420を介して、図示されているエンドループ622とは別のエンドループ622が着脱可能に連結されるように構成される。
各横方向ロープ620は、各エンドループ622の両側のループ412,412のうちのいずれかがシャックル420から外された状態で準備される。
この状態で、作業者は、各横方向ロープ602を、各エンドループ622のうち、いずれとも連結されていない側のループ412を先頭にして、そのエンドループ622を、対応するリング532,534,536内を貫通させ、その後、その先頭のループ412をシャックル420に連結する。
これにより、今回のエンドループ622がエンドレス状態(連結状態)に遷移させられ、それにより、そのエンドループ622が、対応する支柱22に巻き付けられて連結される。
以上説明した複数の立て看板システム10,400,500,600における複数の梯子支持ユニット、特に、複数のロープ(特に、520,530,540,620など)や取付金具(特に、210,220,550など)は、作業に先立ち、立て看板20に梯子40と共に装着され、その作業が終了すると、立て看板20から梯子40と共に撤去されるというように臨時に設置されるように使用したり、常時設置されるように使用することが可能である。
複数のロープ520,530,540,620のうち、立て看板20を見る人(以下、「看者」という。)の視線を遮る可能性があるものは、特に、複数の横方向ロープ520,620である。それら横方向ロープ520,620は、次回の作業を待つ待機状態、すなわち、横方向ロープ520,620は立て看板20にぶら下がっているが梯子40は横方向ロープ520,620から撤去されている状態では、表示面32上を垂れ下がる経路で通過し、立て看板20の見栄えがよくないうえに、場合によっては、表示面32上に表示されている数字が横方向ロープ520,620で覆われ、看者がその数字を見誤ってしまうおそれがある。
さらに、梯子40を支持していないために弛緩状態にある(遊んでいる)横方向ロープ520,620は、強風によって前後に揺すられて表示面32に衝突すると、衝突音が発生する可能性があり、そうすると、近隣の住民に聴覚的に不快感を与えるおそれもある。
それらの種類のおそれを軽減ないしは解消するために、種々の対策が存在し、そのうちの一つとして、立て看板20に、細長い収納ポケット(例えば、細長い上面において開口した細長い箱、細長い断面形状を有する筒など)を、横方向に延びる姿勢で、表示板30の幅寸法のうちの実質的に全体にわたるように、設置するという対策がある。
この対策を講じた場合には、作業者は、梯子40を用いた作業の終了後、まず、その梯子40を横方向ロープ520,620から撤去し、次に、遊んでいる横方向ロープ520,620のうちの一部(例えば、最も弛んでいる部分)を前記収納ポケット内に収納する。その収納ポケットから横方向ロープ520,620が予定外に脱落することを防止するために、その収納ポケットに、蓋を開閉可能に装着したり、ロープ引掛け用のフックを装着することが望ましい。
[第5実施形態]
次に、本発明の例示的な第5実施形態に従う立て看板システム700を図30-図35および図37を参照して具体的に説明する。ただし、第1-4実施形態と共通する要素については、同一の符号または名称を付して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
<全体構成の概略>
本実施形態においては、立て看板システム700が、梯子40に登った状態で作業者が高所作業を行うことを可能にするために梯子40を周辺部材に支持させて空間内に固定する梯子固定ユニット(または梯子支持ユニット)710を有するように構成されている。
ここに、「周辺部材」は、例えば、梯子40に近接する部材、梯子40を傾倒姿勢で支持するためにその梯子40に機械的に連携させられるかまたは関連付けられる部材などである。また、「周辺部材」は、例えば、空間内に固定される(例えば、支持面712によって支持されるか、別の静止部材などに支持される)という条件と、概して垂直方向に延びる部分を有するという条件との双方またはいずれかを有する部材などである。
そして、前記「周辺部材」として、概して水平に延びる支持面(例えば、地面やフロア面、整地面など)712、および/または、その支持面712から上方に概して垂直に延びる少なくとも1本(図31および図32に示す例においては、2本、後に図36を参照して詳述する第6実施形態においては、1本)の支柱22がある。
前述の第1-4実施形態のうちのいくつかと同様に、本実施形態においては、少なくとも1本のフレキシブルな連続体720が、例えば、「周辺部材」のうち概して垂直に延びる部分に、概して水平方向に延びるように係合させられる。よって、連続体720は、緊張状態(テンション付加状態、作用状態、引っ張り状態)において、概して水平方向に延びる。
ここに、連続体720が「フレキシブル」であるという特性は、例えば、柔軟性を有するとか、太さ方向に作用する外力(曲げようとする力)によって容易に屈曲するとか、横剛性が基準値より低いというように定義される。また、連続体720に要求される材料特性としては、例えば、軸力によってテンションが発生するという材料特性は必須であるが、軸力によって長さが伸縮する材料特性すなわち弾性は期待されず、または、縦剛性が基準値より高く、または、縦剛性の方が横剛性より高い。
連続体720が「周辺部材」に係合させられる方式としては、例えば、連続体720が「周辺部材」の外周を1周分より短い長さで包囲する(例えば、張り掛けられる)方式、連続体720が「周辺部材」の外周を少なくとも1周分包囲する(例えば、巻き付けられる)方式、連続体720が「周辺部材」に結束される方式、連続体720が「周辺部材」に引っ掛けられる方式、連続体720が「周辺部材」に押し付けられる方式などがある。
梯子固定ユニット710は、梯子40を、それの下端において支持面712に支持される状態で、かつ、それの上端において下端におけるより大きく、一鉛直面または一垂直面(例えば、支持面712から概して垂直に延びる周辺部材によって定義される面)に対して水平方向に遠ざかる向きに傾倒した傾倒姿勢で固定するために使用される。その傾倒姿勢においては、梯子40が、それの上端において周辺部材にもたれかからず、むしろ、その周辺部材から水平方向に遠ざけられる。
この傾倒姿勢(反り姿勢、後傾姿勢)は、梯子40がそれの上端において周辺部材にもたれかかる通常の傾倒姿勢(もたれ姿勢、前傾姿勢)とは逆向きに梯子40が傾倒する姿勢である。
図37に側面図で例示するように、その逆向きの傾倒姿勢においては、梯子40の上向き面が作業者の背面および両足を支持する。よって、このように作業者が梯子40に背を向けて梯子40に登っているとき、作業者の両手は、梯子40から解放可能であるため、作業者は両手を使って高所作業を行い得る。
一方、通常の傾倒姿勢においては、梯子40の上向き面が作業者の両手両足を支持する。そのため、この姿勢では、作業者が両手を梯子40から完全に解放すると、梯子40上での作業者の姿勢が安定しないため、作業者の両手を高所作業に使用することは困難である。
さらに、梯子40を通常の傾倒姿勢で使用する場合には、梯子40が、それの上端において、作業対象物としての表示面40にもたれかかるために、その表示面40の一部が梯子40によって邪魔される。そのため、作業者は、梯子40を横方向にずらして作業領域を確保することを余儀なくされる。
これに対し、梯子40を、上述の逆向きの傾倒姿勢(後傾姿勢)で使用する場合には、梯子40が、それの上端において、作業対象物としての表示面40にもたれかかることが不要となる。よって、その表示面40の一部が梯子40によって邪魔されずに済む。その結果、作業者は、作業領域を確保するために梯子40を横方向にずらすことが必要になるとしても、その頻度が減少し、作業性が向上する。
<長さ調節機構の概略>
梯子固定ユニット710は、少なくとも1本(図31および図32に示す例においては、2本)のフレキシブルな連続体(例えば、ワイヤ、ロープ、ケーブル、チェーンなど)720であって両端722,724を有するとともに長さ調節機構(図示しない)を有するものを備えている。
その長さ調節機構は、例えば、作業者が、立て看板20が設置されている現場で、連続体720の有効長さ、すなわち、一対の支柱22,22と梯子40とに張り掛けられるために使用することが可能である部分の長さを機械的にまたは電気的に調節することを可能とするように構成される。
その長さ調節機構は、作業者が、少なくとも1本の連続体720の長さを調節し、それにより、梯子固定ユニット710の使用状態において、梯子40の前述の傾角θおよび/または少なくとも1本の連続体720のテンション(張力、引張り力、緊張状態を表す物理量を表す変数など)を調節することを可能とする。
その長さ調節機構は、例えば、連続体720のうち、もとの部分に対して長さ方向に折り返される部分の長さ(オーバーラップ長)を調節する方式(例えば、図31(b)参照)や、連続体720のうち、リールなどの巻取り体によって巻き取られる部分の長さを調節する方式である。
その長さ調節機構の一例は、市販されている荷締めベルト・ユニットまたはラッシングベルト・ユニットである。それらベルト・ユニットは、ベルトとバックルとを有する。バックルのロック状態においては、ベルトが緩み側に移動することが阻止されるが、締め側に移動することは許容され、一方、アンロック(ロック解除)状態においては、ベルトが緩み側にも締め側にも移動することが許容される。
それらベルト・ユニットは、さらに、いわゆるエンドレスタイプであり、ベルトの先端に金具(例えば、フック、クリップなど)やアイなどを有していない。そのため、アンロック状態において、ベルトの先端をバックルから抜去(リリース)し、それにより、ベルトをループ(エンドレス、無端)状態から開端(有端)状態に切り換えることが可能である。
その開端状態において、作業者は、後に図31(b)を参照して詳述するように、ベルトを連結金具420と梯子40のいずれかの貫通穴とに通し、その後、ベルトをバックルに通す。それにより、ベルトを梯子40と固定長セグメント412とにループ状を成すように張り掛け、それにより、ベルトが両者を拘束することが可能となる。
ただし、本発明は、前記長さ調節機構として、いわゆるエンドレスタイプではなく有端(開端)タイプ(例えば、両端金具タイプ、両端アイ・タイプ)であるベルト・ユニットを使用して実施することも可能である。なぜなら、この有端タイプであっても、梯子40と固定長セグメント412とを機械的に拘束することが可能であるからである。
<位置規定具の概略>
梯子固定ユニット710は、さらに、任意選択的に、連続体720が少なくとも1本の支柱22,22の外面を横方向に接触状態で通過する際の連続体720の高さ方向位置を規定するための位置規定具(例えば、図23に示す磁石式の固定具550や、それと同様な形状を有する固定具であって磁石式ではなく接着・粘着式であるものなど)を備えている。
ここに、「位置規定具」は、例えば、少なくとも1本の支柱22,22のうちの1または複数のそれぞれに装着され、少なくとも梯子固定ユニット710の不使用状態において、各連続体720を前記1または複数の支柱22,22のそれぞれのうちの所定位置に係留するための係留具(アンカ)に置換してもよい。
また、「位置規定具」は、例えば、少なくとも1本の支柱22,22のうちの1または複数のそれぞれに装着され、梯子固定ユニット710の不使用状態において、各連続体720をそれが前記1または複数の支柱22,22のそれぞれのうちの所定位置から落下しないように随時留置するかまたは常時留置するための留置具(リテーナ)に置換してもよい。
また、「位置規定具」は、例えば、前述の仮止め用取付具であって、各連続体720をそれが前記1または複数の支柱22,22のそれぞれのうちの所定位置から落下しないように仮設置するかまたは仮止めする落下防止具または仮止め具に置換してもよい。
<連続体の概略>
図30には、図29と同様に、1本の連続体720しか示されていないが、これは、図示による説明を簡略化するためであり、実際には、図1(b)に示す例のごとく、3本の連続体720が使用されるか、または、図31および図32に示す例のごとく、2本の連続体720が使用されるというように、複数本の連続体720が使用される。
ただし、本発明は、1つの梯子40に対し、1本の連続体720しか使用しない態様で実施してもよい。例えば、図31および図32に示す例において、1段目の連続体720が省略されるか、または、2段目の連続体720が省略される態様で本発明を実施してもよい。
図31および図32に示す例においては、梯子固定ユニット710の使用状態において、各連続体720が、それの両端722,724が、それぞれ、梯子40の一対の縦棒42,42に連結され、それにより、それら連続体720と梯子40とが互いに共同して、機能上、1本のループを構成している。本実施形態においては、連続体720の数が2本であるから、ループの数も2本である。
本実施形態においては、各段(各垂直レベル、各高さレベル)ごとに、1本の連続体720が、平面視において、一対の支柱22,22の背後(例えば、表示板30の背後)を通過する姿勢で、一対の支柱22,22に対して相対的に少なくとも水平方向にスライド可能に接触する。よって、本実施形態においては、作業者が梯子40を横方向に移動させると、それに連れて、1本の連続体720が水平方向に一体的に移動(周回)し、その一体的移動に伴い、1本の連続体720が一対の支柱22,22の外面上を横方向にスライドする。すなわち、1本の連続体720は、一対の支柱22,22の周りを梯子40の横移動に連れて回るのである。
ところで、本発明は、各段(各垂直レベル、各高さレベル)ごとに、2本ずつの連続体720が、片側の連続体720は片側の支柱22と梯子40のうちの片側の縦棒42とに張り掛けられる一方、他側の連続体720は他側の支柱22と梯子40のうちの他側の縦棒42とに張り掛けられるように用いられるという変形例で実施することも可能である。
しかし、この変形例を採用する場合には、作業者が、梯子40の各回の横移動ごとに、各段における各連続体720の長さをいちいち変更することが必要となり、作業者の負担が本実施形態におけるより増加するかもしれない。
梯子40は、側面視において、一対の支柱42,42に近接した位置において、梯子40のうちの下端が支持面712に支持される状態で、上端が一対の支柱22,22から前方に離れるように一対の支柱22,22に対して傾倒する傾倒姿勢で設置される。
その傾斜姿勢において、連続体720の余分なたるみがなくなるように連続体720の長さ(有効長さ)が前記長さ調節機構を用いて手動で調節されると、少なくとも梯子40の自重により、連続体720が緊張状態(テンション付加状態)で梯子40と少なくとも1本の支柱22,22とに跨るように延び、それにより、梯子40が少なくとも1本の支柱22,22を利用して空間内で固定される。
ここに、「少なくとも1本の支柱」としては、図30に例示するように、立て看板20の一対の支柱22,22があり、その他に、図36に例示するように、独立した1本の支柱780がある。
図30に例示するように、本実施形態によれば、梯子40と連続体720との一体性(一体運動性)のおかげで、梯子40が意に反して、連続体720上をスライドして横方向(表示板30の左右方向)に傾斜し、やがては転倒することが阻止される。その結果、使用中の梯子40の姿勢安定性が向上し、ひいては、作業安全性が向上する。
よって、本実施形態によれば、一対の支柱22,22間の横方向領域全域内の任意の位置、特に、各支柱22の近傍の横方向端位置(例えば、表示板30と梯子40との間の作業空間が最も狭い位置)に梯子40を設置して高所作業をしても、梯子40の姿勢安定性が確保される。
<作業可能範囲を拡大するための後付け部品としてのエクステンション部材の概略>
作業者が梯子40を用いて高所作業を行うことが可能である範囲すなわち作業可能範囲を、一対の支柱22,22より横方向外側に(側方に)拡大することが必要である場合がある。
この目的を達成するために、例えば、図33に例示するように、一対の支柱22,22のうちのいずれかのみか、またはいずれの支柱22,22にも、それぞれの支柱22の上端から下端までの間の部分に、横方向(一対の支柱22,22が互いに隔たる方向)に延びるエクステンション部材(例えば、図34に例示するように、軽量化などに適する円筒状のパイプなど)800を追加設置してもよい。
それにより、エクステンション部材800が、図33に例示するように、みかけ上、もとの支柱22(図34に示す例においては、左側に示す支柱22)の外側に位置する第3の支柱として機能する。それにより、事実上、支柱22,22間の横方向距離が拡大するようにしてもよい。
そのようにすれば、作業対象物としての立て看板220について、別の梯子を用いるというように追加の対策を講じることなく、同じ梯子固定ユニット710を用いながらも、作業者による横方向作業可能範囲が拡大する。すなわち、これにより、作業者は、同じ一対の支柱22,22と同じ梯子固定ユニット710とを用いながらも、各支柱22の横方向外側の領域で高所作業を安全に行うことが可能となるのである。
エクステンション部材800は、図28(a)-(c)に示す3つのタイプのいずれとも、一緒に採用することが可能である。
以上、本実施形態に従う梯子固定ユニット700を概略的に説明したが、以下、より具体的に説明する。
<有端の連続体>
ここで、連続体720を図30-図35および図37を参照してさらに具体的に説明する。
図31(a)は、図30に示す複数本(1本のみが代表的に図示されている)の連続体720のうちの1本を取り出して拡大して示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)に示す連続体720のうちの可変長セグメント810を取り出して拡大して示す部分断面側面図である。
図32(a)は、梯子固定ユニット710を正面作業モードで示す平面図であり、同図(b)は、同じ梯子固定ユニット710を同じ作業モードで示す正面図である。
図33(a)は、梯子固定ユニット710を側方作業モードで示す平面図であり、同図(b)は、同じ梯子固定ユニット710を同じ作業モードで示す正面図である。
作業者は、梯子固定ユニット710を用いることにより、前述の第1-第4実施形態と同様に、図32(a)に示すように、立て看板20の横方向中央領域である正面領域(表示板30より前側の領域も後側の領域も含むが、支柱22の近傍の領域は除く。)を目標作業領域として高所作業を行うことが可能となる。
また、作業者は、梯子固定ユニット710を図33に示すエクステンション部材800と一緒に用いることにより、後に詳述するが、図32(a)に示すように、立て看板20の支柱22の近傍の領域である側方領域を目標作業領域として高所作業を行うことが可能となる。側方領域での高所作業が可能となると、作業者は、例えば、支柱22の上端部に装着されている部品(例えば、電灯)の保守点検や、支柱22のうちの上端部に対する機械加工(例えば、穴明け、ボルト締めなど)が可能となる。
図34は、図33に示す梯子固定ユニット710のうちのエクステンション部材800をそれの周辺の複数の部品と共に取り出して拡大して示す斜視図である。
図35(a)は、前記正面作業モードにおいて、梯子固定ユニット710のうちの片側の支柱22に連続体720が張り掛けられるときの経路および力の作用状態を概念的に説明するための平面図であり、同図(b)は、前記側方作業モードにおいて、同じ支柱22に同じ連続体720が張り掛けられるときの経路および力の作用状態を概念的に説明するための平面図である。
さらに具体的に説明するに、図31(a)には、各連続体720が、一部省略した状態で、かつ、不使用状態で、斜視図で示されている。
同図に示すように、各連続体720は、図21に示す各横方向ロープ520に類似する部品構成を有する。具体的には、各連続体720は、主ロープとしての1本のワイヤロープ・セグメント410(以下、「固定長セグメント」ともいう。)であって、両端にそれぞれループ412,412を有するものと、そのワイヤロープ・セグメント410の両端にそれぞれ、ループ412を介して連結される一対の連結金具420,420(連結具の一例)とを有する。ただし、連結金具420,420は省略可能な部品である。
前述のように、ワイヤロープ・セグメント410は、それの両端部が折り曲げられ、その端末が本体部にクリップ414でかしめられて結束され、それにより、両端部にそれぞれループ412,412が形成されている。
前述のように、各連結金具420は、連続リングを有し、さらに、マニュアル操作でリリース可能とするために、前記連続リングを部分的に選択的に開放するための可動部421を有する。
図31(a)に示すように、各連続体720は、さらに、固定長セグメント410の両端にそれぞれ、連結金具420,420を介して連結された2本の可変長セグメント810,810を有する。各可変長セグメント810は、前記長さ調節機構を有する。各可変長セグメント810は、対応する1本の連続体720の全長のうち、梯子40の近傍に、梯子40と連結されるセグメントとして存在する。
具体的には、第1の可変長セグメント810は、第1の連結金具420と、梯子40のうち第1の縦棒42とを互いに連結し、また、第2の可変長セグメント810は、第2の連結金具420と、梯子40のうち第2の縦棒42とを互いに連結する。
図31(b)には、各可変長セグメント810が、概念的に、かつ、一部省略した状態で、部分断面側面図で示されている。各可変長セグメント810が、有端のベルト(連続体の一例)820であって両端822,824を有するものと、連結具としての、ロック状態とアンロック(ロック解除)状態とに選択的に切り換わるバックル830とを有する。
各可変長セグメント810が梯子40に係留される前後(以下、それぞれの状態を、「係留前」および「係留後」という。)を問わず、ベルト820の一端822は、バックル830内の固定部材832を包囲する状態で縫い付けされてバックル830に固定される。
これに対し、ベルト820の他端824は、係留前にあっては、バックル830内を通過しておらず、よって、このとき、各可変長セグメント810は、全体として、ベルト820の一端822と他端824とが分離していて、開端(有端)状態にあるため、1本のループを形成しない。
一方、各可変長セグメント810を梯子40に係留するために、ベルト820の他端824が、バックル830内に挿入され、やがて、そのバックル830内の固定部材834を包囲するように折り返される。その他端824はバックル830から露出する。このとき、各可変長セグメント810は、全体として、ベルト820の一端822と他端824とが連結されるため、1本のループ(閉端状態または無端状態)を形成する。
このように、係留後にあっては、各可変長セグメント810のベルト820の一部がバックル830から延び出しており、その延出し量は、可変である。よって、ベルト820のうち、バックル830によって両端を連結される部分が、可変長ベルト部836として機能する。
一方、梯子固定ユニット710の使用に先立ち、ベルト820のうちバックル830から延び出した部分が作業者によってバックル830から必要量引き出され、それにより、対応する連結金具420と、梯子40の、対応する縦棒42とが引き締められる。よって、ベルト820のうちバックル830から延び出した部分は、締付け用ベルト部838として機能する。
バックル830には、さらに、緩み止め部840を可動部材として有する。それにより、緩み止め部840は、凹凸部などの係合部を有し、締付け用ベルト部838のうちバックル830の内部に位置する部分に選択的に圧着してその締付け用ベルト部838が意に反して緩んで引き出されてしまうことが阻止される。
緩み止め部840は、常には、図示しないスプリングの弾性力により、作用状態(ロック状態)にあるが、作業者によって特定の操作が前記スプリングの弾性力に抗して緩み止め部840に対して行われると、非作用状態(アンロック状態)となり、緩み止め部840が締付け用ベルト部838から離間して圧着状態が解除され、それにより、締付け用ベルト部838の緩みが許可される。
以下、バックル830が締付け用ベルト部838に係合していないために可変長セグメント810が有端である状態を、不使用状態(アンロック状態)といい、一方、バックル830が締付け用ベルト部838に係合しているために可変長セグメント810が無端である状態を、使用状態(ロック状態)と称する。
なお付言するに、図31に示す例においては、1本の連続体720当たり、2本の可変長セグメント810が存在するため、結局、2個の長さ調節機構が存在することになる。しかし、長さの調節という目的は、1本の連続体720当たり、少なくとも1個の長さ調節機構が存在すれば、達成することが可能である。
<連続体の留置方法>
図32および図33に例示するように、各連続体720のうち固定長セグメント410は、随時(梯子40の使用が必要であるときにそれに先立ってタイムリーに)または常時(梯子40の使用の要否を問わず)、対応する支持具730,730により、概して水平姿勢で、浮上した空中位置に留置される。
係留前、すなわち、各連続体720(特に、両側の可変長セグメント810,810)が梯子40に連結される前においては、各連続体720のうち各可変長セグメント810が、全体として、固定長セグメント410の両端からそれぞれ垂下し、場合によっては、部分的に、支持面712上に留置されている。このとき、バックル830は、不使用状態にある。よって、各可変長セグメント810は、みかけ上、1つの連結金具420から延び出す2本の有端ベルトとなる。このとき、一方の有端ベルトの先端はバックル830であり、他方の有端ベルトの先端は、他端824、すなわち、締付け用ベルト部838の先端である。
<梯子の使用方法>
梯子40は、現場において常時、連続体720に連結される状態で放置してもよいが、通常、梯子40は、現場において、高所作業が完了すると、連続体720から分離され、現場内の所定位置に保管されるかまたは現場から撤収される。
このとき、梯子40が前述のように伸縮可能である場合には、梯子40は、現場において、高所作業が完了すると、連続体720から分離され、収縮状態で保管されるかまたは現場から撤収される。
<連続体の使用方法>
現場において梯子40を使用することが必要である場合には、その使用に先立ち、準備工程として、作業者が、梯子40を表示板30に対して相対的に仮に位置決めし、さらに、作業者は、係留前であるためにバックル830が不使用状態にある各可変長セグメント810の2つの先端830,824のいずれか(以下、「ベルト先端」という。)を梯子40に接近させ、やがて、その梯子40の複数の貫通穴のいずれかを通過させた後に、進行方向とはほぼ逆向きに折り返す。
このとき、各可変長セグメント810は、いずれかの縦棒42を、それの内側の周面に半周程度巻き付けられる状態で、部分的に包囲する。梯子40の、上述の複数の貫通穴は、それぞれ、一対の縦棒42,42と、互いに隣接する一対の横桟44,44とによって画定され、具体的には、図32に示す例においては、8個の貫通穴が存在する。各連続体720がいずれかの貫通穴を挿通される結果、各連続体720が梯子40に沿って予定外に落下することが防止される。梯子40において、各連続体40の直ぐ下方に位置する横桟44がストッパとして機能するからである。
作業者は、その後、いずれかの貫通穴から延び出したベルト先端(図31に示す例においては、他端824)をバックル830内に挿入し、それにより、各可変長セグメント810がループを形成する。その結果、各可変長セグメント810と各縦棒42とが分離不能に拘束されることになる。
その後、作業者は、高所作業を行うべき作業対象物の横方向位置に応じ、梯子40を最終的に位置決めし、その状態で、いずれの連続体720にも余分なたるみが実質的に存在しないように、各可変長セグメント810においてそれぞれ締付け用ベルト部838をバックル830から引き出す。その結果、いずれの連続体720も、立て看板20と梯子40とに、適度なテンションのもとに張り掛けられる。
このようにして梯子固定ユニット710が完成すると、前述の第1-第4実施形態と同様に、作業者は、図37に例示するように、傾倒姿勢にある梯子40を、表示板30(作業対象物の例)に対面する側において、梯子40に対しては背面向きの姿勢で登って、表示板30に対しては正面向きの姿勢で登って高所作業を行うことが可能となる。
図37に例示するように、作業者は、梯子40を目標位置まで登ると、その位置で、両手を梯子40から放しても、作業者の姿勢が背面から梯子40によって安定的に支持される。よって、作業者は、安定した姿勢を維持しつつ、目標の高所作業を安全安心に遂行することが可能となる。
なお付言するに、本実施形態においては、前記長さ調節機構が、可変長ベルト・ユニットとして、各連続体720の内部に一要素として組み込まれている。
これに対し、前記長さ調節機構は、各連続体720の外部、例えば、各支柱22または梯子40に設けられる機構であって、梯子40の使用状態において、各連続体720のうち、弛んでいる余分な部分を巻き取るかまたは折り畳むなどすることにより、各連続体720の正規の経路(梯子40の使用状態においてテンションが発生する経路)から除外するものとしてもよい。
<正面作業モードにおける連続体の経路>
図32に示すように、正面作業モードにおいては、上段(1段目)の連続体720が、A点において梯子40の左側の縦棒42に係留され、B点(左側の連結金具420)において、可変長セグメント810と固定長セグメント410とが連結され、L-1点において、左側の支柱22の外面と2か所において接触する。同じ連続体720は、L-1点において、支持具730によって留置されている。
その後、同じ連続体720は、R-1点において、右側の支柱22の外面と2か所において接触する。続いて、同じ連続体720は、R-1点において、支持具730によって留置されている。その後、同じ連続体720においては、C点(右側の連結金具420)において、可変長セグメント810と固定長セグメント410とが連結され、D点において梯子40の右側の縦棒42に係留される。
これと同様にして、下段(2段目)の連続体720が、E点(左側の縦棒42)を始点とし、G点(左側の連結金具420)、L-2点、R-2点およびH点(右側の連結金具420)を順に経由して、I点(右側の縦棒42)を終点とするように、梯子40と一対の支柱22,22とに張り掛けられる。
<正面作業モードにおける連続体における力の作用状態>
図35(a)に示すように、正面作業モードにおいては、各連続体720が、途中において、各支柱22の外面に2か所で接触する。このとき、各連続体720にテンションが付加されていれば、それが、部分的に、各連続体720と各支柱22の外面との間の抗力に変換される。その抗力のおかげで、各連続体720と各支柱22の外面との間に摩擦力が発生し、その摩擦力のおかげで、各連続体720が、対応する支持具730の助けなしで、落下することを阻止される。
<エクステンション部材>
図33に例示するように、左側の支柱22(右側の支柱22でもよいし、両側の支柱22,22でもよい)にエクステンション部材800がクランプ850によって連結される。一例においては、垂直に延びる支柱22と水平に延びるエクステンション部材800とが直角に立体交差するように連結される。
一例においては、支柱22は、図6,図10などに示すように、角パイプとして構成され、一方、エクステンション部材800は、図34に示すように、丸パイプとして構成されている。この例においては、クランプ850が、交差角度が直角に固定された直交クランプであり、前記角パイプを把持する部分と、前記丸パイプを把持する部分と、それら部分を、両者が直角に立体交差する姿勢で、相対回転しないように強固に固定する部分とを含むように構成される。
図33に示す例においては、エクステンション部材800が、それが支柱22に固定された状態において、その支柱22から横方向に張り出すオーバーハング部を有している。その結果、エクステンション部材800の先端部が、それに隣接する支柱22の代替物として機能し、それにより、みかけ上、一対の支柱22,22間の横方向距離が延長される。
図33に示す例においては、エクステンション部材800が、一対の支柱22,22が互いに隔たる方向に一致する方向、すなわち、表示板30の真横(真に側方)に延びる姿勢で使用されるが、これは本発明を実施するうえで不可欠なことではない。
例えば、エクステンション部材800は、表示板30の一対の支柱22,22が互いに隔たる方向に対して斜めにまたは直角に交差する方向に延びる姿勢で使用してもよい。また、エクステンション部材800は、表示板30の前側(表側)(図33(a)においては下側)に、斜めにまたは直角に傾斜する姿勢で使用してもよいし、表示板30の後側(裏側)(同図においては上側)に、斜めにまたは直角に傾斜する姿勢で使用してもよい。
図33に示す例においては、図34に示すように、エクステンション部材800の先端部(そのエクステンション部材800が固定された側の支柱22から最も横方向に外れた部分)に連結具860が装着される。
図34に示すように、その連結具860は、ワイヤロープ・セグメント862により構成され、それの両端部が折り曲げられ、その端末が本体部にクリップ864でかしめられて結束され、それにより、両端部にそれぞれエンドループ868,870が形成されている。一方のエンドループ868内にエクステンション部材800の先端部が挿入されて連結され、また、他方のエンドループ870内に、対応する可変長セグメント810の中間部が挿入されて連結される。
<側方作業モードにおける連続体の経路>
図33に示すように、側方作業モードにおいては、前述の正面作業モードと同様に、上段(1段目)の連続体720が、A点(左側の縦棒42)を始点とし、B点(左側の連結金具420)、L-1点、R-1点およびC点(右側の連結金具420)を順に経由して、D点(右側の縦棒42)を終点とするように、梯子40と一対の支柱22,22とに張り掛けられる。
これに対し、下段(2段目)の連続体720は、E点において梯子40の左側の縦棒42に係留され、F点(連結具860)において、エクステンション部材800を経由し、ここで可変長セグメント810が折れ曲がり、その後、G点において、可変長セグメント810と固定長セグメント410とが連結される。同じ連続体720は、エクステンション部材800によって左側の支柱22に留置されている。
その後、同じ連続体720は、R-2点において、右側の支柱22の外面と2か所において接触する。続いて、同じ連続体720は、R-2点において、支持具730によって留置されている。その後、同じ連続体720においては、H点(右側の連結金具420)において、可変長セグメント810と固定長セグメント410とが連結され、I点において梯子40の右側の縦棒42に係留される。
下段(2段目)の連続体720は、図35(b)に示すように、左側の支柱22とL-2点において1点で接触する場合があるが、そのような接触を行わない場合もある。
<側方作業モードにおける連続体における力の作用状態>
図35(b)に示すように、側方作業モードにおいては、上段の連続体720が、正面作業モードと同様にして、その連続体720と各支柱22の外面との間に摩擦力が発生し、その摩擦力のおかげで、その連続体720が、対応する支持具730の助けなしで、落下することを阻止される。
これに対し、下段の連続体720は、上述のように、左側の支柱22の外面に全く接触しない場合もあれば1か所で接触する場合もある。
下段の連続体720が左側の支柱22の外面に全く接触しない場合には、その連続体720と右側の支柱22の外面との間には摩擦力が発生するが、その連続体720と左側の支柱22の外面との間には摩擦力が発生しない。
しかし、左側の支柱22には、エクステンション部材800があり、それを経由して当該連続体720が延びるため、その連続体720は、エクステンション部材800によって保持される。その結果、その連続体720が落下することが阻止される。
これに対し、下段の連続体720が左側の支柱22の外面に1か所で接触する場合には、その連続体720と右側の支柱22の外面との間にも、その連続体720と左側の支柱22の外面との間にも摩擦力が発生する。さらに、左側の支柱22には、エクステンション部材800がある。よって、それらのおかげで、その連続体720が落下することが阻止される。
<支持具>
前述の位置規定具730は、例えば、各支柱22,22に一時的にまたは恒久的に装着され、連続体720が落下しないようにその連続体720を下方から支持する支持具(または係留具、留置具)730として具現化してもよい。
その支持具730は、図23に示すフック554に相当するものを有している。本実施形態においては、各支柱22に装着された各支持具730が、対応する連続体720のそれぞれの一部を下方から支持し、それにより、各連続体720が、対応する支柱22に沿って落下することが防止される。
支持具730は、連続体720の一部を重力に抗して保持することが可能である形状を有する部分を有すれば足りるため、フック554以外のものを採用することが可能である。
その結果、各支持具730により、対応する連続体720が、対応する支柱22のうちの所定位置から落下しないように、対応する支柱22に、ひいては、対応する立て看板20に随時または常時留置される。
この例においては、同じ連続体720が一対の支柱22,22に張り掛けられるがその連続体720が梯子40によってもたれないとき、すなわち、梯子40の不使用中に、支持具730が、連続体720を、使用中に取るべき経路に近い位置(最終位置)であって地面から浮上した位置に保持するために使用される。
梯子40の使用中、支持具730は、連続体720の経路を規定する場合もあるが、規定しない場合もある。すなわち、支持具730の主たる機能は、梯子40の不使用中に、連続体720を所定の浮上位置に保持することにあるのである。
<梯子下部安定化部>
本実施形態においては、さらに、高所作業中、梯子40の下端部の水平移動を機械的に制限することにより、梯子40の下端部を力学的に安定化させる梯子下部安定化部を有してもよい。
その梯子下部安定化部の一例は、前述の第3実施形態におけるように、図26に例示する梯子下部安定化部と共通の構造を有するものであってもよい。
また、その梯子下部安定化部の別の例は、梯子40の下端またはそれの近傍の部分(それらを「下端部」または単に「下部」と総称する。)と、各支柱22のうち、梯子40の下端部と概して同じ水平位置にある部分とを、梯子40の使用中に両者が所定距離以上離間しないように、両者が互いに接触するように接合するか、または、両者間の隙間の有無を問わず、互いに連結するか、共に結束するか、互いに拘束するかもしくは共に包囲するベルト、ロープ、ケーブル、ワイヤ、チェーン等の紐状体であってもよい。
[第6実施形態]
次に、本発明の例示的な第6実施形態に従う立て看板システム900を図36を参照して具体的に説明する。ただし、第1-5実施形態と共通する要素については、同一の符号または名称を付して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
図36は、立て看板システム900に含まれる梯子固定ユニット910において、複数本の有端の連続体720により、梯子40が傾倒姿勢で支持されている状態において、各連続体720が梯子40と1本の支柱780とに張り掛けられる様子を示す斜視図である。
支柱780の上端部には、作業対象物としての、看板のような表示板(標識を含む。)782が設置されている。
ところで、看板や標識などの表示部の設置方法に関し、例えば、図1に例示するように、複数本の支柱22,22、または図36に例示するように、1本の支柱780に、それらの上部に位置するように表示部782を有する直立式と、図示しないが、1本または複数本の支柱に、各支柱から側方に張り出すように位置する表示部を有する片持ち式とに分類される。
本発明は、それら設置方法のいずれにも適用することが可能である。本発明は、この際、連続体720と梯子40との係合方式として、前述の第1-第4実施形態が分類されるスライド式、すなわち、無端の連続体720の一部が梯子40を背後から、その梯子40に対して横方向に相対的にスライド可能に支持する方式を採用しても、本実施形態が分類される固定式、すなわち、有端の連続体720の両端722,724がそれぞれ梯子40の一対の縦棒42,42に連結され、それにより、梯子40をそれに対して横方向に相対的にスライド不能に支持する方式を採用してもよい。
図36に示す例示的な立て看板は、支持面712にほぼ垂直に立設される1本足式の看板であるが、他の看板として、2本足式などの、複数本足式のものもあり、それら方式のいずれの看板に対しても本発明を適用することが可能である。
後者の例においては、図36に示すように、1本の支柱780のうちの高所の部分に作業対象物782が装着されており、その作業対象物782に対する高所作業を作業者が行うために、梯子40が、1本の支柱780と梯子40とに張り掛けられる連続体720によって支持される。
図36に示す例においても、連続体720の数と同数の支持具730が支柱780に、垂直方向における複数か所にそれぞれ、着脱可能または恒久的に装着されている。
ところで、前記「少なくとも1本の支柱」のさらに別の例としては、建物の一対の支柱(例えば、内部空間を隔てて対向する一対の壁を支持する支柱)がある。
この例においては、同じ建物の天井に装着されているかまたは天井から吊り下げられている作業対象物(例えば、電灯)に対する高所作業を作業者が行うために、梯子40が、前記建物の一対の支柱と、それら支柱と梯子40とに張り掛けられる少なくとも1本の連続体720とによって支持される。
以上説明したいくつかの実施形態においては、いずれも、1つの表示板30に梯子40が1脚のみ使用されるが、例えば、1つの表示板30に梯子40が複数脚使用される態様で本発明を実施してもよい。
その態様においては、例えば、1つの表示板30に梯子40が2脚使用される場合には、表示板30の各段(各垂直方向位置)ごとに、少なくとも2本の連続体720が使用される。
具体的には、第1の連続体720は、第1の梯子40の第1の縦棒42と、第2の梯子40の第1の縦棒42とを互いに連結する一方、第2の連続体720は、第1の梯子40の第2の縦棒42と、第2の梯子40の第2の縦棒42とを互いに連結し、それにより、2本の連続体720,720と2脚の梯子40,40との共同により、表示板30の各段(各垂直方向位置)ごとに、みかけ上(梯子40も連続体と同じ機能を果たすとすると)、1本のループが形成される。
さらに、この態様においては、第1および第2の梯子40,40が、いずれも、表示板30の片側の表示面32に対面するというように、表示板30の片側に2脚まとめて配置されてもよい。
これに代えて、第1の梯子40は、表示板30の片側の表示面32に対面する一方、第2の梯子40は、表示板30の反対側の表示面32に対面するというように、表示板30の片側に1脚ずつ配置されてもよい。
[第7実施形態]
次に、本発明の例示的な第7実施形態に従う立て看板システム1000を図38-図41を参照して具体的に説明する。ただし、第1-5実施形態と共通する要素については、同一の符号または名称を付して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。
図38には、立て看板システム1000が側面図で示されている。その立て看板システム1000は、作業対象物としての立て看板20と、梯子固定ユニット1010とを有するように構成されている。
同図に示すように、梯子固定ユニット1010は、立て看板20が敷地内において境界線近傍に設置されている障害物としてのフェンスの近傍に設置されているために梯子40の通常の使用法では高所作業のための作業空間を適切なサイズで確保することができない作業環境(図2(b)を参照して前述したものと共通する。)においてそれもかかわらず高所作業のための作業空間を適切なサイズで確保することを可能とするように構成されている。
梯子固定ユニット1010は、少なくとも1本のフレキシブルな連続体1012(図示の例においては、2本)を有している。
その連続体1012は、第1-第4実施形態におけるように、無端(エンドレス)連続体が、梯子40に対し、その梯子40の背後を接触状態で通過するように概して水平方向に連続的に延びるタイプであってもよいし、第5-第6実施形態におけるように、有端連続体が、梯子40の一対の縦棒42,42においてそれぞれ終端を有するタイプであってよい。ただし、梯子40の姿勢安定性を向上するという観点で両タイプを比較すると、前者のタイプより後者のタイプの方が有利である場合がある。
図38に示すように、梯子固定ユニット1010は、梯子40の下端部を水平軸線(梯子40の面に対して平行に延びる水平軸線)回りに搖動可能かつ前記水平軸線に沿って(梯子40の面に沿った横方向に)移動可能に支持する梯子下部支持機構1020を備えている。
ここに、「揺動」は、例えば、物体がある直線を中心にして前後に振れ動く動作を意味し、また、「移動」は、例えば、物体がある直線に沿って軸移動(平行移動)する動作を意味する。また、「変位」は、例えば、物体の位置(質点としての位置)および向き(剛体としての姿勢)のうちの少なくとも一方が変化する動作を意味し、よって、「搖動」と「移動」との双方を含む。
梯子下部支持機構1020は、前述の「梯子下部安定化部」としても機能する。さらに、その梯子下部支持機構1020は、前述の「傾角調節部」および「横方向位置調節部」の双方を含むが、「傾角調節部」しか含まない態様で実施しても、「横方向位置調節部」しか含まない態様で実施してもよい。
図39(a)には、その梯子下部支持機構1020が斜視図で示され、同図(b)には、部分断面正面図で示されている。
同図に示すように、梯子下部支持機構1020は、一対の支柱22,22のうち、表示板30の下端面より下側に位置する2つの部分をまたぐように概して水平方向に延びる内筒(円筒部材を含む。)としての単管パイプ(例えば、規格品)1030を有する。その単管パイプ1030は、梯子40の自重を受けるとともに、立て看板20にとっての第2の足場(梯子40とは別の足場)を作業者に提供する(図41(b)参照。)。その第2の足場は、支持面712より上方に位置する。
単管パイプ1030は、それの両端部において、それぞれ、一対の支柱22,22に一時的にまたは恒久的に固定される。その固定は、図示しない一対の直交クランプなどの規格品としての連結具を用いて行われるが、他の方法で行ってもよい。各直交クランプの一例は、角パイプ(例えば、規格品)としての支柱22と丸パイプ(例えば、規格品)としての単管パイプ1030とを直角に立体交差する姿勢でその交差角度が変化しないように連結するように構成される。
本実施形態においては、単管パイプ1030が、各支柱22,22の前面(図38において、敷地を向く面)と後面(同図において、隣地を向く面)とのうち、後面に装着されるが、前面に装着してもよい。
ただし、同図に示す幾何学から自明であるように、単管パイプ1030を各支柱22,22の後面に装着した方が前面に装着するより、梯子40の下端が隣地に近づき、よって、表示板30と梯子40の間の隙間が拡大し、それに伴い、高所作業のための空間も拡大する。
図40(a)には、支柱22と単管パイプ1030とが連結される様子が縦断面図で例示されている。その連結に際し、部品同士が密着することは不可欠ではなく、必要な隙間が部品間に形成されてもよい。
図39(a)に示すように、梯子下部支持機構1020は、さらに、単管パイプ1030にとっての外筒としてのパイプ・スライダ(例えば、規格品である丸パイプ)1040を有する。単管パイプ1030の外径とパイプ・スライダ1040の内径とのそれぞれの寸法は、単管パイプ1030(内筒)がパイプ・スライダ1040内において回転方向にも軸方向にもスライド可能であるように選択される。
図39(a)に示すように、梯子下部支持機構1020は、さらに、梯子40の一対の縦棒42,42が挿入される一対のポケット1050,1050を有する。本実施形態においては、それらポケット1050,1050は、2部品として形成されており、各ポケット1050の一例は、規格品としての角パイプによって構成される。ただし、それらポケット1050,1050を、共通のハウジングを有するように一部品として構成してもよい。
一対のポケット1050,1050は、パイプ・スライダ1040の外面に、一対の縦棒42,42の間隔に見合う間隔を隔てて固定される。その固定は、図示しない一対の直交クランプなどの規格品としての連結具を用いて行われるが、他の方法で行ってもよい。
図39(b)に示すように、各縦棒42は、対応するポケット1050内に上側から挿入される。各縦棒42の挿入(進入)限度は、梯子40のうち最も下側にある横桟44の下面が各ポケット1050の上面に突き当たることによって規定される。このようにして嵌合された縦棒42とポケット1050とは、梯子40の使用中、予定外に離脱しないように固定される。
図40(b)には、単管パイプ1030とパイプ・スライダ1040とポケット1050とが連結される様子が縦断面図で例示されている。パイプ・スライダ1040とポケット1050との連結に際し、部品同士が密着することは不可欠ではなく、必要な隙間が部品間に形成されてもよい。
図39(a)に示すように、パイプ・スライダ1040の長さ寸法は、単管パイプ1030のうち、一対の支柱22,22間を延びる部分の長さ寸法より短くなるように選択される。その結果、パイプ・スライダ1040は、単管パイプ1030に沿って軸方向にスライドすることが可能となり、それにより、梯子40が横移動することが可能となる
図40(c)および図40(d)に概念的に示すように、単管パイプ1030とパイプ・スライダ1040とは、無負荷状態と負荷状態とに切り換わる。
図40(c)に示すように、無負荷状態は、単管パイプ1030とパイプ・スライダ1040が梯子40の重量しか負担しない状態(狭義の無負荷状態、梯子40の不使用状態)、または、図41(b)に示すように、単管パイプ1030とパイプ・スライダ1040が梯子40の重量を負担すると同時に、パイプ・スライダ1040が作業者の重量を負担する状態(後述の負荷状態に対して相対的に無負荷状態にあるといえる。)として定義される。
この無負荷状態においては、梯子40の重量と作業者の重量とが、それぞれ、単管パイプ1030に、それの軸線における異なる複数の位置に作用する2点集中荷重(後述の1点集中荷重に対して相対的に分散荷重であるといえる。)として作用する。
これに対し、図40(d)に示すように、負荷状態は、図41(a)に示すように、単管パイプ1030とパイプ・スライダ1040が梯子40の重量および作業者の重量を負担する状態(梯子40の使用状態)として定義される。
この負荷状態においては、梯子40の重量と作業者の重量との双方が、単管パイプ1030に、それの軸線における同じ位置に集中して作用する1点集中荷重として作用する。
一般に、単管パイプ1030に作用する合計荷重が同じでも、それが2点集中荷重として単管パイプ1030に作用する場合より、1点集中荷重として作用する場合の方が、単管パイプ1030のたわみが大きく、それに伴い、単管パイプ1030の湾曲も大きくなる。
これに対し、パイプ・スライダ1040は、例えば、(a)単管パイプ1030より長さが短い(例えば、単管パイプ1030の有効長さの約2分の1、約3分の1などである)という理由と、(b)単管パイプ1030が一対の支柱22,22によって両端支持(両端固定支持または両端可動支持)されるのに対してパイプ・スライダ1040は両端支持状態にないという理由とのために、負荷に応じて発生する最大曲げモーメントが小さく、よって、負荷の有無を問わず、パイプ・スライダ1040は、実質的に弾性変形せず、直線性が実質的に維持されると推測される。
よって、図40(c)に概念的に示すように、無負荷状態においては、単管パイプ1030のたわみが小さいため、単管パイプ1030の外周面とパイプ・スライダ1040の内周面との間に隙間が残っている。その結果、両者間の摩擦力が小さく、パイプ・スライダ1040が、単管パイプ1030に対し、回転方向にも軸方向にもスライド可能である状態、すなわち、アンロック状態にある。
その「アンロック状態」においては、梯子40の下端の位置の変化および向きの変化の双方が許容される。
これに対し、図40(d)に概念的に示すように、負荷状態においては、単管パイプ1030のたわみが、無負荷状態より大きいため、単管パイプ1030の外周面とパイプ・スライダ1040の内周面との間に残っている隙間が減少する。その結果、両者間の摩擦力が増加し、パイプ・スライダ1040が、単管パイプ1030に対し、回転方向にも軸方向にも全くスライドしないかまたはスライドが困難である状態、すなわち、ロック状態に移行する。
ここに、「ロック状態」は、単管パイプ1030とパイプ・スライダ1040との間の摩擦力によってパイプ・スライダ1040が単管パイプ1030に固着(ロック)する状態を意味する。また、その「ロック状態」においては、梯子40の下端の位置の変化および向きの変化の双方が阻止されるように、梯子40の下端が単管パイプ1030、ひいては一対の支柱22,22に対して機械的に拘束される。
以上要するに、本実施形態においては、単管パイプ1030の力作用状態が負荷状態にあるか無負荷状態にあるかに応じ、単管パイプ1030とパイプ・スライダ1040との間に有効な摩擦力(パイプ・スライダ1040が単管パイプ1030に固着するために必要な大きさの摩擦力)が選択的に発生し、それに機械的にないしは自動的に連動して、梯子40の下端がロック(変位阻止)状態とアンロック(変位許可)状態とに切り換わるのである。
図41(a)には、梯子固定ユニット1010が梯子ロック状態で示され、また、同図(b)には、梯子固定ユニット1010が梯子アンロック状態で示されている。
作業者が、梯子40から降りて、単管パイプ1030のうち、パイプ・スライダ1040によって覆われていない部分(第2の足場として)に降り立てば、単管パイプ1030が負荷状態から無負荷状態に移行し、それに伴い、梯子固定ユニット1010が梯子ロック状態から梯子アンロック状態に移行する。
その梯子アンロック状態においては、作業者が、単管パイプ1030から支持面712上に降りることなく、梯子40の横方向位置を変える作業と、梯子40の傾角θを変える作業と、連続体1012の長さを調節する作業とのうち必要なものを単管パイプ1030上で行うことが可能となる。その結果、梯子40を用いた高所作業の効率が向上する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、梯子に登った状態で作業者が高所作業を行うことを可能にするために前記梯子を周辺部材に支持させて空間内に固定する梯子固定ユニットであって、(a)少なくとも1本のフレキシブルな無端または有端の連続体を前記梯子と前記周辺部材とに張り掛けることにより、前記梯子を後傾姿勢で支持する第1の梯子支持部と、(b)前記梯子の下部を支持する第2の梯子支持部であって、前記梯子および/または作業者を含む外部要因から当該第2の梯子支持部への力の作用状態が負荷状態にあるか無負荷状態にあるかに応じて異なる運動特性で前記梯子の下部をフレキシブルに支持するものとを含むものという技術思想が採用される。
この技術思想によれば、梯子の下部を適切に設置する場所が存在しないとか梯子を設置する空間が狭いなど、図38に例示する環境の如く、足場としての梯子を適切に設置することが困難な現場においてであっても、作業対象物に対する作業を安全・安心に行うことを可能にするという課題が解決される。
前記第1の梯子支持部は、例えば、前述の第1-第4実施形態におけるように、無端(エンドレス)連続体が、梯子に対し、その梯子の背後を接触状態で通過するように概して水平方向に連続的に延びるように梯子と周辺部材とに張り掛けられるタイプであってもよいし、前述の第5-第6実施形態におけるように、有端連続体が、梯子の一対の縦棒においてそれぞれ終端を有するように梯子と周辺部材とに張り掛けられるタイプであってよい。
前記第2の梯子支持部の一例は、前記梯子の不使用状態(例えば、前記無負荷状態)においては、前記周辺部材に対する所定の相対運動を行い得、使用状態(例えば、前記負荷状態)においては、位置および/または姿勢に関して機械的に拘束されるように、前記梯子の下端部をフレキシブルに支持するように構成される。
前記第2の梯子支持部のおかげで、少なくとも梯子の使用状態において、梯子の下端部が構造的にないしは力学的に安定し、ひいては、高所作業中、梯子の姿勢安定性が向上するという効果が得られる。
その第2の梯子支持部の一例は、(a)前記周辺部材に随時または常時装着される横軸と、(b)その横軸に対して回転方向と軸方向とのうち少なくとも軸方向にスライド可能であるスライダと、(c)前記梯子の下端部を保持するホルダであって、前記スライダと共に変位するものとを含むように構成される。
この例によれば、梯子の横移動を姿勢安定性を維持しつつ行うことが容易となるという効果が得られる。
その第2の梯子支持部の別の例は、(a)前記周辺部材に随時または常時装着される、概して水平方向に延びる内筒(丸棒および丸パイプを含む。)と、(b)その内筒にとっての外筒としてのスライダであって、前記内筒に対して回転方向と軸方向とのうち少なくとも軸方向にスライド可能であるものと、(c)前記梯子の下端部を保持するホルダであって、前記スライダと共に変位するものとを含むように構成される。ここに、「内筒」は、例えば、「外筒」の内部空間内にスライド可能に嵌合される。
さらに、本実施形態によれば、図38に示すように、梯子40の下端部(ポケット1050によって保持される)が、敷地の面(例えば、支持面712)から浮上した空中位置において支持される。
よって、本実施形態によれば、前記フェンスのような障害物が表示板30の前方に存在する環境において、梯子40の下端部が敷地の面と同じ位置レベルにおいて支持される場合より、梯子40を前記障害物の上端に接触する直前まで傾倒させたときに梯子40が取る傾角(最大傾角)θが増加する。それにより、最大傾角θが小さい場合より、表示板30と梯子40との間の作業可能空間が拡大し、その結果、高所作業の効率が向上する。
さらに、本実施形態によれば、梯子40の下端部(「下部」ともいう。)が表示板30のほぼ真下に(例えば、支持面712から浮上した位置にある作業対象物のほぼ真下)配置されるため、その位置から水平外向きに(隣地寄りに)遠ざかる位置に梯子40の下端部が配置される場合より、梯子40の最大傾角θが増加する(より寝かされた姿勢となる)。
その結果、本実施形態によれば、作業者が梯子40に登って高所作業を行うときに、梯子40がより寝かされた姿勢であるため、作業者の背中と梯子40の上向き面との間に作用する抗力が増加し、作業者を梯子40上でより安定的に保持することに寄与する摩擦力も増加し、よって、作業者の姿勢安定性が向上する。
前記第2の梯子支持部は、前記第1の梯子支持部であって、前述の具体例とは別の具体例を有するものと組み合わせて採用することが可能である。例えば、その第1の梯子支持部は、梯子40をそれの少なくともそれの一部(例えば、それの上部および/または中部、下部を除く部分)において前記周辺部材に機械的に連携させるために、前記連続体以外のものを用いる態様で実現してもよいし、また、梯子40が前記周辺部材に対して後傾する姿勢ではなく前傾する姿勢で使用される態様で実現してもよいし、また、前記有端の連続体が、図28(a)または同図(c)に示す経路で梯子40と周辺部材とに張り掛けられる態様で実現してもよい。
ところで、図1-図13に示すワイヤ50、図19-図20および図29に示す横方向ロープ520、図30-図37に示す連続体720、ならびに図38-図41に示す連続体1012(以下、「連続体」と総称する。)は、梯子40を前述の後傾姿勢で固定することを意図されて設計されるうえに、梯子40を後傾姿勢で固定する場合にのみ力学的に有効であって、前述の前傾姿勢で固定する場合には力学的に有効ではない。
前記連続体の力学的有効性と梯子40の傾倒姿勢の向きとの関係を力学的に説明するに、本発明に従って後傾姿勢にある梯子40に重力が作用すると、梯子40には、その梯子40の傾角θ(図19(c)参照)を増加させる(梯子40が水平姿勢に近づく)向きのモーメントM1を発生させるところ、前記連続体から梯子40に作用するモーメントM2は、梯子40の傾角θが減少する(梯子40が正立(直立)姿勢に近づく)向きのモーメント、すなわち、M1とは逆向きのモーメントであるため、M2がM1に対抗でき、その結果、前記連続体を用いれば梯子40を後傾姿勢で安定化させることが可能となる。
これに対し、前傾姿勢にある梯子40に重力が作用すると、梯子40には、その梯子40の傾角θを増加させる向きのモーメントM3を発生させるところ、前記連続体から梯子40に作用するモーメントM4も、同様に、梯子40の傾角θが増加する向きのモーメント、すなわち、M3と同じ向きのモーメントであるため、M4がM3に対抗できず、その結果、前記連続体を用いても梯子40を前傾姿勢で安定化させることは不可能である。
よって、理論的に、前記連続体は、梯子40を後傾姿勢で固定する場合にのみ使用でき、梯子40を前傾姿勢で固定する場合には使用できない。すなわち、本発明に従う連続体は、梯子40の用途を周辺部材に対して後傾姿勢で使用するという用途に限定する限りにおいて、梯子40にとっての専用品なのであり、後傾姿勢の梯子40のみならず前傾姿勢の梯子40にも使用できる汎用品ではないのである。
以上の説明から明らかなように、梯子40を周辺部材に機械的に連携させるために、連続体を梯子40と周辺部材とに張り掛けることが可能であり、その際、その連続体は、図28(a)-(c)および図30に示す4種類の経路のいずれでも、他の経路でも採用することが可能である。そして、梯子固定ユニットは、付属部品またはオプション部品としての、長さ調節機構(例えば、ターンバックル、可変長セグメント)、位置規定具(例えば、留置具)、梯子下部安定化部、エクステンション部材、梯子下部支持機構(揺動および移動を含む変位を選択的に実現するための機構)などのそれぞれを、連続体に採用される経路の種類の如何を問わず互いに共通する構造を有するものとして採用することが可能である。
さらに、前述の第1および第3実施形態においては、梯子40を周辺部材としての表示板30に対して後傾する姿勢で固定する技術と、表示板30を梯子40に対して前傾するように傾倒させる技術とが一緒に採用されているが、前者の梯子傾倒技術を、後者の表示板傾倒技術から分離して実施することが可能であり、また、その逆も可能である。
さらに、前述の第1-第7実施形態に従う梯子固定ユニットは、作業者が、梯子40を周辺部材に対して後傾姿勢で用いることにより、高さが2m以上である高所での作業を行うことを可能にする。さらに、当該梯子固定ユニットは、作業者が、梯子40を周辺部材に対して後傾姿勢で用いることにより、高さが4mを超えない高所での作業を行うことに適している。
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。