JP7019921B2 - コンクリート壁を備えたタンクの施工方法 - Google Patents
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Description
通常、石油類を貯蔵するタンクは鋼板製の底板と側板とからなる平底を有する円筒形状であり、その底板はアンカーボルト等で基礎に固定されていない場合が多い。そのため、特に貯蔵液量が少ない場合は、津波の浮力によりタンクは容易に浮上して押し流される。
そこで、タンクの周囲近傍に該タンクの流出を防止するために多数の杭や矢板等を円周状に設置する発明や、津波による側圧を受け止めることができ、流出し難いコンクリート製タンク等の発明がなされている。
また、様々な配管類が縦横無尽に敷設されたタンクヤード内に多数の杭を打設することには無理がある。
さらに、金属製の内張りと一体化してコンクリート製タンクを構築する従来の工法は、津波による側圧や浮力に対抗させることは可能であるが、新規にタンクを設置する場合の工法であり、既設の津波対策が要求されるタンクに適用することは現実的ではない。
故に、既設又は新設の鋼製タンクに津波対策を講じる場合、該鋼製タンクに接するように囲繞してコンクリート製の側壁を配設する構造を採用し、津波対策防波堤を有するタンクとすることが最も経済的であり、さらに該鋼製タンクをコンクリート側壁構築時の内側型枠とすることが合理的である。
津波対策防波堤を有するタンクとして、図5に示すような金属製のタンク1の外周部に側板4bの全体又は大部分を囲繞できる設計高さHcのコンクリート製の側壁3bを構築した二重殻構造の平底円筒形タンク1が考えられる。
また、コンクリート側壁構築の工程を短縮するためには、一回のコンクリート打設高さをできるだけ高くすることが必要であるが、前記した鋼製タンクに対する変形の影響を考慮する必要が生じ、一回のコンクリート打設高さは自ずと制限される。或いは、コンクリート打設時の外圧を考慮して鋼製タンクの側板板厚を厚くすれば良いが、材料費が増大する。また、既設の鋼製タンクの板厚を増すことは現実的ではない。
前記した通り、既設又は新設の鋼製タンクの周囲に津波対策防波堤としてコンクリート側壁を構築する上では様々な問題点が有り、それを解決する施工方法が求められていた。
また、新設タンクのコンクリート壁を構築するための製造方法に関するものであり、津波対策防波堤として既設鋼製タンクに接するようにコンクリート側壁を構築する方法に関するものではない。
また、新設タンクのコンクリート側壁を構築するための建設工法に関するものであり、津波対策防波堤として既設鋼製タンクに接するようにコンクリート側壁を構築する工法に関するものではない。
また、内槽と外槽の間に空間部を有する二重殻構造のタンクの製造方法に関するものであり、津波対策防波堤として既設鋼製タンクに接するようにコンクリート側壁を構築する方法に関するものではない。
請求項1記載の外槽のコンクリート側壁を凝固させる工程(d)の後に、該加圧バッグに接続された前記配管及び圧力制御装置を撤去するとともに流体注入口を塞ぎ、該加圧バッグが加圧された状態で、タンク供用時の貯蔵液の蒸気逸出を防止するシール装置として使用する加圧バッグであることを特徴とする。
内槽側板の加圧補強とコンクリート打設を繰り返して実施することにより、外槽のコンクリートの打設圧によって内槽側板を変形させることなく、内槽側板の垂直立設状態を維持して設計高さが大きいコンクリート製の外槽側壁を構築することが可能である。
タンクの内部に設置された浮屋根を、コンクリート打設時の補強材として使用することができるため、別途コンクリート打設用の補強材を設ける必要がなく、側板全体に補強材等を取付けて補強する場合と比較して施工性、経済性が向上するとともに、外槽側壁のコンクリート打設時の安全性も向上する。
加圧バッグを減圧した状態で、浮屋根を上昇させることにより、該浮屋根上昇時に該加圧バッグが内槽側板との摩擦で摩耗したり、破損したりすることがない。該加圧バッグ内部の液体又は気体からなる流体が外部に漏れることなく、コンクリートの打設圧に対抗するための所定の内圧を確実に確保することが可能である。
内槽内に浮上させた浮屋根の加圧バッグ内に充填した流体の内圧とコンクリート打設圧を平衡させることにより、内槽側板を変形させることなく、内槽側板の垂直立設状態を維持して設計高さが大きいコンクリート製の外槽側壁を構築することが可能になる。
請求項1記載の外槽のコンクリート側壁を凝固させる工程(d)の後に、該加圧バッグに接続された前記配管及び圧力制御装置を撤去するとともに流体注入口を塞ぎ、該加圧バッグが加圧された状態で、タンク供用時の貯蔵液の蒸気逸出を防止するシール装置として使用する加圧バッグであるので、加圧バッグを取り替えることなく、そのままタンクのシール装置として転用できるため、施工性、経済性が向上する。
この二重殻構造の平底円筒形タンク1は、金属製の内槽4と該内槽4を囲繞して配設されるコンクリート製の外槽3とを備えた構造である。図1の左側はこのコンクリート製の外槽3の施工段階の断面図であり、右側はコンクリート製の外槽3の完成後の外観図である。
前記内槽4は、基礎2上に打設したコンクリート製の底版3a上に設置され、金属製の底板4aと、該底板4a上に立設した筒体状の金属製の側板4bとからなる構造であり、内槽側板4b頂部には、トップアングル7が設置されている。また、内槽側板4bの高さ方向上部に、雨水浸入防止措置9を備え、雨水から外槽3を保護するようにする。
前記浮屋根6は、デッキサポート6f等の浮屋根サポート部材により底板4aから上方向に間隔をあけて支持されており、タンク1内に水5を張ると、浮屋根6が内槽4内を上昇し、水面上に浮上した状態となる。
浮屋根6は、外周部に加圧バッグ6aを有した構造とし、タンク1の水面に浮上させ、側板4bの内周面に対し、加圧バッグ6aを介して昇降自在に周囲が摺接された構造とする。加圧バッグ6aは、仮設の配管6bを介して、デッキ板6e上の仮設の圧力制御装置6cに接続される。この圧力制御装置6cはタンク1外に設置しても良い。
前記外槽3は、前記コンクリート製の底版3aと、該底版3a上に構築した前記内槽側板4bを囲繞するコンクリート製の外槽側壁3bとからなる構造である。通常底版3aは鉄筋コンクリート、側壁3bはプレストレストコンクリートで構築する。
本発明は、図1に示すように金属製の内槽4全体を囲繞するようにコンクリート製の外槽3を構築する二重殻構造の新設のタンクを建設する場合、或いは図2に示すように既設の金属製タンク1の外周部にコンクリート製の側壁3bを設置して補強する場合の両方に採用することが可能である。
まず、工程(A)において、コンクリート製の底版3aを打設する。
続いて、内槽4を構築し、コンクリート打設用の内側型枠4b1とする。該内槽4(内側型枠4b1)は以下の工程(B)~(E)で構築する。
工程(B)において、底版3a上に底板4aを設置する。
工程(C)において、該底板4a上に円筒状の側板4bを構築する。
工程(D)において、該底板4a上部にデッキサポート6fを介して浮屋根6を設置する。
工程(E)において、前記浮屋根6外周部に沿って加圧バッグ6aを環状に取付ける。この加圧バッグ6aは、該浮屋根6外周部と前記内槽4の側板4bとの間隙部に配設する。
続いて、工程(a)において、タンク1の金属製の内槽4内に所定量の水5を注水し、浮屋根6を上昇させる。
続いて、工程(b)において、コンクリート打設用の外側型枠3b1を仮設する。
続いて、工程(c)において、浮屋根6外周部の加圧バッグ6aに流体8を注入して加圧し、内槽側板4b内面に密着するまで膨張させ、該内槽側板4bを補強した状態で、該内槽側板4bが変形しない所定の高さまで外槽側壁3bのコンクリートを打設する。
続いて、工程(d)において、打設したコンクリートを凝固させる。
設計高さHcまで外槽側壁3bのコンクリートが打設されていない場合は、工程(e)において、浮屋根6の加圧バッグ6aの流体8を抜き取り、該加圧バッグ6aを減圧した後に、前記工程(a)に戻って、再び内槽4内に所定量の水5を追加で注水し、浮屋根6を再び上昇させ、前記工程(b)から工程(d)までの工程を再度実施する。
この一連の工程(a)から工程(e)を繰り返し実施し、設計高さHcのコンクリート製の外槽側壁3bを構築する。
設計高さHcのコンクリートを打設した後、外槽側壁3bがプレストレストコンクリートの場合は、該コンクリートにPC鋼線(図示しない)等で緊張力を与える。
その後、内槽4内から水抜きし、浮屋根6を降下させ、外側型枠3b1を撤去し、工事を終了する。
タンク1の浮屋根6を、コンクリート打設時の補強材として使用することができるため、別途コンクリート打設用の補強材を設ける必要がなく、側板全体に補強材等を取付けて補強する場合と比較して施工性、経済性が向上するとともに、外槽側壁3bのコンクリート打設時の安全性も向上する。
さらに、工程(a)でタンク1内に張った水5で内槽側板4bの水張試験を実施することにより、タンク完成後に水張試験を改めて実施する必要がなく、工期の短縮を図ることが可能になる。
浮屋根6外周部の加圧バッグ6aは、該加圧バッグ6a内に前記流体8を注入するか、或いは該加圧バッグ6a内から前記流体8を抜き取るための流体注入口6dを備えるとともに、該流体注入口6dに仮設の配管6bを介して接続され、前記流体8を出し入れして内圧を制御する仮設の圧力制御装置6cと着脱自在に接続された加圧バッグ6aとする。
この加圧バッグ6aは、繊維補強材を積層したゴム状弾性体等で袋状又はチューブ状に形成する。
コンクリート打設時の圧力制御の手順は以下の通りである。
まず、タンク1内に注水し、浮屋根1を内槽側板4bの補強が必要な所定の高さまで上昇させ、加圧バッグ6a内に、圧力制御装置6cから配管6bを介して、流体注入口6dを経由して流体8(液体又は気体)を注入し、該加圧バッグ6aをその流体の内圧Pfで内槽側板4b内周面に密着するように膨張させ、該内槽側板4bを加圧補強する。
そして、浮屋根6の加圧バッグ6aの圧力Pfが、コンクリートの打設圧Pcと平衡するように、前記加圧バッグ6aに注入する流体8の圧力Pfを調整し、前記内圧Pfとコンクリートの打設圧Pcを平衡させることが可能な高さまで外槽側壁3bのコンクリートを打設し、凝固させる。
コンクリート凝固後は、圧力制御装置6cにより、配管6bを介して、加圧バッグ6a内の流体8を抜き取り、加圧バッグ6aの流体8の内圧Pfを減圧状態とした後、タンク1内に再び注水し、浮屋根6を必要な高さまで再び上昇させ、加圧バッグ6aを膨張させ、前記内圧Pfとコンクリートの打設圧Pcが平衡する高さの外槽側壁3bのコンクリートを前記の凝固したコンクリート上部に打設し、凝固させる。
上記手順を繰り返し、設計高さHcのコンクリート製の外槽側壁3bを構築する。
前記圧力制御装置6cは、浮屋根6上昇時は加圧バッグ6aから流体8を抜き取って減圧状態とし、浮屋根6停止時は加圧バッグ6a内に流体8を注入して高圧状態とするよう制御する圧力制御機構を有している。
また、内槽4内に浮上させた浮屋根6の加圧バッグ6a内に充填した流体の内圧Pfとコンクリート打設圧Pcを平衡させることにより、内槽側板4bを変形させることなく、内槽側板4bの垂直立設状態を維持して設計高さHcが大きいコンクリート製の外槽側壁3bを構築することが可能になる。
また、加圧バッグ6aをシール装置として使用する場合、該加圧バッグ6aは貯蔵液の性質を考慮した耐油性や耐候性等を有していることとする。
2 基礎
3(コンクリート製の)外槽
3a底版
3b側壁
3b1外側型枠
4(金属製の)内槽
4a底板
4b側板
4b1内側型枠
4c屋根板
5水
6浮屋根
6a加圧バッグ
6b配管
6c圧力制御装置
6d流体注入口
6eデッキ板
6fデッキサポート
7トップアングル
8流体(液体又は気体)
9雨水浸入防止措置
10貯蔵液
Hw貯蔵液10の液面高さ
Hcコンクリート側壁3bの設計高さ
Pcコンクリート打設の外圧
Pf加圧バッグ6a内に注入した流体8の圧力
Claims (3)
- 金属製の内槽と、該内槽を囲繞して配設されるコンクリート製の外槽とを備え、前記内槽を前記外槽のコンクリート打設用の内側型枠とするコンクリート壁を備えたタンクの施工方法であって、前記内槽内に注水して水を張り、該内槽内に設置した浮屋根を上昇させる工程(a)と、前記内槽の側板外周部に前記コンクリート打設用の外側型枠を仮設する工程(b)と、前記浮屋根外周部に沿って環状に取付けた加圧バッグ内に液体又は気体からなる流体を注入し、該加圧バッグを前記内槽の側板内面に密着するように膨張させて該内槽側板を加圧補強した状態で、前記外槽のコンクリート側壁を打設する工程(c)と、前記外槽のコンクリート側壁を凝固させる工程(d)と、前記加圧バッグ内から流体を抜き取り、該加圧バッグを減圧させる工程(e)とを具備し、前記外槽のコンクリート側壁が設計高さに到達するまでに、前記工程(a)から工程(e)までの工程を繰り返し実施し、設計高さの外槽の側壁を構築することを特徴とするコンクリート壁を備えたタンクの施工方法。
- 請求項1記載の浮屋根外周部に沿って環状に取付けた加圧バッグ内に液体又は気体からなる流体を注入し、該加圧バッグを前記内槽の側板内面に密着するように膨張させて該内槽側板を加圧補強した状態で、前記外槽のコンクリート側壁を打設する工程(c)において、前記加圧バッグの内圧が前記側壁のコンクリート打設の外圧と平衡するように、前記加圧バッグに注入する流体の圧力を調整することを特徴とする請求項1記載のコンクリート壁を備えたタンクの施工方法。
- 請求項1記載の浮屋根外周部の加圧バッグは、該加圧バッグ内に前記流体を注入するか、或いは該加圧バッグ内から前記流体を抜き取るための流体注入口を備えるとともに、該流体注入口に配管を介して接続され、前記流体を出し入れして内圧を制御する圧力制御装置と着脱自在に接続された加圧バッグであって、
請求項1記載の外槽のコンクリート側壁を凝固させる工程(d)の後に、該加圧バッグに接続された前記配管及び圧力制御装置を撤去するとともに流体注入口を塞ぎ、該加圧バッグが加圧された状態で、タンク供用時の貯蔵液の蒸気逸出を防止するシール装置として使用する加圧バッグであることを特徴とする請求項1記載のコンクリート壁を備えたタンクの施工方法。
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