以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態の杭圧入装置の概要を説明する。本実施の形態の杭回転圧入装置は、施工が完了した杭(完成杭)を反力としながら、完成杭の頭部を自走して杭を順次圧入する。この工法により、硬質地盤やコンクリート構造物などの地中構造部への圧入施工が可能となり、仮設桟橋も必要としないため、工期を短縮し、環境にやさしい施工が可能となる。杭圧入装置は、鋼矢板を圧入する機能を有するもののほか、鋼管杭を回転させながら圧入する機能を有する杭回転圧入装置がある。以下では、杭回転圧入装置を例にして本発明の実施の形態を説明するが、変形例2として示すように、鋼矢板を圧入する杭圧入装置においても本発明を実施できる。
図1は、杭回転圧入装置の構成を示す側面図であり、図2は、図1に示す杭回転圧入装置を上方から見た平面図である。図1及び図2に示すように、本実施の形態の杭回転圧入装置1は、完成杭2B(反力杭)に反力をとって所定長さの鋼管からなる圧入杭2Aを完成杭2Bに並ぶ所定位置に圧入するものである。杭回転圧入装置1は、例えば、複数の杭2、2、・・・を配列して打設される護岸工事や擁壁工事に用いられる。
杭回転圧入装置1で圧入される圧入杭2Aは、杭回転圧入装置1の近傍に移動可能に設置されているクレーン(図示省略)によって吊り下げられている。なお、本明細書では、杭2のうち、杭回転圧入装置1で圧入する杭を符号2Aを用いて圧入杭といい、既設の杭を符号2Bを用いて完成杭といい、後述するクランプ50により把持される完成杭2Bを反力杭という。
杭回転圧入装置1は、円管形状を有する圧入杭2Aを把持するチャック3と、チャック3を上下方向yに相対移動(昇降)可能に支持するリーダマスト42と、リーダマスト42を支持するスライドベース41と、スライドベース41を前後方向x1に相対移動(スライド)可能に支持するサドル5とを備えている。リーダマスト42は、スライドベース41がサドル5をスライドする際に、スライドベース41と一体となって前後方向x1に移動する。
杭回転圧入装置1は、スライドベース41の移動により、配列された複数の完成杭2B上をその配列方向に沿って移動(自走)するようになっている。サドル5は、図1に示すように、サドル本体51と、サドル本体51から垂下する複数(ここでは3つ)のクランプ50とを備えている。クランプ50は、完成杭2Bの上端2aの内側に挿入された状態で、図示しない油圧シリンダによって完成杭2Bを内側から保持及び開放するように構成され、完成杭2(反力杭)の天端(上端2a)に当接する当接部50aを有している。
スライドベース41は、板状の形状を有し、サドル本体51上に設けられる。スライドベース41とリーダマスト42とは回転機構43を介して連結している。リーダマスト42は、回転機構43によってスライドベース41で上下方向yを中心とした回転軸回りに所定の角度範囲内で旋回する。リーダマスト42の前端には、上下レール部40が設けられている。
上下レール部40は、上下方向yに延在している。上下レール部40の前側には、チャック3が上下移動(昇降)自在に嵌合されている。リーダマスト42の下端には、左右方向x2の両側から前方に向けて突出するマストアーム部44、44が設けられている。
チャック3は、チャック本体31と、チャック本体31を回転可能に支持するチャックフレーム32とを備えている。チャック本体31は、図2に示すように、圧入杭2Aを上下方向yに挿通可能な挿通孔を有する。チャックフレーム32には、リーダマスト42の一対のマストアーム部44のそれぞれに先端を固定された一対の昇降シリンダ33(33A、33B)が設けられる。
図2に示すように、チャックフレーム32には、リーダマスト42の上下レール部40に嵌合するスライド部321が形成される。チャックフレーム32は、昇降シリンダ33の伸縮によって上下レール部40に沿って上下方向yに摺動自在に嵌合する。
一対の昇降シリンダ33A、33Bは、ロッドの伸縮方向を上下方向yに向けて配置され、ロッド先端がマストアーム部44の突出端に固定されている。そのため、昇降シリンおダ33のロッドを伸張された状態から収縮させると、昇降シリンダ33を介してチャックフレーム32及びチャック本体31が下方に移動し、チャック本体31で把持される圧入杭2Aを下方に向けて圧入する方向に移動させることができる。
このように、昇降シリンダ33は、チャックフレーム32を介してチャック本体31に作用してチャック本体31に圧入杭2Aの圧入のための推進駆動力を付与するものである。なお、リーダマスト42の外部にはチャック3の摺動距離を検知するストロークセンサ(図示省略)が設けられている。
チャック3は、リーダマスト42に対して着脱可能である。チャック3を取り換えることで、種々のサイズの杭2に対応できる。また、本実施の形態では特に、後述するように、油圧パワーの変更に応じてチャック3を取り換えることができる。
チャック本体31は、図2に示すように、チャックフレーム32内に回転可能に支持され、圧入杭2Aを把持する部分である。チャック本体31は、内部に複数のチャック爪311を備えている。チャック本体31は、チャック爪311により圧入杭2Aを外周側から押圧することにより圧入杭2Aを把持して、チャックフレーム32に対して回転する。このように、チャック本体31及びチャック爪311は、圧入杭2Aを把持して回転するものであり、本発明の回転手段に相当する。
チャック本体31の外周には、チャック回転ギア34が固定されている。チャック回転ギア34の周囲にはチャックフレーム32に回転可能に支持された複数(本実施の形態では3つ)の駆動ギア35がチャック回転ギア34と噛み合っている。駆動ギア35は、それぞれ、油圧モータ36によって回転駆動される。油圧モータ36は、それぞれ駆動ギア35の上方でチャックフレーム32に固定されており、駆動ギア35もチャックフレーム32に回転可能に固定されている。
油圧モータ36で駆動ギア35を回転駆動することで、チャック回転ギア34を介してチャック本体31が回転し、これによってチャック本体31に把持された圧入杭2Aが回転する。このように、1組の油圧モータ36及び駆動ギア35は、チャック回転ギア34を介してチャック本体31に作用してチャック本体31に圧入杭2Aの圧入のための回転駆動力を付与するものであり、駆動力付与手段を構成する。また、昇降シリンダ33によって圧入杭2Aを圧入する構成、及びチャック回転ギア34、駆動ギア35、及び油圧モータ36によって圧入杭2Aを回転させる構成は、圧入手段を構成する。
図3は、油圧ユニットと杭回転圧入装置とを含む杭圧入システムの全体構成図である。杭圧入システム100は、杭回転圧入装置1と、油圧源としての油圧ユニット6とを備えている。杭回転圧入装置1は、油圧ユニット6からの油圧を制御して圧入手段に供給するための構成として、制御装置71と、昇降駆動油圧制御バルブ72と、回転駆動油圧制御バルブ73を備えている。
油圧ユニット6は、リーダマスト42に設けられた接続口461を介して電源供給ライン61で制御装置71と接続されている。油圧ユニット6は、リーダマスト42に設けられた接続口462、463、464を介してそれぞれリーク油戻りライン(DR)62、油戻りライン(T)63、及び高圧油供給ライン(P)64によって回転駆動油圧制御バルブ73と接続されている。油戻りライン63と高圧油供給ライン64は、リーダマスト42内で分岐して昇降駆動油圧制御バルブ72にも接続されている。
昇降駆動油圧制御バルブ72は、さらに高圧油供給ライン74及び油戻りライン75によって昇降シリンダ33に接続されている。また、回転駆動油圧制御バルブ73は、さらにリーク油戻りライン76、油戻りライン77、及び高圧油供給ライン78によって油圧モータ36に接続されている。
昇降駆動油圧制御バルブ72と昇降シリンダ33との間の高圧油供給ライン74には、高圧油供給ライン74の油圧を検出する油圧計82が設けられている。また、油圧モータ36には、油圧モータ36の回転圧を検出する回転トルク計81が設けられている。
制御装置71は、油圧ユニット6から電源供給ライン61を介して電源供給を受けて、油圧計82及び回転トルク計81の検出値に基づいて、昇降駆動油圧制御バルブ72及び回転駆動油圧制御バルブ73を制御する。このために、油圧計82及び回転トルク計81は、それぞれ検出値を制御装置71に送信し、制御装置71は、昇降駆動油圧制御バルブ72及び回転駆動油圧制御バルブ73の各々に制御信号を送信する。本実施の形態では、制御装置71と、昇降駆動油圧制御バルブ72、回転駆動油圧制御バルブ73、油圧計82、及び回転トルク計81とは、それぞれ無線で通信可能に接続されるが、これに代えて、一部又は全部が有線で通信可能に接続されていてよい。
図4は、杭回転圧入装置の回転油圧回路の例を示す図である。回転油圧回路とは、油圧ユニット6から回転駆動油圧制御バルブ73を経て油圧モータ36に至る回路である。回転駆動油圧制御バルブ73は、リーク油戻りライン62、油戻りライン63、及び高圧油供給ライン64によって油圧ユニット6と接続されている。また、図4では図示は省略されているが、回転駆動油圧制御バルブ73は、油圧ユニット6から電源を供給されている。回転駆動油圧制御バルブ73からは、リーク油戻りライン76、油戻りライン77、及び高圧油供給ライン78が延びていて、それらが分岐して3つの油圧モータ36に接続されている。
回転駆動油圧制御バルブ73は、各ラインに対応した電磁バルブを備える。電磁バルブは制御装置71からの制御信号に従って開閉する。なお、油量の制御は、電磁バルブの開度を調節することで行うが、油圧ユニット6にて油量を調節するようにしてもよい。回転駆動油圧制御バルブ73は、油圧ユニット6からの油圧(駆動力)を油圧モータ36に伝達する。
図5及び図6は、油圧モータの作動原理を説明する図である。油圧モータ36は、内部に空洞を有する円筒状のケーシング361と、ケーシング361の内部でケーシング361の中心軸周りに回転する円柱状のシリンダブロック362とを備えている。ケーシング361の内周面は、中心軸までの距離が周期的に変化するカム面363とされている。
シリンダブロック362の外周面には、高圧油供給ライン78に供給される油圧に応じてケーシング361の径方向外側に押し出されるピストン364が、周方向に所定の間隔で(図5の例では、8個)設けられている。ピストン364の先端には、カム面363を転がるローラ365が設けられている。
カム面363には、周方向に徐々に中心軸との距離が遠くなる押出段と周方向に徐々に中心軸との距離が近くなる押戻段とが交互に設けられている。図5の例において、シリンダブロック362が時計回りに回転する場合には、斜線部分が押出段となり、非斜線部分が押戻段となる。高圧油供給ライン78は、押出段にあるピストン364に接続されて油圧を供給し、それによってピストン364を押し出す。油戻りライン77は、押戻段にあるピストン364に接続されて、カム面363によってピストン364が押し戻されると、油戻りライン77に油が戻される。
リーク油戻りライン76は、ケーシング361とシリンダブロック362との間の空間に導入されて、ピストン364からシリンダブロック362の外部に漏れだした油を回転駆動油圧制御バルブ73に戻す。
図6は、フリー回転時の油圧モータの状態を示す図である。フリー回転とは、油圧ユニット6からの油圧によって駆動してチャック回転ギア34を回転させるのではなく、駆動ギア35がチャック回転ギア34の回転によって回転させられて、それによって油圧モータ36が回転する状態をいう。
図2及び図4に示したように、本実施の形態では、チャック3は3つの油圧モータ36を備えているが、そのうちの2つの油圧モータ36のみを駆動して、残りの1つの油圧モータ36を図6に示すようにフリー回転状態として、チャック回転ギア34の回転に従動して回転させることがある。
フリー回転状態において、油の流れを完全になくしてしまうと、内部に残った油が回転抵抗となることがあるため、油戻りライン77及び高圧油供給ライン78をリーク油戻りライン76に接続する。さらに、本実施の形態では、フリー回転時には、回転の抵抗が低減するように、ケーシング361内にチャージ圧に相当する量の油を流して抵抗を低減する。具体的には、フリー回転時には、高圧油供給ライン78を油戻りライン77に接続して、リーク油戻りライン76に制御した油圧を供給してピストン364を縮ませると、ローラ365がカム面363から離れた状態となる。ローラ365がカム面363を転動しないので、出力軸と連結しているシリンダブロック362は低抵抗で回転する。
図7は、油圧モータが9個の場合の杭回転圧入装置の構成を示す側面図であり、図8は、図7に示す杭回転圧入装置を上方から見た平面図である。以下において、油圧モータ3個の場合と同様の構成については同じ符号を付して適宜説明を省略する。図7及び図8に示す杭回転圧入装置1は、図1及び図2に示した杭回転圧入装置1に対して、チャック3を9個の油圧モータ36を備えたものに付け替えて、さらに、追加油圧制御ユニット70を取り付けたものである。
図7に示すように、本実施の形態では、追加油圧制御ユニット70がリーダマスト42の外部に取り付けられる。この追加油圧制御ユニット70は、リーダマスト42に対して着脱可能である。また、図7及び図8の例では、図1及び図2に示した回転駆動手段(駆動ギア35及び油圧モータ36)を3セット備えたチャック3の代わりに、回転駆動手段を9セット備えたチャック3が取り付けられている。
追加油圧制御ユニット70には、2つの回転駆動油圧制御バルブ731、732と、制御装置711とを備えている。これにより、杭回転圧入装置1は、回転駆動油圧制御バルブ73と合わせて、合計3個の回転駆動油圧制御バルブを備えている。
9個の油圧モータ36は、3つの回転駆動油圧制御バルブ73、731、732に対応して、3つの組に分けられている。油圧モータ36Aは回転駆動油圧制御バルブ73によって駆動され、油圧モータ36Bは回転駆動油圧制御バルブ731によって駆動され、油圧モータ36Cは回転駆動油圧制御バルブ732によって駆動される。
3つの油圧モータ36A、3つの油圧モータ36B、及び3つの油圧モータ36Cは、それぞれそれらによって形成される三角形がチャック3の中心軸Oを含むように配置される。
図9は、油圧ユニットと杭回転圧入装置とを含む杭圧入システムの全体構成図である。上述のように、本実施の形態では、チャック3が9個の油圧モータ36を備えており、それらが3組に分けられている。油圧モータ36の各組はそれぞれ別個の回転駆動油圧制御バルブによって駆動される。なお、図9では、図の簡略化のために油圧モータ36Cに対応する回転駆動油圧制御バルブ732と、それに接続される油圧ユニット6Cの図示を省略している。
油圧ユニット6Aは、リーダマスト42に設けられた接続口462、463、464を介して回転駆動油圧制御バルブ73及び昇降駆動油圧制御バルブ72に接続されて、油圧モータ36A及び昇降シリンダ33を駆動する。
油圧ユニット6Bは、追加油圧制御ユニット70に設けられた接続口761を介して電源供給ライン611で制御装置711に接続されている。油圧ユニット6Bは、追加油圧制御ユニット70に設けられた接続口762、763、764を介してそれぞれリーク油戻りライン621、油戻りライン631、及び高圧油供給ライン641によって回転駆動油圧制御バルブ731に接続されて、油圧モータ36Bを駆動する。
また、図示しない3台目の油圧ユニット6Cは、追加油圧制御ユニット70に設けられた接続口を介して回転駆動油圧制御バルブ732に接続されて、油圧モータ36Cを駆動する。また、追加油圧制御ユニット70の制御装置711は、油圧ユニット6Bから電源を供給されて駆動する。
回転駆動油圧制御バルブ731は、リーク油戻りライン776、油戻りライン777、及び高圧油供給ライン778によって油圧モータ36Bに接続されている。また、図示しない回転駆動油圧制御バルブ732は、リーク油戻りライン776、油戻りライン777、及び高圧油供給ライン778によって油圧モータ36Cに接続されている(図12参照)。
標準装備の制御装置71は、油圧計82の検出値に基づいて昇降駆動油圧制御バルブ72及び回転駆動油圧制御バルブ73を制御するとともに、追加油圧制御ユニット70の制御装置711に指令を送信する。制御装置711は、制御装置71からの指令に基づいて、回転駆動油圧制御バルブ731、732を制御する。制御装置711と制御装置71とは、無線で通信可能に接続されるが、これに代えて、一部又は全部が有線で通信可能に接続されていてよい。
以上のように、図7及び図8の例の杭回転圧入装置1では、リーダマスト42内に固定的に設けられた標準装備の回転駆動油圧制御バルブ73に加えて、追加油圧制御ユニット70を取り付けることで、さらに2つの回転駆動油圧制御バルブ731、732が追加される。これにより、これらの回転駆動油圧制御バルブ731、732を介して油圧ユニット6B、6Cを接続してチャック3を回転駆動できる。
図10は、追加油圧制御ユニットを拡大して示す平面図であり、図11は、図10の側面図である。図11に示すように、追加油圧制御ユニット70は、リーダマスト42の上部に着脱可能に取り付けられる。追加油圧制御ユニット70は、制御装置711、回転駆動油圧制御バルブ731、及び回転駆動油圧制御バルブ732を収容する本体部701と、本体部701の下部に形成された取付アーム702とを備えている。
取付アーム702の先端は横向きの接続ピン703によってリーダマスト42の上部に取り付けられる。追加油圧制御ユニット70は、この接続ピン703を取り外すことでリーダマスト42から取り外すことができる。これによって、追加油圧制御ユニット70に収容される回転駆動油圧制御バルブ731、732、及び制御装置711は、リーダマスト42の外部に取り付けられる。
図12は、杭回転圧入装置の回転油圧回路の例を示す図である。回転駆動油圧制御バルブ73は、油圧ユニット6Aと、リーク油戻りライン62、油戻りライン63、及び高圧油供給ライン64で接続されている。また、回転駆動油圧制御バルブ73は、油圧ユニット6Aから電源を供給されている。回転駆動油圧制御バルブ73からは、リーク油戻りライン76、油戻りライン77、及び高圧油供給ライン78が延びていて、それらが分岐して9個の油圧モータ36A、36B、36Cに接続されている。
回転駆動油圧制御バルブ731は、油圧ユニット6Bと、リーク油戻りライン621、油戻りライン631、及び高圧油供給ライン641で接続されている。また、回転駆動油圧制御バルブ731は、油圧ユニット6Bから電源を供給されている。回転駆動油圧制御バルブ731からは、リーク油戻りライン776、油戻りライン777、及び高圧油供給ライン778が延びていて、それらが分岐して9個の油圧モータ36A、36B、3及び6Cに接続されている。
回転駆動油圧制御バルブ732は、油圧ユニット6Cと、リーク油戻りライン622、油戻りライン632、及び高圧油供給ライン642で接続されている。また、回転駆動油圧制御バルブ732は、油圧ユニット6Cから電源を供給されている。回転駆動油圧制御バルブ732からは、リーク油戻りライン776、油戻りライン777、及び高圧油供給ライン778が延びていて、それらが分岐して9個の油圧モータ36A、36B、及び36Cに接続されている。チャック3には、3つの回転駆動油圧制御バルブ73、731、732対応して3組の接続口が設けられている。
9個の油圧モータ36を備えるチャック3を用いた杭回転圧入装置1において、追加油圧制御ユニット70を取り外して使用することも可能である。追加油圧制御ユニット70を用いない場合には、標準の油圧ユニット6Aのみで9個の油圧モータ36A~36Cを駆動する。よって、油圧モータ36の回転速度は比較的遅くなる。これに対して、追加油圧制御ユニット70を取り付けて、油圧ユニット6B、6Cを接続した場合には、9個の油圧モータ36を油圧ユニット6B、6Cによっても駆動するので、回転速度は3倍になる。
以上のように、本実施の形態の杭回転圧入装置1では、図1及び図2に示したように、1つの標準装備の回転駆動油圧制御バルブ73及びそれに対応する1台の標準の油圧ユニット6を用いて圧入杭2Aを低速度で回転させることもできるし、追加油圧制御ユニット70を取り付けて、チャック3も複数の回転駆動油圧制御バルブ73から圧入杭2Aを回転するための回転油圧を受けるものに取り換えることで、油圧ユニット6を追加して、高パワーで圧入杭2Aを回転させることもできる。さらに、複数の回転駆動油圧制御バルブ73からの回転油圧を受けるチャック3を取り付けている場合にも、追加油圧制御ユニット70を取り外して、標準装備の回転駆動油圧制御バルブ73に接続される油圧ユニット6のみでチャック3を回転駆動することもできる。
追加油圧制御ユニット70を取り外すことで、杭回転圧入装置1を大型化、重量化することなく、低パワーでチャック3を回転させることができるとともに、追加油圧制御ユニット70を取り付けて追加的に油圧ユニットを接続することで、高パワーでチャック3を回転駆動させることができる。
このように、追加的に接続する油圧ユニットに対応した回転駆動油圧制御バルブ731、732を追加油圧制御ユニット70に収容して杭回転圧入装置1に着脱可能とすることで、杭回転圧入装置1の大型化、重量化を回避できる点について説明する。
図13は、仮想的に追加の回転駆動油圧制御バルブをリーダマストの内部に設けた杭回転圧入装置の側面図である。図13に示すように、追加的に接続する油圧ユニットのための回転駆動油圧制御バルブ731、732をリーダマスト42´の内部に設ける場合には、リーダマスト42´を大型化しなければならない。
図7のように回転駆動油圧制御バルブ731、732を含む追加油圧制御ユニット70をリーダマスト42に対して着脱可能とした場合には、リーダマスト42自体の高さは昇降シリンダ33と同程度の高さで抑えられていた。図13では、図7の場合の杭回転圧入装置1の全高をH1とし、リーダマスト42の高さをL1として示している。これに対して、回転駆動油圧制御バルブ731、732をリーダマスト42´の内部に固定的に設けた場合には、図13に示すように、杭回転圧入装置1の全高はH2(>H1)となり、リーダマスト42´自体の高さもL2(>L1)となって大型化してしまう。
換言すれば、本実施の形態のように回転駆動油圧制御バルブ731、732を追加油圧制御ユニット70に収容してこの追加油圧制御ユニット70をリーダマスト42の上部に着脱可能とすることで、追加油圧制御ユニット70を取り外した状態では杭回転圧入装置1の全高を比較的低く抑えることが可能となる。
図14は、杭回転圧入装置を分解した場合の最大高さを示す図である。杭回転圧入装置1は、サドル5と、リーダマスト42及びスライドベース41と、チャック3に分解することができる。また、上述のように追加油圧制御ユニット70もリーダマスト42に対して着脱可能である。図14は、サドル5、リーダマスト42及びスライベース41、チャック3をそれぞれ同一の平面に置いた状態を示している。なお、チャック3については、スタンド310、320を利用することで、若干傾いた姿勢で自立させている。
杭回転圧入装置1は、施工現場までは図14に示すように分解した状態で、例えばトラック等の車両によって運ばれる。このとき、サドル5と、リーダマスト42及びスライベース41と、チャック3における地面からの最大高さHが高いほど大きな車両を用意しなければならない。したがって、分解した際の最大高さHは低いことが望ましい。
図14の例では、最も高さが高いのはチャック3である。すなわち、サドル5と、リーダマスト42及びスライベース41と、チャック3における地面からの最大高さHは、チャック3の高さHcである。リーダマスト42及びスライベース41については、追加油圧制御ユニット70をリーダマスト42の上部に取り付ければチャック3より高さよりも高くなるが、追加油圧制御ユニット70はリーダマスト42から取り外すことが可能である。追加油圧制御ユニット70を取り外すことで、図14に示すように、最大高さHを高くしてしまうことはない。
このように、追加油圧制御ユニット70は、運転時にそれを用いる場合であっても、運搬時にはリーダマスト42から取り外すことで、分解された杭回転圧入装置1の最大高さを抑えることができる。
以上説明したように、本実施の形態の杭回転圧入装置1のリーダマスト42内には、1つの油圧ユニットに接続される標準装備の回転駆動油圧制御バルブ73が設けられている。チャック3として、図2に示すように3個の油圧モータ36を備えたチャック3を用い、これを1つの油圧ユニット6で駆動する場合には、即ち、杭を回転する動力が小さくて足りる場合には、回路駆動油圧制御バルブ73のみで足り、追加の回転駆動油圧制御バルブ731、732は不要である。この場合には、回転駆動油圧制御バルブ731、732を含む追加油圧制御ユニット70をリーダマスト42から取り外して、小型、軽量、低出力の状態で杭回転圧入装置1を使用することができる。
一方、高出力が必要な場合には、油圧ユニット6を追加して、複数の油圧ユニットでチャック3を回転駆動することができる。この場合には、チャック3として、図8に示すように9個の油圧モータを備えたチャック3を用い、杭回転圧入装置1に追加油圧制御ユニット70を取り付けて、複数の油圧ユニット6を用いることで、高出力の回転駆動を実現できる。
以上、本発明の典型的な実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られず、以下に説明する種々の変形が可能である。以下、順に変形例を説明する。
(変形例1)
図15は、変形例1の杭圧入システムの構成を示す図である。変形例1では、追加油圧制御ユニット70´を昇降シリンダ33の出力増強に用いている。図15に示すように、昇降シリンダ33には、2つの昇降駆動油圧制御バルブ72、721に対応して2組の接続口が設けられている。追加油圧制御ユニット70´は、昇降駆動油圧制御バルブ721と制御装置711とを備えている。なお、図15では、油圧ユニット6Aと回転駆動油圧制御バルブ73との間のリーク油戻りライン、及び回転駆動油圧制御バルブ73と各油圧モータ36との間のリーク油戻りラインは図示を省略している。
制御装置711は、追加油圧制御ユニット70´に設けられた接続口761を介して電源供給ライン611で油圧ユニット6Bに接続されている。昇降駆動油圧制御バルブ721は、追加油圧制御ユニット70´に設けられている接続口763、764を介して油戻りライン631、及び高圧油供給ライン641で接続されている。また、昇降駆動油圧制御バルブ721は、油戻りライン777、及び高圧油供給ライン778によって昇降シリンダ33に接続される。
(変形例2)
図16は、変形例2の杭圧入システムの構成を示す図である。この変形例では、本発明を、鋼管杭を回転させながら圧入する杭回転圧入装置ではなく、鋼矢板を圧入する杭圧入機に応用している。
図17は、本変形例の杭圧入装置の平面図である。杭圧入装置1´は、チャック3´として、鋼矢板2A´を把持する構成を有している。この圧入システム100によれば、追加の油圧ユニット6Bを用いて、圧入杭2A´の回転ではなく、昇降シリンダ33による圧入のパワーを増強できる。
本変形例において、追加油圧制御ユニット70´´として、図15の杭回転圧入装置1に用いた追加油圧制御ユニット70´を用いることもできる。その場合には、追加油圧制御ユニット70´の昇降駆動油圧制御バルブ721のリーク油戻りラインに関するバルブを閉じればよい。
(変形例3)
図18及び図19は、変形例3の回転油圧回路を示す図である。本変形例では、追加油圧制御ユニット70´が、回転駆動油圧制御バルブ731、732に加えて、制御バルブ801、802を備えている。また、本変形例では、チャック3が6個の油圧モータ36を有する例を示しているが、油圧モータ36の個数はこれに限られない。さらに、本変形例では、油圧ユニットと回転駆動油圧制御バルブとの間、及び回転駆動油圧制御バルブと油圧モータとの間は、リーク油戻りライン(DR)、油戻りライン(T)、及び高圧油供給ライン(P)に加えて、制御ライン(PP)でも接続されている。
複数の油圧モータ36は、標準装備の回転駆動油圧制御バルブ73に接続される2個の油圧モータ36Aと、追加油圧制御ユニット70´の回転駆動油圧制御バルブ731に接続される2個の油圧モータ36Bと、追加油圧制御ユニット70´の回転駆動油圧制御バルブ732に接続される2個の油圧モータ36C、という3つの組に分けられる。
回転駆動油圧制御バルブ731は、制御バルブ801を介して標準装備の回転駆動油圧制御バルブ73に接続される。また、回転駆動油圧制御バルブ732は、制御バルブ802を介して回転駆動油圧制御バルブ731に接続される。このような追加油圧制御ユニット70´を取り付けた状態で、1台の油圧ユニット6Aのみを用いて9個の油圧モータ36A~36Cを駆動する場合には、制御バルブ801、802は、図18に示す接続状態となる。その結果、油圧モータ36Aは、油圧ユニット6Aによって駆動され、油圧モータ36B、36Cは、図6で説明したフリー回転状態となる。
このフリー回転状態では、制御バルブ801は、回転駆動油圧制御バルブ73から回転駆動油圧制御バルブ731に向けてリーク油戻りライン76Xにチャージ圧に相当する量の油を流すことで、制御バルブ801がフリー回路となり、油圧モータ36Bが低抵抗で回転(フリー回転)可能となる。これにより、油圧モータ36Bは、油圧モータ36Aによって駆動されるチャック回転ギア34に従動して、低抵抗で回転可能となる。
同様に、制御バルブ802は、回転駆動油圧制御バルブ731から回転駆動油圧制御バルブ732に向けてリーク油戻りライン76Yにチャージ圧に相当する量の油を流すことで、制御バルブ802がフリー回路となり、油圧モータ36Cが低抵抗で回転(フリー回転)可能となる。これにより、油圧モータ36Cは、油圧モータ36Aによって駆動されるチャック回転ギア34に従動して、低抵抗で回転可能となる。
一方、追加の油圧ユニット6B、6Cを用いて出力増強をする場合には、図19に示すように、制御バルブ801、802は、すべての油の流通を遮断する。これにより、油圧ユニット6B及び回転駆動油圧制御バルブ731によって油圧モータ36Bが駆動され、油圧ユニット6C及び回転駆動油圧制御バルブ732によって油圧モータ36Cが駆動される。
本変形例の杭圧入システム100によれば、追加の油圧ユニット6B、6Cを用いることで、圧入杭2Aに対する回転トルクを増大させることができる。
(変形例4)
図20~図22は、変形例4のチャックの駆動力付与手段を示す図である。上記の実施の形態では、図1及び図2において、3セットの駆動力付与手段(油圧モータ36及び駆動ギア35)を備えたチャック3を示し、図7及び図8において、9セットの駆動力付与手段を備えたチャック3を示したが、把持する杭を回転させながら圧入するためのチャックは、これらに限られない。
図20は、3セットの駆動力付与手段を有するチャックの平面図である。チャック301は、3セットの駆動力付与手段を備えている点で図2に示したチャック3と同様であるが、本変形例では、2つの駆動ギア35を対角線上に配置している。これにより、チャック回転ギア34によりバランスよく駆動力を付与することができる。
図21は、4セットの駆動力付与手段を有するチャックの平面図である。チャック302において、2つの駆動ギア35Aは対角線上に配置され、2つの駆動ギア35Bも対角線上に配置される。2つ駆動ギア35Aに対応する2つの油圧モータ36Aは、同一の回転駆動油圧制御バルブに接続されて、互いに同条件で駆動される。また、2つの駆動ギア35Bに対応する2つの油圧モータ36Bは、同一の回転駆動油圧制御バルブに接続されて、互いに同条件で駆動される。このように、4セットの駆動力付与手段は2つの組に分けられている。
チャック302において、例えば、2つの油圧モータ36Aが1つの回転駆動油圧制御バルブを介して1つの油圧ユニットにより駆動され、2つの油圧モータ36Bが別の回転駆動油圧制御バルブを介して別の油圧ユニットにより駆動されてよい。あるいは、すべての油圧モータ36A、36Bが2つの回転駆動油圧制御バルブに接続されて2つの油圧ユニットによって駆動されてもよい。
図22は、6セットの駆動力付与手段を有するチャックの平面図である。この変形例でも6セットの駆動力付与手段は2つの組に分けられている。すなわち、3つ駆動ギア35Aに対応する3つの油圧モータ36Aは、同一の回転駆動油圧制御バルブに接続されて、互いに同条件で駆動される。また、3つの駆動ギア35Bに対応する3つの油圧モータ36Bは、同一の回転駆動油圧制御バルブに接続されて、互いに同条件で駆動される。
チャック303において、3つの駆動ギア35Aは、それらを頂点とする三角形の内部にチャック回転ギア34の中心軸が位置するように配置され、かつ、3つの駆動ギア35Bも、それらを頂点とする三角形の内部にチャック回転ギア34の中心軸が位置するように配置される。
(変形例5)
上記の実施の形態では、追加油圧制御ユニット70は、リーダマスト42の上部に着脱可能に取り付けられた。追加油圧制御ユニット70は、リーダマスト42の上部以外のリーダマスト42のいずれかの部分に取り付けられてもよく、あるいは、杭回転圧入装置1のリーダマスト42以外の部分(例えば、サドル5やチャック3)に取り付けられてもよい。
図23は、変形例5において追加油圧制御ユニットの取付位置を変更した例を示す図である。この変形例では、追加油圧制御ユニット70は、リーダマスト42の後方側であってスライドベース41の上方に着脱可能に取り付けられている。追加油圧制御ユニット70の取付位置をリーダマスト42に後方とすることで、追加油圧制御ユニット70を取り外したときだけでなく、図23のように追加油圧制御ユニット70を取り付けた状態でも、追加油圧制御ユニット70によってリーダマスト42の高さが高くなることはない。
図24は、追加油圧制御ユニットの取付位置を変更した別の例を示す図である。この変形例では、追加油圧制御ユニット70がサドル本体51の後端に着脱可能に取り付けられている。この変形例でも、追加油圧制御ユニット70が取り外されているときのみならず、取り付けられている場合にも、杭回転圧入装置1の高さを抑えることができる(図14も参照されたい)。
図25は、追加油圧制御ユニットの取付位置を変更したさらに別の例を示す図である。この変形例では、追加油圧制御ユニット70がサドル本体51の側面に着脱可能に取り付けられている。この変形例でも、追加油圧制御ユニット70が取り外されているときのみならず、取り付けられている場合にも、杭回転圧入装置1の高さを抑えることができる。
追加油圧制御ユニット70は、チャック3に着脱可能に設けられてもよい。追加油圧制御ユニット70をチャック3に一体的に設けることで、追加油圧制御ユニット70とチャック3との組み合わせを間違えることがなく便利である。
なお、上記の実施の形態及びその変形例では、いずれも追加油圧制御ユニット70が杭回転圧入装置1に対して着脱可能であったが、図23~図25に示す変形例のように、追加油圧制御ユニット70を取り付けた場合にも杭回転圧入装置1の高さが高くならない場合には、追加油圧制御ユニット70は、容易に着脱できないように固定的に杭回転圧入装置1に取り付けられてよい。
(変形例6)
図26及び図27は、追加油圧制御ユニットの取付構造の変形例を示す図である。図10及び図11に示した例では、横向きの接続ピン703によって、追加油圧制御ユニット70の取付アーム702がリーダマスト42に取り付けられたが、図26及び図27の例では、4つの縦向きのボルト704によって、取付アーム702の先端がリーダマスト42に固定されることで、追加油圧制御ユニット70がリーダマスト42に対して着脱自在に取り付けられる。
この変形例において、4本のボルト704を緩めて外すことで、追加油圧制御ユニット70をリーダマスト42から取り外すことができる。また、追加油圧制御ユニット70を図26及び図27に示すように配置して4本のボルト704を締めることで、追加油圧制御ユニット70をリーダマスト42に取り付けることができる。
(その他の変形例)
上記の実施の形態及びその変形例では、リーダマスト42内に固定的に設けられる標準装備の回転駆動油圧ユニットが1つだけであったが、2つ以上の回転駆動油圧制御バルブがリーダマスト42内に標準装備されていてもよい。この場合にも、さらなる回転駆動油圧ユニットが必要な場合にはそれをリーダマスト42の外部に配置することができる。
また、上記の実施の形態及びその変形例では、杭圧入装置が杭を圧入する機能について説明したが、この杭圧入装置が杭を引き抜く機能を有していてもよい。
以上説明したように、本実施の形態及びその変形例の杭圧入装置によれば、出力増強のために追加的に用いられる油圧ユニットのための油圧制御バルブがリーダマストの外部に配置されるので、そのような油圧制御バルブのためにリーダマストが大型化することを回避できる。
また、本実施の形態及びその変形例の杭圧入装置によれば、出力増強のために追加的に用いられる油圧ユニットのための油圧制御バルブが杭圧入装置に対して着脱可能であるので、出力増強の必要がない場合には、そのような油圧制御バルブを取り外すことができ、また、移動の際にも取り外すことができ、杭圧入装置の大型化や重量化を回避できる。