(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1ないし図3において、1は自律走行式掃除機である。自律走行式掃除機1は、以下、単に掃除機1という。掃除機1は、被掃除面である床面上を自律走行しつつ床面の塵埃を掃除するロボットクリーナである。
掃除機1は、本体2を備えている。また、掃除機1は、本体2を走行させる走行手段3を備えている。走行手段3は、被駆動部としての駆動輪5を駆動するモータである走行用モータ6の駆動力を制御する駆動力制御手段である走行制御手段7等を備えている。
さらに、掃除機1は、塵埃を集塵部11に吸い込むためのモータである電動送風機12の駆動力を制御する駆動力制御手段である吸引制御手段13を備えている。掃除機1は、床面を掃除する掃除手段14を備えている。本実施形態において、掃除手段14は、床面の塵埃を掻き上げる回転清掃体15を回転させるモータである清掃体用モータ16の駆動力を制御する駆動力制御手段である清掃体制御手段17を備えている。
走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17は、それぞれ走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の入力又は通電時間等を制御するものである。本実施形態において、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17は、それぞれ走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の回転をPWM制御により制御するものである。この実施形態では、掃除時に駆動される駆動手段が、走行用モータ6、電動送風機12、及び清掃体用モータ16で構成されている。一方、上記の構成に限らず、駆動手段は一つのモータで構成されても構わない。
また、掃除機1は、設定された掃除条件を満たすように掃除機1の運転を制御する運転制御手段23を備えている。本実施形態において、運転制御手段23は、設定された掃除終了条件を満たすように掃除機1の運転を制御する。なお、運転制御手段23は、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17それぞれに対応して個別に設けられていてもよい。さらに、掃除機1は、駆動手段により生じられた運転音等の騒音レベルを設定する騒音設定手段24を備えている。
掃除機1は、本実施形態において、記憶手段であるメモリ25を備えていてもよい。メモリ25としては、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性のものが用いられる。メモリ25には、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17や運転制御手段23等により参照される各種データが記憶されている。
また、掃除機1は、例えばスマートフォン等の外部装置とネットワーク経由で、あるいは無線により直接通信可能な無線LANデバイス等の設定手段である通信手段を備えていてもよい。通信手段は、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17および運転制御手段23と電気的に接続されている。この場合、騒音設定手段24を設置せず、通信手段は、騒音設定手段24として使用し、通信手段は、ユーザにより外部装置から入力された運転音の上限を走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17および運転制御手段23に対して出力するようになっている。一方、騒音設定手段24は通信手段として使用してもよいし、騒音設定手段24と通信手段とを両方とも設置しても構わない。さらに、掃除機1は、ユーザが設定等を直接入力可能なタッチパネルやボタン等の設定手段である入力部を備えていてもよい。
また、掃除機1は、掃除領域の走行障害等の情報を取得するセンサ等の情報取得手段を備えていてもよい。さらに、掃除機1は、地図作成手段を備えていてもよい。地図作成手段は、情報取得手段により取得された掃除領域の情報に基づき本体2が走行可能な掃除領域の地図情報を作成するとともに自己位置を推定するものである。地図情報の作成および自己位置推定は、既知のSLAM(simultaneous localization and mapping)技術等を用いることができるので、詳細については省略する。
さらに、本実施形態においては、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17、運転制御手段23、メモリ25等がマイコン29に一体的に組み込まれているが、これらはそれぞれ別個に備えられていてもよい。
また、掃除機1は、各部に給電する電源部として二次電池を備えていてもよい。二次電池としては、例えば消費電流による電力容の変動が小さい、リチウムイオン電池が用いられる。本実施形態の二次電池の場合、給電対象の消費電流の低減に対応して運転時間を延長可能となっている。本実施形態では、二次電池を充電台等により充電するための充電端子32が本体2に配置されていてもよい。
次に、第1の実施形態の動作を説明する。
騒音設定手段24により、掃除機1の運転音の上限を、掃除機1に設定する。運転音の上限は、通常モードやマナーモード等の掃除機1の動作モードを選択することで間接的に運転音の上限を設定するようにしてもよいし、運転音の上限を直接設定するようにしてもよい。運転音の上限を直接設定する場合には、予め設定された複数の値から選択するようにしてもよいし、スライダや摘み等を用いて連続値で設定するようにしてもよい。スマートフォン等の外部装置を用いて通信手段を介して設定する場合には、予め備えられているタッチパネル機能を利用し、専用のアプリケーションや汎用のブラウザ等により描画された入力画面等のインターフェースを用いてユーザに設定させるようにしてもよい。なお、運転音の上限の設定は、掃除の開始前であっても、掃除中であっても可能である。掃除開始前に運転音の上限が設定された場合には、掃除開始時からの運転音の上限が設定され、掃除中に運転音の上限が設定された場合には、設定以降の残りの掃除の運転音の上限が設定されるものとする。
走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17および運転制御手段23は、騒音設定手段24により設定された運転音の上限を基に、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の入力を設定し、運転制御手段23が掃除終了条件を設定する。一般に、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を大きくするために回転が速くなり、それらの運転音が大きくなる。そのため、本実施形態では、運転音の上限を小さく設定した場合、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の入力が小さくなり、掃除終了条件として掃除運転時間が延長される。また、運転音の上限を大きく設定した場合、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の入力が大きくなり、掃除終了条件として掃除運転時間が短縮される。本実施形態では、設定される運転音の上限に対して、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の入力が正の相関を有し、掃除運転時間が負の相関を有する。
例えば、掃除機1の動作モードを選択することで運転音の上限を設定する場合、運転音の上限に対する走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の入力の関係は、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16のそれぞれに対する予め定められた入力と実際に入力される電力との比、すなわち入力係数を、運転音の上限設定値と対になったテーブル形式でメモリ25や外部装置のストレージ、あるいはネットワーク上のサーバ等のストレージ等に記憶されていてもよい。
同様に、運転音の上限に対する掃除終了条件の関係は、運転音の上限と掃除終了条件とが対になったテーブル形式でメモリ25等に記憶されていてもよい。例えば、掃除終了条件として掃除運転時間の最大時間が設定される場合には、運転音の上限と掃除運転時間の最大時間とが対になったテーブルが予めメモリ25等に記憶されていてもよい。また、掃除領域の広さや複雑さを見積もって掃除終了条件として掃除運転時間を決定する場合には、運転音の上限と、掃除領域の広さや複雑さに対する掃除運転時間とが対になったテーブルがメモリ25や外部装置のストレージ、あるいはネットワーク上のサーバ等のストレージ等に予め記憶されていてもよい。なお、掃除領域の広さや複雑さを見積もる方法としては、掃除領域における最大直進距離又は最大直進時間等に基づいて見積もる方法等、既知の任意の方法を用いることが可能であるため、詳細については省略する。さらに、掃除領域の地図を地図作成手段により作成しつつ掃除をする場合には、運転音の上限と掃除領域のカバー率等の掃除終了条件とが対になったテーブルがメモリ25や外部装置のストレージ、あるいはネットワーク上のサーバ等のストレージ等に予め記憶されていてもよい。なお、掃除運転時間は、本体2の走行速度を増減させることにより短縮又は延長してもよい。
一方、運転音の上限を設定する場合、入力された運転音の上限を入力パラメータとする式を用いて入力係数および掃除終了条件を決定してもよい。
そして、掃除機1は、本実施形態において、騒音設定手段24により設定された運転音の上限に応じた走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の入力と、掃除運転時間とに基づき掃除を実施する。
騒音設定手段24により設定された運転音は、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を制御して実際に動作させることでシミュレートするようにしてもよい。
これらの動作を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
掃除を開始する際に、ステップS1において、掃除機1は、運転音の上限の入力の要否を確認する。ステップS2において、前回の掃除時等に設定した運転音の上限に変更がない場合には、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を予め設定された値にするとともに、運転制御手段23が掃除終了条件を予め設定された条件にし、後述するステップS7に進む。また、ステップS3において、ユーザが運転音の上限を新たに設定する場合には、ユーザが運転音の上限を設定する。次いで、ステップS4において、ステップS3で騒音設定手段24により設定された運転音の上限に応じて、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を決定するとともに、運転制御手段23が掃除終了条件を決定する。ステップS4における駆動力および掃除終了条件の決定の際には、図5(a)および図5(b)に示すようなテーブルを用いてもよい。なお、図5(a)、図5(b)に示す例では、運転音が0から3までの4段階に設定可能となっているが、これに限定されるものではなく、また、図5(a)に示す走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力の数値、および、図5(b)に示す掃除運転時間もこれらの数値に限定されるものではない。
また、騒音設定手段24は、設定した運転音の上限に応じて騒音を出してシミュレーションする機能を備えている。掃除機1の走行音が主な騒音であるため、多くのロボット掃除機は左右の駆動輪を独立駆動する方式であって、走行用モータ6の運転音については、走行用モータ6により左右の駆動輪5を逆回転させることにより超信地旋回をするようにして運転音をシミュレートすることが好ましい。また、ユーザが騒音上限の設定又はシミュレーション機能を利用する場合、充電台の離脱および充電台へのドッキングを実施することが好ましい。ステップS5では、騒音シミュレーション機能を利用し、ユーザが想定する騒音での掃除が可能となる。一方、騒音シミュレーション機能を利用しなくてもよいので、ステップS5は省略しても構わない。
次いで、ステップS6において、掃除機1は、掃除を開始するか否かを判断する。シミュレートした音がユーザの感覚的に大きい又は小さい場合等、騒音設定手段24又は外部装置等により設定をやり直すことが可能となる。設定をやり直す場合、掃除機1が掃除を開始しないと判断し、ステップS3に戻る。また、ステップS6において、ユーザは、そのまま掃除を開始してよいと判断した場合、ステップS7に進み、掃除機1が掃除を開始する。
ステップS8において、掃除機1は、掃除中で運転音を変更するか否かを判断する。ステップS8において、運転音の上限を変更しないと判断した場合には、次のステップS9に進む。ステップS9において、設定された掃除運転時間が経過した場合や、設定されたカバー率を達成したか等、掃除終了条件を満たしているか否かを判断する。ステップS9において、掃除終了条件を満たしていると判断した場合には、掃除を終了して充電台に帰還する。また、ステップS9において、掃除終了条件を満たしていないと判断した場合には、ステップS7に戻る。
また、ステップS8において、運転音の上限を変更すると判断した場合には、ステップS10に進み、掃除をその場等の所定位置で一時停止する。その後、ステップS11からステップS13まで順次に実施する。ステップS11ないしステップS13は、ステップS3ないしステップS5と同様の処理である。なお、ステップS13はステップS5と同様に、必須のステップではない。
次いで、ステップS14において、掃除機1は、掃除を開始するか否かを判断する。シミュレートした音がユーザの感覚的に大きい又は小さい場合等、ユーザは外部装置又は入力部等により再設定指令等を入力して、掃除機1が掃除を開始しない場合、ステップS11に戻る。また、ステップS14において、そのまま掃除を開始してよいと判断した場合、ステップS7に進んで掃除機1が掃除を再開する。なお、ステップS1ないしステップS6と、ステップS8、ステップS10ないしステップS14とは、それぞれ少なくとも一方があれば他方はなくても構わない。つまり、本実施形態において、運転音の上限の設定は、掃除の開始前および掃除中のいつでも可能であるが、掃除の開始前のみ可能、あるいは掃除中のみ可能でもよい。
このように、設定された運転音等の騒音の上限に応じて、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を制御し、運転制御手段23が掃除終了条件を設定することにより、運転音の上限が相対的に低く設定されたときに、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力が相対的に小さく設定されて掃除能力が低下する分、掃除終了条件の設定によって長時間掃除運転をする等により掃除能力の低下を相殺するため、運転音を所望のレベルに設定しつつ、十分な掃除が可能になる。
また、騒音設定手段24は、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が設定された運転音等の騒音の上限に応じて走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を制御して動作させることで生じる運転音をシミュレートする機能を備えるため、ユーザが想定する騒音での掃除が可能となり、利便性がよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、図6および図7を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態は、騒音設定手段24が運転音の上限を特定周波数帯域毎に設定可能なものである。一般に、モータは回転数が大きいほど運転音の周波数が高いので、互いに回転数が異なる走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16では、それぞれ運転音の周波数帯域が異なる。また、ユーザにとって、不快に感じる運転音の帯域は異なっている。そのため、本実施形態では、互いに回転数が異なる走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16に対して、設定された特定周波数帯域毎の運転音の上限に応じて走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17がそれぞれ別個に駆動力を設定することで、ユーザが所望する運転音の大きさになるようにしている。
図6に設定用のインターフェースの一例を示す。図6に示すように、低音域、中音域、高音域の3バンドの運転音の上限を10段階に設定可能となっているが、バンド数や運転音の上限の段階数はこれらに限定されるものではない。
そして、本実施形態の走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17での走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力の設定方法を説明する。走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16は、入力に対する周波数帯域毎の運転音の大きさが予め決まっている。走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17では、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16による運転音の合算結果が、設定されたすべての周波数帯域の上限をそれぞれ超えない最大の入力を選択する。運転音は、通常デシベルで表現されるため、運転音の合算は、単純な加算でもよいし、真数変換した和の対数をとってもよい。
上記駆動力の設定方法を、図7のフローチャートを参照して具体的に説明する。ステップS15において、ユーザが周波数帯域毎の運転音の上限を入力設定すると、ステップS16において、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17では、まず、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を、それぞれ単独動作させたときに周波数帯域毎の上限を超えない最大の駆動力とするように設定する。ステップS16において、駆動力は、周波数帯域毎の運転音と入力とが対になったテーブルに基づいて設定してもよいし、所定の数式に基づいて設定してもよい。次いで、ステップS17において、設定された駆動力での走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16による運転音の各周波数帯域の合算結果が、設定されたすべての周波数帯域の上限以下か否かを判断する。ステップS18において、運転音の合算結果が、設定されたすべての周波数帯域の上限以下である場合には、駆動力を設定し、以後の制御に進む。一方、ステップS19において、運転音の合算結果が、設定されたいずれかの周波数帯域の上限を超える場合には、設定された走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力のうち少なくともいずれかを下げて新たに設定し、ステップS17に戻る。ステップS19においては、設定された駆動力が最も大きいものから順に下げるようにしてもよいし、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力に優先順位を予め設定しておき、優先順位の高いものから順に下げるようにしてもよい。これらの制御は、上記第1の実施形態のステップS3およびステップS4、ステップS11およびステップS12に組み込んでもよい。
このように、設定された特定周波数帯域毎の運転音の上限に応じて走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を制御することで、ユーザが不快に感じる運転音を重点的に低減することが可能となり、運転音を所望のレベルに設定しつつ、十分な掃除が可能になる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、図8および図9を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態では、掃除機1が周囲の状況を把握する環境把握手段35を備え、環境把握手段35により把握された周囲の状況を加味して、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を制御するものである。
同じ掃除領域であっても、想定される運転音の上限はユーザの存否や時刻等周囲の環境に応じて変化する。そこで、本実施形態では、環境把握手段35により、現時刻、周囲の騒音レベル、ユーザが在宅か否か、ユーザの位置等の周囲の状況を把握し、環境把握手段35の把握結果に応じて、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が、騒音設定手段24により設定された運転音の上限に基づく駆動力を自動的に増減させる。
本実施形態の環境把握手段35としては、例えばRTC(real timer clock)等の計時手段、騒音レベル又は特定周波数毎の騒音レベルを検出するマイク等の騒音検出手段、周囲の人の存否を検出する人感センサ、スマートフォン等の外部装置から発信される情報をGPS等の衛星測位システムを介して受信することで、その外部装置を所持するユーザ等の特定の人の位置を示す位置情報を無線通信により受信する受信手段、あるいはそれらの組み合わせ等が用いられる。
そして、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17は、環境把握手段35により検出した現時刻が昼間の時刻帯である場合又は夜間の時刻帯でない場合、周囲の騒音レベルが所定レベル以上であって、周囲にユーザ等が存在せず、又はユーザ等が在宅していないと想定される場合等には、設定された運転音の上限に基づく走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を増加させる。
一方、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17は、環境把握手段35により検出した現時刻が昼間の時刻帯でない場合又は夜間の時刻帯である場合、周囲の騒音レベルが所定レベル未満であって、周囲にユーザ等が存在し、又はユーザ等が在宅していると想定される場合等には、設定された運転音の上限に基づく走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を減少又は維持させる。
本実施形態の制御を図9のフローチャートを参照して説明すると、上記第1の実施形態のステップS3とステップS4との間、および、ステップS11とステップS12との間に、環境把握手段35により把握された周囲の状況に基づき運転音の上限を変更するステップS20,S21が追加される。
このように、本実施形態によれば、環境把握手段35により把握された周囲の状況を加味して、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を制御することで、状況に応じた運転音の上限を掃除の度にユーザが設定する手間を増やすことなく、様々な状況に応じた運転音の上限での掃除が可能になる。
なお、第3の実施形態において、走行制御手段7、吸引制御手段13、清掃体制御手段17が、環境把握手段35により把握された周囲の状況に応じて、予め設定されている複数の運転音の上限から設定により選択された上限に応じて走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を制御するようにしてもよい。この場合でも、状況に応じた運転音の上限を掃除の度にユーザが設定する等の手間を増やすことなく、様々な状況に応じた運転音の上限での掃除が可能になる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について、図10を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態では、運転制御手段23が、環境把握手段35により把握された周囲の状況を加味することで掃除の頻度を変更することにより、掃除条件として、掃除終了条件に加えて掃除開始条件を設定するものである。
走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力を低下させつつ掃除領域を十分に掃除する方法としては、一回当たりの掃除運転時間を延長するだけでなく、掃除の頻度を上げる対策も有効である。そこで、本実施形態では、環境把握手段35による周囲の状況の検出に基づき、ユーザの求めがなくても自律的に環境把握手段35による周囲の状況の検出に基づき運転制御手段23が掃除を開始する、あるいは、ユーザが予め定めた設定時刻になった時点で環境把握手段35による周囲の状況の検出に基づき運転制御手段23が掃除開始可否を判断する。つまり、本実施形態の掃除機1は、自動的又は半自動的に掃除を実施可能である。このとき、本実施形態では、運転音の上限が低いほど環境把握手段35の検出に基づく運転制御手段23での掃除開始可否の判断閾値を低く設定し、より高い頻度で掃除を開始させる。
第4の実施形態の制御を図10のフローチャートを参照して説明する。
掃除機1は、ステップS23で環境把握手段35により周囲の状況を把握し、把握した周囲の状況に基づき、ステップS24で運転制御手段23での掃除開始可否の判断閾値を設定する。次いで、運転制御手段23は、ステップS24により設定された判断閾値に基づき、ステップS25で掃除を開始するか否かを判断する。ステップS25において、掃除を開始しないと判断した場合には、ステップS23に戻る。また、ステップS25において、掃除を開始すると判断した場合には、上記第1の実施形態のステップS7へと進む。ステップS7以降の制御は、上記各実施形態と同様でもよいし、ステップS9の制御のみとしてもよい。
このように、運転制御手段23が、環境把握手段35により把握された周囲の状況を加味することで掃除の頻度を変更することにより、運転音の上限が相対的に低く設定されたときに、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力が相対的に小さく設定されて掃除能力が低下する分、掃除の頻度を上げて掃除能力の低下を相殺するため、運転音を所望のレベルに設定しつつ、十分な掃除が可能になる。
また、環境把握手段35によりユーザの外出や帰宅を把握する場合には、ユーザが外出している間に掃除を開始し、帰宅してきた場合には掃除を終了又は中断するように運転制御手段23による掃除の開始又は終了の可否の判断閾値を変更してもよい。
例えば、ユーザがスケジューラ等に自己の外出時刻や帰宅時刻等を登録している場合には、環境把握手段35がスケジューラ等によりユーザの予定を確認できるようにしてもよい。この場合には、環境把握手段35により把握したユーザの予定に応じて、運転制御手段23による掃除の開始又は終了の可否の判断閾値を、ユーザが帰宅するまでの間に掃除を開始・終了させるように変更してもよいし、ユーザが短時間不在の場合には設定された運転音の上限に拘らず大きな駆動力で走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16を駆動させてもよい。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について、図11を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態では、運転制御手段23が、掃除の頻度を変更するにあたり、環境把握手段35により把握された周囲の状況と入力設定された掃除目標に対する達成度とを加味するものである。
本実施形態では、掃除機1、又は、スマートフォン等の外部装置が、掃除目標を入力する目標入力手段と、掃除目標に対する掃除の達成度を記録する達成度記録手段とを備え、掃除領域の地図情報と走行履歴とが、メモリ25や外部装置のストレージ、あるいはネットワーク上のサーバ等のストレージ等に記憶されている。
そして、達成度記録手段に記録された達成度に応じて、運転制御手段23による掃除開始可否の判断閾値、あるいは設定された運転音の上限を増減させることにより、掃除が不足している状況ではより積極的に、又は、より掃除効率を上げた状態で掃除を実施させる。
目標入力手段は、ユーザが所望する掃除目標を入力するものである。本実施形態の掃除目標とは、例えば「一週間に一度」、「二週間に一度」等、掃除を実施する頻度として定義される。目標入力手段は、掃除目標を入力するためのプルダウンメニュー等のインターフェースを有することが好ましい。
達成度記録手段は、走行履歴と掃除終了条件との比較から達成度を算出するものである。本実施形態の達成度とは、設定された掃除領域のカバー率に対する実際の掃除のカバー率の比率である。掃除終了条件がカバー率500%に設定されていて、実際の掃除が終了したときのカバー率が320%である場合に、達成度は64%(=(320/500)×100%)となる。
そして、本実施形態では、定められた掃除目標の期限までに達成度の残り分(上記の例の場合には36%)の掃除をするように、運転制御手段23の掃除開始可否の判断閾値を変更する。このとき、掃除目標の期限までの残り時間が長い場合には、運転制御手段23が掃除を開始の可否の判断閾値を相対的に大きく設定することにより、掃除運転時間を長く取れる、あるいは運転音の上限が高く設定された状況で掃除を開始する。一方、掃除目標の期間までの残り時間が短い場合には、運転制御手段23が掃除開始可否の判断閾値を相対的に小さく設定することにより、掃除運転時間を長く取れない、あるいは運転音の上限が低い状況でも積極的に掃除を開始する。
なお、残りの掃除に要する時間は、運転音の上限に基づき見積もることが可能である。運転音の上限が変更された場合、設定された走行用モータ6の駆動力や掃除終了条件の数値に基づき算出される掃除効率から掃除に要する時間を算出できる。この算出した時間も、運転制御手段23が掃除開始可否を判断するための材料となる。
本実施形態の制御を図11に示すフローチャートを参照して具体的に説明すると、上記第4の実施形態のステップS23に続いて、ステップS26において、ユーザが目標入力手段により掃除目標を入力し、ステップS27において、設定された掃除目標に対して達成度記録手段により達成度を算出し、ステップS24において、環境把握手段35により把握された周囲の状況にステップS27で算出された達成度を加味して、運転制御手段23での掃除開始可否の判断閾値を設定する。
このように、運転制御手段23が、環境把握手段35により把握された周囲の状況と掃除目標に対する達成度とを加味することで掃除の頻度を変更することにより、運転音の上限が相対的に低く設定されたときに、電動送風機12、清掃体用モータ16の駆動力が相対的に小さく設定されて掃除能力が低下する分、掃除の頻度を上げて掃除能力の低下を相殺するため、運転音を所望のレベルに設定しつつ、十分な掃除が可能になるとともに、掃除目標に応じた掃除運転時間で効率よく掃除を実施することができる。
なお、上記各実施形態において、運転音の上限を設定する対象としては、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16のうち、2つ、又は1つのみでもよい。つまり、運転音の大きさに支配的に影響を与えるモータのみを運転音の上限を設定する対象としてもよい。
また、走行用モータ6、電動送風機12、清掃体用モータ16の他に、掃除時に駆動されるモータであれば、上記の各実施形態と同様の運転音の上限を設定する対象とすることもできる。例えば、サイドブラシ等の補助清掃部を掃除機1が備える場合、補助清掃部を動作させるモータ等も上記の各実施形態と同様の運転音の上限を設定する対象としてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。