JP7016392B2 - セパレータおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
電解液の代わりに固体電解質を用いることで、正極材、電解質および負極材をすべて固体とした全固体電池は、可燃性の電解液が不要になり安全性が飛躍的に向上した技術として提案されている。
一方で、化学的に安定な結晶性酸化物系固体電解質は、大気暴露においても有害な物質の発生は無く安定な物質であるが、脆性材料であり加工性に乏しく、固体電解質だけからなる単一層の薄膜シートの形成は困難であった。固体電解質層の膜厚を薄くすることはリチウムイオン伝導性が高まり、多くの電極活物質を電池内に収納できるようになることから、電池特性、電気容量の観点から固体電解質層の薄膜化が求められていた。
本発明はこのような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、本発明の目的は、リチウムイオン電池に用いる加工性の優れた結晶性酸化物系無機固体電解質を用いたセパレータを提供することにある。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]
平均粒径が5~100μmの結晶性酸化物系無機固体電解質粒子が、基材に一層に担持されてなるセパレータであって、
前記セパレータの両面で前記固体電解質粒子が露出しており、
前記固体電解質粒子の露出率は前記セパレータの両面それぞれ10~100%であり、
前記基材が不織布であることを特徴とするセパレータ。
[2]
前記固体電解質粒子の径は前記基材の厚みよりも大きい、[1]に記載のセパレータ。
[3]
前記固体電解質粒子の露出率が35~100%である、[1]または[2]に記載のセパレータ。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のセパレータの製造方法であって、
平均粒径が5~100μmの結晶性酸化物系無機固体電解質粒子を支持体上に一層に配列させた後、該固体電解貿粒子上に基材を積層し、該固体電解買粒子と該基材とを一体化させることを特徴とする、セパレータの製造方法。
[5]
前記固体電解質粒子を、粘着層を有する支持体の上に載せ、該粘着層に固定していない粒子を除去することで、前記支持体上に一層に配列させる、[4]に記載のセパレータの製造方法。
なお、以下の説明では、「結晶性酸化物系無機固体電解質粒子」を「固体電解質粒子」あるいは単に「粒子」等と記す場合もある。
図1は、本実施形態におけるセパレータの概略的に示す断面図である。
本発明のセパレータ100は、平均粒径が5~100μmの結晶性酸化物系無機固体電解質粒子110が、基材120に一層に担持されてなることを特徴とする。
基材としては、電子伝導性が無く電池用のセパレータとして用いられている公知の材料がいずれも使用できるが、多孔質膜であることが好ましい。例えば不織布やポリオレフィン多孔質膜が挙げられる。
繊維の径としては0.1μm~5.0μmのものが用いられ、好ましくは繊維径が0.2~3.0μmのものが用いられ、最も好ましくは0.25~2.5μmのものが用いられる。繊維径0.1μm以上とすることで強度を保つことができ、加工時の電池の短絡を防ぐことができる。繊維径を5.0μm以下とすることで膜の両面の粒子の露出を高く確保できるようになり、セパレータのリチウムイオン伝導性を十分確保できるようになる。繊維径0.1μm~5.0μmの不織布が用いられていれば、膜の性状を維持するために繊維径5.0μm~30μmの不織布と組み合わせることもできる。5.0~30μmの組み合わせ比率は繊維径0.1~5.0μmの不織布に対して重量比で0~80%の比率で用いることができる。
不織布の目付は2~30g/m2で用いられ、好ましくは4~20/m2で用いられ、最も好ましくは5~15/m2で用いられる。不織布の目付を2g/m2以上とすることで膜の十分な強度が得られ、電池作製時、作動時の短絡を防ぐことができる。目付を30g/m2以下とすることで粒子の表面露出が増え、高いイオン伝導性を確保できるようになる。
不織布の製造方法としては一般的な不織布成膜装置を用いることができ、メルトブローン成膜装置、スパンデックス成膜装置を用いることができる。
ポリオレフィン微多孔膜の一体化する前の厚さは好ましくは0.5~50μmであり、より好ましくは1~30μmであり、さらに好ましくは1~10μmである。
基材の気孔率は好ましくは0.1~99.9%の範囲で用いられる。電池内部に電解液およびゲル電解質を満たして用いる場合には、高いイオン伝導性が得られるため、より高い気孔率が好ましく、30~99.9%の範囲で用いられ、50~99.9%がより好ましく用いられ、さらに好ましくは70~99.9%が用いられる。正極および負極の間に固体電解質を介在させて用いる場合には、粒子の表面が正極側および負極側の両面に露出していれば用いることができ、デンドライト成長などの問題が生じる場合は低い気孔率が好ましく0.1~70%の範囲で用いられる。さらに好ましくは0.1~50%の範囲で用いられ、最も好ましくは0.1~30%の範囲で用いることができる。気孔率の値は、一定の大きさの基材試料を切り出し、その体積(cm3)と質量(g)および基材の膜密度(g/cm3)から下記式を用いて算出された値である。
気孔率(%)=(1-質量/体積/膜密度)×100
以下の説明では、基材として不織布を用いた場合を例に挙げて説明する。
なお、セパレータの両面で粒子が露出していることが好ましい。すなわち、結晶性酸化物系無機固体電解質粒子の径は、基材の厚みよりも大きいことが好ましい。
相対密度(%)=(試料実測密度/理論密度)×100
により求められる。相対密度を80%以上とすることで、結晶粒子中の粒界に由来する抵抗やボイドに由来する抵抗が低減して、粒子自身のリチウムイオン伝導性が向上する。100%以下とすることで、粒子の粒界やボイドを低減させるための高い温度での加熱、高い圧力での圧縮になどの煩雑な操作の負荷を減らすことができる。
また、結晶性酸化物系無機固体電解質粒子を支持体上に一層に配列させた後、支持体上に溶融状態の不織布原料を供給することにより、不織布と粒子とを一体化することもできる。
上記、リチウムイオン伝導度は一般的な交流インピーダンス法で測定することができる。
図2は、本実施形態のセパレータが適用されるリチウムイオン電池の一例を示す概略断面図である。図2に示されるリチウムイオン二次電池200は、セパレータ100を両側から挟む正極210と負極220と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体230(正極の外側に配置)と、負極集電体240(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装250とを備える。電池外装250の内部は電解液で満たされている、あるいは、セパレータ100と正極210および負極220との間に固体電解質が介在されている。可燃性の高い電解液が満たされず固体電解質のみが介在する形態が好ましく用いられる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
[実施例1]
<不織布の製作>
不織布はメルトブローン法により製作した。
目付:10g/m2
繊維径:0.29μm
材質:ポリプロピレン
<粒子の配列>
結晶性酸化物系無機粒子として豊島製作所製NASICON型酸化物であるLi1.3Ti1.7(PO4)3(LATP)を用い、成膜した。6cm×6cm×0.2mm厚みのステンレス基板の表面に、耐熱グリースを中心部2cm×2cmの領域に薄く塗布した。この基板上に、あらかじめ38~45μmの目開きでふるい分けにより分級したLATP粒子を載せ、ステンレス基板ごと反転させることで、基板上に固定化されていない余剰粒子を除去した。さらに、グリースを塗布した基板上にLATP粒子を載せ、反転させることで余剰粒子を除去する操作を数回繰り返し、単粒子が配列した状態とした。
粒子が一層で配列した基板上に、上記3cm×3cmの不織布を、粒子が配列した部分を覆うように載せ、その上に6cm×6cm×0.2mm厚みのステンレス板を載せ100g/cm2の加圧条件で加圧し、ホットプレート上で190℃、30分加熱した。不織布の一部が溶融して粒子と一体化した膜状となった。膜のグリースの付着した面はヘキサンで洗浄し、グリースを除去した。
得られた膜のSEM観察
SEM観察
装置:KEYENCE社製 VE-9800
加速電圧:1.2KV
スポット径:6(装置の設定値)
真空度:3Pa
検出器:二次電子検出器
不織布と粒子の一体化した膜の一部を切り出し試料とした。導電性両面テープを用いて試料を試料台に固定し、非蒸着の条件下、200倍の倍率にて粒子を配列させた面および不織布を載せた面を観察した。
装置付属のソフトウエアで粒子が占める面積を算出し、全体の面積で割ることで単粒子膜の粒子の占める割合を算出し、粒子の被覆率とした。視野を変えて同様の計算を3回繰り返し、平均を算出した。
粒子配列面 粒子面被覆率 75% 粒子表面露出率 100%
不織布一体化面 粒子面被覆率 75% 粒子表面露出率 35%
膜厚をMitutoyo 457-401型厚み計で測定したところ、48μmであった。
得られた粒子と不織布の一体化膜のイオン伝導度の測定を行った。一体化膜の両面に下記条件で金を蒸着した。
装置:マグネトロンスパッタ装置
放電電流:15mA
放電時間:3分
コート範囲:5mmφ
電気抵抗率の測定は下記装置、下記測定条件で実施した。
装置:LCRメーター
測定周波数:120MHz~100Hz
電気抵抗率は2.0kΩ・cmであった。
下記の不織布を使用したこと以外は同じ操作を行い、電気抵抗率を測定したところ、20kΩ・cmであった。
総目付:7.5g/m2
繊維径:0.6μm 46wt% 1.2μm 54wt%
材質:ポリプロピレン
結晶性酸化物系無機固体電解質として、豊島製作所製Li6.25Al0.25La3Zr2O12(LLZO)のプレートを粉砕し、38~45μmの目開きでふるい分けにより分級した粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で電気抵抗率を測定したところ、2.5kΩ・cmであった。
実施例1において余剰粒子を除去せず不織布を載せ、加熱操作を行ったところ、粒子が複数層形成された状態となり、膜厚は90μmとなった。実施例1と同様の評価を行ったところ短絡が生じた。
4cm×4cm不織布を6cm×6cmの基板の上に載せ、実施例1と同様の方法で加熱し不織布が溶融した状態で、実施例1と同様の粒子を上に載せて余剰分を除去し粒子と不織布が一体化した膜を得た。実施例1と同様な評価を実施したところ、3000kΩ・cmであった。
実施例1において目開き5μm以下の粒子を分級して用いたこと以外は同様の操作を行い、電気抵抗率を測定したところ、短絡が生じた。
各実施例および比較例の評価結果を表1にまとめて示す。
110 結晶性酸化物系無機固体電解質粒子
120 基材
200 リチウムイオン二次電池
210 正極
220 負極
230 正極集電体
240 負極集電体
250 電池外装
Claims (5)
- 平均粒径が5~100μmの結晶性酸化物系無機固体電解質粒子が、基材に一層に担持されてなるセパレータであって、
前記セパレータの両面で前記固体電解質粒子が露出しており、
前記固体電解質粒子の露出率は前記セパレータの両面それぞれ10~100%であり、前記基材が不織布であることを特徴とするセパレータ。 - 前記固体電解質粒子の径は前記基材の厚みよりも大きい、請求項1に記載のセパレータ。
- 前記固体電解質粒子の露出率が35~100%である、請求項1または2に記載のセパレータ。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法であって、
平均粒径が5~100μmの結晶性酸化物系無機固体電解質粒子を支持体上に一層に配列させた後、該固体電解貿粒子上に基材を積層し、該固体電解買粒子と該基材とを一体化させることを特徴とする、セパレータの製造方法。 - 前記固体電解質粒子を、粘着層を有する支持体の上に載せ、該粘着層に固定していない粒子を除去することで、前記支持体上に一層に配列させる、請求項4に記載のセパレータの製造方法。
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