以下、添付図面に従って本開示の技術に係る磁気テープ読取装置の実施形態の一例について説明する。
一例として図1に示すように、磁気テープ読取装置10は、磁気テープカートリッジ12、搬送装置14、読取ヘッド16、及び制御装置18を備えている。
磁気テープ読取装置10は、磁気テープカートリッジ12から磁気テープMTを引き出し、引き出した磁気テープMTから読取ヘッド16を用いてデータをリニアスキャン方式で読み取る装置である。なお、本開示の実施形態において、データの読み取りとは、換言すると、データの再生を指す。
制御装置18は、磁気テープ読取装置10の全体を制御する。本開示の実施形態において、制御装置18は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置18は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)によって実現されるようにしてもよい。また、制御装置18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含むコンピュータによって実現されるようにしてもよい。また、AISC、FPGA、及びコンピュータのうちの2つ以上を組み合わせて実現されるようにしてもよい。
搬送装置14は、磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に搬送する装置であり、送出モータ20、巻取リール22、巻取モータ24、複数のガイドローラGR、及び制御装置18を備えている。
磁気テープカートリッジ12内には、カートリッジリールCRが設けられている。カートリッジリールCRには磁気テープMTが巻き掛けられている。送出モータ20は、制御装置18の制御下で、磁気テープカートリッジ12内のカートリッジリールCRを回転駆動させる。制御装置18は、送出モータ20を制御することで、カートリッジリールCRの回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
磁気テープMTが巻取リール22によって巻き取られる場合には、制御装置18によって、磁気テープMTを順方向に走行させるように送出モータ20を回転させる。送出モータ20の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール22によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
巻取モータ24は、制御装置18の制御下で、巻取リール22を回転駆動させる。制御装置18は、巻取モータ24を制御することで、巻取リール22の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
磁気テープMTが巻取リール22によって巻き取られる場合には、制御装置18によって、磁気テープMTを順方向に走行させるように巻取モータ24を回転させる。巻取モータ24の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール22によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
このようにして送出モータ20及び巻取モータ24の各々の回転速度及び回転トルク等が調整されることで、磁気テープMTに既定範囲内の張力が付与される。ここで、既定範囲内とは、例えば、磁気テープMTから読取ヘッド16によってデータが読取可能な張力の範囲として、コンピュータ・シミュレーション及び/又は実機による試験等により得られた張力の範囲を指す。
なお、磁気テープMTをカートリッジリールCRに巻き戻す場合には、制御装置18によって、磁気テープMTを逆方向に走行させるように送出モータ20及び巻取モータ24を回転させる。
本開示の実施形態では、送出モータ20及び巻取モータ24の回転速度及び回転トルク等が制御されることにより磁気テープMTの張力が制御されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープMTの張力は、ダンサローラを用いて制御されてもよいし、バキュームチャンバに磁気テープMTを引き込むことによって制御されるようにしてもよい。
複数のガイドローラGRの各々は、磁気テープMTを案内するローラである。磁気テープMTの走行経路は、複数のガイドローラGRが磁気テープカートリッジ12と巻取リール22との間において読取ヘッド16を跨ぐ位置に分けて配置されることによって定められている。
読取ヘッド16は、読取部26及びホルダ28を備えている。読取部26は、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ28によって保持されている。
一例として図2に示すように、磁気テープMTは、トラック領域30及びサーボパターン32を備えている。サーボパターン32は、磁気テープMTに対する読取ヘッド16の位置の検出に用いられるパターンである。サーボパターン32は、テープ幅方向の両端部に、第1既定角度(例えば、95度)の第1斜線32Aと、第2既定角度(例えば、85度)の第2斜線32Bとが磁気テープMTの走行方向に沿って一定のピッチで交互に配置されたパターンである。なお、ここで言う「テープ幅方向」とは、磁気テープMTの幅方向を指す。
トラック領域30は、読取対象とされるデータが書き込まれた領域であり、磁気テープMTのテープ幅方向の中央部に形成されている。ここで言う「テープ幅方向の中央部」とは、例えば、磁気テープMTのテープ幅方向の一端部のサーボパターン32と他端部のサーボパターン32との間の領域を指す。なお、以下では、説明の便宜上、「磁気テープMTの走行方向」を単に「走行方向」と称する。
読取部26は、サーボ素子対36及び複数の読取素子ユニット38を備えている。ホルダ28は、テープ幅方向に長尺状に形成されており、ホルダ28の長手方向の全長は、磁気テープMTの幅よりも長い。サーボ素子対36は、ホルダ28の長手方向の両端部に配置されており、複数の読取素子ユニット38は、ホルダ28の長手方向の中央部に配置されている。
サーボ素子対36は、サーボ素子36A,36Bを備えている。サーボ素子36Aは、磁気テープMTのテープ幅方向の一端部のサーボパターン32に対向する位置に配置されており、サーボ素子36Bは、磁気テープMTのテープ幅方向の他端部のサーボパターン32に対向する位置に配置されている。
ホルダ28において、サーボ素子36Aとサーボ素子36Bとの間には、複数の読取素子ユニット38がテープ幅方向に沿って配置されている。トラック領域30は、複数のトラックをテープ幅方向に等間隔に備えており、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、複数の読取素子ユニット38の各々がトラック領域30内の各トラックに対向して配置されている。
よって、読取部26と磁気テープMTとが磁気テープMTの長尺方向に沿って直線状に相対移動することで、トラック領域30内の各トラックのデータは、複数の読取素子ユニット38のうちの位置が対応する読取素子ユニット38の各々によってリニアスキャン方式で読み取られる。また、リニアスキャン方式では、読取素子ユニット38の読取動作と同期して、サーボ素子対36によってサーボパターン32が読み取られる。すなわち、本開示の実施形態に係るリニアスキャン方式では、複数の読取素子ユニット38とサーボ素子対36によって磁気テープMTに対する読み取りが並行して行われる。
なお、ここで、上記の「トラック領域30内の各トラック」とは、本開示の技術に係る「磁気テープに含まれるトラック領域のうちの読取対象トラックを各々含む複数の特定トラック領域の各々」に含まれるトラックを指す。
なお、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態とは、磁気テープMTが変形することなく、かつ、磁気テープMTと読取ヘッド16との位置関係が正しい位置関係にある状態を指す。ここで、正しい位置関係とは、例えば、磁気テープMTのテープ幅方向の中心と読取ヘッド16の長手方向の中心とが一致する位置関係を指す。
複数の読取素子ユニット38の各々は同じ構成なので、以下では、説明の便宜上、複数の読取素子ユニット38のうちの1つを例に挙げて説明する。一例として図3に示すように、読取素子ユニット38は、一対の読取素子を備えている。図3に示す例において、一対の読取素子とは、第1読取素子40及び第2読取素子42を指す。第1読取素子40及び第2読取素子42の各々は、トラック領域30のうち読取対象トラック30Aを含む特定トラック領域31からデータを読み取る。
なお、図3に示す例では、説明の便宜上、1つの特定トラック領域31を示しているが、実際、トラック領域30には、複数の特定トラック領域31が存在しており、各々の特定トラック領域31に読取対象トラック30Aが含まれている。そして、複数の特定トラック領域31の各々に対して読取素子ユニット38が1つずつ割り当てられている。具体的には、複数の特定トラック領域31の各々の読取対象トラック30Aに対して読取素子ユニット38が1つずつ割り当てられている。
特定トラック領域31とは、隣接する3つのトラックを指す。隣接する3つのトラックのうちの1つ目のトラックは、トラック領域30のうちの読取対象トラック30Aである。隣接する3つのトラックのうちの2つ目のトラックは、読取対象トラック30Aに隣接する隣接トラックの1つである第1のノイズ混入源トラック30Bである。隣接する3つのトラックのうちの3つ目のトラックは、読取対象トラック30Aに隣接する隣接トラックの1つである第2のノイズ混入源トラック30Cである。読取対象トラック30Aは、トラック領域30において読取素子ユニット38に対向する位置のトラックである。すなわち、読取対象トラック30Aとは、換言すると、読取素子ユニット38によるデータの読取対象とされたトラックを指す。
第1のノイズ混入源トラック30Bは、読取対象トラック30Aに対してテープ幅方向の一側方に隣接しており、読取対象トラック30Aから読み取られたデータに混入するノイズの混入源となるトラックである。第2のノイズ混入源トラック30Cは、読取対象トラック30Aに対してテープ幅方向の他側方に隣接しており、読取対象トラック30Aから読み取られたデータに混入するノイズの混入源となるトラックである。なお、以下では、説明の便宜上、第1のノイズ混入源トラック30Bと第2のノイズ混入源トラック30Cとを区別して説明する必要がない場合、符号を付さずに「隣接トラック」と称する。
なお、本開示の実施形態では、トラック領域30内において、テープ幅方向に一定の間隔で複数の特定トラック領域31が配置されている。例えば、トラック領域30内において、テープ幅方向に一定の間隔で32個の特定トラック領域31が配置されており、各特定トラック領域31に対して読取素子ユニット38が1つずつ割り当てられている。
第1読取素子40と第2読取素子42とは、走行方向で近接した状態で、かつ、走行方向で一部が重なる位置に配置されている。磁気テープ読取装置10のデフォルトの状態で、第1読取素子40は、読取対象トラック30Aと第1のノイズ混入源トラック30Bとを跨ぐ位置に配置されている。磁気テープ読取装置10のデフォルトの状態で、第2読取素子42は、読取対象トラック30Aと第1のノイズ混入源トラック30Bとを跨ぐ位置に配置されている。
磁気テープ読取装置10のデフォルトの状態で、平面視において、第1読取素子40のうちの読取対象トラック30Aと対向している部分の面積は、第1読取素子40のうちの第1のノイズ混入源トラック30Bと対向している部分の面積よりも大きい。一方、磁気テープ読取装置10のデフォルトの状態で、平面視において、第2読取素子42のうちの第1のノイズ混入源トラック30Bと対向している部分の面積は、第1読取素子40のうちの読取対象トラック30Aと対向している部分の面積よりも大きい。
第1読取素子40によって読み取られたデータに対しては後述の第1等化器70(図7参照)によって波形等化処理が施される。第2読取素子42によって読み取られたデータに対しては後述の第2等化器72(図7参照)によって波形等化処理が施される。第1等化器70及び第2等化器72の各々によって波形等化処理が施されて得られた各データは加算器44によって加算されることで合成される。
なお、本開示の実施形態では、読取素子ユニット38が第1読取素子40及び第2読取素子42を有する形態例を挙げて説明しているが、例えば、一対の読取素子のうちの1つの読取素子のみ(以下、単一読取素子とも称する)を用いても、読取素子ユニット38から得られる再生信号に相当する信号が得られる。
この場合、例えば、一例として図8に示すように、単一読取素子から得られる再生信号を、再生信号と同期してサーボ素子対36によって取得されたサーボ信号から算出されるトラック上の平面位置に割り当てる。そして、これをテープ幅方向に単一読取素子を移動させながら繰り返すことで、再生信号の2次元像(以下、単に「2次元像」と称する)を得る。ここで、2次元像、又は、2次元像の一部を構成する再生信号(例えば、複数のトラックの位置に相当する再生信号)は、読取素子ユニット38から得られる再生信号に相当する信号である。
図16には、ループ状にした磁気テープMT(以下、「ループテープ」とも称する)を、ループテスタを用いて得た再生信号の2次元像の一例が示されている。ここで、ループテスタとは、例えば、ループテープを単一読取素子に対して繰り返し接触させた状態で搬送させる装置を指す。ループテスタと同様に2次元像を得るためには、リールテスタを用いても良いし、実際のテープドライブを用いてもよい。なお、ここで言う「リールテスタ」とは、例えば、磁気テープMTをリール形態で搬送させる装置を指す。
このように、近接した位置に複数の読取素子を搭載した読取素子ユニットを有しない従来型の磁気テープ用ヘッドを用いたとしても、本開示の技術に係る効果を定量的に評価することが可能となる。なお、本開示の技術に係る効果を定量的に評価するための指標の一例として、SNR(Signal-to-Noise Ratio)、及びエラーレート等が挙げられる。
図4~図6には、本発明者等が実験して得られた結果が示されている。一例として図4に示すように、トラック領域49上には読取素子対50が配置されている。トラック領域49は、テープ幅方向に隣接する第1トラック49A、第2トラック49B、及び第3トラック49Cである。読取素子対50は、第1読取素子50A及び第2読取素子50Bである。第1読取素子50Aと第2読取素子50Bとは、テープ幅方向で近接する位置に配置されている。また、第1読取素子50Aは、読取対象トラックである第2トラック49Bに対向し、かつ、第2トラック49Bに収まるように配置されている。また、第2読取素子50Bは、第2トラック49Bの一側方に隣接する第1トラック49Aに対向し、かつ、第1トラック49Aに収まるように配置されている。
図5には、単一読取素子データと第1条件下での第1合成データとの各々に関するSNR(Signal-to-Noise Ratio)とトラックオフセットとの相関の一例が示されている。また、図6には、単一読取素子データと第2条件下での第2合成データとの各々に関するSNRとトラックオフセットとの相関の一例が示されている。
ここで、単一読取素子データとは、図3に示す第1読取素子40と同様に、第1読取素子50Aによって読み取られたデータに対して波形等化処理が施されて得られたデータを指す。第1条件とは、読取素子ピッチが700nm(ナノメートル)との条件を指す。第2条件とは、読取素子ピッチが500nmとの条件を指す。読取素子ピッチとは、一例として図4に示すように、第1読取素子50Aと第2読取素子50Bとのテープ幅方向のピッチを指す。トラックオフセットとは、一例として図4に示すように、第2トラック49Bのテープ幅方向の中心と第1読取素子50Aのトラック幅方向の中心とのずれ量を指す。
第1合成データとは、第1条件下で各々得られた第1波形等化処理済みデータと第2波形等化処理済みデータとが加算されることで合成されたデータを指す。第1波形等化処理済みデータとは、図3に示す第1読取素子40と同様に、第1読取素子50Aによって読み取られたデータに対して波形等化処理が施されて得られたデータを指す。第2波形等化処理済みデータとは、図3に示す第2読取素子42と同様に、第2読取素子50Bによって読み取られたデータに対して波形等化処理が施されて得られたデータを指す。第2合成データとは、第2条件下で各々得られた第1波形等化処理済みデータと第2波形等化処理済みデータとが加算されることで合成されたデータを指す。
図5に示す第1合成データのSNRと図6に示す第2合成データのSNRとを比較すると、第1合成データのSNRは、トラックオフセットが-0.4μm(マイクロメートル)~0.2μm辺りで急激に下落してグラフの途中で溝が生じているのに対し、第2合成データのSNRは、第1合成データのSNRのグラフのように途中で急激に下落することはない。第1合成データのSNR及び第2合成データのSNRの各々は、単一読取素子データのSNRよりも高く、特に、第2合成データのSNRは、トラックオフセットの全範囲において、単一読取素子データのSNRよりも高い。
本発明者等は、図5及び図6に示す実験結果から、第1読取素子50Aのみによりデータの読み取りが行われる場合に比べ、第1読取素子50Aと第2読取素子50Bとをテープ幅方向に近接させた状態でデータの読み取りを行わせることが好ましいことを知見した。ここで言う「近接させた状態」とは、例えば、第1読取素子50Aと第2読取素子50Bとが、接触することなく、トラックオフセットの全範囲において、単一読取素子データのSNRよりもSNRが高くなるようにテープ幅方向に並べて配置された状態を指す。
本開示の実施形態では、一例として図3に示すように、読取素子ユニット38において、第1読取素子40と第2読取素子42とが走行方向に対して互いの一部がオーバーラップさせることで磁気テープMTに含まれるトラックの高密度化を実現している。
一例として図7に示すように、磁気テープ読取装置10は、アクチュエータ60、抽出部62、A/D(Analog/Digital)変換器64,66,68、復号部69、及びコンピュータ73を備えている。
制御装置18は、サーボ素子対36に対してA/D変換器68を介して接続されている。A/D変換器68は、サーボ素子対36に含まれるサーボ素子36A,36Bによってサーボパターン32が読み取られて得られたアナログ信号をデジタル信号に変換することで得たサーボ信号を制御装置18に出力する。
制御装置18は、アクチュエータ60に接続されている。アクチュエータ60は、読取ヘッド16に取り付けられており、制御装置18の制御下で、動力を読取ヘッド16に付与することにより、読取ヘッド16をテープ幅方向に変動させる。アクチュエータ60は、例えば、ボイスコイルモータを含んでおり、読取ヘッド16に付与される動力は、磁石のエネルギーを媒体として、コイルに流れる電流に基づく電気エネルギーが運動エネルギーに変換されることによって得られる動力である。
なお、ここでは、アクチュエータ60にボイスコイルモータが搭載されている形態例を挙げているが、本開示の技術はこれに限定されず、例えば、ボイスコイルモータに代えて圧電素子を採用することも可能である。また、ボイスコイルモータ及び圧電素子を併用することも可能である。
磁気テープMTと読取素子ユニット38との位置のずれ量は、サーボパターン32をサーボ素子対36が読み取って得た結果であるサーボ信号に応じて定められる。制御装置18は、アクチュエータ60を制御することで、磁気テープMTと読取素子ユニット38との位置のずれ量に応じた動力を読取ヘッド16に付与することにより、読取ヘッド16をテープ幅方向に変動させ、読取ヘッド16の位置を正常な位置に調整する。ここで、正常な位置とは、例えば、図3に示すように、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態での読取ヘッド16の位置を指す。
なお、ここでは、磁気テープMTと読取素子ユニット38との位置のずれ量を例示しているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、サーボ素子36Aと磁気テープMTの予め定められた基準位置とのずれ量を採用してもよいし、読取ヘッド16の端面と磁気テープMTに含まれる特定のトラックの中心位置とのずれ量を採用してもよい。このように、読取対象トラック30Aのテープ幅方向の中心と読取ヘッド16のテープ幅方向の中心とのずれ量に相当するずれ量であればよい。なお、以下では、説明の便宜上、磁気テープMTと読取素子ユニット38との位置のずれ量を単に「ずれ量」と称する。
ずれ量は、例えば、図8に示すように、距離Bに対する距離Aの割合に基づいて算出される。距離Aとは、隣接する第1斜線32Aと第2斜線32Bとがサーボ素子36Aによって読み取られることで得た結果から算出された距離を指す。距離Bとは、隣接する2つの第1斜線32Aがサーボ素子36Aによって読み取られることで得た結果から算出された距離を指す。
抽出部62は、制御装置18及び2次元FIR(Finite Impulse Response)フィルタ71を備えている。2次元FIRフィルタ71は、加算器44、第1等化器70、及び第2等化器72を備えている。
第1等化器70は、A/D変換器64を介して第1読取素子40に接続されている。また、第1等化器70は、制御装置18及び加算器44の各々に接続されている。第1読取素子40によって特定トラック領域31から読み取られたデータはアナログ信号であり、A/D変換器64は、第1読取素子40によって特定トラック領域31から読み取られたデータをデジタル信号に変換することで得た第1読取信号を第1等化器70に出力する。
第2等化器72は、A/D変換器66を介して第2読取素子42に接続されている。また、第2等化器72は、制御装置18及び加算器44の各々に接続されている。第2読取素子42によって特定トラック領域31から読み取られたデータはアナログ信号であり、A/D変換器66は、第2読取素子42によって特定トラック領域31から読み取られたデータをデジタル信号に変換することで得た第2読取信号を第2等化器72に出力する。なお、第1読取信号及び第2読取信号は、本開示の技術に係る「読取素子毎の読取結果」の一例である。
第1等化器70は、入力された第1読取信号に対して、波形等化処理を施す。すなわち、第1等化器70は、入力された第1読取信号に対して、タップ係数を畳み込み演算し、演算処理後の信号である第1の演算処理済み信号を出力する。
第2等化器72は、入力された第2読取信号に対して、波形等化処理を施す。すなわち、第2等化器72は、入力された第2読取信号に対して、タップ係数を畳み込み演算し、演算処理後の信号である第2の演算処理済み信号を出力する。
第1等化器70及び第2等化器72の各々は、第1の演算処理済み信号及び第2の演算処理済み信号を加算器44に出力する。加算器44は、第1等化器70から入力された第1の演算処理済み信号と、第2等化器72から入力された第2の演算処理済み信号とを加算することで合成し、合成して得た合成データを復号部69に出力する。
第1等化器70及び第2等化器72の各々は、1次元FIRフィルタである。
なお、本開示の実施形態において、FIRフィルタ自体は、正負を含む実数値の系列であり、系列の行数はタップ数と称され、数値自体はタップ係数と称される。また、本開示の実施形態において、波形等化とは、読取信号に対して、上記の実数値の系列、すなわち、タップ係数を畳み込み演算(積和算)する処理を指す。なお、ここで言う「読取信号」とは、第1読取信号及び第2読取信号の総称を指す。また、本開示の実施形態において、等化器とは、読取信号又はその他の入力信号に対し、タップ係数を畳み込み演算し、演算処理後の信号を出力する処理を実行する回路を指す。また、本開示の実施形態において、加算器とは、単純に2つの系列を加算する回路を指す。2つの系列の重み付けは、第1等化器70及び第2等化器72で用いられるFIRフィルタの数値、すなわち、タップ係数に反映される。
制御装置18は、第1等化器70及び第2等化器72の各々のFIRフィルタに対して、ずれ量に応じたタップ係数を設定することで、第1等化器70及び第2等化器72の各々に対して、ずれ量に応じた波形等化処理を実行させる。
制御装置18は、対応テーブル18Aを備えている。対応テーブル18Aは、第1等化器70及び第2等化器72の各々について、タップ係数とずれ量とが対応付けられている。タップ係数とずれ量との組み合わせは、例えば、実機による試験及びシミュレーションのうちの少なくとも一方が実施された結果に基づいて、加算器44によって最良の合成データが得られるタップ係数とずれ量との組み合わせとして予め得られた組み合わせである。ここで言う「最良の合成データ」とは、読取対象トラックデータに相当するデータを指す。
ここで、「読取対象トラックデータ」とは、本開示の技術に係る「読取対象トラック30Aに由来するデータ」を指す。「読取対象トラック30Aに由来するデータ」とは、換言すると、読取対象トラック30Aに書き込まれているデータに相当するデータを指す。読取対象トラック30Aに書き込まれているデータに相当するデータの一例としては、読取対象トラック30Aから読み出されたデータであって、隣接トラックからのノイズ成分が混入されていないデータが挙げられる。
なお、ここでは、対応テーブル18Aを例示しているが、本開示の技術はこれに限らず、対応テーブル18Aに代えて演算式を採用してもよい。ここで言う「演算式」とは、例えば、独立変数をずれ量とし、従属変数をタップ係数とした演算式を指す。
本開示の実施形態では、タップ係数とずれ量との組み合わせが規定された対応テーブル18Aからタップ係数が導出される形態例が挙げられているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、タップ係数と比との組み合わせが規定された対応テーブル又は演算式からタップ係数が導出されるようにしてもよい。ここで言う「比」とは、第1読取素子40及び第2読取素子42の各々についての、読取対象トラック30Aとの重複領域と隣接トラックとの重複領域との比を指す。比は、制御装置18により、ずれ量から算出されることで特定され、特定された比に応じて、タップ係数が定められる。
復号部69は、加算器44から入力された合成データを復号し、復号して得た復号信号をコンピュータ73に出力する。コンピュータ73は、復号部69から入力された復号信号に対して各種処理を施す。
次に、磁気テープ読取装置10の本開示の技術に係る部分の作用として、抽出部62によって実行される磁気テープ読取処理について図9を参照して説明する。
なお、以下では、説明の便宜上、サンプリングの時期が到来すると、サーボ信号が制御装置18に入力されることを前提として説明する。ここで、サンプリングとは、サーボ信号のサンプリングに限らず、読取信号のサンプリングも意味する。すなわち、本開示の実施形態では、トラック領域30が走行方向に沿ってサーボパターン32と並行して形成されているので、サーボ素子対36による読取動作に同期して読取素子ユニット38による読取動作が行われる。
図9に示す処理では、先ず、ステップ100で、制御装置18は、サンプリングの時期が到来したか否かを判定する。ステップ100において、サンプリングの時期が到来した場合は、判定が肯定されて、磁気テープ読取処理はステップ102へ移行する。ステップ100において、サンプリングの時期が到来していない場合は、判定が否定されて、ステップ100の判定が再び行われる。
ステップ102で、第1等化器70は、第1読取信号を取得し、第2等化器72は、第2読取信号を取得し、その後、磁気テープ読取処理はステップ104へ移行する。
ステップ104で、制御装置18は、サーボ信号を取得し、取得したサーボ信号からずれ量を算出し、その後、磁気テープ読取処理はステップ106へ移行する。
ステップ106で、制御装置18は、第1等化器70及び第2等化器72の各々の第1~第3タップについて、ステップ104の処理で算出したずれ量に対応するタップ係数を対応テーブル18Aから導出する。すなわち、本ステップ106の処理が実行されることで、第1等化器70の一例である1次元FIRフィルタと第2等化器72の一例である1次元フィルタとの組み合わせとして最適な組み合わせが定められる。ここで言う「最適な組み合わせ」とは、例えば、後述のステップ112の処理が実行されることで出力される合成データを、読取対象トラックデータに相当するデータにする組み合わせを指す。
次のステップ108で、制御装置18は、ステップ106の処理で導出したタップ係数を第1等化器70及び第2等化器72の各々に対して設定し、その後、磁気テープ読取処理はステップ110へ移行する。
ステップ110で、第1等化器70は、ステップ102の処理で取得した第1読取信号に対して波形等化処理を施すことで、第1の演算処理済み信号を生成する。第1等化器70は、生成した第1の演算処理済み信号を加算器44に出力する。第2等化器72は、ステップ102の処理で取得した第2読取信号に対して波形等化処理を施すことで、第2の演算処理済み信号を生成する。第2等化器72は、生成した第2の演算処理済み信号を加算器44に出力する。
次のステップ112で、加算器44は、一例として図10に示すように、第1等化器70から入力された第1の演算処理済み信号と、第2等化器72から入力された第2の演算処理済み信号とを加算することで合成する。そして、加算器44は、合成して得た合成データを復号部69に出力する。
図3に示す例のように読取素子ユニット38が特定トラック領域31上に配置されている場合、本ステップ112の処理が実行されることで、合成データとして、第1のノイズ混入源トラック30Bからのノイズ成分が除去された読取対象トラックデータに相当するデータが出力される。つまり、ステップ102~ステップ112の処理が実行されることで、抽出部62により、読取対象トラック30Aに由来するデータのみが抽出される。
なお、磁気テープMTのテープ幅方向が伸縮したり、磁気テープMT及び読取ヘッド16の少なくとも一方に対して振動が付与されたりした場合に、読取素子ユニット38が、一例として図3に示す位置から図11に示す位置に変位することがある。図11に示す例では、第1読取素子40と第2読取素子42とが、読取対象トラック30Aと第2のノイズ混入源トラック30Cとの双方に対して、共に跨る位置に配置される。この場合、ステップ102~ステップ112の処理が実行されることで、第2のノイズ混入源トラック30Cからのノイズ成分が除去された読取対象トラックデータに相当するデータが合成データとして復号部69に出力される。
次のステップ114で、制御装置18は、磁気テープ読取処理を終了する条件(以下、「終了条件」と称する)を満たしたか否かを判定する。終了条件とは、例えば、磁気テープMTの全てが巻取リール22によって巻き取られたとの条件、及び、磁気テープ読取処理を強制終了する指示が外部から与えられたとの条件等を指す。
ステップ114において、終了条件を満たしていない場合は、判定が否定されて、磁気テープ読取処理はステップ100へ移行する。ステップ114において、終了条件を満たした場合は、判定が肯定されて、磁気テープ読取処理が終了する。
以上説明したように、磁気テープ読取装置10では、近接した状態で配置された第1読取素子40及び第2読取素子42により、特定トラック領域31からデータが各々読み取られる。そして、抽出部62により、第1読取素子40及び第2読取素子42の各々に対して、ずれ量に応じた波形等化処理が施されることで、第1読取信号及び第2読取信号から、読取対象トラック30Aに由来するデータが抽出される。従って、磁気テープ読取装置10は、読取対象トラック30Aからリニアスキャン方式で単一の読取素子のみによってデータが読み取られる場合に比べ、読取対象トラック30Aからリニアスキャン方式で読み取られるデータの信頼性の低下を抑制することができる。
また、磁気テープ読取装置10では、第1読取素子40及び第2読取素子42の互いの一部が走行方向で重なっている。従って、磁気テープ読取装置10は、複数の読取素子の互いの全体が走行方向で重なっている場合に比べ、読取対象トラック30Aからリニアスキャン方式で読み取られるデータの信頼性を高くすることができる。
また、磁気テープ読取装置10では、特定トラック領域31は、読取対象トラック30A、第1のノイズ混入源トラック30B、及び第2のノイズ混入源トラック30Cであり、第1読取素子40及び第2読取素子42の各々は、磁気テープMTとの位置関係が変化した場合に、読取対象トラック30A及び隣接トラックの双方に対して、共に跨っている。従って、磁気テープ読取装置10は、読取対象トラック30Aからリニアスキャン方式で単一の読取素子のみによってデータが読み取られる場合に比べ、テープ幅方向において読取対象トラック30Aから隣接トラックに入り込むことにより第1読取素子40及び第2読取素子42のうちの一方の読取素子で生じるノイズ成分を、テープ幅方向において読取対象トラック30Aから隣接トラックに入り込んでいる他方の読取素子による読取結果を利用して低減することができる。
また、磁気テープ読取装置10では、波形等化処理で用いられるタップ係数はずれ量に応じて定められる。従って、磁気テープ読取装置10は、タップ係数がずれ量とは関連性のないパラメータに応じて定められる場合に比べ、テープ幅方向において隣接トラックから読取対象トラック30Aに入り込むことで生じるノイズ成分を、磁気テープMTと読取素子ユニット38との位置関係の変化に追従して即時的に低減することができる。
また、磁気テープ読取装置10では、第1読取素子40及び第2読取素子42の各々について、読取対象トラック30Aとの重複領域と隣接トラックとの重複領域との比がずれ量から特定され、特定された比に応じてタップ係数が定められる。従って、磁気テープ読取装置10は、複数の読取素子の各々についての読取対象トラック30Aとの重複領域と隣接トラックとの重複領域との比とは関連性のないパラメータに応じてタップ係数が定められる場合に比べ、磁気テープMTと読取素子ユニット38との位置関係が変化したとしても、ノイズ成分を正確に低減することができる。
また、磁気テープ読取装置10では、ずれ量は、サーボパターン32をサーボ素子対36が読み取ることで得た結果に応じて定められる。従って、磁気テープ読取装置10は、磁気テープMTにサーボパターン32が付与されていない場合に比べ、容易にずれ量を定めることができる。
また、磁気テープ読取装置10では、サーボ素子対36による読取動作に同期して読取素子ユニット38による読取動作が行われる。従って、磁気テープ読取装置10は、サーボパターンとデータとを同期して読み取ることができない磁気ディスク及びヘリカルスキャン方式の磁気テープに比べ、磁気テープの幅方向において隣接トラックから読取対象トラックに入り込むことで生じるノイズ成分を即時的に低減することができる。
また、磁気テープ読取装置10では、抽出部62が2次元FIRフィルタ71を有している。そして、2次元FIRフィルタ71により、第1読取信号及び第2読取信号の各々に対して波形等化処理が施されることで得られた各結果を合成することで、第1読取信号及び第2読取信号から読取対象トラック30Aに由来するデータが抽出される。従って、磁気テープ読取装置10は、1次元FIRフィルタのみを用いる場合に比べ、第1読取信号及び第2読取信号から読取対象トラック30Aに由来するデータを迅速に抽出することができる。また、磁気テープ読取装置10は、行列演算を行う場合に比べ、より少ない演算量による簡便な実装を実現することができる。
また、磁気テープ読取装置10では、本開示の技術に係る一対の読取素子として第1読取素子40及び第2読取素子42が採用されている。従って、磁気テープ読取装置10は、3つの読取素子を用いる場合に比べ、読取素子ユニット38の小型化に寄与することができる。読取素子ユニット38が小型化されることで、読取部26及び読取ヘッド16も小型化可能となる。また、磁気テープ読取装置10は、隣接する読取素子ユニット38同士で接触するという事態の発生も抑制することができる。
更に、磁気テープ読取装置10では、複数の読取素子ユニット38の各々により、複数の特定トラック領域31の各々に含まれる対応する読取対象トラック30Aからリニアスキャン方式でデータが読み取られる。従って、磁気テープ読取装置10は、複数の読取対象トラック30Aの各々から単一の読取素子ユニット38のみによってデータが読み取られる場合に比べ、複数の読取対象トラック30Aからのデータの読み取りを迅速に完遂することができる。
なお、上記実施形態では、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第1読取素子40及び第2読取素子42の各々が、読取対象トラック30A及び第1のノイズ混入源トラック30Bの双方に対して、共に跨るように設けられているが、本開示の技術はこれに限定されない。図12に示す例では、上記実施形態で説明した読取素子ユニット38に代えて読取素子ユニット138が採用されている。読取素子ユニット138は、第1読取素子140及び第2読取素子142を備えている。磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第1読取素子140のテープ幅方向の中心は、読取対象トラック30Aのテープ幅方向の中心CLと一致している。また、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第1読取素子140及び第2読取素子142は、第1のノイズ混入源トラック30B及び第2のノイズ混入源トラック30Cに食み出すことなく、読取対象トラック30Aに収まっている。更に、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、上記実施形態で説明した第1読取素子40及び第2読取素子42と同様に、第1読取素子140及び第2読取素子142の各々は、走行方向で互いの一部が重なるように設けられている。
一例として図12に示すように第1読取素子140及び第2読取素子142が読取対象トラック30Aから食み出ることなく読取対象トラック30Aに対面している状態であっても、読取素子ユニット138と磁気テープMTとの位置関係が変化することがある。すなわち、読取素子ユニット138が読取対象トラック30Aと第1のノイズ混入源トラック30Bとに跨る場合と読取素子ユニット138が読取対象トラック30Aと第2のノイズ混入源トラック30Cとに跨る場合とがある。これらの場合であっても、上述したステップ102~ステップ112の処理が実行されることで、第1のノイズ混入源トラック30B又は第2のノイズ混入源トラック30Cからのノイズ成分が除去された読取対象トラックデータに相当するデータを得ることが可能となる。
また、第1読取素子140及び第2読取素子142が走行方向で互いの一部が重なる位置に配置されているので、読取対象トラック30Aのうち、第1読取素子140では読み取ることができない部分から第2読取素子142がデータを読み出すことができる。この結果、第1読取素子140が単一で読取対象トラック30Aからデータを読み取る場合に比べ、読取対象トラックデータの信頼性を高めることができる。
また、一例として図11に示すように、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第1読取素子40及び第2読取素子42の各々が、読取対象トラック30A及び第2のノイズ混入源トラック30Cの双方に対して、共に跨る位置に配置されるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、第1読取素子40及び第2読取素子42を含む読取素子ユニット38を例示したが、本開示の技術はこれに限定されない。図13に示す例では、読取素子ユニット38に代えて読取素子ユニット238が採用されている。読取素子ユニット238は、読取素子ユニット38に比べ、第3読取素子244を有する点が異なる。磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第3読取素子244は、第1読取素子40との間で、走行方向で互いの一部が重なる位置に配置されている。また、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第3読取素子244は、読取対象トラック30A及び第2のノイズ混入源トラック30Cに跨る位置に配置されている。
この場合、第1読取素子40に対して第1等化器70を割り当て、第2読取素子42に第2等化器72を割り当てたのと同様に、第3読取素子244に対しても第3等化器(図示省略)を割り当てる。第3等化器も、上記実施形態で説明した第1等化器及び第2等化器と同様の機能を有しており、第3読取素子244によって読み取られて得られた第3読取信号に対して波形等化処理を施す。そして、第3等化器は、第3読取信号に対して、タップ係数を畳み込み演算し、演算処理後の信号である第3の演算処理済み信号を出力する。加算器44は、第1読取信号に対応する第1の演算処理済み信号と、第2読取信号に対応する第2の演算処理済み信号と、第3読取信号に対応する第3の演算処理済み信号とを加算することで合成し、合成して得た合成データを復号部69に出力する。
なお、図13に示す例では、磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第3読取素子244が読取対象トラック30Aと第2のノイズ混入源トラック30Cとに跨った位置に配置されているが、本開示の技術はこれに限定されない。磁気テープ読取装置10がデフォルトの状態で、第3読取素子244が読取対象トラック30Aから食み出すことなく読取対象トラック30Aに対面する位置に配置されるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、読取素子ユニット38を例示したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、読取素子ユニット38に代えて、図4に示す読取素子対50が採用されてもよい。この場合、第1読取素子50A及び第2読取素子50Bは、テープ幅方向で近接する位置に配置されるようにする。また、第1読取素子50Aと第2読取素子50Bとが、接触することなく、一例として図6に示すように、トラックオフセットの全範囲において、単一読取素子データのSNRよりもSNRが高くなるようにテープ幅方向に並べて配置されるようにする。
図4に示す例では、例えば、第1読取素子50Aが平面視で第2トラック49B内に納まっており、第2読取素子50Bが平面視で第1トラック49A内に収まっている。
また、上記実施形態では、サーボ素子対36を例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、例えば、サーボ素子対36に代えて、サーボ素子36A,36Bのうちの1つを採用してもよい。
また、上記実施形態では、トラック領域30内において、複数の特定トラック領域31がテープ幅方向に一定の間隔で配列されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、複数の特定トラック領域31のうち、隣接する2つの特定トラック領域31において、一方の特定トラック領域31と他方の特定トラック領域31とがテープ幅方向において1トラック分だけ重複するようにテープ幅方向に配列させるようにしてもよい。すなわち、この場合、一方の特定トラック領域31に含まれる一方の隣接トラック(例えば、第1のノイズ混入源トラック30B)が他方の特定トラック領域31では読取対象トラック30Aになる。また、一方の特定トラック領域31に含まれる読取対象トラック30Aは、他方の特定トラック領域31では隣接トラック領域(例えば、第2のノイズ混入源トラック30C)になる。
また、上記実施形態で説明した磁気テープ読取処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
複数の読取素子を有する読取素子ユニットを、複数の読取素子を近接させた状態で配置し、
複数の読取素子が、磁気テープに含まれるトラック領域のうちの読取対象トラックを含む特定トラック領域からデータをリニアスキャン方式で各々読み取り、
抽出部が、読取素子毎の読取結果の各々に対して、磁気テープと読取素子ユニットとの位置のずれ量に応じた波形等化処理を施すことで、読取結果から、読取対象トラックに由来するデータを抽出することを含む磁気テープ読取方法。
(付記2)
磁気テープに含まれるトラック領域のうちの読取対象トラックを含む特定トラック領域からデータをリニアスキャン方式で各々読み取る複数の読取素子を有する読取素子ユニットを、複数の読取素子を近接させた状態で配置し、
抽出部が、読取素子毎の読取結果の各々に対して、磁気テープと読取素子ユニットとの位置のずれ量に応じた波形等化処理を施すことで、読取結果から、読取対象トラックに由来するデータを抽出することを含む磁気テープ読取方法。
(付記3)
複数の読取素子の互いの一部が、磁気テープの走行方向で互いの一部が重なっている付記1又は付記2に記載の磁気テープ読取方法。
(付記4)
特定トラック領域は、読取対象トラックと読取対象トラックに隣接している隣接トラックとを含む領域であり、
複数の読取素子の各々は、磁気テープとの位置関係が変化した場合に、読取対象トラック及び隣接トラックの双方に対して、共に跨っている付記3に記載の磁気テープ読取方法。
(付記5)
磁気テープに含まれるトラック領域のうちの読取対象トラックを各々含む複数の特定トラック領域の各々からデータをリニアスキャン方式で各々読み取り、近接した状態で配置された複数の読取素子を各々有する複数の読取素子ユニットと、
複数の読取素子ユニットの各々について、読取素子毎の読取結果の各々に対して、磁気テープと読取素子ユニットとの位置のずれ量に応じた波形等化処理を施すことで、読取結果から、読取対象トラックに由来するデータを抽出する抽出部と、を含む磁気テープ読取装置。
(付記6)
複数の読取素子ユニットの各々において、複数の読取素子の互いの一部は、磁気テープの走行方向で重なっている付記5に記載の磁気テープ読取装置。
(付記7)
特定トラック領域は、読取対象トラックと読取対象トラックに隣接している隣接トラックとを含む領域であり、
複数の読取素子ユニットの各々において、複数の読取素子の各々は、磁気テープとの位置関係が変化した場合に、読取対象トラック及び隣接トラックの双方に対して、共に跨っている付記6に記載の磁気テープ読取装置。
(付記8)
複数の読取素子ユニットの各々において、複数の読取素子は、磁気テープの幅方向に、近接した状態で並べて配置された付記5に記載の磁気テープ読取装置。
(付記9)
複数の読取素子ユニットの各々において、複数の読取素子は、磁気テープの幅方向で読取対象トラック内に収まっている付記5から付記8の何れか1つに記載の磁気テープ読取装置。
(付記10)
波形等化処理で用いられるタップ係数はずれ量に応じて定められる付記5から付記9の何れか1つに記載の磁気テープ読取装置。
(付記11)
複数の読取素子ユニットの各々の複数の読取素子の各々について、読取対象トラックとの重複領域と読取対象トラックに隣接している隣接トラックとの重複領域との比がずれ量から特定され、特定された比に応じてタップ係数が定められる付記10に記載の磁気テープ読取装置。
(付記12)
ずれ量は、磁気テープに予め付与されたサーボパターンをサーボ素子が読み取ることで得た結果に応じて定められる付記5から付記11の何れか1つに記載の磁気テープ読取装置。
(付記13)
サーボ素子による読取動作に同期して複数の読取素子ユニットの各々による読取動作が行われる付記12に記載の磁気テープ読取装置。
(付記14)
抽出部は、2次元FIRフィルタを有し、
2次元FIRフィルタは、複数の読取素子ユニットの各々について、読取素子毎の読取結果の各々に対して波形等化処理を施すことで得られた各結果を合成することで、読取結果から、複数の特定トラック領域のうちの位置が対応する特定トラック領域に含まれる読取対象トラックに由来するデータを抽出する付記5から付記13の何れか1つに記載の磁気テープ読取装置。
(付記15)
複数の読取素子は一対の読取素子である付記5から付記14の何れか1つに記載の磁気テープ読取装置。