JP7009407B2 - 磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置 - Google Patents
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Description
磁気テープがリールに巻装された単リール型の磁気テープカートリッジであって、
上記磁気テープは、
非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有し、
テープ厚みが5.3μm以下であり、
上記磁性層は、複数のサーボバンドを有し、
テープ内側末端から50m±1mの位置のテープ幅Winnerと、テープ外側末端から50m±1mの位置のテープ幅Wouterとの差(Winner-Wouter)が、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、4.1μm以上19.9μm以下であり、かつ
テープ内側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Ginnerと、テープ外側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Gouterと、の差(Ginner-Gouter)が、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、-3.9μm以上0.0μm以下である、磁気テープカートリッジ、
に関する。
本発明の一態様は、磁気テープがリールに巻装された単リール型の磁気テープカートリッジであって、上記磁気テープは、非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有し、テープ厚みが5.3μm以下であり、上記磁性層は、複数のサーボバンドを有し、テープ内側末端から50m±1mの位置のテープ幅Winnerと、テープ外側末端から50m±1mの位置のテープ幅Wouterとの差(Winner-Wouter)(以下、「テープ幅差」とも記載する。)が、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、4.1μm以上19.9μm以下であり、かつテープ内側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Ginnerと、テープ外側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Gouterとの差(Ginner-Gouter)(以下、「サーボバンド間隔差」とも記載する。)が、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、-3.9μm以上0.0μm以下である、磁気テープカートリッジに関する。
これに対し本発明者らは、磁気テープカートリッジに収容された磁気テープの寸法変化について鋭意検討を重ねた結果、以下の新たな知見を得た。
磁気テープカートリッジは、長尺状の磁気テープ原反を規定の幅にスリットして得られた磁気テープを、磁気テープカートリッジのリールに巻き取り収容して作製される。カートリッジの構成としては、リール数が1つの単リール型と、2つのリールを有する双リール型があり、近年は単リール型の磁気テープカートリッジが広く用いられている。単リール型の磁気テープカートリッジ内での磁気テープの経時的な変形について本発明者らが鋭意検討を重ねる中で、リールに近い部分(内側部分)はテープ厚み方向の圧縮応力によって初期より幅広に変形し、一方リールから遠い部分(外側部分)はテープ長手方向の引っ張り応力によって初期より幅狭に変形するという現象が、薄型化された磁気テープ(具体的にはテープ厚みが5.3μm以下)において顕著に発生し、経時後に内側部分と外側部分とでテープ幅が大きく相違することが明らかとなった。その理由について、本発明者らは、磁気テープが薄型化されると、磁気テープにかかるテンションが仮に同じであっても、磁気テープの各位置にかかる圧縮応力または引張応力はより大きくなり、その結果、上記の初期より幅広または幅狭になる変形が発生しやすくなるのではないかと推察している。また、高容量化のために磁気テープが薄型化されて磁気テープカートリッジ1巻あたりに収容される磁気テープ長が長くなると、磁気テープカートリッジ内の磁気テープの巻数は多くなる。その結果、磁気テープの内側部分(リールに近い部分)はより強く圧縮されるようになると考えられ、その結果、上記の内側部分が初期より幅広に変形する現象がより顕著に発生するようになると推察される。
以上の知見に基づき本発明者らは、磁気テープがデータ記録後に経時的に上記のように内側部分と外側部分とで異なる変形を起こすことが、データが記録されたデータバンドに磁気ヘッドを追従させることを困難にし、このことが再生エラーの原因になると考えるに至った。詳しくは、サーボ信号を利用してヘッドトラッキングを行うシステム(以下、「サーボシステム」と記載する。)によって、データが記録されているデータバンドに磁気ヘッドを追従させることが、上記の変形により困難になることが、再生エラーの原因になると考えるに至った。この点に関して、サーボシステムについて以下に説明する。
まずサーボ信号読み取り素子により、磁性層に形成されているサーボパターンを読み取る。サーボパターンを読み取ることにより得られたサーボ信号に応じて、磁気テープ装置内で、データの再生のための素子を備える磁気ヘッドの位置を制御する。これにより、磁気テープに記録されたデータを再生するために磁気テープ装置内で磁気テープを走行させる際、磁気テープの位置が変動しても、磁気ヘッドをデータバンドに追従させる精度を高めることができる。例えば、磁気テープを磁気テープ装置内で走行させてデータの再生を行う際、磁気テープの位置が磁気ヘッドに対して幅方向に変動しても、サーボシステムによりヘッドトラッキングを行うことによって、磁気テープ装置内で磁気テープの幅方向における磁気ヘッドの位置を制御することができる。こうして、磁気テープ装置において、磁気テープに記録されたデータを正確に再生することが可能となる。
ただし以上の記載には本発明者らの推察が含まれる。また、後述の記載にも本発明者らの推察が含まれる。かかる推察に本発明は限定されるものではない。
以下、上記磁気テープカートリッジについて説明する。
上記磁気テープカートリッジは、単リール型の磁気テープカートリッジである。単リール型の磁気テープカートリッジでは、単一のリールに磁気テープが巻装されている。磁気テープカートリッジの構成については、単リール型の磁気テープカートリッジに関する公知技術を適用できる。
(テープ幅差)
上記磁気テープカートリッジに含まれる磁気テープは、テープ内側末端から50m±1mの位置のテープ幅Winnerとテープ外側末端から50m±1mの位置のテープ幅Wouterとの差(Winner-Wouter)が4.1μm以上19.9μm以下である。上記のテープ幅Winnerおよびテープ幅Winnerは、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値である。
磁気テープカートリッジには、製品管理のために、製造日等の個体識別情報(ID(identification)情報)が記録されている。本発明および本明細書において、「磁気テープカートリッジ製造日」とは、磁気テープカートリッジに記録されている製造日を言うものとする。かかる情報は、通常、カートリッジ内部にあるRFID(Radio Frequency Identifier)タグに記録されており、RFIDタグを読み取ることにより、製造日(通常、「Date of Manufacturer」として記録されている日付)を認識することができる。磁気テープカートリッジ製造日から100日目のテープ幅差(Winner-Wouter)が上記範囲である磁気テープカートリッジについて、この磁気テープカートリッジに収容されている磁気テープへのデータの記録および記録されたデータの再生は、磁気テープカートリッジ製造日から100日未満のいずれかの日に行われてもよく、100日目に行われてもよく、100日を超えるいずれかの日に行われてもよい。同じ製品ロット番号が付されている磁気テープカートリッジは、通常、同一原料を用いて同一製造条件下で製造されたものであるため、磁気テープカートリッジ製造日から100日目のテープ幅差(Winner-Wouter)は同じ値になるとみなすことができる。以上の点は、サーボバンド間隔差等の後述の各種物性についても同様である。
また、テープ幅差、サーボバンド間隔差等の各種物性が測定される磁気テープの一部としては、スプライシングテープ等の接合手段によって、データの記録および/または再生が行われる領域と接合されている部分は考慮されないものとする。例えば、磁気テープカートリッジからの磁気テープの引き出しおよび巻き取りのために、磁気テープのテープ外側末端にリーダーテープが接合される場合がある。かかる場合、テープ幅差、サーボバンド間隔差等の各種物性が測定される磁気テープの一部としては、リーダーテープは考慮されないものとする。したがって、リーダーテープが接合されている場合には、磁気テープのテープ外側末端は、リーダーテープが接合されている側の磁気テープの末端である。
磁気テープカートリッジは、長尺状の磁気テープ原反を規定の幅にスリットして得られた磁気テープをリールに巻き取り磁気テープカートリッジ内に収容して作製される。上記の規定の幅は、通常、1/2インチ(1インチは0.0254メートル)であり、スリットされた磁気テープの幅は各位置で等幅である。等幅について、スリット工程において通常生じ得る製造誤差は許容されるものとする。これに対し、先に記載したように、記録から再生までの間に磁気テープは経時的に位置によって異なる変形を起こすと考えられる。しかし、従来の磁気テープカートリッジでは、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の時点では、上記のテープ幅Winnerとテープ幅Wouterとのテープ幅差(Winner-Wouter)が4.1μm以上となるような変形は生じない。これに対し、磁気テープカートリッジ製造日から100日目においてテープ幅差(Winner-Wouter)が4.1μm以上となるような変形を予め生じさせておくことは、記録から再生までの間に磁気テープが経時的に上記のように位置によって異なる変形を起こすことに起因する再生エラーの発生を抑制することに寄与すると考えられる。他方、データが記録される前の磁気テープにおいて内側部分と外側部分とのテープ幅差が大きすぎると、記録時にエラーが発生し易くなる。これに対し、磁気テープカートリッジ製造日から100日目においてテープ幅差(Winner-Wouter)が19.9μm以下であることは、磁気テープカートリッジに収容されている磁気テープの全長にわたって、データの記録を容易に行うことに寄与し得る。再生エラーの発生をより一層抑制する観点からは、テープ幅差(Winner-Wouter)は、4.5μm以上であることが好ましく、5.0μm以上であることがより好ましく、5.5μm以上であることが更に好ましい。一方、記録時のエラーの発生をより一層抑制する観点からは、テープ幅差(Winner-Wouter)は、19.5μm以下であることが好ましく、19.0μm以下であることがより好ましく、18.5μm以下であることが更に好ましい。
磁気テープカートリッジ製造日から100日目の磁気テープカートリッジから、リールに巻装された磁気テープを取り出し、テープ外側末端から50m±1mの位置を含む長さ20cmのテープサンプル、およびテープ内側末端から50m±1mの位置を含む長さ20cmのテープサンプルを切り出す。各テープサンプルのテープ幅を、カールの影響を除去するために板状部材(例えばスライドガラス)に挟み込んだ状態でテープサンプルの長手方向中央部において測定する。テープ幅の測定は、0.1μmオーダーの精度での寸法測定が可能な公知の測定器を用いて行うことができる。また、測定は、磁気テープカートリッジから磁気テープを取り出した後20分以内に行う。上記の各テープサンプルにおいて、テープ幅はそれぞれ7回測定し(N=7)、7回の測定で得られた測定値の中の最大値および最小値を除いた5つの測定値の算術平均を求める。磁気テープカートリッジに収容されていた磁気テープの全長が950mの場合には、こうして求められた算術平均を、各位置のテープ幅(テープ幅Winnerまたはテープ幅Wouter)とする。一方、磁気テープカートリッジに収容されていた磁気テープの全長が950m以外の長さの場合には、磁気テープ全長をL1(単位:m)、上記で求められた算術平均をW1として、下記式:
W=(950/L1)×W1
により求められるWを、各位置のテープ幅(テープ幅Winnerまたはテープ幅Wouter)とする。テープ幅差(Winner -Wouter)は、熱処理を行うことにより制御することができる。熱処理について詳細は後述する。
上記のように磁気テープカートリッジ製造日から100日目のテープ幅差(Winner-Wouter)が4.1μm以上19.9μm以下の磁気テープは、好ましくは、以下の方法により求められるテープ幅変形率が400ppm(parts per million)以下であることができ、390ppm以下であることがより好ましく、380ppm以下であることが更に好ましく、370ppm以下であることが一層好ましく、360ppm以下であることがより一層好ましく、350ppm以下であることがより一層好ましい。上記テープ幅変形率は、例えば、10ppm以上であることができ、100ppm以上、150ppm以上、200ppm以上または250ppm以上であることもできる。上記テープ幅変形率が小さいほど、磁気テープへのデータの記録から再生までの間の磁気テープの幅方向の寸法変化は小さいと考えられる。したがって、記録から再生までの間のテープ幅の変化に起因する再生エラーの発生をより一層抑制する観点からは、上記磁気テープ幅変形率は小さいほど好ましく、0ppmであってもよい。上記テープ幅変形率も、詳細を後述する熱処理によって制御することができる。
磁気テープカートリッジ製造日から100日目の磁気テープカートリッジから、リールに巻装された磁気テープを取り出し、テープ外側末端から10m±1mの位置を含む長さ20cmのテープサンプルを切り出し、上記方法によりテープ幅を求める。このテープ幅を、保存前テープ幅とする。この保存前テープ幅は、上記のテープ幅差を求めるために用いるテープサンプルと同じ磁気テープから、テープ外側末端から10m±1mの位置を含むように切り出したテープサンプルについて求められた値とする。
上記の保存前テープ幅を求めた長さ20cmのテープサンプルを、このテープサンプルの一方の端部を保持し他方の端部に100gの重りを吊るすことによりテープ長手方向に100gの荷重を負荷した状態で、温度52℃の乾燥環境下で24時間保存する。乾燥環境とは、相対湿度10%以下の環境である。上記保存は、磁気テープカートリッジ製造日から100日目に開始される。上記保存後、荷重の除去後20分以内に、上記方法と同様にテープ幅(7回測定で得られた測定値の中の最大値および最小値を除いた5つの測定値の算術平均)を求める。このテープ幅を、保存後テープ幅とする。
保存前後のテープ幅の差(保存前テープ幅-保存後テープ幅)を保存前テープ幅で除した値×106(単位:ppm)を、テープ幅変形率とする。
上記磁気テープカートリッジに含まれる磁気テープの磁性層は、複数のサーボバンドを有する。隣り合う2本のサーボバンドの間の領域が、データバンドである。サーボバンドおよびデータバンドの配置例については、後述する。そして、上記磁気テープにおいて、テープ内側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Ginnerとテープ外側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Gouterとの差(Ginner-Gouter)、即ちサーボバンド間隔差は、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、-3.9μm以上0.0μm以下である。以下、この点について更に説明する。
上記のテープ外側末端は、リールに巻装された磁気テープの両端部のうちリールから最も遠い端部であり、テープ外側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Gouterは、経時的にテンションが強くかかり、何ら対策を施さなければ初期より幅狭に大きく変形する部分のサーボバンド間隔の値を代表している。テープ外側末端から49m~51mの範囲とは、テープ外側末端から49mの位置からテープ外側末端から51mの位置までの範囲である。一方、上記のテープ内側末端は、リールへの巻き取りの起点の端部であり、テープ内側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Ginnerは、経時的に強く圧縮されて、何ら対策を施さなければ初期より幅広に大きく変形する部分のサーボバンド間隔の値を代表している。テープ内側末端から49m~51mの範囲とは、テープ内側末端から49mの位置からテープ内側末端から51mの位置までの範囲である。
上記のテープ幅差(Winner-Wouter)は、例えば、詳細を後述する熱処理を行うことによって磁気テープを内側部分が外側部分より幅広になるように予め変形させることにより、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、4.1μm以上19.9μm以下の範囲に制御することができる。例えば、このように内側部分が外側部分より幅広になるように熱処理が施される磁気テープの磁性層に既にサーボパターンが形成されていると、熱処理での磁気テープの変形に伴い、サーボバンド間隔も内側部分が外側部分より広くなり、内側部分のサーボバンド間隔と外側部分のサーボバンド間隔が大きく相違することになると推察される。例えばこうして、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、内側部分のサーボバンド間隔と外側部分のサーボバンド間隔が大きく相違してしまうことも、再生エラーの発生の一因になると考えられる。これに対し、例えば、詳細を後述する熱処理を施した後に磁気テープにサーボパターンを形成する等の手段を採用することによって、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、上記テープ幅差(Winner-Wouter)を示す磁気テープのサーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)を、-3.9μm以上0.0μm以下の範囲に制御することができる。このことも、再生エラーの発生を抑制することに寄与し得る。上記のサーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)が0.0μmであることは、内側部分と外側部分とでサーボバンド間隔が同様であることを示す。また、上記のサーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)がマイナスの値であることは、内側部分のサーボバンド間隔が、外側部分のサーボバンド間隔より狭いことを意味する。これは、先に説明した磁気テープに経時的に変形が発生した後の変形(内側部分が外側部分より幅広)と逆である。磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値としてサーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)が0.0μm以下となるようにサーボパターンを形成しておけば、データの記録から再生までの間に磁気テープの内側部分のテープ幅が外側部分のテープ幅より多少広がったとしても、再生時に内側部分と外側部分とでサーボバンド間隔が大きく異なることに起因して再生エラーが発生することを抑制することができると推察される。再生エラーの発生をより一層抑制する観点からは、上記サーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)は、一態様では0.0μmであることも好ましく、また一態様では-0.1μm以下、-0.5μm以下または-1.0μm以下であることも好ましい。また、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値としてサーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)が-3.9μm以上となるようにサーボパターンを形成しておくことは、記録時にエラーが発生し易くなることを抑制することに寄与し得る。記録時のエラーの発生をより一層抑制する観点からは、上記サーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)は、-3.5μm以上であることが好ましく、-3.0μm以上であることがより好ましい。
上記磁気テープの厚み(総厚)は、5.3μm以下である。磁気テープの薄型化は、高容量化につながるため好ましい。しかし、厚み5.3μm以下に薄型化された磁気テープは、何ら対策を施さない場合には磁気テープカートリッジ内で先に記載したように内側部分と外側部分とが経時的に異なる変形を生じる傾向があり、このことが再生エラーの発生の原因になると本発明者らは考えている。これに対し、サーボバンド間隔差が上記範囲であれば、テープ厚みが5.3μm以下の薄型化された磁気テープに磁気テープカートリッジ内で上記変形が生じても、再生エラーの発生を抑制することが可能になる。より一層の高容量化の観点からは、磁気テープの厚みは、5.2μm以下であることが好ましく、5.0μm以下であることがより好ましく、4.8μm以下であることが更に好ましい。また、ハンドリングの容易性の観点からは、磁気テープの厚みは3.0μm以上であることが好ましく、3.5μm以上であることがより好ましい。
磁気テープカートリッジ製造日から100日目の磁気テープカートリッジから、リールに巻装された磁気テープを取り出し、この磁気テープの任意の部分からテープサンプル(例えば長さ5~10cm)を10枚切り出し、これらテープサンプルを重ねて厚みを測定する。測定された厚みを10分の1して得られた値(テープサンプル1枚当たりの厚み)を、テープ厚みとする。上記厚み測定は、0.1μmオーダーでの厚み測定が可能な公知の測定器を用いて行うことができる。このテープ厚みは、上記のテープ幅差(Winner-Wouter)および/またはテープ幅変形率を求めるために用いた磁気テープを用いて求めてもよく、上記のテープ幅差(Winner-Wouter)および/またはテープ幅変形率を求めるために用いた磁気テープが収容されていた磁気テープカートリッジと同じ製品ロット番号が付されている磁気テープカートリッジから取り出した磁気テープを用いて求めてもよい。
また、磁性層の厚み等の各種厚みは、以下の方法により求めることができる。
磁気テープの厚み方向の断面を、イオンビームにより露出させた後、露出した断面において走査型電子顕微鏡による断面観察を行う。断面観察において任意の2箇所において求められた厚みの算術平均として、各種厚みを求めることができる。または、各種厚みは、製造条件等から算出される設計厚みとして求めることもできる。
上記磁気テープは、少なくとも非磁性支持体および磁性層を有する。非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)としては、ポリエチレンナフタレート支持体、ポリアミド支持体、ポリエチレンテレフタレート支持体、ポリアミドイミド支持体等が挙げられる。これら支持体は、市販品として入手可能であるか、または公知の方法により製造することができる。支持体としては、強度、可撓性等の観点から、ポリエチレンナフタレート支持体、ポリアミド支持体およびポリエチレンテレフタレート支持体が好ましい。ポリエチレンナフタレート支持体とは、少なくともポリエチレンナフタレート層を含む支持体を意味し、単層または二層以上のポリエチレンナフタレート層からなるものとポリエチレンナフタレート層に加えて一層以上の他の層を含むものとが包含される。この点は、他の支持体についても同様である。また、ポリアミドは、芳香族骨格および/または脂肪族骨格を含むものであることができ、芳香族骨格を含むポリアミド(芳香族ポリアミド)が好ましく、アラミドがより好ましい。支持体は、二軸延伸されたものであることができる。支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行ってもよい。
強磁性粉末
磁性層は、強磁性粉末を含む。磁性層に含まれる強磁性粉末としては、各種磁気記録媒体の磁性層において用いられる強磁性粉末として公知の強磁性粉末を一種または二種以上組み合わせて使用することができる。強磁性粉末として平均粒子サイズの小さいものを使用することは記録密度向上の観点から好ましい。この点から、強磁性粉末の平均粒子サイズは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましく、35nm以下であることが一層好ましく、30nm以下であることがより一層好ましく、25nm以下であることが更に一層好ましく、20nm以下であることがなお一層好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子サイズは5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが一層好ましく、20nm以上であることがより一層好ましい。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011-225417号公報の段落0012~0030、特開2011-216149号公報の段落0134~0136、特開2012-204726号公報の段落0013~0030および特開2015-127985号公報の段落0029~0084を参照できる。
Hc=2Ku/Ms{1-[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数(単位:J/m3)、Ms:飽和磁化(単位:kA/m)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度(単位:K)、V:活性化体積(単位:cm3)、A:スピン歳差周波数(単位:s-1)、t:磁界反転時間(単位:s)]
希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0
の比率を満たすことを意味する。後述の六方晶ストロンチウムフェライト粉末の希土類原子含有率とは、希土類原子バルク含有率と同義である。これに対し、酸を用いる部分溶解は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部を溶解するため、部分溶解により得られる溶解液中の希土類原子含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部における希土類原子含有率である。希土類原子表層部含有率が、「希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0」の比率を満たすことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。本発明および本明細書における表層部とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面から内部に向かう一部領域を意味する。
また、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることは、磁気ヘッドとの摺動によって磁性層表面が削れることを抑制することにも寄与すると推察される。即ち、磁気テープの走行耐久性の向上にも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末が寄与し得ると推察される。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面に希土類原子が偏在することが、粒子表面と磁性層に含まれる有機物質(例えば、結合剤および/または添加剤)との相互作用の向上に寄与し、その結果、磁性層の強度が向上するためではないかと推察される。
繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点および/または走行耐久性の更なる向上の観点からは、希土類原子含有率(バルク含有率)は、0.5~4.5原子%の範囲であることがより好ましく、1.0~4.5原子%の範囲であることが更に好ましく、1.5~4.5原子%の範囲であることが一層好ましい。
上記部分溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認できる程度に溶解することをいう。例えば、部分溶解により、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子について、粒子全体を100質量%として10~20質量%の領域を溶解することができる。一方、上記全溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認されない状態まで溶解することをいう。
上記部分溶解および表層部含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。ただし、下記の試料粉末量等の溶解条件は例示であって、部分溶解および全溶解が可能な溶解条件を任意に採用できる。
試料粉末12mgおよび1mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度70℃のホットプレート上で1時間保持する。得られた溶解液を0.1μmのメンブレンフィルタでろ過する。こうして得られたろ液の元素分析を誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置によって行う。こうして、鉄原子100原子%に対する希土類原子の表層部含有率を求めることができる。元素分析により複数種の希土類原子が検出された場合には、全希土類原子の合計含有率を、表層部含有率とする。この点は、バルク含有率の測定においても、同様である。
一方、上記全溶解およびバルク含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。
試料粉末12mgおよび4mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度80℃のホットプレート上で3時間保持する。その後は上記の部分溶解および表層部含有率の測定と同様に行い、鉄原子100原子%に対するバルク含有率を求めることができる。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011-216149号公報の段落0137~0141および特開2005-251351号公報の段落0009~0023を参照できる。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、ε-酸化鉄粉末を挙げることもできる。本発明および本明細書において、「ε-酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε-酸化鉄型の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε-酸化鉄型の結晶構造に帰属される場合、ε-酸化鉄型の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε-酸化鉄粉末の製造方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られている。上記製造方法は、いずれも公知である。また、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換されたε-酸化鉄粉末を製造する方法については、例えば、J. Jpn. Soc. Powder Metallurgy Vol. 61 Supplement, No. S1, pp. S280-S284、J. Mater. Chem. C, 2013, 1, pp.5200-5206等を参照できる。ただし、上記磁気テープの磁性層において強磁性粉末として使用可能なε-酸化鉄粉末の製造方法は、ここで挙げた方法に限定されない。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントするか、ディスプレイに表示する等して、粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H-9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、特記しない限り、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H-9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて測定された値である。本発明および本明細書において、粉末とは、複数の粒子の集合を意味する。例えば、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。また、複数の粒子の集合とは、集合を構成する粒子が直接接触している態様に限定されず、後述する結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している態様も包含される。粒子との語が、粉末を表すために用いられることもある。
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
上記磁気テープは塗布型磁気テープであることができ、磁性層に結合剤を含むことができる。結合剤は、一種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気記録媒体の結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。
以上の結合剤については、特開2010-24113号公報の段落0028~0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。本発明および本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記測定条件により測定された値をポリスチレン換算して求められる値である。後述の実施例に示す結合剤の重量平均分子量は、下記測定条件によって測定された値をポリスチレン換算して求めた値である。
GPC装置:HLC-8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL-M(東ソー社製、7.8mmID(Inner Diameter)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
磁性層には、必要に応じて一種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、一例として、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれる添加剤としては、非磁性粉末(例えば無機粉末、カーボンブラック等)、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。例えば、潤滑剤については、特開2016-126817号公報の段落0030~0033、0035および0036を参照できる。後述する非磁性層に潤滑剤が含まれていてもよい。非磁性層に含まれ得る潤滑剤については、特開2016-126817号公報の段落0030~0031、0034、0035および0036を参照できる。分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061および0071を参照できる。分散剤を非磁性層形成用組成物に添加してもよい。非磁性層形成用組成物に添加し得る分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061を参照できる。また、磁性層に含まれ得る非磁性粉末としては、研磨剤として機能することができる非磁性粉末、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性粉末(例えば非磁性コロイド粒子等)等が挙げられる。なお後述の実施例に示すコロイダルシリカ(シリカコロイド粒子)の平均粒子サイズは、特開2011-048878号公報の段落0015に平均粒径の測定方法として記載されている方法により求められた値である。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して、または公知の方法で製造して、任意の量で使用することができる。研磨剤を含む磁性層に研磨剤の分散性を向させるために使用され得る添加剤の一例としては、特開2013-131285号公報の段落0012~0022に記載の分散剤を挙げることができる。
次に非磁性層について説明する。上記磁気テープは、非磁性支持体表面上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体表面上に非磁性粉末を含む非磁性層を介して磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011-216149号公報の段落0146~0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010-24113号公報の段落0040~0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。
上記磁気テープは、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有することもできる。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末のいずれか一方または両方が含有されていることが好ましい。バックコート層は、非磁性粉末および結合剤を含む層であることができ、一種以上の添加剤を更に含むことができる。バックコート層の結合剤および任意に含まれ得る各種添加剤については、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。例えば、特開2006-331625号公報の段落0018~0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目~第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。
上記磁気テープの厚み(総厚)については、先に記載した通りである。
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.0~5.0μmである。
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量、ヘッドギャップ長、記録信号の帯域等により最適化することができ、一般には0.01μm~0.15μmであり、高密度記録化の観点から、好ましくは0.02μm~0.12μmであり、更に好ましくは0.03μm~0.1μmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する二層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。二層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。
非磁性層の厚みは、例えば0.1~1.5μmであり、0.1~1.0μmであることが好ましい。
バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1~0.7μmが更に好ましい。
(サーボパターンが形成される磁気テープの製造工程)
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含む。個々の工程はそれぞれ二段階以上に分かれていてもかまわない。各層形成用組成物の調製に用いられる成分は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。溶媒としては、塗布型磁気記録媒体の製造に通常用いられる各種溶媒の一種または二種以上を用いることができる。溶媒については、例えば特開2011-216149号公報の段落0153を参照できる。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、結合剤を混練工程、分散工程および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。上記磁気テープを製造するためには、公知の製造技術を各種工程において用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつものを使用することが好ましい。混練処理の詳細については、特開平1-106338号公報および特開平1-79274号公報を参照できる。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を調製する任意の段階において、公知の方法によってろ過を行ってもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01~3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
各種工程を経ることによって、長尺状の磁気テープ原反を得ることができる。得られた磁気テープ原反は、公知の裁断機によって、磁気テープカートリッジに巻装すべき磁気テープの幅に裁断(スリット)される。上記の幅は規格にしたがい決定され、通常、1/2インチである。
熱処理用巻芯は、金属製、樹脂製、紙製等であることができる。熱処理用巻芯の材料は、スポーキング等の巻き故障の発生を抑制する観点から、剛性が高い材料であることが好ましい。この点から、熱処理用巻芯は、金属製または樹脂製であることが好ましい。また、剛性の指標として、熱処理用巻芯の材料の曲げ弾性率は0.2GPa以上が好ましく、0.3GPa以上がより好ましい。他方、高剛性の材料は一般に高価であるため、巻き故障の発生を抑制できる剛性を超える剛性を有する材料の熱処理用巻芯を用いることはコスト増につながる。以上の点を考慮すると、熱処理用巻芯の材料の曲げ弾性率は250GPa以下が好ましい。曲げ弾性率は、ISO(International Organization for Standardization)178にしたがい測定される値であり、各種材料の曲げ弾性率は公知である。また、熱処理用巻芯は中実または中空の芯状部材であることができる。中空状の場合、剛性を維持する観点から、肉厚は2mm以上であることが好ましい。また、熱処理用巻芯は、フランジを有していてもよく、有さなくてもよい。
熱処理用巻芯に巻き付ける磁気テープとして最終的に磁気テープカートリッジに収容する長さ(以下、「最終製品長」と呼ぶ。)以上の磁気テープを準備し、この磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態で熱処理環境下に置くことにより熱処理を行うことが好ましい。熱処理用巻芯に巻き付ける磁気テープ長は最終製品長以上であり、熱処理用巻芯等への巻き取りの容易性の観点からは、「最終製品長さ+α」とすることが好ましい。このαは、上記の巻き取りの容易性の観点からは5m以上であることが好ましい。熱処理用巻芯への巻き取り時のテンションは、巻き取りの容易性、熱処理によりテープ幅差(Winner-Wouter)を調整する容易性および製造適性の観点から、0.1N(ニュートン)以上が好ましい。また、過度な変形が発生することを抑制する観点から、熱処理用巻芯への巻き取り時のテンションは1.5N以下が好ましく、1.0N以下がより好ましい。熱処理用巻芯の外径は、巻き付けの容易性およびコイリング(長手方向のカール)の抑制の観点から、20mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましい。一方、テープ幅差(Winner-Wouter)を上記範囲内に調整する容易性の観点からは、熱処理用巻芯の外径は100mm以下が好ましく、90mm以下がより好ましい。熱処理用巻芯の幅は、この巻芯に巻き付ける磁気テープの幅以上であればよい。また、熱処理後、熱処理用巻芯から磁気テープを取り外す際には、取り外す操作中に意図しないテープ変形が生じることを抑制するために、磁気テープおよび熱処理用巻芯が十分冷却された後に磁気テープを熱処理用巻芯から取り外すことが好ましい。取り外した磁気テープは、サーボパターンを形成した後に、一度別の巻芯(「一時巻き取り用巻芯」と呼ぶ。)に巻き取り、磁気テープカートリッジのリール(一般に外径は40~50mm程度)へ巻き取ることが好ましい。これにより、熱処理時の磁気テープの熱処理用巻芯に対する内側と外側との関係を維持して、磁気テープカートリッジのリールへ磁気テープを巻き取ることができる。一時巻き取り用巻芯の詳細およびこの巻芯へ磁気テープを巻き取る際のテンションについては、熱処理用巻芯に関する上記記載を参照できる。上記熱処理を「最終製品長さ+α」の長さの磁気テープに施す態様においては、任意の段階で、「+α」の長さ分を切り取ればよい。例えば、一態様では、一時巻き取り用巻芯から磁気テープカートリッジのリールへ最終製品長さ分の磁気テープを巻き取り、残りの「+α」の長さ分を切り取ればよい。切り取って廃棄される部分を少なくする観点からは、上記αは20m以下であることが好ましい。
熱処理を行う雰囲気温度(以下、「熱処理温度」と呼ぶ。)は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。一方、過度な変形を抑制する観点からは、熱処理温度は75℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下が更に好ましい。
熱処理を行う雰囲気の重量絶対湿度は、0.1g/kg Dry air以上が好ましく、1g/kg Dry air以上がより好ましい。重量絶対湿度が上記範囲の雰囲気は、水分を低減するための特殊な装置を用いずに準備できるため好ましい。一方、重量絶対湿度は、結露が生じて作業性が低下することを抑制する観点からは、70g/kg Dry air以下が好ましく、66g/kg Dry air以下がより好ましい。熱処理時間は、0.3時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。また、熱処理時間は、生産効率の観点からは、48時間以下が好ましい。
上記のように製造された磁気テープには、好ましくは上記熱処理後に、サーボパターンが形成される。「サーボパターンの形成」は、「サーボ信号の記録」ということもできる。以下に、サーボパターンの形成について説明する。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
本発明の一態様は、上記磁気テープカートリッジと、磁気ヘッドと、を含む磁気テープ装置に関する。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボ信号読み取り素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
また、以下の各種工程および操作は、特記しない限り、温度20~25℃および相対湿度40~60%の環境において行った。
(1)アルミナ分散物の調製
アルファ化率約65%、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積20m2/gのアルミナ粉末(住友化学社製HIT-80)100.0部に対し、3.0部の2,3-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)、極性基としてSO3Na基を有するポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR-4800(極性基量:80meq/kg))の32%溶液(溶媒はメチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒)を31.3部、溶媒としてメチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1(質量比)の混合溶液570.0部を混合し、ジルコニアビーズ存在下で、ペイントシェーカーにより5時間分散させた。分散後、メッシュにより分散液とビーズとを分け、アルミナ分散物を得た。
(磁性液)
強磁性粉末 100.0部
平均粒子サイズ(平均板径)21nmの六方晶バリウムフェライト粉末(表1中、「BaFe」)
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 14.0部
重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g
シクロヘキサノン 150.0部
メチルエチルケトン 150.0部
(研磨剤液)
上記(1)で調製したアルミナ分散物 6.0部
(シリカゾル(突起形成剤液))
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ120nm) 2.0部
メチルエチルケトン 1.4部
(その他の成分)
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L) 2.5部
(仕上げ添加溶媒)
シクロヘキサノン 200.0部
メチルエチルケトン 200.0部
非磁性無機粉末:α-酸化鉄 100.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):0.15μm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック 20.0部
平均粒子サイズ:20nm
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 18.0部
重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
シクロヘキサノン 300.0部
メチルエチルケトン 300.0部
カーボンブラック 100.0部
DBP(Dibutyl phthalate)吸油量74cm3/100g
ニトロセルロース 27.0部
スルホン酸基および/またはその塩を含有するポリエステルポリウレタン樹脂
62.0部
ポリエステル樹脂 4.0部
アルミナ粉末(BET比表面積:17m2/g) 0.6部
メチルエチルケトン 600.0部
トルエン 600.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネートL) 15.0部
磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。上記磁性液を、各成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散(ビーズ分散)することにより調製した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。上記サンドミルを用いて、調製した磁性液、上記研磨剤液ならびに他の成分(シリカゾル、その他の成分および仕上げ添加溶媒)を混合し5分間ビーズ分散した後、バッチ型超音波装置(20kHz、300W)で0.5分間処理(超音波分散)を行った。その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過を行い磁性層形成用組成物を調製した。
非磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミドおよびブチルステアレート)を除く上記成分を、オープンニーダにより混練および希釈処理し、その後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミドおよびブチルステアレート)を添加して、ディゾルバー撹拌機にて撹拌および混合処理を施して非磁性層形成用組成物を調製した。
バックコート層形成用組成物を、以下の方法により調製した。ポリイソシアネートを除く上記成分を、ディゾルバー撹拌機に導入し、周速10m/秒で30分間撹拌した後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、ポリイソシアネートを添加して、ディゾルバー撹拌機にて撹拌および混合処理を施し、バックコート層形成用組成物を調製した。
表1に記載の種類の厚み4.6μmの二軸延伸された支持体の表面上に、乾燥後の厚みが0.2μmとなるように上記(5)で調製した非磁性層形成用組成物を塗布および乾燥させて非磁性層を形成した。次いで、非磁性層上に乾燥後の厚みが0.1μmとなるように上記(5)で調製した磁性層形成用組成物を塗布して塗布層を形成した。その後に、磁性層形成用組成物の塗布層が未乾燥状態にあるうちに、磁場強度0.3Tの磁場を塗布層の表面に対し垂直方向に印加して垂直配向処理を行った後、乾燥させ、磁性層を形成した。その後、上記支持体の非磁性層および磁性層を形成した表面とは反対側の表面に、乾燥後の厚みが0.3μmとなるように上記(5)で調製したバックコート層形成用組成物を塗布および乾燥させてバックコート層を形成した。
その後、金属ロールのみから構成されるカレンダロールを用いて、速度100m/分、線圧300kg/cm(1kg/cmは0.98kN/m)、および90℃のカレンダ温度(カレンダロールの表面温度)にて、表面平滑化処理(カレンダ処理)を行った。
その後、長尺状の磁気テープ原反を雰囲気温度70℃の熱処理炉内に保管することにより熱処理を行った(熱処理時間:36時間)。熱処理後、1/2インチ幅にスリットして、磁気テープを得た。
上記スリット後の磁気テープ(長さ960m)を熱処理用巻芯に巻き取り、この巻芯に巻き付けた状態で熱処理した。熱処理用巻芯としては、曲げ弾性率0.8GPaの樹脂製の中実状の芯状部材(外径:50mm)を使用し、巻き取り時のテンションは0.6Nとした。熱処理は、表1に示す熱処理温度で5時間行った。熱処理を行った雰囲気の重量絶対湿度は、10g/kg Dry airであった。
上記熱処理後、磁気テープおよび熱処理用巻芯が十分冷却された後に磁気テープを熱処理用巻芯から取り外し、この磁気テープの磁性層に市販のサーボライターによってサーボパターンを形成することにより、図2に示すLTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットにしたがう配置でデータバンド、サーボバンド、およびガイドバンドを有し、かつサーボバンド上にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターン(タイミングベースサーボパターン)を有する磁気テープを得た。上記のサーボパターン形成時に磁気テープの長手方向に掛かる張力は変化させずに0.1N~1.5Nの範囲内で一定に維持した。こうして形成されたサーボパターンは、JIS(Japanese Industrial Standards) X6175:2006およびStandard ECMA-319(June 2001)の記載にしたがうサーボパターンである。
上記サーボパターン形成後の磁気テープ(長さ960m)を、一時巻き取り用巻芯に巻き取り、その後、一時巻き取り用巻芯から磁気テープカートリッジ(LTO Ultrium8データカートリッジ)のリール(リール外径:44mm)へ最終製品長さ分(950m)巻き取り、残り10m分は切り取り、切り取り側の末端に、市販のスプライシングテープによって、Standard ECMA(European Computer Manufacturers Association)-319(June 2001) Section 3の項目9にしたがうリーダーテープを接合させた。一時巻き取り用巻芯としては、熱処理用巻芯と同じ材料製で同じ外径を有する中実状の芯状部材を使用し、巻き取り時のテンションは0.6Nとした。
以上により、長さ950mの磁気テープがリールに巻装された単リール型の実施例1の磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態で行う熱処理を、表1に示す熱処理温度で行った点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
支持体として表1に示す種類の二軸延伸された支持体を使用した点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
強磁性粉末を、以下に示す方法にて得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末(表1中、「SrFe1」)に変更した以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
(六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法)
SrCO3を1707g、H3BO3を687g、Fe2O3を1120g、Al(OH)3を45g、BaCO3を24g、CaCO3を13g、およびNd2O3を235g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1390℃で溶融し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ローラーで圧延急冷して非晶質体を作製した。
作製した非晶質体280gを電気炉に仕込み、昇温速度3.5℃/分にて635℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持して六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の平均粒子サイズは18nm、活性化体積は902nm3、異方性定数Kuは2.2×105J/m3、質量磁化σsは49A・m2/kgであった。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって部分溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子の表層部含有率を求めた。
別途、上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって全溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子のバルク含有率を求めた。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の鉄原子100原子%に対するネオジム原子の含有率(バルク含有率)は、2.9原子%であった。また、ネオジム原子の表層部含有率は8.0原子%であった。表層部含有率とバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は2.8であり、ネオジム原子が粒子の表層に偏在していることが確認された。
PANalytical X’Pert Pro回折計、PIXcel検出器
入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
分散スリットの固定角:1/4度
マスク:10mm
散乱防止スリット:1/4度
測定モード:連続
1段階あたりの測定時間:3秒
測定速度:毎秒0.017度
測定ステップ:0.05度
強磁性粉末を、以下に示す方法にて得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末(表1中、「SrFe2」)に変更した以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
(六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法)
SrCO3を1725g、H3BO3を666g、Fe2O3を1332g、Al(OH)3を52g、CaCO3を34g、BaCO3を141g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで熔融温度1380℃で溶解し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ロールで急冷圧延して非晶質体を作製した。
得られた非晶質体280gを電気炉に仕込み、645℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持し六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の平均粒子サイズは19nm、活性化体積は1102nm3、異方性定数Kuは2.0×105J/m3、質量磁化σsは50A・m2/kgであった。
強磁性粉末を、以下に示す方法にて得られたε-酸化鉄粉末に変更した以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
(ε-酸化鉄粉末の作製方法)
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.3g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3g、硝酸コバルト(II)6水和物190mg、硫酸チタン(IV)150mg、およびポリビニルピロリドン(PVP)1.5gを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、濃度25%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、雰囲気温度25℃の温度条件のまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら濃度25%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の温度を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)14mLを滴下し、24時間撹拌した。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度1000℃の加熱炉内に装填し、4時間の加熱処理を施した。
加熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4モル/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、加熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES;Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga、CoおよびTi置換型ε-酸化鉄(ε-Ga0.58Fe1.42O3)であった。また、先に実施例6について記載した条件と同様の条件でX線回折分析を行い、X線回折パターンのピークから、得られた強磁性粉末が、α相およびγ相の結晶構造を含まない、ε相の単相の結晶構造(ε-酸化鉄型の結晶構造)を有することを確認した。
得られたε-酸化鉄粉末の平均粒子サイズは12nm、活性化体積は746nm3、異方性定数Kuは1.2×105J/m3、質量磁化σsは16A・m2/kgであった。
また、質量磁化σsは、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて磁場強度15kOeで測定された値である。
支持体として表1に示す種類の厚み5.3μmの二軸延伸された支持体を使用し、非磁性層を乾燥後の厚みが0.3μmとなるように形成した点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態での熱処理を行わなかった点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態での熱処理を行わなかった点以外、実施例4と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態での熱処理を行わなかった点以外、実施例5と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態での熱処理後のサーボパターンの形成を、磁気テープカートリッジに収容される際にリールから遠くに位置する部分ほど、リール近くに位置する部分と比べて磁気テープの長手方向に掛かる張力が大きくなるように、0.1N~1.5Nの範囲内で張力を連続的に変化させて行った点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
以下の点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態で行う熱処理を、表1に示す熱処理温度で行った。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態での熱処理後のサーボパターンの形成を、磁気テープカートリッジに収容される際にリールから遠くに位置する部分ほど、リール近くに位置する部分と比べて磁気テープの長手方向に掛かる張力が大きくなるように、0.1N~1.5Nの範囲内で張力を連続的に変化させて行った。
以下の点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープを熱処理用巻芯に巻き付けた状態で行う熱処理を、表1に示す熱処理温度で行った。
1/2インチ幅にスリットした後の磁気テープに、熱処理用巻芯に巻き付けた状態での熱処理を行う前に、サーボパターン形成時に磁気テープの長手方向に掛かる張力を変化させずに0.1N~1.5Nの範囲内で一定に維持してサーボパターンを形成した点以外、実施例1と同様に磁気テープカートリッジを作製した。
(1)サーボバンド間隔差
各磁気テープカートリッジについて、磁気テープカートリッジ製造日から100日目に、温度23℃±1℃かつ相対湿度50%±5%の環境下で、以下の方法によりサーボバンド間隔差(Ginner-Gouter)を求めた。
データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を求めるためには、サーボパターンの寸法が必要である。サーボパターンの寸法の規格は、LTOの世代によって異なる。そこでまず、磁気力顕微鏡等を用いて、AバーストとCバーストの対応する4ストライプ間の平均距離AC、およびサーボパターンのアジマス角αを計測する。
次に、リールテスタと、磁気テープの長手方向と直交する方向に間隔をおいて固定された2つのサーボ信号読み取り素子(以下では、一方を上側、他方を下側と呼ぶ。)を備えたサーボヘッドとを用いて、磁気テープに形成されたサーボパターンをテープ長手方向に沿って順次読み取る。1LPOSワードの長さにわたるAバーストとBバーストに対応する5ストライプ間の平均時間をaと定義する。1LPOSワードの長さにわたるAバーストとCバーストの対応する4ストライプの平均時間をbと定義する。このとき、AC*(1/2-a/b)/(2*tan(α))で定義される値が、1LPOSワードの長さにわたってサーボ信号読み取り素子により得られたサーボ信号に基づく幅方向の読み取り位置PESを表す。1 LPOSワードについてのサーボパターンの読み取りは、上側と下側の2つのサーボ信号読み取り素子により同時に行う。上側のサーボ信号読み取り素子により得られたPESの値をPES1、下側のサーボ信号読み取り素子により得られたPESの値をPES2とする。「PES1-PES2」として、1 LPOSワードについて、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を求めることができる。これは、上側と下側のサーボパターン読み取り素子がサーボヘッドに固定されてその間隔が変わらないからである。上記磁気テープには、合計5本のサーボバンドが配置されているため、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔の数は4つである。これら4つの間隔のそれぞれについて、磁気テープカートリッジに収容された磁気テープ(全長950m)のテープ外側末端から49m~51の範囲において全LPOSワードについて求められた「PES1-PES2」の算術平均を、サーボバンド間隔Gouterとする。また、これら4つの間隔のそれぞれについて、磁気テープカートリッジに収容された磁気テープ(全長950m)のテープ内側末端から49m~51の範囲において全LPOSワードについて求められた「PES1-PES2」の算術平均を、サーボバンド間隔Ginnerとする。こうして求められたGinnerとGouterとの差(Ginner-Gouter)を、サーボバンド間隔差とする。
各磁気テープカートリッジから、磁気テープカートリッジ製造日から100日目に磁気テープを取り出し、取り出した磁気テープについて以下の評価を行った。
テープ外側末端と接合していたリーダーテープを除去した後、テープ外側末端から50m±1mの位置を含む長さ20cmのテープサンプル、およびテープ内側末端から50m±1mの位置を含む長さ20cmのテープサンプルを切り出した。各テープサンプルのテープ幅を、カールの影響を除去するために2枚のスライドガラスの間に挟み込んだ状態でテープサンプルの長手方向中央部において測定した。テープ幅の測定は、KEYENCE社製レーザー高精度寸法測定器LS-7030を用いて、磁気テープカートリッジから磁気テープを取り出した後20分以内に行った。上記の各テープサンプルにおいて、テープ幅はそれぞれ7回測定し(N=7)、7回の測定で得られた測定値の中の最大値および最小値を除いた5つの測定値の算術平均を求めた。こうして求められた算術平均を、各位置のテープ幅(テープ幅Winnerまたはテープ幅Wouter)として、テープ幅差(Winner-Wouter)を算出した。
上記(2)で磁気テープカートリッジから取り出した磁気テープから、テープ外側末端から10m±1mの位置を含む長さ20cmのテープサンプルを切り出し、上記(2)での方法と同様にテープ幅を求めた。こうして求めたテープ幅を、保存前テープ幅とした。
テープ外側末端から10m±1mの位置を含む長さ20cmのテープサンプルを、上記保存前テープ幅の測定後、このテープサンプルの一方の端部を保持し他方の端部に100gの重りを吊るすことによりテープ長手方向に100gの荷重を負荷した状態で温度52℃の乾燥環境下で24時間保存した。上記保存後、荷重の除去後20分以内に、上記(2)での方法と同様にテープ幅を求め、このテープ幅を保存後テープ幅とした。
保存前後のテープ幅の差(保存前テープ幅-保存後テープ幅)を保存前テープ幅で除した値×106(単位:ppm)を算出し、テープ幅変形率とした。
上記(2)で磁気テープカートリッジから取りだした磁気テープの任意の部分からテープサンプル(長さ5cm)を10枚切り出し、これらテープサンプルを重ねて厚みを測定した。厚みの測定は、MARH社製Millimar 1240コンパクトアンプとMillimar 1301誘導プローブのデジタル厚み計を用いて行った。測定された厚みを10分の1して得られた値(テープサンプル1枚当たりの厚み)を、テープ厚みとした。
規定容量のデータを記録した磁気テープカートリッジを温度40℃相対湿度80%の環境に3ヵ月間保存(以下、「長期保存」と記載する。)した後に、記録された全データを再生(読み出し)することが可能か否か評価した。記録および再生は、LTO Ultrium8(LTO8)ドライブを用いて行った。規定容量は、12.0TB(テラバイト)である。
データの記録は、磁気テープカートリッジ製造日から100日目に、磁気テープカートリッジを評価環境下(温度20~25℃および相対湿度40~60%)に置き1日以上放置し同環境に慣らした後に行った。記録時にエラーが発生せず、規定容量の記録が可能であった場合、記録試験の評価結果を「A」とする。一方、記録時にエラーが発生し、規定容量の記録ができなかった場合、そのカートリッジはその後の評価に使用せず、記録試験の評価結果を「B」とする。この評価結果「B」の場合とは、詳しくは、上記ドライブのサーボ信号読み取り素子によってサーボパターンを読み取りヘッドトラッキングを行っても、記録すべき位置にデータ用素子を位置合わせすることができずにドライブがエラー信号を発して停止してしまった場合である。この場合、表1中の再生試験の評価結果の欄に、「-」と表記した。ただし、この場合も長期保存は実施した。
更に、記録試験の評価結果が「A」であった場合、上記保存後に、記録を行った評価環境と同じ温度および同じ湿度の評価環境下で、記録を行ったドライブと同じドライブで再生を行った。再生も、磁気テープカートリッジを評価環境下に1日以上放置し同環境に慣らした後に行った。磁気テープカートリッジ内の磁気テープに記録されている全データについて、エラーの発生なく再生が完了した場合、再生試験の評価結果を「A」とする。再生時に再生信号のSNR(signal-to-noise-ratio)が悪いために再生信号からデータを正しく読み取ることができず、再生の途中でエラーが発生して全データの再生が完了しなかった場合には再生試験の評価結果を「B」とする。
こうして得られた評価結果を、表1に示す。
更に、上記のように記録再生試験を行った後の各磁気テープカートリッジから磁気テープを取り出し、先に記載の方法により、テープ幅差(Winner-Wouter)およびテープ幅変形率を求めた。こうして求められたテープ幅差(Winner-Wouter)およびテープ幅変形率を、長期保存後の値(参考値)として、表1に示す。
また、参考例1と比較例1~3との対比から、薄型化された磁気テープ(比較例1~3)では、テープ幅差を制御するための手段を取らずにサーボバンドの間隔が内側部分と外側部分とで同じになるようにサーボパターンを形成すると、再生エラーが発生してしまうことが確認できる。これは、テープ幅差(Winner-Wouter)が長期保存後に大きくなる結果、長期保存後に内側部分のサーボバンドの間隔が外側部分のサーボバンドの間隔より広くなり、内側部分と外側部分とでサーボバンドの間隔が大きく相違してしまうことが原因と考えられる(表1中の参考値参照)。
Claims (11)
- 磁気テープがリールに巻装された単リール型の磁気テープカートリッジであって、
前記磁気テープは、
非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有し、
テープ厚みが5.3μm以下であり、
前記磁性層は、複数のサーボバンドを有し、
テープ内側末端から50m±1mの位置のテープ幅Winnerと、テープ外側末端から50m±1mの位置のテープ幅Wouterとの差、Winner-Wouter、が、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、4.1μm以上19.9μm以下であり、かつ
テープ内側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Ginnerと、テープ外側末端から49m~51mの範囲におけるサーボバンド間隔Gouterと、の差、Ginner-Gouter、が、磁気テープカートリッジ製造日から100日目の値として、-3.9μm以上0.0μm以下である、磁気テープカートリッジ。 - 前記磁気テープは、テープ長手方向に100gの荷重を加えた状態で温度52℃の乾燥環境下で24時間保存した後、前記荷重の除去後20分以内に測定されるテープ幅変形率が400ppm以下であり、前記テープ幅変形率は磁気テープカートリッジ製造日から100日目に前記保存を開始して得られた値である、請求項1に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記磁気テープは、前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を有する、請求項1または2に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記磁気テープは、前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記非磁性支持体は、ポリエチレンナフタレート支持体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記非磁性支持体は、芳香族ポリアミド支持体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記非磁性支持体は、ポリエチレンテレフタレート支持体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記強磁性粉末は、六方晶バリウムフェライト粉末である、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記強磁性粉末は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末である、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジ。
- 前記強磁性粉末は、ε-酸化鉄粉末である、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジ。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載の磁気テープカートリッジと、
磁気ヘッドと、
を含む磁気テープ装置。
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